説明

4点リンク

本発明は、特に実用車のリジットアクスルの車軸懸架のための4点リンク1に関する。当該4点リンク1は4つの支承アイ7,8,9,10を有しており、これらの支承アイのうち2つの支承アイ9,10は車軸に、別の2つの支承アイ7,8は車両フレームに、それぞれ枢着結合可能である。当該4点リンク1はワンピースの、ねじり可能な、前記支承アイにより形成された四角形もしくは台形の基本輪郭内に描かれた中空ハウジング2,3,4,5,6として形成されている。
本発明による4点リンク1は、中空ハウジング2,3,4,5,6が、主として車両に関して横置きに配置された、両側で開いた管体により形成されており、該管体が、ほぼ丸み付けされた方形の横断面ないしO形の横断面により形成されていることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念部に記載の形式の、特に実用車に用いられる、リジットアクスルの懸架のための4点リンク(Vierpunktlenker)に関する。
【0002】
冒頭で述べた形式の4点リンクは、数年来、特にトラックやその他の実用車において使用されている。このような4点リンクは、以前はアクスルガイドの範囲に多数のリンクもしくは構成エレメントを必要としていた多数の機能や役目を単に1つの構成部分に統合させている。
【0003】
4点リンクの使用により、とりわけ車両ボディのロール安定化のための付加的なクロススタビライザが不要となる。なぜならば、4点リンクは、たとえば既存の長手方向リンクもしくはトレーリングアームと協働して、横方向および長手方向におけるアクスルガイドの役目をも、モーメント支持および横方向安定化の役目をも引き受けるからである。また、従来必要とされていた3点リンクを不要にすることもできる。こうして、構造的な手間も、車両重量も著しく節約され、このことは実用車の製造、運転および保守の点で低減されたコストをもたらす。
【0004】
4点リンクによる横方向安定化は、トーションバーの場合のようにたいてい車軸の背後で行われるのではなく、車両フレームへの力導入によってたいてい車軸の前方の範囲で行なわれ得るので、車両はさらに場合によってはロールモーメントを受け止めるための強化されたリアクロスビーム(Schlusstraverse)をも必要としなくなる。このことは付加的なコスト節約および重量減少につながる。
【0005】
これらの有利な特性の総和に基づき、製作技術の理由、コスト理由、強度理由ならびに小さな構成部分重量の理由から現在ではたいてい十字形もしくはX字形の構成形状を有している4点リンクは、特に大型の実用車の範囲で極めて急速に普及している。
【0006】
公知先行技術、たとえばドイツ連邦共和国特許第19521874号明細書またはドイツ連邦共和国特許第10206809号明細書に基づき、鍛造された4点リンクも、金属薄板構造で製造された4点リンクも、鋳造品として形成された4点リンクも知られている。しかし、鍛造法の場合、製作理由からたいてい4点リンクのアームのためにほぼ中実な方形横断面が生ぜしめられ、このことは高い構成部分重量を招き、ひいては高い製造コストを招くと共に、実用車の高められた燃料消費量および減じられた有効荷重を招いてしまう。
【0007】
組み立てられた4点リンクもしくは溶接された4点リンクも同じく手間がかかり、ひいては製造の点で高価となる。それに対して、鋳造品として形成されている公知の4点リンク(たとえば上記ドイツ連邦共和国特許第19521874号明細書の図7、図8または図11参照)は、種々の観点から見てやはり手間がかかるか、もしくは製造の点であまり確実なプロセスを有していない。すなわち、閉じられた中空ジオメトリを有する4点リンクの場合には、たとえば中空室を形成する鋳造中子が鋳造時に浮揚せず、こうして鋳造品に不均一な厚さの肉厚さを生ぜしめず、ひいては不都合な強度特性を招かないように鋳造中子を支持することが、極めて制限された規模でしか可能にならない。同じ問題に基づき、このような鋳造された4点リンクは、軽量構造を達成するために望ましいとされる大きな横断面および小さな肉厚さを持って製造され得ない。このことは不必要に高い質量を有する鋳造品もしくは4点リンクを招いてしまう。
