説明

AC/DCアダプタおよび電源システム

【課題】待機電力の低減が可能なAC/DCアダプタを提供する。
【解決手段】平滑化を図る電解コンデンサC3は、リップル電圧を規格値未満に抑制する規格インピーダンスよりも大きいインピーダンスを備える。1次電源プラグ11をアウトレットに接続した状態では、電圧ラインDC+に発生するリップル電圧が規格値よりも大きい。コンパレータ31はリップル電圧が閾値よりも大きいときに出力電圧を待機電圧まで低下させる。負荷の入力回路には、電解コンデンサC3と合成されたインピーダンスが規格インピーダンス以下となる特性を有するコンデンサが接続される。2次電源プラグ17が負荷に接続されたときはリップル電圧が規格値未満に抑制され、コンパレータ31は出力電圧を定格電圧に復帰させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気機器に使用するAC/DCアダプタの待機電力を低減する技術に関し、さらに詳細にはAC/DCアダプタが単体状態のときだけでなく電気機器に接続されたときにも待機電力を低減する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気機器の待機時消費電力(以後、待機電力という)による電力の浪費を軽減することが一層重要になってきている。待機電力とは、電気機器がその本来の効用を発揮していないときに消費する電力のことをいい、たとえばテレビ、ビデオデッキ、エアコンなどがリモコンによる操作を待ち受けているときに消費する電力などがそれに該当する。ノートブック型携帯式コンピュータ(以下、ノートPCという。)は、携帯時には内蔵の電池から電力の供給を受けるが、オフィスでは商用電源の交流電圧を直流電圧に変換するAC/DCアダプタから電力の供給を受けて動作する。
【0003】
AC/DCアダプタは、ノートPCの発熱量の低減、軽量化、および小型化などの理由で、ノートPCから分離した装置として提供される。AC/DCアダプタは一次電源プラグが商用電源のアウトレットに接続され2次電源プラグがノートPCの電源ジャックに接続される。アウトレットは机の下の床面や壁などのような利用者がアクセスしにくい場所にあるので、通常の使用状態では、2次電源プラグを接続しないときにも一次電源プラグはアウトレットに接続している。
【0004】
一次電源プラグが商用電源のアウトレットに接続され、2次電源プラグがノートPCのジャックに接続されていないAC/DCアダプタの状態を単体状態といい、2次電源プラグがノートPCのジャックに接続された状態を接続状態ということにする。AC/DCアダプタは内部の一次側に発振回路を有しているため、単体状態でも一次プラグが商用電源に接続されている限り発振回路が動作し続けて待機電力が発生する。AC/DCアダプタの本体には、一般的にコスト、安全性および操作性などの観点から単体状態のときに発振回路を停止する機械的なスイッチは設けていない。
【0005】
特許文献1は、制御端子を備えるAC/DCアダプタが単体状態および接続状態のいずれにおいても、PWM回路を間欠的に動作させて待機電力を低減する技術を開示する。特許文献2は、電子機器に2線コードを用いて接続するACアダプタの待機電力を削減する技術を開示する。この技術においては、ACアダプタの中に損失が小さい無負荷時用の電源回路と定格負荷用の電源回路を用意し、出力電圧の大きさを検出してプラグが電子機器に接続されたか否かを判断していずれかの電源回路に切り換えている。
【0006】
特許文献3は、待機状態にあるACアダプタの動作を2本の電線を使って完全に停止して待機電力を節減する技術について開示する。機器のスイッチがオフになって出力電圧が低下すると、フォト・カプラが動作してラッチ回路をリセットし発振回路を停止させる。また、機器のスイッチがオンになると、内部電池から流れた電流を電流検出回路が検出し、フォト・カプラを動作させることによってラッチ回路をセットして発振回路を動作させる。このような構成によって2本の電線であっても機器側のスイッチのオンおよびオフに応じて発振回路の動作を制御することができる。さらに、ACアダプタを機器から外した時にも発振回路を停止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4489748号
【特許文献2】特開2003−111418号公報
【特許文献3】特開2000−308257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の発明では、待機時にAC/DCアダプタを間欠動作させるために2次電源プラグに制御端子を必要とする。ノートPCは、プロセッサ、ディスプレイ、ハードディスク・ドライブ、および電池を充電する充電器などが多くの電力を消費する。AC/DCアダプタの定格電力は経済性の観点から、システムが最大消費電力で動作するときには電池の充電ができないように選定する場合がある。この場合、システムの消費電力とAC/DCアダプタの定格電力の差を利用して電池を充電するため、システムは現在接続されているAC/DCアダプタの定格電力を認識する必要がある。
【0009】
1つのノートPCに、さまざまな定格電力のAC/DCアダプタが接続できれば都合がよい。たとえば、オフィスでは大きな容量のAC/DCアダプタを使用すれば電池の充電を常に確保しておくことができる。これに対して移動先では容量の小さなAC/DCアダプタを使用すれば、携帯時の負担が軽減する。そのときAC/DCアダプタが2次電源プラグに識別端子を設けておけば、2次電源プラグが接続されたときにシステムがAC/DCアダプタの定格電力を認識することができる。特許文献1の発明のように制御端子をPWM回路の制御に利用する場合には、さらに識別端子を設けて2次電源プラグを4端子にするか、識別端子を設けないで当該ノートPCに専用のAC/DCアダプタだけを使用するといった不都合が生ずることになる。
【0010】
2線式で待機電力を低減する特許文献2の発明では、無負荷時用の電源回路は常時動作しており、また、2つの電源系統を用意する必要がある。特許文献3の発明では、機器の内部に内部電池を設けてACアダプタに電力を供給する必要がある。そこで、2本の電力回路だけを利用して、AC/DCアダプタが電力を供給する必要がない待機状態にあることを検出し待機電力を低減する方法が必要となる。
【0011】
