説明

CD14+単球からランゲルハンス細胞及び/又は真皮/間質性樹状細胞を製造する方法

本発明は、生物、特にヒトの末梢循環血由来のCD14+単球からランゲルハンス細胞(LC)、又は真皮/間質性樹状細胞(IDC)、又はLCとIDCを製造する方法であって、該CD14+単球を、ケラチノサイトなどの上皮細胞及び/又は皮膚線維芽細胞などの間充織細胞を含む細胞環境の存在下に入れ、CD14+単球をLCに、IDCに、又はLC及びIDCに分化させることを特徴とする方法に関する。本発明はまた、本方法によって得られる、少なくともLC及び/又IDCと必要に応じてマクロファージと内皮細胞とを含む細胞又は組織モデルと、それらの用途に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、末梢循環血から単離したCD14+単球から、樹状細胞を、特にランゲルハンス細胞及び/又は間質性樹状細胞/真皮樹状細胞を製造する方法に関すものであり、特に、組織モデルを作製して、特に活性成分の試験及び/又は関連する生物学的/生化学現象の研究する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
樹状細胞(DC)は、免疫系を斥候としての抗原を有している細胞である。実際、このような細胞は、ほぼいたる所に存在しており、例えば、胸腺、全身循環系や第二リンパ系臓器や、皮膚や単層または多層の粘膜などの末梢組織に存在する。生物中には非常に小数の樹状細胞しかないが、DCは、免疫応答の特異性、強度、種類を制御して特異的な免疫応答を引き起こす中心であり、また生得免疫と獲得免疫間の中間に位置するものである。DCは、免疫応答を引き起こす機能に加えて、末梢の寛容を引き起こす役割も持っている。
【0003】
多くの免疫系細胞や血液細胞と同様に、DC前駆体は、CD34+造血始原細胞の分化に由来している。これらは、血流により皮膚や粘膜内を移動し、分化して未成熟DCとしてそこに住み着く。この未成熟状態は、特徴的な表現型を有し、ごく効果的に抗原を捕捉する能力を有している。細胞内の位置により、末梢DCの異なる二つの表現型が知られている。
【0004】
−ランゲルハンス細胞(LC)は、マルビーギ型組織(皮膚及び粘膜)の上皮に存在し、そこで具体的にはC型レクチンであるランゲリンを分泌している。ランゲリンは、超微細構造を持つLCに特異的な参照標識である細胞質物質、バーベックの形成に関与している。LCは、CD1aやHLA−DRなどの特徴的な標識をも発現する。
【0005】
−間質性DC(IDC)は、粘膜層にも認められるし、皮膚の真皮にも認められる。後者の場合、これらは皮膚DC(DDC)と記述される。これらの細胞は、多くの類似点をもち、また単球(monocytes)/マクロファージの細胞系と共通の標識を持っている。皮膚の真皮中では、DCCは、具体的にはDC−SIGNを発現し、また特徴的な標識、例えばHLA−DRやFXIIIa、MMR、CD1aを発現する。以下、粘膜層または皮膚真皮のいずれに存在するかとは無関係に、間質性樹状細胞(IDC)一般について述べる。
【0006】
抗原を捕捉の後、LCとIDCは、リンパ節に向かって移動し、抗原の情報をTリンパ球に伝える。LCとIDCの活性化に伴うこの移動は、表現型の変化と機能の変化として現れる。例えば、「活性化された」LCとIDCは、共刺激標識であるCD80とCD86を発現するようになり、これらの細胞の皮膚移動に必須であるCCR7レセプターを発現するようになる。リンパ節では、活性化されたLCとIDCが「成熟」型の表現型を獲得し、またはこれらがTリンパ球との相互作用により「絡み合った」DCを形成する。この成熟条件は、特徴的な表現型、例えばCD83とDC−LAMPの発現と同義であり、また強固な外部刺激能力、即ちTリンパ球増殖を誘導する能力と同義である。エキソ抗原を捕捉後に近くのリンパ節に移動する能力があるため、LCとIDCは、接触アレルギーなど多くの皮膚病理の原因となり、最近では、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の最初の標的とされている。
【0007】
LCとIDCの興味ある用途、特に皮膚または粘膜由来の線維芽細胞型の上皮細胞または間充織細胞との併用してのLCとIDCの興味ある用途は、次のような三次元器官型の培養に供することである:
−LCのみを用いる「再生表皮」モデルと「再生粘膜」モデル、例えば膣や口腔型のモデル(Regnier et al、JID 1997; 109:510−2; Patent EP 0789074 of L’OREAL; Sivard et al、Exp. Dermatol. 2003; 12:346−55)、
−DCCまたはIDCを用いる「再生真皮」モデル及び「再生絨毛膜」モデル(Guironnet et al、JID 2001; 116:933−9 and Dumont et al., AIDS Res. Hum. Retroviruses 2004; 20:383−97)。
【0008】
現在これらはほとんど使用されない。次の理由のためである。
1.生体外でLCとIDCを製造する、高速で単純で安価な工業的な方法が存在しないこと、
2.再生組織の上皮部分または連結部分のみを有し、関連組織部分の両方を含む部分を決して有さない3Dモデルが不完全であること。
【0009】
Regnierら、Sivardら、及びDumontらの報告は、臍帯血由来のCD34+前駆体を取り扱うものであり、次のような重大な欠点を含んでいる:
1.抽出に用いる臍帯血の量が少ないため、分離されるCD34+始原細胞の数が小さく、工業的な利用が困難である。
2.LCまたはIDCに細胞を分化させるには、3Dモデルに取り込ませる前に、CD34+始原細胞の前培養(6〜12日間)が必要である。
3.記載の方法は、LCまたは一部IDCを含む再生表皮、再生粘膜、再生絨毛膜を培養するために、培地に外来性サイトカインを添加する必要がある。
【0010】
Guironnetらの報告では、著者等は、血液単球からDCCを生成し、それを再生真皮モデルに取り込ませている。同様に、次の二つの欠点が存在する。
1.DCCに分化させるには、再生真皮に取り込ませる前に単球の前培養(6日間)が必要である。
2.DCCを含む再生真皮を培養するには、培地に外来性サイトカインの添加が必要である。
同じ報告中で、著者等は、添加サイトカインなしに真皮等価物に直接取り込まれた単球は、DCに分化しないと報告している。
【0011】
L’Orealの特許US6,130,482では、ケラチノサイトとLC前駆体とを共培養して、その際、前駆体のLCへの分化が進むように適当な栄養培地中に特に表皮モデル中に取り込ませて共培養して、ある製品の刺激活性またはアレルギー活性を評価している。しかしながら、この出願特許では、Cauxら、Nature、1992 Nov. 19、360(6401):258−61に記載されている方法を用いて、臍帯血由来のCD34+造血始原細胞が使用されている。この報告に記載の方法は、CD34+造血始原細胞を外来性サイトカインの存在下で培養する工程を含んでいる。この特許は、一般的に、LCの前駆体がCD1a+を発現可能としているが、CD34+造血細胞の、LCのCD34+前駆体としての利用が述べられているのみである。しかし、末梢血中のCD34+造血細胞の数は少なく、工業的に満足できる分化方法を開発することが難しい。臍帯血由来前駆体の使用は、この血液が大量に入手できないため好ましくない。
【0012】
最近、BASFビューティー・ケア・ソリューション・フランス(Coletica、仏国特許FR2833271B1、2001年12月1日出願)は、CD14+単球をLCと、IDCと、少量のLCと少量のDCIに分化させ、これをヒトの皮膚または粘膜由来の上皮細胞及び/又は間充織細胞の存在下で培養することについて述べている。この特許に記載されているのは以下のものである。
−LCのみを含む「再生表皮」モデルと「再生粘膜」、
−DCCまたはIDCを含む「再生真皮」モデルと「再生絨毛膜」モデル、
−LCとIDCとを同時に含む「再生皮膚」モデルと「再生粘膜」モデル。
【0013】
上述のように、既存の方法の欠点は、外来性サイトカインの存在下で、3Dモデルに取り込ませる前の単球を前培養(6日間)して、細胞をLCに、IDCに、またはLCとIDCとを同時に分化させる必要があることである。
【0014】
正常なヒト皮膚に近い免疫適格組織モデルを開発するためにLC及び/又はIDCを提供する目的で、単球のLC及び/又はIDCへの分化について述べているのは、現在までのところ、エンゲルハードリオンの開発した方法、すなわち特許FR2833271B1のみである。しかしながらこの方法も、単純でより安価で迅速な分化方法を用いて、さらに改善可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】米国特許US6,130,482号
