説明

CO2リッチフローを乾燥および圧縮する方法および装置

水含有COリッチ流体を圧縮するにあたりCOリッチ流体をコンプレッサ(5)で圧縮する方法において、圧縮工程よりも上流の位置で、不凍液を水含有COリッチ流体に注入して、水の凝固温度を下げる。不凍液含有COリッチ流体を凍らせ、凍った流体から水を抽出し、凍った流体をコンプレッサで圧縮する。

【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
本発明は、COリッチ流を乾燥および圧縮するプロセスおよびユニットに関する。
【0002】
COリッチな湿潤流の圧縮は、ステンレス鋼からなる、またはよりいっそう貴な材料たとえばニッケル含有量の高い鋼からなるコンプレッサの使用を必要とする。炭酸による腐食、またはCOリッチ流における不純物の存在に由来するかもしれない他のより強い酸たとえば窒素酸化物や硫黄酸化物による腐食を防止するためである。
【0003】
COリッチ流体は乾燥基準で1モル%ないし100モル%のCOを含む。大気は1モル%という下限よりもCOが25倍少ない。
【0004】
図1のように、このようなCOリッチ流の処理に関する先行技術を概略的に示すと次のとおりである。
【0005】
・1=COリッチ流の供給(例:(アミン型の)溶剤を再生するカラムの出口または静電式やバグフィルタ式の主要フィルタの後の酸素燃焼煙道ガス)
・3=任意の工程である硫黄含有要素の(およそ1ppmという典型的なレベルへの)精密精製
・5=コンプレッサでの圧縮、湿潤ガスに接触するその材料は耐食鋼からなる
・7=吸着によるガスの乾燥(たとえば活性アルミナ、モレキュラーシーブまたはシリカゲルの吸着剤)
・9=任意にCOリッチガスから軽い成分(酸素、アルゴン、水素、炭素、一酸化物、窒素、など)および/または重い成分(NO、N、SO、など)を取り除く、この工程の考えられる変形は以前の特許出願に詳細に記載している
・11=COリッチ最終生成物の圧縮またはCOリッチ最終生成物の液化により(パイプラインや船舶による)輸送システムに利用したりプロセスに使用したりできるようにする工程
US−A−2862819によって、コンプレッサで圧縮する前に不凍液と混合してから、COリッチガスの流れを蒸留により分離することが知られている。
【0006】
本発明の1つの主題によれば、水含有COリッチ流体を圧縮するにあたり前記COリッチ流体をコンプレッサで圧縮する方法が提供され、圧縮工程の上流で前記水含有COリッチ流体を2つに分け、前記水含有COリッチ流体の第1の部分に不凍液を注入し、前記COリッチ流体の第2の部分を脱気カラムの底部に送って前記カラムからのオーバーヘッドガスを前記不凍液含有COリッチ流体の第1の部分と混合し、前記第1の部分を冷却した後に相分離器に送り、前記不凍液を含有する水を前記相分離器から抽出して前記カラムの頂部に送り、前記相分離器で水を取り除いた冷却流体を前記コンプレッサで圧縮する。
【0007】
以下は任意である。
【0008】
−コンプレッサが炭素鋼または低合金鋼からなる。
【0009】
−不凍液を含有する水を前記カラムで処理して不凍液の大部分を水から抽出し、これを冷却工程の上流にリサイクルする。
【0010】
−相分離器の入口でガスは−35℃と−15℃の間であるか−25℃と−15℃の間でさえあるかのいずれかであること。
【0011】
−コンプレッサの下流で、圧縮流体を、上流での吸着により乾燥することなく、水の凝固点0℃より低い温度、好ましくは−10℃よりも低い温度で分離する。
【0012】
−水リッチの不凍液含有凝縮液を0℃より低い温度での分離のあいだに回収し、不凍液を抽出後に冷却工程の上流にリサイクルする。
【0013】
−水リッチの不凍液含有凝縮液を−10℃より低い温度での分離のあいだに回収し、不凍液を抽出後に冷却工程の上流にリサイクルする。
【0014】
−不凍液をカラムで抽出する。
【0015】
−COリッチ流体は、100体積ppm未満の硫黄酸化物または2,000体積ppm未満の硫黄酸化物またはさらに20,000体積ppm未満の硫黄酸化物を含有する。
【0016】
本発明の別の態様によれば、水含有COリッチ流体を圧縮するユニットが提供され、コンプレッサと、前記コンプレッサの上流に、水含有COリッチ流体の第1の部分に不凍液を注入する不凍液注入ラインと、不凍液含有COリッチ流体を冷却する手段と、冷却流体から水を抽出する相分離器と、脱気カラムと、水含有COリッチ流体の第2の部分を前記カラムの底部に送る手段と、前記相分離器から前記カラムの頂部に水を送る手段と、前記カラムからオーバーヘッドガスを送って前記冷却手段の上流で前記第1の部分と混合させる手段と、水を取り除いた冷却流体を前記コンプレッサに送る手段とを含む。
