説明

5−アミノピラゾール誘導体の製造方法

【課題】環境保全上また製造費用の面で有利な水系溶媒中で高収率かつ高純度な5−アミノピラゾール誘導体の製造方法を提供すること。
【解決手段】一般式(II)で表されるヒドラジン化合物と一般式(III)で表される化合物を反応条件1及び反応条件2を満たす条件下で反応させることを特徴とする5−アミノピラゾール誘導体の製造方法。反応条件1:反応溶媒として水系溶媒を用いること、反応条件2:一般式(II)で表されるヒドラジン化合物、一般式(III)で表される化合物、該反応溶媒を含む混合液において、仕込み時の該混合液のpHが、3.2〜9.0(25℃)の範囲内にあること


(式中、Rはn価の含窒素6員環複素環基を表し、Rは、脂肪族基、芳香族基又は複素環基を表し、Xは、酸素原子又はNHを表す。nは1乃至3の整数である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、5−アミノピラゾール誘導体の製造方法に関するものである。より詳細には、本発明は、5−アミノピラゾール誘導体を環境保全上また製造費用の面で有利な水系溶液中で高収率かつ高純度に製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
5−アミノピラゾール誘導体は、写真用添加剤,増感色素,染料,顔料,電子材料,医農薬品などの機能性化合物の中間体として有用な化合物であり、合成法は古くから知られている(非特許文献1,非特許文献2)。公知の合成法の中でも、ヒドラジン化合物とβ−ケトエステル又はβ−ケトニトリルなどの1,3−ジカルボニル化合物との反応は、代表的かつ汎用性のある合成法として挙げられる。
一方、水溶性基が置換した5−アミノピラゾール誘導体の合成法に関しても、ヒドラジン化合物とβ−ケトニトリルとの反応から得ることができる。特許文献1では、エチレングリコールとメタノールの混合溶媒を用いて強酸性条件下で反応させることが記載されている。しかし、強酸性条件で反応させた場合、得られた5−アミノピラゾール誘導体の粗結晶中にエチレングリコールが含まれてしまうため低純度になるという問題があった。また、特許文献2特開2006−57076号では、水溶媒を用いてアルカリ性条件下で反応させることが記載されている。しかし、この方法では副生成物も多く生成するため非常に低収率になる問題があった。
更に特許文献3には、水溶媒系で、酸と塩基でpHを調整し、5−アミノピラゾール誘導体の高収率化を可能とした製造技術が開示されている。
詳細にはヒドロキシル基、カルボキシル基およびスルホ基を置換基として有するヒドラジン誘導体を5−アミノピラゾールへ誘導する製造方法であり、反応はpH2.0〜4.0の範囲で達成される。特許文献3のヒドラジン誘導体の置換基であるヒドロキシル基、カルボキシル基およびスルホ基はプロトン解離性基であり、pH2.0〜4.0の範囲ではプロトン非解離体として存在する。非解離体の場合、ヒドロキシル基、カルボキシル基およびスルホ基が置換した芳香族基または複素環基は電子求引性を示すため、ヒドラジンのプロトン化が抑制され5−アミノピラゾール誘導体が容易に合成される。従ってpH2.0以下ではヒドラジンのプロトン化により反応率が低下する。また、pH4.0以上では、プロトン解離性基が解離することによりヒドラジン誘導体の分解が顕著となり5−アミノピラゾール誘導体の生成率が低下する。
一方、5−アミノピラゾール誘導体の製造方法で使用されるプロトン解離性基を有しないヒドラジン誘導体では、pH2.0〜4.0の範囲において、容易にヒドラジンのプロトン化が促進され、5−アミノピラゾール誘導体の生成が遅く、定量的に反応が進行する前に生成した5−アミノピラゾール誘導体が分解するため反応率が低下し、製造に適さないため製造方法の改良が望まれていた。
【特許文献1】国際公開第06/082669号パンフレット
【特許文献2】特開2006−57076号
【特許文献3】国際公開第08/056828号パンフレット
【非特許文献1】Gazz. chim. ital. 81, 380 (1951)
【非特許文献2】Gazz. chim. ital. 82, 373 (1952)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従って、本発明の目的は、環境保全上また製造費用の面で有利な水系溶媒中で高収率かつ高純度な一般式(I)で表される5−アミノピラゾール誘導体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
従来のこうした課題を克服すべく検討を行った結果、プロトン解離性基を有さないヒドラジン誘導体(一般式(II))を使用する場合において、特定のpH条件下で反応を行うことにより、下記一般式(II)及び一般式(III)を原料にして安価で高収率かつ高純度に一般式(I)で表される5−アミノピラゾール誘導体が合成できることを見出した。
すなわち、本発明は下記手段によって達成された。
【0005】
〔1〕
一般式(I)で表される5−アミノピラゾール誘導体の製造方法において、一般式(II)で表されるヒドラジン化合物と一般式(III)で表される化合物を反応条件1及び反応条件2を満たす条件下で反応させることを特徴とする製造方法。
反応条件1 :
反応溶媒として水系溶媒を用いること
反応条件2 :
一般式(II)で表されるヒドラジン化合物、一般式(III)で表される化合物、該反応溶媒を含む混合液において、仕込み時の該混合液のpHが、3.2〜9.0(25℃)の範囲内にあること
【0006】
【化1】

【0007】
(式中、Rはn価の含窒素6員環複素環基を表し、Rは、脂肪族基、芳香族基又は複素環基を表し、Xは、酸素原子又はNHを表す。nは1乃至3の整数である。)
〔2〕
前記一般式(I)で表される5−アミノピラゾール誘導体が下記一般式(I’)で表される5−アミノピラゾール誘導体であることを特徴とする〔1〕に記載の製造方法。
【0008】
【化2】

