説明

AZD1152のマレエート共結晶

本発明は、癌などの高増殖性疾患の処置に有用であるオーロラキナーゼ阻害剤である2−{エチル[3−({4−[(5−{2−[(3−フルオロフェニル)アミノ]−2−オキソエチル}−1H−ピラゾール−3−イル)アミノ]キナゾリン−7−イル}オキシ)プロピル]アミノ}エチルリン酸二水素塩(AZD1152)の新規な共結晶に関する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な共結晶、より具体的には、癌などの高増殖性疾患の処置に有用であるオーロラキナーゼ阻害剤である2−{エチル[3−({4−[(5−{2−[(3−フルオロフェニル)アミノ]−2−オキソエチル}−1H−ピラゾール−3−イル)アミノ]キナゾリン−7−イル}オキシ)プロピル]アミノ}エチルリン酸二水素塩(本明細書中において、AZD1152と称される)の新規な共結晶形に関する。より詳しくは、本発明は、AZD1152のマレエート共結晶(maleate co−crystal);AZD1152のマレエート共結晶の製造方法;AZD1152のマレエート共結晶を含有する医薬組成物;癌などの高増殖性疾患の処置用の薬剤の製造におけるAZD1152のマレエート共結晶の使用;およびAZD1152のマレエート共結晶の治療的有効量を投与することによるヒトまたは動物体の癌などの高増殖性疾患を処置する方法に関する。本発明は、更に、AZD1152のマレエート共結晶の具体的な結晶形に関する。
【背景技術】
【0002】
癌(および他の高増殖性疾患)は、細胞増殖の正常な調節を喪失した時に生じる未制御の細胞増殖を特徴とする。この喪失は、しばしば、細胞の進行をその細胞周期によって制御する細胞経路への遺伝的損傷の結果であると考えられる。
【0003】
真核生物の場合、タンパク質リン酸化の定序カスケードは、細胞周期を制御すると考えられる。このカスケードにおいて不可欠な役割を果たしているプロテインキナーゼのいくつかのファミリーが識別された。多数のこれらキナーゼの活性は、正常組織と比較した場合、ヒト腫瘍中で増加する。これは、タンパク質の(例えば、遺伝子増幅の結果として)増加した発現レベルによってかまたは、コアクチベーターまたは阻害性タンパク質の発現の変化によって生じることがありうる。
【0004】
これら細胞周期調節因子の最初に識別され且つ最も広く研究されたものは、サイクリン依存性キナーゼ(またはCDK)である。より最近になって、CDKファミリーとは構造的に異なるプロテインキナーゼが識別され、そして細胞周期を調節する場合に不可欠な役割を果たしていることが判明した。これらキナーゼは、更に、発癌において重要であると考えられ、それには、ショウジョウバエ属(Drosophila)オーロラタンパク質およびS.セレビシエ(S.cerevisiae)Ipl1タンパク質のヒトホモログが含まれる。これら遺伝子の三つのヒトホモログであるオーロラA、オーロラBおよびオーロラC(それぞれ、オーロラ2、オーロラ1およびオーロラ3としても知られる)は、細胞周期で調節されたセリン−トレオニンプロテインキナーゼをコードしている(Adams et al., 2001, Trends in Cell Biology. 11(2): 49-54 に要約される)。これらは、G2および有糸分裂によって発現およびキナーゼ活性のピークを示す。いくつかの知見は、ヒトオーロラタンパク質の癌への関与を暗示している。オーロラA遺伝子は、乳房および結腸双方の腫瘍を含めたヒト腫瘍中でしばしば増幅される領域である染色体20q13に位置している。50%を超える原発性ヒト結腸直腸癌において、オーロラA DNAが増幅され且つmRNAが過発現されるので、オーロラAは、このアンプリコンの主要標的遺伝子でありうる。これら腫瘍において、オーロラAタンパク質レベルは、隣接した正常組織と比較して極めて高いと考えられる。更に、ヒトオーロラAでの齧歯類動物線維芽細胞のトランスフェクションは、トランスフォーメーションをもたらして、軟寒天中で増殖し且つヌードマウスに腫瘍を形成する能力を与える(Bischoff et al., 1998, The EMBO Journal. 17(11): 3052-3065)。他の研究(Zhou et al., 1998, Nature Genetics. 20(2): 189-93)は、オーロラAの人工的過発現が、癌の発生における既知のイベントである、中心体数の増加および異数性の増加をもたらすということを示した。
【0005】
更に、正常細胞と比較した場合、腫瘍細胞では、オーロラB(Adams et al., 2001, Chromsoma. 110(2):65-74)およびオーロラC(Kimura et al., 1999, Journal of Biological Chemistry, 274(11): 7334-40)の発現が増加しているということが分かった。オーロラBは、癌細胞中で過発現され、そして増加したオーロラBレベルは、結腸直腸癌の進行期と相関することが分かった(Katayama et al (1999) J. Natl. Cancer Inst. 91:1160)。更に、一つの報告は、オーロラBの過発現が、セリン10におけるヒストンH3の増加したリン酸化によって異数性を引き起こすということ、およびオーロラBを過発現する細胞が、転移する一層攻撃的な腫瘍を形成するということを示唆している(Ota, T. et al, 2002, Cancer Res. 62: 5168-5177)。オーロラBは、染色体パッセンジャータンパク質であるが、それは、少なくとも三つの他のパッセンジャータンパク質である Survivin、INCENPおよび Borealin を含む安定な複合体中に存在する(Carmena M. et al. 2003, Nat. Rev. Mol. Cell Biol. 4: 842-854)。Survivin は、更に、癌中でアップレギュレーションされるし、BIR(バキュロウイルスアポトーシスタンパク質阻害剤繰返し体(BaculovirusInhibitor of apoptosis protein (IAP) Repeat))ドメインを含有するので、アポトーシスおよび/または有糸分裂破局から腫瘍細胞を保護する場合にある役割を果たしているかもしれない。
【0006】
オーロラCに関して、その発現は、精巣に限定されると考えられるが、いろいろな癌系統において過発現されることが判明した。(Katayama H et al, 2003, Cancer and Metastasis Reviews 22: 451-464)。
【0007】
重要なことに、ヒト腫瘍細胞系のアンチセンスオリゴヌクレオチド処置によるオーロラ−A発現および機能の排除(WO97/22702号およびWO99/37788号)は、細胞周期停止をもたらし、そしてこれら腫瘍細胞系に抗増殖作用を及ぼすということも示された。更に、オーロラAおよびオーロラBの低分子阻害剤は、ヒト腫瘍細胞に抗増殖作用を有することが示されたが(Keen et al. 2001, Poster #2455, American Association of Cancer Research annual meeting)、それは、siRNA処置によってオーロラB発現単独を選択的に排除する(Ditchfield et al. 2003, Journal of Cell Biology, 161(2): 267-280)。これは、オーロラAおよび/またはオーロラBの機能の阻害が、ヒト腫瘍および他の高増殖性疾患の処置に有用でありうる抗増殖作用を有するであろうということを示している。これら疾患への治療的アプローチとしてのオーロラキナーゼの阻害は、細胞周期の上流のシグナリング経路(例えば、表皮増殖因子受容体(EGFR)または他の受容体のような、増殖因子受容体チロシンキナーゼによって活性化されるもの)を標的とすることにまさる有意の利点を有するかもしれない。細胞周期は、結局は、これら多様なシグナリングイベント全ての下流にあるので、オーロラキナーゼの阻害のような、細胞周期に支配される療法(therapies)は、全ての増殖性腫瘍細胞にわたって活性であろうと考えられるが、特異的シグナリング分子(例えば、EGFR)に向けられるアプローチは、それら受容体を発現する腫瘍細胞の部分集団でのみ活性であろうと考えられる。更に、これらシグナリング経路の間に有意の「クロストーク(cross talk)」が存在することが考えられ、一つの成分の阻害が、別のものによって補償されることがありうるということを意味している。
【0008】
オーロラキナーゼの阻害剤は、国際特許出願WO03/55491号およびWO2004/058781号に記載され、そして具体的には、WO2004/058781号は、本明細書中においてAZD1152と称される、次の構造式:
【0009】
【化1】

【0010】
を有する化合物を開示している。
AZD1152は、本明細書中においてAZD1152 HQPA:
【0011】
【化2】

【0012】
と称される活性部分へと(ヒト血漿中において)急速に且つ完全に変換されるプロドラッグである。
AZD1152 HQPAは、オーロラA、B−INCENPおよびC−INCENPに対して強力な活性(それぞれ、1369±419.2nM、0.359±0.386nMおよび17.03±12.2nMのKi)を有するATP競合的で且つ可逆的なオーロラキナーゼ阻害剤である。AZD1152は、一団のヒト結腸直腸(SW620、HCT116、Colo205)および肺(A549、Calu−6)腫瘍異種移植片における腫瘍増殖を統計的有意性で阻害することが判明した。
【0013】
AZD1152は、WO2004/058781号に、二塩酸塩として、そして更に、水和した形の遊離塩基として開示されている。具体的には、遊離形は、三水和物〜四水和物の形で開示されている。
【0014】
製造観点により、水和した形は、製造、乾燥、貯蔵および加工の際に、制御が適切であることを必要とするので、問題がある。更に、化合物試料を一貫した化学量論的化合物対水比率で入手し且つ維持することは、困難である。従来開示された形の、具体的には、遊離形でのAZD1152の場合、水分子は、各々のAZD1152分子にゆるく結合しているにすぎないので、水分子のAZD1152薬への会合および解離の程度は、温度および相対湿度で大きく異なる。したがって、ある与えられた重量のAZD1152について、AZD1152の分子数によるAZD1152の実際量は、含水量が異なるので、温度および相対湿度に依存するであろう。したがって、重量で決定されるいずれかの用量の有効性も、それが暴露される温度および相対湿度に依存する。動的蒸気収着(Dynamic Vapour Sorption)を用いて、AZD1152と会合した水分レベルの湿度での変動を測定した。
【0015】
WO2004/058781号は、そこに開示された化合物のある種の薬学的に許容しうる塩を一般名で開示している。AZD1152は、二塩酸塩としておよび遊離形として開示されているにすぎない。AZD1152の他の形は述べられていない。具体的には、WO2004/058781号は、AZD1152の他の共結晶を全く開示していないし、そしてそれは、確かに、具体的な化合物のいずれか具体的な共結晶が、本明細書中で検討されている問題を改善するかもしれない驚くべき利点を有すると考えられるか否か、そして特に利点を有していないと考えられるか否かを考慮していない。
【発明の開示】
【0016】
意外にも且つ驚くべきことに、本発明者は、AZD1152のマレエート共結晶が、実質的に非吸湿性である無水形で存在するということを発見した。更に、薬物対水の化学量論的比率は、例えば、0.8:1〜1.2:1または0.9:1〜1.1:1の範囲内であってよいが、本発明者は、本明細書中に開示されたAZD1152のマレエート共結晶が、実質的に1:1の薬物対マレエートの再現性のある化学量論的比率を有するということを発見した。したがって、一定重量用量のAZD1152マレエート共結晶の有効性は、評価されたAZD1152の遊離形、二塩酸塩および他の共結晶形の場合よりもごく僅かしか、温度および相対湿度によって影響されない。更に、AZD1152のマレエート共結晶は、製造工程中に湿度レベルを制御する必要がほとんどないので、製造するのが一層容易である。マレエート共結晶の無水性は、更に、水性環境、例えば、湿式造粒を用いる加工条件中の水和/脱水の危険がより少ないために、限られた水性条件および/または高温環境を用いてそれを配合することが可能であろうということを意味する。
【0017】
更に、本発明者は、AZD1152のマレエート共結晶が、驚くべきことに、遊離形よりも僅かしか不純物を含有しないということを発見した。具体的には、遊離形で存在するある種の扱いにくい不純物は、驚くべきことに、遊離形をマレエート形へ変換後に、ごく僅かしか存在しないと考えられる。
