説明

CNS疾患の治療のためのTGF−Rシグナリングのインヒビター

本発明は、疾患の予防または治療のための薬学的組成物の調製のためのオリゴヌクレオチドの使用に関し、ここで、神経発生および/または神経再生、特に、アルツハイマー病、パーキンソン病、レーヴィ体痴呆、筋萎縮性側索硬化症、脊髄小脳萎縮症、クロイツフェルトヤコブ病、前頭側頭型痴呆、ピック病、エイズ痴呆複合症、血管性痴呆、進行性核上麻痺、大脳皮質基底核変性症、多発性萎縮症、ハレルフォルデンスパッツ病、ハンチントン病、卒中、脳外傷および脊髄損傷、色素性網膜炎、黄斑変性、緑内障、蝸牛変性、うつ病、精神分裂病、多発性硬化症、および発育性神経変性のような疾患が有用な効果を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、疾患の予防または治療のための薬学的組成物の調製のためのオリゴヌクレオチドの使用に関する。ここで、神経発生および/または神経再生は、特に、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性萎縮症、進行性核上麻痺、大脳皮質基底核変性症、レーヴィ体痴呆、筋萎縮性側索硬化症およびその他の運動ニューロン疾患、ハンチントン病、脊髄小脳萎縮症、クロイツフェルトヤコブ病およびその他の重症のプリオン疾患、前頭側頭型痴呆、ピック病、エイズ痴呆複合症、ハレルフォルデンスパッツ病、ハンチントン病のような神経変性疾患、血管性痴呆、卒中、脳外傷および脊髄損傷、色素性網膜炎、黄斑変性、緑内障、うつ病および精神分裂病のような脳血管疾患、およびダウン症候群のような発達障害は、有用な効果を有する。
【背景技術】
【0002】
多くの重篤な神経変性疾患は、現在社会で厳しい社会経済的な影響を有し、例えば、アルツハイマー病、ダウン症候群のような痴呆を伴う発達障害、パーキンソン病、レーヴィ体痴呆、前頭側頭型痴呆、ピック病、筋萎縮性側索硬化症、脊髄小脳萎縮症、クロイツフェルトヤコブ病、エイズ痴呆複合症、血管性痴呆、進行性核上麻痺、大脳皮質基底核変性症、多発性萎縮症、ハンチントン病、卒中、脳外傷、色素性網膜炎、黄斑変性、緑内障、うつ病、精神分裂病、および多発性硬化症のような疾患がある。共通の病態生理学的原因は、遺伝的、後成的、または後天的な欠損が見られ、しばしば細胞破壊片の凝集形成または蓄積が生じ、結局、進行性機能障害を導き、そして最終的に、神経細胞およびグリア細胞の死ならびに構造の崩壊に至ることに見られる。ミクログリア細胞および血管周囲の休眠マクロファージが誘引および活性化されて、細胞破壊片および組織破壊片を取り除こうと試みる。これは、クロイツフェルトヤコブ病では、非常に短い期間に起こり得、または例えば、パーキンソン病または多発性硬化症では、数十年にわたり起こり得る。活性化されたミクログリア細胞/マクロファージ細胞集団は、多くの炎症性サイトカインを細胞外マトリックスに放出して、これらを小静脈またはCSF腔のいずれかに排出する。不運にも、上述のこれらの疾患の臨床経過に有利な効果を有し得る神経発生および神経再生は(個々の具体的な病態生理学的メカニズムにもかかわらず)、現在のところ未知のメカニズムによって抑制されている。したがって、本発明の根底にある技術的問題は、神経発生および神経再生の抑制を阻害することによって、神経変性疾患または少なくとも該疾患に関連する症状の治療または予防に適切な手段を提供することである。
【0003】
上記技術的問題の解決は、請求項で特徴付けられる実施態様の提供によって達成される。タンパク質のTGF−βファミリー、すなわち特異的な細胞表面レセプターTGF−RI、TGF−RII、TGF−RIIIを有するTGF−β1、TGF−β2、およびTGF−β3は、胚のおよび主に間葉/神経外胚葉の器官発達のいくつかの重大な局面に作用することが知られている。それらは、胚幹細胞をニューロン前駆細胞に分化させ、そして傷ついた成熟ニューロンに対して神経保護的である。さらに、それらは、造血幹細胞分化に重大な影響を有し、増殖および分化も制御することが知られている。本発明に導く実験の過程で、TGF−R(すなわち、TGF−RIおよびTGF−RII)が、神経発生および神経再生の抑制に関連する重要な要因であり、したがって、このTGF−RまたはTGF−RIIの生物学的活性を妨害し得る化合物が、神経変性疾患および/または炎症性神経疾患の治療/予防のために有用であることがわかった。
【発明の開示】
【0004】
要約すると、本発明に導く実験の結果としては、以下の通りである:
1.個々の成分は当然知られているけれども(TGF−β、TGF−RII、脳脊髄液コンパートメント、硝子体液、内リンパ液、ニューロン前駆細胞など)、生理学的な調節回路は、前駆細胞/幹細胞による効果的なCNS再生のレベルを明らかにすることが認識されている。この回路は、心室壁で発現される重要な標的分子TGF−RIIを有し、CNS病理学の大部分において消滅した神経再生に原因がある。
2.興味深いことに、調節は、血液、リンパ管、細胞外マトリックスを介してではなく液体コンパートメント(脳脊髄液など)を介して起こり、その液体コンパートメントは、神経細胞およびそれらの前駆細胞または幹細胞に直接接触する。
3.ニューロンの/乏突起神経膠のまたは星状細胞の再生のための生理学的阻害回路は、CNS内の損傷を修復する方策のための理想的な標的であるとして発見され、圧倒的に、神経系においてほとんどすべての破壊性の病状に適用され得る。TGF−βについてのこれまでの知識から、TGF−βの機能を減少させるよりもむしろ増加させようと試みされており(5を参照のこと)、そのためCNSにおいて公知の神経保護または免疫抑制の活性を増強する:ここで、本発明者らは、心室壁でTGF−RIIシグナリングをブロックすることによって、幹細胞再生に対するその阻害機能を減少させると仮定する。
4.炎症過程が神経変性に重要な役割を果たし、および比較的大量の臨床前および臨床データがこの考えを支持すると思われると長期間にわたり推測されていたが、主回路は、現在、開示されており、それは、すべての単一の調節副回路、例えば、サイトカイン(IL−1、IL−6、IL−12)などを組み合わせる。
5.さらに、自然(Nature)に神経保護が設置され、そして神経再生に優先してCNSに免疫特権が与えられることに留意し得る。今のところ、免疫特権が与えられおよび高度に保護されたCNS(免疫攻撃および神経アポトーシスに対して特異的に保護される)は、TGF−βシステムのために重要な部分であり、これが、正確な免疫特権および同一のTGF−β分子のため神経再生に欠損を有することは示されていない。進化の概念は、非常に精巧なCNSの急激な神経保護およびその最も複雑な機能性を支持して主張するように思われる。この意味で、個々の神経再生は、個人の神経保護よりも進化には重要ではないと思われる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
(調節回路)
生理学的な脳の神経発生により、機能不全のまたは老化している神経細胞、乏突起神経膠細胞または星状細胞が、それぞれの前駆細胞によって継続的に修復/置換される。脳での修復のための神経発生は、TGF−β−TGF−R系(特にTGF−RIIだけでなく、TGF−RIもまた)によって、脳脊髄液を介して調節される。主な組み合わせは、TGF−βを産生しそしてCSF(および硝子体、内リンパ)コンパートメント内へ細胞外腔を介してこれを分泌するミクログリア/マクロファージ系統細胞、および表面構造上に高度に発現されたTGF−RIIまたはTGF−RI、または同一のレセプターを有する上衣裏層を通じて、CSFを介して(および硝子体、内リンパへ)、このシグナルを受ける神経前駆細胞/幹細胞である。多くのCNS病理では、神経発生は、重度に障害されまたは機能不全になる。神経発生の調節は、通常、任意の特定の疾患の病理の状況において起こるCNSのミクログリア細胞/マクロファージの活性化によって調節、通常は抑制される。このルート(CSFから副脳室領域/その他の神経性の領域へ)によって活性化されたミクログリア細胞/マクロファージは、神経変性性、急性および慢性、炎症性、低酸素性、アテローム性動脈硬化性または加齢性の脳の柔組織の再生を抑制する。ニューロンの分化が影響されるだけではなく、乏突起神経膠細胞および星状細胞系も影響される。ニューロンの/乏突起神経膠の/星状細胞の再生を改善するために、この回路を妨害するすべての分子は、治療として請求されている。この回路を使用するCNS病理の診断、予防処置、予防、または予後のための方法はまた、治療処置の効果をモニタリングするために、考えられるところでは非常に重要である。
【0006】
上記の疾患では、ミクログリア細胞、および潜在的には血管周囲の休眠マクロファージは、タンパク質凝集体、細胞破壊片、炎症、アテローム性動脈硬化における炎症性応答、または急性の外傷/低酸素性に関連する細胞死から誘引される。これは、急性、亜急性、または慢性の過程であり得る。活性化過程の間、活性化されたミクログリア細胞集団(血管壁由来またはその他の由来のマクロファージを含む)は、大量の炎症性サイトカインを細胞外マトリックスに放出し、小静脈または直接的にCSF腔のいずれかに流出する。これらのサイトカインは、CSFコンパートメントに達し、直ちにすべての場所で利用され、そしてCSFによっていくらかの範囲まで取り囲まれる。これらのサイトカインの中では、TGF−βである。神経炎症が神経発生を阻害すること、およびインドメタシン(一般的な非ステロイド系の抗炎症薬)での炎症の阻害が、内毒素で誘導された炎症後に神経発生を回復し、そして頭蓋照射後に神経発生が増加することが示された(Monje, M. L., H. Todaら、(2003).「Inflammatory blockade restores adult hippocampal neurogenesis.」Science 302 (5651):1760-1765)。
【0007】
しかし、従来技術は、TGF−βを、損傷後あるいは病理学的状態下で神経発生および神経修復をダウンレギュレートする主なレギュレーターとして開示していない。対照的に、従来技術は、TGF−βを、損傷したニューロンまたは障害のあるニューロンの細胞死を妨げる神経保護剤として考え、CNS疾患状態でTGF−βをアップレギュレートしようと試みた。
【0008】
Zhangら(Zhang, J. M., R. Hoffmannら、(1997).「Mitogenic and antiproliferative signals for neural crest cells and the neurogenic action of TGF-beta1.」Dev. Dyn. 208(3):375-386.)は、TGF−βがウズラの神経冠細胞の発生に効果を有することを示す。ここで、TGF−βは、多分化能性神経冠細胞(および/またはそれらの直接の誘導体)および単分化能メラニン形成細胞の両方の増殖を阻害し、コロニーの大きさを減少させる。さらに、本発明とは対照的に、神経発生は、TGF−βの存在下で顕著に増加した。アドレナリン細胞および感覚ニューロン前駆体の両方のコロニーあたりの数は、TGF−β処理された神経芽細胞陽性コロニーで増加した。
【0009】
TGF−βは、細胞の成長および分化、器官発生、マトリックス形成、傷の修復、および免疫機能において重要な役割を有する。TGF−βは、多くの細胞タイプに対して強力な成長阻害物質であるけれども、線維芽細胞および骨芽細胞の増殖を刺激する。これはまた、線維芽細胞および骨芽細胞による細胞外マトリックス産生の強力な刺激物質でもあり、マトリックス分解を阻害し、そしてマトリックス相互作用のためにレセプターをアップレギュレートする。TGF−β1は、肝臓線維症の病因における主要な要因として、ならびに免疫系および腎臓におけるシクロスポリンAの有益および有害な両方の効果の重要なメディエータの少なくとも1つとして関与している。さらに、ヒトおよび実験モデルにおける、種々の慢性の進行性線維症の腎臓疾患は、TGF−β系の刺激に関連することが示されている。
【0010】
TGF−β1は、G1およびG2サイクリン依存性キナーゼおよびサイクリンを、キナーゼ活性およびタンパク質の量の両方でダウンレギュレートする。TGF−β1はまた、ヒト骨髄性白血病細胞中の多数のセリンおよびスレオニン残基に対する網膜芽腫サプレッサー遺伝子pRbの産生物のリン酸化を阻害する。十分にリン酸化されていないpRbは、G1相で転写因子E2F−4に関連するが、リン酸化されたpRbは、主にE2F−1およびE2F−3と結合する。TGF−β1は、p130(pRbファミリーメンバー)/E2F−4複合体形成をアップレギュレートし、そしてp107(pRbファミリーメンバー)/E2F−4複合体形成をダウンレギュレートしてE2F−4レベルを一定に保持するので、これらの結果は、細胞が細胞周期を逸脱しG1中に引き止められると、TGF−β1の作用によって、E2F−4がp107からpRbおよびp130に転換されることを示唆する。「cdkインヒビター」p27は、TGF−β1に媒介された細胞周期制御の正および負の両方のレギュレーターである。TGF−β1は、正常な原始造血幹細胞の選択されたインヒビターであることが報告されているが、TGF−βは、原始およびより分化した骨髄性白血病細胞株の両方ともを阻害する。TGF−β1の神経保護活性、神経発達におけるその役割、および免疫応答を調節するその役割に多くの関心が寄せられる。TGF−β1は、インビトロおよびインビボでの神経保護することが多くの研究で示されている。アゴニスト研究は、TGF−β1が中大脳動脈閉塞(MCAO)の後の神経細胞死および梗塞の大きさを減少させることを示すが、逆に、アンタゴニスト研究は、MCAO後に神経細胞死および梗塞の大きさを増加させることを示しており、これはTGF−β1が、大脳虚血において神経保護の役割を有することを示唆している。マウスにおけるインビボでのTGF−β1のアデノウイルスに媒介された過剰発現についての最近の研究は、さらに、大脳虚血においてTGF−β1が神経保護の役割に関連し、これは、神経細胞死、梗塞の大きさ、および神経学的結果の減少によって明らかである。さらに、多くのインビトロでの研究は、ラット、マウス、ニワトリ、およびヒトを含む様々な種由来のニューロンにおけるTGF−β1の神経保護の能力を示している。非常に興味深いことに、TGF−β1は、広範な死誘導薬剤/損傷(低酸素性/虚血、グルタミン酸興奮毒性、β−アミロイド、酸化的損傷、およびヒト免疫不全ウイルスを含む)に対して保護することが示された。TGF−β1の神経保護効果は、ミトコンドリア膜ポテンシャルを維持する能力、Ca2+ホメオスタシスを安定化する能力、抗アポトーシスタンパク質Bcl−2およびBcl−x1の発現を増加させる能力、カスパーゼ3活性化を阻害する能力、およびプラスミノゲンアクチベーターインヒビター−1を誘導する能力に関連している。胚幹細胞の研究は、TGF−β関連シグナリングによって負に調節される神経系統の詳細の構成要素として原始神経幹細胞を示している。もう1つのTGFファミリーのメンバーであるTGF−αの内因性の発現は、成体の神経発生を正に調節することを示している。TGF−αは、上衣下に存在する祖先細胞の十分な増殖および嗅球に移動する神経前駆体の十分な産生のために必要である。TGF−αノックアウトマウスでは、これらの祖先細胞の増殖もまた、おそらく細胞周期の延長のため、加齢とともに減少する。老化現象または内因性TGF−αの不在は、インビトロで上皮増殖因子の存在下において、単離される神経幹細胞の数に影響を与えない。
