説明

CMP用研磨液及び研磨方法

【課題】良好な研磨速度を確保しつつ、研磨傷の発生数を劇的に低減することが可能なCMP用研磨液及び研磨方法を提供する。
【解決手段】砥粒、酸化金属溶解剤、酸化剤及び水を含有する、pHが4以下のCMP用研磨液において、砥粒の二次粒子径を10nm以上、200nm以下にすると共に、光散乱法及び光遮光法を用いて測定される粒度分布がそれぞれ、粒子径が0.56μm以上、0.64μm未満の粒子数を1000個/ml未満、及び粒子径が0.64μm以上、0.79μm未満の粒子数を600個/ml未満になるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイスの配線形成工程等における研磨に使用されるCMP用研磨液及び研磨方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体集積回路(以下、LSIという)の高集積化、高性能化に伴って、新たな微細加工技術が開発されている。化学機械研磨(以下、CMPという)法もその一つであり、LSI製造工程、特に、多層配線形成工程における層間絶縁膜の平坦化、金属プラグ形成、埋め込み配線形成等において頻繁に利用される技術である(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、最近は、LSIを高性能化するために、配線材料となる導電性物質として銅又は銅合金の利用が試みられている。しかし、銅又は銅合金は従来のアルミニウム合金配線の形成で頻繁に用いられたドライエッチング法による微細加工が困難である。
【0004】
そこで、例えば、予め溝が形成された絶縁膜上に銅又は銅合金の薄膜を堆積して埋め込み、溝部以外の前記薄膜をCMPにより除去して埋め込み配線を形成する、いわゆるダマシン法が主に採用されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
一方、銅又は銅合金等の配線用金属からなる導電性物質層の下層には、シリコン基板上に形成した層間絶縁膜中への金属の拡散防止や密着性向上のためのバリア導体層(以下、バリア層という)として、例えば、タンタル、タンタル合金、窒化タンタル等の導体からなる層が形成される。従って、銅又は銅合金等の配線用金属からなる導電性物質を埋め込む配線部以外では、露出したバリア層をCMPにより取り除く必要がある。
【0006】
しかし、前記バリア層を構成する導体は、銅又は銅合金に比べ硬度が高いために、銅又は銅合金用の研磨材料を組み合わせても十分な研磨速度が得られず、且つ被研磨面の平坦性が悪くなる場合が多い。そこで、導電性物質層を研磨する第1の研磨工程と、バリア層を研磨する第2の研磨工程とに分け、それぞれ異なる研磨液で研磨を行う2段階研磨方法が検討されている。
【0007】
図1に一般的な2段階研磨方法を適用したダマシンプロセスによる配線形成を断面模式図で示す。図1(a)は研磨前の状態を示し、表面に溝を形成した層間絶縁膜1と、層間絶縁膜1表面の凹部及び凸部に追従するように形成されたバリア層2と、この凹部及び凸部を埋めるように堆積された銅又は銅合金等の配線用金属からなる導電性物質層3を有する。
【0008】
先ず、図1(b)に示すように、配線用金属を研磨するための研磨液で、バリア層2が露出するまで導電性物質層3を研磨する(第1の研磨工程)。次に、バリア層2を研磨するための研磨液で層間絶縁膜1の凸部が露出するまでバリア層2を研磨する(第2の研磨工程)。この第2の研磨工程においては、図1(c)に示すように、層間絶縁膜1を余分に研磨するオーバー研磨が行われることが多い。このようなオーバー研磨により、研磨後の被研磨面の平坦性を高めることができる。尚、図1の(c)中、点線は研磨されたバリア層部分4(第2の研磨工程前(図1(b))のバリア層2の状態)を表す。
【0009】
このようなバリア層2用の研磨液として、酸化剤と、金属表面に対する保護膜形成剤と、酸と、水とを含み、pHが3以下であり、上記酸化剤の濃度が0.01質量%〜3質量%である化学機械研磨用研磨剤が提案されている。(例えば、特許文献3参照。)
【0010】
ところで、近年、配線間隔及び配線厚みの更なる微細化に伴い、バリア層を研磨する第2の研磨工程で発生する研磨傷(スクラッチとも呼ばれる)の発生による問題が大きくなっている。研磨傷は、導電性物質層及び層間絶縁膜の膜表面に生じる直線状の傷であり、膜の欠損や構造変化を引き起こす原因となっている。研磨傷が導電性物質層及び層間絶縁膜の膜表面に発生した場合、膜の欠損や構造変化が生じ、この結果半導体デバイスの配線の断線や信頼性の低下等の問題が起こる。この問題は、配線間隔及び配線厚みの微細化が進行した場合、より顕著になる。
【0011】
【特許文献1】米国特許第4944836号明細書
【特許文献2】特開平02−278822号公報
【特許文献3】再公表特許WO01/13417号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述のように、従来のバリア層用研磨液を用いた場合に問題となる研磨傷は、研磨速度の向上を図るために、砥粒として用いられるシリカやアルミナ等の粗大粒子が原因であると考えられる。即ち、CMP用研磨液に粒子径が比較的大きい粒子が含まれていると、この粒子が研磨時に研磨パッドからの圧力を選択的に受けやすく、前記粒子と接する膜表面に局所的な圧力が生じ、その状態で前記粒子が膜表面を移動することにより、直線状の研磨傷が発生すると考えられる。従って、設計通り良好に動作する半導体デバイスを作製するためには、バリア層を研磨する第2の研磨工程において、研磨傷の発生を抑えることが益々重要な課題となっている。
【0013】
本発明は、かかる課題を解決するものであって、良好な研磨速度を確保しつつ、研磨傷の発生数を劇的に低減することが可能なCMP用研磨液及びこれを用いた研磨方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者等は、前記課題を解決するために種々の検討を行った結果、研磨液中に含まれる砥粒が2次粒子径に応じた特定の粒度分布を有するように粒子径と粒子数を制御することにより、研磨傷の発生数を著しく低減できることを見出した。
【0015】
本発明に係るCMP用研磨液及び研磨方法は、以下の通りである。
<1> 砥粒と、酸化金属溶解剤と、酸化剤と、水とを含有し、pHが4以下であり、光散乱法及び光遮蔽法を用いて測定される粒度分布が下記条件(a)及び(b)を満たすCMP用研磨液である。
条件(a):粒子径が0.56μm以上、0.64μm未満の粒子数が1000個/ml未満である
条件(b):粒子径が0.64μm以上、0.79μm未満の粒子数が600個/ml未満である
【0016】
<2> 前記粒度分布が、更に下記条件(c)を満たす<1>に記載のCMP用研磨液である。
条件(c):粒子径が0.79μm以上、0.98μm未満の粒子数が500個/ml未満である
【0017】
<3> 前記粒度分布が、更に下記条件(d)を満たす<2>に記載のCMP用研磨液である。
条件(d):粒子径が0.98μm以上、1.43μm未満の粒子数が300個/ml未満である
【0018】
<4> 前記粒度分布が、更に下記条件(e)を満たす<3>に記載のCMP用研磨液である。
条件(e):粒子径が1.43μm以上、3.99μm未満の粒子数が150個/ml未満である
【0019】
<5> 前記粒度分布が、更に下記条件(f)を満たす<4>に記載のCMP用研磨液である。
条件(f):粒子径が3.99μm以上の粒子数が50個/ml未満である
【0020】
