説明

AKTプロテインキナーゼ阻害剤としてのピリミジルシクロペンタン

本発明は、その互変異性体、分割された鏡像異性体、ジアステレオマー、溶媒和物、代謝産物、塩および薬学的に許容されるプロドラッグを含めた式Iの化合物を提供する。


AKTプロテインキナーゼ阻害剤としての本発明の化合物の使用方法、および癌などの過剰増殖性疾患の治療方法もまた提供する。さらなる態様において、本発明は、哺乳動物におけるAKTプロテインキナーゼが媒介する疾患または医学的状態を治療する方法であって、1種または複数の式Iの化合物、またはその鏡像異性体、または薬学的に許容される塩を、前記障害を治療または予防するために有効な量で前記哺乳動物に投与するステップを含む方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本願は、2007年7月5日に出願された米国仮特許出願第60/948,147号への優先権を主張し、この米国仮特許出願の全体の内容は、本明細書中に参考として援用される。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、セリン/トレオニンプロテインキナーゼ(例えば、AKTおよび関連キナーゼ)の新規阻害剤、該阻害剤を含有する医薬組成物、およびこれらの阻害剤を調製するための方法に関する。阻害剤は、例えば、哺乳動物における癌および炎症などの過剰増殖性疾患の治療に有用である。
【背景技術】
【0003】
(先行技術の説明)
プロテインキナーゼ(PK)は、ATPからの末端(ガンマ)リン酸の転移によってタンパク質のチロシン、セリンおよびトレオニン残基上におけるヒドロキシ基のリン酸化を触媒する酵素である。シグナル伝達経路を介して、これらの酵素は細胞成長、分化および増殖を調節し、すなわち、細胞寿命の事実上全ての態様は、何らかの形でPK活性に依存する(Hardie, G.およびHanks, S.(1995年)、The Protein Kinase Facts Book. I and II、Academic Press、San Diego, CA)。さらに、異常なPK活性は、乾癬などの比較的生命を脅かさない疾患から膠芽細胞腫(脳腫瘍)などの極めて悪性の疾患に亘る多数の障害に関連している。プロテインキナーゼは、治療的調節のための重要な標的クラスである(Cohen, P.(2002年)、Nature Rev. Drug Discovery、1巻、309頁)。
【0004】
重大なことに、非定型タンパク質のリン酸化および/または発現は、癌における異常な細胞増殖、転移および細胞生存の原因となる作用の1つとして報告されることが多い。多数ある中でもAkt、VEGF、ILK、ROCK、p70S6K、Bcl、PKA、PKC、Raf、Src、PDK1、ErbB2、MEK、IKK、Cdk、EGFR、BAD、CHK1、CHK2およびGSK3を含む種々のキナーゼの異常制御および/または発現は、癌に特異的に関与している。
【0005】
プロテインキナーゼは、2つの分類、プロテインチロシンキナーゼ(PTK)およびセリン−トレオニンキナーゼ(STK)を含む。プロテインキナーゼB/Akt酵素は、多種多様なヒト腫瘍において過剰発現するセリン/トレオニンキナーゼの群である。PI3K脂質生成物の最もよく特徴がわかっている標的の1つは、シグナル伝達経路内のPI3Kの下流の57KDセリン/トレオニンプロテインキナーゼAktである(Hemmings, B.A.(1997年)、Science、275巻、628頁、Hay N.(2005年)、Cancer Cell、8巻、179〜183頁)。Aktは、急性形質転換レトロウイルスAKT8のプロトオンコジーンv−aktのヒト相同体である。プロテインキナーゼAおよびCに対するその高い配列相同性により、AktはプロテインキナーゼB(PKB)ならびにAおよびCに関連するキナーゼ(RAC)とも呼ばれる。Aktの3つのアイソフォーム、すなわちAkt1、Akt2およびAkt3が存在することが知られており、これらは80%の全体的相同性を呈する(Staal, S.P.(1987年)、Proc. Natl. Acad. Sci.、84巻、5034頁、Nakatani, K.(1999年)、Biochem. Biophys. Res. Commun.、257巻、906頁、Liら(2002年)、Current Topics in Med. Chem.、2巻、939〜971頁、特許文献1)。Aktアイソフォームは、N末端側のプレクストリン相同ドメイン、キナーゼ触媒ドメインおよびC末端側の短い調節領域からなる共通のドメイン構成を共有する。また、Akt2およびAkt3はいずれもスプライス変異を呈する。PtdInd(3,4,5)Pによる細胞膜への動員時、Aktは、アイソフォームAkt1(PKBα)、Akt2(PKBβ)およびAkt3(PKBγ)についてはそれぞれT308、T309およびT305において、ならびにアイソフォームAkt1、Akt2およびAkt3についてはそれぞれS473、S474およびS472において、PDK1によってリン酸化(活性化)される。そのようなリン酸化は未知のキナーゼ(推定的にPDK2と命名される)によって起こるが、PDK1(Balendran, A.(1999年)、Curr. Biol.、9巻、393頁)、自己リン酸化(Toker, A.(2000年)、J. Biol. Chem.、275巻、8271頁)およびインテグリン結合キナーゼ(ILK)(Delcommenne, M.(1998年)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、95巻、11211頁)がこのプロセスに関与している。Akt活性化は、C−末端疎水性モチーフ内の残基Ser473におけるそのリン酸化を必要とする(Brodbeckら(1999年)、J. Biol. Chem.、274巻、9133〜9136頁、Cofferら(1991年)、Eur. J. Biochem.、201巻、475〜481頁、Alessiら(1997年)、Curr. Biol.、7巻、261〜269頁)。Aktのモノリン酸化はキナーゼを活性化するが、最大キナーゼ活性にはビス(リン酸化)が必要である。
【0006】
Aktは、アポトーシスを抑制し、血管形成および増殖の両方を強化することにより、癌に対するその影響を行使すると考えられている(Tokerら(2006年)、Cancer Res.、66巻、8号、3963〜3966頁)。Aktは、結腸(Zindaら(2001年)、Clin. Cancer Res.、7巻、2475頁)、卵巣(Chengら(1992年)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、89巻、9267頁)、脳(Haas Koganら(1998年)、Curr. Biol.、8巻、1195頁)、肺(Brognardら(2001年)、Cancer Res.、61巻、3986頁)、膵臓(Bellacosaら(1995年)、Int. J. Cancer、64巻、280〜285頁、Chengら(1996年)、Proc. Natl. Acad. Sci.、93巻、3636〜3641頁)、前立腺(Graffら(2000年)、J. Biol. Chem.、275巻、24500頁)および胃癌(Staalら(1987年)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、84巻、5034〜5037頁)を含むがこれらに限定されない多数の形態のヒト癌で過剰発現する。
【0007】
標的小分子阻害剤療法のために、PI3K/Akt/ラパマイシンの哺乳類標的(mTOR)経路が調査されている(Georgakis, G.およびYounes, A.(2006年)、Expert Rev. Anticancer Ther.、6巻、1号、131〜140頁、Granvilleら(2006年)、Clin. Cancer Res.、12巻、3号、679〜689頁)。PI3K/Aktシグナル伝達の阻害は、アポトーシスを誘発し、Aktレベルが上昇した腫瘍細胞の成長を阻害する(Kimら(2005年)、Current Opinion in Investig. Drugs、6巻、12号、1250〜1258頁、Luoら(2005年)、Molecular Cancer Ther.、4巻、6号、977〜986頁)。
【0008】
異常制御された経路を標的とし、最終的に疾患をもたらすキナーゼ阻害剤の開発は、医学および薬学界にとって大きな倫理的および商業的関心を引くものである。(1)Aktの細胞膜への動員、(2)PDK1またはPDK2による活性化、(3)基質リン酸化、または(4)Aktの下流標的のうちの1つを阻害する化合物は、単独療法として、または他の許容される手順と併用して、有益な抗癌剤となる場合がある。
【0009】
特許文献2は、とりわけ、AKT阻害剤として作用する多種多様な化合物を開示している。これらの化合物は、癌などの過剰増殖性疾患の治療において有用であると言われている。
【0010】
特許文献3および特許文献4は、とりわけ、AKT阻害剤として作用する多種多様な化合物を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開第2005/113762号パンフレット
【特許文献2】米国特許出願公開第2005/0130954号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2008/0058327号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2008/0051399号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、AKTプロテインキナーゼを阻害する新規化合物を提供する。本発明の化合物は、AKTプロテインキナーゼの阻害によって治療することができる疾患または状態のための治療剤としての有用性を有する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、一般式I
【0014】
【化1】

