説明

4,4’−[1−(トリフルオロメチル)アルキリデン]ビス(2,6−ジフェニルフェノール)の調製方法

本発明は、4,4’-[1-(トリフルオロメチル)アルキリデン]ビス(2,6-ジフェニルフェノール)の製造、特に4,4’-[1-(トリフルオロメチル)エチリデン]ビス(2,6-ジフェニルフェノール)の製造のための方法に関し、該方法は、塩基性触媒の存在下でシクロヘキサノンを自己縮合させて三環式縮合産物を生成させ、得られた三環式縮合産物を凝縮相中、担体結合遷移金属触媒の存在下で脱水素して2,6-ジフェニルフェノールを生成させ、そして2,6-ジフェニルフェノールをトリフルオロメチルケトンと反応させることを含む。更に本発明は、シクロヘキサノンのアルドール自己縮合によって2,6-ジフェニルフェノールを製造する改良方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩基性触媒の存在下においてシクロヘキサノンを自己縮合させて三環式縮合産物を生成させ、得られた三環式縮合産物を支持(supported)遷移金属触媒の存在下、凝縮相中で脱水素して2,6-ジフェニルフェノールを生成させ、そして2,6-ジフェニルフェノールをトリフルオロメチルケトンと反応させることを含む、4,4’-[1-(トリフルオロメチル)アルキリデン]ビス(2,6-ジフェニルフェノール)、特に4,4’-[1-(トリフルオロメチル)エチリデン]ビス(2,6-ジフェニルフェノール)の調製方法に関する。本発明は更に、シクロヘキサノンのアルドール自己縮合、およびそれに続く脱水素による、改良された2,6-ジフェニルフェノールの調製方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
4,4’-[1-(トリフルオロメチル)エチリデン]ビス(2,6-ジフェニルフェノール)および4,4’-[1,1-ビス(トリフルオロメチル)メチリデン]ビス(2,6-ジフェニルフェノール)は、米国特許第3,739,035号より公知であり、ポリカーボネートまたはポリエステルの調製のための重要な出発物質として記載されている。これらは2,6-ジフェニルフェノールをそれぞれ過剰量の気体状ヘキサフルオロアセトンまたはメタンスルホン酸中の1,1,1-トリフルオロアセトンと反応させることによって調製される。
【0003】
これらの化合物は、WO 2006/092433号に記載されているように、ビス(ジアリールフェノキシ)アルミニウム化合物の調製のための重要な出発物質でもある。
【0004】
DE 1 643 402号は、シクロヘキサノンの自己縮合によって三環式縮合産物を生成させ、続いてこれらを脱水素することによる、2,6-ジフェニルフェノールの調製方法に関する。ここで、シクロヘキサノンの自己縮合は、200℃までの温度で、触媒として強塩基、好ましくは水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムの水溶液の存在下、溶媒を使用しない条件下で実施する。第二段階で実施する、二環式縮合産物との混合物で得られた三環式縮合産物の脱水素は、350℃までの温度、好ましくは300〜350℃で、脱水素触媒の存在下で実施する。記載された好適な脱水素触媒は支持された白金、パラジウム、ニッケル、ルテニウムおよびロジウム触媒である。
【0005】
DE 1 643 403号は、2または6位にフェニル環の代わりに脂肪族6-員環を有する少なくとも1種の更なるフェノールと共に2,6-ジフェニルフェノールを含む混合物から、2,6-ジフェニルフェノールを結晶化させる方法を開示している。この目的のために、該混合物を75〜99重量%の脂肪族溶媒と1〜25重量%の芳香族溶媒との混合液に溶解し、そして溶液の温度を2,6-ジフェニルフェノールの結晶化温度以下に下げる。
【0006】
DE 2 211 721号は、シクロヘキサノン2分子の脱水素縮合による生成物を不活性支持体上に支持された触媒ベッド中に導入し、縮合物を不活性ガスの存在下、230〜520℃で脱水素させる、オルト-フェニルフェノールの調製方法に関する。この文献はまた、該方法を実施するために好適であり、パラジウム、白金、イリジウムおよびロジウムの1種以上の元素を含み、更にアルカリを含んでいても良い触媒を開示している。
【0007】
この先行技術から出発して、本発明の目的は、特に経済的な方法で、すなわち所望の化合物が非常に高収率で得られ、かつ望ましくない副産物(適切な場合には複雑な方法で分離し、処分もしくは再循環させる必要が生じ得る)の生成がほとんどなく、そしてプロセス工学の観点から非常に有利な方法で、4,4’-[1-(トリフルオロメチル)アルキリデン]ビス(2,6-ジフェニルフェノール)および2,6-ジフェニルフェノールを調製することを可能とする方法を提供することであった。
【発明の概要】
【0008】
上記の目的は、本発明に従い、式(I)の4,4’-[1-(トリフルオロメチル)アルキリデン]ビス(2,6-ジフェニルフェノール)
【化1】

【0009】
[式中、ラジカルRは分岐していないかまたは分岐したC1-C6-アルキルまたはC1-C6-パーフルオロアルキルである。]
を調製する方法であって、以下の段階:
a)シクロヘキサノンを塩基性触媒の存在下で反応させて式(IIa)、(IIb)および/または(IIc)の三環式縮合産物、および水を含む反応混合物を生成させ、
【化2】

【0010】
b)段階a)で生成した反応混合物から式(IIa)、(IIb)および/または(IIc)の化合物を含む三環式縮合産物の混合物を分離し、
c)段階b)で得られた式(IIa)、(IIb)および/または(IIc)の化合物を含む三環式縮合産物を支持遷移金属触媒の存在下、凝縮相中で脱水素して式(III)の2,6-ジフェニルフェノールを含む反応混合物を生成させ、
【化3】

【0011】
d)段階c)で生成した反応混合物から式(III)の2,6-ジフェニルフェノールを分離し、そして
e)段階d)で得られた式(III)の2,6-ジフェニルフェノールを強有機酸の存在下で式(IV)のトリフルオロメチルケトンと反応させて式(I)の4,4’-[1-(トリフルオロメチル)アルキリデン]ビス(2,6-ジフェニルフェノール)を生成させる、
【化4】

【0012】
[ラジカルRは式(I)について規定した通りである。]
を含む、該方法の提供によって達成された。
【0013】
本発明の方法は、式(I)の4,4’-[1-(トリフルオロメチル)アルキリデン]ビス(2,6-ジフェニルフェノール)の調製に好適である。
【化5】

【0014】
[式中、ラジカルRは分岐していない、もしくは分岐したC1-C6-アルキルまたはC1-C6-パーフルオロアルキルである。]
ここで、用語「分岐した、または分岐していないC1-C6-アルキル」は、1〜6個の炭素原子を有する分岐した、または分岐していないアルキルラジカル、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチルまたはヘキシルをいう。好ましいC1-C6-アルキルラジカルはメチル、エチル、イソプロピルであり、特に好ましくはメチルである。用語「分岐した、または分岐していないC1-C6-パーフルオロアルキル」は、1〜6個の炭素原子を有する分岐した、または分岐していないパーフルオロアルキルラジカル、すなわち、全ての水素原子がフッ素原子によって置換されたアルキルラジカル、例えばトリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、ヘプタフルオロプロピル、ヘプタフルオロイソプロピル、ノナフルオロブチルをいう。好ましいC1-C6-パーフルオロアルキルラジカルはトリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、ヘプタフルオロイソプロピル、特に好ましくはトリフルオロメチルである。従って、生じ得る特に好ましい反応生成物は、式(Ia)の4,4’-[1-(トリフルオロメチル)エチリデン]ビス(2,6-ジフェニルフェノール)、および式(Ib)の4,4’-[1,1-(ビストリフルオロメチル)メチリデン]ビス(2,6-ジフェニルフェノール)である。
【化6】