<6> 前記砥粒が、シリカ、アルミナ、セリア、チタニア、ジルコニア、ゲルマニア及びこれらの変性物からなる群から選ばれる少なくとも1種である<1>〜<5>のいずれか1つに記載のCMP用研磨液である。
【0021】
<7> 前記砥粒の2次粒子径が10nm以上、200nm以下である<1>〜<6>のいずれか1つに記載のCMP用研磨液である。
【0022】
<8> 前記砥粒の含有量がCMP用研磨液100質量部中に0.2質量部〜50質量部である<1>〜<7>のいずれか1つに記載のCMP用研磨液である。
【0023】
<9> 更に第4級ホスホニウム塩を含有する<1>〜<8>のいずれか1つに記載のCMP用研磨液である。
【0024】
<10> 前記第4級ホスホニウム塩が、ブチルトリフェニルホスホニウム塩、アミルトリフェニルホスホニウム塩、ヘキシルトリフェニルホスホニウム塩、n−ヘプチルトリフェニルホスホニウム塩、テトラフェニルホスホニウム塩及びベンジルトリフェニルホスホニウム塩から選ばれる少なくとも1種である<9>に記載のCMP用研磨液である。
【0025】
<11> 表面に凹部及び凸部が形成された層間絶縁膜と、前記凹部及び凸部に沿って前記層間絶縁膜の表面を被覆するバリア層と、少なくとも前記凹部内を充填し、且つ前記バリア層を被覆する導電性物質層と、を有する基板の前記導電性物質層を研磨して前記凸部上のバリア層を露出させる第1の研磨工程と、露出した前記バリア層を研磨して、前記層間絶縁膜の凸部を露出させる第2の研磨工程と、を有する2段階研磨方法の前記第2の研磨工程において用いられる<1>〜<10>のいずれか1つに記載のCMP用研磨液である。
【0026】
<12> 表面に凹部及び凸部が形成された層間絶縁膜と、前記凹部及び凸部に沿って前記層間絶縁膜の表面を被覆するバリア層と、少なくとも前記凹部内を充填し、且つ前記バリア層を被覆する導電性物質層と、を有する基板の前記導電性物質層を研磨して前記凸部上のバリア層を露出させる第1の研磨工程と、露出した前記バリア層を、<1>〜<10>のいずれか1つに記載のCMP用研磨液を用いて研磨して、前記層間絶縁膜の凸部を露出させる第2の研磨工程と、を有する研磨方法である。
【0027】
<13> 前記導電性物質層が、銅、銅合金、銅の酸化物及び銅合金の酸化物から選ばれる少なくとも1種の導電性物質を含む<12>に記載の研磨方法である。
【0028】
<14> 前記バリア層が、タンタル、タンタル化合物、チタン、チタン化合物、タングステン、タングステン化合物、ルテニウム及びルテニウム化合物から選ばれる少なくとも1種を含む<12>又は<13>に記載の研磨方法である。
【0029】
<15> 前記層間絶縁膜が、low−k膜である<12>〜<14>のいずれか1つに記載の研磨方法である。
【0030】
<16> 前記low−k膜が、誘電率2.9以下のシリコン系被膜又は有機ポリマ膜である<15>に記載の研磨方法である。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、良好な研磨速度を確保しつつ、研磨傷の発生数を劇的に低減することが可能なCMP用研磨液及びこれを用いた研磨方法を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】一般的なダマシンプロセスによる配線形成の断面模式図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。また本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。更に本明細書において研磨液中の各成分の量について言及する場合、研磨液中に各成分に該当する物質が複数存在する場合には、特に断らない限り、研磨液中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
【0034】
以下、本発明のCMP用研磨液(以下、単に「研磨液」ともいう。)及びこれを用いた研磨方法の好適な実施形態について詳細に説明する。
[研磨液]
【0035】
本発明のCMP用研磨液は、砥粒と、後述する酸化金属溶解剤の少なくとも1種と、酸化剤の少なくとも1種と、水とを含有し、pHが4以下である。
【0036】
前記研磨液においては、前記砥粒の粒度分布が2次粒子径に応じて制御されることにより、研磨の際に膜表面に生じる研磨傷の発生数を著しく低減できる。従って、前記研磨液によれば、膜の欠損や構造変化による半導体デバイスの配線の断線や信頼性の低下等の問題を抑えることができる。前記砥粒の粒度分布は、研磨液を用いて光散乱法及び光遮蔽法によって測定される粒度分布を表す。
【0037】
<砥粒>
前記研磨液は、2次粒子径に応じて粒度分布が制御された砥粒を含有する。前記砥粒は、2次粒子径がより大きい研磨材粒子ほど、その粒子数が段階的に少なくなるように制御される。これにより、バリア層の研磨速度を良好に確保しつつ、研磨の際に膜表面に発生する研磨傷の低減を飛躍的に図ることができる。
【0038】
前記砥粒の前記粒度分布は、下記条件(a)及び(b)を満たすものとされる。研磨速度の制御性と研磨傷の低減効果の両立の観点から、更に下記条件(c)〜(f)を満たすことが好ましく、下記条件(a)〜(f)を全て満たすことがより好ましい。
条件(a):2次粒子径が0.56μm以上、0.64μm未満の研磨材粒子(第1の粒子群)がCMP用研磨液1ml中に0個以上、1000個未満の範囲で含まれる
条件(b):2次粒子径が0.64μm以上、0.79μm未満の研磨材粒子(第2の粒子群)がCMP用研磨液1ml中に0個以上、600個未満の範囲で含まれる
条件(c):2次粒子径が0.79μm以上、0.98μm未満の研磨材粒子(第3の粒子群)がCMP用研磨液1ml中に0個以上、500個未満の範囲で含まれる
条件(d):2次粒子径が0.98μm以上、1.43μm未満の研磨材粒子(第4の粒子群)がCMP用研磨液1ml中に0個以上、300個未満の範囲で含まれる
条件(e):2次粒子径が1.43μm以上、3.99μm未満の研磨材粒子(第5の粒子群)がCMP用研磨液1ml中に0個以上、150個未満の範囲で含まれる
条件(f):2次粒子径が3.99μm以上の研磨材粒子(第6の粒子群)がCMP用研磨液1ml中に0個以上、50個未満の範囲で含まれる
【0039】
前記第1の粒子群の前記粒子数は、好ましくは0個以上、900個未満、より好ましくは0個以上、800個未満である。前記第2の粒子群の前記粒子数は、好ましくは0個以上、550個未満、より好ましくは0個以上、500個未満である。前記第3の粒子群の前記粒子数は、好ましくは0個以上、450個未満、より好ましくは0個以上、400個未満である。前記第4の粒子群の前記粒子数は、好ましくは0個以上、270個未満、より好ましくは0個以上、240個未満である。前記第5の粒子群の前記粒子数は、好ましくは0個以上、135個未満、より好ましくは0個以上、120個未満である。前記第6の粒子群の前記粒子数は、好ましくは0個以上、45個未満、より好ましくは0個以上、40個未満である。
【0040】
但し、前記第1〜第6の前記粒子数は、本発明の研磨液を、実際に半導体デバイスを作製する際に用いられる研磨液に適用する場合の数値をそれぞれ表すものであり、使用時に水等の溶媒で所定の濃度に希釈して用いられる濃縮型の研磨液に適用する場合については、希釈後の研磨液における数値である。
【0041】
前記砥粒の粒度分布を制御する方法としては、特に制限はないが、フィルタを用いての濾過、自然沈降分離及び遠心分離等から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。中でも、粗大粒子を効果的に低減しつつ、工程時間及び工程費用を抑制できるという観点より、フィルタを用いての濾過がより好ましい。かかる粒度分布を制御する方法は、1種類単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることもできる。
