DC−DCコンバータ回路
【課題】迅速なモード切換処理を行うことができる上、従来よりも半導体素子の導通損を低減でき、これにより電力変換効率を向上させることができるDC−DCコンバータ回路を提供する。
【解決手段】DC−DCコンバータ回路10は、半導体スイッチS1,S2,S4〜S6と、ダイオードD3と、インダクタLとを備え、半導体スイッチS1,S2及びダイオードD3は、何れもインダクタLの一端に接続されており、半導体スイッチS4〜S6は、何れもインダクタLの他端に接続されており、半導体スイッチS1,S4のインダクタLの接続端とは反対側端に第1電圧源E1が接続され、半導体スイッチS2,S5のインダクタLの接続端とは反対側端に第2電圧源E2が接続され、ダイオードD3及び半導体スイッチS6のインダクタLの接続端とは反対側端に第1電圧源E1と第2電圧源E2との双方が接続される。
【解決手段】DC−DCコンバータ回路10は、半導体スイッチS1,S2,S4〜S6と、ダイオードD3と、インダクタLとを備え、半導体スイッチS1,S2及びダイオードD3は、何れもインダクタLの一端に接続されており、半導体スイッチS4〜S6は、何れもインダクタLの他端に接続されており、半導体スイッチS1,S4のインダクタLの接続端とは反対側端に第1電圧源E1が接続され、半導体スイッチS2,S5のインダクタLの接続端とは反対側端に第2電圧源E2が接続され、ダイオードD3及び半導体スイッチS6のインダクタLの接続端とは反対側端に第1電圧源E1と第2電圧源E2との双方が接続される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DC−DCコンバータ回路に関するものであり、特に、双方向昇降圧形DC−DCコンバータ回路における導通損低減に関するものである。
【背景技術】
【0002】
DC−DCコンバータ回路は、例えば、第1及び第2直流電圧源(以下、単に第1及び第2電圧源という)の間に接続され、第1及び第2電圧源の出力電圧に基づき、第1電圧源から第2電圧源に電力を供給したり、或いは、第2電圧源から第1電圧源に電力を供給したりすることが可能な双方向形のスイッチング回路として用いられる。
【0003】
例えば、DC−DCコンバータ回路は、作業車両などの電動車両に用いられることがある。電動車両は、一般的に、バッテリやキャパシタ等の蓄電装置からの直流電力をインバータ回路等の電力変換回路にて交流電力に変換して得られた交流電力でモータ等の車両駆動電動機を作動させるようになっている。そして、DC−DCコンバータ回路は、第1電圧源として作用する蓄電装置と、インバータ回路等の電力変換回路が接続された第2電圧源との間に設けられ、力行モード時には蓄電装置から電力変換回路に電力を供給する一方、回生モード時には電力変換回路から蓄電装置に電力を供給することが可能な構成とされている。
【0004】
従来のDC−DCコンバータ回路として、例えば、下記特許文献1に記載のチョッパ回路(特許文献1の図1参照)がある。
【0005】
図10は、従来のDC−DCコンバータ回路の一例を示す回路図である。図10に示すDC−DCコンバータ回路は、第1から第4までの半導体スイッチ121〜124と、第1から第4までのダイオード125〜128と、インダクタ129とを備えている。
【0006】
第1から第4半導体スイッチ121〜124は、何れも一方向にのみ電流を流すことができる半導体デバイスである。第1及び第2ダイオード125,126は、それぞれ、第1及び第2半導体スイッチ121,122に対して電流を流すことができる方向を逆にしてそれぞれ並列接続されており、第1半導体スイッチ121に並列接続された第1ダイオード125のカソード側と、第2半導体スイッチ122に並列接続された第2ダイオード126のアノード側とが接続されている。
【0007】
第3半導体スイッチ123の電流流入側と第1半導体スイッチ121に並列接続された第1ダイオード125のカソード側とが接続されており、第4ダイオード128のカソード側と第2半導体スイッチ122に並列接続された第2ダイオード126のアノード側とが接続されている。
【0008】
インダクタ129は、一端が第3半導体スイッチ123の電流流出側及び第3ダイオード127のカソード側の双方に接続され、かつ、他端が第4ダイオード128のアノード側及び第4半導体スイッチ124の電流流入側の双方に接続されている。
【0009】
そして、図10に示すDC−DCコンバータ回路は、第1半導体スイッチ121に並列接続された第1ダイオード125のアノード側と第3ダイオード127のアノード側との間に第1電圧源110が接続され、第2半導体スイッチ122に並列接続された第2ダイオード126のカソード側と第4半導体スイッチ124の電流流出側との間に第2電圧源120が接続されるようになっている。
【0010】
このような従来のDC−DCコンバータ回路では、各半導体スイッチ121〜124のオン状態及びオフ状態を示す動作モードとして、次の力行モード及び回生モードを例示できる。
【0011】
図11は、図10に示すDC−DCコンバータ回路において力行モードで動作している状態を示す図である。
【0012】
力行モードは、例えば、図11に示すように、第1電圧源110から第1ダイオード125、第3半導体スイッチ123、インダクタ129及び第4半導体スイッチ124を経て第1電圧源110に戻る電流経路Raを形成するモードとされている。
【0013】
また、図12は、図10に示すDC−DCコンバータ回路において回生モードで動作している状態を示す図である。
【0014】
回生モードは、例えば、図12に示すように、第1電圧源110から第3ダイオード127、インダクタ129及び第4ダイオード128及び第1半導体スイッチ121を経て第1電圧源110に戻る電流経路Rbを形成するモードとされている。
【0015】
このような従来のDC−DCコンバータ回路では、力行モードの電流経路Ra及び回生モードの電流経路Rbにおいて、インダクタ129に流れる電流の向きを一定方向にしている。こうすることで、各半導体スイッチ121〜124のオン状態及びオフ状態の動作切換により力行モードと回生モードとのモード切換を行う場合において、インダクタ129に流れる電流を反転させることがないので、その分、モード切換に要する時間を削減でき、迅速なモード切換処理を行うことができる。しかし、第1電圧源110の出力電圧V1が第2電圧源120の出力電圧V2よりも大きい場合には、第1及び第2ダイオード125,126がオン状態となり、出力電圧V1と出力電圧V2とが等しくなるため、第2電圧源120の出力電圧V2を第1電圧源110の出力電圧V1以下に降圧することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2007−151311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
ところで、DC−DCコンバータ回路においては、電流が通過する半導体素子の数が多くなれば、それだけ導通損が大きくなり、それに伴って電力変換効率が低下する。
【0018】
図10に示す従来のDC−DCコンバータ回路では、半導体素子として、例えば、力行モード(図11参照)で第1ダイオード125及び第3半導体スイッチ123及び第4半導体スイッチ124に電流が通過することになる。また、回生モード(図12参照)で第3ダイオード127、第4ダイオード128及び第1半導体スイッチ121に電流が通過することになる。つまり、力行モード及び回生モードの何れのモードにおいても、少なくとも三つの半導体素子に対して電流が通過するため、それだけ導通損が大きくなり、それに伴って電力変換効率が低下する。
【0019】
そこで、本発明は、力行モードと回生モードとの迅速なモード切換処理を行うことができる上、従来よりも半導体素子の導通損を低減でき、これにより電力変換効率を向上させることができるDC−DCコンバータ回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、前記課題を解決するために、それぞれが一方向に電流を流すことができる第1、第2、第4、第5及び第6の半導体スイッチと、第3のダイオードと、インダクタとを備え、前記第1及び第2の半導体スイッチと、前記第3のダイオードとは、何れも前記インダクタの一端に対して電流が流入する向きに接続されており、前記第4から第6までの半導体スイッチは、何れも前記インダクタの他端に対して電流が流出する向きに接続されており、前記第1及び第4の半導体スイッチの前記インダクタの接続端とは反対側端に第1電圧源の陽極側が接続され、前記第2及び第5の半導体スイッチの前記インダクタの接続端とは反対側端に第2電圧源の陽極側が接続され、前記第3のダイオード及び前記第6の半導体スイッチの前記インダクタの接続端とは反対側端に前記第1電圧源の陰極側と前記第2電圧源の陰極側との双方が接続されることを特徴とするDC−DCコンバータ回路を提供する。
【0021】
本発明に係るDC−DCコンバータ回路によれば、前記第1電圧源と前記第2電圧源との間で双方向に出力電圧の昇降圧を行うことができる。また、前記第1電圧源と前記第2電圧源との間で双方向に電力を供給することができる。さらに、前記インダクタに流れる電流の向きを一定方向にすることができる。こうすることで、前記各半導体スイッチのオン状態及びオフ状態の動作切換により力行モードと回生モードとのモード切換を行う場合において、前記インダクタに流れる電流を反転させることがないので、その分、モード切換に要する時間を削減でき、迅速なモード切換処理を行うことができる。しかも、少なくとも二つの半導体素子(従来に比べて3分の2の半導体素子)に対して電流を通過させることができ、それだけ導通損を低減でき、これにより電力変換効率を向上させることができる。なお、この作用効果については、以下の実施の形態で詳しく説明する。
【0022】
ところで、インバータ回路等の電力変換回路に利用されているモジュールとして、二つの逆導通形の半導体素子を直列接続して一体的に形成したモジュール(いわゆる2in1モジュール)が市販されている。本発明に係るDC−DCコンバータ回路おいて、電力容量等の設計仕様によっては、この2in1モジュールを用いることが好ましい場合がある。
【0023】
かかる観点から、本発明に係るDC−DCコンバータ回路において、2in1モジュールを適用できる回路を構成することが可能な態様として、前記第1、第2、第4、第5及び第6の半導体スイッチが、それぞれ、電流をオン,オフ制御できる方向とは逆の方向に電流を流せるように前記第1、第2、第4、第5及び第6の半導体スイッチに並列接続された第1、第2、第4、第5及び第6のダイオードと、前記第1、第2、第4、第5及び第6の半導体スイッチと前記インダクタとの間に、それぞれ、前記第1、第2、第4、第5及び第6のダイオードと逆方向に電流を流すことができるように接続された第7、第8、第10、第11及び第12までのダイオードとをさらに備えている態様を例示できる。
【0024】
なお、前記半導体スイッチとしては、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)及びGTO(Gate Turn-Off thyristor)等の半導体スイッチを例示できる。前記逆導通形の半導体素子としては、IGBT、GTO等の半導体スイッチに対して電流を流すことができる方向を逆にしてダイオードを並列接続した半導体素子、MOSFET等のように半導体の構造的に寄生ダイオード(または、ボディダイオード)が存在する半導体素子を例示でき、例えば、逆導通形のIGBT素子、逆導通形のMOSFET素子、逆導通形のGTO素子を挙げることができる。