【0011】
ヒトにおける免疫修飾のためのTGF−βの使用は、その毒性(マトリックス産生の過度の刺激を含む)、腎毒性、およびその他の有害な影響によって厳しく制限される。TGF−βは、腫瘍形成の可能性を有し、そして糸球体症、肺線維症、硬皮症、および慢性的な移植片対宿主病に関与している。さらに、TGF−βは、極めて強力な免疫抑制性のサイトカインであるが、証拠のいくつかの系統は、疾患に関連するかまたはトランスジェニック動物モデルにおけるかの両方のTGF−β発現の慢性的な刺激が、自己免疫炎症に逆説的に導き得るかまたは増強し得ることを示す。
【0012】
T細胞免疫応答の負のレギュレーターとしてTGF−βの強力な抗炎症特性は、種々のCNS病理の病態生理学において重要な役割を果たすという証拠が増加している。したがって、このサイトカインは、損傷に関連するペプチドおよび治療介入のための可能性のある標的とみなされる。神経炎症およびミクログリア病理は、多くの神経学的疾患と関連する。ここで、最も古典的な疾患は、明らかに多発性硬化症のような神経免疫学的疾患である。しかし、これはまた、例えば、アルツハイマー病、レーヴィ体痴呆、エイズ痴呆複合症、血管性痴呆のような記憶喪失を顕著に特徴とする、または例えば、ピック病、進行性核上麻痺、大脳皮質基底核変性症、およびクロイツフェルトヤコブ病のような記憶喪失をあまり顕著に特徴としない認知の疾患も含む。さらに、炎症プログラムは、卒中、脳外傷、および脊髄損傷のような急性の傷害の後、活性化される。クロイツフェルトヤコブ病の異なる動物モデルでは、ミクログリアの活性化およびTGF−β1のアップレギュレーションが報告されている(Baker, C. A., Z. Y. Luら、(1999).「Microglial activation varies in different models of Creutzfeldt-Jakob disease.」J Virol 73(6):5089-5097)。
【0013】
数百もの異なる神経変性疾患の中で、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、および筋萎縮性側索硬化症を含む一握りにしか注意が向けられていない。同様の神経変性の過程が、脳の異なる領域に影響を与え得、所定の疾患を徴候の観点から非常に異なるように見せているということを述べる価値がある。中枢神経系(CNS)の神経変性疾患は、大脳皮質の疾患(アルツハイマー病)、大脳基底核の疾患(パーキンソン病)、脳幹および小脳の疾患、または脊髄の疾患(筋萎縮性側索硬化症)に分類され得る。
【0014】
例えば、神経変性および神経変性疾患は、アルツハイマー病、パーキンソン病、クロイツフェルトヤコブ病(CJD)、異型クロイツフェルトヤコブ病(nvCJD)、ハレルフォルデンスパッツ病、ハンチントン病、多発性萎縮症(Multisystem Atrophy)、痴呆、前頭側頭型痴呆、運動ニューロン疾患、筋萎縮性側索硬化症、脊髄性筋萎縮症、脊髄小脳萎縮症(SCA)、精神分裂病、感情の障害、大うつ病、髄膜脳炎、細菌性髄膜脳炎、ウイルス性髄膜脳炎、CNS自己免疫疾患、多発性硬化症(MS)、急性虚血/低酸素性障害、CNS外傷、頭部外傷、動脈硬化症、アテローム性動脈硬化症、微小血管性痴呆、ビンスワンゲル病、白質病変、網膜変性、蝸牛変性、黄斑変性、迷路性難聴、AIDS関連痴呆、色素性網膜炎、脆弱X染色体に関連する震え/運動失調症候群(FXTAS)、進行性核上麻痺(PSP)、線条体黒質変性症(SND)、オリーブ橋小脳変性(OPCD)、シャイ・ドレーガー症候群(SDS)がある。
【0015】
(TGF−β1のレベルへの影響)
(TGF−β1のアップレギュレーションおよびその効果)
多くの研究は、神経保護または免疫調節の目的のためにTGF−β1のレベルを増加させようと試みた。アゴニスト研究は、TGF−β1が中大脳動脈閉塞(MCAO)の後の神経細胞死および梗塞の大きさを減少させることを示すが、逆に、アンタゴニスト研究は、MCAO後に神経細胞死および梗塞の大きさを増加させることを示しており、これはTGF−β1が、大脳虚血において神経保護の役割を有することを示唆している。マウスにおけるインビボでのTGF−β1のアデノウイルスに媒介された過剰発現についての最近の研究は、さらに、大脳虚血においてTGF−β1が神経保護の役割に関連し、これは、神経細胞死、梗塞の大きさ、および神経学的結果の減少によって明らかである。さらに、多くのインビトロでの研究は、ラット、マウス、ニワトリ、およびヒトを含む様々な種由来のニューロンにおけるTGF−β1の神経保護の能力を示している。非常に興味深いことには、TGF−β1は、広範な死誘導薬剤/損傷(低酸素性/虚血、グルタミン酸興奮毒性、β−アミロイド、酸化的損傷、およびヒト免疫不全ウイルスを含む)に対して保護することが示された。TGF−β1の神経保護効果は、ミトコンドリア膜ポテンシャルを維持する能力、Ca2+ホメオスタシスを安定化する能力、抗アポトーシスタンパク質Bcl−2およびBcl−x1の発現を増加させる能力、カスパーゼ3活性化を阻害する能力、およびプラスミノゲンアクチベーターインヒビター−1を誘導する能力に関連している。
【0016】
ヒトにおける免疫修飾のためのTGF−βの使用は、その毒性(マトリックス産生の過度の刺激を含む)、腎毒性、およびその他の有害な影響によって厳しく制限される。TGF−βは、腫瘍形成の可能性を有し、そして糸球体症、肺線維症、硬皮症、および慢性的な移植片対宿主病に関与している。さらに、TGF−βは、極めて強力な免疫抑制性のサイトカインであるが、証拠のいくつかの系統は、疾患に関連するかまたはトランスジェニック動物モデルにおけるかの両方のTGF−β発現の慢性的な刺激が、自己免疫炎症に逆説的に導き得るかまたは増強し得ることを示す。
【0017】
本発明者らの主な所見は、上記CNSにおける保護効果について記載されている同一のTGF−βが、生理学およびほとんどすべてのCNSの病理学においてCNS幹細胞修復の主な負の調節分子であることである。ミクログリア細胞によって(疾患に対する応答において低い生理学的なレベルまたは高いレベルのいずれかで)産生されるTGF−βは、細胞間マトリックスを介してCSF中へ漏出する。そこで、上衣下の祖先を含む細胞層領域または潜在的なその他のCNS幹細胞再生の領域で、CNSの前駆細胞集団/幹細胞集団において非常に調節および発現されるTGF−RIIおよびTGF−RIと、自由におよび直接的に相互作用し得る。この所見は、負の調節からなり、逆に、高いCSF−TGF−βレベルの場合に低い幹細胞再生を生じる。普通でなく意外なことに、TGF−RIIの極端に高い発現レベルおよび活性は、本発明者らのSVZまたは海馬の実験では、前駆細胞/幹細胞増殖の部位にある。例えば、脳脊髄液(CSF)のような緩衝液を介したシグナルの伝達もまた、普通ではない。したがって、完全な調節回路であり、そこでは、生理学的および病理学的な調節が非常に類似しているが、強度によってのみ変化する(すなわち、CSF中のTGF−βのレベル、および標的細胞でのTGF−R発現のレベル)。個々の疾患の病理学的表現型は、遺伝学的な欠損(例えば、シヌクレイノパチー、スーパーオキサイドジスムターゼ変異、トリヌクレオチド反復疾患)または外傷、低酸素性、血管疾患または炎症、またはCNSの老化のような多様な変化によって特徴付けられる。しかし、疾患病理学の執行者は、常にミクログリア細胞/マクロファージ集団が産生したTGF−βである。一方では、それは、神経保護および免疫抑制であり、潜在的に疾患病理学によって与えられる柔組織への急性炎症性損傷および神経損失を減少させることを助ける。間接的には、ヤヌス頭のように、同一の分子は、前駆細胞または幹細胞レベルで、TGF−β−TGF−Rループを妨げることによって、自身の幹細胞/前駆細胞によるCNSの損傷修復を妨げ、それによって幹細胞の増殖を顕著に抑制する。この場合、幹細胞としては、CNS内からの前駆細胞に由来する細胞のみが見られるだけではなく、おそらく、それらの幹細胞/前駆細胞もまた、骨髄のそれぞれの血管からCNS柔組織に浸入しようと試みる。これはまた、柔組織中のTGF−βレベルが単に減少することによって、CNSにおける神経保護/免疫抑制効果が、炎症および/または直接的な神経のアポトーシスによる重篤な急性損傷を導くことを廃止することを意味する。
【0018】
したがって、TGF−Rレベルでの局所的な介入は、修復のための安定な介入への唯一の魅力的な経路であるように思われ、脳へのTGF−βの有用な効果を危険にさらさない。したがって、本発明は、TGF−Rを発現する前駆細胞/幹細胞プールにおけるTGF−β1の生物学的活性を妨害するアンチセンスオリゴヌクレオチドに関する。このオリゴヌクレオチドまたはこのオリゴヌクレオチドの少なくとも1つを含む薬学的組成物は、疾患の診断/予防処置/予防または治療に有用であり、ここで、神経発生または神経再生に、有用な効果を有する。それらはまた、治療的予防(例えば、卒中または頭部損傷の後)において、これ以下に記載されるメカニズムが効果的である前に、本発明者らの実験に示されるように、有用である。
【0019】
本明細書で用いられる用語「妨害する」は、TGF−Rおよび/またはTGF−RIIの生物学的活性またはその発現を調節すること、好ましくは減少させることまたは消失させることを意味する。生物学的活性の調節は、直接的相互作用、すなわち、TGF−R、好ましくはTGF−RIIへの化合物の結合によって、あるいは間接的な相互作用、例えば、TGF−Rおよび/またはTGF−RIIの生物学的活性に関連する化合物との相互作用によって、引き起こされ得る。局所的または全身的な移植のすべてのタイプ(例えば、エクスビボ増殖、同種異系細胞)を含む、CNSでの神経再生を改善する目的または神経/造血幹細胞もしくは前駆細胞を増加させる目的で、この調節回路を妨害するためのTGF−βR、TGF−βRII、TGF−βRIII、またはそのシグナル伝達をターゲティングする薬剤として作用する適切な化合物を、以下に列挙する。
【0020】
(a)プラスミド、ベクターまたは天然の/合成の/突然変異したウイルス、種々の改変型のオリゴヌクレオチド(例えば、PTO、LNA、2’F−ANA、タンパク質−ヌクレオチド複合体、RNAi、siRNAまたはマイクロmiRNA、メチルメトキシ、ホスホロアミデート、PNA、モルホリノ、ホスホラミデート、シクロヘキセン(CeNA)、ギャップマー(gap-mere)、リボザイム、アプタマー、CpGオリゴ、DNAザイム、リボスイッチ、または脂質もしくは脂質含有分子)、
(b)リンカーのすべてのタイプを含むペプチド、ペプチド複合体、
(c)低分子、ラフト(raft)またはカベオリ(caveoli)改変剤、
(d)ゴルジ体の改変剤、
(e)抗体およびそれらの誘導体、特にキメラ、Fabフラグメント、Fcフラグメント、または
(f)キャリア、リポソーム、ナノ粒子、複合体、または上述の構成物を含む任意のその他の送達システム
が、上述の回路を標的とするために用いられ得、そのため神経再生が回復または改善される。
【0021】
しかし、上述の薬剤の中で、アンチセンスオリゴヌクレオチドが最も好ましい。なぜなら、それらは、非常に早い段階でTGF−RまたはTGF−RIIの形成を妨害するからである。これらの分子の主な利点は、それらの極端に良好な全身的および局所的な耐性と組み合わせた、極端に高い標的特異性にある。それらは、柔組織またはCSF腔のいずれかへのCNSへの局所的な適用に、非常によく適している。さらに、それらは非常に安定であり、したがって、移植されたポンプシステムから容易に適用され得る。その費用効果もまた注目すべきである。
【0022】
したがって、本発明の好ましい実施態様では、TGF−RまたはTGF−RIIをコードしている遺伝子の発現を妨害するために有用な化合物は、アンチセンスオリゴヌクレオチドである。
【0023】
適切なアンチセンスオリゴヌクレオチドの生成は、アンチセンス相互作用のためのTGF−R遺伝子またはTGF−RII遺伝子内の部位の決定を含み、そのため所望の効果(例えば、タンパク質の発現の阻害)が生じる。好ましい遺伝子内の部位は、(a)遺伝子のオープンリーディングフレーム(ORF)の翻訳開始または翻訳終止コドンを含む領域または(b)「ループ」または「バルジ」であり、すなわち二次構造の部分ではないmRNAの領域である。一旦、1またはそれ以上の標的部位が同定されると、標的に十分に相補的な(すなわち、十分にハイブリダイズし、そして十分な特異性を有する)オリゴヌクレオチドが選択されて、所望の効果を与える。
【0024】
したがって、本発明は、8から50個の核酸塩基を含む配列番号1または配列番号2または配列番号94または配列番号95または配列番号96の部分配列を有するアンチセンスオリゴヌクレオチドおよびその模倣物に関する。該オリゴヌクレオチドは、8から50個の核酸塩基を有する配列番号1または配列番号2または配列番号94〜96の一部を示す。さらに、8から50個の核酸塩基を含むアンチセンスオリゴヌクレオチドは、配列番号1または配列番号2または配列番号94〜96の正確な部分配列である必要はない。アンチセンスオリゴヌクレオチドが、配列番号1または配列番号2または配列番号94または配列番号95または配列番号96に見られる部分配列と少なくとも80%、好ましくは84%、より好ましくは88%、そして最も好ましくは92%同一であれば、十分である。好ましいオリゴヌクレオチドは、8から50個の核酸塩基を含む配列番号1または配列番号2または配列番号94または配列番号95または配列番号96の部分配列と少なくとも80%同一の配列を有し、該配列は、TGF−RまたはTGF−RIIをコードする遺伝子のオープンリーディングフレームの翻訳開始コドンまたは翻訳終止コドンを含む領域、あるいはTGF−RまたはTGF−RIIをコードするmRNAの領域と十分にハイブリダイズし得、該TGF−RまたはTGF−RIIが「ループ」または「バルジ」であり、そして二次構造の部分ではない。これは、これらのアンチセンスオリゴヌクレオチドが、TGF−RまたはTGF−RIIをコードする遺伝子の対応する領域と少なくとも80%の相補的な配列を有するか、または好ましくは(a)TGF−RまたはTGF−RIIをコードする遺伝子のオープンリーディングフレームの翻訳開始コドンまたは翻訳終止コドンを含む領域と、または(b)「ループ」または「バルジ」であり、すなわち二次構造の部分ではないTGF−RまたはTGF−RIIをコードするmRNAの領域と、少なくとも80%相補的な配列を有することを意味する。