【0008】
その他の4点リンク、たとえば上記ドイツ連邦共和国特許第19521874号明細書の図11に図示されている、特に鋳造により製造可能な4点リンクは、製造のために多数の鋳造中子を必要とし、このことはやはり製造を複雑化し、ひいては高価にする。さらに、上記ドイツ連邦共和国特許第19521874号明細書の図11に図示されている4点リンクは中空室が存在しないため、生ぜしめられる負荷状況に最適に適合され得ない。この負荷状況はたいてい推力と曲げ力とからの組合せにより特徴付けられるが、しかし特に高いねじり負荷に結びつけられている。
【0009】
このような背景に基づき、本発明の課題は、上で挙げた公知先行技術の欠点を克服することのできるような4点リンクを提供することである。4点リンクはこの場合、特に簡単で、卓越した再現性を持って、かつそれと同時に廉価に製造可能となることが望まれる。さらに、実用車において望まれている軽量構造を実現するために、卓越した機械的特性と同時に減じられた重量を達成するという目的を持って、4点リンクを、確実なプロセスでかつ廉価に製造することが可能となることが望まれる。
【0010】
この課題は、請求項1の特徴部に記載の特徴を有する4点リンクにより解決される。
【0011】
本発明の有利な実施態様は、請求項2以下に記載されている。
【0012】
特に実用車のリジットアクスルのガイドのために設けられた本発明による4点リンクは、それ自体さしあたり公知の形式で、車軸もしくは車両フレームにおける結合のための4つの支承アイを備えた、ほぼワンピースの中空ハウジングとして形成されている。この場合、その輪郭形状に関して支承アイを互いに結ぶ輪郭線により形成された四角形もしくは台形を有している中空ハウジングは、たとえば車軸ねじれ(Achsverschraenkungen)を吸収するために少なくとも僅かにねじり可能である。
【0013】
しかし、本発明によればこの4点リンクは、中空ハウジングが主として、多方向の側で、たとえば2方向の側で開いた管体の形で存在しており、この管体が車両における取付け状況に関して横置き式に配置されていることにより特徴付けられている。この場合、中空ハウジングもしくは管体は、丸み付けされた方形(「スタジアム曲線」とも呼ばれる)ないしO形または放物線形に形成されている横断面を有している。
【0014】
4点リンクのこうして形成された中空ハウジングはまず第1に極めて簡単に、もしくは確実なプロセスで製造可能であり、しかもこのことは使用される製造方法とは十分に無関係に可能である。このことは、既に以下のことに関係している。すなわち、中空ハウジングの開いた管形状は比較的単純な基本形状を成していて、この基本形状は具体的な製造方法とは無関係に単なる比較的単純な成形工具しか必要とせず、さらに小さなもしくは単純な、起伏の少ないアンダカット部しか有しておらず、しかも閉じられた中空室を有していない。
【0015】
たとえば、本発明によりほぼ管形に形成されたハウジングを有する、両側で開いた4点リンクが特に好都合となるが、このことは鋳造法による製造に関しても云える。その理由は、鋳造時に中空室を形成するために必要となる中子が、管状の中空ハウジングの両側で開いた端部に基づき突出して支持され得るので、中子のいかなる流体静力学的な浮揚も十分確実に回避され得ることにある。
【0016】
さらに、唯一つの鋳造中子しか使用しないことも可能である。その場合、この唯一つの鋳造中子によって、4点リンクの中空ハウジングの内室全体も、4点リンクの4つの支承アイも成形される。こうして、4点リンクを高いプロセス確実性を持っても、極めて廉価にも、製造することができる。しかしそれと同時に、肉薄な大容積の、ひいては剛性的でかつ軽量のジオメトリも、高い精度を持って問題なく形成可能となる。
【0017】
本発明による4点リンクの構成は単純なジオメトリに基づき、ただし別の製造方法の場合でも、たとえば鍛造品または深絞り成形品から形成された4点リンクの場合にも、極めて有利である。
