説明

COX−2阻害剤としてのフェニル酢酸誘導体

COX−2依存性障害の処置に有用である、式(I):
【化1】


の化合物、その薬学的に許容される塩;およびその薬学的に許容されるエステル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本明細書で定義した、特に強力でかつ選択的なシクロオキシゲナーゼ−2(COX−2)阻害剤であるフェニル酢酸類およびその誘導体、その製造方法、該化合物を含む医薬組成物、選択的にCOX−2活性を阻害する方法、および本発明の化合物または該化合物を含む医薬組成物を用いて、哺乳動物においてCOX−2阻害に応答する状態を処置する方法に関する。
【発明の概要】
【0002】
本発明は、シクロオキシゲナーゼ−1(COX−1)を有意に阻害することなくCOX−2を阻害する新規のフェニル酢酸類及び誘導体を提供する。従って、本発明は、驚くべき事に、古典的な非ステロイド性抗炎症剤に通常関連する望ましくない副作用(例えば胃腸および腎臓の副作用)を有さない、新規の非ステロイド性抗炎症剤を提供する。
【0003】
本発明の化合物は、従って、選択的COX−2阻害剤として特に有用であるか、あるいは、代謝されて選択的COX−2阻害剤として特に有用である化合物に変換され得る。従って、それらは、慣用のシクロオキシゲナーゼ(COX)阻害剤に関連する望ましくない胃腸の潰瘍を実質的に排除しながら、哺乳動物において、炎症、胸やけ、疼痛、骨関節炎、リウマチ性関節炎、月経困難症、偏頭痛、癌(例えば消化器の癌、例えば大腸癌および黒色腫)、癌性疼痛、急性疼痛、慢性疼痛、神経変性疾患(例えば多発性硬化症、パーキンソン病およびアルツハイマー病)、心血管障害(例えばアテローム動脈硬化症、冠動脈疾患および動脈硬化症)、骨粗鬆症、痛風、急性痛風、喘息、狼瘡、および乾癬を含む、COX−2依存性障害の処置に特に有用である。本発明の化合物はまた、UV吸収剤、特にUV−B吸収剤であり、例えば日焼けの処置および予防のために、例えば日焼け製品において、UV照射をブロックするまたは吸収するのに有用である。
【0004】
本発明の化合物の眼への適用は、眼の炎症、湿性加齢性黄斑変性(wet age-related macular degeneration)、眼の手術(例えばPRKまたは白内障手術)に関連する疼痛を含む眼の疼痛、眼のアレルギー、種々の原因の羞明の処置、線維柱帯網誘発グルココルチコイド応答タンパク質産生の阻害による眼圧の上昇の処置(緑内障における)、およびドライアイ疾患の処置を含む。
【0005】
本発明の化合物は、良性および癌性の腫瘍、増殖およびポリープ、特に上皮細胞誘発性腫瘍を含む、腫瘍、特にプロスタグランジンを生成するまたはCOXを発現する腫瘍の処置に有用である。本発明の化合物は、特に、上記の肝臓、膀胱、膵臓、卵巣、前立腺、子宮頚、肺および胸部の癌、特に胃腸の癌(例えば大腸癌)および皮膚癌(例えば扁平上皮細胞または基底細胞の癌および黒色腫)の処置に有用である。
【0006】
“処置”という用語は、本明細書で用いるとき、例えば腫瘍の処置に関連する治療、臨床的にまたは前臨床的(pre-clinically)に明らかな腫瘍の発症を予防する治療、または悪性細胞の惹起を予防する治療、または前癌性細胞の悪性細胞への進行を阻止するまたは逆転させる治療、ならびに腫瘍増殖または転移の予防または阻害の、治療および予防の双方を含むとして理解されるべきである。本明細書の内容において、本発明は、特に、皮膚癌、例えばUV光曝露後の、例えば太陽光への慢性的な曝露の結果として起こる表皮細胞癌または基底細胞癌の発症を阻害するまたは予防するための、本発明の化合物の使用を含むと理解されるべきである。本化合物は、ヒトまたは他の哺乳動物において用いられ得る。
【0007】
本発明の第1の態様において、式(I):
【化1】

[式中、
Rは、メチルまたはエチルであり;
は、ハロまたはC−Cアルキルであり;
は、C−Cアルキルであり;
は、ハロであり;
上記のRおよびRのC−Cアルキルは、所望により1個以上のハロ基によって置換されている。]
の化合物、その薬学的に許容される塩;およびその薬学的に許容されるエステルを提供する。
【0008】
好ましくは、式(I)の化合物において、Rは、ハロ、メチルまたはエチルである。より好ましくは、それはハロである。あるいは、好ましくは、それはクロロである。
【0009】
好ましくは、式(I)の化合物において、Rは、所望により1個以上のハロ基によって置換されているC−Cアルキルである。より好ましくは、それは、メチル、エチル、イソプロピルまたはトリフルオロメチルである。さらにより好ましくは、それは、メチルである。あるいは、好ましくは、それはトリフルオロメチルである。
【0010】
好ましくは、式(I)の化合物において、Rはクロロまたはフルオロである。
さらにより好ましくは、RおよびRの双方が、クロロおよびフルオロから独立して選択される。
【0011】
好ましくは、該化合物は、下記の化合物から選択される:
5−メチル−2−(2',4'−ジクロロ−3'−メチルアニリノ)フェニル酢酸
5−エチル−2−(2',4'−ジクロロ−3'−メチルアニリノ)フェニル酢酸
5−メチル−2−(2'−フルオロ−3'−トリフルオロメチル−4'−エチルアニリノ)フェニル酢酸
5−エチル−2−(2'−フルオロ−3'−トリフルオロメチル−4'−エチルアニリノ)フェニル酢酸
5−メチル−2−(2'−フルオロ−3'−トリフルオロメチル−4'−メチルアニリノ)フェニル酢酸
5−エチル−2−(2'−フルオロ−3'−トリフルオロメチル−4'−メチルアニリノ)フェニル酢酸
5−メチル−2−(2'−フルオロ−3'−メチル−4'−クロロアニリノ)フェニル酢酸
5−エチル−2−(2'−フルオロ−3'−メチル−4'−クロロアニリノ)フェニル酢酸
5−メチル−2−(2'−フルオロ−3'−エチル−4'−クロロアニリノ)フェニル酢酸
5−エチル−2−(2'−フルオロ−3'−エチル−4'−クロロアニリノ)フェニル酢酸
5−メチル−2−(2',4'−ジクロロ−3'−エチルアニリノ)フェニル酢酸
5−エチル−2−(2',4'−ジクロロ−3'−エチルアニリノ)フェニル酢酸
5−エチル−2−(2'−フルオロ−3'−イソプロピル−4'−クロロアニリノ)フェニル酢酸
5−メチル−2−(2',4'−ジクロロ−3'−メチルアニリノ)フェニル酢酸 ジエチルアミン塩
5−メチル−2−(2',4'−ジクロロ−3'−メチルアニリノ)フェニル酢酸ナトリウム
5−メチル−2−(2',4'−ジクロロ−3'−メチルアニリノ)フェニル酢酸 トロメタミン塩
5−メチル−2−(2',4'−ジクロロ−3'−メチルアニリノ)フェニル酢酸カルシウム 一水和物
5−メチル−2−(2',4'−ジクロロ−3'−メチルアニリノ)フェニル酢酸 リジン塩 一水和物
5−メチル−2−(2',4'−ジクロロ−3'−メチルアニリノ)フェニル酢酸 コリン塩 一水和物
5−メチル−2−(2',4'−ジクロロ−3'−メチルアニリノ)フェニル酢酸カリウム。
【0012】
第2の態様において、本発明は、1種以上の薬学的に許容される担体と組み合わせた、有効量の式(I)の化合物を含む医薬組成物を提供する。
【0013】
第3の態様において、本発明は、哺乳動物において、シクロオキシゲナーゼ−2(COX−2)依存性障害を処置する方法であって、該処置が必要な哺乳動物に、有効量の式(I)の化合物を投与することを含む方法を提供する。
【0014】
第4の態様において、本発明は、哺乳動物において、実質的にシクロオキシゲナーゼ−1活性を阻害することなくCOX−2活性を選択的に阻害する方法であって、該処置が必要な哺乳動物に、COX−2阻害有効量の式(I)の化合物を投与することを含む方法を提供する。
【0015】
第5の態様において、本発明は、哺乳動物において、リウマチ性関節炎、骨関節炎、月経困難症、疼痛、腫瘍または炎症を処置する方法であって、該処置が必要な哺乳動物に、対応する有効量の式(I)の化合物を投与する方法を提供する。
【0016】
第6の態様において、本発明は、リウマチ性関節炎、骨関節炎、月経困難症、疼痛、腫瘍または炎症を処置する医薬の製造における、式(I)の化合物の使用を提供する。
【0017】
第7の態様において、本発明は、COX−2依存性障害の処置に使用するための式(I)の化合物を提供する。
【0018】
第8の態様において、本発明は、上記の式(I)の化合物の製造方法であって、
(a) 式(II)または(III):
【化2】

[式中、
Zは、ブロモまたはヨードであり;
Rは、上で定義した意味を有し;
は、水素、アルカリ金属カチオンまたは低級アルキル、好ましくはイソプロピルであり;
およびRは、低級アルキルであるか、または、RおよびRは、窒素原子と一体となって、モルホリノ、ピペリジノまたはピロリジノを表す。]
の化合物を、式(IV):
【化3】

[式中、R〜Rは、上で定義した意味を有する。]
の化合物と、銅およびヨウ化銅(I)の存在下でカップリングさせて、式(V)または(VI):
【化4】

の化合物を得て、得られた式(V)または(VI)の化合物を加水分解し、式(I)の化合物とする;あるいは
【0019】
(b) 式(VII):
【化5】

[式中、R〜Rは、本明細書で定義した意味を有する。]
の化合物を、酸(例えば酢酸)の反応性官能性誘導体(例えば塩化アセチル)と、Friedel-Craftsアシル化において縮合させ、例えば式(VIII):
【化6】

[式中、R〜Rは本明細書で定義した意味を有する。]
の化合物を得て、次いでそれを加水素分解し、さらに加水分解し、Rが例えばエチルを表す式(I)の化合物を得る;あるいは
【0020】
(c) 式(IX):
【化7】