【特許文献2】仏国特許FR2833271B1号
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】Nature、1992 Nov. 19、360(6401):258−61
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、上記の技術上の問題それぞれを、初めて、安全、確実かつ再現性よく克服するものであり、工業・商業的に、特に農業飼料及び/又は医療及び/又は薬物及び/又は化粧品用途の工業的規模で利用可能である。
【0018】
本発明は主に、末梢循環血由来の生物前駆体からのLCまたはIDCの生成、LCとIDCの同時生成、IDCとマクロファージと内皮細胞の同時生成、またはLCとIDCとマクロファージと内皮細胞の同時生成からなる。
【0019】
特に、本発明は、上記の細胞(LC、IDC/DCC等)を含む表皮、上皮、真皮、絨毛膜、皮膚または粘膜モデルを、生物の特に哺乳類、特にヒトの表皮、上皮、真皮、絨毛膜、皮膚または粘膜を再生させるうえで品質に最も優れるモデルを提供する。本発明の他の目的は、上皮の及び/又は連結シート、及び皮膚または粘膜の免疫適格等価物を提供することである。
【0020】
特に、本発明は、末梢循環血由来の単球を分化させて上記の細胞(LC、IDC/DCC等)を得る方法を提供することからなる。
【0021】
本発明はまた、上記モデルを、動物試験、特に化粧品原料の刺激性及び/又は感作性を試験する方法に代わる方法として提供することからなる。
【0022】
本発明の他の目的は、上記のモデルを、活性成分、特に化粧品、皮膚薬、医薬の試験に、特にこれらの活性及び/又は毒性または薬毒性を評価する試験に提供することである。
【0023】
本発明の他の目的は、上記のモデルを、分子または化学物質の試験、特にこれらの毒性試験に提供することである。
【0024】
本発明はまた、上記のモデルを、細胞内でのまた細胞内レベルでの生物学的/生化学現象の評価に提供することである。
【0025】
本発明の主な目的は、例えば外部試薬のアレルギー性/刺激性/感作性を予測するために生体外試験を行うなどの目的で、薬毒性試験用のモデル/・ツールを提供することである。
【0026】
本発明のさらに他の目的は、免疫調節活性を持つ物質を調査するためのモデル/ツールを提供することである。
【0027】
本発明はまた、上記のモデルを、組織工学または細胞工学に、特に生物の組織の少なくとも一部を修復するための組織工学または細胞工学に利用することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0028】
特に断らない限り、本発明の範囲内において、「細胞」は常に「生細胞」である。
【0029】
本発明の「末梢循環血」とは、血液が回路をなしている血液系を有するいずれかの生物の血液、特に末梢血であり、特に動物の血液、哺乳類、好ましくはヒトの血液である。
【0030】
「活性成分」とは、潜在的に工業的な面で、特に農業飼料、食品、皮膚薬物、薬物、化粧品産業などの面で面白い活性をもつ何らかの物質、製品または組成物である。
【0031】
「外来性サイトカインの添加」とは、関係する細胞培地中に存在する細胞により合成されるサイトカインに加えて、少なくとも一種のサイトカインを添加することを意味する。
【0032】
本発明は、したがって、上皮細胞及び/又は間充織細胞(例えば線維芽細胞など)の存在下での、CD14+単球の
−LC、
−IDC、
−LCとIDC、
−IDCとマクロファージ及び/又は内皮細胞、
−LCとIDCとマクロファージ及び/又は内皮細胞
への分化に関する。
【0033】
特に、本発明は、CD14+単球のLC及び/又はIDCへの分化(分化促進条件下での前培養がない、特に外来性サイトカインを用いる前培養がない分化)に関し、特に、LC及び/又はIDCを含む細胞モデルを得るための、例えば線維芽細胞種の上皮細胞及び/又は間充織細胞の存在下での分化であって、培養を、好ましくは実質的に多量の外来性サイトカインを添加することなく、即ち培地中に存在する細胞によって合成される内因性サイトカイン以外に何らサイトカインを加えることなく行う分化に関する。
【0034】
特に、本発明は、次の工程:
−循環血、特にヒトの循環血からCD14+単球を採取する工程;
−CD14+単球を、DCへの分化を促進しない条件下に維持する工程;及び
−CD14+単球をLC、またはIDC、またはLCとIDCに分化させない条件で、CD14+単球を、ケラチノサイトなどの上皮細胞及び/又は線維芽細胞などの間充織細胞を含む細胞環境に接触させる工程、からなる、CD14+単球をLC及び/又はIDCに分化させる方法に関する。
【0035】
特に循環血から採取後、短時間でまたは直ちにCD14+単球を播種するために、CD14+単球をCDへの分化を促進しない条件下に維持する工程は、好ましくはその時間を制限したほうがよい。
【0036】
CD14+単球のDCへの分化を促進しない条件は、いずれの外来性サイトカインをも含まない培養条件下で得られるものであることが好ましい。特に、この目的は、CD14+単球が、DC分化経路に入り込まないことである。
【0037】
特に本発明により、一定レベルの細胞死を伴うCD14+単球の前培養を避けることができるため、前駆体/細胞の比を増加させることができる。
【0038】
細胞外で生成したDCは、非常に敏感で壊れやすい細胞である。まず最初に調べる必要のある変数は、得られる細胞の収率である。DCをいずれかの細胞培養モデル中に播種すると、DCの量の低下及び/又は細胞死亡率が、その量が特定できないものの、大きいことは明白である。本発明のCD14+単球をDC前駆体として利用すると、この問題を克服し、細胞量の増加をもたらすことができる。
【0039】
本発明によれば、単球のLCまたはIDCへの分化が培養6日間ですむため、時間を大きく短縮することができる。
【0040】
本発明によれば、好ましくは外来性サイトカインの使用がないため、特に反応剤の面で有利である。
【0041】
本発明によれば、特にできた細胞の品質の面で有利である。生体外での単球からのDCの生成は、可溶性免疫メディエーター、サイトカインの影響下での細胞分化の相に関係している。最近、ある報告(Nicolas Bechetoille et. al., Journal of Leukocytes Biology:単球由来のランゲルハンス細胞と間質性/真皮樹状細胞サブセットの混合物は、Th2仲介性の炎症性条件において、炎症性刺激にそれぞれ異なる反応をする)によれば、単球由来のLC型およびDDC型のDCは、細胞分化過程で「同期」していないと述べられている。言い換えれば、分化をはじめたCD14+単球は、すべてが同じ分化段階にはないLCとDCCを生成する。この分化段階を避けることで、この不完全さを除くことができる。本発明において培養する単球は、細胞により、細胞再生物のサイトカインやマトリックスの環境により影響を受け、DCの分化に対して、より生理的な環境を形成する。
【0042】
生体外で生成されたDCが、自発的に「成熟」する能力を有していることはよく知られているが、これは、成熟DCがもはや活性化や刺激を受けないため、大きな問題である。本発明者等は、これらの細胞の未成熟条件を生体外で制御するが、単球をLCとDCCの前駆体として直接使用することで、生体外での自発的な成熟のリスクを除くことができる。また、本発明に係る細胞または組織培養モデルをCD14+単球のDCへの分化システムとして使用する利点は、生理的なものである。皮膚や粘膜中でのDC分化の自然の条件をよりよく再現し、生体内での同族体と同様の未成熟のDCを得ることができるためである。
【0043】
同じ意味で、前もって生成したDCを使用するのでなく、CD14+単球をDCの前駆体として用いることで、現在のモデル内で、表現型としてより未成熟で、機能的により敏感なLCとDCCとを培養することができる。実際、また同じ意味で、本発明者等は最近、CD34+始原細胞に由来し、外来性サイトカイン存在下で再生絨毛膜中で培養したDCが、外来性サイトカインの存在下で培養した同族体と較べて、HIVウイルスの複製の点でより満足できる非成熟条件を有していることを示した。(Sandy Domont et al., 上皮下の粘膜層等価物に取り込まれると、樹状細胞は未成熟段階を維持し、T細胞サブセットの非存在下で、R5型HIV−1種を複製する能力を保持する。AIDS Res. and Hum. Retroviruses 20: 383−397、2004)。得られたDCは、既に報告のものとは大きく異なり、特に仏国特許FR2833271B1(2001年12月10日出願)のものとは大きく異なる。
【0044】
