説明

H型鉄骨用スプライスプレート取り付け治具

【課題】スプライスプレートを安定した状態で支持することにより、作業能率を大幅に向上させる。
【解決手段】スプライスプレート400をその幅方向で支持するスプライスプレート支持棒110,120と、スプライスプレート支持棒110,120の後端側を連結する連結部材130の中央部に立設されている垂直立設部151及び垂直立設部151に固定されてスプライスプレート支持棒110,120と同方向に突出する水平突出部152を有する支柱部材150と、先端部側のネジ部が水平突出部152の雌ネジ部に螺合する軸ボルト140と、軸ボルト通し孔を有する軸ボルト支持部161及び添プレート311のボルト孔に挿入可能なボルト孔挿入ピン162を有するピン金具160とを有し、軸ボルト140を時計又は反時計方向に回転させることにより、支柱部材150が上下動し、それによってスプライスプレート支持棒110,120が上下動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、H型鉄骨のフランジにスプライスプレートの取り付けを行う際に好適なH型鉄骨用スプライスプレート取り付け治具及びこれを用いたH型鉄骨用スプライスプレートの取り付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のH型鉄骨の端部同士を接続することで一本の長尺のH型鉄骨とすることができる。例えば、2つのH型鉄骨の端部同士を接続する場合、接続対象となる2つのH型鉄骨のフランジを添プレートとスプライスプレートとによって挟み込んでボルト締めする。このように、複数のH型鉄骨を接続する作業は、建設現場において行われるが、鉄工所などの工場においては、一方のH型鉄骨のフランジに添プレートとスプライスプレートとを取り付けた状態(仮止めの状態)で建設現場に搬入し、建設現場で上記したようにH型鉄骨同士を接続することが一般的に行われている。
【0003】
なお、スプライスプレートはフランジだけでなくH型鉄骨のウエブと呼ばれている部分にも取り付けられるが、ここでは、フランジにスプライスプレートを取り付ける場合のみについて説明する。
【0004】
図7は、H型鉄骨のフランジに添プレートとスプライスプレートとを取り付けた状態を示す図である。なお、この明細書においては、H型鉄骨を図7に示すように置いたとき、すなわち、H型鉄骨10のフランジが上側及び下側に位置するように置いたときに、上側に位置するフランジを「上フランジ」と呼び、下側に位置するフランジを「下フランジ」と呼ぶことにする。
【0005】
図7に示すよう置かれたH型鉄骨10の上フランジ11にスプライスプレート14を取り付ける際は、上フランジ11の上面側にスプライスプレート14を載せたのち、上フランジ11の下面側に一方の添プレート13aを添えてボルト15a及びナット15bによって数箇所を仮止めし、続いて、上フランジ11の下面側にもう一方の添プレート13bを添えてボルト15a及びナット15bによって数箇所を仮止めする。
【0006】
一方、下フランジ12にスプライスプレート17を取り付ける際は、下フランジ12の上面側に一方の添プレート16aを載せたのち、下フランジ12の下面側にスプライスプレート17を添えた状態でボルト18a及びナット18bによって数箇所を仮止めし、続いて、下フランジ12の上面側に他方の添プレート16bを載せて、ボルト18a(図示せず。)及びナット18b(図示せず。)によって数箇所を仮止めする。
【0007】
なお、スプライスプレートは、H型鉄骨そのものの規模にもよるが1枚の重量が50kgに達するものも多い。また、添プレートの重量は、スプライスプレートの1/2以下であるのが一般的である。
【0008】
上記したようなスプライスプレート14,17の取り付け作業を行う際、上フランジ11側におけるスプライスプレート14の取り付け作業は、重量の大きいスプライスプレート14が上フランジ11の上面側となるので、スプライスプレート14をフランジ11の上面側に載せてしまえば、重量の比較的小さい添プレート13a,13bを下面側に押し当てて、ボルト15aを添プレート13a,13bの下面側から通して、スプライスプレート14の上面側でナット15bによってボルト締めするといった作業を行えばよいので、スプライスプレート14の取り付け作業は、それほど大きな力を必要としないが、問題は、下フランジ12側におけるスプライスプレート17の取り付け作業である。
【0009】
すなわち、下フランジ12におけるスプライスプレート17の取り付け作業は、一方の添プレート(添プレート16aとする。)を下フランジ12の上面側に載せたのち、50kgもあるスプライスプレート17を片手に載せて下フランジ12の下面側に押し当てた状態として、添プレート16a、フランジ12、スプライスプレート17の各ボルト孔の位置決めを行って、ボルト18aをスプライスプレート17の下面側から通して、添プレート16aの上面側でナット18bによってボルト締めするといった作業を行わなければならない。
【0010】
このような作業を行う際は、作業者はH型鉄骨10の端部側から取り付け作業を行う場合が多い。このため、スプライスプレート17を自分の体の前方で片手を伸ばした状態で支えることとなるため、腕、肩及び腰などに大きな負担がかかり、きわめて過酷な作業となる。このため、肩痛や腰痛などを引き起こしている作業者が多い。
【0011】
このような過酷な作業の改善を図るためのスプライスプレート取り付け治具は従来から提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0012】