【0025】
また、各半導体スイッチに対して、それぞれ、ゲートドライブ電源を用いてもよいが、電力容量等の設計仕様によっては、半導体スイッチに対して共通のゲートドライブ電源を用いてゲートドライブ電源の個数を削減することが好ましい場合がある。
【0026】
かかる観点から、本発明に係るDC−DCコンバータ回路において、ゲートドライブ電源の個数を削減できる回路を構成することが可能な態様として、前記第1及び第2の半導体スイッチが、それぞれ、電流をオン,オフ制御できる方向とは逆の方向に電流を流せるように前記第1及び第2の半導体スイッチに並列接続された第1及び第2のダイオードと、前記第1の半導体スイッチと前記第1電圧源の陽極側との間に、前記第1のダイオードと逆の方向に電流を流すことができるように接続された第4のダイオードと、前記第2の半導体スイッチと前記第2電圧源の陽極側との間に、前記第2のダイオードと逆の方向に電流を流すことができるように接続された第5のダイオードとをさらに備えている態様を例示できる。
【0027】
また、高電圧による前記第1から第6までの半導体スイッチの破壊を防止する観点からは、本発明に係るDC−DCコンバータ回路において、次の(a)から(c)までの態様にすることが好ましい。すなわち、
(a)の態様として、前記インダクタに電流が流れている場合は、前記第4から第6までの半導体スイッチのうちの1個以上の半導体スイッチを常時オン状態とするための手段を備える態様を例示できる。
【0028】
(b)の態様として、前記インダクタに電流が流れている場合は、前記第4から第6までの半導体スイッチのうちの一つ又は二つの半導体スイッチをオフ状態とする前に、前記第4から第6までの半導体スイッチのうちの該オフ状態とする半導体スイッチ以外の半導体スイッチの少なくとも一つを事前にオン状態とするための手段を備える態様を例示できる。
【0029】
(c)の態様として、前記インダクタに電流が流れている状態で、前記第1、第2、第4、第5及び第6の半導体スイッチのオン状態及びオフ状態を示す動作モードを変更する場合においては、変更前の動作モードでオン状態としている全ての半導体スイッチを動作モードの変更後も一定時間オン状態とするための手段、または、変更後の動作モードでオン状態にする全ての半導体スイッチを動作モードの変更前に一定時間オン状態とするための手段を備える態様を例示できる。
【発明の効果】
【0030】
以上説明したように、本発明によると、力行モードと回生モードとの迅速なモード切換処理を行うことができる上、従来よりも半導体素子の導通損を低減でき、これにより電力変換効率を向上させることができるDC−DCコンバータ回路を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施の形態に係るDC−DCコンバータ回路を示す回路図である。
【図2】図1に示すDC−DCコンバータにおいて力行モードで動作している状態を示す図であって、図(a)は、第1モードを示す図であり、図(b)は、第2モードを示す図であり、図(c)は、第3モードを示す図である。
【図3】図1に示すDC−DCコンバータにおいて回生モードで動作している状態を示す図であって、図(a)は、第4モードを示す図であり、図(b)は、第5モードを示す図であり、図(c)は、第6モードを示す図である。
【図4】図1に示すDC−DCコンバータ回路において環流モードで動作している状態を示す図であって、図(a)は、第7モードを示す図であり、図(b)は、第8モードを示す図であり、図(c)は、第9モードを示す図である。
【図5】第1、第2、第4及び第5半導体スイッチに用いることができる2in1モジュールの例を示す図である。
【図6】2in1モジュールを適用できる回路を構成することが可能な第1実施例の回路図である。
【図7】ゲートドライブ電源の個数を削減できる回路を構成することが可能な第2実施例の回路図である。
【図8】第3制御例において第1から第9モードのうち一のモードから他のモードへ動作モードを変更する場合での一例を示す状態遷移図であって、図(a)は、第1モードの状態を示す図であり、図(b)は、転流状態における電流経路が一通りである場合の一例である第1モードから第2モードへの転流状態を示す図であり、図(c)は、第2モードの状態を示す図である。
【図9】第3制御例において第1から第9モードのうち一のモードから他のモードへ動作モードを変更する場合での一例を示す状態遷移図であって、図(a)は、第1モードの状態を示す図であり、図(b)は、転流状態における電流経路が二通りであり、第1電圧源の出力電圧と第2電圧源の出力電圧との大小関係によって電流経路が異なる場合の一例である第1モードから第5モードへの転流状態を示す図であり、図(c)は、第5モードの状態を示す図である。
【図10】従来のDC−DCコンバータ回路の一例を示す回路図である。
【図11】図10に示すDC−DCコンバータ回路において力行モードで動作している状態を示す図である。
【図12】図10に示すDC−DCコンバータ回路において回生モードで動作している状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照しつつ説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明を具体化した例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
【0033】
図1は、本発明の実施の形態に係るDC−DCコンバータ回路10を示す回路図である。
【0034】
図1に示すDC−DCコンバータ回路10は、第1、第2、第4、第5及び第6半導体スイッチS1,S2,S4,S5,S6と、第3ダイオードD3と、インダクタLとを備えている。
【0035】
第1、第2、第4、第5及び第6半導体スイッチS1,S2,S4,S5,S6は、それぞれが一方向に電流を流すことができる半導体デバイスとされている。
【0036】
第1及び第2半導体スイッチS1,S2と、第3ダイオードD3とは、何れもインダクタLの一端(接続点B参照)に対して電流が流入する向きに接続されている。
【0037】
第4から第6半導体スイッチS4〜S6は、何れもインダクタLの他端(接続点C参照)に対して電流が流出する向きに接続されている。
【0038】
そして、DC−DCコンバータ回路10は、第1及び第4半導体スイッチS1,S4のインダクタLの接続端とは反対側端(接続点A参照)に第1電圧源E1の陽極側が接続され、第2及び第5半導体スイッチS2,S5のインダクタLの接続端とは反対側端(接続点D参照)に第2電圧源E2の陽極側が接続されるようになっている。
【0039】
また、DC−DCコンバータ回路10は、第3ダイオードD3及び第6半導体スイッチS6のインダクタLの接続端とは反対側端に第1電圧源E1の陰極側(接続点E参照)と第2電圧源E2の陰極側(接続点E参照)との双方が接続されるようになっている。
【0040】
なお、DC−DCコンバータ回路10が作業車両に適用される場合には、例えば、第1及び第2電圧源E1,E2は、バッテリやキャパシタ等の蓄電装置とすることができる。また、第1及び第2電圧源E1,E2には、モータ等の車両駆動電動機を作動させるインバータ回路等の電力変換回路を接続することができる。
【0041】
本実施の形態に係るDC−DCコンバータ回路10は、さらに制御装置20を備えている。制御装置20は、CPU(Central Processing Unit)等の処理部21と、記憶部22とを備えている。記憶部22は、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等の記憶メモリを含み、各種制御プログラムや必要な関数およびテーブルや、各種のデータを記憶するようになっている。
【0042】
制御装置20は、DC−DCコンバータ回路10の第1、第2、第4、第5及び第6半導体スイッチS1,S2,S4,S5,S6のスイッチング動作を制御するように構成されている。
【0043】
本実施の形態に係るDC−DCコンバータ回路10において、第1、第2、第4、第5及び第6半導体スイッチS1,S2,S4,S5,S6のオン状態及びオフ状態を示す動作モードとして、力行モードで動作する次の第1モードから第3モードと、回生モードで動作する次の第4モードから第6モードとを例示できる。
【0044】
図2は、図1に示すDC−DCコンバータ回路10において力行モードで動作している状態を示す図である。図2(a)は、第1モードを示しており、図2(b)は、第2モードを示しており、図2(c)は、第3モードを示している。
【0045】
また、図3は、図1に示すDC−DCコンバータ回路10において回生モードで動作している状態を示す図である。図3(a)は、第4モードを示しており、図3(b)は、第5モードを示しており、図3(c)は、第6モードを示している。
【0046】
力行モードにおいては、例えば、第1モードは、図2(a)に示すように、第1及び第6半導体スイッチS1,S6がオン状態となり、それ以外の第2、第4及び第5半導体スイッチS2,S4,S5がオフ状態となって、第1電圧源E1から第1半導体スイッチS1、インダクタL及び第6半導体スイッチS6を経て第1電圧源E1に戻る第1電流経路R1を形成するモードとすることができる。
【0047】
第2モードは、図2(b)に示すように、第1及び第5半導体スイッチS1,S5がオン状態となり、それ以外の第2、第4及び第6半導体スイッチS2,S4,S6がオフ状態となって、第1電圧源E1から第1半導体スイッチS1、インダクタL、第5半導体スイッチS5及び第2電圧源E2を経て第1電圧源E1に戻る第2電流経路R2を形成するモードとすることができる。
【0048】
第3モードは、図2(c)に示すように、第5半導体スイッチS5がオン状態となり、それ以外の第1、第2、第4及び第6半導体スイッチS1,S2,S4,S6がオフ状態となって、第2電圧源E2から第3ダイオードD3、インダクタL及び第5半導体スイッチS5を経て第2電圧源E2に戻る第3電流経路R3を形成するモードとすることができる。
【0049】
そして、力行モードを実行するときは、第1電圧源E1の出力電圧V1と第2電圧源E2の出力電圧V2との大小関係に応じて、第1モードと第2モードと第3モードとのうち少なくとも二つのモードを短い周期(例えば10kHz〜100kHz程度の何れかの周期)で切り換える各種切り換え動作を実行することができる。
【0050】
具体的には、第1電圧源E1の出力電圧V1が第2電圧源E2の出力電圧V2よりも大きい場合には、例えば、第2モードと第3モードとを切り換える切り換え動作を実行することができ、第1電圧源E1の出力電圧V1が第2電圧源E2の出力電圧V2よりも小さい場合には、例えば、第1モードと第2モードとを切り換える切り換え動作を実行することができる。第1電圧源E1の出力電圧V1と第2電圧源E2の出力電圧V2とが等しい場合には、例えば、第1モードと第3モードとを切り換える切り換え動作を実行するか、或いは、第2モードのみを実行することができる。なお、第1電圧源E1の出力電圧V1と第2電圧源E2の出力電圧V2とがほぼ等しい場合(電圧V1と電圧V2との差の絶対値が所定範囲内にある場合)に、第1モードと第3モードとを切り換える切り換え動作を実行するか、或いは、第2モードのみを実行してもよい。
【0051】
また、回生モードにおいては、例えば、第4モードは、図3(a)に示すように、第2及び第6半導体スイッチS2,S6がオン状態となり、それ以外の第1、第4及び第5半導体スイッチS1,S4,S5がオフ状態となって、第2電圧源E2から第2半導体スイッチS2、インダクタL及び第6半導体スイッチS6を経て第2電圧源E2に戻る第4電流経路R4を形成するモードとすることができる。