[式中、A、R、R1a、R、R2a、およびRは、下記の定義の通りである]を有する化合物、ならびに、その鏡像異性体および塩を含む。
【0015】
本発明は、式Iの化合物、またはその鏡像異性体、または薬学的に許容される塩を含む医薬組成物も提供する。
【0016】
さらなる態様において、本発明は、哺乳動物におけるAKTプロテインキナーゼが媒介する疾患または医学的状態を治療する方法であって、1種または複数の式Iの化合物、またはその鏡像異性体、または薬学的に許容される塩を、前記障害を治療または予防するために有効な量で前記哺乳動物に投与するステップを含む方法を提供する。本発明の方法に従って治療することができるAKTプロテインキナーゼ媒介性状態は、炎症性疾患、過剰増殖性疾患、心臓血管疾患、神経変性疾患、婦人科疾患および皮膚科疾患および障害を含むがこれらに限定されない。
【0017】
さらなる態様において、本発明は、哺乳動物におけるAKTプロテインキナーゼの産生を阻害する方法であって、式Iの化合物、またはその鏡像異性体、または薬学的に許容される塩を、AKTプロテインキナーゼの産生を阻害するために有効な量で前記哺乳動物に投与するステップを含む方法を提供する。
【0018】
さらなる態様において、本発明は、AKTプロテインキナーゼの活性を阻害する方法であって、前記キナーゼを式Iの化合物と接触させるステップを含む方法を提供する。
【0019】
本発明の化合物は、その他の既知の治療剤と組み合わせて有利に使用することができる。したがって、本発明は、式Iの化合物、またはその鏡像異性体、または薬学的に許容される塩を、第2の治療剤と組み合わせて含む医薬組成物も提供する。
【0020】
本発明は、AKTプロテインキナーゼ媒介性状態の治療における薬剤としての使用のための、式Iの化合物、ならびに、その鏡像異性体および薬学的に許容される塩も提供する。
【0021】
本発明のさらなる態様は、療法のための、式Iの化合物、またはその鏡像異性体、または薬学的に許容される塩の使用である。一実施形態において、療法はAKTプロテインキナーゼ媒介性状態の治療を含む。
【0022】
本発明は、AKTプロテインキナーゼ媒介性疾患または障害の治療のためのキットであって、式Iの化合物、またはその鏡像異性体、または薬学的に許容される塩と、容器と、場合によって、治療を示す添付文書またはラベルとを含むキットをさらに提供する。キットは、前記疾患または障害を治療するために有用な第2の医薬物質を含む第2の化合物または製剤をさらに含んでもよい。
【0023】
本発明は、本発明の化合物の調製方法、分離方法および精製方法をさらに含む。
【0024】
本発明のさらなる利点および新規な特徴は、一部は以下の記述において説明するものとし、一部は下記の詳述の考察によって当業者には明らかとなるか、または本発明の実践によって学習し得る。本発明の利点は、添付の特許請求の範囲において特に指摘する手段、組合せ、組成物および方法によって、実現および達成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
ここで本発明の特定の実施形態を詳細に参照し、その例を付随する構造および式に示す。列挙した実施形態と併せて本発明を説明するが、本発明をそれらの実施形態に限定することは意図しないことが理解される。逆に、本発明は、特許請求の範囲によって定義される通りの本発明の範囲内に含むことのできる全ての代替物、修正物および均等物を網羅することが意図される。当業者であれば、本発明の実践において使用することができる、本明細書に記載されているものと同様または同等の多数の方法および材料を認識するであろう。本発明は決して記載されている方法および材料に限定されるものではない。定義されている用語、用語の使用法、記載されている技術などを含むがこれらに限定されない、組み込まれている文献および同様の資料のうちの1つまたは複数が本出願と異なるまたは矛盾する場合、本出願が優先する。
【0026】
定義
「アルキル」という用語は、本明細書において使用する場合、1〜12個の炭素原子の飽和直鎖または分岐鎖の一価炭化水素基を指し、該アルキル基は以下に記載されている1個または複数の置換基で場合によって独立に置換されていてよい。アルキル基の例には、それだけに限らないが、メチル(“Me”、−CH)、エチル(“Et”、−CHCH)、1−プロピル(“n−Pr”、n−プロピル、−CHCHCH)、2−プロピル(“i−Pr”、i−プロピル、−CH(CH)、1−ブチル(“n−Bu”、n−ブチル、−CHCHCHCH)、2−メチル−1−プロピル(“i−Bu”、i−ブチル、−CHCH(CH)、2−ブチル(“s−Bu”、s−ブチル、−CH(CH)CHCH)、2−メチル−2−プロピル(“t−Bu”、t−ブチル、tert−ブチル、−C(CH)、2,2−ジメチルプロピル(CHC(CH)、1−ペンチル(n−ペンチル、−CHCHCHCHCH)、2−ペンチル(−CH(CH)CHCHCH)、3−ペンチル(−CH(CHCH)、2−メチル−2−ブチル(−C(CHCHCH)、3−メチル−2−ブチル(−CH(CH)CH(CH)、3−メチル−1−ブチル(−CHCHCH(CH)、2−メチル−1−ブチル(−CHCH(CH)CHCH)、1−ヘキシル(−CHCHCHCHCHCH)、2−ヘキシル(−CH(CH)CHCHCHCH)、3−ヘキシル(−CH(CHCH)(CHCHCH))、2−メチル−2−ペンチル(−C(CHCHCHCH)、3−メチル−2−ペンチル(−CH(CH)CH(CH)CHCH)、4−メチル−2−ペンチル(−CH(CH)CHCH(CH)、3−メチル−3−ペンチル(−C(CH)(CHCH)、2−メチル−3−ペンチル(−CH(CHCH)CH(CH)、2,3−ジメチル−2−ブチル(−C(CHCH(CH)、3,3−ジメチル−2−ブチル(−CH(CH)C(CH、1−ヘプチル、1−オクチルなどが挙げられる。
【0027】
「シクロアルキル」、「炭素環」、「カルボシクリル」および「カルボシクリル環」という用語は、本明細書において使用する場合、同義で使用され、3〜12個の炭素原子を有する飽和または部分不飽和環状炭化水素基を指す。「シクロアルキル」という用語は、単環および多環(例えば、二環および三環)シクロアルキル構造を含み、該多環構造は、飽和、部分不飽和または芳香族シクロアルキルまたはヘテロシクリル環と縮合している飽和または部分不飽和シクロアルキル環を場合によって含む。シクロアルキルは、本明細書に記載されている1個または複数の置換基で場合によって独立に置換されていてよい。
【0028】
シクロアルキル基の例には、それだけに限らないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、1−シクロペント−1−エニル、1−シクロペント−2−エニル、1−シクロペント−3−エニル、シクロヘキシル、1−シクロヘキス−1−エニル、1−シクロヘキス−2−エニル、1−シクロヘキス−3−エニル、シクロヘキサジエニル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、シクロウンデシル、シクロドデシル、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ビシクロ[2.2.2]オクタン、およびビシクロ[3.2.2]ノナンが挙げられる。
【0029】
「複素環」、「ヘテロシクリル」および「ヘテロシクリル環」という用語は、本明細書において使用する場合、同義で使用され、その中の少なくとも1個の環原子が窒素、酸素および硫黄から独立に選択されるヘテロ原子であり、残りの環原子はCである3〜8個の環原子の飽和または部分不飽和カルボシクリル基を指し、ここで1個または複数の環原子は以下に記載されている1個または複数の置換基で場合によって独立に置換されていてよい。基は炭素基またはヘテロ原子基であってよい。「複素環」という用語はヘテロシクロアルコキシを含む。「ヘテロシクリル」は、複素環基が飽和、部分不飽和または芳香族カルボシクリルまたはヘテロシクリル環と縮合している基も含む。複素環は、それが可能な場合、C−結合またはN−結合していてよい。例えば、ピロールから誘導される基は、ピロール−1−イル(N−結合)またはピロール−3−イル(C−結合)であってよい。さらに、イミダゾールから誘導される基は、イミダゾール−1−イル(N−結合)またはイミダゾール−3−イル(C−結合)であってよい。複素環基(2個の環炭素原子がオキソ(=O)部分で置換されている)の例は、イソインドリン−1,3−ジオニルおよび1,1−ジオキソ−チオモルホリニルである。本明細書における複素環基は本明細書に記載されている1個または複数の置換基で場合によって独立に置換されている。
【0030】
例示的なヘテロシクリル基には、それだけに限らないが、オキシラニル、アジリジニル、チイラニル、アゼチジニル、オキセタニル、チエタニル、1,2−ジチエタニル、1,3−ジチエタニル、ピロリジニル、ピペリジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、チオキサニル、ピペラジニル、ホモピペラジニル、ホモピペリジニル、オキセパニル、チエパニル、オキサゼピニル、ジアゼピニル、チアゼピニル、ジヒドロチエニル、ジヒドロピラニル、ジヒドロフラニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチエニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロチオピラニル、1−ピロリニル、2−ピロリニル、3−ピロリニル、インドリニル、2H−ピラニル、4H−ピラニル、ジオキサニル、1,3−ジオキソラニル、ピラゾリニル、ピラゾリジニル、ジチアニル、ジチオラニル、ピラゾリジニルイミダゾリニル、イミダゾリジニル、3−アザビシコ[3.1.0]ヘキサニル、3−アザビシクロ[4.1.0]ヘプタニルおよびアザビシクロ[2.2.2]ヘキサニルが挙げられる。
【0031】
「ヘテロアリール」という用語は、本明細書において使用する場合、5、6または7員環の一価芳香族基を指し、窒素、酸素および硫黄から独立に選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含有する5〜10個の原子の縮合環系(芳香族であるもののうちの少なくとも1個)を含む。ヘテロアリールは、そのようなことが可能な場合は、C−結合またはN−結合していてよい。ヘテロアリール基は、本明細書に記載されている1個または複数の置換基で場合によって独立に置換されていてよい。
【0032】
ヘテロアリール基の例には、それだけに限らないが、ピリジニル、イミダゾリル、イミダゾピリジニル、ピリミジニル、ピラゾリル、トリアゾリル、ピラジニル、テトラゾリル、フリル、チエニル、イソオキサゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、イソチアゾリル、ピロリル、キノリニル、イソキノリニル、インドリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾフラニル、シンノリニル、インダゾリル、インドリジニル、フタラジニル、ピリダジニル、トリアジニル、イソインドリル、プテリジニル、プリニル、オキサジアゾリル、トリアゾリル、チアジアゾリル、チアジアゾリル、フラザニル、ベンゾフラザニル、ベンゾチオフェニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリル、キナゾリニル、キノキサリニル、ナフチリジニル、およびフロピリジニルが挙げられる。
【0033】
「ハロゲン」という用語は、本明細書において使用する場合、フルオロ、クロロ、ブロモまたはヨードを意味する。
【0034】
「鏡像異性体」という用語は、重ね合わせることができない互いの鏡像である化合物の2個の立体異性体を指す。「ジアステレオマー」という用語は、互いの鏡像ではない光学異性体の対を指す。
【0035】
「ジアステレオマー」という用語は、互いの鏡像ではない1対の光学異性体を指す。
【0036】
「互変異性体」または「互変異性型」という用語は、低エネルギー障壁を介して相互交換可能な異なるエネルギーの構造異性体を指す。
【0037】
「薬学的に許容される」という語句は、物質または組成物が、製剤を構成するその他の成分および/またはそれを用いて治療されている哺乳動物と、化学的および/または毒物学的に適合することを示す。
【0038】
「有効量」という語句は、そのような治療が必要な哺乳動物に投与される場合に、(i)1種または複数のAKTプロテインキナーゼ、チロシンキナーゼ、さらなるセリン/トレオニンキナーゼ、および/または二重特異性キナーゼの活性が媒介する特定の疾患、状態または障害を治療または予防する、(ii)特定の疾患、状態または障害の1つまたは複数の症状を減衰、回復または解消する、あるいは(iii)本明細書に記載されている特定の疾患、状態または障害の1つまたは複数の症状の発症を予防または遅延させるために十分な化合物の量を意味する。
【0039】
「治療すること」は、ヒトなどの哺乳動物における、1種または複数のAKTプロテインキナーゼ、チロシンキナーゼ、さらなるセリン/トレオニンキナーゼ、および/または二重特異性キナーゼの活性によって少なくとも部分的に影響を受ける疾患状態を少なくとも緩和することを意味することが意図されている。「治療する」および「治療」という用語は、治療的処置と予防策または防止策との両方を指し、その目的は、望ましくない生理的変化または障害を防止または減速する(低減する)ことである。本発明の目的のために、有益なまたは望ましい臨床結果は、検出可能か検出不能かに関わらず、症状の軽減、疾患の程度の減少、疾患状況の安定(すなわち、悪化していない)、疾患進行の遅延または減速、病状の回復または寛解、および緩解(部分的か全体的かに関わらず)を含むがこれらに限定されない。「治療」は、治療を受けていない場合の予想される生存期間と比較して長い生存期間も意味し得る。治療が必要な者は、既に状態または障害を患っている者、ならびに、疾患状態になりやすいことがわかっているが、罹患していると未だ診断されておらず、疾患状態が調節および/または阻害されている者を含む。「治療すること」、「治療する」または「治療」という用語は、防止的、すなわち予防的な治療と、苦痛緩和治療との両方を包含する。
【0040】
本明細書において使用する場合、「哺乳動物」という用語は、本明細書に記載の疾患に罹患しているまたは発症するリスクがある温血動物を指し、モルモット、イヌ、ネコ、ラット、マウス、ハムスター、およびヒトを含めた霊長類を含むがこれらに限定されない。
【0041】
「添付文書」という用語は、そのような治療薬の有効性、用法、用量、投与、禁忌および/または使用に関する警告についての情報を含有する、通例は治療薬の商品包装に含まれる説明書を指す。
【0042】
「a」は、本明細書において使用する場合、1つまたは複数を意味する。
【0043】
本明細書において使用する場合、「この発明の化合物」、「本発明の化合物」および「式Iの化合物」という用語は、式Iの化合物、ならびにその互変異性体、分割された鏡像異性体、分割されたジアステレオマー、ラセミ混合物、溶媒和物、代謝産物、塩(薬学的に許容される塩を含む)および薬学的に許容されるプロドラッグを含む。
【0044】
構造に結合した置換基を定義するために連続して2個以上の基が使用される場合において、最初に命名された基は末端とみなし、最後に命名された基は対象の構造に結合しているとみなすことを理解すべきである。したがって、例えば、アリールアルキル基はアルキル基によって対象の構造に結合している。
【0045】
AKT阻害剤
本発明の式Iの化合物は、AKTプロテインキナーゼを阻害するために有用である。式Iの化合物はまた、AKTに加えて、チロシンキナーゼ、ならびにセリンおよびスレオニンキナーゼの阻害剤として有用であり得る。そのような化合物は、AKTプロテインキナーゼシグナル伝達経路ならびにチロシンおよびセリン/トレオニンキナーゼ受容体経路の阻害によって治療することができる疾患のための治療剤としての有用性を有する。
【0046】
一般に、本発明は、式Iの化合物
【0047】
【化2】

ならびにその分割された鏡像異性体、分割されたジアステレオマー、および薬学的に許容される塩[式中、
およびR1aは、H、Me、Et、ビニル、CF、CHFまたはCHFから独立に選択され、
は、H、OH、OMeまたはFであり、
2aは、H、MeまたはFであり、
は、H、Me、Et、またはCFであり、
Aは、
【0048】
【化3】

[式中、
Gは、1〜4個のR基で場合によって置換されているフェニル、またはハロゲンで場合によって置換されている5〜6員ヘテロアリールであり、
およびRは、独立に、H;OCH;F、OH、C〜CアルキルもしくはO(C〜Cアルキル)で場合によって置換されているC〜C−シクロアルキル;F、OH、C〜Cアルキル、シクロプロピルメチルもしくはC(=O)(C〜Cアルキル)で場合によって置換されている4〜6員複素環;またはOH、オキソ、O(C〜C−アルキル)、CN、F、NH、NH(C〜C−アルキル)、N(C〜C−アルキル)、シクロプロピル、フェニル、イミダゾリル、ピペリジニル、ピロリジニル、モルホリニル、テトラヒドロフラニル、オキセタニルもしくはテトラヒドロピラニルから独立に選択される1個または複数の基で場合によって置換されているC〜C−アルキルであるか、
あるいはRおよびRは、それらが結合している窒素と一緒になって、OH、ハロゲン、オキソ、CF、CHCF、CHCHOH、O(C〜Cアルキル)、C(=O)CH、NH、NHMe、N(Me)、S(O)CH、シクロプロピルメチルおよびC〜Cアルキルから独立に選択される1個または複数の基で場合によって置換されている4〜7員ヘテロシクリル環を形成し、あるいは
は、水素であり、RおよびRは、それらが結合している原子と一緒になって、1個の窒素原子を有する4〜6員ヘテロシクリル環を形成し、
およびRは、Hであるか、
あるいはRは、Hであり、RおよびRは、それらが結合している原子と一緒になって、1個または2個の環窒素原子を有する5〜6員ヘテロシクリル環を形成し、
およびRは、HまたはMeであるか、
あるいはRおよびRは、それらが結合している原子と一緒になって、シクロプロピル環を形成し、
各Rは、独立に、ハロゲン、C〜C−アルキル、C〜C−シクロアルキル、O−(C〜C−アルキル)、CF、OCF、S(C〜C−アルキル)、CN、OCH−フェニル、NH、NO、NH−(C〜C−アルキル)、N−(C〜C−アルキル)、ピペリジン、ピロリジン、CHF、CHF、OCHF、OCHF、OH、SO(C〜C−アルキル)、C(O)NH、C(O)NH(C〜C−アルキル)、およびC(O)N(C〜C−アルキル)であり、
mおよびnは、独立に、0、1、2または3であり(ただし、(m+n)は、2、3または4と等しくなければならない)、
pは、0または1である]である]を含む。
【0049】
一般に、本発明は、式Iの化合物
【0050】
【化4】

ならびにその分割された鏡像異性体、分割されたジアステレオマー、および薬学的に許容される塩、[式中、
およびR1aは、H、Me、Et、ビニル、CF、CHFまたはCHFから独立に選択され、
は、H、OH、OMeまたはFであり、
2aは、H、MeまたはFであり、
は、H、Me、Et、またはCFであり、
Aは、
【0051】
【化5】

[式中、
Gは、1〜4個のR基で場合によって置換されているフェニル、またはハロゲンで場合によって置換されている5〜6員ヘテロアリールであり、
およびRは、独立に、H;OCH;F、OH、C〜CアルキルもしくはO(C〜Cアルキル)で場合によって置換されているC〜C−シクロアルキル;F、OH、C〜Cアルキル、シクロプロピルメチルもしくはC(=O)(C〜Cアルキル)で場合によって置換されている4〜6員複素環;またはOH、オキソ、O(C〜C−アルキル)、CN、F、NH、NH(C〜C−アルキル)、N(C〜C−アルキル)、シクロプロピル、フェニル、イミダゾリル、ピペリジニル、ピロリジニル、モルホリニル、テトラヒドロフラニル、オキセタニルもしくはテトラヒドロピラニルから独立に選択される1個または複数の基で場合によって置換されているC〜C−アルキルであるか、
あるいはRおよびRは、それらが結合している窒素と一緒になって、OH、ハロゲン、オキソ、CF、CHCF、CHCHOH、O(C〜Cアルキル)、C(=O)CH、NH、NHMe、N(Me)、S(O)CH、シクロプロピルメチルおよびC〜Cアルキルから独立に選択される1個または複数の基で場合によって置換されている4〜7員ヘテロシクリル環を形成し、
およびRは、Hであるか、
あるいはRは、Hであり、RおよびRは、それらが結合している原子と一緒になって、1個または2個の環窒素原子を有する5〜6員ヘテロシクリル環を形成し、
およびRは、HまたはMeであるか、
あるいはRおよびRは、それらが結合している原子と一緒になって、シクロプロピル環を形成し、
各Rは、独立に、ハロゲン、C〜C−アルキル、C〜C−シクロアルキル、O−(C〜C−アルキル)、CF、OCF、S(C〜C−アルキル)、CN、OCH−フェニル、NH、NO、NH−(C〜C−アルキル)、N−(C〜C−アルキル)、ピペリジン、ピロリジン、CHF、CHF、OCHF、OCHF、OH、SO(C〜C−アルキル)、C(O)NH、C(O)NH(C〜C−アルキル)、およびC(O)N(C〜C−アルキル)であり、
mおよびnは、独立に、0、1または2であり(ただし、(m+n)は、2、3または4と等しくなければならない)、
pは、0または1である]である]を含む。
【0052】
式IのG基に関して、例には、F、Cl、Br、I、メチル、エチル、イソプロピル、tert−ブチル、シクロプロピル、CN、CF、OMe、OEt、OCF、NO、SMeおよびOCHPhから独立に選択される1個または複数のR基で場合によって置換されているフェニル(「Ph」)が挙げられる。Gの例示的な実施形態には、フェニル、2−クロロフェニル、3−クロロフェニル、4−クロロフェニル、4−フルオロフェニル、4−ブロモフェニル、4−メチルフェニル、4−エチルフェニル、4−イソプロピルフェニル、4−トリフルオロメチルフェニル、4−シアノフェニル、4−メトキシフェニル、4−エトキシフェニル、4−チオメチルフェニル、4−トリフルオロメトキシフェニル、4−シクロプロピルフェニル、4−クロロ−3−フルオロフェニル、3,4−ジフルオロフェニル、4−ブロモ−3−フルオロフェニル、3−フルオロ−4−メチルフェニル、3−フルオロ−4−メトキシフェニル、3−フルオロ−4−トリフルオロメチルフェニル、4−シアノ−3−フルオロフェニル、3,4−ジクロロフェニル、2,4−ジクロロフェニル、2,4−ジフルオロフェニル、2−クロロ−4−フルオロフェニル、2−フルオロ−4−クロロフェニル、3,5−ジクロロフェニル。3,5−ジフルオロフェニル、3−クロロ−5−フルオロフェニル、3−クロロ−4−フルオロフェニル、3−ブロモ−4−フルオロフェニル、3,5−ジフルオロ−4−クロロフェニル、2,3−ジフルオロ−4−クロロフェニル、2,5−ジフルオロ−4−クロロフェニル、3,5−ジフルオロ−4−ブロモフェニル、2,3−ジフルオロ−4−ブロモフェニル、2,5−ジフルオロ−4−ブロモフェニル、4−(OCHPh)−フェニル、4−クロロフェニル、2,4−ジクロロフェニル、3,4−ジクロロフェニル、4−クロロ−3−フルオロフェニル、3−クロロ−4−フルオロフェニル、3−フルオロ−4−ブロモフェニル、4−フルオロフェニル、3,4−ジフルオロフェニル、2,4−ジフルオロフェニル 4−ブロモフェニル、4−クロロ−2−フルオロフェニル、4−メトキシフェニル、4−メチルフェニル、4−シアノフェニル、4−トリフルオロメチルフェニル、4−ヨードフェニル、4−ニトロフェニル、4−tert−ブチルフェニル、2−フルオロフェニル、3−トリフルオロメチルフェニル、2−フルオロ−4−トリフルオロメチルフェニル、3−フルオロ−4−トリフルオロメトキシフェニル、3−フルオロ−4−トリフルオロメチルフェニルおよび4−トリフルオロメトキシフェニルが挙げられる。
【0053】
式IのG基に関して、「ハロゲンで場合によって置換されている5〜6員ヘテロアリール」という語句には、ハロゲンで場合によって置換されているチオフェンおよびピリジンが含まれる。特定の例には、それだけに限らないが、構造
【0054】
【化6】

