説明

EP4受容体アンタゴニストとしてのインドール及びインドリンシクロプロピルアミド誘導体

本発明は、EP4が媒介する疾患又は症状、例えば、急性及び慢性疼痛、変形性関節症、関節リウマチ並びに癌の治療に有用である、EP4受容体アンタゴニストとしてのインドール及びインドリンシクロプロピルアミド誘導体に関する。医薬組成物及び使用方法も含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロスタグランジンEに媒介される疾患を治療する化合物及び方法及びその特定の医薬組成物に関する。さらに詳しくは、本発明の化合物は、NSAID及びアヘン剤と構造的に異なり、Eタイププロスタグランジンの疼痛及び炎症性効果のアンタゴニストである。
【背景技術】
【0002】
3つの総論が、プロスタノイド受容体の特性及び治療的な関連性並びに最も一般的に使用される選択的アゴニスト及びアンタゴニストを記述している:Eicosanoids:From Biotechnology to Therapeutic Applications,Folco,Samuelsson,Maclouf,及びVelo編,Plenum Press,New York,1996,chap.14,137−154;Journal of Lipid Mediators及びCell Signalling,1996,14,83−87;及び、Prostaglandins and Other Lipid Mediators,2002,69,557−573。
【0003】
すなわち、選択的プロスタグランジンリガンド、アゴニスト、又はアンタゴニストは、どのプロスタグランジンE受容体サブタイプが考慮されるかによって、従来の非ステロイド性抗炎症薬剤に類似する抗炎症、解熱、及び鎮痛作用を有し、さらに、血管ホメオスタシス、再生、消化管の機能及び骨代謝に効果を有する。これらの化合物は、やみくもにシクロオキシゲナーゼを阻害するNSAIDが有するメカニズムベースの副作用のいくつかを引き起こす能力を低減させ得る。特に、本化合物は、胃腸毒性の可能性を低減し、腎臓への副作用の可能性を低減し、出血時間における効果を低減し、アスピリン感受性のぜんそく患者におけるぜんそく発作を引き起こす能力を減少させると確信される。
【0004】
The Journal of Clinical Investigation(2002,110,651−658)において、研究により、マウスへのコラーゲン抗体の注入により引き起こされる慢性炎症が、主としてPGE2受容体のEP4サブタイプを介して媒介されることが示唆されている。国際特許出願公開第WO96/06822(1996年3月7日)、WO96/11902(1996年4月25日)、及び欧州特許出願公開第752421号(1997年1月8日)は、プロスタグランジンが媒介する疾患の治療に有用な化合物を開示する。
【0005】
本発明は、PGE2受容体のEP4サブタイプのアンタゴニストである新規化合物に関する。本化合物は、したがって、急性及び慢性疼痛、変形性関節症、関節リウマチ、及び癌等の、EP4受容体により媒介される疾患及び状態の治療に有用であろうものである。
【発明の概要】
【0006】
発明の要旨
本発明は、急性及び慢性疼痛、変形性関節症、関節リウマチ、及び癌等の、EP4受容体により媒介される疾患及び状態の治療に有用なEP4受容体アンタゴニストとしてのインドール及びインドリンシクロプロピルアミド誘導体に関する。医薬組成物及び用途も含む。
【0007】
発明の詳細な記載
本発明は、
式I:
【0008】
【化1】

【0009】
[式中、
【0010】
【化2】

【0011】
は、二重結合であってもよく;
Xは、−COOH又はテトラゾリルであり;
及びRは、独立して、ハロ、C1−4アルキル、C1−4フルオロアルキル、C1−4アルコキシ、C1−4フルオロアルコキシ、及びアセチルからなる群より選択される]
で示される化合物、又はその薬学的に許容され得る塩の属を包含する。
【0012】
該属の中で、本発明は、
式Ia:
【0013】
【化3】

【0014】
[式中、置換基R及びRは、上記の通り定義される]
で示される化合物又はその薬学的に許容され得る塩の亜属を包含する。
【0015】
該亜属の中で、本発明は、
式Ib:
【0016】
【化4】

【0017】
[式中、置換基R及びRは、上記の通り定義される]
で示される化合物又はその薬学的に許容され得る塩のクラスを包含する。
【0018】
該クラスの中で、本発明は、
式Ic:
【0019】
【化5】

【0020】
[式中、置換基R及びRは、上記の通り定義される]
で示される化合物又はその薬学的に許容され得る塩のサブクラスを包含する。
【0021】
本発明はまた、以下:
【0022】
【化6】

【0023】
から選択される化合物、又は上記化合物の任意の薬学的に許容され得る塩を包含する。本発明の1実施態様において、本発明は、上述の化合物の任意のもののジエチルアミン、ナトリウム、カリウム、及びL−リジン塩を包含する。
【0024】
本発明はまた、1種又はそれ以上の生理学的に許容され得る担体又は賦形剤と混合した、式Iの化合物を含む医薬組成物を包含する。
【0025】
本発明はまた、ヒト又は動物医薬において使用するための、式Iの化合物又は薬学的に許容され得るその誘導体を包含する。
【0026】
本発明はまた、EP4受容体におけるPGE2の作用により媒介される症状を罹患するヒト又は動物対象を治療する方法であって、有効量の式Iの化合物を該対象に投与することを含む方法を包含する。
【0027】
本発明はまた、EP4受容体におけるPGE2の作用により媒介される症状を治療するための治療薬製造のための、式Iの化合物の使用を包含する。
【0028】
本発明はまた、治療上有効な量の式Iに記載の化合物又はその薬学的に許容され得る塩を患者に投与することを含む、それを必要とする患者における、急性又は慢性疼痛、偏頭痛、変形性関節症、関節リウマチ、若年性関節リウマチ、痛風、滑液包炎、強直性脊椎炎、原発性月経困難症、癌、又はアテローム性動脈硬化症の治療方法を包含する。
【0029】
略語
以下の略語は示される意味を有する:
【0030】
【化7】

