説明

BORISアイソフォーム並びに疾患を検出及び治療する方法

疾患が存在しない場合にはBORISを発現しない哺乳動物の組織中のBORISアイソフォームの発現について試験する工程を包含する、哺乳動物中の増殖過剰疾患(例えば、BORISの異常発現に関連する疾患)を検出する方法、並びに、そのような疾患を治療又は予防する方法、単離又は精製されたBORISアイソフォームポリペプチド及び核酸、及びこれらを含むキット及びアレイ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(技術分野)
本発明は、BORISアイソフォームポリペプチド、及び関連する化合物及び組成物、並びに、異常なBORIS発現に関連する疾患(例えば、癌)の検出及び治療のための、このようなポリペプチド、化合物及び組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
哺乳動物免疫系により認識される腫瘍関連抗原の同定は、癌の診断及び治療に有用である。種々の腫瘍関連抗原(癌細胞において発現されるが、精巣以外では正常組織で発現されない、癌/精巣抗原が挙げられる)が同定されてきた。しかしながら、腫瘍関連抗原を産生する哺乳動物に対して免疫原性であるものは、ごく少数しかない。
【0003】
BORIS(Brother of the Regulator of Imprinted Sites)は、腫瘍関連抗原であり、広い範囲のヒトの癌で活性化される。実際、BORIS遺伝子産物の異常な合成は、反復する20q13染色体増加を有するヒトの癌の主要な型の全てに相当する、300を超える原発性腫瘍及び癌細胞株において見出されている。BORIS活性化はまた、全ての標準NCI−60癌細胞株においても見出され、これらは米国国立癌研究所(National Cancer Institute(NCI))により維持されており、ヒトの癌の、ある程度完全な代表的セットであると考えられている。
【0004】
BORISはCTCFパラログでもあり、CTCFの11のジンクフィンガー全てを含み、トランスフォーメーションにつながる細胞増殖を促進することが示されている(非特許文献1及び特許文献1を参照のこと)。従って、BORISは、「CTCF様(CTCF−like)」又は「CTCFL」タンパク質とも呼ばれる。CCCTC結合因子(CTCF)により媒介されるゲノム中の適切なメチル化パターンの維持を妨害することによる、BORISが癌を引き起こすと考えられている1つの作用機序(非特許文献2を参照のこと)。BORIS遺伝子は、染色体20q13の癌関連増幅領域に位置すると考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第03/072799号パンフレット(PCT/US03/05186)
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Loukinovら、Proc.Natl.Acad.Sci(USA)99、6806−6811(2002)
【非特許文献2】Klenovaら、Seminars in Cancer Biology 12、399−414(2002)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
癌マーカー(例えば、前立腺特異的抗原(PSA)及び癌胎児性抗原(CEA))の異常な発現の検出は、当該分野で知られている。しかしながら、これらのアッセイはごく限られた数の癌しか検出せず、新規の癌又は再発性の癌の検出又は予後判定についての陽性的中率が限定的である。従って、当該分野において、その発現が過剰増殖疾患(例えば、癌)に関連し得る更なる抗原を同定すること、並びに、このような疾患状態の検出、診断、予後判定又は研究に資する、このような抗原の存在を検出する方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、異常なBORIS発現に関連する疾患(例えば、癌)の検出、診断、予後判定又は研究に有用な方法及び組成物を提供する。本発明のこれら及び他の利点並びに更なる発明的特徴は、本明細書中に提供された発明の説明から明らかになるであろう。
【0009】
(発明の要旨)
本発明は、哺乳動物における異常なBORIS発現を特徴とする疾患(癌が挙げられるが、これに限定されない)を検出する方法を提供し、当該方法は、疾患が存在しない場合にはBORISアイソフォームを発現しない哺乳動物の組織又は体液中の、1以上のBORISアイソフォームの発現について試験する工程を包含する。
【0010】
本発明は、哺乳動物における異常なBORIS発現を特徴とする疾患を検出する方法も提供し、当該方法は、疾患が存在しない場合にはBORISアイソフォームを発現しない哺乳動物の組織又は体液中の、1以上のBORISアイソフォームmRNA転写物の発現について試験する工程を包含する。
【0011】
本明細書中には、哺乳動物中の異常なBORIS発現に関連する疾患を治療又は予防する方法も提供される。一態様では、この方法は、低分子干渉RNA(siRNA)分子を、異常なBORIS発現に関連する疾患に罹患している哺乳動物に投与する工程を包含し、このsiRNA分子は、BORISアイソフォームmRNA転写物に相補的な、少なくとも10ヌクレオチドが連続する配列を含む。関連する態様では、この方法は、抗BORIS抗体を、異常なBORIS発現に関連する疾患に罹患している哺乳動物に投与する工程を包含し、この抗BORIS抗体は、アイソフォームポリペプチドに選択的に結合する。
【0012】
加えて本発明は、哺乳動物において免疫応答を誘導する方法を提供し、当該方法は、BORISアイソフォームを哺乳動物に投与する工程を包含する。
【0013】
本発明はさらに、配列番号25〜42からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む単離若しくは精製されたポリペプチド、配列番号1〜24からなる群より選択されるヌクレオチド配列を含む単離若しくは精製された核酸、及びこのようなポリペプチド若しくは核酸を含有する組成物を提供する。
【0014】
関連する態様では、本発明は、哺乳動物におけるBORIS発現の検出のためのキットを提供し、このキットは、(a)(i)配列番号25〜42からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むBORISポリペプチド、(ii)配列番号25〜42からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むBORISポリペプチドに対する自己抗体、又は(iii)配列番号1〜24からなる群より選択される核酸配列を含むBORISアイソフォームmRNA転写物、に結合する1以上のプローブを含むプローブセット、及び(b)当該プローブの検出を促進する試薬、を含む。
【0015】
哺乳動物中のBORIS発現の検出に有用なアレイもまた、本発明により提供され、当該アレイは、基材上に固定された1以上のプローブを含み、このプローブは、(i)配列番号25〜42からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むBORISアイソフォーム、(ii)配列番号25〜42からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むBORISアイソフォームに対する自己抗体、又は(iii)配列番号1〜24からなる群より選択されるヌクレオチド配列を含むBORISアイソフォームmRNA転写物、に結合する。
【0016】
本発明は、1種以上の異なる型の癌のBORIS発現プロファイルを含むデータベースをさらに提供し、このデータベースは、患者のBORIS発現プロファイルと、1種以上の異なる型の癌のBORIS発現プロファイルとの比較を容易にする。
【0017】
哺乳動物中のBORISに対する免疫応答を誘導する方法もまた、本発明により提供され、この方法は、哺乳動物に、配列番号25〜42からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むBORISアイソフォームを投与する工程を包含する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1A】図1Aは、ヒト精巣中のBORIS遺伝子により発現される選択的スプライスバリアントを示す図である。
【図1B】図1Bは、ヒト精巣中のBORIS遺伝子により発現される選択的スプライスバリアントを示す図である。
【図1C】図1Cは、ヒト精巣中のBORIS遺伝子により発現される選択的スプライスバリアントを示す図である。
【図1D】図1Dは、ヒト精巣中のBORIS遺伝子により発現される選択的スプライスバリアントを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(発明の詳細な説明)
Klenovaら、Seminars in Cancer Biology 12、399−414(2002)に開示されたBORISポリペプチドは、本明細書中で配列番号43として提供されたアミノ酸配列を含み、本明細書中に配列番号44として提供されたmRNA配列によりコードされる。しかしながら、このBORISポリペプチドは、BORIS遺伝子によりコードされるポリペプチドのファミリーの1つに過ぎない。BORIS及びBORISアイソフォームをコードするBORIS mRNAスプライスバリアント(17の異なるBORISアイソフォームポリペプチドをコードするBORISアイソフォームmRNA転写物の24の具体例を含む)が本明細書中に記載される。例示的なBORISアイソフォームmRNA転写物は、各々、配列番号1〜24の核酸配列を含み、上記17のBORISアイソフォームポリペプチドは、配列番号25〜42のヌクレオチド配列を含む。BORISアイソフォームmRNA転写物及びそれがコードするポリペプチドは、表1に記載される。特に、配列番号1、2及び3のヌクレオチド配列を含むBORISアイソフォームmRNA転写物は、以前に開示されたBORISポリペプチド(例えば、配列番号43)のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする。これらのmRNA転写物は同一のBORISポリペプチドをコードするが、このmRNA転写物自体は以前に開示されたBORIS mRNAの選択的スプライス(spice)バリアントであり、従って、異なるヌクレオチド配列を含む。他のBORISアイソフォームポリペプチドは、Klenovaら(前出)に以前に開示されたBORISポリペプチドとは異なるアミノ酸配列を含む。
【0020】
本発明を記載する目的のために、用語「BORIS」及び「BORISポリペプチド」は、配列番号43のアミノ酸配列を含むBORISポリペプチドをいうために用いるものとし、用語「BORIS mRNA」は、配列番号44のヌクレオチド配列を有するmRNA転写物をいうために用いるものとする。
【0021】
用語「BORISアイソフォーム」及び「BORISアイソフォームポリペプチド」は、本明細書中、BORIS遺伝子のスプライスバリアントmRNA転写物によりコードされたポリペプチドをいうために用いるものとし、当該ポリペプチドは、配列番号43とは異なるアミノ酸配列を有する。BORISアイソフォームポリペプチドの例としては、配列番号25〜42からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドが挙げられる。用語「BORISアイソフォームmRNA」は、BORIS遺伝子のmRNAスプライスバリアントをいうために用いるものとし、当該mRNAスプライスバリアントは、配列番号44とは異なるヌクレオチド配列を有する。BORISアイソフォームmRNA転写物の例としては、配列番号25〜42からなる群より選択されるアミノ酸配列をコードする核酸配列、又は配列番号1〜24からなる群より選択される核酸配列を含むmRNA分子が挙げられる。
【0022】