[式中、RおよびR〜Rは、本明細書で定義した意味を有する。]
のラクタムを、強塩基で加水分解する;そして上記のプロセスにおいて、望ましいならば、干渉する反応性の基を一次的に保護し、次いで得られた本発明の化合物を単離する;そして望ましいならば、得られた化合物を別の本発明の化合物に変換する;そして/あるいは、望ましいならば、本発明の遊離カルボン酸をその薬学的に許容されるエステル誘導体に変換する;そして/あるいは、望ましいならば、得られた遊離酸を塩に変換するか、または、得られた塩を遊離酸または別の塩に変換する;
段階を含む方法を提供する。
【0021】
本明細書に記載された方法で本発明の化合物に変換される出発化合物および中間体において、存在する官能基、例えばアミノ、ヒドロキシおよびカルボキシル基は、所望により、製造有機化学で一般的な慣用の保護基によって保護される。保護されたヒドロキシ、アミノおよびカルボキシル基は、他の望ましくない副反応を起こすことなく、穏やかな条件下で、遊離アミノ、ヒドロキシおよびカルボキシル基に変換され得る基である。例えば、ヒドロキシ保護基は、好ましくはベンジルまたは置換ベンジル基、またはアシル基、例えばピバロイルである。
【0022】
プロセス(a)による式(V)および(VI)の化合物の製造は、ジアリールアミン類のための修飾Ullmann縮合条件下、例えば銅粉末およびヨウ化銅(I)および炭酸カリウムの存在下、所望により不活性な高沸点溶媒中(例えばニトロベンゼン、トルエン、キシレンまたはN−メチルピロリドン)、高温で、例えば100〜200℃の範囲で、好ましくは還流温度で、Nohara, Chem Abstr, Vol. 94, p. 15402x (1951);および Moser et al., J Med Chem, Vol. 33, p. 2358 (1990)に記載された一般的な方法に従って行われる。Zがブロモであるとき、該縮合は、ヨウ化塩(例えばヨウ化カリウム)の存在下で行われる。
【0023】
得られた式(V)のオルト−アニリノフェニルアセトアミドの加水分解は、水性水酸化アルカリ中(例えば6N NaOH中)、アルコール(例えばエタノール、プロパノールおよびブタノール)の存在下、高温で(例えば反応混合物の還流温度で)行われる。
【0024】
式(VI)のエステルの加水分解は、当技術分野で既知の方法に従って、例えば式(V)の化合物について上で記載した塩基性条件下で、あるいは、酸性条件下で、例えばメタンスルホン酸を用いて行われる。
【0025】
式(II)または(III)の出発物質は、一般的に既知であるか、あるいは、当技術分野で既知の方法を用いて、例えばNoharaによる日本特許出願第78/96,434号(1978);米国特許第6,291,523号で記載された方法、および本明細書で例示した方法を用いて製造され得る。
【0026】
例えば、対応するアントラニル酸は、オルト−ジアゾニウム誘導体に変換され、続いてヨウ化アルカリ金属で、酸(例えば硫酸)中で処理し、2−ヨード安息香酸またはその低級アルキルエステルを得る。該エステルを、例えばジボランまたは水素化アルミニウムリチウムで、対応するベンジルアルコールに還元し、該アルコールを、始めに該臭化物に変換し、次いで該ニトリルに変換し、該ニトリルを該酢酸に加水分解し、当技術分野で既知の方法に従って、N,N−ジアルキルアミドに変換し、式(II)の出発物質を得る。
【0027】
あるいは、例えば、ZがBrであり、かつRがシクロプロピルである式(II)の出発物質を、始めに、J Am Chem Soc, Vol. 123, p. 4155 (2001)に記載された方法に従って、例えば2−ブロモ−5−ヨード安息香酸メチルエステルを臭化シクロプロピルで三塩化インジウムの存在下で縮合し、2−ブロモ−5−シクロプロピル安息香酸メチルエステルを得て、それを対応する式(II)の2−ブロモ−5−シクロプロピルフェニルアセトアミドに上記の通り変換することによって製造され得る。
【0028】
さらに、Rが例えばエチルである式(II)の出発物質は、例えば塩化アセチルで、塩化アルミニウムの存在下で、オキソインドールのFriedel-Craftsアセチル化を行い、得られたケトンを、例えば加水素分解によって還元し、続いて得られた5−エチルオキソインドールを加水分解してオルト−アミノ−フェニル酢酸とすることによって製造され得る。例えばヨウ化カリウムの存在下でのジアゾ化により、オルト−ヨード−フェニル酢酸が得られ、これを式(II)のアミドに変換する。
【0029】
式(III)のエステルは、対応する酸から、当技術分野で既知のエステル化法に従って製造される。
式(IV)のアニリンは、当技術分野で既知であるか、または、当技術分野で周知の方法および本明細書で例示した方法に従って製造される。
【0030】
プロセス(b)による、例えば5−エチルまたは5−n−プロピル置換化合物の製造は、Friedel-Craftsアシル化条件下で、例えば塩化アルミニウムの存在下、不活性溶媒(例えば1,2−ジクロロエタン)中で行い、続いて、パラジウム/炭触媒を用いて、好ましくは溶媒として酢酸中で、室温で、約3気圧で加水素分解する。
【0031】
式(VII)の出発物質は、プロセス(a)で一般的に記載された通りに、例えばMoser et al. (1990), 上掲に記載されたRが水素を表す式(II)のアミドから出発して、製造される。
【0032】
プロセス(c)による本発明の化合物の製造は、ラクタムの加水分解についての当技術分野で既知の条件下で、好ましくは水性強塩基で、例えば水性水酸化ナトリウムで、所望により有機性水混和性溶媒(例えばメタノール)の存在下、約50〜100℃の範囲の高温で、米国特許第3,558,690号に一般的に記載された通りに行われ得る。
【0033】
式(IX)のオキソインドール出発物質は、以下によって製造される:
式(X):
【化8】

[式中、RおよびR〜Rは、上で定義した意味を有する。]
のジアリールアミンを、塩化ハロアセチルで、好ましくは塩化クロロアセチルで、有利には高温で、例えば100℃付近で、N−アシル化し、式(XI):
【化9】

[式中、RおよびR〜Rは、上で定義した意味を有する。]
の化合物を得る。式(XI)の化合物の環化は、Friedel-Craftsアルキル化条件下、不活性溶媒(例えばジクロロベンゼン)中、Friedel-Crafts触媒(例えば塩化アルミニウムおよび二塩化エチルアルミニウム)の存在下、高温で、例えば120〜175℃で行われる。
【0034】
式(X)の出発アミンは、Ullmann縮合によって、および当技術分野で既知の他の方法、例えばBuchwaldカップリング反応によって製造され得る。
【0035】
式(I)のカルボン酸のエステルは、カルボン酸(塩形であるかまたは塩基の存在下で)を、エステル化すべきアルコールに対応するハロゲン化物(臭化物または塩化物)、例えばクロロ酢酸ベンジルと、当技術分野で周知の方法に従って、例えば極性溶媒(例えばN,N−ジメチルホルムアミド)中で縮合させることによって製造され、必要ならば得られた生成物をさらに修飾する。例えば、エステル化生成物がそれ自身エステルであるならば、該化合物は、例えば得られたベンジルエステルを加水素分解することによって、カルボン酸に変換され得る。また、エステル化生成物がそれ自身ハロゲン化物であるならば、該化合物は、例えば硝酸銀と反応させることによって、ニトロオキシ誘導体に変換され得る。
【0036】
例えば、式(Ia)の化合物は、好ましくは、上記の式(I)のカルボン酸を、式:
【化10】

[式中、
Xは、脱離基であり;
は、カルボキシ保護基である。]
の化合物と縮合させ、カルボキシ保護形態の式(Ia)の化合物を得て、次に保護基Rを脱保護することによって製造される。
【0037】
エステル化は、当技術分野で既知のエステル化条件下、例えば極性溶媒(例えばN,N−ジメチルホルムアミド)中、室温から約100℃までの範囲の温度で、好ましくは40〜60℃の範囲の温度で、例えば米国特許第5,291,523号に記載された手順に従って行われ得る。
【0038】
式(I)の酸の塩は、好ましくは、アルカリ金属塩、例えばin situで製造され得るナトリウム塩である。
脱離基Xは、好ましくはハロ(例えばクロロもしくはブロモ)、または低級アルキルスルホニルオキシ(例えばメタンスルホニルオキシ)である。
カルボキシ保護基Rは、好ましくはベンジルである。
得られたベンジルエステルは、好ましくは水素で、例えばPd/C触媒の存在下、酢酸中、大気圧またはParr水素化条件下、室温から約50℃の範囲の温度での加水素分解によって、式(Ia)の遊離酸に変換され得る。
【0039】
本発明は、全ての新規出発物質およびその製造方法を含む。
【0040】
最終的に、本発明の化合物は、遊離形態、または塩形成基が存在するならばその塩として得られる。
【0041】
本発明の酸性化合物は、薬学的に許容される塩基(例えば水性水酸化アルカリ金属)で、有利にはエーテル性またはアルコール性溶媒(例えば低級アルカノール)の存在下で、金属塩に変換され得る。得られた塩は、酸で処理することによって遊離化合物に変換され得る。これらの塩または他の塩はまた、得られた化合物の精製に用いられ得る。アンモニウム塩は、適切なアミン、例えばジエチルアミンなどとの反応によって得られる。
【0042】
塩基性基を有する本発明の化合物は、酸付加塩、特に薬学的に許容される塩に変換され得る。これらは、例えば無機酸、例えば鉱酸、例えば硫酸、リン酸またはハロゲン化水素酸;または有機カルボン酸、例えば(C−C)アルカンカルボン酸(例えば非置換であるか、またはハロゲンによって置換されている)、例えば酢酸、例えば飽和または不飽和ジカルボン酸、例えばシュウ酸、コハク酸、マレイン酸またはフマル酸、例えばヒドロキシカルボン酸、例えばグリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸またはクエン酸、例えばアミノ酸、例えばアスパラギン酸またはグルタミン酸;または有機スルホン酸類、例えば(C−C)アルキルスルホン酸、例えばメタンスルホン酸;またはアリールスルホン酸(非置換であるかまたは例えばハロゲンによって置換されている)と形成される。好ましいのは、塩酸と、メタンスルホン酸と、およびマレイン酸と形成される塩である。
【0043】
遊離化合物と、その塩形の化合物の間の密接な関係の観点から、状況が許すかまたは適切である限り、本明細書において、ある化合物について述べるときはいつでも、対応する塩もまた意図している。
【0044】
本化合物(その塩を含む)はまた、その水和物の形態でも得られるか、あるいは結晶化に用いられる他の溶媒を含み得る。
【0045】
本明細書で用いられる一般的な定義は、特記しない限り、本発明の範囲内で下記の意味を有する。
薬学的に許容されるエステルは、好ましくは、加溶媒分解によって、または生理学的条件下で、例えば式(I)の遊離カルボン酸に変換され得るプロドラッグエステル誘導体である。該エステルは、例えば、低級アルキルエステル、例えばメチルエステルまたはエチルエステル;カルボキシ−低級アルキルエステル、例えばカルボキシメチルエステル;ニトロオキシ−またはニトロソオキシ−低級アルキルエステル、例えば4−ニトロオキシブチルまたは4−ニトロソオキシブチルエステルなどである。好ましくは、式(Ia):
【化11】

