説明

C−JUNN末端キナーゼ(JNK)および他のタンパク質キナーゼのインヒビター

【課題】JNK活性化と関連する種々の状態の処置において有用な、JNK1インヒビター、JNK2インヒビターおよびJNK3インヒビターを含む、有効なJNKのインヒビターを開発すること。
【解決手段】本発明は、プロテインキナーゼのインヒビター、特に、マイトジェン活性化プロテイン(MAP)キナーゼファミリーのメンバーである、c−Jun N末端キナーゼ(JNK)のインヒビターを提供する。本発明はまた、本発明のインヒビターを含む薬学的組成物、ならびに種々の障害の処置および予防においてこれらの組成物を利用する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連する出願の相互参照)
本願は、2000年、12月5日に出願された米国仮特許出願60/251,409に対する優先権を主張し、その内容を本明細書中で参考として援用する。
【0002】
(発明の技術分野)
本発明は、プロテインキナーゼのインヒビター、特に、マイトジェン活性化プロテイン(MAP)キナーゼファミリーのメンバーである、c−Jun N末端キナーゼ(JNK)のインヒビターに関する。JNKをコードする多数の異なる遺伝子およびアイソフォームがある。JNKファミリーのメンバーは、環境ストレスおよび炎症誘発性サイトカインに対する応答でのシグナル伝達を調節し、そして多数の異なる障害の媒介において役割を有することに関係があるとされている。本発明はまた、これらのインヒビターを生成するための方法に関連する。本発明はまた、本発明のインヒビターを含む薬学的組成物、ならびに種々の障害の処置および予防においてこれらの組成物を利用する方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
哺乳動物細胞は、細胞外シグナル調節化キナーゼ(ERK)、p38 MAPキナーゼおよびc−Jun N末端キナーゼ(JNK)を含む、マイトジェン活性化プロテイン(MAP)キナーゼファミリーのメンバーによって媒介される、活性のシグナル伝達カスケードによる細胞外刺激に応答する。MAPキナーゼ(MAPK)は、増殖因子、サイトカイン、UV照射、およびストレス誘導因子を含む、種々のシグナルによって活性化される。MAPKは、セリン/スレオニンキナーゼであり、そしてこれらの活性化は、活性化ループにおけるThr−X−Tyrセグメントでのスレオニンおよびチロシンの二重リン酸化によって生じる。MAPKは、転写因子を含む、種々の基質をリン酸化し、この転写因子は、次に特定のセットの遺伝子の発現を調節し、このようにして、刺激に対する特異的な応答を媒介する。
【0004】
1つの特に興味深いキナーゼファミリーは、JNKとしてもまた公知のc−Jun NH末端プロテインキナーゼである。3つの異なる遺伝子、Jnk1、Jnk2、Jnk3は、同定されており、そして少なくとも10の異なるJNKのスプライシングアイソフォームが、哺乳動物細胞に存在する[非特許文献1]。JNKファミリーのメンバーは、炎症誘発性サイトカイン(例えば、腫瘍壊死因子α(TNFα)およびインターロイキン−1β(IL−1β))ならびにアニソマイシン、UV照射、低酸素、および浸透圧ショックを含む環境ストレスによって活性化される[非特許文献2]。
【0005】
JNKの下流への基質は、転写因子、c−Jun、ATF−2、Elk1、p53および細胞死ドメインタンパク質(DENN)を含む[非特許文献3]。各々のJNKアイソフォームは、異なる親和性でこれらの基質に結合し、このことは、インビボでの異なるJNKの基質特異性によるシグナル伝達経路の調節を示唆する(非特許文献1)。
【0006】
他のMAPKに加えてJNKは、癌、トロンビン誘導血小板凝集、免疫不全障害、自己免疫疾患、細胞死、アレルギー、骨粗鬆症、および心臓疾患に対する細胞応答の媒介において役割を有することに関与するとされている。JNK経路の活性化に関連する治療の標的は、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性関節リウマチ、喘息、変形性関節症、虚血、癌および神経変性疾患を含む。
【0007】
様々な報告が、肝臓疾患または肝性虚血の発症に関連するJNK活性化の重要性を詳述してきた[非特許文献4;非特許文献5;非特許文献6;非特許文献7]。それ故、JNKのインヒビターは、種々の肝性障害の処置に有用であり得る。
【0008】
心臓血管疾患(例えば、心筋梗塞または鬱血性心不全)におけるJNKについての役割はまた、JNKが種々の形態の心臓ストレスに対する肥厚性応答を媒介することが示されると報告されてきた[非特許文献8;非特許文献9;非特許文献10;非特許文献11;非特許文献12;非特許文献13]。
【0009】
JNKカスケードはまた、IL−2プロモーターの活性化を含む、T細胞活性化において役割を果たすことが、実証されてきた。従って、JNKのインヒビターは、病理学的免疫応答を変更することにおいて治療的価値を有し得る[非特許文献14;非特許文献15;非特許文献16;非特許文献17]。
【0010】
種々の癌におけるJNK活性化についての役割もまた確立されており、癌におけるJNKインヒビターの潜在的使用を示唆する。例えば、構成的に活性化されたJNKは、HTLV−1媒介性腫瘍形成に関連する[非特許文献18]。JNKは、カポジ肉腫(KS)において役割を果たし得、これはなぜならば、KS細胞でのbFGFおよびOSMの増殖効果が、JNKシグナル伝達経路のこれらの活性化によって媒介されると考えられるからである[非特許文献19]。KS増殖に関与するとされる他のサイトカインの他の増殖効果(例えば、血管内皮増殖因子(VEGF)、IL−6およびTNFα)もまた、JNKによって媒介され得る。加えて、p210 BCR−ABL形質転換細胞におけるc−jun遺伝子の調節は、JNKの活性に対応し、このことは、慢性骨髄性白血病(CML)のための処置におけるJNKインヒビターについての役割を示唆する[非特許文献20]。
【0011】
JNK1およびJNK2は、種々の組織中で広範に発現される。対照的に、JNK3は、脳ならびにより少ない程度で心臓および精巣において選択的に発現される[非特許文献1;非特許文献21;非特許文献22]。JNK3は、カイニン酸によって誘導されるニューロンのアポトーシスに関連付けられており、グルタミン酸神経毒性の病原におけるJNKの役割を示す。成人のヒト脳において、JNK3発現は、CA1、CA4における錐体のニューロンの小集団、ならびに海馬の鉤状回領域、ならびに新皮質の第3層および第5層に局在化される[非特許文献21]。急性低酸素症を有する患者のCA1ニューロンは、正常患者の脳組織由来の海馬のニューロンの最小の散在性細胞質染色と比較して、強い核のJNK3免疫反応性を示した[Zhangら、前出]。従って、JNK3は、海馬におけるCA1ニューロンの低酸素損傷および虚血性損傷に関与するようである。
【0012】
加えて、JNK3は、アルツハイマー病において損傷を受け易いニューロンとともに免疫化学的に同時局在する[非特許文献21]。JNK3遺伝子の破壊は、発作の活性、AP−1転写活性および海馬のニューロンのアポトーシスにおける効果を含む、興奮毒性のグルタミン酸レセプターアゴニストのカイニン酸に対するマウスの耐性を生じ、このことは、JNK3シグナル伝達経路が、グルタミン酸神経毒性の病原における重大な成分であることを示す[非特許文献23]。
【0013】
これらの発見に基づいて、JNKシグナル伝達(特に、JNK3のシグナル伝達)は、アポトーシス誘導神経変性疾患(例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、ALS(筋萎縮性側索硬化症)、癲癇および発作、ハンティングトン病、外傷性脳損傷)ならびに虚血性脳卒中および出血性脳卒中の範囲に関与するとされている。
【0014】
新しい証拠によって現在、密接に関連するJNK1アイソフォームおよびJNK2アイソフォームはまた、下流のアポトーシスへの影響において役割を果たすことが示唆されている。[非特許文献24;非特許文献25]。それ故、これらのアイソフォームもまた、脳卒中および他のアポトーシス関連疾患を処置するための潜在的に重要な標的である。例えば、3つ全てのJNKアイソフォーム(JNK1、JNK2およびJNK3)が、ヒトおよびげっ歯類の成体の脳において発現される。JNK3は、上記のように、海馬において局在化され、ここでJNK1およびJNK2は、脳の他の区分において発現される。[非特許文献26;非特許文献1;非特許文献27]。JNK1およびJNK2を発現する細胞において、Jnk1遺伝子の破壊は、Jnk2遺伝子の破壊よりもより著しいc−Junキナーゼ活性における減少を生じた。しかし、ストレス誘導アポトーシスに対する完全な保護のために、これらの遺伝子の両方が、ノックアウトされるべきであった。[非特許文献24]。これらの発見の観点において、JNK1標的およびJNK2標的の両方に対して活性であるインヒビターを見出すことが、特に所望される。
【0015】
JNK活性化に関連する種々の状態の処置において有用なJNK特異的インヒビターを開発するための高度なまだ対処されていない医療のニーズ、特に、これらの状態の大部分のための、現在利用可能な比較的不十分な処置選択肢を考えることが残っている。
【0016】
MAPKを阻害する薬剤(例えば、p38インヒビター)を同定および開発するために多くの研究がなされてきた。例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3および特許文献4を参照のこと。しかし、本発明者らの知識では、他の関連するMAPKに対比して、1つ以上のJNKについて特異的に選択的なMAPKインヒビターは、示されていない。さらに、本発明者らは、JNK1およびJNK2の両方に対してか、または3つ全ての前述のJNKアイソフォームに対して活性であるインヒビターを知らない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】国際公開第00/31063号パンフレット
【特許文献2】国際公開第98/52937号パンフレット
【特許文献3】国際公開第98/27098号パンフレット
【特許文献4】国際公開第95/31451号パンフレット
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】Guptaら、EMBO J.,15:2760−70(1996)
【非特許文献2】Mindenら、Biochemica et Biophysica Acta,1333:F85−F104(1997)
【非特許文献3】Zhangら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、95:2586−91(1998)
【非特許文献4】Nat.Genet.21:326−9(1999)
【非特許文献5】FEBS Lett.420:201−4(1997)
【非特許文献6】J.Clin.Invest.102:1942−50(1998)
【非特許文献7】Hepatology 28:1022−30(1998)
【非特許文献8】Circ.Res.83:167−78(1998)
【非特許文献9】Circulation 97:1731−7(1998)
【非特許文献10】J.Biol.Chem.272:28050−6(1997)
【非特許文献11】Circ.Res.79:162−73(1996)
【非特許文献12】Circ.Res.78:947−53(1996)
【非特許文献13】J.Clin.Invest.97:508−14(1996)
【非特許文献14】J.Immunol.162:3176−87(1999)
【非特許文献15】Eur.J.Immunol.28:3867−77(1998)
【非特許文献16】J.Exp.Med.186:941−53(1997)
【非特許文献17】Eur.J.Immunol.26:989−94(1996)
【非特許文献18】Oncogene 13:135−42(1996)
【非特許文献19】J.Clin.Invest.99:1798−804(1997)
【非特許文献20】Blood 92:2450−60(1998)
【非特許文献21】Mohitら、Neuron 14:67−78(1995)
【非特許文献22】Martinら、Brain Res.Mol.Brain Res.35:47−57(1996)
【非特許文献23】Yangら、Nature、389:865−870(1997)
【非特許文献24】Tournierら、Science、288:870−874(2000)
【非特許文献25】Mielkeら、Neuroscience、91:471−483(1999)
【非特許文献26】Derijardら、Cell、76:1025−1037(1994)
【非特許文献27】Kyriakisら、Nature、369:156−160(1994)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
従って、未だ、JNK活性化と関連する種々の状態の処置において有用な、JNK1インヒビター、JNK2インヒビターおよびJNK3インヒビターを含む、有効なJNKのインヒビターを開発する大きな必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
(発明の要旨)
本発明の化合物およびこれらの薬学的組成物が、c−Jun N末端キナーゼ(JNK)のインヒビターとして有効であることがここで見出されている。これらの化合物は、一般式Iを有し:
【0021】
【化5】