【0052】
第5モードは、図3(b)に示すように、第2及び第4半導体スイッチS2,S4がオン状態となり、それ以外の第1、第5及び第6半導体スイッチS1,S5,S6がオフ状態となって、第2電圧源E2から第2半導体スイッチS2、インダクタL、第4半導体スイッチS4及び第1電圧源E1を経て第2電圧源E2に戻る第5電流経路R5を形成するモードとすることができる。
【0053】
第6モードは、図3(c)に示すように、第4半導体スイッチS4がオン状態となり、それ以外の第1、第2、第5及び第6半導体スイッチS1,S2,S5,S6がオフ状態となって、第1電圧源E1から第3ダイオードD3、インダクタL及び第4半導体スイッチS4を経て第1電圧源E1に戻る第6電流経路R6を形成するモードとすることができる。
【0054】
そして、回生モードを実行するときは、第1電圧源E1の出力電圧V1と第2電圧源E2の出力電圧V2との大小関係に応じて、第4モードと第5モードと第6モードとのうち少なくとも二つのモードを短い周期(例えば10kHz〜100kHz程度の何れかの周期)で切り換える各種切り換え動作を実行することができる。
【0055】
具体的には、第1電圧源E1の出力電圧V1が第2電圧源E2の出力電圧V2よりも大きい場合には、例えば、第4モードと第5モードとを切り換える切り換え動作を実行することができ、第1電圧源E1の出力電圧V1が第2電圧源E2の出力電圧V2よりも小さい場合には、例えば、第5モードと第6モードとを切り換える切り換え動作を実行することができる。第1電圧源E1の出力電圧V1と第2電圧源E2の出力電圧V2とが等しい場合には、例えば、第4モードと第6モードとを切り換える切り換え動作を実行するか、或いは、第5モードのみを実行することができる。なお、第1電圧源E1の出力電圧V1と第2電圧源E2の出力電圧V2とがほぼ等しい場合(電圧V1と電圧V2との差の絶対値が所定範囲内にある場合)に、第4モードと第6モードとを切り換える切り換え動作を実行するか、或いは、第5モードのみを実行してもよい。
【0056】
本実施の形態に係るDC−DCコンバータ回路10において、第1、第2、第4、第5及び第6半導体スイッチS1,S2,S4,S5,S6のオン状態及びオフ状態を示す動作モードとして、環流モードで動作する次の第7モードから第9モードを実行してもよい。
【0057】
図4は、図1に示すDC−DCコンバータ回路10において環流モードで動作している状態を示す図である。図4(a)は、第7モードを示しており、図4(b)は、第8モードを示しており、図4(c)は、第9モードを示している。
【0058】
環流モードにおいては、例えば、第7モードは、図4(a)に示すように、第1及び第4半導体スイッチS1,S4がオン状態となり、それ以外の第2、第5及び第6半導体スイッチS2,S5,S6がオフ状態となって、インダクタL、第4半導体スイッチS4及び第1半導体スイッチS1を環流する第7電流経路R7を形成するモードとすることができる。
【0059】
第8モードは、図4(b)に示すように、第6半導体スイッチS6がオン状態となり、それ以外の第1、第2、第4及び第5半導体スイッチS1,S2,S4,S5がオフ状態となって、インダクタL、第6半導体スイッチS6、第3ダイオードD3を環流する第8電流経路R8を形成するモードとすることができる。
【0060】
第9モードは、図4(c)に示すように、第2及び第5半導体スイッチS2,S5がオン状態となり、それ以外の第1、第4及び第6半導体スイッチS1,S4,S6がオフ状態となって、インダクタL、第5半導体スイッチS5及び第2半導体スイッチS2を環流する第9電流経路R9を形成するモードとすることができる。
【0061】
なお、第1電圧源E1の出力電圧V1、第2電圧源E2の出力電圧V2は、図示を省略した電圧計にて測定することができる。
【0062】
以上説明したように、本発明の実施の形態に係るDC−DCコンバータ10では、第1電圧源E1と第2電圧源E2との間で双方向に出力電圧V1,V2の昇降圧を行うことができる。また、第1電圧源E1と第2電圧源E2との間で双方向に電力を供給することができる。さらに、インダクタLに流れる電流の向きを一定方向にすることができる。こうすることで、各半導体スイッチS1,S2,S4,S5,S6のオン状態及びオフ状態の動作切換により力行モードと回生モードとのモード切換を行う場合において、インダクタLに流れる電流を反転させることがないので、その分、モード切換に要する時間を削減でき、迅速なモード切換処理を行うことができる。また、インダクタLに流れる電流の向きを一定方向することができるので、電磁オフセット型のインダクタLを使用することができ、これにより、小型化を実現することが可能となる。しかも、半導体スイッチとして、例えば、第1モード(図2(a)参照)で第1及び第6半導体スイッチS1,S6に、第2モード(図2(b)参照)で第1及び第5半導体スイッチS1,S5に、第3モード(図2(c)参照)で第3ダイオードD3及び第5半導体スイッチS5にそれぞれ電流が通過するだけで済む。また、第4モード(図3(a)参照)で第2及び第6半導体スイッチS2,S6に、第5モード(図3(b)参照)で第2及び第4半導体スイッチS2,S4に、第6モード(図3(c)参照)で第3ダイオードD3及び第4半導体スイッチS4にそれぞれ電流が通過するだけで済む。つまり、第1モードから第6モードの何れのモードにおいても(力行モード及び回生モードの何れにおいても)、少なくとも二つの半導体素子(従来に比べて2分の3の半導体素子)に対して電流を通過させることができ、それだけ導通損を低減でき、これにより電力変換効率を向上させることができる。
【0063】
特に、各モードの切り換え周期が短い程、第1、第2、第4、第5及び第6半導体スイッチS1,S2,S4,S5,S6のスイッチングロスが大きくなるため、それだけ前記した作用効果を有効なものとすることができる。
【0064】
なお、第1、第2、第4、第5及び第6半導体スイッチS1,S2,S4,S5,S6に用いることができる半導体スイッチとして、例えば、逆阻止形のIGBT、MOSFET、GTOを用いることができる。
【0065】
また、第1、第2、第4及び第5半導体スイッチS1,S2,S4,S5は、例えば、二つの逆導通形の半導体素子を直列接続して一体的に形成した2in1モジュールを用いることができる。
【0066】
図5は、第1、第2、第4及び第5半導体スイッチS1,S2,S4,S5に用いることができる2in1モジュールの例を示す図である。図5に示す例では、2in1モジュールMを逆導通形のIGBT素子で構成している。但し、それに限定されるものではなく、例えば、2in1モジュールを逆導通形のMOSFET素子で構成してもよいし、逆導通形のGTO素子で構成してよい。
【0067】
DC−DCコンバータ回路10において、2in1モジュールを適用できる回路を構成することが可能な実施例として、次の第1実施例を例示できる。
【0068】
[第1実施例]
図6は、2in1モジュールを適用できる回路を構成することが可能な第1実施例の回路図である。なお、図6に示す各接続点A〜Dは、図1に示す各接続点A〜Dに対応している。このことは、後述する図7の回路についても同様である。
【0069】
第1実施例では、図6に示すように、DC−DCコンバータ回路10は、第1、第2、第4から第8、第10から第12ダイオードD1,D2,D4〜D8,D10〜D12をさらに備えている。
【0070】
第1、第2、第4、第5及び第6ダイオードD1,D2,D4,D5,D6は、第1、第2、第4、第5及び第6半導体スイッチS1,S2,S4,S5,S6が、それぞれ、電流をオン,オフ制御できる方向とは逆の方向に電流を流せるように第1、第2、第4、第5及び第6半導体スイッチS1,S2,S4,S5,S6に並列接続されている。
【0071】
第7ダイオードD7は、第1半導体スイッチS1とインダクタL(接続点B参照)との間に、第1ダイオードD1と逆方向に電流を流すことができるように接続されている。第8ダイオードD8は、第2半導体スイッチS2とインダクタL(接続点B参照)との間に、第2ダイオードD2と逆方向に電流を流すことができるように接続されている。
【0072】
また、第10ダイオードD10は、第4半導体スイッチS4とインダクタL(接続点C参照)との間に、第4ダイオードD4と逆方向に電流を流すことができるように接続されている。第11ダイオードD11は、第5半導体スイッチS5とインダクタL(接続点C参照)との間に、第5ダイオードD5と逆方向に電流を流すことができるように接続されている。第12ダイオードD12は、第6半導体スイッチS6とインダクタL(接続点C参照)との間に、第6ダイオードD6と逆方向に電流を流すことができるように接続されている。
【0073】
この第1実施例では、第4半導体スイッチS4と第4ダイオードD4とからなる半導体素子を上アームの第1逆導通形の半導体素子H1とし、第1半導体スイッチS1と第1ダイオードD1とからなる半導体素子を下アームの第2逆導通形の半導体素子H2とすることができる。
【0074】
これより、DC−DCコンバータ回路10において、第1逆導通形の半導体素子H1と第2逆導通形の半導体素子H2とを直列接続して一体的に形成した2in1モジュールM1を用いることができる。
【0075】
また、第5半導体スイッチS5と第5ダイオードD5とからなる半導体素子を上アームの第3逆導通形の半導体素子H3とし、第2半導体スイッチS2と第2ダイオードD2とからなる半導体素子を下アームの第4逆導通形の半導体素子H4とすることができる。
【0076】
これにより、DC−DCコンバータ回路10において、第3逆導通形の半導体素子H3と第4逆導通形の半導体素子H4とを直列接続して一体的に形成した2in1モジュールM2を用いることができる。
【0077】
このように、2in1モジュールM1,M2を用いることができるので、使い勝手のよい回路構成を実現することが可能となる。
【0078】
ところで、第1実施例の回路構成では、図6に示すように、第1及び第2ダイオードD1,D2の何れにおいても共通アノードをとり得る構成にはなっていない。例えば、第1及び第2半導体スイッチS1,S2がIGBTである場合、共通のエミッタをとり得る構成にはなっていない。また、第1及び第2半導体スイッチS1,S2がMOSFETである場合、共通のソースをとり得る構成にはなっていない。また、第1及び第2半導体スイッチS1,S2がGTOである場合、共通のカソードをとり得る構成にはなっていない。
【0079】
このために、第1及び第2半導体スイッチS1,S2のそれぞれに対して設けられるゲートドライブ電源(図示せず)、すなわち、合計2個のゲートドライブ電源が必要となる。
【0080】
かかる観点から、本発明の実施の形態に係るDC−DCコンバータ回路10において、ゲートドライブ電源の個数を削減できる回路を構成することが可能な実施例として、次の第2実施例を例示できる。
【0081】
[第2実施例]
図7は、ゲートドライブ電源の個数を削減できる回路を構成することが可能な第2実施例の回路図である。なお、図7は、DC−DCコンバータ回路10においてインダクタLの接続点B側の部分を示している。
【0082】
第2実施例では、図7に示すように、DC−DCコンバータ回路10は、第1、第2、第4及び第5ダイオードD1,D2,D4,D5をさらに備えている。
【0083】
第1及び第2ダイオードD1,D2は、第1及び第2半導体スイッチS1,S2が、それぞれ、電流をオン,オフ制御できる方向とは逆の方向に電流を流せるように第1及び第2半導体スイッチS1,S2に並列接続されている。