[式中、R、R、RおよびRは、式(I)について上で定義した意味を有する。]
のフェニルアセトキシ酢酸;およびその薬学的に許容される塩である。
【0046】
薬学的に許容される塩は、金属塩、例えばアルカリ金属塩、例えばナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩またはカルシウム塩;ならびに、例えばアンモニアおよびモノ−またはジ−アルキルアミン類と形成されるアンモニウム塩(例えばジエチルアンモニウム塩);およびアミノ酸と形成される塩(例えばアルギニンおよびヒスチジンの塩)を表す。
【0047】
低級アルキル基は、6個までの炭素原子、好ましくは1〜4個の炭素原子を含み、直鎖であっても分子鎖であってもよく、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソプロピル、イソブチルなどを表し、好ましくはメチルまたはエチルである。低級アルコキシは、メトキシ、エトキシなどである。
【0048】
ハロは、好ましくは、クロロ、ブロモまたはフルオロであり、有利には、クロロまたはフルオロである。
【0049】
本発明の化合物は、選択的COX−2阻害剤またはそのプロドラッグとして有用である。本発明の選択的COX−2阻害剤およびそのプロドラッグは、特に、例えば炎症、胸やけ、疼痛、骨関節炎、月経困難症、リウマチ性関節炎、およびCOX−2の阻害に応答する他の状態の処置に有用であり、典型的に、慣用の非ステロイド性抗炎症剤に関連する望ましくない胃腸の副作用が実質的にない。
【0050】
上記の性質は、in vitro試験およびin vivo試験で、有利には哺乳動物(例えばラット、マウス、イヌ、サル、およびヒト由来および非ヒト由来の単離した細胞または酵素調製物を用いて実証され得る。該化合物は、in vitroで、溶液(例えば水溶液)の形態で適用され、in vivoで、有利には経口で、局所で、または非経腸で(例えば静脈内)で適用され得る。in vitroでの投与量は、約10−5〜10−9molar濃度の範囲であり得る。in vivoでの投与量は、投与経路に依存して、約0.1mg/kgと100mg/kgの間の範囲であり得る。
【0051】
生物学的性質は、当技術分野で周知の試験で、例えば米国特許第6,291,523号に記載された試験で、および本明細書に記載された試験で実証され得る。
【0052】
COX−2阻害は、in vitro 酵素アッセイで、市販のキット(Cayman Chemical Company)を用いて決定され得る。
【0053】
試験化合物(種々の濃度の、緩衝液で希釈したDMSO中の保存溶液)を、30〜50ユニットの精製組換えヒトCOX−2およびヘマクチン(hemactin)(1μM)と共に、30分間25℃でプレインキュベートし、続いて100μMのアラキドン酸および比色分析用基質TMPD(N,N,N',N'−テトラメチル−p−フェニレンジアミン)と共に、5〜7分間25℃でインキュベートし、続いて酸化TMPDの比色測定を590nmで行う。試験化合物存在下のCOX−2活性を、試験化合物のないコントロールにおけるCOX−2活性と比較する。
【0054】
COX阻害はまた、COX−1およびCOX−2の双方の阻害について、in vitroで、細胞アッセイを用いて測定される。
【0055】
COX阻害剤を試験するための細胞アッセイは、当技術分野で周知であり、COX酵素(プロスタグランジン H 合成酵素)が、アラキドン酸からのプロスタグランジン合成において、律速段階を触媒する事実に基づいている。2つの酵素は該反応を触媒する:COX−1は構成型の酵素であるのに対して、COX−2は種々の成長因子およびサイトカインに応答して誘導される。
【0056】
In vitro でのCOX−1およびCOX−2の阻害は、in vitro活性およびCOX−2に対する選択性を評価するために、細胞をベースとするアッセイで、プロスタグランジンEイムノアッセイ(Cayman PGE2 Kit)を用いて測定される。該細胞は、トランスフェクトされてそれぞれ組換えヒトCOX−1または組換えヒトCOX−2の何れかを安定して発現する HEK-293 EBNA細胞を利用する。細胞を、アッセイを行う96ウェル・プレートに播く。両方の細胞株を、化合物希釈液で、37℃で30分間前処理し、次いでアラキドン酸(1μM)を外来性基質として加える。上清を15分後に収集し、PGE生成物をイムノアッセイによって測定する。IC50決定のために、5〜9種の濃度で、それぞれの濃度で1、2または4反復で、化合物を試験する(最高濃度30μM)。それぞれの濃度におけるPGEの平均阻害(化合物で処理していない細胞と比較)を計算し、%平均阻害 vs 対数化合物濃度でプロットし、IC50値を4変数ロジスティック・フィットを用いて計算する。それぞれの酵素における相対的効果を比較して、COX−2の阻害における選択性を評価する。
【0057】
in vitroでのCOX−1およびCOX−2の阻害はまた、血小板中に構成的にCOX−1を発現し、リポ多糖(LPS)(10μg/mL)での処置によって単核細胞中にCOX−2発現を誘発するヒト全血中で測定される。このアッセイにおいて、ヘパリン処理したヒト全血を2個のアリコートに分ける。一番目をTxB産生(COX−1活性の代替インジケーター)の測定に、二番目をPGE産生(COX−2活性の代替)の測定に用いる。血液サンプルを刺激前に試験化合物で1時間前処理する。化合物を、0.1nMから300μMの範囲の最終濃度で、濃度の半対数増加を用いて試験する。トロンボキサンB(TxB)生成の阻害を測定するために、A23187 (50μM)を加え、血液を1時間インキュベートする。LPS(10μg/mL)を添加し、続いて終夜インキュベートした後、PGE産生を測定する。A23187またはLPSと共にインキュベートした後、サンプルを、250×gで、4℃で10分間遠心分離し、血清を集める。血清中に存在するPGEおよびTxBの量を、ケミルミネッセンス酵素イムノアッセイ(Assay Designs Inc. (Ann Arbor, MI))を用いて測定する。それぞれのサンプル中のプロスタグランジンのレベルを、それぞれの濃度の試験化合物によって引き起こされる%阻害に正規化する。それぞれのドナーについての%阻害データをプールし、回帰を用いて4変数ロジスティック関数にフィットさせる。
【0058】
COX−2阻害アッセイでの式(I)の化合物におけるIC50値は、約0.10μM以下である。好ましいのは、COX−1およびCOX−2阻害についてのIC50値の比率が50より大きい化合物であり、有利には、約100〜1000の範囲またはそれ以上である。例えば、下記のIC50値を上記のアッセイに基づいて観察し、1回以上のアッセイを行った平均値を示す。
【表1】