【化7】

【0015】
本発明において特に好ましい反応産物は式(Ia)の4,4’-[1-(トリフルオロメチル)エチリデン]ビス(2,6-ジフェニルフェノール)である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の方法は段階a)〜e)を含む。本発明の方法の段階a)において、塩基性触媒の存在下でシクロヘキサノンの反応を行い、式(IIa)、(IIb)および/または(IIc)の三環式縮合産物:
【化8】

【0017】
および水を含む反応混合物を生成させる。従って、シクロヘキサノンは本発明の方法を実施するための出発物質として働く。これは、市販純度で、すなわち特定の純度、製法もしくは性質を必要とすることなく、通常約95重量%以上、好ましくは99重量%以上の純度で使用することができる。
【0018】
本発明の方法の段階a)に従うシクロヘキサノンの反応は、それ自体当業者に公知であるアルドール縮合(アルドール付加およびこれに続く水の除去)におけるシクロヘキサノン3分子の分子間自己縮合である。これにより、上記の式(IIa)、(IIb)および/または(IIc)の化合物を含む三環式シクロヘキサノンの生成混合物が形成される。言及した混合物は、言及した化合物(IIa)、(IIb)および(IIc)の1種、2種もしくは3種全てを含んでいて良く、更に言及した化合物の更なる異性体、例えばエチレン二重結合が分子のシクロヘキサノン環中にあるものを含んでいても良い。通常、式(IIa)、(IIb)および(IIc)の三環式ケトンの3種全てが言及した生成混合物中に存在する。
【0019】
二環式シクロヘキサノン、特に式(Va)および/または(Vb)のもの:
【化9】

【0020】
も、一般に本発明の方法の段階a)で実施されるシクロヘキサノンの自己縮合における望ましくない副生成物として生成する。しかしながら、これらは、本発明の方法の段階b)で記載するように、式(IIa)、(IIb)および/または(IIc)の三環式反応産物から、好ましくは蒸留によって分離することができ、必要に応じて、段階a)の反応に再循環させることができる。
【0021】
段階a)の反応は、塩基性触媒の存在下、好ましくは無機の、特に強塩基性の触媒の存在下で実施する。塩基性または強塩基性の、特に無機の触媒もしくは塩基として、脱プロトン化によってシクロヘキサノンを少なくとも部分的に対応するエノラートアニオンに変換することができるものを挙げることができる。段階a)の反応は、好ましくは強塩基、特に好ましくはpKbが4未満の塩基の存在下で実施する。この目的のための好ましい強塩基として、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の水酸化物、アルコキシド、水素化物、アミドまたは炭酸塩、例えばリチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウムおよびバリウムの水酸化物、ナトリウムエトキシド、ナトリウムメトキシド、カリウムtert-ブトキシド、ナトリウムおよびカリウムの水素化物、リチウムジイソプロピルアミド、およびまたリチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウムおよびバリウムの炭酸塩を挙げることができる。特に好ましい強塩基はアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物および炭酸塩、非常に特に好ましくはアルカリ金属の水酸化物である。言及した化合物は、純粋な形態で、互いの混合物の形態で、または他の塩基との混合物の形態で使用することができる。これらは固体または溶解した形態、好ましくは水溶液の形態で使用することができる。
【0022】
反応a)で使用する塩基性触媒の量は厳密なものではなく、広い範囲内で変更することができる。しかしながら、経済面を考慮して、触媒を可能な限りの最小量、それぞれ塩基の当量(equivalents)および使用するシクロヘキサノンの量に基づいて、好ましくは20mol%まで、特に好ましくは10mol%まで、非常に特に好ましくは5mol%までの量で使用することが有利である。
【0023】
本発明の方法の段階a)において、塩基性触媒として、アルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物の水溶液、特に好ましくは水酸化ナトリウムの水溶液を使用することが好ましい。選択した塩基を溶液の形態、好ましくは水溶液の形態で使用する場合、これらの溶液の好ましい濃度範囲は約5〜約50重量%(最終溶液に基づく)、特に好ましくは約25〜約50重量%である。
【0024】
段階a)で実施するシクロヘキサノンの自己縮合は、広い温度範囲、通常約70℃〜約200℃の温度で実施することができる。本発明の方法の段階a)を実施するために好ましい温度範囲は90〜180℃の範囲である。
【0025】
使用するシクロヘキサノンの自己縮合が経過する間、すなわち、変換が進行するにつれて、二量体である式(Va)および(Vb)の二環式縮合産物が、2分子のシクロヘキサノンの反応からの一次縮合産物としてまず生成する。これらはシクロヘキサノン自身の沸点よりも高い沸点を有し、所望の式(IIa)、(IIb)および/または(IIc)の三環式縮合産物を生成するために更なるシクロヘキサノン分子と反応しなければならない。
【0026】
本発明に従って特に好ましい本発明の方法の実施形態において、段階a)の反応は、水と共に共沸混合物を形成する溶媒(シクロヘキサノン以外のもの)または溶媒混合物の存在下で実施する。好ましい「水と共に共沸混合物を形成する溶媒」は、反応条件下で不活性であり、大気圧下で約100℃〜約200℃、好ましくは100℃〜150℃の範囲、特に好ましくは110℃〜140℃の範囲、非常に特に好ましくは130℃〜140℃の範囲の沸点を有し、そしてシクロヘキサノンとは異なる溶媒、好ましくは有機溶媒である。特に好ましいものは、シクロヘキサノンの沸点よりも低い沸点(すなわち155℃未満)を有し、個々の溶媒自体の沸点よりも低い沸点 (低沸点共沸混合物)を有する、水と共沸混合物を形成する有機溶媒である。非常に特に好ましいものは、共沸沸点(azeotropic boiling point)がシクロヘキサノンの共沸沸点(95℃)以下である溶媒もしくは溶媒混合物である。十分な反応速度を確保するために、選択した溶媒もしくは溶媒混合物の共沸沸点ができるだけ高温、好ましくは70℃以上、特に好ましくは80℃以上であることが有利である。本発明の方法の段階a)において、本発明に従って特に好ましく使用し得る溶媒は、従って70℃〜95℃、好ましくは80℃〜95℃の範囲、特に好ましくは95℃未満に共沸沸点を有するもの、例えばトルエン、キシレンおよびエチルベンゼンまたはこれらの混合物、好ましくはキシレンである。従って、上記の「水と共に共沸混合物を形成する溶媒」は、添加溶剤(entrainer)ともいうことができる。
【0027】
言及した溶媒は、そのままで、または2種以上の異なる溶媒の混合物の形態で使用することができる。本発明の方法の段階a)においては、1種のみの溶媒、好ましくは水と共に上記の共沸混合物を形成する溶媒を使用することが好ましい。
【0028】
別の好ましい実施形態において、本発明の方法を実施して、シクロヘキサノンのアルドール自己縮合によって段階a)で生成した水を、反応中で使用する溶媒との共沸混合物の形態で蒸留することによって反応混合物から分離する。シクロヘキサノンのアルドール自己縮合で生成した反応からの水、および塩基性触媒の水溶液の形で添加された水の除去は、それ自体当業者に公知である共沸蒸留法によって、反応混合物からの水の分離または除去のために同様に知られた装置、例えば水分離器を使用して実施することができる。水は、完全に、またはほとんど完全に、または部分的にのみ分離除去することができる。しかしながら、所望の上記三環式反応産物の生成を補助するために、生成する化学量論的に予想される量の水(および更に触媒と共に添加されたいかなる量の水)をできる限り完全に分離除去することが好ましい。
【0029】
この好ましい実施形態で使用する、水と共に共沸混合物を形成する溶媒の量は、広い範囲内で選択することができ、種々の因子、特に使用する特定の溶媒もしくは溶媒混合物の選択、および水の分離または除去のために使用する方法または装置に依存し得る。選択される溶媒は通常、経済的な要因を考慮して、使用するシクロヘキサノンの量の5〜100重量%、好ましくは10〜60重量%、特に好ましくは15〜40重量%の量で使用する。
【0030】
これにより、使用する塩基性触媒は別として、本質的に所望の式(IIa)、(IIb)および/または(IIc)の三環式ケトンを、式(Va)および/または(Vb)の二環式縮合産物、および未反応のシクロヘキサノンと共に含む反応混合物が得られる。このようにして得られる反応混合物は、この形態で更に工程にかけることができ、あるいはまず、例えば当業者になじみがあるであろう抽出工程によって処理することができる。酸で処理することによって塩基性触媒の中和をまず行うことが有利である。
【0031】
本発明の方法の段階b)において、式(IIa)、(IIb)および/または(IIc)の化合物を含む三環式縮合産物を、段階a)でこのようにして生成した、場合により処理され、大部分中和された反応混合物から分離する。分離は、当業者にとって好適であると思われる方法、例えばクロマトグラフィーまたは蒸留によって行うことができる。段階b)において、段階a)で得られる反応混合物からの式IIa、IIbおよび/またはIIcの三環式反応産物の分離は、適切な場合には中和および抽出処理の後、好ましくは蒸留の形態で実施する。
【0032】
蒸留による三環式縮合産物の単離は、バッチ式で、半連続的に、または完全に連続的に実施することができる。好ましいものは、バッチまたは半連続的蒸留、特に好ましくはバッチ蒸留の実施である。使用する蒸留カラムの設計はいかなる特別の要件をも満たす必要はない。充填されたカラム、例えば好適なメッシュ充填剤、シートメタル充填剤、または充填成分の不規則なベッド(disordered beds of packing elements)が充填されたカラムを使用することが有利であり得る。蒸留は減圧下で、好ましくは底部の圧力が約1〜約100mbar、特に好ましくは約5〜約30mbar abs.で、かつ最上部の圧力が約1〜約100mbar abs.、特に好ましくは約5〜約20mbar abs.で実施するのが有利である。従って、底部の温度は有利には約200〜約250℃、好ましくは約210〜約230℃であり、最上部の温度は約190〜約220℃、好ましくは約200〜約210℃である。式(IIa)、(IIb)および/または(IIc)の三環式ケトンは高沸点の塔底生成物(bottom product)として得られ、これから低沸点成分、特に式(Va)および/または(Vb)の二環式縮合産物は塔頂生成物(overhead product)として蒸留により分離される。これらは、必要に応じて、本発明の方法の段階a)のシクロヘキサノンのアルドール自己縮合の出発物質として再循環させることができる。
【0033】
本発明の方法の段階c)において、段階b)で得られる式(IIa)、(IIb)および/または(IIc)の化合物を含む三環式縮合産物の脱水素は、凝縮相中、支持遷移金属触媒の存在下で実施して式(III)の2,6-ジフェニルフェノールを含む反応混合物を生成させる。
【化10】