そこで本発明の目的は、単体状態および接続状態のいずれにおいても待機電力を低減することができるAC/DCアダプタを提供することにある。さらに本発明の目的は、電力回路だけでAC/DCアダプタの待機状態を検出して消費電力を低減することができるAC/DCアダプタを提供することにある。さらに本発明の目的はそのようなAC/DCアダプタと電気機器で構成された電源システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の原理は、出力電圧に重畳されるリップル電圧の大きさをAC/DCアダプタが検出して、AC/DCアダプタが自動的に待機電力の低減動作または通常動作をする点にある。ここに待機電力の低減動作は、出力電圧を低下させる動作またはスイッチング周期を長くする動作とすることができる。通常動作は、定格電圧を出力して電気機器に電力を供給できる動作とすることができる。
【0013】
本発明では、AC/DCアダプタが、電気機器に接続された接続状態で電力供給が必要な状態と、接続状態でも電力供給が必要でない状態または電気機器に接続されない単独状態のいずれの状態にあるかをリップル電圧の大きさで検出する。電力供給が必要な状態と電力供給が不要な状態をリップル電圧で識別するために、リップル電圧を低下させる平滑コンデンサの静電容量、等価直列抵抗、および等価直列インダクタンスまたはそのいずれかの差を利用することができる。以下、平滑コンデンサの静電容量、等価直列抵抗、等価直列インダクタンスの総合特性をインピーダンスと称す。
【0014】
【数1】

【0015】
ここに、Zは平滑コンデンサのインピーダンス、Cは静電容量、Rは等価直列抵抗、Lは等価直列インダクタンスとする。
【0016】
本発明にかかるAC/DCアダプタは、交流電圧を直流電圧に変換して電気機器に電力を供給する。スイッチング回路がメイン・スイッチにスイッチング動作をさせると出力電圧にはリップル電圧が重畳される。リップル電圧検出回路は電気機器に対する接続状態および電気機器から切り離された単独状態のときのリップル電圧を検出する。AC/DCアダプタの中に十分な平滑コンデンサを設けないことにより、単独状態では必ず所定値以上のリップル電圧を発生させることができる。
【0017】
待機電力制御回路は、リップル電圧が所定値以上のときに単独状態であると判断してAC/DCアダプタの待機電力を低減させる。このような構成によれば、AC/DCアダプタが単独状態または接続状態であることを2線の電力回路だけで判断することができるため、2次電源プラグ、AC/DCアダプタ本体、および電気機器の構成を簡素化することができる。
【0018】
AC/DCアダプタが出力電圧に重畳するリップル電圧を低下させる第1の平滑コンデンサを有し、リップル電圧が、電気機器に接続されたときに第1の平滑コンデンサと電気機器の入力回路が備える第2の平滑コンデンサの合成インピーダンスによりAC/DCアダプタに要求されるリップル電圧の規格値未満に低下するように構成することができる。この場合、第1の平滑コンデンサのインピーダンスはリップル電圧を、単独状態のときに異常発熱や異常騒音などが生じない程度まで抑制でき、かつ規格値までは抑制できない値にすることができる。
【0019】
第1の平滑コンデンサと第2の平滑コンデンサを合成したインピーダンスは、リップル電圧を規格値未満に抑制するために必要な値に決定することができる。第2の平滑コンデンサが、第1の平滑コンデンサを補うインピーダンス特性を備えることで、電気機器に接続されたときには確実にリップル電圧を規格値未満に抑制することができる。
【0020】
第1の平滑コンデンサのインピーダンスを大きくし、第2の平滑コンデンサのインピーダンスを小さくするほど、リップル電圧の差で単独状態と接続状態を区別し易くなるが、単独状態でのリップル電圧が増加しすぎることは好ましくない。第1の平滑コンデンサと第2の平滑コンデンサのインピーダンス比を1:1から2:1の範囲にすると、単独状態と接続状態を確実に区別できる程度までリップル電圧を増加させ、かつ、単独状態のときに増加したリップル電圧によりAC/DCアダプタに異常発熱や異常騒音が発生することを防ぐことができる。
【0021】
待機電力制御回路は、リップル電圧が所定値以上のときは出力電圧を定格電圧よりも低い待機電圧まで低下させ、所定値未満のときには出力電圧を定格電圧に復帰させるようにスイッチング回路を制御することができる。出力電圧を低下させることで、AC/DCアダプタは、2次側回路のデバイスに生ずる漏洩電流を低下させて待機電力を低減することができる。また、出力電圧をゼロにしないで制御回路を動作させることで、自らが単独状態か接続状態かを簡素な回路で判断して消費電力の低減動作および通常動作をすることができるようになる。
【0022】
電気機器が第2の平滑コンデンサの入力回路に対する接続と切断を制御する場合に、電池の過放電や取り外しなどの事情で第2の平滑コンデンサを接続できない場合がある。待機電力制御回路は、出力回路に流れる電流が所定値以上のときに出力電圧を待機電圧から定格電圧に復帰させようにすれば、待機電圧を利用して出力電流を増加させることで定格電圧に復帰させて電力供給を開始することができる。
【0023】
スイッチング回路がメイン・スイッチをPWM制御で動作させるときは、スイッチング回路は、リップル電圧が所定値以上のときにメイン・スイッチの動作周期を所定数スキップする間欠発振動作をすることができる。間欠発振動作をすることにより周期が一定のPWM制御の場合であってもスイッチング周波数を低下させてメイン・スイッチのスイッチング損失を低減することができる。待機電圧は、リップル電圧検出回路および待機電力制御回路の動作が不安定にならない範囲でできるだけ低くしたほうが、より多くの待機電力を低減できるので望ましいが、本発明では定格電圧の25%以下にすることができる。
【0024】
本発明の他の態様では、電池パックの搭載が可能な携帯式コンピュータと携帯式コンピュータに電力を供給するAC/DCアダプタを含んで構成された電源システムを提供する。AC/DCアダプタは第1の平滑コンデンサを備える。携帯式コンピュータは入力回路に、AC/DCアダプタが接続されたときにリップル電圧をAC/DCアダプタに要求される規格値未満に低下させる第2の平滑コンデンサを備える。携帯式コンピュータは、第2の平滑コンデンサの入力回路に対する接続と切断を制御するようにすれば、AC/DCアダプタが接続状態であっても電力供給が不要の時に、第2の平滑コンデンサの接続を制御して待機電力を低減することができる。システムは、携帯式コンピュータがパワー・オフ状態の間において、充電が必要なときに第2の平滑コンデンサを接続し充電が終了したときに切断することができる。
