説明

HIV−プロテアーゼ阻害剤の合成法およびそれを合成するための中間体

【課題】HIV−プロテアーゼ阻害剤ネルフィナビルメシレートの合成法およびそれを合成するための新規中間体の提供。
【解決手段】化合物7a


等の新規の中間体を使用する合成法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、HIV−プロテアーゼ阻害剤の合成法およびそれを合成するための中間体
に関する。
【背景技術】
【0002】
緒言
HIVに感染した個体の治療は、現在の生物医学における最も緊急な課題の一つである。ヒトの組織におけるウィスルの急速な増殖を防止または阻害する重要な方法として有望な新しい治療が明らかにされてきた。HIV−プロテアーゼ阻害剤は、ウィルス中の基本的な酵素経路を遮断してウィルスの量を実質的に減少させ、免疫系の定常的な衰退、およびそれによるヒトの健康への有害な影響を遅延する。HIV−プロテアーゼ阻害剤ネルフィナビルメシレート(nelfinavir mesylate)
【0003】
【化1】

【0004】
はHIVに感染した個体の治療に効果的であることが明らかとなっている。ネルフィナビルメシレートは、米国特許第5,484,926号(1996年1月16日発行)に開示されており、これは参照により本特許明細書に明らかに組み込まれる。遊離のネルフィナビル塩基からネルフィナビルメシレートを調製する方法は、発明者;M. DeasonおよびK.Whittenの米国特許出願第08/708,411号、“HIV−プロテアーゼ阻害剤の合成のための中間体およびHIV−プロテアーゼ阻害剤の合成法(Intermediates for Making HIV-Protease Inhibitors and Methods of Making HIV-Protease Inhibitors)”(1996年9月5日出願。これは参照によりここに組み込まれる)と同様、米国特許第5,484,926号にも開示されている。
【0005】
発明者は、ネルフィナビルメシレートを合成するための新規の反応スキームに利用できる、有用な新規の中間体化合物を発見した。更に明確には、本発明は、原料(raw drug)ネルフィナビルメシレートの最後から2番目の中間体である遊離型ネルフィナビル塩基を調製するために開発した新しい方法に関する(スキーム1、2、および3)。操作の簡易さに加え、これらの方法は安価で市販されている原料を使用し、また、製造用に使用されてきたより高価なクロロ−アルコールに基づく化学的方法のだいたいとして使用できる(国際特許公開WO95/09843号のHIVプロテアーゼ阻害剤を参照すること)。これらの新法は一般構造6または6aの環状硫酸エステルを経由して進行する:
【0006】
【化2】

【0007】
式中、Rはアリールまたはアルキルであり、Xは脱離基である。これらの環状硫酸エステルは、多くの会社から市販されている物質である(2S,3S)−(−)酒石酸から誘導される、新規の4−炭素求電子種である。そのような中間体は、隣接する4個の炭素に脱離基となりうる基を有する新規の化学物質である。そのような周囲の(ambident)求電子性は、遊離型ネルフィナビル塩基合成に有用な4炭素単位の生成において、選択的に除去できる。これらの中間体は、4個の炭素−ヘテロ原子結合(うち2個は立体化学的中心である)を有する4炭素単位を生成するための一般的なシントンである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、HIV−プロテアーゼ阻害剤の合成法およびそれを合成するための中間体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の開示
本発明は、遊離型ネルフィナビル塩基の調製のための中間体として有用な、以下の新規の化合物、および、薬剤的に許容しうるその塩と溶媒和物に関する:
式6の化合物:
【0010】
【化3】

【0011】
式中、Rはそれぞれ独立してアリールまたはアルキルであり;
式6aの化合物:
【0012】
【化4】

【0013】
式中、Xはハロゲンであり;
式7の化合物:
【0014】
【化5】

【0015】
式中、Rはそれぞれ独立してアリールまたはアルキルであり;
式8の化合物:
【0016】
【化6】

【0017】
式中、Rはそれぞれ独立してアリールまたはアルキルであり;
式9の化合物:
【0018】
【化7】

【0019】
式中、Rはそれぞれ独立してアリールまたはアルキルであり;
式10の化合物:
【0020】
【化8】

【0021】
式中、Rはアリールまたはアルキルであり;
式7aの化合物:
【0022】
【化9】

【0023】
式中、Rはそれぞれ独立してアリールまたはアルキルであり;
式8aの化合物:
【0024】
【化10】

【0025】
式中、Rはアルキルであり;
式9aの化合物:
【0026】
【化11】

【0027】
式中、Rはアルキルであり;そして、
式10aの化合物:
【0028】
【化12】

【0029】
更に本発明は、本発明の新規の中間体化合物を合成および使用するための新規の方法にも関し、これは遊離型ネルフィナビル塩基の調製へのこれらの化合物の使用を含んでいる。これらの方法は以下を含む:
(1)十分条件下で式5の化合物:
【0030】
【化13】

