説明

DGAT1の活性を阻害させるための化合物

アセチルCoA(アセチル補酵素A):ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ(DGAT1)の活性を阻害する、式(I)の化合物または前記化合物の塩が提供され、


ここで例えば、Rは、置換されていてもよいフェニルまたはナフチルであり;環Aは、(3−6C)シクロアルキル、(5−12C)ビシクロアルキル、およびフェニルから選択され;nは0、1、または2であり;Rは、例えば、水素、フルオロ、クロロ、またはヒドロキシであり;環Bは、(3−6C)シクロアルキル、(5−12C)ビシクロアルキル、およびフェニルから選択され;Lは、直接結合であるか、あるいは定義のリンカー基であり;そしてRは、例えば、ヒドロキシ、カルボキシ、または(1−6C)アルコキシカルボニルであり;さらに、これら物質の製造方法、これらの物質を含有する医薬組成物、およびこれらの物質を医薬として使用することも提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アセチルCoA(アセチル補酵素A):ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ(DGAT1)の活性を阻害する化合物、前記化合物の製造方法、前記化合物を活性成分として含有する医薬組成物、DGAT1の活性に関連した病状を治療するための方法、前記化合物を医薬として使用すること、およびヒト等の温血動物に対してDGAT1の活性を阻害させるのに使用するための医薬の製造において前記化合物を使用すること、に関する。具体的には、本発明は、ヒト等の温血動物におけるII型糖尿病、インスリン抵抗性、耐糖能異常、および肥満症を治療するのに有用な化合物に関し、さらに詳細には、ヒト等の温血動物におけるII型糖尿病、インスリン抵抗性、耐糖能異常、および肥満症の治療に使用するための医薬の製造においてこれらの化合物を使用することに関する。
【背景技術】
【0002】
アシルCoA:ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ(DGAT)は、細胞のミクロソームフラクション中に見出される。この物質は、ジアシルグリセロールと脂肪アシルCoAとの結合を容易にすることによって、グリセロールホスフェート経路(細胞中のトリグリセリド合成の主要な経路であると考えられている)における最終反応を触媒し、この結果トリグリセリドが形成される。DGATがトリグリセリド合成に対して律速作用を果たしているかどうかは不明であるけれども、DGATは、このタイプの分子の生成に委ねられている経路中の唯一の段階を触媒している[Lehner&Kuksis(1996)Biosynthesis of triacylglycerols.Prog.Lipid Res.35:169−201]。
【0003】
2種のDGAT遺伝子が複製され、特性決定されている。コード化タンパク質のどちらも、同じ反応を触媒するが、配列相同性は共有しない。DGAT1遺伝子は、アシルCoA:コレステロールアシルトランスフェラーゼ(ACAT)遺伝子に類似していることから識別された[Cases et al(1998)Identification of a gene encoding an acyl CoA:diacylglycerol acyltransferase,a key enzyme in triacylglycerol synthesis.Proc.Natl.Acad.Sci.USA98:13018−13023]。DGAT1活性は、含脂肪細胞を含めた多くの哺乳類組織中において見出されている。
【0004】
これまで分子プローブが無いことから、DGAT1の調節については殆ど知られていない。DGAT1は、含脂肪細胞の分化時に大幅にアップレギュレートされることが知られている。
【0005】
遺伝子ノックアウトマウスでの研究から、DGAT1の活性のモジュレータがII型糖尿病と肥満症の治療に対して有用であることがわかった。DGAT1ノックアウト(Dgat1−/−)マウスは、空腹時血清トリグリセリドレベルが正常であること、および脂肪組織の組成が正常であることから証明されるように、生存可能であり、トリグリセリドを合成することができる。Dgat1−/−マウスは、ベースラインにおいては野生型マウスより脂肪組織が少なく、食物由来の肥満症に罹りにくい。普通食と高脂肪食の両方に対し、Dgat1−/−マウスの代謝速度は、野生型マウスより約20%高い[Smith et al(2000)Obesity resistance and multiple mechanisms of triglyceride synthesis in mice lacking DGAT.Nature Genetics 25:87−90]。Dgat1−/−マウスにおける身体活動の増大は、エネルギー消費量が増大していることをある程度説明している。Dgat1−/−マウスはさらに、インスリン感受性の増大とグルコース処理速度の20%増大を示す。レプチンのレベルは、脂肪塊の50%減少と一致して、Dgat1−/−マウスにおいて50%減少した。
【0006】
Dgat1−/−マウスがob/obマウスと交雑されると、これらのマウスはob/ob表現型を表わし[Chen et al(2002)Increased insulin and leptin sensitivity in mice lacking acyl CoA:diacylglycerol acyltransferase J.Clin.Invest.109:1049−1055]、従ってDgat1−/−表現型は完全なレプチン経路を必要とすることがわかる。Dgat1−/−マウスがAgoutiマウスと交雑されると、グルコースレベルが正常な状態で体重の減少が見られ、野性型マウス、agoutiマウス、またはob/obDgat1−/−マウスと比較してインスリンレベルが70%低下する。
【0007】
Dgat1−/−マウスからの脂肪組織を野生型マウスに移植すると、食物由来の肥満症に罹りにくくなり、またこれらマウスにおけるグルコース代謝が向上する[Chen et al(2003)Obesity resistance and enhanced glucose metabolism in mice transplanted with white adipose tissue lacking acyl CoA:diacylglycerol acyltransferase J.Clin.Invest.111:1715−1722]。
【0008】
国際特許出願WO2004/047755(Tularik and Japan Tobacco)とWO2005/013907(Japan Tobacco and Amgen)は、DGAT−1の阻害剤である縮合二環式のへテロ環化合物を開示している。JP2004−67635(大塚製薬)は、DGAT−1を阻害するチアゾールアミド置換されたフェニル化合物(アルキルホスホネートでさらに置換される)を開示している。WO2004/100881(バイエル)は、イミダゾール、オキサゾール、またはチアゾールで置換された、DGAT−1を阻害するビフェニルアミノ化合物を開示している。我々の同時係属国際出願PCT/GB2005/004726は、DGAT−1を阻害するオキサジアゾール化合物を開示している。
【発明の概要】
【0009】
従って本発明は、式(I)
【0010】
【化1】

【0011】
で示される化合物または前記化合物の塩を提供し、上記式中、
はフェニルとナフチルから選択され、
ここでRは、
i)グループa)から選択される置換基、および必要に応じて、グループb)から選択される置換基もしくは最大で2個までのグループc)からの置換基、あるいは
ii)グループb)から独立的に選択される1個もしくは2個の置換基、および必要に応じて、グループc)から選択される置換基、あるいは
iii)グループc)から独立的に選択される最大で3個までの置換基
で必要に応じて置換されており、
ここでグループa)からc)は以下の通り:
グループa) (2−4C)アルキル、(2−4C)アルケニル、(2−4C)アルキニル、フェニル、4−フルオロフェニル、フェノキシ、4−フルオロフェノキシ、ベンジルオキシ、4−フルオロベンジルオキシ、(3−6C)シクロアルキル、(3−6)Cシクロアルコキシ、ハロ(1−2C)アルキル;
グループb) クロロ、メチル、およびメトキシ;
そしてグループc) フルオロ;
であり、
環Aは、(3−6C)シクロアルキル、(5−12C)ビシクロアルキル、およびフェニルから選択され;
nは0、1、または2であり;
は、水素、フルオロ、クロロ、ヒドロキシ、メトキシ、ハロ(1−2C)アルキル、メチル、エチル、シアノ、およびメチルスルホニルから選択され;
環Bは、(3−6C)シクロアルキル、(5−12C)ビシクロアルキル、およびフェニルから選択され;
は、直接結合であるか、あるいは−(CR1−2−、−O−(CR1−2−、および−CH(CR1−2−から選択されるリンカーであり、ここでLのそれぞれの意味に関して、CR基はRに直接結合しており、各Rは、水素、ヒドロキシ、(1−3C)アルコキシ、(1−4C)アルキル、ヒドロキシ(1−3C)アルキル、および(1−2C)アルコキシ(1−2C)アルキルから独立的に選択され、但しLが−O−(CR1−2−であるときは、酸素原子に直接結合している炭素原子上のRはヒドロキシまたは(1−3C)アルコキシではなく;
各Rは、水素とメチルから独立的に選択され;
は、ヒドロキシ、カルボキシ、(1−6C)アルコキシカルボニル、およびカルボン酸模倣体すなわちバイオイソスターから選択される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書において、“アルキル”は、直鎖アルキル基と分岐鎖アルキル基の両方を含むが、“プロピル”等の個々のアルキル基に言及しているときは、直鎖アルキル基だけを特定している。他の総称に対しても、類似のきまりを適用する。特に明記しない限り、“アルキル”という用語は、1〜10個の炭素原子(適切には1〜6個の炭素原子、好ましくは1〜4個の炭素原子)を有する鎖を表わすのが有利である。
【0013】
本明細書において、“アルコキシ”は、上記アルキル基が酸素原子に結合した形の基を意味している。
理解しておかなければならないことは、特に明記しない限り、任意の基上の任意の置換基は、必要に応じて、利用可能な任意の原子(四級化されないという条件でヘテロ原子を含む)に結合していてよい、という点である。
【0014】
本明細書において、“ヘテロ原子”は非炭素原子(例えば、酸素原子、窒素原子、またはイオウ原子)を表わしている。
特に明記しない限り、“ハロアルキル”は、少なくとも1個のハロ置換基を有するアルキル基を表わしている。ハロアルキルは、全ての水素原子がハロ(例えばフルオロ)で置換されている場合のペルハロ基を含む。
【0015】
理解しておかなければならないことは、理解しておかなければならないことは、特に明記しない限り、任意の基上の任意の置換基は、必要に応じて、利用可能な任意の原子(四級化されないという条件でヘテロ原子を含む)に結合していてよい、という点である。
【0016】
本明細書においては、1つより多い官能性を含む基[例えば、(1−6C)アルコキシ(1−6C)アルキル]を表わすのに合成語が使用される。このような用語は、それぞれの成分部分に関して当業者により理解されている意味に従って解釈するものとする。
【0017】
任意の置換基が“0種、1種、2種、または3種”の基から選択される場合、理解しておかなければならないことは、この定義は、全ての置換基が特定の基の1つから選択されること、あるいは当該基が特定の基の2種以上から選択されることを含む、という点である。“0種、1種、もしくは2種”の基、または“1種もしくは2種”の基、および他のあらゆる類似の基に対しても類似のきまりを適用する。
【0018】
置換基は、例えばアルキル基上の任意の適切な位置に存在してよい。従ってヒドロキシ置換(1−6C)アルキルは、ヒドロキシメチル、1−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシエチル、および3−ヒドロキシプロピルを含む。
【0019】
(1−4C)アルキルの例としては、メチル、エチル、プロピル、およびイソプロピル等があり;(1−6C)アルキルの例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、t−ブチル、ペンチル、イソペンチル、1,2−ジメチルプロピル、およびヘキシル等があり;(2−4C)アルキルの例としては、エチル、プロピル、イソプロピル、およびt−ブチル等があり;(2−4C)アルケニルの例としては、エテニル、プロペニル、2−ブテニル、および1−ブテニル等があり;(2−4C)アルキニルの例としては、エチニル、プロピニル、2−ブチニル、および1−ブチニル等があり;(1−3C)アルコキシの例としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、およびイソプロポキシ等があり;(1−4C)アルコキシの例としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、およびtert−ブトキシ等があり;(1−6C)アルコキシの例としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、tert−ブトキシ、およびペントキシ等があり;(1−2C)アルコキシ(1−2C)アルキルの例としては、メトキシメチル、エトキシメチル、およびメトキシエチル等があり;(3−6C)シクロアルキルの例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、およびシクロヘキシル等があり;(3−6C)シクロアルコキシの例としては、シクロプロピルオキシ、シクロブチルオキシ、シクロペンチルオキシ、およびシクロヘキシルオキシ等があり;(5−12C)ビシクロアルキルの例としては、ノルボルニル、デカリニル(ビシクロ[4,4,0]デシル)(シスとトランス)、ビシクロ[5,3,0]デシル、およびヒドロインダニル(ビシクロ[4,3,0]ノニル)等があり;ハロの例としては、クロロ、ブロモ、ヨード、およびフルオロ等があり;ハロ(1−6C)アルキルの例としては、クロロメチル、フルオロエチル、フルオロメチル、フルオロプロピル、フルオロブチル、ジクロロメチル、ジフルオロメチル、1,2−ジフルオロエチル、および1,1−ジフルオロエチル等のハロ(1−4C)アルキル、ならびにトリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、およびヘプタフルオロプロピル等のペルハロ(1−6C)アルキル[ペルハロ(1−4C)アルキルを含む]等があり;ハロ(1−2C)アルキルの例としては、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、フルオロエチル、およびペンタフルオロエチル等があり;ヒドロキシ(1−6C)アルキルの例としては、ヒドロキシメチル、1−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシエチル、および3−ヒドロキシプロピル等のヒドロキシ(1−3C)アルキルがあり;(1−6C)アルコキシカルボニルの例としては、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、およびtert−ブトキシカルボニル等の(1−4C)アルコキシカルボニルがある。
【0020】
本明細書で使用している“カルボン酸模倣体すなわちバイオイソスター”は、「The Practice of Medicinal Chemistry,Wermuth C.G.Ed.:アカデミックプレス:ニューヨーク,1996,p203」に記載の群を含む。このような基の特定の例としては、−SOH、−S(O)NHR13、−S(O)NHC(O)R13、−CHS(O)13、−C(O)NHS(O)13、−C(O)NHOH、−C(O)NHCN、−CH(CF)OH、−C(CF3)OH、−P(O)(OH)、および下記のサブ式(a)〜(i’)
【0021】
【化2】