【0018】
本発明はさしあたり、自動車における4点リンクの配置において、中空ハウジングを形成する管体の長手方向軸線が車両長手方向軸線に沿って延びているのか、または車両横方向軸線に沿って延びているのかには無関係に実現される。すなわち、たとえば中空ハウジングを形成する管体の長手方向軸線を車両長手方向軸線の方向に沿って配置することが考えられる。これにより、横断面形状および横断面サイズに応じて特に高い軸方向および/または極座標方向の断面二次モーメントもしくは特に車両長手方向軸線を中心としたローリングトーションに対する特に高い抵抗モーメントが達成可能となる。
【0019】
しかし本発明の有利な構成では、中空ハウジングを形成する管体の長手方向軸線が車両長手方向軸線に対して直交する横方向もしくは車両横方向に延びている。この構成は、特にねじりに関する規定された剛性もしくはフレキシブル性が要求されている場合もしくは車両ボディのローリング運動に関する4点リンクの規定された変形特性が必要とされている場合に有利である。
【0020】
中空ハウジングの正確な形状付与は、中空ハウジングが主として、上で述べた簡単に製造可能な管形状を有している場合には、本発明を実現するためにさしあたりあまり重要ではない。この場合、本発明は当然ながら、角柱状の管形の中空ハウジングを備えた4点リンクに限定されているのではなく、角柱形状とは異なる管形状、特に管長さにわたって直径変化、横断面形状変化および肉厚さ変化を有する管体をも包含している。
【0021】
これに関連して、本発明のさらに別の有利な構成では、4点リンクの中空ハウジングが、車両に関して上から見た平面図で見て車両長手方向軸線および/または車両横方向軸線に関してくびれるように輪郭付け(tailieren)されている。
【0022】
このことは言い換えれば、両側で開いた管状の中空ハウジングの本発明による原理から逸脱することなしに、中空ハウジングが車両に関して上から見た平面図で見て方形もしくは台形(くびれるように輪郭付けされていない)から、片側トランペット状または両側トランペット状の輪郭形状(単に車両長手方向軸線に関してのみ、または車両横方向軸線に関してのみくびれるように輪郭付けされている)を経て、十字形もしくはX字形(車両長手方向軸線に関しても車両横方向軸線に関しても、くびれるように輪郭付けされている)にまで至るあらゆる形状をとり得ることを意味している。
【0023】
このような背景によって、本発明のさらに別の特に有利な構成では、中空ハウジングが、車両に関して上から見た平面図で見て、ほぼワンピースで十字形もしくはX字形の形状を形成している。この場合、中空ハウジングは、単に1つの管体により形成された中空ハウジングの基本原理から逸脱することなしに、車両に関して上から見た平面図で見て、認識可能な中央の1つのハウジング範囲と、支承アイを支持した4つの末梢のリンクアームとに分解されている。
【0024】
リンクハウジングのこのような形状は既に、この形状が、中実な4点リンクもしくは鍛造された4点リンクにおいて久しく以前より有利であると判っているX字形の形状にほぼ相当することにより有利となる。しかし、この形状付与に結びつけられた、中空ハウジングを形成する開いた管体の、上から見た平面図で見て4方全ての側での著しいくびれ付けにより、4点リンクの簡単な製造可能性もしくはプロセス確実な製造可能性が一層改善され、しかもこのことは、鋳造法で製造される4点リンクにも云える。
【0025】
このことは、このような著しいくびれ付けにより、中空ハウジングの内室に基づいて形成されたアンダカット部が一方では著しく減小されており、他方では残ったアンダカット部がさらに著しく円錐状にもしくは先細りになるように形成されていることと関連している。このことは、特にとりわけ鋳造による4点リンクの製造において有利である。なぜならば、こうして鋳造中子の自由支持長さが特に小さく保持され得るからである。これにより、鋳造中子は一層良好に浮揚防止されて支持されるようになる。
【0026】
