説明

5’−キサンチル酸を生成する微生物

本発明はUV照射およびN−メチルーN’ニトロ−N−ニトロソグアニジン(NTG)のような突然変異誘導体を用いて、親株として5’−キサンチル酸を生成するCorynebacterium ammoniagenesKCCM10448を処理して得られる微生物に関するものである。変異体株は、プリン生合成の過程で2つのホルミル基を転移するために用いられるN,N10−テトラヒドロフォレートの生合成を高めるために、5−フルオロトリプトファンに耐性を与え、同じ期間の発酵に対し高収率および高濃縮率で培養媒質において5’−キサンチル酸を蓄積することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は5’−キサンチル酸を生成する微生物に関するものである。さらに特に、本発明はCorynebacterium ammoniagenesKCCM10448の変異体株に関し、トリプトファンの代謝類似体である5−フルオロトリプトファンに耐性を与え、プリン生合成を高めるために、プリン生合成経路に含まれるN,N10−テトラヒドロフォレートを高め、同じ発酵期間で5’−キサンチル酸を培養基中に高収率高濃度で蓄積させることを可能する。
【背景技術】
【0002】
5’−キサンチル酸は核酸生合成プロセスの中間体であり、動植物本体では生理学的に重要であり食品、医薬その他のいろいろな分野で重要である。従って、本発明者らは5−フルオロトリプトファンに耐性をもつ変異体株を開発し、既知の株Corynebacterium ammoniagenesKCCM10448からもまた本発明者らは直接の発酵方法によって高収率高濃度で5’−キサンチル酸を生成する。
【0003】
5’−キサンチル酸はプリンヌクレオチド生合成工程の中間生成物であり、5’−グアニル酸を生成するために重要な物質である。純度と高品質をもつ5’−グアニル酸を生成するため広く用いられる方法は微生物発酵法であり、5’−キサンチル酸を最初生成し、これを5’−グアニル酸に酵素により変換し、従って、5’−グアニル酸を生成し、対応する量の5’−キサンチル酸が必要である。5’−キサンチル酸を生成するための従来の方法は化学合成であり、酵母中でリボ核酸を分解する結果として生成される5’−グアニル酸の脱アミノ化、発酵媒体に前駆体物質としてキサンチンを加える発酵法、微生物の変異体株を用いる発酵法、抗生物質を加える方法(特許文献1および2)、界面活性剤を添加する方法(特許文献3および4)などがある。これらの中で、微生物の変異体株による5’−キサンチル酸の直接発酵方法は産業面に関して非常に有利である。従って、発明者らは、大きい収率で5’−キサンチル酸を生成する特性にCorynebacterium ammoniagenesKCCM10448の存在する特性を変えることによって、5’−キサンチル酸の生産性を増加する変異体株を開発した。
【特許文献1】特公昭42−1477号公報
【特許文献2】特公昭44−20390号公報
【特許文献3】特公昭42−3825号公報
【特許文献4】特公昭42−3838号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
XMPを生成するための生合成経路は非常に複雑であり、その反応は種々のアミノ酸と補酵素が継続に関与する。特に、N,N10−テトラヒドロフォレートはPRPP(ホスホリボシルピロホスフェート)からXMPへの6段階反応の中、2段階に関与し、各前駆体にホルミル基を変える役を演じる。一方、コリスメートから合成したp−アミノベンゾエートはN,N10−テトラヒドロフォレートの生合成に必要である。コリスメートはトリプトファン生合成工程では中間生成物であり、本発明者らはコリスメートの生成の増加は、N,N10−テトラヒドロフォレート生成の増加となると考えた。
【0005】
従って、本発明者らはプリン合成を増加するために、5−フルオロトリプトファン、トリプトファンの代謝産物類似体に耐性を与え、コリスメートの生合成を高めN,N10−テトラヒドロフォレートを増加する変異体株を試験し、5−フルオロトリプトファンに耐性をもつ変異体株が非常に有効であり、高収率高濃縮率で従来技術よりも直接の発酵法によって5’−キサンチル酸を生成できることを見出し、本発明を達成した。