【0022】
【化3】

【0023】
【化4】

【0024】
【化5】

【0025】
【化6】

【0026】
【化7】

【0027】
【化8】

【0028】
【化9】

【0029】
【化10】

【0030】
の基があり、ここでR13は、(1−6C)アルキル、アリール、またはヘテロアリールであり;R27は、水素または(1−4C)アルキルである。言うまでもないが、上記のサブ式(a)〜(i’)においてはケト−エノール互変異性が可能であり、サブ式(a)〜(i’)はこれら全ての互変異性体を包含する。
【0031】
あいまいさを避けるために、本明細書においては、ある基が‘前記にて定義された’という言葉によって限定されている場合、当該基は、当該基に関する特定の定義のそれぞれ及び全てだけでなく、最初に記載の最も広い定義も包含する、という点を理解しておかねばならない。
【0032】
理解しておかねばならないことは、置換基が、ヘテロ原子によってつながった2つの置換基をアルキル鎖上に有する場合(例えば、2つのアルコキシ置換基)、これら2つの置換基は、アルキル鎖の同じ炭素原子上の置換基ではない、という点である。
【0033】
他のところで述べられていないとしても、ある特定の基に対する任意の適切な置換基は、本明細書に記載の類似の基に関して述べられているものである。
式(I)の化合物は安定な酸性塩や塩基性塩を形成することがあり、このような場合、化合物を塩として投与するのが適切であり、また医薬的に許容しうる塩は従来法(例えば後述の方法)によって製造することができる。
【0034】
医薬的に許容しうる適切な塩としては、メタンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、α−グリセロリン酸塩、フマル酸塩、塩酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、および(それほど好ましいとは言えない)臭化水素酸塩等の酸付加塩がある。さらに、リン酸や硫酸を使用して形成される塩も適切である。他の態様においては、適切な塩は、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、有機アミン塩[例えば、トリエチルアミン、モルホリン、N−メチルピペリジン、N−エチルピペリジン、プロカイン、ジベンジルアミン、N,N−ジベンジルエチルアミン、トリス−(2−ヒドロキシエチル)アミン、N−メチル−d−グルカミン、およびリシン等のアミノ酸の塩]等の塩基性塩である。荷電官能基(charged functions)の数およびカチオンもしくはアニオンの価数に応じて、1つより多いカチオンもしくはアニオンが存在していてもよい。
【0035】
しかしながら、製造時における塩の単離を容易にするために、医薬的に許容しうる塩であろうとなかろうと、選択された溶媒に溶解しにくい塩であるのが好ましい。
本発明においては、式(I)の化合物または前記化合物の塩が互変異性の現象を示してよいという点、そして本明細書に記載の式は、可能な互変異性形のうちの1種を示しているにすぎないという点を理解しておかねばならない。本発明は、DGAT1活性を阻害する全ての互変異性形を包含し、式にて記載のいずれか1種の互変異性形だけに限定されない、という点を理解しておかねばならない。
【0036】
さらに、式(I)の化合物のプロドラッグも本発明の範囲内である。種々の形のプロドラッグが当業界に公知である。このようなプロドラッグ誘導体の例に対しては、以下を参照のこと:
a)「Design of Prodrugs,H.Bundgaard編,(エルセビア,1985)」および「Methods in Enzymology,Vol.42,p.309−396,K.Widder et al.編,et al.(アカデミックプレス,1985)」;
b)「A Textbook of Drug Design and Development,Krogsgaard−Larsen編」および「H.Bundgaard,Chapter5“Design and Application of Prodrugs”,H.Bundgaard編,p.113−191(1991)」;
c)「H.Bundgaard,Advanced Drug Delivery Reviews,,1−38(1992)」;
d)「H.Bundgaard,et al.,Journal of Pharmaceutical Science,77,285(1988)」;および
e)「N.Kakeya,et al.,Chem Pharm Bull,32,692(1984)」
このようなプロドラッグの例は、本発明の化合物のインビボ開裂可能なエステルを含む。カルボキシ基を有する本発明の化合物のインビボ開裂可能なエステルは、例えば、ヒトもしくは動物の体内において開裂されてもとの酸を生成する、医薬的に許容しうるエステルである。カルボキシに対する、医薬的に許容しうる適切なエステルとしては、(1−6C)アルキル(例えば、メチルやエチル);(1−6C)アルコキシメチルエステル(例えばメトキシメチル);(1−6C)アルカノイルオキシメチルエステル(例えばピバロイルオキシメチル);フタリジルエステル;(3−8C)シクロアルコキシカルボニルオキシ(1−6C)アルキルエステル(例えば1−シクロヘキシルカルボニルエチル);1,3−ジオキソラン−2−イルメチルエステル(例えば5−メチル−1,3−ジオキソラン−2−イルメチル);(1−6C)アルコキシカルボニルオキシメチルエステル(例えば1−メトキシカルボニルオキシエチル);ならびに、アミノカルボニルメチルエステルおよびこれらのモノ−N−((1−6C)アルキル)体とジ−N−((1−6C)アルキル)体(例えば、N,N−ジメチルアミノカルボニルメチルエステルやN−エチルアミノカルボニルメチルエステル);などがあり、これらのエステルは、本発明の化合物中のどのカルボキシ基において形成されてもよい。ヒドロキシ基を有する本発明の化合物のインビボ開裂可能なエステルは、例えば、ヒトもしくは動物の体内において開裂されてもとのヒドロキシ基を生成する、医薬的に許容しうるエステルである。ヒドロキシ基に対する、医薬的に許容しうる適切なエステルとしては、(1−6C)アルカノイルエステル(例えばアセチルエステル);および、フェニル基がアミノメチルまたはN−置換モノ−(1−6C)アルキルアミノメチルもしくはN−置換ジ−(1−6C)アルキルアミノメチルで置換されていてよいベンゾイルエステル(例えば、4−アミノメチルベンゾイルエステルや4−N,N−ジメチルアミノメチルベンゾイルエステル);などがある。
【0037】
当業者にとっては言うまでもないことであるが、式(I)の特定の化合物は、不斉置換炭素原子および/またはイオウ原子を含有し、従って光学活性形やラセミ形にて存在することがあり、光学活性形やラセミ形にて単離することができる。多形を示す化合物もある。理解しておかねばならないことは、本発明は、全てのラセミ形、光学活性形、多形、もしくは立体異性形、またはこれらの混合物を包含するという点、これらの物質はDGAT1活性の阻害に対して有用な特性を有するという点、そして光学活性形を調製する方法(例えば、再結晶法によりラセミ形を分割することによって;光学活性の出発物質から合成することによって;キラル合成によって;酵素分割によって;バイオトランスフォーメーションによって;またはキラル固定相を使用するクロマトグラフィー分離によって)および後述の標準的な試験に基づいてDGAT1活性の阻害の有効性を決定する方法は当業界によく知られているという点である。
【0038】
さらに理解しておかなければならないことは、式(I)の特定の化合物およびこれら化合物の塩は、非溶媒和形だけでなく溶媒和形においても存在することがある(例えば水和形)、という点である。理解しておかなければならないことは、本発明は、DGAT1活性を阻害するこうした全ての溶媒和形を包含する、という点である。
【0039】
前述したように、優れたDGAT1阻害活性を有するある範囲の複数の化合物を我々は見いだした。これらの化合物は、おしなべて、良好な物理的および/または薬物動力学的特性を有する。
【0040】
本発明の特定の態様は、式(I)の化合物または前記化合物の塩を含み、ここで前記した置換基R〜Rと他の置換基は、前記の意味または下記の意味(必要に応じて、前記または後記に開示の定義および実施態様のいずれかと共に使用することができる)のいずれかを有する。
【0041】
本発明の1つの実施態様においては、式(I)の化合物が提供され、他の実施態様においては、式(I)の化合物の塩(特に医薬的に許容しうる塩)が提供される。さらに他の実施態様においては、式(I)の化合物のプロドラッグ(特にインビボ開裂可能なエステル)が提供される。さらに他の実施態様においては、式(I)の化合物のプロドラッグの塩(特に薬的に許容しうる塩)が提供される。
【0042】
式(I)の化合物における可変基の特定の意味は下記のとおりである。このような意味は、必要に応じて、前記または後記に記載の他の意味、定義、態様、クレーム、または実施態様のいずれかと共に使用することができる。
1)Rがフェニルである。
2)Rがナフチルである。
3)Rが1個の置換基で置換されている。
4)Rが、1個、2個、もしくは3個のフルオロで置換されている。
5)Rが、フェニル、4−フルオロフェニル、フェノキシ、4−フルオロフェノキシ、ベンジルオキシ、および4−フルオロベンジルオキシから選択される置換基で置換されており、そしてさらに、必要に応じて1個もしくは2個のフルオロで置換されている。
6)Rが、(3−6C)シクロアルキルと(3−6C)シクロアルコキシから選択される置換基で置換されており、そしてさらに、必要に応じて1個もしくは2個のフルオロで置換されている。
7)Rが、(2−4C)アルキル、(2−4C)アルケニル、および(2−4C)アルキニルから選択される置換基で置換されており、そしてさらに、必要に応じて1個もしくは2個のフルオロで置換されている。
8)Rが、ハロ(1−2C)アルキルから選択される置換基で置換されており、そしてさらに、必要に応じて1個もしくは2個のフルオロで置換されている。
9)Rが、クロロ、メチル、およびメトキシから選択される置換基で置換されており、そしてさらに、必要に応じて1個もしくは2個のフルオロで置換されている。
10)環Aがフェニルである。
11)環Aがシクロアルキル(例えばシクロヘキシル)である。
12)環Bがフェニルである。
13)環Bがシクロアルキル(例えば、シクロブチル、シクロペンチル、またはシクロヘキシル)である。
14)環Bがシクロヘキシルである。
15)環Aがフェニルであって、環Bがシクロヘキシルである。
16)Lが直接結合である。
17)Lが−(CR1−2−である。
18)Lが−O−(CR1−2−である。
19)Lが−CH−(CR1−2−である。
20)CRがCHである。
21)CRがCHMeである。
22)CRがCMeである。
23)CRがCHCH(OH)である。
24)CRがCHCH(CHOH)である。
25)CRがCHCH(CHOMe)である。
26)CRがCH(OH)である。
27)CRがCH(OMe)である。
28)Lが直接結合または−CH2−である。
29)Rがヒドロキシである。
30)Rがカルボキシである。
31)Rが(1−6C)アルコキシカルボニルである。
32)Rがカルボン酸模倣体またはバイオイソスターである。
33)Rがカルボキシまたは(1−6C)アルコキシカルボニルである。
34)Rが水素またはフルオロである。
35)Rが水素である。
36)nが0である。
37)nが1である。
38)nが2である。
【0043】
本発明の1つの態様においては、式(I)の化合物または前記化合物の塩が提供され、ここでRが、1個、2個、または3このフルオロで置換されたフェニルであり;
環Aがフェニルであり;
が、水素、フルオロ、またはクロロであって、特に水素であり;
nが2であり;
環Bが(3−6C)シクロアルキル(例えばシクロヘキシル)であり;
が直接結合または−CH−であり;
がカルボキシまたはメトキシカルボニルである。
【0044】
本発明のさらなる特定の化合物は実施例に記載の各化合物であり、これらの化合物はそれぞれ、本発明のさらに他の独立した態様を提供する。さらなる態様においては、本発明はさらに、実施例のいずれか2種以上の化合物を含む。
【0045】
本発明の特定の化合物は、下記の化合物のいずれか1種以上またはその塩である:
4−[4−[[5−[(3,4,5−トリフルオロフェニル)アミノ]1,3,4−オキサジアゾール−2−カルボニル]アミノ]フェニル]スルホニルシクロヘキサン−1−カルボン酸;および
4−[4−[[5−[(4−フルオロフェニル)アミノ]1,3,4−オキサジアゾール−2−カルボニル]アミノ]フェニル]スルホニルシクロヘキサン−1−カルボン酸。
【0046】
さらに、後述の実施例における中間体1と2も本発明の範囲内であり、従ってそれぞれが、さらに他の独立した態様として提供される。
製造方法
式(I)の化合物とその塩は、化学的に関連した化合物の作製に適用可能であることが知られている任意の製造方法によって製造することができる。このような製造方法は、式(I)の化合物またはその塩を製造するのに使用される場合は、本発明のさらなる特徴としてもたらされる。
【0047】
さらなる態様においては、本発明はさらに、式(I)の化合物とその塩を、下記の製造方法a)〜c)によって製造することができる、ということを提供する(ここで式中の可変項はいずれも、特に明記しない限り、式(I)の化合物に関して前記にて定義したとおりである):
a)式(I)の化合物を反応させて、式(I)の別の化合物を形成させる;
b)式(2)
【0048】
【化11】