さらに、CD14+単球を直接、皮膚DCの前駆体として用いると、すでに報告されている方法に較べて、より生理的な方法を与える。事実、生物中では、血液単球は皮膚に侵入し、ここで細胞やサイトカインやマトリックスの環境がその分化を制御する。前もって分化させたDCをこの培養モデル中へ取り込ませることも可能であるが、直接その前駆体のCD14+単球を用いる方法と較べると、現在のところまだ不満足である。この方法の改良は、免疫組織学的には、この三次元培養モデル中でのLCとDCCのより均一な細胞分布を意味する。
【0045】
本発明によれば、新たに分離された単球を、モデル中で使用する前に凍結させてもよい。
【0046】
本発明によれば、生体内の同族体と実質的に同一の表現型で同一の機能をもつ細胞を生成させることができる。
【0047】
本発明は、特に共培養すると、
−上皮環境中で、表現型的に及び/又は機能的にLCに分化し、
−連結環境では、表現型的に及び/又は機能的にIDC、マクロファージ及び内皮細胞に分化するユニークな細胞前駆体に関する。
【発明を実施するための形態】
【0048】
したがって、第一の側面によれば、本発明は、生物の、特にヒトの末梢循環血由来CD14+単球から、LC、またはIDC、またはLCとIDCとを生産する方法であって、CD14+単球をケラチノサイトなどの上皮細胞及び/又は皮膚線維芽細胞などの間充織細胞を含む細胞環境に入れることによりCD14+単球をLCに、またはIDCに、またはLCとIDCとに分化させることを特徴とする方法に関する。
【0049】
都合のよいことに、CD14+単球の分化により、IDCとマクロファージと内皮細胞とが、またはLCとIDCとマクロファージと内皮細胞が得られる。都合のよいことに、LCとIDCの細胞集団の分布は、単球とともに培養される細胞の種類により変動する。ケラチノサイトを使用すると、LCへの分化が増加し、線維芽細胞を使用するとIDCへの分化が増加する。
【0050】
都合のよいことに、いずれの外来性サイトカインをも添加することなく、単球の分化を引き起こすことができる。ある実施様態においては、外来性サイトカインの添加を行わない。
【0051】
都合のよいことに、ケラチノサイトなどの上皮細胞環境で成長している単球は、単球の未成熟の機能的LCへの分化を促進する。本発明者等の意図するところでは、「未成熟」とは、これらの単球が、活性化標識(CD80、CD86、CCR7)や熟成標識(CD83、DC−LAMP)を発現しないか、発現しても極めて少量であることを意味する。他方、未成熟のLCは、CCR6を発現する。
【0052】
本発明者等の意図するところでは、「機能的」とは、抗原内在化能力(未成熟条件)、細胞移動能力(未成熟活性化条件)、および抗原提示能力(成熟条件)を有することをいう。
【0053】
ある実施様態においては、皮膚線維芽細胞などの間充織細胞環境での単球の培養では、単球の未成熟機能的IDCへの分化が促進される。上記の定義を参照。ただし、未成熟IDCはCCR6を発現しない。
【0054】
都合のよいことに、ケラチノサイトなどの上皮細胞と皮膚線維芽細胞などの間充織細胞を含む環境での単球の培養では、単球の典型的なLCとIDCへの分化が促進される。本発明者等の意図においては、「典型的」とは、未成熟の表現型及び機能の点で、すなわち刺激やストレス後の反応など能力の点で、それらの細胞内同族体に近いことをいう。
【0055】
培養(分化)に用いる上皮細胞及び/又は間充織細胞の、CD14+単球に対する比率は、LC及び/又はIDCと、上皮細胞及び/又は間充織細胞との間の望ましい細胞の分布に依存している。
【0056】
第二の側面によれば、本発明は、細胞または組織モデル内での、生物の特にヒトの末梢循環血に由来するCD14+単球の融合を含むCD14+単球の培養方法であって、該細胞または組織モデルがケラチノサイトなどの上皮細胞、及び/又は皮膚線維芽細胞などの間充織細胞を含み、また該モデル中でCD14+単球を、LCに、またはIDCに、またはLCとIDCに分化させるために、上記CD14+単球をケラチノサイトなどの上皮細胞、及び/又は皮膚線維芽細胞などの間充織細胞の存在下で培養を行うことを特徴とする方法に関する。
【0057】
いずれの外来性サイトカインも加えることなく単球を培養することが好ましい。
【0058】
この細胞または組織モデルは、表皮モデル、上皮モデル、真皮モデル、絨毛膜モデル、皮膚モデルまたは粘膜モデルからなる群から選ばれ、特に歯肉または膣粘膜のものであることが好ましい。
【0059】
この三次元培養モデルは、次のものからなる群から選ばれる皮膚または絨毛膜マトリックス支持体であることが好ましい。
【0060】
−間充織細胞、特に線維芽細胞を含むコラーゲン系またはフィブリン系ゲルまたはフィルム、
−一種以上のグリコサミノグリカン及び/又は必要に応じてキトサンを含んでいてもよい、また間充織細胞、特に線維芽細胞を含んでいても含んでいなくてもよいコラーゲン製多孔質マトリックス、
−間充織細胞、特に線維芽細胞を含んでいても含んでいなくてもよい、次の群の材料のいずれかからなる不活性支持体:半透性合成膜、特に半透性ニトロセルロース膜、半透性ナイロン膜、ポリテトラフルオロエチレン(テフロン(登録商標)(R)、PTFE)膜またはスポンジ、半透性ポリカーボネートまたはポリエチレンテレフタレート(PET)膜、酸化アルミニウムのキャピラリー多孔性構造を有する無機膜(半透性アノポア膜)、半透性ポリエステル膜、
−間充織細胞、特に線維芽細胞を含んでいても含んでいなくてもよい、ポリカーボネート系またはポリスチレン系の培養用に処理した不活性支持体。
【0061】
用いる組織モデルは、表面に上皮細胞を、特にケラチノサイトを載せた上記の皮膚または絨毛膜支持体であることが好ましい。
【0062】
この細胞または組織モデルは、少なくとも一種の他の細胞種、例えば神経細胞及び/又は内皮細胞及び/又はメラノサイト及び/又はリンパ球及び/又は脂肪細胞及び/又は剛毛や毛髪、脂腺などの皮膚付着物を有していることが好ましい。
【0063】
少なくとも間充織細胞を含む細胞または組織モデルに取り込まれた時に、一部のCD14+単球が、内皮細胞とマクロファージに分化することが好ましい。
【0064】
この方法は、主にLCを、またはIDCを、またはLCとIDCの混合物、またはLCとIDCと内皮細胞とマクロファージの混合物、またはIDCと内皮細胞とマクロファージの混合物を含んでいることが好ましい。
【0065】
好ましくは、この細胞または組織モデルが、上皮部分と連結マトリックスとを有し、LCが実質的に上皮部分に局在し、IDCとマクロファージと内皮細胞が実質的に連結マトリックスに局在することを特徴とする。
【0066】
第三の側面によれば、本発明は、少なくとも一種の上記LC及び/又はIDC細胞と、さらに必要に応じてマクロファージ及び/又は内皮細胞とを含む、上記の方法により得られる細胞モデルに関する。
【0067】
上記モデルは、得られるDCが上記の方法で得られたものとは異なり、その主な差がLCとIDCの細胞分化過程の同期性にあることを特徴とする。
【0068】
第4の側面によれば、本発明は、上記LC及び/又はIDCの少なくとも一種と、さらに必要に応じてマクロファージ及び/又は内皮細胞とを含む、上記の方法の一つにより得られる、表皮モデル、上皮モデル、真皮モデル、絨毛膜モデル、皮膚モデル及び粘膜モデルからなる群から選ばれる組織モデル、特に歯肉または膣粘膜の組織モデルに関する。
【0069】
この細胞または組織モデルは免疫適格であることが好ましい。
【0070】
この組織モデルは、ケラチノサイトなどの上皮細胞を含む上皮部分と、皮膚または絨毛膜線維芽細胞間など充織細胞を含む連結のマトリックスを含み、LCが実質的に上皮部分に局在し、IDC、マクロファージ及び/又は内皮細胞が実質的に連結マトリックスに局在していることが好ましい。
【0071】
上記モデルは、得られるDCが上記の方法で得られたものとは異なり、その主な差が、この三次元培養モデルにおけるLCとIDCの細胞分化過程の同期性にあることを特徴とする。
【0072】
第5の側面によれば本発明は、生物、特にヒトの末梢循環血から単離される凍結CD14+単球に関する。
【0073】
特に本発明によれば、生物の防御/感染過程、例えば刺激やアレルギーや感作現象に関与する現象全体を説明可能な、官能性の異なる複数のDCの細胞群を作製することができる。
【0074】
したがって、第6の側面によれば、本発明は、上に定義される少なくとも一種の細胞モデルまたは組織モデルの、化粧品、皮膚薬学、薬学分野での試験モデルとして及び/又は活性成分の選択ための利用に関する。
【0075】