【0018】
したがって、本発明は、AZD1152のマレエート共結晶を提供する。
疑わしさを免れるために、「AZD1152のマレエート共結晶」、「AZD1152マレエート共結晶」または「AZD1152マレエート」という用語(または本明細書中で用いられるいずれか他の類似の用語)は、塩形を含めた、AZD1152とマレイン酸との間の全ての会合の形を意味する。具体的には、これら用語は、
(i)AZD1152とマレイン酸との間の非イオン会合(すなわち、薬物とマレイン酸との間にプロトン移動が起こらなかった場合);または
(ii)AZD1152とマレイン酸との間にプロトン移動が起こって、AZD1152のマレイン酸塩を形成した場合のイオン相互作用、または
(iii)上の(i)および(ii)の混合物
を包含する。
【0019】
本発明の具体的な態様において、マレエート共結晶は、AZD1152薬とマレイン酸との間の非イオン会合(すなわち、薬物とマレイン酸との間にプロトン移動が起こらなかった場合)を含む/である(comprises is)。
【0020】
本発明の別の態様において、マレエート共結晶は、AZD1152のマレイン酸塩である。
具体的な態様において、AZD1152のマレエート共結晶は、AZD1152遊離形とマレイン酸とを、メタノール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、またはDMSOとメタノールの混合物、アセトニトリルおよび他の類似の溶媒などの適する溶媒中で混合することによって形成される。マレエート共結晶は、結晶化を生じさせた後、得られた結晶質を単離することによって単離することができる。本発明のAZD1152のマレエート共結晶の同一性は、プロトン核磁気共鳴(NMR)分析によって確認することができる。
【0021】
更に、本発明の化合物または共結晶は、互変異性の現象を示すことがありうるということ、および本明細書中の図式は、可能性のある互変異性体の一つだけを示すことができるということは理解されるはずである。本発明が、オーロラキナーゼ阻害活性、具体的には、オーロラAおよび/またはオーロラBキナーゼ阻害活性を有するいずれの互変異性体も包含するし、そして図式中に利用されたいずれか一つの互変異性体にのみ制限されるわけではないということは理解されるはずである。
【0022】
本発明は、更に、AZD1152のマレエート共結晶の具体的な結晶形に関する。この結晶形は、メタノールおよびジメチルスルホキシド(DMSO)の混合物などの有機溶媒からAZD1152のマレエート結晶を結晶化することによって製造される。更なる実験詳細を、実施例に与える。
【0023】
したがって、本発明は、AZD1152のマレエート共結晶の結晶形を提供する。
AZD1152のマレエート共結晶の結晶形は、それが、実質的に図1に示されるようなX線粉末回折図形を与えるということで特性決定される。
【0024】
AZD1152のマレエート共結晶の結晶形について最も顕著なX線粉末回折ピークを、表1に示す。
【0025】
【表1】

【0026】
本発明により、AZD1152のマレエート共結晶であって、約2θ=15.2°に少なくとも一つの特異的ピークを含むX線粉末回折図形を有するマレエート共結晶の結晶形を提供する。
【0027】
本発明により、AZD1152のマレエート共結晶であって、約2θ=12.9°に特異的ピークを含むX線粉末回折図形を有するマレエート共結晶の結晶形を提供する。
本発明により、AZD1152のマレエート共結晶であって、約2θ=15.2°または10.2°に特異的ピークを含むX線粉末回折図形を有するマレエート共結晶の結晶形を提供する。
【0028】
本発明により、AZD1152のマレエート共結晶であって、約2θ=18.1°に特異的ピークを含むX線粉末回折図形を有するマレエート共結晶の結晶形を提供する。
本発明により、AZD1152のマレエート共結晶であって、約2θ=10.2°、12.9°、15.2°または18.1°に少なくとも一つの特異的ピークを含むX線粉末回折図形を有するマレエート共結晶の結晶形を提供する。
【0029】
本発明により、AZD1152のマレエート共結晶であって、約2θ=12.9°および15.2°および/または10.2°に特異的ピークを含むX線粉末回折図形を有するマレエート共結晶の結晶形を提供する。
【0030】
本発明により、AZD1152のマレエート共結晶であって、約2θ=10.2°、12.9°、15.2°および18.1°に特異的ピークを含むX線粉末回折図形を有するマレエート共結晶の結晶形を提供する。
【0031】
本発明により、AZD1152のマレエート共結晶であって、表1に示されたいずれか一つまたは組合せの約2θ°値に特異的ピークを含むX線粉末回折図形を有するマレエート共結晶の結晶形を提供する。
【0032】
本発明により、AZD1152のマレエート共結晶であって、図1に示されるX線粉末回折図形と実質的に同じX線粉末回折図形を有するマレエート共結晶の結晶形を提供する。
【0033】
本明細書中において、本発明が、AZD1152のマレエート共結晶の結晶形に関すると述べられている場合、X線粉末回折データによって決定される結晶化度は、好都合には、約60%より大、より好都合には、約80%より大、好ましくは、約90%より大である。
【0034】
AZD1152のマレエート共結晶の結晶形についてX線粉末回折ピークを定義している前の段落において、「約...に」という用語は、「約2θ=...に」という表現で用いられて、ピークの正確な位置(すなわち、挙げられた2θ角値)は、当業者に理解されるであろうように、ピークの正確な位置は、試験機間で、試料ごとに、または利用される測定条件の僅かな変動の結果として、僅かに異なることがありうるので、絶対値であると解釈されるべきではないということを示している。更に、前の段落には、AZD1152のマレエート共結晶の結晶形は、図1に示されるX線粉末回折図形と「実質的に」同じX線粉末回折図形を与えるし、そして実質的に、表1に示された最も顕著なピーク(2θ角値)を、具体的には、約2θ=10.2°、12.9°、15.2°または18.1°に有するということが述べられている。この文脈中の「実質的に」という用語の使用は、X線粉末回折図形の2θ角値が、試験機ごとに、試料ごとに、または利用される測定条件の僅かな変動の結果として、僅かに異なることがありうるので、図に示されるまたは表に引用されたピーク位置は、再度、絶対値として解釈されるべきではないということを示すものでもあるということは理解されるであろう。
【0035】
これに関して、当該技術分野において、測定条件(用いられる装置、試料標品または試験機など)に依存して、一つまたはそれを超える測定誤差を有するX線粉末回折図形を得ることがありうるということは知られている。具体的には、概して、X線粉末回折図形の強度は、測定条件および試料標品に依存して変動することがありうるということが知られている。例えば、X線粉末回折の業者は、ピークの相対強度が、例えば、試料分析に影響することがありうる約30ミクロンを超えるサイズ粒子および非ユニタリアスペクト比によって影響されることがありうるということを理解するであろう。当業者は、更に、反射の位置が、回折計中の試料が置かれている正確な高さおよび回折計のゼロ検定によって影響されることがありうるということを理解するであろう。試料の表面平坦さも、僅かな作用を有することがありうる。したがって、当業者は、本明細書中に示された回折図形データを絶対と解釈すべきではないということを理解するであろう(更なる情報については、Jenkins, R & Snyder, R.L. ‘Introduction to X-Ray Powder Diffractometry’ John Wiley & Sons, 1996 を参照されたい)。したがって、本発明のAZD1152のマレエート共結晶の結晶形は、図1に示されるX線粉末回折図形と同一のX線粉末回折図形を与える結晶;および本発明の範囲内にある図1に示されるものと実質的に同じX線粉末回折図形を与えるいずれかの結晶に制限されないということは理解されるであろう。X線粉末回折の業者は、X線粉末回折図形の実質的な同一性を判断することができる。
【0036】
概して、X線粉末ディフラクトグラムにおける回折角の測定誤差は、約2θ=0.5°またはそれ未満(またはより好適には、約2θ=0.2°またはそれ未満)であり、そしてこのような程度の測定誤差は、図1のX線粉末回折図形を考察する場合、および上の教本および表1に挙げられたピーク位置を解釈する場合、考慮されるべきである。したがって、例えば、共結晶が、約2θ=15.2°(または上述の他の角のいずれか一つ)に少なくとも一つの特異的ピークを含むX線粉末回折図形を有すると述べられている場合、これは、2θ=15.2°プラスまたはマイナス0.5°、または2θ=15.2°プラスまたはマイナス0.2°であると解釈することができる。
【0037】
本発明の別の側面により、本明細書中に定義のAZD1152のマレエート共結晶を製造する方法であって、AZD1152遊離形の溶液とマレイン酸とを、メタノール、N−メチル−2−ピロリジノン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、またはDMSOとメタノールとの混合物、アセトニトリル、および他の類似の溶媒などの適する溶媒中で混合する工程を含む方法を提供する。その方法は、更に、結晶化の工程、そして場合により、このようにして形成されたAZD1152の結晶性マレエート共結晶の単離の工程を含むことができる。
【0038】
その方法は、更に、AZD1152のマレエート共結晶を適する溶媒で洗浄し;そしてAZD1152のマレエート共結晶を乾燥させる追加の工程を含むことができる。
好適には、AZD1152遊離形を、適する溶媒(ジメチルスルホキシド、メタノール、それらの混合物、またはN−メチル−2−ピロリジノンなど)中に溶解させ、そして概して、マレイン酸の溶液(同じかまたは相容性の溶媒中に溶解している)と混合する。或いは、固体マレイン酸を、AZD1152遊離形溶液に加えることができる(または逆に、すなわち、AZD1152遊離形溶液を、固体マレイン酸に加えることができる)。好適には、その溶液を撹拌して、AZD1152遊離形および加えられたマレイン酸の混合を容易にする。それら材料(理想的には、1:1の比率であるが、それに限るわけではない)は、周囲温度で混合することができるが、その手順は、より高温で行うこともできる。
【0039】
AZD1152の結晶性マレエート形を単離するための当該技術分野において知られているいずれか適する方法を用いることができる。好適には、AZD1152のマレエート共結晶を、濾過によって集める。
【0040】
好ましくは、洗浄されたAZD1152のマレエート共結晶を、真空下で乾燥させる。
概して、1:1のAZD1152遊離形:マレイン酸の比率が望ましい。この望ましい1:1比率は、AZD1152遊離形およびマレイン酸を、0.6〜1.4のAZD1152遊離形:1.0のマレイン酸の範囲内のどこかの組成で混合することによって得ることができる。好適には、混合物中のAZD1152遊離形:マレイン酸の比率は、0.9〜1.1の範囲内、具体的には、1.0〜1.1のAZD1152遊離形:1.0〜1.1のマレイン酸である。概して、過剰のマレイン酸を用いるべきであるが、具体的には、混合物中のAZD1152遊離形:マレイン酸の比率は、0.6〜1.0の範囲内、具体的には、0.9〜1.0のAZD1152遊離形:1.0のマレイン酸である。
【0041】
AZD1152マレエート共結晶は、典型的に、自己結晶化するが、共結晶形成を促進するために必要とされるまたは望まれる場合、播種を用いてよいということは当業者に理解されるであろう。
【0042】
本発明のもう一つの側面により、医薬組成物であって、本明細書中に定義のAZD1152のマレエート共結晶を、薬学的に許容しうる希釈剤または担体と一緒に含む医薬組成物を提供する。
【0043】
本発明の組成物は、経口使用に(例えば、錠剤、ロゼンジ、硬または軟カプセル剤、水性または油状の懸濁剤、乳剤、分散性の散剤または顆粒剤、シロップ剤またはエリキシル剤として)、局所使用に(例えば、クリーム剤、軟膏剤、ゲル剤、または水性または油状の液剤または懸濁剤として)、吸入による投与に(例えば、微粉または液状エアゾル剤として)、吹入による投与に(例えば、微粉として)、または非経口投与に(例えば、静脈内、皮下、筋肉内、または筋肉内投与用の滅菌水性または油状の液剤として、または直腸投与用の坐剤として)適する形であってよい。
【0044】
本発明のそれら組成物は、当該技術分野において周知の慣用的な医薬賦形剤を用いて慣用法によって得ることができる。したがって、経口使用を予定した組成物は、例えば、一つまたはそれを超える着色剤、甘味剤、着香剤および/または保存剤を含有してよい。