【0049】
の化合物を環化させる;
c)式(3)
【0050】
【化12】

【0051】
のアミンと、式(4)
【0052】
【化13】

【0053】
のカルボキシレートを反応させる:
そしてその後に、必要ならばあるいは望ましいのであれば:
i)保護基が存在する場合は保護基を取り除き;および/または
ii)式(I)の化合物の塩を形成させる。
【0054】
製造方法a)
式(I)の化合物から式(I)の別の化合物への転化の例は、当業者にはよく知られており、加水分解(特にエステル加水分解)、酸化(例えば、スルフィドからスルホキシドまたはスルホンへの酸化)、もしくは還元(例えば、酸からアルコールへの還元)等の官能基相互変換;および/または、標準的な反応(例えば、アミドカップリングもしくは金属触媒カップリング反応や求核置換反応)によるさらなる官能化;などがある。
【0055】
製造方法b)
式(2)の化合物は、下記のスキーム1に示すように製造することができる。
【0056】
【化14】

【0057】
スキーム1に記載の製造方法は、環Bがフェニルである場合の式(2)の化合物を製造するのにも同様に使用することができる。
式(2)の化合物は、アミノカルボニルアシルヒドラジン(5)とイソチオシアナートRNCSもしくはイソチオシアナート同等体(例えばアミノチオカルボニルイミダゾール)とを、適切な溶媒(例えば、DMFやMeCN)中にて0〜100℃の温度で反応させることによって製造することができる。アニリンからのアミノカルボニルアシルヒドラジンの製造は、当業界によく知られている。例えば、アニリン(例えば7)とメチルクロロオキソアセテートとを、ピリジンの存在下にて適切な溶媒(例えばDCM)中で反応させ、次いで適切な溶媒(例えばエタノール)中にて0〜100℃でヒドラジンと反応させる。
【0058】
化合物7のようなアニリンは、化合物8のようなニトロ化合物の還元によって製造することができ、このニトロ化合物自体は、化合物9のようなチオールエーテルの酸化によって製造することができる。化合物9は、化合物10のエステル化によって製造することができ、化合物10は、適切なメルカプトシクロアルカンカルボン酸(例えばCan.J.Chem.64,2184(1986)を参照)と適切に置換された4−フルオロニトロベンゼンとを反応させることによって製造することができる。
【0059】
環Aがシクロヘキシルである場合の式(2)の化合物は、スキーム2に記載のように製造することができる。ここでは環Bがシクロヘキシルとして示されているが、この方法は、環Bがフェニルの場合でも適用することができ、LGは離脱基〔p−トルエンスルホナート(トシラート)、クロロ、ブロモ、またはヨード〕である。
【0060】
【化15】

【0061】
式(2)の化合物は、例えば、カルボニルジイミダゾールや塩化トシル等の試剤と適切な塩基(例えばトリエチルアミン)を使用して、当業界に公知の条件下で環化させることができる。
【0062】
イソシアナートR−NCOは、市販されているか、あるいは酸塩化物R−NHと例えばホスゲンもしくはホスゲン同等体とを反応させ、次いで適切な塩基(例えばトリエチルアミン)で処理することによって製造することができる。
【0063】
製造方法c)
式(3)の化合物〔例えば、式(7)または(11)の化合物〕は、上記のスキーム1〜2に示すように製造することができる。
【0064】
式(4)の化合物は、文献に記載の手順(J.Het.Chem.1977,14,1385−1388)を使用して得られるエステル(12)のアルカリ加水分解によって製造することができる。エステル(12)は、XがOまたはSである場合の式(13)の化合物を、式(2)の化合物に対する製造方法b)において記載の方法と類似の方法にて環化させることによって製造することができる。
【0065】
【化16】