【0025】
携帯式コンピュータは、待機電圧を出力しているときにスイッチの押下に応じて出力回路に所定値以上の電流を流すブリーダ抵抗を備え、待機電力制御回路は、ブリーダ抵抗に流れる電流を検出して待機電圧から定格電圧に復帰させるようにスイッチング回路を制御するようにしてもよい。その結果、携帯式コンピュータの電池パックが過放電になって第2の平滑コンデンサを入力回路に接続できない場合でもブリーダ抵抗に電流を流して出力電流を増加させて定格電圧に復帰させることができる。ブリーダ抵抗のスイッチは、パワー・ボタンと兼用にするとユーザに操作上の負担を与えることが少なく、さらに携帯式コンピュータの筐体にスイッチを追加する必要がなくなる。
【発明の効果】
【0026】
本発明により、単体状態および接続状態のいずれにおいても待機電力を低減することができるAC/DCアダプタを提供することができた。さらに本発明により、電力回路だけでAC/DCアダプタの待機状態を検出して消費電力を低減することができるAC/DCアダプタを提供することができた。さらに本発明によりそのようなAC/DCアダプタと電気機器で構成された電源システムを提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】AC/DCアダプタの概略の構成を示す機能ブロック図である。
【図2】ノートPCの概略の構成を示す機能ブロック図である。
【図3】AC/DCアダプタとノートPCで構成された電源システムの動作を説明するフローチャートである。
【図4】図3の手順における出力電圧とそれに重畳するリップル電圧の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
[AC/DCアダプタの構成]
図1は、本実施の形態にかかるAC/DCアダプタ10の概略の構成を示す機能ブロック図である。図2は、AC/DCアダプタから電力の供給を受けて動作するノートPC100の概略の構成を示す機能ブロック図である。AC/DCアダプタ10は、交流電源のアウトレットに接続する1次電源プラグ11とノートPC100の電源ジャック101に接続する2次電源プラグ17を含む。1次電源プラグ11には1次側回路13が接続され、1次側回路13には絶縁トランスITRを介在して2次側回路15が接続されている。また2次側回路15は、電圧ラインDC+、識別ラインIDおよびグランド・ラインGNDの3つのラインで2次電源プラグ17に接続される。
【0029】
1次電源プラグ11には、交流電圧を全波整流する整流ブリッジ・ダイオード21が接続される。整流ブリッジ・ダイオード21の出力には全波整流された直流電圧を平滑化する電解コンデンサC1が接続されている。絶縁トランスITRは、1次巻線P、二次巻線Sおよび補助巻線Aで構成されている。1次巻線Pのプラス端子には整流ブリッジ・ダイオード21の+端子が接続され、マイナス端子には整流ブリッジ・ダイオード21の−端子との間にメイン・スイッチとして構成された電界効果トランジスタ(FET)1が接続されている。FET1のゲートはパルス幅変調IC(PWM−IC)25の出力端子OUTに接続されている。
【0030】
補助巻線Aのプラス端子にはダイオードD1のアノードが接続され、ダイオードD1のカソードはPWM−IC25の電源端子Vccに接続されている。PWM−IC25は、1次電源プラグ11がアウトレットに接続されている限り、補助巻線Aから電力の供給を受けて動作することができる。ダイオードD1のカソードと補助巻線Aのマイナス端子との間には、電解コンデンサC2が接続されている。電解コンデンサC2は、ダイオードD1が半波整流した直流電圧を平滑化する。
【0031】
1次巻線Pのプラス端子とダイオードD1のカソードとの間には起動抵抗R1が接続されている。起動抵抗R1は、1次電源プラグ11がアウトレットに接続されたときに、PWM−IC25の電源端子Vccに電圧を印加して動作を開始させる。PWM−IC25は、FET1のオン/オフを制御して電圧ラインDC+から出力する出力電圧を制御するICコントローラである。PWM−IC25は、FET1のオン/オフの周期を一定にしてオン期間(デューティ比)を可変制御することにより絶縁トランスITRの1次巻線Pに印加される電圧を制御する。
【0032】
PWM−IC25は、出力端子OUTと、電源端子VCCと、フィード・バック端子FBを備えている。出力端子OUTは、FET1を出力電圧に応じたデューティ比で制御するための信号をゲートに送る。電源端子VCCは、PWM−IC25が動作するための電力を受け取る。フィード・バック端子FBには、フォト・トランジスタPTRが接続される。フィード・バック端子FBは、電圧ラインDC+の出力電圧を定格電圧または後に説明する待機電圧に維持するためにデューティ比を制御する信号をフォト・トランジスタPTRから受け取る。
【0033】
フォト・トランジスタPTRは、2次側回路15のフォト・ダイオードLEDと一体に形成されてフォト・カプラを構成する。フォト・カプラは、絶縁トランスITRの1次側回路13と2次側回路15との間を絶縁する機能を果たす。フォト・カプラに代えて同様の絶縁機能を備えるソリッド・ステート・リレーや電磁リレーを採用することもできる。1次側回路13は、これまでのAC/DCアダプタと同じ構造を採用することができる。これまでのAC/DCアダプタでは、1次電源プラグがアウトレットに接続されると、自動的にPWM−ICが動作して2次電源プラグがノートPC100に接続されていないときも定格電圧を出力するため大きな待機電力を消費していた。
【0034】
2次巻線Sのプラス端子にはダイオードD2のアノードが接続され、ダイオードD2のカソードにはインダクタLの一方の端子が接続されている。インダクタLの他方の端子は電圧ラインDC+に接続されている。電圧ラインDC+と、2次巻線Sのマイナス端子に接続されるグランド・ラインGNDとの間には、電解コンデンサC3が接続されている。インダクタLと電解コンデンサC3は、ダイオードD2が半波整流した電圧からリップル成分を除去して出力電圧を平滑化する平滑化回路を構成する。
【0035】
従来のAC/DCアダプタでは、電解コンデンサC3のインピーダンスは、出力電圧に重畳するリップル電圧を規格値未満に抑制するだけの十分小さな値にしている。出力電圧に重畳するリップル電圧をAC/DCアダプタに要求される規格値未満に抑制するために電解コンデンサC3が必要とするインピーダンスを規格インピーダンスということにする。AC/DCアダプタ10では、電解コンデンサC3のインピーダンスを規格インピーダンスよりも大きい値にしている。