【0045】
錠剤製剤に適する薬学的に許容しうる賦形剤には、例えば、ラクトース、炭酸ナトリウム、リン酸カルシウムまたは炭酸カルシウムなどの不活性希釈剤;トウモロコシデンプンまたはアルゲン酸(algenic acid)などの造粒剤および崩壊剤;デンプンなどの結合剤;ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸またはタルクなどの滑沢剤;p−ヒドロキシ安息香酸エチルまたはプロピルなどの保存剤;およびアスコルビン酸などの酸化防止剤が含まれる。錠剤製剤は、未コーティングであってよいし、またはそれらの崩壊およびその後の胃腸管内での活性成分吸収を変更するようにかまたは、それらの安定性および/または外観を改善するように、どちらの場合も、当該技術分野において周知の慣用的なコーティング剤および手順を用いてコーティングされていてよい。
【0046】
経口使用のための組成物は、その活性成分が、不活性固体希釈剤、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムまたはカオリンと混合されているゼラチン硬カプセル剤の形であってよいし、または活性成分が、水、またはラッカセイ油、流動パラフィン、ダイズ油、ヤシ油または好ましくは、オリーブ油などの油、またはいずれか他の許容しうるビヒクルと混合されているゼラチン軟カプセル剤としてあってよい。
【0047】
水性懸濁剤は、概して、微粉の形の活性成分を、一つまたはそれを超える懸濁化剤であって、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴムおよびアラビアゴムなどのもの;分散助剤または湿潤剤であって、レシチン;または脂肪酸とアルキレンオキシドの縮合生成物(例えば、ポリオキシエチレンステアラート);または長鎖脂肪族アルコールとエチレンオキシドの縮合生成物、例えば、ヘプタデカエチレンオキシセタノール;またはポリオキシエチレンソルビトールモノオレアートのような、脂肪酸およびヘキシトールから誘導される部分エステルとエチレンオキシドの縮合生成物;または脂肪酸および無水ヘキシトールから誘導される部分エステルとエチレンオキシドの縮合生成物、例えば、ポリエチレンソルビタンモノオレアートなどのものと一緒に含有する。それら水性懸濁剤は、更に、一つまたはそれを超える保存剤(p−ヒドロキシ安息香酸エチルまたはプロピルなど、酸化防止剤(アスコルビン酸など)、着色剤、着香剤および/または甘味剤(スクロース、サッカリンまたはアスパルテームなど)を含有してよい。
【0048】
油状懸濁剤は、活性成分を、植物油(ラッカセイ油、オリーブ油、ゴマ油またはヤシ油など)中にまたは鉱油(流動パラフィンなど)中に懸濁させることによって製剤化することができる。それら油状懸濁剤は、更に、蜜蝋、硬質パラフィンまたはセチルアルコールなどの増粘剤を含有してよい。着香剤および上記のものなどの甘味剤を加えて、口当たりのよい経口製剤を提供することができる。これら組成物は、アスコルビン酸などの酸化防止剤の添加によって保存することができる。
【0049】
水の添加による水性懸濁液または溶液の製造に適する分散性のまたは凍結乾燥された散剤および顆粒剤は、概して、活性成分を、分散助剤または湿潤剤、懸濁化剤および一つまたはそれを超える保存剤と一緒に含有する。適する分散助剤または湿潤剤および懸濁化剤は、上に既述されたものによって代表される。甘味剤、着香剤および着色剤などの追加の賦形剤も存在してよい。
【0050】
本発明の医薬組成物は、水中油エマルジョンの形であってもよい。その油状相は、オリーブ油またはラッカセイ油などの植物油、または例えば、流動パラフィンなどの鉱油、またはいずれかこれらの混合物であってよい。適する乳化剤は、例えば、アラビアゴムまたはトラガカントゴムなどの天然に存在するガム;ダイズ、レシチンなどの天然に存在するホスファチド;脂肪酸および無水ヘキシトールから誘導されるエステルまたは部分エステル(例えば、ソルビタンモノオレアート);およびポリオキシエチレンソルビタンモノオレアートのような、エチレンオキシドとこれら部分エステルの縮合生成物であってよい。それらエマルジョンは、甘味剤、着香剤および保存剤を含有してもよい。
【0051】
シロップ剤およびエリキシル剤は、グリセロール、プロピレングリコール、ソルビトール、アスパルテームまたはスクロースなどの甘味剤と一緒に製剤化することができるし、そして更に、粘滑剤、保存剤、着香剤および/または着色剤を含有してよい。
【0052】
それら医薬組成物は、滅菌注射可能な水性または油状懸濁剤、液剤、乳剤または特定の系の形であってもよく、それは、既知の手順にしたがって、上に述べられてきた一つまたはそれを超える適当な分散助剤または湿潤剤および懸濁化剤を用いて製剤化することができる。滅菌注射可能製剤は、無毒性の非経口的に許容しうる希釈剤または溶媒中の滅菌注射可能溶液または懸濁液、例えば、ポリエチレングリコール中の溶液であってもよい。
【0053】
坐剤製剤は、活性成分と、常温では固体であるが、直腸温度で液体である適する無刺激性賦形剤とを混合することによって製造することができるので、直腸内で融解して薬物を放出するであろう。適する賦形剤には、例えば、カカオ脂およびポリエチレングリコールが含まれる。
【0054】
クリーム剤、軟膏剤、ゲル剤および水性または油状の液剤または懸濁剤などの局所用製剤は、概して、活性成分を、当該技術分野において周知の慣用法を用いて、慣用的な局所に許容しうるビヒクルまたは希釈剤と一緒に製剤化することによって得ることができる。
【0055】
吹入による投与用の組成物は、例えば、30μmまたはそれよりはるかに小さい、好ましくは、5μmまたはそれ未満、より好ましくは、5μm〜1μmの平均直径の粒子を含有する微粉の形であってよいが、その粉末自体、活性成分を単独でかまたは、ラクトースなどの一つまたはそれを超える生理学的に許容しうる担体で希釈された状態で含む。次に、その吹入用粉末を、好都合には、既知のナトリウムクロモグリケート(sodium cromoglycate)薬の吹入に用いられるようなターボ吸入器具で用いるために、例えば、1〜50mgの活性成分を含有するカプセル中で保持する。
【0056】
吸入による投与用の組成物は、微粉固体を含有するエアゾルかまたは液体粒子として活性成分を計量分配するように配置された慣用的な加圧エアゾルの形であってよい。揮発性フッ素化炭化水素または炭化水素などの慣用的なエアゾル噴射剤を用いることができるが、そのエアゾル装置は、好都合には、一定計量の活性成分を計量分配するように配置される。
【0057】
製剤に関する追加の情報について、読者は、Chapter 25.2 in Volume 5 of Comprehensive Medicinal Chemistry (Corwin Hansch; Chairman of Editorial Board), Pergamon Press 1990 を参照する。
【0058】
したがって、本発明のもう一つの側面において、療法で用いるためのAZD1152のマレエート共結晶を提供する。更に提供されるのは、薬剤として用いるためのAZD1152のマレエート共結晶である。本発明の別の側面は、癌などの高増殖性疾患、具体的には、結腸直腸、乳房、肺、前立腺、膀胱、腎または膵臓の癌または白血病またはリンパ腫の処置用の薬剤として用いるためのAZD1152のマレエート共結晶を提供する。本明細書中に述べられる白血病またはリンパ腫は、急性骨髄性白血病などの骨髄系統またはリンパ系統の腫瘍でありうる。
【0059】
更に、AZD1152のマレエート共結晶を、療法によるヒトなどの温血動物の処置方法で用いるために提供する。本発明の別の側面は、癌などの高増殖性疾患、具体的には、結腸直腸、乳房、肺、前立腺、膀胱、腎または膵臓の癌または白血病またはリンパ腫の処置方法で用いるためのAZD1152のマレエート共結晶を提供する。
【0060】
本発明の別の側面において、一つまたはそれを超えるオーロラキナーゼの阻害が有益である疾患の処置用の薬剤の製造における、AZD1152のマレエート共結晶の使用を提供する。具体的には、オーロラAキナーゼおよび/またはオーロラBキナーゼの阻害は、有益でありうると考えられる。好ましくは、オーロラBキナーゼの阻害が有益である。本発明の別の側面において、癌などの高増殖性疾患、具体的には、結腸直腸、乳房、肺、前立腺、膀胱、腎または膵臓の癌または白血病またはリンパ腫の処置用の薬剤の製造におけるAZD1152のマレエート共結晶の使用を提供する。
【0061】
また別の側面により、一つまたはそれを超えるオーロラキナーゼの阻害が有益である疾患に苦しむヒトを処置する方法であって、それを必要としているヒトに、治療的有効量のAZD1152のマレエート共結晶を投与する工程を含む方法で用いるためのAZD1152のマレエート共結晶を提供する。具体的には、オーロラAキナーゼおよび/またはオーロラBキナーゼの阻害は、有益でありうると考えられる。好ましくは、オーロラBキナーゼの阻害が有益である。更に提供されるのは、癌などの高増殖性疾患、具体的には、結腸直腸、乳房、肺、前立腺、膀胱、腎または膵臓の癌または白血病またはリンパ腫に苦しむヒトを処置する方法であって、それを必要としているヒトに、治療的有効量のAZD1152のマレエート共結晶を投与する工程を含む方法で用いるためのAZD1152のマレエート共結晶である。上記のヒトを処置するいずれかの方法におけるAZD1152のマレエート共結晶の使用も、本発明の側面を形成する。
【0062】
上述の治療的使用について、投与される用量は、用いられる化合物、投与様式、望まれる処置、処方を必要とする障害、および動物または患者の年齢および性別で異なるであろう。したがって、用量サイズは、周知の医学慣例にしたがって計算されるであろう。
【0063】
治療目的または予防目的にAZD1152のマレエート共結晶を用いる場合、それは、概して、必要ならば分割用量で与えられる、例えば、0.05mg/kg〜50mg/kg(体重)の範囲内の1日用量が与えられるように投与されるであろう。概して、非経口経路が用いられる場合、より少ない用量が投与されるであろう。したがって、例えば、静脈内投与には、概して、例えば、0.05mg/kg〜25mg/kg(体重)の範囲内の用量が用いられるであろう。同様に、吸入による投与には、例えば、0.05mg/kg〜25mg/kg(体重)の範囲内の用量が用いられるであろう。
【0064】
本明細書中に定義の処置は、単独療法として適用されてよいし、または本発明の化合物に加えて、慣用的な外科手術または放射線療法または化学療法を伴ってよい。このような化学療法には、次の分類の一つまたはそれを超える抗腫瘍薬が含まれてよい。
【0065】
(i)医学腫瘍学で用いられるような抗増殖薬/抗腫瘍薬およびそれらの組合せであって、アルキル化剤(例えば、シスプラチン、カルボプラチン、シクロホスファミド、ナイトロジェンマスタード、メルファラン、クロラムブシル、ブスルファンおよびニトロソ尿素);代謝拮抗薬(例えば、5−フルオロウラシルおよびテガフルのようなフルオロピリミジン類、ラルチトレキセド(raltitrexed)、メトトレキサート、シトシンアラビノシドおよびヒドロキシ尿素などの葉酸拮抗薬;抗腫瘍抗生物質(例えば、アドリアマイシン、ブレオマイシン、ドキソルビシン、ダウノマイシン、エピルビシン、イダルビシン(idarubicin)、マイトマイシンC、ダクチノマイシンおよびミトラマイシンのようなアントラサイクリン系);有糸分裂阻止薬(例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシンおよびビノレルビン(vinorelbine)のようなビンカアルカロイド系、およびタキソールおよびタキソテールのようなタキソイド類(taxoids));およびトポイソメラーゼ阻害剤(例えば、エトポシドおよびテニポシドのようなエピポドフィロトキシン類、アムサクリン、トポテカン(topotecan)およびカンプトテシン)などのもの;
(ii)細胞分裂抑制薬であって、抗エストロゲン(例えば、タモキシフェン、トレミフェン(toremifene)、ラロキシフェン(raloxifene)、ドロロキシフェン(droloxifene)およびヨードキシフェン(iodoxyfene));エストロゲン受容体ダウンレギュレーター(例えば、フルヴェストラント(fulvestrant));抗アンドロゲン(例えば、ビカルタミド(bicalutamide)、フルタミド、ニルタミド(nilutamide)および酢酸シプロテロン);LHRHアンタゴニストまたはLHRHアゴニスト(例えば、ゴセレリン、ロイプロレリン(leuprorelin)およびブセレリン(buserelin));プロゲストゲン(例えば、酢酸メゲストロール);アロマターゼ阻害剤(例えば、アナストロゾール(anastrozole)、レトロゾール(letrozole)、ボラゾール(vorazole)およびエクセメスタン(exemestane));およびフィナステリドなどの5α−レダクターゼの阻害剤などのなもの;