【0066】
式(12)の化合物を製造するための別の方法を下記に示す。
【0067】
【化17】

【0068】
式(3)の化合物は、アミド結合を形成させるための標準的な条件下にて、式(4)の化合物とのカップリング反応を起こさせることができる。例えば、適切なカップリング反応(例えば、EDACを使用して行われるカルボジイミドカップリング反応)を使用して、必要に応じてDMAPの存在下にて、適切な溶媒(例えば、DCM、クロロホルム、またはDMF)中にて室温で行うことができる。
【0069】
nが1または2(すなわち、スルホキシドまたはスルホン)である場合の式(I)の化合物は、nが0(スルフィド)である場合の同等化合物を、標準的な条件下にて酸化することによって製造することができる。この酸化は、(例えば、スキーム1に示されている)合成方法の初期に行うこともできるし、あるいは特に製造方法c)の場合では、式(I)の化合物それ自体に対して行わなければならない。
【0070】
言うまでもないことであるが、本発明の化合物における種々の環置換基(例えばR)のうちの特定のものは、標準的な芳香族置換反応によって導入することもできるし、あるいは上記製造方法の前または直後に、従来の官能基変性によって生成させることもでき、従ってそのようなものとして本発明の製造方法態様に含まれる。このような反応は、式(I)のある化合物を式(I)の別の化合物に転化させてよい。このような反応と変性は、例えば、芳香族置換反応、置換基の還元、置換基のアルキル化、および置換基の酸化による置換基の導入を含む。このような手順に対する試剤と反応条件は、化学業界においてよく知られている。芳香族置換反応の特定の例としては、濃硝酸の使用によるニトロ基の導入;フリーデル−クラフツ条件下での、例えば塩化アシルとルイス酸(例えば三塩化アルミニウム)の使用によるアシル基の導入;フリーデル−クラフツ条件下での、ハロゲン化アルキルとルイス酸(例えば三塩化アルミニウム)の使用によるアルキル基の導入;およびハロゲン基の導入;などがある。変性の特定の例としては、例えば、ニッケル触媒による接触水素化、または塩酸の存在下での鉄による加熱処理によるニトロ基からアミノ基への還元;およびアルキルチオからアルケンスルフィニルもしくはアルケンスルホニルへの酸化;などがある。
【0071】
上記手順のための必要な出発物質は、たとえ市販されていないとしても、標準的な有機化学的方法、構造的に似た既知化合物の合成方法と類似の方法、前記文献中に記載の方法、または上記手順もしくは実施例に記載の手順に類似した方法から選択される方法によって製造することができる。反応条件や試剤に関する一般的な手引きに対しては、「Advanced Organic Chemistry,第5版,by Jerry March and Michael Smith,ジョン・ウィリー&サンズ発行,2001」を参照のこと。
【0072】
言うまでもないが、式(I)の化合物の幾つかの中間体も新規化合物であって、これらは本発明の別個の独立した態様として提供される。特に、式(2)、(3)、(5)、(6)、および/または(7)の特定の化合物はそれぞれ、本発明の独立した態様として提供される。
【0073】
さらに、言うまでもないことであるが、本明細書に記載の反応の幾つかにおいては、化合物中に感受性の高い基が存在する場合は、これを保護する必要があるか、あるいは保護するのが望ましい。保護が必要であるか又は望ましい場合、こうした保護に対する適切な方法は当業者に公知である。従来の保護基を、標準的なやり方に従って使用することができる(「T.W.Greene,Protective Groups in Organic Synthesis,ジョン・ウィリー&サンズ,1991」を参照)。
【0074】
保護基は、問題としている保護基の除去に対して必要に応じて、文献中に記載の、又は熟練化学者に公知の任意の適切な方法によって取り除くことができ、このような方法は、分子中の他の場所の基の乱れを最小限に抑えた状態で、保護基の除去を果たすように選択される。
【0075】
従って反応物が、例えば、アミノ、カルボキシ、またはヒドロキシ等の基を含む場合、本明細書に記載の反応の幾つかに対しては基を保護するのが望ましい。
ヒドロキシ基に対する適切な保護基の例としては、アシル基(例えば、アセチル等のアルカノイル基、ベンゾイル等のアロイル基、)、シリル基(例えばトリメチルシリル)、またはアリールメチル基(例えばベンジル)などがある。上記保護基に対する脱保護条件は、保護基の選択に応じて必然的に変わる。従って例えば、アルカノイル基やアロイル基等のアシル基は、例えば、アルカリ金属水酸化物(例えば、水酸化リチウムや水酸化ナトリウム)等の適切な塩基による加水分解によって除去することができる。これとは別に、トリメチルシリルやSEM等のシリル基は、例えば、フッ化物や酸性水溶液によって除去することができ;あるいはベンジル基等のアリールメチル基は、例えば、触媒(例えば炭素担持パラジウム)の存在下での水素化によって除去することができる。
【0076】
アミノ基に対する適切な保護基としては、例えばアシル基(例えば、アセチル等のアルカノイル基;メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、またはtert−ブトキシカルボニル等のアルコキシカルボニル基;ベンジルオキシカルボニル等のアリールメトキシカルボニル基;またはベンゾイル等のアロイル基)がある。上記保護基に対する脱保護条件は、保護基の選択に応じて必然的に変わる。従って例えば、アルカノイル基、アルコキシカルボニル基、またはアロイル基等のアシル基は、例えば、アルカリ金属水酸化物(例えば、水酸化リチウムや水酸化ナトリウム)等の適切な塩基を使用する加水分解によって除去することができる。これとは別に、t−ブトキシカルボニル基等のアシル基は、例えば、適切な酸(例えば、塩酸、硫酸、リン酸、またはトリフルオロ酢酸)による処理によって除去することができ、ベンジルオキシカルボニル基等のアリールメトキシカルボニル基は、例えば、触媒(例えば炭素担持パラジウム)上での水素化によって、あるいはルイス酸〔例えばボロントリス(トリフルオロアセテート)〕による処理によって除去することができる。第一アミノ基に対する他の適切な保護基は、例えば、アルキルアミン(例えば、ジメチルアミノプロピルアミンや2−ヒドロキシエチルアミン)またはヒドラジンによる処理によって除去できるフタロイル基である。
【0077】
カルボキシに対する適切な保護基は、例えば、水酸化ナトリウム等の塩基を使用する加水分解によって除去できるメチル基もしくはエチル基;酸(例えばトリフルオロ酢酸等の有機酸)を使用する処理によって除去できるt−ブチル基;または触媒(例えば炭素担持パラジウム)上での水素化によって除去できるベンジル基;等のエステル化基である。
【0078】
樹脂も保護基として使用することができる。
保護基は、合成において都合の良いどの段階においても、化学技術においてよく知られている従来の方法を使用して除去することができるし、あるいはより後の反応工程時または処理完了時に除去することもできる。
【0079】
熟練した有機化学者であれば、前記文献、前記文献中の実施例、そしてさらに本明細書中の実施例に記載の知見を使用および適応させて、必要な出発物質と生成物を得ることができる。
【0080】
任意の保護基の除去、および(医薬的に許容しうる)塩の形成は、標準的な方法を使用する一般的な有機化学者の技術の範囲内である。さらに、これらの工程に関する詳細は前記にて説明されている。
【0081】
本発明の化合物の光学活性形が求められる場合は、光学活性出発物質(例えば、適切な反応工程の不斉誘導によって形成される)を使用して上記手順の1つを実施することによって、あるいは標準的な手順を使用して化合物もしくは中間体のラセミ形を分割することによって、あるいはジアステレオマー(得られる場合)をクロマトグラフィー分離することによって得ることができる。光学活性の化合物および/または中間体の作製に対しては、酵素法も有用である。
【0082】
同様に、本発明の化合物の純粋な位置異性体が求められる場合は、純粋な位置異性体を出発物質として使用して上記手順の1つを実施することによって、あるいは標準的な方法を使用して位置異性体もしくは中間体の混合物を分割することによって得ることができる。
【0083】
本発明のさらなる態様によれば、前記した式(I)の化合物またはその医薬的に許容しうる塩を、医薬的に許容しうる賦形剤またはキャリヤーと関連させて含む医薬組成物が提供される。
【0084】
本発明の組成物は、経口使用に適した形態(例えば、錠剤、トローチ剤、ハードもしくはソフトカプセル、水性もしくは油性の懸濁液、エマルジョン、分散性の粉末もしくは顆粒、シロップ、またはエリキシル);局所使用に適した形態(例えば、クリーム、軟膏、ゲル、あるいは水性もしくは油性の溶液または懸濁液);吸入による投与に適した形態(例えば、微粉末や液体エアロゾル);吹送による投与に適した形態(例えば微粉末);あるいは非経口投与に適した形態(例えば、静脈内投与、皮下投与、もしくは筋内投与用の、無菌の水性または油性溶液、あるいは直腸投与用の坐剤);であってよい。
【0085】
本発明の組成物は、当業界によく知られている従来の医薬用賦形剤を使用して、従来の方法によって得ることができる。従って、経口使用に対して意図された組成物は、例えば、1種以上の着色剤、甘味剤、風味剤、および/または保存剤を含有してよい。
【0086】
錠剤製剤用の医薬的に許容しうる適切な賦形剤としては、例えば、不活性希釈剤(例えば、ラクトース、炭酸ナトリウム、リン酸カルシウム、または炭酸カルシウム);造粒・崩壊剤(例えば、コーンスターチやアルギン酸);結合剤(例えば澱粉);滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、またはタルク);保存剤(例えば、p−ヒドロキシ安息香酸エチルやp−ヒドロキシ安息香酸プロピル);および酸化防止剤(例えばアスコルビン酸);などがある。錠剤製剤は、コーティングされていなくてもよいし、胃腸管内での製剤の崩壊とそれに引き続く活性成分の吸収を加減するために、あるいは製剤の安定性および/または外観を向上させるために、当業界によく知られている従来のコーティング剤と手順を使用してコーティングしてもよい。
【0087】
経口使用のための組成物は、活性成分と不活性の固体希釈剤(例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、またはカオリン)とが混合されている状態のハードゼラチンカプセルの形態であっても、あるいは活性成分と水もしくはオイル(例えば、ラッカセイ油、流動パラフィン、またはオリーブ油)とが混合されている状態のソフトゼラチンカプセルの形態であってもよい。
【0088】
水性懸濁液は一般に、微粉形態の活性成分と、1種以上の懸濁剤(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントガム、およびアラビアガム);および分散剤もしくは湿潤剤〔例えば、レシチン、アルキレンオキシドと脂肪酸との縮合生成物(例えばポリオキシエチレンステアラート)、エチレンオキシドと長鎖脂肪アルコールとの縮合生成物(例えばヘプタデカエチレンオキシセタノール)、脂肪酸とヘキシトールとから誘導される部分エステルとエチレンオキシドとの縮合生成物(例えばポリオキシエチレンソルビトールモノオレアート)、エチレンオキシドと長鎖脂肪アルコールとの縮合生成物(例えばヘプタデカエチレンオキシセタノール)、脂肪酸とヘキシトールとから誘導される部分エステルとエチレンオキシドとの縮合生成物(例えばポリオキシエチレンソルビトールモノオレアート)、脂肪酸とヘキシトール無水物とから誘導される部分エステルとエチレンオキシドとの縮合生成物(例えばポリエチレンソルビタンモノオレアート)〕;とを含有する。水性懸濁液はさらに、1種以上の保存剤(例えば、p−ヒドロキシ安息香酸エチルやp−ヒドロキシ安息香酸プロピル)、酸化防止剤(例えばアスコルビン酸)、着色剤、風味剤、および/または甘味剤(例えば、スクロース、サッカリン、またはアスパルテーム)を含有してよい。
【0089】
油性懸濁液は、活性成分を植物油(例えば、ラッカセイ油、オリーブ油、ゴマ油、またはヤシ油)中または鉱油(例えば流動パラフィン)中に懸濁することによって製剤される。油性懸濁液はさらに、増粘剤(例えば、蜜蝋、固形パラフィン、またはセチルアルコール)を含有してよい。口当たりの良い経口製剤を得るために、甘味剤(例えば上記の物質)と風味剤を加えてもよい。これらの組成物は、酸化防止剤(例えばアスコルビン酸)を加えることによって保存することができる。
【0090】
水を加えることによって水性懸濁液を調製するのに適した分散性の粉末と顆粒は一般に、活性成分と共に、分散もしくは湿潤剤、懸濁剤、および1種以上の保存剤を含有する。適切な分散もしくは湿潤剤と懸濁剤の例は、既に上記したとおりである。さらに他の賦形剤(例えば、甘味剤、風味剤、および着色剤)が存在してもよい。
【0091】
本発明の医薬組成物はさらに、油中水エマルジョンの形態をとってもよい。油相は、植物油(例えば、オリーブ油やラッカセイ油)であっても、鉱油(例えば流動パラフィン)であっても、あるいはこれらのいずれかの混合物であってもよい。適切な乳化剤は、例えば、天然由来のガム(例えば、アラビアガムやトラガカントガム)、天然由来のリン脂質(例えば、大豆やレシチン)、脂肪酸とヘキシトール無水物から誘導されるエステルもしくは部分エステル(例えばソルビタンモノオレアート)、および前記部分エステルとエチレンオキシドとの縮合生成物(例えばポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート)である。エマルジョンはさらに、甘味剤、風味剤、および保存剤を含有してよい。