【0009】
(式中、Rはハロゲン原子、脂肪族基、芳香族基、複素環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、複素環オキシ基、アシルオキシ基、アミノ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル又はアリールスルホニルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チオ基、スルファモイル基、アルキル又はアリールスルフィニル基、アルキル又はアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリール又は複素環アゾ基、イミド基、ホスフィニルオキシ基、又はホスフィニルアミノ基から選ばれる置換基を有してもよい2価の含窒素6員環複素環基を表し、RおよびR’はそれぞれ独立に脂肪族基、芳香族基又は複素環基を表す。)
〔3〕
前記一般式(I’)で表される5−アミノピラゾール誘導体が下記一般式(I’’)で表される5−アミノピラゾール誘導体であることを特徴とする〔2〕に記載の製造方法。
【0010】
【化3】

【0011】
(式中、Rは水素原子、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基又はアリールチオ基を表し、Qは置換基を有していても良い炭素原子又は窒素原子を表し、R21およびR22’はそれぞれ独立に炭素数1〜5のアルキル基を表す。)
【0012】
〔4〕
仕込み時の前記混合液のpHを、酸若しくは塩基又は酸及び塩基を添加することで3.2〜9.0(25℃)の範囲に調整することを特徴とする〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の製造方法。
〔5〕
前記混合液の仕込み時のpHが、3.5〜8.7(25℃)の範囲内にあることを特徴とする〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の製造方法。
〔6〕
反応温度が30〜100℃であることを特徴とする〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の製造方法。
〔7〕
前記反応溶媒が水単独溶媒であることを特徴とする〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明の製造方法によれば、一般式(I)で表される5−アミノピラゾール誘導体が、環境保全上また製造費用の面で有利な水系で高収率かつ高純度に得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に本発明の実施について詳細に説明する。
まず、本明細書において用いられる置換基について若干説明する。本明細書において用いられる置換基としては、以下の基(これらの基を「置換基A」と称する)が挙げられる。
例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、複素環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル又はアリールスルホニルアミノ基、ヒドラジノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキル又はアリールスルフィニル基、アルキル又はアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリール又は複素環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基が例として挙げられる。これらの置換基は更に置換されてもよく、更なる置換基としては、以上に説明した置換基群Aから選択される基を挙げることができる。
【0015】
本明細書において用いられる脂肪族基とは、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アルキニル基、置換アルキニル基を意味する。また、本明細書で用いられる芳香族基とは、アリール基及び置換アリール基を意味する。
【0016】
更に詳しくは、ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0017】
アルキル基としては、直鎖、分岐、環状の置換若しくは無置換のアルキル基が挙げられ、シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、更に環構造が多いトリシクロ構造なども包含するものである。以下に説明する置換基の中のアルキル基(例えば、アルコキシ基、アルキルチオ基のアルキル基)もこのような概念のアルキル基を表す。詳細には、アルキル基としては、好ましくは、炭素数1から30のアルキル基、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、n−オクチル基、エイコシル基、2−クロロエチル基、2−シアノエチル基、2―エチルヘキシル基等が挙げられ、シクロアルキル基としては、好ましくは、炭素数3から30の置換又は無置換のシクロアルキル基、例えば、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、4−n−ドデシルシクロヘキシル基等が挙げられ、ビシクロアルキル基としては、好ましくは、炭素数5から30の置換若しくは無置換のビシクロアルキル基、つまり、炭素数5から30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基、例えば、ビシクロ[1,2,2]ヘプタン−2−イル基、ビシクロ[2,2,2]オクタン−3−イル基等が挙げられる。
【0018】
アルケニル基としては、直鎖、分岐、環状の置換若しくは無置換のアルケニル基が挙げられ、シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基を包含する。詳細には、アルケニル基としては、好ましくは、炭素数2から30の置換又は無置換のアルケニル基、例えば、ビニル基、アリル基、プレニル基、ゲラニル基、オレイル基等が挙げられ、シクロアルケニル基としては、好ましくは、炭素数3から30の置換若しくは無置換のシクロアルケニル基、つまり、炭素数3から30のシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基、例えば、2−シクロペンテン−1−イル基、2−シクロヘキセン−1−イル基等が挙げられ、ビシクロアルケニル基としては、置換若しくは無置換のビシクロアルケニル基、好ましくは、炭素数5から30の置換若しくは無置換のビシクロアルケニル基、つまり二重結合を一個持つビシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基、例えば、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−1−イル基、ビシクロ[2,2,2]オクト−2−エン−4−イル基等が挙げられる。
アルキニル基としては、好ましくは、炭素数2から30の置換又は無置換のアルキニル基、例えば、エチニル基、プロパルギル基、トリメチルシリルエチニル基等が挙げられる。
【0019】
アリール基としては、好ましくは、炭素数6から30の置換若しくは無置換のアリール基、例えば、フェニル基、p−トリル基、ナフチル基、m−クロロフェニル基、o−ヘキサデカノイルアミノフェニル基等が挙げられる。
複素環基としては、好ましくは、5又は6員の置換若しくは無置換の芳香族若しくは非芳香族の複素環化合物から一個の水素原子を取り除いた一価の基であり、更に好ましくは、炭素数3から30の5又は6員の芳香族の複素環基であり、単環構造であっても、2つ以上の環が縮合した多環構造であってもよい。また、上記複素環基としては、N、O、S原子のいずれかを少なくとも含む複素環基が好ましい。例えば、チエニル基、フリル基、ピロリル基、インドリル基、イミダゾリル基、ベンズイミダゾリル基、ピラゾリル基、インダゾリル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、イソチアゾリル基、ベンゾイソチアゾリル基、オキサゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、イソオキサゾリル基、1,2,4−チアジアゾリル基、1,3,4−チアジアゾリル基、1,2,4−オキサジアゾリル基、1,3,4−オキサジアゾリル基、トリアゾリル基、ピリジル基、ピラジル基、ピリミジル基、ピリダジル基、1,3,5−トリアジル基、キノリル基、イソキノリル基、フタラジニル基等が挙げられる。
アルコキシ基としては、好ましくは、炭素数1から30の置換若しくは無置換のアルコキシ基、例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、t−ブトキシ基、n−オクチルオキシ基、2−メトキシエトキシ基等が挙げられる。
【0020】
アリールオキシ基としては、好ましくは、炭素数6から30の置換若しくは無置換のアリールオキシ基、例えば、フェノキシ基、2−メチルフェノキシ基、4−t−ブチルフェノキシ基、3−ニトロフェノキシ基、2−テトラデカノイルアミノフェノキシ基等が挙げられる。
シリルオキシ基としては、好ましくは、炭素数0から20の置換若しくは無置換のシリルオキシ基、例えば、トリメチルシリルオキシ基、ジフェニルメチルシリルオキシ基等が挙げられる。
複素環オキシ基としては、好ましくは、炭素数2から30の置換若しくは無置換の複素環オキシ基、例えば、1−フェニルテトラゾール−5−オキシ基、2−テトラヒドロピラニルオキシ基等が挙げられる。
アシルオキシ基としては、好ましくは、ホルミルオキシ基、炭素数2から30の置換若しくは無置換のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数6から30の置換若しくは無置換のアリールカルボニルオキシ基、例えば、アセチルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ステアロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、p−メトキシフェニルカルボニルオキシ基等が挙げられる。