【0059】
COX−2によって生産されるプロスタグランジンE産生の阻害を、in vivoで、ラットのリポ多糖(LPS)誘発皮下空気嚢モデルで測定する。Advances in Inflammation Research, Raven Press (1986); J. Med. Chem., Vol. 39, p. 1846 (1996); J. Pathol., Vol. 141, pp. 483-495; および J. Pathol., Vol. 134, pp. 147-156を参照のこと。
【0060】
メスのルイスラットに麻酔をかけ、次いで背側の空気嚢を、滅菌処理した0.45ミクロンのシリンジ適合フィルターを通した10mlの空気を皮下注射することによって作成する。作成から6日または7日後、滅菌処理されたリン酸緩衝食塩水中に懸濁したLPS(空気嚢当たり5μg)を空気嚢に注射する。LPS誘発の1時間前または2時間以上後に、評価する化合物を胃管栄養法によって投与する。嚢内内容物をLPS誘発後5時間で収集し、嚢内液体中に存在するPGE濃度を酵素イムノアッセイによって測定する。本発明の例、すなわち実施例4(i)の化合物は、1mg/kgの経口投与によって、約50%までPGE産生を阻害する。
【0061】
カラゲナンで誘発されるラットの足の浮腫のアッセイを用いて、OffernessらのNonsteroidal Antiinflammatory Drugs, Lombardino, Ed., John Wiley & Sons, pp. 116-128 (1986)に記載された手順の修飾に従って、抗炎症活性を測定する。
【0062】
Sprague Dawleyラット(200〜225g)を終夜絶食させ、次いで経口で、0.5% メチルセルロースに溶解した化合物を経口で投与する。1時間後、0.1mlの食塩水中1%カラゲナンを、左後ろ足の足底領域に注射し、炎症応答を起こす。カラゲナン投与後3時間で、ラットを安楽死させ、両方の後ろ足を足の生え際で切り落とし、電子天秤で重量を測定する。炎症を起こした足の浮腫の量を、炎症を起こした足(左)の重量から炎症がない足(右)の重量を引くことによって決定する。本化合物による%阻害は、それぞれの動物において、コントロール平均値と比較して増加した足の重量の百分率として決定する。
【0063】
胃の耐容性アッセイを用いて、ラットにおいて、試験化合物の経口投与後4時間で測定し、肉眼で潰瘍を評価する。該試験は次に示した通りに行う:
オスのSprague Dawleyラットを終夜断食させ、0.5%メチルセルロースビークル中の化合物を胃管栄養法によって投与し、4時間後に二酸化炭素吸入によって屠殺する。胃を取り、肉眼で胃の病変部を計数し、ラット1匹当たりの病変部の長さの総量を測定する。それぞれの実験は、次の群を含む(1群当たり5〜6匹のラット):ビークル・コントロール群、試験化合物群および参照化合物としてのジクロフェナク群。
【0064】
データを、1つの群における潰瘍の平均数として、該群の潰瘍の平均長(mm)として、および潰瘍指数(UI)として計算する。
UI=群における潰瘍平均長×潰瘍発生率
ここで、潰瘍発生率は、群中の病変部を有する動物の分数である(100%発生率は1である。)。
【0065】
本発明の例、すなわち実施例の化合物は、本質的に、30mg/kgの経口投与で全く胃潰瘍発生作用がない。
【0066】
腸の透過性に対する効果を測定することによって、腸の耐容性を決定し得る。透過性が増加しないことは、腸の耐容性を示す。
用いられる方法は、Davies et al., Pharm. Res., Vol. 11, pp. 1652-1656 (1994)による手順の修飾であり、経口投与した小腸透過性のマーカーである51Cr−EDTAの排出が、NSAIDによって増加するという事実に基づく。オスのSprague Dawleyラットの群(1群当たり12匹)に、試験化合物またはビークルを胃の挿管によって1回経口投与する。化合物投与の直後に、それぞれのラットに、51Cr−EDTA(ラット当たり5μCi)を胃の挿管によって投与する。該ラットを個別に代謝ケージに入れ、食べ物と水を適宜与える。24時間に亘って尿を集める。51Cr−EDTAの投与後24時間で、ラットを屠殺する。腸の透過性に対する化合物の効果を定量するために、化合物処置ラットの尿中で測定された排出51Cr−EDTAを、ビークル処置ラットの尿中で測定された排出51Cr−EDTAと比較する。相対透過性は、それぞれの尿サンプル中に存在する活性を、バックグランド放射について補正した後、投与された投与量の百分率として計算することによって決定する。
【0067】
ラットで測定される完全フロイントアジュバント(CFA)誘発痛覚過敏を用いて、本発明の化合物の鎮痛活性を決定する。50μlのCFAを左後ろ足に注射する。CFA注射の24時間前に、標準足圧装置(Analgesymeter, Ugo Basile, Milan) を用いて侵害受容閾値を決定する。エンドポイントを、足の引っ込め(withdrawal)またはもがきとする。化合物を0.5%メチルセルロースに溶解し、経口で投与し、さらに侵害受容閾値測定を薬物投与後1時間、3時間および6時間で行う。6匹の各試験群において、ビークルまたは化合物の何れかを投与する。結果を投与前痛覚過敏の%回復として計算する。それぞれの化合物について、投与前痛覚過敏の30%阻害を達成する投与量(D30)を計算し、力価の総概算値を得る。
【0068】
周知のラットの慢性アジュバント関節炎試験において、本発明の化合物の抗関節炎効果を実証し得る。
周知の眼病アッセイ法において、眼の効果を実証し得る。同様に、周知の抗腫瘍動物試験で、抗腫瘍活性を実証し得る。
【0069】
本発明の医薬組成物は、COX−2活性を阻害するための、およびCOX−2依存性障害を処置するための、ヒトを含む哺乳動物への、経腸(例えば経口)、または直腸、経皮、局所、および非経腸投与に適切であり、そして、単独でまたは他の治療薬と組み合わせた有効量の薬理学的に活性な本発明の化合物、および1種以上の薬学的に許容される担体を含む。
【0070】
より特定的には、医薬組成物は、COX−2阻害有効量の、COX−1阻害活性およびそれに由来した副作用が実質的にない本発明の選択的COX−2阻害化合物を含む。
【0071】
本発明の薬理学的に活性な化合物は、経腸または非経腸の何れかの適応に適当な賦形剤または担体と組み合わせたまたは混合した、有効量の本発明の化合物を含む医薬組成物の製造に有用である。好ましいのは、活性成分と、
a) 希釈剤、例えば乳糖、ブドウ糖、ショ糖、マンニトール、ソルビトール、セルロースおよび/またはグリシン;
b) 滑沢剤、例えばシリカ、タルク、ステアリン酸、そのマグネシウム塩またはカルシウム塩、および/またはポリエチレングリコール;
錠剤については、さらに、
c) 結合剤、例えば珪酸アルミニウムマグネシウム、澱粉ペースト、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムおよび/またはポリビニルピロリドン;
所望により、
d) 崩壊剤、例えば澱粉、寒天、アルギン酸またはそのナトリウム塩、または発泡性混合物;および/または
e) 吸収剤、着色料、風味剤および甘味料;
を共に含む、錠剤およびゼラチンカプセルである。
【0072】
注射可能な組成物は、好ましくは、水性等張性溶液または懸濁液であり、坐剤は、有利には、脂肪性エマルジョンまたは懸濁液から製造される。該組成物は、滅菌されていてもよく、そして/またはアジュバント、例えば保存料、安定剤、湿化剤または乳化剤、溶解促進剤、浸透圧調整用塩、および/または緩衝剤を含んでもよい。さらに、それらはまた、他の治療的に有益な物質を含んでもよい。該組成物は、それぞれ、慣用の混合、造粒または被覆法に従って製造され、約0.1〜75%、好ましくは約1〜50%の活性成分を含む。
【0073】
錠剤は、当技術分野で既知の方法に従って、フィルム・コーティングされているか、または腸溶性コーティングされているかの何れかであり得る。
【0074】
経皮適応に適当な製剤は、担体と共に、有効量の本発明の化合物を含む。有益な担体は、宿主の皮膚を通過するのを助ける吸収可能な薬理学的に許容される溶媒を含む。例えば、経皮デバイスは、裏打ち剤、所望により担体と共に本化合物を含む貯蔵部、所望により制御され且つ予め定められた速度で長期間宿主の皮膚へ本化合物を送達するための速度制御障壁、および該デバイスを皮膚へ固定するための手段を含む包帯の形態である。
【0075】
皮膚および眼への局所適応に適当な製剤は、水溶液、懸濁液、軟膏、クリーム、ゲル、または例えばエアゾールなどによる送達のためのスプレー可能な製剤を含む。該局所送達系は、特に、例えば皮膚癌の処置のための、例えば日焼けクリーム、ローション、スプレーなどの予防的使用のための、皮膚の適応に適切である。これに関して、本発明の化合物は、より高い波長での太陽光の通過が可能でありながら、290〜320nmの範囲のUV光を吸収し得ることに注目する。従って、本化合物は、特に、当技術分野で周知の化粧用製剤を含む局所製剤に使用するのに適切である。該製剤は、溶解剤、安定剤、張性増加剤、緩衝剤および保存料を含んでもよい。局所適応に適当な製剤は、例えば、米国特許第4,784,808号に記載された通りに製造され得る。眼の投与のための製剤は、例えば、米国特許第4,829,088号および第4,960,799号に記載された通りに製造され得る。
【0076】
本発明の化合物は、単独でまたは他の治療薬と組み合わせて用いられ得る。例えば、腫瘍(悪性および良性)の処置に関する使用のための適当なさらなる活性な薬物は、例えば、抗癌剤、または国際特許出願第WO 98/16227号に引用された放射線保護剤などを含む。他の適当なさらなる治療薬は、鎮痛剤、例えばNSAID、オキシコドン、コデイン、パラセタモール、イブプロフェン、トラマドール、レボルファノール、プロポキシフェン、ケトロラック、ペンタゾシン、メペリジンなど;筋弛緩剤、例えばベンゾチアジアゾール類、例えばSirdalud(登録商標);また、抗血小板剤、例えばアスピリン、クロピドグレル、チクロピジンなど;また、ビスホスホネート類、例えばゾレドロネート、パミドロネート、リセドロネート、アレンドロネートなど;また、スタチン類、例えばフルバスタチン、アトルバスタチン、ロバスタチン、シンバスタチン、ロスバスタチン、ピタバスタチン、プラバスタチンなど;また、抗酸剤;プロトンポンプ阻害剤、例えばオメプラゾール、エソメプラゾール;カルシウム分解物(calcilytics);カルシトニン、例えば経口カルシトニン;抗IL−1β IgG1/κ抗体;降圧剤、例えばACE阻害剤、アンジオテンシンIIブロッカー、レニン阻害剤を含む。
【0077】
他の活性成分と組み合わせて、本発明の化合物は、他の活性成分と同時に、その前に、またはその後に、同一または異なる投与経路によって別個に、または、同一の医薬組成物中で一緒に、投与され得る。
【0078】
投与される活性な化合物の投与量は、温血動物(哺乳動物)の種、体重、年齢および個別の状態、および投与形態に依存する。約50〜70kgの哺乳動物への経口投与のための単位投与形は、約5mgと500mgの間の活性成分を含み得る。
【0079】
本発明はまた、哺乳動物において、COX−2を阻害するために、および、本明細書で記載した状態、例えば炎症、疼痛、リウマチ性関節炎、骨関節炎、月経困難症、腫瘍および他のCOX−2依存性障害の処置のために、本発明の化合物およびその薬学的に許容される塩、またはその医薬組成物を用いる方法に関する。
【0080】
特定的には、本発明は、実質的にCOX−1活性を阻害することなく、哺乳動物において、選択的にCOX−2活性を阻害する方法であって、該処置が必要な哺乳動物に、COX−2阻害有効量の本発明の化合物を投与することを含む方法に関する。
【0081】
従って、本発明はまた、哺乳動物において、COX−2依存性障害を処置する方法であって、該処置が必要な哺乳動物に、COX−2阻害有効量の本発明の化合物を投与することを含む方法に関する。
【0082】
より特定的には、本発明は、COX−1阻害活性に関連する望ましくない副作用を実質的に排除しながら、哺乳動物において、COX−2依存性障害を処置する方法であって、該処置が必要な哺乳動物に、COX−2阻害有効量の、実質的にCOX−1阻害活性がない本発明の選択的COX−2阻害化合物を投与することを含む方法に関する。
【0083】
より具体的には、本発明は、例えば、哺乳動物において、望ましくない胃腸の潰瘍を起こすことなくリウマチ性関節炎、骨関節炎、疼痛、月経困難症、痛風または炎症を処置する方法であって、該処置が必要な哺乳動物に、対応する有効量の本発明の化合物を投与することを含む方法に関する。
【0084】
下記の実施例は、本発明を説明することを意図しており、本発明を限定するものであると解釈すべきではない。温度は摂氏温度で示される。特記しない限り、全ての蒸留は減圧下、好ましくは約15mmHgと100mmHg(=20〜133mbar)の間で行われる。最終生成物、中間体および出発物質の構造は、標準的な分析法、例えばミクロ分析および分光学的特性決定、例えばMS、IRおよびNMRによって確認される。用いられる略号および商品名は、当技術分野で慣用のものである。典型的なものを以下に示す。
【表2】

