説明

DNA−PK阻害剤

式(I)の化合物(式中、RおよびRは独立に、水素、置換または非置換のC1−7アルキル基、C3−20複素環基またはC5−20アリール基から選択されるか、それらが結合している窒素原子とともに、4から8個の環原子を有する置換または非置換の複素環を形成していても良く、Xは、CHまたはNであり、nは、1または2であり、RC1およびRC2は独立に、Hおよびメチルから選択され、XがNである場合、RはHならびに置換または非置換のC1−7アルキル、C3−20複素環、C5−20アリール、アシル、エステル、アミドおよびスルホニルからなる群から選択され、XがCHである場合、RはHならびに置換または非置換のC1−7アルキル、C3−20複素環、C5−20アリール、アシル、エステル、アミド、スルホニル、アミノおよびエーテルからなる群から選択される。式(I)による化合物は、腫瘍およびレトロウィルス介在疾患の治療において有用なDNA−PK阻害薬である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DNA−PK阻害剤として作用する化合物、その使用および合成に関する。
【背景技術】
【0002】
DNA依存性プロテインキナーゼ(DNA−PK)は、DNAとの会合により活性化される核セリン/トレオニンプロテインキナーゼである。生化学的および遺伝学的なデータにより、このキナーゼは、DNA−PKcsと称される大きい触媒サブユニットとKuと称される調節成分とで構成されることが明らかにされている。DNA−PKは、DNA二本鎖切断(DSB)修復機構およびV(D)J組換え機構の両方のきわめて重要な成分であることが示されている。そのほかに、最近の研究から、クロマチン構造のモジュレーションおよびテロメアの維持をはじめとするさまざまな他の過程でDNA−PK成分の関与が示唆されている(Smith, G. C. M. and Jackson, S.P., Genes and Dev., 13, 916-934 (1999))。
【0003】
DNA DBSは、細胞が遭遇しうる最も致命的な損傷であるとみなされている。DNA DSBによりもたらされる深刻な脅威に対抗するために、真核細胞は、その修復を媒介するいくつかの機序を進化させてきた。高等真核生物では、こうした機序のうちで有力なのは、非正統的組換えとしても知られるDNA非相同的末端結合(NHEJ)である。DNA−PKは、この経路できわめて重要な役割を果たす。DNA−PKの活性の増大は、イン・ビトロおよびイン・ビボの両方で実証されており、IRおよび二官能性アルキル化剤に対する腫瘍細胞の耐性と相関関係を示す(Muller C.ら, Blood, 92, 2213-2219 (1998), Sirzen F.ら, Eur. J. Cancer, 35, 111-116 (1999))。したがって、DNA−PKの活性の増大は、細胞および腫瘍の耐性機序として提案されている。このため、小分子阻害剤でDNA−PKを阻害すれば、過剰発現が耐性機序とみなされる腫瘍に有効であり得る。
【0004】
また、PI 3−キナーゼ阻害剤LY294002
【化1】

は、イン・ビトロでDNA−PKの機能を阻害し得ることが明らかになっている(Izzard, R.A.ら, Cancer Res., 59, 2581-2586 (1999))。LY294002の、DNA−PKに対するIC50(酵素活性の50%が失われる濃度)は約1μMであり、これはPI3−キナーゼに対するIC50と同じである。さらに、LY294002はまた、IRの作用に対する細胞の感受性をわずかに増強し得ることが示されている(Rosenzweig, K.E.ら, Clin. Cancer Res., 3, 1149-1156 (1999))。
【0005】
国際公開第03/024949号には、一般構造
【化2】

で示される2−アミノ−クロメン−4−オン類を含めてDNA−PK阻害剤として有用ないくつかの種類の化合物が記載されており、下記のものはその一例であった。
【化3】

この化合物は、10から12nMのIC50および1.3のSER(方法については下記参照)を示した。
【0006】
国際公開第2006/032869号には、下記構造の2−アミノ−クロメン−4−オン類などの、DNA−PK阻害薬として有用な化合物が記載されている。
【化4】

式中、Qは−NH−C(=O)−または−O−を表し、Yは置換または非置換のC1−5アルキレン基であり、XはHまたはチオエーテルもしくはアミノ基から選択される。
【0007】
DNA修復過程へのDNA−PKの関与および小分子阻害剤が培養下で哺乳動物細胞の放射線感受性および化学感受性を増強することが示されていることを考えると、特異的DNA−PK阻害剤を適用すれば、癌の化学療法および放射線療法の両方の効力を増強する薬剤として作用するであろう。DNA−PK阻害剤はまた、レトロウイルス介在疾患の治療に有用であり得る。たとえば、DNA−PK活性が失われるとレトロウイルス組込み過程が極度に抑制されることが実証されている(Daniel Rら, Science, 284, 644-7 (1999))。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第03/024949号
【特許文献2】国際公開第2006/032869号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Smith, G. C. M. and Jackson, S.P., Genes and Dev., 13, 916-934 (1999).
【非特許文献2】Muller Cら, Blood, 92, 2213-2219 (1998), Sirzen Fら, Eur. J. Cancer, 35, 111-116 (1999).
【非特許文献3】Izzard, R.A.ら, Cancer Res., 59, 2581-2586 (1999).
【非特許文献4】Rosenzweig, K.E.ら, Clin. Cancer Res., 3, 1149-1156 (1999).
【非特許文献5】Daniel Rら, Science, 284, 644-7 (1999).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明者らは、このたび、類似したもしくは改善されたレベルのDNA−PK阻害を示すとともに活性医薬として使用するのに有用な他の特性、特に改善された溶解性および細胞性の効力をも有するさらなる化合物を発見した。本発明の化合物の一部は、水系媒体およびリン酸緩衝溶液の両方で良好な溶解度をも示すものであり、溶解度の向上は、静脈経路での投与または小児科用途での経口製剤(例えば液剤および小錠剤形態)用に当該化合物を製剤化する上で有用となり得る。本発明の化合物の経口生物学的利用能は向上したものとなり得る。
【課題を解決するための手段】
【0011】
従って、本発明の第1の態様は、下記式Iの化合物を提供するものである。
【化5】