本発明のさらに別の有利な構成では、リンクアームが、横断面プロファイリングされた、つまり異形成形された曲げ支持体として形成されているか、もしくはほぼC字形の横断面もしくはほぼU字形の横断面を有している。
【0027】
リンクアームを、プロファイリング(異形成形)された曲げ支持体、特にC字形もしくはU字形の横断面を有する曲げ支持体として形成することは、こうして4点リンクの運転時に生じる著しい変形の一部が既にリンクアームによって受け止められ得るようになる点で有利である。さらに、リンクアームはこうして、特に中実な鍛造部分として形成された公知の4点リンクに比べて重量節約的に形成され得る。しかし、C字形の横断面は、鋳造された4点リンクのリンクアームの既に公知の二重T字形の横断面に比べても有利である。なぜならば、C字形の横断面はその片側にしか存在しない切欠部もしくは欠壁部に基づき、4点リンクの製造可能性を簡単にし、ひいてはコストを節約するからである。
【0028】
このことは特に、本発明のさらに別の有利な構成により中空ハウジングが鋳造部分である場合に云える。また、中空ハウジングを金属薄板成形部分として形成することも考えられる。
【0029】
本発明による4点リンクの製造における、既にさらに上で説明した一般的な利点に加えて、鋳造時には、たとえばX字形の4点リンクの構成に関して、4点リンクの全ての中空室もしくは切欠部、つまり欠壁部が、特にC字形のリンクアームの切欠部ならびに場合によっては支承アイのための切欠部も含めて、唯一つの鋳造中子を用いるだけで形成され得るという利点が得られる。
【0030】
この場合、中央の中空のハウジング範囲ならびにプロファイリングされた横断面を備えた4つのリンクアームへの分解という構造的に要求の多い分解にもかかわらず、製造のために唯一つの、これに対してなお突出して支持可能となる鋳造中子しか必要とならないような4点リンクを極めて高い精度およびプロセス確実性で製作することができることは鋳造当業者にとって容易に判る。このことは構造上の自由度のために役立つ。このことは、肉厚さの再現可能性における許容不能な公差もしくは不都合が生じることなしに、たとえば嵩のある横断面を有すると同時に比較的小さな肉厚さを有する4点リンクを製作することができることを意味している。
【0031】
これらのこと全ては、本発明により形成された4点リンクの構成部分品質、故障防止性および特にこれによって可能となる、低減された重量のために役立つ。
【0032】
本発明のさらに別の有利な構成では、4点リンクの中空ハウジングが、ベイナイト鋳鉄から成っている。本発明によるデザインを有し、かつベイナイト鋳鉄から成っている4点リンクはさらに特に小さな重量、構造上必要となる剛性特性およびフレキシブル特性ならびに高い故障防止性に関して最適化され得る。
【0033】
このことは、その優れた強度・塑性特性に基づき、機械構造および車両構造においてとりわけ軽量構造材料としても使用されるベイナイト鋳鉄が、高価な熱調質鋼の相応する材料特性値と比較可能な材料値を有していることに関連している。このことは特に重要な構造上の材料特性値、たとえば引張り強さ、降伏点および破断点伸びに云える。
【0034】
ベイナイト鋳鉄はしかしさらに別の重要な性質を有している。ベイナイト鋳鉄はたしかに上記材料特性値の点で高価な構造鋼に十分に相当しているが、しかしこのような構造鋼よりも約1/4だけ小さな弾性率を有している。このことは当該4点リンクに関しては欠点にならないだけでなく、決定的な利点となる。
【0035】
なぜならば、小さな弾性率に基づき、ベイナイト鋳鉄での構成の場合には鋼に比べて同じ剛性で、同じ変形時に4点リンクにより高い機械的応力が生じることなしに、4点リンクが、より大容積の横断面を有し得るようになるからである。
【0036】
4点リンクにおいてこの関係は、とりわけ運転中に生ぜしめられる、たいていは動的な曲げ・ねじり応力の他に、さらに極めて高いねじりモーメントもしくはたとえば凹凸のある地形における著しい車軸ねじれの場合に、強制された特定のねじれ角度の形でさえも生じる極限負荷も発生し得るという理由から重要となる。