ここで、Gは、水素またはC1〜3アルキルから選択される小さな基であり、Qは、ピリジンまたはピリミジンであり、そしてR〜Rは、以下に定義されるようなものである。これらの化合物は、JNKの3つのアイソフォーム(JNK1、JNK2およびJNK3)に対して良好な活性、およびp38キナーゼに対して比較的低い活性を示す選択的JNKインヒビターである。それ故、この化合物は、JNK媒介疾患、特に、3つ全てのJNKアイソフォームが関与するとされる神経変性疾患を処置するために有用である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(発明の詳細な説明)
本発明の化合物は一般式Iを有し:
【0023】
【化6】

ここで:
は、水素、CONH、T(n)−R、またはT(n)−Arから選択され;
Rは、脂肪族基または置換脂肪族基であり;
nは0以上であり;
Tは、C(=O)、CO、CONH、S(O)、S(O)NH、COCH、またはCHであり;
は、水素、−R、−CHOR、−CHOH、−CH=O、−CHSR、−CHS(O)R、−CH(C=O)R、−CHCOR、−CHCOH、−CHCN、−CHNHR、−CHN(R)、−CH=N−OR、−CH=NNHR、−CH=NN(R)、−CH=NNHCOR、−CH=NNHCOR、−CH=NNHSOR、−アリール、−CH(アリール)、−CHNH、−CHNHCOR、−CHNHCONHR、−CHNHCON(R)、−CHNRCOR、−CHNHCOR、−CHCONHR、−CHCON(R)、−CHSONH、−CH(ヘテロシクリル)、または−(ヘテロシクリル)から選択され;
は、水素、−R、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、アルキルチオアルキル、アミノアルキル、アルキルアミノアルキル、ジアルキルアミノアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキル、アリール、アラルキル、またはアリールオキシアルキルから選択され;
Gは、水素またはC1〜3アルキルであり;
Q−NHは、
【0024】
【化7】

であり;
ここでQ−NHのHは、必要に応じて、R、COR、S(O)R、またはCORによって置換され;
Aは、NまたはCHであり;
Arは、アリール、置換アリール、ヘテロシクリルまたは置換ヘテロシクリルであり、ここでArは、必要に応じて、0〜3個のヘテロ原子を含む、部分的に不飽和化されたか、または完全に不飽和化された5〜7員環に縮合され;
ここで、存在する場合は、縮合環を含む、Arにおける各置換可能な炭素原子は、ハロ、R、OR、SR、OH、NO、CN、NH、NHR、N(R)、NHCOR、NHCONHR、NHCON(R)、NRCOR、NHCOR、COR、COH、COR、CONHR、CON(R)、S(O)R、SONH、S(O)R、SONHR、またはNHS(O)Rによって、必要に応じてかつ独立して置換され、そして、ここで縮合環における各飽和化された炭素は、さらに=O、=S、=NNHR、=NNR、=N−OR、=NNHCOR、=NNHCOR、=NNHSOR、または=NRによって、必要に応じてかつ独立して置換され;そして
ここで、Arにおける各置換可能な窒素原子は、必要に応じて、R、COR、S(O)R、またはCORによって置換される。
【0025】
本明細書中で使用される場合、特に示されない限り、次の定義を適用するべきである。本明細書で使用される場合、用語「脂肪族」は、直鎖、分枝鎖または環式のC〜C12の炭化水素、好ましくは、完全に飽和されたか、または1つ以上の単位の不飽和を含む1〜6の炭素を意味する。例えば、適切な脂肪族基は、置換もしくは非置換の直鎖、分枝鎖または環式のアルキル、アルケニル、アルキニル基およびこれらのハイブリッド(例えば、(シクロアルキル)アルキル、(シクロアルケニル)アルキルまたは(シクロアルキル)アルケニル)を含むべきである。単独またはより大きな部分の一部として用いられる、用語「アルキル」および「アルコキシ」は、1〜12個の炭素原子を含む直鎖および分枝鎖の両方をいう。単独またはより大きな部分の一部として用いられる、用語「アルケニル」および「アルキニル」は、2〜12個の炭素原子を含む直鎖および分枝鎖の両方を含む。用語「ハロアルキル」、「ハロアルケニル」および「ハロアルコキシ」は、1個以上のハロゲン原子と置換され得る場合のアルキル、アルケニルまたはアルコキシを意味する。用語「ハロゲン」は、F、Cl、BrまたはIを意味する。用語「ヘテロ原子」は、N、OまたはSを意味し、そして任意の酸化された形態の窒素および硫黄、ならびに4級形態の任意の塩基性窒素を含む。
【0026】
単独または「アラルキル」におけるような大きな部分の一部として用いられる、用語「アリール」は、5〜14員を有する芳香族環基(例えば、フェニル、ベンジル、1−ナフチル、2−ナフチル、1−アントラシルおよび2−アントラシル、ならびに複素環式芳香族基またはヘテロアリール基(例えば、2−フラニル、3−フラニル、N−イミダゾリル、2−イミダゾリル、4−イミダゾリル、5−イミダゾリル、3−イソキサゾリル、4−イソキサゾリル、5−イソキサゾリル、2−オキサジアゾリル、5−オキサジアゾリル、2−オキサゾリル、4−オキサゾリル、5−オキサゾリル、2−ピロリル、3−ピロリル、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、2−ピリミジル、4−ピリミジル、5−ピリミジル、3−ピリダジニル、3−ピリダジニル、2−チアゾリル、4−チアゾリル、5−チアゾリル、5−テトラゾリル、2−トリアゾリル、5−トリアゾリル、2−チエニル、もしくは3−チエニル))をいう。
【0027】
アリール基はまた、炭素環式芳香族環またはヘテロアリール環が、1つ以上の環に縮合される、縮合多環式芳香族環系を含む。例としては、テトラヒドロナフチル、ベンズイミダゾリル、ベンゾチエニル、ベンゾフラニル、インドリル、キノリニル、ベンゾジアゼピニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンズイミダゾリル、イソキノリニル、イソインドリル、アクリジニル、ベンゾイソキサゾリルなどが挙げられる。本明細書中で使用される場合、1つ以上の炭素環式芳香族環および/もしくはヘテロアリール環がシクロアルキルまたは非芳香族ヘテロシクリルに融合される基(例えば、インダニルもしくはテトラヒドロベンゾピラニル)もまた、用語「アリール」の範囲内に含まれる。
【0028】
用語「複素環式環」または「ヘテロシクリル(heterocyclyl)」とは、環に1つ以上のヘテロ原子(例えば、窒素、酸素、または硫黄)を含む非芳香族環をいう。この環は、五員環、六員環、七員環または八員環および、または別の環に縮合させた環(例えば、シクロアルキルまたは芳香族環)であり得る。実施例としては、3−lH−ベンズイミダゾール−2−オン、3−1−アルキルベンズイミダゾール−2−オン、2−テトラヒドロフラニル、3−テトラヒドロフラニル、2−テトラヒドロピラニル、3−テトラヒドロピラニル、4−テトラヒドロピラニル、2−テトラヒドロチオフェニル、3−テトラヒドロチオフェニル、2−モルホリノ、3−モルホリノ、4−モルホリノ、2−チオモルホリノ、3−チオモルホリノ、4−チオモルホリノ、1−ピロリジニル、2−ピロリジニル、3−ピロリジニル、1−ピペラジニル、2−ピペラジニル、1−ピペリジニル、2−ピペリジニル、3−ピペリジニル、4−ピペリジニル、4−チアゾリジニル、ジアゾロニル、N−置換ジアゾロニル、1−フタルイミジニル、ベンゾキサン、ベンゾトリアゾール−1−イル、ベンゾピロリジン、ベンゾピペリジン、ベンゾキソラン、ベンゾチオラン、およびベンゾチアンが挙げられる。
【0029】
本発明の化合物は、部分的に飽和した、または完全に不飽和の、五員環〜七員環(ゼロ〜3つのヘテロ原子を含む)に縮合されている環を含み得る。このような縮合環は、芳香族環または非芳香族環の単環式環であり得、これらの例としては、上記のアリールおよび複素環式環が挙げられる。
【0030】
アリール基(炭素環式および複素環式)またはアルキル基(例えば、ベンジルまたはフェネチル)は、1つ以上の置換基を含み得る。アリール基の不飽和炭素原子における適切な置換基の例としては、ハロゲン、−R、−OR、−OH、−SH、−SR、保護されたOH(例えば、アシルオキシ)、フェニル(Ph)、置換されたPh、−OPh、置換された−OPh、−NO、−CN、−NH、−NHR、−N(R)、−NHCOR、−NHCONHR、−NHCON(R)、−NRCOR、−NHCOR、−COR、−COH、−COR、−CONHR、−CON(R)、−S(O)R、−SONH、−S(O)R、−SONHR、または−NHS(O)R(ここで、Rは、脂肪族または置換された脂肪族である)が挙げられる。
【0031】
脂肪族または非芳香族複素環式環は、1つ以上の置換基を含み得る。脂肪族または非芳香族複素環式環の飽和炭素における適切な置換の例としては、不飽和炭素(例えば、芳香族環)についての上記に掲載される置換基および以下が挙げられる:=O、=S、=NNHR、=NNR、=N−OR、=NNHCOR、=NNHCOR、=NNHSOR、または=NR。
【0032】
芳香族環または非芳香族の複素環式環における置換可能な窒素は、必要に応じて、置換される。窒素における適切な置換基としては、R、COR、S(O)R、およびCOR(ここで、Rは、脂肪族または置換された脂肪族である)が挙げられる。
【0033】
本明細書に記載される化合物のカルボン酸またはエステル部分の、等配電子的置換または生物学的に等配電子的(bioisosteric)な置換は、本発明の範囲内にある。アイソスター(isostere)(これは、親のカルボン酸またはエステルと類似の生物学的特性を有する新規の化合物を作製するための原子または原子群の交換から生じる)は、当該技術分野において公知である。生物学的配電子的な置換は、物理化学または位相幾何学に基づいている。カルボン酸に対する等配電子的な置換の例は、CONHSO(アルキル)(例えば、CONHSOMeである。
【0034】
本発明の特定化合物が、互変異性形態または水和物形態(化合物のこのような形態の全てが、本発明の範囲内にある)で存在し得ることは、当業者にとって明らかである。他に述べられない限り、本明細書中に示される構造はまた、この構造の全ての立体化学的形態;すなわち、各々の不斉中心に対するR立体配置およびS立体配置を含むことを意味する。従って、単一の立体化学的異性体、ならびに本発明の化合物の鏡像異性体およびジアステレオマーの混合物は、本発明の範囲内にある。他に述べられない限り、本明細書中に示される構造はまた、1つ以上の同位体的に富化された原子の存在下でのみ異なる、化合物を含むことを意味する。例えば、本発明の構造(重水素または三重水素による水素の置換、または13C−もしくは14C−富化された炭素による炭素の置換を除いて)は、本発明の範囲内にある。このような化合物は、例えば、生物学的アッセイにおける分析的ツールまたはプローブとして有用である。
【0035】
本発明の好ましい化合物は、以下の特徴の1つ以上、およびより好ましくは全てを有する:
(a)Rは、水素、T(n)−RまたはT(n)−Arより選択される;
(b)Rは、水素、−R、−CHOR、CHOH、CH(複素環)、−CH(置換されたヘテロシクリル)、−(ヘテロシクリル)、または−(置換されたヘテロシクリル)より選択される;
(c)Rは、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキル、アリール、またはアラルキルより選択される;そして/あるいは
(d)Gが、水素またはメチルである。
【0036】
【化8】