【0025】
8から50個の核酸塩基、好ましくは15から25個の核酸塩基のアンチセンスオリゴヌクレオチドが好ましく、TGF−RまたはTGF−RIIをコードする遺伝子のオープンリーディングフレームの翻訳開始コドンまたは翻訳終止コドンを含む領域と、あるいはTGF−RまたはTGF−RIIをコードするmRNAの領域と、十分にハイブリダイズし得、該TGF−RまたはTGF−RIIが「ループ」または「バルジ」であり、そして二次構造の部分ではない。
【0026】
好ましくは、以下の配列番号3の延長された配列であり、これは以下の一般式によって表され得る:
5’−XCAGCCCCCGACCCATGZ−3’
【0027】
ここでXは、以下のオリゴヌクレオチドを含む群から選択される。
ACAGGACGATGTGCAGCGGCCACAGGCCCCTGAG、CAGGACGATGTGCAGCGGCCACAGGCCCCTGAG、AGGACGATGTGCAGCGGCCACAGGCCCCTGAG、GGACGATGTGCAGCGGCCACAGGCCCCTGAG、GACGATGTGCAGCGGCCACAGGCCCCTGAG、ACGATGTGCAGCGGCCACAGGCCCCTGAG、CGATGTGCAGCGGCCACAGGCCCCTGAG、GATGTGCAGCGGCCACAGGCCCCTGAG、ATGTGCAGCGGCCACAGGCCCCTGAG、TGTGCAGCGGCCACAGGCCCCTGAG、GTGCAGCGGCCACAGGCCCCTGAG、TGCAGCGGCCACAGGCCCCTGAG、GCAGCGGCCACAGGCCCCTGAG、CAGCGGCCACAGGCCCCTGAG、AGCGGCCACAGGCCCCTGAG、GCGGCCACAGGCCCCTGAG、CGGCCACAGGCCCCTGAG、GGCCACAGGCCCCTGAG、GCCACAGGCCCCTGAG、CCACAGGCCCCTGAG、CACAGGCCCCTGAG、ACAGGCCCCTGAG、CAGGCCCCTGAG、AGGCCCCTGAG、GGCCCCTGAG、GCCCCTGAG、CCCCTGAG、CCCTGAG、CCTGAG、CTGAG、TGAG、GAG、AG、G、
【0028】
そして、Zは、以下のオリゴヌクレオチドを含む群から選択される。
GCAGACCCCGCTGCTCGTCATAGACCGAGCCCCC、GCAGACCCCGCTGCTCGTCATAGACCGAGCCCC、GCAGACCCCGCTGCTCGTCATAGACCGAGCCC、GCAGACCCCGCTGCTCGTCATAGACCGAGCC、GCAGACCCCGCTGCTCGTCATAGACCGAGC、GCAGACCCCGCTGCTCGTCATAGACCGAG、GCAGACCCCGCTGCTCGTCATAGACCGA、GCAGACCCCGCTGCTCGTCATAGACCG、GCAGACCCCGCTGCTCGTCATAGACC、GCAGACCCCGCTGCTCGTCATAGAC、GCAGACCCCGCTGCTCGTCATAGA、GCAGACCCCGCTGCTCGTCATAG、GCAGACCCCGCTGCTCGTCATA、GCAGACCCCGCTGCTCGTCAT、GCAGACCCCGCTGCTCGTCA、GCAGACCCCGCTGCTCGTC、GCAGACCCCGCTGCTCGT、GCAGACCCCGCTGCTCG、GCAGACCCCGCTGCTC、GCAGACCCCGCTGCT、GCAGACCCCGCTGC、GCAGACCCCGCTG、GCAGACCCCGCT、GCAGACCCCGC、GCAGACCCCG、GCAGACCCC、GCAGACCC、GCAGACC、GCAGAC、GCAGA、GCAG、GCA、GC、G、
【0029】
そして、XおよびZはともに、34個以下の核酸塩基およびその模倣物を含む。
【0030】
より好ましくは、以下のオリゴヌクレオチド配列およびその変異体または模倣物である。
配列番号3:5’−CAGCCCCCGACCCATG−3’
配列番号4:5’−GCTGATGCCTGTCACTTGAA−3’
配列番号5:5’−GCCATGGAGTAGACATCGGT−3’
配列番号6:5’−GCAACAGCTATTGGGATGGT−3’
配列番号7:5’−GTGCAGGGGAAAGATGAAAA−3’
配列番号8:5’−GTATCAGCATGCCCTACGGT−3’
配列番号9:5’−GGATCCAGATTTTCCTGCAA−3’
配列番号10:5’−GGAGAAGCAGCATCTTCCAG−3’
配列番号11:5’−GAGCTCTTGAGGTCCCTGTG−3’
配列番号12:5’−GAGACCTTCCACCATCCAAA−3’
配列番号13:5’−TAGCTGGCTGTGAGACATGG−3’
配列番号14:5’−TTTTGAAACGCTGTGCTGAC−3’
配列番号15:5’−TCAGCCAGTATTGTTTCCCC−3’
配列番号16:5’−TCACACAGGCAGCAGGTTAG−3’
配列番号17:5’−TCAGGAATCTTCTCCTCCGA−3’
配列番号18:5’−TGGTAGTGTTTAGGGAGCCG−3’
配列番号19:5’−TATCCCCACAGCTTACAGGG−3’
配列番号20:5’−AGCCTCTTTCCTCATGCAAA−3’
配列番号21:5’−ATGTCATTTCCCAGAGCACC−3’
配列番号22:5’−AGGAATCTTCTCCTCCGAGC−3’
配列番号23:5’−AGCCATGGAGTAGACATCGG−3’
配列番号24:5’−ATGCTACTGCAGCCACACTG−3’
配列番号25:5’−CCTTCTCTGCTTGGTTCTGG−3’
配列番号26:5’−CCAGGAGAAATAAGGGCACA−3’
配列番号27:5’−CAGCAGCTCTGTGTTGTGGT−3’
配列番号28:5’−CCCACTGTTAGCCAGGTCAT−3’
配列番号29:5’−CAGCCCCCGACCCATGGCAGACCC−3’
配列番号30:5’−CAGCCCCCGACCCATGGCAGACC−3’
配列番号31:5’−CAGCCCCCGACCCATGGCAGAC−3’
配列番号32:5’−CAGCCCCCGACCCATGGCAGA−3’
配列番号33:5’−CAGCCCCCGACCCATGGCAG−3’
配列番号34:5’−CAGCCCCCGACCCATGGCA−3’
配列番号35:5’−CAGCCCCCGACCCATGGC−3’
配列番号36:5’−CAGCCCCCGACCCATGG−3’
配列番号37:5’−GCAGCCCCCGACCCATGGCAGACC−3’
配列番号38:5’−GCAGCCCCCGACCCATGGCAGAC−3’
配列番号39:5’−GCAGCCCCCGACCCATGGCAGA−3’
配列番号40:5’−GCAGCCCCCGACCCATGGCAG−3’
配列番号41:5’−GCAGCCCCCGACCCATGGCA−3’
配列番号42:5’−GCAGCCCCCGACCCATGGC−3’
配列番号43:5’−GCAGCCCCCGACCCATGG−3’
配列番号44:5’−GCAGCCCCCGACCCATG−3’
配列番号45:5’−AGCAGCCCCCGACCCATGGCAGAC−3’
配列番号46:5’−AGCAGCCCCCGACCCATGGCAGA−3’
配列番号47:5’−AGCAGCCCCCGACCCATGGCAG−3’
配列番号48:5’−AGCAGCCCCCGACCCATGGCA−3’
配列番号49:5’−AGCAGCCCCCGACCCATGGC−3’
配列番号50:5’−AGCAGCCCCCGACCCATGG−3’
配列番号51:5’−AGCAGCCCCCGACCCATG−3’
配列番号52:5’−GAGCAGCCCCCGACCCATGGCAGA−3’
配列番号53:5’−GAGCAGCCCCCGACCCATGGCAG−3’
配列番号54:5’−GAGCAGCCCCCGACCCATGGCA−3’
配列番号55:5’−GAGCAGCCCCCGACCCATGGC−3’
配列番号56:5’−GAGCAGCCCCCGACCCATGG−3’
配列番号57:5’−GAGCAGCCCCCGACCCATG−3’
配列番号58:5’−TGAGCAGCCCCCGACCCATGGCAG−3’
配列番号59:5’−TGAGCAGCCCCCGACCCATGGCA−3’
配列番号60:5’−TGAGCAGCCCCCGACCCATGGC−3’
配列番号61:5’−TGAGCAGCCCCCGACCCATGG−3’
配列番号62:5’−TGAGCAGCCCCCGACCCATG−3’
配列番号63:5’−CTGAGCAGCCCCCGACCCATGGCA−3’
配列番号64:5’−CTGAGCAGCCCCCGACCCATGGC−3’
配列番号65:5’−CTGAGCAGCCCCCGACCCATGG−3’
配列番号66:5’−CTGAGCAGCCCCCGACCCATG−3’
配列番号67:5’−CCTGAGCAGCCCCCGACCCATGGC−3’
配列番号68:5’−CCTGAGCAGCCCCCGACCCATGG−3’
配列番号69:5’−CCTGAGCAGCCCCCGACCCATG−3’
配列番号70:5’−CCCTGAGCAGCCCCCGACCCATGG−3’
配列番号71:5’−CCCTGAGCAGCCCCCGACCCATG−3’
配列番号72:5’−CCCCTGAGCAGCCCCCGACCCATG−3’
【0031】
さらにより好ましくは、以下のオリゴヌクレオチド配列およびその変異体および模倣物である。
配列番号33:5’−CAGCCCCCGACCCATGGCAG−3’
配列番号34:5’−CAGCCCCCGACCCATGGCA−3’
配列番号35:5’−CAGCCCCCGACCCATGGC−3’
配列番号36:5’−CAGCCCCCGACCCATGG−3’
配列番号41:5’−GCAGCCCCCGACCCATGGCA−3’
配列番号42:5’−GCAGCCCCCGACCCATGGC−3’
配列番号43:5’−GCAGCCCCCGACCCATGG−3’
配列番号44:5’−GCAGCCCCCGACCCATG−3’
配列番号49:5’−AGCAGCCCCCGACCCATGGC−3’
配列番号50:5’−AGCAGCCCCCGACCCATGG−3’
配列番号51:5’−AGCAGCCCCCGACCCATG−3’
配列番号56:5’−GAGCAGCCCCCGACCCATGG−3’
配列番号57:5’−GAGCAGCCCCCGACCCATG−3’
配列番号62:5’−TGAGCAGCCCCCGACCCATG−3’
配列番号73:5’−ATGTGAAGATGGGCAAGACC−3’
配列番号74:5’−ATCTCCATGTGAAGATGGGC−3’
配列番号75:5’−AACGGCCTATCTCGAGGAAT−3’
配列番号76:5’−AACATCGTCGAGCAATTTCC−3’
配列番号77:5’−AATCCAACTCCTTTGCCCTT−3’
配列番号78:5’−AAACCTGAGCCAGAACCTGA−3’
配列番号79:5’−AGGGCGATCTAATGAAGGGT−3’
配列番号80:5’−AGTGCACAGAAAGGACCCAC−3’
配列番号81:5’−ACACTGGTCCAGCAATGACA−3’
配列番号82:5’−TTCCTGTTGACTGAGTTGCG−3’
配列番号83:5’−CACTCTGTGGTTTGGAGCAA−3’
配列番号84:5’−CAAGGCCAGGTGATGACTTT−3’
配列番号85:5’−CACACTGGTCCAGCAATGAC−3’
配列番号86:5’−CTGACACCAACCAGAGCTGA−3’
配列番号87:5’−CTCTGCCATCTGTTTGGGAT−3’
配列番号88:5’−TCAAAAAGGGATCCATGCTC−3’
配列番号89:5’−TGACACCAACCAGAGCTGAG−3’
配列番号90:5’−TGATGCCTTCCTGTTGACTG−3’
配列番号91:5’−TTCCTGTTGACTGAGTTGCG−3’
配列番号92:5’−TTCTCCAAATCGACCTTTGC−3’
配列番号93:5’−GGAGAGTTCAGGCAAAGCTG−3’
【0032】
本発明の請求の範囲から外れるのは、次の2つの公知の配列である:5’−GATCTTGACTGCCACTGTCTC−3’(J. Clin. Endocrinology & Metabolism 2003, 88(10), 4967-4976)および5’−CATGGCAGCCCCCGTC−3’(Developmental Biology 1996, 180, 242-257)。
【0033】
特に好ましくは、配列番号3:5’−CAGCCCCCGACCCATG−3’の配列である。
【0034】
したがって、本発明はまた、配列番号3〜配列番号93のいずれかと密接に関連する配列に関する。該配列は、本明細書において「変異体」という。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、いくつかの異なる方法によって改変され得る。骨格内での改変が可能であり、そしてヌクレオシド間の骨格においてリン原子が部分的にまたは完全に他の原子に置換されたオリゴヌクレオチドをいう。好ましい改変されたオリゴヌクレオチド骨格としては、例えば、ホスホロチオエート、キラルのホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホトリエステル、アミノアルキルホスホトリエステル、3’−アルキレンホスホン酸エステルを含むメチル、エチルおよびC〜C10アルキルホスホン酸エステルおよびキラルのホスホン酸エステル、ホスフィン酸エステル、3’−アミノホスホロアミデートおよびアミノアルキルホスホロアミデートを含むホスホロアミデート、チオノホスホロアミデート、チオノアルキルホスホン酸エステル、チオノアルキルホスホトリエステル、および通常の3’−5’結合、2’−5’結合したその類似体を有するボラノリン酸エステル、およびこれらの反転された極性を有するものが挙げられる。ここで、ヌクレオシド単位の隣接する対は、3’−5’から5’−3’または2’−5’から5’−2’結合される。これらの種々の塩、混合塩、および遊離酸形態もまた挙げられる。