【実施例】
【0085】
実施例1
アニリン出発物質
A. 2,4−ジクロロ−3−メチルアニリン
2,4−ジクロロ−3−メチルアニリンは、2,4−ジクロロ−3−メチルニトロベンゼンの還元によって、Tetrahedron, Vol. 53, No. 17, p. 6145 (1997)に記載された手順に従って製造される。
【0086】
B. 2,4−ジクロロ−3−エチルアニリン
AcOH(40.0ml)中の2,4−ジクロロアニリン(42.0g, 260mmol)の溶液に、AcO(80ml)を加える。該反応混合物を50℃まで温め、この温度で1時間撹拌する。該反応物を室温まで冷却し、氷水(500ml)に注ぐ。固体を沈殿し、該混合物をさらに1時間室温で撹拌する。固体を濾過し、水で、そしてヘキサンで洗浄し、空気乾燥し、N−(2,4−ジクロロフェニル)−アセトアミドを得る。
【0087】
THF(300ml)中のN−(4−クロロ−2−フルオロフェニル)−アセトアミド(30.0g, 147mmol)の溶液に、−70℃で、n−BuLi(シクロヘキサン中2.0M, 147ml, 294mmol)を滴下する(反応温度を−60℃未満に保ちながら)。該反応物を、−60と−70℃の間で、2時間撹拌し、1,1,1−トリフルオロ−2−ヨードエタン(46.2g, 220mmol)を−70℃で滴下する。該反応混合物をこの温度でさらに1.5時間撹拌した後、3N HCl溶液(108ml)をゆっくりと加える。該混合物を室温まで昇温し、EtOAc(200ml×3)で抽出する。有機層を合わせ、水で、そして塩水で洗浄し、次いでMgSOで乾燥する。溶媒を除去し、残渣をエーテルおよびヘキサン(1:2, 120ml)中で、1時間撹拌する。固体沈殿物を濾過し、N−(2,4−ジクロロ−3−ヨードフェニル)−アセトアミドを得る。
【0088】
MeOH(100ml)中のN−(2,4−ジクロロ−3−ヨードフェニル)−アセトアミド(40.0g, 121mmol)の溶液に、濃HCl(50ml)を加える。該混合物を撹拌し、18時間還流する。該混合物を冷却し、溶媒を減圧下で除去する(水浴45℃未満)。残渣を氷浴で冷却し、3N NaOH溶液を加え、pHを9と10の間に調節する。該混合物をエーテルで抽出し、MgSOで乾燥する。溶媒を除去し、残渣を、フラッシュ・クロマトグラフィー・カラムで、ヘキサン/エーテルの濃度勾配で精製し、2,4−ジクロロ−3−ヨードアニリンを得る。
【0089】
DME/水(180ml/60ml)中の、2,4−ジクロロ−3−ヨードアニリン(9.0g, 31mmol)の溶液に、ビニルトリボロキシンピリジン錯体(5.0g, 20.8mmol)およびKCO(8.5g, 62.0mmol)を加える。該反応混合物を撹拌し、Nを15分間通気する。テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(1.8g, 1.6mmol)を室温で加え、Nをさらに20分間通気する。該反応混合物を80℃に加熱し、18時間撹拌すると、GC−MSにより反応が完了したことが示される。該混合物を濾過し、エーテル(400ml)で、そして水(50ml)で洗浄する。有機層を分離し、塩水で洗浄し、MgSOで乾燥する。溶媒を除去し、残渣を、フラッシュ・クロマトグラフィー・カラムで、ヘキサン/エーテルの濃度勾配で精製し、2,4−ジクロロ−3−ビニルアニリンを得る。
【0090】
EtOAc(60ml)中の、2,4−ジクロロ−3−ビニルアニリン(4.9g, 26mmol)の溶液に、10% Pd/C(0.50g)を加える。圧力フラスコをHで55psiで充填し、2時間振盪する。過剰のHを除去し、該混合物をセライトのパッドで濾過する。溶媒を除去し、得られた混合物を、フラッシュ・クロマトグラフィー・カラムで、ヘキサン/エーテルの濃度勾配で精製し、2,4−ジクロロ−3−エチルアニリンを得る。
【0091】
C. 2−フルオロ−4−メチル−3−トリフルオロアニリン
DMF(25ml)中の、2−フルオロ−3−トリフルオロメチルアニリン(5.0g, 28mmol)の溶液に、DMF(25ml)中のNBS(5.0g, 28mmol)の溶液を加える。2.5時間後、該反応物をエーテルと飽和水性NaClの層間に分配する。分離した有機相を、新しい飽和水性NaClで2回洗浄し、NaSOで乾燥し、減圧下で濃縮し、4−ブロモ−2−フルオロ−3−トリフルオロメチルアニリンを油状物として得る。
【0092】
上記の臭化物(10.0g, 38.8mmol)、トリメチルボロキシン(4.9g, 38.8mmol)、KCO(16.1g, 116mmol)、およびパラジウム テトラキストリフェニルホスフィン(4.5g, 3.9mmol)を、窒素雰囲気下で加熱する。トリメチルボロキシンの第2のアリコート(4.9g, 38.8mmol)を加え、出発臭化物を消費する。18時間後、冷却した反応物をEtOAcと飽和水性NaClの層間に分配する。分離した有機層を新しい塩水(3×)で洗浄し、NaSOで乾燥し、減圧下で濃縮する。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(EtO/ヘキサン)によって精製し、表題のアニリンを得る。
【0093】
D. 2−フルオロ−4−エチル−3−トリフルオロアニリン
上記の4−ブロモ−2−フルオロ−3−トリフルオロメチルアニリン(5.0g, 19.4mmol)および塩化 トリブチルビニル錫(7.1g, 20.4mmol)を、無水DMF(100ml)に加える。該溶液をNで脱気し、パラジウム テトラキストリフェニルホスフィン(1.5g, 1.3mmol)を加え、該反応物を120℃で18時間加熱する。冷却後、該反応混合物をEtOと飽和水性NaClの層間に分配する。分離したエーテル層を新しい飽和水性NaCl(2×)で洗浄し、NaSOで乾燥し、減圧下で濃縮する。残渣をヘキサン中5%、次いで10%、次いで20% EtOAcで溶出するフラッシュクロマトグラフィーによって精製し、望ましい生成物である2−フルオロ−3−トリフルオロメチル−4−ビニルアニリンを得る。
【0094】
上で製造した2−フルオロ−3−トリフルオロメチル−4−ビニルアニリン(4.0g, 19.4mmol)を、EtOHに溶解し、Nで脱気し、10% Pd/炭(0.5g)を加える。該混合物をParr装置中に入れ、Hで室温で処理する。該反応物をNでフラッシュし、濾過する。濾過パッドを新しいEtOHで洗浄し、濾液を合わせる。濃HCl(6.5ml)を冷却した濾液(0℃)に加えた後、揮発成分を減圧下で除去する。得られた白色の固体をEtOで洗浄し、濾過によって集め、4−エチル−2−フルオロ−3−トリフルオロメチルアニリン塩酸塩を得る。
【0095】
遊離アニリンを、該塩酸塩から、EtOと飽和NaHCO水溶液の層間に分配することによって製造する。分離した有機層を塩水で洗浄し、乾燥し(NaSO)、真空で濃縮し、4−エチル−2−フルオロ−3−トリフルオロメチルアニリンを油状物として得る。
【0096】
E. 4−クロロ−2−フルオロ−3−メチルアニリン
6−クロロ−2−フルオロ−3−メチル安息香酸(10g, 53mmol)に、CHCl(60ml)、DMF(0.5ml)および塩化オキサリル(9.25ml, 106mmol)を加える。該反応混合物を均一になるまで撹拌し、次いで真空で濃縮する。残渣を、氷と36% 水酸化アンモニウムの50:50混合物に注ぎ、6−クロロ−2−フルオロ−3−メチルベンズアミドを得る。
【0097】
上で製造した6−クロロ−2−フルオロ−3−メチルベンズアミドを、MeOHに溶解する。ナトリウム メトキシド(16.1g, 298mmol)を加え、該反応物を還流する。NBS(21.2g, 119mmol)を固体として少しずつ加え、該反応混合物をさらに2時間還流しながら撹拌する。冷却後、揮発成分を減圧下で除去し、残渣をEtOAcと水で希釈する。有機相を分離し、水層を新しいEtOAc(3×)で抽出する。合わせた有機層を乾燥し(MgSO)、濾過し、真空で濃縮し、N−6−クロロ−2−フルオロ−3−メチル−フェニル)カルバミン酸メチルエステルを得る。
【0098】
上で製造したカルバメートを、MeOH(220ml)および水(22ml)に溶解する。水酸化カリウム(31g, 560mmol)を加え、該反応物を12時間還流する。該反応物を室温まで冷却した後、MeOHを減圧下で除去し、残渣を水で希釈し、CHCl(3×)で抽出する。合わせた有機層を乾燥し(MgSO)、濾過し、真空で濃縮する。残渣を、フラッシュクロマトグラフィーによって、ヘキサン中10% EtOAcを用いて精製し、6−クロロ−2−フルオロ−3−メチルアニリンを得る。
【0099】
6−クロロ−2−フルオロ−3−メチル安息香酸(10g, 53mmol)に、CHCl(60ml)、DMF(0.5ml)および塩化オキサリル(9.25ml, 106mmol)を加える。該反応混合物を均一になるまで撹拌し、次いで真空で濃縮する。残渣を、氷:36% 水酸化アンモニウムの50:50混合物に注ぎ、6−クロロ−2−フルオロ−3−メチルベンズアミドを得る。
【0100】
上で製造した6−クロロ−2−フルオロ−3−メチルベンズアミドを、MeOHに溶解する。ナトリウム メトキシド(16.1g, 298mmol)を加え、該反応物を還流する。NBS(21.2g, 119mmol)を固体として少しずつ加え、該反応混合物をさらに2時間還流しながら撹拌する。冷却後、揮発成分を減圧下で除去し、残渣を、EtOAcおよび水で希釈する。有機相を分離し、水層を新しいEtOAc(3×)で抽出する。合わせた有機層を乾燥し(MgSO)、濾過し、真空で濃縮し、N−6−クロロ−2−フルオロ−3−メチル−フェニル)カルバミン酸メチルエステルを得る。
【0101】
上で製造したカルバメートを、MeOH(220ml)および水(22ml)に溶解する。水酸化カリウム(31g, 560mmol)を加え、該反応物を12時間還流する。該反応物を室温まで冷却した後、該MeOHを減圧下で除去し、残渣を水で希釈し、CHCl(3×)で抽出する。合わせた有機層を乾燥し(MgSO)、濾過し、真空で濃縮する。残渣を、フラッシュクロマトグラフィーによって、ヘキサン中10% EtOAcを用いて精製し、6−クロロ−2−フルオロ−3−メチルアニリンを得る。
【0102】
F. 4−クロロ−2−フルオロ−3−エチルアニリン
AcOH(30ml)中の4−クロロ−2−フルオロアニリン(50.0g, 344mmol)の溶液に、AcO(60ml)を加え、該反応物を室温で2時間撹拌する。該混合物を氷水(500ml)に注ぎ、固体沈殿物を得る。該混合物を、室温で、さらに1時間撹拌する。固体を濾過し、水で、そしてヘキサンで洗浄し、次いで空気乾燥し、N−(4−クロロ−2−フルオロフェニル)−アセトアミドを得る。
【0103】
THF(300ml)中の、N−(4−クロロ−2−フルオロフェニル)−アセトアミド(10.0g, 53.3mmol)およびジイソプロピルアミン(7.5ml, 53.3mmol)の溶液を、−78℃で、n−BuLi(ヘキサン中2.5M, 42.6ml, 106.6mmol)を、反応温度を−60℃未満に保ちながら滴下する。2時間後、ヨードエタン(12.4g, 80mmol)を、−78℃で滴下する。該反応混合物を、−78℃で、さらに1.5時間撹拌する。1NのHCl水溶液を、pHが4と5の間に達するまで、ゆっくりと加える。該混合物をEtOAc(200ml×3)で抽出し、有機層を合わせ、水で、そして塩水で洗浄し、次いでMgSOで乾燥する。溶媒を減圧下で除去し、固体残渣を、エーテルおよびヘキサン(1:4, 80ml)中で、1時間撹拌する。濾過した固体を乾燥し、N−(4−クロロ−3−エチル−2−フルオロフェニル)−アセトアミドを得る。
【0104】
MeOH(80ml)中の、N−(4−クロロ−3−エチル−2−フルオロフェニル)−アセトアミド(11.0g, 51.0mmol)の溶液に、濃HCl(40ml)を加えた後、16時間還流する。冷却した反応物から、減圧下で、水浴を45℃未満に維持しながら、溶媒を除去する。残渣を氷浴で冷却した後、3NのNaOH溶液を加え、pHを9と10の間に調節する。該混合物をエーテルで抽出し、MgSOで乾燥する。溶媒を除去し、残渣を、フラッシュクロマトグラフィーで、エーテル/ヘキサンの濃度勾配を用いて精製し、4−クロロ−3−エチル−2−フルオロアニリンを得る。
【0105】
同様に、4−クロロ−3−メチル−2−フルオロアニリンを製造する。
【0106】
G. 4−クロロ−2−フルオロ−3−イソプロピルアニリン
THF(300ml)中の、上で製造したN−(4−クロロ−2−フルオロフェニル)−アセトアミド(12.0g, 64mmol)の溶液に、−78℃で、n−BuLi(シクロヘキサン中2.0M, 64ml, 128mmol)を、反応温度を−60℃未満に保ちながら滴下する。該反応混合物を、−60から−70℃の間で、2時間撹拌し、1,1,1−トリフルオロ−2−ヨードエタン(20.1g, 96mmol)を、−78℃で滴下する。該混合物を、この温度でさらに3時間撹拌する。次いで、1NのHCl溶液(200ml)を、−78℃でゆっくりと加える。該混合物を室温まで昇温し、EtOAc(200ml×3)で抽出する。合わせた有機層を、水で、そして塩水で洗浄し、次いでMgSOで乾燥する。溶媒を除去し、残渣を、エーテルおよびヘキサン(1:2, 120ml)中で、1時間撹拌する。固体を濾過し、N−(4−クロロ−2−フルオロ−3−ヨードフェニル)−アセトアミドを得る。
【0107】
MeOH(80ml)中の、N−(4−クロロ−2−フルオロ−3−ヨードフェニル)−アセトアミド(20.0g, 64mmol)の混合物に、濃HCl(60ml)を加える。該混合物を18時間還流しながら撹拌した後、室温まで冷却し、減圧下、水浴を45℃未満に維持しながら、溶媒を除去する。残渣を氷浴で冷却し、1NのNaOH溶液を加え、pHを9と10の間で調節する。水相をエーテルで抽出し、MgSOで乾燥する。溶媒を除去し、残渣を、フラッシュ・クロマトグラフィー・カラムで、ヘキサン/エーテルの濃度勾配で精製し、4−クロロ−2−フルオロ−3−ヨードアニリンを得る。
【0108】
DME/水(150ml/50ml)中の、4−クロロ−2−フルオロ−3−ヨードアニリン(13.5g, 50mmol)の溶液に、2−プロペンボロン酸(6.4g, 74.6mmol)およびKCO(20.6g, 150mmol)を加える。窒素ガスを15分間通気した後、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(2.8g, 2.5mmol)を、室温で加える。窒素をさらに20分間通気した後、該反応混合物を80℃で18時間加熱する。該混合物をセライトのパッドで濾過し、エーテル(400ml)で、そして水(50ml)で洗浄する。有機層を分離し、塩水で洗浄し、MgSOで乾燥する。溶媒を除去し、残渣を、フラッシュ・クロマトグラフィー・カラムで、ヘキサン/エーテルの濃度勾配で精製し、4−クロロ−3−イソプロペン−2−フルオロアニリンを得る。
【0109】
EtOAc(50ml)中の、4−クロロ−3−イソプロペン−2−フルオロアニリン(4.5g, 24.2mmol)の溶液に、10% Pt/C(0.45g)を加える。圧力フラスコを、Hで、50psiで充填し、室温で4時間振盪する。過剰のHを除去し、該混合物をセライトのパッドで濾過する。溶媒を除去し、得られた混合物を、フラッシュ・クロマトグラフィー・カラムで、ヘキサン/エーテルの濃度勾配で精製し、4−クロロ−3−イソプロパン−2−フルオロアニリンを得る。
【0110】
実施例2
2−ヨードフェニル酢酸エステルおよびフェニルアセトアミド出発物質
例えば、J Med Chem, Vol. 33, pp. 2358-2368 (1990)、米国特許第6,291,523号、および国際出願第WO 99/11605号に従って、対応する安息香酸または2−インドリノンから出発して製造する。例えば、
N,N−ジメチル−5−メチル−2−ヨードフェニルアセトアミド;
N,N−ジメチル−5−エチル−2−ヨードフェニルアセトアミド;
である。
【0111】
実施例3
5−エチル−2−(2'−フルオロ−4'−メチル−3'−トリフルオロメチルアニリノ)フェニル酢酸 N,N−ジメチルアミド
キシレン(6.0ml)中の、N,N−ジメチル−5−エチル−2−ヨードフェニルアセトアミド(2.0g, 6.3mmol)、2−フルオロ−メチル−3−トリフルオロメチルアニリン(2.4g, 12.6mmol)、銅(0.2g, 3.2mmol)、ヨウ化銅(I)(0.6g, 3.2mmol)、およびKCO(0.9g, 6.3mmol)の混合物を、24時間還流する。冷却後、粗製の反応混合物をEtOAcで希釈し、セライト(登録商標)で濾過する。濾液を減圧下で濃縮する。残渣を、ヘキサンで、次いで25%までのEtOAc/ヘキサン混合物で溶出するフラッシュクロマトグラフィーによって精製し、標的化合物5−エチル−2−(2'−フルオロ−4'−メチル−3'−トリフルオロメチルアニリノ)フェニル酢酸 N,N−ジメチルアミドを得る。
【0112】
以下の化合物も同様に製造される:
5−メチル−2−(2'−フルオロ−4'−メチル−3'−トリフルオロメチルアニリノ)フェニル酢酸 N,N−ジメチルアミド
5−メチル−2−(2'−フルオロ−4'−ブロモ−3'−トリフルオロメチルアニリノ)フェニル酢酸 N,N−ジメチルアミド
5−メチル−2−(2',4'−ジクロロ−3'−メチルアニリノ)フェニル酢酸 N,N−ジメチルアミド
5−エチル−2−(2',4'−ジクロロ−3'−メチルアニリノ)フェニル酢酸 N,N−ジメチルアミド
5−メチル−2−(2',4'−ジクロロ−3'−エチルアニリノ)フェニル酢酸 N,N−ジメチルアミド
5−エチル−2−(2',4'−ジクロロ−3'−エチルアニリノ)フェニル酢酸 N,N−ジメチルアミド
5−メチル−2−(2'−フルオロ−4'−クロロ−3'−メチルアニリノ)フェニル酢酸 N,N−ジメチルアミド
5−エチル−2−(2'−フルオロ−4'−クロロ−3'−メチルアニリノ)フェニル酢酸 N,N−ジメチルアミド
5−メチル−2−(2'−フルオロ−4'−クロロ−3'−エチルアニリノ)フェニル酢酸 N,N−ジメチルアミド
5−エチル−2−(2'−フルオロ−4'−クロロ−3'−エチルアニリノ)フェニル酢酸 N,N−ジメチルアミド
5−エチル−2−(2'−フルオロ−4'−クロロ−3'−イソプロピルアニリノ)フェニル酢酸 N,N−ジメチルアミド。
【0113】
実施例4
5−メチル−2−(2'−フルオロ−4'−エチル−3'−トリフルオロメチルアニリノ)フェニル酢酸 N,N−ジメチルアミド
DMF(5ml)中の、実施例3に記載した方法によって製造された5−メチル−2−(2'−フルオロ−4'−ブロモ−3'−トリフルオロメチルアニリノ)フェニル酢酸 N,N−ジメチルアミド(0.8g, 1.7mmol)、Pd(PPh)(0.1g, 0.09mmol)およびビニル トリブチルスタンナン(0.6g, 1.9mmol)を、120℃で、窒素下で終夜加熱する。冷却後、該反応物をEtOAcと飽和NaCl水溶液の層間に分配する。分離した有機層を新しい飽和NaCl水溶液で2回洗浄する。EtOAc層を乾燥し、減圧下で濃縮する。残渣をフラッシュクロマトグラフィーによって精製し、5−メチル−2−(2'−フルオロ−4'−ビニル−3'−トリフルオロメチルアニリノ)フェニル酢酸 N,N−ジメチルアミドを得る。
【0114】
上記のスチレンを以下の条件下で還元する。該スチレンをi−PrOHおよびトルエンに溶解し、10分間脱気する。次いで、CsCO(22mg, 0.07mmol)、[Ir(cod)Cl](44mg, 0.07mmol)およびdppp(27mg, 0.07mmol)を加え、該反応物を80℃で終夜加熱する。冷却した溶液を真空で濃縮し、残渣を、10%、次いで20%、次いで30% EtOAc/ヘキサンで溶出するフラッシュクロマトグラフィーによって精製し、表題の5−メチル−2−(2'−フルオロ−4'−エチル−3'−トリフルオロメチルアニリノ)フェニル酢酸 N,N−ジメチルアミドを得る。
【0115】
実施例5
5a) 5−エチル−2−(2'−フルオロ−4'−メチル−3'−トリフルオロメチルアニリノ)フェニル酢酸
EtOH(25ml)および4NのNaOH(12ml)中の、実施例3に記載した5−エチル−2−(2'−フルオロ−4'−メチル−3'−トリフルオロメチルアニリノ)フェニル酢酸 N,N−ジメチルアミド(0.9g, 2.4mmol)の溶液を、80℃で終夜加熱する。冷却後、該反応物を減圧下で濃縮し、氷冷したEtOAcで希釈する。水層のpHを、1〜2まで、冷却した2.5NのHClで調節する。分離した有機層をNaSOで乾燥し、固体になるまで濃縮する。該固体をEtO/ヘキサン混合物で磨砕することによって精製し、表題の酸、すなわち5−エチル−2−(2'−フルオロ−4'−メチル−3'−トリフルオロメチルアニリノ)フェニル酢酸を得る。
MS m/z 356 (ES+), 354 (ES-)
CHN 実測値 C 60.47, H 4.47, N 3.73
【0116】
以下の化合物も同様に製造される:
5b) 5−メチル−2−(2'−フルオロ−4'−メチル−3'−トリフルオロメチルアニリノ)フェニル酢酸
MS m/z 342 (ES+), 340 (ES-)
CHN 実測値 C 59.56, H 4.36, N 3.91
【0117】
5c) 5−メチル−2−(2'−フルオロ−4'−エチル−3'−トリフルオロメチルアニリノ)フェニル酢酸
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 1.13 (t, J=7.3 Hz, 3 H), 2.27 (s, 3 H), 2.63 - 2.70 (m, 2 H), 3.56 (s, 2 H), 6.87 (t, J=8.6 Hz, 1 H), 7.02 - 7.09 (m, 2 H), 7.12 (s, 1 H), 7.43 (s, 1 H).
MS m/z 356 (ES+), 354 (ES-)
【0118】
5d) 5−エチル−2−(2'−フルオロ−4'−エチル−3'−トリフルオロメチルアニリノ)フェニル酢酸
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 1.17 (t, J=7.5 Hz, 3 H), 1.26 (t, J=7.5 Hz, 3 H), 2.59 (q, J=7.5 Hz, 2 H), 2.89 (q, J=7.1 Hz, 2 H), 3.75 (d, J=22.7 Hz 1 H), 3.83 (d, J=22.7 Hz, 1 H), 6.52 (d, J=8.1 Hz, 1 H), 7.06 (d, J=8.1 Hz, 1 H), 7.23 (s, 1 H), 7.50 (d, J=8.3 Hz, 1 H), 7.79 (t, J=7.8 Hz, 1 H).
MS m/z 370 (ES+), 368 (ES-)
【0119】
5e) 5−メチル−2−(2',4'−ジクロロ−3'−メチルアニリノ)フェニル酢酸
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 2.29 (s, 3 H), 2.41 (s, 3 H), 3.51 (s, 2 H), 6.51 (d, J=8.8 Hz, 1 H), 7.07 - 7.22 (m, 4 H), 12.46 (s, 1 H)
MS m/z 324, 326, 328 (ES+), 322, 324, 326 (ES-)
【0120】
5f) 5−エチル−2−(2',4'−ジクロロ−3'−メチルアニリノ)フェニル酢酸
MS m/z 338, 340, 342 (ES+), 336, 338, 340 (ES-)
CHN 実測値 C 59.97, H 4.71, N 4.12
【0121】
5g) 5−メチル−2−(2',4'−ジクロロ−3'−エチルアニリノ)フェニル酢酸
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 1.14 (t, J=7.5 Hz, 3 H), 2.29 (s, 3 H), 2.88 (q, J=7.5 Hz, 2 H), 3.52 (s, 2 H), 6.52 (d, J=9.0 Hz, 1 H), 7.07 - 7.18 (m, 4 H), 7.25 (s, 1 H), 12.49 (br. s., 1 H)
CHN 実測値 C 60.53, H 5.19, N 3.98
【0122】
5h) 5−エチル−2−(2',4'−ジクロロ−3'−エチルアニリノ)フェニル酢酸
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 1.11 - 1.22 (m, 6 H), 2.52 - 2.63 (m, 4 H), 2.88 (q, J=7.5 Hz, 2 H), 3.54 (s, 2 H), 6.55 (d, J=9.0 Hz, 1 H), 7.11 - 7.15 (m, 3 H), 7.18 (s, 1 H), 7.26 (s, 1 H), 12.50 (br. s., 1 H)
CHN 実測値 C 61.39, H 5.22, N 4.24
【0123】
5i) 5−メチル−2−(2'−フルオロ−4'−クロロ−3'−メチルアニリノ)フェニル酢酸
MS m/z 308 (ES+), 306 (ES-)
CHN 実測値 C 62.16, H 4.79, N 4.49
【0124】
5j) 5−エチル−2−(2'−フルオロ−4'−クロロ−3'−メチルアニリノ)フェニル酢酸
MS m/z 322 (ES+), 320 (ES-)
CHN 実測値 C 63.20, H 5.22, N 4.32
【0125】
5k) 5−メチル−2−(2'−フルオロ−4'−クロロ−3'−エチルアニリノ)フェニル酢酸
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 1.15 (t, J=7.5 Hz, 3 H), 2.27 (s, 3 H), 2.72 (qd, J=7.5, 2.1 Hz, 2 H), 3.54 (s, 2 H), 6.55 (t, J=9.0 Hz, 1 H), 6.98 - 7.07 (m, 3 H), 7.10 (s, 1 H), 7.30 (br. s., 1 H), 12.35 (br. s., 1 H)
MS m/z 322 (ES+), 320 (ES-)
CHN 実測値 C 63.54, H 5.28, N 4.38
【0126】
5l) 5−エチル−2−(2'−フルオロ−4'−クロロ−3'−エチルアニリノ)フェニル酢酸
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 1.12 - 1.20 (m, 6 H), 2.57 (q, J=7.7 Hz, 2 H), 2.68 - 2.76 (m, 2 H), 3.56 (s, 2 H), 6.58 (t, J=9.0 Hz, 1 H), 7.00 (dd, J=9.0, 1.5 Hz, 1 H), 7.04 - 7.10 (m, 2 H), 7.13 (s, 1 H), 7.31 (s, 1 H), 12.36 (s, 1 H)
CHN 実測値 C 64.20, H 5.61, N 4.37
【0127】
5m) 5−エチル−2−(2'−フルオロ−4'−クロロ−3'−イソプロピルアニリノ)フェニル酢酸
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ ppm 1.23 (t, J=7.7 Hz, 3 H), 1.37 (dd, J=7.0, 1.3 Hz, 6 H), 2.62 (q, J=7.7 Hz, 2 H), 3.46 - 3.60 (m, 1 H), 3.68 (s, 2 H), 6.72 (t, J=8.8 Hz, 1 H), 6.92 (dd, J=8.8, 1.8 Hz, 1 H), 7.07 - 7.14 (m, 2 H), 7.23 (d, J=8.1 Hz, 1 H)
CHN 実測値 C 65.08, H 6.16, N 3.84
【0128】
実施例6
6a) 5−メチル−2−(2',4'−ジクロロ−3'−メチルアニリノ)フェニル酢酸 ジエチルアミン塩
6mlのtert−ブチルメチルエーテル(TBME)中の、600mgの5−メチル−2−(2',4'−ジクロロ−3'−メチルアニリノ)フェニル酢酸(1.85mmol)の懸濁液を、40℃で加熱する。137mgのジエチルアミン(1.85mmol)を滴下する。得られた僅かに濁った溶液を、Whatmanガラスファイバー・フィルターで熱濾過することによって澄明とする。フィルターを2mlの40℃のTBMEで濯ぐ。濾液をゆっくりと放冷する。該溶液に30℃で種晶を加え、結晶化を起こす。該懸濁液を、室温で約15時間、次いで0℃で2時間撹拌する。スラリーを濾過し、フィルターケーキを、0℃の4.5mlのTBMEで洗浄する。該結晶を、50℃で、約10mbarで4時間乾燥し、白色の粉末を得る。
m.p. 115〜116℃.
【0129】
6b) 5−メチル−2−(2',4'−ジクロロ−3'−メチルアニリノ)フェニル酢酸ナトリウム
4mlのアセトン中の、400mgの5−メチル−2−(2',4'−ジクロロ−3'−メチルアニリノ)フェニル酢酸(1.23mmol)の懸濁液を、50℃に加熱する。得られたほとんど澄明な溶液を、Whatmanガラスフィルターで熱濾過することによって澄明とする。該フィルターを2mlの50℃のアセトンで濯ぐ。165mgの30%水酸化ナトリウム水溶液(1.23mmol)を、50℃で加える。該溶液を室温まで放冷し、約25℃で種晶を加える。結晶化が非常にゆっくりと起こる。該懸濁液を、室温で約15時間、次いで0℃で2時間撹拌する。濾過後、97mgのみの湿った結晶が得られる。結晶および母液を合わせて、6mlの酢酸イソプロピルを撹拌しながら滴下する。濃厚な懸濁液を濾過し、該固体を酢酸イソプロピルで洗浄する。該塩を、始めに50℃/約10mbarで2時間、次いで80℃で約10mbarで16時間乾燥し、該塩を白色の粉末として得る。
m.p. 254〜255℃.
水分含量:2.31% m/m
【0130】
6c) 5−メチル−2−(2',4'−ジクロロ−3'−メチルアニリノ)フェニル酢酸 トロメタミン塩
13mlのアセトン中の、1.30gの5−メチル−2−(2',4'−ジクロロ−3'−メチルアニリノ)フェニル酢酸(4.01mmol)の懸濁液を、55℃に加熱する。得られたほとんど澄明な溶液を、Whatmanガラスフィルターで熱濾過することによって澄明とする。該フィルターを2.6mlの50℃のアセトンで濯ぐ。1mlの水中の、0.487gのトロメタミン(Trisma塩基)(4.01mmol)の溶液を、50℃で滴下する。滴下漏斗を0.5mlの水で濯ぐ。該溶液を室温まで放冷し、約40℃で種晶を加える。次いで結晶化が起こる。該懸濁液を、室温で約15時間、次いで0℃で2時間撹拌する。該スラリーを濾過し、該固体を6mlのアセトンで洗浄する。該塩を、始めに50℃/約10mbarで2時間、次いで80℃で約10mbarで16時間乾燥し、該塩を白色の粉末として得る。
m.p. 156〜157℃, DSC 162.0℃,
融解エンタルピー 132J/g。
【0131】
【表3】