本発明の1実施形態は、Qがピリミジン環である、処方物Iの化合物(上記の処方物IIによって代表される)に関係する。別の実施形態は、Qがピリミジン環である、処方物Iの化合物(上記の処方物IIIによって代表される)に関係する。
【0037】
基の例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:フェニル、シクロへキシル、ピリジル、ナフチル、およびキノリニル(これらの各々は、必要に応じて置換され得る)。R基の例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:水素、メチル、アルコキシメチル(例えば、メトキシメチル、メトキシエトキシメチルおよびエトキシメチル)、ベンジルオキシメチル、およびヘテロシクリルメチル(例えば、ピペリジン−1−イルメチル、モルホリン−4−イルメチル、およびテトラヒドロキシフラン−3−イルメチル)(これらの各々は、必要に応じて置換される。R基の例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:フェニルおよびベンジル(これらの各々は、必要に応じて置換される)。
【0038】
以下の表1は、Qがピリミジンである、処方物IIの化合物の例を示す。
【0039】
【表1】






本発明の化合物は、一般に、以下の一般的なスキームによって、および実施例によって示されるような、アナログ化合物に関して当業者に公知の方法によって調製され得る。
【0040】
【化9】

上記のスキームIは、GおよびRが各々水素である、本発明の化合物を調製するために用いられ得る合成スキームを示す。Oxone(登録商標)は、ペルオキシ一硫酸カリウムである。例示的目的のために、化合物3から化合物5を調製する工程は、シクロへキシル基としてRおよびベンジル基としてRを導入する。他のR基およびR基が、他のRアミンおよびRの他のブロミドなどを使用する類似の様式において導入され得ることは、当業者に理解される。
【0041】
【化10】

上記のスキームIIは、Rが水素であり、Gが水素以外のものである本発明の化合物を調製するために用いられ得る、合成スキームを示す。
【0042】
【化11】

上記のスキームIIIは、Gが水素であり、Rが水素以外のものである本発明の化合物を調製するための、合成スキームを示す。上記のスキームが、Qがピリミジン環である化合物への経路を記載する一方、Qがピリミジン環である化合物が類似の様式において調製され得ることは、当業者にとって明らかである。
【0043】
【化12】