【0031】
定義
「アルキル」、並びに、アルコキシ、アルカノイル等の接頭語「alk」を有するその他の基は、直鎖状若しくは分岐又はそれらの組み合わせであり得る炭素鎖を意味する。アルキル基の例には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec−及びtert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル等を含む。
【0032】
「フルオロアルキル」は、上記に定義されるようなアルキルであって、1又はそれより多い水素原子がフッ素原子により置換されているものを意味する。
【0033】
「アルケニル」は、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を含み、直鎖状若しくは分岐又はそれらの組み合わせであり得る炭素鎖を意味する。アルケニルの例は、ビニル、アリル、イソプロペニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、1−プロペニル、2−ブテニル、2−メチル−2−ブテニル等を含む。
【0034】
「アルキニル」は、少なくとも1つの炭素−炭素三重結合を含み、直鎖状若しくは分岐又はそれらの組み合わせであり得る炭素鎖を意味する。アルキニルの例は、エチニル、プロパルギル、3−メチル−1−ペンチニル、2−ヘプチニル等を含む。
【0035】
「シクロアルキル」は、各々3〜10炭素原子を有する単環式又は二環式の飽和炭素環を意味する。シクロアルキルの「縮合アナログ」は、アリール又はヘテロアリール基へと縮合した単環式の環を意味し、結合点は非芳香族部分においてである。シクロアルキル及びその縮合アナログの例は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、テトラヒドロナフチル、デカヒドロナフチル、インダニル等を含む。
【0036】
「アルコキシ」は、示された数の炭素原子を有する直鎖状又は分岐状のアルコキシ基を意味する。例えば、C1−6アルコキシは、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ等を含む。
【0037】
「シクロアルコキシ」は、シクロプロピルオキシ等の、酸素原子と結合した上記のように定義されるシクロアルキルを意味する。
【0038】
「フルオロアルコキシ」は、1又はそれより多い水素原子がフッ素原子により置換されている上記のように定義されるアルコキシを意味する。
【0039】
「アリール」は、炭素原子のみを含む単環式又は二環式の芳香環を意味する。アリールの「縮合アナログ」は、シクロアルキル又は単環式のへテロシクリル基へと縮合したアリール基を意味し、結合点は芳香族部分においてである。アリール及びその縮合アナログの例は、フェニル、ナフチル、インダリル、インデニル、テトラヒドロナフチル、2,3−ジヒドロベンゾフラニル、ジヒドロベンゾピラニル、1,4−ベンゾジオキサニル等を含む。
【0040】
「ヘテロアリール」は、N、O、及びSから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含み、各環が5〜6原子を含む単環式又は二環式の芳香環を意味する。ヘテロアリールの「縮合アナログ」は、単環式のシクロアルキル又は単環式のへテロシクリル基へと縮合したヘテロアリール基を意味し、結合点は芳香族部分においてである。ヘテロアリールの例は、ピロリル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、ピラゾリル、ピリジル、オキサゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、チアゾリル、イミダゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、フラニル、トリアジニル、チエニル、ピリミジル、ピリダジニル、ピラジニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル、フロ(2,3−b)ピリジル、キノリル、インドリル、イソキノリル等を含む。
【0041】
「ヘテロシクリル」は、N、S、及びOから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含み、芳香族ではなく、各環が3〜10原子を含み、結合点が炭素又は窒素であり得る、単環式又は二環式の飽和環又は部分的不飽和単環式の環を意味する。ヘテロシクリルの「縮合アナログ」は、アリール又はヘテロアリール基へと縮合した単環式のへテロ環を意味し、結合点は非芳香族部分においてである。ヘテロシクリル及びその縮合アナログの例は、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、イミダゾリジニル、2,3−ジヒドロフロ(2,3−b)ピリジル、ベンゾオキサジニル、テトラヒドロヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、ジヒドロインドリル等を含む。この用語はまた、窒素又はN−置換−(1H,3H)−ピリミジン−2,4−ジオン(N−置換ウラシル)を介して結合された2−又は4−ピリドン等の、非芳香性の部分的不飽和単環式の環を含む。
【0042】
「ハロゲン」及び「ハロ」は、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素を含む。
【0043】
光学異性体−ジアステレオマー−幾何異性体−互変異性体
式Iの化合物は、1又はそれより多い不斉中心を含み、それ故に、ラセミ化合物及びラセミ混合物、シングルエナンチオマー、ジアステレオマー混合物、及び個別のジアステレオマーを生じ得る。本発明は、式Iの化合物におけるかかる異性体のあらゆる形態を包含することを意味する。
【0044】
本明細書中に記載の化合物のあるものは、オレフィン性二重結合を含み、特に別の記載がない限り、E及びZ幾何異性体の両方を含むことを意味する。
【0045】
本明細書中に記載の化合物のあるものは、互変異性体と称されるような、異なる水素の結合点を有してもよい。かかる例は、ケト−エノール互変異性体として知られるケトン及びそのエノール型であり得る。個別の互変異性体並びにそれらの混合物は、式Iの化合物に包含される。
【0046】
式Iの化合物を、例えば、MeOH若しくはEtOAc又はそれらの混合物等の好適な溶媒から分別結晶により、ジアステレオマー性の対をなすエナンチオマーへと分離してもよい。得られたエナンチオマーの対は、すなわち、例えば、分割剤として分離光学活性アミンを用いることにより、又はキラルHPLCカラム等の従来の手段によって、個々の立体異性体へと分離してもよい。
【0047】
或いは、一般式Iで示す化合物の任意のエナンチオマーを、既知の立体配置の光学的に純粋な出発物質又は試薬を用い、立体特異的に合成することによって得てもよい。
【0048】
塩類
用語「薬学的に許容され得る塩」は、無機若しくは有機塩基、又は、無機若しくは有機塩酸を含む薬学的に許容され得る非毒性の塩基又は酸から調整される塩をいう。無機塩基由来の塩には、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅、第二鉄、第一鉄、リチウム、マグネシウム、第2マンガン塩、第1マンガン塩、カリウム、ナトリウム、亜鉛等を含む。特に好ましいのは、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、カリウム、及びナトリウム塩である。薬学的に許容され得る有機非毒性塩基由来の塩は、第1級アミン、第2級、及び第3級アミン、天然の置換アミンを含む置換アミン、環状アミン及びアルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−エチルモルホリン、N−エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リジン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミン等の塩基性イオン交換樹脂を含む。
【0049】
本発明の化合物が塩基性である場合、塩は無機及び有機酸を含む薬学的に許容され得る非毒性の酸から調整され得る。かかる酸には、酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ムチン酸、硝酸、パモン酸、パントテン酸、リン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、p−トルエンスルホン酸等を含む。特に好ましいのは、クエン酸、臭化水素酸、塩酸、マレイン酸、リン酸、硫酸、及び酒石酸である。
【0050】