【0042】
前記砥粒の粒度分布は、光散乱法及び光遮蔽法を用いた粒度分布測定装置(例えば、Particle Sizing System社製の商品名:Accusizer780)で測定できる。前記粒度分布測定装置を用いた測定に際し、測定条件の詳細については、後述の通りとされる。
【0043】
前記砥粒としては、特に制限はないが、具体的には例えば、シリカ、アルミナ、ジルコニア、セリア、チタニア、ゲルマニア及びこれらの変性物等が挙げられ、中でも、シリカ、アルミナ、ジルコニア、セリア、チタニア及びゲルマニアが好ましく、シリカ及びアルミナが更に好ましい。
【0044】
前記シリカ又はアルミナの粒子としては、研磨液中での分散安定性に優れ、CMPにより発生する研磨傷(スクラッチ)の発生数が少ない、コロイダルシリカ又はコロイダルアルミナが好ましく、コロイダルシリカがより好ましい。
【0045】
前記コロイダルシリカは、シリコンアルコキシドの加水分解又は珪酸ナトリウムのイオン交換による公知の製造方法により製造することができ、粒径制御性やアルカリ金属不純物の点で、テトラメトキシシラン又はテトラエトキシシラン等のシリコンアルコキシドを加水分解する方法が最もよく利用される。また、前記コロイダルアルミナは、硝酸アルミニウムの加水分解による公知の製造方法により製造することができる。
【0046】
なお、前記変性物とは、砥粒粒子の表面をアルキル基等で変性したものである。砥粒粒子の表面をアルキル基で変性する方法は、特に制限はないが、例えば、砥粒の粒子表面に存在する水酸基とアルキル基を有するアルコキシシランとを反応させる方法が挙げられる。
【0047】
前記アルキル基を有するアルコキシシランとしては、特に制限はないが、モノメチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルモノメトキシシラン、モノエチルトリメトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、トリエチルモノメトキシシラン、モノメチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルモノエトキシシラン等が挙げられる。
【0048】
前記水酸基とアルキル基を有するアルコキシシランとを反応させる方法としては、特に制限はなく、例えば砥粒粒子とアルコキシシランとを研磨液中で室温又は所望により加熱下に反応させる方法等が使用できる。これら砥粒は、1種類単独で又は2種類以上を混合して用いることができる。
【0049】
前記砥粒の含有量は、前記研磨液100質量部中に、好ましくは0.2質量部〜50質量部、より好ましくは0.5質量部〜30質量部、更に好ましくは1質量部〜20質量部である。前記砥粒の含有量が0.2質量部以上で用いるとバリア層、層間絶縁膜に対する研磨速度が低下することがなく、また50質量部以下で用いれば砥粒が凝集することを抑制できる。
【0050】
前記砥粒の2次粒子径は、10nm〜200nmであることが好ましい。より良好な研磨速度が得られる点で、前記2次粒子径は20nm以上であることがより好ましく、30nm以上であることが更に好ましく、40nm以上であることが特に好ましい。また、研磨傷をより効果的に抑制できる点で、前記2次粒子径は150nm以下であることがより好ましく、100nm以下であることが更に好ましく、80nm以下であることが特に好ましい。
【0051】
前記砥粒の2次粒子径は、動的光散乱式粒度分布計(例えば、COULTER Electronics社製の商品名:COULTER N4 SD)で測定した値である。Coulterの測定条件は、測定温度20℃、溶媒屈折率1.333(水)、粒子屈折率Unknown(設定)、溶媒粘度1.005cp(水)、Run Time200sec、レーザ入射角90°であり、Intensity(散乱強度、濁度に相当)が5E+04〜4E+05の範囲に入るように、4E+05よりも高い場合には水で希釈して測定する。
【0052】
また、前記砥粒は、砥粒の凝集を抑制する観点より、平均粒度分布の標準偏差が10nm以下であることが好ましく、5nm以下であることがより好ましい。
【0053】
前記砥粒は、導電性物質層、バリア層及び層間絶縁膜の研磨速度の観点より、平均2粒子未満の一次粒子が凝集した凝集粒子であることが好ましく、平均1.5粒子未満の一次粒子が凝集した凝集粒子であることがより好ましい。
【0054】
前記砥粒が平均2粒子未満であることを確認するには、まず、動的光散乱式粒度分布計(例えば、COULTER Electronics社製の商品名:COULTER N4 SD)で測定し、平均粒径を求める。次に、測長走査型電子顕微鏡(例えば、日立ハイテクノロジーズ社製の商品名:S−4800)で観察し、砥粒の一次粒径を求める。そして得られた砥粒の平均粒径を一次粒径で割って、算出すればよい。
【0055】
<酸化金属溶解剤>
本発明の研磨液は、酸化金属溶解剤の少なくとも1種を含有する。前記酸化金属溶解剤は、研磨速度及びエッチング速度を効果的に制御できる化合物である。
【0056】
前記酸化金属溶解剤としては、特に制限はないが、有機酸、有機酸エステル、有機酸のアンモニウム塩等の有機酸化合物、無機酸、無機酸のアンモニウム塩等の無機酸化合物などが挙げられる。具体的には、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、2−メチル酪酸、n−ヘキサン酸、3,3−ジメチル酪酸、2−エチル酪酸、4−メチルペンタン酸、n−ヘプタン酸、2−メチルヘキサン酸、n−オクタン酸、2−エチルヘキサン酸、安息香酸、グリコール酸、サリチル酸、グリセリン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、マレイン酸、フタル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、p−トルエンスルホン酸等の有機酸;該有機酸エステル及び前記有機酸のアンモニウム塩;塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸;過硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、塩化アンモニウム、クロム酸アンモニウム等の前記無機酸のアンモニウム塩類などが挙げられる。
【0057】
これらの中では、実用的な研磨速度を維持しつつ、エッチング速度を効果的に抑制できるという点で、ギ酸、マロン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、サリチル酸、アジピン酸が好ましい。これら酸化金属溶解剤は、1種類単独で又は2種類以上混合して用いることができる。
【0058】
前記酸化金属溶解剤の含有量は、導電性物質層及びバリア層の研磨速度が向上する点で前記研磨液100質量部中、0.001質量部以上であることが好ましく、0.002質量部以上であることがより好ましく、0.005質量部以上であることが更に好ましい。また、エッチングの抑制が容易となり、被研磨面に生じる荒れを抑制できる点で、前記研磨液100質量部中、20質量部以下であることが好ましく、10質量部以下であることがより好ましく、5質量部以下であることが更に好ましい。
【0059】
<酸化剤>