上記のスキームIVは、ピリミジン環が合成の最後に作製される(工程d)、本化合物の調製の別の経路を示す。
【0044】
【化13】

上記のスキームVは、本発明の化合物の調製のための代替の経路を示し、ここで、Rは水素以外である。この反応および標準的な生産状態の後、化合物34および化合物36を、精製することなく次の段階で使用した。化合物35をカラムクロマトグラフィーによって精製し、化合物37を分取用HPLCによって精製した。この経路は、化合物37について図示されるが、この一般的なアプローチは、他のGおよびR−R基を有する化合物の調製に適用可能であることが、当業者によって理解される。
【0045】
本発明の化合物は、全部で3つのJNKアイソフォーム(JNK1、JNK2およびJNK3)の驚くほど強力なインヒビターであることが見出された。本発明の化合物と最も密接に関係する先行技術の化合物との間の有意な差異は、以下に記載されるように、改善されたJNK1阻害およびp38活性に対するJNKについての選択性に存在することが見出された。
【0046】
本発明のJNKインヒビターの活性は、インビトロ、インビボ、または細胞株にてアッセイされ得る。インビトロアッセイは、活性化JNKのキナーゼ活性かまたはATPアーゼ活性のいずれかの阻害を測定するアッセイを含む。例えば、下記の試験実施例を参照のこと。代替のインビトロアッセイは、そのインヒビターがJNKに結合する能力を定量化し、そして結合するより前にそのインヒビターを放射標識し、インヒビター/JNK複合体を単離し、そして結合した放射標識の量を測定することによってか、または新しいインヒビターを、公知の放射リガンドに結合したJNKとともにインキュベートする、競合実験をすることによってのいずれかで、測定され得る。当業者は、任意のタイプまたはアイソフォームのJNKを使用し得、それは、どのJNKのタイプまたはアイソフォームが阻害されるかに依存する。
【0047】
JNKインヒビターまたはその薬学的な塩は、動物またはヒトに投与するための薬学的組成物へと処方され得る。JNK媒介状態を処置または予防するために効果的な量のJNKインヒビターおよび薬学的に受容可能なキャリアを含むこれらの薬学的組成物が、本発明の別の実施形態である。
【0048】
用語「JNK媒介状態]は、本明細書中で使用される場合、JNKが役割を果たすことが公知である、任意の疾患または他の有害状態を意味する。このような状態としては、限定しないが、以下が挙げられる:炎症性疾患、自己免疫疾患、破壊性骨障害、増殖性障害、癌、感染症、神経変性疾患、アレルギー、発作における再灌流/虚血、心臓発作、脈管形成障害、臓器低酸素症、血管過形成、心肥大、トロンビン誘発血小板凝集およびプロスタグランジンエンドペルロオキシダーゼシンターゼ−2に関連する状態。
【0049】
本発明の化合物によって処置または予防され得る炎症性疾患としては、限定しないが以下が挙げられる:急性膵炎、慢性膵炎、喘息、アレルギーおよび成人呼吸窮迫症候群。
【0050】
本発明の化合物によって処置または予防され得る自己免疫疾患としては、限定しないが以下が挙げられる:糸球体腎炎、慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、強皮症、慢性甲状腺炎、グレーヴズ病、自己免疫性胃炎、糖尿病、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性好中球減少症、血小板減少症、アトピー性皮膚炎、活動性慢性肝炎、重症筋無力症、多発性硬化症、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、乾癬または対宿主性移植片病。
【0051】
本発明の化合物によって処置または予防され得る破壊性骨障害としてとしては、限定しないが以下が挙げられる:骨粗しょう症、変形性関節症および多発性骨髄腫に関連する骨障害。
【0052】
本発明の化合物によって処置または予防され得る増殖性疾患としては、限定しないが以下が挙げられる:急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、転移性黒色腫、カポージ肉腫、多発性骨髄腫およびHTLV−1媒介腫瘍形成。
【0053】
本発明の化合物によって処置または予防され得る脈管形成障害としては、限定しないが以下が挙げられる:固形腫瘍、眼性血管形成、乳児血管腫。本発明の化合物によって処置または予防され得る感染症としては、限定しないが以下が挙げられる:敗血症、敗血症性ショックおよび細菌性赤痢。
【0054】
本発明の化合物によって処置または予防され得るウイルス性疾患としては、限定しないが以下が挙げられる:急性肝炎感染(A型肝炎、B型肝炎、およびC型肝炎を含む)HIV感染およびCMV網膜炎。
【0055】
本発明の化合物によって処置または予防され得る神経変性疾患としては、限定しないが以下が挙げられる:アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、てんかん、発作、ハンティングトン病、外傷性脳損傷、虚血性発作および出血性発作、大脳虚血、または外傷性損傷、急性低酸素症、虚血またはグルタミン酸神経毒性を原因とする神経変性疾患(誘導性神経変性疾患を含む)。
【0056】
「JNK媒介状態」はまた、発作における再灌流/虚血、心臓発作、心筋虚血、臓器低酸素症、血管過形成、心臓肥大、肝虚血、肝臓疾患、うっ血性心不全、病的な免疫応答(例えばT細胞活性化およびトロンビン誘発血小板凝集を原因とする免疫応答)。
【0057】
さらに、本発明のJNKインヒビターは、誘発性の炎症誘発性(pro−inflammatory)タンパク質の発現を阻害し得る。それゆえに、本発明の化合物によって処置され得る他の「JNK媒介状態」としては、以下が挙げられる:水腫、痛覚脱失(消失)症、熱および痛み(例えば神経筋の痛み、頭痛、癌の痛み、歯の痛み、および関節炎の痛み)。
【0058】
本発明の化合物はまた、Srcファミリーキナーゼ(特にSrcおよびLck)のインヒビターとして有用である。これらのキナーゼの一般的評論について、ThomasおよびBrugge、Annu.Rev.Cell Dev.Biol.(1997)13,513;LawrenceおよびNiu,Pharmacol.Ther.(1998)77,81;TatosyanおよびMizenina,Biochemistry(Moscow)(2000)65,49を参照のこと。従って、これらの化合物は、1つ以上のSrcファミリーキナーゼ活性によって影響されることが公知である疾患または状態を処置するために有用である。このような疾患または状態としては、以下が挙げられる:高カルシウム血症、再狭窄、高カルシウム血症、骨粗しょう症、変形性関節症、骨転移の対症療法、慢性関節リウマチ、炎症性腸疾患、多発性硬化症、乾癬、狼瘡、対宿主性移植片病、T細胞媒介過敏症疾患、橋本甲状腺炎、ギヤン−バレー症候群、慢性閉塞性肺障害、接触皮膚炎、癌、パジェット病、ぜん息、虚血障害または再灌流障害、アレルギー性疾患、アトピー性皮膚炎およびアレルギー性鼻炎。Src活性によって影響される疾患としては、特に以下が挙げられる:高カルシウム血症、骨粗しょう症、変形性関節症、癌、骨転移の対症療法およびパジェット病。Lck活性によって影響される疾患としては、特に以下が挙げられる:自己免疫疾患、アレルギー、慢性関節リウマチおよび白血病。式IIおよび式IIIの化合物(ここで、Rはアリールである)は、Srcファミリー(特に、SrcまたはLck)に関連する疾患を処置するために特に有用である。
【0059】
本発明の化合物に加えて、本発明の化合物の薬学的に受容可能な誘導体またはプロドラッグもまた、上記で確認された障害を処置または予防するための組成物にて利用され得る。
【0060】
「薬学的に受容可能な誘導体またはプロドラッグ」は、レシピエントへの投与の際に、本発明の化合物あるいはその阻害活性代謝産物、または残渣を、直接的または間接的のいずれかで提供し得る、本発明の化合物の任意の薬学的に受容可能な塩、エステル、エステル塩または他の誘導体を意味する。特に好ましい誘導体またはプロドラッグは、このような化合物を哺乳動物に投与した場合に(例えば、経口投与される化合物を、血液中に、より容易に吸収させることによって)、親種に対して、本発明の化合物のバイオアベイラビリティーを上昇させるか、または、生物学的区画(例えば、脳またはリンパ系)への親化合物の送達を増強する、誘導体またはプロドラッグである。
【0061】
本発明の化合物の薬学的に受容可能なプロドラッグとしては、限定されないが以下が挙げられる:エステル、アミノ酸エステル、リン酸エステル、金属塩およびスルホン酸エステル。
【0062】
本発明の化合物の薬学的に受容可能な塩としては、薬学的に受容可能な無機酸および有機酸ならびに無機塩基および有機塩基から誘導された塩が挙げられる。適切な酸性塩の例としては、以下が挙げられる:酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、硫酸水素塩、酪酸塩、クエン酸塩、ショウノウ酸塩、ショウノウスルホン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、グリコール酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバリン酸塩、プロピオン酸塩、サリチル酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トシル酸塩およびウンデカン酸塩。シュウ酸のような他の酸は、それ自体は薬学的に受容可能ではないが、本発明の化合物およびその薬学的に受容可能な酸付加塩を得る際の中間体として有用な塩の調製において利用され得る。
【0063】
適切な塩基から誘導される塩としては、アルカリ金属(例えば、ナトリウムおよびカリウム)塩、アルカリ土類金属(例えば、マグネシウム)塩、アンモニウム塩およびN(C1−4アルキル)塩が挙げられる。本発明はまた、本明細書中に開示される化合物の任意の塩基性窒素含有基)の四級化(quaternization)を想定する。水溶性産物または油溶性産物あるいは水分散性産物または油分散性産物が、このような四級化(quaternization)によって得られ得る。
【0064】
これらの薬学的組成物中に使用され得る薬学的に受容可能なキャリアとしては、限定しないが、以下が挙げられる:イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質(例えば、ヒト血清アルブミン)、緩衝物質(例えば、リン酸塩、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物脂肪酸の部分的グリセリド混合物、水、塩または電解質(例えば、硫酸プロタミン、リン酸水素ニナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイド状シリカ、ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロースベースの物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、ろう、ポリエチレン−ポリオキシプロピレン−ブロックポリマー、ポリエチレングリコールおよび羊毛脂。
【0065】
本発明の組成物は、経口的に、非経口的に、吸入スプレーによって、局所的に、直腸に、鼻に、頬に、膣に、または移植レザバーを介して投与され得る。用語「非経口的」は、本明細書中で使用される場合、以下を包含する:皮下、静脈内、筋肉内、関節内、滑液包、胸骨下、髄腔内、肝臓内、病変内および頭蓋内への、注射技術または注入技術。好ましくは、この組成物は、経口的、腹腔内または静脈内に、投与される。
【0066】
本発明の組成物の滅菌した注射可能形態は、水性懸濁液または油性懸濁液であり得る。これらの懸濁液は、適した分散剤または湿潤剤、および懸濁剤を用いて、当該分野において公知の技術に従って処方され得る。この滅菌した注射可能な調製物はまた、無毒な薬学的に受容可能な希釈剤または溶媒中の、滅菌した注射可能な溶液または懸濁液(例えば、1,3−ブタンジオール中の溶液として)であり得る。利用し得る受容可能なビヒクルおよび溶媒の間に、水、リンガー溶液、および塩化ナトリウム等張液が存在する。さらに、滅菌した不揮発性油が、溶媒または懸濁媒体として慣習的に利用される。この目的のために、刺激性の低い任意の不揮発性油(合成のモノグリセリドまたはジグリセリドを含む)が、利用され得る。脂肪酸(例えば、オレイン酸およびそのグリセリド誘導体)は、特に、それらのポリオキシエチル化型では、天然の薬学的に受容可能な油(例えば、オリーブ油またはヒマシ油)であるので、注射可能な調製物において有用である。これらの油溶液または油懸濁液はまた、長鎖アルコール希釈剤または長鎖アルコール分散剤(例えば、カルボキシメチルセルロース、またはエマルジョンおよび懸濁液を含む薬学的に受容可能な投薬形態の処方物において一般に使用される)同様の分散剤を含み得る。薬学的に受容可能な固体、液体、または他の投与形態の製造において一般的に使用される他の一般的に使用される界面活性剤(例えば、Tween、Spanおよび他の乳化剤)またはバイオアベイラビリティー増強剤もまた、処方目的のために使用され得る。
【0067】
任意の経口的に受容可能な投与形態にて、経口投与し得る本発明の薬学的組成物としては、限定しないが、以下が挙げられる:カプセル、錠剤、水性懸濁液または水溶液。経口使用のための錠剤の場合、一般的に使用されるキャリアとしては、ラクトースおよびコーンスターチが挙げられる。ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤もまた、代表的に添加される。カプセル形態での経口投与に関して、有用な希釈材としては、ラクトースおよび乾燥コーンスターチが挙げられる。水性懸濁液が経口使用に必要とされる時、活性成分は、乳化剤および懸濁剤と併用される。所望であるなら、特定の甘味料、矯味矯臭剤または着色料もまた、添加し得る。
【0068】
あるいは、本発明の薬学的組成物は、直腸投与のために坐剤の形態として投与され得る。これらは、適切な非刺激性の賦形剤と薬剤を混合することによって調製され得、ここで賦形剤は、室温において固体であるが、直腸温度では液体であり、従って賦形剤は直腸において薬物を放出するために融解する。このような材料として、カカオ脂、蜜ろうおよびポリエチレングリコールが挙げられる。
【0069】
本発明の薬学的組成物はまた、特に処置の標的が、局所的な適用によって容易に接近可能な領域または器官(目の疾患、皮膚の疾患、または腸管下部の疾患が挙げられる)を含む場合、局所的に投与され得る。適切な局所的処方物は、これらの各領域または各組織に対し、容易に調製される。
【0070】
腸管下部に対する局所的な適用は、直腸坐剤処方物(上を参照のこと)または適切な浣腸剤処方物としてもたらされ得る。局所的な経皮パッチはまた、使用され得る。
【0071】
局所的な適用のために、この薬学的組成物は、適切な軟膏として処方され得、ここで軟膏は、1つ以上のキャリア中に懸濁されまたは溶解されている活性成分を含有する。本発明の化合物の局所投与のためのキャリアは、鉱油、流動パラフィン、白色ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン化合物、乳化ろうおよび水が挙げられるが、これらに限定されない。あるいは、この薬学的組成物は、適切なローション剤またはクリームとして処方され得、ここでローション剤またはクリームは、1つ以上の薬学的に受容可能なキャリア中に懸濁されまたは溶解されている活性成分を含有する。適切なキャリアとして、鉱油、モノステアリン酸ソルビタン、ポリソルベート60、セチルエステルろう(cetyl esters wax)、セテアリルアルコール、2−オクチルドデカノール、ベンジルアルコールおよび水が挙げられるが、これらに限定されない。
【0072】
眼科の使用のために、薬学的組成物は、等張の、pHが調整された滅菌食塩水中に微粉化された懸濁液として、または好ましくは、塩化ベンジルアルコニウム物のような保存薬を有するもしくは有さない、等張の、pHが調整された滅菌食塩水中に溶液として、処方され得る。あるいは、眼科の使用のために、薬学的組成物は、ワセリンのような軟膏中に処方され得る。
【0073】
本発明の薬学的組成物はまた、鼻エアロゾルまたは吸入によって投与され得る。このような組成物は、薬学的処方の分野で周知の技術に従って調製され、かつベンジルアルコールあるいは他の適切な保存薬、バイオアベイラビリティーを増強するための吸収促進剤、フッ化炭素、および/または他の従来の可溶化剤もしくは分散剤を使用する、生理食塩水中の溶液として調製され得る。
【0074】
単回の投薬形態を生成するためのキャリア材料と組み合され得るJNKインヒビターの量は、処置される対象、投与の特定の様式に依存して変わる。好ましくは、0.01〜100mg/kg体重/日のインヒビターの投薬量が、これらの組成物を受容する患者に対し投与され得るように、組成物は、処方されるべきである。
【0075】
任意の特定の患者のための具体的な投薬量および処置レジメンは、種々の要因に依存することが理解され、ここで要因として、使用される特定の化合物の活性、年齢、体重、身体全体の健康、性、食事、投与時間、排出の速度、薬物の組合せ、および処置する医師の判断ならびに処置される特定の疾患の重症度が挙げられる。インヒビターの量はまた、組成物中の特定の化合物に依存する。
【0076】
別の実施形態において、本発明は、JNKに媒介される状態を処置または予防するための方法を提供し、ここでこの方法は、上記された薬学的組成物の一つを患者に投与する工程を包含する。用語「患者」は、本明細書中において使用する場合、動物、好ましくはヒトを意味する。
【0077】
好ましくは、この方法は、以下の群から選択される状態を処置または予防するために使用される:炎症性の疾患、自己免疫疾患、骨破壊障害、増殖性障害(proliferative disorder)、感染性疾患、変性疾患、神経変性疾患、アレルギー、発作における再灌流/虚血、心臓発作、脈管形成障害、器官の低酸素症、血管過形成、心臓肥大、およびトロンビン誘導型血小板凝集、または上記された特定のいずれかの疾患もしくは障害が挙げられる。
【0078】
処置されるかまたは予防されるべきJNKに媒介される特定の状態に依存して、この状態を処置または予防するために通常投与される、付加的な薬物が、本発明のインヒビターとともに投与され得る。例えば、化学療法剤または他の抗増殖性因子が、増殖性の疾患を処置するために本発明のJNKインヒビターと組み合され得る。
【0079】
これらの付加的な薬剤は、JNKインヒビターを含有する組成物から、複数の投薬量レジメンの一部として、別々に投与され得る。または、これらの薬剤は、単一の組成物中のJNKインヒビターとともに混合される、単一投薬形態の一部であり得る。
【実施例】
【0080】
本明細書中に記載された発明がより完全に理解され得るために、以下の実施例が、示される。これらの実施例は、例示の目的としてのみ示され、いかなる方法によっても本発明を限定すると解釈されないことが理解される。
(実施例1)
【0081】
【化14】