【0017】
コンプレッサは任意に炭素鋼からなる。
【0018】
ユニットは、前記カラムの上流に、前記第2の部分を圧縮するコンプレッサを含んでいてもよい。
【0019】
この手段により、COリッチ流体の全てを蒸留カラムで処理する必要がなく、水と不凍液の混合物を脱気カラムで精製することを意図している部分のみを処理すればすむ。
【0020】
本発明は、圧縮工程5の上流で水を十分に取り除いて、コンプレッサにおける圧縮および冷却の一連の段階のあいだに水の凝縮を避けることによって、ステンレス鋼の代わりに炭素鋼または低合金鋼の使用を可能にして、COリッチ流の圧縮ユニット5および任意の精製ユニット3のコストをかなり減らすことを目指している。
【0021】
本発明の第2の態様は、生成されるCOの組成を改善するために部分的な凝縮や任意の蒸留による精製が望まれる場合に乾燥ユニット7のコストを減少させることにある。このユニットの主要な役目は、COリッチ流から十分に水を除去して、このユニット9での冷却のあいだに水が凍ることを防止することである。したがって、COの凝固による最低温度−56℃での凍結を防止するためには、およそ1ppmの残留水含有量が必要であろう。
【0022】
最初に、COリッチ流体を約−55℃に冷却しながら、どのようにして乾燥ユニットなしですませるのかを検討する。
【0023】
本発明は、不凍液、例えばメタノールを十分な量だけ注入して水の凝固点をユニット9の最も冷たい温度よりも低くしてから(例えば、−54℃の水凝固点のためには、ガスに含まれる1kgの水に対して少なくとも1kgのメタノールを注入する必要がある)、混合物を所望の温度に冷却することにある。
【0024】
改善は、不凍液含有ガスを、所望の最終温度よりも明らかに高い、例えば−35℃ないし−15℃の中間温度に冷却し、含まれている水および不凍液のかなりの割合を凝縮してリサイクルするようにし、不凍液の消費を制限することにある。到達する温度が冷たいほど、水の凝縮が増大する。その後、この中間的な凝縮から得られるガスを、残りのプロセスに望ましい温度に冷却する。
【0025】
ガス相における水および不凍液の結果としての部分に応じて、この第1の凝縮後に第2の不凍液注入を想定することができる。多重注入の利点は、注入すべき総量を減少させることである。これは、各々の注入が後に続く凝縮に適合されるからである。しかし、システムがより複雑になるので、技術−経済の検討により不凍液の多重注入の利点が評価されるであろう。
【0026】
類似した手法は、炭素鋼または低合金鋼からなるコンプレッサを用いる圧縮の前に十分に水を取り除くことを可能にする。したがって、これは、水の残りの割合が、コンプレッサの様々な圧縮および冷却の段階において決して露点に達しないことを確実にするまで、COリッチ流体を冷却するという問題である。こうして、約90体積%のCOを含有する流れを乾燥状態で0.9絶対バールで−15℃に冷却することは、コンプレッサの出口(我々の例では20絶対バール)での露点を30℃未満に下げることを可能にする。これは、すなわち、段間の冷却のあいだにコンプレッサの出口で、露点に達しないことを容易に確実にできる温度である。冷却装置の出口におけるガスの温度の関数として冷却水の流量を調整することによって圧縮された流れの温度を制御することは、圧縮された流れを露点、したがって腐食領域より上に維持することを可能にする一例である。
【0027】
したがって、現存のプロセスと比較すると、COリッチ流に不凍液を注入する手段と、低圧(一般に大気圧に近い圧力)でおよそ−15℃の温度に達するための高性能の冷却手段も追加する必要がある。
【0028】
本発明の利点は非常に多い。
【0029】
・コンプレッサおよび段間の冷却装置はしたがって炭素鋼または低合金鋼からなる。
【0030】
・20℃での吸い込みと−15℃での吸い込みの間である先行技術に比べて、吸込温度はかなり低く、体積流量したがってコンプレッサのサイズを決める第1の圧縮インペラーのサイズは、冷却のための100ミリバールの圧力降下(1絶対バールから0.9絶対バールまで)を考慮に入れると7%減少する。これは、機械のための投資の節約をもたらす。
【0031】
・吸い込み温度が年間に亘って安定し、これは設計した条件下で正確に作動することを可能にし、したがって機械の平均効率を改善する。
【0032】
・年に数日だけ遭遇するにすぎない高い吸込温度のために、コンプレッサのサイズを合わせなくてもよい。
【0033】
・ほとんどの水分子がないことにより、およびより低温の吸い込みにより、圧縮電力がかなり減少する。
【0034】