が挙げられる。
【0055】
式Iの一実施形態において、RはHである。
【0056】
式Iの他の実施形態において、Rはメチルであり、前記メチルは、場合によって(S)配置である。
【0057】
式Iの他の実施形態において、Rはエチルである。
【0058】
式Iの一実施形態において、Rはメチルであり、前記メチルは、場合によって(R)配置である。式Iの特定の実施形態において、R1aはHである。式Iの特定の実施形態において、RおよびR1aは両方、メチルである。
【0059】
式Iの他の実施形態において、RはHである。式Iの特定の実施形態において、R1aはHである。
【0060】
式Iの他の実施形態において、Rはエチルである。式Iの特定の実施形態において、R1aはHである。
【0061】
式Iの他の実施形態において、RはCH=CH(ビニル)である。式Iの特定の実施形態において、R1aはHである。
【0062】
式Iの他の実施形態において、RはCHOHである。式Iの特定の実施形態において、R1aはHである。
【0063】
式Iの一実施形態において、R1aはHである。
【0064】
式Iの一実施形態において、RおよびR2aはHである。
【0065】
式Iの他の実施形態において、RおよびR2aはFである。
【0066】
式Iの他の実施形態において、RはFであり、R2aはHである。
【0067】
式Iの他の実施形態において、RはOHである。式Iの特定の実施形態において、R2aはHである。
【0068】
式Iの他の実施形態において、Rは、OMeである。
【0069】
式Iの一実施形態において、Gは、1〜4個のR基で場合によって置換されているフェニルである。
【0070】
式Iの一実施形態において、Gは、F、Cl、Br、I、メチル、エチル、イソプロピル、tert−ブチル、シクロプロピル、CN、CF、OMe、OEt、OCF、NO、SMeおよびOCHPhから独立に選択される1〜4個の基で場合によって置換されているフェニルである。Gの例示的実施形態には、フェニル、2−クロロフェニル、3−クロロフェニル、4−クロロフェニル、4−フルオロフェニル、4−ブロモフェニル、4−メチルフェニル、4−エチルフェニル、4−イソプロピルフェニル、4−トリフルオロメチルフェニル、4−シアノフェニル、4−メトキシフェニル、4−エトキシフェニル、4−チオメチルフェニル、4−トリフルオロメトキシフェニル、4−シクロプロピルフェニル、4−クロロ−3−フルオロフェニル、3,4−ジフルオロフェニル、4−ブロモ−3−フルオロフェニル、3−フルオロ−4−メチルフェニル、3−フルオロ−4−メトキシフェニル、3−フルオロ−4−トリフルオロメチルフェニル、4−シアノ−3−フルオロフェニル、3,4−ジクロロフェニル、2,4−ジクロロフェニル、2,4−ジフルオロフェニル、2−クロロ−4−フルオロフェニル、2−フルオロ−4−クロロフェニル、3,5−ジクロロフェニル。3,5−ジフルオロフェニル、3−クロロ−5−フルオロフェニル、3−クロロ−4−フルオロフェニル、3−ブロモ−4−フルオロフェニル、3,5−ジフルオロ−4−クロロフェニル、2,3−ジフルオロ−4−クロロフェニル、2,5−ジフルオロ−4−クロロフェニル、3,5−ジフルオロ−4−ブロモフェニル、2,3−ジフルオロ−4−ブロモフェニル、2,5−ジフルオロ−4−ブロモフェニル、4−(OCHPh)−フェニル、4−クロロフェニル、2,4−ジクロロフェニル、3,4−ジクロロフェニル、4−クロロ−3−フルオロフェニル、3−クロロ−4−フルオロフェニル、3−フルオロ−4−ブロモフェニル、4−フルオロフェニル、3,4−ジフルオロフェニル、2,4−ジフルオロフェニル 4−ブロモフェニル、4−クロロ−2−フルオロフェニル、4−メトキシフェニル、4−メチルフェニル、4−シアノフェニル、4−トリフルオロメチルフェニル、4−ヨードフェニル、4−ニトロフェニル、4−tert−ブチルフェニル、2−フルオロフェニル、3−トリフルオロメチルフェニル、2−フルオロ−4−トリフルオロメチルフェニル、3−フルオロ−4−トリフルオロメトキシフェニル、3−フルオロ−4−トリフルオロメチルフェニルおよび4−トリフルオロメトキシフェニルが挙げられる。
【0071】
式Iの一実施形態において、Gは、4−クロロフェニル、4−フルオロフェニル、4−ブロモフェニル、4−ヨードフェニル、4−トリフルオロメチルフェニル、4−トリフルオロメトキシフェニル、4−チオメチルフェニル、3−フルオロ−4−クロロフェニル、2,4−ジクロロフェニルまたは3,4−ジクロロフェニルである。
【0072】
式Iの一実施形態において、Gは、1個または複数のハロゲンで場合によって置換されている5〜6員単環式ヘテロアリールであってよい。特定の実施形態において、Gは、1個または複数のハロゲンで場合によって置換されているチオフェンまたはピリジンであってよい。特定の実施形態において、Gは、1個のハロゲンで置換されている。特定の実施形態には、
【0073】
【化7】

が挙げられる。
【0074】
式Iの一実施形態において、RはHまたはエチルである。
【0075】
式Iの一実施形態において、RはHまたはエチルである。
【0076】
式Iの一実施形態において、Rは水素、エチルまたはイソプロピルである。
【0077】
式Iの一実施形態において、RおよびRはHである。
【0078】
式Iの一実施形態において、RおよびRはHである。
【0079】
一実施形態において、Rは、水素であり、RおよびRは、それらが結合している原子と一緒になって、1個の窒素原子を有する4〜6員ヘテロシクリル環を形成する。特定の実施形態において、Aが式
【0080】
【化8】

(式中、qは、1または2であり、nは、1または2である)を有するように、mは、0であり、Rは、水素であり、RおよびRは、それらが結合している原子と一緒になって、1個の窒素原子を有する4〜6員ヘテロシクリル環を形成する。特定の実施形態において、nは1かつqは1であり、nは1かつqは2であり、またはnは2かつqは2である。
【0081】
式Iの一実施形態において、mおよびnは、独立に、0、1または2である(ただし、(m+n)は、2、3または4と等しくなければならない)。特定の実施形態において、mは0かつnは2であり、mは1かつnは2であり、mは2かつnは2であり、mは1かつnは1であり、mは2かつnは1であり、またはmは2かつnは0である。
【0082】
式Iの一実施形態において、mおよびnは両方とも1である。
【0083】
式Iの他の実施形態において、mは2であり、nは0である。式Iの他の実施形態において、nは2であり、mは0である。
【0084】
式Iの一実施形態において、Aが式1
【0085】
【化9】

(式中、G、R、R、RおよびRは、本明細書に記載されている通りである)によって表されるように、mは1であり、nは1であり、pは0である。
【0086】
式1の特定の実施形態において、RおよびRはHである。
【0087】
式1の特定の実施形態において、RはHまたはエチルである。
【0088】
式1の特定の実施形態において、RはHまたはエチルである。
【0089】
式Iの特定の実施形態において、Aが、式2
【0090】
【化10】

(式中、G、R、R、およびRは、本明細書に記載されている通りである)によって表されるように、mは1であり、nは1であり、pは1である。
【0091】
式2の特定の実施形態において、RおよびRはHである。
【0092】
式2の特定の実施形態において、RおよびRはHである。
【0093】
式2の特定の実施形態において、Rは、Hまたはエチルである。
【0094】
式2の特定の実施形態において、Rは、Hまたはエチルである。
【0095】
特定の実施形態において、Aは
【0096】
【化11】

である。
【0097】
さらなる実施形態において、Aは構造
【0098】
【化12】

から選択される。
【0099】
さらなる実施形態において、Aは
【0100】
【化13】

である。
【0101】
特定の実施形態において、Aは
【0102】
【化14】

から選択される。
【0103】
特定の実施形態において、Aは
【0104】
【化15】

である。
【0105】
特定の実施形態において、塩は、別段の定めがない限り、特定化合物の対応する遊離酸または塩基の生物学的効果を保持し、生物学的にまたは他の点で望ましくないものでない塩を含む「薬学的に許容される塩」である。
【0106】
式Iの化合物は、必ずしも薬学的に許容される塩ではなく、式Iの化合物を調製および/もしくは精製するための、ならびに/または式Iの化合物の鏡像異性体を分離するための中間体として有用となり得るそのような化合物の他の塩も含む。
【0107】
式Iの化合物の合成
本発明の化合物は、特に本明細書に含まれる記述に照らして、化学技術分野において周知であるものに類似するプロセスを含む合成ルートによって合成することができる。出発材料は、一般にSigma−Aldrich(St.Louis、MO)、Alfa Aesar(Ward Hill、MA)、またはTCI(Portland、OR)などの商業的供給元から入手可能であるか、または当業者に周知の方法を使用して容易に調製される(例えば、Louis F. FieserおよびMary Fieser、Reagents for Organic Synthesis、1〜19巻、Wiley、N.Y.(1967〜1999年編)またはBeilsteins Handbuch der organischen Chemie、第4版、Springer−Verlag、Berlin、(補足を含む)に概ね記載されている方法によって調製される(またバイルシュタインオンラインデータベースによって利用可能である)。
【0108】
スキーム1〜8は、例示を目的として、本発明の化合物および重要な中間体を調製するための一般的方法を示す。個々の反応ステップのより詳細な説明については、下記の実施例の節を参照されたい。当業者であれば、本発明の化合物を合成するために他の合成ルートを使用してもよいことを理解するであろう。特定の出発材料および試薬がスキームに描写され、後述されているが、多種多様な誘導体および/または反応条件を実現するために、その他の出発材料および試薬で簡単に代用できる。さらに、以下に記載されている方法によって調製される化合物の多くは、この開示に照らして、当業者に周知である従来の化学を使用してさらに改変することができる。
【0109】
【化16】

スキーム1は、式Iの化合物9(式中、pは1であり;RおよびRは、Hであり;R、R2a、R、R1a、R、R、R、R、R、mおよびnは、本明細書において定義され;PgおよびPg’は、相互排他的な除去条件(例えば、Pg=BocおよびPg’=Cbz、例えば、「Protective Groups in Organic Synthesis」、GreeneおよびWuts、Wiley−Interscience、第3版、第7章を参照されたい)を有するアミン保護基である)の調製方法を示す。標準条件(0℃〜50℃でのNaBH(OAc)/AcOHなど)を使用したアミン2のアルデヒド1への還元的アミノ化によって、置換アミン3が生じる。塩基(ヒューニッヒ塩基など)の存在下で−20℃〜100℃での置換アシルピペラジン4によるこの置換アミン3のアシル化によって、保護されたピペラジン5が生じる。この保護基の除去(例えば、Cbz基については、水素化分解など)によって、ピペラジン6がもたらされる。25℃〜250℃でおよび/または高圧下でおよび/またはマイクロ波支援で、このピペラジン6をハロゲン化ピリミジン7で処理することによって、中間体8がもたらされる。アミンの脱保護(例えば、Boc基については、0℃〜50℃でジオキサン中のHClを使用する)およびアミンの最終的な任意選択の官能化(例えば、新規な置換基を導入するための、標準条件下でのアルキル化、還元的アミノ化またはアシル化)によって、最終化合物9がもたらされる。必要になった場合、これらの類似体を次いで分離技術にかけ、単一の鏡像異性体を得ることができる。
【0110】
【化17】

スキーム2は、式Iの化合物20(式中、R、RおよびR2aは、水素であり;R1aは、Meであり;R、R、R、R、R、R、R、m、nおよびpは、本明細書に定義の通りである)の調製方法を示す。スキーム2によると、臭素による(+)−プレゴン10のブロム化によって、二臭化物11がもたらされる。ナトリウムエトキシドなどの塩基による二臭化物11の処理によって、プレジェネート12が生じる。例えば、低温でのオゾン分解を使用したプレジェネート12の酸化的開裂、それに続く還元的後処理(例えば、5℃〜50℃でのZnまたはNaIO/OsO)によって、ケトエステル13がもたらされる。エタノール中のKOHなどの塩基の存在下でチオ尿素によるケトエステル13の処理、それに続く標準条件(例えば、アンモニア中のラネーニッケル触媒)下でのメルカプト基の還元によって、ヒドロキシピリミジン16がもたらされる。クロロピリミジンを得るための、例えば、−20℃〜100℃でのPOClまたはSOClを使用した化合物16の活性化(例えば、ハロゲン化)によってクロロピリミジンとすると、官能化したピリミジン−シクロペンタンユニット17がもたらされる。0℃〜150℃での適切に保護/置換されたピペリジン18を使用した脱離基の置換によって、ピペリジン19が生じる。アミンの脱保護(例えば、Boc基については、0℃〜50℃でジオキサン中のHClを使用する)およびアミンの最終的な任意選択の官能化(例えば、新規な置換基を導入するためのアルキル化、還元的アミノ化またはアシル化)によって、最終化合物20がもたらされる。必要になった場合、これらの類似体を次いで分離技術にかけ、単一の鏡像異性体を得ることができる。
【0111】
【化18】

スキーム3は、式Iの化合物29(式中、RはOHであり、R2aはHであり、R、R1a、R、R、R、R、R、R、R、R、m、nおよびpは、本明細書において定義されている)の調製方法を示す。スキーム3によると、エタノール中のKOHなどの塩基の存在下でケトエステル21のチオ尿素による処理、それに続く標準条件(例えば、アンモニア中のラネーニッケル触媒)下でのメルカプト基の還元によって、ヒドロキシピリミジン23がもたらされる。標準条件(例えば、POCl)下でのヒドロキシピリミジン23の活性化(例えば、ハロゲン化)によって、4−ハロピリミジン24が生じる。m−CPBA、または過酸化水素などの酸化剤による4−クロロピリミジン24の酸化によって、N−オキシド25がもたらされる。N−オキシド25の無水酢酸による転位によって、中間体26が生じる。次いで、化合物26を加水分解し(例えば、0℃〜50℃でLiOHまたはNaOH)、アルコール27がもたらされる。次いで、化合物27を、スキーム1において記載されている手順によって所望の置換ピペラジン18と反応させ、化合物28が生じる。化合物29が任意選択の官能化を受ける場合、アルコール28は、潜在的な複雑化を避けるために、この段階で保護されてもよい(例えば、TBS基)。例えば、Boc基については酸(例えば、−20℃〜50℃でTFA)を使用した化合物28の保護基(Pg)の除去、およびそれに続く標準条件下での遊離アミンの任意選択の官能化(例えば、アルキル化、アシル化、還元的アミノ化など)によって、完全に官能化した化合物29が生じる。この化合物29はまた、分離技術に供され、キラル分離、標準的非キラル分離(例えば、カラムクロマトグラフィー、HPLC、SFCなど)、再結晶または誘導体化技術によって単一のジアステレオマーを提供し得る。
【0112】
【化19】