【0084】
第4ダイオードD4は、第1半導体スイッチS1と第1電圧源E1の陽極側(接続点A参照)との間に、第1ダイオードD1と逆の方向に電流を流すことができるように接続されている。
【0085】
第5ダイオードD5は、第2半導体スイッチS2と第2電圧源E2の陽極側(接続点D参照)との間に、第2ダイオードD2と逆の方向に電流を流すことができるように接続されている。
【0086】
この第2実施例では、第1ダイオードD1のアノード側と第2ダイオードD2のアノード側とが接続されており、第1ダイオードD1及び第2ダイオードD2に対して共通アノードとすることができる(破線部α参照)。
【0087】
これにより、DC−DCコンバータ回路10において、第1半導体スイッチS1及び第2半導体スイッチS2に対して同一の(共通の)ゲートドライブ電源(図示せず)とすることができる。従って、第1半導体スイッチS1及び第2半導体スイッチS2に対して1個のゲートドライブ電源で済むことになる。
【0088】
次に、第4、第5及び第6半導体スイッチS4,S5,S6の制御装置20による制御例について説明する。
【0089】
本実施の形態では、インダクタLに電流が流れている場合においては、第4から第6半導体スイッチS4〜S6が全てオフ状態となると、第4、第5及び第6半導体スイッチS4,S5,S6に高電圧が印加され、これにより第4、第5及び第6半導体スイッチS4,S5,S6の何れかの半導体スイッチが破壊することがある。
【0090】
かかる観点から、DC−DCコンバータ回路10において、制御装置20による次のスイッチング動作の第1制御例から第3制御例を行う保護機能を備えている。
【0091】
なお、次の第1制御例から第3制御例において、インダクタLに流れる電流は、図示を省略した電流計にて測定することができる。制御装置20は、この電流計の検出結果に基づきインダクタLに電流が流れているか否かを認識することができる。
【0092】
[第1制御例]
第1制御例では、制御装置20は、インダクタLに電流が流れている場合は、第4から第6半導体スイッチS4〜S6のうちの1個以上の半導体スイッチを常時オン状態とするように、第4から第6半導体スイッチS4〜S6の制御電圧を制御する構成とされている。
【0093】
こうすることで、インダクタLに電流が流れている場合に、インダクタLを含む電流経路を確保することができる。
【0094】
例えば、インダクタLに電流が流れている場合において、第5半導体スイッチS5だけがオン状態であれば、第3電流経路R3(図2(c))が形成される。
【0095】
また、例えば、インダクタLに電流が流れている場合において、第4半導体スイッチS4だけがオン状態であれば、第6電流経路R6(図3(c)参照)が形成される。
【0096】
また、例えば、インダクタLに電流が流れている場合において、第6半導体スイッチS6だけがオン状態であれば、第8電流経路R8(図4(b))が形成される。
【0097】
このように第1制御例では、第4から第6半導体スイッチS4〜S6が全てオフ状態となることを回避でき、これにより、高電圧による第4、第5及び第6半導体スイッチS4,S5,S6の何れかの半導体スイッチの破壊を防止することができる。
【0098】
[第2制御例]
第2制御例では、制御装置20は、インダクタLに電流が流れている場合は、第4から第6半導体スイッチS4〜S6のうちの一つ又は二つの半導体スイッチをオフ状態とする前に、第4から第6半導体スイッチS4〜S6のうちの該オフ状態とする半導体スイッチ以外の半導体スイッチの少なくとも一つを事前にオン状態とするように、第4から第6半導体スイッチS4〜S6の制御電圧を制御する構成とされている。
【0099】
こうすることで、インダクタLに電流が流れている場合に、インダクタLを含む電流経路を確保することができる。
【0100】
例えば、インダクタLに電流が流れている場合において、オフ状態とする第4及び第6半導体スイッチS4,S6をオフ状態とする前に、それ以外の第5半導体スイッチS5を事前にオン状態にすると仮定し、かつ、第1及び第2半導体スイッチS1,S2をオフ状態と仮定すると、第8電流経路R8(図4(b)参照)が形成される。
【0101】
このように第2制御例では、第4から第6半導体スイッチS4〜S6が全てオフ状態となることを回避でき、これにより、高電圧による第4、第5及び第6半導体スイッチS4,S5,S6の何れかの半導体スイッチの破壊を防止することができる。
【0102】
[第3制御例]
第3制御例では、制御装置20は、インダクタLに電流が流れている状態で、第1、第2、第4、第5及び第6半導体スイッチS1,S2,S4,S5,S6のオン状態及びオフ状態を示す動作モードを変更する場合においては、変更前の動作モードでオン状態としている全ての半導体スイッチを動作モードの変更後も一定時間オン状態とするか、または、変更後の動作モードでオン状態にする全ての半導体スイッチを動作モードの変更前に一定時間オン状態とするように、第1、第2、第4、第5及び第6半導体スイッチS1,S2,S4,S5,S6の制御電圧を制御する構成とされている。
【0103】
図8及び図9は、何れも第3制御例において第1から第9モードのうち一のモードから他のモードへ動作モードを変更する場合での一例を示す状態遷移図である。
【0104】
図8(a)は、第1モードの状態を示しており、図8(b)は、転流状態における電流経路が一通りである場合の一例である第1モードから第2モードへの転流状態を示しており、図8(c)は、第2モードの状態を示している。
【0105】
図8(a)に示す状態では、第1モードにより第1電流経路R1(図2(a)参照)が形成される。
【0106】
次に、図8(b)に示す状態では、変更前の動作モードでオン状態としている全ての半導体スイッチ(ここでは第1及び第6半導体スイッチS1,S6)が動作モードの変更後も一定時間オン状態となる。または、変更後の動作モードでオン状態にする全ての半導体スイッチ(ここでは第1及び第5半導体スイッチS1,S5)が動作モードの変更前に一定時間オン状態となる。このとき、第1、第5及び第6半導体スイッチS1,S5,S6がオン状態となり、結果、第1電流経路R1(図2(a)参照)が形成される。
【0107】
そして、図8(c)に示す状態では、第2モードになり、第2電流経路R2(図2(b)参照)が形成される。
【0108】
図9(a)は、第1モードの状態を示しており、図9(b)は、転流状態における電流経路が二通りであり、第1電圧源E1の出力電圧V1と第2電圧源E2の出力電圧V2との大小関係によって電流経路が異なる場合の一例である第1モードから第5モードへの転流状態を示しており、図9(c)は、第5モードの状態を示している。
【0109】
図9(a)に示す状態では、第1モードにより第1電流経路R1(図2(a)参照)が形成される。
【0110】
次に、図9(b)に示す状態では、変更前の動作モードでオン状態としている全ての半導体スイッチ(ここでは第1及び第6半導体スイッチS1,S6)が動作モードの変更後も一定時間オン状態となる。または、変更後の動作モードでオン状態にする全ての半導体スイッチ(ここでは第2及び第4半導体スイッチS2,S4)が動作モードの変更前に一定時間オン状態となる。このとき、第1、第2、第4及び第6半導体スイッチS1,S2,S4,S6がオン状態となり、第1電圧源E1の出力電圧V1が第2電圧源E2の出力電圧V2よりも大きい場合に第1電流経路R1(図2(a)参照)が形成され、第1電圧源E1の出力電圧V1が第2電圧源E2の出力電圧V2よりも小さい場合に第4電流経路R4(図3(a)参照)が形成される。
【0111】
そして、図9(c)に示す状態では、第5モードになり、第2電流経路R5(図3(b)参照)が形成される。
【0112】
このように第3制御例では、第4から第6半導体スイッチS4〜S6が全てオフ状態となることを回避でき、これにより、高電圧による第4、第5及び第6半導体スイッチS4,S5,S6の何れかの半導体スイッチの破壊を防止することができる。
【符号の説明】
【0113】
10 DC−DCコンバータ回路
20 制御装置
D1〜D8 第1から第8ダイオード
D10〜D16 第10から第16ダイオード
E1 第1電圧源
E2 第2電圧源
L インダクタ
S1〜S2 第1及び第2半導体スイッチ
S4〜S6 第4から第6半導体スイッチ
【技術分野】
【0001】
本発明は、DC−DCコンバータ回路に関するものであり、特に、双方向昇降圧形DC−DCコンバータ回路における導通損低減に関するものである。
【背景技術】
【0002】
DC−DCコンバータ回路は、例えば、第1及び第2直流電圧源(以下、単に第1及び第2電圧源という)の間に接続され、第1及び第2電圧源の出力電圧に基づき、第1電圧源から第2電圧源に電力を供給したり、或いは、第2電圧源から第1電圧源に電力を供給したりすることが可能な双方向形のスイッチング回路として用いられる。
【0003】
例えば、DC−DCコンバータ回路は、作業車両などの電動車両に用いられることがある。電動車両は、一般的に、バッテリやキャパシタ等の蓄電装置からの直流電力をインバータ回路等の電力変換回路にて交流電力に変換して得られた交流電力でモータ等の車両駆動電動機を作動させるようになっている。そして、DC−DCコンバータ回路は、第1電圧源として作用する蓄電装置と、インバータ回路等の電力変換回路が接続された第2電圧源との間に設けられ、力行モード時には蓄電装置から電力変換回路に電力を供給する一方、回生モード時には電力変換回路から蓄電装置に電力を供給することが可能な構成とされている。
【0004】
従来のDC−DCコンバータ回路として、例えば、下記特許文献1に記載のチョッパ回路(特許文献1の図1参照)がある。
【0005】
図10は、従来のDC−DCコンバータ回路の一例を示す回路図である。図10に示すDC−DCコンバータ回路は、第1から第4までの半導体スイッチ121〜124と、第1から第4までのダイオード125〜128と、インダクタ129とを備えている。
【0006】
第1から第4半導体スイッチ121〜124は、何れも一方向にのみ電流を流すことができる半導体デバイスである。第1及び第2ダイオード125,126は、それぞれ、第1及び第2半導体スイッチ121,122に対して電流を流すことができる方向を逆にしてそれぞれ並列接続されており、第1半導体スイッチ121に並列接続された第1ダイオード125のカソード側と、第2半導体スイッチ122に並列接続された第2ダイオード126のアノード側とが接続されている。
【0007】
第3半導体スイッチ123の電流流入側と第1半導体スイッチ121に並列接続された第1ダイオード125のカソード側とが接続されており、第4ダイオード128のカソード側と第2半導体スイッチ122に並列接続された第2ダイオード126のアノード側とが接続されている。
【0008】
インダクタ129は、一端が第3半導体スイッチ123の電流流出側及び第3ダイオード127のカソード側の双方に接続され、かつ、他端が第4ダイオード128のアノード側及び第4半導体スイッチ124の電流流入側の双方に接続されている。
【0009】
そして、図10に示すDC−DCコンバータ回路は、第1半導体スイッチ121に並列接続された第1ダイオード125のアノード側と第3ダイオード127のアノード側との間に第1電圧源110が接続され、第2半導体スイッチ122に並列接続された第2ダイオード126のカソード側と第4半導体スイッチ124の電流流出側との間に第2電圧源120が接続されるようになっている。
【0010】