前記研磨液は、酸化剤の少なくとも1種を含有する。前記酸化剤としては、金属に対する酸化作用を有する化合物であれば、特に制限はなく、具体的には例えば、過酸化水素、ペルオキソ硫酸塩、硝酸、過ヨウ素酸カリウム、次亜塩素酸、オゾン水等が挙げられ、この中でも過酸化水素が好ましい。これら酸化剤は1種類単独で又は2種類以上を混合して用いることができる。
【0060】
前記酸化剤の含有量は、導電性物質層およびバリア層の酸化が十分起こり、研磨速度も良好に保たれる点で、前記研磨液100質量部中に、0.01質量部以上が好ましく、0.02質量部以上がより好ましく、0.05質量部以上が更に好ましい。また、被研磨面に荒れが生じることを防止できる点で、前記研磨液100質量部中に、50質量部以下であることが好ましく、30質量部以下がより好ましく、15質量部以下が更に好ましい。
【0061】
<金属防食剤>
本発明の研磨液は、金属防食剤の少なくとも1種を含有することが好ましい。前記金属防食剤としては、金属に対する防食作用を有する化合物として従来公知のものがいずれも使用可能である。
【0062】
例えば、2−メルカプトベンゾチアゾ−ル、2,4−ジメチルチアゾール等のチアゾール骨格を有する化合物;1,2,3−トリアゾ−ル、1,2,4−トリアゾ−ル、3−アミノ−1H−1,2,4−トリアゾ−ル、ベンゾトリアゾ−ル、1−ヒドロキシベンゾトリアゾ−ル、1−ジヒドロキシプロピルベンゾトリアゾ−ル、2,3−ジカルボキシプロピルベンゾトリアゾ−ル、4−ヒドロキシベンゾトリアゾ−ル、4−カルボキシル(−1H−)ベンゾトリアゾ−ル、4−カルボキシル(−1H−)ベンゾトリアゾ−ルメチルエステル、4−カルボキシル(−1H−)ベンゾトリアゾ−ルブチルエステル、4−カルボキシル(−1H−)ベンゾトリアゾ−ルオクチルエステル、5−ヘキシルベンゾトリアゾ−ル、[1,2,3−ベンゾトリアゾリル−1−メチル][1,2,4−トリアゾリル−1−メチル][2−エチルヘキシル]アミン、トリルトリアゾ−ル、ナフトトリアゾ−ル、ビス[(1−ベンゾトリアゾリル)メチル]ホスホン酸等のトリアゾール骨格を有する化合物;ピリミジン、1,2,4−トリアゾロ[1,5−a]ピリミジン、1,3,4,6,7,8−ヘキサハイドロ−2H−ピリミド[1,2−a]ピリミジン、1,3−ジフェニル−ピリミジン−2,4,6−トリオン、1,4,5,6−テトラハイドロピリミジン、2,4,5,6−テトラアミノピリミジンサルフェイト、2,4,5−トリハイドロキシピリミジン、2,4,6−トリアミノピリミジン、2,4,6−トリクロロピリミジン、2,4,6−トリメトキシピリミジン、2,4,6−トリフェニルピリミジン、2,4−ジアミノ−6−ヒドロキシルピリミジン、2,4−ジアミノピリミジン、2−アセトアミドピリミジン、2−アミノピリミジン、2−メチル−5,7−ジフェニル−(1,2,4)トリアゾロ(1,5−a)ピリミジン、2−メチルサルファニル−5,7−ジフェニル−(1,2,4)トリアゾロ(1,5−a)ピリミジン、2−メチルサルファニル−5,7−ジフェニル−4,7−ジヒドロ−(1,2,4)トリアゾロ(1,5−a)ピリミジン、4−アミノピラゾロ[3,4,−d]ピリミジン等のピリミジン骨格を有する化合物;テトラゾール、5−メチルテトラゾール、5−アミノテトラゾール、1−(2−ジメチルアミノエチル)−5−メルカプトテトラゾール等のテトラゾール骨格を有する化合物;イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−イソプロピルイミダゾール、2−プロピルイミダゾール、2−ブチルイミダゾール、4−メチルイミダゾール、2、4−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−アミノイミダゾール等のイミダゾール骨格を有する化合物;ピラゾール、3,5−ジメチルピラゾール、3―アミノ−5−メチルピラゾール、4−メチルピラゾール、3−アミノ−5−ヒドロキシピラゾール等のピラゾール骨格を有する化合物;などが挙げられる。これらは1種類を単独で、又は2種類以上を混合して用いることができる。
【0063】
前記の中では、エッチング速度が効果的に抑制できるという点で、トリアゾール骨格を有する化合物及びテトラゾール骨格を有する化合物が好ましく、1,2,3−トリアゾ−ル、ベンゾトリアゾ−ル、1−ヒドロキシベンゾトリアゾ−ル、テトラゾール、5−メチルテトラゾール、5−アミノテトラゾールがより好ましい。
【0064】
金属防食剤の含有量は、導電性物質層のエッチングの抑制が容易であり、且つ被研磨面に荒れが生じる可能性も少ない点で、前記研磨液100質量部中に、0.001質量部以上であることが好ましく、0.005質量部以上であることがより好ましく、0.01質量部以上であることが更に好ましい。また、導電性物質層及びバリア層の研磨速度の低下を抑えられる点で、前記研磨液100質量部中、10質量部以下であることが好ましく、5質量部以下であることがより好ましく、2質量部以下であることが更に好ましい。
【0065】
<水溶性ポリマ>
前記研磨液は、水溶性ポリマの少なくとも1種を含むことが好ましい。これにより、被研磨面の平坦性の向上が効果的に達成できる。水溶性ポリマは1種類単独で又は2種類以上を混合して用いることができる。
【0066】
水溶性ポリマは、重合可能な置換基を有する原料モノマを重合又は共重合させて得られるものが好ましい。水溶性ポリマは、単一のモノマからなるホモポリマであっても、2つ以上のモノマからなる共重合体(コポリマ)であってもよい。
【0067】
前記原料モノマとしては、具体的には例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ビニル酢酸、チグリン酸、2−トリフルオロメチルアクリル酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、メサコン酸、グルコン酸等のカルボン酸類;2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等のスルホン酸類;アクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル等のエステル類等が挙げられる。
【0068】
前記水溶性ポリマは、カルボン酸基、スルホン酸基等の酸基の一部が塩を形成していてもよい。前記塩としては、アンモニウム塩、アルカリ金属塩、アルキルアミン塩等が挙げられる。本発明では、水溶性ポリマが有している、塩を形成可能な置換基の一部又は全部が塩を形成しているものを、その水溶性ポリマの塩として定義する。例えば、ポリアクリル酸(アクリル酸のホモポリマ)におけるカルボン酸基の一部又は全部がアンモニウム塩基に置換されたポリマを「ポリアクリル酸アンモニウム塩」という。
【0069】
水溶性ポリマとしては、平坦化特性に優れる点で、アクリル酸系ポリマ(モノマ成分としてC=C−COOH骨格を有する含む化合物原料モノマを含む重合又は共重合させて得られるポリマ)であることが好ましい。
【0070】
前記水溶性ポリマの具体例としては、例えば、ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸、ポリリシン、ポリリンゴ酸、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸アンモニウム塩、ポリメタクリル酸ナトリウム塩、ポリアミド酸、ポリマレイン酸、ポリイタコン酸、ポリフマル酸、ポリ(p−スチレンカルボン酸)、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、アミノポリアクリルアミド、ポリアクリル酸アンモニウム塩、ポリアクリル酸ナトリウム塩、ポリアミド酸、ポリアミド酸アンモニウム塩、ポリアミド酸ナトリウム塩及びポリグリオキシル酸等のポリカルボン酸及びその塩;アルギン酸、ペクチン酸、カルボキシメチルセルロ−ス、寒天、カードラン及びプルラン等の多糖類;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン及びポリアクロレイン等のビニル系ポリマ等が挙げられる。