【0012】
[式中、
およびRは独立に、水素、置換または非置換のC1−7アルキル基、C3−20複素環基またはC5−20アリール基から選択されるか、それらが結合している窒素原子とともに、4から8個の環原子を有する置換または非置換の複素環を形成していても良く、
Xは、CHまたはNであり、
nは、1または2であり、
C1およびRC2は独立に、Hおよびメチルから選択され、
XがNである場合、RはHならびに置換または非置換のC1−7アルキル、C3−20複素環、C5−20アリール、アシル、エステル、アミドおよびスルホニルからなる群から選択され、
XがCHである場合、RはHならびに置換または非置換のC1−7アルキル、C3−20複素環、C5−20アリール、アシル、エステル、アミド、スルホニル、アミノおよびエーテルからなる群から選択される]。
【0013】
本発明の第2の態様は、第1の態様に係る化合物と製薬上許容される担体または希釈剤とを含む組成物を提供する。
【0014】
本発明の第3の態様は、治療方法に使用するための第1の態様に係る化合物を提供する。
【0015】
本発明の第4の態様は、DNA−PKを阻害することにより改善される疾患を治療するための医薬の調製における第1の態様に係る化合物の使用を提供する。本発明の第4の態様はまた、DNA−PKの阻害によって改善される疾患の治療方法に使用するための第1の態様の化合物を提供する。
【0016】
第4の態様において、第1の態様の化合物が、PI3−キナーゼおよび/またはATMと比較してDNA−PKの活性を選択的に阻害することが好ましい。他のPI3−キナーゼファミリーメンバーを阻害するとそうした酵素の機能の消失に伴う望ましくない副作用を生じる可能性があるので、選択性は重要な問題である。
【0017】
特に、本発明の第4の態様において、当該化合物は、
(a)癌治療における補助剤として、または腫瘍細胞に対する電離放射線もしくは化学療法剤による治療効力を高めるために使用されるか、またはそのための医薬の製造において使用することができ、
(b)レトロウイルス介在疾患を治療するために使用するか、それの治療のための医薬の製造において使用することができる。
【0018】
本発明の別の態様は、ヒトまたは動物の治療方法に、好ましくは医薬組成物の形態で使用される、本明細書に記載の活性化合物を提供する。
【0019】
本発明の別の態様は、細胞を有効量の本明細書に記載の活性化合物に接触させる段階を含む、イン・ビトロまたはイン・ビボにおけるDNA−PKの阻害方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0020】
定義
1−7アルキル:本明細書中で使用される「C1−7アルキル」という用語は、脂肪族であっても脂環式であってもそれらの組合せであってもよくかつ飽和であっても部分不飽和であっても完全不飽和であってもよい1から7個の炭素原子を有するC1−7炭化水素化合物から水素原子を除去することにより得られる一価部分を意味する。
【0021】
飽和直鎖C1−7アルキル基の例としては、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、およびn−ペンチル(アミル)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0022】
飽和分岐状C1−7アルキル基の例としては、イソプロピル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、およびネオペンチルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0023】
飽和脂環式C1−7アルキル基(「C3−7シクロアルキル」基とも称される)の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、およびシクロヘキシルのような基、さらには置換された基(例えば、そのような基を含む基)、例えば、メチルシクロプロピル、ジメチルシクロプロピル、メチルシクロブチル、ジメチルシクロブチル、メチルシクロペンチル、ジメチルシクロペンチル、メチルシクロヘキシル、ジメチルシクロヘキシル、シクロプロピルメチル、およびシクロヘキシルメチルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0024】
1以上の炭素炭素二重結合を有する不飽和C1−7アルキル基(「C2−7アルケニル」基とも称される)の例としては、エテニル(ビニル、−CH=CH)、2−プロペニル(アリル、−CH−CH=CH)、イソプロペニル(−C(CH)=CH)、ブテニル、ペンテニル、およびヘキセニルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0025】
1以上の炭素炭素三重結合を有する不飽和C1−7アルキル基(「C2−7アルキニル」基とも称される)の例としては、エチニルおよび2−プロピニル(プロパルギル)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0026】
1以上の炭素炭素二重結合を有する不飽和脂環式(炭素環式)C1−7アルキル基(「C3−7シクロアルケニル」基とも称される)の例としては、シクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、およびシクロヘキセニルのような無置換の基、さらには置換された基(例えば、そのような基を含む基)、例えば、シクロプロペニルメチルおよびシクロヘキセニルメチルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0027】
3−20複素環式:本明細書中で使用される「C3−20複素環式」という用語は、C3−20複素環式化合物の環原子から水素原子を除去することにより得られる一価部分を意味する。ただし、その化合物は、1つの環または2つ以上の環(例えば、スピロ環、縮合環、架橋環)を有し、かつ3から20個の環原子を有し、そのうちの1から10個の原子は、環ヘテロ原子であり、しかもその環のうちの少なくとも1つは、複素環式環である。好ましくは、各環は、3から7個の環原子を有し、そのうちの1から4個は、環ヘテロ原子である。環ヘテロ原子は、好ましくは、O、N、S、およびPよりなる群から選択されうる。「C3-20」は、炭素原子であるかヘテロ原子であるかを問わず、環原子を表す。
【0028】
1個の窒素環原子を有するC3−20複素環基の例としては、アジリジン、アゼチジン、ピロリジン(テトラヒドロピロール)、ピロリン(例えば、3−ピロリン、2,5−ジヒドロピロール)、2H−ピロールまたは3H−ピロール(イソピロール、イソアゾール)、ピペリジン、ジヒドロピリジン、テトラヒドロピリジン、およびアゼピンから誘導される基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0029】
1個の酸素環原子を有するC3−20複素環基の例としては、オキシラン、オキセタン、オキソラン(テトラヒドロフラン)、オキソール(ジヒドロフラン)、オキサン(テトラヒドロピラン)、ジヒドロピラン、ピラン(C)、およびオキセピンから誘導される基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されたC3−20複素環基の例としては、環形の糖、例えば、フラノースおよびピラノース、例えば、リボース、リキソース、キシロース、ガラクトース、スクロース、フルクトース、アラビノースなどが挙げられる。
【0030】
1個の硫黄環原子を有するC3−20複素環基の例としては、チイラン、チエタン、チオラン(テトラヒドロチオフェン)、チアン(テトラヒドロチオピラン)、およびチエパンから誘導される基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0031】
2個の酸素環原子を有するC3−20複素環基の例としては、ジオキソラン、ジオキサン、およびジオキセパンから誘導される基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0032】
2個の窒素環原子を有するC3−20複素環基の例としては、イミダゾリジン、ピラゾリジン(ジアゾリジン)、イミダゾリン、ピラゾリン(ジヒドロピラゾール)、およびピペラジンから誘導される基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0033】
1個の窒素環原子と1個の酸素環原子とを有するC3−20複素環基の例としては、テトラヒドロオキサゾール、ジヒドロオキサゾール、テトラヒドロイソオキサゾール、ジヒドロイソオキサゾール、モルホリン、テトラヒドロオキサジン、ジヒドロオキサジン、およびオキサジンから誘導される基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0034】
1個の酸素環原子と1個の硫黄環原子とを有するC3−20複素環基の例としては、オキサチオランおよびオキサチアン(チオキサン)から誘導される基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0035】
1個の窒素環原子と1個の硫黄環原子とを有するC3−20複素環基の例としては、チアゾリン、チアゾリジン、およびチオモルホリンから誘導される基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0036】
3−20複素環基の他の例としては、オキサジアジンおよびオキサチアジンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0037】
1以上のオキソ(=O)基をさらに有する複素環基の例としては、以下のものから誘導される基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
フラノン、ピロン、ピロリドン(ピロリジノン)、ピラゾロン(ピラゾリノン)、イミダゾリドン、チアゾロンおよびイソチアゾロンなどのC複素環式化合物、
ピペリジノン(ピペリドン)、ピペリジンジオン、ピペラジノン、ピペラジンジオン、ピリダジノン、およびピリミジノン(例えば、シトシン、チミン、ウラシル)ならびにバルビツール酸などのC複素環式化合物、
縮合複素環式化合物、例えば、オキシインドール、プリノン(例えば、グアニン)、ベンゾオキサゾリノン、ベンゾピロン(例えば、クマリン)、
無水マレイン酸、無水コハク酸および無水グルタル酸など(これらに限定されるものではない)の環状無水物(環中の−C(=O)−O−C(=O)−)、
エチレンカーボネートおよび1,2−プロピレンカーボネートなどの環状カーボネート(環中の−O−C(=O)−O−)、
スクシンイミド、マレイミド、フタルイミド、およびグルタルイミドなど(これらに限定されるものではない)のイミド(環中の−C(=O)−NR−C(=O)−)、
β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン(2−ピペリドン)およびε−カプロラクトンなど(これらに限定されるものではない)のラクトン(環状エステル、環中の−O−C(=O)−)、
β−プロピオラクタム、γ−ブチロラクタム(2−ピロリドン)、δ−バレロラクタムおよびε−カプロラクタムなど(これらに限定されるものではない)のラクタム(環状アミド、環中の−NR−C(=O)−)、
2−オキサゾリドンなどの環状カルバメート(環中の−O−C(=O)−NR−)、
2−イミダゾリドンおよびピリミジン−2,4−ジオン(例えば、チミン、ウラシル)などの環状尿素(環中の−NR−C(=O)−NR−)。
【0038】
5−20アリール:本明細書中で使用される「C5−20アリール」という用語は、C5−20芳香族化合物の芳香環原子から水素原子を除去することにより得られる一価部分を意味する。ただし、その化合物は、1つの環または2つ以上の環(例えば、縮合環)を有し、かつ5から20個の環原子を有し、しかもその環のうちの少なくとも1つは、芳香環である。好ましくは、各環は、5から7個の環原子を有する。
【0039】
環原子は、「カルボアリール基」の場合のようにすべて炭素原子であってもよく、その場合、この基は、適宜、「C5−20カルボアリール」基と称することができる。
【0040】
環ヘテロ原子を有していないC5−20アリール基(すなわち、C5−20カルボアリール基)の例としては、ベンゼン(すなわち、フェニル)(C)、ナフタレン(C10)、アントラセン(C14)、フェナントレン(C14)、ナフタセン(C18)、およびピレン(C16)から誘導される基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0041】
縮合環(そのうちの一つは芳香環でない)を含むアリール基の例としては、インデンおよびフルオレンから誘導される基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0042】
他の選択肢として、環原子は、「ヘテロアリール基」の場合のように1個以上のヘテロ原子(例えば、酸素、窒素、および硫黄が挙げられるが、これらに限定されるものではない)を含んでいてもよい。この場合、この基は、適宜、「C5−20ヘテロアリール」基と称することができる。ただし、「C5−20」は、炭素原子であるかヘテロ原子であるかを問わず、環原子を表す。好ましくは、各環は、5から7個の環原子を有し、そのうちの0から4個は、環ヘテロ原子である。
【0043】
5−20ヘテロアリール基の例としては、フラン(オキソール)、チオフェン(チオール)、ピロール(アゾール)、イミダゾール(1,3−ジアゾール)、ピラゾール(1,2−ジアゾール)、トリアゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、オキサジアゾール、およびオキサトリアゾールから誘導されるCヘテロアリール基、ならびにイソオキサジン、ピリジン(アジン)、ピリダジン(1,2−ジアジン)、ピリミジン(1,3−ジアジン、例えば、シトシン、チミン、ウラシル)、ピラジン(1,4−ジアジン)、トリアジン、テトラゾール、およびオキサジアゾール(フラザン)から誘導されるCヘテロアリール基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0044】
縮合環を含むC5−20複素環基(そのうちの一部は、C5−20ヘテロアリール基である)の例としては、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、インドール、イソインドール、プリン(例えば、アデニン、グアニン)、ベンゾチオフェン、ベンゾイミダゾールから誘導されるC複素環基、キノリン、イソキノリン、ベンゾジアジン、ピリドピリジン、キノキサリンから誘導されるC10複素環基、カルバゾール、ジベンゾチオフェン、ジベンゾフランから誘導されるC13複素環基、アクリジン、キサンテン、フェノキサチイン、フェナジン、フェノキサジン、フェノチアジンから誘導されるC14複素環基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0045】
以上のC1−7アルキル基、C3−20複素環基、およびC5−20アリール基は、単独であるか他の置換基の一部分であるかを問わず、それら自体が、場合により、それら自体および以下に列挙される追加の置換基から選択される1つ以上の基で置換されていてもよい。
【0046】
ハロ:−F、−Cl、−Br、および−I。
【0047】
ヒドロキシ:−OH。
【0048】
エーテル:−OR、ただし、Rは、エーテル置換基、例えば、C1−7アルキル基(以下に論述されるC1−7アルコキシ基とも称される)、C3−20複素環基(C3−20複素環式オキシ基とも称される)、またはC5−20アリール基(C5−20アリールオキシ基とも称される)、好ましくはC1−7アルキル基である。
【0049】
1−7アルコキシ:−OR、ただし、Rは、C1−7アルキル基である。C1−7アルコキシ基の例としては、−OCH(メトキシ)、−OCHCH(エトキシ)、および−OC(CH(tert−ブトキシ)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0050】
オキソ(ケト、−オン):=O。置換基としてオキソ基(=O)を有する環式化合物および/または環式基の例としては、次のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない:シクロペンタノンおよびシクロヘキサノンなどの炭素環式化合物、ピロン、ピロリドン、ピラゾロン、ピラゾリノン、ピペリドン、ピペリジンジオン、ピペラジンジオンおよびイミダゾリドンなどの複素環式化合物、無水マレイン酸および無水コハク酸など(これらに限定されるものではない)の環状無水物、プロピレンカーボネートなどの環状カーボネート、スクシンイミドおよびマレイミドなど(これらに限定されるものではない)のイミド、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、およびε−カプロラクトンなど(これらに限定されるものではない)のラクトン(環状エステル、環中の−O−C(=O)−)、ならびにβ−プロピオラクタム、γ−ブチロラクタム(2−ピロリドン)、δ−バレロラクタムおよびε−カプロラクタムなど(これらに限定されるものではない)のラクタム(環状アミド、環中の−NH−C(=O)−)。
【0051】
イミノ(イミン):=NR、ただし、Rは、イミノ置換基、例えば、水素、C1−7アルキル基、C3−20複素環基、またはC5−20アリール基、好ましくは水素またはC1−7アルキル基である。エステル基の例としては、=NH、=NMe、=NEt、および=NPhが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0052】
ホルミル(カルバルデヒド、カルボキシアルデヒド):−C(=O)H。
【0053】
アシル(ケト):−C(=O)R、ただし、Rは、アシル置換基、例えば、C1−7アルキル基(C1−7アルキルアシルもしくはC1−7アルカノイルとも称される)、C3−20複素環基(C3−20複素環式アシルとも称される)、またはC5−20アリール基(C5−20アリールアシルとも称される)、好ましくはC1−7アルキル基である。アシル基の例としては、−C(=O)CH(アセチル)、−C(=O)CHCH(プロピオニル)、−C(=O)C(CH(ブチリル)、および−C(=O)Ph(ベンゾイル、フェノン)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0054】
カルボキシ(カルボン酸):−COOH。
【0055】
エステル(カルボキシレート、カルボン酸エステル、オキシカルボニル):−C(=O)OR、ただし、Rは、エステル置換基、例えば、C1−7アルキル基、C3−20複素環基、またはC5−20アリール基、好ましくはC1−7アルキル基である。エステル基の例としては、−C(=O)OCH、−C(=O)OCHCH、−C(=O)OC(CH、および−C(=O)OPhが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0056】
アシルオキシ(逆エステル):−OC(=O)R、ただし、Rは、アシルオキシ置換基、例えば、C1−7アルキル基、C3−20複素環基、またはC5−20アリール基、好ましくはC1−7アルキル基である。アシルオキシ基の例としては、−OC(=O)CH(アセトキシ)、−OC(=O)CHCH、−OC(=O)C(CH、−OC(=O)Ph、および−OC(=O)CHPhが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0057】
アミド(カルバモイル、カルバミル、アミノカルボニル、カルボキサミド):−C(=O)NR、ただし、RおよびRは、独立に、アミノ基に関連して定義されるようなアミノ置換基である。アミド基の例としては、−C(=O)NH、−C(=O)NHCH、−C(=O)N(CH、−C(=O)NHCHCH、および−C(=O)N(CHCH、さらには例えば、ピペリジノカルボニル、モルホリノカルボニル、チオモルホリノカルボニル、およびピペラジノカルボニルの場合のように、RおよびRが、それらが結合されている窒素原子と一緒になって、複素環式構造を形成しているアミド基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0058】
アシルアミド(アシルアミノ):−NRC(=O)R、ただし、Rは、アミド置換基、例えば、水素、C1−7アルキル基、C3−20複素環基、またはC5−20アリール基、好ましくは水素またはC1−7アルキル基であり、そしてRは、アシル置換基、例えば、C1−7アルキル基、C3−20複素環基、またはC5−20アリール基、好ましくは水素またはC1−7アルキル基である。アシルアミド基の例としては、−NHC(=O)CH、−NHC(=O)CHCH、および−NHC(=O)Phが挙げられるが、これらに限定されるものではない。RおよびRは、一緒になって、例えば、スクシンイミジル、マレイミジル、およびフタルイミジル:
【化6】

の場合のように、環状構造を形成していてもよい。
【0059】
アシルウレイド:−N(R)C(O)NRC(O)R、ただし、RおよびRは、独立に、ウレイド置換基、例えば、水素、C1−7アルキル基、C3−20複素環基、またはC5−20アリール基、好ましくは水素またはC1−7アルキル基である。Rは、アシル基に関連して定義されるようなアシル基である。アシルウレイド基の例としては、−NHCONHC(O)H、−NHCONMeC(O)H、−NHCONEtC(O)H、−NHCONMeC(O)Me、−NHCONEtC(O)Et、−NMeCONHC(O)Et、−NMeCONHC(O)Me、−NMeCONHC(O)Et、−NMeCONMeC(O)Me、−NMeCONEtC(O)Et、および−NMeCONHC(O)Phが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0060】
カルバメート:−NR−C(O)−OR、ただし、Rは、アミノ基に関連して定義されるようなアミノ置換基であり、そしてRは、エステル基に関連して定義されるようなエステル基である。カルバメート基の例としては、−NH−C(O)−O−Me、−NMe−C(O)−O−Me、−NH−C(O)−O−Et、−NMe−C(O)−O−t−ブチル、および−NH−C(O)−O−Phが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0061】
チオアミド(チオカルバミル):−C(=S)NR、ただし、RおよびRは、独立に、アミノ基に関連して定義されるようなアミノ置換基である。アミド基の例としては、−C(=S)NH、−C(=S)NHCH、−C(=S)N(CH、および−C(=S)NHCHCHが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0062】
テトラゾリル:4個の窒素原子と1個の炭素原子とを有する5員芳香環、
【化7】