本明細書中で用いられるとき、式Iの化合物に対する言及は薬学的に許容され得る塩類をも含むことを意味することが理解されるであろう。
【0051】
有用性
本発明の化合物は、EP4受容体のアンタゴニストであり、したがって、EP4受容体が媒介する疾患の治療に有用である。
【0052】
EP4受容体へと結合するそれらの能力という観点から、本発明の化合物は、以下の疾患の治療に有用である。すなわち、本発明の化合物は、鎮痛薬として有用である。例えば、それらは、疾患の変形特性及び関節構造の維持を含む慢性関節痛(例えば、関節リウマチ、変形性関節症、リウマチ様脊椎炎、痛風性関節炎及び若年性関節炎);筋骨格系疼痛;腰痛及び首の痛み;捻挫及び筋違い;神経因性疼痛;交感神経依存性疼痛;筋炎;癌及び線維筋痛を伴う疼痛;偏頭痛を伴う疼痛;インフルエンザ又は通常の風邪等のその他のウィルス性感染を伴う疼痛;リウマチ熱;非潰瘍性消化不良等の機能性腸疾患、非心臓性胸痛、及び過敏性腸症候群等を伴う疼痛;心筋虚血を伴う疼痛;手術後疼痛;頭痛;歯痛;及び月経困難症の治療に有用である。
【0053】
本発明の化合物は、神経因性疼痛の治療に有用である。神経因性疼痛症候群は、神経損傷に続いて発生し得るものであり、引き起こされた疼痛は、最初の損傷が癒えた後も数ヶ月、数年間続く場合がある。神経損傷は、末梢神経、背根、脊髄、又は脳中の特定の領域に起こり得る。神経因性疼痛症候群は、伝統的にそれらを(25)誘発した疾患又は事象により分類される。神経因性疼痛症候群は、糖尿病性神経障害;坐骨神経痛;非特異的腰痛;多発性硬化症の疼痛;線維筋痛;HIV関連神経障害;ヘルペス後神経痛;三叉神経痛;及び身体外傷、切断、癌、毒又は慢性炎症状態に起因する痛みを含む。これらの状態は治療が困難であり、いくつかの薬剤が限定的な有効性を有することが知られてはいても、完全な疼痛の制御はほとんど達成されない。神経因性疼痛の症状は非常に多様なものからなり、しばしば、自発性の電撃及び穿刺痛、又は持続的な、灼けつくような痛みと表現される。さらに、「しびれ(ピンズ・アンド・ニードルズ)」等の、正常な非疼痛性知覚(知覚異常及び感覚異常)、(35)接触に対する感受性増加(知覚過敏)、無害な刺激に続く痛みの知覚(動的異痛症、静的異痛症、又は熱的異痛症)、有害刺激に対する感受性増大(熱性、寒冷、機械的痛覚過敏症)、刺激除去後の持続的疼痛知覚(痛覚異常過敏)、又は選択的感覚経路の欠如又は欠損(痛覚鈍麻)。
【0054】
本発明の化合物はまた、皮膚の状態(例えば、日焼け、熱傷、湿疹、皮膚炎、乾癬等);緑内障、網膜炎、網膜症、ブドウ膜炎等の眼疾患、及び眼組織に対する急性損傷(例えば、結膜炎)によるもの;肺疾患(例えば、ぜんそく、気管支炎、肺気腫、アレルギー性鼻炎、呼吸窮迫症候群、トリ愛好家病、農夫肺、CORD);胃腸系障害(例えば、アフター性潰瘍、クローン病、アトピー性胃炎、疣状胃炎、潰瘍性大腸炎、セリアック病、限局性回腸炎、過敏性腸症候群、炎症性腸症候群、胃食道逆流症);臓器移植;血管性疾患、偏頭痛、結節性動脈周囲炎、甲状腺炎、再生不良性貧血、ホジキン病、強皮症、重症筋無力症、多発性硬化症、サルコイドーシス(sorcoidosis)、ネフローゼ症候群、ベーチェット症候群、多発性筋炎、歯肉炎、心筋虚血、発熱、全身性エリテマトーデス、多発性筋炎、腱炎、滑液包炎、及びシェーグレン症候群等の、炎症性成分によるその他の状態の治療等の炎症の治療にも有用である。
【0055】
本発明の化合物はまた、自己免疫疾患、免疫不全症又は臓器移植等の免疫疾患の治療に有用である。本発明の化合物はまた、HIV感染の潜伏を増加するのに有効である。
【0056】
本発明の化合物はまた、血小板機能異常の疾患(例えば、閉塞性血管性疾患)の治療に有用である。
【0057】
本発明の化合物はまた、利尿作用を有する薬剤の調製に有用である。
【0058】
本発明の化合物はまた、インポテンツ又は勃起不全の治療に有用である。
【0059】
本発明の化合物はまた、骨粗しょう症(特に閉経後骨粗しょう症)、高カルシウム血症、副甲状腺機能亢進症、パジェット骨疾患、骨溶解、骨への転移を伴う又は伴わない悪性高カルシウム血症、関節リウマチ、歯周炎、変形性関節症、骨痛、骨減少症、癌悪液質、結石症、結石症(特に尿路結石症)、固形癌、痛風、及び強直性脊椎炎、腱炎及び滑液包炎等の異常な骨代謝又は再吸収により特徴付けられる骨疾患の治療に有用である。さらなる態様において本発明の化合物は、骨再吸収の阻害及び/又は骨生成の促進に有用であり得る。
【0060】
本発明の化合物はまた、NSAID及びCOX−2インヒビターの血流力学的な副作用を緩和するために有用である。
【0061】
本発明の化合物はまた、高血圧又は心筋の虚血;機能性又は器質性静脈不全;静脈瘤治療;痔核;及び動脈圧の顕著な低下に伴うショック状態(例えば敗血症性ショック)等の心臓血管疾患の治療に有用である。
【0062】
本発明の化合物はまた、認知症、特に変性性認知症(老年性認知症、アルツハイマー病、ピック病、ハンチントン舞踏病、パーキンソン病及びクロイツフェルト−ヤコブ病、ALS、運動ニューロン疾患を含む);血管性認知症(多発脳梗塞性認知症を含む);並びに頭蓋内占拠性病変を伴う認知症;トラウマ;感染及び関連する状態(HIV感染を含む);代謝;毒素;無酸素症及びビタミン欠乏;及び加齢に伴う軽度認識障害、特に加齢による記憶障害等の神経変性病及び神経変性の治療に有用である。式Iの化合物はまた、神経防護作用の治療、及び、脳卒中、心停止、肺バイパス、外傷性脳損傷、脊髄損傷等に次いで起こる神経変性の治療に有用である。
【0063】
本発明の化合物はまた、耳鳴りの治療に有用である。
【0064】
本発明の化合物はまた、依存症の阻止又は依存の低減、又は依存症を引き起こす薬剤に対する耐性又は逆耐性の阻止又は低減において有用である。依存症を引き起こす薬剤の例は、オピオイド(例えば、モルヒネ)、CNS抑制薬(例えば、エタノール)、精神刺激薬(例えば、コカイン)、及びニコチンを含む。
【0065】
本発明の化合物はまた、1型糖尿病の合併症(例えば、糖尿病性細小血管症、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、黄斑変性症、緑内障)、ネフローゼ症候群、再生不良性貧血、ブドウ膜炎、川崎病、及びサルコイドーシスの治療に有用である。
【0066】
本発明の化合物はまた、腎機能障害(腎炎、特にメサンギウム増殖性糸球体腎炎、腎炎症候群)、肝機能障害(肝炎、肝硬変)、胃腸機能障害(下痢)、及び結腸癌の治療に有用である。
【0067】
本発明の化合物はまた、かかる治療又は予防の必要がある対象における新生物形成の治療又は予防に有用である。用語「治療」は、新生物の増殖、拡大又は転移、の部分的又は全体的な阻害、並びに、新生細胞の部分的又は全体的な破壊を含む。用語「予防」は、リスク状態にある個体における、新生物の完全な臨床的に明確な段階の開始、又は、新生物の前臨床的に明確な段階の開始のいずれかを予防することを含む。また、この定義で包含されるのは、癌細胞への開始の予防、前癌状態の細胞が癌細胞へと進行することを阻止又は逆方向に向けることである。これには、新生物が進行するリスク状態にある対象の予防的処置を含む。治療の目的に関する用語「対象」は、公知の新生物の任意の1つを保有する任意のヒト又は哺乳動物対象を含み、好ましくはヒト対象である。予防の方法については、対象は任意のヒト又は動物対象であり、好ましくは、新生物を有するリスク状態にあるヒト対象である。対象は、発癌物質に曝すことによりリスク状態にあってもよく、遺伝子的に新生物等を有しやすくなっているなどでもよい。
【0068】
用語「新生物」は、良性及び癌性の腫瘍(tumor、growth)及びポリープの両方を含む。すなわち、本発明の化合物は、扁平上皮細胞乳頭腫、基底細胞腫瘍、移行上皮性乳頭腫、腺腫、ガストリン産生腫瘍、胆管細胞癌、肝細胞腺腫、尿細管腺腫、好酸性顆粒細胞腫、グロムス腫瘍、メラノサイト母斑、線維腫、粘液腫、脂肪腫、平滑筋腫、横紋筋腫、良性奇形腫、血管腫、骨腫、軟骨腫及び髄膜腫を含む良性腫瘍、腫瘍及びポリープの治療又は予防するために有用である。本発明の化合物はまた、扁平上皮細胞癌、基底細胞癌、移行上皮癌、腺癌、悪性ガストリン産生腫瘍、胆管細胞癌、肝細胞癌、腎細胞癌、悪性黒色腫、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、悪性奇形腫、血管肉腫、カポジ肉腫、リンパ管肉腫、骨肉腫(ostreosarcoma)、軟骨肉腫、悪性髄膜腫、非ホジキンリンパ、ホジキンリンパ腫及び白血病を含む癌性の腫瘍、腫瘍及びポリープの治療又は予防のために有用である。本明細書における目的のために、「新生物」は、脳腫瘍、骨癌、上皮細胞由来の新生物(上皮腫瘍)、基底細胞癌、腺癌、口唇癌、口腔癌、食道癌、小腸癌及び胃癌、結腸癌、直腸癌等の胃腸癌、肝臓癌、膀胱癌、膵臓癌、卵巣癌、子宮頚癌、肺癌、乳癌及び皮膚癌、扁平細胞及び基底細胞癌、前立腺癌、腎細胞癌、及び、体内の至るところに存在する上皮性細胞、間葉性細胞又は血液細胞に影響を及ぼすその他の公知の癌を含む。本発明の化合物は、上述の癌の治療又は予防のために有用である。本発明の化合物は、以下の細胞タイプ:扁平上皮、基底細胞、移行上皮、腺上皮、G細胞、胆管上皮、肝細胞、チューブリン上皮、メラノサイト、線維性結合組織、心臓骨格、脂肪組織、平滑筋、骨格筋、生殖細胞、血管、リンパ管、骨、軟骨、髄膜、リンパ球様細胞、及び造血性細胞の良性及び癌性の腫瘍、腫瘍及びポリープの治療又は予防のために有用である。本化合物を、家族性腺腫性ポリポーシス(FAP)を含む腺腫性ポリープを有する対象の治療に用いてもよい。さらに、本化合物を、FAPのリスク状態にある患者におけるポリープの形成を予防するために用いることができる。好ましくは、本発明の化合物は、以下:結腸直腸、食道胃、胸部、頭部及び頚部、皮膚、肺、肝臓、胆嚢、膵臓、膀胱、子宮内膜、子宮頚部、前立腺、甲状腺、及び脳の癌の治療又は予防のために有用である。