図8は、特許文献1に記載されているスプライスプレート取り付け治具を説明するために示す図である。特許文献1に記載されているスプライスプレート取り付け治具1(以下、従来のスプライスプレート取り付け治具1という。)は、図8に示すように、一対の係止部2と、一対の懸垂部材3と、支持部材4と、支持部材4に設けられたローラ部材5とを有する。
【0013】
このような構成において、係止部2は,H型鉄骨21における下フランジ23の上面側に置かれた一対の添プレート(ウエブ24を中心とする左右両側の添プレート)25,25に係止部2のネジ棒6によって係止される。このとき、支持部材4に設けられたローラ部材5と下フランジ23の下面側との間にはスプライスプレート26を挿入可能な隙間が生じた状態となる。
【0014】
このような状態で、スプライスプレート26をローラ部材5に載せてH型鉄骨21の長軸方向に押し込んで、スプライスプレート26を下フランジ23の下面側に沿わせる。そして、スプライスプレート26、下フランジ23及び添プレート25の各ボルト孔が一致するようにスプライスプレート26及び添プレート25を下フランジ23に対して位置決めして、ボルト28をスプライスプレート26の下面側から通して、添プレート25の上面側でナット29によってボルト締めする。
従来のスプライスプレート取り付け治具1を用いることにより、スプライスプレートの取り付け作業を行う際の作業者の負担をある程度は改善することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2007−210076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、上記した従来のスプライスプレート取り付け治具1は、左右両側の添プレート25,25に対してそれぞれ一本のネジ棒6だけで取り付けられる構造となっている。このため、スプライスプレート取り付け治具1の取り付け状態は不安定なものとなる。また、スプライスプレート26をスプライスプレート取り付け治具1のローラ部材5で支持した状態としたとき、図8からも明らかなように、スプライスプレート26の重心は、スプライスプレート取り付け治具1よりも図示の右側(矢印−y方向)に位置するため、スプライスプレート26にはローラ部材5を支点として図示の矢印a方向への回転力が働く。
【0017】
このため、結局は、スプライスプレート26を片手で押さえてスプライスプレート26の水平を保持した状態として、スプライスプレート26、下フランジ23及び添プレート25の各ボルト孔が一致するように、スプライスプレート26及び添プレート25を下フランジ23に対して位置決めして、ボルト28をスプライスプレート26の下面側から通して、添プレート25の上面側でナット29によってボルト締めするといった作業を行う必要がある。
【0018】
このように、従来のスプライスプレート取り付け治具1は、スプライスプレート26をスプライスプレート取り付け治具1で支持した状態としたときに、スプライスプレートの安定性に課題があり、作業能率の大幅な向上は望めない。
【0019】
また、従来のスプライスプレート取り付け治具1は、左右両側の添プレートそれぞれをネジ棒6によって支持するものであるため、建設現場で2つのH型鉄骨を接続する際には使用することができない。これは、2つのH型鉄骨を接続した後では、スプライスプレート取り付け治具1を取り外すことができないからである。このため、従来のスプライスプレート取り付け治具1は、鉄工所などでスプライスプレートの仮止めを行う場合のみに使用可能となるものであり、使用範囲が限定される。
【0020】
そこで本発明は、スプライスプレートを安定した状態で支持可能とすることによって、作業能率を大幅に向上させ、かつ、建設現場においても使用可能となるH型鉄骨用のスプライスプレート取り付け治具を提供するとともに、このようなスプライスプレート取り付け治具用いることにより、スプライスプレートを容易に取り付けることができ、スプライスプレートの取り付け作業能率を大幅に向上させることができるスプライスプレートの取り付け方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
[1]本発明のH型鉄骨用スプライスプレート取り付け治具は、フランジが上側及び下側に位置するように置かれたH型鉄骨の前記下側に位置する下フランジの上面側に添プレートを載せ、前記下フランジの下面側にスプライスプレートを当接させた状態で前記添プレート及び前記スプライスプレートを前記下フランジに取り付けるためのH型鉄骨用スプライスプレート取り付け治具であって、前記スプライスプレートの下面側を前記スプライスプレートの長軸方向に沿って離間した2箇所で支持する2本のスプライスプレート支持棒と、前記2本のスプライスプレート支持棒の後端側に固定されて前記2本のスプライスプレート支持棒を連結する連結部材と、前記連結部材の中央部において垂直方向に立設されている垂直立設部及び当該垂直立設部材の下端部側から前記スプライスプレート支持棒と同じ方向に突出する水平突出部を有し、前記水平突出部には垂直方向に沿った雌ネジ部が設けられる支柱部材と、先端部側のみにネジ部が設けられ、当該ネジ部が前記水平突出部に設けられている雌ネジ部に螺合する半ネジ型の軸ボルトと、前記軸ボルトの中途部を滑動自在に支持する軸ボルト通し孔を有し、前記支柱部材の垂直立設部との間で相対的な上下動が可能な軸ボルト支持部と、当該軸ボルト支持部の側面部上端側から前記スプライスプレート支持棒と同じ方向に突設される突設軸と、前記突設軸の先端部側に設けられ、前記添プレートのボルト孔を貫通して当該添プレートのボルト孔に一致する前記下フランジのボルト孔に挿入されるボルト孔挿入ピンとを有するピン金具と を有し、前記ボルト孔挿入ピンを前記添プレートのボルト孔を貫通させて当該添プレートのボルト孔に一致する前記下フランジのボルト孔に挿入して前記軸ボルト支持部を固定した状態で、前記軸ボルトを時計方向又は反時計方向に回転させることにより、前記支柱部材を前記軸ボルト支持部に沿って上昇又は下降させて前記スプライスプレート支持棒を上昇又は下降可能に構成されていることを特徴とする。