【0063】
アミノ:−NR、ただし、RおよびRは、独立に、アミノ置換基、例えば、水素、C1−7アルキル基(C1−7アルキルアミノもしくはジ−C1−7アルキルアミノとも称される)、C3−20複素環基、またはC5−20アリール基、好ましくは、HまたはC1−7アルキル基であるか、あるいは「環状」アミノ基の場合、RおよびRは、それらが結合されている窒素原子と一緒になって、4から8個の環原子を有する複素環式環を形成している。アミノ基の例としては、−NH、−NHCH、−NHC(CH、−N(CH、−N(CHCH、および−NHPhが挙げられるが、これらに限定されるものではない。環状アミノ基の例としては、アジリジノ、アゼチジノ、ピロリジノ、ピペリジノ、ピペラジノ、モルホリノ、およびチオモルホリノが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0064】
イミノ:=NR、ただし、Rは、イミノ置換基、例えば、水素、C1−7アルキル基、C3−20複素環基、またはC5−20アリール基、好ましくはHまたはC1−7アルキル基である。
【0065】
アミジン:−C(=NR)NR、ただし、各Rは、アミジン置換基、例えば、水素、C1−7アルキル基、C3−20複素環基、またはC5−20アリール基、好ましくはHまたはC1−7アルキル基である。アミジン基の例は、−C(=NH)NHである。
【0066】
カルバゾイル(ヒドラジノカルボニル):−C(O)−NN−R、ただし、Rは、アミノ基に関連して定義されるようなアミノ置換基である。アジノ基の例としては、−C(O)−NN−H、−C(O)−NN−Me、−C(O)−NN−Et、−C(O)−NN−Ph、および−C(O)−NN−CH−Phが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0067】
ニトロ:−NO
ニトロソ:−NO。
アジド:−N
シアノ(ニトリル、カルボニトリル):−CN。
イソシアノ:−NC。
シアナト:−OCN。
イソシアナト:−NCO。
チオシアノ(チオシアナト):−SCN。
イソチオシアノ(イソチオシアナト):−NCS。
スルフヒドリル(チオール、メルカプト):−SH。
【0068】
チオエーテル(スルフィド):−SR、ただし、Rは、チオエーテル置換基、例えば、C1−7アルキル基(C1−7アルキルチオ基とも称される)、C3−20複素環基、またはC5−20アリール基、好ましくはC1−7アルキル基である。C1−7アルキルチオ基の例としては、−SCHおよび−SCHCHが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0069】
ジスルフィド:−SS−R、ただし、Rは、ジスルフィド置換基、例えば、C1−7アルキル基、C3−20複素環基、またはC5−20アリール基、好ましくはC1−7アルキル基(本明細書中ではC1−7アルキルジスルフィドとも称される)である。C1−7アルキルジスルフィド基の例としては、−SSCHおよび−SSCHCHが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0070】
スルホン(スルホニル):−S(=O)R、ただし、Rは、スルホン置換基、例えば、C1−7アルキル基、C3−20複素環基、またはC5−20アリール基、好ましくはC1−7アルキル基である。スルホン基の例としては、−S(=O)CH(メタンスルホニル、メシル)、−S(=O)CF(トリフリル)、−S(=O)CHCH、−S(=O)(ノナフリル)、−S(=O)CHCF(トレシル)、−S(=O)Ph(フェニルスルホニル)、4−メチルフェニルスルホニル(トシル)、4−ブロモフェニルスルホニル(ブロシル)、および4−ニトロフェニル(ノシル)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0071】
スルフィン(スルフィニル、スルホキシド):−S(=O)R、ただし、Rは、スルフィン置換基、例えば、C1−7アルキル基、C3−20複素環基、またはC5−20アリール基、好ましくはC1−7アルキル基である。スルフィン基の例としては、−S(=O)CHおよび−S(=O)CHCHが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0072】
スルホニルオキシ:−OS(=O)R、ただし、Rは、スルホニルオキシ置換基、例えば、C1−7アルキル基、C3−20複素環基、またはC5−20アリール基、好ましくはC1−7アルキル基である。スルホニルオキシ基の例としては、−OS(=O)CHおよび−OS(=O)CHCHが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0073】
スルフィニルオキシ:−OS(=O)R、ただし、Rは、スルフィニルオキシ置換基、例えば、C1−7アルキル基、C3−20複素環基、またはC5−20アリール基、好ましくはC1−7アルキル基である。スルフィニルオキシ基の例としては、−OS(=O)CHおよび−OS(=O)CHCHが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0074】
スルファミノ:−NRS(=O)OH、ただし、Rは、アミノ基に関連して定義されるようなアミノ置換基である。スルファミノ基の例としては、−NHS(=O)OHおよび−N(CH)S(=O)OHが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0075】
スルフィンアミノ:−NRS(=O)R、ただし、Rは、アミノ基に関連して定義されるようなアミノ置換基であり、そしてRは、スルフィンアミノ置換基、例えば、C1−7アルキル基、C3−20複素環基、またはC5−20アリール基、好ましくはC1−7アルキル基である。スルフィンアミノ基の例としては、−NHS(=O)CHおよび−N(CH)S(=O)Cが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0076】
スルファミル:−S(=O)NR、ただし、RおよびRは、独立に、アミノ基に関連して定義されるようなアミノ置換基である。スルファミル基の例としては、−S(=O)NH、−S(=O)NH(CH)、−S(=O)N(CH、−S(=O)NH(CHCH)、−S(=O)N(CHCH、および−S(=O)NHPhが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0077】
スルホンアミノ:−NRS(=O)R、ただし、Rは、アミノ基に関連して定義されるようなアミノ置換基であり、そしてRは、スルホンアミノ置換基、例えば、C1−7アルキル基、C3−20複素環基、またはC5−20アリール基、好ましくはC1−7アルキル基である。スルホンアミノ基の例としては、−NHS(=O)CHおよび−N(CH)S(=O)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。特別な種類のスルホンアミノ基は、スルタムから誘導される基であり、こうした基では、RおよびRのうちの一方は、C5−20アリール基、好ましくはフェニルであり、RおよびRのうちの他方は、C5−20アリール基に連結する二座基、例えば、C1−7アルキル基から誘導される二座基である。そのような基の例としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。すなわち、
【化8】

【0078】
ホスホルアミダイト:−OP(OR)−NR、ただし、RおよびRは、ホスホルアミダイト置換基、例えば、−H、(場合により置換されていてもよい)C1−7アルキル基、C3−20複素環基、またはC5−20アリール基、好ましくは、−H、C1−7アルキル基、またはC5−20アリール基である。ホスホルアミダイト基の例としては、−OP(OCHCH)−N(CH、−OP(OCHCH)−N(i−Pr)、および−OP(OCHCHCN)−N(i−Pr)を挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0079】
ホスホルアミデート:−OP(=O)(OR)−NR、ただし、RおよびRは、ホスホルアミデート置換基、例えば、−H、(場合により置換されていてもよい)C1−7アルキル基、C3−20複素環基、またはC5−20アリール基、好ましくは、−H、C1−7アルキル基、またはC5−20アリール基である。ホスホルアミデート基の例としては、−OP(=O)(OCHCH)−N(CH、−OP(=O)(OCHCH)−N(i−Pr)、および−OP(=O)(OCHCHCN)−N(i−Pr)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0080】
多くの場合、置換基は、それ自体が置換されていてもよい。例えば、C1−7アルコキシ基は、例えば、C1−7アルキル(C1−7アルキルC1−7アルコキシ基とも称される)(例えば、シクロヘキシルメトキシ)、C3−20複素環基(C5−20アリールC1−7アルコキシ基とも称される)(例えば、フタルイミドエトキシ)、またはC5−20アリール基(C5−20アリールC1−7アルコキシ基とも称される)(例えば、ベンジルオキシ)で置換されていてもよい。
【0081】
包含される他の形態
以上の事項には、これらの置換基の周知のイオン形態、塩形態、溶媒和形態、および保護形態が包含される。例えば、カルボン酸(−COOH)に言及する場合、そのアニオン(カルボキシレート)形態(−COO)、塩形態、または溶媒和形態、さらには慣用の保護形態も包含される。同様に、アミノ基に言及する場合、アミノ基のプロトン化形態(−NHR)、塩形態、または溶媒和形態、例えば塩酸塩、さらにはアミノ基の従来の保護形態が包含される。同様に、ヒドロキシル基に言及する場合、そのアニオン形態(−O)、塩形態、または溶媒和形態、さらには従来の保護形態も包含される。
【0082】
異性体、塩、溶媒和物、保護形態、およびプロドラッグ
特定の化合物は、1種以上の特定の幾何異性体、光学異性体、エナンチオマー、ジアステレオマー、エピマー異性体、立体異性体、互変異性体、立体配座異性体、またはアノマー異性体として存在することができ、こうしたものとしては例えば、限定されるものではないが、シス体およびトランス体、E体およびZ体、c体、t体、およびr体、エンド型およびエキソ型、R体、S体、およびメソ体、D体およびL体、d体およびl体、(+)型および(−)型、ケト型、エノール型、およびエノラート型、シン型およびアンチ型、シンクリナル型およびアンチクリナル型、α型およびβ型、アキシアル型およびエクアトリアル型、船型、椅子型、ねじれ型、エンベロープ型、および半椅子型、ならびにそれらの組合せが挙げられ、これ以降では、まとめて「異性体」(または「異性形」)と呼ばれる。
【0083】
互変異型に関連して以下で論じる場合を除き、本明細書中で使用される「異性体」という用語から、構造異性体(すなわち、単に空間内の原子の位置が異なるのではなく原子間の結合が異なる異性体)はとくに除外されることに留意されたい。例えば、メトキシ基(−OCH)に言及する場合、その構造異性体であるヒドロキシメチル基(−CHOH)が言及されたと解釈されることはない。同様に、オルト−クロロフェニルが言及された場合、その構造異性体であるメタ−クロロフェニルが言及されたと解釈されることはない。しかしながら、構造のクラスが言及された場合、そのクラスに属する構造異性体が包含されることは当然であろう(例えば、C1−7アルキルには、n−プロピルおよびイソ−プロピルが包含され、ブチルには、n−、イソ−、sec−、およびtert−ブチルが包含され、メトキシフェニルには、オルト−、メタ−、およびパラ−メトキシフェニルが包含される)。
【0084】
上述の除外は、互変異型、例えばケト/エノール(以下に示される)、イミン/エナミン、アミド/イミノアルコール、アミジン/アミジン、ニトロソ/オキシム、チオケトン/エンチオール、N−ニトロソ/ヒドロキシアゾ、およびニトロ/アシニトロに見られるような互変異型、例えば、ケト形、エノール形、およびエノラート形には当てはまらない。
【化9】