カルバモイルオキシ基としては、好ましくは、炭素数1から30の置換若しくは無置換のカルバモイルオキシ基、例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ基、N,N−ジエチルカルバモイルオキシ基、モルホリノカルボニルオキシ基、N,N−ジ−n−オクチルアミノカルボニルオキシ基、N−n−オクチルカルバモイルオキシ基等が挙げられる。
【0021】
アルコキシカルボニルオキシ基としては、好ましくは、炭素数2から30の置換若しくは無置換アルコキシカルボニルオキシ基、例えば、メトキシカルボニルオキシ基、エトキシカルボニルオキシ基、t−ブトキシカルボニルオキシ基、n−オクチルカルボニルオキシ基等が挙げられる。
アリールオキシカルボニルオキシ基としては、好ましくは、炭素数7から30の置換若しくは無置換のアリールオキシカルボニルオキシ基、例えば、フェノキシカルボニルオキシ基、p−メトキシフェノキシカルボニルオキシ基、p−n−ヘキサデシルオキシフェノキシカルボニルオキシ基等が挙げられる。
アミノ基としては、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、複素環アミノ基を含み、好ましくは、アミノ基、炭素数1から30の置換若しくは無置換のアルキルアミノ基、炭素数6から30の置換若しくは無置換のアニリノ基、例えば、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、アニリノ基、N−メチル−アニリノ基、ジフェニルアミノ基等が挙げられる。
アシルアミノ基としては、好ましくは、ホルミルアミノ基、炭素数1から30の置換若しくは無置換のアルキルカルボニルアミノ基、炭素数6から30の置換若しくは無置換のアリールカルボニルアミノ基、例えば、アセチルアミノ基、ピバロイルアミノ基、ラウロイルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、3,4,5−トリ−n−オクチルオキシフェニルカルボニルアミノ基等が挙げられる。
【0022】
アミノカルボニルアミノ基としては、好ましくは、炭素数1から30の置換若しくは無置換のアミノカルボニルアミノ基、例えば、カルバモイルアミノ基、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ基、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ基、モルホリノカルボニルアミノ基等が挙げられる。
アルコキシカルボニルアミノ基としては、好ましくは、炭素数2から30の置換若しくは無置換アルコキシカルボニルアミノ基、例えば、メトキシカルボニルアミノ基、エトキシカルボニルアミノ基、t−ブトキシカルボニルアミノ基、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ基、N−メチルーメトキシカルボニルアミノ基等が挙げられる。
アリールオキシカルボニルアミノ基としては、好ましくは、炭素数7から30の置換若しくは無置換のアリールオキシカルボニルアミノ基、例えば、フェノキシカルボニルアミノ基、p−クロロフェノキシカルボニルアミノ基、m−n−オクチルオキシフェノキシカルボニルアミノ基等が挙げられる。
スルファモイルアミノ基としては、好ましくは、炭素数0から30の置換若しくは無置換のスルファモイルアミノ基、例えば、スルファモイルアミノ基、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ基、N−n−オクチルアミノスルホニルアミノ基等が挙げられる。
【0023】
アルキル又はアリールスルホニルアミノ基としては、好ましくは、炭素数1から30の置換若しくは無置換のアルキルスルホニルアミノ基、炭素数6から30の置換若しくは無置換のアリールスルホニルアミノ基、例えば、メチルスルホニルアミノ基、ブチルスルホニルアミノ基、フェニルスルホニルアミノ基、2,3,5−トリクロロフェニルスルホニルアミノ基、p−メチルフェニルスルホニルアミノ基等が挙げられる。
ヒドラジノ基としては、好ましくは炭素数1から30の置換若しくは無置換のアルキルヒドラジノ基、炭素数6から30の置換若しくは無置換のアリールヒドラジノ基、例えば、メチルヒドラジノ基、エチルヒドラジノ基、n−ヘキサンデシルヒドラジノ基、フェニルヒドラジノ基、アンスラニルヒドラジノ基等が挙げられる。
アルキルチオ基としては、好ましくは、炭素数1から30の置換若しくは無置換のアルキルチオ基、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、n−ヘキサデシルチオ基等が挙げられる。
アリールチオ基としては、好ましくは、炭素数6から30の置換若しくは無置換のアリールチオ基、例えば、フェニルチオ基、p−クロロフェニルチオ基、m−メトキシフェニルチオ基等が挙げられる。
複素環チオ基としては、好ましくは、炭素数2から30の置換又は無置換の複素環チオ基、例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ基、1−フェニルテトラゾール−5−イルチオ基等が挙げられる。
スルファモイル基としては、好ましくは、炭素数0から30の置換若しくは無置換のスルファモイル基、例えば、N−エチルスルファモイル基、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル基、N,N−ジメチルスルファモイル基、N−アセチルスルファモイル基、N−ベンゾイルスルファモイル基、N−(N‘−フェニルカルバモイル)スルファモイル基等が挙げられる。
【0024】
アルキル又はアリールスルフィニル基としては、好ましくは、炭素数1から30の置換又は無置換のアルキルスルフィニル基、6から30の置換又は無置換のアリールスルフィニル基、例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、p−メチルフェニルスルフィニル基等が挙げられる。
アルキル又はアリールスルホニル基としては、好ましくは、炭素数1から30の置換又は無置換のアルキルスルホニル基、6から30の置換又は無置換のアリールスルホニル基、例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、フェニルスルホニル基、p−メチルフェニルスルホニル基等が挙げられる。
アシル基としては、好ましくは、ホルミル基、炭素数2から30の置換又は無置換のアルキルカルボニル基、炭素数7から30の置換若しくは無置換のアリールカルボニル基、炭素数2から30の置換若しくは無置換の炭素原子でカルボニル基と結合している複素環カルボニル基、例えば、アセチル基、ピバロイル基、2−クロロアセチル基、ステアロイル基、ベンゾイル基、p−n−オクチルオキシフェニルカルボニル基、2−ピリジルカルボニル基、2−フリルカルボニル基等が挙げられる。
アリールオキシカルボニル基としては、好ましくは、炭素数7から30の置換若しくは無置換のアリールオキシカルボニル基、例えば、フェノキシカルボニル基、o−クロロフェノキシカルボニル基、m−ニトロフェノキシカルボニル基、p−t−ブチルフェノキシカルボニル基等が挙げられる。
【0025】
アルコキシカルボニル基としては、好ましくは、炭素数2から30の置換若しくは無置換アルコキシカルボニル基、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、n−オクタデシルオキシカルボニル基等が挙げられる。
カルバモイル基としては、好ましくは、炭素数1から30の置換若しくは無置換のカルバモイル基、例えば、カルバモイル基、N−メチルカルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル基、N−(メチルスルホニル)カルバモイル基等が挙げられる。
アリール又は複素環アゾ基としては、好ましくは炭素数6から30の置換若しくは無置換のアリールアゾ基、炭素数3から30の置換若しくは無置換の複素環アゾ基、例えば、フェニルアゾ、p−クロロフェニルアゾ、5−エチルチオ−1,3,4−チアジアゾール−2−イルアゾ等が挙げられる。
【0026】
イミド基としては、好ましくは、N−スクシンイミド基、N−フタルイミド基等が挙げられる。
ホスフィノ基としては、好ましくは、炭素数0から30の置換若しくは無置換のホスフィノ基、例えば、ジメチルホスフィノ基、ジフェニルホスフィノ基、メチルフェノキシホスフィノ基等が挙げられる。
ホスフィニル基としては、好ましくは、炭素数0から30の置換若しくは無置換のホスフィニル基、例えば、ホスフィニル基、ジオクチルオキシホスフィニル基、ジエトキシホスフィニル基等が挙げられる。
ホスフィニルオキシ基としては、好ましくは、炭素数0から30の置換若しくは無置換のホスフィニルオキシ基、例えば、ジフェノキシホスフィニルオキシ基、ジオクチルオキシホスフィニルオキシ基等が挙げられる。
ホスフィニルアミノ基としては、好ましくは、炭素数0から30の置換若しくは無置換のホスフィニルアミノ基、例えば、ジメトキシホスフィニルアミノ基、ジメチルアミノホスフィニルアミノ基が挙げられる。
シリル基としては、好ましくは、炭素数0から30の置換若しくは無置換のシリル基、例えば、トリメチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、フェニルジメチルシリル基等が挙げられる。
【0027】
上記の置換基の中で、水素原子を有するものは、該水素原子が上記の置換基で置換されていてもよい。そのような置換基の例としては、アルキルカルボニルアミノスルホニル基、アリールカルボニルアミノスルホニル基、アルキルスルホニルアミノカルボニル基、アリールスルホニルアミノカルボニル基が挙げられる。その例としては、メチルスルホニルアミノカルボニル基、p−メチルフェニルスルホニルアミノカルボニル基、アセチルアミノスルホニル基、ベンゾイルアミノスルホニル基が挙げられる。
【0028】
本発明の製造方法について説明する。
本発明の製造方法は一般式(I)で表される5−アミノピラゾール誘導体の製造方法において、一般式(II)で表されるヒドラジン化合物と一般式(III)で表される化合物を反応条件1及び反応条件2に満たす条件下で反応させることを特徴とする。
反応条件1 :
反応溶媒として水系溶媒を用いること
反応条件2 :
一般式(II)で表されるヒドラジン化合物、一般式(III)で表される化合物、該反応溶媒を含む混合液において、仕込み時の該混合液のpHが、3.2〜9.0(25℃)の範囲内にあること
【0029】
【化4】