用語「BORIS遺伝子」は、本明細書中、BORISのゲノム配列をいうために用いるものとし、当該ゲノム配列は、BORISポリペプチド並びにBORIS mRNAスプライスバリアント(例えば、BORISアイソフォームmRNA転写物)及びBORISアイソフォームポリペプチドをコードする。
【0023】
本明細書中で用いられる場合、用語「単離された」は、核酸又はポリペプチド分子をその自然環境から取り出すことを意味する。用語「精製された」は、所定の核酸又はポリペプチド分子が、自然から取り出されたものであれ実験室条件下で合成及び/又は増幅されたものであれ、純度が増加していることをいい、ここで、「純度」は相対的な用語であり、「絶対純度」ではない。
【0024】
本明細書中で用いられる場合、用語「核酸」は、DNA又はRNAのポリマー(即ち、ポリヌクレオチド)を包含することが企図され、一本鎖であっても二本鎖であってもよく、非天然の又は変更されたヌクレオチドを含み得る。同様に、「ポリペプチド」は、任意の長さのアミノ酸の直鎖状配列(即ち、タンパク質一次構造)、並びにタンパク質の二次構造、三次構造及び四次構造を包含することが企図され、これらのいずれもが、非天然の又は変更されたアミノ酸を含み得る。
【0025】
本発明の一部の態様は、抗体の使用に関して記載される。抗体の使用は、種々の公知の形態(例えば、F(ab)2’断片、一本鎖抗体可変領域断片(ScFv)鎖等)のいずれかの抗体断片の使用により置き換えられ得ることが企図される。従って、簡潔にするために、本明細書中で用いられる場合、用語「抗体」は抗体及び抗体断片を包含することが企図される。用語「抗体」がいずれの箇所で用いられても、抗体断片が代わりに用いられ得ることが具体的に企図される。
【0026】
用語「選択的に結合する」は、本明細書中で用いられる場合、別のポリペプチド又は核酸と比較して、より大きな親和性で又は優先的に、標的分子(例えば、ポリペプチド又は核酸)に結合することを意味する。従って、例えば、プローブがそのような標的と、BORISアイソフォームmRNA転写物ではない核酸に対するよりも優先的に又はより大きな親和性で結合する場合、当該プローブは、標的BORISアイソフォームmRNA転写物と選択的に結合する。同様に、抗BORIS抗体は、抗BORIS抗体がこのような標的アイソフォームと、BORISアイソフォームではないポリペプチドに対するよりも優先的に又はより大きな親和性で結合する場合、BORISアイソフォームと選択的に結合する。選択的に結合するはまた、分子が1つのBORISアイソフォームポリペプチド又はmRNA転写物と、別のBORISアイソフォームポリペプチド又はmRNA転写物よりも、優先的に又はより大きな親和性で結合することを意味するために用いられ得る。
【0027】
本発明は、哺乳動物において異常な遺伝子発現を特徴とする疾患(例えば、異常なBORIS発現を伴う増殖過剰疾患(例えば、癌))を検出する方法を提供する。この点、「異常なBORIS発現」は、本明細書中により詳細に議論されているように、疾患が存在しない場合にはBORIS遺伝子を発現しない哺乳動物の組織又は体液中のBORISの発現を意味する。
【0028】
本発明の一態様によれば、この方法は、疾患が存在しない場合にはBORISアイソフォームを発現しない哺乳動物の組織又は体液中の1以上のBORISアイソフォームの発現について試験する工程を包含する。1以上のBORISアイソフォームは、例えば、配列番号25〜42からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み得る。本発明の関連の態様では、本方法は、疾患が存在しない場合にはBORISアイソフォームmRNAを発現しない哺乳動物の組織又は体液中の1以上のBORISアイソフォームmRNA転写物の発現について試験する工程を包含する。上記1以上のBORISアイソフォームmRNA転写物は、配列番号1〜24からなる群より選択されるヌクレオチド配列を含み得る。上に記載のように、哺乳動物のこのような組織又は液体中でのBORISアイソフォーム又はBORISアイソフォームmRNA転写物の発現は、その哺乳動物に疾患が存在することを示す。
【0029】
用語「試験すること」及び「検出すること」(及びこれらの置き換え)は、本明細書中で用いられる場合、ある状態の存在を調査又は決定することを意味する。従って、例えば、遺伝子若しくは遺伝子産物の発現「について試験すること」又は遺伝子若しくは遺伝子産物の発現を「検出すること」は、当該遺伝子が発現されているか否か又は当該遺伝子が存在するか否かを調査又は決定することを意味する。
【0030】
好ましくは、疾患を検出する方法は、1よりも多いBORISアイソフォームの発現について試験する工程を包含する。例えば、本方法は、2以上の、好ましくは5以上の、10以上の、15以上のBORISアイソフォームポリペプチド若しくはBORISアイソフォームmRNA転写物の発現について、又はこのようなBORISアイソフォームポリペプチド若しくはBORISアイソフォームmRNA転写物の全ての発現についてさえも試験する工程を包含し得る。この方法が、1つのBORISアイソフォームポリペプチド若しくはBORISアイソフォームmRNA転写物の検出を伴うにしろ、或いは1よりも多いBORISアイソフォームポリペプチド若しくはBORISアイソフォームmRNA転写物の検出を伴うにしろ、疾患を検出するこの方法は、配列番号43のアミノ酸配列を含むBORISポリペプチドの発現について又は配列番号44のヌクレオチド配列を含むmRNA転写物の発現について試験する工程をも包含し得る。
【0031】
本発明の方法は、異常なBORIS発現を特徴とするか又は異常なBORIS発現に関連する任意の疾患を検出(癌の検出が挙げられるが、これに限定されない)するために用いられ得る。上に言及したように、BORIS mRNAは、ほとんどの主要な形態の癌に相当する、数百の癌及び腫瘍細胞株において検出されている。従って、本発明の方法は、任意の型の癌を検出するために用いられ得る。このような癌としては、口腔及び咽頭の癌、消化器系(例えば、食道、胃、小腸、結腸、直腸、肛門、肝臓、胆嚢及び膵臓)の癌、呼吸器系の癌(例えば、喉頭、肺及び気管支、非小細胞肺癌を含む)、骨及び関節の癌(例えば、骨転移)、軟部組織の癌、皮膚の癌(例えば、黒色腫)、乳癌、生殖系(例えば、子宮頸部、子宮体、卵巣 外陰部、膣、前立腺、精巣及び陰茎)の癌、泌尿器系(例えば、膀胱、腎臓、腎盂及び尿管)の癌、眼及び眼窩の癌、脳及び神経系の癌(例えば、グリオーマ)、又は内分泌系(例えば、甲状腺)の癌が挙げられるが、これらに限定されない。この癌は、リンパ腫(例えば、ホジキン病及び非ホジキンリンパ腫)、多発性骨髄腫、又は白血病(例えば、急性リンパ球性白血病、慢性リンパ球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病等)でもあり得る。
【0032】
さらに、本明細書中に実証されているように、全ての癌が同一のBORISアイソフォームの発現に関連しているわけではない。従って、1以上の異なるBORISアイソフォームの発現について試験することにより、種々の型の癌を識別するため又は特定の型の癌を検出するために用いられ得るBORIS発現パターンを生成することが可能である。従って、異常なBORIS発現に関連する疾患を検出する方法は、好ましくは、上記哺乳動物のBORIS発現とコントロールとを比較する工程を包含し、この比較は、例えば、当該哺乳動物が罹患し得る疾患の型を分類するのに用いられ得る。任意の適切なコントロールが、この目的のために用いられ得る。典型的には、このコントロールは、特定の型の疾患又は癌に対応するBORIS発現パターン(例えば、特定の型の疾患又は癌に罹患していることがわかっている哺乳動物のBORIS発現パターン)により提供され得る。
【0033】
1以上のBORISアイソフォーム又はBORISアイソフォームmRNA転写物の発現について試験することは、任意の適切な技術を用いて遂行され得る。典型的には、疾患が存在しない場合にはBORIS遺伝子を発現しない(即ち、BORISポリペプチド又はその任意のアイソフォームを発現しない)哺乳動物の組織又は体液の試料が取得され、この試料が、BORISアイソフォーム又はBORISアイソフォームmRNA転写物の発現について試験される。BORIS遺伝子は、正常では精巣及び卵巣においてのみ発現される。従って、精巣組織試料又は卵巣組織試料以外の任意の組織又は体液の試料が用いられ得る。この試料は、固形の試料であり得るか、又はこの試料は液体(例えば体液の試料)であり得る。例えば、組織全体の切片が、免疫組織化学ベースの解析に用いられ得るか、又はホモジェナイズされて当該組織中に見出される要素が液状化され得る。この試料は、好ましくは液体である。適切な液体試料としては、血液、血清、血漿、リンパ液及び間質液が挙げられるが、これらに限定されない。
【0034】
1以上のBORISアイソフォームの発現について試験することは、例えば、1以上のBORISアイソフォームポリペプチドを直接的に検出すること、又はBORISアイソフォームポリペプチドをコードする1以上のmRNA転写物を検出することを含み得る。試料中のタンパク質レベルを検出する適切な方法としては、ウェスタンブロッティング、ラジオイムノアッセイ及び酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)が挙げられる。このような方法は、Nakamuraら、Handbook of Experimental Immunology、第4版、Wol.1、第27章、Blackwell Scientific Publ.、Oxford、1987に記載されている。試料中のタンパク質をイムノアッセイを用いて検出する場合、この試料は、典型的には、標的タンパク質(例えば、BORISアイソフォームポリペプチド)に特異的に結合する抗体又は抗体断片(例えば、F(ab)2’断片、一本鎖抗体可変領域断片(ScFv)鎖等)と接触させられる。従って、BORISアイソフォームポリペプチドは、例えば、哺乳動物の組織又は体液の試料とBORISアイソフォームに対する抗体又は抗体断片とを接触させること、及び当該抗体又は抗体断片と試料由来のBORISアイソフォームとの結合を検出することにより、検出され得る。イムノアッセイと組み合わせてBORISアイソフォームポリペプチドを検出するのに適切な抗体及び他のポリペプチドは市販されており、及び/又は慣用的な方法(例えば、本明細書の他の箇所に論じられた方法(例えば、Harlowら、Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Publishers,Cold Spring Harbor,NY,1988))により調製され得る。
【0035】
試料と抗体とをインキュベートすると形成される免疫複合体は、任意の適切な方法により、その後検出される。一般に、免疫複合体の検出は当該分野において周知であり、多くのアプローチの適用を介して達成され得る。これらの方法は、一般に、標識又はマーカー(例えば、当該分野において標準的に用いられる、放射性の、蛍光の、生物学的な又は酵素的なタグ又は標識のいずれか)の検出に基づく。このような標識の使用に関する米国特許としては、米国特許第3,817,837号、同第3,850,752号、同第3,939,350号、同第3,996,345号、同第4,277,437号、同第4,275,149号及び同第4,366,241号が挙げられる。
【0036】
例えば、免疫複合体を形成するのに用いられる抗体は、それ自体、検出可能な標識に結合され得、これにより、一次免疫複合体の存在又は量が決定されるのを可能にする。或いは、一次免疫複合体内の、結合した、最初に添加された成分は、一次抗体に対する結合親和性を有する二次結合リガンドにより検出され得る。これらの場合、二次結合リガンドは、それ自体、「二次」抗体と呼ばれ得る抗体であることがしばしばある。一次免疫複合体は、標識された二次結合リガンド又は抗体と、二次免疫複合体の形成を可能にするのに有効な条件下でかつ充分に長い期間、接触させられる。次いで、二次免疫複合体は、非特異的に結合した任意の標識二次抗体又はリガンドを取り除くために洗浄され、次いで、二次免疫複合体中の残留標識が検出される。
【0037】
