説明

H型鋼と木質部材との連結具

【課題】連結具自体の強度が十分発揮されるとともに、取り付けが容易であり、なおかつ連結時の保持力も十分であるH型鋼と木質部材との連結具を提供しようとするものである。
【解決手段】一方の端部にはH型鋼の平面部の一端に取付けるコ字状端部14を備えるとともに、他方の端部には係止孔16を設けたH型鋼取付板部15と、このH型鋼取付板部15の側辺から直角に折曲げてビス孔18および/またはボルト孔19を設けた木質部材取付板部17とを備えた連結具本体12と、H型鋼の平面部の他端に取付けるコ字状の固定具13とを備え、コ字状の固定具13に設けた係止片25を、H型鋼取付板部15の上記係止孔16にはめ込んで固定するようにしたことを特徴とするH型鋼と木質部材との連結具11。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、建築関係等で使用するH型鋼と木質部材との連結具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、建築関係等において、鉄骨と木質部材とを融合させた工法が用いられている。その場合に両者を締結する必要があるが、その方法として例えば床組みの場合において、H字型鋼材(以下、H型鋼)等からなる鉄骨に上向きにボルトを立設し、そのボルト位置に対応するほぞ、およびボルト孔を木質部材に形成して、上記ボルトで木質部材を締結することが行なわれている。
しかしながら、鉄骨に上向きにボルトが立設されていて、各種の作業中に鉄骨上を歩行する必要があってつまづき易く、特に高所の作業においては非常に大きな危険を伴うものであった。
【0003】
そのため、H字型鋼材(以下、H型鋼)を梁としてその上に根太を配する場合における締結具としては実開昭50−89112号公報(特許文献1)、実開昭56−76832号公報(特許文献2)及び実開昭56−76833号公報(特許文献3)などが開示されている。これらは図8に示すように、いずれも木質部材31の側面に板状の金具32を取り付け、それに設けたスリット33をH型鋼34の端部にはめ込む構造のものである。35はビス孔である。
【0004】
【特許文献1】実開昭50−89112号公報
【特許文献2】実開昭56−76832号公報
【特許文献3】実開昭56−76833号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のこの種締結具は、金具と木質部材とは面同士の結合形態をとるものの、金具とH型鋼とは面同士を交差させる方向での係止構造をとるため、金具の強度に問題があった。また、H型鋼の寸法精度等の問題から、H型鋼の端部の厚みとスリット33の幅とを寸法的に正確に合わせることが難しく、はめ込むことができなかったり、またはめ込むことができてもがたつき易いという問題があった。
【0006】
そこでこの発明のH型鋼と木質部材との連結具は、上記課題を解決するとともに、連結具自体の強度が十分発揮されるとともに、取り付けが容易であり、なおかつ連結時の保持力も十分であるH型鋼と木質部材との連結具を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわちこの発明のH型鋼と木質部材との連結具は、一方の端部にはH型鋼の平面部の一端に取付けるコ字状端部を備えるとともに、他方の端部には係止孔を設けたH型鋼取付板部と、このH型鋼取付板部の側辺から直角に折曲げてビス孔および/またはボルト孔を設けた木質部材取付板部とを備えた連結具本体と、H型鋼の平面部の他端に取付けるコ字状の固定具とを備え、コ字状の固定具に設けた係止片を、H型鋼取付板部の上記係止孔にはめ込んで固定するようにしたことを特徴とするものである。
【0008】
この発明のH型鋼と木質部材との連結具は、上記係止孔を設けたH型鋼取付板部の他方の端部には、H型鋼取付板部の長さ方向に沿って所定の間隔に複数の係止孔を設けたことをも特徴とするものである。
【0009】
この発明のH型鋼と木質部材との連結具は、上記複数の係止孔を設けたH型鋼取付板部の他方の端部において、各係止孔の中間位置に切取り溝を形成したことをも特徴とするものである。
【0010】
この発明のH型鋼と木質部材との連結具は、上記木質部材取付板部のボルト孔を、長さ方向に沿った長孔としたことをも特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
この発明は以上のように連結具の平面部分でH型鋼の端部を保持する構成としたので、取り付けも簡単であり、連結具自体の強度は十分であるとともに、H型鋼へ取り付けた際に、強固な保持力を得ることが可能なH型鋼と木質部材との連結具を提供することできるようになった。
その他、次のような作用効果を備えている。
1)H型鋼からなる鉄骨上にボルトが立設されていないため、歩行の際に障害となる出っ張りもなく、安全性が大幅に向上した。
2)ボルト位置に対応するほぞ、およびボルト孔を木質部材に形成する必要がなく、墨付けが不要となって作業に手間がかからない。
3)したがってH型鋼と木質部材とを連結する際の作業性が大幅に向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面に基づきこの発明のH型鋼と木質部材との連結具の実施の形態について詳述する。
図1はこの発明のH型鋼と木質部材との連結具(以下、連結具)の1実施例を示す斜視図、図2はその側面図、図3はその平面図、図4は連結具の要部を示す部分側面図、図5(a)は係止具の正面図、(b)はその断面図、図6はその斜視図、図7はこの発明のH型鋼と木質部材との連結具の使用状態の斜視図である。
【0013】
図1ないし図4に示すように、この発明の連結具11は連結具本体12と、連結具本体12に取り付けた固定具13とを備えている。
上記連結具本体12は金属板等で形成され、その一方の端部にH型鋼21の平面部22の一端に取付けるコ字状端部14を備え、また他方の端部には係止孔16を設けたH型鋼取付板部15とを備えている。このコ字状端部14の開口部は、H型鋼21の平面部22の厚さより多少狭くなっており、連結具本体12はコ字状端部14をハンマ等で叩いてH型鋼21の平面部22に圧入するようになっている。