【0034】
本発明の方法の段階c)における脱水素段階は、凝縮した(condensed)、すなわち液状の相中で実施する。ここで、反応させる式(IIa)、(IIb)および/または(IIc)の三環式ケトンを含む混合物、および脱水素産物として得られる式(III)の2,6-ジフェニルフェノール、およびまた、得られる任意の部分的に脱水素された化合物、例えば2-シクロヘキシル-6-フェニルフェノールは、ほとんど、すなわち大部分が液状で存在する。脱水素は通常、高温で、好ましくは約200℃〜約300℃の範囲の温度、すなわち、言及した三環式出発物質または脱水素産物の沸点以下の温度で実施する。脱水素は好ましくは240〜300℃の範囲、特に好ましくは250〜300℃の範囲の温度で実施する。
【0035】
更に、段階c)の脱水素は支持遷移金属触媒の存在下で実施する。好適な支持遷移金属触媒は、原理的には芳香族系を形成するこのような脱水素反応の触媒として当業者に公知のもの全てであり、例えば好適な支持体上にパラジウム、白金、ニッケル、ルテニウム、ロジウムの1種以上の遷移金属を含むものである。段階c)の脱水素は好ましくはパラジウム(Pd)および/または白金(Pt)を支持体上に含む触媒の存在下で実施する。段階c)で使用するのに好ましい触媒は、遷移金属パラジウムおよび白金を、個々に、または互いの混合物の形態で、適切な場合には更なる金属と共に含み得る。触媒活性を有する金属としてパラジウムを含む触媒を使用することが好ましい。言及した金属は、支持された形態、すなわち支持物質としてそれ自体が当業者に公知である物質に塗布した(applied)形態で使用する。好適な支持物質として、例として以下のものを挙げることができる:シリカゲル(SiO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)、炭素、活性炭、酸化ジルコニウム(ZrO2)、二酸化チタン(TiO2)。好ましい実施形態において、本発明の方法の段階c)における脱水素は、Al2O3または炭素支持体、例えば活性炭上に支持されたPd触媒の存在下で実施する。ここで、Al2O3は、例えば、Hollemann Wiberg, Lehrbuch der Anorganischen Chemie, 第102版, de Gruyter, 2007、第1161頁に記載されたように、γ-Al2O3(ガンマ-Al2O3)の形態、δ-Al2O3(デルタ-Al2O3)の形態、θ-Al2O3(シータ-Al2O3)の形態、δ/θ-Al2O3(デルタ/シータ-Al2O3)の形態、またはα-Al2O3(アルファ-Al2O3)の形態で使用することができる。好ましくは、支持体としてγ-Al2O3(ガンマ-Al2O3)を使用する。従って、本発明の目的のために特に好ましい支持触媒は、γ-Al2O3(ガンマ-Al2O3)上のPdである。
【0036】
触媒活性を有する金属、好ましくはパラジウムおよび/または白金は、通常、約0.1〜約20重量%、好ましくは約0.1〜10重量%(それぞれ最終の触媒に基づく)の重量比で支持触媒中に存在する。これらは通常、使用する触媒の型に依存して、脱水素される三環式ケトンの混合物の重量に基づいて1〜40重量%、好ましくは1〜35重量%の量で使用される。
【0037】
本発明に従って使用する支持遷移金属触媒は、当業者に公知の種々の形態で、例えば球状、成型物の形態、または粉末として使用することができる。
【0038】
更なる好ましい実施形態において、段階c)の脱水素は、使用する支持遷移金属触媒に加えて、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の水酸化物または炭酸塩の存在下、例えばリチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウムもしくはバリウムの水酸化物および/またはリチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウムもしくはバリウムの炭酸塩の存在下で実施することができる。言及した塩基性化合物は、使用する1種または複数種の化合物の型に依存して、使用する支持触媒に基づいて通常3〜20重量%の量で使用することができる。あるいはまた、上記のアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の水酸化物または炭酸塩で処理された支持体または支持触媒を使用することも可能である。
【0039】
段階c)の脱水素は一般的に速く進行し、言及した反応温度で通常約24時間後、しばしば約12時間以内に実質的に完了する。脱水素により、完全に脱水素された化合物、式(III)の2,6-ジフェニルフェノールを、一般的に脱水素されていないか、または部分的にのみ脱水素された三環式ケトンと共に含む反応混合物が得られる。
【0040】
上記の不均質な(heterogeneous)脱水素触媒は、当業者になじみのある方法、例えば濾過または遠心分離、好ましくは濾過によって分離することができる。上記の支持遷移金属触媒を使用する場合、特に支持体上にパラジウム (Pd) および/または白金 (Pt)を含む上記の触媒を使用する場合、段階c)の反応後に分離された触媒が一般に尚高い活性を有することが見出された。従ってこれらは有利には、好ましくは段階c)のような更なる反応において再利用することができる。本発明の方法の好ましい実施形態において、段階c)で使用する触媒は、従って反応を実施した後に反応混合物から分離され、段階c)のような1以上の更なる反応で再利用される。
【0041】
それぞれの反応で回収した触媒は、原理的には所望の活性を尚保持する限り長期間かつ高頻度で使用することができる。これは一般的に個々の場合で選択した触媒、選択した出発物質、および反応条件に依存する。支持体上にパラジウム(Pd)および/または白金(Pt)、特にパラジウム(Pd)を含む触媒を使用する場合、これは通常10回以上まで、しかし少なくとも5回まで、または4回まで、脱水素反応における活性または選択性の感知され得る程の低下を生じることなく、再循環、すなわち再利用することができる。
【0042】
本発明において好ましい、上記の段階c)のアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の水酸化物または炭酸塩の添加によって、個々の場合で使用する支持遷移金属触媒の活性、作動寿命または再利用性に有利な効果を付与することもできる。アルカリ金属またはアルカリ土類金属の炭酸塩、好ましくはナトリウムおよび/またはカリウムの炭酸塩、特に好ましくは炭酸カリウム(K2CO3)の添加は、特に、活性の上昇、従って使用する特定の支持触媒の再利用性の向上につながり得る。この効果は、支持パラジウム触媒を使用する反応、特に触媒として特に好ましいγ-Al2O3(ガンマ-Al2O3) 上Pdを使用する反応において特に顕著である。特に好ましい実施形態において、本発明の方法の段階c)は、従って支持遷移金属触媒としてのγ-Al2O3(ガンマ-Al2O3)上Pdの存在下、かつアルカリ金属炭酸塩の存在下、好ましくは炭酸カリウムの存在下で実施する。
【0043】
本発明の方法の段階d)において、段階c)で生成した反応混合物からの式(III)の2,6-ジフェニルフェノールの分離を実施する。段階d)の分離は、原理的に、物質の分離をもたらすための慣用の方法、例えば蒸留、クロマトグラフィーまたは結晶化によって実施することができる。望ましくない、脱水素されていないか、または部分的にのみ脱水素された三環式ケトンから、2,6-ジフェニルフェノールを結晶化によって分離することが有利であることが見出された。この目的のために好適であることが見出された溶媒は、適切な場合には1〜4個の炭素原子を有する低級脂肪族アルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールもしくはブタノールと、または5個までの炭素原子を有するケトン、エーテルもしくはエステル、例えばアセトン、tert-ブチルメチルエーテルまたは酢酸エチルと混合した、8個までの炭素原子を有する低級炭化水素、例えばペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレンである。段階d)に従って、2,6-ジフェニルフェノールの単離をヘプタンまたはヘプタン含有溶媒混合物からの結晶化の形態で実施することが特に有利であることが見出された。純粋なヘプタン、または体積比約20:1〜約30:1のヘプタンおよびイソプロパノールの混合物が溶媒または溶媒の組み合わせとして特に有用であることが見出された。用語「ヘプタン」は、n-ヘプタンおよびその異性体、例えば2-メチルヘキサン、3-メチルヘキサン、2,2-ジメチルペンタン、2,3-ジメチルペンタン、2,4-ジメチルペンタン、3,3-ジメチルペンタン、3-エチルペンタン、2,2,3-トリメチルブタンまたはこれらの混合物も包含する。
【0044】
上記の結晶化によって得られた式(III)の2,6-ジフェニルフェノールを、続いて慣用の方法、好ましくは濾過または遠心分離によって、母液から分離することができる。
【0045】
このようにして、式 (III)の2,6-ジフェニルフェノールは、純粋な形態、すなわち少なくとも98重量%、しばしば少なくとも99重量%の純度で得ることができる。この物質は、更なる段階または反応で分離することが困難であり、かつ望ましくない生成混合物および二次的な反応につながるであろう、望ましくない、脱水素されていないか、または部分的にのみ脱水素された三環式ケトンが少ない。
【0046】
本発明の方法の段階e)において、段階d)で得られた式(III)の2,6-ジフェニルフェノールを式(IV)のトリフルオロメチルケトンと強有機酸の存在下で反応させて式(I)の4,4’-[1-(トリフルオロメチル)アルキリデン]ビス(2,6-ジフェニルフェノール)を生成させる。
【化11】