もう一つの面白いLC及び/又はIDCの用途は、これらを新規分子の刺激性と感作性の比の評価に用いることである。2005年以降化粧品最終製品の毒性試験に動物の使用を禁じるEU指令2003/15/ECは、公共試験器官や工業試験機関に、新規分子の感作性試験のための体外評価方法や試験管内評価方法の開発を求めている。接触アレルギーにおける重要な役割のため、動物試験の代わりとしての皮膚状DCの使用は、現在開発の主軸となっている。
【0076】
第7の側面によれば、本発明は、上に定義される少なくとも一種の細胞モデルまたは組織モデルの、生物の防御/感染プロセスで起こる現象と活性の評価、特に特定の活性成分の免疫刺激または免疫抑制活性の評価のための、上記活性成分による免疫調整の評価と誘導のための、外部試薬のアレルギー、刺激、感作活性を予測するための体外試験実施のための、または分子または化学物質の試験、特に毒性調査を実施するための利用に関する。
【0077】
第8の側面によれば、本発明は、上に定義される少なくとも一種の細胞モデルまたは組織モデルの、上皮性障壁の生理病理学;皮膚や粘膜の刺激性;生物学的攻撃、例えばウイルスや、HIVなどのレトロウイルス、バクテリア、糸状菌、微生物、粒子抗原などの攻撃;光毒性;光保護;さらには、活性成分、特に化粧品または薬品活性成分の効果;最終製品、特に化粧品または薬品製品の効果;病原性物質による感染のメカニズムの試験への利用に関する。
【0078】
好ましくは、本発明は活性成分等の毒性の評価に関する。特に、この試験は、細胞の標識を、特にDCの標識を測定して行われる。
【0079】
第9の側面によれば、本発明は、上に定義される少なくとも一種の細胞モデルまたは組織モデルの、HIVなどのレトロウイルスを含むウイルスの感染、複製、伝播現象のメカニズムの試験への、またはワクチンや薬品の投与なども含む新しい治療法の探索と開発への利用に関する。
【0080】
第10の側面によれば、本発明は、上に定義される少なくとも一種の細胞モデルまたは組織モデルの、病原性物質、例えばウイルス、HIVなどのレトロウイルス、バクテリア、糸状菌、微生物、粒子抗原などの存在の検出への利用に関する。
【0081】
第11の側面によれば、本発明は、上に定義される少なくとも一種の細胞モデルまたは組織モデルの、医学、生物医学または化粧品用途への利用、特に体外または体内での免疫または寛容応答の調整、特に環境的な攻撃、特に紫外線照射などの物理的な攻撃や刺激/アレルギー/感作物質などの化学的な攻撃や生物学的攻撃の結果としての免疫または寛容応答の予防または治療目的での調整のための利用に関する。
【0082】
第12の側面によれば、本発明は、上に定義される少なくとも一種の細胞モデルまたは組織モデルの、組織工学及び細胞工学用途ヘの利用、医学または生物医学的用途、具体的には、免疫応答を刺激可能なDC注入法による抗癌細胞療法;自己免疫疾患の場合の細胞療法での利用や、例えばアネルギー性T細胞の産生による免疫寛容刺激の惹起や;免疫系を侵す疾患の遺伝子療法への利用、またはワクチンの開発を製造のための利用に関する。
【0083】
第13の側面によれば、本発明は、以下の工程からなる組織モデルの製造方法に関する。
【0084】
−生物の末梢循環血からCD14+単球を単離する工程、
−皮膚または粘膜細胞を支持体上に播種し、栄養培地中で培養して、再生組織を得る工程、
−該再生組織に、皮膚または粘膜細胞と同時に、あるいは同時でなく、CD14+単球を播種する工程、
−該CD14+単球と皮膚または粘膜細胞とを含む再生組織をCD14+単球が、LCに、IDCと内皮細胞及び/又はマクロファージの混合物に、LCとIDCと内皮細胞及び/又はマクロファージの混合物に分化する条件下で培養する工程(なお、再生組織が表皮モデルである場合は皮膚細胞は表皮ケラチノサイトであり、再生組織が真皮モデルである場合は皮膚細胞は皮膚線維芽細胞であり、再生組織が上皮モデルである場合は粘膜細胞は上皮粘膜細胞であり、再生組織が絨毛膜モデルである場合は粘膜細胞は粘膜線維芽細胞である)。
【0085】
これらの上皮細胞は、例えば少なくとも一種の皮膚組織から分離される。
【0086】
これらの皮膚または粘膜細胞の播種を、CD14+単球の播種の前に行っても、後に行ってもよい。
【0087】
CD14+単球の播種を、皮膚または粘膜細胞の播種と同時に行うことが好ましい。
【0088】
第14の側面によれば、本発明は、ケラチノサイトまたは上皮粘膜細胞を、および必要に応じてメルケル細胞及び/又はメラノサイトを含む上皮部分と真皮または絨毛膜線維芽細胞を含む連結マトリックスとを含む再生皮膚または再生粘膜を製造する方法であって、以下の工程からなる方法に関する。
【0089】
−ケラチノサイトまたは上皮粘膜細胞を栄養培地中に播種し、必要に応じてメルケル細胞及び/又はメラノサイトの存在下で、IDCと必要に応じて内皮細胞及び/又はマクロファージを含む真皮または絨毛膜モデルの表面で、培養する工程(ただし、上記真皮または絨毛膜モデルが上に定義する真皮または絨毛膜モデルの製造方法により得られるものである)、および
−上記ケラチノサイトまたは上皮粘膜細胞の存在下でCD14+単球がLCに分化する条件下で、生物の末梢循環血から単離したCD14+単球をケラチノサイトまたは上皮粘膜細胞と同時に、あるいは同時でなく播種・培養する工程。
【0090】
これらの組織モデルを作製する方法は、外来性サイトカインの添加を必要としないことが好ましい。
【0091】
実施例に関する説明を読めば、本発明の他の目的や特徴、利点が、当業界の熟練者にさらに明確になるであろう。なお、これらの実施例は、説明を目的に提供されるものであって、本発明の範囲を制限するものではない。
【0092】
これらの実施例は本発明の重要な一部であり、明細書から全体として、従来技術と比較して新規であるとみられる特徴はいずれも、実施例も含めて、その機能及び一般性において、本発明の重要な一部である。
【0093】
したがって、各々の実施例は、ある一般的な範囲を有している。
【0094】
実施例において、百分率は特に断りのない限り質量換算のものであり、温度は特に断りのない限り摂氏温度であり、圧力は特に断りのない限り大気圧である。
【実施例】
【0095】
実施例1:末梢循環血からの単球の分離方法
一人以上のヒト供与者から静脈血を、好ましくは真空採血システムまたはリチウムヘパリンなどの通常の抗凝固剤製品を入れたバッグに採血して末梢循環血を得た。
【0096】
好ましくは、循環血からの単球の分離を次の方法により行う。
1.リンパ球分離用の媒体を用いて血液を遠心分離し、単核性細胞を回収する。
−抗体カクテル、例えば抗CD3、抗CD7、抗CD16、抗CD19、抗CD56、抗CD123抗体や、磁気ビーズに結合した抗グリコホリンAで標識する。磁化されたカラムに通し、溶出する非標識単球のみを回収する。
−または磁気ビーズに結合した単球に特異的な抗体で、例えば抗CD14抗体で標識する。磁気カラムを通して、標識された単球のみをカラム中に保持する。カラムから溶出後、標識された単球を回収する。
−またはフィコエリトリンなどの蛍光色素に結合した、単球に特異的な抗体、例えば抗CD16抗体で標識する。フラックスサイトメトリーで細胞を分類後、標識した単球のみを回収する。
2.これらの単球は、当業界の熟練者にはよく知られているいずれかの物理的分離方法を用いて、特に沈降または遠心分離を用いて分離され、続く培養にそのまま使用される。
3.100mLの試料の血液から、最高約150百万(±20百万)個の単核性の細胞が抽出され、最高40百万個の単球が精製される。
【0097】
実施例2:末梢循環血から分離された単球の凍結方法
実施例1で得られた単球を、栄養培地、例えば血清とDMSO(ジメチルスルホキシド)などの凍結保護剤を加えたRPMI培地に懸濁し、次いで凍結させる。
単球融解時の、細胞死亡率は30%未満である。
【0098】
100mLの試料の末梢循環血からり、最高80×106個の単球が凍結され、最高76×106個の単球が融解後に回収される。
【0099】
実施例3:共培養のケラチノサイトとLCの多細胞単一層モデル
単球の入手:実施例1または実施例2を参照
培養シャーレ中で、例えば6ウェル型の培養シャーレ中で、1〜2×106個のヒトケラチノサイトと1〜2×106個のヒト単球(実施例1または2で得られたもの)を、栄養培地中で、例えばK−SFM型の培地中で培養する。外来性サイトカインを加えずに、栄養培地、例えばK−SFM型培地中で共培養を6日間続ける。
【0100】
当業界の熟練者にはよく知られている酵素法、特にトリプシン処理によりこの細胞を回収し、混合細胞溶解液中の2×105個のケラチノサイトと単球からなる細胞をモノクローナル抗ランゲリン抗体とともに培養し、フラックスサイトメトリーで分析する。最高40%のランゲリン+LCが観察される。
【0101】
実施例4:共培養の線維芽細胞とDDCと多細胞単一層モデル
単球の入手:実施例1または実施例2参照