(4−[1−(2,4−ジフルオロ−フェニル)−1H−ピラゾール−4−イル]−2−メタンスルファニル(methanesulfanyl)−ピリミジン)
攪拌棒を備えた25mL丸底フラスコに、400mg(2.04mmol、1.00当量)の2−(2−メタンスルファニル−ピリミジン−4−イル)−マロンアルデヒド(Brownら、Aust.J.Chem.33(10)、2291−2298、1980に従って得られた)、400mgの2,4−ジフルオロフェニルヒドラジン(2.78mmol、1.36当量)および10mLのメタノールを入れた。得られた溶液を、65℃で12時間攪拌し、ついで、黄色い油状物へと濃縮し、この黄色い油状物を、シリカゲルクロマトグラフィー(CHCl、15×1cm)により精製し、黄色い泡状物として生成物315mg(1.04mmol、収率50.7%)を得た。
【0082】
(実施例2)
【0083】
【化15】

(4−[1−(2,4−ジフルオロ−フェニル)−1H−ピラゾール−4−イル]−2−メタンスルホニル−ピリミジン)
メタノールと水との1:1混合物20mL中の315mgの4−[1−(2,4−ジフルオロ−フェニル)−1H−ピラゾール−4−イル]−2−メタンスルホニル−ピリミジン(1.04mmol、1当量)の攪拌した溶液に、単一部分として500mgのOxone(登録商標)を加えた。反応混合物を、12時間、25℃で攪拌し、ついでCHClと水との間で分けた。水層を、CHClを用いて2度洗浄し、そして有機層(orgainc layer)を合わせて、無水NaSOを用いて乾燥した。溶液を、黄色の固形物を得るために濃縮し、これをさらなる精製なしに使用した。H NMR(500MHz、CDCl) δ 8.805(1H,d,J=5Hz,Ar)、8.66(1H,d,J=3Hz,Ar)、8.31(1H,s,Ar),7.90−7.89(1H,m,Ar)、7.62(1H,d,J=5Hz,Ar)、7.07−7.03(2H,m,Ar)、3.39(3H,s,SCH)ppm。
【0084】
(実施例3)
【0085】
【化16】

(シクロヘキシル−{4−[1−(2,4−ジフルオロ−フェニル)−1H−ピラゾール−4−イル]−ピリミジン−2−イル}−アミン)
攪拌棒を備えた25mLの丸底フラスコに、5mLのDMSOに溶解した265mg(0.787mmol、1当量)の4−[1−(2,4−ジフルオロ−フェニル)−1H−ピラゾール−4−イル]−2−メタンスルホニル−ピリミジンを入れた。攪拌した溶液に、100μLのシクロヘキシルアミン(86.7mg、0.874mmol、1.10当量)を加えた。得られた溶液を、85℃に加熱し、12時間攪拌した。次いで、オレンジ色の溶液を、CHClと水の間で分けた。水層に対し、20mLのCHClを用いて2度抽出を行い、有機質層を合わせ、NaSOを用いて乾燥し、そして濃縮し黄色の油状物とした。ここで、この黄色の油状物を、シリカゲルクロマトグラフィー(1:1 CHCl:EtOAc、 Rf=0.2)によって精製し、泡状物として35mg(0.098mmol、収率12.5%)の生成物を得た。H NMR(500MHz、CDCl) δ8.37(1H,d,J=3Hz,Ar)、8.17(1H,d,J=5Hz,Ar)、8.11(1H,s,Ar)、7.83−7.79(1H,m,Ar)、6.97−6.94(2H,m,Ar)、6.64(1H,J=5Hz,Ar)、5.04(1 H,br s,NH)、3.82−3.80(1H,m,cy−Hx),2.01−1.97(3H,m,cy−Hx)、1.70−1.67(2H,m,cy−Hx)、1.59−1.57(1H,m,cy−Hx)、1.37−1.35(2H,m,cy−Hx)、1.20−1.16(2H,m,cy−Hx)ppm。 MS(M+H):356.15。
【0086】
(実施例4)
【0087】
【化17】

(1−(2−メチルスルファニル−ピリミジン−4−イル)−プロパン−2−オン)
−78℃のTHF(100mL)中の(5.23g、38.0mmol)およびフェナントロリン(10mg)の攪拌した溶液に、リチウムジイソプロピルアミンリチウムの溶液(シクロヘキサン中1.5M)を、すべての水が破壊され、溶液が黒みがかるまで(約1mL)、滴下した。次いで、さらなるリチウムジイソプロプリアミン(30.4mL)を、5分にわたりゆっくりと加えた。15分後、−78℃で、溶液を、0℃に加温し、そして15分後に−78℃に再冷却した。次いで、THF(15mL)(THFは、4モレキュラーシーブを用いて1時間乾燥した)中のN−メトキシ−N−アセトアミド(4.72mL、45.6mmol)溶液を、滴下漏斗(dropfunnel)を通して20分にわたって滴下して加えた。25分後、−78℃において、溶液を、0℃に加温し、30分間攪拌した。この溶液を、希薄なHCl(1M、100mL)の中に注ぎ、EtO(3×200mL)を用いて抽出し、乾燥し(MgSO)、濾過しそして濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー(SiO、20% EtOAc−ヘキサン)によって、生成物(4.75g、26.1mmol、収率69%)を得た。
(実施例5)
【0088】
【化18】

(N−[1−メチル−2−(2−メチルスルファニル−ピリミジン−4−イル)−エチリデン]−N’−フェニル−ヒドラジン)
封管中の乾燥EtOH(2mL)中の1−(2−メチルスルファニル−ピリミジン−4−イル)−プロパン−2−オン(182mg、1.00mmol)およびフェニルヒドラジン(99μL、1.00mmol)の攪拌した溶液を、15分間、100℃に加熱した。反応物を、真空中で濃縮して黄色いペースト状の粗生成物を得た。
【0089】
【化19】

(4−(3−メチル−1−フェニル−1H−ピラゾール−4−イル)−2−メチルスルファニルピリミジン)
上記で調製した精製していないペースト状物に、ジメチルホルムアミジド−ジメトキシアセタール(DMF−DMA、1.33mL、10mmol)を加えた。得られた溶液を、封管中で3日間、100℃に加熱した。この溶液を、冷却し、そしてHO(15mL)中に注ぎ、そしてEtOAc(3×15mL)を用いて抽出した。合わせた有機抽出物を、飽和NHCl(15mL)で洗浄し、ブライン(15mL)で洗浄し、乾燥し(MgSO)、濾過しそして濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー(SiO、30%EtOAc−ヘキサン)によって、生成物を得た(225mg、0.800mmol、80%)。
【0090】
(実施例6)
【0091】
【化20】

(2−メタンスルホニル−4−(3−メチル−1−フェニル−1H−ピラゾール−4−イル)−ピリミジン)
メタノール(8mL)中の4−(3−メチル−1−フェニル−1H−ピラゾール−4−イル)−2−メチルスルファニル−ピリミジン(225mg、0.800mmol)を攪拌した溶液に、周囲温度で、20分間にわたりHO(8mL)中のOxone(登録商標)(1.48g、2.40mmol)溶液を滴下して加えた。16時間後、この溶液を、HO(50mL)中に注ぎそしてCHCl(4×25mL)を用いて抽出した。合わせた抽出物を、乾燥し(MgSO)、濾過しそして濃縮して生成物(239mg、0.760mmol、95%)を得た。
【0092】
(実施例7)
【0093】
【化21】