【0092】
シロップとエリキシルは甘味剤(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ソルビトール、アスパルテーム、またはスクロース)を使用して製剤することができ、さらに、粘滑剤、保存剤、風味剤、および/または着色剤を含有してよい。
【0093】
医薬組成物はさらに、無菌の注射可能な水性もしくは油性懸濁液の形態をとってよく、こうした懸濁液は、前述の適切な分散もしくは湿潤剤と懸濁剤を使用して、公知の方法に従って製剤することができる。無菌の注射可能な製剤は、非経口的に許容しうる無毒性の希釈剤もしくは溶媒中に混合して得られる無菌の注射可能な溶液(例えば1,3−ブタンジオール中に溶解して得られる溶液)もしくは懸濁液であってもよい。
【0094】
吸入による投与のための組成物は、活性成分を、微粉化固体を含有するエアロゾルとして、又は液滴として分配するよう配置された、従来の加圧エアロゾルの形態をとってよい。揮発性のフッ素化炭化水素または炭化水素等の、従来のエアロゾル噴射剤を使用することができ、エアロゾル器具は、活性成分の定量を分配するよう適切に配置される。
【0095】
製剤に関するさらなる知見を得るには、“Comprehensive Medicinal Chemistry(Corwin Hansch;Chairman of Editorial Board),ペルガモンプレス1990”の巻5中の第25.2章を参照のこと。
【0096】
単一の剤形を得るべく1種以上の賦形剤と組み合わされる活性成分の量は、処置されるホスト(the host treated)と投与経路の種類に応じて必然的に異なる。例えば、ヒトへ経口投与すべく意図された製剤は一般に、例えば、0.5mg〜2gの活性剤化合物を、適切で好都合な量(組成物総重量の約5重量%〜約98重量%であってよい)の賦形剤と共に含有する。単位剤形は一般に、約1mg〜約500mgの活性成分を含有する。投与経路と用法・用量についてのさらなる知見を得るには、“Comprehensive Medicinal Chemistry(Corwin Hansch;Chairman of Editorial Board),ペルガモンプレス1990”の巻5中の第25.3章を参照のこと。
【0097】
本発明のさらなる態様によれば、ヒトや動物の体を療法によって処置する方法において使用するための、前記にて定義した式(I)の化合物または前記化合物の医薬的に許容しうる塩が提供される。
【0098】
本明細書において式(I)のある化合物へ言及している場合は、式(I)の複数の化合物にも等しく言及しているものと理解すべきである。
本発明の具体的な複数の化合物がDGAT1の活性を阻害し、従って血液グルコースを低下させる効果を得る上で重要である、ということを我々は見いだした。
【0099】
本発明のさらなる特徴は、医薬として使用するための式(I)の化合物または前記化合物の医薬的に許容しうる塩である。
わかりやすく言えば、これは、温血動物(例えばヒト)においてDGAT1活性の阻害を生じさせるための医薬として使用するための、式(I)の化合物または前記化合物の医薬的に許容しうる塩である。
【0100】
詳細に言えば、これは、温血動物(例えばヒト)において真性糖尿病および/または肥満症を治療するための医薬として使用するための、式(I)の化合物または前記化合物の医薬的に許容しうる塩である。
【0101】
従って、本発明のさらに他の態様によれば、温血動物(例えばヒト)においてDGAT1活性の阻害を生じさせるのに使用するための医薬の製造において、式(I)の化合物または前記化合物の医薬的に許容しうる塩を使用することが提供される。
【0102】
従って、本発明のさらに他の態様によれば、温血動物(例えばヒト)において真性糖尿病および/または肥満症を治療する上で使用するための医薬の製造において、式(I)の化合物または前記化合物の医薬的に許容しうる塩を使用することが提供される。
【0103】
本発明のさらに他の態様によれば、温血動物(例えばヒト)においてDGAT1活性の阻害を生じさせる上で使用するための、前記にて定義した式(I)の化合物または前記化合物の医薬的に許容しうる塩を、医薬的に許容しうる賦形剤またはキャリヤーと関連させて含む医薬組成物が提供される。
【0104】
本発明のさらに他の態様によれば、温血動物(例えばヒト)において真性糖尿病および/または肥満症を治療する上で使用するための、前記にて定義した式(I)の化合物または前記化合物の医薬的に許容しうる塩を、医薬的に許容しうる賦形剤またはキャリヤーと関連させて含む医薬組成物が提供される。
【0105】
本発明のさらなる特徴によれば、前記にて定義した式(I)の化合物または前記化合物の医薬的に許容しうる塩の有効量を温血動物(例えばヒト)に投与することを含む、DGAT1活性の阻害を生じさせる処置を必要とする温血動物(例えばヒト)においてDGAT1活性の阻害を生じさせるための方法が提供される。
【0106】
本発明のさらなる特徴によれば、前記にて定義した式(I)の化合物または前記化合物の医薬的に許容しうる塩の有効量を温血動物(例えばヒト)に投与することを含む、温血動物(例えばヒト)において真性糖尿病および/または肥満症を治療する方法が提供される。
【0107】
前述したように、ある特定の症状に対する治療処置もしくは予防処置に必要とされる用量の範囲は、処置されるホスト、投与経路の種類、および処置される疾病の程度に応じて必然的に変わる。1〜50mg/kgの範囲の日用量を使用するのが好ましい。しかしながら、日用量は、処置されるホスト、投与経路の種類、および処置される疾病の程度に応じて必然的に変わる。従って最適用量は、個々の患者を処置している開業医によって決定される。
【0108】
前述したように、本発明において定義の化合物は、DGAT1の活性を阻害することができるという点で重要である。従って本発明の化合物は、真性糖尿病〔より詳細に言えば、II型真性糖尿病(T2DM)とそれにより生じる合併症(例えば、網膜症、ニューロパシー、およびネフロパシー)〕、耐糖能異常(IGT)、空腹時血糖異常(conditions of impaired fasting glucose)、代謝性アシドーシス、ケトーシス、代謝障害症候群、関節炎、骨粗鬆症、肥満症と肥満に関連した障害(間欠性跛行を含めた末梢血管障害を含む)、心不全と特定の心筋症、心筋虚血、脳虚血と再潅流、アテローム性動脈硬化症、不妊症、および多嚢胞性卵巣症候群を含むある範囲の症状の予防、遅延、または治療に対して有用である。本発明の化合物はさらに、筋衰弱、皮膚の疾患(例えばにきび)、アルツハイマー病、種々の免疫調節疾患(例えば乾癬)、HIV感染、および炎症性腸症候群や炎症性腸疾患(例えば、クローン病や潰瘍性大腸炎)に対しても有用である。
【0109】
本発明の化合物は特に、真性糖尿病および/または肥満症および/または肥満症に関連した障害の予防、発症遅延、または治療に対して重要である。1つの態様においては、本発明の化合物は、真性糖尿病の予防、発症遅延、または治療に使用される。他の実施態様においては、本発明の化合物は、肥満症の予防、発症遅延、または治療に使用される。さらに他の態様においては、本発明の化合物は、肥満症に関連した障害の予防、発症遅延、または治療に使用される。
【0110】
本明細書に記載のDGAT1活性の阻害は、単独療法として適用することもできるし、あるいは、徴候を処置するための1種以上の他の物質および/または治療薬と組み合わせて適用することもできる。このような共同処置(conjoint treatment)は、処置に対する個々の成分を同時投与、逐次投与、または個別投与することによって達成することができる。同時の処置は、単一錠剤の形であっても、あるいは別個の錠剤の形であってもよい。例えば、このような共同処置は、代謝症候群〔腹部肥満症(人種と性別特有のカットポイントに対するウエスト周りによって測定される)に加えて、トリグリセリド過剰血(>150mg/dl,1.7ミリモル/l);低HDL(男性の場合は<40mg/dlもしくは<1.03ミリモル/l、そして女性の場合は<50mg/dlもしくは1.29ミリモル/)、または低HDL(高密度リポタンパク質)に対する処置に関して;高血圧症(SBP≦130mmHg,DBP≧85mmHg)または高血圧所に対する処置に関して;および高血糖症(空腹時血漿グルコース≧100mg/dl、5.6ミリモル/l、耐糖能異常、もしくは前から存在する真性糖尿病)−国際糖尿病連盟およびIAS/NCEPからのインプット;のいずれか2つ〕に対する処置において有用である。
【0111】
このような共同処置の薬剤は、下記の主要なカテゴリーを含む:
1)抗肥満薬〔例えば、食物の摂取、栄養の吸収、またはエネルギーの消費に及ぼす効果によって体重減少を引き起こす薬〕(例えば、オルリスタットやシブトラミン等);
2)スルホニル尿素を含むインスリン分泌促進薬(例えば、グリベンクラミドやグリピジド)、および食事グルコース調節剤(例えば、レパグリニドやナテグリニド);
3)内分泌作用を向上させる薬剤(例えば、ジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤やGLP−1アゴニスト);
4)PPARγアゴニストを含むインスリン感受性薬剤(例えば、ピオグリタゾンやロシグリタゾン)、およびPPARα活性とPPARγ活性を併せ持つ薬剤;
5)肝臓グルコースのバランスを調節する薬剤(例えば、メトホルミン、フルクトース、1,6−ビスホスファターゼ阻害剤、グリコーゲンホスホリラーゼ阻害剤、グリコーゲンシンターゼキナーゼ阻害剤、およびグルコキナーゼ活性剤);
6)腸からのグルコースの吸収を少なくするように設計された薬剤(例えばアカルボース);
7)腎臓によるグルコースの再吸収を妨げる薬剤(例えばSGLT阻害剤);
8)長期にわたる高血糖症による合併症を治療するように設計された薬剤(例えばアルドースレダクターゼ阻害剤);
9)抗異常脂質血症薬〔例えば、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤(例えばスタチン);PPARα−アゴニスト(フィブラート、例えばゲムフィブロジル);胆汁酸封鎖剤(コレスチラミン);コレステロール吸収阻害剤(植物スタノールや合成阻害剤);胆汁酸吸収阻害剤(IBATi);およびニコチン酸とその同族体(ナイアシンや徐放性製剤)〕;
10)血圧降下薬〔例えば、β−遮断薬(例えば、アテノロールやインデラル);ACE阻害剤(例えばリシノプリル);カルシウムアンタゴニスト(例えばニフェジピン);アンギオテンシン受容体アンタゴニスト(例えばカンデサルタン);α−アンタゴニスト;および利尿薬(例えば、フロセミドやベンゾチアジド)〕;
11)止血モジュレータ〔例えば、抗血栓剤、線維素溶解の活性剤、および抗血小板薬;トロンビンアンタゴニスト;ファクターXa阻害剤;ファクターVIIa阻害剤;抗血小板薬(例えば、アスピリンやクロピドグレル);抗凝血剤(ヘパリンと低分子量の類似体、ヒルジン);およびワルファリン〕;
12)グルカゴンの作用に拮抗する薬剤;ならびに
13)抗炎症薬〔例えば、非ステロイド系抗炎症薬(例えばアスピリン)やステロイド系抗炎症薬(例えばコルチゾン)〕
式(I)の化合物および前記化合物の医薬的に許容しうる塩は、治療薬として使用するほかに、実験動物(例えば、ネコ、イヌ、ウサギ、サル、ラット、およびマウス)に対するDGAT1活性の阻害剤としての効果の評価に対するインビトロおよびインビボ試験システムの開発と標準化における薬理学的ツールとしても、そして新たな治療薬の探究する上での要素としても有用である。
【0112】
前述したように、式(I)の化合物とそれらに対応する塩はいずれも、DGAT1の活性を阻害するのに有用である。式(I)の化合物とそれらに対応する酸付加塩がDGAT1活性を阻害する能力は、下記の酵素アッセイを使用して説明することができる。
【0113】
ヒト酵素アッセイ
DGAT1阻害剤を識別するためのインビトロアッセイは、昆虫細胞膜中に酵素源として発現されるヒトDGAT1を使用する(Proc.Natl.Acad.Sci.1998,95,13018−13023)。簡単に言えば、sf9細胞に、ヒトDGAT1コード配列を含有する組み換えバキュロウイルスを感染させ、48時間後に取り入れた。超音波処理によって細胞を溶解させ、41%のスクロース密度勾配にて4℃、28000rpmで1時間遠心分離することによって膜を単離した。界面における膜フラクションを採集し、洗浄し、液体窒素中に保存した。
【0114】
DGAT1活性は、Colemanにより説明されている方法の変法によってアッセイした(Method in Enzymology 1992,209,98−102)。プラスチック管中において200μlの総アッセイ体積にて、1〜10μMの化合物を、0.4μgの膜タンパク質、5mMのMgCl、および100μMの1,2−ジオレイル−sn−グリセロールと共にインキュベートした。14Cオレイル補酵素Aを加える(最終濃度30μM)ことによって反応を開始させ、室温にて30分インキュベートした。1.5mlの2−プロパノール:ヘプタン:水(80:20:2)を加えることによって反応を停止させた。1mlのヘプタンと0.5mlの0.1M炭酸塩緩衝剤(pH9.5)を加えることによって、放射性のトリオレイン生成物を有機相中に分離した。上側ヘプタン層のアリコートを液体シンチログラフィーでカウントすることによって、DGAT1活性を定量化した。