【0035】
3’末端および/または5’末端に、1、2、3、4、または5個のさらなる核酸塩基が付加された配列番号3〜配列番号93の変異体もまた好ましい。このようなさらなる核酸塩基は、好ましくは配列番号1、2、94、95、または96内の5個の核酸塩基であり、それらは、それぞれの配列の前後に直接にくる。さらに、この好ましい変異体は、1、2、3、または4個の核酸塩基置換を有し得、すなわち、この好ましい変異体の内部で、1、2、3、または4個のヌクレオチドが、別の核酸塩基によって置換され得る。これらの変異体はまた、本明細書に開示されている骨格または塩基または糖部分(例えば、ホスホロチオエート骨格)の改変のいずれかも含み得ることが強調されるべきである。
【0036】
リン原子を含まない好ましい改変オリゴヌクレオチド骨格は、短鎖アルキルまたはシクロアルキルヌクレオシド間結合、混合ヘテロ原子およびアルキルまたはシクロアルキルヌクレオシド間結合によって形成される骨格を有する。これらは、モルホリノ結合(ヌクレオシドの糖部分から部分的に形成される)を有する骨格;シロキサン骨格、スルフィド、スルホキシド、およびスルホン骨格;ホルムアセチル(formacetyl)およびチオホルムアセチル骨格;メチレンホルムアセチルおよびチオホルムアセチル骨格、アルケン含有骨格、スルファミン酸骨格;メチレンイミノおよびメチレンヒドラジノ骨格;スルホン酸およびスルホンアミド骨格;アミド骨格、上述の骨格タイプの混合および混合されたN、O、S、P、およびCH構成部分を有するその他の骨格を含む。
【0037】
本発明のさらに好ましい実施態様は、ホスホロチオエート骨格またはヘテロ原子骨格を有するオリゴヌクレオチドを含み、そして特に、−CH−NH−O−CH−、−CH−N(CH)−O−CH−(メチレン(メチルイミノ)またはMMI骨格として公知)、−CH−O−N(CH)−CH−、−CH−N(CH)−N(CH)−CH−および−O−N(CH)−CH−CH−(ここで、天然のホスホジエステル骨格は、−O−P−O−CH−として表される)を有するオリゴヌクレオチドを含む。骨格中にモルホリノ部分を有するオリゴヌクレオチドまたはモルホリノ骨格構造を有するオリゴヌクレオチドまたはアミノアルキルアミド骨格を有するオリゴヌクレオチドもまた好ましい(下記を参照のこと)。オリゴヌクレオチドはまた、ペントフラノシル糖の代わりにシクロブチル部分のような糖の模倣物を有し得る。
【0038】
【化1】

【0039】
Bとは、プリンまたはピリミジン基のような塩基部分をいい、さらに誘導化され得る。
【0040】
本発明のオリゴヌクレオチドのもう1つの改変は、オリゴヌクレオチドに1つまたはそれ以上の部分または結合体を化学結合することを含み、そしてそれはオリゴヌクレオチドの活性を高め、細胞分布または細胞への取り込みを増強する。改変されたオリゴヌクレオチドはまた、1またはそれ以上の置換されたまたは改変された糖部分を含む。好ましいオリゴヌクレオチドは、2’位に以下の1つを含む:−OH、−F、−O−アルキル、−S−アルキル、−N−アルキル、−O−アルケニル、−S−アルケニル、−N−アルケニル、−O−アルキニル、−S−アルキニル、−N−アルキニル、−O−アルキル−O−アルキル、ここで、アルキル、アルケニル、およびアルキニルは、置換または非置換のCからC10のアルキルまたはCからC10のアルケニルおよびCからC10のアルキニルであり得る。特に好ましい改変された糖部分は、2’−O−メトキシエチル糖部分(2’−OCHCHOCH、これはまた、2’−O−(2−メトキシエトキシ)または2’−MOEとして知られている)およびO(CHON(CH)のような2’−ジメチルアミノオキシエトキシ(2’−DMAOEとして知られている)である。特に好ましくはまた、O[(CHO]CH、O(CHOCH、O(CHNH、O(CHCH、O(CHONH、O(CHON[(CHCH]であり、ここで、nおよびmは、それぞれ独立して1から10の整数である。他の好ましい改変は、2’−メトキシ、2’−アミノプロポキシ、および2’−フルオロを含む。他の好ましいオリゴヌクレオチドは、2’位に以下の基の1つを含む:−OCH、−OC、−OC、−O−シクロ−C、−OCH(CH、−OC(CH、−OC、−OPh、−OCH−Ph、−NO、−F、−Cl、−Br、−I、−N、−CN、−OCN、−NCO、−SCN、−NCS、−COCH、−COC、−COC、−CO−シクロ−C、−COCH(CH、−CF、−SH、−SCH、−SC、−SC、−S−シクロ−C、−SOCH、−SOC、−SOC、−SO−シクロ−C、−SOCH、−SO、−SO、−SO−シクロ−C、−NH、−NHCH、−NHC、−NHC、−NH−シクロ−C、−N(CH、−N(C、−N(C、−N(シクロ−C、−N[CH(CH−CH、−C、−C、−CH(CH、−C、−CH−CH(CH、−CH(CH)−C、−C(CH、−C11、−CH(CH)−C、−CH−CH(CH)−C、−CH(CH)−CH(CH、−C(CH−C、−CH−C(CH、−CH(C、−C−CH(CH、−C13、−C−CH(CH、−C−CH(CH)−C、−CH(CH)−C、−CH−CH(CH)−C、−C−C(CH、−CH(CH)−CH−CH(CH、−CH(CH)−CH(CH)−C、−CH−CH(CH)−CH(CH、−CH−C(CH−C、−C(CH−C、−C(CH−CH(CH、−CH(CH)−C(CH、C〜C10アルキル、置換されたC〜C10アルキル、アルキルアリール、アリールアルキル、O−C〜C10アルキル、O−アリールアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキルアリール、アミノアルキルアミノ、ポリアルキルアミノ、置換されたシリル、RNA脱離基、レポーター基、挿入剤、オリゴヌクレオチドの薬物速度特性および/または薬力学特性を改善するための基、または類似の特性を有する置換基。デオキシ核酸塩基も好ましい。
【0041】
類似の改変はまた、ヌクレオチドの他の位置、特に3’末端ヌクレオチドの糖の3’位または2’−5’結合したオリゴヌクレオチドおよび5’末端ヌクレオチドの5’位にも行われ得る。
【0042】
好ましい改変は、以下の構造断片によって表され得る。
【0043】
【化2】

【0044】
ここで、Rは、2’位についての上述の置換基のいずれかを表し、特に、−H、−F、−OH、−NH、−OCH、−OCHCHOCHを表し、XおよびX’は、それぞれ独立して−O−、−NH−、−S−、−CH−であり、そしてYは、−O、−S、−N(CH、−OCH、−SCHを表す。より好ましくは、XおよびX’が酸素を表し、そしてYが硫黄を表す変異体である。
【0045】
さらに、純粋なジアステレオマーオリゴヌクレオチドまたはその模倣物または変異体が好ましい。特に好ましくは、SpジアステレオマーおよびRpジアステレオマーである。
【0046】
【化3】

【0047】
最も好ましくはまた、配列番号3〜配列番号93の配列、そして特に配列番号3の配列であり、ここで、本明細書に開示されている1またはそれ以上の改変が存在する。好ましくは、骨格中にホスホロチオエート部分または完全なホスホロチオエート骨格であり、ホスホロチオエートのRpジアステレオマーおよびSpジアステレオマーが好ましい。
【0048】
本発明のオリゴヌクレオチドはまた、核酸塩基置換を含み得る。核酸塩基は、4つの標準のヌクレオチド塩基のアデニン(A)、チミン(T)、グアニン(G)、およびシトシン(C)である。改変された核酸塩基は、その他の合成および天然の核酸塩基を含み、例えば、5−メチルシトシン(5−me−C)、5−ヒドロキシメチルシトシン、キサンチン、ヒポキサンチン、2−アミノアデニン、アデニンおよびグアニンの6−メチルおよびその他のアルキル誘導体、アデニンおよびグアニンの2−プロピルおよびその他のアルキル誘導体;ウラシル(U)、6−カルボキシウラシル、N−メチルアデニン、5−ハロウラシル、5−ハロシトシン、5−プロピニルウラシル、5−プロピニルシトシン、6−アゾウラシル、6−アゾシトシン、6−アゾチミン、5−ウラシル(プソイドウラシル)、4−チオウラシル;8−ハロ−、8−アミノ−、8−チオール−、8−チオアルキル−、8−ヒドロキシル−およびその他の8−置換されたアデニンおよびグアニン;5−ハロ−、特に5−ブロモ−、5−トリフルオロメチル−およびその他の5−置換されたウラシルおよびシトシン;7−メチルグアニン;7−メチルアデニン、8−アザグアニン、8−アザアデニン、7−デアザグアニン、7−デアザアデニン、3−デアザグアニンおよび3−デアザアデニン、2−チオウラシル、2−チオチミンおよび2−チオシトシンなどが挙げられ、5−メチルシトシン置換が好ましい。なぜなら、これらの改変は、核酸の二重鎖の安定性を増加させることが示されているからである。
【0049】
好ましくは、1、2、3、または4個の核酸塩基が、その他の核酸塩基または化学的に改変された核酸塩基によって置換される配列番号3〜配列番号93のいずれか1つの配列を有する変異体である。変異体とは、1〜4個の核酸塩基が、例えば、ウラシル(U)、5−ハロウラシル、5−メチルシトシン、および/またはN−メチルアデニンによって置換される配列番号3〜配列番号93の配列をいう。特に好ましくは、1、2または3個の核酸塩基が、上述の部分によって置換される配列番号3の変異体である。
【0050】
「オリゴヌクレオチド」とは、リボ核酸(RNA)またはデオキシリボ核酸(DNA)またはそれらの模倣物または変異体のオリゴマーまたはポリマーをいう。この用語は、天然に存在する核酸塩基、糖および共有結合性のヌクレオシド(骨格)間の結合で構成されるオリゴヌクレオチド、および天然には存在しない同様に機能する部分を有するオリゴヌクレオチドを含む。このような改変されたまたは置換されたオリゴヌクレオチドは、例えば細胞の取り込みが高められる、核酸標的への親和性が高められる、およびヌクレアーゼの存在下で安定性が増加するという所望の特性のため、しばしば天然の形態よりも好ましい。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、アンチセンス化合物の形態が好ましいが、本発明は、その他のオリゴマーのアンチセンス化合物を含み、以下に記載されているようなオリゴヌクレオチド模倣物に制限されずに含む。本発明のアンチセンス化合物は、約8から約50個の核酸塩基(すなわち、約8から約50個の結合されたヌクレオシド)を含み、好ましくは9〜42個、10〜36個、11〜32個、12〜30個、13〜28個、14〜26個、そして最も好ましくは15〜25個の核酸塩基を含む。
【0051】
特に好ましいアンチセンス化合物は、アンチセンスオリゴヌクレオチドであり、さらにより好ましくは約15から約25個の核酸塩基を含むアンチセンスオリゴヌクレオチドである。アンチセンス化合物は、リボザイム、外部ガイド配列(EGS)、オリゴヌクレオチド(オリゴザイム)、およびその他の短触媒RNAまたは触媒オリゴヌクレオチドを含み、それらは、標的核酸にハイブリダイズし、そしてその発現を阻害する。
【0052】
用語「塩」とは、生理学的および/または薬学的に受容可能な化合物の塩、特に本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドの塩をいう。薬学的に受容可能な塩基付加塩は、無機塩基を用いて形成される。適切な有機塩基または無機塩基の例は、金属イオン(例えば、アルミニウム、ナトリウムまたはカリウムのようなアルカリ金属イオン、カルシウムまたはマグネシウムのようなアルカリ土類金属イオン)、またはアミン塩イオンまたはアルカリまたはアルカリ土類水酸化物、炭酸塩または重炭酸塩から誘導される塩基である。例えば、水溶性のLiOH、NaOH、KOH、NHOH、炭酸カリウム、アンモニアおよび重炭酸ナトリウム、アンモニウム塩、1級、2級および3級アミン(例えば、テトラアルキルアンモニウム水酸化物、メチルアミン、t−ブチルアミンのような低級アルキルアミン、プロカイン、エタノールアミン、ジベンジルアミンおよびN,N−ジベンジルエチレンジアミンのようなアリールアルキルアミン、N−エチルピペリジンのような低級アルキルピペリジン、シクロヘキシルアミンまたはジシクロヘキシルアミンのようなシクロアルキルアミン、モルホリン、グルカミン、N−メチルおよびN,N−ジメチルグルカミン、1−アダマンチルアミン、ベンザチン)、またはアルギニン、リジン、オルニチンまたは元来中性または酸性のアミノ酸のアミドのようなアミノ酸から誘導される塩、クロロプロカイン、コリン、プロカインなどを含む。
【0053】
塩基性である本発明の化合物は、有機酸または無機酸の薬学的に受容可能な塩を形成し得る。このような酸付加塩形成に適切な酸は、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、酢酸、クエン酸、シュウ酸、マロン酸、サリチル酸、p−アミノサリチル酸、リンゴ酸、フマル酸、コハク酸、アスコルビン酸、マレイン酸、スルホン酸、ホスホン酸、過塩素酸、硝酸、ギ酸、プロピオン酸、グルコン酸、乳酸、酒石酸、ヒドロキシマレイン酸、ピルビン酸、フェニル酢酸、安息香酸、p−アミノ安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、亜硝酸、ヒドロキシエタンスルホン酸、エチレンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ナフチルスルホン酸、スルファニル酸、カンファースルホン酸、キナ酸(china acid)、マンデル酸、o−メチルマンデル酸、水素−ベンゼンスルホン酸、ピクリン酸、アジピン酸、D−o−トリル酒石酸、タルトロン酸、α−トルイル酸、(o、m、p)−トルイル酸、ナフチルアミンスルホン酸、およびその他の当業者に周知の鉱酸またはカルボン酸が挙げられる。塩は、遊離の塩基形態に十分な量の所望の酸を接触させることによって調製されて、従来の方法で塩を製造する。
【0054】
遊離の塩基形態は、適切な薄い塩基の水溶液(例えば、希水酸化ナトリウム水溶液、希炭酸カリウム水溶液、希アンモニア水、および希重炭酸ナトリウム水溶液)で塩を処理することによって再生され得る。遊離の塩基形態は、それらに対応する塩形態と、多少特定の物理的特性(例えば、極性溶媒中の溶解性)が異なるが、塩は、その他の点では、本発明の目的についてそれらの対応する遊離の塩基形態と同等である。
【0055】