【0071】
前記水溶性ポリマの重量平均分子量は、好ましくは500以上、より好ましくは1500以上、更に好ましくは5000以上である。前記水溶性ポリマの重量平均分子量の上限は特に制限はないが、溶解度の観点から500万以下が好ましい。前記水溶性ポリマの重量平均分子量が500以上であると高い研磨速度を発現する。前記水溶性ポリマの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより標準ポリスチレンの検量線を用いて測定することができる。
【0072】
前記水溶性ポリマの含有量は、前記研磨液100質量部中に、好ましくは0.001質量部〜15質量部、より好ましくは0.005質量部〜10質量部、更に好ましくは0.01質量部〜5質量部である。前記水溶性ポリマの含有量が0.001質量部以上であると、エロージョン及びシームの抑制効果が低下することもなく、15質量部以下であると、研磨液に含まれる砥粒の安定性が極端に低下することもない。
【0073】
<有機溶剤>
前記研磨液においては、前述の酸化金属溶解剤及び酸化剤の他に、有機溶剤が含まれてもよい。有機溶剤の添加により、被研磨面に対する濡れ性が制御され、層間絶縁膜に対する研磨速度を向上させることができる。前記有機溶剤としては、特に制限はないが、水と任意に混合できるものが好ましい。
【0074】
前記有機溶剤としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート等の炭酸エステル類;ブチロラクトン、プロピロラクトン等のラクトン類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール等のグリコール類;グリコール類の誘導体として、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルやエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテルやエチレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノプロピルエーテルやエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールモノエーテル類、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテルやエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、プロピレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジプロピレングリコールジプロピルエーテル、トリエチレングリコールジプロピルエーテル、トリプロピレングリコールジプロピルエーテルやエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールジブチルエーテル、トリプロピレングリコールジブチルエーテル等のグリコールジエーテル類等;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン、ポリエチレンオキサイド、エチレングリコールモノメチルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエーテル類;メタノール、エタノール、プロパノール、n−ブタノール、n−ペンタノール、n−ヘキサノール、イソプロパノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;その他、フェノール類、ジメチルホルムアミド等のアミド類、N−メチルピロリドン、酢酸エチル、乳酸エチル、スルホラン類などが挙げられる。
【0075】
これらの中でも、グリコールモノエーテル類、アルコール類、炭酸エステル類が好ましい。これら有機溶剤は、1種類単独で又は2種類以上を混合して用いることができる。
【0076】
前記有機溶剤の含有量は、前記研磨液100質量部中に、好ましくは0.1質量部〜95質量部、より好ましくは0.2質量部〜50質量部、更に好ましくは0.5質量部〜10質量部である。前記有機溶剤の含有量が0.1質量部以上であると、研磨液の基板に対する濡れ性が低くなることもなく、95質量部以下であると引火の可能性もなく製造プロセス上好ましい。
【0077】
<第4級ホスホニウム塩>
本発明の研磨液は、更に第4級ホスホニウム塩を含むことが好ましい。前記研磨液が第4級ホスホニウム塩を含むことにより、low−k膜の研磨速度の制御が効果的に達成できる。前記第4級ホスホニウム塩としては、特に制限はないが、下記一般式(1)で表されるものであることが好ましい。
【0078】

【化1】




【0079】
(上式(1)中、Rは、置換又は非置換のアルキル基を表し、Xは陰イオンを表す。)
【0080】
上式(1)中、Rの置換又は非置換のアルキル基は、直鎖状アルキル基、分岐状アルキル基あるいはベンゼン環を有するアルキル基から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0081】
また、上式(1)中のRのアルキル基は、上述のように直鎖状であっても分岐状であってもよい。アルキル基の鎖長は、好ましくは炭素原子数1個以上14個以下、より好ましくは炭素原子数4個以上7個以下である。前記アルキル基鎖長が炭素原子数14個以下であると、研磨液の保管安定性が著しく低下することもない。
【0082】
また、上式(1)中のRのアルキル基は、上述のようにベンゼン環を有するアルキル基であってもよく、好ましくはベンジル基あるいはフェニル基の誘導体、より好ましくはベンジル基あるいはフェニル基である。
【0083】
また、上式(1)中のXの陰イオンは、特に限定はないが、ハロゲンイオン(例えば、F、Cl、Br、I)、水酸化物イオン、硝酸イオン、亜硝酸イオン、次亜塩素酸イオン、亜塩素酸イオン、塩素酸イオン、過塩素酸イオン、酢酸イオン、炭酸水素イオン、リン酸イオン、硫酸イオン、硫酸水素イオン、亜硫酸イオン、チオ硫酸イオン、炭酸イオン等を挙げることができる。
【0084】
前記第4級ホスホニウム塩としては、メチルトリフェニルホスホニウム塩、エチルトリフェニルホスホニウム塩、トリフェニルプロピルホスホニウム塩、イソプロピルトリフェニルホスホニウム塩、ブチルトリフェニルホスホニウム塩、アミルトリフェニルホスホニウム塩、ヘキシルトリフェニルホスホニウム塩、n−ヘプチルトリフェニルホスホニウム塩、トリフェニル(テトラデシル)ホスホニウム塩、テトラフェニルホスホニウム塩、ベンジルトリフェニルホスホニウム塩、(2−ヒドロキシベンジル)トリフェニルホスホニウム塩、(2−クロロベンジル)トリフェニルホスホニウム塩、(4−クロロベンジル)トリフェニルホスホニウム塩、(2,4−ジクロロベンジル)フェニルホスホニウム塩、(4−ニトロベンジル)トリフェニルホスホニウム塩、4−エトキシベンジルトリフェニルホスホニウム塩、(1−ナフチルメチル)トリフェニルホスホニウム塩、(シアノメチル)トリフェニルホスホニウム塩、(メトキシメチル)トリフェニルホスホニウム塩、(ホルミルメチル)トリフェニルホスホニウム塩、アセトニルトリフェニルホスホニウム塩、フェナシルトリフェニルホスホニウム塩、メトキシカルボニルメチル(トリフェニル)ホスホニウム塩、エトキシカルボニルメチル(トリフェニル)ホスホニウム塩、(3−カルボキシプロピル)トリフェニルホスホニウム塩、(4−カルボキシブチル)トリフェニルホスホニウム塩、(N−メチル−N−フェニルアミノ)トリフェニルホスホニウム塩、2−ジメチルアミノエチルトリフェニルホスホニウム塩、トリフェニルビニルホスホニウム塩、アリルトリフェニルホスホニウム塩、トリフェニルプロパルギルホスホニウム塩等が挙げられ、これらは1種類単独で又は2種類以上混合して用いることができる。