【0022】
本発明のH型鉄骨用スプライスプレート取り付け治具は、2本のスプライスプレート支持棒によって、離間した2箇所すなわち所定の間隔をおいた2箇所でスプライスプレートを支持するような構造となっている。このため、一旦、スプライスプレートを2本のスプライスプレート支持棒に載せてしまえば、作業者が手を離してもスプライスプレートは安定した状態を保持することができる。そして、スプライスプレートを2本のスプライスプレート支持棒によって支持したあとは、軸ボルトを回すことによってスプライスプレートを上昇させて、下フランジの下面側にスプライスプレートを当接させることができる。
【0023】
このように、本発明のH型鉄骨用スプライスプレート取り付け治具は、スプライスプレートを安定した状態で支持することができることから、重量の大きいスプライスプレートを作業者が片手で下側から支え続けるといった過酷な作業を行う必要をなくすことができ、スプライスプレートを容易かつ確実に取り付けることができ、作業能率を大幅に向上させることができる。
【0024】
また、本発明のH型鉄骨用スプライスプレート取り付け治具は、左右両側の添プレートそれぞれをネジ棒などによって支持するような構成ではなく、一方の添プレート側のみにボルト孔挿入ピンをボルト孔に挿入する構造であるため、スプライスプレートを取り付けたあとは、H型鉄骨の一方の縁端部側から本発明のH型鉄骨用スプライスプレート取り付け治具を取り外すことができる。このため、仮に、建設現場でH型鉄骨同士を接続する作業に用いた場合、H型鉄骨同士を接続したあとも、本発明のH型鉄骨用スプライスプレート取り付け治具を容易に取り外すことができる。これにより、本発明のH型鉄骨用スプライスプレート取り付け治具は、鉄工所などだけでなく、建設現場においてH型鉄骨同士を実際に接続する際にも使用可能となる。
【0025】
[2]本発明のH型鉄骨用スプライスプレート取り付け治具においては、前記ピン金具は、前記スプライスプレートの長軸方向に直交する幅方向に沿った前記ボルト孔挿入ピンの位置調節を可能とするボルト孔挿入ピン位置調節機構部をさらに有することが好ましい。
【0026】
このようなボルト孔挿入ピン位置調節機構部を有することにより、下フランジのボルト孔の位置に「ばらつき」がある場合にもボルト孔挿入ピンを適切にボルト孔に挿入することができ、汎用性に富んだスプライスプレート取り付け治具とすることができる。
【0027】
[3]本発明のH型鉄骨用スプライスプレート取り付け治具においては、前記ボルト孔挿入ピンは、前記添プレートのボルト孔及び当該添プレートのボルト孔に一致する前記下フランジのボルト孔に挿入されたときに、当該ボルト孔挿入ピンの先端部が前記フランジの下面側に突出しない長さに設定されていることが好ましい。
【0028】
ボルト孔挿入ピンの長さをこのように設定することにより、スプライスプレートの取り付け作業の終了後において、スプライスプレート取り付け治具を取り外す際に、ボルト孔挿入ピンをボルト孔から容易に引き抜くことができ、スプライスプレートの取り外し作業を円滑に行うことができる。
【0029】
[4]本発明のH型鉄骨用スプライスプレート取り付け治具においては、前記ピン金具、前記軸ボルト及び前記支柱部材のうちの少なくも1つは、クロム鋼にモリブデンを添加したクロムモリブデン鋼が用いられることが好ましい。
【0030】
ピン金具、軸ボルト及び支柱部材には、大きな摩擦力や荷重が加わる部分であり、これらピン金具、軸ボルト及び支柱部材ピン金具及び軸ボルトの少なくとも1つにクロムモリブデン鋼(SCM)を用いることにより、耐久性に優れたスプライスプレート取り付け治具とすることができる。なお、ピン金具、軸ボルト及び支柱部材のすべてにクロムモリブデン鋼(SCM)を用いることがより好ましい。
【0031】
[5]本発明のH型鉄骨用スプライスプレート取り付け治具においては、前記ピン金具は、前記添プレートの上端面に対して垂直方向の押圧力を付与可能な取り外し支援用ボルトを有することが好ましい。
【0032】
このような取り外し支援用ボルトを有することにより、H型鉄骨用スプライスプレート取り付け治具を取り外す際に、より簡単にH型鉄骨用スプライスプレート取り付け治具を取り外すことができる。すなわち、スプライスプレートを下フランジに取り付けた状態において、H型鉄骨用スプライスプレート取り付け治具を取り外す際には、軸ボルトの締め付けを緩めてH型鉄骨用スプライスプレート取り付け治具を取り外すこととなるが、このとき、軸ボルトを緩めた状態で、取り外し支援用ボルトをボルト締めして添プレートの上端面に押圧力を付与すると、その反作用でピン金具が上方向に上昇し、ボルト孔挿入ピンも上昇する。これによって、ボルト孔挿入ピンを添プレート及び下フランジのボルト孔から容易に引き抜くことができ、H型鉄骨用スプライスプレート取り付け治具の取り外しを容易に行うことができる。
【0033】
[6]本発明のH型鉄骨用スプライスプレート取り付け治の取り付け方法は、前記[1]〜[5]のいずれかに記載のスプライスプレート取り付け治具を用いたH型鉄骨用スプライスプレートの取り付け方法であって、前記添プレートを前記下フランジの上面に載せた状態で前記2本のスプライスプレート支持棒を前記下フランジの下方側に配置する工程と、前記ピン金具の前記ボルト孔挿入ピンを前記添プレートのボルト孔を貫通させて当該添プレートのボルト孔に一致する前記下フランジのボルト孔に挿入する工程と、前記2本のスプライスプレート支持棒に前記スプライスプレートを載せる工程と、前記軸ボルトを時計方向に回転させて前記支柱部材を上昇させることにより前記2本のスプライスプレート支持棒を上昇させて、前記スプライスプレートを前記フランジの下面側に当接させる工程と、前記スプライスプレートを前記フランジの下面側に当接させた状態で、前記スプライスプレート、前記下フランジ及び前記添えプレートをボルト及びナットによって固定する工程とを有することを特徴とする。