【0030】
(式中、Rはn価の含窒素6員環複素環基を表し、Rは、脂肪族基、芳香族基又は複素環基を表し、Xは、酸素原子又はNHを表す。nは1乃至3の整数である。)
【0031】
一般式(I)、一般式(II)及び一般式(III)におけるR1、R及びnについて説明する。
は、脂肪族基、芳香族基、又は複素環基を表し、これらの基は更に置換基を有していてもよい。好ましくは、Rは脂肪族基又は芳香族基であり、更に好ましくはアルキル基又はアリール基である。
における脂肪族基としては前記置換基Aで記載した脂肪族基を挙げることができ、好ましくは無置換の脂肪族基であり、より好ましくは、炭素数5以下のアルキル基であり、更に好ましくは、メチル基、イソプロピル基又はtert−ブチル基であり、特に好ましくは、メチル基又はtert−ブチル基である。この反応条件における単離の容易さ、即ち製造の適性(生産性やろ過性)且つ安価な原材料の入手性を踏まえ、上記の基が好ましい。
【0032】
における芳香族基としては前記置換基Aで記載した芳香族基を挙げることができ、好ましくは炭素数6から30の芳香族基であり、より好ましくは炭素数6から18であり、特に好ましくは炭素数6から12の芳香族基である。この範囲の炭素数の芳香族基を使用することにより、単離が容易で且つ原材料の入手性も良く、経済的に安価な5−アミノピラゾールを得ることが出来る。
【0033】
における複素環基としては前記置換基Aで記載した複素環基を挙げることができ、好ましくは炭素数が3から30の5又は6員の複素環であり、より好ましくは炭素数3から15の5又は6員の複素環であり、特に好ましくは炭素数3から10の5または6員の複素環である。この範囲の炭素数の複素環を使用することにより、単離が容易で且つ原材料の入手性も良く、経済的に安価な5−アミノピラゾールを得ることが出来る。
【0034】
はn価の含窒素6員環複素環基を表し、該含窒素6員環複素環基は置換基を有していてもよい。
は好ましくは、ハロゲン原子、脂肪族基、芳香族基、複素環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、複素環オキシ基、アシルオキシ基、アミノ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル又はアリールスルホニルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チオ基、スルファモイル基、アルキル又はアリールスルフィニル基、アルキル又はアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリール又は複素環アゾ基、イミド基、ホスフィニルオキシ基、又はホスフィニルアミノ基から選ばれる置換基を有してもよいn価の含窒素6員複素環基を表し、該置換基は更に置換基を有していてもよい。
含窒素6員複素環基としては、前記置換基Aで記載した複素環基のうち6員環の窒素原子を含む複素環基が挙げられる。
即ち、Rとして具体的には、ピリジル基、ピリミジル基、ピリダジル基、ピラジル基、トリアジル基、又はこれらの縮環含窒素複素環基であり、より好ましくは、ピリジル基、ピリミジル基、ピラジル基、又はトリアジル基、であり、更に好ましくは、ピリジル基、ピリミジル基、又はトリアジル基である。
【0035】
nは1から3の整数を表す。nとして好ましくは、1または2であり、更に好ましくは2である。
以上をまとめると、一般式(I)、一般式(II)及び一般式(III)におけるR1、R及びnは、下記(イ)〜(ニ)の組み合わせからなるものが好ましい。
(イ)Rは、ピリジル基、ピリミジル基、ピラダジル基、ピラジル基、トリアジル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、又はトリアゾリル基が好ましい。
(ロ)Rの置換基として、最も好ましくは、ハロゲン原子、アルキル基、フェニル基、複素環基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基又は複素環オキシ基である。
(ハ)Rは、脂肪族基、芳香族基または複素環基を示し、より好ましくは脂肪族基または芳香族基であり、更に好ましくはアルキル基又はアリール基である。
(ニ)nは1から3の整数を示し、より好ましくは1または2であり、更に好ましくは2である。
【0036】
本発明における製造方法において、前記一般式(I)で表される5−アミノピラゾール誘導体が下記一般式(I’)で表される5−アミノピラゾール誘導体であることが好ましい。
【0037】
【化5】