このような従来のDC−DCコンバータ回路では、各半導体スイッチ121〜124のオン状態及びオフ状態を示す動作モードとして、次の力行モード及び回生モードを例示できる。
【0011】
図11は、図10に示すDC−DCコンバータ回路において力行モードで動作している状態を示す図である。
【0012】
力行モードは、例えば、図11に示すように、第1電圧源110から第1ダイオード125、第3半導体スイッチ123、インダクタ129及び第4半導体スイッチ124を経て第1電圧源110に戻る電流経路Raを形成するモードとされている。
【0013】
また、図12は、図10に示すDC−DCコンバータ回路において回生モードで動作している状態を示す図である。
【0014】
回生モードは、例えば、図12に示すように、第1電圧源110から第3ダイオード127、インダクタ129及び第4ダイオード128及び第1半導体スイッチ121を経て第1電圧源110に戻る電流経路Rbを形成するモードとされている。
【0015】
このような従来のDC−DCコンバータ回路では、力行モードの電流経路Ra及び回生モードの電流経路Rbにおいて、インダクタ129に流れる電流の向きを一定方向にしている。こうすることで、各半導体スイッチ121〜124のオン状態及びオフ状態の動作切換により力行モードと回生モードとのモード切換を行う場合において、インダクタ129に流れる電流を反転させることがないので、その分、モード切換に要する時間を削減でき、迅速なモード切換処理を行うことができる。しかし、第1電圧源110の出力電圧V1が第2電圧源120の出力電圧V2よりも大きい場合には、第1及び第2ダイオード125,126がオン状態となり、出力電圧V1と出力電圧V2とが等しくなるため、第2電圧源120の出力電圧V2を第1電圧源110の出力電圧V1以下に降圧することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2007−151311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
ところで、DC−DCコンバータ回路においては、電流が通過する半導体素子の数が多くなれば、それだけ導通損が大きくなり、それに伴って電力変換効率が低下する。
【0018】
図10に示す従来のDC−DCコンバータ回路では、半導体素子として、例えば、力行モード(図11参照)で第1ダイオード125及び第3半導体スイッチ123及び第4半導体スイッチ124に電流が通過することになる。また、回生モード(図12参照)で第3ダイオード127、第4ダイオード128及び第1半導体スイッチ121に電流が通過することになる。つまり、力行モード及び回生モードの何れのモードにおいても、少なくとも三つの半導体素子に対して電流が通過するため、それだけ導通損が大きくなり、それに伴って電力変換効率が低下する。
【0019】
そこで、本発明は、力行モードと回生モードとの迅速なモード切換処理を行うことができる上、従来よりも半導体素子の導通損を低減でき、これにより電力変換効率を向上させることができるDC−DCコンバータ回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、前記課題を解決するために、それぞれが一方向に電流を流すことができる第1、第2、第4、第5及び第6の半導体スイッチと、第3のダイオードと、インダクタとを備え、前記第1及び第2の半導体スイッチと、前記第3のダイオードとは、何れも前記インダクタの一端に対して電流が流入する向きに接続されており、前記第4から第6までの半導体スイッチは、何れも前記インダクタの他端に対して電流が流出する向きに接続されており、前記第1及び第4の半導体スイッチの前記インダクタの接続端とは反対側端に第1電圧源の陽極側が接続され、前記第2及び第5の半導体スイッチの前記インダクタの接続端とは反対側端に第2電圧源の陽極側が接続され、前記第3のダイオード及び前記第6の半導体スイッチの前記インダクタの接続端とは反対側端に前記第1電圧源の陰極側と前記第2電圧源の陰極側との双方が接続されることを特徴とするDC−DCコンバータ回路を提供する。
【0021】
本発明に係るDC−DCコンバータ回路によれば、前記第1電圧源と前記第2電圧源との間で双方向に出力電圧の昇降圧を行うことができる。また、前記第1電圧源と前記第2電圧源との間で双方向に電力を供給することができる。さらに、前記インダクタに流れる電流の向きを一定方向にすることができる。こうすることで、前記各半導体スイッチのオン状態及びオフ状態の動作切換により力行モードと回生モードとのモード切換を行う場合において、前記インダクタに流れる電流を反転させることがないので、その分、モード切換に要する時間を削減でき、迅速なモード切換処理を行うことができる。しかも、少なくとも二つの半導体素子(従来に比べて3分の2の半導体素子)に対して電流を通過させることができ、それだけ導通損を低減でき、これにより電力変換効率を向上させることができる。なお、この作用効果については、以下の実施の形態で詳しく説明する。
【0022】
ところで、インバータ回路等の電力変換回路に利用されているモジュールとして、二つの逆導通形の半導体素子を直列接続して一体的に形成したモジュール(いわゆる2in1モジュール)が市販されている。本発明に係るDC−DCコンバータ回路おいて、電力容量等の設計仕様によっては、この2in1モジュールを用いることが好ましい場合がある。
【0023】
かかる観点から、本発明に係るDC−DCコンバータ回路において、2in1モジュールを適用できる回路を構成することが可能な態様として、前記第1、第2、第4、第5及び第6の半導体スイッチが、それぞれ、電流をオン,オフ制御できる方向とは逆の方向に電流を流せるように前記第1、第2、第4、第5及び第6の半導体スイッチに並列接続された第1、第2、第4、第5及び第6のダイオードと、前記第1、第2、第4、第5及び第6の半導体スイッチと前記インダクタとの間に、それぞれ、前記第1、第2、第4、第5及び第6のダイオードと逆方向に電流を流すことができるように接続された第7、第8、第10、第11及び第12までのダイオードとをさらに備えている態様を例示できる。
【0024】
なお、前記半導体スイッチとしては、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)及びGTO(Gate Turn-Off thyristor)等の半導体スイッチを例示できる。前記逆導通形の半導体素子としては、IGBT、GTO等の半導体スイッチに対して電流を流すことができる方向を逆にしてダイオードを並列接続した半導体素子、MOSFET等のように半導体の構造的に寄生ダイオード(または、ボディダイオード)が存在する半導体素子を例示でき、例えば、逆導通形のIGBT素子、逆導通形のMOSFET素子、逆導通形のGTO素子を挙げることができる。
【0025】
また、各半導体スイッチに対して、それぞれ、ゲートドライブ電源を用いてもよいが、電力容量等の設計仕様によっては、半導体スイッチに対して共通のゲートドライブ電源を用いてゲートドライブ電源の個数を削減することが好ましい場合がある。
【0026】
かかる観点から、本発明に係るDC−DCコンバータ回路において、ゲートドライブ電源の個数を削減できる回路を構成することが可能な態様として、前記第1及び第2の半導体スイッチが、それぞれ、電流をオン,オフ制御できる方向とは逆の方向に電流を流せるように前記第1及び第2の半導体スイッチに並列接続された第1及び第2のダイオードと、前記第1の半導体スイッチと前記第1電圧源の陽極側との間に、前記第1のダイオードと逆の方向に電流を流すことができるように接続された第4のダイオードと、前記第2の半導体スイッチと前記第2電圧源の陽極側との間に、前記第2のダイオードと逆の方向に電流を流すことができるように接続された第5のダイオードとをさらに備えている態様を例示できる。
【0027】
また、高電圧による前記第1から第6までの半導体スイッチの破壊を防止する観点からは、本発明に係るDC−DCコンバータ回路において、次の(a)から(c)までの態様にすることが好ましい。すなわち、
(a)の態様として、前記インダクタに電流が流れている場合は、前記第4から第6までの半導体スイッチのうちの1個以上の半導体スイッチを常時オン状態とするための手段を備える態様を例示できる。
【0028】
(b)の態様として、前記インダクタに電流が流れている場合は、前記第4から第6までの半導体スイッチのうちの一つ又は二つの半導体スイッチをオフ状態とする前に、前記第4から第6までの半導体スイッチのうちの該オフ状態とする半導体スイッチ以外の半導体スイッチの少なくとも一つを事前にオン状態とするための手段を備える態様を例示できる。
【0029】
(c)の態様として、前記インダクタに電流が流れている状態で、前記第1、第2、第4、第5及び第6の半導体スイッチのオン状態及びオフ状態を示す動作モードを変更する場合においては、変更前の動作モードでオン状態としている全ての半導体スイッチを動作モードの変更後も一定時間オン状態とするための手段、または、変更後の動作モードでオン状態にする全ての半導体スイッチを動作モードの変更前に一定時間オン状態とするための手段を備える態様を例示できる。
【発明の効果】
【0030】
以上説明したように、本発明によると、力行モードと回生モードとの迅速なモード切換処理を行うことができる上、従来よりも半導体素子の導通損を低減でき、これにより電力変換効率を向上させることができるDC−DCコンバータ回路を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施の形態に係るDC−DCコンバータ回路を示す回路図である。
【図2】図1に示すDC−DCコンバータにおいて力行モードで動作している状態を示す図であって、図(a)は、第1モードを示す図であり、図(b)は、第2モードを示す図であり、図(c)は、第3モードを示す図である。
【図3】図1に示すDC−DCコンバータにおいて回生モードで動作している状態を示す図であって、図(a)は、第4モードを示す図であり、図(b)は、第5モードを示す図であり、図(c)は、第6モードを示す図である。
【図4】図1に示すDC−DCコンバータ回路において環流モードで動作している状態を示す図であって、図(a)は、第7モードを示す図であり、図(b)は、第8モードを示す図であり、図(c)は、第9モードを示す図である。
【図5】第1、第2、第4及び第5半導体スイッチに用いることができる2in1モジュールの例を示す図である。
【図6】2in1モジュールを適用できる回路を構成することが可能な第1実施例の回路図である。
【図7】ゲートドライブ電源の個数を削減できる回路を構成することが可能な第2実施例の回路図である。
【図8】第3制御例において第1から第9モードのうち一のモードから他のモードへ動作モードを変更する場合での一例を示す状態遷移図であって、図(a)は、第1モードの状態を示す図であり、図(b)は、転流状態における電流経路が一通りである場合の一例である第1モードから第2モードへの転流状態を示す図であり、図(c)は、第2モードの状態を示す図である。
【図9】第3制御例において第1から第9モードのうち一のモードから他のモードへ動作モードを変更する場合での一例を示す状態遷移図であって、図(a)は、第1モードの状態を示す図であり、図(b)は、転流状態における電流経路が二通りであり、第1電圧源の出力電圧と第2電圧源の出力電圧との大小関係によって電流経路が異なる場合の一例である第1モードから第5モードへの転流状態を示す図であり、図(c)は、第5モードの状態を示す図である。