【0047】
[式中ラジカルRは式(I)について規定した通りである。]
所望の標的化合物に依存して、段階a)〜d)に従って調製された2,6-ジフェニルフェノールを、段階e)において式(IV)のトリフルオロメチルケトンと反応させるが、ここでラジカルRは式(I)の化合物について先に記載したようにC1-C6-アルキルまたはC1-C6-パーフルオロアルキルであり得る。本発明において特に好ましい式(Ia)および(Ib)の反応産物を調製するためには、段階d)で得られた2,6-ジフェニルフェノールを従って式(IVa)の1,1,1-トリフルオロアセトン
【化12】

【0048】
または式(IVb)のヘキサフルオロアセトン
【化13】

【0049】
と反応させる。
【0050】
いずれの試薬も、純度または製造工程の点で特定の要件を必要とすることなく、市販の形態で使用することができる。式(IVb)のヘキサフルオロアセトンは、好ましくは反応混合物中に気体の状態で通過させる。
【0051】
選択されたトリフルオロメチルケトンは、有利には反応の化学量論に従って、好ましくはわずかに過剰量で使用される。化合物2,6-ジフェニルフェノールおよび選択された式(IV)のトリフルオロメチルケトンは、通常約1:1〜約2:1、好ましくは約2.0:1.2〜約2.0:1.1のモル比で使用する。
【0052】
段階e)の反応は、強有機酸、好ましくはpKaが2まで、特に好ましくはpKaが-1〜2の範囲、非常に特に好ましくはpKaが1〜2の範囲の有機酸の存在下で実施する。段階e)で使用することができる好ましい有機酸として、スルホン酸、特にアルキルスルホン酸またはフェニルスルホン酸が挙げられる。好ましいスルホン酸は、例えばメタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、パラ-トルエンスルホン酸であり、特に好ましくはメタンスルホン酸またはトリフルオロメタンスルホン酸であり、非常に特に好ましくはメタンスルホン酸である。
【0053】
選択した強有機酸、好ましくはメタンスルホン酸またはトリフルオロメタンスルホン酸、特に好ましくはメタンスルホン酸は、好ましい実施形態において希釈せずに(100%濃度で)使用する。酸は通常、反応させる2,6-ジフェニルフェノールの量に対してかなり過剰量で使用する。一般に、経済面を考慮して、選択した酸の2,6-ジフェニルフェノールに対する重量比は約10:1〜約30:1、好ましくは約10:1〜約20:1で選択される。
【0054】
段階e)に従って反応を実施するために、選択した試薬は、通常0〜100℃の範囲の温度で、任意の順序で互いに接触させることができる。段階e)に従う反応は、好ましくは10〜60℃の範囲、特に好ましくは20〜50℃の範囲の温度で実施する。その後、反応は、通常10〜24時間の反応時間の後にほぼ完了する。
【0055】
一般に固体で得られる式(I)の標的化合物は、得られた反応混合物から通常の分離方法、好ましくは濾過、または好ましくはトルエン、キシレンもしくはエチルベンゼンまたはこれらの混合物による抽出によって単離することができる。好ましい実施形態において、本発明の方法は、段階e)で生成する式(I)の4,4’-[1-(トリフルオロメチル)アルキリデン]ビス(2,6-ジフェニルフェノール)を得られた反応混合物から抽出によって分離する。この実施形態において特に好ましい抽出剤はトルエンである。このようにして、使用する有機酸、好ましくは使用するメタンスルホン酸またはトリフルオロメタンスルホン酸を回収し、必要に応じて、好ましくは本発明の方法の段階e)の更なる反応で再利用することができる。使用した抽出剤、好ましくはトルエンは、この好ましい実施形態において実施される抽出後に回収されるメタンスルホン酸に溶解しており、1,1,1-トリフルオロアセトンおよびトルエンとの二次的な反応を避けるために蒸留によって分離することができる。
【0056】
従って本発明の方法は、更なる任意段階f)において、段階e)で得られた反応混合物から式(I)の標的化合物を分離することを含む。所望の標的化合物は通常95重量%以上の純度、好ましくは97重量%以上の純度で得られる。
【0057】
従って本発明の方法は、所望の式(I)の標的化合物、特に本発明の目的のために好ましい標的化合物である式(Ia)および(Ib)の化合物への効果的な経路を提供する。本発明の方法により、上記の化合物を高い総収量かつ高純度で調製することが可能となる。
【0058】
更なる態様において、本発明は式(III)の2,6-ジフェニルフェノール
【化14】

【0059】
を調製する方法であって、以下の段階:
i)シクロヘキサノンを塩基性触媒の存在下で反応させて式(IIa)、(IIb)および/または(IIc)の三環式縮合産物を含む反応混合物および水を、水と共に共沸混合物を形成するシクロヘキサノン以外の溶媒または溶媒混合物の存在下で生成させ、
【化15】

【0060】
生成した水を反応中で使用する溶媒との共沸混合物の形態で蒸留することによって反応混合物から分離し、
ii)段階i)で生成した反応混合物から式(IIa)、(IIb)および/または(IIc)の化合物を含む三環式縮合産物の混合物を分離し、そして
iii)段階ii)で得られた式(IIa)、(IIb)および/または(IIc)の化合物を含む三環式縮合産物を凝縮相中、支持遷移金属触媒の存在下で脱水素して式(III)の2,6-ジフェニルフェノールを含む反応混合物を生成させる
【化16】