【0038】
(式中、Rはハロゲン原子、脂肪族基、芳香族基、複素環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、複素環オキシ基、アシルオキシ基、アミノ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル又はアリールスルホニルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チオ基、スルファモイル基、アルキル又はアリールスルフィニル基、アルキル又はアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリール又は複素環アゾ基、イミド基、ホスフィニルオキシ基、又はホスフィニルアミノ基から選ばれる置換基を有してもよい2価の含窒素6員環複素環基を表す。)
【0039】
より好ましくはRはハロゲン原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、複素環オキシ基、アミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、又は複素環チオ基から選ばれる置換基を有してもよい2価の含窒素6員環複素環基であり、更に好ましくはRはアルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、アルキルチオ基又はアリールチオ基から選ばれる置換基を有してもよい2価の含窒素6員環複素環基である。RおよびR’はそれぞれ独立に脂肪族基、芳香族基又は複素環基を表す。
【0040】
一般式(I’)におけるR1、R及びR’は、下記(イ)〜(ハ)の組み合わせからなるものが好ましい。
(イ)Rは、ピリジル基、ピリミジル基、ピラダジル基、ピラジル基、トリアジル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、又はトリアゾリル基が好ましい。
(ロ)Rの置換基として、最も好ましくは、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、アルキルチオ基又はアリールチオ基である。
(ハ)R及びR’は、それぞれ独立に脂肪族基、芳香族基または複素環基を示し、より好ましくは脂肪族基または芳香族基であり、更に好ましくはアルキル基又はアリール基である。
【0041】
更に、前記一般式(I’)で表される5−アミノピラゾール誘導体が下記一般式(I’’)で表される5−アミノピラゾール誘導体であることがより好ましい。
【0042】
【化6】