([4−(3−メチル−1−フェニル−1H−ピラゾール−4−イル)−ピリミジン−2−イル]−フェニルアミン)
2−メタンスルホニル−4−(3−メチル−1−フェニル−1H−ピラゾール−4−イル)−ピリミジン(38mg、0.12mmol)およびアニリン(ニート(neat)、100μL)の混合物を、100℃で15時間加熱した。揮発性の成分を、加温しながら窒素の流れの下で蒸発させた。メタノールからの再結晶によって、58%の収率で生成物を得た(23mg、0.070mmol)。
【0094】
(実施例8)
【0095】
【化22】

(4−グアニジノ−ベンゼンスルフォンアミド)
4−アミノベンゼンスルホンアミド(30mmol、1当量)、シアナミド(1.3g、31mmol、1.03当量)、および4N 塩化水素を含むジオキサン(8mL、32mmol)を、10分間室温で攪拌し、そして80℃で18時間加熱した。この混合物を、水(30mL)およびジエチルエーテル(50mL)で希釈した。水層を、エーテル(30mL)を用いて洗浄し、そして有機層(organic lalyer)を、廃棄した。水層を、6N HCl水溶液(6mL)を用いて中和し、そして酢酸エチル(50mL)を用いて希釈した。水層を、酢酸エチル(50mL)を用いて4回抽出した。合わせた有機層を、固体の化合物を得るために減圧下で濃縮し、この固体の化合物を、ジエチルエーテル(30mL)で洗浄して、淡黄色の表題化合物を得た。この化合物を、LC/MSおよびHPLCを用いて特徴付けた。
【0096】
(実施例9)
【0097】
【化23】

(3−ジメチルアミノ−1−(5−メチル−1−フェニル−1H−ピラゾール−4−イル)プロペノン)
1−(5−メチル−1−フェニル−1H−ピラゾール−4−イル)−エタノン(10mmol)を、アセトリニトリル(5mL)およびDMF−DMA(2mL)中に溶解し、そして18時間還流した。溶媒を、取り除き、そしてエーテル(20mL)を用いて粉砕し、そしてこの黄色の固体を、濾過し、エーテル(10mL)を用いて洗浄して、表題の化合物を得た。
【0098】
(実施例10)
【0099】
【化24】

(4−[4−(5−メチル−1−フェニル−1H−ピラゾール−4−イル)−ピリミジン−2−イルアミノ]−ベンゼンスルホンアミド)
3−ジメチルアミノ−1−(5−メチル−1−フェニル−1H−ピラゾール−4−イル)−プロペノン(0.2mmol)および4−グアニジノ−ベンゼンスルホンアミド(0.2mmol)を含むアセトリニトリル(0.25mL)を、24時間加熱還流し、得られた混合物を、メタノール(3mL)で希釈した。スラリーを、濾過しそして固形物を、メタノール(2mL)で洗浄し、窒素の下で乾燥して表題の化合物を得た。M+H(407.0);HPLC Rt=3.168。HPLC分析を、HP1100 HPLCを用いて行い、そして8分間分析法(eight minute analysis method)を以下のように行った:(0分、10%B;1分、30%B;5分、90%B;6.5分、90%B;6.7分 10%B)、ここでAは0.01%TFAを含む水であり、そしてBは、0.01%TFAを含むアセトニトリルである。分析用カラムは、YMC ODS−AQ、30×100mmであり、流速1mL/分とし、ダイオード(diodo)光線検出器(300nm、280nm、254nm、220nmおよび210nmの5波長をモニターした)を25℃で使用した。
【0100】
(JNK3タンパク質のクローニング、発現および精製)
クエリ(問い合わせ)(query)として公開されたJNK3α1のcDNAを使用するESTデータベースのBLAST検索で、ヒトJNK3α1に対する全体のコード配列を含むESTクローン(#632588)を同定した。pfuポリメラーゼ(Strategene)を使用するポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を、NcoI部位およびBamHI部位でpET15−B発現ベクターにクローニングするために、このcDNAに制限酵素認識部位を導入するために使用した。このタンパク質を、E.coli内で発現させた。発現させた全長タンパク質(メチオニン 1−グルタミン 422)の乏しい溶解度に起因して、40位のセリン残基(セリン 40)で開始するN末端短縮型のタンパク質を産生した。この短縮は、JNK1タンパク質およびJNK2タンパク質のセリン2に対応し、そしてメチオニン(開始)残基およびグリシン残基により先行される。このグリシン残基は、発現ベクターにクローニングするためのNcoI部位を導入するために付加した。さらに、系統的なC末端短縮を、PCRにより実施し、回折品質結晶を生じる構築物を同定した。このような構築物の1つは、JNK3α1のアミノ酸残基セリン40−グルタミン酸402をコードし、そしてMet残基およびGly残基によって先行される。
【0101】
この構築物を、プライマーとして以下のデオキシオリゴヌクレオチド:
【0102】
【数1】

(順方向プライマー(開始コドンに下線を付す))(配列番号:1)
および
【0103】
【数2】

(逆方向プライマー(終止コドンに下線を付す))(配列番号:2)
を使用するPCRによって調製し、そしてDNA配列決定法によって確認した。コントロール実験は、この短縮型JNK3タンパク質が、インビトロで上流キナーゼMKK7を用いて活性化させた場合、ミエリン塩基性タンパク質に対して同等のキナーゼ活性を有することを示した。
【0104】
E.coli菌株BL21(DE3)(Novagen)を、JNK3発現構築物を用いて形質転換し、そしてこの細胞が対数期(OD600約0.8)になるまで振盪フラスコで100μg/mlのカルベニシリンを補充したLB中で30℃で増殖させた。イソプロピルチオ−β−D−ガラクトシダーゼ(IPTG)を、最終濃度0.8mMまで添加し、そしてこの細胞を、2時間後、遠心分離によって回収した。
【0105】
JNK3を含むE.coli細胞ペーストを、10容積/gの溶解緩衝液(10%グリセロール(v/v)、100mM NaCl、2mM DTT、0.1mM PMSF、2μg/ml ペプスタチン、各々1μg/mlのE−64およびロイペプチンを含む、50mM HEPES(pH7.2))に再懸濁した。細胞を、マイクロフリューダイザ(microfluidizer)を使用して氷上で溶解し、そして100,000×gで30分間、4℃で遠心分離した。この100,000×gの上清を、緩衝液A(20mM HEPES、pH7.0、10%グリセロール(v/v)、2mM DTT)を用いて1:5に希釈し、そして4℃でSP−セファロース(Pharmacia)カチオン交換クロマトグラフィー(カラム容積:2.6×20cm)により精製した。この樹脂を、5カラム容積の緩衝液Aで洗浄し、続いて、50mMのNaClを含む5カラム容積の緩衝液Aで洗浄した。結合したJNK3を、7.5カラム容積の線形勾配の50〜300mMのNaClで溶出させた。JNK3は、150〜200mMのNaClの間で溶出した。
【0106】
(JNK3の活性化)
5mgのJNK3を、100mM NaCl、5mM DTT、20mM MgClおよび1mM ATPを含む50mM HEPES緩衝液(pH7.5)において、0.5mg/mlになるまで希釈した。GST−MKK7(DD)を、1:2.5のGST−MKK7:JNK3のモル比で添加した。25℃で30分間のインキュベーション後、反応混合物を、Centriprep−30(Amicon、Beverly、MA)において限外濾過により5倍濃縮し、10mlに希釈し、そしてさらなる1mMのATPを添加した。この手順を3回繰り返して、ADPを除去し、そしてATPを補充した。最終的なATPの添加は5mMであり、そして混合物を4℃で一晩インキュベートした。
【0107】
活性化されたJNK3/GST−MKK7(DD)の反応混合物を、透析または限外濾過によって、5mM DTTおよび5%グリセロール(w/v)を含む50mM HEPES緩衝液(pH7.5)内に交換した。この反応混合物を、1.1Mのリン酸カリウム(pH7.5)で調整し、そしてRainin Hydroporeカラムを使用する疎水性相互作用クロマトグラフィー(25℃)によって精製した。GST−MKK7および不活性化したJNK3は、これらの条件下では結合せず、その結果、1.1〜0.05Mのリン酸カリウム勾配を流速1ml/分で60分にわたって展開する場合、二重にリン酸化されたJNK3が、単一にリン酸化されたJNKから分離される。活性化したJNK3(すなわち、二重にリン酸化されたJNK3)を、0.25〜1mg/mlで、−70℃で保存した。
【0108】
(JNK阻害アッセイ)
化合物を、分光光度法連結酵素アッセイによるJNK3の阻害についてアッセイした。このアッセイにおいて、固定された濃度の活性化したJNK3(10nM)を、10mM MgCl、2.5mMホスホエノールピルビン酸、200μM NADH、30μg/mLピルビン酸キナーゼ、10μg/mL乳酸デヒドロゲナーゼ、および200μM EGFレセプターペプチドを含む0.1M HEPES緩衝液(pH7.5)を含む緩衝液内で、DMSOに溶解した種々の濃度の強力なインヒビターを共に、30℃で10分間インキュベートした。このEGFレセプターペプチドは、配列
【0109】
【数3】

を有し、そしてJNK3触媒化キナーゼ反応内のホスホリルアクセプターである。この反応を、10μM ATPの添加によって開始し、そしてこのアッセイプレートを、分光光度計のアッセイプレート区画に挿入し、これを、30℃で維持した。340nmでの吸光度の減少を、時間の関数としてモニタリングした。インヒビター濃度の関数としての速度データを、競合的阻害速度論モデルに当てはめて、Kを決定した。
【0110】
JNK1アッセイおよびJNK2アッセイを、類似の様式で実施した。
【0111】
(昆虫細胞内でのp38キナーゼのクローニング)
ヒトp38キナーゼの2つのスプライス改変体(CSBP1およびCSBP2)を、同定した。特異的なオリゴヌクレオチドプライマーを、テンプレートとしてHeLa細胞ライブラリー(Stratagene)を使用して、CSBP2
cDNAのコード領域を増幅するために使用した。このポリメラーゼ連鎖反応産物を、pET−15bベクター(Novagen)にクローン化した。バキュロウイルス転移ベクター(pVL−(His)6−p38)を、プラスミドpVL1392(Pharmingen)内の相補部位にpET15b−(His)6−p38のXbaI−BamHIフラグメントをサブクローニングすることによって構築した。
【0112】
発現されたタンパク質のDNA配列決定およびN末端配列決定によって確認されるように、このプラスミドpVL−(His)6−p38は、p38のN末端にインフレームで融合された23残基のペプチド(
【0113】
【数4】

