説明

DME地上装置とその応答効率モニタ方法

【課題】応答効率を継続的にモニタすることの可能なDME地上装置とその応答効率モニタ方法を提供すること。
【解決手段】監視制御部30により生成された擬似質問パルスのトランスポンダ部20への転送経路途中に可変利得増幅器40を設ける。そしてこの可変利得増幅器40の利得を制御して、応答パルスレート制御の実施の如何によらず、擬似質問パルスのレベルを、質問パルスの受信レベル閾値よりも高いレベルに、常時保つようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は無線航法施設であるDME(Distance Measuring Equipment)地上装置と、その応答効率をモニタする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
DME地上装置は、航空機からの質問パルスを受けたのち一定時間の経過後に応答パルスを送信する。航空機は質問パルスの送信から応答パルスの受信までの時間に基づき、DME地上装置からの距離を測定することができる。このほか各パルスにはコード化された種々の情報が含まれており、航空機の安全運行には欠かせない装置である。
【0003】
DME地上装置には、規定により応答効率を70%以上に保つことが定められている。応答効率とは、受けた質問パルスに対して応答パルスを確実に返送できた割合を示す指標である。しかしながら複数の質問パルスが同時に送信されて干渉すると、応答パルスを返せなくなる。また質問パルスの受信から応答パルスを送信するまでのブランキング時間内に受信された質問パルスは、無視される。これらのことから一つのDME地上装置に対して質問パルスを発する航空機の数が多すぎると応答効率が低下し、70%に維持することが難しくなる。
【0004】
そこで、航空機からの時間あたりの質問パルス数が多すぎる状態ではDME地上装置の受信感度を低下させ、遠方の航空機からの質問パルスを受信処理しないことで応答効率を規定値以上に保つことが考えられている。これに関連する技術が特許文献1として出願されている。以下、この技術を応答パルスレート制御と称する。
【特許文献1】特願2007−145282号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところでDME地上装置は、送信パルス(応答パルス)の波形や送信レベル、システム遅延時間、応答効率などを自ら監視する機能を持ち、この機能によりトランスポンダの正常性などが確認される。例えば応答効率の監視には、航空機の質問パルスに見立てた擬似質問パルスを装置内部で発生させてトランスポンダに内部転送する。これを受けたDME地上装置のトランスポンダは応答パルスを送信する。擬似質問パルス数に対する応答パルス数の比率から応答効率を算出できる。擬似質問パルスの送信レベルは、最小受信レベルよりも例えば6dB程度高い値に固定される。
【0006】
しかしながら応答パルスレート制御モードでは質問パルスの受信レベル閾値が意図的に上げられるので、このレベル閾値が最小受信レベルよりも6dB以上高くなると擬似質問パルスがマスクされてしまい、処理されないことになる。このような状態では応答効率をモニタできなくなることから、何らかの対策を講じる必要がある。
【0007】
この発明は上記事情によりなされたもので、その目的は、応答効率を継続的にモニタすることの可能なDME地上装置とその応答効率モニタ方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するためにこの発明の一態様によれば、受信した質問パルスに対する応答パルスを送出するトランスポンダ部と、このトランスポンダ部の状態をモニタする監視制御部とを具備するDME地上装置において、前記トランスポンダ部は、閾値以上のレベルで到来した質問パルスに対してのみ応答パルスを送出する応答処理部と、前記質問パルスの受信レートに応じて前記閾値を可変することで前記応答パルスの送出レートを制御するレート制御部とを備え、前記監視制御部は、擬似質問パルスを生成して前記トランスポンダ部に転送し、前記擬似質問パルスと当該擬似質問パルスに対する応答パルスとの比率から前記トランスポンダ部の応答効率をモニタするモニタ部と、前記擬似質問パルスの転送レベルを前記閾値以上のレベルに保持する保持部とを備えることを特徴とするDME地上装置が提供される。
【0009】
このような手段を講じることにより、応答パルスレート制御モードにおいて質問パルスの受信レベル閾値が高められたとしてもそれに追従するかたちで擬似質問パルスの転送レベルが上げられる。これにより擬似質問パルスが処理されなくなることを防止でき、従って応答効率を常時モニタすることが可能になる。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、応答効率を継続的にモニタすることの可能なDME地上装置とその応答効率モニタ方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は、この発明に関わるDME地上装置の実施の形態を示す機能ブロック図である。このDME地上装置10は、受信した質問パルスに対する応答パルスを送出するトランスポンダ部20と、このトランスポンダ部20の状態をモニタする監視制御部30とを備える。このうちトランスポンダ部20はアンテナ11を介して航空機(図示せず)と無線通信を行う。監視制御部30は擬似質問パルスを生成する。この擬似質問パルスは装置内部の方向性結合器12を介してトランスポンダ部20に転送される。その際、転送経路の途中に設けられた可変利得増幅器40により、擬似質問パルスの転送レベルが制御される。
【0012】