(iii)癌細胞浸潤を阻害する物質(例えば、マリマスタト(marimastat)のようなメタロプロテイナーゼ阻害剤、およびウロキナーゼプラスミノーゲンアクチベーター受容体機能の阻害剤);
(iv)増殖因子機能の阻害剤、例えば、このような阻害剤には、増殖因子抗体、増殖因子受容体抗体(例えば、抗erbb2抗体トラスツズマブ(trastuzumab)[HerceptinTM]および抗erbb1抗体セツキシマブ(cetuximab)[C225])、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤およびセリン−トレオニンキナーゼ阻害剤、例えば、上皮増殖因子ファミリーの阻害剤(例えば、N−(3−クロロ−4−フルオロフェニル)−7−メトキシ−6−(3−モルホリノプロポキシ)キナゾリン−4−アミン(ゲフィチニブ(gefitinib),AZD1839)、N−(3−エチニルフェニル)−6,7−ビス(2−メトキシエトキシ)キナゾリン−4−アミン(エルロチニブ(erlotinib),OSI−774)および6−アクリルアミド−N−(3−クロロ−4−フルオロフェニル)−7−(3−モルホリノプロポキシ)キナゾリン−4−アミン(CI1033)などのEGFRファミリーチロシンキナーゼ阻害剤)、例えば、血小板由来増殖因子ファミリーの阻害剤、そして例えば、肝細胞増殖因子ファミリーの阻害剤が含まれる;
(v)抗血管新生薬であって、血管内皮増殖因子の作用を阻害するもの(例えば、抗血管内皮細胞増殖因子抗体ベヴァシズマブ(bevacizumab)[AvastinTM];国際特許出願WO97/22596号、WO97/30035号、WO97/32856号およびWO98/13354号に開示されたものなどの化合物);および他の機構によって働く化合物(例えば、リノマイド(linomide)、インテグリンαvβ3機能の阻害剤、およびアンギオスタチン(angiostatin))などのもの;
(vi)血管損傷薬であって、Combretastatin A4、および国際特許出願WO99/02166号、WO00/40529号、WO00/41669号、WO01/92224号、WO02/04434号およびWO02/08213号に開示された化合物などのもの;
(vii)アンチセンス療法、例えば、ISIS2503、抗rasアンチセンスなどの、上に挙げられた標的に向けられているもの;
(viii)遺伝子治療アプローチであって、例えば、異常p53または異常BRCA1またはBRCA2などの異常遺伝子を置き換えるアプローチ;シトシンデアミナーゼ、チミジンキナーゼまたは細菌ニトロレダクターゼ酵素を用いたものなどのGDEPT(遺伝子に支配される酵素プロドラッグ療法(gene-directed enzyme pro-drug therapy))アプローチ;および多剤耐性遺伝子治療などの、化学療法または放射線療法への患者耐性を増加させるアプローチを含めたもの;および
(ix)免疫療法アプローチであって、例えば、インターロイキン2、インターロイキン4または顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子などのサイトカインでのトランスフェクションのような、患者腫瘍細胞の免疫原性を増加させる ex-vivo および in-vivo アプローチ;T細胞アネルギーを減少させるアプローチ;サイトカインでトランスフェクションされた樹状細胞などのトランスフェクションされた免疫細胞を用いたアプローチ;サイトカインでトランスフェクションされた腫瘍細胞系を用いたアプローチ;および抗イディオタイプ抗体を用いたアプローチを含めたもの。
【0066】
更に、AZD1152のマレエート共結晶は、一つまたはそれを超える細胞周期阻害剤と組み合わせて用いることができる。具体的には、bub1、bubR1またはCDKを阻害する細胞周期阻害剤と。
【0067】
このような共同処置は、その処置の個々の成分の同時の、逐次的なまたは別々の投与によって達成することができる。このような組合せ製品は、本明細書中の前に記載の投薬量範囲内の本発明の化合物と、承認された投薬量範囲内の他の薬学的活性物質を用いる。
【0068】
本発明の側面により、細胞増殖性障害(癌など)の処置に用いるのに適する組合せであって、本明細書中の前に定義のAZD1152のマレエート共結晶および本明細書中の前に定義の追加の抗腫瘍薬を含む組合せを提供する。
【0069】
本発明のこの側面により、細胞増殖性障害(癌など)の共同処置のための医薬製品であって、本明細書中の前に定義のAZD1152のマレエート共結晶および本明細書中の前に定義の追加の抗腫瘍薬を含む医薬製品を提供する。
【0070】
治療薬中でのそれらの使用に加えて、AZD1152のマレエート共結晶は、新しい治療薬の探求の一部分として、ネコ、イヌ、ウサギ、サル、ラットおよびマウスなどの実験動物での細胞周期活性阻害剤の作用の評価のための in vitro および in vivo 試験システムの開発および規格化における薬理学的手段としても有用である。
【0071】
上の他の医薬組成物、プロセス、方法、使用および薬剤製造の特徴において、本明細書中に記載の本発明の化合物の別の且つ好ましい態様も当てはまる。
本発明の一つまたは複数のマレエート共結晶は、オーロラキナーゼ、具体的には、オーロラAキナーゼおよび/またはオーロラBキナーゼのセリン−トレオニンキナーゼ活性を阻害し、したがって、細胞周期および細胞増殖を阻害する。オーロラBキナーゼを阻害する化合物は、特に興味深い。これら性質は、例えば、下記の一つまたはそれを超える手順を用いて評価することができる。
・ (a)In Vitro オーロラAキナーゼ阻害試験
この検定は、セリン−トレオニンキナーゼ活性を阻害する試験化合物の能力を決定する。オーロラAをコードしているDNAは、全遺伝子合成によってまたはクローニングによって得ることができる。次に、このDNAを、適する発現系において発現させて、セリン−トレオニンキナーゼ活性を有するポリペプチドを得ることができる。オーロラAの場合、コーディング配列を、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によってcDNAから単離し、そしてバキュロウイルス発現ベクターpFastBac HTc(GibcoBRL/Life technologies)のBamH1およびNot1制限エンドヌクレアーゼ部位中にクローン化した。5’PCRプライマーは、制限エンドヌクレアーゼBamH1の認識配列をオーロラAコーディング配列へ5’に含有した。これは、pFastBac HTcベクターによってコードされた6個のヒスチジン残基、スペーサー領域およびrTEVプロテアーゼ切断部位を含むフレーム中のオーロラA遺伝子の挿入を可能にした。3’PCRプライマーは、オーロラA停止コドンを、停止コドンおよび制限エンドヌクレアーゼNot1の認識配列を従えた追加のコーディング配列で置き換えた。この追加のコーディング配列(5’TAC CCA TAC GAT GTT CCA GAT TAC GCT TCT TAA 3’)は、ポリペプチド配列YPYDVPDYASをコードしていた。インフルエンザヘマグルチニンタンパク質に由来するこの配列は、しばしば、特異的単クローン性抗体を用いて識別されうる標識エピトープ配列として用いられる。したがって、リコンビナントpFastBacベクターは、N末端に6his標識され、C末端にインフルエンザヘマグルチニンエピトープ標識されたオーロラAタンパク質をコードした。リコンビナントDNA分子のアセンブリー方法の詳細は、標準的な教本、例えば、Sambrook et al. 1989, Molecular Cloning - A Laboratory Manual, 2nd Edition, Cold Spring Harbor Laboratory press および Ausubelet al. 1999, Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley and Sons Inc に見出されうる。
【0072】
リコンビナントウイルスの生産は、GibcoBRLによる製造者のプロトコルにしたがって行うことができる。簡単にいうと、オーロラA遺伝子を有するpFastBac−1ベクターを、バキュロウイルスゲノム(bacmid DNA)を含有する大腸菌(E. coli)DH10Bac細胞中に形質転換し、そしてそれら細胞中の転位イベントによって、バキュロウイルスポリヘドリンプロモーターを含めたオーロラA遺伝子およびゲンタマイシン耐性遺伝子を含有するpFastBacベクターの領域を、bacmid DNA中に直接的に転位させた。ゲンタマイシン、カナマイシン、テトラサイクリンおよびX−galについての選択により、得られた白色コロニーは、オーロラAをコードしているリコンビナント bacmid DNAを含有するはずである。bacmid DNAを、いくつかのBH10Bac白色コロニーの小規模培養物から抽出し、そしてCellFECTIN試薬(GibcoBRL)を製造者の取扱い説明書にしたがって用いて、10%血清を含有するTC100培地(GibcoBRL)中で増殖したスポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)Sf21細胞中にトランスフェクションした。ウイルス粒子は、トランスフェクション後72時間の細胞培養培地を集めることによって採取した。0.5mlの培地を用いて、1x10個/mlの細胞を含有する100mlのSf21懸濁培養物に感染させた。細胞培養培地を、感染後48時間に採取し、そしてウイルス力価を、標準的なプラーク検定法を用いて決定した。ウイルス原液を用いて、Sf9および「High 5」細胞に、3の感染多重度(MOI)で感染させて、リコンビナントオーロラAタンパク質の発現を確かめた。
【0073】
オーロラAキナーゼ活性の大規模発現については、Sf21昆虫細胞を、Wheaton ローラーリグ上、3r.p.m.において、10%ウシ胎児血清(Viralex)および0.2%F68 Pluronic(Sigma)を補足したTC100培地中、28℃で増殖させた。細胞密度が1.2x10個ml−1に達した時点で、それらを、プラーク純粋オーロラAリコンビナントウイルスに1の感染多重度で感染させ、そして48時間後に採取した。引き続きの精製工程は全て、4℃で行った。全2.0x10個の細胞を含有する凍結昆虫細胞ペレットを、融解させ、そして溶解緩衝液(25mM HEPES(N−[2−ヒドロキシエチル]ピペラジン−N’−[2−エタンスルホン酸])、4℃でpH7.4、100mM KCl、25mM NaF、1mM NaVO、1mM PMSF(フェニルメチルスルホニルフルオリド)、2mM 2−メルカプトエタノール、2mMイミダゾール、1μg/mlアプロチニン、1μg/mlペプスタチン、1μg/mlロイペプチン)で、3x10個細胞につき1.0mlを用いて希釈した。溶解を、ドウンス・ホモジナイザー(dounce homogeniser)を用いて行った後、溶解産物を、41,000gで35分間遠心分離した。吸引された上澄みを、溶解緩衝液中で平衡にされた500μlのNi NTA(ニトリロトリ酢酸)アガロース(Qiagen,製品番号30250)を含有する5mm直径クロマトグラフィーカラム上にポンプ輸送した。溶離液のUV吸光度のベースラインレベルは、12mlの溶解緩衝液で、次に7mlの洗浄緩衝液(25mM HEPES、4℃でpH7.4、100mM KCl、20mMイミダゾール、2mM 2−メルカプトエタノール)でカラムを洗浄後に得られた。結合したオーロラAタンパク質は、溶離緩衝液(25mM HEPES、4℃でpH7.4、100mM KCl、400mMイミダゾール、2mM 2−メルカプトエタノール)を用いてカラムから溶離した。UV吸光度のピークに該当する溶離画分(2.5ml)を集めた。活性なオーロラAキナーゼを含有する溶離画分を、透析緩衝液(25mM HEPES、4℃でpH7.4、45%グリセロール(v/v)、100mM KCl、0.25% Nonidet P40(v/v)、1mMジチオトレイトール)に対して十分に透析した。
【0074】