他の方法としては、2ステップアプローチによる一次免疫複合体の検出が挙げられる。一次抗体に対して結合親和性を有する二次結合リガンド(例えば抗体)が、上記のように、二次免疫複合体を形成するために用いられ得る。洗浄後、二次免疫複合体は、二次抗体に対して結合親和性を有する三次結合リガンド又は抗体と、免疫複合体(三次免疫複合体)の形成を可能にするのに有効な条件下でかつ充分に長い期間、再度接触させられ得る。三次リガンド又は抗体は、検出可能な標識に結合され、こうして形成された三次免疫複合体の検出を可能にする。他の多くのアッセイが企図される。しかしながら、本発明は、どの方法が用いられるかに関して限定されない。
【0038】
同様に、BORISアイソフォームをコードするmRNA転写物は、任意の適切な技術により検出され得る。典型的には、上記哺乳動物の組織又は体液の試料(例えば、このような試料のRNA物質)が、BORISアイソフォームをコードするmRNA転写物に結合する核酸プローブと接触され、核酸プローブと試料由来のBORISアイソフォームとの結合が検出される。mRNAを検出又は測定する適切な方法としては、例えば、ノーザンブロッティング、逆転写PCR(RT−PCR)及びリアルタイムRT−PCRが挙げられる。このような方法は、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第2版、Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,N.Y.1989に記載されている。これらの方法のうち、典型的にはリアルタイムRT−PCRが好ましい。リアルタイムRT−PCR(Bustin,J.Mol.Endocrinology 25:169−193(2000)に記載)では、PCRが、単位複製配列にハイブリダイズする、標識(例えば、蛍光)オリゴヌクレオチドプローブの存在下で実行される。このプローブは、例えば、レポーター蛍光色素及びクエンチャー蛍光色素で二重標識され得る。PCRの間、プローブが単位複製配列の相補的配列にアニールすると、5’ヌクレアーゼ活性を有するTaqポリメラーゼが、クエンチャー蛍光色素がレポーター蛍光色素から離れるようにプローブを切断し、これにより、レポーター蛍光色素が蛍光を放出するようになる。単位複製配列のレベルに正比例する、得られた発光の増加は、分光光度計によりモニタリングされる。特定のレベルの蛍光が分光光度計により検出される増幅のサイクルは、閾値サイクル、CTと呼ばれる。この値は、単位複製配列のレベルを比較するために用いられる。バイオマーカーのmRNAレベルを検出するのに適切なプローブは市販されており、及び/又は慣用的な方法(例えば、本明細書の他の箇所に論じられた方法)により調製され得る。哺乳動物の組織及び体液の試料中のポリペプチド及びmRNA転写物を検出するこれら及び他の方法の具体的なプロトコールは、当該分野において周知である(例えば、前出のSambrookらを参照のこと)。
【0039】
或いは、BORISアイソフォームの発現は、上記哺乳動物中のBORISアイソフォームに対する自己抗体の存在を検出することにより、間接的に試験され得る。特定の理論に縛られることは望まないが、BORISアイソフォームが正常では見出されない組織及び体液(例えば、精巣又は卵巣以外)中でのBORISアイソフォームの異常な発現が、罹患した哺乳動物から得られた試料(例えば、組織、血清又は血流)中で検出され得るBORISアイソフォームに対する抗体を、当該哺乳動物の免疫系に産生させると考えられている。このような疾患がないとき、BORISアイソフォームは、罹患していない哺乳動物においてそれらが正常に見出される組織及び器官に限定され、この哺乳動物の免疫系は、BORISアイソフォームに対する抗体を産生しない。従って、罹患していない哺乳動物(例えば、異常なBORIS発現を特徴とする疾患のない哺乳動物)から採取した試料は、抗BORISアイソフォーム抗体を含有しないであろう。従って、抗BORISアイソフォーム抗体が哺乳動物の試料中に存在すること又は存在しないことを検出することにより、本発明の方法は、その哺乳動物が、異常なBORIS発現を特徴とする疾患(例えば癌)を有するか否かについて決定することを可能にする。
【0040】
試料中の抗BORIS自己抗体を検出する任意の適切な方法が用いられ得る。BORISアイソフォームに対する自己抗体は、例えば、哺乳動物の組織若しくは体液の試料と、1以上のBORISアイソフォーム若しくはその免疫原性部分(例えば、配列番号25〜42のいずれかのアミノ酸配列の免疫原性部分を含む、1以上の単離若しくは精製されたポリペプチド)とを接触させることにより、検出され得る。この試料は、当該分野で公知の任意の適切な方法を用いて、BORISポリペプチドと接触され得る。好ましくは、試料は、インビトロ又はエキソビボで、BORISポリペプチドと接触される。試料中の抗体を検出するためのインビトロ及びエキソビボの方法は当該分野において周知であり、この方法としては、例えば、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、アフィニティークロマトグラフィー及びラジオイムノアッセイ(RIA)が挙げられる。
【0041】
BORISアイソフォームの「免疫原性」部分又は「免疫反応性」部分は、哺乳動物においてインビボで免疫応答を生じ得るか、抗BORIS抗体又は自己抗体にインビボ又はインビトロで結合し得るか、又はBORISアイソフォームの1以上のエピトープを含み得る、全長BORISアイソフォーム(例えば、配列番号25〜42)の任意の部分を意味する。本明細書中で用いられる場合、用語「部分」は、用語「断片」と同義であり、これらの用語は両方とも、約5以上のアミノ酸(例えば、約10以上、約15以上、約20以上、約25以上、又は約30以上のアミノ酸でさえも)を含むポリペプチドの連続部分をいうために用いられる。当然、全長BORISアイソフォームは免疫原性部分を提供し得る。しかしながら、BORISアイソフォームのより短い部分を用いることがより簡便であり得る。BORISアイソフォームの任意の所定の部分が免疫原性であるか否かは、本明細書中に提供される開示を考慮して、慣用的な技術を用いて決定され得る。例えば、BORISアイソフォームに対する抗BORIS抗体は、BORISアイソフォーム又はその部分を哺乳動物に導入し、その後、慣用的な技術を用いて哺乳動物から抗体を回収することにより、当該哺乳動物から得られ得る。BORISアイソフォームの所定の「試験」部分は抗BORIS抗体と接触され得、BORISアイソフォームの部分に対する当該抗体の結合親和性が測定され、抗BORIS抗体がBORISアイソフォームの所定の「試験」部分に結合するか否かが決定され得る。抗体がBORISアイソフォームの試験部分に結合する場合、当該BORISアイソフォームの試験部分は免疫原性であるとみなされる。BORISアイソフォームの所定の部分が免疫原性であるか否かを決定する他の方法が、利用可能である。
【0042】
BORISアイソフォームの適切な免疫原性部分としては、アミノ末端からジンクフィンガードメインまでに及ぶ領域として定義されるBORISアイソフォームのアミノ末端部分(「N末端ドメイン」)又はその少なくとも一部の、約100以上のアミノ酸(例えば、200以上、250以上、300以上、400以上若しくは500以上のアミノ酸)を含む部分が挙げられる。BORISアイソフォームポリペプチドの別の適切な部分としては、ジンクフィンガードメインの後に始まりBORISのカルボキシル末端で終わる領域として定義されるカルボキシル末端部分(「C末端ドメイン」)又はその少なくとも一部の、約75以上のアミノ酸(例えば、約100以上、約200以上、約300以上若しくは約400以上のアミノ酸)を含む部分が挙げられる。
【0043】
BORISアイソフォームの免疫原性部分は、ネイティブのBORISアイソフォームのアミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列を含む、より大きなポリペプチド構築物の一部であり得る。例えば、BORISアイソフォームの免疫原性部分は、例えば、非ネイティブのアミノ酸配列により一緒に連結された、1以上の異なるBORISアイソフォームの1以上の異なる免疫原性部分を含むポリペプチド構築物の一部であり得る。このようなポリペプチド構築物は、例えば、本明細書中に記載の、1以上の異なるBORISアイソフォームのN末端ドメイン及びC末端ドメインの各々の、少なくとも一部分を含み得る。より好ましくは、BORISポリペプチド構築物は、1以上のBORISアイソフォームのN末端ドメイン全体及びC末端ドメイン全体を含む。BORISポリペプチド構築物が、BORISアイソフォームのいずれかのジンクフィンガードメインを除外することが更に好ましい。
【0044】
その部分又は断片にBORISアイソフォームエピトープが存在する場合、BORISアイソフォームのさらに小さな部分が、免疫原性部分を提供し得る。「エピトープ」とは、抗体又は抗原レセプターにより認識される、抗原上の配列を意味する。エピトープは、当該分野において、「抗原決定基」とも呼ばれる。抗BORIS抗体が結合し得る限り、BORISアイソフォームの免疫原性部分は、長さ約660、200、150、100、60、50、30、20、15又は12アミノ酸残基未満であり得る。BORISアイソフォームの免疫原性部分は、好ましくは、少なくとも約10、11又は12アミノ酸を含む。しかしながら、11アミノ酸より少ないアミノ酸(例えば、約4、6、8又は10以上のアミノ酸)しか含まないBORISアイソフォームの免疫原性部分もまた、本発明の範囲内である。当然、好ましいアミノ酸数は、上に記載の好ましい境界値のいずれかに入る範囲(例えば、10〜200アミノ酸、10〜100アミノ酸、10〜50アミノ酸、10〜20アミノ酸など)によっても表され得る。
【0045】
BORISアイソフォームの免疫原性部分はまた、BORISアイソフォームのアミノ酸配列のバリアントにより提供され得る。本明細書中で用いられる場合、用語「バリアント」は、特定のアミノ酸又はヌクレオチド配列が変更されているが、ネイティブ配列の必要とされる機能を保持している配列をいうために用いられる。BORISアイソフォームの免疫原性部分に関して、BORISアイソフォームのバリアントは、BORISアイソフォームに対する抗体に結合する機能を保持する。本明細書中に提供される情報を用いて、BORISアイソフォームバリアントが生成され得、抗BORIS抗体又はその機能的断片(例えば、Fab又はF’(ab))と結合する能力について特徴付けられ得る。例えば、BORISアイソフォームバリアントは、例えば、本明細書中に提供されたBORISアイソフォームをコードする核酸配列の部位特異的変異誘発またはランダム変異誘発を用いて生成され得る。このようにして生成されたBORISバリアントの結合特性は、例えば、BORISアイソフォームに対する抗体の、当該バリアントに対する結合親和性を測定することにより、決定され得る。このような抗体は、例えば、ネイティブのBORISアイソフォームを接種した哺乳動物の血清から、又は癌を有する哺乳動物の血清から、得られ得る。
【0046】
BORISアイソフォームのバリアントは、望ましくは、ネイティブのBORISアイソフォームと、アミノ酸配列同一性を有する1以上の領域を共有する。この点について、このバリアントは、好ましくは、ネイティブのBORISアイソフォームのアミノ酸配列に対して、少なくとも約50%同一(例えば、少なくとも約60%同一、少なくとも約70%同一、少なくとも約80%同一又は少なくとも約90%同一)のアミノ酸配列を含む。より好ましくは、このバリアントは、ネイティブのBORISアイソフォームのアミノ酸配列に対して、少なくとも約75%同一(例えば、少なくとも約85%同一若しくは少なくとも約95%同一)のアミノ酸配列を含む。最も好ましくは、このポリペプチドは、ネイティブのBORISアイソフォームのアミノ酸配列に対して、少なくとも約90%同一(例えば、少なくとも約95%同一、少なくとも約97%同一若しくは少なくとも約99%同一)のアミノ酸配列を含む。本明細書中で用いられる場合、配列同一性は、周知のBLASTアルゴリズム(例えば、BLASTp、BLAST 2.1、BL2SEQ、及びそれらの後のバージョン)を用いて決定される通りである。抗BORIS抗体に結合し得るBORISアイソフォームのバリアントは、好ましくは、8アミノ酸残基のウインドウにわたり、少なくとも5、6又は7アミノ酸残基がネイティブBORISアイソフォームのアミノ酸配列と同一である。