【0031】
式中、Rは上に定義したものである;
を上に定義した式6の化合物へ変換することを含んでなる、式6の化合物の合成法;
(2)十分条件下で上に定義した式5の化合物を上に定義した式6aの化合物へ変換することを含んでなる、式6aの化合物の合成法;
(3)十分条件下で上に定義した式6の化合物を上に定義した式7の化合物へ変換することを含んでなる、式7の化合物の合成法;
(4)十分条件下で上に定義した式6aの化合物を上に定義した式7の化合物へ変換することを含んでなる、式7の化合物の合成法;
(5)十分条件下で上に定義した式7の化合物を上に定義した式8の化合物へ変換することを含んでなる、式8の化合物の合成法;
(6)十分条件下で上に定義した式8の化合物を上に定義した式9の化合物へ変換することを含んでなる、式9の化合物の合成法;
(7)十分条件下で上に定義した式9の化合物を上に定義した式10の化合物へ変換することを含んでなる、式10の化合物の合成法;
(8)十分条件下で上に定義した式10の化合物を式11の化合物:
【0032】
【化14】

【0033】
へ変換することを含んでなる、式11の化合物の合成法;
(9)十分条件下で上に定義した式6の化合物を上に定義した式7aの化合物へ変換することを含んでなる、式7aの化合物の合成法;
(10)十分条件下で上に定義した式6aの化合物を上に定義した式7aの化合物へ変換することを含んでなる、式7aの化合物の合成法;
(11)十分条件下で上に定義した式7aの化合物を上に定義した式8aの化合物へ変換することを含んでなる、式8aの化合物の合成法;
(12)十分条件下で上に定義した式8aの化合物を上に定義した式9aの化合物へ変換することを含んでなる、式9aの化合物の合成法;
(13)十分条件下で上に定義した式9aの化合物を上に定義した式10aの化合物へ変換することを含んでなる、式10aの化合物の合成法;
(14)十分条件下で上に定義した式10aの化合物を式11aの化合物:
【0034】
【化15】

【0035】
式中、Yは好適な塩のアニオンである;
へ変換することを含んでなる、式11aの化合物の合成法;
(15)以下の段階:
上に定義した式10の化合物を、上に定義した式11の化合物に変換し;
式11の該化合物を式12の化合物:
【0036】
【化16】