【0061】
を含む、該方法を提供する。
【0062】
本発明のこの態様は、従って上記の方法の段階a)〜c)に対応して、塩基性触媒の存在下、水と共に共沸混合物を形成する(かつシクロヘキサノンと異なる)溶媒または溶媒混合物の存在下で段階i)に従ってシクロヘキサノンの自己縮合を実施し、生成した水を反応中で使用する溶媒との共沸混合物の形態で蒸留することによって反応混合物から分離する、2,6-ジフェニルフェノールの調製方法に関する。
【0063】
用語「水と共に共沸混合物を形成する溶媒」は、上記の段階a)と同じ一般的かつ好ましい意味を有し得る。従って、本発明のこの態様の目的のために使用する用語「水と共に共沸混合物を形成する溶媒」はまた、反応条件下で不活性であり、大気圧下で約100℃〜約200℃、好ましくは100〜150℃の範囲、特に好ましくは110〜140℃の範囲、非常に特に好ましくは130〜140℃の範囲の沸点を有し、そしてシクロヘキサノンとは異なる、好ましくは有機溶媒をいう。特に好ましいものは、シクロヘキサノンの沸点より低い沸点(すなわち155℃未満)を有し、個々の溶媒自体よりも低い沸点を有する (低沸点共沸混合物)、水と共に共沸混合物を形成する有機溶媒である。これらのうち、非常に特に好ましいものは、その共沸沸点がシクロヘキサノンの共沸沸点(95℃)以下である溶媒または溶媒混合物である。十分な反応速度を確保するために、選択する溶媒または溶媒混合物の共沸沸点ができるだけ高温であり、好ましくは70℃以上、特に好ましくは80℃以上であることが有利である。本発明の方法の段階a)で本発明に従って特に好ましく使用される溶媒は、従って70℃〜95℃の範囲、好ましくは80℃〜95℃、特に好ましくは95℃未満の共沸沸点を有するもの、例えばトルエン、キシレンおよびエチルベンゼンまたはこれらの混合物、好ましくはキシレンである。言及した「水と共に共沸混合物を形成する溶媒」は、従って添加溶剤ということもできる。
【0064】
言及した溶媒は、そのままで、または2種以上の異なる溶媒の混合物の形態で使用することができる。本発明の方法の段階i)において、1種のみの溶媒、好ましくは上記の水と共に共沸混合物を形成するものを使用することが好ましい。
【0065】
本発明のこの態様に従い、本発明の方法の段階i)は、シクロヘキサノンのアルドール自己縮合によって生成する水を、反応中に使用する溶媒との共沸混合物の形態で蒸留することによって反応混合物から分離するように実施する。シクロヘキサノンのアルドール自己縮合で生成する反応からの水、および適切な場合には、塩基性触媒の水溶液の形態で添加される水の除去は、それ自体当業者に公知の共沸蒸留法によって、反応混合物から水を分離もしくは除去するための同様に公知の装置、例えば水分離器を使用して実施することができる。水は完全に、ほぼ完全に、または部分的にのみ除去することができる。しかしながら、言及した所望の三環式反応産物の生成を補助するために、生成する化学量論的に予想される量の水 (およびまた触媒と共に添加される任意の量の水)をかなりの程度まで分離除去することが好ましい。
【0066】
本発明のこの態様に従って使用する水と共に共沸混合物を形成する溶媒の量は、広い範囲内で選択することができ、種々の因子、特に使用する特定の溶媒または溶媒混合物の選択、および水の分離もしくは除去のために使用する方法または装置に依存し得る。選択される溶媒は通常、経済的な要因を考慮して、使用するシクロヘキサノンの量に基づき、5〜100重量%、好ましくは10〜60重量%、特に好ましくは15〜40重量%の量で使用する。
【0067】
段階i)で使用する塩基性触媒、およびこの段階の更なる特徴に関して、全ての好ましい実施形態及びこれらの組み合わせを含め、段階a)の上記の記載全てを参照する。
【0068】
従って、段階i)における反応は一般に、塩基性触媒の存在下、好ましくは無機の、特に強塩基触媒の存在下で実施する。塩基性または強塩基性の、特に無機の触媒または塩基として、シクロヘキサノンを、脱プロトン化によって対応するエノラートアニオンに少なくとも部分的に変換することができるものを挙げることができる。段階i)の反応は、好ましくは強塩基、特に好ましくはpKbが4未満の塩基の存在下で実施する。この目的のために好ましい強塩基として、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の水酸化物、アルコキシド、水素化物、アミドまたは炭酸塩、例えばリチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウムおよびバリウムの水酸化物、ナトリウムエトキシド、ナトリウムメトキシド、カリウムtert-ブトキシド、ナトリウムおよびカリウムの水素化物、リチウムジイソプロピルアミド、またリチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウムおよびバリウムの炭酸塩を挙げることができる。特に好ましい強塩基はアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物および炭酸塩、非常に特に好ましくはアルカリ金属の水酸化物である。言及した化合物は、純粋な形態、互いの混合物の形態、または他の塩基との混合物の形態で使用することができる。これらは、固体もしくは溶解した形態、好ましくは水溶液の形態で使用することができる。
【0069】
本発明の方法の段階i)においても、塩基性触媒としてアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物の水溶液、特に好ましくは水酸化ナトリウム水溶液を使用することが好ましい。選択した塩基を溶液の形態、好ましくは水溶液の形態で使用する場合、溶液の好ましい濃度範囲は(最終溶液に基づいて)約5〜約50重量%、特に好ましくは約25〜約50重量%である。
【0070】
本発明のこの態様で記載する2,6-ジフェニルフェノールを調製するための方法の段階ii)およびiii)はまた、式(I)の4,4’-[(1-トリフルオロメチル)アルキリデン]ビス(2,6-ジフェニルフェノール)を調製するための上記の方法の段階b)およびc)に対応する。段階ii)に従って実施する、段階i)で生成した反応混合物からの式(IIa)、(IIb)および/または(IIc)の化合物を含む三環式縮合産物の混合物の分離、および段階iii)に従って実施する、段階ii)で得られた式(IIa)、(IIb)および/または(IIc)の化合物を含む三環式縮合産物を凝縮相中、支持遷移金属触媒の存在下で脱水素して式 (III)の2,6-ジフェニルフェノールを生成させることは、従って、全ての好ましい実施形態及びこれらの組み合わせを含め、段階b)およびc)について上記したようにして実施することができる。従って、段階iii)は、上記のように支持遷移金属触媒の存在下で実施することもできる。ここで、好適な支持遷移金属触媒は、原理的には芳香系を形成するこのような脱水素反応の触媒として当業者に公知のもの全てであり、例えば好適な支持体上にパラジウム、白金、ニッケル、ルテニウム、ロジウムの1種以上の遷移金属を含むものである。段階iii)の脱水素は、好ましくは支持体上にパラジウム(Pd)および/または白金 (Pt)を含む触媒の存在下で実施する。段階c)で好ましく使用される触媒は、遷移金属パラジウムおよび白金を、それぞれの場合に個々に、または互いの混合物の形態で、場合によって更なる金属と共に、含むことができる。触媒活性のある金属としてパラジウムを含む触媒を使用することが好ましい。言及した金属は、支持された形態、すなわち支持物質としてそれ自体が当業者に公知である物質に塗布された形態で使用する。好適な支持物質として、例として以下のものを挙げることができる:シリカゲル(SiO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)、炭素、活性炭、酸化ジルコニウム(ZrO2)、二酸化チタン(TiO2)。好ましい実施形態において、本発明の方法の段階iii)の脱水素は、Al2O3または炭素支持体、例えば活性炭上に支持されたPd触媒の存在下で実施する。ここで、Al2O3は、γ-Al2O3(ガンマ-Al2O3)の形態、δ-Al2O3(デルタ-Al2O3)の形態、θ-Al2O3(シータ-Al2O3)の形態、δ/θ-Al2O3(デルタ/シータ-Al2O3)の形態、またはα-Al2O3(アルファ-Al2O3)の形態で使用することができる。支持体としてγ-Al2O3(ガンマ-Al2O3)を使用することが好ましい。従って、本発明の目的のために特に好ましい支持触媒はγ-Al2O3(ガンマ-Al2O3)上のPdである。