【0047】
BORISアイソフォームの任意の免疫原性部分が、単独で、又は同一又は異なるBORISアイソフォームの他の免疫原性部分と組み合せて、用いられ得る。BORISアイソフォームの免疫原性部分は、単独で用いられてもBORISアイソフォームの他の免疫原性部分と組み合わせて用いられても、より大きなポリペプチドの一部になり得る(例えば、別の(即ち「非BORIS」)タンパク質に挿入される(又は別のやり方で結合される))。特定のいかなる理論に束縛されることも意図しないが、異なる個体は、その抗原提示細胞(例えば、マクロファージ)上に発現するMHC分子に基づいた、BORISアイソフォームに対する免疫応答を有するであろうと考えられる。従って、免疫原性であるBORISアイソフォームの部分は、個体により変動し得る。更に、BORISアイソフォームのN末端ドメイン及びC末端ドメインの両方に対する自己反応性抗体応答が、一部の癌患者において検出されてきた。従って、1よりも多くの、BORISアイソフォームの免疫原性部分(例えば、1よりも多くのBORISアイソフォームエピトープ)の使用が好ましい。1よりも多くの免疫原性部分が用いられる場合、例えば、同時に用いられる数個の非連続ポリペプチド(例えば、各々がBORISアイソフォームの異なる免疫原性部分を含む2以上のポリペプチド)により、又は例えば非ネイティブのリンカー配列により連結されたBORISの2以上の異なる免疫原性部分を含む単一のポリペプチドにより、異なる免疫原性部分が提供され得る。
【0048】
本発明の好ましい実施形態では、1以上のBORISアイソフォームの2以上の免疫原性部分が、可撓性リンカーアミノ酸配列により連結される。このような構築物もまた、BORISポリペプチドの免疫原性部分を含み得る。可撓性リンカーは、当該分野において、例えば融合タンパク質若しくはキメラタンパク質の構築において、別個の2つのポリペプチドを連結するために用いられる。従って、例えば、1以上のBORISアイソフォームのN末端ドメイン部分及びC末端ドメイン部分は、可撓性リンカー配列を介して連結され、単一のポリペプチド分子を形成し得る。可撓性リンカーは、ポリペプチドドメインを連結して分離するのに用いられ得る適切な任意のアミノ酸配列であり得る。この点について、可撓性リンカーは、好ましくは、約5以上のアミノ酸(例えば、約6以上、7以上若しくは9以上のアミノ酸)、より好ましくは約10以上のアミノ酸(例えば、約11以上、12以上若しくは14以上のアミノ酸)、最も好ましくは約15以上のアミノ酸(例えば、約17以上、20以上若しくは25以上のアミノ酸)を含む。リンカー配列、及び可撓性リンカーを用いてポリペプチドドメインを連結するための方法は、当該分野で知られている(例えば、Imanishiら,Biochem.Biophys.Res.Commun.,333(1),167−73(2005);Linら,Eur.Cytokine Netw.,15(3),240−6(2004)を参照のこと)。
【0049】
BORISアイソフォーム又はその免疫原性部分は、他の生体分子(例えば、タンパク質、ポリペプチド、脂質、炭水化物、プレニル及びアシル部分、並びに核酸)に連結され得る。例えば、BORISアイソフォーム又はその免疫原性部分は、シグナル発生部分(検出可能な標識としても知られる)に結合され得る。シグナル発生部分の正体及び使用は、当該分野で周知である。シグナル発生部分は、通常は試料の操作の後、試料中の分析物又は試薬の存在を示すことが可能な分子である。このような操作はしばしば、試料と適切な検出試薬とを、2つの部分が一緒に結合するのを可能にする条件下でインキュベートする工程、次いで存在する場合には、洗浄、濾過又は他の適切な技術を介して、試料から標識部分を全て取り除く工程を包含する。シグナル発生部分を用いた他の研究方法は、当該分野で周知である。適切なシグナル発生部分としては、蛍光分子(例えば、緑色蛍光タンパク質)、蛍光クエンチャー、BORISを認識しない抗体に対するエピトープ及びハプテン(例えば、周知のFLAGエピトープ)、酵素(例えば、発色性又は発光性(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ若しくはβ−ガラクトシダーゼ))、増幅され得るか又はプローブに特異的にハイブリダイズされ得る核酸、ビオチン、アビジン若しくはストレプトアビジン、レクチン及びコロイドが挙げられるが、これらに限定されない。タンパク質を検出可能な標識及び固体支持体と連結するための方法は、当該分野において周知である。
【0050】
本発明の方法に従って検出される抗体又は自己抗体は、好ましくは、CCCTC結合因子(CTCF)に対してよりも、BORIS若しくはBORISアイソフォームに対して、より大きな親和性をもって結合するか、又は、この抗体又は自己抗体はCTCFと全く結合しない。従って、本発明の方法は、好ましくは、CTCFに対する結合親和性よりもBORIS又はBORISアイソフォームに対する結合親和性の方が大きな、抗BORISアイソフォーム抗体又は自己抗体を検出する工程を包含する。これは、用いられたBORISの部分がBORISのジンクフィンガードメインを含む場合に特に有利である。より好ましくは、本発明の方法により検出される抗体とBORISとの間の、標準的な条件下での結合の解離定数(K)は、同一抗体とCTCFとの間の結合のKの、多くても10分の1であり、より好ましくは多くても100分の1であり、さらに好ましくは多くても1000分の1である。一部の実施形態では、患者の血清中の抗体とCTCFとの結合は、ネガティブコントロールとして用いられ得る。特定のBORISアイソフォームに対する抗体又は自己抗体が望まれる場合、この方法は、好ましくは、所望の標的BORISアイソフォームに対する結合親和性が他のBORISアイソフォームに対するものよりも大きな、そのような抗体又は自己抗体を検出する工程を包含する。
【0051】
好ましい実施形態では、癌を検出する方法又は抗BORIS抗体を検出する方法は、BORISに対して反応性の、患者の体内に存在するか又は患者の体に由来する試料中に存在する抗体のクラス及び/又はサブクラスを決定する工程を包含する。当業者は、5つの主要なヒト免疫グロブリンクラス(即ちアイソタイプ)が、免疫グロブリンM(即ちIgM)、IgD、IgG、IgA及びIgEであり、これらが典型的には抗体重鎖の定常領域の構造により規定されることを理解するであろう。ヒト抗体分子の軽鎖は、典型的には、当該分野において、ラムダ(λ)鎖又はカッパ(κ)鎖のいずれかとして分類される。IgG抗体は、さらに4つのサブタイプ(即ち、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4)に細分類され得るのに対し、IgA抗体は、典型的には、2つのサブタイプ(即ち、IgA1及びIgA2)に細分類される。単離又は精製した抗体のクラス及びサブクラスを決定する方法は当該分野において周知である。例えば、BORIS反応性抗体は、免疫クロマトグラフィーにより、ヒトの血清から単離され得る。マイクロタイタープレートのウェルが、一晩4℃で、10μg/mlの抗ヒト免疫グロブリンで覆われ得る。5%BSAでブロッキングした後、プレートを、周囲温度で2時間、10μg/mlのモノクローナル抗体又は精製アイソタイプコントロールと反応させる。次いで、このウェルを、ヒトIgG1特異的、IgG2特異的、IgG3特異的若しくはIgG4特異的又はヒトIgM特異的なアルカリホスファターゼコンジュゲート化プローブと反応させ得る。洗浄後、このプレートを、発光性又は発色性の基質で発光/発色させ、発光又は発色について解析し得る。
【0052】
疾患を検出する方法及び異常なBORIS発現を検出する方法は、異なる方法で用いられ得る。例えば、この方法は、診断又はスクリーニングの目的のために、疾患状態の存在を単に確認するために用いられ得る。更に、この方法は、例えば、経時的に種々の試料由来の抗BORIS抗体のレベル(若しくはBORIS発現レベル)を比較することにより、例えば、疾患状態の状況(例えば、進行又は後退)をモニタリングするために用いられ得る。このような使用は、特定の治療レジメンに対する患者の応答をモニタリングするのに有用である。
【0053】
関連の態様では、本発明はまた、疾患の検出以外の目的で、異常なBORIS発現を検出する方法を提供する。異常なBORIS発現の検出は、任意の適切な目的(例えば、異常な遺伝子発現(特に、異常なBORIS発現)を特徴とする疾患(増殖過剰疾患(例えば、癌)が挙げられるが、これらに限定されない)の、予後判定、モニタリング又は研究)に用いられ得る。例えば、異常なBORIS発現を検出する方法は、新規な又は既存の薬物又は治療法の開発と組み合わせた、又は確立された治療法レジメンの一部としての、薬物及び他の治療法の、種々の疾患(特に、本明細書中に記載される種々の癌)に対する効果をモニタリングするために用いられ得る。また、異常なBORIS発現を検出する方法は、BORIS発現プロファイルを生成するのに用いられ得、このBORIS発現プロファイルは、次に、疾患を検出、診断、予後判定、モニタリング又は研究するための、スクリーニング方法に従って用いられ得る。異常なBORIS発現を検出する方法は、疾患が存在しない場合にはBORISアイソフォームを発現しない哺乳動物の組織中の、配列番号25〜42からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む1以上のBORISアイソフォームの発現について試験する工程、又は配列番号1〜24からなる群より選択されるヌクレオチド配列を含む1以上のBORISアイソフォームmRNA転写物の発現について試験する工程を包含し得る。異常なBORIS発現を検出する方法の他の全ての態様は、異常なBORIS発現に関連する疾患を検出する方法に関して記載した通りである。
【0054】
本明細書に記載の方法と共に用いられる哺乳動物は、任意の適切な哺乳動物(例えば、イヌ、ネコ、ウシ、ヤギ、ブタ、マウス、ラット、モルモット、ウサギ、スナネズミ、サル及びハムスター)であり得る。哺乳動物は、好ましくはヒトである。
【0055】
(単離又は精製されたポリペプチド、核酸、抗体、細胞及び組成物)
本発明は、配列番号25〜42からなる群より選択されるアミノ酸配列又はその免疫原性部分を含むか、本質的にこれらからなるか、又はこれらからなる、単離又は精製されたポリペプチドを提供する。BORISアイソフォームの免疫原性部分は、疾患を検出する方法又は抗BORIS自己抗体を検出する方法と組み合わせて有用であると本明細書中に記載した任意の免疫原性部分を含み得るか、本質的にこれらからなり得るか、又はこれらからなり得る。用語「本質的に・・・からなる」は、本明細書中では、ポリペプチドが他の生物学的に活性なアミノ酸配列をいずれも含み得ないが、生物学的に活性でない他の配列又は他の成分(例えば、調節若しくはシグナル配列、レポーター構築物、リンカー分子、標的化若しくは送達成分など)を含み得ることを意味するのに用いられる。
【0056】
所望の場合、単離又は精製されたポリペプチドは、例えば、グリコシル化、アミド化、カルボキシル化若しくはリン酸化により、又は、本発明のポリペプチド分子の酸付加塩、アミド、エステル(特に、C末端エステル)及びN−アシル誘導体の作出により、修飾され得る。ポリペプチド分子はまた、二量体化又は多量体化され得る。さらに、ポリペプチド分子は、当該分野で公知の方法に従って他の部分と共有結合複合体又は非共有結合複合体を形成することにより修飾され、ポリペプチド誘導体が作出され得る。共有結合された複合体は、化学部分を、ポリペプチドを構成するアミノ酸の側鎖上の官能基に、又はN末端若しくはC末端で連結することにより、調製され得る。
【0057】