【0085】
「異性体」という用語には、1つ以上の同位体置換を有する化合物がとくに包含されることに留意されたい。例えば、Hは、H、H(D)、およびH(T)をはじめとする任意の同位体として存在可能であり、Cは、12C、13C、および14Cをはじめとする任意の同位体として存在可能であり、Oは、16Oおよび18Oをはじめとする任意の同位体として存在可能であり、他の場合も同様である。
【0086】
とくに断らない限り、特定の化合物への言及には、その(完全もしくは部分的)ラセミ混合物および他の混合物を含めて、そのような異性体がすべて包含される。そのような異性体の調製方法(例えば不斉合成)および分離方法(例えば、分別結晶化手段やクロマトグラフィー手段)は、当技術分野で公知であるか、または本明細書に教示される方法もしくは公知の方法を慣例に従って適合化させることにより容易に得られる。
【0087】
とくに断らない限り、特定の化合物への言及には、例えば以下に論述されるようなそのイオン形態、塩形態、溶媒和形態、および保護形態もまた包含される。
【0088】
活性化合物の対応する塩(例えば、製薬上許容される塩)を調製し、精製し、および/または取り扱うことが好都合であるかまたは望ましいこともある。製薬上許容される塩の例は、バージの報告(Bergeら, J. Pharm. Sci., 66, 1-19 (1977))に論述されている。
【0089】
例えば、化合物がアニオン性である場合またはアニオン性になりうる官能基(例えば、−COOHは−COOになりうる)を有する場合、好適なカチオンを用いて塩を形成することが可能である。好適な無機カチオンの例としては、NaやKのようなアルカリ金属イオン、Ca2+やMg2+のようなアルカリ土類カチオン、およびAl3+のような他のカチオンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。好適な有機カチオンの例としては、アンモニウムイオン(すなわち、NH)および置換されたアンモニウムイオン(例えば、NH、NH、NHR、NR)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。いくつかの好適な置換されたアンモニウムイオンの例は、エチルアミン、ジエチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、トリエチルアミン、ブチルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペラジン、ベンジルアミン、フェニルベンジルアミン、コリン、メグルミン、およびトロメタミン、さらにはリシンやアルギニンのようなアミノ酸から誘導されるものである。一般的な第四級アンモニウムイオンの例は、N(CHである。
【0090】
化合物がカチオン性である場合またはカチオン性になりうる官能基(例えば、−NHは−NHになりうる)を有する場合、好適なアニオンを用いて塩を形成することが可能である。好適な無機アニオンの例としては、次の無機酸、すなわち塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、亜硫酸、硝酸、亜硝酸、リン酸、および亜リン酸から誘導されるものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。好適な有機アニオンの例としては、次の有機酸、すなわち酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、パルミチン酸、乳酸、リンゴ酸、パモ酸、酒石酸、クエン酸、グルコン酸、アスコルビン酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、アスパラギン酸、安息香酸、ケイ皮酸、ピルビン酸、サリチル酸、スルファニル酸、2−アセチルオキシ安息香酸、フマル酸、フェニルスルホン酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸、パントテン酸、イセチオン酸、吉草酸、ラクトビオン酸、およびグルコン酸から誘導されるものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。好適な高分子アニオンの例としては、次の高分子酸、すなわちタンニン酸、カルボキシメチルセルロースから誘導されるものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0091】
活性化合物の対応する溶媒和物を調製し、精製し、および/または取り扱うことが好都合であるかまたは望ましいこともある。「溶媒和物」という用語は、本明細書中では従来の意味で使用され、溶質(例えば、活性化合物、活性化合物の塩)と溶媒との複合体を意味する。溶媒が水である場合、溶媒和物は、適宜、一水和物、二水和物、三水和物などのような水和物と称することができる。
【0092】
活性化合物を化学的保護形態で調製し、精製し、および/または取り扱うことが好都合であるかまたは望ましいこともある。本明細書中で使用される「化学的保護形態」という用語は、1以上の反応性官能基が望ましくない化学反応から保護されている化合物、すなわち、1以上の反応性官能基が被保護基もしくは保護基(被マスク基もしくはマスク基または被ブロック基もしくはブロック基としても知られる)の形態をとる化合物を意味する。反応性官能基を保護することにより、被保護基に影響を及ぼすことなく、他の未保護の反応性官能基が関与する反応を行うことが可能であり、保護基は、通常は後続工程で、分子の残りの部分に実質的な影響を及ぼすことなく除去可能である。例えばグリーンらの著作(Protective Groups in Organic Synthesis, T. Green and Wuts, Wiley, 1999)を参照されたい。
【0093】
例えば、ヒドロキシ基は、エーテル(−OR)またはエステル(−OC(=O)R)として、例えば、t−ブチルエーテル、ベンジルエーテル、ベンズヒドリル(ジフェニルメチル)エーテル、またはトリチル(トリフェニルメチル)エーテル、トリメチルシリルエーテルまたはt−ブチルジメチルシリルエーテル、またはアセチルエステル(−OC(=O)CH、−OAc)として保護可能である。
【0094】
例えば、アルデヒド基またはケトン基は、それぞれ、アセタールまたはケタールとして保護可能である。この場合、カルボニル基(>C=O)は、例えば、第一級アルコールとの反応によりジエーテル(>C(OR))に変換される。アルデヒド基またはケトン基は、酸の存在下で大過剰の水を用いて加水分解により容易に再生される。
【0095】
例えば、アミン基は、例えば、アミドまたはウレタンとして、例えば、メチルアミド(−NHCO−CH)として、ベンジルオキシアミド(−NHCO−OCH、−NH−Cbz)として、t−ブトキシアミド(−NHCO−OC(CH、−NH−Boc)として、2−ビフェニル−2−プロポキシアミド(−NHCO−OC(CH、−NH−Bpoc)として、9−フルオレニルメトキシアミド(−NH−Fmoc)として、6−ニトロベラトリルオキシアミド(−NH−Nvoc)として、2−トリメチルシリルエチルオキシアミド(−NH−Teoc)として、2,2,2−トリクロロエチルオキシアミド(−NH−Troc)として、アリルオキシアミド(−NH−Alloc)として、2−(フェニルスルホニル)エチルオキシアミド(−NH−Psec)として、または好適な場合にはN−オキシド(>NO)として保護可能である。
【0096】
例えば、カルボン酸基は、エステルとして、例えば、C1−7アルキルエステル(例えば、メチルエステル、t−ブチルエステル)、C1−7ハロアルキルエステル(例えば、C1−7トリハロアルキルエステル)、トリC1−7アルキルシリル−C1−7アルキルエステル、もしくはC5−20アリール−C1−7アルキルエステル(例えば、ベンジルエステル、ニトロベンジルエステル)として、またはアミドとして、例えば、メチルアミドとして保護可能である。
【0097】
例えば、チオール基は、チオエーテル(−SR)として、例えば、ベンジルチオエーテル、アセトアミドメチルチオエーテル(−S−CHNHC(=O)CH)として保護可能である。
【0098】
活性化合物をプロドラッグの形態で調製し、精製し、および/または取り扱うことが好都合であるかまたは望ましいこともある。本明細書中で使用される「プロドラッグ」という用語は、代謝されたときに(例えば、イン・ビボで)所望の活性化合物を生成する化合物を意味する。代表的には、プロドラッグは、不活性であるかまたは活性化合物ほど活性でないが、有利な取扱い、投与、または代謝特性を提供しうる。
【0099】
例えば、いくつかのプロドラッグは、活性化合物のエステル(例えば、生理学的に許容される代謝的に変化しやすいエステル)である。代謝中、エステル基(−C(=O)OR)は、切断されて活性薬剤を生成する。そのようなエステルは、例えば、親化合物中のカルボン酸基(−C(=O)OH)のいずれかをエステル化することにより形成可能であり、その際、適宜に親化合物中に存在する他の反応基を事前に保護しておき、必要であれば、後で脱保護することが可能である。そのような代謝的に変化しやすいエステルの例としては、RがC1−7アルキル[例えば、−Me、−Et]、C1−7アミノアルキル[例えば、アミノエチル、2−(N,N−ジエチルアミノ)エチル、2−(4−モルホリノ)エチル]、ならびにアシルオキシ−C1−7アルキル[例えば、アシルオキシメチル、アシルオキシエチル、例えば、ピバロイルオキシメチル、アセトキシメチル、1−アセトキシエチル、1−(1−メトキシ−1−メチル)エチル−カルボニルオキシエチル、1−(ベンゾイルオキシ)エチル、イソプロポキシ−カルボニルオキシメチル、1−イソプロポキシ−カルボニルオキシエチル、シクロヘキシル−カルボニルオキシメチル、1−シクロヘキシル−カルボニルオキシエチル、シクロヘキシルオキシ−カルボニルオキシメチル、1−シクロヘキシルオキシ−カルボニルオキシエチル、(4−テトラヒドロピラニルオキシ)カルボニルオキシメチル、1−(4−テトラヒドロピラニルオキシ)カルボニルオキシエチル、(4−テトラヒドロピラニル)カルボニルオキシメチル、および1−(4−テトラヒドロピラニル)カルボニルオキシエチル]であるものが挙げられる。
【0100】
また、いくつかのプロドラッグは、酵素的に活性化されることにより、活性化合物を生じるか、またはさらなる化学反応を受けて活性化合物を生成する化合物を生じる。例えば、プロドラッグは、糖誘導体もしくは他のグリコシド複合体コンジュゲートであり得るか、またはアミノ酸エステル誘導体であり得る。
【0101】
選択的阻害
「選択的阻害」とは、1種の酵素を1種以上の他の酵素の阻害よりも大きく阻害することを意味する。この選択性は、1種の酵素の活性を50%阻害するのに必要な化合物の濃度(IC50)と他の酵素の活性を50%阻害するのに必要な化合物の濃度(IC50)とを比較することにより測定可能である(下記参照)。結果は、比として表される。比が1を超える場合、試験化合物は、その阻害作用に関していくらかの選択性を示す。
【0102】
本発明に係る化合物は、好ましくは、PI3−キナーゼに対するよりもDNA−PKに対して3、10、20、または50を超える選択性を示す。
【0103】
本発明に係る化合物は、好ましくは、ATMに対するよりもDNA−PKに対して5、10、50、または100を超える選択性を示す。
【0104】
選択性の評価に使用されるIC50値は、国際公開第03/024949号(参照により本明細書に組み込まれるものとする)に記載の方法を用いて決定されることが好ましい。
【0105】
さらに別の実施形態

一部の実施形態において、nは1である。他の実施形態では、nは2である。
【0106】

一部の実施形態において、XはNである。他の実施形態において、XはCHである。
【0107】
C1およびRC2
C1およびRC2がいずれもメチルである場合、RはC1−4アルキルおよびHから選択されても良い。これら実施形態の一部において、RはHであることができる。
【0108】
一部の実施形態において、RC1およびRC2はいずれもHである。
【0109】

一部の実施形態において、XがNである場合、RはHならびに置換または非置換のC1−7アルキル、C5−20アリール、アシル、エステル、アミドおよびスルホニルからなる群から選択される。これら実施形態の一部において、RはHならびに置換または非置換のC1−7アルキルおよびスルホニルからなる群から選択される。
【0110】
一部の実施形態において、前記C1−7アルキル基はC1−4アルキル基であることができ、例えばメチル、エチルおよびプロピルから選択されても良い。C1−7アルキル基についての適宜の置換基には、C5−20アリール(例えばフェニル)、C3−20複素環(例えばモルホリノ、テトラヒドロフラニル)、ハロ(例えばフルオロ、クロロ)、ヒドロキシ、エーテル(例えばC1−7アルコキシ)、アシル(例えばC1−7アルキルカルボニル)、カルボキシ、エステル(例えばC1−7アルキルエステル)、アシルオキシ、アミド、アシルアミド、アミノ、シアノおよびC3−7シクロアルキル(例えばシクロプロピル)などがあり得るが、これらに限定されるものではない。。これら実施形態の一部において、C1−7アルキル基上の適宜の置換基は、エーテル(例えばC1−7アルコキシ)、アシル(例えばC1−7アルキルカルボニル)、シアノおよびC3−7シクロアルキル(例えばシクロプロピル)から選択することができる。
【0111】
一部の実施形態において、前記C5−20アリール基はC5−7アリール基であることができ、例えばフェニルおよびピリジルから選択されても良い。C5−20アリール基についての適宜の置換基には、C1−7アルキル(例えばメチル、エチル)、C3−20複素環(例えばモルホリノ)、ハロ(例えばフルオロ、クロロ)、ヒドロキシ、エーテル(例えばC1−7アルコキシ)、アシル(例えばC1−7アルキルカルボニル)、カルボキシ、エステル(例えばC1−7アルキルエステル)、アシルオキシ、アミド、アシルアミド、アミノ、シアノおよびC3−7シクロアルキル(例えばシクロプロピル)などがあり得るが、これらに限定されるものではない。
【0112】
一部の実施形態において、前記アシル基は、アシル置換基として、C1−7アルキル基(例えばメチル)またはC3−20複素環基(例えばテトラヒドロフラニル)を有することができる。
【0113】
一部の実施形態において、前記エステル基は、エステル置換基として、C1−7アルキルまたはC1−4アルキル基(例えばt−ブチル)を有することができる。
【0114】
一部の実施形態において、前記スルホニル基は、スルホン置換基として、C1−7アルキルまたはC1−4アルキル基(例えばメチル、エチル)を有することができる。
【0115】
一部の実施形態において、XがCHである場合、RはC3−20複素環である。Rはアシル、エーテルまたはアミノであっても良い。
【0116】
これら実施形態の一部において、前記C3−20複素環基は、C5−7複素環基(例えばモルホリノ)である。
【0117】
これら実施形態の一部において、前記アシル基は、アシル置換基として、C1−7アルキルまたはC1−4アルキル基(例えばメチル、エチル)を有することができる。
【0118】
これら実施形態の一部において、前記エーテル基は、C1−4アルキルオキシ(例えばエトキシ、メトキシ)であることができる。
【0119】
これら実施形態の一部において、前記アミノ基は、ジ−C1−4アルキルアミノ(例えばジメチルアミノ)であることができる。
【0120】
置換基自体が、上記のように置換されていても良い。例えば、記載の基の一つがエーテル基によって置換されている場合(例えばC1−7アルコキシ)、その基自体が、ヒドロキシ、C1−7アルキルまたはエーテル(例えばC1−7アルコキシ)基によって置換されていても良い。
【0121】
およびR
式Iの化合物において、RおよびRが、それらが結合している窒素原子とともに、4から8個の原子を有する複素環を形成している場合、これは上記で定義のC4−20複素環基(最小限の4個の環原子を有するものを除く)の一部を形成していることができ、それは少なくとも1個の窒素環原子を含むものでなければならない。RおよびRが、それらが結合している窒素原子とともに、5、6または7個の原子、より好ましくは6個の環原子を有する複素環を形成していることが好ましい。
【0122】
1個の窒素原子を有する単環としては、アゼチジン、ピロリジン(テトラヒドロピロール)、ピロリン(例えば、3−ピロリン、2,5−ジヒドロピロール)、2H−ピロールまたは3H−ピロール(イソピロール、イソアゾール)、ピペリジン、ジヒドロピリジン、テトラヒドロピリジン、およびアゼピンが挙げられ、2個の窒素原子を有する単環としては、イミダゾリジン、ピラゾリジン(ジアゾリジン)、イミダゾリン、ピラゾリン(ジヒドロピラゾール)、およびピペラジンが挙げられ、1個の窒素と1個の酸素とを有する単環としては、テトラヒドロオキサゾール、ジヒドロオキサゾール、テトラヒドロイソオキサゾール、ジヒドロイソオキサゾール、モルホリン、テトラヒドロオキサジン、ジヒドロオキサジン、およびオキサジンが挙げられ、1個の窒素と1個の硫黄とを有する単環としては、チアゾリン、チアゾリジン、およびチオモルホリンが挙げられる。
【0123】
好ましい環は、窒素に加えて1個のヘテロ原子を含有する環であり、特には、好ましいヘテロ原子は、酸素および硫黄である。従って、好ましい基としては、モルホリノ、チオモルホリノ、チアゾリニルが挙げられる。さらなるヘテロ原子を含まない好ましい基としては、ピロリジノが挙げられる。
【0124】
最も好ましい基は、モルホリノおよびチオモルホリノである。
【0125】
以上に述べたように、こうした複素環基は、それ自体が置換されていてもよく、好ましい種類の置換基は、C1−7アルキル基である。複素環基がモルホリノである場合、1つもしくは複数の置換基は、好ましくはメチルまたはエチル、より好ましくはメチルである。唯一のメチル置換基は、最も好ましくは2位に存在する。
【0126】
以上に列挙された単環基だけでなく、橋架け、すなわち架橋結合を有する環も考えられる。基が窒素原子と酸素原子とを含有するときのこうした種類の環の例は、以下のとおりである。
【化10】