【0036】
ただし、ノートPC100の入力回路に接続される積層セラミック・コンデンサC5が接続されることで電解コンデンサC3との並列回路が形成され、AC/DCアダプタ10の電解コンデンサC3のインピーダンスを補うようになっている。その合成したインピーダンスを充分小さくすることでノートPC100に電力を供給する時点ではリップル電圧は規格値未満に抑制される。したがって、AC/DCアダプタ10は、2次電源プラグ17がノートPC100の電源ジャック101に接続されていないときには、出力電圧に規格値以上のリップル電圧が重畳される。
【0037】
電圧ラインDC+とグランド・ラインGNDとの間には、直列に接続された分圧抵抗R2、R3が接続されている。分圧抵抗R2と分圧抵抗R3との接続部は、PWM−IC25が出力電圧を制御するための制御電圧V1を生成する。さらに、電圧ラインDC+とグランド・ラインGNDとの間には、直列に接続された発光ダイオードLED、電流制限抵抗R4、およびシャント・レギュレータSRが接続されている。分圧抵抗R2と分圧抵抗R3の接続点は、シャント・レギュレータSRの基準電圧(REF)端子に接続されており、REF端子には制御電圧V1が供給される。
【0038】
分圧抵抗R2、R3、電流制限抵抗R4、発光ダイオードLED、およびシャント・レギュレータSRは、AC/DCアダプタ10の出力電圧を制御するフィード・バック回路を構成する。ここで、2次電源プラグ17がノートPC100に接続されていると仮定してフィード・バック回路が出力電圧を制御するときの動作を説明する。PWM−IC25が所定のデューティ比でFET1を制御して電圧ラインDC+に定格電圧を出力している。ノートPC100の消費電力が増大して出力回路の電圧が低下すると制御電圧V1も低下する。
【0039】
シャント・レギュレータSRは、制御電圧V1が低下すると内部のベース電流が減少してコレクタ電流も減少し、発光ダイオードLEDに流れる制御電流I1を低下させる。シャント・レギュレータSRは、制御電圧V1が上昇すると制御電流I1を増加させる。フォト・ダイオードLEDは、制御電流I1の大きさに応じた強さで発光する。フォト・ダイオードLEDからの発光量としての出力は、フォト・トランジスタPTRを介してPWM−IC25のフィード・バック端子FBに供給される。
【0040】
PWM−IC25は、フォト・ダイオードLEDに流れる制御電流I1が大きくなると出力端子OUTからデューティ比が小さい信号を出力して出力電圧を低下させ、制御電流I1が小さくなるとデューティ比が大きい信号を出力して出力電圧を増加させて出力電圧を一定の値に維持する。識別抵抗R8は、識別ラインIDとグランド・ラインGNDとの間に接続されている。識別抵抗R8は、2次電源プラグ17が接続されたときにノートPC100が抵抗値からAC/DCアダプタ10の定格容量を認識するために利用される。
【0041】
AC/DCアダプタ10は、さらに出力電圧に重畳されるリップル電圧を検出して出力電圧を定格電圧と待機電圧の間で制御するコンパレータ31を含む。出力電圧が待機電圧まで低下すると、2次側回路15に接続される演算増幅器やコンパレータなどにおいて、グランドに漏洩する電流が低下して待機電力を低減することができる。待機電力を低減するためには待機電圧はできるだけ低い方がよいが、その限界は2次側回路15に接続されるトランジスタが正常に動作する範囲で選定することができる。待機電圧は定格電圧の25%以下にすることができ、一例として定格電圧が20Vのときに待機電圧を5Vにすることができる。
【0042】
コンパレータ31の一方の入力端子はコンデンサC4を通じて電圧ラインDC+に接続され、他方の入力端子は基準電圧REFに接続される。コンパレータ31の出力端子は抵抗R5を通じて発光ダイオードLEDのカソードに接続される。2次電源プラグ17が電源ジャック101に接続されないために、積層セラミック・コンデンサC5を平滑コンデンサとして利用できないときは、一例として電圧ラインDC+に約5V(ピーク間)のリップル電圧が発生する。2次電源プラグ17が電源ジャック101に接続されたときは、合成された平滑コンデンサC3、C5のインピーダンスが規格値以下になるため一例としてリップル電圧は250mV程度まで低下する。
【0043】
コンパレータ31は、リップル電圧が所定値以上のときに出力がグランド・レベルのローになる。コンパレータ31はローを出力するときは、AC/DCアダプタ10が単独状態か、接続状態であっても後に説明するように電解コンデンサC2に直列に接続されるFET3がオフ状態であると判断しているといえる。このとき抵抗R5の抵抗値は、出力電圧を待機電圧まで低下させる値に相当する制御電流I1が発光ダイオードLEDに流れるように決定されている。
【0044】
コンパレータ31は、リップル電圧が所定値未満のときに出力が高インピーダンスのハイになり発光ダイオードLEDに流れる制御電流I1に影響を与えない。したがって、コンパレータ31の出力がハイのときには、制御電流I1はシャント・レギュレータSRにより制御され出力電圧は定格電圧に維持される。なお、コンパレータ31が検出するリップル電圧の大きさはピーク間電圧に限定するものではなく、平均電圧や実効値とすることもできる。
【0045】
グランド・ラインGNDには、電流センス抵抗R7が接続されている。AC/DCコンバータ10は、さらに出力電圧DC+が待機電圧のときに出力電流I2が所定値以上であることを検出して出力電圧DC+を定格電圧に復帰させるための差動増幅器33とコンパレータ35を含む。差動増幅器33の2つの入力端子は、電流センス抵抗R7の両端に接続され、出力がコンパレータ35の一方の入力端子に接続される。
【0046】
コンパレータ35の他方の入力端子には基準電圧REFが接続される。差動増幅器33は、センス抵抗R7を流れる電流I2に比例する電圧を増幅して出力する。基準電圧REFは、電流センス抵抗R7に流れる出力電流I2が1〜2A程度に相当する電圧に設定されている。コンパレータ35の出力は抵抗6を通じてシャント・レギュレータSRのREF端子に接続されている。
【0047】