【0037】
同じ関係において、(ベイナイト)鋳鉄から成るが、しかし鋼製の4点リンクと同じジオメトリを有している4点リンクにおいて、同一の変形が生じた場合、鋼に比べて小さな弾性率に基づき、より低い機械的応力しか構成部分に生じないことも重要となる。このことは、ベイナイト鋳鉄から成る4点リンクが、発生する最大応力もしくは発生する最大変形に関する公称運転応力の一層高い蓄えを可能にすることを意味する。このことは構造的には、減じられた肉厚さおよび/または一層大きな横断面容積およびこれによって高められた剛性および/または低減された重量の形で有利に利用され得る。
【0038】
本発明のさらに別の特に有利な構成では、支承アイが中空ハウジングにワンピースに、つまり一体に成形されている。このことは特に本発明により形成された、鋳鉄から成る4点リンクにおいて特に有利である。なぜならば、こうして構成部分には、特に均質でかつ負荷最適化された繊維経過もしくは肉厚さ経過を形成することができるからである。
【0039】
さらに、こうして未完成品においても完成品においても、一層の重量利点、ひいては一層のコスト節約を実現することができる。とりわけ既にさらに上で述べたような構成では、原理的に唯一つの鋳造中子しか必要とならない。その場合、この鋳造中子は中央のハウジング範囲における中空室をも、たとえばC字形にプロファイリングされたリンクアームに設けられた切欠部もしくは欠壁部ならびにあとでジョイントを収容する支承アイの切欠部もしくは欠壁部をも形成する。
【0040】
本発明のさらに別の有利な構成では、当該4点リンクの支承アイがエラストマジョイントもしくはモレキュラジョイント(Molekulargelenk)を有している。モレキュラジョイントの場合、特にボールジョイントのような滑り支承機構とは異なり、ボールソケットが支承アイの内部でゴム内に加硫固定されている。このことは一方では、こうして既に従来必要とされていた、水および汚れに対するジョイントのシールが完全に不要になり得るという点で有利である。他方において、モレキュラジョイントは改善された騒音減衰の他に、慣用のボールジョイントに比べて潜在的に高い寿命をも有している。さらに、モレキュラジョイントの半径方向の弾性もしくは全ての方向での弾性により、他ならぬ車軸懸架において知られている運動学的な過剰規定(Ueberbestimmungen)、ひいてはこれに伴う、ジョイント、リンクアームおよびその他の車両構成部分の不都合な過剰負荷を阻止する。
【0041】
しかし、モレキュラジョイントはさらに別の視点で見ても特に有利である。本発明のさらに別の同じく有利な構成において規定されているように、4点リンクのエラストマジョイントのうちの2つまたは4つのエラストマジョイントの、車両ロール方向に関する半径方向剛性は、車両ロール方向に対して直角な方向に関する半径方向剛性とは異なっており、特にロール方向では、車両ロール方向に対して直角な方向におけるよりも小さく形成されていてよい。
【0042】
このことは言い換えれば、モレキュラジョイントを含めて4点リンクが車両のローリング運動に関して、水平方向平面内での車両ボディに対する車軸の運動に関するよりも高い弾性を示すことを意味する。このことは特に安定的でかつ確実な車軸案内もしくはホイール案内をもたらすが、しかしそれと同時に車両運転時におけるローリング運動もしくは車軸ねじれに対する4点リンクの、構造的に規定された所要のフレキシブル性をも可能にする。
【0043】
エラストマジョイントが車両ローリング方向における運動に対して、よりフレキシブルに、もしくは小さな剛性を持って設計されると、こうしてさらに4点リンクはエラストマジョイントに、ローリング運動もしくは車軸ねじりにおける一層高い変形割合を付与するので、このことはやはり4点リンクハウジングに生じる最大応力もしくは最大変形を減少させる。4点リンクはその場合、たとえば横断面容積を増大させると同時に肉厚さを減少させることによって、与えられた全変形時に当該4点リンクに許容し得ない程高い応力が発生することなしに構造的に一層高められた剛性を得ることができる。こうして、付加的な重量が節約され、これにより、4点リンクの製造の点でも運転の点でもコストを削減することができる。