あるいは、本発明の薬学的組成物は、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドを(例えば、哺乳動物宿主中で)転写させるベクターを含む。好ましくは、このようなベクターは、遺伝子治療のために有用なベクターである。遺伝子治療のために有用な好ましいベクターは、ウイルスベクター(例えば、アデノウイルス、バキュロウイルス、ヘルペスウイルス、牛痘)であり、またはより好ましくはレトロウイルスのようなRNAウイルスである。さらにより好ましくは、レトロウイルスベクターは、マウスまたは鳥類のレトロウイルス誘導体である。このような本発明に用いられ得るレトロウイルスベクターは、例えば、モロニーマウス白血病ウイルス(MoMuLV)、ハーヴィマウス肉腫ウイルス(HaMuSV)、マウス乳ガンウイルス(MuMTV)、およびラウス肉腫ウイルス(RSV)である。最も好ましくは、マウスベクターと比較してより幅広い宿主範囲を与えるヒト以外の霊長類レトロウイルスベクターが用いられる(例えば、テナガザル白血病ウイルス(GaLV))。組換えレトロウイルスが不完全なので、感染性の粒子を産生するために、補助が要求される。このような補助は、例えば、LTR内の調節配列の制御下で、レトロウイルスの構造遺伝子のすべてをコードするプラスミドを含むヘルパー細胞株を用いることによって与えられ得る。適切なヘルパー細胞株は、当業者に周知である。このベクターは、さらに、選択マーカーをコードする遺伝子を含み得、そのため形質導入された細胞が同定され得る。さらに、レトロウイルスベクターは、標的特異的になるような方法で改変され得る。これは、例えば、糖、糖脂質、またはタンパク質、好ましくは抗体をコードするポリヌクレオチドを挿入することによって達成され得る。当業者は、標的特異的ベクターを生成させるためのさらなる方法を知っている。さらに、インビトロまたはインビボでの遺伝子治療に適切なベクターおよび方法は文献に記載され、当業者に公知である(例えば、WO94/29469またはWO97/00957を参照のこと)。標的器官(例えば、脳組織)のみでの発現を達成するために、アンチセンスオリゴヌクレオチドの転写のためのDNA配列は、組織特異的なプロモーターに連結され得、そして遺伝子治療のために用いられ得る。
【0056】
オリゴヌクレオチドの構造内で、リン酸基は、一般的にオリゴヌクレオチドのヌクレオシド間骨格を形成するものをいう。RNAおよびDNAの通常の結合または骨格は、3’から5’ホスホジエステル結合である。本発明において有用な好ましいアンチセンス化合物または変異体の特定の例としては、改変された骨格または非天然のヌクレオシド間結合を含むオリゴヌクレオチドが挙げられる。改変された骨格を有するオリゴヌクレオチドは、骨格中にリン原子を保持するものおよび骨格中にリン原子を保持しないものを含む。安定性を増加させ得る改変されたオリゴヌクレオチド骨格は、当業者に公知であり、好ましくはこのような改変が、ホスホロチオエート結合、またはホスホネート(ホスホン酸)基またはスルフェート(硫酸)基またはスルホネート(スルホン酸)基またはスルホキシドによる1またはそれ以上のホスフェート基(リン酸基)の置換である。好ましいオリゴヌクレオチドの模倣物は、優れたハイブリダイゼーション特性を有することが示されているオリゴヌクレオチドの模倣物であり、そしてペプチド核酸(PNA)という。PNA化合物では、オリゴヌクレオチドの糖骨格は、アミド含有骨格、特にアミノエチルグリシン骨格に置換される。核酸塩基は保持され、そして骨格のアミド部分のアザ窒素原子に直接的または間接的に結合される(例えば、Nielsenら、Science 254 (1991), 1497-1500を参照のこと)。
【0057】
本発明において、「ハイブリダイゼーション」とは、相補的なヌクレオシド間またはヌクレオチド塩基間のワトソン−クリック水素結合、フーグスティーンまたは逆フーグスティーン水素結合であり得る水素結合を意味する。本明細書で用いられるように、用語「相補的」とは、2つのヌクレオチド間で正確な対になるための能力をいう。例えば、オリゴヌクレオチドのある位置のヌクレオチドが、DNAまたはRNA分子の同一の位置でヌクレオチドと水素結合することができれば、オリゴヌクレオチドおよびDNAまたはRNAは、その位置で互いに相補的であると考えられる。それぞれの分子中の対応する位置の十分な数が互いに水素結合し得るヌクレオチドによって占められる場合、オリゴヌクレオチドおよびDNAまたはRNAは、互いに相補的である。したがって、「特異的にハイブリダイズし得る」および「相補的な」は、安定かつ特異的な結合がオリゴヌクレオチドおよびDNAまたはRNA標的の間に生じるような十分な程度の相補性、または正確な対を示すために用いられる用語である。アンチセンス化合物の配列が、特異的にハイブリダイズし得る標的核酸の配列と100%相補的である必要はないことが当業者に理解される。標的DNAまたはRNA分子への化合物の結合が標的DNAまたはRNAの正常な機能を妨害し、そのため有用性の喪失の原因となる場合、アンチセンス化合物は、特異的にハイブリダイズし得、そして特異的な結合が所望される条件下で(すなわち、治療的処置の場合)、非標的配列へのアンチセンス化合物の非特異的な結合を避けるために十分な程度の相補性がある。
【0058】
その他の好ましいオリゴヌクレオチドの模倣物において、糖およびヌクレオシド間結合の両方(すなわち、ヌクレオチド単位の骨格)は、新しい基で置換される。塩基単位は、適切な核酸標的化合物とのハイブリダイゼーションのために維持される。例えば、優れたハイブリダイゼーション特性を有することが示されるこのようなオリゴヌクレオチドの模倣物は、ペプチド核酸(PNA)という。PNA化合物では、オリゴヌクレオチドの糖骨格は、アミド含有骨格、特にアミノエチルグリシン骨格と置換される。核酸塩基は保持され、そして骨格のアミド部分のアザ窒素原子に直接的または間接的に結合される。
【0059】
本発明のオリゴヌクレオチドのもう1つの改変は、1つまたはそれ以上の部分または結合体をオリゴヌクレオチドに化学的に結合することを含み、オリゴヌクレオチドの活性、細胞分布または細胞取り込みを増強する。このような部分は、コレステロール部分のような脂質部分、コール酸、チオエーテル、ヘキシル−S−トリチルチオール、チオコレステロール、脂肪族鎖(例えば、ドデカンジオールまたはウンデシル残基)、リン脂質(例えば、ジヘキサデシル−rac−グリセロールまたはトリエチルアンモニウム−1,2−ジ−O−ヘキサデシル−rac−グリセロ−3H−ホスホネート)、ポリアミンまたはポリエチレングリコール鎖、アダマンタン酢酸、パルミチル部分、またはオクタデシルアミンまたはヘキシルアミノ−カルボニル−オキシコレステロール部分を含む。本発明はまた、キメラ化合物であるアンチセンス化合物を含む。本発明において、「キメラの」アンチセンス化合物または「キメラ」は、アンチセンス化合物、特にオリゴヌクレオチドであって、それらは、2またはそれ以上の化学的に異なる領域を含み、それぞれ少なくとも1つのモノマー単位(すなわち、オリゴヌクレオチド化合物の場合にはヌクレオチド)から作製される。これらのオリゴヌクレオチドは、代表的には少なくとも1つの領域を含み、ここで、オリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドに、ヌクレアーゼ分解に対する高められた耐性、高められた細胞取り込み、および/または標的核酸に対する高められた結合親和性を与えるように改変さる。オリゴヌクレオチドのさらなる領域は、RNA:DNAまたはRNA:RNAハイブリッドを開裂し得る酵素に対する基質として働き得る。例としては、RNアーゼHは、細胞エンドヌクレアーゼであり、それは、RNA:DNA二本鎖のRNA鎖を開裂する。したがって、RNアーゼHの活性化は、RNA標的の開裂を生じ、それによって、遺伝子発現のオリゴヌクレオチド阻害の効率が非常に高められる。したがって、キメラオリゴヌクレオチドが用いられると、同じ標的領域にハイブリダイズするホスホロチオエートデオキシオリゴヌクレオチドと比較して、かなりの結果が、しばしばより短いオリゴヌクレオチドで得られ得る。本発明のキメラアンチセンス化合物は、2またはそれ以上のオリゴヌクレオチド、改変されたオリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオシド、および/または上述のようなオリゴヌクレオチドの模倣物の複合構造として形成され得る。このような化合物はまた、当業者にはハイブリッドまたはギャップマー(gapmer)といわれている。
【0060】
特に、本発明は、神経変性疾患、神経外傷、神経血管性および神経炎症性を含む感染後の疾患の予防および治療のための、本明細書に開示されているアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはその変異体または模倣物の使用に関する。用語「神経変性疾患および神経炎症性疾患」とは、アルツハイマー病、パーキンソン病、クロイツフェルトヤコブ病(CJD)、異型クロイツフェルトヤコブ病(nvCJD)、ハレルフォルデンスパッツ病、ハンチントン病、多発性萎縮症(Multisystem Atrophy)、痴呆、前頭側頭型痴呆、運動ニューロン疾患、筋萎縮性側索硬化症、脊髄性筋萎縮症、脊髄小脳萎縮症(SCA)、精神分裂病、感情の障害、大うつ病、髄膜脳炎、細菌性髄膜脳炎、ウイルス性髄膜脳炎、CNS自己免疫疾患、多発性硬化症(MS)、卒中を含む急性虚血/低酸素性障害、CNS外傷、頭部外傷、動脈硬化症、アテローム性動脈硬化症、微小血管性痴呆、ビンスワンゲル病、白質病変、網膜変性、蝸牛変性、黄斑変性、迷路性難聴、AIDS関連痴呆、色素性網膜炎、脆弱X染色体に関連する震え/運動失調症候群(FXTAS)、進行性核上麻痺(PSP)、線条体黒質変性症(SND)、オリーブ橋小脳変性(OPCD)、シャイ・ドレーガー症候群(SDS)をいう。
【0061】
より一般的には、本発明は、疾患を治療するための本明細書に開示されているアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはその変異体または模倣物の使用に関し、その疾患は、TGF−Rおよび/またはTGF−RIIの(例えば、TGF−βの高められたレベルによる)アップレギュレートされたまたは高められたシグナリングに関連する。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、それによって、TGF−Rおよび/またはTGF−RIIの発現を阻害する。アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはアンチセンスオリゴヌクレオチドと組み合わせる代わりに、アンチセンス化合物が用いられ得る。アンチセンス化合物とは、本明細書に開示されているようなアンチセンスオリゴヌクレオチドを転写させるベクター、リボザイム、外部ガイド配列(EGS)、オリゴザイム、および短触媒RNAまたは触媒オリゴヌクレオチドをいい、それらは、TGF−RまたはTGF−RIIをコードする標的核酸にハイブリダイズする。このアンチセンス化合物は、TGF−RまたはTGF−RIIの発現を阻害する。したがって、この場合、疾患状態の間に存在するTGF−Rおよび/またはTGF−RIIの量は減少する。
【0062】
本明細書に開示されているアンチセンスオリゴヌクレオチドおよびアンチセンス化合物は、損傷を受けた神経経路の再生および機能的な再連結のために、ならびに種々の神経変性疾患および神経炎症性疾患の治療のために有用である。
【0063】
本発明のさらに好ましい実施態様では、TGF−Rおよび/またはTGF−RIIの生物学的活性を妨害するために有用な化合物は、レセプターへのTGF−β1の結合を減少させるまたは阻害する化合物である。このような化合物の好ましい例は、TGF−βレセプター、好ましくはTGF−βレセプターIIに対する(中和)抗体である(Linら、1992を参照のこと)。用語「抗体」とは、好ましくは、プールされた異なるエピトープ特異性を有するモノクローナル抗体、および全く異なるモノクローナル抗体調製物から本質的になる抗体に関する。モノクローナル抗体は、当業者に周知の方法によって、例えば、TGF−RまたはTGF−RIIまたは対応するレセプターのフラグメントを含む抗原から作製される。本明細書で用いられるように、用語「抗体(Ab)」または「モノクローナル抗体(Mab)」とは、完全な分子および抗体フラグメント(例えば、FabおよびF(ab’)2フラグメント)を含むことが意図され、それらは、タンパク質に特異的に結合し得る。FabおよびF(ab’)2フラグメントは、完全な抗体のFcフラグメントを欠き、循環からより迅速に除去され、そして完全な抗体よりも非特異的な組織結合を有し得ない(Wahlら、J. Nucl. Med. 24: 316-325 (1983))。したがって、これらのフラグメントは、FABまたはその他の免疫グロブリン発現ライブラリーの産物と同様に好ましい。さらに、本発明の目的のために有用な抗体としては、キメラ抗体、一本鎖抗体、およびヒト化抗体が挙げられる。
【0064】
本発明の使用のためのさらなる好ましい化合物は、可溶性TGF−βレセプターである。このような可溶性TGF−βレセプターは、抗体のFc領域とTGF−βレセプターの細胞外ドメインとの融合タンパク質である。このような分子は、可溶性TGF−βへの高い親和性を有する。したがって、遊離のTGF−β1の濃度は劇的に減少する。製造者のプロトコルによれば(R&D Systems、ドイツ)、ヒトTGF−βRIIの159個のアミノ酸残基の細胞外ドメインをコードするDNA配列は(Linら、Cell 1992, 68(4),775-785)、ヒトIgG1のFc領域と融合され、そしてこのキメラタンパク質が、マウス骨肉腫細胞株NSOで発現された。
【0065】
レセプターに関して、本明細書で用いられている用語「可溶性」とは、好ましくはレセプターの細胞外ドメインのみを含むレセプターのフラグメント、またはその天然のリガンド(例えば、TGF−β1)になお結合し得る部分に関する。当業者は、このようなフラグメントをレセプターの公知のアミノ酸配列に基づいて決定し得、そしてレセプターの細胞外ドメインの決定は、周知の方法の使用によって、例えば、コンピュータプログラム(親水性プロット)によって行われ得る。本発明の使用の特に好ましい実施態様では、可溶性TGF−βレセプターは、TGF−βレセプターIIである。
【0066】
本発明はまた、(a)TGF−Rおよび/またはTGF−RIIの生物学的活性、またはTGF−Rおよび/またはTGF−RIIの発現、または(b)TGF−β1/TGF−Rシグナリングを妨害する化合物を同定する方法に関し、
(a)TGF−β1およびニューロン前駆細胞を含む試験システムとともに、候補化合物をインキュベートする工程;および
(b)活性なTGFレセプターの発現または該ニューロン前駆細胞の増殖をアッセイする工程;を包含し、
(c)該試験化合物の不在下での試験システムと比較して、(i)活性なTGFレセプターの発現の抑制の廃絶、または(ii)ニューロン前駆細胞の増殖の抑制の廃絶が、所望の特性を有する候補化合物の存在が示される。