培養シャーレ中で、例えば6ウェル型の培養シャーレ中で、1〜2×106個のヒトケラチノサイトと1〜2×106個のヒト単球(実施例1または2で得られたもの)を、栄養培地中、例えばFBM型の培地で培養する。外来性サイトカインを加えずに、栄養培地、例えばFBM型培地中で共培養を6日間続ける。
【0102】
当業界の熟練者にはよく知られている酵素法、特にトリプシン処理によりこの細胞を回収し、混合細胞溶解液中の2×105個のケラチノサイトと単球からなる細胞をモノクローナル抗DC−SIGN抗体とともに培養し、フラックスサイトメトリーで分析する。最高60%のDC−SIGN+DCCが観察される。
【0103】
実施例5:活性成分の効果で分泌されるサイトカインの分布を調べるための実施例3及び4に記載の単一層多細胞モデルの利用
ヒト皮膚用の活性成分の刺激、感作、アレルギー活性を評価するため、また炎症性または抗炎症性活性を予測するため、次の方法により培養上澄液中に分泌されるサイトカイン、例えばIL−1とIL−6、IL−8、IL−10、TNF−α、INF−γを定量する。
−このモデルは、実施例3または4に記載の方法により作製する。
−最終濃度が0.05%となるようにレチノールを培養培地に添加し、3日間放置する。
−次いで、培養上澄液を回収し分析する。
【0104】
レチノールが、炎症性サイトカイン分泌の刺激を引き起こすことがわかる。
【0105】
実施例6:実施例3〜4に記載の多細胞単一層モデルの活性成分の、免疫活性化または免疫抑制活性の評価への利用
活性成分や非活性成分に対する免疫応答及び/又は免疫寛容を生じる応答を誘起するLCとDCCの能力を評価するために、次の方法でフラックスサイトメトリーにより表現型の種類を調べた。
−実施例3または実施例4に記載の方法によりモデルを作製する。
−次いで培養培地に活性成分をいろいろな濃度で添加し、3日間放置する。
−次いでトリプシン処理により細胞を回収する。
ケラチノサイトとLCからなる、あるいは線維芽細胞とDCCからなる2×105個の細胞を含む混合細胞溶解液を、各種の抗体(抗CCR7、抗HLA−DR、抗CD80、抗CD83、抗CD86、抗DC−LAMP)を含む液中で培養する。
【0106】
細胞表現型を決めることで、試験した活性成分の免疫活性(誘導及び/又は標識分子発現の増加)または免疫抑制状況(阻害及び/又は標識分子発現の抑制)を決めることができる。
【0107】
実施例7:実施例3〜4記載の多細胞単一層モデルの、活性成分の免疫調節活性の測定のための利用
刺激、感作、またはアレルギーストレス後の、活性成分の免疫調節効果を、
次の方法により調べる。
−このモデルは、実施例3または実施例4に記載の方法により作製する。
−次いで、300μlのTNP(2,4,6−トリニトロベンゼンスルホン酸)を5mMの濃度で添加し、37℃で30分間放置する。
−この刺激後に、この培養培地に活性成分をいろいろな濃度で添加し、2日間放置する。
−この細胞を含む培地を、IL−12などのイムノサイトカインの分泌を調べるために回収する。回収された細胞は、抗ランゲリン抗体または抗DC−SIGN抗体とともに培養し、その後、フラックスサイトメトリーでLCまたはDCCをそれぞれ分離する。
−分離したLCまたはDCCを、ボイデン型移動チャンバー(膜の空孔が5〜8μmであり、MATRIGELTM被覆ありまたはなし)に播種し、37℃で最長72時間培養する。
−移動したLCまたはDCCの数を、例えば光学顕微鏡でカウントして求める。
【0108】
移動試験及び/又はIL−12の合成と分泌の試験の結果、試験対象の活性成分の免疫調節特性が明らかとなる。
【0109】
実施例8:LCを含む三次元的な多細胞再生真皮モデル
単球の入手:実施例1または実施例2を参照。
【0110】
このモデルは、次の方法で作製した。
−0.5〜1×106個の正常のヒト皮膚ケラチノサイトをボイデンチャンバー型(孔径0.4μmの多孔膜)挿入物に播種し、栄養培地中で、例えば好ましくは最終濃度が1mMのコウシ血清とアスコルビン酸と、好ましくは最終濃度が10ng/mLのEGF(上皮成長因子)、好ましくは最終濃度が0.4μg/mLの濃度のハイドロコルチゾン、好ましくは最終濃度が0.12IU/mLの濃度のウムリン、好ましくは最終濃度が0.4μg/mLのイスプレル、及び好ましくは最終濃度が2.10-9Mのトリヨードチロニン、好ましくは最終濃度が24.3μg/mLのアデニン、好ましくは最終濃度が100μg/mLのノルモシンを添加したDMEM−グルタマックス型培地中で、2日間培養する。
【0111】
−次いで、1〜5×104個の単球を、上皮に相当する表面上に播種し、これをさらに2日間培養する。
−この培養物を、浸漬培養に用いたのと同一の培地(ただし、コウシ血清、ハイドロコルチゾン、ウムリン、イスプレルandトリヨードチロニンは含まない)内で気液界面において、さらに10日間培養する。
−この培養物を、ティッシュテック(R)などの非晶性樹脂に含ませ、液体窒素中で直接凍結させる。
−組織学的切片の免疫組織化学的試験を行い、特異抗体を用いて細胞の種類を同定する。
−標識を行った結果、LC(ランゲリン+細胞)の存在が確認される。
【0112】
結論
レクチン、すなわちランゲリンの観測で示されるように、再生表皮モデル中に加えられた単球は、LC型のDCに分化する。
【0113】
実施例9:LCを含む三次元多細胞着色及び/又は神経性再生表皮モデル
単球の入手:実施例1または実施例2を参照
このモデルは、実施例8に記載の方法により0.5〜1×105個の正常のヒト皮膚由来のメラノサイト及び/又はメルケル細胞と、ケラチノサイトとを同時に播種して作製する。
【0114】
実施例8に記載の標識に加えて、メラニンを検出するためにメラノサイト(HMB45)の標識とDOPA反応を実施し、またメルケル細胞を同定するために抗ケラチン20抗体で標識する。
【0115】
結論
レクチン、すなわちランゲリンの観測で示されるように、着色及び/又は神経性再生表皮モデルにとりこまれた単球は、LC型DCに分化する。
【0116】
実施例10:LCを含む歯肉および膣再生粘膜の三次元多細胞上皮モデル
単球の入手:実施例1または実施例2を参照
このモデルは、実施例8に記載の方法で作製する。ただし、次のように一部を変更する。
【0117】
−通常のヒトケラチノサイトを、通常のヒト歯肉及び膣粘膜の上皮細胞に置き換える。
−培養培地中の血清の濃度は1%である。
−培養は、培地に浸漬して実施する。
−標識の結果は、LC(ランゲリン+細胞)の存在を示す。
結論
レクチン、すなわちランゲリンの観測で示されるように、歯肉や膣の再生粘膜の上皮モデルに取り込まれた単球は、DCまたはLC型に分化する。
【0118】
実施例11:三次元多細胞再生皮膚モデル
このモデルは、再生真皮培養物上に、さらに再生表皮の培養を行ったものである。
【0119】
この再生真皮モデルは、次の方法により作製する。
−0.5〜1×106個の正常なヒト皮膚の線維芽細胞を、ジフェニルホスホリルアジドで架橋したコラーゲンのマトリックス基材上に播種し、栄養培地中で、例えば10%コウシ血清と、好ましくは最終濃度が1mMのアスコルビン酸、好ましくは最終濃度10ng/mLのEGF(上皮成長因子)、および好ましくは最終濃度が100μg/mLのノルモシンを添加したDMEM−グルタマックス中で、14日間培養する。
【0120】
この再生皮膚モデルは、次の方法により得る。
−0.5〜1×106個の通常のヒトケラチノサイトを皮膚等価物上に播種し、栄養培地中で、例えばコウシ血清と、好ましくは最終濃度が1mMのアスコルビン酸と、また好ましくは最終濃度が10ng/mLのEGF(上皮成長因子)と、好ましくは最終濃度が0.4μg/mLのハイドロコルチゾンと、好ましくは最終濃度が0.12IU/mLのウムリンと、好ましくは最終濃度が0.4μg/mLのイスプレルと、好ましくは最終濃度が2×10-9Mのトリヨードチロニンと、好ましくは最終濃度が24.3μg/mLのアデニンと、好ましくは最終濃度が100μg/mLのノルモシンを添加したDMEM−グルタルナックス/ハムF−12(比率=3/1V/V)中で培養する。培養は、浸漬条件で7日間継続する。
【0121】
培養物を気液界面におき、さらに14日間、同一培地で浸漬培養する。ただし、コウシ血清とハイドロコルチゾン、イスプレル、トリヨードチロニン、ウムリンは除く。
【0122】
結論
皮膚の両方の細胞種、表皮と真皮とを生体外で再生することができる。
【0123】
実施例12:DCCとマクロファージと内皮細胞とを含む三次元多細胞再生真皮モデル
単球の入手:実施例1または実施例2を参照
再生真皮を、実施例11に準じて培養する。
【0124】
このモデルは、次の方法により得る。
−1〜5×104個の単球を、皮膚等価物の表面に播種し、さらに7日間培養する。
−培養物を、ティッシュテック(R)等の非晶性樹脂に含ませ、液体窒素中で直接凍結させる。
−組織学的切片の免疫組織化学的試験を行い、特異抗体を用いて細胞の種類を同定する。