【0034】
このように、本発明のH型鉄骨用スプライスプレート取り付け治具を用いて、本発明のH型鉄骨用スプライスプレート取り付け治の取り付け方法の各工程を行うことにより、重量の大きいスプライスプレートを作業者が片手で下側から支え続けるといった過酷な作業を行う必要をなくすことができ、スプライスプレートを容易かつ確実に取り付けることができ、スプライスプレートの取り付け作業能率を大幅に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】実施形態1に係るH型鉄骨用スプライスプレート取り付け治具100Aの構成を説明するために示す斜視図である。
【図2】図1における軸ボルト140、支柱部材150及びピン金具160をy軸方向に沿って見た側面図である。
【図3】実施形態1に係るH型鉄骨用スプライスプレート取り付け治具100Aを用いたスプライスプレートの取り付け手順を説明するために示す図である。
【図4】実施形態1に係るH型鉄骨用スプライスプレート取り付け治具100Aを用いたスプライスプレートの取り付け手順を説明するために示す図である。
【図5】実施形態2に係るH型鉄骨用スプライスプレート取り付け治具100Bの構成を説明するために示す斜視図である。
【図6】実施形態2に係るH型鉄骨用スプライスプレート取り付け治具100Bの取り付け例を示す図である。
【図7】H型鉄骨のフランジに添プレートとスプライスプレートとを取り付けた状態を示す図である。
【図8】特許文献1に記載されているスプライスプレート取り付け治具を説明するために示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0037】
[実施形態1]
図1は、実施形態1に係るH型鉄骨用スプライスプレート取り付け治具100Aの構成を説明するために示す斜視図である。図1(a)は実施形態1に係るH型鉄骨用スプライスプレート取り付け治具100A(以下では、スプライスプレート取り付け治具100Aという。)を斜め前方から見た図であり、図1(b)はスプライスプレート取り付け治具100Aを斜め後方から見た図である。なお、スプライスプレート取り付け治具100Aは、H型鉄骨の下フランジにスプライスプレートを取り付ける際に用いられるものである。
【0038】
スプライスプレート取り付け治具100Aは、図1に示すように、スプライスプレート400(図3参照。)を支持する2本のスプライスプレート支持棒110,120と、スプライスプレート支持棒110,120の各後端部側に溶接などによって固定され、スプライスプレート支持棒110,120の各後端部を連結する連結部材130と、連結部材130の中央部に溶接などによって固定され、軸ボルト140のネジ部143を螺合させることによって軸ボルト140を支持する支柱部材150と、ボルト孔挿入ピン162を有するピン金具160とを有している。
【0039】
スプライスプレート支持棒110,120は、鋼鉄など剛性の高い材質が用いられており、20mm程度の径を有する円柱棒状をなしている。また、スプライスプレート支持棒110,120のそれぞれの軸方向(x軸方向)の長さL1は、一般的に用いられるスプライスプレートの幅方向(スプライスプレートの長軸方向に直交する方向)全体を支持可能とする程度とすることが好ましく、ここでは、350mmとしている。また、スプライスプレート支持棒110,120の間隔D1は、スプライスプレートを安定した状態で支持可能とするように、200〜300mm程度とすることが好ましく、ここでは、D1=225mmとしている。また、連結部材130もその材質は鋼鉄など剛性の高い材質が用いられており、20mm程度の径を有する円柱棒状をなしている。
【0040】
図2は、図1における軸ボルト140、支柱部材150及びピン金具160をy軸方向に沿って見た側面図である。なお、図2において図1と同一構成要素には同一符号が付されている。
【0041】
軸ボルト140は、いわゆる「半ネジ」タイプのものであり、図2に示すように、頭部141から軸方向のほぼ中途部まではネジ部が存在せず表面が滑らかな丸棒部142となっており、丸棒部142から先端部までの先端部側にネジ部143が形成されている。なお、丸棒部142は大径部142aと小径部142bとからなり、頭部141の直下が大径部142aとなっていて、大径部142aの下側が小径部14bとなっている。
【0042】
支柱部材150は、図2に示すように、側面から見たときの全体的な形状は、L字型をなし、z軸方向に立設されている垂直立設部151と、x軸方向に突出して設けられている水平突出部152とを有し、連結部材130((図1参照。)に溶接によって固定されている。また、支柱部材150はその水平突出部152に軸ボルト140のネジ部143を螺合するための雌ネジ部152aが設けられている。
【0043】
ピン金具160は、図2に示すように、軸ボルト140の丸棒部142における小径部142bを滑動自在に支持するための軸ボルト通し孔161aを有する軸ボルト支持部161と、当該軸ボルト支持部161の側面上端部からスプライスプレート支持棒110,120と同じ方向(x軸方向)に突設される突設軸163と、突設軸163の先端部に設けられたボルト孔挿入ピン162とを有している。ボルト孔挿入ピン162は、添プレート311(図3参照。)のボルト孔及び当該添プレート311のボルト孔に一致する下フランジ210(図3参照。)のボルト孔に挿入されるものである。