【0132】
6d) 5−メチル−2−(2',4'−ジクロロ−3'−メチルアニリノ)フェニル酢酸カルシウム 一水和物
13mlのアセトン中の、1.30gの5−メチル−2−(2',4'−ジクロロ−3'−メチルアニリノ)フェニル酢酸(4.01mmol)の懸濁液を、55℃に加熱する。0.535gの30%水酸化ナトリウム水溶液(4.01mmol)を加える。得られたほとんど澄明な溶液を、Whatmanガラスファイバー・フィルターで50℃で濾過することによって澄明とする。該フィルターを3.9mlの50℃のアセトンで濯ぐ。次いで1mlの水中の0.51gの塩化カルシウム(4.41mmol)の溶液を、50℃で滴下する。滴下漏斗を0.5mlの水で濯ぐ。得られた濃厚な懸濁液を室温まで放冷する。さらに7mlの水を、25℃で加える。該混合物を室温で1時間撹拌し、濾過する。フィルターケーキを、20mlのアセトン/水 2:1(v/v)で、次いで5mlのアセトンで洗浄する。結晶性固体を50℃で/約10mbarで2時間、次いで80℃で約10mbarで16時間乾燥する。該塩にはまだ幾らかの塩化ナトリウムが混入しているので、該結晶を13.5mlの水および1.5mlのアセトン中に懸濁し、該懸濁液を室温で1時間撹拌する。濾過後、フィルターケーキを、8mlの水/アセトン 9:1(v/v)を4回に分けて洗浄する。該塩を、始めに50℃で/約10mbarで2時間乾燥し、次いで80℃で約10mbarで16時間乾燥し、白色の粉末を得る。
m.p. 278〜279℃, DSC 147.1 / 224.2℃,
融解エンタルピー 121 / 2 J/g
水分含量:2.63% m/m
【0133】
【表4】