スキーム4は、式Iの化合物32(式中、RおよびR2aは、Hであり、R、R1a、R、R、R、R、R、R、R、R、m、nおよびpは、本明細書において定義されている)の調製の代替方法を示す。スキーム3によると、アンモニアシントンを使用したケトエステル21のアミノ化によって、化合物30がもたらされる。50℃〜250℃でおよび/または高圧下でおよび/またはマイクロ波支援で、例えば、ホルムアミドの存在下でギ酸アンモニウムを使用したピリミジン形成によって、二環式ユニット23がもたらされる。例えば、POClまたはSOClを使用した化合物23の活性化によって、活性化ピリミジンが生じ、0℃〜150℃での適切に保護/置換されたピペリジン18を使用したこの脱離基の置換によって、ピペリジン31がもたらされる。アミンの脱保護(例えば、Boc基については、0℃〜50℃でジオキサン中のHClを使用する)およびアミンの最終的な任意選択の官能化(例えば、新規な置換基を導入するためのアルキル化、還元的アミノ化またはアシル化)によって、最終化合物32がもたらされる。必要になった場合、これらの類似体を次いで分離技術にかけ、単一の鏡像異性体を得ることができる。
【0113】
【化20】

スキーム5は、式Iの化合物35(式中、Rはフッ素であり、R2aは水素であり、R、R1a、R、R、R、R、R、R、R、R、m、nおよびpは、本明細書において定義されている)の調製方法を示す。スキーム5によると、−78℃〜100℃でのDASTなどのフッ素化剤によるアルコール33の処理によって、フルオロ誘導体34がもたらされる。アミンの脱保護(例えば、Boc基については、0℃〜50℃でジオキサン中のHClを使用する)およびアミンの最終的な任意選択の官能化(例えば、新規な置換基を導入するためのアルキル化、還元的アミノ化またはアシル化)によって、最終化合物35がもたらされる。必要になった場合、これらの類似体を次いで分離技術にかけ、単一の鏡像異性体を得ることができる。
【0114】
【化21】

スキーム6は、式Iの化合物39(式中、pは0であり;NRは、アミンが化合物4によってさらにアシル化することができないようなものであり;およびR、R2a、R、R1a、R、R、R、R、Ra、Rb、Rc、Rd、mおよびnは、本明細書において定義されている)の調製方法を示す。−20℃〜100℃で塩基(ヒューニッヒ塩基など)の存在下での置換アシルピペラジン4による置換アミン36のアシル化によって、保護されたピペラジン37(Pg=保護基)が生じる。この保護基の除去(例えば、Boc基については、ジオキサン中のHCl、またはCbz基については、水素化など)によって、ピペラジン38がもたらされる。50℃〜250℃でおよび/または高圧下でおよび/またはマイクロ波支援での、ハロゲン化ピリミジン7によるこのピペラジン38の処理によって、生成物39が生じる。必要になった場合、これらの類似体を次いで分離技術にかけ、単一の鏡像異性体を得ることができる。
【0115】
【化22】

スキーム7は、式Iの(44)(式中、R、R2a、R、R1a、R、R、R、R、Ra、Rb、Rc、Rd、m、pおよびnは、本明細書において定義されており、PgおよびPgは、相互排他的な除去条件(例えば、BocおよびCbz基)を有する保護基である)の形成のための代替方法を示す。−20℃〜100℃にて塩基(ヒューニッヒ塩基など)の存在下で置換アシルピペラジン4による置換アミン40のアシル化によって、保護されたピペラジン41(Pg=保護基)が生じる。この保護基の除去(例えば、Boc基については、ジオキサン中のHCl、またはCbz基については、水素化など)によって、ピペラジン42が生じる。50℃〜250℃でおよび/または高圧下でおよび/またはマイクロ波支援での、ハロゲン化ピリミジン7によるこのピペラジン42の処理によって、中間体43が生じる。アミン保護基の除去(例えば、Bocについては、0℃〜50℃でジオキサン中のHClなど)、それに続く任意選択の官能化(例えば、新規な置換基を導入するためのアルキル化、還元的アミノ化またはアシル化)によって、最終化合物44がもたらされる。必要になった場合、これらの類似体を次いで分離技術にかけ、単一の鏡像異性体を得ることができる。
【0116】
【化23】

スキーム8は、式Iの化合物29(式中、RはOHであり;R2aはHであり;R、R1a、R、R、R、R、R、R、R、R、m、pおよびnは、本明細書において定義されており、;PgおよびPg’は、相互排他的な除去条件(例えば、BocおよびTBS基、例えば、「Protective Groups in Organic Synthesis」、GreeneおよびWuts、Wiley−Interscienceを参照されたい)を有する保護基である)を調製し得る代替方法を示す。スキーム8によると、化合物45は、スキーム1において記載されている手順に従って所望の置換ピペラジン46と反応し、化合物47が提供される。このアルコール47の保護(例えば、ヒューニッヒ塩基などのアミン塩基の存在下でTBSOTfを使用したTBS基)によって、化合物48がもたらされる。アミン保護基の除去[例えば、Boc基については酸を使用する(例えば、−20℃〜50℃でのTFA)]によって、遊離アミン49がもたらされる。ホスゲン同等物(トリホスゲンなど)による化合物49の処理によって、活性化中間体50がもたらされ、塩基の存在下で(例えば、−50℃〜100℃でのヒューニッヒ塩基)アミン51によるそれに続く処理によって、尿素52がもたらされる。ヒドロキシル保護基(Pg’)に影響を与えないことが知られている条件(例えば、Boc基については−50℃〜30℃でのTFA)を使用した、化合物52中の新たに導入されたアミン保護基(Pg)の除去、それに続く標準条件下での遊離アミンの任意選択の官能化(例えば、アルキル化、アシル化、還元的アミノ化など)によって、完全に官能化した化合物53がもたらされる。最後に、アルコール保護基の除去(例えば、TBS基については−50℃〜+50℃でのTBAFなどのフッ化物源)によって、最終化合物54が生じる。この化合物54はまた、分離技術に供され、キラル分離、標準的非キラル分離(例えば、カラムクロマトグラフィー、HPLC、SFCなど)、再結晶または誘導体化技術によって単一のジアステレオマーを提供し得る。
【0117】
がOHの代わりにHまたはFである化合物について、(アルコール保護/脱保護ステップなしに)同様の手順がまた想定することができる。
【0118】
したがって、本発明の他の態様は、
(a)式
【0119】
【化24】

(式中、R、R1a、RおよびR2aは、本明細書に記載されている通りであり、Halはハロゲンである)を有する化合物を、式
【0120】
【化25】

(式中、G、R、R、R、n、mおよびpは、本明細書に記載されている通りであり、Pgは、本明細書に記載されているような保護基である)の化合物と反応させ、続いて脱保護および任意選択の官能化をし、式Iの化合物を調製するステップ、
(b)式
【0121】
【化26】

(式中、RおよびR1aは、本明細書に定義されている通りである)の化合物のPOClまたはSOClによる活性化、それに続いて式
【0122】
【化27】

(式中、G、R、R、R、nおよびmは、本明細書に定義されている通りであり、Pgは、本明細書に定義されているような保護基である)の化合物の置換、続いて脱保護および任意選択の官能化によって、式Iの化合物を調製するステップ、または
(c)式
【0123】
【化28】