【0044】
なお、軸ボルト支持部161は、支柱部材150の垂直立設部151との間で相対的な上下動が可能となっている。また、軸ボルト支持部161、突設軸163及びボルト孔挿入ピン162は、それぞれが溶接によって接合されたものであってもよいが、これら軸ボルト支持部161、突設軸163及びボルト孔挿入ピン162は一体成型されたものが好ましい。
【0045】
また、ピン金具160には、ボルト孔挿入ピン162のx軸方向の位置調節を可能とするボルト孔挿入ピン位置調節機構部170が設けられている。ボルト孔挿入ピン位置調節機構部170は、y軸に沿って設けられた平板171と、平板171に所定間隔をおいて設けられた2つの調節ボルト172,173とを有している。このような構成のボルト孔挿入ピン位置調節機構部170は、平板171に対する調節ボルト172,173のネジ込み量を加減することにより、ボルト孔挿入ピン162のx軸方向の位置調節が可能となる。
【0046】
このように構成されたピン金具160は、H型鉄骨200(図3参照。)の種類によって異なるボルト孔の径に対応可能となるように数種類用意することが好ましい。例えば、「7分」のボルト径を有するH型鉄骨と「6分」のボルト径を有するH型鉄骨に対応させるには、7分用のボルト孔挿入ピン162を有するピン金具160と、6分用のボルト孔挿入ピン162を有するピン金具160とを用意しておく。
【0047】
このように、ボルト孔挿入ピンの径が異なるピン金具を数種類用意しておくことで、H型鉄骨に合わせてピン金具を取り換えるだけで、スプライスプレート取り付け治具100Aを種々のボルト径を有するH型鉄骨において使用することができる。
【0048】
ところで、ボルト孔挿入ピン162の突出長さ(突設軸163の下端側から下方に突出する長さ)L2は、添プレート311の厚みとH型鉄骨200の下フランジ210の厚みとを考慮して設定する。
【0049】
すなわち、突設軸163の下端側が添プレート311の上面に当接するまで、ボルト孔挿入ピン162を添プレート311のボルト孔と当該ボルト孔に一致する下フランジ210のボルト孔に挿入した状態としたときに、ボルト孔挿入ピン162の先端部が、下フランジ210の下面側から下方に突出せず、かつ、下フランジ210のボルト孔の所定深さにまで確実に挿入可能となるように、ボルト孔挿入ピン162の突出長さL2を設定する。スプライスプレート取り付け治具100Aにおいては、ボルト孔挿入ピン162の突出長さL2をL2=35mmとしている。ボルト孔挿入ピン162の突出長さL2をL2=35mmとすることによって、一般的に用いられるH型鉄骨の多くに対応することができる。
【0050】
すなわち、一般的に用いられるH型鉄骨の板厚は、19mm、22mm、25mmなどであり、また、スプライスプレート400及び添プレート311の板厚も同様である。このような板厚を有するH型鉄骨の場合、ボルト孔挿入ピン162の突出長さL2を35mmとしておけば、ボルト孔挿入ピン162の先端部は、下フランジ210の下面側から下方に突出せず、かつ、下フランジ210のボルト孔の所定深さにまで確実に挿入可能とされることとなる。
【0051】
なお、H型鉄骨には12mmなどという比較的板厚の薄いものもあるが、このようなH型鉄骨の場合、スプライスプレートの重量も比較的軽量となるので、スプライスプレート取り付け治具を用いなくても取り付け作業はそれほど過酷とはならないので、ここでは対象外とする。ただし、このような比較的薄い板厚のH型鉄骨にも使用可能とするために、ボルト孔挿入ピン162の突出長さL2をより短くしたピン金具を用意しておくことは可能であり、このようなピン金具を用意しておくことで、スプライスプレート取り付け治具100Aは、比較的板厚の薄いH型鉄骨においても使用可能となる。
【0052】
また、軸ボルト支持部161の軸ボルト通し孔161aの径は、軸ボルト140を軸ボルト通し孔161aに通したときに軸ボルト140の小径部142bとの間に0.3mm程度の空隙を有するように設定されることが好ましい。なお、軸ボルト140の大径部142aの径は、軸ボルト通し孔161aの径よりも大きくしている。このような構成とすることにより、軸軸ボルト140をボルト締めする際に、ボルト締めの量が所定以上とならないように、ボルト締めの量を規制することができる。
【0053】
また、突設軸163の長さL3は、45mm〜60mm程度とすることが好ましく、ここでは、L3=52mmとしている。なお、突設軸163の長さL3は、この場合、図2に示すように、ボルト孔挿入ピン位置調節機構部170の調節ボルト172,173の頭部からの長さとしている。
【0054】
このように、突設軸163の長さL3をL3=52mmとすることによって、一般的なH型鉄骨に殆ど取り付け可能となる。なお、ボルト孔挿入ピン162の位置と挿入すべきボルト孔の位置とに多少の「ずれ」があったとしても、ボルト孔挿入ピン位置調節機構部170の調節ボルト172,173によって、多少の「ずれ」には対応可能である。
【0055】
ところで、軸ボルト140、支柱部材150及びピン金具160には大きな荷重が加わることから、これら軸ボルト140、支柱部材150及びピン金具160の材質としては、クロム鋼にモリブデンを所定量添加したクロムモリブデン鋼(SCM))を用いることが好ましく、さらには、表面には摩擦力に耐えることができるような表面加工処理を施したものが好ましい。なお、摩擦力に耐えることができるような表面加工処理としては、例えば、高周波焼き入れ処理が一例として挙げられる。
【0056】