【0127】
これらは、それぞれ、8−オキサ−3−アザ−ビシクロ[3.2.1]オクタ−3−イル、6−オキサ−3−アザ−ビシクロ[3.1.0]ヘキサ−3−イル、2−オキサ−5−アザ−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−イル、および7−オキサ−3−アザ−ビシクロ[4.1.0]ヘプタ−3−イルと命名される。
【0128】
一般的合成方法
式Iの化合物
【化11】

は、ブッフバルト反応を用い、式1および2の化合物、
【化12】

をカップリングさせることで合成することができ、その反応では、ナトリウムt−ブトキシドなどの塩基および(1,1−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセンおよびトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム)の反応によってin situで形成されるものなどの活性触媒が存在することが必要とされる。
【0129】
あるいは、XがNである式Iの化合物は、これをHal−R(Halは、ハロゲン、例えば臭素を表し、Rは置換または非置換のC1−7アルキル基である)とカップリングさせることで、式3の化合物
【化13】

から得ることができる。これは、N,N−ジイソプロピルエチルアミンなどの塩基存在下で行うことができる。
【0130】
XがNであり、Rがスルホニルである式Iの化合物は、塩基(例えばN,N−ジイソプロピルエチルアミン)の存在下に、式3の化合物を適切なスルホニルクロライドと反応させることで得ることができる。
【0131】
式3の化合物は、下記式4の化合物を脱保護することで得ることができる。
【化14】

【0132】
本発明の化合物の使用
本発明は、活性化合物、具体的には活性な置換されたジベンゾチオフェニルアミノ−クロメン−4−オン類を提供する。
【0133】
本明細書中で使用される「活性」という用語は、DNA−PK活性を阻害しうる化合物を意味し、特に、固有活性を有する化合物(薬剤)さらにはそのような化合物のプロドラッグ(プロドラッグはそれ自体では固有活性をほとんどもしくは全く呈し得ない)の両方を包含する。
【0134】
特定の化合物により提供されるDNA−PK阻害を評価するために使用し得るアッセイの一例を以下の実施例に記載する。
【0135】
本発明は、細胞におけるDNA−PKの阻害方法をさらに提供する。この方法は、該細胞を有効量の活性化合物(好ましくは、製薬上許容される組成物の形態をとる)に接触させることを含む。そのような方法は、イン・ビトロまたはイン・ビボで実施可能である。
【0136】
例えば、細胞のサンプル(例えば、腫瘍由来)をイン・ビトロで増殖させ、既知の治癒効果を有する薬剤と併用して活性化合物をその細胞に接触させ、そうした細胞に及ぼす化合物の治癒効果の増強を観察することが可能である。
【0137】
本発明はさらに、DNA−PK活性を阻害する活性化合物、ならびにイン・ビトロであるかイン・ビボであるかを問わず細胞を有効量の活性化合物に接触させることを含むDNA−PK活性の阻害方法の方法を提供する。
【0138】
活性化合物はまた、例えば、イン・ビトロで既知の化学療法剤または電離放射線治療に対する細胞の感受性を増強するために、DNA−PKを阻害する細胞培養添加剤として使用することも可能である。
【0139】
活性化合物はまた、例えば、対象化合物による治療が候補宿主で奏効する可能性があるかどうかを調べるために、イン・ビトロアッセイの一部として使用することも可能である。
【0140】
本発明はさらに、人または動物を治療する方法に使用するための活性化合物を提供する。そのような方法は、そのような被験者に治療上有効な量の活性化合物(好ましくは、医薬組成物の形態をとる)を投与することを含み得る。
【0141】
病状の治療に関連して本明細書中で使用される「治療」という用語は、ヒトであるか動物(例えば、獣医学的用途)であるかを問わず、一般的に、なんらかの所望の治療効果、例えば、病状の進行の阻害(進行速度の減少、進行速度の停止、病状の改善、および病状の治癒を包含する)が達成される治療や療法を意味する。予防手段としての治療(すなわち予防)もまた包含される。
【0142】
本明細書中で使用される「治療上有効な量」という用語は、活性化合物、または活性化合物を含む材料、組成物、もしくは製剤に関して、妥当な利益/リスク比に見合った何らかの所望の治療効果を生じるのに有効な量を意味する。
【0143】
本明細書中で使用される「補助剤」という用語は、既知の治療手段と併行して活性化合物を使用することを意味する。そのような手段としては、さまざまなタイプの癌の治療に使用される薬剤および/または電離放射線の細胞傷害性処置法が挙げられる。本発明に係る化合物と併用可能な補助抗癌剤の例としては、次の化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。すなわち、アルキル化剤:ナイトロジェンマスタード、メクロレタミン、シクロホスファミド、イホスファミド、メルファラン、クロラムブシル、ニトロソウレア:カルムスチン(BCNU)、ロムスチン(CCNU)、セムスチン(メチル−CCNU)、エチレンイミン/メチルメラミン、トリエチレンメラミン(TEM)、トリエチレンチオホスホルアミド(チオテパ)、ヘキサメチルメラミン(HMM、アルトレタミン)、アルキルスルホネート:ブスルファン、トリアジン、ダカルバジン(DTIC)、抗代謝剤:葉酸類似体、メトトレキセート、トリメトレキセート、ピリミジン類似体、5−フルオロウラシル、フルオロデオキシウリジン、ゲムシタビン、シトシンアラビノシド(AraC、シタラビン)、5−アザシチジン、2,2′−ジフルオロデオキシシチジン、プリン類似体:6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、アザチオプリン、2′−デオキシコホルマイシン(ペントスタチン)、エリトロヒドロキシノニルアデニン(EHNA)、リン酸フルダラビン、2−クロロデオキシアデノシン(クラドリビン、2−CdA)、トポイソメラーゼI阻害剤:カンプトテシン、トポテカン、イリノテカン、ルビテカン、天然物:抗有糸分裂剤、パクリタキセル、ビンカアルカロイド、ビンブラスチン(VLB)、ビンクリスチン、ビノレルビン、タキソテール(商標名)(ドセタキセル)、エストラムスチン、エストラムスチンホスフェート、エピポドフィロトキシン:エトポシド、テニポシド、抗生物質:アクチノマイシンD、ダウノマイシン(ルビドマイシン)、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、ミトキサントロン、イダルビシン、ブレオマイシン、プリカマイシン(ミトラマイシン)、マイトマイシンC、ダクチノマイシン、酵素:L−アスパラギナーゼ、RNAse A、生物学的応答調節剤:インターフェロン−α、IL−2、G−CSF、GM−CSF、分化剤:レチノイン酸誘導体、放射線感受性増強剤:メトロニダゾール、ミソニダゾール、デスメチルミソニダゾール、ピモニダゾール、エタニダゾール、ニモラゾール、RSU 1069、EO9、RB 6145、SR4233、ニコチンアミド、5−ブロモデオキシウリジン、5−ヨードデオキシウリジン、ブロモデオキシシチジン、白金配位錯体:シスプラチン、カルボプラチン、アントラセンジオン:ミトキサントロン、AQ4N、置換尿素:ヒドロキシウレア、メチルヒドラジン誘導体:N−メチルヒドラジン(MIH)、プロカルバジン、副腎皮質抑制剤:ミトタン(o.p′−DDD)、アミノグルテチミド、サイトカイン:インターフェロン(α、β、γ)、インターロイキン、ホルモンおよびアンタゴニスト:副腎皮質ステロイド/アンタゴニスト、プレドニゾンおよびその等価体、デキサメタゾン、アミノグルテチミド、プロゲスチン:ヒドロキシプロゲステロンカプロエート、酢酸メドロキシプロゲステロン、酢酸メゲストロール、エストロゲン:ジエチルスチルベストロール、エチニルエストラジオール/等価体、抗エストロゲン剤:タモキシフェン、アンドロゲン:プロピオン酸テストステロン、フルオキシメステロン/等価体、抗アンドロゲン剤:フルタミド、ゴナドトロピン放出ホルモン類似体、ロイプロリド、非ステロイド系抗アンドロゲン剤:フルタミド、EGFR阻害剤、VEGF阻害剤、プロテアソーム阻害剤。
【0144】