(式中、R、R1aおよびRは、本明細書に定義されている通りであり、Pg’は、本明細書に定義されているような保護基である)の化合物を、式
【0124】
【化29】

(式中、G、R、R、R、R、n、mおよびpは、本明細書に定義されている通りであり、Pgは、本明細書に定義されているような保護基である)の化合物と反応させ、続いて脱保護および任意選択の官能化をし、式Iの化合物を調製するステップ
を含む、式Iの化合物の調製方法を提供する。
【0125】
式Iの化合物を調製するとき、中間体の遠隔官能基(例えば、第一級または第二級アミンなど)の保護が必要となり得る。そのような保護の必要性は、遠隔官能基の性質および調製方法の条件に応じて異なってくる。適切なアミノ保護基(NH−Pg)には、アセチル、トリフルオロアセチル、t−ブトキシカルボニル(BOC)、ベンジルオキシカルボニル(CBz)および9−フルオレニルメチレンオキシカルボニル(Fmoc)が挙げられる。そのような保護の必要性は、当業者によって容易に判断される。保護基の概要およびその使用については、T. W. Greene、Protective Groups in Organic Synthesis、John Wiley & Sons、New York、1991年を参照されたい。
【0126】
分離の方法
本発明の化合物は、1個または複数の不斉中心を保有する場合があり、したがってそのような化合物は、個々の(R)−もしくは(S)−立体異性体として、またはその混合物として生成することができる。別段の定めがない限り、明細書および特許請求の範囲中の特定化合物の記述または命名は、個々の鏡像異性体およびジアステレオマーの両方、ならびにその混合物、ラセミまたはその他を含むことが意図される。したがって、本発明は、本発明の化合物のジアステレオマー混合物、純ジアステレオマーおよび純鏡像異性体を含む、全てのそのような異性体も含む。ジアステレオマーは、異なる物理特性、例えば融点、沸点、スペクトル特性および反応度を有する。
【0127】
反応生成物を互いにおよび/または出発材料から分離することが有利な場合がある。各ステップまたは一連のステップの所望の生成物は、当該技術分野において一般的な技術により、望ましい程度の均質性になるまで分離および/または精製(以下、分離とする)される。一般にそのような分離は、多相抽出、溶媒もしくは溶媒混合物からの結晶化、蒸留、昇華またはクロマトグラフィーを伴う。クロマトグラフィーは、例えば、逆相および順相;サイズ排除;イオン交換;高、中および低圧液体クロマトグラフィー方法および装置;小規模分析;疑似移動床(SMB)および分取薄層または厚層クロマトグラフィー、ならびに小規模薄層およびフラッシュクロマトグラフィーの技術を含む多数の方法を伴い得る。当業者であれば、所望の分離を達成する可能性が最も高い技術を適用するであろう。
【0128】
ジアステレオマー混合物は、クロマトグラフィーおよび/または分別結晶によってなど、当業者に周知の方法により、それらの物理化学的相違に基づき、個々のジアステレオマーに分離することができる。鏡像異性体は、適切な光学活性化合物(例えば、キラルアルコールまたはモッシャーの酸塩化物などのキラル補助基)と反応させることによって鏡像異性体混合物をジアステレオマー混合物に変換し、ジアステレオマーを分離し、個々のジアステレオマーを対応する純鏡像異性体に変換する(例えば、加水分解する)ことによって分離することができる。鏡像異性体は、キラルHPLCカラムの使用によって分離することもできる。
【0129】
単一の立体異性体、例えばその立体異性体を実質的に含まない鏡像異性体は、光学活性分割剤を使用するジアステレオマーの形成などの方法を使用して、ラセミ混合物の分割によって得ることができる(Eliel, E.およびWilen, S.「Stereochemistry of Organic Compounds」、John Wiley & Sons, Inc.、New York、1994年;Lochmuller, C. H.、(1975年)J. Chromatogr.、113巻、3号、283〜302頁)。本発明のキラル化合物のラセミ混合物は、(1)キラル化合物によるイオン性のジアステレオマー塩の形成および分別結晶または他の方法による分離、(2)キラル誘導体化試薬によるジアステレオマー化合物の形成、ジアステレオマーの分離および純立体異性体への変換、ならびに(3)直接キラル条件下における実質的に純粋なまたは濃縮した立体異性体の分離を含む任意の適切な方法によって分離および単離することができる。「Drug Stereochemistry, Analytical Methods and Pharmacology」、Irving W. Wainer編、Marcel Dekker, Inc.、New York(1993年)を参照されたい。
【0130】
方法(1)では、ジアステレオマー塩は、ブルシン、キニーネ、エフェドリン、ストリキニーネ、α−メチル−β−フェニルエチルアミン(アンフェタミン)などの鏡像異性的に純粋なキラル塩基と、カルボン酸およびスルホン酸などの酸性官能基を担持する不斉化合物との反応により形成することができる。ジアステレオマー塩は、分別結晶またはイオンクロマトグラフィーによって分離するように誘導することができる。アミノ化合物の光学異性体の分離のために、ショウノウスルホン酸、酒石酸、マンデル酸または乳酸などの、キラルカルボン酸またはスルホン酸の添加により、ジアステレオマー塩の形成をもたらすことができる。
【0131】
あるいは、方法(2)によって、分割される基質がキラル化合物の1種の鏡像異性体と反応してジアステレオマー対が形成される(E.およびWilen, S.、「Stereochemistry of Organic Compounds」、John Wiley & Sons, Inc.、1994年、322頁)。ジアステレオマー化合物は、不斉化合物をメチル誘導体などの鏡像異性的に純粋なキラル誘導体化試薬と反応させ、それに続くジアステレオマーの分離および加水分解によって純粋なまたは濃縮した鏡像異性体を得ることにより、形成することができる。光学純度を測定する方法は、塩基またはモッシャーエステル、ラセミ混合物のα−メトキシ−α−(トリフルオロメチル)フェニルアセテート(Jacob III.、J. Org. Chem.、(1982年)、47巻、4165頁)の存在下、メンチルエステル、例えば(−)メンチルクロロホルメートなどのキラルエステルを作製するステップと、2種のアトロプ異性鏡像体またはジアステレオマーの存在についてH NMRスペクトルを分析するステップとを含む。アトロプ異性化合物の安定したジアステレオマーは、アトロプ異性ナフチル−イソキノリンの分離のための方法に続く順相および逆相クロマトグラフィーにより、分離および単離することができる(WO96/15111)。
【0132】
方法(3)によって、2種の鏡像異性体のラセミ混合物は、キラル固定相を使用するクロマトグラフィーによって分離することができる(「Chiral Liquid Chromatography」(1989年)、W. J. Lough編、Chapman and Hall、New York;Okamoto、J. of Chromatogr.、(1990年)、513巻、375〜378頁)。濃縮または精製された鏡像異性体は、旋光度および円偏光二色性など、不斉炭素原子を有する他のキラル分子を識別するために使用される方法によって識別することができる。
【0133】
本発明の化合物は異なる互変異性型で存在することもでき、そのような型は全て本発明の範囲内に包含される。例えば、プロトン互変異性体(プロトトロピック互変異性体としても知られる)には、ケト−エノールおよびイミン−エナミン異性化など、プロトンの移動を介する相互変換を含まれる。原子価互変異性体には、いくつかの結合電子の再編成による相互変換が含まれる。
【0134】
本明細書に示す構造において、任意の特定のキラル原子の立体化学が明示されていない場合、全ての立体異性体が本発明の化合物として意図され、含まれる。特定の配置を表すソリッドウェッジまたは点線によって立体化学が明示されている場合、その立体異性体はそのように明示および定義されている。
【0135】
投与および医薬製剤
本発明の化合物は、治療される状態に適切な任意の好都合なルートによって投与することができる。適切なルートは、経口、非経口(皮下、筋肉内、静脈内、動脈内、皮内、くも膜下腔内および硬膜外を含む)、経皮、直腸、経鼻、局所(口腔内および舌下を含む)、膣内、腹腔内、肺内ならびに鼻腔内を含む。
【0136】
化合物は、任意の好都合な投与形態、例えば、錠剤、散剤、カプセル剤、溶液剤、分散剤、懸濁剤、シロップ剤、スプレー剤、坐薬、ゲル剤、乳剤、パッチなどで投与し得る。そのような組成物は、医薬製剤において通常の成分、例えば、希釈剤、担体、pH調整剤、甘味料、充填剤、およびさらなる活性剤を含有し得る。非経口投与が所望である場合、組成物は、無菌であり、注射または注入に適切な溶液または懸濁液形態である。
【0137】
典型的な製剤は、本発明の化合物と担体または賦形剤とを混合することによって調製する。適切な担体および賦形剤は、当業者には周知であり、例えば、Howard C. Anselら、 Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems、(第8版、2004年);Alfonso R. Gennaroら、Remington:The Science and Practice of Pharmacy、(第20版、2000年);およびRaymond C. Rowe、Handbook of Pharmaceutical Excipients、(第5版、2005年)において詳細が記載されている。製剤にはまた、1種もしくは複数の緩衝液、安定化剤、界面活性剤、湿潤剤、滑沢剤、乳化剤、懸濁化剤、保存剤、抗酸化剤、不透明化剤、流動促進剤、加工助剤、着色剤、甘味料、香料剤、香味剤、希釈剤、および整った造形の薬物(すなわち、本発明の化合物またはその医薬組成物)を提供するため、または医薬品(すなわち、薬剤)の製造を支援するための、他の公知の添加剤を含むことができる。
【0138】
本発明の一実施形態には、式Iの化合物、またはその立体異性体もしくは薬学的に許容される塩を含む医薬組成物が含まれる。さらなる実施形態において、本発明は、薬学的に許容される担体または賦形剤と共に、式Iの化合物、またはその立体異性体もしくは薬学的に許容される塩を含む医薬組成物を提供する。
【0139】
式Iの化合物による治療法
本発明の化合物は、AKTプロテインキナーゼ、チロシンキナーゼ、さらなるセリン/トレオニンキナーゼ、および/または二重特異性キナーゼの調節または制御が媒介する疾患または障害を治療するための予防または治療剤として使用することができる。本発明の方法に従って治療することができるAKTプロテインキナーゼ媒介性状態は、炎症性、過剰増殖性、心臓血管、神経変性、婦人科および皮膚科の疾患および障害を含むがこれらに限定されない。
【0140】
一実施形態において、前記医薬組成物は、下記カテゴリの癌を含む過剰増殖性障害の治療のためのものである:(1)心臓:肉腫(血管肉腫、線維肉腫、横紋筋肉腫、脂肪肉腫)、粘液腫、横紋筋腫、線維腫、脂肪腫および奇形腫;(2)肺:気管支癌腫(扁平上皮細胞、未分化小細胞、未分化大細胞、腺癌)、歯槽(細気管支)癌腫、気管支腺腫、肉腫、リンパ腫、軟骨性過誤腫、中皮腫、非小細胞肺、小細胞肺;(3)胃腸:食道(扁平上皮細胞癌腫、腺癌、平滑筋肉腫、リンパ腫)、胃(癌腫、リンパ腫、平滑筋肉腫)、膵臓(導管腺癌、インスリノーマ、グルカゴノーマ、ガストリノーマ、カルチノイド腫瘍、ビポーマ)、小腸(腺癌、リンパ腫、カルチノイド腫瘍、カポジ肉腫、平滑筋腫、血管腫、脂肪腫、神経線維腫、線維腫)、大腸(腺癌、管状腺腫、絨毛腺腫、過誤腫、平滑筋腫);(4)尿生殖路:腎臓(腺癌、ウィルムス腫瘍[腎芽細胞腫]、リンパ腫、白血病)、膀胱および尿道(扁平上皮細胞癌腫、移行細胞癌、腺癌)、前立腺(腺癌、肉腫)、精巣(セミノーマ、奇形腫、胎生期癌、奇形癌、絨毛腫、肉腫、間質細胞癌、線維腫、線維腺腫、類腺腫瘍、脂肪腫);(5)肝臓:肝癌(肝細胞癌)、胆管癌、肝芽腫、血管肉腫、肝細胞腺腫、血管腫;(6)骨:骨原性肉腫(骨肉腫)、線維肉腫、悪性線維性組織球、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、悪性リンパ腫(細網肉腫)、多発性骨髄腫、悪性巨細胞腫脊索腫、骨軟骨腫(骨軟骨外骨腫)、良性軟骨腫、軟骨芽細胞腫、軟骨粘液線維腫、類骨骨腫および巨細胞腫;(7)神経系:頭蓋骨(骨腫、血管腫、肉芽腫、黄色腫、変形性骨炎)、髄膜(髄膜腫、髄膜肉腫、神経膠腫症)、脳(星状細胞腫、髄芽腫、神経膠腫、上衣腫、胚細胞腫[松果体腫]、多形性膠芽腫、乏突起膠腫、神経鞘腫、網膜芽腫、先天性腫瘍)、脊髄神経線維腫、髄膜腫、神経膠腫、肉腫);(8)婦人科:子宮(子宮内膜癌)、頸部(子宮頸癌、前腫瘍性子宮頸部形成異常)、卵巣(卵巣癌[漿液性嚢胞腺癌、ムチン性嚢胞腺癌、分類不能癌]、顆粒膜−莢膜細胞腫瘍、セルトリ−ライディッヒ細胞腫、未分化胚細胞腫、悪性奇形腫)、外陰部(扁平上皮細胞癌腫、上皮内癌、腺癌、線維肉腫、黒色腫)、膣(明細胞癌、扁平上皮細胞癌腫、ブドウ状肉腫(胎児性横紋筋肉腫)、卵管(癌腫);(9)血液学:血液(骨髄性白血病[急性および慢性]、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ球性白血病、骨髄増殖性疾患、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群)、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫[悪性リンパ腫];(10)皮膚:進行性黒色腫、悪性黒色腫、基底細胞癌、扁平上皮細胞癌腫、カポジ肉腫、黒子型異形成母斑、脂肪腫、管腫、皮膚線維腫、ケロイド、乾癬;(11)副腎:神経芽細胞腫;(12)乳房:転移性乳癌、乳腺腺癌;(13)結腸;(14)口腔;(15)ヘアリー細胞白血病;(16)頭頸部;(17)ならびに、他の種類の過剰増殖性障害の中でも、難治性転移疾患;カポジ肉腫;バナヤン−ゾナナ症候群;およびコーデン病またはレルミット−ダクロス病を含むその他。
【0141】
本発明の化合物および方法は、関節リウマチ、骨関節炎、クローン病、血管線維腫、眼疾患(例えば、網膜血管化、糖尿病性網膜症、加齢黄斑変性症、黄斑変性症など)、多発性硬化症、肥満症、再狭窄、自己免疫疾患、アレルギー、喘息、子宮内膜症、アテローム性動脈硬化、静脈グラフト狭窄、吻合部周囲人工グラフト狭窄、前立腺肥大、慢性閉塞性肺疾患、乾癬、組織修復による神経損傷の阻害、瘢痕組織形成(創傷治癒を支援することができる)、多発性硬化症、炎症性腸疾患、感染症、特に細菌、ウイルス、レトロウイルスまたは寄生虫感染症(アポトーシスを増大させることによる)、肺疾患、新生物、パーキンソン病、移植片拒絶反応(免疫抑制剤として)、敗血症ショックなどの疾患および状態を治療するために使用することもできる。
【0142】
したがって、本発明の別の態様は、哺乳動物におけるAKTプロテインキナーゼが媒介する疾患または医学的状態を治療する方法であって、1種または複数の式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグを、前記障害を治療または予防するために有効な量で前記哺乳動物に投与するステップを含む方法を提供する。
【0143】
癌の場合、有効量の薬物は、癌細胞の数を減少させ、腫瘍サイズを縮小させ、末梢器官内への癌細胞浸潤を阻害し(すなわち、ある程度遅くする、好ましくは停止する)、腫瘍転移を阻害し(すなわち、ある程度遅くする、好ましくは停止する)、腫瘍成長をある程度阻害し、かつ/または癌に関連する症状のうちの1つもしくは複数をある程度軽減し得る。薬物が成長を防止し、かつ/または既存の癌細胞を殺すことができる程度まで、その薬物は細胞増殖抑制性および/または細胞毒性であり得る。癌療法について、有効性は例えば無増悪期間(TTP)を評価することおよび/または奏効率(RR)を測定することによって計測できる。
【0144】
そのような量に対応する式Iの化合物の量は、特定化合物、疾患状態およびその重症度、治療が必要な哺乳動物の識別情報(例えば、体重)などの要因に応じて異なってくるが、それでもなお、当業者は日常的に判断することができる。
【0145】
本発明は、AKTプロテインキナーゼ媒介性状態の治療における使用のための、式Iの化合物も提供する。
【0146】
本発明のさらなる態様は、AKTプロテインキナーゼ媒介性状態の治療または予防のためなど、療法のための薬剤の調製における式Iの化合物の使用である。
【0147】
併用療法
本発明の化合物ならびにその立体異性体および薬学的に許容される塩は、単独でまたは治療のための他の治療剤と組み合わせて用いることができる。本発明の化合物は、1種または複数のさらなる薬物、例えば、異なる作用機序によって作用する抗炎症性化合物と組み合わせて使用することができる。医薬複合製剤または投与レジメンの第2の化合物は、好ましくは、この発明の化合物に対して、それらが互いに悪影響を及ぼさないような相補的活性を有する。そのような分子は、意図した目的のために有効な量の組合せで適切に存在する。化合物は、単一の医薬組成物中で一緒にまたは別個に投与することができ、別個に投与する場合、投与は同時にまたは任意の順序で順次に起こり得る。そのような順次投与は、時間的に近くてもよいし、時間的に遠くてもよい。
【0148】
化学療法剤の例には、エルロチニブ(TARCEVA(登録商標)、Genentech、Inc./OSI Pharm.)、トラスツズマブ(HERCEPTIN(登録商標)、Genentech、Inc.);ベバシズマブ(AVASTIN(登録商標)、Genentech、Inc.);リツキシマブ(RITUXAN(登録商標)、Genentech、Inc./Biogen Idec、Inc.)、ボルテゾミブ(VELCADE(登録商標)、Millennium Pharm.)、フルベストラント(FASLODEX(登録商標)、AstraZeneca)、スーテント(SU11248、Pfizer)、レトロゾール(FEMARA(登録商標)、Novartis)、メシル酸イマチニブ(GLEEVEC(登録商標)、Novartis)、PTK787/ZK222584(Novartis)、オキサリプラチン(Eloxatin(登録商標)、Sanofi)、5−FU(5−フルオロウラシル)、ロイコボリン、ラパマイシン(シロリムス、RAPAMUNE(登録商標)、Wyeth)、ラパチニブ(GSK572016、Glaxo Smith Kline)、ロナファルニブ(SCH66336)、ソラフェニブ(BAY43−9006、Bayer Labs)、およびゲフィチニブ(IRESSA(登録商標)、AstraZeneca)、AG1478、AG1571(SU5271;Sugen)、アルキル化剤(チオテパおよびCYTOXAN(登録商標)シクロホスファミドなど)、ADRIAMYCIN(登録商標)(ドキソルビシン)、TAXOL(登録商標)(パクリタキセル;Bristol−Myers Squibb、Princeton、N.J.)、ABRAXANE(登録商標)(クレモフォール無添加)、およびTAXOTERE(登録商標)(ドセタキセル;Rhone−Poulenc Rorer、Antony、France)が挙げられる。
【0149】
製造物品
本発明の別の実施形態において、上述した障害の治療に有用な材料を含有する製造物品、つまり「キット」が提供される。一実施形態において、キットは、本発明の化合物を含む容器を含む。適切な容器には、例えば、ボトル、バイアル、注射器、ブリスターパックなどが挙げられる。容器は、ガラスまたはプラスチックなどの多種多様な材料から形成することができる。容器は、状態を治療するために有効な本発明の化合物またはその製剤を収容することができ、無菌アクセスポートを有し得る(例えば、容器は、皮下注射針によって貫通可能な栓を有する静脈注射用溶液バッグまたはバイアルであってよい)。
【0150】
キットは、容器上にまたは容器に関連付けられて、ラベルまたは添付文書をさらに含み得る。一実施形態において、ラベルまたは添付文書は、本発明の化合物を含む組成物を使用して、例えばAKTキナーゼが媒介する障害を治療することができることを示す。ラベルまたは添付文書は、その組成物を使用して他の障害を治療することができることを示し得る。
【0151】
特定の実施形態において、キットは、錠剤またはカプセル剤など、本発明の固体経口剤形の化合物の送達に適している。そのようなキットには、好ましくは多数の単位用量が含まれる。そのようなキットには、それらの意図する使用の順序で配置された投与量を有するカードを含むことができる。そのようなキットの例は「ブリスターパック」である。ブリスターパックは、包装業界において周知であり、医薬単位剤形を包装するために広く使用されている。必要に応じて、例えば数字、文字もしくは他の印の形態で、または用量を投与することができる治療スケジュールの日を指定する差し込み日程表によって、記憶補助を用意することができる。
【0152】
別の実施形態によれば、キットは、(a)本発明の化合物が中に収納された第1の容器と、(b)第2の医薬製剤が中に収納された第2の容器とを含んでよく、第2の医薬製剤は、AKTキナーゼが媒介する障害を治療するために有用な第2の化合物を含む。代わりにまたはさらに、キットは、注射用静菌水(BWFI)、リン酸緩衝生理食塩水、リンガー溶液およびデキストロース溶液などの薬学的に許容される緩衝液を含む第3の容器をさらに含み得る。その容器は、その他の緩衝液、希釈剤、フィルター、針および注射器を含む、商業的見地および使用者の見地から望ましい他の材料をさらに含み得る。
【0153】
キットは、本発明の化合物と、存在する場合、第2の医薬製剤との投与のための指示書をさらに含み得る。例えば、キットが本発明の化合物を含む第1の組成物と第2の医薬製剤とを含む場合、そのキットは、第1および第2の医薬組成物の、それが必要な患者への同時、連続または別個の投与のための指示書をさらに含み得る。
【0154】
キットが本発明の組成物および第2の治療剤を含む特定の他の実施形態において、そのキットは、分割型ボトルまたは分割型ホイルパケットなど、別個の組成物を収納するための容器を含み得るが、別個の組成物は単一の非分割型容器内に収納されてもよい。特定の実施形態において、キットは、別個の成分の投与のための指示書を含む。このキット形態は、別個の成分が好ましくは異なる剤形で(例えば、経口および非経口)投与されるとき、異なる投薬間隔で投与されるとき、または組合せの個々の成分の滴定を処方医師が望んでいるときに、特に有利である。
【0155】
したがって、本発明のさらなる態様は、Aktキナーゼが媒介する障害または疾患を治療するためのキットを提供し、前記キットは、a)本発明の化合物または薬学的に許容されるその塩を含む第1の医薬組成物と、b)使用説明書とを含む。
【0156】
特定の実施形態において、キットは(c)第2の医薬組成物をさらに含み、前記第2の医薬組成物は、Aktキナーゼが媒介する障害または疾患を治療するのに適した第2の化合物を含む。第2の医薬組成物を含む特定の実施形態において、キットは、前記第1および第2の医薬組成物の、それが必要な患者への同時、連続および別個の投与のための説明書をさらに含む。特定の実施形態において、前記第1および第2の医薬組成物は、別個の容器に収納される。その他の実施形態において、前記第1および第2の医薬組成物は、同じ容器に収納される。
【0157】
式Iの化合物は主に哺乳動物において使用するための治療剤として価値があるが、それらは、AKTプロテインキナーゼ、チロシンキナーゼ、さらなるセリン/トレオニンキナーゼおよび/または二重特異性キナーゼを制御することが必要な場合にはいつでも有用である。したがって、それらの化合物は、新たな動物実験の開発および新たな薬理剤の探求において使用するための薬理学的基準として有用である。
【0158】
本発明の化合物の活性は、インビトロ、インビボまたは細胞系中の、AKTプロテインキナーゼ、チロシンキナーゼ、さらなるセリン/トレオニンキナーゼ、および/または二重特異性キナーゼについてアッセイし得る。インビトロアッセイは、キナーゼ活性の阻害を測定するアッセイを含む。代替的なインビトロアッセイは、キナーゼと結合する阻害剤の能力を定量するものであり、結合前に阻害剤を放射性標識し、阻害剤/キナーゼ複合体を単離し、放射性標識結合の量を測定するか、または新たな阻害剤を公知の放射性リガンドとともにインキュベートする競合実験を行うかのいずれかによって計測できる。これらおよび他の有用なインビトロおよび細胞培養アッセイは、当業者に周知である。
【0159】
ある程度詳細に本発明を記載および説明してきたが、本開示は例として行ったものにすぎず、以下の特許請求の範囲に記載する通りの本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、当業者はパーツの組合せおよび配列における多数の変更をすることができることを理解されたい。
【0160】
生物学的実施例
AKT−1キナーゼアッセイ
本発明に記載されている化合物の活性は、下記のキナーゼアッセイによって測定でき、このアッセイは、市販のIMAPキットを使用する蛍光偏光法によって、全長ヒト組換え活性型AKT−1による蛍光標識ペプチドのリン酸化を計測するものである。
【0161】
アッセイ材料は、IMAP AKTアッセイバルクキット、製品番号R8059(Molecular Devices、Sunnyvale、CA)から入手する。キット材料は、IMAP反応緩衝液(5×)を含む。1×希釈IMAP反応緩衝液は、10mMのトリス−HCl、pH7.2、10mMのMgCl、0.1%BSA、0.05%NaNを含有するものであった。使用直前に、1mMの最終濃度までDTTを常法に従い添加する。IMAP結合緩衝液(5×)およびIMAP結合試薬も含まれる。結合溶液を、1:400希釈のIMAP結合試薬として1×IMAP結合緩衝液中に調製する。
【0162】
フルオレセイン標識AKT基質(Crosstide)は、配列(Fl)−GRPRTSSFAEGを有する。1×IMAP反応緩衝液中で20μMの原液を作製する。
【0163】
使用するプレートは、化合物の希釈のためおよび化合物−ATP混合物を調製するために使用されるCostar3657(ポリプロピレン製で白色のV字底を有する382ウェル)を含む。アッセイプレートは、Packard製ProxyPlate(商標)−384Fである。
【0164】
使用するAKT−1は、PDK1およびMAPキナーゼ2によって活性化される全長ヒト組換えAKT−1から作製される。
【0165】
アッセイを実行するために、DMSO中10mMの化合物の原液を調製する。原液および対照化合物を、DMSO(10μLの化合物+10μLのDMSO)中に9回、1:2連続希釈し、所望の投薬範囲に亘って50×希釈系列を得る。次に、DMSO中の2.1μL分量の化合物を、1mMのDTTを含有する1×IMAP反応緩衝液中の10.4μMのATP(50μL)を含有するコスター3657プレートに移す。完全に混合した後、2.5μL分量をProxyPlate(商標)−384Fプレートに移す。
【0166】
200nMの蛍光標識ペプチド基質および4nMのAKT−1を含有する2.5μL分量の溶液の添加によってアッセイを開始する。プレートを1000gで1分間遠心分離し、周囲温度で60分間インキュベートする。続いて15μLの結合溶液の添加により反応物をクエンチし、再度遠心分離し、周囲温度でさらに30分間インキュベートした後、蛍光偏光を計測するように構成されたVictor1420Multilabel HTS Counterを読む。
【0167】
上記のアッセイにおいて実施例1〜20の化合物を試験し、1μM未満のIC50を有することを見出した。
【実施例】
【0168】
(調製例)
本発明を説明するために、以下の実施例を含める。しかしながら、これらの実施例は、本発明を限定するものではなく、本発明を実施する方法を示唆することを意味するにすぎないことを理解すべきである。当業者であれば、本発明の他の多数の化合物を調製するために、記載した化学反応を容易に適応してもよく、本発明の化合物を調製するための代替方法が本発明の範囲内であるとみなされることを認識するであろう。例えば、例示されていない本発明の化合物の合成は、例えば、介在基を適切に保護することにより、記載された試薬以外の当該技術分野で知られている他の適切な試薬を利用することにより、および/または反応条件の通常の改変を行うことにより、当業者に明らかな改変によって成功裡に実行することができる。代わりに、本明細書中で開示されているかまたは当該技術分野で知られている他の反応は、本発明の他の化合物を調製するために適用できると認識されるであろう。
【0169】
以下に記載する実施例では、特に明記しない限り、全ての温度は摂氏温度で示す。試薬はSigma Aldrich、Alfa Aesar、またはTCIなどの商業供給業者から購入し、特に明記しない限り、さらに精製せずに使用した。テトラヒドロフラン(「THF」)、ジクロロメタン(「DCM」)、トルエン、およびジオキサンはAldrichから密閉瓶で購入し、入荷したままで使用した。
【0170】
以下に示す反応は、一般に、窒素もしくはアルゴンの陽圧下にて、または(特に明記しない限り)無水溶媒中で乾燥チューブを用いて行い、注射器により基質および試薬を導入するためのゴム製セプタムを反応フラスコに通常取り付けた。ガラス器具をオーブンで乾燥させ、および/または加熱乾燥させた。
【0171】
H NMRスペクトルは、400MHzで操作するVarian機器で記録した。H−NMRスペクトルは、参照標準としてテトラメチルシラン(0.00ppm)または残留溶媒(CDCl:7.25ppm、CDOD:3.31ppm、DO:4.79ppm、d−DMSO:2.50ppm)を使用して、CDCl、CDOD、DOまたはd−DMSO溶液(ppmで報告)として得た。ピークの多重度を報告する場合は、以下の略語を使用する。s(一重項)、d(二重項)、t(三重項)、q(四重項)、m(多重項)、br(広幅化した)、dd(二重項の二重項)、dt(三重項の二重項)。結合定数を示す場合、ヘルツ(Hz)で報告する。
【0172】
(実施例1)
【0173】
【化30】