なお、軸ボルト140、支柱部材150及びピン金具160のすべてにクロムモリブデン鋼(SCM))を用い、かつ、このSCMの表面に高周波焼き入れ加工を施すことが好ましいが、軸ボルト140、支柱部材150及びピン金具160のすべてではなく、特に大きな荷重が加わる構成要素のみにクロムモリブデン鋼(SCM))を用い、かつ、このSCMに対して、摩擦力に耐えることができるような表面加工処理を施すようにしてもよい。
【0057】
上記のように構成されたスプライスプレート取り付け治具100Aを用いて、H型鉄骨200の下フランジ210にスプライスプレート400を取り付ける際のスプライスプレート取り付け工程について説明する。
【0058】
図3及び図4は、実施形態1に係るH型鉄骨用スプライスプレート取り付け治具100Aを用いたスプライスプレートの取り付け手順を説明するために示す図である。なお、図3(a)〜図3(c)及び図4(a)〜図4(c)は各工程図であり、図4(a)はインパクト500によるボルト締め動作を詳細に説明する図である。
図3(a)に示すように、H型鉄骨200の下フランジ210に添プレート311を載せる。このとき、添プレート311は、添プレート311における長軸方向のほぼ1/2がH型鉄骨200の端部から外方に突出するように下フランジ210に載せる。
【0059】
そして、スプライスプレート取り付け治具100Aのスプライスプレート支持棒110,120を下フランジ210の下面に対して所定間隔をあけて、下フランジ210の幅方向(x軸方向)に配置した状態とするとともに、添プレート311の各ボルト孔311aと下フランジ210の各ボルト孔(図示せず。)との位置合わせを行った状態で、ピン金具160のボルト孔挿入ピン162を添プレート311の所定のボルト孔に挿入する。このとき、突設軸163の下端側が添プレート311の上面に当接するまでボルト孔挿入ピン162をボルト孔に挿入する。
【0060】
これにより、ボルト孔挿入ピン162の先端部は、添プレート311のボルト孔を貫通して下フランジ210のボルト孔にまで挿入されて下フランジ210の下面又は下面近くにまで達する。なお、ボルト孔挿入ピン162が挿入されるボルト孔は、添プレート311の長軸方向における中央部に近いボルト孔が好ましい。このとき、ボルト孔挿入ピン162の位置と挿入すべきボルト孔の位置とに多少の「ずれ」がある場合には、軸ボルト140を垂直(z軸に沿った方向)とした状態でボルト孔挿入ピン位置調節機構部170の調節ボルト172,173の突出量を調整する。
【0061】
このような状態で、図3(b)に示すように、スプライスプレート支持棒110,120の上にスプライスプレート400を載せる。そして、ボルト締め機器(インパクトという。)500を用いて、図3(c)に示すように、軸ボルト140を時計方向に回転させる。なお、インパクト500を用いて軸ボルト140を時計方向に回転させる動作を「ボルト締め動作」と呼ぶことにする。インパクト500によるボルト締めは図4(a)に詳細に示されている。
【0062】
このようなボルト締め動作を行うと、スプライスプレート支持棒110,120が上昇する。すなわち、この場合、ピン金具160の軸ボルト支持部161は固定された状態となっているため、軸ボルト140のボルト締め動作を行うと、支柱部材150の垂直立設部151が軸ボルト支持部161に対して相対的に上方向に移動し、それによって、スプライスプレート支持棒110,120が上昇する。
【0063】
なお、図4(a)においては、軸ボルト140の頭部141がインパクト500の回転部510に挿入されていない状態が示されているが、ボルト締め動作を行う際は、軸ボルト140の頭部141はインパクト500の回転部510に挿入された状態となる。
【0064】
インパクト500による軸ボルト140のボルト締め動作がなされると、図4(a)に示すように、スプライスプレート400が矢印A方向に上昇して行き、やがてスプライスプレート400の上面が下フランジ210の下面側に接触した状態となる。この状態においては、まだ、スプライスプレート400は、水平面(xy平面)上での回転及びスライドが可能な状態である。
【0065】
スプライスプレート400の上面が下フランジ210の下面側に接触した状態において、スプライスプレート400が下フランジ210に整合するようにスプライスプレート400の位置調整を行い、スプライスプレート400の位置調整がなされたら、ボルト610をスプライスプレート400の下面側から所定のボルト孔に差し込んで、下フランジ210、添プレート311を貫通させて、図4(b)に示すように、添プレート311の上端面側でボルト610の先端部にナット620を取り付ける。これは、ボルト610とナット620による仮止めであり、この仮止めは、数箇所のボルト孔に対して行う。そして、もう1つの添プレート312を下フランジ210に載せて、同様にボルト610とナット620による仮止めを行う。
【0066】
このようにして、ボルト610とナット620によるスプライスプレート400の仮止めがなされると(図4(b)参照。)、スプライスプレート取り付け治具100Aを取り外す。スプライスプレート取り付け治具100Aの取り外しは、インパクト500により軸ボルト140を反時計方向に回転させることによって容易に行うことができる。すなわち、インパクト500により軸ボルト140を反時計方向に回転させて、ボルト孔挿入ピン162をボルト孔から引き抜き、スプライスプレート取り付け治具100Aを矢印B方向にスライドさせる。
【0067】
このような操作を行うことにより、スプライスプレート取り付け治具100Aを取り外すことができる。図4(c)はスプライスプレート取り付け治具100Aを取り外した状態を示す図である。
【0068】