【0044】
以下に、本発明の1実施例を図面につき詳しく説明する。図面中、
図1は、本発明による4点リンクの1実施例を示す斜視図であり、
図2は、図1に示した4点リンクを部分的に断面して示す平面図であり、
図3は、図1および図2に示した4点リンクの側面図である。
【0045】
図1には、本発明による4点リンク1の1実施例が等測図もしくは斜視図で図示されている。
【0046】
まず図面から判るように、4点リンク1の4点リンクハウジングは、ほぼ十字形もしくはX字形の形状を有しており、この場合、4点リンクハウジングは中央の1つの中空なハウジング範囲2と、このハウジング範囲2にワンピースに一体成形された4つのリンクアーム3,4,5,6とを有している。さらに、リンクアーム3,4,5,6の外端部には、それぞれ支承アイ7,8,9,10が一体成形されていることが判る。この場合、図1に示した実施例では、支承アイ7,8,9,10がそれぞれ既に各ボールジョイントもしくはエラストマジョイント11,12,13,14を備えている。
【0047】
図1からさらに判るように、図示の4点リンク1の中空ハウジング2,3,4,5,6は本発明による両側で開いた管状の形状を有している。この場合、符号15,16で示した個所でトランペット状に拡開された、ただし原理的には相変わらず管形である中空ハウジング2,3,4,5,6は、4つの全ての側で著しくくびれるように輪郭付けされており、これにより明瞭に形成されたリンクアーム3,4,5,6を備えた4点リンク1の図示の十字形もしくはX字形の形状が得られる。
【0048】
こうして、図示の4点リンク1では、C字形の横断面を有するリンクアーム3,4,5,6から、管状の中央のハウジング範囲2への、極めて均質でなだらかな移行部も形成される。このような移行部は特に均一な力導入を実現するためや、材料内でのいかなる負荷ピークをも回避するために役立つ。
【0049】
特に図1からは、図示の4点リンク1が鋳造法による製造のために卓越した適性を有していることも判る。なぜならば、図示の4点リンク1を鋳造により製造するためには、内側の中空室15,16を形成しかつ横断面C字形のリンクアーム3,4,5,6の切欠部もしくは欠壁部17,18を形成する目的で、唯一つの共通の鋳造中子(図示しない)しか必要とならないからである。
【0050】
この鋳造中子はさらに、鋳造技術の当業者が鋳造中子の明確な図示なしでも直ちに判るように、4点リンク1の全ての側における著しくくびれた輪郭付けに基づき鋳造型内で良好に支持され得るので、これにより鋳造中子のいかなる浮揚も回避され、ひいては鋳造品の肉厚さの予期しないいかなる変化も回避される。このことは鋳造プロセスのプロセス確実性、廉価な製造可能性ならびに高い構成部分精度、ひいては4点リンク1における望ましい軽量構造の要求に応える。
【0051】
さらに、場合によっては、図1に示した実施例では既に相応するエラストマジョイント11,12,13,14を備えている4点リンク1の4つの支承アイ7,8,9,10を、中央のハウジング範囲2の中空室15,16とリンクアーム3,4,5,6の切欠部17,18とを形成するために使用した鋳造中子と同一の鋳造中子を用いて形成することができる。その結果、図1に示した4点リンク1は低い生産コスト、高いプロセス確実性および高い構成部分精度から成るほぼ理想的な組合せのもとに製造可能となる。
【0052】
図2には、図1に示した4点リンク1が、実用車における組込み状況に関して見た平面図で示されている。この場合、図示の4点リンク1の形状および構造を明瞭にするために、中央のハウジング範囲2の範囲a,bは部分的に切り開かれて、もしくは部分的に断面されて図示されている。さらに、符号cで示したように、リンクアーム3,4,5,6の横断面が例示的に描き込まれている。
【0053】