(R)−N−(2−アミノエチル)−N−(4−クロロベンジル)−4−(5−メチル−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イル)ピペラジン−1−カルボキサミド
ステップ1:
トリアセトキシホウ水素化ナトリウム(3.3g、15.4mmol、1.1当量)を、室温で4−クロロベンズアルデヒド(2g、14mmol)、tert−ブチル2−アミノエチルカルバメート(4.5mL、28.5mmol、1.2当量)および酢酸(2.5mL)のジクロロエタン(20mL)溶液に加えた。反応混合物を、0.5MのHCl(30mL)でクエンチする前に、一晩撹拌した。次いで、混合物をジクロロメタンで1度抽出し、次いでブラインを加えた。沈殿物を濾過し、乾燥させて、tert−ブチル2−(4−クロロベンジルアミノ)エチルカルバメート(3.58g、90%)を得た。MS(ESI)m/e(M+H)285.
ステップ2:
ベンジル4−(クロロカルボニル)ピペラジン−1−カルボキシレート(233mg、0.83mmol)を、室温でtert−ブチル2−(4−クロロベンジルアミノ)エチルカルバメート(235mg、0.83mmol)およびヒューニッヒ塩基(0.2mL、1.2mmol、1.5当量)のジクロロメタン(1.6mL)溶液に加えた。反応物を一晩撹拌した。次いで、反応混合物を粗生成物に濃縮し、それをフラッシュカラムクロマトグラフィーによって精製し、ベンジル4−((2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)エチル)(4−クロロベンジル)カルバモイル)ピペラジン−1−カルボキシレートを泡(167mg、38%)として得た。MS(ESI)m/e(M+H)531.
ステップ3:
KOH/MeOH/HO(10mL;10gのKOH、50mLのMeOHおよび25mLのHOを使用して原液として調製)溶液中のベンジル4−((2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)エチル)(4−クロロベンジル)カルバモイル)ピペラジン−1−カルボキシレート(200mg、0.38mmol)の混合物を、80℃で2時間撹拌した。反応物をEtOAcで抽出し、NaSO上で乾燥させ、減圧下で濃縮し、tert−ブチル2−(N−(4−クロロベンジル)ピペラジン−1−カルボキサミド)エチルカルバメート(132mg、89%)を得た。MS(ESI)m/e(M+H)397.
ステップ4:
(R)−(+)−プレゴン(76.12g、0.5mmol)、無水NaHCO(12.5g)および無水エーテル(500mL)を、1Lの丸底フラスコに加えた。反応混合物を、窒素下氷浴で冷却した。臭素(25.62mL、0.5mmol)を30分間かけて滴下した。混合物を濾過し、氷冷浴中でNaOEt(21%、412mL、1.11mmol)に注意深く加えた。混合物を、室温で一晩撹拌し、次いで5%HCl(1L)およびエーテル(300mL)を加えた。水相をエーテル(2×300mL)で抽出した。合わせた有機相を水で洗浄し、乾燥させ、濃縮した。残渣を、加温したセミカルバジド塩酸塩(37.5g)およびNaOAc(37.5g)の水(300mL)溶液に加えた。次いで沸騰しているエタノール(300mL)を加え、透明な溶液を得た。混合物を、2.5時間還流させ、次いで室温で一晩撹拌した。混合物を水(1L)およびエーテル(300mL)で処理した。水相をエーテル(2×300mL)で抽出した。合わせた有機相を水で洗浄し、乾燥させ、濃縮した。残渣を減圧蒸留(73〜76℃、0.8mmHg)によって精製し、(2R)−エチル2−メチル−5−(プロパン−2−イリデン)シクロペンタンカルボキシレート(63g、64%)を得た。H NMR(CDCl,400MHz)δ4.13(m,2H),3.38(d,J=16Hz,0.5H),2.93(m,0.5H),2.50−2.17(m,2H),1.98(m,1H),1.76(m,1H),1.23(m,6H),1.05(m,6H)。
【0174】
ステップ5:
酢酸エチル(100mL)中の(2R)−エチル2−メチル−5−(プロパン−2−イリデン)シクロペンタンカルボキシレート(24g、0.122mol)を、ドライアイス/イソプロパノールで−68℃に冷却した。オゾン化酸素(5〜7ft−1のO)を溶液に3.5時間吹き込んだ。色が消えるまで、反応混合物を室温で窒素を用いてフラッシュした。酢酸エチルを真空下で除去し、残渣を酢酸(150mL)に溶解し、氷水で冷却した。次いで、亜鉛粉(45g)を加えた。溶液を30分間撹拌し、次いで濾過した。濾液を2NのNaOH(1.3L)およびNaHCOで中和した。水相をエーテル(3×200mL)で抽出した。有機相を合わせ、水で洗浄し、乾燥させ、濃縮し、(2R)−エチル2−メチル−5−オキソシクロペンタンカルボキシレート(20g、96%)を得た。H NMR(CDCl,400MHz)δ4.21(m,2H),2.77(d,J=11.2Hz,1H),2.60(m,1H),2.50−2.10(m,3H),1.42(m,1H),1.33(m,3H),1.23(m,3H)。
【0175】
ステップ6:
水(60mL)中のKOH(8.3g、147.9mmol)を、(2R)−エチル2−メチル−5−オキソシクロペンタンカルボキシレート(20g、117.5mmol)およびチオ尿素(9.2g、120.9mmol)の混合物のエタノール(100mL)溶液に加えた。混合物を10時間還流させた。冷却後、溶媒を除去し、残渣を0℃にて濃HCl(12mL)で中和した。次いで、混合物をDCM(3×150mL)で抽出した。溶媒を除去し、ヘキサン/酢酸エチル(2:1)で溶離するシリカゲルクロマトグラフィーにより残渣を精製し、(R)−2−メルカプト−5−メチル−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−オール(12g、56%)を得た。MS(APCI+)[M+H]183。
【0176】
ステップ7:
ラネーニッケル(15g)およびNHOH(20mL)を、蒸留水(100mL)中の(R)−2−メルカプト−5−メチル−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−オール(12g、65.8mmol)の懸濁液に加えた。混合物を3時間還流させ、次いで濾過した。濾液を濃縮し、(R)−5−メチル−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−オール(9.89g、99%)を得た。MS(APCI+)[M+H]151。
【0177】
ステップ8:
POCl(20mL)中の(R)−5−メチル−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−オール(5.8g、38.62mmol)の混合物を、5分間還流させた。過剰なPOClを真空下で除去し、残渣をDCM(50mL)に溶解した。次いで、混合物を飽和NaHCO(200mL)に加えた。水相をDCM(3×100mL)で抽出し、合わせた有機相を乾燥させ、濃縮した。酢酸エチルで溶離するシリカゲルクロマトグラフィーにより残渣を精製し、(R)−4−クロロ−5−メチル−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン(3.18g、49%)を得た。H NMR(CDCl,400MHz)δ8.81(s,1H),3.47(m,1H),3.20(m,1H),3.05(m,1H),2.41(m,1H),1.86(m,3H),1.47(m,3H)。
【0178】
ステップ9:
(R)−4−クロロ−5−メチル−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン(46mg、0.27mmol、1.1当量)を、tert−ブチル2−(N−(4−クロロベンジル)ピペラジン−1−カルボキサミド)エチルカルバメート(100mg、0.25mmol)およびヒューニッヒ塩基(0.1mL、0.75mmol、3当量)のアセトニトリル(3mL)溶液に加えた。このように得られた混合物を80℃に一晩加熱した。反応混合物をHOで希釈し、DCMで抽出し、乾燥させ、濃縮し、(R)−tert−ブチル2−(N−(4−クロロベンジル)−4−(5−メチル−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イル)ピペラジン−1−カルボキサミド)エチルカルバメート(40mg、30%)を得た。MS(ESI)m/e(M+H)529。
【0179】
ステップ10:
HCl/ジオキサンの溶液を、0℃でMeOH(1mL)中の(R)−tert−ブチル2−(N−(4−クロロベンジル)−4−(5−メチル−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イル)ピペラジン−1−カルボキサミド)エチルカルバメート(40mg、0.075mmol)に加えた。反応混合物を25℃で1時間撹拌した。溶媒の除去後、粗生成物を分取HPLCにより精製し、(R)−N−(2−アミノエチル)−N−(4−クロロベンジル)−4−(5−メチル−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イル)ピペラジン−1−カルボキサミド(32mg、90%)を得た。MS (ESI)m/e(M+H)429.2.H NMR:δ=8.56(s,1H),δ=7.23−7.56(dd,4H),δ=4.51(s,2H),δ=3.97−4.19(m,4H),δ=3.70(m,1H),δ=3.61(m,4H),δ=3.40−3.43(t,2H),δ=2.96−3.15(m,4H),δ=2.42(m,1H),δ=1.89(m,1H),δ=1.21−1.22(d,3H)。
【0180】
(実施例2)
【0181】
【化31】