【0069】
そうでない形で別途明記されない限り、治療に関する言及は、確立された症候群の治療及び予防的処置の両方を含むことが理解されるべきである。
【0070】
投与量範囲
式Iの化合物の予防的又は治療的投与量の程度は、もちろん、治療されるべき状態の特性及び深刻さ、及び、用いられる式Iの化合物とその投与経路によって異なる。投与量はまた、個別の患者の年齢、体重、及び応答によって異なるものとなるだろう。通常、1日の投与量範囲は、単回又は分けて投与する場合で、哺乳動物の体重kgあたり、約0.001mgから約100mg、好ましくは、kgあたり約0.01mg〜約50mg、最も好ましくは、kgあたり0.1〜10mgである。一方、ある場合においては、これらの限度を超える投与量を用いることが必要となり得る。
【0071】
静脈注射のための組成物を用いる場合の使用については、好適な投与量範囲は、1日あたり、体重kgあたりで、式Iの化合物を約0.01mg〜約25mg(好ましくは0.1mg〜約10mg)である。
【0072】
経口組成物を用いる場合は、好適な投与量範囲は、例えば、1日あたり、体重kgあたりで、式I又はIaの化合物を約0.01mg〜約100mg、kgあたり、好ましくは約0.1mg〜約10mgである。
【0073】
舌下投与のための組成物を用いる場合の使用については、好適な投与量範囲は、1日あたり、体重kgあたりで、式Iの化合物を0.01mg〜約25mg(好ましくは0.1mg〜約5mg)である。
【0074】
医薬組成物
本発明の別の側面は、式Iの化合物及び薬学的に許容され得る担体を含んでなる医薬組成物を提供する。医薬組成物において、用語「組成物」は、活性成分及び担体を構成する不活性成分(薬学的に許容され得る賦形剤)を含む生成物、並びに、2又はそれより多くの成分の組み合わせ、錯化又は凝集から、或いは、1又はそれより多くの成分の分離から、或いは、1又はそれより多くの成分の異なるタイプの反応又は相互作用から、直接的又は間接的に生じる、任意の生成物を包含することを意図する。したがって、本発明の医薬組成物は、式Iの化合物、付加的な活性成分、及び、薬学的に許容され得る賦形剤を混合することにより作られる任意の組成物を包含する。
【0075】
任意の好適な投与経路は、哺乳動物、特にヒトに、本発明の化合物の効果的な投与量を提供するために用いられる。例えば、経口、舌下、直腸的、局所的、非経口的、眼内、経肺、経鼻等が用いられ得る。投与形態は、錠剤、トローチ剤、分散液、懸濁液、溶液、カプセル、クリーム、軟膏、エアロゾル等を含む。
【0076】
本発明の医薬組成物は、活性成分としての式Iの化合物又はその薬学的に許容され得る塩を含み、また、薬学的に許容され得る担体及び所望によりその他の治療成分を含む。用語「薬学的に許容され得る塩」は、無機塩基若しくは酸、及び有機塩基若しくは酸を含む薬学的に許容され得る非毒性の塩基又は酸から調整される塩をいう。
【0077】
任意の所定の場合において最も好適な経路は、治療されるべき状態の特性及び深刻さ、及び、活性成分の特性により決まるであろうけれども、本組成物は、経口、舌下、直腸的、局所的、非経口的(皮下、筋肉内及び静脈内を含む)、眼内(眼への)、経肺(エアロゾル吸入)又は鼻への投与に好適な組成物を含む。それらは、簡便には単位投与形態で与えられてもよく、製薬分野における任意の良く知られた方法により調製してもよい。
【0078】
吸入による投与のためには、本発明の化合物は、簡便にはエアロゾルスプレーの形態で加圧容器又はネブライザーから供給される。化合物は、処方され得る粉末として供給され、粉末組成物は、吸入粉末吸入装置の助けにより吸入してもよい。吸入のための好ましい送達系は、フルオロカーボン又は炭化水素等の好適な推進ガス中の式Iの化合物の懸濁液又は溶液として処方され得る定量噴霧式吸入器(MDI)のエアロゾル、及び、付加的な賦形剤を伴って、或いは伴わずに式Iの化合物の乾燥粉末として処方され得るドライパウダー吸入器(DPI)のエアロゾルである。
【0079】
好適な式Iの化合物の局所的な処方は、経皮的な装置、エアロゾル、クリーム、軟膏、ローション、散布剤等を含む。
【0080】
実践的な用途において、式Iの化合物は、従来の医薬配合技術に従って活性成分と医薬的担体とを密に混合させることで組み合わせてもよい。担体は、例えば、経口又は非経口(静脈的なものを含む)等の、投与に関し所望される調製物の形態に応じて多様な形態をとってもよい。経口的な投与形態のための組成物調製においては、例えば、懸濁液、エリキシル剤、及び溶液等の経口液体調製物の場合には、例えば、水、グリコール、オイル、アルコール、香料、保存料、着色剤等の任意の通常的な医薬的な媒体を用いることができ;又は、液体調製物よりも固体の経口調製物が好まれるため、例えば、粉末、カプセル、及び錠剤等の経口的固体調製物の場合には、デンプン、糖類、微結晶セルロース、希釈剤、顆粒化剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤等の担体を用いることができる。それらの投与のしやすさにより、錠剤及びカプセルは最も都合のよい経口投与単位の形態であり、そこでは固体の医薬担体が明確に用いられる。所望により、錠剤は、標準的な水系又は非水系の技術によってコーティングしてもよい。
【0081】
上述の通常的な投与形態に加えて、式Iの化合物は、米国特許第3,845,770号;同第3,916,899号;同第3,536,809号;同第3,598,123号;同第3,630,200号、及び同第4,008,719号に記載されるような放出制御手段及び/又は送達デバイスにより投与してもよい。
【0082】
経口投与に好適な本発明の医薬組成物は、粉末若しくは顆粒として、又は水性溶液、非水性溶液、水中油エマルジョン若しくは油中水エマルジョン中の溶液若しくは懸濁液として予め所定量の活性成分を含むカプセル、カシェ剤又は錠剤等の別々の単位として提供され得る。かかる組成物は、製薬学における任意の方法を用いて調製し得るが、全ての方法は、活性成分と1又はそれ以上の成分を構成する担体とを合わせる工程を含む。通常、組成物は、活性成分を液体担体又は微粉化した固体担体又はその両方と均一かつ密に混合し、次いで、必要であれば、生成物を所望の体裁に整えることにより調製される。例えば、錠剤は、所望により1又はそれより多い副成分を伴う圧縮又は成型により調製される。圧縮された錠剤は、好適な装置中で圧縮することにより調製してもよく、活性成分は、粉末又は顆粒等の流動性の高い形態で、所望により結合剤、滑沢剤、不活性希釈剤、界面活性剤、又は分散剤と混合される。成型された錠剤は、不活性な液状の希釈剤を用いて湿らせた粉末化された化合物の混合物を、好適な装置中で成型することにより調製され得る。所望により、各錠剤は約1mg〜約500mgの活性成分を含み、各カシェ剤又はカプセルは約1〜約500mgの活性成分を含む。
【0083】
併用療法