【0134】
6e)5−メチル−2−(2',4'−ジクロロ−3'−メチルアニリノ)フェニル酢酸 リジン塩一水和物
4mlのアセトン中の、400mgの5−メチル−2−(2',4'−ジクロロ−3'−メチルアニリノ)フェニル酢酸(1.23mmol)の懸濁液を、50℃に加熱する。得られたほとんど澄明な溶液を、Whatmanガラスファイバー・フィルターで熱濾過することによって澄明とする。該フィルターを4mlの50℃のアセトンで濯ぐ。1mlの水中の184mgのリジン(1.23mmol)の溶液を滴下する。得られた濃厚な懸濁液を50℃で30分間維持し、次いで室温まで放冷する。さらに該混合物を約25℃で終夜撹拌し、濾過する。フィルターケーキを6mlのアセトンで洗浄する。該結晶を、始めに50℃で/約10mbarで2時間、次いで80℃で約10mbarで16時間乾燥し、白色の粉末を得る。
m.p. 162〜163℃
水分含量:3.80 % m/m
【0135】
6f) 5−メチル−2−(2',4'−ジクロロ−3'−メチルアニリノ)フェニル酢酸 コリン塩一水和物
4mlのアセトン中の、400mgの5−メチル−2−(2',4'−ジクロロ−3'−メチルアニリノ)フェニル酢酸(1.23mmol)の懸濁液を、50℃に加熱する。水中の305mgのコリン(1.23mmol)の50%溶液を加える。得られたほとんど澄明な溶液を、Whatmanガラスファイバー・フィルターで熱濾過することによって澄明とする。該フィルターを2mlの50℃のアセトンで濯ぐ。6mlのtert−ブチルメチルエーテル(TBME)を、40℃で、濾液にゆっくりと加える。僅かに濁った溶液を放冷し、25℃で種晶を加える。結晶化は非常にゆっくり起こる。該混合物を室温で終夜撹拌する。16時間後、12mlのさらなるTBMEを滴下する。濃厚な懸濁液を25℃でさらに2時間撹拌し、濾過する。該固体を6mlのTBME/アセトン 9/1(v/v)で洗浄し、50℃で約10mbarで4時間乾燥し、白色の粉末を得る。
m.p. 105〜106℃
水分含量:4.55 % m/m
【0136】
6g) 5−メチル−2−(2',4'−ジクロロ−3'−メチルアニリノ)フェニル酢酸カリウム
アセトン中の5−メチル−2−(2',4'−ジクロロ−3'−メチルアニリノ)フェニル酢酸(15.42mmol)の懸濁液を還流温度で加熱し、約55℃で10分間撹拌する。得られた溶液を50℃まで少し冷却し、Whatmanガラスファイバー・フィルターで熱濾過する。該フィルターをアセトンで50℃で洗浄する。濾液を50℃に加熱し、水酸化カリウム(45%)(14.65mmol)(0.95当量)および水の混合物を、約15分かけて滴下する。滴下漏斗を水およびアセトンで濯ぐ。得られた懸濁液を50℃で30分間撹拌する。次いで該スラリーを25℃まで約2時間かけて放冷する。該懸濁液を室温で終夜撹拌し、濾過する。該フィルターケーキを3回洗浄する。該結晶を、始めに50℃/10mbarで3時間、次いでさらに80℃/10 mbarで17時間乾燥し、白色の粉末を得る。
m.p. 315〜317℃, 326.9℃,
融解エンタルピー 29 J/g.
【0137】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