(R)−N−(4−クロロフェニル)−N−(2−(ジエチルアミノ)エチル)−4−(5−メチル−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イル)ピペラジン−1−カルボキサミド
ステップ1:
EtOAc(900mL)中のプレゲン酸エチル(130g、662mmol)を、ドライアイス−イソプロパノール浴を使用して−78℃に冷却した。この混合物を、反応物の色が紫色になるまでオゾン分解にかけた。この時点でオゾン生成が止まり、反応物を乾燥氷浴から除去した。それが黄色になるまで、酸素を反応混合物に吹き込んだ。反応混合物を真空下で濃縮し、このように得られた残渣を氷酢酸(400mL)に溶解した。溶液を0℃に冷却し、Zn末(65g、993mmol)を30分かけて少しずつ加えた。次いで、反応物を2時間撹拌し、この時点で反応混合物をセライトのパッドを通して濾過し、亜鉛末を除去した。NaOHおよびNaHCO水溶液で酢酸をpH7に中和し、エーテル(3×800mL)で抽出した。合わせた有機物をブライン、MgSOで乾燥し、濃縮し、(2R)−エチル2−メチル−5−オキソシクロペンタンカルボキシレートを液体(107g、95%)として得た。
【0182】
ステップ2:
酢酸アンモニウム(240.03g、3113.9mmol)を、(R)−エチル2−メチル−5−オキソシクロペンタンカルボキシレート(106.0g、622.78mmol)のMeOH(1.2L)溶液に加えた。反応混合物を窒素下室温で20時間撹拌し、その後TLCおよびHPLCにより判断した通りそれは完了した。反応混合物を濃縮し、MeOHを除去した。このように得られた残渣をDCMに溶解し、HOで2回、ブラインで1回洗浄し、乾燥させ(NaSO)、濾過し、濃縮して、(R)−エチル2−アミノ−5−メチルシクロペント−1−エンカルボキシレート(102g、97%収率)を油として得た。LC/MS(APCI+)m/z170[M+H]+。
【0183】
ステップ3:
(R)−エチル2−アミノ−5−メチルシクロペント−1−エンカルボキシレート(161.61g、955.024mmol)およびギ酸アンモニウム(90.3298g、1432.54mmol)を含むホルムアミド(303.456ml、7640.19mmol)溶液を、内温150℃に加熱し、17時間撹拌した。反応混合物を冷却し、2Lの1つ口フラスコに移した。次いで高真空蒸留により過剰なホルムアミジンを除去した。ホルムアミジンの蒸発が止まった時点で、蒸留器中に残った油をDCMに溶解し、ブライン(3×200mL)で洗浄した。合わせた水性洗液をDCMで抽出した。合わせた有機抽出物を乾燥させ(NaSO)、濾過し、濃縮した。このように得られた茶色の油を最少量のDCMに溶解し、分液漏斗を用いてこの溶液をエーテルの撹拌溶液(約5容量のエーテル対DCM溶液)に加えると、茶色の沈殿物が生成した。この茶色の沈殿物を中間のガラス漏斗を通して濾別し、これをエーテルですすぎ、廃棄した。濾液を濃縮し、エーテルから摩砕し、これをさらに2回繰り返し、次いで高真空ライン上で乾燥させ、(R)−5−メチル−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−オール(93.225g、65.00%収率)をペースト状固体として得た。LC/MS(APCI−)m/z149.2。
【0184】
ステップ4:
POCl(463.9ml、5067mmol)を無溶媒で、0℃の(R)−5−メチル−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−オール(152.2g、1013mmol)のDCE(1.2L)溶液に添加用漏斗によりゆっくり加えた。添加完了後、反応混合物を室温に加温し、次いで加熱還流させ、70分間撹拌した。反応はHPLCにより完了したと決定した。反応混合物を室温に冷却し、過剰のPOClを以下の通りに4分割でクエンチした。反応混合物を分液漏斗に移し、氷および氷浴中で冷却した飽和NaHCO溶液を含有するビーカーに滴下した。反応混合物の各分割部分の添加が完了した時点で、クエンチした混合物を30分撹拌してPOClの分解を完了させ、その後分液漏斗に移した。混合物を分液漏斗に移し、DCMで2度抽出した。合わせた抽出物を乾燥(NaSO)させ、濾過し、濃縮した。粗製物を以下の通りにシリカゲル上で精製した。シリカゲル(1kg)を、3Lのガラス漏斗上で9:1のヘキサン:酢酸エチル中にスラリー化し、シリカは真空下で沈殿し、砂が最上層を覆った。粗製物をDCM/ヘキサン混合物とともに充填し、真空下1Lの枝付きフラスコを用いて化合物を溶離した。高Rfの副生成物が最初に、次いで(R)−4−クロロ−5−メチル−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン(104.4g、61.09%収率)が油として溶離した。
【0185】
ステップ5:
4−クロロ−アニリン(0.5g、3.9mmol)を、2−ブロモ−N,N−ジエチルエチルアミンヒドロブロミド(1.12g、4.3mmol)およびN,N−ジイソプロピルエチルアミン(2mL、11.7mmol)のトルエン(7.8mL)溶液に加えた。混合物を室温で5時間撹拌した。次いで、混合物をEtOAc(30mL)および飽和NaHCO(20mL)で希釈した。有機層をHO(1×20mL)で洗浄し、乾燥させ(NaSO)、濾過し、濃縮し、4−クロロ−N−(2−(ジエチルアミノ)エチル)ベンゼンアミンを油として得て、それを精製せずに使用した。MS(APCI+)[M+H]227.3。
【0186】
ステップ6:
tert−ブチル4−クロロカルボニル−ピペラジン−1−カルボキシレート(0.97g、3.9mmol)を、4−クロロ−N−(2−(ジエチルアミノ)エチル)ベンゼンアミン(884mg、3.9mmol)およびN,N−ジイソプロピルエチルアミン(1.9mL、11.7mmol)のDCM(8mL)溶液に加えた。反応混合物を20時間加熱還流させた。混合物を室温に冷却し、飽和NHCl(10mL)でクエンチし、DCM(2×20mL)で抽出した。合わせた有機物を乾燥させ(NaSO)、濾過し、濃縮した。シリカゲルクロマトグラフィーにより粗生成物を精製し、tert−ブチル4−(N−(4−クロロフェニル)−N−(2−(ジエチルアミノ)エチル)カルバモイル)ピペラジン−1−カルボキシレート(311mg、18%)を得た。MS (APCI+)[M+H]439.4. H NMR(CDCl,400MHz)δ7.29(d,J=8.8Hz,2H),7.09(d,J=8.8Hz,2H),3.70−3.66(m,2H),3.45−3.42(m,2H),3.24−3.21(m,4H),3.15−3.12(m,2H),2.61−2.57(m,2H),2.52(q,J=7.2Hz,4H),1.42(s,9H),0.99(t,J=7.2Hz,6H)。
【0187】
ステップ7:
トリフルオロ酢酸(1mL)を、tert−ブチル4−(N−(4−クロロフェニル)−N−(2−(ジエチルアミノ)エチル)カルバモイル)ピペラジン−1−カルボキシレート(311mg、0.7mmol)のDCM(5mL)溶液に加えた。混合物を室温で3時間撹拌し、次いで真空中で濃縮した。残渣をn−ブタノール(2mL)に溶解した。N,N−ジイソプロピルエチルアミン(0.5mL、3.6mmol)を加え、次いで(R)−4−クロロ−6,7−ジヒドロ−5−メチル−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン(113mg、0.84mmol)を加えた。反応混合物を80℃で16時間加熱した。次いで、混合物をHOで希釈し、DCM(2×20mL)で抽出した。合わせた有機物を乾燥させ(NaSO)、濾過し、濃縮した。粗生成物を分取HPLCにより精製し、N−(4−クロロフェニル)−N−(2−(ジエチルアミノ)エチル)−4−((R)−6,7−ジヒドロ−5−メチル−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イル)ピペラジン−1−カルボキサミド(39.9mg、12%)を得た。MS (APCI+) [M+H]471.3. H NMR(CDCl,400MHz)δ:8.49(s,1H),7.40−7.35(m,2H),7.17−7.13(m,2H),4.06−3.95(m,4H),3.77−3.70(m,2H),3.51−3.44(m,1H),3.39−3.02(m,11H),2.42−2.32(m,1H),1.88−1.82(m,1H),1.33(t,J=7.2Hz,6H),1.15(d,J=6.8Hz,3H)。
【0188】
(実施例3)
【0189】
【化32】

N−(4−クロロベンジル)−N−(2−(ジエチルアミノ)エチル)−4−((5R)−7−ヒドロキシ−5−メチル−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イル)ピペラジン−1−カルボキサミド
ステップ1:
(R)−(+)−プレゴン(76.12g、0.5mmol)、無水NaHCO(12.5g)および無水エーテル(500mL)を、1Lの丸底フラスコに加えた。反応混合物を窒素下氷浴によって冷却した。臭素(25.62mL、0.5mmol)を、30分かけて滴下した。混合物を濾過し、氷冷浴中でNaOEt(21%、412mL、1.11mmol)に注意深く加えた。混合物を室温で一晩撹拌し、次いで5%HCl(1L)およびエーテル(300mL)を加えた。水相をエーテル(2×300mL)で抽出した。合わせた有機相を水で洗浄し、乾燥させ、濃縮した。残渣を加温したセミカルバジド塩酸塩(37.5g)およびNaOAc(37.5g)の水(300mL)溶液に加え、次いで沸騰したエタノール(300mL)を加え、透明な溶液を得た。混合物を2.5時間還流させ、次いで室温で一晩撹拌した。混合物を水(1L)およびエーテル(300mL)で処理した。水相をエーテル(2×300mL)で抽出した。合わせた有機相を水で洗浄し、乾燥させ、濃縮した。残渣を減圧蒸留(0.8mmHgで73〜76℃)により精製し、(2R)−エチル2−メチル−5−(プロパン−2−イリデン)シクロペンタンカルボキシレート(63g、64%)を得た。H NMR(CDCl,400MHz)δ4.13(m,2H),3.38(d,J=16Hz,0.5H),2.93(m,0.5H),2.50−2.17(m,2H),1.98(m,1H),1.76(m,1H),1.23(m,6H),1.05(m,6H)。
【0190】
ステップ2:
酢酸エチル(100mL)中の(2R)−エチル2−メチル−5−(プロパン−2−イリデン)シクロペンタンカルボキシレート(24g、0.122mol)を、ドライアイス/イソプロパノールで−68℃に冷却した。オゾン化酸素(5〜7ft−1のO)を、溶液に3.5時間吹き込んだ。色が消えるまで、反応混合物を室温で窒素を用いてフラッシュした。酢酸エチルを真空下で除去し、残渣を酢酸(150mL)に溶解し、氷水により冷却した。次いで、亜鉛粉(45g)を加えた。溶液を30分間撹拌し、次いで濾過した。濾液を2NのNaOH(1.3L)およびNaHCOで中和した。水相をエーテル(3×200mL)で抽出した。有機相を合わせ、水で洗浄し、乾燥させ、濃縮し、(2R)−エチル2−メチル−5−オキソシクロペンタンカルボキシレート(20g、96%)を得た。H NMR(CDCl,400MHz)δ4.21(m,2H),2.77(d,J=11.2Hz,1H),2.60(m,1H),2.50−2.10(m,3H),1.42(m,1H),1.33(m,3H),1.23(m,3H)。
【0191】
ステップ3:
水(60mL)中のKOH(8.3g、147.9mmol)を、(2R)−エチル2−メチル−5−オキソシクロペンタンカルボキシレート(20g、117.5mmol)およびチオ尿素(9.2g、120.9mmol)の混合物のエタノール(100mL)溶液に加えた。混合物を10時間還流させた。冷却後、溶媒を除去し、残渣を0℃にて濃HCl(12mL)で中和し、次いでDCM(3×150mL)で抽出した。溶媒を除去し、ヘキサン/酢酸エチル(2:1)で溶離するシリカゲルクロマトグラフィーにより残渣を精製し、(R)−2−メルカプト−5−メチル−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−オール(12g、56%)を得た。MS(APCI+)[M+H]183。
【0192】
ステップ4:
ラネーニッケル(15g)およびNHOH(20mL)を、蒸留水(100mL)中の(R)−2−メルカプト−5−メチル−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−オール(12g、65.8mmol)の懸濁液に加えた。混合物を3時間還流し、次いで濾過した。濾液を濃縮し、(R)−5−メチル−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−オール(9.89g、99%)を得た。MS(APCI+)[M+H]151。
【0193】
ステップ5:
POCl(20mL)中の(R)−5−メチル−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−オール(5.8g、38.62mmol)の混合物を、5分間還流させた。過剰なPOClを真空下で除去し、残渣をDCM(50mL)に溶解した。次いで、混合物を飽和NaHCO(200mL)に加えた。水相をDCM(3×100mL)で抽出し、合わせた有機相を乾燥させ、濃縮した。酢酸エチルで溶離するシリカゲルクロマトグラフィーにより残渣を精製し、(R)−4−クロロ−5−メチル−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン(3.18g、49%)を得た。H NMR (CDCl,400MHz)δ8.81(s,1H),3.47(m,1H),3.20(m,1H),3.05(m,1H),2.41(m,1H),1.86(m,3H),1.47(m,3H)。
【0194】
ステップ6:
m−CPBA(8.30g、37.0mmol)を、(R)−4−クロロ−5−メチル−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン(2.5g、14.8mmol)のCHCl(60mL)溶液に3回で加えた。混合物を室温で2日間撹拌した。混合物を0℃に冷却し、水(60mL)中のNa(10g)を滴下した。次いで、水(20mL)中のNaCO(6g)を加えた。反応混合物を20分間撹拌した。水相をCHCl(2×200mL)で抽出し、合わせた有機相を低温で(<25℃)濃縮した。酢酸エチル−DCM/MeOH(20:1)で溶離するシリカゲルクロマトグラフィーにより残渣を精製し、(R)−4−クロロ−5−メチル−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−オキシド(1.45g、53%)を得た。H NMR(CDCl,400MHz)δ8.66(s,1H),3.50(m,1H),3.20(m,2H),2.44(m,1H),1.90(m,1H),1.37(d,J=7.2Hz,3H)。
【0195】
ステップ7:
(R)−4−クロロ−5−メチル−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−オキシド(1.45g、7.85mmol)の無水酢酸(20mL)溶液を、110℃に2時間加熱した。冷却後、過剰な溶媒を真空下で除去した。ヘキサン/酢酸エチル(3:1)で溶離するシリカゲルクロマトグラフィーにより残渣を精製し、(5R)−4−クロロ−5−メチル−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−7−イルアセテート(1.25g、70%)を得た。H NMR (CDCl,400MHz)δ8.92(m,1H),6.30−6.03(m,1H),3.60−3.30(m,1H),2.84(m,1H),2.40−2.20(m,1H),2.15(d,J=6Hz,2H),1.75(m,2H),1.47(d,J=6.8,2H),1.38(d,J=7.2,1H).MS(APCI+)[M+H]227。
【0196】
ステップ8:
O/THF中のLiOHで処理することにより(5R)−4−クロロ−5−メチル−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−7−イルアセテートを、(5R)−4−クロロ−6,7−ジヒドロ−5−メチル−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−7−オールに変換し、続いて酸性後処理(水中の2NのHCl)により、アセテート基を除去した。
【0197】
ステップ9:
4−クロロベンジルアミン(1.0mL、8.2mmol)を、2−ブロモ−N,N−ジエチルエチルアミンヒドロブロミド(2.4g、9.0mmol)およびトリエチルアミン(3.4mL、25mmol)のジクロロメタン(16mL)溶液に加えた。混合物を室温で5時間撹拌した。次いで、混合物を濃縮し、N1−(4−クロロベンジル)−N2,N2−ジエチルエタン−1,2−ジアミンを油として得て、それを精製せずに直ちに使用した。
【0198】
ステップ10:
tert−ブチル4−クロロカルボニル−ピペラジン−1−カルボキシレート(245mg、0.99mmol)を、N1−(4−クロロベンジル)−N2,N2−ジエチルエタン−1,2−ジアミン(235mg、0.98mmol)およびN,N−ジイソプロピルエチルアミン(0.54mL、2.94mmol)のDCM(2mL)溶液に加えた。反応混合物を室温で1時間撹拌した。混合物を飽和NHCl(2mL)でクエンチし、DCM(2×5mL)で抽出した。合わせた有機物を乾燥させ(NaSO)、濾過し、濃縮した。粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィーによって精製し、tert−ブチル4−(N−(4−クロロベンジル)−N−(2−(ジエチルアミノ)エチル)カルバモイル)ピペラジン−1−カルボキシレート(200mg、45%)を得た。H NMR (CDCl3,400MHz)δ7.32(d,J=8.4Hz,2H),7.19(d,J=8.4Hz,2H),4.42(s,2H),3.45−3.40(m,4H),3.25−3.20(m,4H),3.18(t,J=6.8Hz,2Hz),2.56(t,J=6.8Hz,2H),2.49(q,J=7.2Hz,4H),1.46(s,9H),0.99(t,J=7.2Hz,6H)。
【0199】
ステップ11:
トリフルオロ酢酸(1mL)を、tert−ブチル4−(N−(4−クロロベンジル)−N−(2−(ジエチルアミノ)エチル)カルバモイル)ピペラジン−1−カルボキシレート(88mg、0.19mmol)のDCM(1mL)溶液に加えた。混合物を室温で3時間撹拌し、次いで真空中で濃縮した。残渣をn−ブタノール(1mL)に溶解した。N,N−ジイソプロピルエチルアミン(0.11mL、0.6mmol)を、溶液に加えた。次いで、(5R)−4−クロロ−6,7−ジヒドロ−5−メチル−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−7−オール(37mg、0.20mmol)を、溶液に加えた。反応混合物を80℃で16時間加熱した。次いで、混合物をHO(1mL)で希釈し、DCM(2×5mL)で抽出した。合わせた有機物を乾燥させ(NaSO)、濾過し、濃縮した。粗生成物を分取HPLCによって精製し、N−(4−クロロベンジル)−N−(2−(ジエチルアミノ)エチル)−4−((5R)−6,7−ジヒドロ−7−ヒドロキシ−5−メチル−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イル)ピペラジン−1−カルボキサミド(19.9mg、21%)を得た。MS(APCI+)[M+H]+501.3. H NMR(CDCl3,400MHz) δ8.46(s,1H),7.34(d,J=8.4Hz,4H),7.13(d,J=8.4Hz,4H),5.50(t,J=8Hz,1H),5.28(dd,J=3.6,8.4Hz,1H),4.45(s,4H),4.14−4.04(m,4H),3.94−3.81(m,4H),3.51−3.42(m,8H),3.20−3.00(m,16H),2.73−2.64(m,2H),2.40−2.20(m,4H),2.05−1.98(m,1H),1.86−1.78(m,1H),1.33(d,J=7.2Hz,3Hz),1.28(t,J=7.2Hz,12H),1.21(d,J=6.8Hz,3Hz)。
【0200】
表1において示す実施例4〜14はまた、上記の方法によって作製することができる。
【0201】
【表1−1】