式Iの化合物は、式Iの化合物が有用である疾患又は状態の治療/予防/抑制又は緩和に用いられる別の薬剤と組み合わせて使用してもよい。かかるその他の薬剤は、通常そのために用いられる経路及び量で、式Iの化合物と同時期に、又は順次投与してもよい。式Iの化合物が1又はそれより多いその他の薬剤と共に同時期に用いられる場合、かかるその他の薬剤を式Iの化合物に加えて含む医薬組成物が好ましい。したがって、本発明の医薬組成物には、式Iの化合物に加えて、1又はそれより多いその他の活性成分とも含むものを含む。別々に投与するか、又は同じ医薬組成物中のいずれかで式Iの化合物と併せてもよいその他の活性成分の例は、限定されるものではないが:セレコキシブ、ロフェコキシブ、エトリコキシブ、バルデコキシブ、又はパレコキシブ等のCOX−2阻害剤;5−リポシキゲナーゼ阻害剤;ジクロフェナク、インドメタシン、ナブメトン、又はイブプロフェン等のNSAID;ロイコトリエン受容体アンタゴニスト;メトトレキサート等のDMARD;アデノシンA1受容体アゴニスト;ラモトリジン等のナトリウムチャンネルブロッカー;グリシン受容体アンタゴニスト等のNMDA受容体モジュレーター;ガバペンチン及び関連化合物;アミトリプチリン等の三環系抗うつ薬;ニューロン安定化抗てんかん薬;ベンラファキシン等のモノアミン作動性取込み阻害剤;オピオイド鎮痛薬;局所麻酔薬;例えばスマトリプタン、ナラトリプタン、ゾルミトリプタン、エレトリプタン、フロバトリプタン、アルモトリプタン若しくはリザトリプタン等のトリプタン類等の5HTアゴニスト;EP1受容体リガンド;EP2受容体リガンド;EP3受容体リガンド;EP1アンタゴニスト;EP2アンタゴニスト;及びEP3アンタゴニストを含む。化合物をその他の治療剤と組み合わせて用いる場合には、化合物を任意の好都合な経路により、順次又は同時に投与してもよい。
【0084】
本発明はすなわち、さらなる側面において、さらなる治療剤又は薬剤とあわせた式Iの化合物又は薬学的に許容され得るそれらの誘導体を含む組み合わせを提供する。
【0085】
上記に関する組み合わせは、簡便には、医薬的処方物の形態で用いるために提供され、すなわち、薬学的に許容され得る担体又は賦形剤を伴う、上記に定義されるような組み合わせを含む医薬的処方物は、本発明のさらなる側面を構成する。かかる組み合わせにおける個々の成分は、別々の、又はあわせた医薬的処方物として、順次又は同時に投与してもよい。
【0086】
第2の活性成分に対する式Iの化合物の重量比は、各成分の効果的な投与量に依存して変化し得る。通常、効果的な投与量が用いられるであろう。すなわち、例えば、式Iの化合物をNSAIDと組み合わせる場合、NSAIDに対する式Iの化合物の重量比は、約1000:1〜約1:1000、好ましくは約200:1〜約1:200である。式Iの化合物及びその他の活性成分との組み合わせも、通常は上述の範囲内であるが、場合によっては、各活性成分の効果的な投与量を使用する必要がある。
【0087】
生物学的活性を測定するためのアッセイ
式Iの化合物を、それらのin vitro及びin vivoのプロスタノイドアンタゴニスト又はアゴニスト活性及びそれらの選択性を調べるために、以下のアッセイを用いて試験してもよい。試験されるプロスタグランジン受容体活性は、DP、EP、EP、EP、EP、FP、IP、及びTPである。
【0088】
ヒト胚腎臓(HEK)293(ebna)細胞株中のプロスタノイド受容体の安定的な発現
全長コード配列に相当するプロスタノイド受容体cDNAsは、哺乳動物の発現ベクター中の適切な部位へとサブクローンされ、HEK293(ebna)細胞へとトランスフェクトされる。個別のcDNAsを発現するHEK293(ebna)細胞を選択下に増殖させ、クローニングリング法を用いて、2〜3週間後に個別のコロニーが単離され、次いで、クローン細胞株へと拡大する。
【0089】
プロスタノイド受容体結合アッセイ
受容体結合アッセイに用いるために、トランスフェクトしたHEK293(ebna)細胞を培地中で維持し、回収して、プロテアーゼインヒビター存在下で細胞を溶菌後、分画遠心により膜を調整した。プロスタノイド受容体結合アッセイ(DP1、DP2(CRTH2)、EP1、EP2、EP3−III、EP4、FP、IP、及びTP)は、1mM EDTA、2.5−30mMの二価陽イオン及び適当な放射性リガンドを含む10mM MES/KOH(pH6.0)(EP、FP及びTP)又は10mM HEPES/KOH(pH7.4)(DP及びIP)中で行う。合成化合物を、ジメチルスルホキシド中に添加し、インキュベーションの間中、1%(v/v)に一定に保った。反応は膜たんぱく質の添加により開始する。10μMの相当する非放射性のプロスタノイドの存在下で、非特異的な結合を調べる。インキュベーションは、室温又は30℃にて60〜120分間行い、迅速な濾過により終了される。合計の結合から非特異的な結合を差し引くことにより、特異的な結合を計算する。各リガンド濃度における残りの特異的結合を計算し、S字状の濃度−応答曲線を作成するためのリガンド濃度の関数として表す。化合物の結合親和性を、式Ki=InPt/1+[radioligand]/Kd(ここでKdは放射性リガンドに対する平衡解離定数であり:受容体相互作用及びInPtは、量応答性曲線の変曲点である。)から平衡阻害定数(Ki)を計算することによって求める。
【0090】
EP4受容体に関する上述の結合アッセイにおいて、実施例1〜6の化合物は、500nM未満のIC50を示した。
【0091】
プロスタノイド受容体アゴニスト及びアンタゴニストアッセイ
受容体リガンドがアゴニスト又はアンタゴニストのいずれであるかを調べるために、HEK−293(ebna)−hEP4細胞中の細胞内cAMPの蓄積の刺激を測定する全細胞セカンドメッセンジャーアッセイを行う。細胞を回収し、25mM HEPES,pH7.4を含むHBSS中に再懸濁する。インキュベーション溶液には、0.5mMのIBMX(ホスホジエステラーゼインヒビター、Biomolより入手可能)を含む。サンプルを、37℃にて10分間インキュベートする。反応を終了させ、次いでcAMPレベルを測定する。リガンドをジメチルスルホキシド中に添加し、インキュベーションの間中、1%(v/v;アゴニスト)又は2%(v/v;アンタゴニスト)に一定に保った。アゴニストについて、セカンドメッセンジャー応答は、リガンド濃度の関数として表し、EC50値及びPGE2標準と比較した最大応答を計算した。アンタゴニストについては、アゴニスト応答を阻害するリガンドの能力を、そのEC70に相当する濃度でのPGE2アゴニスト存在下での投与量応答曲線を作成することにより調べる。IC50値は、PGE2により引き起こされる活性の50%を阻害するのに必要とされるリガンドの濃度として計算される。
【0092】
EP4受容体アンタゴニストアッセイにおいて、実施例1〜6の化合物は、500nM以下のEC50を示した。
【0093】
ラット足浮腫アッセイ
方法は、Chanら(J.Pharmacol.Exp.Ther.274:1531−1537,1995)により記載されたものと同様である。
【0094】
ラットにおいてカラギーナンにより引き起こされる急性炎症性痛覚過敏症
方法は、Boyceら(Neuropharmacology 33:1609−1611,1994)により記載されたものと同様である。
【0095】
ラットにおけるアジュバント誘導性関節炎
メスLewisラット(体重146〜170gまで)を計量し、耳に標識し、各群内での体重が均等になるように群(関節炎が引き起こされない陰性対照群、ビヒクル対照群、インドメタシンを1日あたり総量1mg/kg投与した陽性対照群及び試験化合物を1日あたり総量0.001〜10.0mg/kg投与した4つの群)に分ける。6つの群の10匹ずつのラットの後足に、0.1mLの軽油(アジュバント)中に0.5mgのMycobacterium butyricumを含ませて注射し、陰性対照の10匹のラットにはアジュバントを注射しなかった。体重、反対側の肢の体積(水銀置換プレチスモグラフィーにより調べる)、及びX線写真側面像(ケタミン及びキシラジン麻酔により得る)を、アジュバント注射前(−1日目)及び注射後17日から21日目に調べ、第一の足の体積を、アジュバント注射前(−1日目)及び注射後4日及び17日から21日目に調べる。ラットは、X線写真及びアジュバントの注射のために、0.03〜0.1mLのケタミン(87mg/kg)及びキシラジン(13mg/kg)の組み合わせを筋肉内注射することにより、麻酔する。X線写真は、両後足のものを、Faxitron(45kVp、30秒)及びKodak X−OMAT TLフィルムを用いて、0日目及び17〜21日目に撮影し、自動現像機で現像する。X線写真を、実験上の処置を知らされていない観察者による柔軟組織及び硬組織における変化により評価する。以下のX線写真上の変化を、重篤性に従って数値的に段階付けする:柔軟組織体積の増加(0−4)、関節スペースの縮小又は拡大(0−5)、軟骨の減少(0−3)、骨膜反応(0−4)、骨溶解(0−4)、不全脱臼(0−3)、及び変形性関節変形(0−3)。各X線写真上の変化に関する重篤性の数値段階を確立するために、具体的な基準を確立する。足あたりの最大となり得るスコアは26であった。合計一日用量0.1、0.3、1、及び3mg/kg/日の試験化合物、合計一日用量1mg/kg/日のインドメタシン、又はビヒクル(0.5%methocel、滅菌水中)を、アジュバントの注射後から17日から21日間継続して、1日2回、経口投与する。化合物は毎週調製し、使用まで暗所で冷蔵し、投与直前ボルテックスで混合する。
【0096】
合成方法
【0097】
【化8】