【0043】
(式中、Rは水素原子、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基又はアリールチオ基を表し、Qは置換基を有していても良い炭素原子もしくは窒素原子を表し、R21およびR21’はそれぞれ独立に炭素数1〜5のアルキル基を表す。)
【0044】
以下、一般式(I’’)におけるQ、R、R21及びR21’について説明する。
Rは水素原子、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基又はアリールチオ基を表し、好ましくは、水素原子、アミノ基、アルコキシ基またはアリールオキシ基であり、更に好ましくは水素原子、アミノ基またはアルコキシ基であり、最も好ましくは、水素原子、炭素数1〜6のアミノ基または炭素数1〜5のアルコキシ基である。
21およびR21’はそれぞれ独立に炭素数1〜5のアルキル基を表す。好ましくは、メチル基、イソプロピル基、t−ブチル基であり、より好ましくはt−ブチル基である。
Qは置換基を有していても良い炭素原子もしくは窒素原子を表す。置換基として好ましい例は、上述の一般式(I)、一般式(II)及び一般式(III)におけるR1の置換基の説明で記載したものと同義である。Qが炭素原子の場合の、炭素原子が有していても良い置換基としてより好ましくは、水素原子、アミノ基、アルコキシ基またはアリールオキシ基であり、更に好ましくは水素原子、アミノ基またはアルコキシ基であり、最も好ましくは、水素原子、炭素数1〜6のアミノ基または炭素数1〜5のアルコキシ基である。
以上をまとめると、一般式(I’’)におけるQ、R、R21及びR21’は、下記(イ)〜(ハ)の組み合わせからなるものが好ましい。
(イ)Rは水素原子、炭素数1〜6のアミノ基または炭素数1〜5のアルコキシ基が最も好ましい。
(ロ)Qは、置換基を有していても良い炭素原子もしくは窒素原子を表し、Qが炭素原子の場合の炭素原子が有していても良い置換基として、最も好ましくは水素原子、炭素数1〜6のアミノ基または炭素数1〜5のアルコキシ基である。
(ハ)R21およびR21’はそれぞれ独立に炭素数1〜5のアルキル基を示し、より好ましくは、メチル基、イソプロピル基、t−ブチル基であり、更に好ましくはt−ブチル基である。
【0045】
本発明における製造方法においては、原料の入手性および安価製造という観点で、前記一般式(I)におけるR、一般式(I’)におけるR及びR’又は一般式(I’’)におけるR21およびR21’がそれぞれ同時に炭素数1〜5のアルキル基を表すことがより好ましい。
次に具体例として一般式(I)で表される5−アミノピラゾール誘導体の好ましい例を挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
【0046】
【表1】

【0047】
【表2】

【0048】
【表3】

【0049】
【表4】

【0050】
【表5】

【0051】
【表6】

【0052】
【表7】

【0053】
【表8】

【0054】
【表9】

【0055】
【表10】

【0056】
【表11】

【0057】
【表12】

【0058】
【表13】

【0059】
【表14】

【0060】
【表15】

【0061】
【表16】

【0062】
【表17】

【0063】
【表18】

【0064】
【表19】

【0065】
【表20】

【0066】
【表21】

【0067】
【表22】

【0068】
【表23】

【0069】
【表24】

【0070】
【表25】

【0071】
【表26】

【0072】
【表27】

【0073】
【表28】

【0074】
【表29】

【0075】
一般式(I)で表される化合物は、置換基の種類によっては、互変異性体として存在することがある。純粋な形態の任意の互変異性体、互変異性体の任意の混合物は、いずれも本発明の化合物に包含される。
【0076】
また、本発明では、一般式(I)で表される化合物は、構造中に同位元素(例えば、H、H、13C、15N)を含有していてもよい。
【0077】
一般式(I)で表される化合物には、その合成過程や単離法などによって対塩を伴っているものも含まれる。対塩はいずれのものでもよいが、例えば、ハロゲン化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、炭酸イオン、スルホン酸イオン、リン酸イオン、酢酸イオン、金属イオン、アンモニウムイオンなどが挙げられる。構造によっては分子内塩を形成してもよい。
【0078】
次に具体例として一般式(II)で表される化合物の好ましい例を挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
【0079】
一般式(II)で表されるヒドラジン誘導体は購入することが可能である。また、ヒドラジン一水和物とハロゲン化物を混合することで、一般式(II)で表される化合物を得ることが出来る。例えば、フェニルヒドラジンを合成する再は、ヒドラジン一水和物と当量のクロロベンゼンとを内温50℃で混合することにより得ることができる。
【0080】
次に具体例として一般式(III)で表される化合物の好ましい例を挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
【0081】
一般式(III)で表される化合物は有機化合物とtert−ブトキシカリウムや水素化ナトリウム等の強塩基を作用させカルボアニオンを発生させた後、エステルを室温で混合することで得られる。4−メチル−3−オキソペンタノニトリルを合成するには、シアノメタンとtert−ブトキシカリウムを作用させ、メチルイソプロオネートを混合することにより得ることができる。
【0082】
〔製造方法〕
次に、一般式(II)で表されるヒドラジン化合物と一般式(III)で表される化合物から一般式(I)で表される5−アミノピラゾール誘導体を製造する方法について詳しく述べる。
本発明の製造方法は、一般式(I)で表される5−アミノピラゾール誘導体の製造方法において、一般式(II)で表されるヒドラジン化合物と一般式(III)で表される化合物を反応条件1及び反応条件2を満たす条件下で反応させることを特徴とする製造方法。
反応条件1:
反応溶媒として水系溶媒を用いること
反応条件2:
一般式(II)で表されるヒドラジン化合物、一般式(III)で表される化合物、該反応溶媒を含む混合液において、仕込み時の該混合液のpHが、3.2〜9.0(25℃)の範囲内にあること
【0083】
【化7】