【0115】
このアッセイを使用すると、化合物は一般に、IC50が10μM未満で(特に1μM未満で)活性を示す。実施例1はIC50=0.29μMを示した。
式(I)の化合物とそれらに対応する塩がDGAT1活性を阻害する能力はさらに、下記の全細胞アッセイ1)と2)を使用して説明することができる:
1)3T3細胞におけるトリグリセリド合成の測定
マウス含脂肪細胞である3T3細胞を、培地を含有する新生仔牛血清中にて6ウェルプレートで密集状態となるよう培養した。10%のウシ胎仔血清、1μg/mlのインスリン、0.25μMのデキサメタゾン、および0.5mMのイソブチルメチルキサンチンを含有する培地中にてインキュベートすることによって細胞の分化を起こさせた。48時間後、10%のウシ胎仔血清と1μg/mlのインスリンを含有する培地中にて細胞をさらに4〜6日保持した。実験のため、培地を血清非含有の培地に変え、細胞を、DMSO中に溶解した化合物と共に(最終濃度0.1%)30分予備インキュベートした。〔(0.25mMの酢酸ナトリウム)+(1μCi/mlの14C−酢酸ナトリウム)〕を各ウェルにさらに2時間加えることによってde novo脂質生成を測定した(J.Biol.Chem.,1976,251,6462−6464)。細胞をリン酸緩衝生理食塩水中で洗浄し、1%ドデシル硫酸ナトリウム中に溶解した。Lowryの方法(J.Biol.Chem.,1951,193,265−275)に基づいてタンパク質エスティメーションキット(a protein estimation kit)(Perbio)を使用してタンパク質を測定するためにアリコートを取り出した。Colemanの方法(Method in Enzymology,1992,209,98−104)に従って、ヘプタン:プロパン−2−オール:水(80:20:2)混合物を、次いで水とヘプタンのアリコートを使用して脂質を有機相中に抽出した。有機相を集め、窒素流れのもとで溶媒を蒸発除去した。抽出物をイソヘキサン:酢酸(99:1)中に溶解し、SilversandとHauxの方法(1997)に従って、Lichrospher diol−5、4×250mmのカラム、イソヘキサン:酢酸(99:1)とイソヘキサン:プロパン−2−オール:酢酸(85:15:1)の勾配溶媒系、および1ml/分の流量を使用する順相高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により脂質を分離した。トリグリセリドフラクション中への放射能ラベルの組み込みは、HPLC機器に接続されたラジオメトリック・フロ−ワン・デテクター(Radiometric Flo−one Detector)(パッカード社)を使用して分析した。
【0116】
2)MCF7細胞におけるトリグリセリド合成の測定
ヒト乳房上皮(MCF7)細胞を、培地を含有するウシ胎仔血清中にて6ウェルプレートで密集状態となるよう培養した。実験のため、培地を血清非含有の培地に変え、細胞を、DMSO中に溶解した化合物と共に(最終濃度0.1%)30分予備インキュベートした。〔(50μMの酢酸ナトリウム)+(3μCi/mlの14C−酢酸ナトリウム)〕を各ウェルにさらに3時間加えることによってde novo脂質生成を測定した(J.Biol.Chem.,1976,251,6462−6464)。細胞をリン酸緩衝生理食塩水中で洗浄し、1%ドデシル硫酸ナトリウム中に溶解した。Lowryの方法(J.Biol.Chem.,1951,193,265−275)に基づいてタンパク質エスティメーションキット(Perbio)を使用してタンパク質を測定するためにアリコートを取り出した。Colemanの方法(Method in Enzymology,1992,209,98−104)に従って、ヘプタン:プロパン−2−オール:水(80:20:2)混合物を、次いで水とヘプタンのアリコートを使用して脂質を有機相中に抽出した。有機相を集め、窒素流れのもとで溶媒を蒸発除去した。抽出物をイソヘキサン:酢酸(99:1)中に溶解し、SilversandとHauxの方法(J.Chromato.B,1997,703,7−14)に従って、Lichrospher diol−5、4×250mmのカラム、イソヘキサン:酢酸(99:1)とイソヘキサン:プロパン−2−オール:酢酸(85:15:1)の勾配溶媒系、および1ml/分の流量を使用する順相高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により脂質を分離した。トリグリセリドフラクション中への放射能ラベルの組み込みは、HPLC機器に接続されたラジオメトリック・フロ−ワン・デテクター(パッカード社)を使用して分析した。
【0117】
上記以外の他の医薬組成物、製造方法、方法、使用、および医薬製造上の特徴に対しては、本明細書に記載されている本発明の化合物の別の実施態様および好ましい実施態様も当てはまる。
【実施例】
【0118】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、特に明記しない限り:
(i)温度は摂氏温度(℃)で表示されており;操作は、室温もしくは周囲温度(すなわち、18〜25℃の範囲の温度)にて不活性ガス(例えばアルゴン)の雰囲気下で行った;
(ii)有機溶液は無水硫酸マグネシウム上で乾燥し、溶媒の蒸発は、最高で60℃までの浴温で、減圧下(600〜4000Pa;4.5〜30mmHg)にてロータリーエバポレーターを使用して行った;
(iii)クロマトグラフィーは、シリカゲルによるフラッシュクロマトグラフィーを意味しており;バイオテージ・カートリッジ(Biotage cartridge)に言及している場合、これは、KP−SIL(商標)シリカ(60Å,粒径32〜63mM)を含有するカートリッジ(Dyax Corp.の一事業部であるバイオテージから入手,米国バージニア州22902シャーロッツビル,エイボン・ストリート・エクステンデッド1500)を意味している;
(iv)一般には、反応の進行はTLCによって追跡し、反応時間は単なる例として記載されているにすぎない;
(v)収率は単なる例として記載されており、必ずしも入念なプロセス開発によって得ることができる値とは限らない;より多くの物質が必要とされた場合は、合成を繰り返した;
(vi)NMRデータ(H)は、主要診断プロトンに対するδ値の形で示してあり、テトラメチルシラン(TMS)に対するパーツ・パー・ミリオン(ppm)で表示されていて、特に明記しない限り、ペルデューテリオ・ジメチルスルホキシド(DMSO−d)を溶媒として使用して300MHzまたは400MHzにて測定されている;ピークの多重度は以下のよう示される:s,一重項;d,二重項;dd,二重項の二重項;dt,三重項の二重項;dm,多重項の二重項;t,三重項;q,四重項;m,多重項;br,ブロード;
(vii)化学記号はその通常の意味を有する;SI単位系とSI記号が使用されている;
(viii)溶媒比は、体積:体積(v/v)で表示されている;
(ix)質量スペクトル(MS)(ループ)は、HP1100検出器を装備したマイクロマス・プラットポーム(Micromass Platform)LCにより記録した;特に明記しない限り、記載の質量イオンは(MH+)である;
(x)LCMS(液体クロマトグラフィー−質量分光分析法)は、フェノメネックス(Phenomenex)(登録商標)ジェミニ5u C18 110A 50×2mmカラムを使用し、[5%の水/アセトニトリル(1:1)+1%のギ酸]での1.1ml/分の流量と、最初の4分間に対してはアセトニトリルを0%から95%まで増大させる〔残部(95〜0%)は水である〕という勾配溶媒系とで溶離して、ウォーターズ996フォトダイオード・アレイ検出器を装備したウォーターズ2790LCとマイクロマスZMD MSとを含むシステムにより記録した(HPLC保持時間が記載されている場合、特に明記しない限り、この系においては分で表示されている);特に明記しない限り、記載の質量イオンは(MH+)である;
(xi)相分離カートリッジに言及している場合、ISOLUTE相分離器70mlカラム〔英国,CF82 8AU,ミッドグラモーガン州,ヘンゴード,ニューロード,アルゴナート・テクノロジー社(Argonaut Technologies)から入手〕を使用した;
(xii)シリサイクル(SiliCycle)カートリッジに言及している場合、これは、ウルトラピュアシリカゲル(Ultra Pure Silica Gel)(粒径230〜400メッシュ;孔径40〜63um;カナダ,G2E 5E8,ケベック州,ケベックシティ,Suite114,1200Ave St−Jean−Baptiste,シリサイクル・ケミカル部から入手)を意味している;
(xiii)イスコ・コンパニオン(Isco Companion)に言及している場合、コンビフラッシュ・コンパニオン(Combiflash companion)クロマトグラフィー機器(米国,ネブラスカ州68504,リンカーン,スペリオルストリート4700,ISOC Inc.アドレステレダインISOC Inc.から入手)を使用した;
(xiv)マイクロ波装置に言及している場合、これは、バイオテージ・イニシエーター・シクスティー(Biotage Initiator sixty)マイクロ波装置もしくはスミス・クリエイター(Smith Creator)マイクロ波装置(米国,バージニア州22902,シャーロッツビル,エイボン・ストリート・エクステンデッド1500,Dyax Corp.の一事業部であるバイオテージから入手)を意味している;
(xv)GCMSに言及している場合、ガスクロマトグラフィー−質量分光分析法は、AOC20iオートサンプラーが取り付けられていて、‘GCMSソリューション’ソフトウェア(バージョン2.0)(英国,MK12 5RE,ミルトン・ケイン,シマヅから入手)によって制御されるQP−2010GC−MSシステムにより行った;GCカラムは、0.52μmのフィルム厚さを有する、長さ25mmで内径0.32mmのDB−5MS(米国,カリフォルニア州,フォルサム,J&Wサイエンティフィックから入手)であった;
(xvi)遠心分離に言及している場合、これはジェネバック(Genevac)EZ−2プラス(英国,IP1 5AP,イプスウィッチ,ファーシング・ロード,ソブリン・センター,ジェネバック・リミテッドから入手)を意味している;
(xvii)キラルクロマトグラフィーに言及している場合、これは一般に、20μmメルク50mmキラルパックADカラム(フランス,67404 Illkirch Cedex,Bd.Gonthier d′Andernach,Parc d′Innovation,キラル・テクノロジー・ヨーロッパから入手)を使用して、MeCN/2−プロパノール/AcOH(90/10/0.1)を溶離液として使用して(流量80ml/分)、そしてギルソン(Gilson)prep HPLC機器(200mlヘッド)を使用して(波長300nm)行った;
(xviii)融点はブチ(Buchi)530装置を使用して測定し、補正は行わなかった;
(xix)以下の説明または前述の製造方法の説明においては、下記のような略語が使用されている:EtOまたはエーテル,ジエチルエーテル;DMF,ジメチルホルムアミド;DCM,ジクロロメタン;DME,1,2−ジメトキシエタン;MeOH,メタノール;EtOH,エタノール;HO,水;TFA,トリフルオロ酢酸;THF,テトラヒドロフラン;DMSO,ジメチルスルホキシド;HOBt,1−ヒドロキシベンゾトリアゾール;EDCI(EDAC),1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩;DIPEA,ジイソプロピルエチルアミン;DEAD,ジエチルアゾジカルボキシレート;EtOAc,酢酸エチル;NaHCO,重炭酸ナトリウム/炭酸水素ナトリウム;KPO,リン酸カリウム;PS,ポリマー担体;BINAP,2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル;Dppf,1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン;dba,ジベンジリジンアセトン;PS−CDI,ポリマー担持カルボニルジイミダゾール;CHCNまたはMeCN,アセトニトリル;h,時間;min,分;HATU,O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート;NaOH,水酸化ナトリウム;AcOH,酢酸;DMA,ジメチルアセトアミド;n−BuLi,n−ブチルリチウム;MgSO,硫酸マグネシウム;NaSO,硫酸ナトリウム;CDCl,重水素化クロロホルム;CDOD,全重水素化メタノール;Boc,tert−ブトキシカルボニル。
【0119】
最終的な化合物名はいずれも、ACD NAMEコンピュータパッケージを使用して得た。
実施例1: 4−[4−[[5−[(3,4,5−トリフルオロフェニル)アミノ]1,3,4−オキサジアゾール−2−カルボニル]アミノ]フェニル]スルホニルシクロヘキサン−1−カルボン酸
【0120】
【化18】