[式中、
Rは、メチルまたはエチルであり;
は、ハロまたはC−Cアルキルであり;
は、C−Cアルキルであり;
は、ハロであり;
上記のRおよびRのC−Cアルキルは、所望により1個以上のハロ基によって置換されている。]
の化合物、その薬学的に許容される塩;およびその薬学的に許容されるエステル。
【請求項2】
がハロである、請求項1に記載した化合物。
【請求項3】
がメチルまたはエチルである、請求項1または請求項2に記載した化合物。
【請求項4】
がハロである、請求項1〜3の何れか1項に記載した化合物。
【請求項5】
およびRが、それぞれ、クロロおよびフルオロから独立して選択される、請求項1〜4の何れか1項に記載した化合物。
【請求項6】
下記の化合物から選択される、請求項1〜5の何れか1項に記載した化合物:
5−メチル−2−(2',4'−ジクロロ−3'−メチルアニリノ)フェニル酢酸
5−エチル−2−(2',4'−ジクロロ−3'−メチルアニリノ)フェニル酢酸
5−メチル−2−(2'−フルオロ−3'−トリフルオロメチル−4'−エチルアニリノ)フェニル酢酸
5−エチル−2−(2'−フルオロ−3'−トリフルオロメチル−4'−エチルアニリノ)フェニル酢酸
5−メチル−2−(2'−フルオロ−3'−トリフルオロメチル−4'−メチルアニリノ)フェニル酢酸
5−エチル−2−(2'−フルオロ−3'−トリフルオロメチル−4'−メチルアニリノ)フェニル酢酸
5−メチル−2−(2'−フルオロ−3'−メチル−4'−クロロアニリノ)フェニル酢酸
5−エチル−2−(2'−フルオロ−3'−メチル−4'−クロロアニリノ)フェニル酢酸
5−メチル−2−(2'−フルオロ−3'−エチル−4'−クロロアニリノ)フェニル酢酸
5−エチル−2−(2'−フルオロ−3'−エチル−4'−クロロアニリノ)フェニル酢酸
5−メチル−2−(2',4'−ジクロロ−3'−エチルアニリノ)フェニル酢酸
5−エチル−2−(2',4'−ジクロロ−3'−エチルアニリノ)フェニル酢酸
5−エチル−2−(2'−フルオロ−3'−イソプロピル−4'−クロロアニリノ)フェニル酢酸
5−メチル−2−(2',4'−ジクロロ−3'−メチルアニリノ)フェニル酢酸 ジエチルアミン塩
5−メチル−2−(2',4'−ジクロロ−3'−メチルアニリノ)フェニル酢酸ナトリウム
5−メチル−2−(2',4'−ジクロロ−3'−メチルアニリノ)フェニル酢酸 トロメタミン塩
5−メチル−2−(2',4'−ジクロロ−3'−メチルアニリノ)フェニル酢酸カルシウム 一水和物
5−メチル−2−(2',4'−ジクロロ−3'−メチルアニリノ)フェニル酢酸リジン塩一水和物
5−メチル−2−(2',4'−ジクロロ−3'−メチルアニリノ)フェニル酢酸 コリン塩 一水和物。
【請求項7】
1種以上の薬学的に許容される担体と組み合わせた、有効量の請求項1〜6の何れか1項に記載した化合物を含む医薬組成物。
【請求項8】
哺乳動物において、シクロオキシゲナーゼ−2(COX−2)依存性障害の処置方法であって、該処置が必要な哺乳動物に、有効量の請求項1に記載した化合物を投与することを含む方法。
【請求項9】
哺乳動物において、実質的にシクロオキシゲナーゼ−1活性を阻害することなく、選択的にCOX−2活性を阻害する方法であって、該阻害が必要な哺乳動物に、COX−2阻害有効量の請求項1に記載した化合物を投与することを含む方法。
【請求項10】
哺乳動物において、リウマチ性関節炎、骨関節炎、月経困難症、疼痛、腫瘍または炎症を処置する方法であって、該処置が必要な哺乳動物に、対応する有効量の請求項1に記載した化合物を投与する方法。
【請求項11】
リウマチ性関節炎、骨関節炎、月経困難症、疼痛、腫瘍または炎症を処置する医薬の製造における、請求項1〜7の何れか1項に記載した化合物の使用。
【請求項12】
COX−2依存性障害の処置に使用するための、請求項1〜7の何れか1項に記載した化合物。
【請求項13】
請求項1の式(I)の化合物の製造方法であって、
(a) 式(II)または(III):
【化2】

[式中、
Zは、ブロモまたはヨードであり;
Rは、請求項1で定義した意味を有し;
は、水素、アルカリ金属カチオンまたは低級アルキル、好ましくはイソプロピルであり;
およびRは、低級アルキルであるか、または、RおよびRは、窒素原子と一体となって、モルホリノ、ピペリジノまたはピロリジノを表す。]
の化合物を、式(IV):
【化3】

[式中、R〜Rは、請求項1で定義した意味を有する。]
の化合物と、銅およびヨウ化銅(I)の存在下でカップリングさせて、式(V)または(VI):
【化4】

の化合物を得て、得られた式(V)または(VI)の化合物を加水分解し、式(I)の化合物とする;あるいは
(b) 式(VII):
【化5】

[式中、R〜Rは、請求項1および本請求項で定義した意味を有する。]
の化合物を、酸(例えば酢酸)の反応性官能性誘導体(例えば塩化アセチル)と、Friedel-Craftsアシル化において縮合させ、例えば式(VIII):
【化6】

[式中、R〜Rは、請求項1および本請求項で定義した意味を有する。]
の化合物を得て、次いでそれを加水素分解し、さらに加水分解し、Rが例えばエチルを表す式(I)の化合物を得る;あるいは
(c) 式(IX):
【化7】

[式中、RおよびR〜Rは、請求項1で定義した意味を有する。]
のラクタムを、強塩基で加水分解する;そして上記のプロセスにおいて、望ましいならば、干渉する反応性の基を一次的に保護し、次いで得られた本発明の化合物を単離する;そして望ましいならば、得られた化合物を別の本発明の化合物に変換する;そして/あるいは、望ましいならば、本発明の遊離カルボン酸をその薬学的に許容されるエステル誘導体に変換する;そして/あるいは、望ましいならば、得られた遊離酸を塩に変換するか、または、得られた塩を遊離酸または別の塩に変換する;
段階を含む方法。

【公表番号】特表2009−541487(P2009−541487A)
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−518480(P2009−518480)
【出願日】平成19年6月25日(2007.6.25)
【国際出願番号】PCT/US2007/071979
【国際公開番号】WO2008/002853
【国際公開日】平成20年1月3日(2008.1.3)
【出願人】(597011463)ノバルティス アクチエンゲゼルシャフト (942)
【Fターム(参考)】