【0084】
(反応条件1)
一般式(I)の製造において、反応溶媒は水系溶媒を用いる。
水系溶媒を用いることにより、5−アミノピラゾール誘導体を安価に製造することが可能となり、かつ廃棄物は有機溶媒を含まないため環境にやさしい。
水系溶媒とは、水単独溶媒又は水と有機溶媒の混合溶媒をいう。ただし、混合溶媒を用いる場合、反応溶媒総量中の含水率が50質量%以上であることが好ましく、含水率が80質量%以上であることがより好ましく、特に好ましくは、安価に製造する観点から水単独溶媒である。
有機溶媒の種類は、反応系の種類などに応じて適宜選択することができるが、例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、i−プロピルアルコール、エチレングリコール等)、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、ベンゼン、ヘキサン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)又はN,N−ジメチルイミダゾリジノン(DMI)、スルホランが挙げられる。これらの溶媒を適宜組み合わせて混合物として用いてもよい。本発明の反応における有機溶媒として好ましくは、アセトニトリル又はアルコールであり、より好ましくはアルコールであり、特に好ましくは、メタノール又はエタノールである。原料に対して溶解性を示す溶媒であれば特に限定はないが、安価であるという観点で、上記の溶媒が好ましい。
また、反応に用いる混合溶媒の使用量は特に限定されず、反応系の種類などに応じて適宜選択することができるが、通常は一般式(II)のヒドラジン化合物に対して溶媒を質量比でそれぞれ1〜100倍程度が適当であり、5〜50倍が好ましく、特に好ましくは、10〜30倍である。上記範囲の使用量であれば製造の負荷が解消でき、かつ安価に製造が可能となる。
【0085】
(反応条件2)
本発明の製造方法において、一般式(II)で表されるヒドラジン化合物、一般式(III)で表される化合物、該反応溶媒を含む混合液において、仕込み時の該混合液のpHが、3.2〜9.0(25℃)の範囲内にあることが必要であり、pH3.5〜8.7(25℃)が好ましく、pH3.7〜8.5(25℃)がより好ましい。
仕込み時の混合液のpHを上記範囲内にすることで、副成分の生成を抑制でき、高収率で5−アミノピラゾール誘導体を得ることが出来る。
該混合液のpHが仕込み時に上記範囲内にあれば、pHの調整はしなくてもよいが、上記範囲にない場合は、pHの調整をすることが好ましい。
pHの調整は、酸又はアルカリを添加することが好ましい。
pHを調整するための酸としては、例えば、塩化水素酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホウ酸等の無機酸、又は、ギ酸、酢酸、トリクロロ酢酸、プロピオン酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等の有機酸が挙げられる。pHを調整するための酸として好ましくは、塩化水素酸、硫酸、リン酸、ギ酸、酢酸、トリクロロ酢酸、プロピオン酸、メタンスルホン酸、であり、特に好ましくは、硫酸、塩化水素酸、ギ酸、酢酸、及びプロピオン酸である。
pHを調整するためのアルカリとしては、例えば、有機塩基(例えば、アンモニア、トリエチルアミン、ピリジンなど)又は無機塩基いずれでもよい。pHを調整するために用いる無機塩基としては、例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、リン酸1水素ナトリウム、リン酸2水素ナトリウム、リン酸ナトリウムであり、より好ましくは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム及び酢酸ナトリウムであり、pHを調整するためのアルカリとして更に好ましくは、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム及び炭酸カリウムである。上記の好ましい塩基は安価でかつ入手性に優れる。
【0086】
pHを調整するための酸又はアルカリの添加量は、適宜選択することができる。
本発明における反応温度は特に限定されず、反応系の種類や反応種の化合物の濃度などに応じて適宜選択できるが、通常は30℃〜100℃、より好ましくは30℃〜95℃、特に好ましくは、40℃〜90℃である。反応時間も特に限定されないが、通常は30分〜24時間、2時間から15時間が好ましく、特に好ましくは、4時間〜12時間である。これらの条件であれば所望の誘導体を製造に負荷を掛けることなく経済的に得ることが可能となる。
一般式(II)で表わされるヒドラジン化合物、一般式(III)で表される化合物、反応溶媒及び酸又はアルカリの反応系内への添加順序は任意であり、特に限定されない。
【実施例】
【0087】
次に実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
〔実施例1〕
【0088】
<例示化合物215の製造方法>
・ 中間体Aの製造方法
【0089】
【化8】