【0121】
4−[4−[[5−[(3,4,5−トリフルオロフェニル)アミノ]1,3,4−オキサジアゾール−2−カルボニル]アミノ]フェニル]スルホニルシクロヘキサン−1−カルボン酸メチル(中間体1,450mg,0.84ミリモル)を1:1のTMF:MeOH(20ml)中に溶解して得た溶液に、水酸化リチウム(351mg,8.4ミリモル)を水(3ml)中に溶解して得た溶液を加え、混合物を周囲温度で6時間攪拌した。1Mのクエン酸(20ml)を加え、混合物を濾過し、固体を50℃にて減圧乾燥して、表記化合物(310mg,70%)を白色粉末(80:20のシス:トランス混合物)として得た。
【0122】
【化19】

【0123】
実施例2: 4−[4−[[5−[(4−フルオロフェニル)アミノ]1,3,4−オキサジアゾール−2−カルボニル]アミノ]フェニル]スルホニルシクロヘキサン−1−カルボン酸
【0124】
【化20】

【0125】
4−[4−[[5−[(4−フルオロフェニル)アミノ]1,3,4−オキサジアゾール−2−カルボニル]アミノ]フェニル]スルホニルシクロヘキサン−1−カルボン酸メチル(450mg,0.9ミリモル)を1:1のTMF:MeOH(20ml)中に溶解して得た溶液に、水酸化リチウム(377mg,8.96ミリモル)を水(3ml)中に溶解して得た溶液を加え、混合物を周囲温度で6時間攪拌した。1Mのクエン酸(20ml)を加え、混合物を濾過し、固体を50℃にて減圧乾燥して、表記化合物(280mg,64%)を白色粉末(80:20のシス:トランス混合物)として得た。
【0126】
【化21】

【0127】
中間体1: 4−[4−[[5−[(3,4,5−トリフルオロフェニル)アミノ]1,3,4−オキサジアゾール−2−カルボニル]アミノ]フェニル]スルホニルシクロヘキサン−1−カルボン酸メチル
【0128】
【化22】

【0129】
4−[4−[(ヒドラジンカルボニルホルミル)アミノ]フェニル]スルホニルシクロヘキサン−1−カルボン酸メチル(中間体3,370mg,0.97ミリモル)を無水DMA(6ml)中に混合して得た懸濁液に、1,2,3−トリフルオロ−5−イソチオシアナート−ベンゼン(220mg,1.16ミリモル)を無水DMA(1.5ml)中に溶解して得た溶液を加え、混合物を周囲温度で3時間攪拌した。EDAC(278mg,1.45ミリモル)を加え、混合物をマイクロ波にて80℃で10分加熱し、水(20ml)を加え、固体を濾過し、水(3×10ml)で洗浄し、50℃にて減圧乾燥して表記化合物(460mg,88%)を淡黄色粉末として得た。
【0130】
【化23】

【0131】
中間体2: 4−[4−[[5−[(4−フルオロフェニル)アミノ]1,3,4−オキサジアゾール−2−カルボニル]アミノ]フェニル]スルホニルシクロヘキサン−1−カルボン酸メチル
【0132】
【化24】