本発明は、抗癌剤または癌治療補助剤である活性化合物を提供する。当業者であれば、ある候補化合物が単独もしくは組合せのいずれかとして、ある特定の細胞タイプの癌性病状を治療するか否かを容易に判定することができる。
【0145】
癌の例としては、肺癌、小細胞肺癌、胃腸癌、腸癌、結腸癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、精巣癌、肝癌、腎臓癌、膀胱癌、膵臓癌、脳腫瘍、肉腫、骨肉腫、カポジ肉腫、黒色腫、および白血病が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0146】
肺、胃腸(例えば、腸、結腸など)、乳房(乳腺)、卵巣、前立腺、肝臓(肝性)、腎臓(腎性)、膀胱、膵臓、脳、および皮膚(ただし、これらに限定されるものではない)などのあらゆる種類の細胞を治療することが可能である。
【0147】
以上に規定された抗癌治療は、単独療法として適用しうるか、または本発明に係る化合物に加えて従来の手術もしくは放射線療法もしくは化学療法を含みうる。そのような化学療法は、次の抗腫瘍剤カテゴリーの1つ以上を含み得る。
【0148】
(i)内科腫瘍学で使用される他の抗増殖剤/抗新生物剤およびそれらの組合せ、例えば、アルキル化剤(例えば、シスプラチン、オキサリプラチン、カルボプラチン、シクロホスファミド、ナイトロジェンマスタード、メルファラン、クロラムブシル、ブスルファン、テモゾロミド、およびニトロソウレア)、抗代謝剤(例えば、ゲムシタビンおよび抗葉酸剤、例えば、5−フルオロウラシルやテガフールのようなフルオロピリミジン、ラルチトレキセド、メトトレキセート、シトシンアラビノシド、およびヒドロキシウレア)、抗腫瘍抗生物質(例えば、アントラサイクリン、例えば、アドリアマイシン、ブレオマイシン、ドキソルビシン、ダウノマイシン、エピルビシン、イダルビシン、マイトマイシンC、ダクチノマイシン、およびミトラマイシン)、抗有糸分裂剤(例えば、ビンカアルカロイド、例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、およびビノレルビン、ならびにタキソイド、例えば、タキソールおよびタキソテール、さらにはポロキナーゼ阻害剤)、およびトポイソメラーゼ阻害剤(例えば、エトポシドやテニポシドのようなエピポドフィロトキシン、アムサクリン、トポテカン、およびカンプトテシン)、
(ii)細胞増殖抑制剤、例えば、抗エストロゲン剤(例えば、タモキシフェン、フルベストラント、トレミフェン、ラロキシフェン、ドロロキシフェン、およびヨードキシフェン)、抗アンドロゲン剤(例えば、ビカルタミド、フルタミド、ニルタミド、および酢酸シプロテロン)、LHRHアンタゴニストまたはLHRHアゴニスト(例えばゴセレリン、ロイプロレリン、およびブセレリン)、プロゲストゲン(例えば、酢酸メゲストロール)、アロマターゼ阻害剤(例えば、アナストロゾール、レトロゾール、ボラゾール、およびエキセメスタン)、および5α−レダクターゼ阻害剤、例えば、フィナステリド、
(iii)抗浸潤剤(c−Srcキナーゼファミリー阻害剤、例えば、4−(6−クロロ−2,3−メチレンジオキシアニリノ)−7−[2−(4−メチルピペラジン−1−イル)エトキシ]−5−テトラヒドロピラン−4−イルオキシキナゾリン(AZD0530、国際特許出願第01/94341号)およびN−(2−クロロ−6−メチルフェニル)−2−{6−[4−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−1−イル]−2−メチルピリミジン−4−イルアミノ}チアゾール−5−カルボキサミド(ダサチニブ、BMS−354825; J. Med. Chem., 2004, 47, 6658-6661)、ならびにメタロプロテイナーゼ阻害剤、例えば、マリマスタット、ウロキナーゼプラスミノーゲンアクチベーター受容体機能の阻害剤、またはヘパラナーゼに対する抗体)、
(iv)増殖因子機能の阻害剤:例えば、そのような阻害剤としては、増殖因子抗体および増殖因子受容体抗体(例えば、抗erbB2抗体トラスツズマブ[ハーセプチンT]、抗EGFR抗体パニツムマブ、および抗erbB1抗体セツキシマブ[エルビタックス、C225]、ならびに文献(Sternら, Critical reviews in oncology/haematology, 2005, Vol. 54, pp.11-29)に開示されている任意の増殖因子抗体または増殖因子レセプター抗体)が挙げられ、同様に、そのような阻害剤としては、チロシンキナーゼ阻害剤、例えば、表皮増殖因子ファミリーの阻害剤(例えば、EGFRファミリーチロシンキナーゼ阻害剤、例えば、N−(3−クロロ−4−フルオロフェニル)−7−メトキシ−6−(3−モルホリノプロポキシ)キナゾリン−4−アミン(ゲフィチニブ、ZD1839)、N−(3−エチニルフェニル)−6,7−ビス(2−メトキシエトキシ)キナゾリン−4−アミン(エルロチニブ、OSI 774)、および6−アクリルアミド−N−(3−クロロ−4−フルオロフェニル)−7−(3−モルホリノプロポキシ)−キナゾリン−4−アミン(CI 1033)、erbB2チロシンキナーゼ阻害剤、例えば、ラパチニブ、肝細胞増殖因子ファミリーの阻害剤、血小板由来増殖因子ファミリーの阻害剤、例えば、イマチニブ、セリン/トレオニンキナーゼの阻害剤(例えば、Ras/Rafシグナリング阻害剤、例えば、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤、例えば、ソラフェニブ(BAY43−9006))、MEKおよび/またはAKTキナーゼを介する細胞シグナリングの阻害剤、肝細胞増殖因子ファミリーの阻害剤、c−kit阻害剤、ablキナーゼ阻害剤、IGF受容体(インスリン様増殖因子)キナーゼ阻害剤、オーロラキナーゼ阻害剤(例えば、AZD1152、PH739358、VX−680、MLN8054、R763、MP235、MP529、VX−528、およびAX39459)、ならびにサイクリン依存性キナーゼ阻害剤、例えば、CDK2および/またはCDK4阻害剤が挙げられる、
(v)抗血管新生剤、例えば、血管内皮増殖因子の作用を阻害するもの[例えば、抗血管内皮細胞増殖因子抗体ベバシズマブ(アバスチンT)およびVEGFレセプターチロシンキナーゼ阻害剤、例えば、4−(4−ブロモ−2−フルオロアニリノ)−6−メトキシ−7−(1−メチルピペリジン−4−イルメトキシ)キナゾリン(ZD6474、国際公開第01/32651号中の実施例2)、4−(4−フルオロ−2−メチルインドール−5−イルオキシ)−6−メトキシ−7−(3−ピロリジン−1−イルプロポキシ)キナゾリン(AZD2171、国際公開第00/47212号中の実施例240)、バタラニブ(PTK787、国際公開第98/35985号)、およびSU11248(スニチニブ、国際公開第01/60814号)、国際特許出願の国際公開第97/22596号、国際公開第97/30035号、国際公開第97/32856号、および国際公開第98/13354号に開示されているような化合物、ならびに他の機序で機能する化合物(例えば、リノミド、インテグリンavb3機能の阻害剤、およびアンギオスタチン)]、
(vi)血管損傷剤、例えば、コンブレタスタチンA4、ならびに国際特許出願の国際公開第99/02166号、国際公開第00/40529号、国際公開第00/41669号、国際公開第01/92224号、国際公開第02/04434号、および国際公開第02/08213号に開示されている化合物、
(vii)アンチセンス療法、例えば、以上に列挙された標的を対象とするもの、例えば、ISIS2503、抗rasアンチセンス、
(viii)遺伝子療法、例えば、異常なp53または異常なBRCA1もしくはBRCA2のような異常な遺伝子を置き換える手法、GDEPT(遺伝子指向性酵素プロドラッグ療法)手法、例えば、シトシンデアミナーゼ酵素、チミジンキナーゼ酵素、または細菌性ニトロレダクターゼ酵素を用いるもの、および化学療法または放射線療法に対する患者の耐性を増大させる手法、例えば、多剤耐性遺伝子療法など、ならびに
(ix)免疫療法、例えば、患者腫瘍細胞の免疫原性を増大させるエクス・ビボおよびイン・ビボ手法、例えば、インターロイキン2、インターロイキン4、または顆粒球マクロファージコロニー刺激因子のようなサイトカインによるトランスフェクション、T細胞アネルギーを減少させる手法、トランスフェクトされた免疫細胞(例えば、サイトカインでトランスフェクトされた樹状細胞)を用いる手法、サイトカインでトランスフェクトされた腫瘍細胞系を用いる手法、および抗イディオタイプ抗体を用いる手法。
【0149】
投与
活性化合物または活性化合物を含む医薬組成物は、全身的/末梢的であるか所望の作用の部位であるかを問わず、任意の都合のよい投与経路により、例えば、限定されるものではないが、経口(例えば、摂取による)経路により、局所(例えば、経皮、経鼻、眼球、口腔、舌下など)経路により、経肺(例えば、口や鼻などを介してエアロゾルなどを用いる吸入療法または吹送療法による)経路により、経直腸経路により、経膣経路により、非経口経路により、例えば、皮下、皮内、筋肉、静脈、動脈、心臓、髄腔内、脊髄、嚢内、被膜下、眼窩内、腹腔内、気管内、表皮下、関節内、クモ膜下、胸骨内などへの注射により、皮下や筋肉内などへのデポ剤の埋植により、対象者に投与可能である。
【0150】
対象は、真核生物、動物、脊椎動物、哺乳動物、齧歯動物(例えば、モルモット、ハムスター、ラット、マウス)、ネズミ科動物(例えば、マウス)、イヌ科動物(例えば、イヌ)、ネコ科動物(例えば、ネコ)、ウマ科動物(例えば、ウマ)、霊長動物、シミアン(例えば、サルもしくは類人猿)、サル(例えば、マーモセット、ヒヒ)、類人猿(例えば、ゴリラ、チンパンジー、オランウータン、ギボン)、またはヒトであることができる。
【0151】
製剤
活性化合物を単独で投与することも可能であるが、少なくとも1種の上で定義した活性化合物と共に、1種以上の製薬上許容される担体、補助剤、賦形剤、希釈剤、充填剤、緩衝剤、安定化剤、保存剤、滑沢剤、または当業者に公知である他の材料、および場合により他の治療剤または予防剤を含む医薬組成物(例えば、製剤)として、それを提供することが好ましい。
【0152】
したがって、本発明はさらに、以上で定義した医薬組成物と、1種以上の製薬上許容される担体、賦形剤、緩衝剤、補助剤、安定化剤、または本明細書に記載される他の材料と共に少なくとも1種の以上で定義した活性化合物を混合することを含む医薬組成物の製造方法とを提供する。
【0153】
本明細書中で使用される「製薬上許容される」という用語は、妥当な利益/リスク比に見合って、過度の毒性、刺激、アレルギー性応答、もしくは他の問題、または合併症を伴うことなく、妥当な医学的判断の範囲内で、対象者(例えば、ヒト)の組織に接触させて使用する上で好適な化合物、材料、組成物および/または製剤を意味する。それぞれの担体、賦形剤なども同様に、製剤の他の成分と適合するという意味で「許容される」ものでなければならない。
【0154】
好適な担体、賦形剤などは、標準的な薬学の教科書、例えば、レミングトンの著作(Remington′s Pharmaceutical Sciences, 第18版, Mack Publishing Company, Easton, Pa., 1990)に記載されている。
【0155】
製剤は、適宜、単位投与剤形として提供可能であり、製薬技術分野で公知の任意の方法により調製可能である。そのような方法は、活性化合物と、1種以上の補助成分から構成される担体とを一体化させる工程を含む。一般的には、製剤は、活性化合物と液体担体もしくは微細分割固体担体またはその両方とを均一かつ十分に一体化させてから必要であれば生成物を成形することにより調製される。
【0156】
製剤は、液体、液剤、懸濁液剤、乳濁液、エリキシル剤、シロップ、錠剤、ロゼンジ剤、粒剤、粉剤、カプセル、カシェ剤、丸薬、アンプル剤、坐剤、膣坐剤、軟膏、ゲル剤、ペースト剤、クリーム剤、噴霧剤、ミスト剤、フォーム剤、ローション剤、油剤、ボーラス剤、舐剤、またはエアロゾル剤の形態をとりうる。
【0157】
経口投与(例えば、摂取による)に好適な製剤は、それぞれ所定量の活性化合物を含有するカプセル剤、カシェ剤、もしくは錠剤のような個別単位として、粉剤もしくは顆粒剤として、水性もしくは非水性の液体中の液剤もしくは懸濁液剤として、または水中油型乳濁液もしくは油中水型乳濁液として、ボーラス剤として、舐剤として、あるいはペースト剤として、提供可能である。
【0158】
錠剤は、場合により1種以上の補助成分を用いて、圧縮や成形などの従来の手段により製造可能である。圧縮錠は、場合により、1種以上の結合剤(例えば、ポビドン、ゼラチン、アラビアゴム、ソルビトール、トラガカント、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、充填剤または希釈剤(例えば、ラクトース、微結晶性セルロース、リン酸水素カルシウム)、滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク、シリカ)、崩壊剤(例えば、ナトリウムデンプングリコレート、架橋型ポビドン、架橋型ナトリウムカルボキシメチルセルロース)、界面活性剤または分散剤または湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)、および保存剤(例えば、p−ヒドロキシ安息香酸メチル、p−ヒドロキシ安息香酸プロピル、ソルビン酸)と混合して、粉末または顆粒のような自由流動性形態の活性化合物を好適な機械で圧縮することにより製造可能である。成形錠は、不活性液体希釈剤で湿潤された粉末状化合物の混合物を好適な機械で成形することにより製造可能である。錠剤は、場合により、コーティングや切込みを施すことが可能であり、所望の放出プロファイルを提供するさまざまな割合でヒドロキシプロピルメチルセルロースなどを用いて内部の活性化合物の徐放または持続性放出を提供するように製剤化することが可能である。錠剤は、場合により、胃以外の消化管部分で放出を提供すべく腸溶コーティングして提供することが可能である。
【0159】
局所投与(例えば、経皮、鼻腔内、眼球、口腔および舌下)に好適な製剤は、軟膏剤、クリーム、懸濁液剤、ローション剤、粉末剤、液剤、ペースト、ゲル剤、噴霧剤、エアロゾル剤または油剤として製剤可能である。他の選択肢として、製剤は、活性化合物と場合により1種以上の賦形剤または希釈剤とで含浸された救急絆または絆創膏のような貼付剤または包帯を包含する。
【0160】
口内局所投与に好適な製剤としては、フレーバーベース(通常、ショ糖およびアカシアまたはトラガカント)中に活性化合物を含むロゼンジ剤、不活性基剤(例えば、ゼラチンおよびグリセリン、またはショ糖およびアカシア)中に活性化合物を含むトローチ剤、および好適な液体担体中に活性化合物を含む洗口剤が挙げられる。
【0161】
同様に、眼への局所投与に好適な製剤としては、活性化合物が好適な担体(特には、活性化合物用の水系溶媒)中に溶解または懸濁されている点眼剤が挙げられる。
【0162】
担体が固体であるときの経鼻投与に好適な製剤としては、例えば約20から約500ミクロンの範囲内の粒子径を有する粗粉剤が挙げられる。これは、鼻呼吸する方法で、すなわち、鼻のすぐ近くに保持された粉末剤の容器から鼻道を介して迅速な吸入を行うことにより、投与される。担体が、経鼻噴霧剤、点鼻剤として投与される、またはネブライザーによるエアロゾル投与により、投与される液体であるときの好適な製剤としては、活性化合物の水性もしくは油性の液剤が挙げられる。
【0163】
吸入による投与に好適な製剤としては、好適な噴射剤(例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、または他の好適なガス)を用いて加圧パックからエアロゾルスプレーとして提供されるものが挙げられる。
【0164】
皮膚を介する局所投与に好適な製剤としては、軟膏、クリーム剤および乳濁液が挙げられる。軟膏剤として製剤化する場合、活性化合物は、場合により、パラフィン系軟膏基剤または水混和性軟膏基剤のいずれかと併用可能である。他の選択肢として、活性化合物は、水中油型クリーム基剤を用いてクリーム剤の形態で製剤化可能である。所望により、クリーム基剤の水性相は、例えば、少なくとも約30重量%の多価アルコール、すなわち、2以上のヒドロキシル基を有するアルコール、例えば、プロピレングリコール、ブタン−1,3−ジオール、マンニトール、ソルビトール、グリセロール、およびポリエチレングリコール、ならびにそれらの混合物を含みうる。局所製剤は、望ましくは、皮膚または他の罹患領域を介する活性化合物の吸収または浸透を促進する化合物を含みうる。そのような真皮浸透促進剤の例としては、ジメチルスルホキシドおよびその関連類似体が挙げられる。
【0165】
局所乳濁液として製剤化する場合、油相は、場合により、乳化剤(エマルジェントとも称される)だけを含みうるか、または少なくとも1種の乳化剤と脂肪もしくは油または脂肪および油の両方との混合物を含みうる。好ましくは、親水性乳化剤は、安定剤として作用する親油性乳化剤と一緒に含まれる。また、油および脂肪の両方を含むことが好ましい。乳化剤は、安定剤の有無を問わず、一緒になって、いわゆる乳化ロウを構成し、ロウは、油および/または脂肪と一緒になって、クリーム製剤の油性分散相を形成するいわゆる乳化軟膏基剤を構成する。
【0166】
好適なエマルジェントおよび乳濁液安定剤としては、Tween60、Span80、セトステアリルアルコール、ミリスチルアルコール、モノステアリン酸グリセリルおよびラウリル硫酸ナトリウムが挙げられる。医薬乳濁液製剤に使用される可能性のあるほとんどの油への活性化合物の溶解度は、非常に低い可能性があるので、製剤化に好適な油または脂肪の選択は、所望の見た目上の特性を達成することに基づく。したがって、クリーム剤は、好ましくは、チューブまたは他の容器からの漏れを防止するのに好適な粘稠度を有する非べたつき性、非汚染性、かつ可洗性の製品であることが望ましい。直鎖もしくは分岐の一塩基性もしくは二塩基性のアルキルエステル、例えば、ジ−イソアジピン酸エステル、ステアリン酸イソセチル、ヤシ脂肪酸のプロピレングリコールジエステル、ミリスチン酸イソプロピル、オレイン酸デシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、パルミチン酸2−エチルヘキシルまたはクロダモルCAPとして知られる分岐エステルの混合物を使用することが可能であり、最後の3つが、好ましいエステルである。これらは、所要の性質に応じて単独でまたは組合せで使用することが可能である。
【0167】
他の選択肢として、高融点脂質(例えば、白色ワセリン)および/または流動パラフィンもしくは他の鉱油を使用することが可能である。
【0168】
直腸投与に好適な製剤は、カカオ脂やサリチル酸化合物などを含む好適な基剤を用いて坐剤として提供することが可能である。
【0169】
経膣投与に好適な製剤は、活性化合物に加えて当技術分野で適切であることが知られている担体を含有する膣坐剤、タンポン、クリーム剤、ゲル剤、ペースト剤、フォーム剤または噴霧剤として提供することが可能である。
【0170】
非経口投与(例えば、皮膚、皮下、筋肉、静脈、皮内などへの注射による)に好適な製剤としては、水系および非水系で等張性で発熱物質不含の無菌注射液剤(抗酸化剤、緩衝剤、保存剤、安定化剤、静菌剤および製剤を対象の被投与者の血液と等張になるようにする溶質を含有していてもよい)、ならびに水系および非水系の無菌懸濁液(懸濁化剤および増粘剤を含んでいてもよい)、さらには血液成分または1以上の臓器に化合物をターゲッティングするように設計されたリポソームまたは他の微粒子系が挙げられる。そのような製剤に使用するのに好適な等張性ビヒクルの例としては、塩化ナトリウム注射液、リンゲル液または乳酸加リンゲル注射液が挙げられる。代表的には、溶液中の活性化合物の濃度は、約1ng/mLから約10μg/mL、例えば、約10ng/mLから約1μg/mLである。製剤は、単回用量または複数回用量の密閉容器(例えば、アンプルおよびバイアル)に入れて提供可能であり、そして使用直前に無菌液体担体(例えば、注射用の水)の添加だけを必要とするフリーズドライ(凍結乾燥)状態で保存することが可能である。即席の注射用の液剤および懸濁液剤は、無菌の粉剤、顆粒剤および錠剤から調製可能である。製剤は、血液成分または1以上の臓器に活性化合物をターゲッティングするように設計されたリポソームまたは他の微粒子系の形態をとりうる。
【0171】
用量
当然のことながら、活性化合物および活性化合物を含む組成物の適切な用量は、患者ごとに異なり得る。至適用量を決定するには、一般的には、本発明に係る治療に伴うリスクまたは有害な副作用と治療効果のレベルとのバランスを取ることが必要である。選択される用量レベルは、当該化合物の活性、投与経路、投与の時期、化合物の排泄速度、治療の継続期間、併用される他の薬剤、化合物および/または材料、ならびに患者の年齢、性別、体重、病状、全般的健康状態および既往歴など(ただし、これらに限定されるものではない)をはじめとするさまざまな要素によって決まる。化合物の量および投与経路は、最終的には、医師の自由裁量にゆだねられるが、一般的には、実質的に危険もしくは有害な副作用を引き起こすことなく所望の効果を達成する局所濃度が作用部位で得られる用量が用いられる。
【0172】
イン・ビボ投与は、治療の全期間にわたり、1回投与方式、連続方式または断続方式(例えば、適切な間隔をあけて分割投与方式)で行うことが可能である。最も効果的な投与手段および投与量を決定する方法は当業者に公知であり、治療に用いられる製剤、治療の目的、治療対象の標的細胞および治療対象の対象者によって変動する。単回投与もしくは反復投与は、治療医により選択される用量レベルおよびパターンで行うことが可能である。
【0173】
概して、活性化合物の好適な用量は、対象者の体重1キログラムあたり1日約100μgから約250mgの範囲内である。活性化合物が塩、エステル、プロドラッグなどである場合、投与量は、親化合物を基準にして計算され、したがって使用される実際の重量は比例して増大する。
【実施例】
【0174】
以下は、実施例であるが、本発明を説明することのみを目的として提供されたものであり、本明細書に記載の本発明の範囲を限定することを意図したものではない。
【0175】
頭字語
便宜上、多くの化学基は、公知の略号を用いて表され、こうしたものとしては限定されるものではないが、メチル(Me)、エチル(Et)、n−プロピル(nPr)、イソプロピル(iPr)、n−ブチル(nBu)、tert−ブチル(tBu)、n−ヘキシル(nHex)、シクロヘキシル(cHex)、フェニル(Ph)、ビフェニル(biPh)、ベンジル(Bn)、ナフチル(naph)、メトキシ(MeO)、エトキシ(EtO)、ベンゾイル(Bz)、アセチル(Ac)などが挙げられる。
【0176】
便宜上、多くの化合物は、公知の略号を用いて表され、こうしたものとしては限定されるものではないが、メタノール(MeOH)、エタノール(EtOH)、イソ−プロパノール(i−PrOH)、メチルエチルケトン(MEK)、エーテルまたはジエチルエーテル(EtO)、酢酸(AcOH)、ジクロロメタン(メチレンクロリド、DCM)、トリフルオロ酢酸(TFA)、ジメチルホルムアミド(DMF)、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)などが挙げられる。
【0177】
一般的実験に関する詳細
化学物質は、アルドリッチ社(Aldrich Chemical Company)、ランカスター・シンセシス社(Lancaster Synthesis Ltd.)およびアクロス・オーガニクス社(Acros Organics (Fisher Scientific UK, Ltd.))から購入した。THFは、ナトリウム/ベンゾフェノンから新たに蒸留した。メタノールおよびエタノールは、マグネシウム/ヨウ素から蒸留した。DCMは、五酸化リンを用いて蒸留することにより脱水した。アセトンは、水素化カルシウムを用いて蒸留することにより脱水した。ただちに使用されない溶媒はすべて、窒素下、モレキュラーシーブ(4Å、3から5mmビーズ)を用いて貯蔵した。無水DMFは、シュアシール(SureSeal、商標名)瓶に入った状態でアルドリッチから入手した。トリエチルアミンは、水素化カルシウムを用いて蒸留することにより脱水し、窒素下、水酸化カリウムを用いて貯蔵した。
【0178】
薄層クロマトグラフィー(TLC)は、アルミニウムシート上にあらかじめコーティングされたメルク(Merck)シリカゲル60F254を用いて実施した。続いて、このシリカゲルを乾燥させ、そして短波(254nm)紫外光を用いてまたはニンヒドリンで処理するかもしくは硫酸に続いてバニリンで処理することにより視覚化した。「フラッシュ」カラムクロマトグラフィーは、ダビシル(Davisil)シリカゲル(40から63μm)を用いて中圧で行った。
【0179】
融点は、スチュアート・サイエンティフィック(Stuart Scientific)SMP3装置を用いて測定したが、未補正である。Hおよび13C核磁気共鳴(NMR)スペクトルは、ブルカー・スペクトロスピン(Bruker Spectrospin)AC300E分光計(H 300MHzもしくは13C 75MHz)またはブルカー・スペクトロスピンAC500E分光計(H 500MHzもしくは13C 125MHz)を用いて得た。化学シフトは、テトラメチルシランの低磁場側でppm(δ)単位として報告し、これには内部標準として残留溶媒ピークを用いる。多重度は、s(一重線)、d(二重線)、t(三重線)、q(四重線)、m(多重線)、br(広幅)またはそれらの組合せにより示す。LC/MSスペクトルは、正イオンまたは負イオンのエレクトロスプレーモードで動作するマイクロマス・プラットフォーム(Micromass Platform)装置を用いて取得した。分離は、C18カラム(50×4.6mm、スペルコ・ディスカバリー(Supelco Discovery)またはウォーターズ・シンメトリー(Waters Symmetry))ならびに0.05%ギ酸およびメタノール(10から90%)の15分間の勾配溶離を用いて行った。IRスペクトルは、Bio−Rad FTS 3000MXダイヤモンドATRを用いて無希釈サンプルとして記録した。
【0180】
化合物は、質量に基づくLC−MSシステムまたはUVに基づくシステムのいずれかを用いて精製した。
【0181】
質量に基づくLC−MSシステム
これは、ウォーターズZQ質量分析計、ウォーターズ600ポンプおよびウォーターズ2700サンプルマネージャーを用いるものである。移動相A−0.1%ギ酸水溶液、移動相B−0.1%ギ酸のアセトニトリル中溶液、流量20mL/分、勾配は15分間かけて5%Bから75%Bとし、次に1分間かけて100%Bとし、1分間保持する。カラム:フェノメネクス・ジェミニ(Phenomenex Gemini)C18、5μm、110Å、アキシア(Axia)、20 50mm×21.2mm。
【0182】
UVに基づくシステム
これは、ギルソン(Gilson)305および306ポンプをギルソン155uv/vis検出器、ギルソン215インジェクター/コレクターとともに用いるものである。移動相A−0.1%ギ酸水溶液、移動相B−0.1%ギ酸のアセトニトリル中溶液、流量6mL/分、勾配は10%Bで3分間、次に16分間かけて95%Bとし、5分間保持する。カラム:ハイクロム(Hichrom)ACE 5μm C18.250mm×10mm。
【0183】
マイクロ波合成
反応は、ロボットアームを有するパーソナル・ケミストリー(Personal Chemistry、商標名)エムリス(Emrys)オプティマイザー(Optimiser)マイクロ波合成ユニットを用いて実施した。電力範囲は2.45GHzで0から300W。圧力範囲は0から2MPa(0から20バール)、2から5℃/秒で昇温、温度範囲は60から250℃。
【0184】
主要な中間体の合成
【化15】