−標識を行った結果、DDC(DC−SIGN+細胞)とマクロファージ(CD68+細胞)と内皮細胞(CD31+細胞とCD36+細胞)の共存がわかる。
【0125】
結論
再生真皮モデルに取り込ませて培養したこれらの単球が、DDC型のDCに分化し、またマクロファージや内皮細胞に分化することができる。
【0126】
実施例13:IDCとマクロファージと内皮細胞とを含む三次元多細胞再生絨毛膜モデル
単球の入手:実施例1または実施例2を参照
このモデルは、実施例12に記載の方法で作製した。異なる点は、次の通りである。
−用いる線維芽細胞が、通常のヒト歯肉及び膣粘膜由来の線維芽細胞である。
−標識を行った結果、IDC(DC−SIGN+細胞)とマクロファージ(CD68+細胞)と内皮細胞(CD31+細胞とCD36+細胞)との共存がわかる。
【0127】
結論
歯肉及び膣型の再生絨毛膜モデルに取り込み培養した単球は、IDC型にDCに分化し、またマクロファージや内皮細胞分化できる。
【0128】
実施例14:LCを含む三次元多細胞再生皮膚モデル
単球の入手:実施例1または実施例2を参照
再生皮膚モデルを実施例11に準じて培養する。
このモデルは次の方法で得る。
−1〜5×104個の単球を、皮膚等価物上にケラチノサイトとともに播種する。
−標識を行った結果、培養物の上皮部分にLC(ランゲリン+細胞とバーベック+顆粒)の存在が認められる。
【0129】
結論
この再生皮膚モデル中でケラチノサイトとともに培養した単球は、LC型のDCに分化する。
【0130】
実施例15:LCを含む三次元多細胞着色及び/又は神経性再生表皮モデル
単球の入手:実施例1または実施例2を参照
このLCを含む再生皮膚モデルは、実施例14に準じて培養する。
【0131】
このモデルは、次の方法で得る。
−1〜5×104個の正常なヒト皮膚由来のメラノサイト及び/又はメルケル細胞を、ケラチノサイトおよび単球とともに、再生真皮に播種する。
−実施例14に記載の標識に加え、
メラニンの検出のためメラノサイト(HMB45)の標識とDOPA反応を行い、またメルケル細胞の同定のために抗ケラチン20抗体を用いる標識を行う。
【0132】
結論
この再生皮膚モデル中でケラチノサイトとメラノサイト及び/又はメルケル細胞とともに培養した単球は、LC型のDCに分化する。
【0133】
実施例16:LCを含む三次元多細胞再生粘膜モデル
単球の入手:実施例1または実施例2を参照
このモデルは実施例14に記載の方法に準じて得る。変更点は、次の通りである。
−ケラチノサイトは、正常のヒト歯肉及び膣粘膜の上皮細胞で置き換え、線維芽細胞は、正常のヒト歯肉及び膣粘膜由来の線維芽細胞とする。
−上皮形成段階での培養培地中のコウシ血清の濃度は1%である。
−培養は、すべて培地中での浸漬培養でおこなう。
−標識を行った結果、培養物の上皮部分中にLC(ランゲリン+細胞とバーベック+顆粒)の存在が認められる。
【0134】
結論
この再生粘膜モデル中で歯肉または膣型の上皮細胞とともに培養した単球は、LC型のDCに分化する。
【0135】
実施例17:DCCとマクロファージと内皮細胞とを含む三次元多細胞再生皮膚モデル
単球の入手:実施例1または実施例2を参照
この再生皮膚モデルは、実施例11に準じて培養する。
【0136】
このモデルは、次の方法で得る。
−1〜5×104個の単球を、皮膚等価物の表面に播種し、さらに7日間培養する。
−標識を行った結果、DCC(DC−SIGN+細胞)とマクロファージ(CD68+細胞)と内皮細胞(CD31+細胞とCD36+細胞)の共存が確認される。
結論
再生皮膚モデルの皮膚部分に取り込ませ培養した単球は、DDC型のDCに分化し、また同時にマクロファージと内皮細胞に分化する。
【0137】
実施例18:DCCとマクロファージと内皮細胞とを含む三次元多細胞着色及び/又は神経性再生表皮モデル
このモデルは実施例17記載の方法にしたがって、1〜5×104個の正常なヒト皮膚由来のメラノサイト及び/又はメルケル細胞とケラチノサイトとを同時に播種して得る。
【0138】
実施例17に記載の標識に加えて、メラニンの検出のためメラノサイト(HMB45)の標識とDOPA反応を行い、またメルケル細胞の同定のために抗ケラチン20抗体を用いる標識を行う。
【0139】
結論
着色及び/又は神経性再生表皮モデルの皮膚部分に取り込んで培養した単球は、DDC型のDCに分化し、同時にマクロファージと内皮細胞に分化する。
【0140】
実施例19:IDCとマクロファージと内皮細胞とを含む再生粘膜の三次元多細胞モデル
単球の入手:実施例1または実施例2を参照
このモデルは、実施例17に記載の方法で得る。ただし、変更点は次の通りである。
−ケラチノサイトを正常のヒト歯肉及び膣粘膜上皮細胞に変更し、線維芽細胞を、正常のヒト歯肉及び膣粘膜由来の線維芽細胞に変更する。
−上皮形成段階での培養培地中のコウシ血清の濃度は1%である。
−培養は、すべて培地中での浸漬培養で行う。
−標識を行った結果、IDC(DC−SIGN+細胞)とマクロファージ(CD68+細胞)と内皮細胞(CD31+細胞とCD36+細胞)の共存が認められる。
【0141】
結論
歯肉および膣型の再生粘膜モデルの連結部分に取り込ませて培養した単球は、IDC型のDCに分化し、同時にマクロファージと内皮細胞に分化する。
【0142】
実施例20:LCとDCCとマクロファージと内皮細胞とを含む三次元多細胞再生皮膚モデル
単球の入手:実施例1または実施例2を参照
このモデルは、次の方法で得る。
−このDCCとマクロファージと内皮細胞とを含む再生真皮モデルは、実施例12に記載の方法で作製する。
−LCを含む再生皮膚モデルは、実施例14に準じて得られる。
−標識を行った結果、培養物の表皮部分にLC(ランゲリン+細胞と−バーベック+顆粒)が、培養の皮膚部分にDCC(DC−SIGN+細胞)とマクロファージ(CD68+細胞)と内皮細胞(CD31+細胞とCD36+細胞)の共存が認められる。
【0143】
結論
再生皮膚モデル中の皮膚部分で培養し次にケラチノサイトとともに培養した単球は、表皮部分でLC型のDCに分化し、同時に皮膚部分でマクロファージと内皮細胞に分化する。
【0144】
実施例21:LCとDCCとマクロファージと内皮細胞とを含む三次元多細胞着色及び/又は神経性再生表皮モデル
単球の入手:実施例1または実施例2を参照
このモデルは次の方法で得る。
−DCCとマクロファージと内皮細胞とを含む再生真皮モデルは、実施例12に準じて得る。
−LCを含む着色及び/又は神経性再生表皮モデルは、実施例15に準じて作製する。
−標識を行った結果、培養物の表皮部分にLC(ランゲリン+細胞とバーベック顆粒)と、培養物の皮膚部分にDCC(DC−SIGN+細胞)とマクロファージ(CD68+細胞)と内皮細胞(CD31+細胞とCD36+細胞)の共存が認められる。
【0145】
結論
皮膚部分で培養し、ついで着色及び/又は神経性再生表皮モデルにおいてケラチノサイト、メラノサイト及び/又はメルケル細胞とともに培養して得た単球は、表皮部分においてLC型のDCに分化し、皮膚部分においてDDC型のDCに分化し、同時にマクロファージと内皮細胞に分化する。
【0146】
実施例22:LCとIDCとマクロファージと内皮細胞とを含む三次元多細胞再生粘膜モデル
単球の入手:実施例1または実施例2を参照
このモデルは次の方法で得る。
−このIDCとマクロファージと内皮細胞とを含む再生絨毛膜モデルは、実施例13に準じて作製する。
−LCを含む再生粘膜モデルは、実施例16に準じて作製する。
−標識を行った結果、上皮部分でLC(ランゲリン+細胞とバーベック+顆粒)、培養の連結部分でIDC(DC−SIGN+細胞)とマクロファージ(CD68+細胞)と内皮細胞(CD31+細胞とCD36+細胞)の共存が認められる。
【0147】
結論
歯肉及び膣型の再生粘膜モデルの連結部分で培養し、ついで上皮細胞とともに培養した単球は、上皮部分でLC型のDCに分化し、連結部分でIDC型のDCに分化し、同時にマクロファージと内皮細胞に分化する。
【0148】
実施例23:実施例20に記載の三次元多細胞再生皮膚モデルの、太陽光UV照射の影響の試験への利用
いろいろな環境因子の影響を、特に太陽光UV照射の影響を調べるために、免疫組織化学的試験による再生皮膚モデル中でのLCとDCCの移動とこれらの表現型を、次の方法で評価した。
−このモデルは、実施例20に記載の方法で得る。
−培養42日目に、例えば、2J/cm2のUVAと0.5J/cm2のUVBに相当する、単一照射線量が526kJ/cm2の太陽エネルギーで、この再生皮膚を照射する(太陽光照射器サンテストCPS+、アトラス)。培養をさらに2日間継続する。
−次いで、LCとDCCの移動を観察し、それらの表現型条件を特定するため