図2に示した実施例による4点リンク1は、全体的に極めて調和のとれたなだらかな形状付与の点ですぐれていることが判る。このことは相応して好都合な均一な力経過をもたらす。本発明による形状付与に基づき、4点リンク1は均一な肉厚さ経過a,b,cにもかかわらず、さらに考えられ得る限り最も好都合に負荷最適化された状態で構成され得る。この場合、特にC字形の横断面cを有するリンクアーム3,4,5,6から中央の管形のハウジング範囲2への十分になだらかな移行部に注目することができる。このことは全て、高い構成部分品質のためにも、高い負荷耐性のためにも、4点リンク1の小さな重量のためにも役立つ。
【0054】
さらに、図2に示した平面図では、鋳造技術の当業者にとって、図示の4点リンク1が、負荷最適化された設計の他に、有利に設定された鋳造による製造に最適に適合されていることも特に良く判る。この場合、特に全ての側で著しくくびれた輪郭が付与されていることが挙げられる。このような輪郭付けは、これによって可能となった、鋳造中子の小さな片持ち長さもしくは自己支持長さに基づき、特にワンピースの鋳造中子の最適な支持を可能にし、このことは、構成部分精度および規定された肉厚さa,b,cの正確な再現のために役立つ。
【0055】
図3には、図1および図2に示した4点リンク1がもう一度、側面図の形で図示されている。この場合にも、支承アイ8,9にまで続く4点リンク1のなだらかなデザインが良く判る。これによって均一な肉厚さが可能となると同時に、互いに異なる大きさの中空横断面による負荷最適化が可能となる。このようなデザインは、特に4点リンク1の製造のための材料として、さらに上で説明したベイナイト鋳鉄が使用される場合には、鋳造による4点リンク1の問題なしの製造可能性のためにも、4点リンク1のできるだけ小さな重量のためにも役立つ。
【0056】
したがって、その結果、本発明によれば、特に実用車のアクスルガイドのための4点リンクを、考えられ得る限り理想的な形で負荷最適化して形成することが可能となることが明らかとなる。しかしそれと同時に、本発明による4点リンクの特別なジオメトリ(幾何学的形状)により、特に鋳造による4点リンクの製造も決定的に簡素化され、そしてそのプロセス確実性も決定的に改善される。
【0057】
こうして、4点リンクの特に廉価な生産を行うことができる。しかし、それと同時に4点リンクは著しく改善された構成部品品質をも得る。本発明により可能となった4点リンクの負荷最適化されたデザインに基づき、剛性値を変えずかつ故障防止性を変えないまま4点リンクの重量を著しく低減させることができる。このことは特に実用車の運転における経済性のために役立つ。
【0058】
これによって、本発明は実用車のためのアクスルガイドもしくはアクスルサスペンションを改善すると同時に、相応する4点リンクのための低減可能な製造コストを達成するために著しく寄与する。このことは、とりわけ燃料消費量の低減、走行安全性の改善、生産時のコスト有効度ならびに実用車における改善されたシステムテクノロジのために役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明による4点リンクの1実施例を示す斜視図である。
【図2】図1に示した4点リンクを部分的に断面して示す平面図である。
【図3】図1および図2に示した4点リンクの側面図である。
【符号の説明】
【0060】
1 4点リンク
2 中空のハウジング範囲
3 リンクアーム
4 リンクアーム
5 リンクアーム
6 リンクアーム
7 支承アイ
8 支承アイ
9 支承アイ
10 支承アイ
11 エラストマジョイント
12 エラストマジョイント
13 エラストマジョイント
14 エラストマジョイント
15 中空室
16 中空室
17 切欠部
18 切欠部
a 肉厚さ
b 肉厚さ