【0085】
これらの中では、ブチルトリフェニルホスホニウム塩、アミルトリフェニルホスホニウム塩、ヘキシルトリフェニルホスホニウム塩、n−ブチルトリフェニルホスホニウム塩、テトラフェニルホスホニウム塩、ベンジルトリフェニルホスホニウム塩が好ましい。
【0086】
第4級ホスホニウム塩の含有量は、前記研磨液100質量部中に、好ましくは0.0001質量部〜1質量部、より好ましくは0.001質量部〜0.5質量部、更に好ましくは0.005質量部〜0.2質量部である。前記砥粒の含有量が0.0001質量部以上であるとlow−k膜の研磨速度抑制効果の低下が抑えられ、また、1質量部以下であると研磨液の保管安定性を維持することができる。
【0087】
<水>
本発明で用いられる水は、特に制限されるものではないが、純水を好ましく用いることができる。水は残部として配合されていればよく、含有率は特に制限はない。
【0088】
本発明の研磨液は、半導体デバイスにおける配線層の形成に適用できる。研磨対象である被研磨膜は、例えば、導電性物質層と、バリア層と、層間絶縁膜が含まれていればよい。
【0089】
一般に、同一条件下のCMPにおいては、導電性物質層/バリア層/層間絶縁膜の研磨速度比が0.1〜2/1/0.1〜5の範囲であることが好ましく、前記研磨液を用いれば、前記研磨速度比を前記範囲内とすることができる。
【0090】
前記研磨速度比の確認方法としては、対象となる被研磨面を下記研磨条件にて60秒間化学機械研磨を行い、下記洗浄条件で基板を洗浄した後、研磨前後での膜厚差を、通常使用される膜厚測定装置(例えば、大日本スクリーン製造株式会社社製、製品名:ラムダエース、VL−M8000LS)を用いて測定することにより算出する方法が用いられる。
(研磨条件)
研磨装置:片面金属膜用研磨機(アプライドマテリアルズ社製、MIRRA)
研磨布:発泡ポリウレタン樹脂製研磨布
定盤回転数:93回/分
ヘッド回転数:87回/分
研磨圧力:14kPa
研磨液の供給量:200ml/分
【0091】
(基板の洗浄条件)
研磨した基板の被研磨面にスポンジブラシ(ポリビニルアルコール系樹脂製)を押し付け、蒸留水を基板に供給しながら基板とスポンジブラシを回転させ、60秒間洗浄する。次にスポンジブラシを取り除き、基板の被研磨面に蒸留水を60秒間供給する。最後に基板を高速で回転させて蒸留水を弾き飛ばして基板を乾燥する。
【0092】
[研磨方法]
本発明の研磨方法は、表面に凹部及び凸部が形成された層間絶縁膜と、前記凹部及び凸部に沿って前記層間絶縁膜の表面を被覆するバリア層と、少なくとも前記凹部内を充填し、且つ前記バリア層を被覆する導電性物質層と、を有する基板の前記導電性物質層を研磨して前記凸部上のバリア層を露出させる第1の研磨工程と、露出した前記バリア層を、請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載のCMP用研磨液を用いて研磨して、前記層間絶縁膜の凸部を露出させる第2の研磨工程と、を有する。
【0093】
前記研磨方法を用いて基板を研磨するに際しは、基板の少なくとも一方の表面に形成されたバリア層を含む被研磨膜と研磨定盤上の研磨布との間に、前述した研磨液を供給しながら、前記被研磨膜が設けられた面側の前記基板表面を研磨布に押圧した状態で、該基板と研磨定盤とを相対的に動かすことによって被研磨膜の少なくとも一部を除去する。
【0094】
以下、本発明の研磨方法を用いる、半導体デバイスにおける配線層形成の一連の工程を図面を参照しながら説明する。研磨前の基板は、図1(a)に示すように、所定パターンの凹部を有する層間絶縁膜1上に、この層間絶縁膜1の表面の凸凹に沿って層間絶縁膜1を被覆するバリア層2を有し、バリア層2上には、前記凹部内部を充填するように導電性物質層3が形成されている。
【0095】
前記層間絶縁膜1としては、シリコン系被膜や有機ポリマ膜が挙げられる。前記シリコン系被膜としては、シリコン酸化膜、フルオロシリケートグラス、トリメチルシラン、ジメトキシジメチルシランやテトラエトキシシランを出発原料として得られるオルガノシリケートグラス、ポーラスオルガノシリケートグラス、シリコンオキシナイトライド、水素化シルセスキオキサン等のシリカ系被膜やシリコンカーバイド及びシリコンナイトライドが挙げられる。これらの中でも、オルガノシリケートグラス、ポーラスオルガノシリケートグラス等が好ましい。また、前記有機ポリマ膜としては、全芳香族系低誘電率層間絶縁膜1(low−k膜)が挙げられる。前記有機ポリマ膜の誘電率は、配線遅延を解消する観点から、2.9以下であることが好ましい。
【0096】
前記層間絶縁膜1は、CVD(化学気相成長)法、スピンコート法、ディップコート法、又はスプレー法によって成膜される。
【0097】
前記層間絶縁膜1として、具体的に例示するならば、LSI製造工程、特に多層配線形成工程における層間絶縁膜等が挙げられる。
【0098】
前記バリア層2は、層間絶縁膜1中への導電性物質が拡散するのを防止するため、及び層間絶縁膜1と導電性物質層3との密着性向上のために形成される。
【0099】
前記バリア層2の組成は、タングステン、窒化タングステン、タングステン合金等のタングステン化合物、チタン、窒化チタン、チタン合金等のチタン化合物、タンタル、窒化タンタル、タンタル合金等のタンタル化合物、ルテニウム、ルテニウム化合物から選ばれることが好ましい。前記バリア層2は、これらの1種からなる単層構造であっても、2種以上からなる積層構造であってもよい。
【0100】
前記導電性物質層3としては、銅、銅合金、銅の酸化物又は銅合金の酸化物、タングステン、タングステン合金、銀、金等の金属が主成分の物質からなる層が挙げられる。この中でも、銅、銅合金、銅の酸化物、銅合金の酸化物等の銅が主成分であるものが好ましい。前記導電性物質層3としては、公知のスパッタ法、メッキ法により前記物質を成膜した膜を使用することが可能である。
【0101】
以下、本発明の研磨方法の実施態様を、半導体デバイスにおける配線層形成の一連の工程に沿って説明する。まず、シリコンの基板上にオルガノシリケートグラス等のlow−k膜を層間絶縁膜1として成膜する。次いで、レジスト層形成、エッチング等の公知の手段によって、層間絶縁膜1表面に所定パターンの凹部(基板露出部)を形成して、凸部と凹部とを有する層間絶縁膜1とする。この層間絶縁膜1上に、表面の凸凹に沿って層間絶縁膜1を被覆するタンタル等のバリア層2を蒸着又はCVD等により成膜する。更に、図1(a)に示すように、前記凹部を充填するようにバリア層2を被覆する銅等の導電性物質層3を蒸着、めっき又はCVD等により形成する。
【0102】
基板上に形成された層間絶縁膜1の厚さは0.01μm〜2.0μm程度、バリア層2の厚さは0.01μm〜2.5μm程度、導電性物質層3の厚さは0.01μm〜2.5μm程度が好ましい。
【0103】
次に、この基板の表面の導電性物質層3を、例えば、前記導電性物質層3/バリア層2の研磨速度比が十分大きい前記導電性物質用の研磨液を用いて、CMPにより研磨する(第1の研磨工程)。これにより、層間絶縁膜1上の凸部のバリア層2が表面に露出し、凹部に前記導電性物質層3が残された所望の導体パターンが得られる(図1(b))。