オーロラA酵素の新しいバッチ各々を、検定において、酵素希釈剤(25mM Tris−HCl pH7.5、12.5mM KCl、0.6mM DTT)での希釈によって滴定した。典型的なバッチ(Upstate より入手することができる)について、原酵素を、酵素希釈剤で1μl/mlに希釈し、そして20μlの希薄酵素を、各々の検定ウェルに用いる。試験化合物を(ジメチルスルホキシド(DMSO)中の10mMで)、水で希釈し、そして10μlの希釈された化合物を、検定プレート中のウェルに入れた。「全」および「ブランク」の対照ウェルには、化合物の代わりに2.5%DMSOを入れた。20マイクロリットルの新たに希釈された酵素を、「ブランク」ウェルを除く全てのウェルに加えた。20マイクロリットルの酵素希釈剤を、「ブランク」ウェルに加えた。次に、0.2μCi[γ33P]ATP(Amersham Pharmacia,比活性=2500Ci/mmol)を含有する20マイクロリットルの反応配合物(25mM Tris−HCl、12.7mM KCl、2.5mM NaF、0.6mMジチオトレイトール、6.25mM MnCl、7.5mM ATP、6.25μMペプチド基質[ビオチン−LRRWSLGLRRWSLGLRRWSLGLRRWSLG])を、全ての試験ウェルに加えて、反応を開始した。それらプレートを、室温で60分間インキュベートした。反応を止めるために、100μlの20%v/vオルトリン酸を、全てのウェルに加えた。ペプチド基質は、96ウェルプレートハーベスター(TomTek)を用いて、陽電荷ニトロセルロースP30フィルターマット(Whatman)上に捕捉した後、Beta プレートカウンターで33Pの取込みについて検定した。「ブランク」(酵素不含)および「全」(化合物不含)対照値を用いて、酵素活性の50%阻害を与えた試験化合物の希釈範囲(IC50値)を決定した。
・ (b)In Vitro オーロラBキナーゼ阻害試験
この検定は、セリン−トレオニンキナーゼ活性を阻害する試験化合物の能力を決定する。オーロラBをコードしているDNAは、全遺伝子合成によってまたはクローニングによって得ることができる。次に、このDNAを、適する発現系において発現させて、セリン−トレオニンキナーゼ活性を有するポリペプチドを得ることができる。オーロラBの場合、コーディング配列を、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によってcDNAから単離し、そしてオーロラAについて上に記載されたもの(すなわち、6ヒスチジン標識されたオーロラBタンパク質の直接発現)と同様に、pFastBac系中にクローン化した。
【0075】
オーロラBキナーゼ活性の大規模発現については、Sf21昆虫細胞を、Wheaton ローラーリグ上、3r.p.m.において、10%ウシ胎児血清(Viralex)および0.2%F68 Pluronic(Sigma)を補足したTC100培地中、28℃で増殖させた。細胞密度が1.2x10個ml−1に達した時点で、それらを、プラーク純粋オーロラBリコンビナントウイルスに1の感染多重度で感染させ、そして48時間後に採取した。引き続きの精製工程は全て、4℃で行った。全2.0x10個の細胞を含有する凍結昆虫細胞ペレットを、融解させ、そして溶解緩衝液(50mM HEPES(N−[2−ヒドロキシエチル]ピペラジン−N’−[2−エタンスルホン酸])、4℃でpH7.5、1mM NaVO、1mM PMSF(フェニルメチルスルホニルフルオリド)、1mMジチオトレイトール、1μg/mlアプロチニン、1μg/mlペプスタチン、1μg/mlロイペプチン)で、2x10個細胞につき1.0mlを用いて希釈した。溶解を、音波処理ホモジナイザーを用いて行った後、溶解産物を、41,000gで35分間遠心分離した。吸引された上澄みを、溶解緩衝液中で平衡にされた1.0mlのCMセファロース Fast Flow(Amersham Pharmacia Biotech)を含有する5mm直径クロマトグラフィーカラム上にポンプ輸送した。溶離液のUV吸光度のベースラインレベルは、12mlの溶解緩衝液で、次に7mlの洗浄緩衝液(50mM HEPES、4℃でpH7.4、1mMジチオトレイトール)でカラムを洗浄後に得られた。結合したオーロラBタンパク質は、溶離緩衝液の勾配(50mM HEPES、4℃でpH7.4、0.6M NaCl、1mMジチオトレイトール、0%溶離緩衝液〜100%溶離緩衝液へと0.5ml/分の流速で15分間にわたって流す)を用いてカラムから溶離した。UV吸光度のピークに該当する溶離画分(1.0ml)を集めた。溶離画分を、透析緩衝液(25mM HEPES、4℃でpH7.4、45%グリセロール(v/v)、100mM KCl、0.05%(v/v)IGEPAL CA630(Sigma Aldrich)、1mMジチオトレイトール)に対して十分に透析した。透析された画分を、オーロラBキナーゼ活性について検定した。
【0076】
オーロラB−INCENP酵素(Upstate によって供給される)は、オーロラB(5μM)を、50mM Tris−HCl pH7.5、0.1mM EGTA、0.1% 2−メルカプトエタノール、0.1mMバナジン酸ナトリウム(sodium vandate)、10mM酢酸マグネシウム、0.1mM ATP中、30℃において、0.1mg/mlのGST−INCENP[826−919]で30分間活性化することによって製造した。
【0077】
オーロラB−INCENP酵素の新しいバッチ各々を、検定において、酵素希釈剤(25mM Tris−HCl pH7.5、12.5mM KCl、0.6mM DTT)での希釈によって滴定した。典型的なバッチについて、原酵素を、酵素希釈剤で15μl/mlに希釈し、そして20μlの希薄酵素を、各々の検定ウェルに用いる。試験化合物を(ジメチルスルホキシド(DMSO)中の10mMで)、水で希釈し、そして10μlの希釈された化合物を、検定プレート中のウェルに入れた。「全」および「ブランク」の対照ウェルには、化合物の代わりに2.5%DMSOを入れた。20マイクロリットルの新たに希釈された酵素を、「ブランク」ウェルを除く全てのウェルに加えた。20マイクロリットルの酵素希釈剤を、「ブランク」ウェルに加えた。次に、0.2μCi[γ33P]ATP(Amersham Pharmacia,比活性=2500Ci/mmol)を含有する20マイクロリットルの反応配合物(25mM Tris−HCl、12.7mM KCl、2.5mM NaF、0.6mMジチオトレイトール、6.25mM MnCl、15mM ATP、6.25μMペプチド基質[ビオチン−LRRWSLGLRRWSLGLRRWSLGLRRWSLG])を、全ての試験ウェルに加えて、反応を開始した。それらプレートを、室温で60分間インキュベートした。反応を止めるために、100μlの20%v/vオルトリン酸を、全てのウェルに加えた。ペプチド基質は、96ウェルプレートハーベスター(TomTek)を用いて、陽電荷ニトロセルロースP30フィルターマット(Whatman)上に捕捉した後、Beta プレートカウンターで33Pの取込みについて検定した。「ブランク」(酵素不含)および「全」(化合物不含)対照値を用いて、酵素活性の50%阻害を与えた試験化合物の希釈範囲(IC50値)を決定した。
【0078】
(c)in vitro 細胞表現型および基質リン酸化検定
この検定を用いて、SW620ヒト結腸腫瘍細胞への化合物の細胞性作用を in vitro で決定する。化合物は、典型的に、ホスホヒストンH3のレベルの阻害および細胞の核区域の増加を引き起こす。
【0079】
10個/ウェルのSW620細胞を、コスター(costar)96ウェルプレート中において、100μlのDMEM培地(10%FCSおよび1%グルタミンを含有する)(DMEMは、ダルベッコの改変イーグル培地(Dulbecco’sModified Eagle’s Medium)(Sigma D6546)である)中にプレーティングし、37℃および5%COで一晩接着させた。次に、それら細胞に、培地中で希釈された化合物を投与し(50μlを、各々のウェルに加えて、0.00015μ〜1μMの化合物濃度を生じる)、そして化合物での処理から24時間後に、細胞を固定した。
【0080】
それら細胞を、最初に、光学顕微鏡を用いて調べ、そして何らかの細胞形態変化に注目した。次に、100μlの3.7%ホルムアルデヒドを、各々のウェルに加え、そしてプレートを室温で少なくとも30分間放置した。プレートをペーパータオル上に傾瀉し且つ軽く叩くことで、固定剤を除去した後、プレートを、自動プレート洗浄機を用いてPBS(ダルベッコのリン酸緩衝化生理食塩水(Dulbecco’sPhosphate Buffered Saline)(Sigma D8537))中で1回洗浄した。100μlのPBSおよび0.5%トリトンX−100を加え、それらプレートを、振とう機上に5分間置いた。プレートを、100μlのPBS中で洗浄し、溶液を軽く叩き落とした。50μlの一次抗体、すなわち、1%BSA(ウシ血清アルブミン)および0.5%トウィーン含有PBS中の1:500のウサギ抗ホスホヒストンH3を加えた。抗ホスホヒストンH3ウサギ多クローン性06−750は、Upstate Biotechnology より購入した。それらプレートを、振とう機上に室温で1時間放置した。
【0081】
翌日、その抗体を軽く叩き落とし、そしてプレートをPBSで2回洗浄した。未明区域(unlit area)において、50μlの二次抗体、すなわち、1%BSA、0.5%トウィーン含有PBS中の1:10,000の Hoechst および1:200の AlexaFluor 488ヤギ抗ウサギIgGA(カタログ番号11008モレキュラープローブ)を加えた。それらプレートを、スズ箔中に包み、室温で1時間振とうした。抗体を軽く叩き落とし、プレートをPBSで2回洗浄した。200μlのPBSを、各々のウェルに加え、それらプレートを10分間振とうし、PBSを除去した。100μlのPBSを、各々のウェルに加え、プレートを密封して分析に備えた。分析は、Arrayscan Target Activation アルゴリズムを用いて行って、ホスホヒストンH3の細胞レベルおよび核区域の変化を測定した。結果は、ホスホヒストンH3レベルの50%阻害を生じるのに必要な、そして同様に、細胞の核区域の50%増加に必要な有効濃度として報告した(EC50値)。
【0082】
本発明を、本明細書中において、非制限実施例、データおよび図面によって詳しく説明するが、ここにおいて、特に断らない限り、
(i)収率は、単に例示のために与えられ、必ずしも、達成可能な最大値ではない;
(ii)播種するために生成物が用いられる場合、それは、WO2004/058781号に記載されたものなどの先行の既知の方法によって得ることができる;
(iii)本明細書中に記載のように製造されたAZD1152マレエート共結晶の同一性は、H NMRにより、参照用に加えられたテトラメチルシラン(TMS)(TMS=0.00ppm)を含む六重水素化ジメチルスルホキシド中において400MHzで確認した。
【0083】
本明細書中に記載のように、AZD1152およびAZD1152 HQPAは、WO2004/058781号に開示されている。AZD1152、AZD1152 HQPAおよびそれら化合物への途中の全ての中間体に関してWO2004/058781号に与えられた方法詳細は、本明細書中にそのまま援用される。
【実施例】
【0084】
製造方法1
工程1 7−(3−ヒドロキシプロポキシ)キナゾリン−4(3H)−オンの製造
2−アミノ−4−フルオロ安息香酸および1,3−プロパンジオールを、一緒に撹拌し且つ120℃に加熱した。酢酸ホルムアミジンを加え、その混合物を3.5時間撹拌して、7−フルオロキナゾリン−4−オンを生じた。次に、1,3−プロパンジオール中の水酸化カリウムの溶液を、その混合物に2時間50分間にわたって加えた後、それを15℃に冷却した。この後、混合物を125℃に5時間加熱後、75℃に冷却した。希塩酸(約6%w/w)を、反応混合物に、pH4.5に達するまで徐々に加えた。その混合物を、0℃へと6時間にわたって冷却し、その温度で更に1時間維持した後、遠心分離による粗生成物の単離を行った。粗製物質を、水で洗浄し、真空中で乾燥させた後、メタノール中に静かに還流しながら溶解させ、そして減圧下において42℃の温度で部分濃縮した。次に、この溶液を、0℃へと3時間にわたって冷却し、得られた生成物を、濾過によって単離後、真空中で乾燥させた。7−(3−ヒドロキシプロポキシ)キナゾリン−4(3H)−オンを、73%収率で回収した。
【0085】
H−NMR(DMSO d): 11.90 (br s, 1H), 8.04 (s, 1H), 8.00 (d, 1H), 7.10 (m, 2H), 4.17 (t, 2H), 3.58 (t, 2H), 1.92 (m, 2H) :
MS(+ve ESI):221(M+H)
工程2 4−クロロ−7−(3−クロロプロポキシ)キナゾリンの製造