【0098】
【化9】

【0099】
【化10】

【0100】
【化11】

【実施例】
【0101】
実施例1
カリウム=4−[1−({[1−(3,4−ジクロロベンジル)−2,3−ジヒドロ−1H−インドール−7−イル]カルボニル}アミノ)シクロプロピル]ベンゾアート
【0102】
【化12】

【0103】
工程1:1−(tert−ブトキシカルボニル)インドリン−7−カルボン酸
【0104】
【化13】

【0105】
tert−ブチル=インドリン−1−カルボキシラート(25g、114mmol)及びTMEDA(22.9ml、151mmol)を567mlのエーテルに添加した。溶液を−78℃に冷却し、c−ヘキサン中のs−BuLi(1.2当量、1.4M)を滴下添加した。混合物をこの温度で1時間撹拌した。COガスをこの混合物中に5分間吹き込み、浴を取り除いた。10分間の撹拌後、混合物を1NのHClにて反応停止し、RTへと温め、EtOAcを用いて3回抽出した。あわせた有機層を飽和食塩水にて洗浄し、MgSOで乾燥させた。溶媒を除去し、固体を1:1エーテル/ヘキサンを用いて粉砕した。H NMR(500MHz,DMSO−d6):δ12.5(bs,1H),7.35(m,2H),7.05(t,1H),4.00(t,2H),3.00(t,2H),1.45(s,9H)
【0106】
工程2:メチル=4−(1−アミノシクロプロピル)ベンゾアート
【0107】
【化14】

【0108】
メチル=4−シアノベンゾアート(2.6kg、16.1mol)を、トルエン40L中に−25℃にて溶解し、Ti(Oi−Pr)(4.73L、16.1mol)を5分間にわたり添加し、次いでEtMgBr(10.5Lの3.07MのTHF溶液、32.3mol)を2時間にわたり添加した。30分間おいた後に、BF.OEt(4.1L、32mol)を40分間にわたり添加し、混合物をさらに40分間おいた。40Lの3N HClを添加することにより、反応を停止した。層を分離し、水層をトルエン13Lにて洗浄した。水層を次いで、2−MeTHF(2×26L、及び2×13L)にて抽出した。あわせた2−MeTHF層を3NのNaOHにて洗浄し、層分離に先立ち、NaOH層のpHを9へと調整した。有機層を13Lの飽和食塩水にて洗浄した。収率=43%。H NMR(500MHz,CDCl):δ8.00(d,2H),7.35(d,2H),3.95(s,3H),1.25(t,2H),1.10(t,2H).
【0109】
工程3:メチル=4−{1−[(2,3−ジヒドロ−1H−インドール−7−イルカルボニル)アミノ]シクロプロピル}ベンゾアート
【0110】
【化15】

【0111】
1−(tert−ブトキシカルボニル)インドリン−7−カルボン酸(300mg、1.14mmol)、HATU(475mg、21.2mmol)、及びメチル=4−(1−アミノシクロプロピル)ベンゾアート(262mg、1.37mmol)をアセトニトリル(7.6ml)へと添加した。溶液を氷浴中で冷却し、DIPEA(695μl、3.99mmol)を添加した。RTにて2時間後、混合物をNaHCO(1/2飽和)溶液へと注ぎ、EtOAcにて3回洗浄した。あわせた有機層を飽和食塩水で洗浄し、NaSOにて乾燥させた。溶媒を除去し、シリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィーにより、粗混合物を精製した。標準的な手順で1:1TFA/DCMを用い、Boc基を除去した。
【0112】
工程4:メチル=4−[1−({[1−(3,4−ジクロロベンジル)−2,3−ジヒドロ−1H−インドール−7−イル]カルボニル}アミノ)シクロプロピル]ベンゾアート
【0113】
【化16】

【0114】
メチル=4−{1−[(2,3−ジヒドロ−1H−インドール−7−イルカルボニル)アミノ]シクロプロピル}ベンゾアート(110mg、0.327mmol)をアセトニトリル(1.3ml)中に溶解した。3,4−ジクロロベンジルクロリド(136μl、0.981mmol)、DIPEA(171μl、0.981mmol)、及びTBAIの結晶を添加した。混合物を70℃にて2時間撹拌した。溶媒を除去した。シリカゲル上で精製を行った。
【0115】
工程5:カリウム=4−[1−({[1−(3,4−ジクロロベンジル)−2,3−ジヒドロ−1H−インドール−7−イル]カルボニル}アミノ)シクロプロピル]ベンゾアート
【0116】
【化17】

【0117】
メチル=4−[1−({[1−(3,4−ジクロロベンジル)−2,3−ジヒドロ−1H−インドール−7−イル]カルボニル}アミノ)シクロプロピル]ベンゾアート(57mg、0.12mmol)をEtOH(0.54ml)中に溶解した。2M KOH(0.075ml、0.13mmol)を添加し、混合物を80℃にて2時間撹拌した。混合物を冷却し、溶媒を除去した。H NMR(500MHz,DMSO−d6):δ9.05(s,1H),7.65(d,2H),7.55(m,2H),7.25(d,1H),7.15(t,2H),7.00(d,2H),6.65(t,1H),4.30(s,2H),3.25(2H),2.95(t,2H),1.10(2H),0.95(m,2H).MS+ESI(480.8)
実施例2
1−(3,4−ジクロロベンジル)−N−{1−[4−(1H−テトラゾール−5−イル)フェニル]シクロプロピル}インドリン−7−カルボキサミド
【0118】
【化18】

【0119】
工程1:4−(1−アミノシクロプロピル)ベンゾニトリル
【0120】
【化19】

【0121】
テレフタロニトリル(500mg、390mmol)をDCM10ml中に溶解した。Ti(OiPr)(1.1ml、3.9mmol)、次いでTHF中の3Mのエチルマグネシウムブロミド溶液(2.3ml、7.0mmol)を、この溶液に添加した。混合物を45分間RTにおき、BF.EtO(890μl、7.0mmol)を添加した。混合物を次いでさらに2時間RTにおいた。NHCl及び3N HClにより、反応を停止した。層を分離し、水層をエーテルにて洗浄した。水層を次いで10N NaOH(pH9−10)を用いて塩基性化した。EtOAcを添加し、二相性の混合物を濾過した。層を分離し、水層をEtOAcで抽出した。あわせた有機層をMgSOで乾燥し、濾過して濃縮した。収率=15%。
【0122】
工程2:N−[1−(4−シアノフェニル)シクロプロピル]インドリン−7−カルボキサミド
【0123】
【化20】

【0124】
実施例1の工程3記載のものと同様の手順。
【0125】
工程3:N−[1−(4−シアノフェニル)シクロプロピル]−1−(3,4−ジクロロベンジル)インドリン−7−カルボキサミド
【0126】
【化21】