【0202】
【表1−2】

【0203】
【表1−3】

【0204】
【表1−4】

列挙された実施形態と併せて本発明を説明したが、本発明をそれらの実施形態に限定することは意図していないことが理解される。逆に、本発明は、特許請求の範囲によって定義される通りの本発明の範囲内に含むことができる全ての代替物、修正物および均等物を網羅することが意図されている。したがって、以上の記載は、本発明の原理を例示するだけであると考えられる。
【0205】
「含む(comprise)」、「含めた(comprising)」、「含む(include)」、「含めた(including)」および「含む(includes)」という単語は、本明細書および下記の特許請求の範囲において使用される場合、述べられた特徴、整数、成分またはステップの存在を特定することを意図するが、それらは、1つもしくは複数の他の特徴、整数、成分、ステップ、またはそれらの群の存在または追加を除外しない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物
【化33】

ならびに、その鏡像異性体および塩[式中、
およびR1aは、H、Me、Et、ビニル、CF、CHFまたはCHFから独立に選択され、
は、H、OH、OMeまたはFであり、
2aは、H、MeまたはFであり、
は、H、Me、Et、またはCFであり、
Aは、
【化34】

[式中、
Gは、1〜4個のR基で場合によって置換されているフェニル、またはハロゲンで場合によって置換されている5〜6員ヘテロアリールであり、
およびRは、独立に、H;OCH;F、OH、C〜CアルキルもしくはO(C〜Cアルキル)で場合によって置換されているC〜C−シクロアルキル;F、OH、C〜Cアルキル、シクロプロピルメチルもしくはC(=O)(C〜Cアルキル)で場合によって置換されている4〜6員複素環;またはOH、オキソ、O(C〜C−アルキル)、CN、F、NH、NH(C〜C−アルキル)、N(C〜C−アルキル)、シクロプロピル、フェニル、イミダゾリル、ピペリジニル、ピロリジニル、モルホリニル、テトラヒドロフラニル、オキセタニルもしくはテトラヒドロピラニルから独立に選択される1個または複数の基で場合によって置換されているC〜C−アルキルであるか、
あるいはRおよびRは、それらが結合している窒素と一緒になって、OH、ハロゲン、オキソ、CF、CHCF、CHCHOH、O(C〜Cアルキル)、C(=O)CH、NH、NHMe、N(Me)、S(O)CH、シクロプロピルメチルおよびC〜Cアルキルから独立に選択される1個または複数の基で場合によって置換されている4〜7員ヘテロシクリル環を形成し、あるいは
は、水素であり、RおよびRは、それらが結合している原子と一緒になって、1個の窒素原子を有する4〜6員ヘテロシクリル環を形成し、
およびRは、Hであるか、
あるいはRは、Hであり、RおよびRは、それらが結合している原子と一緒になって、1個または2個の環窒素原子を有する5〜6員ヘテロシクリル環を形成し、
およびRは、HまたはMeであるか、
あるいはRおよびRは、それらが結合している原子と一緒になって、シクロプロピル環を形成し、
各Rは、独立に、ハロゲン、C〜C−アルキル、C〜C−シクロアルキル、O−(C〜C−アルキル)、CF、OCF、S(C〜C−アルキル)、CN、OCH−フェニル、NH、NO、NH−(C〜C−アルキル)、N−(C〜C−アルキル)、ピペリジン、ピロリジン、CHF、CHF、OCHF、OCHF、OH、SO(C〜C−アルキル)、C(O)NH、C(O)NH(C〜C−アルキル)、およびC(O)N(C〜C−アルキル)であり、
mおよびnは、独立に、0、1、2または3であり(ただし、(m+n)は、2、3または4と等しくなければならない)、
pは、0または1である]
である]。
【請求項2】
式Iの化合物
【化35】

ならびに、その鏡像異性体および塩[式中、
およびR1aは、H、Me、Et、ビニル、CF、CHFまたはCHFから独立に選択され、
は、H、OH、OMeまたはFであり、
2aは、H、MeまたはFであり、
は、H、Me、Et、またはCFであり、
Aは、
【化36】

[式中、
Gは、1〜4個のR基で場合によって置換されているフェニル、またはハロゲンで場合によって置換されている5〜6員ヘテロアリールであり、
およびRは、独立に、H;OCH;F、OH、C〜CアルキルもしくはO(C〜Cアルキル)で場合によって置換されているC〜C−シクロアルキル;F、OH、C〜Cアルキル、シクロプロピルメチルもしくはC(=O)(C〜Cアルキル)で場合によって置換されている4〜6員複素環;またはOH、オキソ、O(C〜C−アルキル)、CN、F、NH、NH(C〜C−アルキル)、N(C〜C−アルキル)、シクロプロピル、フェニル、イミダゾリル、ピペリジニル、ピロリジニル、モルホリニル、テトラヒドロフラニル、オキセタニルもしくはテトラヒドロピラニルから独立に選択される1個または複数の基で場合によって置換されているC〜C−アルキルであるか、
あるいはRおよびRは、それらが結合している窒素と一緒になって、OH、ハロゲン、オキソ、CF、CHCF、CHCHOH、O(C〜Cアルキル)、C(=O)CH、NH、NHMe、N(Me)、S(O)CH、シクロプロピルメチルおよびC〜Cアルキルから独立に選択される1個または複数の基で場合によって置換されている4〜7員ヘテロシクリル環を形成し、
およびRは、Hであるか、
あるいはRは、Hであり、RおよびRは、それらが結合している原子と一緒になって、1個または2個の環窒素原子を有する5〜6員ヘテロシクリル環を形成し、
およびRは、HまたはMeであるか、
あるいはRおよびRは、それらが結合している原子と一緒になって、シクロプロピル環を形成し、
各Rは、独立に、ハロゲン、C〜C−アルキル、C〜C−シクロアルキル、O−(C〜C−アルキル)、CF、OCF、S(C〜C−アルキル)、CN、OCH−フェニル、NH、NO、NH−(C〜C−アルキル)、N−(C〜C−アルキル)、ピペリジン、ピロリジン、CHF、CHF、OCHF、OCHF、OH、SO(C〜C−アルキル)、C(O)NH、C(O)NH(C〜C−アルキル)、およびC(O)N(C〜C−アルキル)であり、
mおよびnは、独立に、0、1または2であり(ただし、(m+n)は、2、3または4と等しくなければならない)、
pは、0または1である]
である]。
【請求項3】
がHである、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
がメチルである、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項5】
前記メチルが場合によって(S)配置である、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
がエチルである、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項7】
がメチルである、請求項1から6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
前記メチルが、場合によって(R)配置である、請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
が水素である、請求項1から6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項10】
1aが水素である、請求項1から9のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項11】
1aがメチルである、請求項1から9のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項12】
がHである、請求項1から11のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項13】
がFである、請求項1から11のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項14】
がOHである、請求項1から11のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項15】
2aがHである、請求項1から14のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項16】
2aがFである、請求項1から14のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項17】
Gが、1〜4個のR基で場合によって置換されているフェニルである、請求項1から16のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項18】
Gが、F、Cl、Br、I、メチル、エチル、イソプロピル、tert−ブチル、シクロプロピル、CN、CF、OMe、OEt、OCF、NO、SMeおよびOCHPhから独立に選択される1〜4個の基で場合によって置換されているフェニルである、請求項17に記載の化合物。
【請求項19】
Gが、4−クロロフェニル、4−フルオロフェニル、4−ブロモフェニル、4−ヨードフェニル、4−トリフルオロメチルフェニル、4−トリフルオロメトキシフェニル、4−チオメチルフェニル、3−フルオロ−4−クロロフェニル、2,4−ジクロロフェニルまたは3,4−ジクロロフェニルである、請求項18に記載の化合物。
【請求項20】
Gが、1個または複数のハロゲンで場合によって置換されている5〜6員単環式ヘテロアリールである、請求項1から16のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項21】
Gが、
【化37】

である、請求項20に記載の化合物。
【請求項22】
がHである、請求項1から21のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項23】
がHである、請求項1から22のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項24】
がHである、請求項1から23のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項25】
がHである、請求項1から24のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項26】
がHまたはエチルである、請求項1から25のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項27】
がHまたはエチルである、請求項1から26のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項28】
mが1であり、nが1である、請求項1から27のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項29】
pが0である、請求項1から28のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項30】
Aが
【化38】

である、請求項29に記載の化合物。
【請求項31】
pが1である、請求項1から28のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項32】
Aが
【化39】

である、請求項31に記載の化合物。
【請求項33】
Aが
【化40】

である、請求項31に記載の化合物。
【請求項34】
mが0であり、Rが水素であり、RおよびRが、それらが結合している原子と一緒になって、1個の窒素原子を有する4〜6員ヘテロシクリル環を形成する、請求項1に記載の化合物。
【請求項35】
nが1かつqが1であるか、nが1かつqが2であるか、またはnが2かつqが2である、請求項34に記載の化合物。
【請求項36】
請求項1に記載され、実施例1〜20において挙げられた化合物。
【請求項37】
請求項1から36のいずれか一項に記載の化合物を含む医薬組成物。
【請求項38】
哺乳動物におけるAKT媒介性疾患または障害の治療方法であって、有効量の請求項1から36のいずれか一項に記載の化合物を該哺乳動物に投与するステップを含む方法。
【請求項39】
前記疾患または障害が、炎症性疾患、過剰増殖性疾患、心臓血管疾患、神経変性疾患、婦人科疾患、もしくは皮膚科疾患である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
哺乳動物においてAKTプロテインキナーゼの産生を阻害する方法であって、有効量の請求項1から36のいずれか一項に記載の化合物を該哺乳動物に投与するステップを含む方法。
【請求項41】
AKTプロテインキナーゼ媒介性状態の治療における薬剤としての使用のための、請求項1から36のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項42】
AKTプロテインキナーゼ媒介性状態の治療のための医薬の製造における、請求項1から36のいずれか一項に記載の化合物の使用。
【請求項43】
AKTプロテインキナーゼ媒介性状態を治療するためのキットであって、
a)請求項1から36のいずれか一項に記載の化合物を含む第1の医薬組成物と、
b)使用説明書と
を含むキット。
【請求項44】
(c)第2の医薬組成物をさらに含み、該第2の医薬組成物は、AKTプロテインキナーゼ阻害剤である第2の化合物を含む、請求項43に記載のキット。
【請求項45】
請求項1または2に記載の化合物を調製する方法であって、
(a)式
【化41】

(式中、Halはハロゲンである)を有する化合物を、式
【化42】

(式中、Pgは保護基である)の化合物と反応させ、続いて脱保護および任意選択の官能化により式Iの化合物を調製するステップ、
(b)式
【化43】

の化合物をPOClまたはSOClにより活性化し、続いて式
【化44】

(式中、Pgは保護基である)の化合物で置換し、続いて脱保護および任意選択の官能化により式Iの化合物を調製するステップ、または
(c)式
【化45】

(式中、Pg’は保護基である)の化合物を、式
【化46】

(式中、Pgは保護基である)の化合物と反応させ、続いて脱保護および任意選択の官能化により式Iの化合物を調製するステップ
を含む方法。

【公表番号】特表2010−532387(P2010−532387A)
【公表日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−515270(P2010−515270)
【出願日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際出願番号】PCT/US2008/069147
【国際公開番号】WO2009/006569
【国際公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【出願人】(504344509)アレイ バイオファーマ、インコーポレイテッド (87)
【出願人】(509012625)ジェネンテック, インコーポレイテッド (357)
【Fターム(参考)】