コンパレータ35は、出力電圧が待機電圧のときに差動増幅器33の出力により、出力回路に1〜2A程度の出力電流I2が流れたことを検出すると、出力がグランド・レベルのローになる。コンパレータ35の出力がローになると基準電圧V1は低下して制御電流I1が低下するため出力電圧は上昇する。このときコンパレータ31はローを出力するが、抵抗R6の抵抗値は出力電圧を定格電圧まで上昇させる値に相当する制御電流I1が発光ダイオードLEDに流れるように、制御電圧V1を維持する値に設定されている。コンパレータ35は、出力電流I2が所定値未満のときに出力が高インピーダンスのハイになり出力電圧と分圧抵抗R2、R3で決まる制御電圧V1に影響を与えない。
【0048】
なお、図1は本実施の形態を説明するために、本実施の形態に関連する主要なハードウエアの構成および接続関係を簡略化して記載したに過ぎないものである。ここまでの説明で言及した以外にも、AC/DCアダプタ10を構成するには多くのデバイスが使われる。しかしそれらは当業者には周知であるので、ここでは詳しく言及しない。図1で記載した複数のブロックを1個の集積回路もしくは装置としたり、逆に1個のブロックを複数の集積回路もしくは装置に分割して構成したりすることも、当業者が任意に選択することができる範囲においては本発明の範囲に含まれる。
【0049】
[ノートPCの構成]
つぎにノートPC100の構成を説明する。電源ジャック101はノートPC100の筐体に設けられており2次電源プラグ17が接続される。電源ジャック101は、AC/DCアダプタ10の出力回路に対応する電圧ラインDC+、識別ラインIDおよびグランド・ラインGNDで構成される入力回路に接続されている。電圧ラインDC+とグランド・ラインGNDの間には、直列に接続された積層セラミック・コンデンサC5とFET3が接続されている。FET3はAC/DCアダプタ10の出力電圧に重畳されるリップル電圧の大きさを制御するスイッチに相当する。
【0050】
積層セラミック・コンデンサC5が接続されることで電解コンデンサC3との並列回路が形成され、AC/DCアダプタ10の電解コンデンサC3のインピーダンスを補うようになっている。したがって、その合成したインピーダンスを充分小さくすることで、AC/DCアダプタ10がノートPC100に接続されたときに、電解コンデンサC3と積層セラミック・コンデンサC5のインピーダンスが合成されて、ノートPC100の電圧ラインDC+に重畳されるリップル電圧が規格値未満に収まる。
【0051】
電解コンデンサC3のインピーダンスの大きさは、2次電源プラグ17が引き抜かれた状態で出力回路に発生するリップル電圧が、AC/DCアダプタ10に異常な発熱、騒音またはノイズなどをもたらさない範囲を下限とし、かつ、コンパレータ31がリップル電圧により2次電源プラグ17が電源ジャック101に接続されたか引き抜かれたかを検出できる範囲を上限としてその間で決定することができる。一例では、電解コンデンサC3と積層セラミック・コンデンサC5のインピーダンスの比を1:1〜2:1程度の範囲とすることができる。
【0052】
ノートPC100には、一般的に入力回路に混入するノイズを除去するためのコンデンサが設けられるが、その静電容量は積層セラミック・コンデンサC5に比べてはるかに小さい。また、AC/DCアダプタ10が規格インピーダンスの平滑コンデンサを実装している場合には、出力電圧に重畳するリップル電圧は規格値未満まで十分に抑制されるため、ノイズ除去用のコンデンサを利用したり、ノートPC100に平滑コンデンサを追加したりしても、リップル電圧の差を十分に確保できないため2次電源プラグ17の挿抜を検出することは困難である。
【0053】
電圧ラインDC+とグランド・ラインGNDの間にはさらに直列に接続されたブリーダ抵抗R9とパワー・ボタンPBが接続されている。ブリーダ抵抗R9は、ノートPC100がパワー・オフ状態でかつAC/DCアダプタ10が待機電圧を出力しているときに、パワー・ボタンPBの押下により電流センス抵抗R7に所定値以上の出力電流I2を流す役割を果たす。
【0054】
AC/DCアダプタ10に実装されているコンパレータ35の基準電圧REFは、ノートPC100がパワー・オフ状態のときは出力電流I2が小さいためハイを出力し、パワー・ボタンPBの押下により待機電圧でブリーダ抵抗R9に電流が流れるとローを出力するように決定することができる。識別ラインIDは、パワー・コントローラ103に接続されており、EC107はパワー・コントローラ103から読み取った識別抵抗R8の抵抗値を利用してノートPC100の電力管理を行う。
【0055】
電圧ラインDC+には、FET2およびダイオードD3が直列に接続され、ダイオードD3のカソードは切換回路109に接続されている。FET2は、接続状態のAC/DCアダプタ10が待機電圧を出力している間はオフになり、規格値を超えるリップル電圧が内部に進入しないようにする。充電器105はAC/DCアダプタ10の定格電力がシステムの消費電力に対して余裕があるときに、AC/DCアダプタ10の電力により電池パック111を充電することができる。
【0056】
AC/DCアダプタ10は、DC/DCコンバータ113に供給する電力が所定値未満のときに、充電器105に電力を供給して電池パック111を充電することができる。充電器105の電力端子は、1次側がFET2のドレインに接続され2次側は切換回路109に接続されている。充電器105の制御端子はエンベデッド・コントローラ(EC)107に接続されている。
【0057】
パワー・コントローラ103は、FET2、FET3、切換回路109およびDC/DCコンバータ113を制御する半導体論理回路である。パワー・コントローラ103にはパワー・ボタンPBが接続されている。パワー・ボタンPBは、ノートPC100の筐体表面に設けられており、ノートPC100に電源を投入するために使用する。パワー・ボタンPBのブリーダ抵抗R9に接続される端子、FET3の制御端子、およびパワー・コントローラ103に接続される端子は押下されたときにだけオンになるように連動して動作する。
【0058】
EC107はノートPC100の電力および温度を管理するマイクロ・コンピュータである。EC107はパワー・コントローラ103に指示して、ノートPC100の電力を制御する。電池パック111は、スマート・バッテリィ・システムに適合しており、EC107は電池パック111から電池の情報を取得して充電器105を制御する。切換回路109は、DC/DCコンバータ113に対する電力源をAC/DCアダプタ10または電池パック111のいずれかに切り換える際および電池パック111を充電する際に系統を切り換える。
【0059】