単離又は精製されたポリペプチドは、任意の適切な方法を用いて製造され得る。この点、BORISアイソフォーム又はその免疫原性部分をコードする核酸配列は、例えば、本明細書中に記載の核酸配列を用いて合成により生成され、また、適切な宿主細胞中で発現され、これにより、BORISアイソフォーム又はその免疫原性部分の産生を生じ得る。或いは、BORISアイソフォーム及びその免疫原性部分は、例えば、本明細書中に開示されたアミノ酸配列及び当該分野で知られたタンパク質合成法を用いて合成され得る。或いは、BORISアイソフォームは、哺乳動物から単離され得、所望の場合には、その免疫原性部分は、全長BORISアイソフォーム内で切断するプロテアーゼを用いて生成され得る。上に議論したように、BORISアイソフォーム又はその免疫原性部分は、シグナル発生部分又は検出可能な標識で標識されるか、又は、固体支持体に連結され得る。
【0058】
本発明はまた、配列番号25〜42からなる群より選択されるアミノ酸配列又はその免疫原性部分をコードする核酸配列を含むか、本質的にこれらからなるか、又はこれらからなる、単離又は精製された核酸、並びに、配列番号1〜24からなる群より選択されるヌクレオチドを含むか、本質的にこれらからなるか、又はこれらからなる、単離又は精製された核酸を提供する。用語「本質的に・・・からなる」は、本明細書中、核酸が、生物学的に活性なタンパク質をコードする他のいかなる配列をも含み得ないが、他の核酸配列又は他の成分(例えば、調節配列、レポーター構築物、リンカー分子など)を含み得ることを意味するのに用いられる。
【0059】
本発明はまた、上に記載の単離又は精製された核酸分子を含むベクターを提供する。上に記載の核酸分子は、任意の適切なベクター中にクローン化され得、任意の適切な宿主を形質転換又はトランスフェクトするために用いられ得る。それらを構築するためのベクター及び方法の選択は、当業者に一般に知られており、一般的な技術参考文献に記載されている(一般に、「Recombinant DNA Part D」,Methods in Enzymology,第153巻,Wu及びGrossman編、Academic Press(1987)を参照のこと)。
【0060】
適切なベクターとしては、伝播(propagation)及び増殖(expansion)用に、又は発現用に、或いはこれら両方用に、設計されたものが挙げられる。適切なベクターの例としては、プラスミド、ファージミド、コスミド、ウイルス、及びウイルス供給源又は細菌供給源由来の他のビヒクルが挙げられる。好ましくは、上記ベクターはウイルスベクターであり、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルス、SV40型ウイルス、ポリオーマウイルス、エプスタイン・バーウイルス、パピローマウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス及びポリオウイルスからなる群より選択される。最も好ましくは、上記ベクターはアデノウイルスベクターである。
【0061】
アデノウイルスベクターが本発明に関して用いられる場合、アデノウイルスベクターは、アデノウイルスの任意の血清型に由来し得る。アデノウイルスの供給源として用いられ得るアデノウイルスストックは、アデノウイルス血清型1〜51(これらは、American Type Culture Collection(ATCC,Manassas,VA)から現在入手可能である)から、又は他の任意の供給源から入手可能なアデノウイルスの他の任意の血清型から、増幅され得る。例えば、アデノウイルスは、A亜群(例えば、血清型12、18及び31)、B亜群(例えば、血清型3、7、11、14、16、21、34及び35)、C亜群(例えば、血清型1、2、5及び6)、D亜群(例えば、血清型8、9、10、13、15、17、19、20、22〜30、32、33、36〜39及び42〜47)、E亜群(血清型4)、F亜群(血清型40及び41)又は任意の他のアデノウイルス血清型のものであり得る。しかしながら、好ましくは、アデノウイルスは、血清型2、5又は9のものである。しかしながら、非C群アデノウイルスは、1以上の非ネイティブ核酸配列を所望の組織に送達するためのアデノウイルスベクターを調製するために用いられ得る。非C群アデノウイルスベクターの構築に用いられる好ましいアデノウイルスとしては、Ad12(A群)、Ad7(B群)、Ad30及びAd36(D群)、Ad4(E群)並びにAd41(F群)が挙げられる。非C群アデノウイルスベクター、非C群アデノウイルスベクターを生成する方法及び非C群アデノウイルスベクターを用いる方法は、例えば、米国特許第5,801,030号;同第5,837,511号;及び同第5,849,561号並びに国際特許出願WO97/12986及びWO98/53087に開示されている。
【0062】
好ましい実施形態では、本発明のアデノウイルスベクターは、1以上の、複製に必須の遺伝子機能が欠損している。複製に必須の、アデノウイルスゲノム内に含まれる領域としては、E1a、E1b、E2、E4及びL1〜L5が挙げられる。「欠損」は、その領域によりコードされる遺伝子産物が正常レベルと比較して減少した量で産生されるようにする、少なくとも1つの上記領域内に含まれる破壊を意味する。適切な欠損としては、点変異、置換、欠失、挿入及び逆位が挙げられる。典型的には、アデノウイルスベクターは、E1a、E1b、E3及び/又はE4領域の1以上の複製に必須の遺伝子機能が欠損している。
【0063】
マーカータンパク質(例えば、緑色蛍光タンパク質又はルシフェラーゼ)をコードする核酸配列もまた、ベクター中に存在し得る。このようなマーカータンパク質は、ベクター構築及びベクター移入の決定に有用である。マーカータンパク質は、所望に応じて、ベクター組成物の注入を効率的に間隔をあけて広汎な処理領域を提供するために、注入点を決定するために用いられ得る。或いは、ベクター構築プロトコールにおいても有用である、選択因子をコードする核酸配列が、アデノウイルスベクターの一部であり得る。
【0064】
ネガティブ選択遺伝子が、上に記載のベクターのいずれかに組み込まれ得る。好ましい実施形態は、ウイルスベクター中でウイルスプロモーターに作動可能に連結されたHSV tk遺伝子カセットである(Zjilstraら,Nature,342:435(1989);Mansourら,Nature,336:348(1988);Johnsonら,Science,245:1234(1989):Adairら,PNAS,86:4574(1989);Capecchi,M.,Science,244:1288(1989)(これらはその全体が本明細書中に援用される))。このtk発現カセット(又は他のネガティブ選択発現カセット)は、ウイルスゲノム中に、例えば、非必須ウイルス遺伝子の実質的欠失の代わりとして挿入される。他のネガティブ選択遺伝子は、当業者に明らかであろう。
【0065】
本発明のベクターは、上に記載のような単離又は精製された核酸分子に作動可能に連結されたネイティブ又は非ネイティブの調節配列を含み得る。1よりも多くのヌクレオチド配列が核酸分子に含まれる場合、各配列は、その独自の調節配列に作動可能に連結され得る。「調節配列」は、典型的には、作動可能に連結された核酸の効率的な転写及び翻訳を促進する、プロモーター配列又はプロモーター−エンハンサー組合せである。調節配列は、例えば、哺乳動物プロモーター又はウイルスプロモーター(例えば、構成的プロモーター又は誘導性プロモーター)であり得る。真核生物細胞において構成的に機能するウイルスプロモーターの例としては、例えば、サルウイルス、パピローマウイルス、アデノウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、ラウス肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス、モロニー白血病ウイルス及び他のレトロウイルス、並びに単純ヘルペスウイルス由来のプロモーターが挙げられる。他の構成的なプロモーターが当業者に知られている。本発明の調節配列として有用なプロモーターには、誘導性プロモーターも含まれる。誘導性プロモーターは、誘導因子の存在下で発現される。例えば、メタロチオネインプロモーターは、特定の金属イオンの存在下で誘導されて、転写及び翻訳を促進する。他の誘導性プロモーターは当業者に知られており、所望の場合に、本発明に関して用いられ得る。プロモーター(例えば、強、弱、誘導性、組織特異的及び発生特異的)の選択は、当該分野の技術範囲内である。同様に、上に記載の核酸分子とプロモーターとの組合せもまた、当該分野の技術範囲内である。
【0066】
用語「作動可能に連結された」は、本明細書中で用いられる場合、核酸分子と調節配列とが、ヌクレオチドコード配列の発現を調節配列の影響下又は制御下に置くような方法で共有結合により連結される場合と定義され得る。従って、調節配列が核酸分子の転写をもたらすことが可能であり、その結果得られた転写物が所望のタンパク質又はポリペプチドに翻訳される場合、その調節配列は核酸分子に作動可能に連結されている。
【0067】
本発明は、上に記載の単離又は精製された核酸分子またはベクターを含む細胞(すなわち宿主細胞)、好ましくは上記BORISアイソフォーム若しくはその免疫原性部分を発現する細胞を、さらに提供する。宿主細胞の例としては、原核生物宿主細胞又は真核生物宿主細胞が挙げられるが、これらに限定されない。原核生物細胞としては、E.coli、B.subtilis、P.aerugenosa、S.cerevisiae及びN.crassa由来のものが挙げられる。好ましくは、宿主細胞は哺乳動物(例えばヒト)由来である。
【0068】
BORISアイソフォーム又はその免疫原性部分に対する抗体(ポリクローナル若しくはモノクローナル)、並びにBORISアイソフォーム又はその免疫原性部分に対するモノクローナル抗体を産生する細胞株もまた、本発明の一部であることが企図される。このような「ハイブリドーマ細胞株」は、望ましくは、BORISアイソフォームに対して特異的なモノクローナル抗体を産生する。ポリクローナル抗体及びハイブリドーマを作製する方法は、当該分野において知られている(例えば、Roitt I.,Immunology,第4版,Mosby,NY(1996)を参照のこと)。典型的には、上記抗体は、BORISアイソフォームのある領域又はBORISアイソフォームの免疫原性部分のある領域に対して特異的である。典型的には、この領域は、BORISアイソフォームのN末端部分又はC末端部分であろう。或いは、上記抗体は、BORISアイソフォームのジンクフィンガー領域に対して特異的であり得る。このような抗体は、類似のジンクフィンガー領域を含む他のタンパク質(例えば、CTCF)と比較して、BORISアイソフォームのジンクフィンガー領域に対してより大きな親和性を有し、従って、その2つの分子を識別できるだろう。本発明の抗体は、本明細書中に記載されるように、診断適用及び治療適用の両方で用いられ得る。
【0069】
本発明は更に、本明細書中に記載される単離又は精製されたポリペプチド、核酸又は抗体、及び担体(好ましくは、薬学的に受容可能な担体)を含有する組成物を提供する。語句「薬学的に受容可能な担体」とは、本明細書中で用いられる場合、活性成分の生物学的活性の有効性を妨害せず、かつ、宿主又は患者に対して毒性でない担体をいう。本発明の薬学的組成物は、種々の形態であり得る。これらとしては、例えば、固形、半固形及び液状の剤形(例えば、錠剤、丸剤、散剤、液体の液剤若しくは懸濁剤、リポソーム、注射可能及び注入可能な液剤)が挙げられる。吸入可能な製剤(例えば、エアロゾル剤)もまた含まれる。好ましい処方物は、経口、鼻腔内及び非経口の適用に指向されたものであるが、好ましい形態は、特定の診断適用又は治療適用に依存することが理解されるであろう。薬学的組成物の処方及び調製のための方法は、当該分野で周知であり、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Company,Philadelphia,Pa.,第17版(1985)、The Merck Index,第11版,(Merck&Co.1989)及びLanger,Science,249,1527−1533(1990)に記載されている。
【0070】