【0037】
に変換し;そして、
式12の該化合物をネルフィナビルメシレートに変換する;
ことを含んでなる、、ネルフィナビルメシレートの合成法;そして、
(16)以下の段階:
上に定義した式10aの化合物を、上に定義した式11aの化合物に変換し;
式11aの該化合物を上に定義した式12の化合物に変換し;そして、
式12の該化合物をネルフィナビルメシレートに変換する;
ことを含んでなる、、ネルフィナビルメシレートの調製法。
【0038】
本明細書での使用には、以下の定義を適用する:
ここで使用する“アルキル”とは、置換された、または置換されていない、直鎖または分枝鎖の基をいい、好ましくは1〜8個、より好ましくは1〜6個、最も好ましくは1〜4個の炭素原子を有する。“C−Cアルキル”とは、1〜6個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルキルを指す。代表的なC−Cアルキル基には、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ネオ−ペンチル、ヘキシル、イソヘキシルなどがある。“C−Cアルキル”という用語の定義には“C−Cアルキル”も含まれる。
【0039】
“シクロアルキル”とは、置換された、または置換されていない、飽和した、または部分的に飽和した、単環式または複環式の炭素環をいい、好ましくは環に5〜14個の炭素原子を有する。代表的なシクロアルキルには、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルなどのような、3〜7個、好ましくは3〜6個の炭素原子を有する単環式の環がある。代表的なシクロアルキルはC−Cシクロアルキルであり、これは5〜7個の炭素原子を含有する飽和炭化水素環構造である。
【0040】
ここで使用する“アリール”とは、環に6、10、14、または18個の炭素原子を含有する、芳香族で一価の単環式、二環式、または三環式の基をいい、これらの基は置換されていなくても置換されていてもよく、また、これらの基には一またはそれ以上のシクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、またはヘテロアリール基(これらの基自体は、置換されていないか、または、一またはそれ以上の好適な置換基で置換されていてもよい)が縮合していてもよい。アリール基の例にはフェニル、ナフチル、アントリル、フェナントリル、フルオレン−2−イル、インダン−5−イルなどがあるが、それらに限定されるものではない。
【0041】
“ハロゲン”とは、塩素、フッ素、臭素、またはヨウ素をいう。“ハロ”とはクロロ、フルオロ、ブロモ、またはヨードをいう。
“炭素環”とは、置換された、もしくは置換されていない、芳香環、または、飽和した、もしくは部分的に飽和した、単環式の5〜7員環もしくは二環式の7〜10員環のような単環式もしくは二環式の5〜14員環をいい、環をなす原子は全て炭素である。
【0042】
“ヘテロ環アルキル基”とは、飽和した、または飽和していない、非芳香族で一価の単環式、二環式、または三環式の基をいい、それらは環をなす原子を3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、または18個含有し、その中には窒素、酸素、および硫黄から選択されたヘテロ原子が1、2、3、4、または5個含まれ、置換された、または置換されていない基であり、そして、一またはそれ以上の、置換された、または置換されていないシクロアルキル基、アリール基、またはヘテロアリール基がそれらの基と縮合してもよい。ヘテロ環アルキル基の例にはアゼチジニル、ピローリジル、ピペリジル、ピペラジニル、モルホリニル、テトラヒドロ−2H−1,4−チアジニル、テトラヒドロフリル、ジヒドロフリル、テトラヒドロピラニル、ジヒドロピラニル、1,3−ジオキソラニル、1,3−ジオキサニル,1,4−ジオキサニル、1,3−オキサチオラニル,1,3−オキサチアニル、1,3−ジチアニル、アザビシロ(azabicylo)[3.2.1]オクチル、アザビシロ(azabicylo)[3.3.1]ノニル、アザビシロ(azabicylo)[4.3.0]ノニル、オキサビシロ(oxabicylo)[2.2.1]ヘプチル、1,5,9−トリアザシクロドデシルなどがあるが、それらに限定されるものではない。
【0043】
“ヘテロアリール”とは、芳香族で一価の単環式、二環式、または三環式の基をいい、それらは環をなす原子を5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、または18個含有し、その中には窒素、酸素、および硫黄から選択されたヘテロ原子が1、2、3、4、または5個含まれ、置換された、または置換されていない基であり、そして、一またはそれ以上の、置換された、または置換されていないシクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、またはアリール基がそれらの基と縮合してもよい。ヘテロアリール基の例にはチエニル、ピローリル、イミダゾリル、ピラゾリル、フリル、イソチアゾリル、フラザニル、イソキサゾリル、チアゾリル、ピリジル、ピラジニル、ピリミヂニル、ピリダジニル、トリアジニル、ベンゾ[b]チエニル、ナフト[2,3−b]チアントレニル、イソベンゾフラニル、クロメニル、キサンテニル、フェノキサチエニル、インドリジニル、イソインドリル、インドリル、インダゾリル、プリニル、イソキノリル、キノリル、フタラジニル、ナフチリジニル、キノキシアリニル、キンゾリニル、ベンゾチアゾリル、ベンズイミダゾリル、テトラヒドロキノリニル、シノリニル、プテリジニル、カルバゾリル、ベータ−カルボリニル、フェナントリジニル、アクリジニル、ペリミジニル、フェナントロリニル、フェナジニル、イソチアゾリル、フェノチアジニル、およびフェノキサジニルがあるが、それらに限定されるものではない。
【0044】
好適な保護基は当業者に認識できるものである。好適な保護基の例はT. GreenおよびP. Wutsの有機合成における保護基(Protective Groups in Organic Synthesis)(第2版、1991年)に見出すことができ、これは参照によりここに組み込まれる。
【0045】
好適な塩のアニオンにはハロゲン、プソイドハロゲン、硫酸、硫酸水素、硝酸、水酸化物、リン酸、リン酸水素、リン酸二水素、過塩素酸のような無機のアニオンおよびそれに関連する無機の錯体アニオン;そして、カルボン酸、スルホン酸、炭酸水素、および炭酸のような有機アニオンがあるが、それらに限定されるものではない。
【0046】
ここで使用する“DABCO”とは試薬1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンをいう。
ここで使用する“DBN”とは試薬1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノン−5−エンをいう。
【0047】
ここで使用する“DBU”とは試薬1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エンをいう。
ここで使用する“MTBE”とは溶媒メチルt−ブチルエーテルをいう。
【0048】
ここで使用する“アリールスルホン酸”とは置換された、または置換されていない以下の式の基をいう:
【0049】
【化17】