【0067】
このような候補化合物の例としては、抗体、オリゴヌクレオチド、タンパク質(例えば、レセプター)、またはモール分子(mall molecule)が挙げられる。このような分子は、公知の技術を用いて、合理的に設計され得る。好ましくは、スクリーニングのために用いられる試験システムは、類似の化学的および/または物理的特性の物質を含み、最も好ましくは、この物質は同一である。本発明の使用によって調製および同定され得る化合物は、発現ライブラリー(例えば、cDNA発現ライブラリー)、ペプチド、タンパク質、核酸、抗体、小さな有機化合物、リガンド、ホルモン、ペプチド模倣物、PNAなどであり得る。より最近では、WO98/25146は、所望の特性、特に、ポリペプチドまたはその細胞レセプターに作動、結合、または拮抗できる能力を有する化合物について複合体のライブラリーをスクリーニングするためのさらなる方法を記載した。このようなライブラリー中の複合体は、試験を受ける化合物、化合物の合成における少なくとも1つの工程を記録するタグ、およびレポーター分子による影響を受けやすい改変つなぎ鎖を含む。つなぎ鎖の改変は、複合体が所望の特性を有する化合物を含むことを示すために用いられる。タグは、このような化合物の合成における少なくとも1つの工程を示すために解読され得る。本発明のTGF−Rおよび/またはTGF−RIIまたはこのような分子をコードする核酸分子と相互作用する化合物を同定するためのその他の方法は、例えば、ファージディスプレーシステムを用いるインビトロスクリーニングおよびフィルター結合アッセイまたは例えば、BlAcore装置(Pharmacia)を用いる相互作用の「リアルタイム」測定である。これらのすべての方法は、本発明において用いられ得、TGF−Rおよび/またはTGF−RIIの生物学的活性または該レセプターの発現、またはTGF−β1/TGF−Rシグナリングを妨害する化合物を同定する。
【0068】
例えば、TGF−βレセプターへの基質またはリガンドとして作用し得る小さな有機化合物の模倣物を設計、合成、および評価し得ることはまた、当業者に周知である。例えば、ハパロシン(hapalosin)のD−グルコース模倣物は、細胞毒性において、多剤耐性補助に関連するタンパク質と拮抗しているハパロシンとしての類似の有効性を示すことが記載されている(Dinh, J. Med. Chem. 41 (1998), 981-987を参照のこと)。TGF−β1またはTGF−Rをコードする遺伝子はまた、インヒビターをスクリーニングするための標的として用い得る。インヒビターは、例えば、TGF−R、好ましくはTGF−RIIをコードする遺伝子のmRNAに結合するタンパク質を含み得、それによって、mRNAの天然の構造を不安定にし、そして転写および/または翻訳を妨げる。さらに、そのフラグメントは、定義されたまたは定義されていない標的RNA分子の構造を模倣し、このRNA分子に化合物が細胞増殖の遅延または細胞死を生じる細胞の内部で結合するRNAフラグメントのような核酸分子を同定するための方法は、文献に記載されている(例えば、WO98/18947およびその引用文献を参照のこと)。これらの核酸分子は、薬学的に関心のある未知の化合物および疾患の治療における使用のための未知のRNA標的を同定するために用いられ得る。これらの方法および組成物は、TGF−β1および/または対応するレセプターの発現レベルを減少させるために有用な化合物の同定に用いられ得る。本発明の方法により試験され同定され得る化合物は、発現ライブラリー(例えば、cDNA発現ライブラリー)、ペプチド、タンパク質、核酸、抗体、小さな有機化合物、ホルモン、ペプチド模倣物、PNAなどであり得る(Milner, Nature Medicine 1 (1995), 879-880; Hupp, Cell 83 (1995), 237-245; Gibbs, Cell 7 (1994), 193-198および上述の引用文献)。さらに、TGF−β1の推定レギュレーターをコードする遺伝子および/またはTGF−P1の上流または下流で効果を発揮する遺伝子は、例えば、挿入突然変異誘発を用いて、例えば、当業者に公知の遺伝子ターゲティングベクター用いて同定され得る。この化合物はまた、公知のインヒビターの機能的誘導体または類似体であり得る。このような有用な化合物は、例えば、トランス作用因子であり得、これは、TGF−RまたはTGF−RIIまたはそれをコードする遺伝子の調節配列に結合する。トランス作用因子の同定は、当該技術分野で標準の方法を用いて行われ得る。タンパク質がタンパク質自身または調節配列に結合するか否か決定するために、標準的な天然のゲルシフト分析が行われ得る。タンパク質または調節配列に結合するトランス作用因子を同定するために、タンパク質または調節配列が、標準的なタンパク質精製法における親和性試薬として、または発現ライブラリーのスクリーニングのためのプローブとして用いられ得る。TGF−RまたはTGF−RIIと相互作用するポリペプチドをコードする核酸分子の同定は、例えば、いわゆる酵母「2−ハイブリッドシステム」の使用によってin Scofield(Science 274 (1996), 2063-2065)にTGF−β1について記載されているように達成され得る。このシステムでは、TGF−β1は、GAL4転写因子のDNA結合ドメインに連結される。この融合ポリペプチドを発現し、適切なプロモーターによって駆動されるlacZレポーター遺伝子を含む酵母株は、GAL4転写因子によって認識されており、活性化ドメインと融合される植物タンパク質またはそのペプチドを発現するcDNAのライブラリーで形質転換される。したがって、cDNAの1つによってコードされるペプチドが、例えばTGF−RまたはTGF−RIIのペプチドを含む融合ペプチドと相互作用し得ると、複合体は、レポーター遺伝子の発現を示し得る。この方法では、例えば、TGF−RまたはTGF−RIIおよびそれぞれのレセプターをコードする遺伝子は、TGF−RまたはTGF−RIIと相互作用するペプチドおよびタンパク質を同定するために用いられ得る。このシステムおよび類似のシステムが、インヒビターの同定のために、さらに利用され得ることは、当業者に明らかである。最後に、本発明は、疾患の予防または治療のための薬学的組成物の調製物についての上述の方法によって同定される化合物の使用に関し、神経発生または神経再生が有用な効果を有する。以下の実施例で、より詳細に本発明を説明する。
【0069】
本発明はまた、TGF−RシステムまたはTGF−RIIシステムの調節によって誘導された幹細胞/前駆細胞集団での治療または予防/予防処置の効果を同定するための方法に関する。これは、特に、個々の患者において、例えば、個々に合った服用をさせるなどの、好結果の治療を確立するのに役に立ち得る。診断方法は、以下を含む。
【0070】
(a)TGF−RまたはTGF−RIIに対する特異的抗体であり、および核医学診断のための特定の核種(ヨウ素、テクネチウム、フッ素18)または磁気共鳴画像での使用のためのガドリニウム塩、パーフルオロカーボン、またはその他の希土類生成物/常磁性化合物/鉄粒子のいずれかで標識された抗体の全身適用。本明細書では、ノイズ比を越える十分なシグナルがない場合、上衣下層で脳血液関門を手短に開く必要があり得る。この領域は、高度に血管が形成され、そしてコントラストが、3テスラ機具での視覚化のために十分であり得るが、BBBの開放が、さらなる補助であり得る。これは、高浸透圧溶液(例えば、グリセロール)またはVEGF(血管内皮増殖因子)のいずれかの静脈内注射で行われ得る。
【0071】
(b)TGF−RまたはTGF−RIIに特異的なオリゴヌクレオチド(上述と同じ分子)の全身適用。それらは、次のように標識される:Gdまたは111In−DTPH(5’XXXXXXXXXXXXXXXXX3’−ビオチン)−(SA−OX26、8D3またはAk−HIRのいずれか)(これによって、GdはMRIのために用いられ、111Inは放射線診断のために用いられ;OX26はマウスの実験のために用いられ、マウストランスフェリンレセプターをターゲットし、8D3はマウス抗ラットトランスフェリンレセプター抗体であり、AK−HIRはヒトインスリンレセプターに対する抗体である)。これらの化合物は、TGF−RまたはTGF−RIIに対して活性なmRNAを有するそれらの細胞にのみハイブリダイズし信号を送る。DTPHは、キレート形成剤として用いられ、Ak−HIRはインスリンレセプターを用いて、異なった関門を通過するオリゴヌクレオチドを往復輸送し、トランスフェリンレセプター抗体の場合、後者が膜横断シャトルに用いられる。多数のmRNAが利用可能な細胞には、特異なハイブリダイゼーションの安定性があり、したがって、はるかに強いシグナルが検出され得る(Susuki T, Schlachetzki Fら、J. Nucl. Med. 45:1766-1775, 2004, Susuki T, Zhang Y, Zhang Y-f, Schlachetzki F, Pardridgeら、Mol. Imaging 2005, 3, 356-363)。
【0072】
(c)(b)のように同一の標識でダブルコルチン(Doublecortin)(DCX)に特異的なオリゴヌクレオチド(上述と同じ分子)の全身適用(WO2004/067751を参照のこと)。
【0073】
好ましくは、薬学的組成物において、上述のこのような化合物は、薬学的に受容可能なキャリアと組み合わせられる。「薬学的に受容可能」とは、活性成分の生物学的活性の効果を妨害せず、そして投与される宿主に対して有毒ではない任意のキャリアを含むことを意味する。適切な薬学的なキャリアの例は、当業者に公知であり、リン酸緩衝化生理食塩水、水、油/水エマルジョンのようなエマルジョン、種々のタイプの湿潤剤、滅菌溶液などが挙げられる。このようなキャリアは、従来の方法によって処方され得、そして活性な化合物が、被験者に有効量で投与され得る。「有効量」とは、疾患の進行および重篤さに影響し、このような病状の減少または鎮静に導くのに十分な活性成分の量をいう。これらの疾病または疾患を治療および/または予防するために有用な「有効量」は、当業者に公知の方法を用いて決定され得る。適切な組成物の投与は、種々の方法、例えば、静脈内、腹腔内、皮下、筋肉内、局所または皮内の投与によって行われ得る。投与経路は、当然治療の種類および薬学的組成物に含まれる化合物の種類に依存する。さらに、本発明の化合物は、リポソーム、複合体形成剤、レセプターをターゲットした分子、溶媒、保存剤および/または希釈剤と混合し投与され得る。
【0074】
活性成分の連続放出、特に、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはその変異体または模倣物の少なくとも1つの連続放出のための注入液または固体マトリックス形態の薬学的調製物が好ましい。脳への局所的な投与に適している溶液または固体マトリックス形態の薬学的調製物がより好ましい。
【0075】
用法用量は、主治医およびその他の臨床的な要因によって決定され得る。医薬分野においては周知であるように、任意の患者について用量は、患者の大きさ、体表面積、年齢、性別、投与される特定の化合物、投与時間および投与経路、治療の種類、健康状態および同時に投与されるその他の薬剤を含む多くの要因に依存する。
【0076】
本発明は、上述のように、オリゴヌクレオチド、その変異体または模倣物の少なくとも1つを含む薬学的調製物に関する。少なくとも1つのアンチセンスオリゴヌクレオチドの代わりにまたはこれに加えて、少なくとも1つのアンチセンス化合物が存在し得る。アンチセンス化合物とは、アンチセンスオリゴヌクレオチド、特に、本明細書に開示されているようなアンチセンスオリゴヌクレオチドの1つを転写させるベクター、またはリボザイム、外部ガイド配列(EGS)、オリゴザイム、および短触媒RNAまたは触媒オリゴヌクレオチドをいい、TGF−RまたはTGF−RIIをコードする標的核酸をハイブリダイズする。このアンチセンス化合物は、TGF−RまたはTGF−RIIの発現を阻害し、好ましくは、形成されるTGF−RまたはTGF−RIIの量をそれぞれ減少させ得る。
【0077】
本発明の好ましい実施態様では、予防および/または治療され得る疾患は、神経変性疾患、CNSの神経炎症性疾患、急性虚血または脳外傷、低酸素性脳損傷である。神経変性疾患または神経炎症性疾患の好ましい例は、アルツハイマー病、パーキンソン病、クロイツフェルトヤコブ病(CJD)、異型クロイツフェルトヤコブ病(nvCJD)、ハレルフォルデンスパッツ病、ハンチントン病、多発性萎縮症(multisystem atrophy)、痴呆、前頭側頭型痴呆、運動ニューロン疾患、筋萎縮性側索硬化症、脊髄性筋萎縮症、脊髄小脳萎縮症(SCA)、精神分裂病、感情の障害、大うつ病、髄膜脳炎、細菌性髄膜脳炎およびウイルス性髄膜脳炎(幹細胞増殖の炎症後の低下を防止)、CNS自己免疫疾患、多発性硬化症(MS)、急性虚血/低酸素性障害、CNS外傷、頭部外傷、動脈硬化症、アテローム性動脈硬化症、微小血管性痴呆、ビンスワンゲル病、白質病変、AIDS関連痴呆、脆弱X染色体に関連する震え/運動失調症候群(FXTAS)、進行性核上麻痺(PSP)、線条体黒質変性症(SND)、オリーブ橋小脳変性(OPCD)、シャイ・ドレーガー症候群(SDS);網膜変性、黄斑変性、色素性網膜炎、蝸牛変性、迷路性難聴が挙げられる。幹細胞再生の加齢依存的な減少もまた、記載され得る。
【実施例】
【0078】
(実施例1)
TGF−β1は、げっ歯動物の成体の神経幹細胞および前駆細胞の増殖を阻害する。