上記組成物は、1よりも多くの活性成分を含有し得る。或いは、又は更に、上記組成物は、薬学的に活性な別の薬剤又は薬物を含有し得る。例えば、癌を治療する場合、他の抗癌化合物が本発明の組成物と組み合わせて用いられ得、この化合物としては、米国内での販売が認可されている公知の抗癌化合物及び将来認可されるであろう化合物の全てが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、Boyd,Current Therapy in Oncology,第1節、Introduction to Cancer Therapy(J.E.Niederhuber編),第2章,B.C.Decker,Inc.,Philadelphia,1993,第11頁−第22頁の表1及び表2を参照のこと。より詳細には、これらの他の抗癌化合物としては、一般に固形腫瘍用にはドキソルビシン、ブレオマイシン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、VP−16、VW−26、シスプラチン、カルボプラチン、プロカルバジン及びタキソール;脳又は腎臓の癌用にはアルキル化剤(例えば、BCNU、CCNU、メチル−CCNU及びDTIC);並びに結腸癌用には代謝拮抗薬(例えば、5−FU及びメトトレキサート)が挙げられる。
【0071】
本明細書中に記載される化合物及び組成物は、任意の目的で使用され得る。疾患を検出する方法及び異常なBORIS発現を検出する方法において有用であることに加えて、本明細書中に記載される化合物及び組成物は、他の目的で(例えば、哺乳動物において免疫応答を誘導するために)用いられ得る。このような免疫応答には複数の用途がある。例えば、BORISに特異的な抗体及び他の免疫関連分子は、研究のために、哺乳動物中のBORIS発現を検出するための方法において有用なコントロール試薬のために、及び哺乳動物中に存在するか又は生じ得る癌細胞を破壊するための方法として、単離され用いられ得る。この点において、本発明は、関連の態様として、哺乳動物において免疫応答を誘導する方法を提供し、この方法は、哺乳動物に、本明細書中に規定したBORISポリペプチドを投与する工程を包含する。投与の適切な方法は、当該分野で知られている。免疫応答を誘導する方法の他の全ての態様は、すでに本明細書中に記載した通りである。
【0072】
(異常なBORIS発現に関連する疾患を治療する方法)
本発明は、哺乳動物中の異常なBORIS発現に関連する疾患を治療又は予防する方法を提供し、この方法は、異常なBORIS発現を示す哺乳動物に、BORISアイソフォームの阻害剤を投与する工程を包含する。BORISアイソフォームの阻害剤は、BORISアイソフォームの正常な機能を阻害し得るか、またはBORISアイソフォームの発現をDNAレベル若しくはRNAレベルで阻害し得る、任意の化合物及び/又は分子或いは任意の他の薬剤であり得る。典型的には、BORISの阻害剤は、低分子、抗体、アンチセンス分子、又はリボザイム分子である。BORISアイソフォームに特異的なジンクフィンガー結合ドメインを認識し、それゆえBORISアイソフォームの阻害を開始できる分子(例えば、ジンクフィンガー結合タンパク質)を含むBORISアイソフォームの阻害剤を提供することもまた考えられる。このようなジンクフィンガー結合タンパク質が用いられる場合、これらの分子は、同様のジンクフィンガー結合ドメインを含む他のタンパク質(例えば、CTCF)の正常な機能が阻害されないように、これらの類似のタンパク質と比較して、BORISアイソフォームのジンクフィンガー結合ドメインを特異的に認識するために使用されることが理解されるだろう。これらの阻害剤を同定する方法は当該分野で周知であり、種々のインビトロアッセイを用いて、過度の実験を行わずに達成され得る。
【0073】
「治療すること」は、全体的又は部分的な、その任意の症状の病理学的状態の寛解を意味する。「予防すること」は、特定の病理学的状態に対する、全体的又は部分的な防御を意味し、当該防御としては、病理学的状態の任意の1以上の症状の発生の予防が挙げられるが、これに限定されない。当業者は、病理学的状態からの防御又は病理学的状態の寛解が、いかなる程度であっても、哺乳動物に有益であることを理解するだろう。
【0074】
本発明の好ましい態様によれば、哺乳動物中の異常なBORIS発現に関連する疾患を治療又は予防する方法は、低分子干渉RNA(siRNA)分子を、異常なBORIS発現に関連する疾患に罹患している哺乳動物に投与する工程を包含し、ここで、当該siRNA分子は、BORISアイソフォームmRNA転写物(例えば、配列番号1〜24からなる群より選択されるヌクレオチド配列を含むmRNA転写物)の部分又は断片に相補的な、少なくとも約10ヌクレオチドが連続する配列(好ましくは少なくとも約15ヌクレオチドの配列又は少なくとも約20ヌクレオチド(典型的には、21ヌクレオチド)の配列でさえ)を含む。siRNA分子を設計する方法は、当該分野において知られている。典型的には、siRNAは、3’ジヌクレオチドオーバーハング(好ましくはUU残基)を有する。従って、標的部位は、一般に、開始位置に適切なジヌクレオチドを有する部位(例えば、適切な数の3’ヌクレオチドを伴う「AA」ジヌクレオチド)になるように選択されるだろう。siRNAは、当然、相補的な配列を有するであろう。
【0075】
本発明の別の好ましい態様によれば、哺乳動物中の異常なBORIS発現に関連する疾患を治療又は予防する方法は、抗BORISアイソフォーム抗体を、異常なBORIS発現に関連する疾患に罹患している哺乳動物に投与する工程を包含し、当該抗BORISアイソフォーム抗体は、BORISアイソフォームポリペプチド(例えば、配列番号25〜42からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むBORISアイソフォームポリペプチド)に選択的に結合する。適切な抗BORISアイソフォーム抗体(BORISアイソフォーム特異的抗体が挙げられる)は、本明細書中に提供される情報及び既に記載した慣用技術を考慮して生成され得る。
【0076】
阻害剤は、担体を含有する組成物の一部として適切に投与されるだろう。適切な担体及び投与経路は、本発明の他の態様について記載したとおりである。
【0077】
(BORIS発現を検出するのに有用なキット及びアレイ)
本発明は、(a)(i)配列番号25〜42からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むBORISアイソフォームポリペプチド、(ii)配列番号25〜42からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むBORISアイソフォームポリペプチドに対する自己抗体、又は(iii)配列番号1〜24からなる群より選択される核酸配列を含むBORISアイソフォームmRNA転写物、に結合する1以上のプローブを含むプローブセット、並びに(b)当該プローブの検出を促進する試薬、を含む、BORIS発現を検出するのに有用なキットを提供する。
【0078】
上記プローブセットは、試料中の検出されるべき標的が、BORISアイソフォームであるか(この場合、抗体プローブが有用であり得る)、BORISに対する自己抗体であるか(この場合、ポリペプチドプローブが有用である)又はBORISアイソフォームmRNA転写物(この場合、核酸プローブが有用である)であるかによって、1以上の1以上の抗体、1以上のポリペプチド又は1以上の核酸(即ち、ポリヌクレオチド)を含み得る。それぞれの標的分子に特異的に結合するプローブは、慣用技術を用いて設計され得る。プローブは、試料中の他の分子に優先して、標的BORISアイソフォームポリペプチド、自己抗体又はmRNA転写物と特異的に結合し、その結果、プローブは、試料中の標的分子と他の分子とを識別するのに用いられ得る。
【0079】
ポリヌクレオチドプローブ及びポリペプチドプローブは、当該分野で知られた任意の適切な方法により生成され得る(例えば、Sambrookら(前出)を参照のこと)。例えば、BORISアイソフォームmRNA転写物に特異的に結合するポリヌクレオチドプローブは、慣用技術(例えば、PCR又は合成)により、BORISアイソフォームmRNA転写物自体の核酸配列(本明細書中に開示される)を用いて作出され得る。さらなる説明のために、特定のBORISアイソフォームのmRNA転写物に結合するポリヌクレオチドプローブは、mRNA配列またはその断片に相補的な核酸配列、或いはその配列に選択的に結合する(例えば、試料中の他のmRNA転写物よりも大きな親和性をもって標的mRNA転写物に結合する)ほどその配列またはその断片に十分相補的な核酸配列を含むポリヌクレオチドにより、提供され得る。ポリヌクレオチドプローブの正確な性質は、本発明にとって重要ではない。mRNA標的と選択的に結合するであろう任意のプローブが用いられ得る。典型的には、ポリヌクレオチドプローブは、約10以上の核酸(例えば、約20以上、50以上又は100以上の核酸)を含むであろう。一般に、プローブは、50ヌクレオチド未満を含むであろう。従って、例えば、ポリヌクレオチドプローブは、配列番号1〜24のいずれかの断片又はその相補体を含み得るか、本質的にこれらからなり得るか、又はこれらからなり得る。十分な特異性を付与するために、核酸プローブは、標的配列の相補体に対して、例えば周知のBasic Local Alignment Search Tool(BLAST)アルゴリズム(National Center for Biotechnology Information(NCBI)、Bethesda、MDを介して利用可能)を用いて決定されるとおり、約90%以上、好ましくは約95%以上(例えば、約98%以上若しくは約99%以上)の配列同一性を有するであろう。より好ましくは、このプローブは、標的配列に対して、1又は2塩基対以下のミスマッチしか含まないであろう。
【0080】
同様に、本明細書中に記載されるBORISアイソフォームポリペプチドに結合するポリペプチドプローブは、本明細書中に開示されるBORISアイソフォームのアミノ酸配列及び慣用技術を用いて作出され得る。例えば、BORISアイソフォームに対する抗体又は抗体断片は、慣用技術を用いて哺乳動物中で生成され得、当該抗体は、当該BORISアイソフォームに対するプローブとして供給するために回収され得る。ポリペプチドプローブの正確な性質は、本発明にとって重要ではない。BORISアイソフォーム標的に選択的に結合するであろう任意のプローブが用いられ得る。好ましいポリペプチドプローブとしては、抗体及び抗体断片抗体又は抗体断片(例えば、F(ab)’断片、一本鎖抗体可変領域断片(ScFv)鎖等)が挙げられる。バイオマーカーを検出するのに適切な抗体は、慣用的な方法により調製でき、また市販されている。例えば、Harlowら,Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Publishers,Cold Spring Harbor,NY,1988を参照のこと。
【0081】
プローブの検出を促進する試薬は、当該分野において知られている任意の適切な試薬であり得る。例えば、試薬は、試料とプローブとを接触させる前又は後にプローブ又は試料中の標的分子を標識するために用いられ得る分子又は化合物であり得る。このような試薬の具体的な例としては、ラジオアイソトープ、フルオロフォア(例えば、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、フィコエリトリン(PE))、酵素(例えば、アルカリホスファターゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ)及び元素粒子(例えば、金粒子)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0082】