・コンプレッサは、処理されるガス中の不凍液のための非常に効率的なミキサとして機能する。これは精製ユニット9の上流で最も重要なことである。残留水含有量が非常に低く(およそ数百ppm)、注入される不凍液の量も非常に少なく、不凍液の注入に非常に慎重を要するからである。混合が非常に均質であること(ガス状の不凍液)を確実にすることが必要であるからである。
【0035】
・特に、蒸気相で残留する不凍液の割合が、水の割合と実質的に同じであり、したがって不凍液の中間的な注入が余計であることを確実にすることが判明した。
【0036】
・コストのかかる吸着−乾燥設備が避けられる。
【0037】
・吸着ユニットの再生のエネルギ損失が避けられる。
【0038】
本発明の別の変形は、水が存在しない状態で硫黄酸化物および窒素酸化物が酸の形態で凝縮しないことを考慮することにある。硝酸に関しては、露点が水の露点に近いのでそれらを考慮してもしなくても、一次近似として、事態は変わらない。硫酸に関しては、考慮される圧力および濃度にほぼ依存して露点は70℃と150℃の間で変化する。
【0039】
したがって、本発明は、圧縮前にCOリッチ流から硫黄酸化物を取り除かないことにある。その後、硫黄酸化物は、例えば蒸留により高圧で分離されるか、それがCOの選択された用途である場合には、COとともに隔離される。
【0040】
流れからSOを取り除かない(隔離のために抽出される)ことを想定することが可能になる石炭火力発電所を考慮する場合、COリッチガスを生成するユニットの節約はかなりであろう。
【0041】
不凍液サイクルを説明することが残っている。不凍液の殆どは、COリッチ流の水および他の不純物とともに凝縮される。不凍液の任意の注入前に採取されたCOリッチガスの一部を用いるガス/液体の接触器を使用することにより不凍液の再生が可能である。接触器は、不凍液の殆ど全てを回収することを可能にする。その後、ガスをCOリッチガスの残りと混合することにより、補給の不凍液を、生成物中および凝縮液中に残る極めて低い割合にまで減少させる。
【0042】
ボイラがある場合、微量の残留不凍液の分解のために、凝縮液をボイラに送ってもよい。
【0043】
最後に、COリッチ生成物中に残っている微量の不凍液および水が、後者の隔離を阻害したり、強化した油の回収へのその使用を阻害しないほうがよい。しかし、COの臨界点(74絶対バールおよび31.1℃)の近くで、液体でもガスでもよいCOと独立に、不凍液(一般に、アルコール、特にメタノール)および水が液相を形成することに注意すべきである。したがって、CO生成物の純度の改善に伴って、追加の割合の不凍液の回収が考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】図1はCOリッチ流の処理に関する先行技術を概略的に示す図である。
【図2】図2は本発明によるプロセスを示す図である。
【0045】
図2は本発明によるプロセスを示す。
【0046】
COリッチの湿潤流体1−00を2つに分ける。流体の一部を、脱気カラム2−4に供給する送風機2−5に送る。補給の不凍液2−03、例えばメタノールを、残りのCOリッチ流体に添加する。この混合物を熱交換器2−2で−35℃ないし−15℃の温度まで冷却して相分離器2−3に送り、これから不凍液リッチ凝縮液を分離する。これらの凝縮液をカラム2−4に送り、オーバーヘッドガス2−02をCOリッチな湿潤流体にリサイクルする。不凍液リッチな底部液体2−01を熱交換器2−2中での冷却のために戻して不凍液の消費を制限する。熱交換器2−2を冷凍ユニットによって冷却する。これは好ましくはろう付けアルミニウム板の熱交換器タイプである。任意に、稼働コストを低減するために、COリッチ流体をいくつかの段階で、すなわち、直列のいくつかの冷却(冷却水、R134a、アンモニア水)で冷却してもよい。
【0047】
相分離器2−3からのオーバーヘッドガス2−00を、先行技術のように精密精製工程に送り、その後、このガスを炭素鋼または低合金鋼からなるコンプレッサ5で圧縮する。次に続くのは、おそらく軽い成分(酸素、アルゴン、水素、一酸化炭素、窒素、など)および/または重い成分(NO、N、SO、など)を取り除く、任意のCOリッチガスの精製9であり、この工程の考えられる変形は以前の特許出願に詳細に記載しており、おそらくCOリッチ最終生成物の圧縮11または輸送システム(パイプラインまたは船舶による)に利用可能にする、またはあるプロセスでのその使用のために利用可能にするためのCOリッチ最終生成物の液化の工程である。
【0048】