【課題を解決するための手段】
【0006】
さらに、本発明の微生物を分離し取り出す方法を詳細に説明する。
本発明の微生物は、常法に従いN−メチル−N’−ニトロ−n−ニトロソグアニジン(NTG)のような突然変異体およびUV照射を用いて、親株としてCorynebacterium ammoniagenesKCCM10448を処理し、異なる濃度水準のフルオロトリプトファン(10、20、50、70、100、200mg/L)を添加した媒質(グルコース20g/L、一塩基リン酸カリウム1g/L、二塩基リン酸カリウム1g/L、尿素2g/L、硫酸アンモニウム3g/L、硫酸マグネシウム1g/L、塩化カルシウム100mg/L、硫酸第一鉄20mg/L、硫酸マンガン10mg/L、硫酸亜鉛10mg/L、ビオチン30μg/L、チアミン塩酸塩0.1mg/L、硫酸銅0.8mg/L、アデニン20mg/L、グアニン20mg/L、pH7.2)に成長できるこれらの中で変異体株を選択する。工程において、0−200mg/Lのフルオロトリプトファンを媒質に添加する。親株は20mg/Lまでのフルオロトリプトファンに耐性を示したが、50mg/L以上の濃度水準では成長は認められず、従って本発明者らは100mg/Lのフルオロトリプトファンで成長できる株を分離し、CJXFT0301と命名し、2003年11月25日に韓国微生物培養センターにブダペスト条約の下にKCCM10530の寄託番号で寄託した。
【0007】
本発明の新規変異体株CJXFT0301の生化学的特性は次の表1に示される。表1によれば、本発明の微生物は100mg/Lのフルオロトリプトファンを添加した培地で成長することができる。
【0008】
【表1】

培地は30℃で5日間発酵させた。+:成長、−:成長しない。
【発明の効果】
【0009】
本発明は親株としてCorynebacterium ammoniagenesKCCM10448を採用し、これを常法によりUV照射またはN−メチル−N’−ニトロ−n−ニトロソグアニジン(NTG)のような突然変異誘導体で処理し、変異体株を得た。変異体株は、プリン生合成の過程で2つのホルミル基を転移するために用いられるN,N10−テトラヒドロフォレートの生合成を高めるために、5−フルオロトリプトファンに耐性を与え、株は同じ期間の発酵に対し高収率および高濃縮率で媒質において5’−キサンチル酸を蓄積する効果を有する。
【実施例1】
【0010】
使用した株:Corynebacterium
ammoniagenesKCCM10448、Corynebacterium ammoniagenesCJXFT0301(KCCM10530)
種子媒質:グルコース30g/L、ペプトン15g/L、酵母抽出物15g/L、塩化ナトリウム2.5g/L、尿素3g/L、アデニン150mg/L、グアニン150mg/L、pH7.2。
発酵媒質:(1)A媒質:グルコース60g/L、硫酸マグネシウム10g/L、硫酸第一鉄20mg/L、硫酸亜鉛10mg/L、硫酸マンガン10mg/L、アデニン30mg/L、グアニン30mg/L、ビオチン100μg/L、硫酸銅1mg/L、チアミン塩酸塩5mg/L、塩化カルシウム10mg/L、pH7.2。
(2)B媒質:一塩基リン酸カリウム10g/L、二塩基リン酸カリウム10g/L、尿素7g/L、硫酸アンモニウム5g/L。
【0011】
発酵法:5mLの種媒質を直径18mmの試験管に注入し、常法により加圧下に殺菌した。殺菌後、Corynebacterium ammoniagenesKCCM10448およびCorynebacterium
ammoniagenesCJXFT0301をそれぞれに蒔き、180rpm、30℃、18時間振盪し培養した。得られたものを種子培養に用いた。次いで、発酵媒質として、A媒質とB媒質を常法により加圧下に別々に殺菌し、29mLのA媒質と10mLのB媒質をそれぞれ殺菌した500mLのエルレンマイヤーフラスコに振盪しながら注入し、1mLの上記の種媒質を蒔き200rpm、30℃、90時間発酵させた。発酵完了後、媒質中の5’−キサンチル酸の蓄積量はKCCM10448での量が25.4g/LおよびCJXFT0301での量が28.6g/Lであった。(蓄積した5’−キサンチル酸は5’−キサンチン酸ナトリウム・7HOで与えられる)。