キットは、1以上の型の疾患又は癌に対応する、1以上のBORIS発現プロファイル(例えば、1以上のBORISアイソフォームの発現プロファイル)をさらに含み得る。所定の型の疾患又は癌のBORIS発現プロファイルが、例えば、その疾患又は癌に罹患していることがわかっている哺乳動物又は哺乳動物の集団におけるBORISアイソフォーム及び/又はBORISポリペプチドの発現について試験することにより、或いは、特定の細胞株を代表する細胞株におけるBORISアイソフォーム及び/又はBORSポリペプチドの発現について試験することにより、生成され得る。好ましくは、BORIS発現プロファイルは、哺乳動物から、又はより好ましくは特定の疾患に罹患していることがわかっている哺乳動物の集団から、生成される。BORIS発現プロファイルは、その哺乳動物が実際に疾患を有するか否か又は疾患を発症する傾向を有するか否かを決定するために、未知の疾患状態の所定の哺乳動物のBORIS発現を比較するための、基準として役立ち得る。
【0083】
好ましくは、BORIS発現プロファイルは、異常なBORIS発現に関連する1以上の異なる型の癌又は他の疾患のBORIS発現プロファイルを含むデータベースの形態で提供され、このデータベースは、患者のBORIS発現プロファイルと1以上の異なる型の癌のBORIS発現プロファイルとの比較を容易にする。患者のBORIS発現プロファイルと1以上の異なる型の癌又は他の疾患のBORIS発現プロファイルとの比較を容易にするこのようなデータベースとしては、例えば、検索可能なデータベース、特に検索可能な電子データベースが挙げられる。
【0084】
プローブセットのプローブは、アレイを提供するために、適切な基材上に固定され得る。この点で、本発明は、哺乳動物におけるBORIS発現の検出に有用なアレイをも提供し、このアレイは、基材上に固定された1以上のプローブを含み、このプローブは、(i)配列番号25〜42からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むBORISアイソフォーム、(ii)配列番号25〜42からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むBORISアイソフォームに対する自己抗体、又は(iii)配列番号1〜24からなる群より選択されるヌクレオチド配列を含むBORISアイソフォームmRNA転写物、に結合する。
【0085】
基材は、ポリヌクレオチド又はポリペプチドが共有結合又は非共有結合され得る、任意の剛性(rigid)支持体又は半剛性支持体であり得る。適切な基材としては、膜、フィルター、チップ、スライド、ウェーハ、繊維、ビーズ、ゲル、キャピラリー、プレート、ポリマー、微粒子などが挙げられる。基材に適した物質としては、例えば、ナイロン、ガラス、セラミック、プラスチック、シリカ、アルミノケイ酸塩、ホウケイ酸塩、金属酸化物(例えば、アルミナ及び酸化ニッケル)、種々の粘土、ニトロセルロース等が挙げられる。
【0086】
ポリヌクレオチドプローブ又はポリペプチドプローブは、既定の1次元若しくは2次元の配置で基材に結合され得、その結果、プローブへのハイブリダイゼーション又は結合のパターンが、特定のBORISアイソフォームの発現と容易に相関する。プローブが基材上の特定の位置に位置するので、ハイブリダイゼーション又は結合のパターン及び強度により、独特の発現プロファイルが作出され、この発現プロファイルは、特定のBORISアイソフォームの発現に関して解釈され得る。
【0087】
アレイは、ポリヌクレオチドアレイ及びポリペプチドアレイに共通する他の要素を含み得る。例えば、アレイは、コントロール、標準又は基準分子(例えば、ハウスキーピング遺伝子若しくはその一部(例えば、PBGD、GAPDH))として作用し、発現レベルの標準化、又は核酸の品質及び結合特性、試薬の品質及び有効性、ハイブリダイゼーションの成功、解析の閾値及び成功などの決定に資する、1以上の要素もまた含み得る。本発明と矛盾しない、アレイ又はアドレス可能な要素、並びにアレイを構築及び使用するための方法(適切なプローブを生成し、標識し及びこれを基材に結合させることを含む)の、これらの他の一般的態様は、当該分野で周知である。アレイの他の態様は、本発明の方法に関して本明細書中にすでに記載した通りである。
【0088】
キット又はアレイは、単一のBORISアイソフォームポリペプチド、mRNA転写物又は自己抗体に対する、単一のプローブを含み得る。しかしながら、キット又はアレイは、1よりも多くのプローブ(例えば、各々が異なるBORISアイソフォームポリペプチド、mRNA転写物若しくは自己抗体に対して結合する、2以上の異なるプローブ、3以上の異なるプローブ、4以上の異なるプローブ、5以上の異なるプローブ、10以上の異なるプローブ、15以上の異なるプローブ若しくは20以上の異なるプローブさえ(又は本明細書中で同定されたBORISアイソフォームポリペプチド、mRNA転写物、若しくは自己抗体の各々に対する異なるプローブでさえ))を含むことが有利である。
【0089】
キット又はアレイは、BORISアイソフォームポリペプチド、mRNA転写物又は自己抗体以外のポリペプチド、mRNA転写物又は自己抗体に対するプローブを更に含み得る。例えば、キット又はアレイは、配列番号43のアミノ酸配列を含むBORISポリペプチド、このようなBORISポリペプチドをコードするmRNA転写物(例えば、配列番号44の核酸配列を含むmRNA転写物)又はこのようなBORISポリペプチドに対する自己抗体に対するプローブを含むことが望ましい。他のプローブ(例えば、他の腫瘍抗原若しくは他の癌遺伝子マーカーに結合するプローブ)もまた含まれ得る。それにもかかわらず、いくつかの例では、使いやすくするため、異なるプローブの総数を限定することが簡便であり得る。従って、例えば、キット又はアレイは、約1000未満の異なるプローブを含み得るか、又は約500未満の異なるプローブ(例えば、約100未満の異なるプローブ)を含み得るか、又は約50未満の異なるプローブ(例えば、約30未満の異なるプローブ)さえを含み得る。
【実施例】
【0090】
以下の実施例は、本発明を更に説明するが、当然、決して本発明の範囲を制限するものと解釈されるべきではない。
【0091】
(実施例1)
本実施例は、ヒト精巣における複数のBORISアイソフォームの同定を説明する。
【0092】
RT−PCRを用いて、ヒト精巣で発現されるBORIS遺伝子の24の異なるmRNAスプライスバリアントのmRNA転写物の同定及び配列決定を行った。これら24のmRNAスプライスバリアントを、図A、B、C及びDに示す。これらのmRNAスプライスバリアントは、18の異なるBORISアイソフォームポリペプチドをコードする。mRNAスプライスバリアントのヌクレオチド配列及びこのmRNAスプライスバリアントがコードするアミノ酸配列を、表1に示す。
【0093】
(実施例2)
本実施例は、アイソフォーム特異的抗BORIS抗体の生成、及びヒト精巣においてBORISアイソフォームを同定するためのこのような抗体の使用を説明する。
【0094】
ウサギを3つの異なるBORISアイソフォーム(配列番号25、27及び32)に特異的な合成ペプチドで免疫することにより、これらのアイソフォームに対するアイソフォーム特異的抗BORIS抗体を生成した。特に、ペプチドCKYASVEVKPFLDLKLHGILVEAAVQVTPSVTNSRI(配列番号45)及びCYKQAFYYSYKIYIGNNMHSLL(配列番号46)を用いて、配列番号25を含むアイソフォームに対する抗体を生成し;ペプチドCLLGSSDSHASVSGAGITDARHHA(配列番号47)及びCITDARHHAWLIVLLELVEMGFYHVSHS(配列番号48)を用いて、配列番号27を含むアイソフォームに対する抗体を生成し;ペプチドCPPGLHHPKAGLGPEDPLPGQLRHTAG(配列番号49)及びGQLRHTTAGTGLSSLLQGPLC(配列番号50)を用いて、配列番号32を含むアイソフォームに対する抗体を生成した。ウサギを、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)にコンジュゲート化したペプチドで免疫した。その後、ペプチド特異的な抗体を、同じペプチドを用いてカラム上でアフィニティー精製した。アイソフォーム特異的抗BORIS抗体を首尾よく用いて、ヒト精巣の組織中で3つの異なるBORISアイソフォームを検出した。
【0095】
(実施例3)
本実施例は、NCI−60細胞株におけるBORISアイソフォームの発現パターンを実証する。
【0096】
RT−PCRを用いて、NCI−60細胞株の各々における6つの異なるBORISアイソフォームの発現について試験した。NCI−60細胞株パネルは、ヒト癌の型の大多数に相当すると考えられる。結果を表1に示す。表中「+」は正の発現を示し、空欄は発現がないことを示す。
【0097】
表2の結果により説明されるように、NCI−60細胞株の各々は、BORISの少なくとも1のアイソフォームの発現を示した。さらに、異なる癌は、異なるBORISアイソフォーム発現パターンを示した。これらの結果は、BORISアイソフォーム発現パターンが種々の型の癌の間を識別するのに用いることができることを示す。
【0098】
【表1】

【0099】
【表2】

【0100】
本明細書中に引用される全ての参考文献(刊行物、特許出願及び特許が挙げられる)は、各参考文献が、個々にかつ具体的に、参考として援用されていることが示され、その全体が本明細書中に記載されている場合と同程度まで、参考として本明細書中に援用される。
【0101】
本発明を記載することに関して(特に、添付の特許請求の範囲に関して)、用語「1つの(a)」及び「1つの(an)」及び「その(the)」及び同様の指示対照の使用は、本明細書中に別段示されない限り又は文脈に明らかに矛盾しない限り、単数及び複数の両方を包含すると解釈されるべきである。用語「含む(comprising)」、「有する(having)」、「挙げられる(including)」及び「含む(containing)」は、特に断らない限り、オープンエンドの用語(即ち、「・・・が挙げられるが、これ(ら)に限定されない」を意味する)として解釈されるべきである。本発明がオープンエンドの用語(例えば、「含む(comprising)」)に言及して記載される箇所はいずれの箇所でも、限定された又はクローズドエンドの用語(例えば、本質的に・・・からなる、若しくは・・・からなる)が代わりに用いられ得ることが具体的に企図される。本明細書中の値の範囲の列挙は、本明細書中に別段示さない限り、当該範囲内に収まる各個別の値に個々に言及する便法として寄与することが意図されるに過ぎず、各個別の値は、本明細書中に個々に列挙されたかのように、本明細書中に組み込まれることが意図される。本明細書中に記載される全ての方法は、本明細書中に別段示さない限り、又はそうでなければ文脈に明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で遂行され得る。本明細書中に提供される任意の及び全ての例又は例示的な言い回し(例えば、「例えば」)の使用は、単に本発明をよりよく説明することを意図したのであって、他のように特許請求されない限り、本発明の範囲を限定しない。本明細書中の如何なる言い回しも、特許請求されていない任意の要素を本発明の実施に必須であると示すものとして解釈すべきではない。
【0102】
本発明の好ましい実施形態(発明者らに知られている、発明を実施するための最良の形態を含む)が本明細書中に記載される。好ましい実施形態のバリエーションは、前述の記載を読めばすぐに当業者に明らかになり得る。発明者らは、当業者がこのようなバリエーションを必要に応じて用いることを予測しており、そして発明者らは、本発明が、本明細書中に具体的に記載されているのとは別のやり方で実施されるであろうことを意図する。従って、本発明は、適用法が許容するとおり、本明細書に添付の特許請求の範囲に列挙される主題の全ての修飾及び均等物を包含する。更に、可能な全てのバリエーションにおける上記要素の任意の組合せが、本明細書中に特に示されていない限り、又は文脈と明らかに矛盾しない限り、本発明に包含される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物中の異常なBORIS発現を特徴とする疾患を検出する方法であって、疾患が存在しない場合にはBORISアイソフォームを発現しない哺乳動物の組織又は体液中の1以上のBORISアイソフォームの発現について試験する工程を包含する、方法。