【図10】従来のDC−DCコンバータ回路の一例を示す回路図である。
【図11】図10に示すDC−DCコンバータ回路において力行モードで動作している状態を示す図である。
【図12】図10に示すDC−DCコンバータ回路において回生モードで動作している状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照しつつ説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明を具体化した例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
【0033】
図1は、本発明の実施の形態に係るDC−DCコンバータ回路10を示す回路図である。
【0034】
図1に示すDC−DCコンバータ回路10は、第1、第2、第4、第5及び第6半導体スイッチS1,S2,S4,S5,S6と、第3ダイオードD3と、インダクタLとを備えている。
【0035】
第1、第2、第4、第5及び第6半導体スイッチS1,S2,S4,S5,S6は、それぞれが一方向に電流を流すことができる半導体デバイスとされている。
【0036】
第1及び第2半導体スイッチS1,S2と、第3ダイオードD3とは、何れもインダクタLの一端(接続点B参照)に対して電流が流入する向きに接続されている。
【0037】
第4から第6半導体スイッチS4〜S6は、何れもインダクタLの他端(接続点C参照)に対して電流が流出する向きに接続されている。
【0038】
そして、DC−DCコンバータ回路10は、第1及び第4半導体スイッチS1,S4のインダクタLの接続端とは反対側端(接続点A参照)に第1電圧源E1の陽極側が接続され、第2及び第5半導体スイッチS2,S5のインダクタLの接続端とは反対側端(接続点D参照)に第2電圧源E2の陽極側が接続されるようになっている。
【0039】
また、DC−DCコンバータ回路10は、第3ダイオードD3及び第6半導体スイッチS6のインダクタLの接続端とは反対側端に第1電圧源E1の陰極側(接続点E参照)と第2電圧源E2の陰極側(接続点E参照)との双方が接続されるようになっている。
【0040】
なお、DC−DCコンバータ回路10が作業車両に適用される場合には、例えば、第1及び第2電圧源E1,E2は、バッテリやキャパシタ等の蓄電装置とすることができる。また、第1及び第2電圧源E1,E2には、モータ等の車両駆動電動機を作動させるインバータ回路等の電力変換回路を接続することができる。
【0041】
本実施の形態に係るDC−DCコンバータ回路10は、さらに制御装置20を備えている。制御装置20は、CPU(Central Processing Unit)等の処理部21と、記憶部22とを備えている。記憶部22は、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等の記憶メモリを含み、各種制御プログラムや必要な関数およびテーブルや、各種のデータを記憶するようになっている。
【0042】
制御装置20は、DC−DCコンバータ回路10の第1、第2、第4、第5及び第6半導体スイッチS1,S2,S4,S5,S6のスイッチング動作を制御するように構成されている。
【0043】
本実施の形態に係るDC−DCコンバータ回路10において、第1、第2、第4、第5及び第6半導体スイッチS1,S2,S4,S5,S6のオン状態及びオフ状態を示す動作モードとして、力行モードで動作する次の第1モードから第3モードと、回生モードで動作する次の第4モードから第6モードとを例示できる。
【0044】
図2は、図1に示すDC−DCコンバータ回路10において力行モードで動作している状態を示す図である。図2(a)は、第1モードを示しており、図2(b)は、第2モードを示しており、図2(c)は、第3モードを示している。
【0045】
また、図3は、図1に示すDC−DCコンバータ回路10において回生モードで動作している状態を示す図である。図3(a)は、第4モードを示しており、図3(b)は、第5モードを示しており、図3(c)は、第6モードを示している。
【0046】
力行モードにおいては、例えば、第1モードは、図2(a)に示すように、第1及び第6半導体スイッチS1,S6がオン状態となり、それ以外の第2、第4及び第5半導体スイッチS2,S4,S5がオフ状態となって、第1電圧源E1から第1半導体スイッチS1、インダクタL及び第6半導体スイッチS6を経て第1電圧源E1に戻る第1電流経路R1を形成するモードとすることができる。
【0047】
第2モードは、図2(b)に示すように、第1及び第5半導体スイッチS1,S5がオン状態となり、それ以外の第2、第4及び第6半導体スイッチS2,S4,S6がオフ状態となって、第1電圧源E1から第1半導体スイッチS1、インダクタL、第5半導体スイッチS5及び第2電圧源E2を経て第1電圧源E1に戻る第2電流経路R2を形成するモードとすることができる。
【0048】
第3モードは、図2(c)に示すように、第5半導体スイッチS5がオン状態となり、それ以外の第1、第2、第4及び第6半導体スイッチS1,S2,S4,S6がオフ状態となって、第2電圧源E2から第3ダイオードD3、インダクタL及び第5半導体スイッチS5を経て第2電圧源E2に戻る第3電流経路R3を形成するモードとすることができる。
【0049】
そして、力行モードを実行するときは、第1電圧源E1の出力電圧V1と第2電圧源E2の出力電圧V2との大小関係に応じて、第1モードと第2モードと第3モードとのうち少なくとも二つのモードを短い周期(例えば10kHz〜100kHz程度の何れかの周期)で切り換える各種切り換え動作を実行することができる。
【0050】
具体的には、第1電圧源E1の出力電圧V1が第2電圧源E2の出力電圧V2よりも大きい場合には、例えば、第2モードと第3モードとを切り換える切り換え動作を実行することができ、第1電圧源E1の出力電圧V1が第2電圧源E2の出力電圧V2よりも小さい場合には、例えば、第1モードと第2モードとを切り換える切り換え動作を実行することができる。第1電圧源E1の出力電圧V1と第2電圧源E2の出力電圧V2とが等しい場合には、例えば、第1モードと第3モードとを切り換える切り換え動作を実行するか、或いは、第2モードのみを実行することができる。なお、第1電圧源E1の出力電圧V1と第2電圧源E2の出力電圧V2とがほぼ等しい場合(電圧V1と電圧V2との差の絶対値が所定範囲内にある場合)に、第1モードと第3モードとを切り換える切り換え動作を実行するか、或いは、第2モードのみを実行してもよい。
【0051】
また、回生モードにおいては、例えば、第4モードは、図3(a)に示すように、第2及び第6半導体スイッチS2,S6がオン状態となり、それ以外の第1、第4及び第5半導体スイッチS1,S4,S5がオフ状態となって、第2電圧源E2から第2半導体スイッチS2、インダクタL及び第6半導体スイッチS6を経て第2電圧源E2に戻る第4電流経路R4を形成するモードとすることができる。
【0052】
第5モードは、図3(b)に示すように、第2及び第4半導体スイッチS2,S4がオン状態となり、それ以外の第1、第5及び第6半導体スイッチS1,S5,S6がオフ状態となって、第2電圧源E2から第2半導体スイッチS2、インダクタL、第4半導体スイッチS4及び第1電圧源E1を経て第2電圧源E2に戻る第5電流経路R5を形成するモードとすることができる。
【0053】
第6モードは、図3(c)に示すように、第4半導体スイッチS4がオン状態となり、それ以外の第1、第2、第5及び第6半導体スイッチS1,S2,S5,S6がオフ状態となって、第1電圧源E1から第3ダイオードD3、インダクタL及び第4半導体スイッチS4を経て第1電圧源E1に戻る第6電流経路R6を形成するモードとすることができる。
【0054】
そして、回生モードを実行するときは、第1電圧源E1の出力電圧V1と第2電圧源E2の出力電圧V2との大小関係に応じて、第4モードと第5モードと第6モードとのうち少なくとも二つのモードを短い周期(例えば10kHz〜100kHz程度の何れかの周期)で切り換える各種切り換え動作を実行することができる。
【0055】
具体的には、第1電圧源E1の出力電圧V1が第2電圧源E2の出力電圧V2よりも大きい場合には、例えば、第4モードと第5モードとを切り換える切り換え動作を実行することができ、第1電圧源E1の出力電圧V1が第2電圧源E2の出力電圧V2よりも小さい場合には、例えば、第5モードと第6モードとを切り換える切り換え動作を実行することができる。第1電圧源E1の出力電圧V1と第2電圧源E2の出力電圧V2とが等しい場合には、例えば、第4モードと第6モードとを切り換える切り換え動作を実行するか、或いは、第5モードのみを実行することができる。なお、第1電圧源E1の出力電圧V1と第2電圧源E2の出力電圧V2とがほぼ等しい場合(電圧V1と電圧V2との差の絶対値が所定範囲内にある場合)に、第4モードと第6モードとを切り換える切り換え動作を実行するか、或いは、第5モードのみを実行してもよい。
【0056】
本実施の形態に係るDC−DCコンバータ回路10において、第1、第2、第4、第5及び第6半導体スイッチS1,S2,S4,S5,S6のオン状態及びオフ状態を示す動作モードとして、環流モードで動作する次の第7モードから第9モードを実行してもよい。
【0057】
図4は、図1に示すDC−DCコンバータ回路10において環流モードで動作している状態を示す図である。図4(a)は、第7モードを示しており、図4(b)は、第8モードを示しており、図4(c)は、第9モードを示している。
【0058】
環流モードにおいては、例えば、第7モードは、図4(a)に示すように、第1及び第4半導体スイッチS1,S4がオン状態となり、それ以外の第2、第5及び第6半導体スイッチS2,S5,S6がオフ状態となって、インダクタL、第4半導体スイッチS4及び第1半導体スイッチS1を環流する第7電流経路R7を形成するモードとすることができる。
【0059】
第8モードは、図4(b)に示すように、第6半導体スイッチS6がオン状態となり、それ以外の第1、第2、第4及び第5半導体スイッチS1,S2,S4,S5がオフ状態となって、インダクタL、第6半導体スイッチS6、第3ダイオードD3を環流する第8電流経路R8を形成するモードとすることができる。
【0060】
第9モードは、図4(c)に示すように、第2及び第5半導体スイッチS2,S5がオン状態となり、それ以外の第1、第4及び第6半導体スイッチS1,S4,S6がオフ状態となって、インダクタL、第5半導体スイッチS5及び第2半導体スイッチS2を環流する第9電流経路R9を形成するモードとすることができる。
【0061】
なお、第1電圧源E1の出力電圧V1、第2電圧源E2の出力電圧V2は、図示を省略した電圧計にて測定することができる。
【0062】