図1において、航空機からの質問パルスはアンテナ11、方向性結合器12を介してトランスポンダ部20に達し、さらにサーキュレータ21を介してIF変換部22に送られる。IF変換部22は受信したパルスをIF(Intermediate Frequency)信号に変換し、このIF信号はアナログ/ディジタル(AD)変換部23でデータ化されたのち処理部24で処理される。処理部24は受信した質問信号に対する応答パルスを生成し、この応答パルスはパルス送信部25で増幅されてサーキュレータ21、方向性結合器12、アンテナ11を介して航空機に返送される。
【0013】
トランスポンダ部20において、処理部24は複数の航空機から送出される質問パルスの時間の数(レート)が過度になると質問パルスの受信感度を低下させる。すなわち処理部24は質問パルスの受信レベルに閾値を設定し、この閾値以上のレベルで到来した質問パルスに対してのみ応答パルスを送出する。このようにすることで応答効率が一定値以上に保たれる。
【0014】
さらに処理部24は、この閾値を質問パルスの受信レートに応じて可変する。つまり受信レートが高くなればなるほど、少なくとも70%以上の応答効率が保たれるように閾値レベルも上げられる。このようにして応答パルスレート制御モードにおける処理が実施される。
【0015】
ところで、監視制御部30はこの実施形態に係わる処理機能としてモニタ処理部30aと、レベル制御部30bとを備える。モニタ処理部30aは、擬似質問パルスを生成してこれをトランスポンダ部20に転送する。そして、擬似質問パルスとこれに対する応答パルスとの比率からトランスポンダ部20の応答効率をモニタする。
【0016】
レベル制御部30bは、可変利得増幅器40の利得を制御して擬似質問パルスの転送レベルを変化させる。すなわちレベル制御部30bは、処理部24により可変される質問パルスの受信レベル閾値を、トランスポンダ部20から取得する。そして擬似質問パルスの転送レベルをこの閾値以上のレベルに保つべく、可変利得増幅器40の利得を制御する。これにより応答パルスレート制御モードの動作如何に関わらず、トランスポンダ部20おいては、送出された擬似質問パルスが常に受信処理されることになる。従って擬似質問パルスに対しては応答パルスが必ず返送されることになり、応答効率を常時、継続的にモニタすることが可能になる。
【0017】
以上説明したようにこの実施形態では、監視制御部30により生成された擬似質問パルスのトランスポンダ部20への転送経路途中に可変利得増幅器40を設ける。そしてこの可変利得増幅器40の利得を制御して、応答パルスレート制御の実施の如何によらず、擬似質問パルスのレベルを、質問パルスの受信レベル閾値よりも高いレベルに、常時保つようにしている。このようにしたので擬似質問パルスがトランスポンダ部20において無視されることが無くなり、応答効率を継続的に計測できるようになる。従って応答効率を継続的にモニタすることの可能なDME地上装置とその応答効率モニタ方法を提供することが可能となる。
【0018】
なお、この発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明に関わるDME地上装置の実施の形態を示す機能ブロック図。
【符号の説明】
【0020】
10…DME地上装置、20…トランスポンダ部、30…監視制御部、11…アンテナ、12…方向性結合器、21…サーキュレータ、22…IF変換部、23…アナログ/ディジタル変換部、24…処理部、25…パルス送信部、30a…モニタ処理部、30b…レベル制御部、40…可変利得増幅器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信した質問パルスに対する応答パルスを送出するトランスポンダ部と、このトランスポンダ部の状態をモニタする監視制御部とを具備するDME(Distance Measuring Equipment)地上装置において、
前記トランスポンダ部は、
閾値以上のレベルで到来した質問パルスに対してのみ応答パルスを送出する応答処理部と、
前記質問パルスの受信レートに応じて前記閾値を可変することで前記応答パルスの送出レートを制御するレート制御部とを備え、
前記監視制御部は、
擬似質問パルスを生成して前記トランスポンダ部に転送し、前記擬似質問パルスと当該擬似質問パルスに対する応答パルスとの比率から前記トランスポンダ部の応答効率をモニタするモニタ部と、
前記擬似質問パルスの転送レベルを前記閾値以上のレベルに保持する保持部とを備えることを特徴とするDME地上装置。
【請求項2】
前記レート制御部は、前記応答効率を70%以上に保つべく前記閾値を可変することを特徴とする請求項1に記載のDME地上装置。
【請求項3】
閾値以上のレベルで到来した質問パルスに対してのみ応答パルスを送出する応答処理部と、前記質問パルスの受信レートに応じて前記閾値を可変することで前記応答パルスの送出レートを制御するレート制御部とを備えるDME(Distance Measuring Equipment)地上装置の応答効率をモニタする方法であって、
擬似質問パルスを生成して前記応答処理部に転送し、
前記擬似質問パルスと当該擬似質問パルスに対する応答パルスとの比率から前記応答効率をモニタし、
前記擬似質問パルスの転送レベルを前記閾値以上のレベルに保持することを特徴とする応答効率モニタ方法。
【請求項4】
前記応答効率を70%以上に保つべく前記閾値を可変することを特徴とする請求項3に記載の応答効率モニタ方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−236881(P2009−236881A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−86925(P2008−86925)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】