【0050】
式中、Arは芳香環である。
ここで使用する“脱離基”とは、置換反応において結合が切断して分子から離脱する基をいう。脱離基の例にはハロゲン化物、スルホン酸アレーン、スルホン酸アルキル、およびトリフレートがあるが、それらに限定されるものではない。
【0051】
ここで使用する“DMF”とは溶媒N,N−ジメチルホルムアミドをいう。
ここで使用する“THF”とは溶媒テトラヒドロフランをいう。
ここで使用する“DMAC”とは溶媒N,N−ジメチルアセトアミドをいう。
【0052】
アルキルおよびアリールの置換基の例には、アリール、シクロアルキル、飽和したヘテロ環、および部分的に飽和したヘテロ環と同様、メルカプト、チオエーテル、ニトロ(NO)、アミノ、アリールオキシ、ハロゲン、ヒドロキシル、アルコキシル、およびアシルがある。シクロアルキルの置換基の例には、アリールおよびアルキル、そして上でアルキルおよびアリールの置換基として挙げたものがある。
【0053】
代表的な置換されたアリールには、ハロ、ヒドロキシ、モノホリノ(C−C)アルコキシカルボニル、ピリジル(C−C)アルコキシカルボニル、ハロ(C−C)アルキル、C−Cアルキル、C−Cアルコキシ、カルボキシ、C−Cアルコキシカルボニル、カルバモイル,N−(C−C)アルキルカルバモイル、アミノ、C−Cアルキルアミノ、ジ(C−C)アルキルアミノ、または式−(CH−Rの基(式中、aは1、2、3、または4であり;Rはヒドロキシ、C−Cアルコキシ、カルボキシ、C−Cアルコキシカルボニル、アミノ、カルバモイル、C−Cアルキルアミノ、またはジ(C−C)アルキルアミノである)からそれぞれ独立して選択される1個以上の置換基、好ましくは1〜3個の置換基で置換された、フェニルまたはナフチル環がある。
【0054】
別の置換されたアルキルはハロ(C−C)アルキルであり、これはそれに結合する1〜3個のハロゲン原子を有する、1〜4個の炭素原子をもつ直鎖または分枝鎖のアルキルである。代表的なハロ(C−C)アルキル基にはクロロメチル、2−ブロモエチル、1−クロロイソプロピル,3−フルオロプロピル、2,3−ジブロモブチル、3−クロロイソブチル、ヨード−t−ブチル、トリフルオロメチルなどがある。
【0055】
別の置換されたアルキルはヒドロキシ(C−C)アルキルであり、これはそれに結合する1個の水酸基を有する、1〜4個の炭素原子をもつ直鎖または分枝鎖のアルキルである。代表的なヒドロキシ(C−C)アルキル基にはヒドロキシメチル、2−ヒドロキシエチル、3−ヒドロキシプロピル、2−ヒドロキシイソプロピル、4−ヒドロキシブチルなどがある。
【0056】
更に別の置換されたアルキルはC−Cアルキルチオ(C−C)アルキルであり、これはC−Cアルキルチオ基が結合した、直鎖または分枝鎖のC−Cアルキル基である。代表的なC−Cアルキルチオ(C−C)アルキル基にはメチルチオメチル、エチルチオメチル、プロピルチオプロピル、sec−ブチルチオメチルなどがある。
【0057】
更に別の置換されたアルキルはヘテロ環(C−C)アルキルであり、これはそれに結合する1個のヘテロ環を有する、1〜4個の炭素原子をもつ直鎖または分枝鎖のアルキルである。代表的なヘテロ環(C−C)アルキル基にはピローリルメチル、キノリニルメチル、1−インドリルエチル、2−フリルエチル、3−チエン−2−イルプロピル、1−イミダゾリルイソプロピル、4−チアゾリルブチルなどがある。
【0058】
更に別の置換されたアルキルはアリール(C−C)アルキルであり、これは1〜4個の炭素原子とそれに結合する1個のアリール基を有する、直鎖または分枝鎖のアルキルである。代表的なアリール(C−C)アルキルにはフェニルメチル、2−フェニルエチル、3−ナフチルプロピル、1−ナフチルイソプロピル、4−フェニルブチルなどがある。
【0059】
例えば、ヘテロ環アルキルおよびヘテロアリールはハロ、ハロ(C−C)アルキル、C−Cアルキル、C−Cアルコキシ、カルボキシ、C−Cアルコキシカルボニル、カルバモイル、N−(C−C)アルキルカルバモイル、アミノ、C−Cアルキルアミノ、ジ(C−C)アルキルアミノ、または構造−(CH−Rを有する基(式中、aは1、2、3、または4であり、Rはヒドロキシ、C−Cアルコキシ、カルボキシ、C−Cアルコキシカルボニル、アミノ、カルバモイル、C−Cアルキルアミノ、またはジ(C−C)アルキルアミノである)からそれぞれ独立して選択される1、2、または3個の置換基で置換することができる。
【0060】