以上説明したように、本発明の実施の形態に係るDC−DCコンバータ10では、第1電圧源E1と第2電圧源E2との間で双方向に出力電圧V1,V2の昇降圧を行うことができる。また、第1電圧源E1と第2電圧源E2との間で双方向に電力を供給することができる。さらに、インダクタLに流れる電流の向きを一定方向にすることができる。こうすることで、各半導体スイッチS1,S2,S4,S5,S6のオン状態及びオフ状態の動作切換により力行モードと回生モードとのモード切換を行う場合において、インダクタLに流れる電流を反転させることがないので、その分、モード切換に要する時間を削減でき、迅速なモード切換処理を行うことができる。また、インダクタLに流れる電流の向きを一定方向することができるので、電磁オフセット型のインダクタLを使用することができ、これにより、小型化を実現することが可能となる。しかも、半導体スイッチとして、例えば、第1モード(図2(a)参照)で第1及び第6半導体スイッチS1,S6に、第2モード(図2(b)参照)で第1及び第5半導体スイッチS1,S5に、第3モード(図2(c)参照)で第3ダイオードD3及び第5半導体スイッチS5にそれぞれ電流が通過するだけで済む。また、第4モード(図3(a)参照)で第2及び第6半導体スイッチS2,S6に、第5モード(図3(b)参照)で第2及び第4半導体スイッチS2,S4に、第6モード(図3(c)参照)で第3ダイオードD3及び第4半導体スイッチS4にそれぞれ電流が通過するだけで済む。つまり、第1モードから第6モードの何れのモードにおいても(力行モード及び回生モードの何れにおいても)、少なくとも二つの半導体素子(従来に比べて2分の3の半導体素子)に対して電流を通過させることができ、それだけ導通損を低減でき、これにより電力変換効率を向上させることができる。
【0063】
特に、各モードの切り換え周期が短い程、第1、第2、第4、第5及び第6半導体スイッチS1,S2,S4,S5,S6のスイッチングロスが大きくなるため、それだけ前記した作用効果を有効なものとすることができる。
【0064】
なお、第1、第2、第4、第5及び第6半導体スイッチS1,S2,S4,S5,S6に用いることができる半導体スイッチとして、例えば、逆阻止形のIGBT、MOSFET、GTOを用いることができる。
【0065】
また、第1、第2、第4及び第5半導体スイッチS1,S2,S4,S5は、例えば、二つの逆導通形の半導体素子を直列接続して一体的に形成した2in1モジュールを用いることができる。
【0066】
図5は、第1、第2、第4及び第5半導体スイッチS1,S2,S4,S5に用いることができる2in1モジュールの例を示す図である。図5に示す例では、2in1モジュールMを逆導通形のIGBT素子で構成している。但し、それに限定されるものではなく、例えば、2in1モジュールを逆導通形のMOSFET素子で構成してもよいし、逆導通形のGTO素子で構成してよい。
【0067】
DC−DCコンバータ回路10において、2in1モジュールを適用できる回路を構成することが可能な実施例として、次の第1実施例を例示できる。
【0068】
[第1実施例]
図6は、2in1モジュールを適用できる回路を構成することが可能な第1実施例の回路図である。なお、図6に示す各接続点A〜Dは、図1に示す各接続点A〜Dに対応している。このことは、後述する図7の回路についても同様である。
【0069】
第1実施例では、図6に示すように、DC−DCコンバータ回路10は、第1、第2、第4から第8、第10から第12ダイオードD1,D2,D4〜D8,D10〜D12をさらに備えている。
【0070】
第1、第2、第4、第5及び第6ダイオードD1,D2,D4,D5,D6は、第1、第2、第4、第5及び第6半導体スイッチS1,S2,S4,S5,S6が、それぞれ、電流をオン,オフ制御できる方向とは逆の方向に電流を流せるように第1、第2、第4、第5及び第6半導体スイッチS1,S2,S4,S5,S6に並列接続されている。
【0071】
第7ダイオードD7は、第1半導体スイッチS1とインダクタL(接続点B参照)との間に、第1ダイオードD1と逆方向に電流を流すことができるように接続されている。第8ダイオードD8は、第2半導体スイッチS2とインダクタL(接続点B参照)との間に、第2ダイオードD2と逆方向に電流を流すことができるように接続されている。
【0072】
また、第10ダイオードD10は、第4半導体スイッチS4とインダクタL(接続点C参照)との間に、第4ダイオードD4と逆方向に電流を流すことができるように接続されている。第11ダイオードD11は、第5半導体スイッチS5とインダクタL(接続点C参照)との間に、第5ダイオードD5と逆方向に電流を流すことができるように接続されている。第12ダイオードD12は、第6半導体スイッチS6とインダクタL(接続点C参照)との間に、第6ダイオードD6と逆方向に電流を流すことができるように接続されている。
【0073】
この第1実施例では、第4半導体スイッチS4と第4ダイオードD4とからなる半導体素子を上アームの第1逆導通形の半導体素子H1とし、第1半導体スイッチS1と第1ダイオードD1とからなる半導体素子を下アームの第2逆導通形の半導体素子H2とすることができる。
【0074】
これより、DC−DCコンバータ回路10において、第1逆導通形の半導体素子H1と第2逆導通形の半導体素子H2とを直列接続して一体的に形成した2in1モジュールM1を用いることができる。
【0075】
また、第5半導体スイッチS5と第5ダイオードD5とからなる半導体素子を上アームの第3逆導通形の半導体素子H3とし、第2半導体スイッチS2と第2ダイオードD2とからなる半導体素子を下アームの第4逆導通形の半導体素子H4とすることができる。
【0076】
これにより、DC−DCコンバータ回路10において、第3逆導通形の半導体素子H3と第4逆導通形の半導体素子H4とを直列接続して一体的に形成した2in1モジュールM2を用いることができる。
【0077】
このように、2in1モジュールM1,M2を用いることができるので、使い勝手のよい回路構成を実現することが可能となる。
【0078】
ところで、第1実施例の回路構成では、図6に示すように、第1及び第2ダイオードD1,D2の何れにおいても共通アノードをとり得る構成にはなっていない。例えば、第1及び第2半導体スイッチS1,S2がIGBTである場合、共通のエミッタをとり得る構成にはなっていない。また、第1及び第2半導体スイッチS1,S2がMOSFETである場合、共通のソースをとり得る構成にはなっていない。また、第1及び第2半導体スイッチS1,S2がGTOである場合、共通のカソードをとり得る構成にはなっていない。
【0079】
このために、第1及び第2半導体スイッチS1,S2のそれぞれに対して設けられるゲートドライブ電源(図示せず)、すなわち、合計2個のゲートドライブ電源が必要となる。
【0080】
かかる観点から、本発明の実施の形態に係るDC−DCコンバータ回路10において、ゲートドライブ電源の個数を削減できる回路を構成することが可能な実施例として、次の第2実施例を例示できる。
【0081】
[第2実施例]
図7は、ゲートドライブ電源の個数を削減できる回路を構成することが可能な第2実施例の回路図である。なお、図7は、DC−DCコンバータ回路10においてインダクタLの接続点B側の部分を示している。
【0082】
第2実施例では、図7に示すように、DC−DCコンバータ回路10は、第1、第2、第4及び第5ダイオードD1,D2,D4,D5をさらに備えている。
【0083】
第1及び第2ダイオードD1,D2は、第1及び第2半導体スイッチS1,S2が、それぞれ、電流をオン,オフ制御できる方向とは逆の方向に電流を流せるように第1及び第2半導体スイッチS1,S2に並列接続されている。
【0084】
第4ダイオードD4は、第1半導体スイッチS1と第1電圧源E1の陽極側(接続点A参照)との間に、第1ダイオードD1と逆の方向に電流を流すことができるように接続されている。
【0085】
第5ダイオードD5は、第2半導体スイッチS2と第2電圧源E2の陽極側(接続点D参照)との間に、第2ダイオードD2と逆の方向に電流を流すことができるように接続されている。
【0086】
この第2実施例では、第1ダイオードD1のアノード側と第2ダイオードD2のアノード側とが接続されており、第1ダイオードD1及び第2ダイオードD2に対して共通アノードとすることができる(破線部α参照)。
【0087】
これにより、DC−DCコンバータ回路10において、第1半導体スイッチS1及び第2半導体スイッチS2に対して同一の(共通の)ゲートドライブ電源(図示せず)とすることができる。従って、第1半導体スイッチS1及び第2半導体スイッチS2に対して1個のゲートドライブ電源で済むことになる。
【0088】
次に、第4、第5及び第6半導体スイッチS4,S5,S6の制御装置20による制御例について説明する。
【0089】
本実施の形態では、インダクタLに電流が流れている場合においては、第4から第6半導体スイッチS4〜S6が全てオフ状態となると、第4、第5及び第6半導体スイッチS4,S5,S6に高電圧が印加され、これにより第4、第5及び第6半導体スイッチS4,S5,S6の何れかの半導体スイッチが破壊することがある。
【0090】
かかる観点から、DC−DCコンバータ回路10において、制御装置20による次のスイッチング動作の第1制御例から第3制御例を行う保護機能を備えている。
【0091】
なお、次の第1制御例から第3制御例において、インダクタLに流れる電流は、図示を省略した電流計にて測定することができる。制御装置20は、この電流計の検出結果に基づきインダクタLに電流が流れているか否かを認識することができる。
【0092】
[第1制御例]
第1制御例では、制御装置20は、インダクタLに電流が流れている場合は、第4から第6半導体スイッチS4〜S6のうちの1個以上の半導体スイッチを常時オン状態とするように、第4から第6半導体スイッチS4〜S6の制御電圧を制御する構成とされている。
【0093】
こうすることで、インダクタLに電流が流れている場合に、インダクタLを含む電流経路を確保することができる。
【0094】
例えば、インダクタLに電流が流れている場合において、第5半導体スイッチS5だけがオン状態であれば、第3電流経路R3(図2(c))が形成される。
【0095】
また、例えば、インダクタLに電流が流れている場合において、第4半導体スイッチS4だけがオン状態であれば、第6電流経路R6(図3(c)参照)が形成される。
【0096】
また、例えば、インダクタLに電流が流れている場合において、第6半導体スイッチS6だけがオン状態であれば、第8電流経路R8(図4(b))が形成される。
【0097】
このように第1制御例では、第4から第6半導体スイッチS4〜S6が全てオフ状態となることを回避でき、これにより、高電圧による第4、第5及び第6半導体スイッチS4,S5,S6の何れかの半導体スイッチの破壊を防止することができる。
【0098】
[第2制御例]
第2制御例では、制御装置20は、インダクタLに電流が流れている場合は、第4から第6半導体スイッチS4〜S6のうちの一つ又は二つの半導体スイッチをオフ状態とする前に、第4から第6半導体スイッチS4〜S6のうちの該オフ状態とする半導体スイッチ以外の半導体スイッチの少なくとも一つを事前にオン状態とするように、第4から第6半導体スイッチS4〜S6の制御電圧を制御する構成とされている。
【0099】
こうすることで、インダクタLに電流が流れている場合に、インダクタLを含む電流経路を確保することができる。
【0100】
例えば、インダクタLに電流が流れている場合において、オフ状態とする第4及び第6半導体スイッチS4,S6をオフ状態とする前に、それ以外の第5半導体スイッチS5を事前にオン状態にすると仮定し、かつ、第1及び第2半導体スイッチS1,S2をオフ状態と仮定すると、第8電流経路R8(図4(b)参照)が形成される。
【0101】
このように第2制御例では、第4から第6半導体スイッチS4〜S6が全てオフ状態となることを回避でき、これにより、高電圧による第4、第5及び第6半導体スイッチS4,S5,S6の何れかの半導体スイッチの破壊を防止することができる。
【0102】
[第3制御例]