【0127】
実施例1の工程4記載のものと同様の手順。H NMR(500MHz,DMSO−d6):δ9.20(s,1H),7.65(d,2H),7.55(m,2H),7.25(m,3H),7.15(m,2H),6.70(t,1H),4.25(s,2H),.3.30(t,2H),3.00(t,2H),1.25(m,2H),1.05(m,2H)
【0128】
工程4:1−(3,4−ジクロロベンジル)−N−{1−[4−(1H−テトラゾール−5−イル)フェニル]シクロプロピル}インドリン−7−カルボキサミド
【0129】
【化22】

【0130】
N−[1−(4−シアノフェニル)シクロプロピル]−1−(3,4−ジクロロベンジル)インドリン−7−カルボキサミド(125mg、0.27mmol)及アジドトリブチルスズ(222μl、0.81mmol)を、トルエン1ml中で一晩還流した。酢酸350μlを添加し、得られた固体を濾過してトルエンにて洗浄した。H NMR(500MHz,DMSO−d6):δ9.20(s,1H),7.90(d,2H),7.50(m,2H),7.35(d,2H),7.25(d,1H),7.15(m,2H),6.70(t,1H),4.25(s,2H),3.25(2H),2.95(t,2H),1.20(2H),1.05(m,2H).MS−ESI(503.0)
実施例3
4−{1−[({1−[4−(トリフルオロメチル)ベンジル]−1H−インドール−7−イル}カルボニル)アミノ]シクロプロピル}安息香酸
【0131】
【化23】

【0132】
工程1:メチル=1−[4−(トリフルオロメチル)ベンジル]−1H−インドール−7−カルボキシラート
【0133】
【化24】

【0134】
メチル=1H−インドール−7−カルボキシラート(47.8g、273mmol)及び1−(ブロモメチル)−4−(トリフルオロメチル)ベンゼン(81g、341mmol)を、DMF(1.3L)中に0℃にて溶解した。60%(w/w)のNaH(12g、300mmol)を徐々に添加した。氷浴を除去し、混合物を0℃にて3時間、次いで一晩、RTにて撹拌した。反応混合物を3LのNHCl(飽和)にて反応停止し、水層をエーテル1Lにて3回抽出した。有機層をあわせ、水及び飽和食塩水にて洗浄した、シリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィーにより化合物を精製した。H NMR(500MHz,DMSO−d6):δ8.90(d,1H),7.70(s,1H),7.60(d,2H),7.40(d,1H),7.10(t,1H),7.00(d,2H),6.70(d,1H),5.70(s,2H)
【0135】
工程2:1−[4−(トリフルオロメチル)ベンジル]−1H−インドール−7−カルボン酸
【0136】
【化25】

【0137】
メチル=1−[4−(トリフルオロメチル)ベンジル]−1H−インドール−7−カルボキシラート(11.7g、35.1mmol)を、1:1THF/MeOH350ml、及び2N KOH175ml(10当量、351mmol)中に溶解した。混合物をRTにて18時間撹拌した。次いで、溶媒を減圧下で蒸発させた。2N HClを添加し(pH=3)、水層をDCMにて3回抽出した。あわせた有機層を水及び飽和食塩水にて洗浄し、MgSOにて乾燥させて、濾過し、次いで減圧下で濃縮した。H NMR(500MHz,DMSO−d6):δ12.85(bs,1H),7.80(d,1H),7.60(m,3H),7.50(m,1H),7.10(t,1H),7.00(d,2H),6.70(d,1H),5.80(s,2H)
【0138】
工程3:メチル=4−{1−[({1−[4−(トリフルオロメチル)ベンジル]−1H−インドール−7−イル}カルボニル)アミノ]シクロプロピル}ベンゾアート
【0139】
【化26】

【0140】
メチル=1−[4−(トリフルオロメチル)ベンジル]−1H−インドール−7−カルボキシラート(30.8g、97mmol)、HATU(38.6g、101mmol)、及びメチル=4−(1−アミノシクロプロピル)ベンゾアート(24.9g、130mmol)をDMF(483ml)へと添加した。溶液を氷浴中で冷却し、DIPEA(50.6ml、290mmol)を添加した。混合物を一晩RTにおき、EtOAc500mlを添加した。混合物を次いで、2LのNaHCO(1/2飽和)へと注いだ。層を分離し、水層をDCMにて2回以上洗浄した。あわせた有機層を飽和食塩水で洗浄し、NaSOにて乾燥させた。溶媒を除去し、粗混合物をシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。H NMR(500MHz,DMSO−d6):δ9.18(s,1H),7.75(m,3H),7.60(d,2H),7.45(d,1H),7.40(d,1H),7.20(d,2H),7.15(t,1H),6.90(d,2H),6.65(d,1H),5.70(s,2H),3.85(s,3H),1.20(m,2H),0.95(m,2H)
【0141】
工程4:4−{1−[({1−[4−(トリフルオロメチル)ベンジル]−1H−インドール−7−イル}カルボニル)アミノ]シクロプロピル}安息香酸
【0142】
【化27】

【0143】
メチル=4−{1−[({1−[4−(トリフルオロメチル)ベンジル]−1H−インドール−7−イル}カルボニル)アミノ]シクロプロピル}ベンゾアート(27g、55mmol)を、THF549ml、メタノール549ml、及び2MのKOH溶液249ml中に溶解した。混合物を50℃で2時間加熱した。RTにさました後、水200mlを添加し、有機溶媒を除去した。3NのHClを用いて溶液をpH1〜1.5に酸性化し、得られた固体を濾過して水で洗浄した。H NMR(500MHz,DMSO−d6):δ12.80(bs,1H),9.15(s,1H),7.80(d,3H),7.60(d,2H),7.50(d,1H),7.40(d,1H),7.25−7.11(m,3H),6.90(d,2H),6.65(d,1H),5.70(s,2H),1.15(m,2H),0.90(m,2H).MS−ESI(477.4)
【0144】
実施例3はまた、ジエチルアミン、ナトリウム、カリウム、及びL−リジン塩として合成した。実施例3のジエチルアミン塩を製造するための手順を以下の実施例3Aに概説する。別の塩類も、当業者により容易に製造し得る。
実施例3A
N−エチルエタンアミニウム=4−{1−[({1−[4−(トリフルオロメチル)ベンジル]−1H−インドール−7−イル}カルボニル)アミノ]シクロプロピル}ベンゾアート
【0145】
【化28】

【0146】
4−{1−[({1−[4−(トリフルオロメチル)ベンジル]−1H−インドール−7−イル}カルボニル)アミノ]シクロプロピル}安息香酸(13g、27.2mmol)をエタノール146ml中に溶解した。ジエチルアミン(3.4ml、33mmol)を添加し、混合物を30分間撹拌した(観察される沈殿の形成)。メチルtert−ブチルエーテル260mlを添加し、及び混合物を1時間おいた。濾過により固体を回収し、メチルtert−ブチルエーテルにて洗浄し、85℃にて24時間、真空下で乾燥させた。H NMRδアセトン−d6:8.30(1H,s),7.90(2H,d),7.80(1H,d),7.55(2H,d),7.45−7.35(4H,m),7.15(1H,d),7.00(2H,d),6.70(1H,d),5.80(2H,s),2.60(4H,q),1.25−1.20(2H,m),1.10−1.05(8H,m)
実施例4
カリウム=4−{1−[({5−フルオロ−1−[4−(トリフルオロメチル)ベンジル]−1H−インドール−7−イル}カルボニル)アミノ]シクロプロピル}ベンゾアート
【0147】
【化29】