【0090】
メタノール750mLに4,6−ジクロロピリミジン148.98g(1.00mol)を懸濁させ、内温5℃まで冷却しながら攪拌した。そこへ抱水ヒドラジン97mL(2.00mol)を5分かけて滴下した。さらに続けて抱水ヒドラジン290mL(6.00mol)を5分かけて滴下した。その後、還流温度まで加熱し、その温度で4時間攪拌した。室温まで冷却後、生成した結晶を濾別した。メタノール660mLでかけ洗浄し、風乾後、白色の中間体Aを116.32gを得た。収率83%。
【0091】
(2)例示化合物215の製造方法
蒸留水500mLに中間体A20.00g(0.33mol)とピバロイルアセトニトリル37.59g(0.67mol)及び酢酸60mLを加え室温で攪拌し完溶させた。そのときの反応混合物のpHは3.84だった。内温が50℃になるまで加熱し、その温度で6時間攪拌した。室温まで冷却後、生成した結晶をろ別し、水500mLで、続いてイソプロパノール50mLで掛け洗浄した。結晶を風乾後白色の例示化合物215 49.3gを得た。収率96.4%。なお、内温50℃にて6時間攪拌した際のHPLC測定(島津製作所社製)による面積%で求めたところ、中間体Aが0.3%、不明成分が1.3%、例示化合物215が98.4%であった。
H−NMR(400MHz、d6−DMSO)8.6 ppm(s,1H)、8.3 ppm(s,1H)、5.8 ppm(bs,4H)、5.4 ppm(s,2H)、1.3 ppm(s,18H)
【0092】
〔比較例1〕
実施例の酢酸60mLを塩酸13.6mLに変更した以外は、実施例1と同様に例示化合物215を合成した。単離収量34.3 g、単離収率71%。なお、仕込み時のpHは3.0であり、内温50℃にて6時間攪拌した際のHPLC面積%は、中間体Aが0.2%、不明成分が10.4%、例示化合物215が89.4%であった。
【0093】
〔実施例2〜8、比較例2〜5〕
次に、酸の添加量を変化させてさまざまなpH条件下で反応を実施した。
下記実験例に従い中間体Aの残存率及び例示化合物215の生成率をHPLC測定による面積(%)で求めた。
<実験例>
中間体A 5.6g(40mmol)、ピバロイルアセトニトリル11.01g(88mmol)に水を100mL加えて室温で攪拌し、この混合液に12M塩酸水溶液をX(mL)及び2M水酸化ナトリウム水溶液Y(mL)を添加した(内温25℃,pH測定結果は表4に記載)。内温50℃で4,10時間後の反応液をサンプリングしてHPLC測定による面積(%)で中間体Aの残存率と例示化合物215の生成率を求めた。
【0094】
【表30】

〔実施例9〜12〕
続いて、温度および反応溶媒を表5に示す条件に変更した実験例を下記に示す。
<実験例>
中間体A 5.6g(40mmol)、ピバロイルアセトニトリル11.01g(88mmol)に表5の溶媒に加えて室温で攪拌し、この混合液に12M塩酸水溶液を1mL添加した(塩酸量は実施例5と等量)。内温を表5に記載した値となるように調整し、10時間後の反応液をサンプリングしてHPLC測定による面積(%)で中間体Aの残存率と例示化合物215の生成率を求めた。
【0095】
【表31】

【0096】
上記表4及び5に示すように、一般式(II)で表されるヒドラジン化合物、一般式(III)で表される化合物、反応溶媒及び酸性化剤を含む混合液の仕込み時のpHが、3.5〜9.0(25℃)の範囲内にあると、反応速度は若干低下するが、例示化合物215の生成率が高くなることがわかる。なお、比較例1〜3では副生成物が10%以上であり、10時間反応でも例示化合物215の生成率が上昇しない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)で表される5−アミノピラゾール誘導体の製造方法において、一般式(II)で表されるヒドラジン化合物と一般式(III)で表される化合物を反応条件1及び反応条件2を満たす条件下で反応させることを特徴とする製造方法。
反応条件1 :
反応溶媒として水系溶媒を用いること
反応条件2 :
一般式(II)で表されるヒドラジン化合物、一般式(III)で表される化合物、該反応溶媒を含む混合液において、仕込み時の該混合液のpHが、3.2〜9.0(25℃)の範囲内にあること
【化1】

(式中、Rはn価の含窒素6員環複素環基を表し、Rは、脂肪族基、芳香族基又は複素環基を表し、Xは、酸素原子又はNHを表す。nは1乃至3の整数である。)
【請求項2】
前記一般式(I)で表される5−アミノピラゾール誘導体が下記一般式(I’)で表される5−アミノピラゾール誘導体であることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【化2】

(式中、Rはハロゲン原子、脂肪族基、芳香族基、複素環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、複素環オキシ基、アシルオキシ基、アミノ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル又はアリールスルホニルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チオ基、スルファモイル基、アルキル又はアリールスルフィニル基、アルキル又はアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリール又は複素環アゾ基、イミド基、ホスフィニルオキシ基、又はホスフィニルアミノ基から選ばれる置換基を有してもよい2価の含窒素6員環複素環基を表し、RおよびR’はそれぞれ独立に脂肪族基、芳香族基又は複素環基を表す。)
【請求項3】
前記一般式(I’)で表される5−アミノピラゾール誘導体が下記一般式(I’’)で表される5−アミノピラゾール誘導体であることを特徴とする請求項2に記載の製造方法。
【化3】

(式中、Rは水素原子、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基又はアリールチオ基を表し、Qは置換基を有していても良い炭素原子もしくは窒素原子を表し、R21およびR21’はそれぞれ独立に炭素数1〜5のアルキル基を表す。)
【請求項4】
仕込み時の前記混合液のpHを、酸若しくは塩基又は酸及び塩基を添加することで3.2〜9.0(25℃)の範囲に調整することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
前記混合液の仕込み時のpHが、3.5〜8.7(25℃)の範囲内にあることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
反応温度が30〜100℃であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
前記反応溶媒が水単独溶媒であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。

【公開番号】特開2010−77066(P2010−77066A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−246866(P2008−246866)
【出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】