【0133】
4−[4−[(ヒドラジンカルボニルホルミル)アミノ]フェニル]スルホニルシクロヘキサン−1−カルボン酸メチル(中間体3,370mg,0.97ミリモル)を無水DMA(6ml)中に混合して得た懸濁液に、1−フルオロ−4−イソチオシアナート−ベンゼン(178mg,1.16ミリモル)を無水DMA(1.5ml)中に溶解して得た溶液を加え、混合物を周囲温度で3時間攪拌した。EDAC(278mg,1.45ミリモル)を加え、混合物をマイクロ波にて80℃で10分加熱し、水(20ml)を加え、固体を濾過し、水(3×10ml)で洗浄し、50℃にて減圧乾燥して表記化合物(390mg,80%)を淡黄色粉末として得た。
【0134】
【化25】

【0135】
中間体3: 4−[4−[(ヒドラジンカルボニルホルミル)アミノ]フェニル]スルホニルシクロヘキサン−1−カルボン酸メチル
【0136】
【化26】

【0137】
4−[4−[(メトキシカルボニルホルミル)アミノ]フェニル]スルホニルシクロヘキサン−1−カルボン酸メチル(中間体4,800mg,2.09ミリモル)を無水エタノール(75ml)中に混合して得た懸濁液にヒドラジン水和物(157mg,3.13ミリモル)を加えた。混合物を周囲温度で24時間攪拌し、濾過し、固体をエタノールで洗浄し、そして50℃で減圧乾燥して表記化合物(770mg,96%)を白色粉末として得た;MS m/z(M−H) 382。
【0138】
中間体4: 4−[4−[(メトキシカルボニルホルミル)アミノ]フェニル]スルホニルシクロヘキサン−1−カルボン酸メチル
【0139】
【化27】

【0140】
4−(4−アミノフェニル)スルホニルシクロヘキサン−1−カルボン酸メチル(中間体5,850mg,2.87ミリモル)と無水ピリジン(693μl,8.6ミリモル)を無水DCM(20ml)中に溶解して得た溶液を氷冷し、この溶液に、2−クロロ−2−オキソ−酢酸メチル(527mg,4.3ミリモル)をDCM(5ml)中に溶解して得た溶液を加え、混合物を周囲温度に自然加温し、24時間攪拌した。混合物を水とブラインで洗浄し、MgSOで乾燥し、濾過し、そして減圧にて揮発性物質を蒸発除去した。残留物をジエチルエーテルと共にすりつぶし、濾過し、そして乾燥して表記化合物(1.1g,100%)を白色固体として得た;MS m/z(M−H) 382。
【0141】
中間体5: 4−(4−アミノフェニル)スルホニルシクロヘキサン−1−カルボン酸メチル
【0142】
【化28】

【0143】
4−(4−ニトロフェニル)スルホニルシクロヘキサン−1−カルボン酸メチル(中間体6,1.2g,3.67ミリモル)を酢酸エチル中に溶解して得た溶液に炭素担持10%パラジウム(500mg)を加え、反応混合物を水素雰囲気下で4時間攪拌した。混合物を濾過し、減圧にて揮発性物質を除去して表記化合物(1.1g,100%)を白色粉末として得た;
【0144】
【化29】

【0145】
中間体6: 4−(4−ニトロフェニル)スルホニルシクロヘキサン−1−カルボン酸メチル
【0146】
【化30】

【0147】
4−(4−ニトロフェニル)スルファニルシクロヘキサン−1−カルボン酸メチル(中間体7,1.2g,4.06ミリモル)をDCM(50ml)中に溶解して得た溶液に50%m−クロロペルオキシ安息香酸(3.5g,10.16ミリモル)を加え、混合物を周囲温度で72時間攪拌した。減圧にて揮発性物質を除去し、残留物をジエチルエーテルと共にすりつぶし、濾過し、そして45℃にて減圧乾燥して表記化合物(1.2g,92%)を白色粉末として得た;
【0148】
【化31】

【0149】
中間体7: 4−(4−ニトロフェニル)スルファニルシクロヘキサン−1−カルボン酸メチル
【0150】
【化32】

【0151】
シス−4−スルファニルシクロヘキサン−1−カルボン酸(中間体8,2.7g,16.85ミリモル)を無水DMA(18ml)中に溶解して得た溶液を氷冷し、この溶液に60%水素化ナトリウム(675mg,20.0ミリモル)を加え、15分攪拌し、4−フルオロニトロベンゼン(2.38g,16.85ミリモル)を無水DMA(2ml)中に溶解して得た溶液を加え、そして反応混合物を周囲温度で3時間攪拌した。酢酸エチル(75ml)を加え、混合物を2M塩酸でpH2に酸性化し、水(2×30ml)とブラインで洗浄し、MgSOで乾燥し、濾過し、そして溶媒を蒸発除去して油性の黄色固体を得た。この粗製残留物を1:1のMeOH:イソヘキサン(60ml)中に懸濁し、ヘキサン中2Mトリメチルシリルジアゾメタン(10ml,20.0ミリモル)を加え、混合物を周囲温度で24時間攪拌した。揮発性物質を減圧にて除去し、粗製残留物をフラッシュシリカクロマトグラフィー(イソヘキサン中20〜50%酢酸エチルを溶離液として使用)によって精製して、表記化合物(2.2g,45%)を淡黄色固体として得た;
【0152】
【化33】

【0153】
中間体8: シス−4−スルファニルシクロヘキサン−1−カルボン酸
【0154】
【化34】

【0155】
ヤスツグ・ウエダとViviane Vinetによる「Can.J.Chem.64,2184(1986)」に記載の手順に従って作製した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

〔式中、Rはフェニルとナフチルから選択され、ここでRは、
i)グループa)から選択される置換基、および必要に応じて、グループb)から選択される置換基もしくは最大で2個までのグループc)からの置換基、あるいは
ii)グループb)から独立的に選択される1個もしくは2個の置換基、および必要に応じて、グループc)から選択される置換基、あるいは
iii)グループc)から独立的に選択される最大で3個までの置換基
で必要に応じて置換されており、
ここでグループa)は、(2−4C)アルキル、(2−4C)アルケニル、(2−4C)アルキニル、フェニル、4−フルオロフェニル、フェノキシ、4−フルオロフェノキシ、ベンジルオキシ、4−フルオロベンジルオキシ、(3−6C)シクロアルキル、(3−6)Cシクロアルコキシ、およびハロ(1−2C)アルキルであり、グループb)は、クロロ、メチル、およびメトキシであり、そしてグループc)はフルオロであり;
環Aは、(3−6C)シクロアルキル、(5−12C)ビシクロアルキル、およびフェニルから選択され;
nは0、1、または2であり;
は、水素、フルオロ、クロロ、ヒドロキシ、メトキシ、ハロ(1−2C)アルキル、メチル、エチル、シアノ、およびメチルスルホニルから選択され;
環Bは、(3−6C)シクロアルキル、(5−12C)ビシクロアルキル、およびフェニルから選択され;
は、直接結合であるか、あるいは−(CR1−2−、−O−(CR1−2−、および−CH(CR1−2−から選択されるリンカーであり{ここでLのそれぞれの意味に関して、CR基はRに直接結合している};
各Rは、水素、ヒドロキシ、(1−3C)アルコキシ、(1−4C)アルキル、ヒドロキシ(1−3C)アルキル、および(1−2C)アルコキシ(1−2C)アルキルから独立的に選択され、但しLが−O−(CR1−2−であるときは、酸素原子に直接結合している炭素原子上のRはヒドロキシまたは(1−3C)アルコキシではなく、
各Rは、水素とメチルから独立的に選択され;そして
は、ヒドロキシ、カルボキシ、(1−6C)アルコキシカルボニル、およびカルボン酸模倣体すなわちバイオイソスターから選択される〕
で示される化合物または前記化合物の塩。
【請求項2】
4−[4−[[5−[(3,4,5−トリフルオロフェニル)アミノ]1,3,4−オキサジアゾール−2−カルボニル]アミノ]フェニル]スルホニルシクロヘクサン−1−カルボン酸;4−[4−[[5−[(4−フルオロフェニル)アミノ]1,3,4−オキサジアゾール−2−カルボニル]アミノ]フェニル]スルホニルシクロヘクサン−1−カルボン酸;または医薬的に許容しうる前記化合物のいずれかの塩;から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
医薬として使用するための、請求項1〜2のいずれか一項に記載の化合物、または医薬的に許容しうる前記化合物の塩もしくはプロドラッグ。
【請求項4】
請求項1〜2のいずれか一項に記載の式(I)の化合物または医薬的に許容しうる前記化合物の塩を、処置を必要とするヒト等の温血動物に有効量にて投与することを含む、前記温血動物においてDGAT1活性の阻害を生じさせるための方法。
【請求項5】
請求項1〜2のいずれか一項に記載の式(I)の化合物または医薬的に許容しうる前記化合物の塩を、処置を必要とするヒト等の温血動物に有効量にて投与することを含む、前記温血動物において真性糖尿病および/または肥満症を治療する方法。
【請求項6】
ヒト等の温血動物に対してDGAT1活性の阻害を生じさせる際に使用するための医薬の製造における、請求項1〜2のいずれか一項に記載の化合物または前記化合物の医薬的に許容しうる塩の使用。
【請求項7】
前記医薬が、ヒト等の温血動物における真性糖尿病および/または肥満症の治療に使用するためのものである、請求項6に記載の使用。
【請求項8】
請求項1〜2のいずれか一項に記載の式(I)の化合物または前記化合物の医薬的に許容しうる塩を医薬的に許容しうる賦形剤もしくはキャリヤーと関連させて含む医薬組成物。
【請求項9】
以下の工程
a)式(I)の化合物を反応させて、式(I)の別の化合物を形成させること;
b)式(2)
【化2】

の化合物の環化;
c)式(3)
【化3】

のアミンと式(4)
【化4】

のカルボキシレートとの反応
(式中の可変項はいずれも、特に明記しない限り、式(I)の化合物に関して前記にて規定したとおりである)のうち1つを含み、
そしてその後に、必要ならばあるいは望ましいのであれば:
i)保護基が存在する場合は保護基を取り除くこと;および/または
ii)式(I)の化合物の塩を形成させること
を含む、請求項1に記載の化合物の製造方法。

【公表番号】特表2009−539957(P2009−539957A)
【公表日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−514884(P2009−514884)
【出願日】平成19年6月8日(2007.6.8)
【国際出願番号】PCT/GB2007/002135
【国際公開番号】WO2007/141545
【国際公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(300022641)アストラゼネカ アクチボラグ (581)
【Fターム(参考)】