以上説明したように、スプライスプレート取り付け治具100Aによれば、下フランジ210にスプライスプレート400を取り付ける場合、2本のスプライスプレート支持棒110,120によって、離間した2箇所でスプライスプレート400を支持するので、スプライスプレート400を安定した状態で保持することができ、作業者はスプライスプレート400を手で支え続ける必要がなくなる。これにより、作業者の負担を大幅に軽減することができる。また、作業者の両手が空くことによって、ボルトとナットによる仮止めなどを容易かつ確実に行うことができ、作業効率を大幅な向上させることができる。
【0069】
また、スプライスプレート取り付け治具100Aは、左右両側の添プレートそれぞれをネジ棒などによって支持するような構成ではなく、一方の添プレートのみにボルト孔挿入ピン162をボルト孔に挿入して保持する構造である。このため、仮に、建設現場でH型鉄骨同士を接続する作業において、スプライスプレート取り付け治具100Aを用いた場合、H型鉄骨同士を接続したあとも、スプライスプレート取り付け治具100Aを容易に取り外すことができる。これにより、スプライスプレート取り付け治具100Aは、鉄工所などだけでなく、建設現場においてH型鉄骨同士を実際に接続する際にも使用可能となり、汎用性の高いものとすることができる。
【0070】
[実施形態2]
図5は、実施形態2に係るH型鉄骨用スプライスプレート取り付け治具100Bの構成を示す斜視図である。なお、図5は実施形態2に係るH型鉄骨用スプライスプレート取り付け治具100B(以下ではスプライスプレート取り付け治具100Bという。)を斜め前方から見た図である。図5において図1と同一構成要素には同一符号が付されている。
【0071】
スプライスプレート取り付け治具100Bがスプライスプレート取り付け治具100A(図1参照。)と異なるのは、ピン金具160である。すなわち、スプライスプレート取り付け治具100Bにおけるピン金具160は、スプライスプレート取り付け治具の取り外しを容易とするための取り外し支援用ボルト165が設けられている。取り外し支援用ボルト165の取り付けを可能とするために、ピン金具160の突設部163には、雌ネジ部(図示せず。)を有する突出部164が設けられており、この突出部164の雌ネジ部(図示せず。)に、取り外し支援用ボルト165が螺合するようになっている。また、取り外し支援用ボルト165の先端部には押さえ板166が取り付けられている。
実施形態2に係るスプライスプレート取り付け治具100Bを用いたスプライスプレート400の取り付けは、図3及び図4とほぼ同様の手順で行うことができる。
【0072】
図6は、実施形態2に係るH型鉄骨用スプライスプレート取り付け治具100Bの取り付け例を示す図である。なお、図6はボルト610及びナット620によるスプライスプレート400の仮止めが終了した状態の部分拡大図であり、これは実施形態1においては、図4(b)に示す工程に対応するものである。
【0073】
ボルト610とナット620によるスプライスプレート400の仮止めがなされた段階では、実施形態2に係るスプライスプレート取り付け治具100Bは、図6に示すような状態となる。なお、スプライスプレート400の仮止めが終了するまでは、取り外し支援用ボルト165の先端部に設けられている押さえ板166は、添プレート311の上端面に非接触の状態としておく。これは、取り外し支援用ボルト165を調整することによって可能となる。
【0074】
図6に示す状態において、スプライスプレート取り付け治具100Bを取り外す場合は、まず、インパクト500により軸ボルト140を反時計方向に回転させて、軸ボルトの締め付けを緩めて、軸ボルト140を上方(z軸方向)に所定量だけ上昇させたのち、インパクト500(図6では図示せず。)によって取り外し支援用ボルト165をボルト締めする。
【0075】
このように、軸ボルト140を緩めることによって、上方(z軸方向)に所定量だけ上昇させた状態で、取り外し支援用ボルト165をボルト締めすると、取り外し支援用ボルト165の先端部に設けられている押さえ板166が添プレート311の上端面を強い力で押圧することとなり、その反作用でピン金具160の突設軸163がz軸方向に上昇し、ボルト孔挿入ピン162もz軸方向に上昇する。これにより、ボルト孔挿入ピン162を添プレート311及び下フランジ210のボルト孔から容易に取り外すことができ、スプライスプレート取り付け治具100Bの取り外しを、より簡単に行うことができる。
【0076】
ところで、取り外し支援用ボルト165を設けるようにしたのは、ボルト610とナット620によるスプライスプレート400の仮止めがなされた状態(図4(b)又は図6参照。)においては、軸ボルト140を反時計方向に回転させて軸ボルトの締め付けを緩めても、ボルト孔挿入ピン162を添プレート及び下フランジ210のボルト孔から容易には取り外すことができない場合もあり得るからである。
【0077】
これに対処するために、実施形態2にスプライスプレート取り付け治具100Bでは、ピン金具160を図5に示すような構成としている。スプライスプレート取り付け治具100Bのピン金具160を図5に示すような構成とすることによって、スプライスプレート取り付け治具100Bの取り外しを、より簡単に行うことができる。
【0078】
なお、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施可能となるものである。たとえば、上記各実施形態において説明したスプライスプレート取り付け治具100A,100Bを構成する各構成要素の形状や寸法などは、上記各実施形態で説明した形状や寸法に限られるものではなく、種々変形実施可能である。
【符号の説明】
【0079】