【0071】
触媒活性のある金属、好ましくはパラジウムおよび/または白金は、通常約0.1〜約20重量%、好ましくは約0.1〜10重量% (それぞれ最終の触媒に基づく)の重量比で支持触媒中に存在する。これらは通常、使用する触媒の型に依存して、脱水素する三環式ケトンの混合物の重量に基づいて1〜40重量%、好ましくは1〜35重量%の量で使用される。
【0072】
更なる好ましい実施形態において、段階iii)の脱水素は、使用する支持遷移金属触媒に加えて、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の水酸化物または炭酸塩の存在下、例えばリチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウムもしくはバリウムの水酸化物および/またはリチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウムもしくはバリウムの炭酸塩の存在下で実施することができる。言及した塩基性化合物は、使用する1種または複数種の化合物の型に依存して、使用する支持触媒に基づいて通常3〜20重量%の量で使用することができる。あるいはまた、上記したようにアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の水酸化物または炭酸塩で前処理した支持体または支持触媒を使用することもできる。
【0073】
ここで、それぞれの反応で回収された触媒は、原理的にはそれが所望の活性を尚有する限り、長期間かつ高頻度で使用することができる。これは一般的に、個々の場合に選択した触媒、選択した出発物質、および反応条件に依存する。支持体上にパラジウム(Pd) および/または白金(Pt)、特にパラジウム(Pd)を含む触媒を使用する場合、これは通常、脱水素反応における活性または選択性の感知され得る低下を生じることなく、約10回以上まで、しかし少なくとも5回まで、または4回まで再循環、すなわち再利用することができる。
【0074】
本発明において好ましい、段階iii)の上記アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の水酸化物または炭酸塩の添加によって、個々の場合に使用する支持遷移金属触媒の活性、作動寿命または再利用性に有利な効果を付与することもできる。アルカリ金属またはアルカリ土類金属の炭酸塩、好ましくはナトリウムおよび/またはカリウムの炭酸塩、非常に特に好ましくは炭酸カリウム(K2CO3)の添加は、特に、個々の場合に使用する支持触媒の活性上昇、従って再利用性の改善につながり得る。この効果は、支持パラジウム触媒を使用する反応、特に触媒として特に好ましいγ-Al2O3(ガンマ-Al2O3)上Pdを使用する反応で特に顕著である。特に好ましい実施形態において、本発明の方法の段階iii)は、従って支持遷移金属触媒としてγ-Al2O3(ガンマ-Al2O3)上Pdの存在下、かつアルカリ金属炭酸塩の存在下、好ましくは炭酸カリウムの存在下で実施する。
【0075】
必要であれば、段階iii)で生成した反応混合液から式(III)の2,6-ジフェニルフェノールを分離することに係る更なる段階iv)を段階iii)の後に実施することができる。この更なる段階iv)は、式(I)の化合物を調製するための上記の方法の段階d)に対応し、従って、全ての好ましい実施形態およびそれらの組み合わせを含め、段階d)について記載したようにして実施することができる。
【0076】
以下の実施例は、いかなる意味においても本発明を制限する意図なしに本発明を説明するものである。
【0077】
ガスクロマトグラフィー分析は以下の方法で実施した:
30 m RTX 200, ID. 0.25 mm, FD: 0.50μm; 200℃, 3℃/分 - 290℃; tR (分) tR (式 (Va, Vb)の二環式ケトン): 8.4, 8.8; tR (式(IIa, IIb, IIc)の三環式ケトン): 17.1, 18.2, 18.5; tR (2-シクロヘキシル-6-フェニルフェノール): 15.2; tR (2,6-ジフェニルフェノール): 18.7; tR (α-フェニルジベンゾフラン): 21.6。得られた粗生成物の濃度(重量%)は、内部標準を使用したGC分析によって決定した。
【0078】
HPLC 分析は以下の方法で実施した: CC250/4 Nucleodur C18 Gravity, 5μm; C: 水 - 0.05% H3PO4; D: アセトニトリル 20:80; アウトレット:93 bar, 25℃; tR (分) tR (2,6-ジフェニルフェノール): 4.8; tR (4,4’-[1-(トリフルオロメチル)エチリデン]ビス(2,6-ジフェニルフェノール)): 14.5。
【実施例1】
【0079】
シクロヘキサノンの自己縮合
900 g (9.1 mol) のシクロヘキサノンを190gのキシレンと共に室温でフラスコに入れた。続いて33 g (0.21 mol) のNaOH溶液 (25%) を添加した。反応溶液を還流下で撹拌した。7時間かけて反応混合液の温度を120〜180℃に上昇させ、水分離器を使用して126 mlの水を除去した。その後、反応溶液を室温まで冷却した。
【0080】
反応溶液の処理(work up)のために、この溶液に500 gの水を添加し、溶液を11 gのH3PO4 (85%)で中和した。90℃で相分離させた。続いて有機相を90℃で500gのNaHCO3 溶液 (2%)で洗浄した。相分離は同様に90℃で実施した。
【0081】
これにより、以下の組成を有する965 gの粗生成物が得られた:三環式ケトン (式 (IIa、IIb、IIc)):48.3%;二環式ケトン (式 (Va、Vb)): 24.6% (それぞれGC-重量%)。
【0082】
粗生成物(965 g)を、1mのSulzer DX パッキン(理論段数:約20)を備え、内径が50 mmであり、蒸留ポットおよびポンプ循環型薄膜式エバポレーター(0.1m2)を備えた実験室用ガラス製カラムでバッチ蒸留した。二環式ケトン(式 (Va、Vb))は20 mbar、最上部の温度144℃で留出し、三環式ケトン (式 (IIa、IIb、IIc)) (最上部の温度: 212℃;20 mbar)から分離した。式 (Va、Vb) の二環式ケトンの収量は223 g (27%) であり、式(IIa、IIb、IIc)の三環式ケトンの収量は410 gであった(理論値の50%;96 GC-重量%)。
【実施例2】
【0083】
式 (Va, Vb)の二環式ケトンの再循環
360 g (3.0 mol) のシクロヘキサノンおよび300 g (1.67 mol) の式 (Va、Vb)の二環式ケトンを140 gのキシレンと共に室温でフラスコに入れた。続いて22.4 g (0.14 mol) のNaOH 溶液 (25%) を添加した。反応溶液を還流下で撹拌した。5時間かけて温度を120〜180℃に上昇させ、水分離器を使用して62mlの水を除去した。赤色の反応溶液を室温まで冷却し、実施例 1に記載したような処理を行った。