【0104】
前記導電性物質層3/バリア層2の研磨速度比が十分大きい前記導電性物質用の研磨液としては、例えば、特許第3337464号明細書に記載の研磨液を用いることができる。この研磨が進行する際に、導電性物質層3と同時に凸部のバリア層2の一部が研磨されてもよい。
【0105】
第1の研磨工程により得られた導体パターン面を、引き続く第2の研磨工程用の被研磨面として、本発明の研磨液を用いて研磨する。第2の研磨工程では、前記基板を研磨布の上に押圧した状態で前記研磨布と基板の間に本発明の研磨液を供給しながら研磨定盤と前記基板とを相対的に動かすことにより、少なくとも前記第1の研磨工程により露出したバリア層2を研磨する。
【0106】
かかる研磨工程において、使用する研磨装置としては、例えば、研磨布により研磨する場合、研磨される基板を保持できるホルダと、回転数が変更可能なモータ等と接続し、研磨布を貼り付けた研磨定盤とを有する一般的な研磨装置が使用できる。前記研磨布としては、特に制限はなく、通常使用されるものがいずれも使用可能である。例えば、不織布、発泡ポリウレタン、多孔質フッ素樹脂等が挙げられる。
【0107】
前記研磨装置を用いて研磨を行うに際し、研磨条件としては特に制限はない。定盤の回転速度としては、例えば、基板が飛び出さないように200rpm以下の低回転が好ましい。前記被研磨面を有する半導体基板の研磨布への押し付け圧力は、1kPa〜100kPaであることが好ましく、研磨速度の被研磨面内均一性及びパターンの平坦性を満足するために、5kPa〜50kPaであることがより好ましい。
【0108】
研磨処理中、前記研磨布と被研磨膜との間には、前記研磨液をポンプ等で連続的に供給する。この研磨液の供給量は、特に制限はなく、研磨布の表面が常に研磨液で覆われていればよい。
【0109】
研磨終了後の基板は、流水中でよく洗浄後、スピンドライ等を用いて基板上に付着した水滴を払い落としてから乾燥させることが好ましい。このとき、前記研磨布の表面状態を常に同一にして化学機械研磨を行うために、研磨を行う前に、前記研磨布のコンディショニング工程を入れることが好ましい。例えば、ダイヤモンド粒子のついたドレッサを用いて、少なくとも水を含む処理液で、前記研磨布のコンディショニングを行う。また、コンディショニングが施された前記研磨布を用いて、後述の研磨方法により、基板の研磨を行った後、更に基板洗浄工程を加えることが好ましい。
【0110】
本発明の研磨液は、導電性物質層3、バリア層2及び層間絶縁膜1を研磨でき、第2の研磨工程では、少なくとも、前記露出しているバリア層2を研磨する。図1(c)に示すように、凸部バリア層2の下の層間絶縁膜1が全て露出し、凹部に配線層となる前記導電性物質層3が残され、凸部と凹部との境界にバリア層2の断面が露出した所望のパターンが得られた時点で研磨を終了する。
【0111】
研磨終了時のより優れた平坦性を確保するために、更にオーバー研磨(例えば、第2の研磨工程で所望のパターンを得られるまでの時間が100秒の場合、この100秒の研磨に加えて50秒追加して研磨することをオーバー研磨50%という。)してもよい。オーバー研磨する場合には、層間絶縁膜1の一部も研磨される。
【0112】
このようにして形成された金属配線の上に、層間絶縁膜1を形成した後、研磨して半導体基板全面に渡って平滑な面とする。この工程を所定数繰り返すことにより、所望の配線層数を有する半導体デバイスを製造することができる。
【0113】
本発明の研磨液は、上記のような半導体基板に形成された金属膜の研磨だけでなく、磁気ヘッド等の基板を研磨するためにも使用することができる。
【実施例】
【0114】
以下に、実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明の技術思想を逸脱しない限り、本発明はこれらの実施例に制限するものではない。例えば、研磨液の材料の種類やその配合比率は、本実施例記載の種類や比率以外でも差し支えなく、研磨対象の組成や構造も、本実施例記載以外の組成や構造でも差し支えない。
【0115】
(実施例1)
[CMP用研磨液(I)の作製]
CMP用研磨液の組成として、平均粒径60nmのコロイダルシリカ5.0質量部、マロン酸0.5質量部、30%過酸化水素水0.2質量部、5−アミノテトラゾール0.2質量部、ポリメタクリル酸(重量平均分子量8000)0.1質量部及び水94.0質量部を攪拌・混合した後、フィルターA(メーカー公称孔径:0.2μm)を用いて全量濾過し、CMP用研磨液(I)を作製した。
【0116】
(実施例2〜6)
[CMP用研磨液(II)〜(VI)の作製]
実施例1におけるCMP用研磨液の組成を表1に示すように代え、それ以外は実施例1と同様にしてCMP用研磨液(II)〜(VI)を作製した。尚、表1中、「−」は配合していないことを示す。
【0117】
(比較例1)
[CMP用研磨液(VII)の作製]
実施例1における濾過の際に用いたフィルターをフィルターD(メーカー公称孔径:0.5μm)に代え、それ以外は実施例1と同様にしてCMP用研磨液(VII)を作製した。
【0118】
(比較例2〜4)
[CMP用研磨液(VIII)〜(X)の作製]
比較例1(実施例1と同じ)におけるCMP用研磨液の組成を表2に示す各成分に代え、それ以外は比較例1と同様にしてCMP用研磨液(VIII)〜(X)を作製した。尚、表2中、「−」は配合していないことを示す。
【0119】
[CMP用研磨液(I)〜(X)の評価]
以下の手順に従い、CMP用研磨液(I)〜(X)の粗大粒子数、ブランケット基板の研磨速度及び銅配線付きパターン基板の研磨傷をそれぞれ評価した。
【0120】
<粗大粒子数の評価>
先ず、100mlポリボトルにCMP用研磨液(I)を小分けして、ミックスローターにセットし、回転数60rpm/minで5分間撹拌した。その後、5mlシリンジにCMP研磨液(I)を5mlとり、エア抜き後にループチューブから取り出した全量を粒度分布測定装置内に投入して粒度分布を測定した。
【0121】
得られた測定結果から、2次粒子径を以下のように粒子群(a)〜(f)の6段階に分け、各群ごとに粒子数を読み取った。これを3回繰り返し、その平均値を粗大粒子数とした。同様な方法でCMP用研磨液(II)〜(X)の粗大粒子数を評価した。
【0122】
粒子群(a):0.56μm以上、0.64μm未満
粒子群(b):0.64μm以上、0.79μm未満
粒子群(c):0.79μm以上、0.98μm未満
粒子群(d):0.98μm以上、1.43μm未満
粒子群(e):1.43μm以上、3.99μm未満
粒子群(f):3.99μm以上
【0123】
尚、粗大粒子数評価の測定条件は、下記の通りである。
(測定条件)
測定装置 :粒度分布測定装置(Particle Sizing System社製、製品名“Accusizer780”)
data collection time:60sec
number channels :128
diluent flow rate :60ml/min
target concentration:3000part/ml
# of samples :1
time between samples:1min
background threshold:50part/sec
initial 2nd−stage dilution factor:10
vessel flush time :80sec
nd−stage mixer volume:8ml
sample flow time :10sec
sum mode :min.