成体の雌性マウス(種々の系統)またはFischer-344ラット(3〜4カ月齢:Charles River、ドイツ)を屠殺し、そして脳および脊髄を取り出して、4.5gm/lのグルコース(Merck、ドイツ)を含む4℃のDPBS(PAN、ドイツ)(DPBS/glu)に入れる。上に重なっている髄膜および血管を取り出す。海馬および上衣領域(側脳室の外側壁由来の上衣下および副脳室領域を含む(SVZ))を無菌的に取り出す。切り出した組織を新鮮なDPBS/gluに移し、1回洗浄し、ペトリ皿に移し、そして機械的に解離する。細胞懸濁液をDPBS/gluで洗浄して過剰の血液をすすぎ、そして0.01%のパパイン(Worthington Biochemicals、英国)、0.1%のディスパーゼII(dispase II)(Boehringer Mannheim, Mannheim、ドイツ)、0.01%のDNアーゼI(Worthington Biochemicals)、およびHBSS(PAN)中に12.4mMのMgSOを含むMg/Ca(PAA、ドイツ)を含まないPPD溶液に再懸濁し、そして室温で30〜40分間消化する。細胞懸濁液を10分ごとにすりつぶす。解離した細胞を回収し、そして2mMのL−グルタミンおよび0.1gm/lペニシリン/ストレプトマイシンを含む無血清DMEM/F12培地に再懸濁し、的確にすりつぶしながら3回洗浄する。最後に、単一細胞懸濁液を、B27(Gibco BRL)(NB/B27)、2mMのL−グルタミン(PAN)、0.1gm/lペニシリン/ストレプトマイシン(PAN)、2g/mlヘパリン(Sigma, Taufkirchen、ドイツ)、20ng/mlのbFGF−2(R&D Systems、ドイツ)、および20ng/mlのEGF(R&D Systems、ドイツ)が添加されたNB培地(Gibco BRL、ドイツ)に再懸濁する。生存細胞を、血球計数器で、トリパンブルー排除アッセイによって計数する。細胞をT−25培養フラスコに播種し、そして5%COのインキュベータ中で37℃に維持する。単一細胞が懸濁培養の5〜7日以内に球体を形成し始め、次の週の間、塊および数が増え続ける。培地の半分を7日ごとに交換する。3〜20継代数の細胞を実験に用いる(Wachs, F. P., S. Couillard-Despresら., Lab Invest 2003, 83(7), 949-962)。神経幹細胞および前駆細胞の培養は、さらにNSCという。解離工程において、浮遊神経球体を含んでいる培養培地を、15mlの遠心管に回収し120rcfで5分間遠心分離する。ペレットを200μlのAccutase(Innovative Cell Technologies Inc., PAAによって配布されている)に再懸濁し、そして約10回ピペットを用いてすりつぶす。次いで、細胞懸濁液を37℃で10分間インキュベートする。解離した球体を再度すりつぶし、800μlのNB/B27培地に再懸濁する。解離した細胞を120rcfで5分間遠心分離し、そしてNB/B27培地に再懸濁する。アリコートを、血球計数器で、トリパンブルー排除アッセイによって計数して、生存細胞の量を決定する。細胞(10個)を、NB/B27培地で長期継代のために、T75培養フラスコにプレーティングする(フラスコごとに10mlの培養培地)。初代神経球体のAccutase処理後に得られた細胞は増殖し、二次神経球体を得る。初代神経球体細胞の培養後7〜9日、二次神経球体を継代する。初代培養および初代神経球体と同様に、二次神経球体の解離後に得られた単一細胞は増殖し、三次神経球体を得る(Wachs, F. P., S. Couillard-Despresら、Lab Invest 2003, 83(7), 949-962)。
【0079】
10個のNSCを、1mlの容量のNB/B27培地を含む12ウェルプレートに播種し、7日間培養する。播種後2時間、3日、および6日に、細胞を種々の濃度(0、2.5、5、10、50、および100ng/ml)の組換えヒトトランスホーミング増殖因子β1(TGF−β1)(R&D Systems、ドイツ)の添加によって刺激する。7日目に、AccutaseTMの使用によって培養物を解離し、生存細胞を、血球計数器で、トリパンブルー排除アッセイによって計数する。インビトロで、TGF−β1は、用量依存様式で成熟した神経幹細胞および前駆細胞の増殖を阻害する(図1A)。
【0080】
類似の効果をヒト胎児神経前駆細胞で観察した。50ng/mlのTGF−β1での処理により、7日以内にコントロールの約50%まで細胞増殖が減少した(図1B)。
【0081】
(実施例2)
神経幹細胞および前駆細胞におけるTGF−β1の効果は可逆的である。
TGF−β1で誘導した増殖阻害が可逆的効果であるか否かを決定するために、NSCを実施例1に記載されているプロトコルに従って10ng/mlのTGF−β1で7日間刺激する。解離後、生存細胞を、血球計数器で、トリパンブルー排除アッセイによって計数し、そして増殖因子刺激された10個のNSCを再播種し、そして実施例1に記載されているプロトコルに従って10ng/mlのTGF−β1を用いてまたは用いず培養する。この解離/計数/再播種の手順を、7日ごとに行う。図2に示すように、培養3週後、最初にTGF−β1処理され現在TGF−β1なしで増殖している細胞の増殖割合は、以前の処理されていない細胞と比較した場合、通常まで戻る。これは、成熟した神経幹細胞および前駆細胞におけるTGF−β1の効果が可逆的であることを示す。TGF−β1を用いた長期間のインキュベーションは、さらに、細胞増殖を減少させない。
【0082】
(実施例3)
TGF−βRIIに対する抗体は、げっ歯動物の成体のNSCにおけるTGF−β1効果を減少させ得る。
低い継代数の刺激されていない7日齢の神経球体を、実施例1に記載されているようにAccutaseTMの使用によって解離する。得られた単一細胞懸濁液を、ブロッキング分析のために使用した。げっ歯動物の成体のNSCを、1mlの容量のNB/B27培地を含む12ウェルプレートに10個の細胞の密度で播種した。播種2時間後および10ng/mlのTGF−β1での刺激1時間前に、種々の濃度の中和抗TGF−βRII抗体(R&D Systems、ドイツ)を培養培地に添加した。播種3日および6日後に、細胞を1日目に行われた手順と同一の抗TGF−βRII抗体およびTGF−β1の添加によって再刺激する。7日目に、培養物をAccutaseTMの使用によって解離し、生存細胞を、血球計数器で、トリパンブルー排除アッセイによって計数する。興味深いことに、抗TGF−βRII抗体自体の添加によりNSCの増殖が減少する。TGF−βRIIに対する抗体は、使用した最も高い濃度(10μg/ml)での使用でさえも、TGF−β1で誘導される効果を部分的にのみ阻害し得る(図3)。
【0083】
(実施例4)
可溶性TGF−RIIは、NSC増殖のTGF−β1で誘導される抑制を完全に阻害する。
製造者のプロトコルに従って(R&D Systems、ドイツ)、ヒトTGF−RIIの159個のアミノ酸残基の細胞外ドメインをコードするDNA配列を(Linら, Cell 1992, 68(4), 775-785)、ヒトIgG1のFc領域に融合し、そしてキメラタンパク質を、マウス骨髄腫細胞株NSOで発現させた。低い継代数の刺激されていない7日齢の神経球体を、実施例1に記載されているようにAccutaseTMの使用によって解離する。得られた単一細胞懸濁液を、ブロッキング分析のために使用した。げっ歯動物の成体のNSCを、1mlの容量のNB/B27培地を含む12ウェルプレートに10個の細胞の密度で播種した。播種2時間後および10ng/mlのTGF−β1での刺激1時間前に、種々の濃度の生物学的活性を有する可溶性組換えヒトTGF−βsRII/Fcキメラ(R&D Systems、ドイツ)を培養培地に添加した。播種3日および6日後に、細胞を1日目に行われた手順と同一のTGF−βsRII/FcキメラおよびTGF−β1の添加によって再刺激する。7日目に、培養物をAccutaseTMの使用によって解離し、生存細胞を、血球計数器で、トリパンブルー排除アッセイによって計数する。興味深いことに、TGF−βsRII/Fcキメラの添加により、用量依存様式でTGF−β1で誘導される効果を完全にブロックし得る(データは示さず)。明らかに、可溶性組換えヒトTGF−βsRII/Fcキメラ(可溶性TGF−βRII)の前投与による細胞培養上清中の活性なTGF−β1の廃絶は、TGF−β1で誘導される成熟神経幹細胞および前駆細胞の増殖抑制を完全にブロックする(図4)。
【0084】
(実施例5)
TGF−βRIIを発現する細胞は、細胞選別技術を用いて単離され得る。
現在の方法は、神経幹細胞および前駆細胞の迅速かつ信頼できる分離および精製ができない。所定の表面マーカーの発現に基づいて純粋な神経幹細胞および前駆細胞集団の単離の可能性を研究するために、本発明者らは、種々の技術によってTGF−βRIIの発現による神経幹細胞および前駆細胞を単離する。TGF−βRIIを発現する神経幹細胞および前駆細胞を2つの技術で単離することが可能である:(i)FACS選別(データは示さず)、および(ii)MACS選別。解離した成熟神経幹細胞および前駆細胞を、10μg/mlのTGF−RIIに対する一次抗体(R&D Systems、ドイツ)を用いて、室温で20分間インキュベートする。PBSでの1回の洗浄工程後、細胞をウサギ抗ヤギPE(1:500)二次抗体(Dianova)を用いてインキュベートする。PBSでの1回の洗浄工程後、製造者のプロトコルに従って(Miltenyi Biotech、ドイツ)、細胞を常磁性ビーズに連結されたPEに対する三次抗体で染色する。細胞懸濁液を、製造者のプロトコルに従って(Miltenyi Biotech、ドイツ)MACSシステムを用いて磁気選別し、そして選別後の負および正の細胞を計数し、培養を行う(図5)。選別されたすべての細胞の約20%が、TGF−βRIIに対して陽性に染色した。
【0085】
(実施例6)
TGF−βRIIに対するアンチセンスオリゴヌクレオチドは、インビトロで、成熟神経幹細胞および前駆細胞の増殖のTGF−β1で誘導されたダウンレギュレートを阻害する。
細胞を、実施例1に記載されているように調製し、解離し、そしてプレーティングした。次いで、細胞を、10ng/mlのTGF−β1、10μMのTGF−βRIIアンチセンスオリゴヌクレオチド5’−cagcccccgacccatg−3’(配列番号3)、センスオリゴヌクレオチド5’−catgggtcgggggctg−3’、またはミスセンス5’−catccccggacccgtg−3’を用いてまたは用いずに1週間インキュベートした。オリゴヌクレオチドをホスホロチオエート改変し、そしてオリゴヌクレオチドを含む培地を毎日交換した。TGF−β1で誘導される神経幹細胞および前駆細胞の増殖の阻害が、アンチセンス(配列番号3)処理によって、完全にそして特異的にブロックされたことに留意すること(図6)。
【0086】
(実施例7)
TGF−RII特異的アンチセンスオリゴヌクレオチドでのインビボ処理は、成熟脳における細胞増殖のTGF−β1で誘導される遮断を救済する。
この実施例は、(i)インビボでの神経幹細胞および祖先細胞の増殖におけるTGF−β1注入の効果、および(ii)TGF−βRIIアンチセンスオリゴヌクレオチド処理によるこの効果の救済を示す。したがって、以下の実験を設計した。
【0087】
TGF−β1を2週間脳室内に注入し、次いで、TGF−β1とオリゴヌクレオチドとを共注入した。動物実験を、1986年11月24日の欧州共同体理事会指令(86/609/EEC)に従って行った。浸透圧ミニポンプに接続されたステンレススチールのカニューレ(Model 2001, Alza, Stadt, Land)を、記載されているように脳室内の注入のために、2カ月齢の雄性Fischer-344ラット(n=24)に移植した。動物に、組換えTGF−β1(ポンプ中に500ng/mlで存在)またはコントロールとして人工脳脊髄液(aCSF)のいずれかを(それぞれn=8)、0.5μl/時間の流速で2週間投与した。第2週の後、ポンプを交換し、aCSF、TGF−β1(ポンプ中に500ng/mlで存在)、またはホスホロチオエートオリゴヌクレオチド(ポンプ中に1.64mMの濃度で存在)と組み合わせたTGF−β1(ポンプ中に500ng/mlで存在)を、さらに2週間、脳室中に注入した。オリゴヌクレオチドは、実施例6に記載されている通りであった。27日目に、動物に、200mg/kgのブロモデオキシウリジン(BrdU)を単回腹腔内注射した。1日後、動物に、4%のパラホルムアルデヒドを心臓内潅流した。組織を、発色性またはエピ蛍光免疫検出のために、記載されているように40μmの矢状切片に加工した。エピ蛍光分析を、SpotTMディジタルカメラ(Diagnostic Instrument Inc, Sterling Heights、アメリカ)または共焦点走査レーザー顕微鏡(Leica TCS-NT, Bensheim、ドイツ)を装着したLeica顕微鏡(Leica Mikroskopie und Systeme GmbH, Wetzlar、ドイツ)を用いて行った。一次抗体は、ラットα−BrdU 1:250(Oxford Biotechnology, Oxford、イギリス)であった。二次抗体は、フルオレセイン(FITC)、ローダミンX(RHOX)、CY5、またはビオチン1:500(Jackson Immuno Research, West Grove, PA、アメリカ)と結合したロバα−ヤギ、マウス、ウサギ、またはラットであった。計数のために、体系的なおよびランダムな手順を用いた。BrdU陽性細胞を、SVZの最低部分、中間部分、および上部に配置された区分あたり、50μm×50μmの3つの計数フレーム内で計数した。計数フレームの最上の焦点面(排除面)または側面排除境界と交差した陽性プロファイルは、計数しなかった。陽性プロファイルの総数を、それぞれの構造について推定数のBrdU陽性細胞を得るために、参照容量と試料容量との比によって増加させた。すべての外挿を、1つの大脳半球について計算し、総脳値を表すために2倍にした。データを、平均値±標準偏差(SD)として表す。統計分析を、TGF−β1処理群とコントロール群との間の対応のない両側t検定比較−スチューデントのt検定を用いて行った(StatView Software, Cary, NC、アメリカ)。有意水準を、p<0.05と仮定した。
【0088】
図7は、海馬歯状回(図7A)および副脳室領域(図7B)における細胞増殖のTGF−β1で誘導されたダウンレギュレーションを示す。ミスセンスオリゴヌクレオチドでの処理は、この効果をブロックしなかった。対照的に、アンチセンスオリゴヌクレオチド処理(配列番号3)は、TGF−β1の効果をブロックした(図7AおよびB)。
【0089】
(実施例8)
TGF−RII特異的アンチセンスオリゴヌクレオチドでのインビボ処理は、成熟脳における細胞増殖のTGF−β1で誘導される遮断を抑える。
この実施例は、TGF−βRIIに対するアンチセンスオリゴヌクレオチド処理が、成熟脳における細胞増殖のTGF−β1で誘導されたダウンギュレーションを抑え得ることを示す。
【0090】