【0084】
これにより、以下の組成を有する728 gの粗生成物が得られた:三環式ケトン (式 (IIa、IIb、IIc):45.7%;二環式ケトン (式 (Va、Vb)):27.0%;キシレン:14.5%;シクロヘキサノン:3% (それぞれGC-重量%)。
【0085】
実施例3〜5:式 (IIa、IIb、IIc)の三環式ケトンを脱水素して式 (III)の2,6-ジフェニルフェノールを生成させる。
【実施例3】
【0086】
10gのPd/Al2O3 触媒 (直径3mmの球状形態のθ-Al2O3 (シータ-Al2O3) 支持体上0.5重量%のパラジウム) を30 g (0.11 mol) の式 (IIa、IIb、IIc)の三環式ケトン (97%) および0.3 gのNaOH と共に室温でフラスコに入れた。懸濁液を290〜300℃で4時間撹拌した。反応混合液を室温まで冷却した後、反応混合液を200mlのヘプタンと混合した。反応溶液を90℃に加熱し、その後触媒を濾過して除き、100mlのヘプタンで洗浄した。粗生成物をロータリーエバポレーターでエバポレートした。
【0087】
これにより、以下の組成を有する粗生成物が得られた:2,6-ジフェニルフェノール: 71.3%、式 (IIa、IIb、IIc)の三環式ケトン:8.2% (それぞれGC-重量%) および2-シクロヘキシル-6-フェニルフェノール:5.0 GC-面積%。ヘプタン (120 ml) からの結晶化により、2,6-ジフェニルフェノール産物を62%の収率で単離した (17.8 g、97 GC-重量%)。
【実施例4】
【0088】
10gのPd/Al2O3 (長さ4 mmの成型物の形態のγ-Al2O3 (ガンマ−Al2O3) 支持体上0.72重量%のパラジウム) を30g(0.11 mol) の式 (IIa、IIb、IIc)の三環式ケトン (97%) および0.3 g のNaOHと共に室温でフラスコに入れた。懸濁液を290〜300℃で8時間撹拌した。反応混合液を95℃まで冷却し、200mlのヘプタンと混合し、実施例 3に記載したような処理を行った。
【0089】
これにより、以下の組成を有する粗生成物が得られた:2,6-ジフェニルフェノール: 44.8%、式 (IIa、IIb、IIc)の三環式ケトン:4.9% (それぞれGC-重量%) および2-シクロヘキシル-6-フェニルフェノール:12.3 GC-面積%。
【0090】
ヘプタンからの結晶化により、2,6-ジフェニルフェノール産物を34%の収率で単離した (9.5 g、99 GC-面積%)。
【実施例5】
【0091】
10gのPd/Al2O3 (長さ4 mmの成型物の形態のγ-Al2O3 (ガンマ-Al2O3) 支持体上0.72重量%のパラジウム) を30 g (0.11 mol) の式 (IIa、IIb、IIc)の三環式ケトン (97%) および1.5 g のK2CO3と共に室温でフラスコに入れた。懸濁液を290〜300℃で8時間撹拌した。反応混合液を90℃まで冷却し、200mlのヘプタンと混合し、実施例3に記載のような処理を行った。
【0092】
これにより、以下の組成を有する粗生成物が得られた:2,6-ジフェニルフェノール: 47.3%、式 (IIa、IIb、IIc)の三環式ケトン:5.8% (それぞれGC-重量%) およびα-フェニルジベンゾフラン:13.6 GC-面積%。ヘプタンからの結晶化により、2,6-ジフェニルフェノール産物を44%の収率で単離した(12.5 g、99 GC-面積%)。
【実施例6】
【0093】
10g のPd/Al2O3触媒 (長さ4 mmの成型物の形態のγ-Al2O3 (ガンマ-Al2O3) 支持体上0.72重量%のパラジウム) を30 g (0.12mol) の式 (IIa、IIb、IIc)の三環式ケトン (97%)と共に室温でフラスコに入れた。懸濁液を290〜300℃で8時間撹拌した。
【0094】
これにより、以下の組成を有する粗生成物が得られた:2,6-ジフェニルフェノール: 25.7%、式 (IIa、IIb、IIc)の三環式ケトン:10.3% (それぞれGC-重量%) および2 シクロヘキシル-6-フェニルフェノール:34.6 GC-面積%。
【実施例7】
【0095】
0.24gの5% Pd/C触媒および15g (0.06 mol) の式(IIa、IIb、IIc)の三環式ケトン (97%) を室温でフラスコに入れた。懸濁液を290〜300℃で2時間撹拌した。懸濁液を冷却し、25℃において、50mlのアセトンで希釈した。触媒を濾過して除き、粗生成物をロータリーエバポレーターでエバポレートした。その後、粗生成物(13g)から、ヘプタン/イソプロパノール (25:1) からの2段階の結晶化によって2,6-ジフェニルフェノール産物を50%の収率で単離した (7g、99GC-面積%)。
【実施例8】
【0096】
13.3gのPd/Al2O3 (実施例5から得たもの)を30g (0.11mol) の式(IIa、IIb、IIc)の三環式ケトン (97%)と共に室温でフラスコに入れた。懸濁液を295℃で8時間撹拌した。反応混合液を60℃まで冷却し、次いで200 mlのヘプタンと混合し、実施例3に記載のような処理を行った。分離・除去した触媒は次の脱水素反応で再利用した。
【0097】
これにより、以下の組成を有する粗生成物(24.5g)が得られた:2,6-ジフェニルフェノール:54.3%、式 (IIa, IIb, IIc)の三環式ケトン:8.2% (それぞれGC-重量%) および2-シクロヘキシル-6-フェニルフェノール:6.9 GC-面積%およびα-フェニルジベンゾフラン:6.3 GC-面積%。
【実施例9】
【0098】
4,4'-[1-(トリフルオロメチル)エチリデン]ビス(2,6-ジフェニルフェノール)の合成
61.5 g (0.25 mol) の2,6-ジフェニルフェノールおよび875 gのメタンスルホン酸 (100%) をフラスコに入れた。続いて15.4 g (0.14 mol) の1,1,1-トリフルオロアセトンを20℃で添加した。反応を完了させるために、懸濁液を45℃で10時間撹拌した。その後、懸濁液を20℃まで冷却し、濾過した。フィルターケーキが中性になるまで蒸留水(毎回730 g)で洗浄し、乾燥した。これにより、71 g (理論値の97%) の4,4’-[1-(トリフルオロメチル)エチリデン]ビス(2,6-ジフェニルフェノール) を白色粉末の形態で得た(HPLC-重量%:98%)。
【実施例10】
【0099】
325 g (1.31 mol) の2,6-ジフェニルフェノール (99%) および2400 gのメタンスルホン酸 (100%) を二重壁反応管に20℃で入れた。懸濁液を81.3 g (0.73 mol) の1,1,1-トリフルオロアセトンと混合し、50℃で10時間撹拌した。反応終了後、懸濁液を4200 gのトルエンと混合し、反応混合液を50℃で30分間撹拌した。50℃で相分離させ、トルエン相を1680 gの水、1680gの2%濃度の炭酸ナトリウム溶液、および1680 g の水で洗浄した。溶媒のトルエンを蒸留で除いた。これにより、376 g (理論値の95%)の4,4’-[1-(トリフルオロメチル)エチリデン]ビス(2,6-ジフェニルフェノール) を白色粉末の形態で得た (HPLC-重量%:97%)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の4,4’-[1-(トリフルオロメチル)アルキリデン]ビス(2,6-ジフェニルフェノール)
【化1】