さらに連結具本体12は、上記H型鋼取付板部15の側辺から直角に折曲げて木質部材取付板部17とし、この木質部材取付板部17にはビス孔18およびボルト孔19が設けてある。上記ビス孔18は木質部材取付板部17のほぼ全面に所定の間隔で複数(図では6個)配設されており、またボルト孔19は木質部材取付板部17のほぼ中央に1個配設さている。もちろん複数設けても良い。
【0014】
また、上記複数の係止孔16を設けたH型鋼取付板部15の他方の端部において、各係止孔16の中間位置には切取り溝20が形成してある。H型鋼取付板部15の長さ方向に沿って設けた係止孔16の数や幅方向の係止孔16の数は任意であり、切取り溝20の数もそれに応じて変化する。
図2ないし図4のようにこの切取り溝20はV字もしくはU字状をなし、その深さdはH型鋼取付板部15の厚さの1/2〜1/3の範囲にあることが望ましい。このようにすると、H型鋼取付板部15の強度を保ちつつ、簡単に折り取ることが可能である。
【0015】
図2に示すように、木質部材取付板部17のボルト孔19は、木質部材取付板部17の長さ方向に沿った長孔としてあり、木質部材23に通したボルト24を確実に挿通して取付けることができる。
【0016】
H型鋼21の平面部の他端に取付けるコ字状の固定具13は、図5(a),(b)および図6に示すように、一方の開口端を直角に折り曲げて形成した係止片25を備えており、この係止片25をH型鋼取付板部15の上記係止孔16にはめ込んだ上、H型鋼21上に折り込んで固定するようになっている(図2および図3参照)。
上記コ字状の固定具13の開口部も、H型鋼21の平面部22の厚さより多少狭くなっており、コ字状の固定具13もハンマ等で叩いてH型鋼21の平面部22に圧入するようになっている。
【0017】
次に、この発明の連結具1の使用状態について説明する。
図7に示すように、例えば梁としてのH型鋼21の上面に根太としての木質部材(角材)23を載置し、木質部材23とH型鋼21との突合せ部分にこの連結具11をあてがい、連結具本体12のコ字状端部14をハンマ等で叩いてH型鋼21の平面部22に圧入する。次いで、コ字状の固定具13の係止片25をH型鋼取付板部15の係止孔16にはめ込み、H型鋼21上に折り込んで固定する。なお、H型鋼取付板部15の不要部分は切取り溝20部分で切取ることができる。
【0018】
このとき、ビス孔18に挿通したビス26を木質部材23にねじ込むことによりH型鋼21側のH型鋼取付板部15と木質部材23側の木質部材取付板部17とでH型鋼21と木質部材23とをより強固に固定する。
【0019】
このように、木質部材23とこの連結具11とは面同士の締結であるとともに、この連結具11はH型鋼21に対しても面接触となっている。したがって、連結具11自体の強度は十分であり、H型鋼21および木質部材23の保持力もより大きなものとすることができる。
このとき、木質部材23にボルト24を挿通し、木質部材23に木質部材取付板部17をより強固に固定することもできる。
【0020】
上記各実施例では、この発明のH型鋼21と木質部材23との連結具11を建屋の2階部分の梁に適用した場合を示したが、H型鋼と木質部材との連結部分であれば、梁への適用に何ら限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0021】
この発明は以上のように建築関係等において、鉄骨と木質部材とを融合させた工法において用いられるものであり、H型鋼の梁と2階部分の木製床材との連結やH型鋼の梁と木製天井材との連結、あるいはその他のH型鋼と木質部材との連結に好適に使用して強固な保持力を得ることが可能な、H型鋼と木質部材との連結具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】この発明のH型鋼と木質部材との連結具(以下、連結具)の1実施例を示す斜視図である。
【図2】その側面図である。
【図3】その平面図である。
【図4】連結具の要部を示す部分側面図である。
【図5】(a)は係止具の正面図、(b)はその断面図である。
【図6】その斜視図である。
【図7】この発明のH型鋼と木質部材との連結具の使用状態の斜視図である。
【符号の説明】
【0023】
11 連結具
12 連結具本体
13 固定具
14 コ字状端部
15 H型鋼取付板部
16 係止孔
17 木質部材取付板部
18 ビス孔
19 ボルト孔
20 切取り溝
21 H型鋼
22 平面部
23 木質部材
24 ボルト
25 係止片
26 ビス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の端部にはH型鋼の平面部の一端に取付けるコ字状端部を備えるとともに、他方の端部には係止孔を設けたH型鋼取付板部と、このH型鋼取付板部の側辺から直角に折曲げてビス孔および/またはボルト孔を設けた木質部材取付板部とを備えた連結具本体と、H型鋼の平面部の他端に取付けるコ字状の固定具とを備え、コ字状の固定具に設けた係止片を、H型鋼取付板部の上記係止孔にはめ込んで固定するようにしたことを特徴とするH型鋼と木質部材との連結具。
【請求項2】
係止孔を設けたH型鋼取付板部の他方の端部には、H型鋼取付板部の長さ方向に沿って所定の間隔に複数の係止孔を設けたことを特徴とする請求項1に記載のH型鋼と木質部材との連結具。
【請求項3】
複数の係止孔を設けたH型鋼取付板部の他方の端部において、各係止孔の中間位置に切取り溝を形成したことを特徴とする請求項2に記載のH型鋼と木質部材との連結具。
【請求項4】
木質部材取付板部のボルト孔を、長さ方向に沿った長孔としたことを特徴とする請求項1または3のいずれかに記載のH型鋼と木質部材との連結具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−249695(P2006−249695A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−64447(P2005−64447)
【出願日】平成17年3月8日(2005.3.8)
【出願人】(505085465)
【出願人】(505085487)
【Fターム(参考)】