c 肉厚さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に実用車のリジットアクスルの車軸懸架のための4点リンク(1)であって、当該4点リンク(1)が4つの支承アイ(7,8,9,10)を有しており、これらの支承アイのうち2つの支承アイ(9,10)が車軸に、別の2つの支承アイ(7,8)が車両フレームに、それぞれ枢着結合可能であり、当該4点リンク(1)が、ワンピースの、ねじり可能な、前記支承アイ(7,8,9,10)により規定された四角形もしくは台形の中空ハウジング(2,3,4,5,6)として形成されている形式のものにおいて、中空ハウジング(2,3,4,5,6)が、主として車両に関して横置きに配置された、多方向の側で開いた管体により形成されており、該管体が、ほぼ丸み付けされた方形ないしO形の横断面を有していることを特徴とする4点リンク。
【請求項2】
中空ハウジング(2,3,4,5,6)が、2方向の側で開いた管体として形成されている、請求項1記載の4点リンク。
【請求項3】
中空ハウジング(2,3,4,5,6)を形成する管体の長手方向軸線が、車両長手方向軸線に対して直交する横方向に延びている、請求項1または2記載の4点リンク。
【請求項4】
中空ハウジング(2,3,4,5,6)が、車両に関して上から見た平面図で見て車両長手方向軸線に関してくびれるように輪郭付けされている、請求項1から3までのいずれか1項記載の4点リンク。
【請求項5】
中空ハウジング(2,3,4,5,5.6)が、車両に関して上から見た平面図で見て車両横方向軸線に関してくびれるように輪郭付けされている、請求項1から4までのいずれか1項記載の4点リンク。
【請求項6】
中空ハウジング(2,3,4,5,6)が、車両に関して上から見た平面図で見て、中央のハウジング範囲(2)と、支承アイ(7,8,9,10)を支持した4つの末梢のリンクアーム(3,4,5,6)とを有する、ほぼワンピースで十字形もしくはX字形の形状を形成している、請求項1から5までのいずれか1項記載の4点リンク。
【請求項7】
リンクアーム(3,4,5,6)が、横断面(c)プロファイリングされた曲げ支持体として形成されている、請求項6記載の4点リンク。
【請求項8】
リンクアーム(3,4,5,6)の横断面形状(c)が、ほぼC字形もしくは横置きU字形である、請求項6または7記載の4点リンク。
【請求項9】
中空ハウジング(2,3,4,5,6)が鋳造品または金属薄板成形品である、請求項1から8までのいずれか1項記載の4点リンク。
【請求項10】
中空ハウジング(2,3,4,5,6)が、ベイナイト鋳鉄から成っている、請求項9記載の4点リンク。
【請求項11】
支承アイ(7,8,9,10)が、中空ハウジング(2,3,4,5,6)にワンピースに一体成形されている、請求項1から10までのいずれか1項記載の4点リンク。
【請求項12】
当該4点リンク(1)の支承アイ(7,8,9,10)が、エラストマジョイントもしくはモレキュラジョイント(11,12,13,14)を有している、請求項1から11までのいずれか1項記載の4点リンク。
【請求項13】
前記エラストマジョイント(11,12,13,14)の2つまたは4つのエラストマジョイントの半径方向剛性が、車両ロール方向において、該ロール方向に対して直角な方向におけるよりも小さく形成されている、請求項1から12までのいずれか1項記載の4点リンク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−530329(P2007−530329A)
【公表日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−504245(P2007−504245)
【出願日】平成17年3月1日(2005.3.1)
【国際出願番号】PCT/DE2005/000351
【国際公開番号】WO2005/092645
【国際公開日】平成17年10月6日(2005.10.6)
【出願人】(506054589)ツェットエフ フリードリヒスハーフェン アクチエンゲゼルシャフト (151)
【氏名又は名称原語表記】ZF Friedrichshafen AG
【住所又は居所原語表記】D−88038 Friedrichshafen,Germany
【Fターム(参考)】