100A,100B・・・スプライスプレート取り付け治具、110,120・・・スプライスプレート支持棒、130・・・連結部材、140・・・軸ボルト、150・・・支柱部材、151・・・垂直立設部、152・・・水平突出部、160・・・ピン金具、161・・・軸ボルト支持部、162・・・ボルト孔挿入ピン、163・・・突設軸、165…取り外し支援用ボルト、166・・・押さえ板、170・・・ボルト孔挿入ピン位置調節機構部、200…H型鉄骨、210・・・下フランジ、311,312・・・添プレート、400・・・スプライスプレート、610・・・ボルト、620・・・ナット


【特許請求の範囲】
【請求項1】
フランジが上側及び下側に位置するように置かれたH型鉄骨の前記下側に位置する下フランジの上面側に添プレートを載せ、前記下フランジの下面側にスプライスプレートを当接させた状態で前記添プレート及び前記スプライスプレートを前記下フランジに取り付けるためのH型鉄骨用スプライスプレート取り付け治具であって、
前記スプライスプレートの下面側を前記スプライスプレートの長軸方向に沿って離間した2箇所で支持する2本のスプライスプレート支持棒と、
前記2本のスプライスプレート支持棒の後端側に固定されて前記2本のスプライスプレート支持棒を連結する連結部材と、
前記連結部材の中央部において垂直方向に立設されている垂直立設部及び当該垂直立設部材の下端部側から前記スプライスプレート支持棒と同じ方向に突出する水平突出部を有し、前記水平突出部には垂直方向に沿った雌ネジ部が設けられる支柱部材と、
先端部側のみにネジ部が設けられ、当該ネジ部が前記水平突出部に設けられている雌ネジ部に螺合する半ネジ型の軸ボルトと、
前記軸ボルトの中途部を滑動自在に支持する軸ボルト通し孔を有し、前記支柱部材の垂直立設部との間で相対的な上下動が可能な軸ボルト支持部と、当該軸ボルト支持部の側面部上端側から前記スプライスプレート支持棒と同じ方向に突設される突設軸と、前記突設軸の先端部側に設けられ、前記添プレートのボルト孔を貫通して当該添プレートのボルト孔に一致する前記下フランジのボルト孔に挿入されるボルト孔挿入ピンとを有するピン金具と、
を有し、
前記ボルト孔挿入ピンを前記添プレートのボルト孔を貫通させて当該添プレートのボルト孔に一致する前記下フランジのボルト孔に挿入して前記軸ボルト支持部を固定した状態で、前記軸ボルトを時計方向又は反時計方向に回転させることにより、前記支柱部材を前記軸ボルト支持部に沿って上昇又は下降させて前記スプライスプレート支持棒を上昇又は下降可能に構成されていることを特徴とするH型鉄骨用スプライスプレート取り付け治具。
【請求項2】
請求項1に記載のH型鉄骨用スプライスプレート取り付け治具において、
前記ピン金具は、前記スプライスプレートの長軸方向に直交する幅方向に沿った前記ボルト孔挿入ピンの位置調節を可能とするボルト孔挿入ピン位置調節機構部をさらに有することを特徴とするH型鉄骨用スプライスプレート取り付け治具。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のH型鉄骨用スプライスプレート取り付け治具において、
前記ボルト孔挿入ピンは、前記添プレートのボルト孔及び当該添プレートのボルト孔に一致する前記下フランジのボルト孔に挿入されたときに、当該ボルト孔挿入ピンの先端部が前記フランジの下面側に突出しない長さに設定されていることを特徴とするH型鉄骨用スプライスプレート取り付け治具。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のH型鉄骨用スプライスプレート取り付け治具において、
前記ピン金具、前記軸ボルト及び前記支柱部材のうちの少なくも1つは、クロム鋼にモリブデンを添加したクロムモリブデン鋼が用いられることを特徴とするH型鉄骨用スプライスプレート取り付け治具。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のH型鉄骨用スプライスプレート取り付け治具において、
前記ピン金具は、前記添プレートの上端面に対して垂直方向の押圧力を付与可能な取り外し支援用ボルトを有することを特徴とするH型鉄骨用スプライスプレート取り付け治具。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のスプライスプレート取り付け治具を用いたH型鉄骨用スプライスプレートの取り付け方法であって、
前記添プレートを前記下フランジの上面に載せた状態で前記2本のスプライスプレート支持棒を前記下フランジの下方側に配置する工程と、
前記ピン金具の前記ボルト孔挿入ピンを前記添プレートのボルト孔を貫通させて当該添プレートのボルト孔に一致する前記下フランジのボルト孔に挿入する工程と、
前記2本のスプライスプレート支持棒に前記スプライスプレートを載せる工程と、
前記軸ボルトを時計方向に回転させて前記支柱部材を上昇させることにより前記2本のスプライスプレート支持棒を上昇させて、前記スプライスプレートを前記フランジの下面側に当接させる工程と、
前記スプライスプレートを前記フランジの下面側に当接させた状態で、前記スプライスプレート、前記下フランジ及び前記添えプレートをボルト及びナットによって固定する工程と、
を有することを特徴とするH型鉄骨用スプライスプレートの取り付け方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−12791(P2012−12791A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−148382(P2010−148382)
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【出願人】(599036635)富士見鉄工株式会社 (1)
【Fターム(参考)】