好ましくは、本発明のプロセスによって処理されるCOリッチ流体はNOを含まない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水含有COリッチ流体を圧縮するにあたり前記COリッチ流体をコンプレッサ(5)で圧縮する方法であって、圧縮工程の上流で前記水含有COリッチ流体を2つに分け、前記水含有COリッチ流体の第1の部分に不凍液を注入し、前記COリッチ流体の第2の部分を脱気カラム(2−4)の底部に送って前記カラムからのオーバーヘッドガスを前記不凍液含有COリッチ流体の第1の部分と混合し、前記第1の部分を冷却した後に相分離器(2−3)に送り、前記不凍液を含有する水(2−04)を前記相分離器から抽出して前記カラムの頂部に送り、前記相分離器で水を取り除いた冷却流体(2−00)を前記コンプレッサで圧縮する方法。
【請求項2】
前記コンプレッサ(5)は炭素鋼または低合金鋼からなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記不凍液を含有する水を前記カラム(2−4)で処理して不凍液(2−01)の大部分を前記水から抽出し、これを前記冷却工程の上流にリサイクルする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記コンプレッサ(5)の下流で、圧縮流体を、上流での吸着により乾燥することなく、水の凝固点0℃より低い温度、好ましくは−10℃よりも低い温度で分離する、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
水リッチの不凍液含有凝縮液(2−05)を0℃より低い温度での分離のあいだに回収し、前記不凍液を抽出後に冷却工程の上流にリサイクルする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
水リッチの不凍液含有凝縮液(2−05)を−10℃より低い温度での前記分離のあいだに回収し、前記不凍液を抽出後に冷却工程の上流にリサイクルする、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記不凍液を前記カラム(2−4)で抽出する、請求項5および6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記COリッチ流体(1−00)は、100体積ppm未満の硫黄酸化物または2,000体積ppm未満の硫黄酸化物またはさらに20,000体積ppm未満の硫黄酸化物を含有する、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記相分離器(2−3)の入口でのガスは、−35℃ないし−15℃にあるか、さらに−25℃ないし−15℃にある、請求項1ないし8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
水含有COリッチ流体を圧縮するユニットであって、コンプレッサ(5)と、前記コンプレッサの上流に、水含有COリッチ流体の第1の部分に不凍液を注入する不凍液注入ライン(2−03)と、不凍液含有COリッチ流体を冷却する手段(2−2)と、冷却流体から水を抽出する相分離器(2−3)と、脱気カラム(2−4)と、水含有COリッチ流体の第2の部分を前記カラムの底部に送る手段と、前記相分離器から前記カラムの頂部に水(2−04)を送る手段と、前記カラムからオーバーヘッドガスを送って前記冷却手段の上流で前記第1の部分と混合させる手段と、水を取り除いた冷却流体を前記コンプレッサに送る手段とを含むことを特徴とするユニット。
【請求項11】
前記コンプレッサは炭素鋼または低合金鋼からなる、請求項10に記載のユニット。
【請求項12】
前記カラムの上流に、前記第2の部分を圧縮するコンプレッサ(2−5)を含む、請求項10および11のいずれかに記載のユニット。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−515232(P2013−515232A)
【公表日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−545391(P2012−545391)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【国際出願番号】PCT/FR2010/052858
【国際公開番号】WO2011/086289
【国際公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(591036572)レール・リキード−ソシエテ・アノニム・プール・レテュード・エ・レクスプロワタシオン・デ・プロセデ・ジョルジュ・クロード (438)
【Fターム(参考)】