一連の抗体(抗CD1a、抗CD80、抗CD83、抗CD86、抗CCR7、抗DC−LAMP、抗DC−SIGN、抗ランゲリン、抗HLA−DR)を用いて、免疫組織化学的試験を実施する。
【0149】
太陽光UV照射後、培養物の皮膚部分においてLCの移動が観察され、LCとDCC上にCCR7レセプター発現の獲得が観察される。また、皮膚部分に移動したLCのみが、熟成標識DC−LAMPを発現する。
【0150】
結論
この多細胞モデルは、したがって、移動、活性化、及び熟成能力を持つLCとDCCとを標的とすることで、UVストレスを予測することができる。
【0151】
実施例24:実施例20に記載の三次元多細胞再生皮膚モデルの、活性成分の有効性の評価への利用
ヒト皮膚用の活性成分の消炎作用を評価するために培養上澄液中への炎症性サイトカインの、例えばIL−1や、IL−6、IL−8、TNF−α、INF−γの分泌を、次の方法により測定する。
−このモデルは、実施例20に記載の方法により得る。
−培養42日目に、例えば、2J/cm2のUVAと0.5J/cm2のUVBに相当する、単一照射線量が526kJ/cm2の太陽エネルギーで、この再生皮膚を照射する(太陽光照射器サンテストCPSs+、アトラス)。
−次いで、3%の酸化防止剤を、例えばフラバグラム(R)(ヘスペリチンラウレート、エンゲルハード)と、さらにフラベンジャー(R)(クエルシチンカプリレート、エンゲルハード)を含むか含まない8μlの化粧用製剤を再生皮膚に塗布し、10日間放置する。
−処理終了後、再生皮膚をさらに48時間浸漬培地中で培養した後、酸化防止剤処理の有効性を次のようにして評価する。1.細胞生存度の試験(メチルチアゾールテトラゾリウム−MTT試験)、
【0152】
2.培養上澄液中のサイトカイン分泌物のフラックスサイトメトリー(CBA−サイトメトリックビーズアレイ)での分析
【0153】
【表1】

【0154】
本発明の方法により、太陽光UVストレスが、細胞生存度の低下と炎症性インターロイキンの産生量の増加をもたらすことがわかる。したがって、適当に選択された活性成分を用いて、この炎症性分子の合成と細胞死亡率の上昇を抑えることが望ましい。試験した活性成分の中では、二種の化合物、フラバグラムとフラベンジャーが、これら二つの変数を元の値に維持する傾向を示し、有効性を示した。
【0155】
実施例25:実施例14、17および20に記載の三次元多細胞再生皮膚モデルの、活性成分の免疫刺激活性または免疫抑制活性の評価への利用
LC及び/又はDCCが、ある活性成分に対して免疫及び/又は免疫寛容を生じる応答を誘起するかどうかどうかを評価するために、これらの細胞の、同種異系の無処理Tリンパ球の増殖を刺激する作用を、次の方法で評価する。
−このモデルは、実施例14、17および20に記載の方法により得る。
−培養後42日目に、活性成分を、綿棒を用いて直接塗布する(局所塗布)か、培養培地に活性成分を添加(全身的塗布)して、10日間処理する。
−処理後、培養物を、37℃でトリプシン(1mg/mL)を用いて2時間酵素処理し、次いでコラアゲナーゼ(1mg/mL)で処理して、LC及び/又はDCCを回収する。
−このLC及び/又はDCCを3日間、同種異系の未処理Tリンパ球とともに、10%ヒトAB血清を添加したRPMI培地中で培養する。細胞数が125〜8,000の範囲のLC及び/又はDCが得られ、これを105個の未処理Tリンパ球とともに培養する。混合リンパ球の培養3日目に、20μlの5mCiのトリチニウムチミジンを添加し、18時間処理する。
−この結果を、横軸にLC及び/又はDCCの個数をとり、縦軸に同種異系の無処理Tリンパ球へのトリチニウムチミジン導入量cpm(1分間のカウント数)をプロットしたクラフで示す。
【0156】
【表2】

【0157】
未処理Tリンパ球をほんの少し増殖させる(1×103〜4×103cpm)未処理のLC及び/又はDCCと比較すると、活性成分Xとの処理後、LC及び/又はDCCは、Tリンパ球の増殖を強く刺激する(5×104〜7×104cpm)。
【0158】
実施例26:三次元多細胞モデルの、アレルギー反応を調節可能な活性成分のスクリーニングへの利用
刺激、感作、およびアレルギーストレスを引起した後の、活性成分の免疫調節効果を、次の方法で調べる。
−このモデルは、実施例12に記載の方法に準じて得る。
−21日間培養後、好ましくは最終濃度が2%の刺激性物質(ドデシル硫酸ナトリウム)及び好ましくは最終濃度が0.25%の増感剤DNCB(1、4−クロロ−ジニトロベンゼン)を培養培地に入れ、24時間処理する。
−次いで、このようにして得た培養培地に、最終濃度が3%の安定化剤を含有あるいは非含有の100μlの化粧品製剤を加え、3日間処理する。
−処理後、培養上澄を回収して、例えばIL−10とIL−12を測定し、
一連の抗体、抗CD80、抗CD83、抗CD86、抗CCR7、抗DC−LAMP、抗HLA−DRを用いて免疫組織化学的試験を行う。
【0159】
IL−10とIL−12の分泌と免疫組織化学によるDCCの表現型の試験の結果より、試験する活性成分の免疫調節能を確定する。
【0160】
結論
本特許の多細胞モデルは、したがってサイトカインを分泌、活性化、熟成させる能力を持つDCCをスクリーニングすることにより活性成分のもつ潜在的な免疫調整効果が評価可能な試験手段となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物、特にヒトの末梢循環血由来のCD14+単球からランゲルハンス細胞(LC)又は間質性/真皮樹状細胞(IDC)、又はLC及びIDCを製造する方法であって、該CD14+単球を、ケラチノサイトなどの上皮細胞及び/又は皮膚線維芽細胞などの間充織細胞含む細胞環境の存在下に入れ、CD14+単球をLC又はIDCに、又はLC及びIDCに分化させることを特徴とする方法。
【請求項2】
上記CD14+単球を、ケラチノサイトなどの上皮細胞及び/又は皮膚線維芽細胞などの間充織細胞含む細胞環境の存在下に入れ、CD14+単球を、IDC、及びマクロファージ及び/又は内皮細胞に、又はLC、IDC、マクロファージ及び/又は内皮細胞に分化させる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
CD14+単球の分化が有意な量の外来性サイトカインを添加することなく行われる前請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
単球をケラチノサイトなどの上皮細胞を含む細胞環境の存在下に入れ、単球を未成熟の機能的LCに分化させる請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
単球を皮膚線維芽細胞などの間充織細胞を含む細胞環境の存在下に入れ、単球を未成熟の機能的IDCに分化させる請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
単球をケラチノサイトなどの上皮細胞及び皮膚線維芽細胞などの間充織細胞、及び皮膚線維芽細胞などの間充織細胞含む細胞環境の存在下に入れ、単球を典型的なLC及びIDCに分化させる請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
細胞または組織モデル内における、生物の特にヒトの末梢循環血に由来するCD14+単球の融合を含むCD14+単球の培養方法であって、該細胞または組織モデルがケラチノサイトなどの上皮細胞、及び/又は皮膚線維芽細胞などの間充織細胞を含み、且つ該モデル中でCD14+単球を、LCに、又はIDCに、又はLC及びIDCに分化させるために、前記CD14+単球をケラチノサイトなどの上皮細胞、及び/又は皮膚線維芽細胞などの間充織細胞の存在下で培養することを特徴とする方法。
【請求項8】
CD14+単球の培養を、有意な量の外来性サイトカインを加えることなく行う請求項7に記載の方法。
【請求項9】
上記細胞または組織モデルが、表皮モデル、上皮モデル、真皮モデル、絨毛膜モデル、皮膚モデル、及び粘膜モデルからなる群から選ばれる請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
上記細胞または組織培養モデルが、次の材料:
−間充織細胞、特に線維芽細胞を含むコラーゲン系またはフィブリン系ゲルまたはフィルム、
−1種以上のグリコサミノグリカン及び/又は必要に応じてキトサンを含んでいてもよい、また融合間充織細胞、特に線維芽細胞を含んでいても含んでいなくてもよいコラーゲン製多孔質マトリックス、
−間充織細胞、特に線維芽細胞を含んでいても含んでいなくてもよい、次の群:
半透性合成膜、特に半透性ニトロセルロース膜、半透性ナイロン膜、ポリテトラフルオロエチレン(テフロン(登録商標)(R)、PTFE)膜またはスポンジ、半透性ポリカーボネートまたはポリエチレンテレフタレート(PET)膜、酸化アルミニウムのキャピラリー多孔性構造を有する無機膜(半透性アノポア膜)、セルロースアセテートまたはエステル(HATF)膜、半透性ビオポアCM膜、半透性ポリエステル膜、