【請求項2】
前記1以上のBORISアイソフォームが、配列番号25〜42からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1以上のBORISアイソフォームの発現について試験する工程が、前記哺乳動物の体液又は組織の試料と前記1以上のBORISアイソフォームに対する抗体とを接触させる工程、及び該抗体と該試料由来の1以上のBORISアイソフォームとの結合を検出する工程を包含する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記1以上のBORISアイソフォームの発現について試験する工程が、該1以上のBORISアイソフォームに対する1以上の自己抗体の存在を検出する工程を包含する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記1以上のBORISアイソフォームに対する1以上の自己抗体の存在を検出する工程が、前記哺乳動物の体液又は組織の試料と該1以上のBORISアイソフォームのアミノ酸配列の免疫原性部分を含むポリペプチドプローブとを接触させる工程、及び該ポリペプチドプローブと該試料由来の自己抗体との結合を検出する工程を包含する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記1以上のBORISアイソフォームの発現について試験する工程が、該1以上のBORISアイソフォームをコードする1以上のmRNA転写物の存在を検出する工程を包含する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項7】
前記1以上のBORISアイソフォームをコードする1以上のmRNA転写物の存在を検出する工程が、前記哺乳動物の体液又は組織の試料と、該1以上のBORISアイソフォームmRNA転写物に結合する1以上の核酸プローブとを接触させる工程、及び該プローブと該試料由来のmRNA転写物との結合を検出する工程を包含する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
2以上の異なるBORISアイソフォームの発現について試験する工程を包含する、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
配列番号43のアミノ酸配列を含むBORISポリペプチドの発現について試験する工程をさらに包含する、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記哺乳動物中の1以上のBORISアイソフォームの発現とコントロールとを比較する工程をさらに包含する、請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記コントロールが、異常なBORIS発現に関連する特定の疾患に罹患していることがわかっている哺乳動物のBORIS発現パターンである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記異常なBORIS発現に関連する疾患が癌である、請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
哺乳動物中の異常なBORIS発現を特徴とする疾患を検出する方法であって、疾患が存在しない場合にはBORISアイソフォームを発現しない哺乳動物の組織又は体液中の、1以上のBORISアイソフォームmRNA転写物の発現について試験する工程を包含する、方法。
【請求項14】
前記1以上のBORISアイソフォームmRNA転写物が、配列番号1〜24からなる群より選択されるヌクレオチド配列を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
1以上のBORISアイソフォームmRNA転写物の発現について試験する工程が、前記哺乳動物の体液又は組織の試料と該1以上のBORISアイソフォームmRNA転写物に結合する1以上の核酸プローブとを接触させる工程、及び該核酸プローブと該試料由来のmRNA転写物との結合を検出する工程を包含する、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
2以上の異なるBORISアイソフォームmRNA転写物の発現について試験する工程を包含する、請求項13〜15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
配列番号44のヌクレオチド配列を含むBORISアイソフォームmRNA転写物の発現について試験する工程を更に包含する、請求項13〜16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記哺乳動物のBORISアイソフォームmRNA転写物の発現をコントロールと比較する工程を更に含む、請求項13〜17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
前記コントロールが、特定の疾患に罹患していることがわかっている哺乳動物のBORIS mRNA発現パターンである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記異常なBORIS発現に関連している疾患が癌である、請求項13〜19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
配列番号25〜42からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、単離又は精製されたポリペプチド。
【請求項22】
配列番号25〜42からなる群より選択されるアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含む、単離又は精製された核酸。
【請求項23】
配列番号1〜24からなる群より選択されるヌクレオチド配列を含む、単離又は精製された核酸。
【請求項24】
請求項22又は23の核酸を含む、ベクター。
【請求項25】
請求項21のポリペプチドを含む、細胞。
【請求項26】
必要に応じてベクターの形態で請求項22又は23の核酸を含む、細胞。
【請求項27】
請求項21のポリペプチドに結合する、抗体又は抗体断片。
【請求項28】
請求項21のポリペプチド及び担体を含有する、組成物。
【請求項29】
必要に応じてベクターの形態の請求項22又は23の核酸、及び担体を含有する、組成物。
【請求項30】
請求項27の抗体又は抗体断片及び担体を含有する、組成物。
【請求項31】
哺乳動物中の異常なBORIS発現に関連する疾患を治療又は予防する方法であって、該方法は、低分子干渉RNA(siRNA)分子を、異常なBORIS発現に関連する疾患に罹患している哺乳動物に投与する工程を包含し、該siRNA分子は、BORISアイソフォームmRNA転写物の断片に相補的な、少なくとも10ヌクレオチドが連続する配列を含む、方法。
【請求項32】
前記BORISアイソフォームmRNA転写物が、配列番号1〜24からなる群より選択されるヌクレオチド配列を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
哺乳動物中の異常なBORIS発現に関連する疾患を治療又は予防する方法であって、該方法は、抗BORISアイソフォーム抗体を、異常なBORIS発現に関連する疾患に罹患している哺乳動物に投与する工程を包含し、該抗BORISアイソフォーム抗体が、BORISアイソフォームポリペプチドに選択的に結合する、方法。
【請求項34】
前記BORISアイソフォームポリペプチドが、配列番号25〜42からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記異常なBORIS発現に関連する疾患が癌である、請求項31〜34のいずれかに記載の方法。
【請求項36】
(a)(i)配列番号25〜42からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むBORISアイソフォームポリペプチド、(ii)配列番号25〜42からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むBORISアイソフォームポリペプチドに対する自己抗体、又は(iii)配列番号1〜24からなる群より選択される核酸配列を含むBORISアイソフォームmRNA転写物、に結合する1以上のプローブを含むプローブセット、及び
(b)該プローブの検出を促進する試薬
を含む、哺乳動物中のBORIS発現の検出のためのキット。
【請求項37】
前記プローブセットが、1以上の抗BORISアイソフォーム抗体を含む、請求項36に記載のキット。
【請求項38】
前記プローブセットが、1以上のBORISアイソフォームポリペプチドを含む、請求項36に記載のキット。
【請求項39】
前記プローブセットが1以上の核酸を含む、請求項36に記載のキット。
【請求項40】
1以上の型の癌のBORIS発現プロファイルを更に含む、請求項36〜39のいずれかに記載のキット。
【請求項41】
哺乳動物中のBORIS発現の検出に有用なアレイであって、該アレイが、基材上に固定された1以上のプローブを含み、該プローブが、(i)配列番号25〜42からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むBORISアイソフォーム、(ii)配列番号25〜42からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むBORISアイソフォームに対する自己抗体、又は(iii)配列番号1〜24からなる群より選択されるヌクレオチド配列を含むBORISアイソフォームmRNA転写物、に結合する、アレイ。
【請求項42】
前記プローブセットが、1以上の抗BORISアイソフォーム抗体又は抗体断片を含む、請求項41に記載のアレイ。
【請求項43】
前記プローブセットが、1以上のBORISアイソフォーム又はその免疫原性断片を含む、請求項41に記載のアレイ。
【請求項44】
前記プローブセットが1以上の核酸を含む、請求項41に記載のアレイ。
【請求項45】
2以上の異なるBORISアイソフォームに対するプローブを含む、請求項41〜44のいずれかに記載のアレイ。
【請求項46】
(i)配列番号43のアミノ酸配列を含むBORISポリペプチド、(ii)配列番号43のアミノ酸配列を含むBORISポリペプチドに対する自己抗体、又は(iii)配列番号44のヌクレオチド配列を含むBORIS mRNA転写物、に結合するプローブを更に含む、請求項41〜45のいずれかに記載のアレイ。
【請求項47】
1以上の異なる型の癌のBORIS発現プロファイルを含むデータベースであって、患者のBORIS発現プロファイルと1以上の異なる型の癌のBORIS発現プロファイルとの比較を容易にする、データベース。
【請求項48】
哺乳動物に配列番号25〜42からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチド又はその免疫原性部分を投与する工程を包含する、該哺乳動物においてBORISに対する免疫応答を誘導する方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【公表番号】特表2010−502192(P2010−502192A)
【公表日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−526917(P2009−526917)
【出願日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際出願番号】PCT/US2007/077281
【国際公開番号】WO2008/028066
【国際公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(304048296)アメリカ合衆国 (18)
【Fターム(参考)】