ノートPC100は、ACPIの規格に適合しており、パワー・オン状態(S0)、サスペンド状態(S3)、ハイバネーション状態(S4)、またはソフト・オフ状態(S5)のいずれかのパワー・ステートに遷移する。ハイバネーション状態およびソフト・オフ状態では、パワー・コントローラ103およびEC107には電力が供給されるが、その他のほとんどのデバイスには電力が供給されず、ノートPC100は最低の電力を消費する。
【0060】
ハイバネーション状態とソフト・オフ状態を併せて、本明細書ではパワー・オフ状態ということにする。DC/DCコンバータ113は、複数のブロックで構成され、ノートPC100のパワー・ステートに応じた範囲のデバイスに電力を供給する。システム・コンポーネント115は、CPU、メイン・メモリ、ディスク・ドライブ、およびネットワーク・コントローラなどのハードウエアとCPUで実行されるプログラムで構成されている。EC107もシステム・コンポーネント115の一部である。
【0061】
EC107は、電池パック111またはシステム・コンポーネント115から受け取ったデータまたは情報に基づいてパワー・コントローラ103を経由してFET2、FET3のオン/オフ状態を切り換える。EC107は、ノートPC100がパワー・オン状態のときには、通常はFET2、FET3をオンに制御する。このとき、ノートPC100はAC/DCアダプタ10から定格電圧で電力の供給を受けることができる。
【0062】
EC107は、AC/DCアダプタ10からの電力供給を停止する信号をシステム・コンポーネント115または電池パック111から受け取ったときにFET3をオフにして電圧ラインDC+のリップル電圧を増加させ、出力電圧を待機電圧まで低下させてAC/DCアダプタ10の待機電力を低減することができる。EC107は、FET3をオフにするときはFET2もオフにすることでリップル電圧の大きな待機電圧がノートPC100に供給されることがないようにしている。
【0063】
具体的にはEC107はパワー・オフ状態のときに、電池パック111が充電を要求したときにはFET3をオンにしてAC/DCアダプタ10が定格電圧を出力するようにし、電池パック111が充電を要求しないときまたは充電が終了したときにはFET3をオフにしてAC/DCアダプタ10が待機電圧を出力するように制御することができる。
【0064】
ノートPC100が多数導入されている建物では、夏期の特定の時間帯に建物全体の消費電力を低下させるピーク・カット運転をすることがある。システム・コンポーネント115は、ピーク・カット運転が実行されることを、ネットワークを通じて認識する。EC107は、パワー・オン状態のときに、システム・コンポーネント115からピーク・カット運転を実行する通知を受けたときに、所定の時間の間電池パック111から電力を供給するように切換回路109を切り換える。
【0065】
EC107はそのときFET2、FET3をオフにすることでAC/DCアダプタ10の待機電力を低減することができる。このようにノートPC100は、2次電源プラグ17が電源ジャック101に接続された接続状態のときであっても、電力供給の必要がないときはFET3をオフにすることでAC/DCアダプタ10の待機電力を低減することができる。さらに、パワー・コントローラ103は、ノートPC10の起動のためにパワー・ボタンPBが押下されたときには、FET3をオンにすることができる。こうすることで、2次電源プラグ17が接続されているときにノートPC100が起動されるときは、最初はAC/DCアダプタ10が電力源になるように制御するようにして、電池パック111の電気量を確保しておくことができる。または、FET3の開閉をパワー・ボタンPBの押下と直接連動させてもよい。
【0066】
[電源システムの動作]
つぎに、AC/DCアダプタ10とノートPC100で構成された電源システムの動作を説明する。図3は、AC/DCアダプタ10とノートPC100の動作を示すフローチャートである。図4は、図3の手順における出力電圧とそれに重畳するリップル電圧の状態を示す図である。ブロック201では、1次電源プラグ11を商用電源のアウトレットに接続する。PWM−IC25は自動的に発振を開始して出力電圧が発生する。電解コンデンサC3のインピーダンスは、規格インピーダンスに満たないため出力電圧には、閾値Th1を超えるリップル電圧が重畳しブロック203でコンパレータ31はローを出力する。
【0067】
その結果ブロック205で、発光ダイオードLEDに流れる制御電流I1が増大して、PWM−IC25は出力電圧を待機電圧まで低下させる(時刻t1)。このとき、出力電流I2はゼロであるため、コンパレータ35はハイを出力し制御電圧V1には影響を与えない。この結果、AC/DCアダプタ10は単独状態での待機電力が低減する。ブロック207では2次電源プラグ17が電源ジャック101に接続される。
【0068】
コンパレータ31は1次電源プラグ11がアウトレットに接続されている間、出力電圧に重畳されるリップル電圧の大きさを監視している。ブロック209ではノートPC100においてFET3がオンになっていれば、積層セラミック・コンデンサC5がAC/DCアダプタ10の出力回路に接続されたことでリップル電圧が閾値Th2未満まで低下し(時刻t2)、コンパレータ31の出力がハイになる。このとき発光ダイオードLEDには、待機電圧が分圧抵抗R2、R3で分圧された制御電圧V1に対応する制御電流I1が流れてブロック211でPWM−IC25は出力電圧を定格電圧に制御する(時刻t3)。このとき、コンパレータ31の出力はハイになっているため制御電流I1に影響を与えない。
【0069】
差動増幅器33とコンパレータ35は1次電源プラグ11がアウトレットに接続されている間、出力電流I2の大きさを監視しているが、このとき制御電流I1は出力電流I2の大きさの影響を受けない。出力電流I2が閾値よりも大きいときはコンパレータ35が出力をローにするため制御電圧V1が所定値まで下がりPWM−IC25は出力電圧を定格電圧まで上昇させる。出力電流I2が閾値よりも小さいときは、コンパレータ35の出力はハイになり、制御電圧V1は待機電圧が分圧された値になる。そしてコンパレータ31の出力はハイになっているため、制御電流I1が定格電圧に相当する値まで増加するようPWM−IC25は出力電圧を上昇させる。
【0070】