からなる不活性支持体、および
−間充織細胞、特に線維芽細胞を含んでいても含んでいなくてもよい、ポリカーボネート系またはポリスチレン系の培養用に処理した不活性支持体、
からなる群から選ばれる皮膚または絨毛膜マトリックス支持体を含む請求項7〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
用いる細胞または組織モデルが、表面に上皮細胞、特にケラチノサイトを有する上記皮膚または絨毛膜支持体を含む請求項10に記載の方法。
【請求項12】
上記細胞または組織モデルが、少なくとも一種の他の細胞種、例えば神経細胞及び/又はメルケル細胞及び/又は内皮細胞及び/又はマクロファージ、及び/又はメラノサイト及び/又はリンパ球及び/又は脂肪細胞及び/又は剛毛や毛髪、脂腺などの皮膚付属物を含む請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
CD14+単球を、少なくとも間充織細胞を含む細胞または組織モデルで培養して、一部の単球を内皮細胞及び/又はマクロファージに分化させる請求項7〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
上記細胞または組織モデルが上皮部分と連結マトリックスとを含み、LCが実質的に上皮部分に局在し、IDC、マクロファージ及び/又は内皮細胞が実質的に連結マトリックスに局在している請求項7〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
CD14+単球をLC及び/又はIDCに分化させる方法であって、以下の工程:
−循環血からCD14+単球を採取する工程;
−CD14+単球をDCへの分化を促進しない条件下に維持する工程;及び
−CD14+単球をLC、又はIDC、又はLC及びIDCに分化を促進する条件下で、CD14+単球を、ケラチノサイトなどの上皮細胞及び/又は線維芽細胞などの間充織細胞を含む細胞環境の存在下に入れる工程、
を含む方法。
【請求項16】
上記LC及び/又はIDCの少なくとも1種と、さらに必要に応じてマクロファージ及び/又は内皮細胞とを含む請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法により得られる細胞モデル。
【請求項17】
上記LC及び/又はIDCの少なくとも1種と、さらに必要に応じてマクロファージ及び/又は内皮細胞を含む請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法により得られる、表皮モデル、上皮モデル、真皮モデル、絨毛膜モデル、皮膚モデル及び粘膜モデルからなる群から選ばれる組織モデル。
【請求項18】
ケラチノサイトなどの上皮細胞を含む上皮部分と、皮膚または絨毛膜線維芽細胞間などの充織細胞を含む連結マトリックスとを含み、LCが実質的に上皮部分に局在し、IDC、マクロファージ及び/又は内皮細胞が実質的に連結マトリックスに局在している請求項17に記載の組織モデル。
【請求項19】
生物、特にヒトの末梢循環血から単離される凍結CD14+単球。
【請求項20】
請求項16に定義される少なくとも1種の細胞モデル、又は請求項17又は18に定義される少なくとも1種の組織モデルの、化粧品、皮膚薬学、薬学分野での試験モデルとして、及び/又は活性成分の選択ために使用する方法。
【請求項21】
請求項16に定義される少なくとも1種の細胞モデル、又は請求項17又は18に定義される少なくとも1種の組織モデルの、生物の防御/感染プロセスで起こる現象と活性の評価のために、特に特定の活性成分の免疫刺激または免疫抑制活性の評価のために、上記活性成分による免疫調整の評価と誘導のために、外部試薬のアレルギー、刺激、感作活性を予測するためのインビトロ試験実施のために、または分子または化学物質の試験、特に毒性調査を実施するために使用する方法。
【請求項22】
請求項16に定義される少なくとも一種の細胞モデル、又は請求項17又は18に定義される少なくとも一種の組織モデルの、上皮性障壁の生理病理学;皮膚や粘膜の刺激性;例えばウイルスや、HIVなどのレトロウイルス、バクテリア、糸状菌、微生物、粒子抗原などの生物学的攻撃、;光毒性;光保護;さらには活性成分、特に化粧品または薬品活性成分の効果;最終製品、特に化粧品又は薬品製品の効果;病原性物質による感染のメカニズムの試験のために使用する方法。
【請求項23】
請求項16に定義される少なくとも一種の細胞モデル、又は請求項17又は18に定義される少なくとも一種の組織モデルの、HIVなどのレトロウイルスを含むウイルスの感染、複製、伝播現象のメカニズムの試験、又はワクチンや薬品の投与なども含む新しい治療法の探索と開発に使用する方法。
【請求項24】
請求項16に定義される少なくとも一種の細胞モデル、又は請求項17又は18に定義される少なくとも一種の組織モデルの、病原性物質、例えばウイルス、HIVなどのレトロウイルス、バクテリア、糸状菌、微生物、粒子抗原などの存在の検出のために使用する方法。
【請求項25】
請求項16に定義される少なくとも一種の細胞モデル、又は請求項17又は18に定義される少なくとも一種の組織モデルの、医療、生物医学又は化粧品用途に使用する方法、特にインビトロまたはインビボでの免疫または寛容応答の調整、環境的な攻撃、特に紫外線照射などの物理的な攻撃や刺激/アレルギー/感作物質などの化学的な攻撃や生物学的攻撃の結果としての免疫又は寛容応答の、特に予防又は治療目的での調整のために使用する方法。
【請求項26】
請求項16に定義される少なくとも一種の細胞モデル、又は請求項17又は18に定義される少なくとも一種の組織モデルの、組織工学及び細胞工学用途に使用する方法、医学または生物医学的用途、具体的には、免疫応答を刺激可能なDC注入法による抗癌細胞療法;自己免疫疾患の場合の細胞療法に使用する方法や、例えばアネルギー性T細胞の産生による免疫寛容刺激の惹起や;免疫系を侵す疾患の遺伝子療法に使用する方法、またはワクチンの開発及び製造のために使用する方法。
【請求項27】
以下の工程:
−生物の末梢循環血からCD14+単球を単離する工程、
−皮膚または粘膜細胞を支持体上に播種し、栄養培地中で培養して、再生組織を得る工程、
−該再生組織に、皮膚または粘膜細胞と同時に、あるいは同時でなくCD14+単球を播種する工程、
−該CD14+単球と皮膚または粘膜細胞とを含む再生組織をCD14+単球が、LCに、IDCと内皮細胞及び/又はマクロファージの混合物に、LCとIDCと内皮細胞及び/又はマクロファージの混合物に分化する条件下で培養する工程(なお、再生組織が表皮モデルである場合は、皮膚細胞は表皮ケラチノサイトであり、再生組織が真皮モデルである場合は、皮膚細胞は皮膚線維芽細胞であり、再生組織が上皮モデルである場合は、粘膜細胞は上皮粘膜細胞であり、再生組織が絨毛膜モデルである場合は、粘膜細胞は粘膜線維芽細胞である)、
からなる組織モデルの製造方法。
【請求項28】
ケラチノサイト又は上皮粘膜細胞を、及び必要に応じてメルケル細胞及び/又はメラノサイト含む上皮部分と、真皮または絨毛膜線維芽細胞を含む連結マトリックスとを含む再生皮膚または再生粘膜を製造する方法であって、以下の工程:
−ケラチノサイトまたは上皮粘膜細胞を栄養培地中に播種し、必要に応じてメルケル細胞及び/又はメラノサイトの存在下で、IDCと必要に応じて内皮細胞及び/又はマクロファージを含む真皮または絨毛膜モデルの表面で培養する工程(ただし、上記真皮または絨毛膜モデルが請求項27に定義する真皮または絨毛膜モデルの製造方法により得られるものである)、および
−上記ケラチノサイトまたは上皮粘膜細胞の存在下で、CD14+単球がLCに分化する条件下で、生物の末梢循環血から単離したCD14+単球をケラチノサイトまたは上皮粘膜細胞と同時に、あるいは同時でなく播種・培養する工程、
からなる方法。
【請求項29】
前記細胞がヒト細胞である請求項27又は28に記載の方法。

【公表番号】特表2010−502175(P2010−502175A)
【公表日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−526123(P2009−526123)
【出願日】平成19年9月3日(2007.9.3)
【国際出願番号】PCT/EP2007/059165
【国際公開番号】WO2008/028882
【国際公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願人】(508129850)ビーエーエスエフ、ビューティー、ケア、ソルーションズ、フランス、エスエーエス (2)
【Fターム(参考)】