【0185】
(a)1−ブロモ−4−メトキシ−ジベンゾチオフェン(B)
4−メトキシ−ジベンゾチオフェン(A)(16.07g、75.00mmol)の氷酢酸(300mL)中懸濁液に、臭素(4.08mL、75.00mmol)の氷酢酸(10mL)中溶液を0.5時間かけて滴下した。さらに0.5時間経過後、反応混合物を水(1リットル)に投入し、15分後に、沈殿を濾過によって回収し、水で洗浄した。固体をジクロロメタン(200mL)に溶かし、次に10%重炭酸ナトリウム水溶液で洗浄した(50mLで1回)。有機層をMgSOで脱水し、濾過し、減圧下に濃縮して、1−ブロモ−4−メトキシ−ジベンゾチオフェン(B)を、鈍黄色固体として21.06g(95%)得て、それをそれ以上精製せずに用いた。
【0186】
(b)1−クロロ−ジベンゾチオフェン−4−オール(C)
1−ブロモ−4−メトキシ−ジベンゾチオフェン(B)(41.045g、0.14mol)の入ったフラスコに、ピリジン塩酸塩(0.50kg、4.35mol)を一回で加えた。溶融物を48時間還流後、反応混合物を放冷して室温とし、水(2リットル)に投入した。沈殿した固体を濾過によって回収し、ジクロロメタン(0.50リットル)に再溶解させ、HCl水溶液(1M、50mL)、水(50mL)および飽和ブライン溶液(50mL)の順で洗浄し、MgSOで脱水し、濾過し、減圧下に濃縮した。溶離液としてジクロロメタン:ヘキサン(10:1)を用いるSiOフラッシュクロマトグラフィーによる精製によって、1−クロロ−ジベンゾチオフェン−4−オール(4.40分、[M−H]233.4)を明褐色固体として13.47g(41%)得た。
【0187】
(c)トリフルオロ−メタンスルホン酸1−クロロ−ジベンゾチオフェン−4−イルエステル(D)
1−クロロ−ジベンゾチオフェン−4−オール(0.669g、2.850mmol)の無水テトラヒドロフラン(18mL)中溶液に、炭酸カリウム(0.394g、2.850mmol)と、次にN−フェニル−ビス(トリフルオロメタンスルホンアミド)(1.02g、2.85mmol)をそれぞれ順次1回で加えた。反応混合物について、120℃で6分間マイクロ波照射を行った。この時点で、追加量のN−フェニル−ビス(トリフルオロメタンスルホンアミド)(0.20g、0.56mmol)を加え、反応混合物について再度120℃で6分間マイクロ波処理した。得られた粗反応混合物を濾過し、溶媒を減圧下に除去した。得られた油状物を溶離液としてジクロロメタン:ヘキサン(10:1)を用いるSiOフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、トリフルオロ−メタンスルホン酸1−クロロ−ジベンゾチオフェン−4−イルエステル(5.65分)を透明油状物として1.00g(95%)得た。
【0188】
(d)8−(1−クロロ−ジベンゾチオフェン−4−イル)−2−モルホリン−4−イル−クロメン−4−オン(F)
トリフルオロ−メタンスルホン酸1−クロロ−ジベンゾチオフェン−4−イルエステル(D)(0.513g、1.40mmol)および2−モルホリン−4−イル−8−(4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラン−2−イル)−クロメン−4−オン(E)(0.625g、1.75mmol)の無水アセトニトリル(18mL)中溶液に、炭酸カリウム(0.580g、4.20mmol)を一回で加えた。反応混合物について、150℃で10分間マイクロ波照射を行った。粗反応混合物を濾過し、溶媒を減圧下に除去した。得られた油状物を溶離液としてメタノール:酢酸エチル(20:1)を用いるSiOフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、8−(1−クロロ−ジベンゾチオフェン−4−イル)−2−モルホリン−4−イル−クロメン−4−オン(F)(4.91分、[M+H]448.1)を暗ベージュ色固体として0.535g(84%)得た。
【0189】
実施例1
【化16】