【0148】
工程1:7−ブロモ−5−フルオロ−1H−インドール
【0149】
【化30】

【0150】
2−ブロモ−4−フルオロ−1−ニトロベンゼン(3.5g、15.9mmol)を窒素下で無水THF(160ml)中に溶解した。反応液を−45℃まで冷却し、ビニルマグネシウムブロミド(3当量、1M)を添加し、混合物を30分間、この温度で撹拌した。NHCl(飽和)及び1NのHClにて反応を停止した。水層を次いでエーテルにて3回抽出した。あわせた有機層を水及び飽和食塩水で洗浄し、MgSOで乾燥させ、濾過して、次いで減圧下で濃縮した。シリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィーにより、生成物を精製した。H NMR(500MHz,DMSO−d6):δ11.45(bs,1H),7.50(t,1H),7.40(dd,1H),7.25(dd,1H),6.50(dd,1H)
【0151】
工程2:7−ブロモ−5−フルオロ−1−[4−(トリフルオロメチル)ベンジル]−1H−インドール
【0152】
【化31】

【0153】
7−ブロモ−5−フルオロ−1H−インドール(900mg、4.20mmol)及び1−(ブロモメチル)−4−(トリフルオロメチル)ベンゼン(1.6g、6.7mmol)をDMF(20mL)中に溶解した。この混合物を−10℃に冷却し、NaH(185mg、4.6mmol)を5分間にわたり徐々に添加した。混合物を1時間この温度にて撹拌した。NHCl(1/2飽和)及び1NのHClにて反応停止した。混合物を水希釈し、水層をエーテルにて3回抽出した。あわせた有機層を水3回、飽和食塩水1回で洗浄し、MgSOで乾燥させた。シリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィーにより、生成物を精製した。H NMR(500MHz,DMSO−d6):δ7.70(m,3H),7.45(dd,1H),7.25(dd,1H),7.10(d,2H),6.65(d,1H),5.90(s,2H)
【0154】
工程3:5−フルオロ−1−[4−(トリフルオロメチル)ベンジル]−1H−インドール−7−カルボン酸
【0155】
【化32】

【0156】
7−ブロモ−5−フルオロ−1−[4−(トリフルオロメチル)ベンジル]−1H−インドール(1.3g、3.5mmol)をTHF(18mL)中に溶解し、この溶液を脱気し、次いで窒素下で−100℃に冷却した。n−BuLi(1.15当量、2.5M)を滴下添加し、反応液を5分間この温度にて撹拌した。COガスをこの混合物中に5分間吹き込み、浴を取り除いた。10分間の撹拌後、混合物を1NのHClにて反応停止し、RTへと温め、EtOAcを用いて3回抽出した。あわせた有機層を水及び飽和食塩水にて洗浄し、MgSOで乾燥させ、濾過して減圧下で濃縮した。シリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィーにより、生成物を精製した。H NMR(500MHz,DMSO−d6):δ13.2(bs,1H),7.73(d,1H),7.65(m,3H),7.30(dd,1H),7.00(d,2H),6.70(d,1H),5.75(m,2H)
【0157】
工程4:メチル=4−{1−[({5−フルオロ−1−[4−(トリフルオロメチル)ベンジル]−1H−インドール−7−イル}カルボニル)アミノ]シクロプロピル}ベンゾアート
【0158】
【化33】

【0159】
5−フルオロ−1−[4−(トリフルオロメチル)ベンジル]−1H−インドール−7−カルボン酸(218mg、0.65mmol)、HATU(283mg、0.74mmol)、及び1−[4−(メトキシカルボニル)フェニル]シクロプロパンアミニウムメタン=スルホナート(374mg、1.3mmol)をDMF(4ml)に溶解し、次いでヒューニッヒ塩基(0.34ml、2.0mmol)を添加した。反応混合物をRTで一晩おいた。混合物を、EtOAc及びNaHCO(1/2飽和)とともに分液漏斗に移した。有機層を食塩水(1/2飽和)で4回洗浄し、MgSOで乾燥させ、濾過して減圧下で溶媒を蒸発させた。シリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィーにより、生成物を精製した。H NMR(500MHz,DMSO−d6):δ9.25(s,1H),7.75(d,2H),7.55(m,4H),7.20(m,3H),6.90(d,2H),6.65(d,1H),5.65(s,2H),3.85(d,3H),1.20(m,2H),0.95(m,2H)
【0160】
工程5:カリウム=4−{1−[({5−フルオロ−1−[4−(トリフルオロメチル)ベンジル]−1H−インドール−7−イル}カルボニル)アミノ]シクロプロピル}ベンゾアート
【0161】
【化34】

【0162】
メチル=4−{1−[({5−フルオロ−1−[4−(トリフルオロメチル)ベンジル]−1H−インドール−7−イル}カルボニル)アミノ]シクロプロピル}ベンゾアート(67mg、0.13mmol)を、1mlのTHF/MeOH(1:1)及び0.5mlの2N KOH中に溶解した。次いで、反応混合物を18h、室温にて撹拌した。混合物を冷却し、溶媒を減圧下で蒸発させた。2NのHClを加え(pH=3まで)、水層をDCMにて3回抽出した。合わせた有機層を水及び飽和食塩水を用いて洗浄し、次いでMgSOで乾燥させ、濾過して減圧下で濃縮した。残渣をメタノール1ml中に溶解し、1当量のKOH(0.065mlの2N KOH)を添加し、メタノールを次いで減圧下で蒸発させた。得られた固体を水に可溶化し、溶液を凍結乾燥した。H NMR(500MHz,DMSO−d6):δ9.15(s,1H),7.70(d,2H),7.55(m,4H),7.15(m,1H),7.05(d,2H),6.90(d,2H),6.65(d,1H),5.65(s,2H),1.70(s,2H),1.05(s,2H),0.80(s,2H)
【0163】
【化35】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】

[式中、
【化2】

は、二重結合であってもよく;
Xは、−COOH又はテトラゾリルであり;
及びRは、独立して、ハロ、C1−4アルキル、C1−4フルオロアルキル、C1−4アルコキシ、C1−4フルオロアルコキシ、及びアセチルからなる群より選択される]
で示される化合物、又はその薬学的に許容され得る塩。
【請求項2】
式Ia:
【化3】

[式中、置換基R及びRは、上記の通り定義される]
で示される請求項1に記載の化合物又はその薬学的に許容され得る塩。
【請求項3】
式Ib:
【化4】

[式中、置換基R及びRは、上記の通り定義される]
で示される請求項2に記載の化合物又はその薬学的に許容され得る塩。
【請求項4】
式Ic:
【化5】

[式中、置換基R及びRは、上記の通り定義される]
で示される請求項3に記載の化合物又はその薬学的に許容され得る塩。
【請求項5】
以下:
【化6】

から選択される請求項1に記載の化合物、又は上記化合物のいずれかの薬学的に許容され得る塩。
【請求項6】
請求項5に記載の化合物のジエチルアミン、ナトリウム、カリウム、又はL−リジン塩。
【請求項7】
1種又はそれ以上の生理学的に許容され得る担体又は賦形剤と混合した、請求項1に記載の化合物を含む医薬組成物。
【請求項8】
ヒト又は動物医薬において使用するための、請求項1に記載の化合物又は薬学的に許容され得るその誘導体。
【請求項9】
EP4受容体におけるPGE2の作用により媒介される症状を罹患するヒト又は動物対象を治療する方法であって、有効量の請求項1に記載の化合物を該対象に投与することを含む方法。
【請求項10】
EP4受容体におけるPGE2の作用により媒介される症状を治療するための治療薬製造のための、請求項1に記載の化合物の使用。
【請求項11】
急性又は慢性疼痛、偏頭痛、変形性関節症、関節リウマチ、若年性関節リウマチ、痛風、滑液包炎、強直性脊椎炎、原発性月経困難症、癌、又はアテローム性動脈硬化症を、治療を必要とする患者において治療するための方法であって、治療上有効な量の請求項1に記載の化合物又はその薬学的に許容され得る塩を該患者に投与することを含む方法。

【公表番号】特表2010−519260(P2010−519260A)
【公表日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−550652(P2009−550652)
【出願日】平成20年2月22日(2008.2.22)
【国際出願番号】PCT/CA2008/000351
【国際公開番号】WO2008/104055
【国際公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【出願人】(305042057)メルク フロスト カナダ リミテツド (99)
【Fターム(参考)】