7−(3−ヒドロキシプロポキシ)キナゾリン−4(3H)−オン、トルエンおよびN,N−ジイソプロピルホルムアミド(DIPF)を、一緒に混合し且つ76℃に加熱した後、塩化チオニルを、76℃で1時間にわたって加えた。次に、追加の塩化チオニルを、1時間にわたって加えた後、その温度を76℃で1時間維持した。その混合物を11時間還流させて、透明溶液とし、それを38℃に冷却し、真空蒸留を行って、トルエンおよび塩化チオニルを除去した。次に、トルエンを加え、その溶液を35℃で保持したところ、それは、濾過助剤(セライトまたはハーボライト(harborlite)および活性炭)で透明になった。得られた溶液を、部分濃縮した後、ヘプタンを加え、その混合物を0℃に冷却し且つ23時間撹拌した。形成された淡褐色懸濁液を、濾過によって単離し、冷ヘプタンで洗浄後、真空中において30℃で乾燥させて、4−クロロ−7−(3−クロロプロポキシ)キナゾリン(63.6%)を生じた。
【0086】
H−NMR(DMSO d): 13.25 (br s, 1H), 8.34 (s, 1H), 8.06 (d, 1H), 7.17 (m, 2H), 4.21 (t, 2H), 3.83 (t, 2H), 2.23 (m, 2H) :
MS(+ve ESI):257,259(M+H)
【0087】
工程3 (3−{[7−(3−クロロプロポキシ)キナゾリン−4−イル]アミノ}−1H−ピラゾール−5−イル)酢酸の製造
4−クロロ−7−(3−クロロプロポキシ)キナゾリンを、N−メチルピロリジノン(NMP)中の(3−アミノ−1H−ピラゾール−5−イル)酢酸の1モル当量溶液に加えた後、12時間放置した。生成物の結晶化は、播種してもしなくとも、そしてアンチソルベントとしてのアセトニトリルの添加をしてもしなくとも、生じることが認められた。得られた固体を、濾過によって単離し、N−メチルピロリジノンおよびアセトニトリルで洗浄後、真空中で乾燥させて、(3−{[7−(3−クロロプロポキシ)キナゾリン−4−イル]アミノ}−1H−ピラゾール−5−イル)酢酸塩酸塩をオフホワイト固体として生じた。
【0088】
H−NMR(DMSO d;溶媒和化合物としてNMPを含有する): 8.92 (s, 1H), 8.8 (d, 1H), 7.46 (pr の d, 1H), 7.38 (d, 1H), 6.7 (s, 1H), 4.32 (t, 2H), 3.85 (t, 2H), 3.73 (s, 2H), 3.3 (t, 2H), 2.7 (s, 3H), 2.51 (m, 6H), 2.27 (m, 2H), 2.18 (t, 2H), 1.93 (m, 2H)。
【0089】
MS(+ve ESI):362.1015(M+H)
工程4 2−(3−{[7−(3−クロロプロポキシ)キナゾリン−4−イル]アミノ}−1H−ピラゾール−5−イル)−N−(3−フルオロフェニル)アセトアミドの製造
4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)、N−メチルモルホリンおよび3−フルオロアニリン(大過剰で)を、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)中の(3−{[7−(3−クロロプロポキシ)キナゾリン−4−イル]アミノ}−1H−ピラゾール−5−イル)酢酸塩酸塩の懸濁液に加え、得られたスラリーを、室温またはそれ未満の温度で撹拌した。次に、水中に予め溶解させた1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDCI.HCl)の溶液を、周囲温度で反応を維持するように制御方式で8時間にわたって加えた。その混合物に、少量の生成物を播種し、それを数時間撹拌させた。アンチソルベントであるアセトニトリル、次に水も加えて、より多くの生成物を沈殿させた。その物質を、濾過によって単離し、そのケーキを、N,N−ジメチルアセトアミド:水:アセトニトリルの混合物、温アセトニトリルで洗浄後、乾燥させて(真空中または窒素流下で)、2−(3−{[7−(3−クロロプロポキシ)キナゾリン−4−イル]アミノ}−1H−ピラゾール−5−イル)−N−(3−フルオロフェニル)アセトアミドを生じた。
【0090】
H−NMR(DMSO d;残留するDMAを含有する): 10.4 (s, 1H), 8.9 (s, 1H), 8.8 (d, 1H), 7.59 (pr の m, 1H), 7.46(pr の d, 1H), 7.33 (m, 2H), 7.29 (d, 1H), 6.85 (m, 1H), 6.75 (s, 1H), 4.35 (t, 2H), 3.85 (t, 4H), 2.95 (s), 2.83 (s), 2.56 (s), 2.25 (m, 2H), 1.95 (s) :
MS(+ve ESI):455(M+H)
【0091】
工程5 2−{3−[(7−{3−[エチル(2−ヒドロキシエチル)アミノ]プロポキシ}−キナゾリン−4−イル)アミノ]−1H−ピラゾール−5−イル}−N−(3−フルオロフェニル)アセトアミド(AZD1152 HQPA)の製造
2−(3−{[7−(3−クロロプロポキシ)キナゾリン−4−イル]アミノ}−1H−ピラゾール−5−イル)−N−(3−フルオロフェニル)アセトアミドおよび2−(エチルアミノ)エタノール(12モル当量)を、N,N−ジメチルアセトアミドに、(窒素で与えられるような)不活性雰囲気下で加え、その混合物を、撹拌しながら90℃に加熱した。12時間後、水を制御方式で加え、そのバッチに、加熱しながら生成物を播種した。混合物を、注意深い制御方式で20℃に冷却して、生成物を必要な形で結晶化させた。次に、生成物を濾過し、そして水/N,N−ジメチルアセトアミドの混合物およびアセトニトリルで洗浄した。この後、そのケーキを、温アセトニトリル(40℃)で一定時間スラリーにし、濾過し、追加のアセトニトリルで洗浄後、乾燥させて(真空中または窒素流下で)、無水2−{3−[(7−{3−[エチル(2−ヒドロキシエチル)アミノ]プロポキシ}−キナゾリン−4−イル)アミノ]−1H−ピラゾール−5−イル}−N−(3−フルオロフェニル)アセトアミドをオフホワイト固体として約90%の収率で与えた。
【0092】
H−NMR(DMSO d): 10.55 (s, 1H), 9.45 (br s, 1H), 8.98 (s, 1H), 8.8 (d, 1H), 7.63 (pr の m, 1H), 7.47 (pr の d, 1H), 7.37 (m, 2H), 7.32 (d, 1H), 6.9 (m, 1H), 6.77 (s, 1H), 4.32 (t, 2H), 3.83 (br s, 2H), 3.76 (t, 2H), 3.35 (m, 2H), 3.25 (m, 4H), 2.25 (m, 2H), 1.25 (t, 3H):
MS(+ve ESI):508.4(M+H)
【0093】
工程6 2−[[3−({4−[(5−{2−[(3−フルオロフェニル)アミノ]−2−オキソエチル}−1H−ピラゾール−3−イル)アミノ]−キナゾリン−7−イル}オキシ)プロピル](エチル)アミノ]エチルリン酸モノ(tert−ブチル)[AZD1152 t−Bu P(5)エステル]の製造
2−{3−[(7−{3−[エチル(2−ヒドロキシエチル)アミノ]プロポキシ}−キナゾリン−4−イル)アミノ]−1H−ピラゾール−5−イル}−N−(3−フルオロフェニル)アセトアミドおよびピリジン塩酸塩を、N,N−ジメチルアセトアミド中で混合し、その溶液を−15℃に冷却した。次に、ジ−tert−ブチルジエチルホスホルアミダイト(1.5〜2.1モル当量)を、その温度を維持しながら加えた。反応混合物を、温度を周囲温度未満に保持しながら、30%w/w過酸化水素(約4.2モル当量)で現場で処理した。残っている過酸化水素を、メタ重亜硫酸ナトリウム(10%w/v水溶液として)の添加によって、40℃未満の温度を維持しながら破壊した。次に、得られた2−[[3−({4−[(5−{2−[(3−フルオロフェニル)アミノ]−2−オキソエチル}−1H−ピラゾール−3−イル)アミノ]キナゾリン−7−イル}オキシ)プロピル](エチル)アミノ]エチルリン酸ジ−tert−ブチル溶液を、40℃に加熱し、そして水酸化ナトリウム溶液(2M)を加えて、pH5〜6.5に調整した。温度およびpHを、播種しながら約90分間維持した。次に、水を加え、そしてpHを、pH8〜9の範囲内に更に調整して、回収を最適にした。温反応混合物を、直接的に濾過して、2−[[3−({4−[(5−{2−[(3−フルオロフェニル)アミノ]−2−オキソエチル}−1H−ピラゾール−3−イル)アミノ]キナゾリン−7−イル}オキシ)プロピル](エチル)アミノ]エチルリン酸モノ−tert−ブチルを与え、それを、N,N−ジメチルアセトアミド/水の混合物および水で洗浄し、そして最後に乾燥させて(真空中または窒素流下で)、2−[[3−({4−[(5−{2−[(3−フルオロフェニル)アミノ]−2−オキソエチル}−1H−ピラゾール−3−イル)アミノ]−キナゾリン−7−イル}オキシ)プロピル](エチル)アミノ]エチルリン酸モノ(tert−ブチル)をオフホワイト固体として86〜93%の収率で与えた。
【0094】
H−NMR(DMSO d): 10.48 (s, 1H), 9.75 (br s, 1H), 8.98 (s, 1H), 8.85 (d, 1H), 7.67 (pr の m, 1H), 7.48(pr の d, 1H), 7.37 (m, 2H), 7.3 (d, 1H), 6.87 (m, 1H), 6.83 (s, 1H), 4.34 (t, 2H), 4.28 (m, 2H), 3.88 (s, 2H), 3.53 (m, 2H), 3.43 (m, 2H), 3.33 (m, 2H), 2.3 (m, 2H), 1.47 (s, 9H), 1.32 (t, 3H):
MS(+ve ESI):(M+H) 644.2761 フラグメント(より少ないブチル)588.2147。
【0095】
工程7 2−{エチル[3−({4−[(5−{2−[(3−フルオロフェニル)アミノ]−2−オキソエチル}−1H−ピラゾール−3−イル)アミノ]キナゾリン−7−イル}オキシ)プロピル]アミノ}エチルリン酸二水素塩(AZD1152)の製造
2−[[3−({4−[(5−{2−[(3−フルオロフェニル)アミノ]−2−オキソエチル}−1H−ピラゾール−3−イル)アミノ]−キナゾリン−7−イル}オキシ)プロピル](エチル)アミノ]エチルリン酸モノ(tert−ブチル)を、水/テトラヒドロフラン(THF)の1:1混合物中に懸濁させ、そして高温(好ましくは、50〜60℃)において1.5〜3.0モル当量の過剰の塩酸で約1時間処理した。次に、その熱溶液を、2.0M水酸化ナトリウムを用いて塩基性にして、pH4.5〜5.5の範囲内とし、60℃に冷却し、そして播種した。そのスラリーに、水を制御方式で、結晶化混合物を室温に制御冷却しながら加え、そして生成物を濾過によって単離した。濾過ケーキを、水で洗浄し、真空中で乾燥させた。乾燥後、固体の2−{エチル[3−({4−[(5−{2−[(3−フルオロフェニル)アミノ]−2−オキソエチル}−1H−ピラゾール−3−イル)アミノ]キナゾリン−7−イル}オキシ)プロピル]アミノ}エチルリン酸二水素塩を、周囲条件下で平衡にして恒量として、水和形を淡黄色針状物質として生じた。
【0096】
H−NMR(DMSO d):
MS(+ve ESI):587.8(M+H)
H−NMR(DMSO d): 10.53 (s, 1H), 8.57 (s, 1H), 8.54 (d, 1H), 7.62 (d, 1H), 7.37 (m, 2H), 7.27 (s, 1H), 7.21 (d, 1H), 6.88 (m, 1H), 6.65 (s, 1H), 4.27 (t, 2H), 4.05 (m, 2H), 3.75 (s, 2H), 3.24 (m, 2H), 3.21 (t, 2H), 3.13 (q, 2H), 2.18 (m, 2H), 1.24 (t, 3H) :
MS(+ve ESI):588(M+H)
【0097】
2631FNP+3.0HOの理論値C,48.7%;H,5.8%;N,15.3%;実測値C,48.8%;H,5.35%;N,15.15%。
工程8 2−{エチル[3−({4−[(5−{2−[(3−フルオロフェニル)アミノ]−2−オキソエチル}−1H−ピラゾール−3−イル)アミノ]キナゾリン−7−イル}オキシ)プロピル]アミノ}エチルリン酸二水素塩.マレエート[AZD1152マレエート]の製造