【0190】
8−(1−クロロ−ジベンゾチオフェン−4−イル)−2−モルホリン−4−イル−クロメン−4−オン(F)(0.032g、0.071mmol)の無水トルエン(2mL)中溶液に、ナトリウムtert−ブトキシド(0.026g、0.351mmol)を1回で加え、次に必要なアミン(0.286mmol)、1,1−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(0.002g、0.004mmol)およびトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0.006g、0.004mmol)をその順で1回で加えた。次に、反応混合物について、130℃で2分間マイクロ波照射を行った。得られた溶液を、ジクロロメタン/メタノール洗浄液を用いてSPEシリカカートリッジで濾過し、HPLCによる精製を行った。
【化17】

【表1】




【0191】
実施例2
【化18】

【0192】
(a)4−[4−(2−モルホリン−4−イル−4−オキソ−4H−クロメン−8−イル)−ジベンゾチオフェン−1−イル]−ピペラジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(1c)
8−(1−クロロ−ジベンゾチオフェン−4−イル)−2−モルホリン−4−イル−クロメン−4−オン(F)(0.447g、1.00mmol)の無水1,4−ジオキサン(15mL)中溶液に、リン酸カリウム(0.636g、3.00mmol)を1回で加え、次に4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9,9−ジメチルキサンテン(0.029g、0.050mmol)、酢酸パラジウム(0.012g、0.050mmol)および1−ピペラジン−カルボン酸tert−ブチル(0.373g、2.00mmol)をその順序でそれぞれ1回で加えた。次いで反応混合物を150℃で20分間マイクロ波照射した。得られた溶液を、ジクロロメタン:メタノール(10:1)の溶液で溶離を行ってシリカ層で濾過した。溶媒を減圧下に除去し、得られた油状物を、溶離液としてジクロロメタン:メタノール(20:1から5:1に上昇)を用いるSiOフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、4−[4−(2−モルホリン−4−イル−4−オキソ−4H−クロメン−8−イル)−ジベンゾチオフェン−1−イル]−ピペラジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(5.28分[M+H]598.4)を、褐色固体として0.397g(66%)得た。
【0193】
(b)2−モルホリン−4−イル−8−(1−ピペラジン−1−イル−ジベンゾチオフェン−4−イル)−クロメン−4−オン(1a)
4−[4−(2−モルホリン−4−イル−4−オキソ−4H−クロメン−8−イル)−ジベンゾチオフェン−1−イル]−ピペラジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(1c)(100%と仮定、1.00mmol)の無水ジクロロメタン(100mL)中溶液に、トリフルオロ酢酸(20mL)を1回で加えた。48時間後、反応液を加熱して50℃とし、さらに3時間後、反応液を放冷して室温とし、pHが7となるまで飽和重炭酸ナトリウム水溶液を加えることで反応停止した。次に、反応混合物をジクロロメタンで抽出し(15mLで3回)、合わせた抽出液をMgSOで脱水し、濾過し、溶媒を減圧下に除去して、淡褐色泡状物を得た。溶離液としてジクロロメタン:メタノール(10:1)を用いるSiOフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、2−モルホリン−4−イル−8−(1−ピペラジン−1−イル−ジベンゾチオフェン−4−イル)−クロメン−4−オン(1a)(Rf値0.25、10%MeOH)(2.86分[M+H]498.5)を淡黄色固体として収量0.688g(70%)で得た。
【0194】
(c)ライブラリー合成(2aからg)
2−モルホリン−4−イル−8−(1−ピペラジン−1−イル−ジベンゾチオフェン−4−イル)−クロメン−4−オン(0.020g、0.040mmol)の無水ジクロロメタン(2mL)中溶液に、N,N,−ジイソプロピルエチルアミン(0.140mL、0.800mmol)と、次に必要なアルキルブロマイド(0.400mmol)をそれぞれ1回で加えた。反応が進行していなかったら、反応温度を上昇させて50℃とし、反応がまだ進行中であった場合は、炭酸セシウム(0.141g、0.400mmol)を1回で加えた。原料が消費されたら、反応液をジクロロメタン/メタノール洗浄液を用いるSPEシリカカートリッジで濾過し、HPLCによる精製を行った。
【化19】

【表2】


【0195】
実施例3
【化20】

【0196】
ライブラリー合成(3aからb)
2−モルホリン−4−イル−8−(1−ピペラジン−1−イル−ジベンゾチオフェン−4−イル)−クロメン−4−オン(1a)(0.050g、0.050mmol)の無水ジクロロメタン(2mL)中溶液に、N,N,−ジイソプロピルエチルアミン(0.5mL、過剰)を1回で加え、次に適切なスルホニルクロライド(0.050mmol)を1回で加えた。12時間後、反応混合物をジクロロメタン/メタノール洗浄液を用いるSPEシリカカートリッジで濾過し、HPLCによる精製を行った。
【表3】

【0197】
生物学的実施例
DNA−PK阻害
イン・ビトロにおけるDNA−PKに対する化合物の阻害作用を評価するために、次のアッセイを行ってIC50値を決定した。
【0198】
HeLa細胞核抽出物(Gell, D. and Jackson S. P., Nucleic Acids Res. 27: 3494-3502 (1999))から哺乳動物DNA−PK(500ng/mL)を単離し、続いて、Q−セファロース、S−セファロース、およびヘパリンアガロースを利用してクロマトグラフィーにかけた。ポリプロピレン96ウェルプレート中において、25mM Hepes、pH7.4、12.5mM MgCl、50mM KCl、1mM DTT、10%グリセロール、0.1%NP−40、および1mgの基質GST−p53N66(ヒト野生型p53のアミノ末端の66個のアミノ酸残基をグルタチオンS−トランスフェラーゼに融合したもの)を含有する緩衝液中、40μLの最終容量、30℃で、DNA−PK(250ng)活性を測定した。アッセイ混合物にさまざまな濃度の阻害剤(DMSO中1%の最終濃度で)を添加した。10分間インキュベートした後、30量体二本鎖DNAオリゴヌクレオチド(0.5ng/mLの最終濃度)と共に、50μMの最終濃度になるようにATPを添加して、反応を開始した。振盪しながら1時間経過した後、反応系に150μLのリン酸緩衝食塩水(PBS)を添加し、次に、1ウェルあたり45μLのPBSを含有する96ウェル乳白色プレートに5μLを移して、1時間かけてGSTp53N66基質をウェルに結合させた。p53のセリン15残基においてDNA−PKにより誘発されたリン酸化事象を検出するために、p53ホスホセリン−15抗体(Cell Signaling Technology)を基本的なELISA手順で使用した。次に、ELISAで抗ウサギHRPコンジュゲート化二次抗体(Pierce)を利用してから化学発光試薬(NEN Renaissance)を添加し、トップカウント(TopCount)NXT(Packard)で化学発光計測を行って測定されるシグナルを検出した。
【0199】
次に、次式
【数1】

を用いて各化合物についての酵素活性を計算した。以下ではIC50値(酵素活性の50%が阻害される濃度)として結果を考察する。これらは、一連の各種濃度にわたり、通常は10μMから0.001μMまでにわたり、測定される。こうしたIC50値は、化合物の効力の増大を確認するための比較値として使用される。
【0200】
生存率増大比
生存率増大比(SER)とは、非照射対照細胞と比較して2グレイの照射を行った後でDNA−PK阻害剤により誘発される細胞死滅の増大比のことである。DNA−PK阻害剤は、25、50、100および/または500nMの濃度で使用した。毎分1Gyの線量率でファキシトロン(Faxitron)43855D装置により照射を施した。下記式からから2グレイ照射におけるSERを計算した。
【数2】

【0201】
標準的クローン形成性生存率アッセイにより細胞死滅度をモニタリングした。すなわち、1ウェルあたり100から200コロニーを与えるように組織培地で処理された6ウェルプレートに適切な濃度でHeLa細胞を接種し、そして細胞を結合させるためにインキュベーターに戻した。4時間後、化合物またはビヒクル対照を細胞に添加した。次に、阻害剤の存在下で細胞を1時間インキュベートしてからファキシトロン43855DキャビネットX線装置を用いて2グレイの照射を施した。次に、細胞をさらに16時間インキュベートしてから培地をDNA−PK阻害剤非存在下の新たな培地で置き換えた。8日後、形成されたコロニーを固定し、ギムザ(Sigma, Poole, UK)で染色し、自動コロニー計数器(Oxford Optronics Ltd., Oxford, UK)を用いてスコアを求めた。以上に記載したようにデータを計算した。
【0202】
結果
調べた全ての化合物が、0.5μM未満のIC50を示した。次の化合物、すなわち1a、1b、1d、1e、1f、1g、1n、2a、2b、2c、2d、2e、2f、2g、2m、2n、2o、3a、3bは、0.05μM未満の平均IC50値を示した。
【0203】
それら化合物の平均IC50値を下記に示してある。
【表4】


【0204】
次の化合物、すなわち1a、1b、1d、1f、1g、1n、2a、2b、2c、2d、2e、2f、2h、2j、2l、2m、2n、2oは、100nMで1.5以上のSERを示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式Iの化合物。
【化1】

[式中、
およびRは独立に、水素、置換または非置換のC1−7アルキル基、C3−20複素環基またはC5−20アリール基から選択されるか、それらが結合している窒素原子とともに、4から8個の環原子を有する置換または非置換の複素環を形成していても良く、
Xは、CHまたはNであり、
nは、1または2であり、
C1およびRC2は独立に、Hおよびメチルから選択され、
XがNである場合、RはHならびに置換または非置換のC1−7アルキル、C3−20複素環、C5−20アリール、アシル、エステル、アミドおよびスルホニルからなる群から選択され、
XがCHである場合、RはHならびに置換または非置換のC1−7アルキル、C3−20複素環、C5−20アリール、アシル、エステル、アミド、スルホニル、アミノおよびエーテルからなる群から選択される。]
【請求項2】
nが1である請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
XがNである請求項1または請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
が、Hならびに置換または非置換のC1−7アルキル、C5−20アリール、アシル、エステルおよびスルホニルからなる群から選択される請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
が、Hならびに置換または非置換のC1−7アルキルおよびスルホニルからなる群から選択される請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
XがCHである請求項1または請求項2に記載の化合物。
【請求項7】
がC3−20複素環またはアシルである請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
C1およびRC2がいずれもHである請求項1から7のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項9】
およびRが、それらが結合している窒素原子とともに、6個の環原子を有する複素環を形成する請求項1から8のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項10】
およびRが、それらが結合している窒素原子とともに、モルホリノ、チオモルホリノおよびチアゾリニルから選択される基を形成している請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
およびRが、それらが結合している窒素原子とともに、モルホリノを形成している請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項に記載の化合物および製薬上許容される担体または希釈剤を含む組成物。
【請求項13】
治療方法に使用するための請求項1から11のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項14】
DNA−PKの阻害によって改善される疾患を治療するための医薬の製造における請求項1から11のいずれか1項に記載の化合物の使用。
【請求項15】
DNA−PKの阻害によって改善される疾患の治療方法に用いるための請求項1から11のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項16】
細胞を、有効量の請求項1から11のいずれか1項に記載の化合物と接触させる段階を有する、イン・ビトロまたはイン・ビボでDNA−PKを阻害する方法。

【公表番号】特表2010−533694(P2010−533694A)
【公表日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−516580(P2010−516580)
【出願日】平成20年7月18日(2008.7.18)
【国際出願番号】PCT/GB2008/002459
【国際公開番号】WO2009/010761
【国際公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【出願人】(503160629)クドス ファーマシューティカルズ リミテッド (23)
【出願人】(598176569)キャンサー・リサーチ・テクノロジー・リミテッド (57)
【氏名又は名称原語表記】CANCER RESEARCH TECHNOLOGY LIMITED
【Fターム(参考)】