【実施例2】
【0012】
使用した株:実施例1と同じ。
一次種媒質:実施例1の種媒質と同じ。
二次種媒質:グルコース60g/L、一塩基リン酸カリウム2g/L、二塩基リン酸カリウム2g/L、硫酸マグネシウム1g/L、硫酸第一鉄22mg/L、硫酸亜鉛15mg/L、硫酸マンガン10mg/L、硫酸銅1mg/L、塩化カルシウム100mg/L、ビオチン150μg/L、アデニン150mg/L、グアニン150mg/L、チアミン塩酸塩5mg/L、消泡剤0.6mL/L、pH7.2。
【0013】
発酵媒質:グルコース151g/L、リン酸32g/L、水酸化カリウム25g/L、アデニン198mg/L、グアニン119mg/L、硫酸第一鉄60mg/L、硫酸亜鉛42mg/L、硫酸マンガン15mg/L、硫酸銅2.4mg/L、アラニエート22mg/L、NCA7.5mg/L、ビオチン0.4mg/L、硫酸マグネシウム15g/L、シスチネート30mg/L、ヒスチジネート30mg/L、塩化カルシウム149mg/L、チアミン塩酸塩15mg/L、消泡剤0.7mL/L、CSL27mL/L、ツナ抽出物6g/L、pH7.3。
【0014】
一次種媒質:50mLの一次種媒質を500mLのエルレンマイヤーフラスコに振盪しながら注入し、加圧下に121℃で20分間殺菌した。Corynebacterium ammoniagenesKCCM10448およびCorynebacterium
ammoniagenesCJXFT0301をそれぞれに蒔き、180rpm、30℃、24時間振盪し培養した。
【0015】
二次種媒質:二次種媒質を5Lの実験発酵浴(それぞれ2L)に注入し、加圧下に121℃で20分間殺菌した。冷却後、50mLの上記一次種媒質を播き、0.5vvm、900rpm、31℃、24時間空気を0.5vvm供給しながら培養した。培養工程中、媒質のpH水準を7.3にアンモニウム溶液により調整し保持した。
【0016】
発酵法:発酵媒質を30Lの実験発酵浴(それぞれ8L)に注入し、加圧下に121℃で20分間殺菌した。冷却後、上記二次種媒質を(各1.5L)播き、400rpm、33℃、24時間空気を1vvm供給しながら培養した。残りの糖水準が培養工程中に1%以下に下がるときは、殺菌したグルコースを供給し、発酵媒質の全体の糖水準を30%に保持した。培養工程中に、媒質のpH水準は7.3に保持し、アンモニウム溶液で調整し、この工程を80時間行った。発酵完了後、媒質中の5’−キサンチル酸の蓄積量はKCCM10488量が145.2g/L、CJFXT0301の量は155.4g/Lであった。(蓄積した5’−キサンチル酸の濃度は5’−キサンチン酸ナトリウム・7HOで与えられる)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Corynebacterium ammoniagenesの突然変異体株であり5−フルオロトリプトファンに耐性を有することを特徴とする、5’キサンチル酸を生成する微生物。
【請求項2】
前記微生物がCorynebacterium ammoniagenesCJXFT0301(寄託番号:KCCM−10530)である請求項1記載の微生物。
【請求項3】
請求項1および2記載の微生物を用いることを特徴とする、5’キサンチル酸の製造方法。

【公表番号】特表2007−512850(P2007−512850A)
【公表日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−543734(P2006−543734)
【出願日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【国際出願番号】PCT/KR2004/002993
【国際公開番号】WO2005/056775
【国際公開日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【出願人】(506245279)シージェイ コーポレーション (5)
【氏名又は名称原語表記】CJ CORP.
【住所又は居所原語表記】500,Namdaemunno 5ga,Jung−gu,Seoul,100−095,Korea
【Fターム(参考)】