、ここでLVPRGSは、トロンビン切断部位を表す)からなる組換えタンパク質の合成に指向した。Spodoptera frugiperda(Sf9)昆虫細胞の単層培養物(ATCC)を、Tフラスコ中の10%ウシ胎仔血清を補充したTNM−FH培地(Gibco BRL)中、27℃で維持した。対数期でのSf9細胞を、リポフェクチン(Invitrogen)を使用して、オートグラファ核多角体ウイルス(Pharmingen)の線形ウイルスDNAおよび転移ベクターpVL−(His)6−p38で同時トランスフェクトした。個々の組換えバキュロウイルスクローンを、1%低融点アガロースを使用するプラークアッセイによって精製した。
【0114】
(組換えp38キナーゼの発現および精製)
Trichoplusia ni(Tn−368)High−FiveTM細胞(Invitrogen)を、27℃で振盪フラスコ内においてExcel−405無タンパク質培地(JRH Bioscience)の懸濁液中で増殖さした。1.5×10細胞/mlの密度の細胞を、5の感染多重度で上記に記載された組換えバキュロウイルスを用いて感染させた。組換えp38の発現レベルを、ウサギ抗p38抗体(Santa Cruz Biotechnology)を使用する免疫ブロット法によってモニタリングした。この細胞集団を、p38の発現レベルが最大に達する、感染後72時間で回収した。
【0115】
(His)タグ化p38を発現する細胞由来の凍結細胞ペーストを、5容量の緩衝液A(50mM NaHPO pH8.0、200mM NaCl、2mM β−メルカプトエタノール、10%グリセロールおよび0.2mM PMSF)で解凍した。マイクロフリューダイザ(microfluidizer)での細胞の機械的な破壊後、この溶解物を、30分間、30,000×gで遠心分離した。この上清を、2〜4mgの予期されるp38につき1mlの樹脂の比率で、TalonTM(Clontech)金属親和性樹脂と共に3〜5時間、4℃でバッチ様式でインキュベートした。この樹脂を、500×gで、5分間遠心分離することによって沈殿させ、そして緩衝液Aを用いてバッチ様式で緩やかに洗った。この樹脂を、スラリー化し、そしてカラム(約2.6×5.0cm)に注ぎ、そして緩衝液A+5mMイミダゾールを用いて洗った。
【0116】
この(His)−p38を、緩衝液A+100mMイミダゾールを用いて溶出し、続いて2リットルの緩衝液B(50mM HEPES、pH7.5、25mM β−グリセロリン酸、5%グリセロール、2mM DTT)に対して4℃で一晩透析した。このHisタグを、1mgのp38につき1.5ユニットのトロンビン(Calbiochem)の添加および20℃で2〜3時間のインキュベーションにより除去した。このトロンビンを、0.2mM PMSFの添加によってクエンチし、次いで、サンプル全体を、2mlのベンズアミジンアガロース(American International Chemical)カラムにロードした。
【0117】
フロースルー画分を、緩衝液B+0.2mM PMSFで前もって平衡化した2.6×5.0cm Q−セファロース(Pharmacia)カラムに直接的にロードした。このp38を、緩衝液B内の0.6M NaClまでの20カラム容積の線形勾配を用いて溶出した。この溶出されたタンパク質のピークをプールし、そして4℃で一晩、緩衝液C(50mM HEPES、pH7.5、5%グリセロール、50mM NaCl、2mM DTT、0.2mM PMSF)に対して透析した。
【0118】
この透析されたタンパク質を、3〜4mlまでCentriprep(Amicon)で濃縮し、そして2.6×100cm Sephacryl S−100HR(Pharmacia)カラムにアプライした。このタンパク質を、35ml/時間の流速で溶出した。この主要なピークをプールし、20mM DTTに調整し、10〜80mg/mlまで濃縮し、そして−70℃でアリコートで凍結させるか、または即座に使用した。
【0119】
(p38の活性化)
p38を、20℃で30分間、緩衝液B+10mM MgCl、2mM ATP、0.2mM NaVO内で0.005mg/mlのDD二重変異MKK6と0.5mg/mlのp38を合わせることによって活性化した。次いで、この活性化混合物を、1.0×10cm MonoQカラム(Pharmacia)にロードし、そして緩衝液B内で1.0M NaClまでの線形20カラム容積の勾配を用いて溶出させた。この活性化されたp38は、ADPおよびATPの後に溶出した。この活性化したp38のピークを、プールし、そして緩衝液B+0.2mM NaVOに対して透析し、NaClを除去した。この透析されたタンパク質を、4.0Mのストック溶液の添加によって1.1Mリン酸カリウムに調整し、緩衝液D(10%グリセロール、20mMβ−グリセロリン酸、2.0mM DTT)+1.1M KHPOで前もって平衡化した1.0×10cm HIC(Rainin Hydropore)カラム上にロードした。このタンパク質を、緩衝液D+50mM KHPOまでの20カラム容積の線形勾配を用いて溶出した。二重リン酸化p38は、主要ピークとして溶出し、そして緩衝液B+0.2mM NaVOに対する透析のためにプールした。この活性化されたp38を、−70℃で保存した。
【0120】
(p38阻害アッセイ)
(A.EGFレセプターペプチドのリン酸化の阻害)
このアッセイを、10mM MgClおよび100mM HEPES緩衝液(pH7.6)の存在下で実行する。代表的なIC50の決定のために、上記の全ての化合物および活性化されたp38(5μM)を含む、ストック溶液を調製した。このストック溶液を、バイアルにアリコート化した。固定された容量のDMSOまたはDMSO中のインヒビター(反応におけるDMSOの最終濃度は、5%である)を、各々のバイアルに導入し、混合し、室温で15分間インキュベートキュベートする。EGFレセプターペプチド、KRELVEPLTPSGEAPNQALLR(p38触媒化キナーゼ反応におけるホスホリルアクセプター)を、200μMの最終濃度まで各々のバイアルに添加する。このキナーゼ反応を、ATP(100μM)を用いて開始し、そしてバイアルを30℃でインキュベートする。30分後、この反応を、等量の10%のトリフルオロ酢酸(TFA)でクエンチする。
【0121】
このリン酸化したペプチドを、HPLC分析によって定量化する。非リン酸化ペプチドからのリン酸化ペプチドの分離を、各々0.1%TFAを含む、水およびアセトニトリルの二成分の勾配を用いて、逆相カラム(Deltapak、5μm、C18 100D、部品番号011795)上で達成する。IC50(50%の阻害を生じるインヒビターの濃度)を、インヒビター濃度に対して残存する活性%をプロットすることによって決定する。
【0122】
(B.ATPase活性の阻害)
このアッセイを、10mM MgCl、25mM β−グリセロリン酸、10%グリセロールおよび100mM HEPES 緩衝液(pH7.6)の存在下で実行する。代表的なKiの決定のために、活性化されたp38反応のATPase活性についてのATPに対するKmを、インヒビターの非存在下、および2つの濃度のインヒビターの存在において決定する。Kを、インヒビターおよびATP濃度の関数としての速度データから決定する。上記の構成成分の全ておよび活性化されたp38(60nM)を含む、ストック溶液を調製する。このストック溶液を、バイアルにアリコート化する。固定された容量のDMSOまたはDMSO中のインヒビター(反応におけるDMSOの最終濃度は、2.5%である)を、各々のバイアルに導入し、混合し、室温で15分間インキュベートする。この反応を、種々の濃度のATPを添加することによって開始し、次いで、30℃でインキュベートする。30分後、この反応を50μlのEDTA(0.1M、最終濃度)、pH8.0でクエンチする。p38のATPase活性の産物、ADPを、HPLC分析によって定量化する。
【0123】
ATPからADPの分離を、以下の組成の二重溶媒勾配を使用する逆相カラム(Supelcosil、LC−18、3μm、部品番号5−8985)で達成する:溶媒A−0.1Mリン酸緩衝液(8mM硫酸水素テトラブチルアンモニウム(Sigma Chemical Co.,カタログ番号T−7158)を含む)、溶媒B−30%メタノールを含む溶媒A。
【0124】
表2は、JNKpおよび38阻害アッセイにおいての選択された化合物の活性を示す。2.0マイクロモル濃度未満のKを有する化合物を「A」と評価し、2.0と10マイクロモル濃度の間のKを有する化合物を「B]と評価し、10マイクロモル濃度より高いKを有する化合物を「C」と評価する。最後のカラムは、本化合物の選択性の尺度としてのJNK3活性に対するp38の比率を示す。
【0125】
【表2】

表2から理解され得るように、本発明の化合物は、JNKの3つのアイソフォーム(JNK1、JNK2およびJNK3)に対する良好な活性を有する。p38/JNK3の比率から理解され得るように、本化合物は、p38に対して活性がはるかに低く、JNKに対する良好な選択性を提供する。代表的な化合物について、JNKに対する阻害活性は、p38に対する阻害活性より最大2または3オーダー大きい活性であると推定される。対照的に、より大きなG置換基(例えば、Gがフェニルまたは4−フルオロ−フェニルである場合)を有する化合物は、p38に対してさらにより活性であり、そしてJNK酵素に対するより乏しい選択性を有する。
【0126】
本発明者らが本発明の多くの実施形態を記載するが、本発明者らの基本的な実施例は変更され、本発明の化合物および方法を使用する他の実施形態を提供し得ることは明白である。従って、本発明の範囲は、特定の実施形態よりも、むしろ添付の特許請求の範囲によって規定され、これらの実施形態が例として示されていることが理解される。
本発明により、例えば、以下が提供される:
(項目1) 式Iの化合物:
【化1】