[式中、ラジカルRは分岐していないか、もしくは分岐したC1-C6-アルキルまたはC1-C6-パーフルオロアルキルである。]
の調製方法であって、以下の段階:
a)シクロヘキサノンを塩基性触媒の存在下で反応させて式(IIa)、(IIb)および/または(IIc)の三環式縮合産物を含む反応混合物および水を生成させ、
【化2】

b)段階a)で生成した反応混合物から式(IIa)、(IIb)および/または(IIc)の化合物を含む三環式縮合産物の混合物を分離し、
c)段階b)で得られた式(IIa)、(IIb)および/または(IIc)の化合物を含む三環式縮合産物を、凝縮相中、支持(supported)遷移金属触媒の存在下で脱水素して式(III)の2,6-ジフェニルフェノールを含む反応混合物を生成させ、
【化3】

d)段階c)で生成した反応混合物から式(III)の2,6-ジフェニルフェノールを分離し、そして
e)段階d)で得られた式(III)の2,6-ジフェニルフェノールを式(IV)のトリフルオロメチルケトンと強有機酸の存在下で反応させて式(I)の4,4’-[1-(トリフルオロメチル)アルキリデン]ビス(2,6-ジフェニルフェノール)を生成させる、
【化4】

[式中ラジカルRは式(I)について規定した通りである。]
を含む、該方法。
【請求項2】
アルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物の水溶液を段階a)における塩基性触媒として使用する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
水酸化ナトリウム水溶液を段階a)における塩基性触媒として使用する、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
段階a)の反応を90〜180℃の範囲の温度で実施する、請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
段階a)の反応を、水と共沸混合物を形成する溶媒または溶媒混合物の存在下で実施する、請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
段階a)で生成した水を、反応中に使用する溶媒または溶媒混合物と共沸混合物の形態で蒸留することによって反応混合物から分離する、請求項5記載の方法。
【請求項7】
キシレン、トルエンもしくはエチルベンゼンまたはこれらの混合物を溶媒として使用する、請求項5または6記載の方法。
【請求項8】
段階b)の分離を蒸留によって実施する、請求項1〜7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
段階c)の脱水素を、支持体上にパラジウムおよび/または白金を含む触媒の存在下で実施する、請求項1〜8のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
段階c)の脱水素を、Al2O3または炭素支持体上に支持されたPd触媒の存在下で実施する、請求項1〜9のいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
段階c)の脱水素を、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の水酸化物または炭酸塩の存在下で実施する、請求項1〜10のいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
段階d)の2,6-ジフェニルフェノールの単離を結晶化によって実施する、請求項1〜11のいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
段階e)の反応を10〜60℃の範囲の温度で実施する、請求項1〜12のいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
段階e)の反応を、pKaが2までの有機酸の存在下で実施する、請求項1〜13のいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
段階e)の反応をメタンスルホン酸の存在下で実施する、請求項1〜14のいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
段階e)において、2,6-ジフェニルフェノールおよび式(IV)のトリフルオロメチルケトンを1:1〜2:1のモル比で使用する、請求項1〜15のいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
ラジカルRがメチルまたはトリフルオロメチルである、請求項1〜16のいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
ラジカルRがメチルである、請求項1〜17のいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
段階e)で生成した式(I)の4,4’-[1-(トリフルオロメチル)アルキリデン]ビス(2,6-ジフェニルフェノール)を、得られた反応混合物から抽出によって分離する、請求項1〜18のいずれか1項記載の方法。
【請求項20】
式(III)の2,6-ジフェニルフェノール
【化5】

の調製方法であって、以下の段階:
i)シクロヘキサノンを塩基性触媒の存在下、水と共沸混合物を形成するシクロヘキサノン以外の溶媒または溶媒混合物の存在下で反応させて式(IIa)、(IIb)および/または(IIc)の三環式縮合産物を含む反応混合物および水を生成させ、
【化6】

生成する水を、反応中に使用する溶媒または溶媒混合物との共沸混合物の形態で蒸留することによって反応混合物から分離し、
ii)段階i)で生成した反応混合物から式(IIa)、(IIb)および/または(IIc)の三環式縮合産物の混合物を分離し、そして
iii)段階ii)で得られた式(IIa)、(IIb)および/または(IIc)の化合物を含む三環式縮合産物を、凝縮相中、支持遷移金属触媒の存在下で脱水素させて式(III)の2,6-ジフェニルフェノールを含む反応混合物を生成させる、
【化7】

を含む、該方法。

【公表番号】特表2011−506407(P2011−506407A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−537473(P2010−537473)
【出願日】平成20年12月17日(2008.12.17)
【国際出願番号】PCT/EP2008/067686
【国際公開番号】WO2009/077549
【国際公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】