2−ブテン二酸(Z)(1.57モル当量;449.80μmole;52.21mg)を、メタノール(123.54mmole;5.00ml;3.96g)中に溶解させ、この溶液に、予め調製されたメタノール性AZD1152溶液(遊離形三水和物として−1.00モル当量,286.14μmole;40.00mL;31.87g)を、次に追加のメタノール(123.54mmole;5.00mL;3.96g)を加えた。その混合物を、室温で一晩撹拌させた。白色懸濁液を生じ、その固体を濾過によって回収後、真空中で乾燥させた。NMRによる分析で、その共結晶がマレエートであることを確認した。
【0098】
代替工程8:
粗製AZD1152(7.44g@100%で概算,11.61ミリモル)を、ジメチルスルホキシド(36ml)に加え、周囲条件で放置して、淡褐色溶液を生じた。この溶液に、メタノール(36ml)中のマレイン酸(1.76g,15.16ミリモル,1.31モル当量)の溶液を加え、その混合物を周囲温度で一晩放置した。翌日、その透明溶液のアリコートを、バイアルに移し、引掻き、そして数時間密封状態にした。白色固体の析出物が形成され、これをフラスコに移し、撹拌させた。その溶液は、徐々に濁った状態となり、固体を析出した。そのスラリーを、数日間静置させ、そして最後に濾過した。そのケーキを、ジメチルスルホキシド/メタノールの1:1混合物(全部で15ml)で洗浄し、メタノール(3x25ml)で現場でスラリーにした後、真空中で乾燥させた。NMRで、その固体は、(約78.7%収率で)AZD1152のマレエート共結晶であることを確認した。
【0099】
製造方法2
工程1 2−(3−{[7−(3−クロロプロポキシ)キナゾリン−4−イル]アミノ}−1H−ピラゾール−5−イル)−N−(3−フルオロフェニル)アセトアミドの製造
N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)中の(3−{[7−(3−クロロプロポキシ)キナゾリン−4−イル]アミノ}−1H−ピラゾール−5−イル)酢酸塩酸塩(上の製造方法1に記載のように製造される)の懸濁液に、4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)を、15〜25℃(理想的には、15℃)の温度を維持しながら加えた後、N−メチルモルホリンも、その温度を維持しながら加える。3−フルオロアニリンを(理想的には、10〜15モル当量である大過剰で)、25℃未満の温度を維持するような速度で加える。同時に、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDCI.HCl)を、水中に溶解させて、約42%w/v溶液を与える(存在する水の量は、操作の後の方で結晶化を果たすのに重要である)。この溶液を、スラリーに、反応を20〜25℃で維持するような制御方式で8時間にわたって加え;次に、その混合物に、生成物の好ましい形の結晶(理想的には、予想収率の約1%の量)を播種する。その混合物を、その温度(理想的には、20〜25℃)を維持しながら約16時間撹拌後、アンチソルベントであるアセトニトリル、次に水を、制御方式で且つ20〜25℃の温度を維持するように加えた後、約21時間の長時間撹拌を行うが;これは、生成物の回収および形を最適にするはずである。物質を、濾過によって単離し、そのケーキを、N,N−ジメチルアセトアミド:水:アセトニトリル(5:3:2の容量比)の混合物、アセトニトリルで洗浄後、乾燥させて(真空中または窒素流下で)、若干のDMAを含有する2−(3−{[7−(3−クロロプロポキシ)キナゾリン−4−イル]アミノ}−1H−ピラゾール−5−イル)−N−(3−フルオロフェニル)アセトアミドを約76〜78%収率で与える。
【0100】
H−NMR(DMSO d;残留するDMAを含有する): 10.4 (s, 1H), 8.9 (s, 1H), 8.8 (d, 1H), 7.59 (pr の m, 1H), 7.46(pr の d, 1H), 7.33 (m, 2H), 7.29 (d, 1H), 6.85 (m, 1H), 6.75 (s, 1H), 4.35 (t, 2H), 3.85 (t, 4H), 2.95 (s), 2.83 (s), 2.56 (s), 2.25 (m, 2H), 1.95 (s) :
MS(+ve ESI):455(M+H)
【0101】
工程2 (2−{3−[(7−{3−[エチル(2−ヒドロキシエチル)アミノ]プロポキシ}−キナゾリン−4−イル)アミノ]−1H−ピラゾール−5−イル}−N−(3−フルオロフェニル)アセトアミド(AZD1152 HQPA)の製造
2−(3−{[7−(3−クロロプロポキシ)キナゾリン−4−イル]アミノ}−1H−ピラゾール−5−イル)−N−(3−フルオロフェニル)アセトアミドおよび2−(エチルアミノ)エタノール(理想的には、12モル当量)を、N,N−ジメチルアセトアミドに、(窒素で与えられるような)不活性雰囲気下で加え、その混合物を、撹拌しながら90℃に加熱した。12〜16時間(理想的には、12時間)後、その反応を約85℃に冷却し戻し、そして水を、80〜85℃の温度を維持するような制御方式で加える。そのバッチを、80℃に調整し、そして生成物の好ましい形の結晶(理想的には、予想収率の約1%の量)を播種する。混合物を、良好な濾過速度を与えるのに十分なサイズの且つ必要な形の生成物を結晶化するように注意深い制御方式で20℃へと約20時間にわたって冷却した。次に、生成物を濾過し、そして水/N,N−ジメチルアセトアミドの混合物およびアセトニトリルで洗浄し、そして好適には、脱液して(deliquored)、水和形の生成物を与える。この後、そのケーキを、温アセトニトリルで(理想的には、40℃の温度で)一定時間(理想的には、2時間)現場でスラリーにした後、濾過し、追加のアセトニトリルで洗浄後、乾燥させて(真空中または窒素流下で)、ほぼ無水の2−{3−[(7−{3−[エチル(2−ヒドロキシエチル)アミノ]プロポキシ}−キナゾリン−4−イル)アミノ]−1H−ピラゾール−5−イル}−N−(3−フルオロフェニル)アセトアミドをオフホワイト固体として85〜90%の収率で与える。
【0102】
H−NMR(DMSO d): 10.55 (s, 1H), 9.45 (br s, 1H), 8.98 (s, 1H), 8.8 (d, 1H), 7.63 (pr の m, 1H), 7.47 (pr の d, 1H), 7.37 (m, 2H), 7.32 (d, 1H), 6.9 (m, 1H), 6.77 (s, 1H), 4.32 (t, 2H), 3.83 (br s, 2H), 3.76 (t, 2H), 3.35 (m, 2H), 3.25 (m, 4H), 2.25 (m, 2H), 1.25 (t, 3H):
MS(+ve ESI):508.4(M+H)
【0103】
工程3 2−[[3−({4−[(5−{2−[(3−フルオロフェニル)アミノ]−2−オキソエチル}−1H−ピラゾール−3−イル)アミノ]−キナゾリン−7−イル}オキシ)プロピル](エチル)アミノ]エチルリン酸モノ(tert−ブチル)[AZD1152 t−Bu P(5)エステル]の製造
N,N−ジメチルアセトアミド中のピリジン塩酸塩のスラリーに、N,N−ジメチルアセトアミド中の2−{3−[(7−{3−[エチル(2−ヒドロキシエチル)アミノ]プロポキシ}−キナゾリン−4−イル)アミノ]−1H−ピラゾール−5−イル}−N−(3−フルオロフェニル)アセトアミドおよびジ−tert−ブチルジエチルホスホルアミダイト(理想的には、1モル当量)の溶液を、長時間(理想的には、3時間)にわたって加え、−20〜−10℃(理想的には、−15℃)の温度を維持した。この後、ジ−tert−ブチルジエチルホスホルアミダイト(理想的には、0.5モル当量)を、−20〜−10℃(理想的には、−15℃)の温度も維持しながら1時間にわたって更に加える。
【0104】
反応混合物を、30%w/w過酸化水素(約4.2モル当量)で現場で処理するが、同時に、その温度を、−10℃未満(理想的には、−12〜−8℃)に保持し且つこの温度で一定時間(理想的には、16時間)保持した。残っている過酸化水素を、メタ重亜硫酸ナトリウム(10%w/v水溶液として)の添加によって、40℃未満の温度を維持しながら破壊する。
【0105】
次に、得られた2−[[3−({4−[(5−{2−[(3−フルオロフェニル)アミノ]−2−オキソエチル}−1H−ピラゾール−3−イル)アミノ]キナゾリン−7−イル}オキシ)プロピル](エチル)アミノ]エチルリン酸ジ−tert−ブチル溶液を、40℃に加熱し、そして水酸化ナトリウム溶液(理想的には、2M)を加えて、pH5.5〜6.5(理想的には、pH6)に調整して、好適な結晶質を播種した。その温度を保持し、そして余分の水酸化ナトリウム溶液の少なくとも2時間の添加によって、pH5〜6の範囲を維持する。次に、水を加え、そして回収を最適にするように、その温度(理想的には、40℃であるが、35〜45℃の範囲内)を16時間維持しながら、pHをpH8〜9の範囲内(理想的には、pH8.8)に更に調整する。その温反応混合物を、直接的に濾過して、2−[[3−({4−[(5−{2−[(3−フルオロフェニル)アミノ]−2−オキソエチル}−1H−ピラゾール−3−イル)アミノ]キナゾリン−7−イル}オキシ)プロピル](エチル)アミノ]エチルリン酸モノ−tert−ブチルを与えるが、それを、水で数回洗浄し、そして最後に乾燥させて(真空中かまたは適する不活性ガス流)、2−[[3−({4−[(5−{2−[(3−フルオロフェニル)アミノ]−2−オキソエチル}−1H−ピラゾール−3−イル)アミノ]−キナゾリン−7−イル}オキシ)プロピル](エチル)アミノ]エチルリン酸モノ(tert−ブチル)をオフホワイト固体として86〜93%の収率で与えた。
【0106】
H−NMR(DMSO d): 10.48 (s, 1H), 9.75 (br s, 1H), 8.98 (s, 1H), 8.85 (d, 1H), 7.67 (pr の m, 1H), 7.48(pr の d, 1H), 7.37 (m, 2H), 7.3 (d, 1H), 6.87 (m, 1H), 6.83 (s, 1H), 4.34 (t, 2H), 4.28 (m, 2H), 3.88 (s, 2H), 3.53 (m, 2H), 3.43 (m, 2H), 3.33 (m, 2H), 2.3 (m, 2H), 1.47 (s, 9H), 1.32 (t, 3H):
MS(+ve ESI):(M+H) 644.2761 フラグメント(より少ないブチル)588.2147。
【0107】
工程4 2−{エチル[3−({4−[(5−{2−[(3−フルオロフェニル)アミノ]−2−オキソエチル}−1H−ピラゾール−3−イル)アミノ]キナゾリン−7−イル}オキシ)プロピル]アミノ}エチルリン酸二水素塩(AZD1152)の製造
2−[[3−({4−[(5−{2−[(3−フルオロフェニル)アミノ]−2−オキソエチル}−1H−ピラゾール−3−イル)アミノ]−キナゾリン−7−イル}オキシ)プロピル](エチル)アミノ]エチルリン酸モノ(tert−ブチル)を、水/テトラヒドロフラン(THF)の混合物中に懸濁させ、そして1.5〜3.0モル当量の過剰の塩酸(理想的には、2M濃度で且つ1.5モル当量を含有する)で処理した。その混合物を、55〜65℃(理想的には、60℃)に加熱し、60℃で約1時間保持する。次に、その熱溶液を、水酸化ナトリウム(好ましくは、2M濃度で且つ1.7モル当量を含有する)を用いて塩基性にして、pH5.0〜5.5の範囲内のpHを与えた後、生成物の好ましい形の結晶(理想的には、予想収率の0.05%w/wの量)を55〜65℃(理想的には、60℃)で播種する。混合物をこの温度で少なくとも1時間撹拌後、水を加え、そしてスラリーを撹拌し且つ制御方式で約12時間にわたって冷却後、周囲温度で少なくとも4時間撹拌後、生成物を濾過によって単離する。濾過ケーキを、水で、次にTHFで逐次的に洗浄し、真空中で乾燥させるかまたは、給湿手順を用いることにより、水蒸気で湿潤した不活性ガスを、恒量が得られるまで固体上に通過させることで乾燥させる。真空中で乾燥後、固体の2−{エチル[3−({4−[(5−{2−[(3−フルオロフェニル)アミノ]−2−オキソエチル}−1H−ピラゾール−3−イル)アミノ]キナゾリン−7−イル}オキシ)プロピル]アミノ}エチルリン酸二水素塩を、周囲条件下で恒量へと平衡にして、水和形を淡黄色針状物質として生じる。生成物を、約81%収率で得る。
【0108】
H−NMR(DMSO d):
MS(+ve ESI):587.8(M+H)
H−NMR(DMSO d): 10.53 (s, 1H), 8.57 (s, 1H), 8.54 (d, 1H), 7.62 (d, 1H), 7.37 (m, 2H), 7.27 (s, 1H), 7.21 (d, 1H), 6.88 (m, 1H), 6.65 (s, 1H), 4.27 (t, 2H), 4.05 (m, 2H), 3.75 (s, 2H), 3.24 (m, 2H), 3.21 (t, 2H), 3.13 (q, 2H), 2.18 (m, 2H), 1.24 (t, 3H) :