オリゴヌクレオチドを1週間脳室内に注入し、次いで、TGF−β1とオリゴヌクレオチドとを共注入した。動物実験を、1986年11月24日の欧州共同体理事会指令(86/609/EEC)に従って行った。浸透圧ミニポンプに接続されたステンレススチールのカニューレ(Model 2001, Alza, Stadt, Land)を、記載されているように脳室内の注入のために、2カ月齢の雄性Fischer-344ラット(n=24)に移植した。動物に、第1週の間はホスホロチオエートオリゴヌクレオチド(ポンプ中に1.64mMの濃度で存在)またはaCSFのいずれかを、そして第2および第3週の間はaCSF、TGF−β1(ポンプ中に500ng/mlで存在)、またはTGF−β1(ポンプ中に500ng/mlで存在)とホスホロチオエートオリゴヌクレオチド(ポンプ中に1.64mMの濃度で存在)との共注入を投与した。オリゴヌクレオチドは、実施例6に記載されている通りであった。20日目に、動物に、200mg/kgのブロモデオキシウリジン(BrdU)を単回腹腔内注射した。1日後、動物に、4%のパラホルムアルデヒドを心臓内潅流した。組織を、実施例7に記載されているように加工して分析した。図8は、海馬歯状回(図8A)および副脳室領域(図8B)における細胞増殖のTGF−β1で誘導したダウンギュレーションが、TGF−βRIIアンチセンスオリゴヌクレオチド(配列番号3)処理での前処理によって抑えられ得ることを示す。
【0091】
(実施例9)
少なくとも1つのアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む薬学的処方物。
アンチセンスオリゴヌクレオチドについての3つの代表的な水性処方物:
1.aCSF中:148.0mMのNaCl、3.0mMのKCl、1.4mMのCaCl、0.8mMのMgCl、1.5mMのNaHPO、0.2mMのNaHPO、pH7.4、100μg/mlのラット血清アルブミン、50μg/mlのゲンタマイシン
2.0.9%NaCl中
3.HO中
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】TGF−β1は、げっ歯動物の成体の神経幹細胞および前駆細胞の増殖を抑制する。(A)げっ歯動物の成体の神経幹細胞および前駆細胞(NSC)の培養物を、種々の濃度(0、5、10、50ng/ml)の組換えヒトTGF−β1で、7日間処理した。7日目に、生存細胞を、血球計数器で、トリパンブルー排除アッセイによって計数した。データを、3連で行われた3つの実験からの平均細胞数±SDとして表す。(B)は、ヒト胎児ニューロン前駆細胞におけるTGF−β1の効果を示す。
【図2】NSCにおけるTGF−β1の効果は可逆性である。げっ歯動物の成体の神経幹細胞および前駆細胞の培養物を、10ng/mlの組換えヒトTGF−β1で、7日間処理した。7日目に、細胞を解離し、トリパンブルー排除アッセイによって計数し、そしてTGF−β1で前処理した細胞を、10ng/mlのTGF−β1を含むまたは含まずに、再播種した。この手順を7日ごとに行った。データを、3連で行われた3つの実験からの平均細胞数±SDとして表す。
【図3】TGF−βRIIに対する抗体は、げっ歯動物の成体のNSCにおいてTGF−β1効果を減少させ得る。げっ歯動物の成体のNSC培養物を、抗TGF−βRII抗体(10μg/ml)の存在下または不在下で、10ng/mlの組換えヒトTGF−β1で、7日間処理した。7日目に、生存細胞を、血球計数器で、トリパンブルー排除アッセイによって計数した。データを、3連で行われた3つの実験からの平均細胞数±SDとして表す。
【図4】可溶性TGF−RIIは、TGF−β1誘発されたNCS増殖の抑制を阻害する。げっ歯動物の成体のNSC培養物を、可溶性抗TGF−βRII(500ng/ml)の存在下または不在下で、10ng/mlの組換えヒトTGF−β1で、7日間処理した。7日目に、生存細胞を、血球計数器で、トリパンブルー排除アッセイによって計数した。データを、3連で行われた3つの実験からの平均±SDとして表す。
【図5】TGF−βRII発現細胞は、細胞選別技術を用いて単離され得る。げっ歯動物の成体のNSCを、実施例1に記載のように調製した。TGF−βRIIを発現する細胞を、TGF−βRIIに対する抗体を用いて精製した。NSCの約20%がレセプターを発現し、この細胞集団は、このアプローチによって富化され得る。
【図6】TGF−βRIIに対するアンチセンスオリゴヌクレオチドは、インビトロでTGF−β1で誘導される成熟神経幹細胞および前駆細胞の増殖のダウンレギュレートを阻害する。TGF−β1で誘導される神経幹細胞および前駆細胞の増殖の阻害が、アンチセンス処理によって完全におよび特異的にブロックされたことを示す。
【図7】TGF−RII特異的アンチセンスオリゴヌクレオチドでのインビボ処理は、成熟脳における細胞増殖のTGF−β1で誘導される遮断を救済する。図7は、海馬歯状回(図7A)および副脳室領域(図7B)における細胞増殖のTGF−β1で誘導されるダウンレギュレートを示す。ミスセンスオリゴヌクレオチド処理は、この効果をブロックしないが、アンチセンスオリゴヌクレオチド処理は、TGF−β1の効果をブロックした(図7Aおよび7B)。
【図8】TGF−RII特異的アンチセンスオリゴヌクレオチドでのインビボ処理は、成熟脳における細胞増殖のTGF−β1で誘導される遮断を妨げる。図8は、海馬歯状回(図8A)および副脳室領域(図8B)における細胞増殖のTGF−β1で誘導されるダウンレギュレートは、TGF−βRIIアンチセンスオリゴヌクレオチド処理での前処理によって妨げられ得ることを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
8から50個の核酸塩基を含む、配列番号1または配列番号2または配列番号94または配列番号95または配列番号96の部分配列に少なくとも80%同一の配列を有するオリゴヌクレオチドであって、
該配列が、TGF−RまたはTGF−RIIをコードする遺伝子のオープンリーディングフレームの翻訳開始コドンまたは翻訳終止コドンを含む領域、あるいは「ループ」または「バルジ」でありそして二次構造の部分ではないTGF−RまたはTGF−RIIをコードするmRNAの領域と十分にハイブリダイズし得、そして該配列の模倣物、変異体、塩、および光学異性体である、オリゴヌクレオチド。
【請求項2】
8から50個の核酸塩基を含む配列番号1または配列番号2または配列番号94または配列番号95または配列番号96の部分配列、ならびにその模倣物、変異体、塩、および光学異性体を有する、オリゴヌクレオチド。
【請求項3】
配列番号3から配列番号93を含む群から選択される、請求項2に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項4】
請求項3に記載のオリゴヌクレオチドであって、
配列番号3:5’−CAGCCCCCGACCCATG−3’
配列番号33:5’−CAGCCCCCGACCCATGGCAG−3’
配列番号34:5’−CAGCCCCCGACCCATGGCA−3’
配列番号35:5’−CAGCCCCCGACCCATGGC−3’
配列番号36:5’−CAGCCCCCGACCCATGG−3’
配列番号41:5’−GCAGCCCCCGACCCATGGCA−3’
配列番号42:5’−GCAGCCCCCGACCCATGGC−3’
配列番号43:5’−GCAGCCCCCGACCCATGG−3’
配列番号44:5’−GCAGCCCCCGACCCATG−3’
配列番号49:5’−AGCAGCCCCCGACCCATGGC−3’
配列番号50:5’−AGCAGCCCCCGACCCATGG−3’
配列番号51:5’−AGCAGCCCCCGACCCATG−3’
配列番号56:5’−GAGCAGCCCCCGACCCATGG−3’
配列番号57:5’−GAGCAGCCCCCGACCCATG−3’
配列番号62:5’−TGAGCAGCCCCCGACCCATG−3’
配列番号73:5’−ATGTGAAGATGGGCAAGACC−3’
配列番号74:5’−ATCTCCATGTGAAGATGGGC−3’
配列番号75:5’−AACGGCCTATCTCGAGGAAT−3’
配列番号76:5’−AACATCGTCGAGCAATTTCC−3’
配列番号77:5’−AATCCAACTCCTTTGCCCTT−3’
配列番号78:5’−AAACCTGAGCCAGAACCTGA−3’
配列番号79:5’−AGGGCGATCTAATGAAGGGT−3’
配列番号80:5’−AGTGCACAGAAAGGACCCAC−3’
配列番号81:5’−ACACTGGTCCAGCAATGACA−3’
配列番号82:5’−TTCCTGTTGACTGAGTTGCG−3’
配列番号83:5’−CACTCTGTGGTTTGGAGCAA−3’
配列番号84:5’−CAAGGCCAGGTGATGACTTT−3’
配列番号85:5’−CACACTGGTCCAGCAATGAC−3’
配列番号86:5’−CTGACACCAACCAGAGCTGA−3’
配列番号87:5’−CTCTGCCATCTGTTTGGGAT−3’
配列番号88:5’−TCAAAAAGGGATCCATGCTC−3’
配列番号89:5’−TGACACCAACCAGAGCTGAG−3’
配列番号90:5’−TGATGCCTTCCTGTTGACTG−3’
配列番号91:5’−TTCCTGTTGACTGAGTTGCG−3’
配列番号92:5’−TTCTCCAAATCGACCTTTGC−3’
配列番号93:5’−GGAGAGTTCAGGCAAAGCTG−3’
を含む群から選択される、オリゴヌクレオチド。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかの項に記載のオリゴヌクレオチドならびにその模倣物、変異体、塩、および光学異性体の少なくとも1つ、および/または少なくとも1つのアンチセンス化合物を、薬学的に受容可能なキャリア、賦形剤、または希釈剤の少なくとも1つとともに含む、薬学的調製物であって、
該アンチセンス化合物が、アンチセンスオリゴヌクレオチドを転写できるベクターおよび/またはリボザイム、外部ガイド配列(EGS)、オリゴザイム、短触媒RNA、および触媒オリゴヌクレオチドの少なくとも1つを含む群より選択され、そしてTGF−RまたはTGF−RIIをコードする標的核酸にハイブリダイズし、そしてその発現を阻害する、薬学的調製物。
【請求項6】
前記薬学的調製物が、活性成分の連続放出のための注入液または固体マトリックスである、請求項5に記載の薬学的調製物。
【請求項7】
前記薬学的調製物が、脳への局所投与に適している、請求項5または6に記載の薬学的調製物。
【請求項8】
損傷を受けた神経経路の好結果の再生および機能的な再連結を促進するための、請求項1から4のいずれかの項に記載のオリゴヌクレオチドならびにその模倣物および変異体の少なくとも1つおよび/または少なくとも1つのアンチセンス化合物または請求項5から7のいずれかの項に記載の薬学的調製物の使用であって、
該アンチセンス化合物が、アンチセンスオリゴヌクレオチドを転写できるベクターおよび/またはリボザイム、外部ガイド配列(EGS)、オリゴザイム、短触媒RNA、および触媒オリゴヌクレオチドの少なくとも1つを含む群より選択され、そしてTGF−RまたはTGF−RIIをコードする標的核酸にハイブリダイズし、そしてその発現を阻害する、使用。
【請求項9】
神経変性、外傷性の/外傷後の、血管の/低酸素性の、神経炎症性の、および感染後の中枢神経系疾患、および加齢に伴う神経幹細胞再生の減少の予防、治療的予防、および治療のための、請求項1から4のいずれかの項に記載のオリゴヌクレオチドならびにその模倣物および変異体の少なくとも1つおよび/または少なくとも1つのアンチセンス化合物または請求項5から7のいずれかの項に記載の薬学的調製物の使用であって、
該アンチセンス化合物が、アンチセンスオリゴヌクレオチドを転写できるベクターおよび/またはリボザイム、外部ガイド配列(EGS)、オリゴザイム、短触媒RNA、および触媒オリゴヌクレオチドの少なくとも1つを含む群より選択され、そしてTGF−RまたはTGF−RIIをコードする標的核酸にハイブリダイズし、そしてその発現を阻害する、使用。
【請求項10】
アップレギュレートされたまたは高められたTGF−Rおよび/またはTGF−RIIのレベルに関連する疾患において、TGF−Rおよび/またはTGF−RIIの発現を阻害するための、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
前記アップレギュレートされたまたは高められたTGF−RまたはTGF−RIIのレベルに関連する疾患、または神経変性疾患および炎症性神経疾患が、アルツハイマー病、パーキンソン病、クロイツフェルトヤコブ病(CJD)、異型クロイツフェルトヤコブ病(nvCJD)、ハレルフォルデンスパッツ病、ハンチントン病、多発性萎縮症(Multisystem Atrophy)、痴呆、前頭側頭型痴呆、またはその他の運動ニューロン疾患、筋萎縮性側索硬化症、脊髄性筋萎縮症、脊髄小脳萎縮症(SCA)、精神分裂病、感情の障害、大うつ病、髄膜脳炎、細菌性髄膜脳炎、ウイルス性髄膜脳炎、CNS自己免疫疾患、多発性硬化症(MS)、急性虚血/低酸素性障害、卒中、CNSおよび脊髄外傷、頭部および脊柱外傷、動脈硬化症、アテローム性動脈硬化症、微小血管性痴呆、ビンスワンゲル病(白質病変)、網膜変性、蝸牛変性、黄斑変性、迷路性難聴、AIDS関連痴呆、色素性網膜炎、脆弱X染色体に関連する震え/運動失調症候群(FXTAS)、進行性核上麻痺(PSP)、線条体黒質変性症(SND)、オリーブ橋小脳変性(OPCD)、シャイ・ドレーガー症候群(SDS)、加齢依存的記憶障害、痴呆に関連する神経発達障害、ダウン症候群、シヌクレイン障害、スーパーオキサイドジスムターゼ変異、トリヌクレオチド反復疾患、トラウマ、低酸素性、血管疾患、血管炎症、CNS老化を含む群から選択される、請求項9または10に記載の使用。
【請求項12】
(a)TGF−Rおよび/またはTGF−RIIの生物学的活性、またはTGF−Rおよび/またはTGF−RIIの発現、または(b)TGF−β1/TGF−Rシグナリングを妨害する化合物を同定する方法であって、
(a)TGF−β1およびニューロン前駆細胞を含む試験システムとともに、候補化合物をインキュベートする工程;および
(b)活性なTGFレセプターの発現または該ニューロン前駆細胞の増殖をアッセイする工程;
を包含し、
(c)該試験化合物の不在下での試験システムと比較して、(i)活性なTGFレセプターの発現の抑制の廃絶、または(ii)ニューロン前駆細胞の増殖の抑制の廃絶が、所望の特性を有する候補化合物の存在を示す、
方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2007−521815(P2007−521815A)
【公表日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−551825(P2006−551825)
【出願日】平成17年2月9日(2005.2.9)
【国際出願番号】PCT/EP2005/001298
【国際公開番号】WO2005/074981
【国際公開日】平成17年8月18日(2005.8.18)
【出願人】(506270765)レゲニオン ゲーエムベーハー (1)
【Fターム(参考)】