またはその薬学的に受容可能な誘導体であって、
ここで:
は、水素、CONH、T(n)−R、またはT(n)−Arから選択され;
Rは、脂肪族基または置換された脂肪族基であり;
nは、0または1であり;
Tは、C(=O)、CO、CONH、S(O)、S(O)NH、COCH、またはCHであり;
は、水素、−R、−CHOR、−CHOH、−CH=O、−CHSR、−CHS(O)R、−CH(C=O)R、−CHCOR、−CHCOH、−CHCN、−CHNHR、−CHN(R)、−CH=N−OR、−CH=NNHR、−CH=NN(R)、−CH=NNHCOR、−CH=NNHCOR、−CH=NNHSOR、−アリール、−CH(アリール)、−CHNH、−CHNHCOR、−CHNHCONHR、−CHNHCON(R)、−CHNRCOR、−CHNHCOR、−CHCONHR、−CHCON(R)、−CHSONH、−CH(ヘテロシクリル)、または−(ヘテロシクリル)から選択され;
は、水素、−R、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、アルキルチオアルキル、アミノアルキル、アルキルアミノアルキル、ジアルキルアミノアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキル、アリール、アラルキル、またはアリールオキシアルキルから選択され;
Gは、水素またはC1−3アルキルであり;
Q−NHは、
【化2】


であり;
ここで、該Q−NHのHは、必要に応じてR、COR、S(O)R、またはCORで置換されており;
Aは、NまたはCHであり;
Arは、アリール、置換されたアリール、ヘテロシクリルまたは置換されたヘテロシクリルであり、ここでArは、必要に応じて、0〜3個のへテロ原子を含む部分的に不飽和または全て不飽和である5〜7員環に縮合され;
ここで、該縮合環が存在する場合、該縮合環を含むArの置換可能な炭素原子の各々は、必要に応じておよび独立して、ハロ、R、OR、SR、OH、NO、CN、NH、NHR、N(R)、NHCOR、NHCONHR、NHCON(R)、NRCOR、NHCOR、COR、COH、COR、CONHR、CON(R)、S(O)R、SONH、S(O)R、SONHR、またはNHS(O)Rで置換されており、そしてここで、該縮合環の飽和炭素の各々は、さらに必要に応じておよび独立して、=O、=S、=NNHR、=NNR、=N−OR、=NNHCOR、=NNHCOR、=NNHSOR、または=NRで置換されており;そして
ここでArの置換可能な窒素原子の各々は、必要に応じてR、COR、S(O)R、またはCORで置換されている、
化合物。
(項目2) 項目1に記載の化合物であって、以下:
(a)Rは、水素、T(n)−R、またはT(n)−Arから選択され;
(b)Rは、水素、−R、−CHOR、CHOH、CH(ヘテロシクリル)、−CH(置換されたヘテロシクリル)、−(ヘテロシクリル)、または−(置換されたヘテロシクリル)から選択され;
(c)Rは、−R、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキル、アリール、またはアラルキルから選択され、そして;
(d)Gは、水素またはメチルである、
からなる群から選択される少なくとも1つの特徴を有する、化合物。
(項目3) 項目2に記載の化合物であって、ここで:
(a)Rは、水素、T(n)−R、またはT(n)−Arから選択され;
(b)Rは、水素、−R、−CHOR、CHOH、CH(ヘテロシクリル)、−CH(置換されたヘテロシクリル)、−(ヘテロシクリル)、または−(置換されたヘテロシクリル)から選択され;
(c)Rは、−R、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキル、アリール、またはアラルキルから選択され、そして;
(d)Gは、水素またはメチルである、
化合物。
(項目4) 項目3に記載の化合物であって、ここでGは、水素またはメチルであり;Rは、フェニル、シクロヘキシル、ピリジル、ナフチル、またはキノリニルから選択され;Rは、水素、メチル、アルコキシメチル、ベンジルオキシメチル、またはヘテロシクリルメチルから選択され;そしてRは、フェニルまたはベンジルであり;ここでR−Rの各々は、必要に応じて置換されている、化合物。
(項目5) 項目3に記載の化合物であって、ここでGは、水素またはメチルであり;Rは、フェニルまたはシクロヘキシルであり;Rは、メトキシメチル、メトキシエトキシメチル、エトキシメチル、ピペリジンー1−イルメチル、モルホリン−4−イルメチル、またはテトラヒドロフラン−3−イルメチルであり;そしてRは、フェニルまたはベンジルであり;ここでR−Rの各々は、必要に応じて置換されている、化合物。
(項目6) 表1に列挙される化合物から選択される、化合物。
(項目7) JNKキナーゼインヒビターでの処置によって軽減される、哺乳動物の疾患または状態を処置する方法であって、治療的に有効量の式Iの化合物:
【化3】


またはその薬学的に受容可能な誘導体をそのような処置を必要とする哺乳動物に投与する工程を包含し、
ここで:
は、水素、CONH、T(n)−R、またはT(n)−Arから選択され;
Rは、脂肪族基または置換された脂肪族基であり;
nは、0または1であり;
Tは、C(=O)、CO、CONH、S(O)、S(O)NH、COCH、またはCHであり;
は、水素、−R、−CHOR、−CHOH、−CH=O、−CHSR、−CHS(O)R、−CH(C=O)R、−CHCOR、−CHCOH、−CHCN、−CHNHR、−CHN(R)、−CH=N−OR、−CH=NNHR、−CH=NN(R)、−CH=NNHCOR、−CH=NNHCOR、−CH=NNHSOR、−アリール、−CH(アリール)、−CHNH、−CHNHCOR、−CHNHCONHR、−CHNHCON(R)、−CHNRCOR、−CHNHCOR、−CHCONHR、−CHCON(R)、−CHSONH、−CH(ヘテロシクリル)、または−(ヘテロシクリル)から選択され;
は、水素、−R、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、アルキルチオアルキル、アミノアルキル、アルキルアミノアルキル、ジアルキルアミノアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキル、アリール、アラルキル、またはアリールオキシアルキルから選択され;
Gは、水素またはC1−3アルキルであり;
Q−NHは、
【化4】


であり;
ここで、該Q−NHのHは、必要に応じてR、COR、S(O)R、またはCORで置換されており;
Aは、NまたはCHであり;
Arは、アリール、置換されたアリール、ヘテロシクリルまたは置換されたヘテロシクリルであり、ここでArは、必要に応じて、0〜3個のへテロ原子を含む部分的に不飽和または全て不飽和である5〜7員環に縮合され;
ここで、該縮合環が存在する際、該縮合環を含むArの置換可能な炭素原子の各々は、必要に応じておよび独立して、ハロ、R、OR、SR、OH、NO、CN、NH、NHR、N(R)、NHCOR、NHCONHR、NHCON(R)、NRCOR、NHCOR、COR、COH、COR、CONHR、CON(R)、S(O)R、SONH、S(O)R、SONHR、またはNHS(O)Rで置換されており、そしてここで該縮合環の飽和炭素の各々は、さらに必要に応じておよび独立して、=O、=S、=NNHR、=NNR、=N−OR、=NNHCOR、=NNHCOR、=NNHSOR、または=NRで置換されており;そして
ここでArの置換可能な窒素原子の各々は、必要に応じてR、COR、S(O)R、またはCORで置換されている、
方法。
(項目8) 項目7に記載の方法であって、ここで前記疾患が、炎症性疾患、自己免疫疾患、破壊性骨障害、増殖性障害、感染症、神経変性疾患、アレルギー、発作における再灌流/虚血、心臓発作、脈管形成障害、臓器低酸素症、血管過形成、心肥大、トロンビン誘発血小板凝集または炎症誘発性サイトカインに関連する状態から選択される、方法。
(項目9) 項目7に記載の方法であって、ここで該方法は、急性膵炎、慢性膵炎、喘息、アレルギーまたは成人呼吸窮迫症候群から選択される炎症性疾患を処置または予防するために使用される、方法。
(項目10) 項目7に記載の方法であって、ここで該方法は、糸球体腎延、慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、強皮症、慢性甲状腺炎、グレーヴズ病、自己免疫性胃炎、糖尿病、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性好中球減少症、血小板減少症、アトピー性皮膚炎、慢性活動性肝炎、無症筋無力症、多発性硬化症、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、乾癬または対宿主性移植片病から選択される自己免疫疾患を処置または予防するために使用される、方法。
(項目11) 項目7に記載の方法であって、ここで該方法は、変形性関節症、骨粗しょう症または多発性骨髄腫に関連する骨障害から選択される破壊性骨障害を処置または予防するために使用される、方法。
(項目12) 項目7に記載の方法であって、ここで、該方法は、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、転移性黒色腫、カポージ肉腫、または多発性骨髄腫から選択される、増殖性疾患を処置または予防するために使用される、方法。
(項目13) 項目7に記載の方法であって、ここで該方法は、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、ハンティングトン病、大脳虚血または外傷性損傷、グルタミン酸神経毒性もしくは低酸素症によって引き起こされる神経変性疾患から選択される、神経変性疾患を処置または予防するために使用される、方法。
(項目14) 項目7に記載の方法であって、ここで該方法は、発作における再灌流/虚血または心筋虚血、肝虚血、心臓発作、器官低酸素症またはトロンビン誘発血小板凝集を処置または予防するために使用される、方法。
(項目15) 項目7に記載の方法であって、ここで該方法は、T細胞活性化または病理学的免疫応答に関連する状態を処置または予防するために使用される、方法。
(項目16) 項目7に記載の方法であって、ここで該方法は、固形腫瘍、眼性血管形成、または乳児血管腫から選択される脈管形成障害を処置または予防するために使用される、方法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載の化合物、組成物および方法。

【公開番号】特開2009−102377(P2009−102377A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−453(P2009−453)
【出願日】平成21年1月5日(2009.1.5)
【分割の表示】特願2002−547922(P2002−547922)の分割
【原出願日】平成13年12月5日(2001.12.5)
【出願人】(598032106)バーテックス ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (414)
【氏名又は名称原語表記】VERTEX PHARMACEUTICALS INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】130 Waverly Street, Camridge, Massachusetts 02139−4242, U.S.A.
【Fターム(参考)】