ブロック213では、ノートPC100において、EC107が、パワー・オフ状態における電池パック111からの充電停止要求またはパワー・オン状態におけるシステム・コンポーネント115からのピーク・カット要求の有無を検知する。要求があるとEC107はブロック215ではFET2、3をオフにする(時刻t4)。その結果、ブロック217では、積層セラミック・コンデンサC5がAC/DCアダプタ10の出力回路から開放されるため、出力電圧に重畳されるリップル電圧が閾値Th1以上に増加する。
【0071】
ブロック217ではコンパレータ31の出力がローになって制御電流I1が増加し、PWM−IC25は出力電圧を待機電圧まで低下させる(時刻t5)。このとき、充電停止要求後またはピーク・カット要求後であるとすればFET2,3がオフになるので出力電流I2はコンパレータ35の閾値に比べて十分小さく、コンパレータ35はハイを出力し制御電圧V1に影響を与えず、出力電圧が待機電圧になる値に維持される。
【0072】
したがって、AC/DCアダプタ10は、ノートPC100に接続されていてもノートPC100が電力を必要としないときには待機電圧を出力することで待機電力を低減することができる。ブロック219では、EC107が電池パック111またはシステム・コンポーネント115からの出力電圧を定格電圧に復帰させる要求の有無を判断する。
【0073】
復帰要求があったときはブロック221においてパワー・コントローラ103がFET2、3をオンにする。その結果、出力電圧に重畳されるリップル電圧が閾値Th2未満に低下しブロック211で出力電圧は定格電圧まで上昇する。ここで、パワー・コントローラ103に電力が供給されないときにFET3はオフになり、FET2はオンになるように設計することを想定する。パワー・オフ状態で出力電圧が待機電圧を出力しているときに、電池パック111が過放電になったり電池パック111が取り外されたりしたときには、パワー・コントローラ103の電力が停止するためFET3をオンにできないことも予想される。
【0074】
ユーザは、ノートPC10のインディケータでAC/DCアダプタ10から電力が供給されないことを認識すると、ブロック223でノートPC100を起動するためにパワー・ボタンPBを押下する。その結果、ブリーダ抵抗R9を通じて電流が流れ出力電流I2がコンパレータ35の閾値以上に上昇する。コンパレータ35の出力はローになり抵抗R6は、シャント・レギュレータSRが制御電流I1を定格電圧に相当する値にするように制御電圧V1を制御する。このときリップル電圧は大きいためコンパレータ31の出力はローになっているが、シャント・レギュレータSRは制御電流I1を増大させ、ブロック225で出力電圧は定格電圧まで上昇する。
【0075】
この時点では出力電圧に規定値以上のリップル電圧が重畳されるため、EC107は、電力が供給されるとただちに、パワー・コントローラ103を通じてFET3をオンにしてリップル電圧を規格値未満に抑制する。ブロック227では、ノートPC100をモバイルで使用するために2次電源プラグ17が引き抜かれるとブロック203に移行して、AC/DCアダプタ10は再び単独状態で待機電力の低減動作をする。
【0076】
これまで、AC/DCアダプタ10の待機電力の低減動作は、出力電圧を待機電圧まで低下させて2次側回路15での待機電力を低減することだけに言及して説明してきた。PWM−IC25は、バースト・モード(登録商標)といわれる間欠発振モードでFET1を制御することもできる。間欠発振モードは通常、軽負荷時にPWMの発振周期を所定数だけスキップして実質的な動作周波数を低下させ待機電力の低減を図る目的で利用する。
【0077】
本発明においては、リップル電圧が所定値以上のときに待機電圧で動作させる際に、PWM−IC25を間欠発振モードに移行させてFET1のスイッチング損失を含む1次側回路13の待機電力も同時に低減することができる。なお、PWM−IC25に代えて、FET1のオン期間を一定にしてオフ期間を可変制御するパルス周波数変調IC(PFM−IC)を採用することもできる。
【0078】
これまで本発明について図面に示した特定の実施の形態をもって説明してきたが、本発明は図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の効果を奏する限り、これまで知られたいかなる構成であっても採用することができることはいうまでもないことである。
【符号の説明】
【0079】
10…AC/DCアダプタ
11…1次電源プラグ
13…1次側回路
15…2次側回路
17…2次電源プラグ
25…PWM−IC
ITR…絶縁トランス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電圧を直流電圧に変換して電気機器に電力を供給するAC/DCアダプタであって、
メイン・スイッチを制御して出力電圧を制御するスイッチング回路と、
前記電気機器に接続された接続状態および前記電気機器から切り離された単独状態のときの前記リップル電圧を検出するリップル電圧検出回路と、
前記リップル電圧が所定値以上のときに前記単独状態であると判断して前記AC/DCアダプタの待機電力を低減させる待機電力制御回路と
を有するAC/DCアダプタ。
【請求項2】
前記AC/DCアダプタが前記出力電圧に重畳するリップル電圧を低下させる第1の平滑コンデンサを有し、前記リップル電圧が、前記電気機器に接続されたときに前記第1の平滑コンデンサと前記電気機器の入力回路が備える第2の平滑コンデンサの合成されたインピーダンスにより前記AC/DCアダプタに要求されるリップル電圧の規格値未満に低下する請求項1に記載のAC/DCアダプタ。
【請求項3】
前記第1の平滑コンデンサのインピーダンスが前記リップル電圧の規格値を満たす規格インピーダンスよりも大きく、前記第2の平滑コンデンサのインピーダンスが前記規格インピーダンスと前記第1の平滑コンデンサのインピーダンスの差以下の値である請求項2に記載のAC/DCアダプタ。
【請求項4】
前記第1の平滑コンデンサと前記第2の平滑コンデンサのインピーダンス比が1:1から2:1の範囲にある請求項2または請求項3に記載のAC/DCアダプタ。
【請求項5】
前記待機電力制御回路は、前記リップル電圧が前記所定値以上のときは前記出力電圧を定格電圧よりも小さい待機電圧まで低下させ、所定値未満のときは前記出力電圧を定格電圧に復帰させるように前記スイッチング回路を制御する請求項1から請求項4のいずれかに記載のAC/DCアダプタ。
【請求項6】
前記待機電力制御回路は、前記待機電圧を出力している間に前記出力回路に流れる電流が所定値以上になったとき前記出力電圧を前記待機電圧から前記定格電圧に復帰させる請求項5に記載のAC/DCアダプタ。