第3制御例では、制御装置20は、インダクタLに電流が流れている状態で、第1、第2、第4、第5及び第6半導体スイッチS1,S2,S4,S5,S6のオン状態及びオフ状態を示す動作モードを変更する場合においては、変更前の動作モードでオン状態としている全ての半導体スイッチを動作モードの変更後も一定時間オン状態とするか、または、変更後の動作モードでオン状態にする全ての半導体スイッチを動作モードの変更前に一定時間オン状態とするように、第1、第2、第4、第5及び第6半導体スイッチS1,S2,S4,S5,S6の制御電圧を制御する構成とされている。
【0103】
図8及び図9は、何れも第3制御例において第1から第9モードのうち一のモードから他のモードへ動作モードを変更する場合での一例を示す状態遷移図である。
【0104】
図8(a)は、第1モードの状態を示しており、図8(b)は、転流状態における電流経路が一通りである場合の一例である第1モードから第2モードへの転流状態を示しており、図8(c)は、第2モードの状態を示している。
【0105】
図8(a)に示す状態では、第1モードにより第1電流経路R1(図2(a)参照)が形成される。
【0106】
次に、図8(b)に示す状態では、変更前の動作モードでオン状態としている全ての半導体スイッチ(ここでは第1及び第6半導体スイッチS1,S6)が動作モードの変更後も一定時間オン状態となる。または、変更後の動作モードでオン状態にする全ての半導体スイッチ(ここでは第1及び第5半導体スイッチS1,S5)が動作モードの変更前に一定時間オン状態となる。このとき、第1、第5及び第6半導体スイッチS1,S5,S6がオン状態となり、結果、第1電流経路R1(図2(a)参照)が形成される。
【0107】
そして、図8(c)に示す状態では、第2モードになり、第2電流経路R2(図2(b)参照)が形成される。
【0108】
図9(a)は、第1モードの状態を示しており、図9(b)は、転流状態における電流経路が二通りであり、第1電圧源E1の出力電圧V1と第2電圧源E2の出力電圧V2との大小関係によって電流経路が異なる場合の一例である第1モードから第5モードへの転流状態を示しており、図9(c)は、第5モードの状態を示している。
【0109】
図9(a)に示す状態では、第1モードにより第1電流経路R1(図2(a)参照)が形成される。
【0110】
次に、図9(b)に示す状態では、変更前の動作モードでオン状態としている全ての半導体スイッチ(ここでは第1及び第6半導体スイッチS1,S6)が動作モードの変更後も一定時間オン状態となる。または、変更後の動作モードでオン状態にする全ての半導体スイッチ(ここでは第2及び第4半導体スイッチS2,S4)が動作モードの変更前に一定時間オン状態となる。このとき、第1、第2、第4及び第6半導体スイッチS1,S2,S4,S6がオン状態となり、第1電圧源E1の出力電圧V1が第2電圧源E2の出力電圧V2よりも大きい場合に第1電流経路R1(図2(a)参照)が形成され、第1電圧源E1の出力電圧V1が第2電圧源E2の出力電圧V2よりも小さい場合に第4電流経路R4(図3(a)参照)が形成される。
【0111】
そして、図9(c)に示す状態では、第5モードになり、第2電流経路R5(図3(b)参照)が形成される。
【0112】
このように第3制御例では、第4から第6半導体スイッチS4〜S6が全てオフ状態となることを回避でき、これにより、高電圧による第4、第5及び第6半導体スイッチS4,S5,S6の何れかの半導体スイッチの破壊を防止することができる。
【符号の説明】
【0113】
10 DC−DCコンバータ回路
20 制御装置
D1〜D8 第1から第8ダイオード
D10〜D16 第10から第16ダイオード
E1 第1電圧源
E2 第2電圧源
L インダクタ
S1〜S2 第1及び第2半導体スイッチ
S4〜S6 第4から第6半導体スイッチ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが一方向に電流を流すことができる第1、第2、第4、第5及び第6の半導体スイッチと、第3のダイオードと、インダクタとを備え、
前記第1及び第2の半導体スイッチと、前記第3のダイオードとは、何れも前記インダクタの一端に対して電流が流入する向きに接続されており、
前記第4から第6までの半導体スイッチは、何れも前記インダクタの他端に対して電流が流出する向きに接続されており、
前記第1及び第4の半導体スイッチの前記インダクタの接続端とは反対側端に第1電圧源の陽極側が接続され、
前記第2及び第5の半導体スイッチの前記インダクタの接続端とは反対側端に第2電圧源の陽極側が接続され、
前記第3のダイオード及び前記第6の半導体スイッチの前記インダクタの接続端とは反対側端に前記第1電圧源の陰極側と前記第2電圧源の陰極側との双方が接続されることを特徴とするDC−DCコンバータ回路。
【請求項2】
請求項1に記載のDC−DCコンバータ回路であって、
前記第1、第2、第4、第5及び第6の半導体スイッチが、それぞれ、電流をオン,オフ制御できる方向とは逆の方向に電流を流せるように前記第1、第2、第4、第5及び第6の半導体スイッチに並列接続された第1、第2、第4、第5及び第6のダイオードと、
前記第1、第2、第4、第5及び第6の半導体スイッチと前記インダクタとの間に、それぞれ、前記第1、第2、第4、第5及び第6のダイオードと逆方向に電流を流すことができるように接続された第7、第8、第10、第11及び第12までのダイオードとを
さらに備えていることを特徴とするDC−DCコンバータ回路。
【請求項3】
請求項1に記載のDC−DCコンバータ回路であって、
前記第1及び第2の半導体スイッチが、それぞれ、電流をオン,オフ制御できる方向とは逆の方向に電流を流せるように前記第1及び第2の半導体スイッチに並列接続された第1及び第2のダイオードと、
前記第1の半導体スイッチと前記第1電圧源の陽極側との間に、前記第1のダイオードと逆の方向に電流を流すことができるように接続された第4のダイオードと、
前記第2の半導体スイッチと前記第2電圧源の陽極側との間に、前記第2のダイオードと逆の方向に電流を流すことができるように接続された第5のダイオードと
をさらに備えていることを特徴とするDC−DCコンバータ回路。
【請求項4】
請求項1から請求項3までの何れか一つに記載のDC−DCコンバータ回路であって、
前記インダクタに電流が流れている場合は、前記第4から第6までの半導体スイッチのうちの1個以上の半導体スイッチを常時オン状態とするための手段を備えることを特徴とするDC−DCコンバータ回路。
【請求項5】
請求項1から請求項4までの何れか一つに記載のDC−DCコンバータ回路であって、
前記インダクタに電流が流れている場合は、前記第4から第6までの半導体スイッチのうちの一つ又は二つの半導体スイッチをオフ状態とする前に、前記第4から第6までの半導体スイッチのうちの該オフ状態とする半導体スイッチ以外の半導体スイッチの少なくとも一つを事前にオン状態とするための手段を備えることを特徴とするDC−DCコンバータ回路。
【請求項6】
請求項1から請求項5までの何れか一つに記載のDC−DCコンバータ回路であって、
前記インダクタに電流が流れている状態で、前記第1、第2、第4、第5及び第6の半導体スイッチのオン状態及びオフ状態を示す動作モードを変更する場合においては、変更前の動作モードでオン状態としている全ての半導体スイッチを動作モードの変更後も一定時間オン状態とし、または、変更後の動作モードでオン状態にする全ての半導体スイッチを動作モードの変更前に一定時間オン状態とするための手段を備えることを特徴とするDC−DCコンバータ回路。
【請求項1】
それぞれが一方向に電流を流すことができる第1、第2、第4、第5及び第6の半導体スイッチと、第3のダイオードと、インダクタとを備え、
前記第1及び第2の半導体スイッチと、前記第3のダイオードとは、何れも前記インダクタの一端に対して電流が流入する向きに接続されており、
前記第4から第6までの半導体スイッチは、何れも前記インダクタの他端に対して電流が流出する向きに接続されており、
前記第1及び第4の半導体スイッチの前記インダクタの接続端とは反対側端に第1電圧源の陽極側が接続され、
前記第2及び第5の半導体スイッチの前記インダクタの接続端とは反対側端に第2電圧源の陽極側が接続され、
前記第3のダイオード及び前記第6の半導体スイッチの前記インダクタの接続端とは反対側端に前記第1電圧源の陰極側と前記第2電圧源の陰極側との双方が接続されることを特徴とするDC−DCコンバータ回路。
【請求項2】
請求項1に記載のDC−DCコンバータ回路であって、
前記第1、第2、第4、第5及び第6の半導体スイッチが、それぞれ、電流をオン,オフ制御できる方向とは逆の方向に電流を流せるように前記第1、第2、第4、第5及び第6の半導体スイッチに並列接続された第1、第2、第4、第5及び第6のダイオードと、
前記第1、第2、第4、第5及び第6の半導体スイッチと前記インダクタとの間に、それぞれ、前記第1、第2、第4、第5及び第6のダイオードと逆方向に電流を流すことができるように接続された第7、第8、第10、第11及び第12までのダイオードとを
さらに備えていることを特徴とするDC−DCコンバータ回路。
【請求項3】
請求項1に記載のDC−DCコンバータ回路であって、
前記第1及び第2の半導体スイッチが、それぞれ、電流をオン,オフ制御できる方向とは逆の方向に電流を流せるように前記第1及び第2の半導体スイッチに並列接続された第1及び第2のダイオードと、
前記第1の半導体スイッチと前記第1電圧源の陽極側との間に、前記第1のダイオードと逆の方向に電流を流すことができるように接続された第4のダイオードと、
前記第2の半導体スイッチと前記第2電圧源の陽極側との間に、前記第2のダイオードと逆の方向に電流を流すことができるように接続された第5のダイオードと
をさらに備えていることを特徴とするDC−DCコンバータ回路。
【請求項4】
請求項1から請求項3までの何れか一つに記載のDC−DCコンバータ回路であって、
前記インダクタに電流が流れている場合は、前記第4から第6までの半導体スイッチのうちの1個以上の半導体スイッチを常時オン状態とするための手段を備えることを特徴とするDC−DCコンバータ回路。
【請求項5】
請求項1から請求項4までの何れか一つに記載のDC−DCコンバータ回路であって、
前記インダクタに電流が流れている場合は、前記第4から第6までの半導体スイッチのうちの一つ又は二つの半導体スイッチをオフ状態とする前に、前記第4から第6までの半導体スイッチのうちの該オフ状態とする半導体スイッチ以外の半導体スイッチの少なくとも一つを事前にオン状態とするための手段を備えることを特徴とするDC−DCコンバータ回路。
【請求項6】
請求項1から請求項5までの何れか一つに記載のDC−DCコンバータ回路であって、
前記インダクタに電流が流れている状態で、前記第1、第2、第4、第5及び第6の半導体スイッチのオン状態及びオフ状態を示す動作モードを変更する場合においては、変更前の動作モードでオン状態としている全ての半導体スイッチを動作モードの変更後も一定時間オン状態とし、または、変更後の動作モードでオン状態にする全ての半導体スイッチを動作モードの変更前に一定時間オン状態とするための手段を備えることを特徴とするDC−DCコンバータ回路。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−41340(P2011−41340A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−183459(P2009−183459)
【出願日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】
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