diameter :0.56μm
【0124】
<研磨速度及び研磨傷の評価>
ブランケット基板の研磨速度及び銅配線付きパターン基板の研磨傷の評価は、以下の基板(a)〜(e)をそれぞれ使用した。
ブランケット基板(a):スパッタ法で窒化タンタル(厚さ:200nm)を形成したシリコン基板。
ブランケット基板(b):めっき法で銅(厚さ:1000nm)を形成したシリコン基板。
ブランケット基板(c):CVD法でオルガノシリケートグラス(厚さ:1000nm)を形成したシリコン基板。
ブランケット基板(d):CVD法で二酸化珪素(厚さ:1000nm)を形成したシリコン基板。
銅配線付きパターン基板(e):層間絶縁膜1として厚さ500nmのオルガノシリケートグラスを成膜し、その上に厚さ35nmの窒化タンタルと1100nmの銅を形成したシリコン基板。また最小銅配線幅0.18μmの銅配線付きパターン基板。
【0125】
(ブランケット基板の研磨工程)
上記ブランケット基板(a)〜(d)を用い、CMP用研磨液(I)〜(X)により、下記研磨条件で60秒間化学機械研磨を行った。
【0126】
(銅配線付きパターン基板の研磨工程)
上記銅配線付きパターン基板(e)の溝部以外の銅膜を、銅用研磨液を用いて公知のCMP法により研磨して凸部のバリア層を被研磨面に露出させ、次にCMP用研磨液(I)〜(X)により、下記研磨条件で90秒間化学機械研磨を行った。
【0127】
(研磨条件)
研磨装置 :片面金属膜用研磨機(アプライドマテリアルズ社製、製品名“MIRRA”)
研磨布 :発泡ポリウレタン樹脂製研磨布
定盤回転数 :93回/分
ヘッド回転数 :87回/分
研磨圧力 :14kPa
研磨液の供給量:200ml/分
【0128】
(基板の洗浄工程)
上記研磨条件で研磨した基板の被研磨面にスポンジブラシ(ポリビニルアルコール系樹脂製)を押し付け、蒸留水を基板に供給しながら基板とスポンジブラシを回転させ、60秒間洗浄した。次に、スポンジブラシを取り除き、基板の被研磨面に蒸留水を60秒間供給した。最後に基板を高速で回転させて蒸留水を弾き飛ばして基板を乾燥した。
【0129】
(ブランケット基板の研磨速度)
洗浄されたブランケット基板(a)及び(b)について、金属膜厚測定装置(日立国際電気株式会社製、製品名“VR−120/08S”)を用いて研磨前後での膜厚差を測定し、得られた結果から研磨速度を求めた。また、洗浄されたブランケット基板(c)及び(d)について、膜厚測定装置(大日本スクリーン製造株式会社製、製品名“ラムダエース、VL−M8000LS”)を用いて研磨前後での膜厚差を測定し、得られた結果から研磨速度を求めた。この結果を表1及び表2に示す。
【0130】
(銅配線付きパターン基板の研磨傷)
上記研磨条件で処理及び洗浄した銅配線付きパターン基板(e)の研磨傷を、次の手順で評価した。先ず、銅配線付きパターン基板(e)について、欠陥検査装置(アプライドマテリアルズ社製、製品名“ComPlus 3T”)を用いて欠陥検査した。検査したL/Sパターンは、L/S=0.18μm/0.18μmの繰り返しパターン部とL/S=0.25μm/0.25μmの繰り返しパターン部の2箇所である。検査したL/Sパターンの面積は、1.25mm×1.80mmである。また、検査したチップ数は、1枚のウエハあたり、57チップである。
【0131】
次に、各欠陥について、欠陥観察装置として走査型電子顕微鏡(アプライドマテリアルズ社製、製品名“SEM Vision G3”)を用いて観察し、研磨傷とそれ以外の欠陥を識別し、研磨傷の発生数を求めた。
【0132】
【表1】

【0133】
【表2】

【0134】
表1に示されるように、所定の粒度分布を有する粗大粒子を研磨液中に含む実施例1〜6のCMP用研磨液では、パターンウエハの研磨傷が1個/ウエハ以下であり、研磨傷の発生数が極端に少ないことが明らかである。
【0135】
これに対し、表2に示されるように、CMP用研磨液1mlに含まれる粒子群(a)〜(f)の粒子数が本発明において規定する範囲以上である比較例4のCMP用研磨液では、パターンウエハの研磨傷が65個/ウエハであり、実施例1〜6のCMP用研磨液と比較して、研磨傷の発生数が極端に多いことが明らかである。
【0136】
このように本発明のCMP用研磨液では、粗大粒子の粒子数を2次粒子径に応じて適切に制御することにより、優れた研磨速度が得られるとともに、研磨傷の発生数が劇的に低減でき、膜の欠損や構造変化の無い、設計通りの半導体デバイスを作製可能なCMP用研磨液を提供することができることが明らかである。即ち、本発明のCMP用研磨液では、微細金属配線の形成が必要不可欠である高性能半導体デバイス製造において、短絡、断線、歩留まり、信頼性の低下等の不具合を抑制できることが明らかである。
【符号の説明】
【0137】
1 層間絶縁膜
2 バリア層
3 導電性物質層


【特許請求の範囲】
【請求項1】
砥粒と、酸化金属溶解剤と、酸化剤と、水とを含有し、pHが4以下であり、光散乱法及び光遮蔽法を用いて測定される粒度分布が下記条件(a)及び(b)を満たすCMP用研磨液。
条件(a):粒子径が0.56μm以上、0.64μm未満の粒子数が1000個/ml未満である
条件(b):粒子径が0.64μm以上、0.79μm未満の粒子数が600個/ml未満である
【請求項2】
前記粒度分布が、更に下記条件(c)を満たす請求項1に記載のCMP用研磨液。
条件(c):粒子径が0.79μm以上、0.98μm未満の粒子数が500個/ml未満である
【請求項3】
前記粒度分布が、更に下記条件(d)を満たす請求項2に記載のCMP用研磨液。
条件(d):粒子径が0.98μm以上、1.43μm未満の粒子数が300個/ml未満である
【請求項4】
前記粒度分布が、更に下記条件(e)を満たす請求項3に記載のCMP用研磨液。
条件(e):粒子径が1.43μm以上、3.99μm未満の粒子数が150個/ml未満である
【請求項5】
前記粒度分布が、更に下記条件(f)を満たす請求項4に記載のCMP用研磨液。
条件(f):粒子径が3.99μm以上の粒子数が50個/ml未満である
【請求項6】
前記砥粒が、シリカ、アルミナ、セリア、チタニア、ジルコニア、ゲルマニア及びこれらの変性物からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のCMP用研磨液。
【請求項7】
前記砥粒の2次粒子径が10nm以上、200nm以下である請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載のCMP用研磨液。
【請求項8】
前記砥粒の含有量がCMP用研磨液100質量部中に0.2質量部〜50質量部である請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載のCMP用研磨液。
【請求項9】
更に第4級ホスホニウム塩を含有する請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載のCMP用研磨液。
【請求項10】
前記第4級ホスホニウム塩が、ブチルトリフェニルホスホニウム塩、アミルトリフェニルホスホニウム塩、ヘキシルトリフェニルホスホニウム塩、n−ヘプチルトリフェニルホスホニウム塩、テトラフェニルホスホニウム塩及びベンジルトリフェニルホスホニウム塩から選ばれる少なくとも1種である請求項9に記載のCMP用研磨液。
【請求項11】
表面に凹部及び凸部が形成された層間絶縁膜と、前記凹部及び凸部に沿って前記層間絶縁膜の表面を被覆するバリア層と、少なくとも前記凹部内を充填し、且つ前記バリア層を被覆する導電性物質層と、を有する基板の前記導電性物質層を研磨して前記凸部上のバリア層を露出させる第1の研磨工程と、
露出した前記バリア層を研磨して、前記層間絶縁膜の凸部を露出させる第2の研磨工程と、
を有する2段階研磨方法の前記第2の研磨工程において用いられる請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載のCMP用研磨液。
【請求項12】
表面に凹部及び凸部が形成された層間絶縁膜と、前記凹部及び凸部に沿って前記層間絶縁膜の表面を被覆するバリア層と、少なくとも前記凹部内を充填し、且つ前記バリア層を被覆する導電性物質層と、を有する基板の前記導電性物質層を研磨して前記凸部上のバリア層を露出させる第1の研磨工程と、
露出した前記バリア層を、請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載のCMP用研磨液を用いて研磨して、前記層間絶縁膜の凸部を露出させる第2の研磨工程と、
を有する研磨方法。
【請求項13】
前記導電性物質層が、銅、銅合金、銅の酸化物及び銅合金の酸化物から選ばれる少なくとも1種の導電性物質を含む請求項12に記載の研磨方法。
【請求項14】
前記バリア層が、タンタル、タンタル化合物、チタン、チタン化合物、タングステン、タングステン化合物、ルテニウム及びルテニウム化合物から選ばれる少なくとも1種を含む請求項12又は請求項13に記載の研磨方法。
【請求項15】
前記層間絶縁膜が、low−k膜である請求項12〜請求項14のいずれか1項に記載の研磨方法。
【請求項16】
前記low−k膜が、誘電率2.9以下のシリコン系被膜又は有機ポリマ膜である請求項15に記載の研磨方法。

【図1】
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【公開番号】特開2013−38237(P2013−38237A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−173451(P2011−173451)
【出願日】平成23年8月8日(2011.8.8)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】