【請求項7】
前記スイッチング回路が前記メイン・スイッチをPWM制御で動作させ、前記スイッチング回路は前記リップル電圧が所定値以上のときに前記メイン・スイッチの切換周期を所定数スキップする間欠発振動作をする請求項1から請求項6のいずれかに記載のAC/DCアダプタ。
【請求項8】
電気機器と該電気機器に電力を供給するAC/DCアダプタを含んで構成された電源システムであって、
前記AC/DCアダプタが、
メイン・スイッチを制御して出力電圧を制御するスイッチング回路と、
前記電気機器に接続された接続状態および前記電気機器から切り離された単独状態のときの前記リップル電圧を検出するリップル電圧検出回路と、
前記リップル電圧が所定値以上のときに前記単独状態であると判断して前記AC/DCアダプタの待機電力を低減させる待機電力制御回路とを有し、
前記電気機器が入力回路に、
前記AC/DCアダプタが接続されたときに前記リップル電圧を前記AC/DCアダプタに要求される規格値未満に低下させる平滑コンデンサを有する
電源システム。
【請求項9】
前記電気機器が、前記入力回路に対する前記平滑コンデンサの接続と切断を制御する請求項8に記載の電源システム。
【請求項10】
電池パックの搭載が可能な携帯式コンピュータと該携帯式コンピュータに電力を供給するAC/DCアダプタを含んで構成された電源システムであって、
前記AC/DCアダプタが、
メイン・スイッチを制御して出力電圧を制御するスイッチング回路と、
前記出力電圧に重畳するリップル電圧を低下させる第1の平滑コンデンサと、
前記携帯式コンピュータに接続された接続状態および前記携帯式コンピュータから切り離された単独状態のときの前記リップル電圧を検出するリップル電圧検出回路と、
前記リップル電圧が所定値以上のときに前記単独状態であると判断して前記AC/DCアダプタの待機電力を低減させる待機電力制御回路とを有し、
前記携帯式コンピュータが入力回路に、
前記AC/DCアダプタが接続されたときに前記第1の平滑コンデンサと合成されたインピーダンスで前記リップル電圧を前記AC/DCアダプタに要求される規格値未満に低下させる第2の平滑コンデンサを有する
電源システム。
【請求項11】
前記携帯式コンピュータが、システムからの指示に応じて前記第2の平滑コンデンサの前記入力回路に対する接続と切断を制御する請求項10に記載の電源システム。
【請求項12】
前記システムからの指示が、パワー・オフ状態のときに生成される前記電池パックの充電の開始または終了の指示である請求項11に記載の電源システム。
【請求項13】
前記携帯式コンピュータが、前記AC/DCアダプタが前記待機電圧を供給しているときにスイッチの押下に応じて前記AC/DCアダプタの出力回路に所定値以上の電流を流すブリーダ抵抗を有し、
前記待機電力制御回路は、前記ブリーダ抵抗に流れる電流を検出して前記待機電圧から前記定格電圧に復帰させるように前記スイッチング回路を制御する請求項10から請求項12のいずれかに記載の電源システム。
【請求項14】
電気機器に接続が可能なAC/DCアダプタが待機電力を低減する方法であって、
1次電源プラグが商用電源に接続されたときにスイッチング動作を開始するステップと、
前記AC/DCアダプタが出力電圧に重畳されたリップル電圧を検出するステップと、
前記AC/DCアダプタが前記電気機器に接続されないときに所定値以上のリップル電圧が重畳された出力電圧を生成するステップと、
前記リップル電圧が前記所定値以上のときに前記AC/DCアダプタが待機電力の低減動作をするステップと
を有する方法。
【請求項15】
前記AC/DCアダプタが前記電気機器に接続されたときに所定値未満のリップル電圧が重畳された電圧を出力するステップと、
前記リップル電圧が前記所定値未満のときに前記AC/DCアダプタが通常動作をするステップと
を有する請求項14に記載の方法。
【請求項16】
1次電源プラグと2次電源プラグを備え、電池パックを搭載する携帯式コンピュータに接続が可能なAC/DCアダプタの待機電力を低減する方法であって、
前記携帯式コンピュータが前記AC/DCアダプタの出力電圧に重畳されたリップル電圧を低下させる平滑コンデンサを入力回路に用意するステップと、
前記1次電源プラグが商用電源に接続されたときにスイッチング動作を開始するステップと、
前記2次電源プラグが前記携帯式コンピュータに接続されている間に前記携帯式コンピュータが前記平滑コンデンサを前記入力回路から切り離して前記リップル電圧を増加させるステップと、
前記リップル電圧が増加したことを検出して前記AC/DCアダプタが前記待機電力の低減動作をするステップと
を有する方法。
【請求項17】
前記2次電源プラグが前記携帯式コンピュータに接続されている間に前記携帯式コンピュータが前記平滑コンデンサを前記入力回路に接続して前記リップル電圧を低下させるステップと、
前記リップル電圧が低下したことを検出して前記AC/DCアダプタが通常動作をするステップと
を有する請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記待機電力の低減動作が前記AC/DCアダプタが出力電圧を待機電圧まで低下させる動作である請求項16または請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記携帯式コンピュータがパワー・オフ状態の間に前記電池パックから充電の要求があったときに前記平滑コンデンサを前記入力回路に接続する請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記待機電力の低減動作が前記スイッチング動作の周期を長くする動作である請求項16から請求項19のいずれかに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−178934(P2012−178934A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−41005(P2011−41005)
【出願日】平成23年2月26日(2011.2.26)
【出願人】(505205731)レノボ・シンガポール・プライベート・リミテッド (292)
【復代理人】
【識別番号】100106699
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 弘道
【復代理人】
【識別番号】100077584
【弁理士】
【氏名又は名称】守谷 一雄
【Fターム(参考)】