MS(+ve ESI):588(M+H)
【0109】
2631FNP+3.0HOの理論値C,48.7%;H,5.8%;N,15.3%;実測値C,48.8%;H,5.35%;N,15.15%。
工程5 2−{エチル[3−({4−[(5−{2−[(3−フルオロフェニル)アミノ]−2−オキソエチル}−1H−ピラゾール−3−イル)アミノ]キナゾリン−7−イル}オキシ)プロピル]アミノ}エチルリン酸二水素塩マレエート[AZD1152マレエート]の製造
2−ブテン二酸(Z)(1.57モル当量;449.80μmole;52.21mg)を、メタノール(123.54mmole;5.00ml;3.96g)中に溶解させ、この溶液に、予め調製されたメタノール性AZD1152溶液(遊離形三水和物として−1.00モル当量,286.14μmole;40.00mL;31.87g)を、次に追加のメタノール(123.54mmole;5.00mL;3.96g)を加えた。その混合物を、室温で一晩撹拌させた。白色懸濁液を生じ、その固体を濾過によって回収後、真空中で乾燥させた。NMRによる分析で、その共結晶は、AZD1152のマレエートであることを確認した。
【0110】
上の工程5の代替工程:
粗製AZD1152(7.44g@100%で概算,11.61ミリモル)を、ジメチルスルホキシド(36ml)に加え、周囲条件で放置して、淡褐色溶液を生じた。この溶液に、メタノール(36ml)中のマレイン酸(1.76g,15.16ミリモル,1.31モル当量)の溶液を加え、その混合物を周囲温度で一晩放置した。翌日、その透明溶液のアリコートを、バイアルに移し、引掻き、そして数時間密封状態にした。白色固体の析出物が形成され、これをフラスコに移し、撹拌させた。その溶液は、徐々に濁った状態となり、固体を析出した。そのスラリーを、数日間静置させ、そして最後に濾過した。そのケーキを、ジメチルスルホキシド/メタノールの1:1混合物(全部で15ml)で洗浄し、メタノール(3x25ml)で現場でスラリーにした後、真空中で乾燥させた。NMRによる分析で、その共結晶は、(約78.7%収率で)AZD1152のマレエートであることを確認した。
【0111】
上の工程5の追加の代替工程:
AZD1152(遊離形三水和物として−1.00モル当量,8.51mmole;5.74g)および2−ブテン二酸(Z)(1.20モル当量;10.2mmole;1.19g)を、ジメチルスルホキシド(35ml)中に溶解させ、60℃に加熱する。アンチソルベントであるアセトニトリル(20ml)を、その熱混合物に加えた後、混合物に、生成物AZD1152 Maleate の好ましい形の結晶(0.005モル当量;42.6マイクロモル;30.7mg−理想的には、予想収率の約0.5%w/wの量)を播種する。反応混合物を、60℃で4時間保持後、追加量のアセトニトリル(40ml)を、3時間にわたって加える。その混合物を、60℃で12〜20時間(理想的には、16時間)撹拌させる。反応を、制御方式で20℃に冷却し、生成物を濾過によって単離する。そのケーキを、ジメチルスルホキシド/アセトニトリル(1:2容量比)の混合物で、次にアセトニトリルで洗浄する。その固体を、真空中または温不活性ガス流下(理想的には、40℃)で乾燥させて、AZD1152 Maleate を白色固体として約88%収率で与える。
【0112】
特性決定データ
核磁気共鳴分光法
共結晶中の成分の構造および概算比は、プロトンNMR分光法によって確認することができる。典型的なデータを、下に示す。
【0113】
【表2−1】

【0114】
【表2−2】

【0115】
NMR積分は、1:1.04のマレイン酸対AZD1152比とほぼ一致する。
示差走査熱量測定
示差走査熱量測定(DSC)分析は、製造方法1および2によって製造されたAZD1152マレエート共結晶について、Mettler DSC820eを用いて行った。穴あき蓋を装着した40μlアルミニウムパン中に入っている、典型的に5mg未満の物質試料を、25℃〜325℃の温度範囲にわたって、10℃/分の一定加熱速度で加熱した。窒素を用いたパージガスを、100ml/分の流速で用いた。
【0116】
上の方法1によって製造されたAZD1152マレエート共結晶のバッチについての結果(図2を参照されたい)は、マレエート共結晶が、溶融するために、180℃の開始温度で大きく鋭い吸熱を示すということを示している。溶融後には、溶融後のマレイン酸の分解のために、大きい吸熱イベントが認められる。DSCの開始および/またはピークの温度値は、試験機ごとに、方法ごとに、または試料ごとに僅かに異なることがありうるので、引用される値は、絶対と解釈すべきではないということは理解されるであろう。
【0117】
上の方法2によって製造されたAZD1152マレエート共結晶についての結果(図3を参照されたい)は、マレエート共結晶が、溶融するために、183℃の開始温度で大きく鋭い吸熱を示すということを示している。溶融後には、溶融後のマレイン酸の分解のために、大きい吸熱イベントが認められる。DSCの開始および/またはピークの温度値は、試験機ごとに、方法ごとに、または試料ごとに僅かに異なることがありうるので、引用される値は、絶対と解釈すべきではないということは理解されるであろう。
【0118】
動的蒸気収着
分析機器:Surface Measurements Systems Dynamic Vapour Sorption Analyser。
規定温度において石英ホルダー中に入っている約5mgの物質を、給湿窒素に、200ml/分の窒素流速、25℃、次の相対湿度(RH):0%、20%、40%、60%、80%、95%、80%、60%、40%、20%、0%のRHにおいて、二重反復試験で供した。
【0119】
特定の相対湿度での物質重量を、10分間にわたって平均された0.002%/分の重量変化の重量判定基準によって安定するまで監視した。重量が依然として変化していた場合、重量が安定するまで(12時間の最大時間まで)、それを特定の相対湿度に置いた。
【0120】
方法1によって製造されたAZD1152マレエート共結晶のバッチについての結果を、図4に示す。上の方法2によって製造されたAZD1152マレエート共結晶のバッチについての結果を、図5に示す。
【0121】
図4および図5に示される動的蒸気収着結果は、その試料が非吸湿性であり、そして吸収重量は、表面吸着に帰因するということを示している。図5で認められるサイクル1中の損失重量は、製造により試料中に存在する少量の溶媒に帰因する。これは、0%RHで減少した重量によって確認される。この溶媒がいったん蒸発すると、その物質は、0%RHでその重量を維持する。この知見は、当業者によって十分に理解されるであろう。
【0122】
AZD1152遊離形の動的蒸気収着を、図6に示す。
AZD1152遊離形の動的蒸気収着は、水分レベルが、貯蔵の相対湿度に依存して極めて変化しやすいということを示している。この水分レベル変化は、脱水状態〜四水和状態およびそれ以上でありうる異なった水和状態のためである。
【0123】
X線粉末回折
AZD1152のマレエート共結晶のX線粉末回折図形が、図1に示されているということは、上に述べられている。
【0124】
AZD1152マレエートのもう一つの製造方法は、上の方法2に示された。方法2によって製造されたAZD1152マレエート共結晶のX線粉末回折図形を、図7に示す。不可欠なピークを、下の表2に示す。
【0125】
【表3】

上述のように、測定条件(用いられる装置、試料標品または試験機など)に依存して、一つまたはそれを超える測定誤差を有するX線粉末回折図形を得ることがありうるということは、当該技術分野において知られている。具体的には、概して、X線粉末回折図形の強度は、測定条件および試料標品に依存して変動することがありうるということが知られている。例えば、X線粉末回折の業者は、ピークの相対強度が、例えば、試料分析に影響することがありうる約30ミクロンを超えるサイズ粒子および非ユニタリアスペクト比によって影響されることがありうるということを理解するであろう。当業者は、更に、反射の位置が、回折計中の試料が置かれている正確な高さおよび回折計のゼロ検定によって影響されることがありうるということを理解するであろう。試料の表面平坦さも、僅かな作用を有することがありうる。したがって、当業者は、本明細書中に示された回折図形データを絶対と解釈すべきではないということを理解するであろう(更なる情報については、Jenkins, R & Snyder, R.L. ‘Introduction to X-Ray Powder Diffractometry’ John Wiley & Sons, 1996 を参照されたい)。
【0126】
概して、X線粉末ディフラクトグラムにおける回折角の測定誤差は、約2θ=0.5°またはそれ未満(またはより好適には、約2θ=0.2°またはそれ未満)であり、そしてこのような程度の測定誤差は、図1のX線粉末回折図形を考察する場合、および上の教本および表1に挙げられたピーク位置を解釈する場合、考慮されるべきであるということも、上に述べられている。
【0127】
これを考慮して、当業者は、上の図7および表2に示されたデータが、方法2によって製造されたAZD1152マレエート共結晶は、方法1によって製造された(そして図1および表1に示される)AZD1152マレエート共結晶と同じ結晶形であるということを示しているということを理解するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】図1:AZD1152のマレエート共結晶(上の方法1によって製造された)のX線粉末回折図形であって、2θ値を水平軸上にプロットし、相対回折線強度(計数)を垂直軸上にプロットしている。
【図2】図2:上の方法1によって製造されたAZD1152マレエート共結晶の示差走査熱量測定サーモグラム。
【図3】図3:上の方法2によって製造されたAZD1152マレエート共結晶の示差走査熱量測定サーモグラム。
【図4】図4:上の方法1によって製造されたAZD1152マレエート共結晶のバッチについての動的蒸気収着等温プロット。
【図5】図5:上の方法2によって製造されたAZD1152マレエート共結晶のバッチについての動的蒸気収着等温プロット。
【図6】図6:AZD1152遊離形についての動的蒸気収着等温プロット。
【図7】図7:AZD1152のマレエート共結晶(上の方法2によって製造された)のX線粉末回折図形であって、2θ値を水平軸上にプロットし、相対回折線強度(計数)を垂直軸上にプロットしている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
AZD1152のマレエート共結晶であって、AZD1152が、
【化1】

であるマレエート共結晶。
【請求項2】
請求項1に記載のAZD1152のマレエート共結晶の結晶形。
【請求項3】
前記共結晶が、約2θ=12.9°および15.2°および/または10.2°に特異的ピークを含むX線粉末回折図形を有する、請求項2に記載のAZD1152のマレエート共結晶の結晶形。
【請求項4】
請求項1に記載のAZD1152のマレエート共結晶を製造する方法であって、AZD1152遊離形の溶液とマレイン酸とを、メタノール、ジメチルスルホキシド(DMSO)またはそれらの混合物などの適する溶媒中で混合する工程を含む方法。
【請求項5】
医薬組成物であって、請求項1に記載のAZD1152のマレエート共結晶を、薬学的に許容しうる希釈剤または担体と一緒に含む医薬組成物。
【請求項6】
療法で用いるための、請求項1に記載のAZD1152のマレエート共結晶。
【請求項7】
一つまたはそれを超えるオーロラキナーゼの阻害が有益である疾患の処置用の薬剤の製造における、請求項1に記載のAZD1152のマレエート共結晶の使用。
【請求項8】
癌などの高増殖性疾患の処置用の薬剤の製造における、請求項1に記載のAZD1152のマレエート共結晶の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2009−537498(P2009−537498A)
【公表日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−510536(P2009−510536)
【出願日】平成19年5月14日(2007.5.14)
【国際出願番号】PCT/GB2007/001771
【国際公開番号】WO2007/132227
【国際公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【出願人】(300022641)アストラゼネカ アクチボラグ (581)
【Fターム(参考)】