置換されたヘテロ環アルキルの例には3−N−t−ブチルカルボキシアミドデカヒドロイソキノリニルおよび6−N−t−ブチルカルボキシアミドオクタヒドロ−チエノ[3,2−c]ピリジニルがあるが、それらに限定されるものではない。置換されたヘテロアリールの例には3−メチルイミダゾリル、3−メトキシピリジル、4−クロロキノリニル、4−アミノチアゾリル、8−メチルキノリニル、6−クロロキノキサリニル、3−エチルピリジル、6−メトキシベンズイミダゾリル、4−ヒドロキシフリル、4−メチルイソキノリニル、6,8−ジブロモキノリニル、4,8−ジメチルナフチル、2−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリニル、N−メチル−キノリン−2−イル、2−t−ブトキシカルボニル−1,2,3,4−イソキノリン−7−イルなどがあるが、それらに限定されるものではない。
【0061】
“薬剤的に許容しうる溶媒和物”とは、本発明の化合物の生物学的活性成分の生物学的有効性および性質を保持する溶媒和物を指す。
薬剤的に許容しうる溶媒和物の例には、水、イソプロパノール、エタノール、メタノール、DMSO、酢酸エチル、酢酸、またはエタノールアミンを使用して調製した化合物があるが、それらに限定されるものではない。
【0062】
固形製剤の場合、本発明の化合物は、安定および準安定結晶性の形、そして等方性および非結晶性の形のような、種々の形であってもよいことは理解されるところであり、これらは全て本発明の範囲に含まれる。
【0063】
“薬剤的に許容しうる塩”とは、遊離の酸および塩基の生物学的有効性および性質を保持し、かつ、生物学的に、または他の意味で不適当ではない塩を指す。
薬剤的に許容しうる塩の例には硫酸塩、ピロ硫酸塩、硫酸水素塩、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、リン酸塩、リン酸一水素塩、リン酸二水素塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸塩、プロピオン酸塩、デカン酸塩、カプリル酸塩、アクリル酸塩、ギ酸塩、イソ酪酸塩、カプロン酸塩、ヘプタン酸塩、プロピオル酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、セバシン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、ブチン−1,4−ジオエート、ヘキシン−1,6−ジオエート、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、メトキシ安息香酸塩(methoxyenzoates)、フタル酸塩、スルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩、フェニル酢酸塩、フェニルプロピオン酸塩、フェニル酪酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、Y−ヒドロキシ酪酸塩、グリコール酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、プロパンスルホン酸塩、ナフタレン−1−スルホン酸塩、ナフタレン−2−スルホン酸塩、およびマンデル酸塩があるが、それらに限定されるものではない。
【0064】
本発明の化合物が塩基の場合、当該分野で知られる好適な方法により好ましい塩を調製してもよく、そのような方法は、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などのような無機酸、または、酢酸、マレイン酸、コハク酸、マンデル酸、フマル酸、マロン酸、ピルビン酸、シュウ酸、グリコール酸、サリチル酸、グルクロン酸およびガラクツロン酸のようなピラノシジル酸、クエン酸および酒石酸のようなアルファ−ヒドロキシ酸、アスパラギン酸およびグルタミン酸のようなアミノ酸、安息香酸およびケイ皮酸のような芳香族酸、p−トルエンスルホン酸およびエタンスルホン酸のようなスルホン酸などのような有機酸による遊離の塩基の処理を含む。
【0065】
本発明の化合物が酸の場合、当該分野で知られる好適な方法により好ましい塩を調製してもよく、そのような方法は、アミン(第一級、第二級、または第三級)、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の水酸化物などのような、無機または有機塩基による遊離の酸の処理を含む。好適な塩の例には、グリシンおよびアルギニンのようなアミノ酸、アンモニア、第一級、第二級、および第三級アミン、そして、ピペリジン、モルホリン、およびピペラジンのような環状アミンから誘導される有機塩と、ナトリウム、カルシウム、カリウム、マグネシウム、マンガン、鉄、銅、亜鉛、アルミニウム、およびリチウムから誘導される無機塩がある。
【0066】
少なくとも1個のキラル中心を含有する本発明の化合物は全て、単一の立体異性体、ラセミ化合物、および/または、鏡像異性体および/もしくはジアステレオマーの混合物として存在してもよい。そのような単一の立体異性体、ラセミ化合物、およびそれらの混合物は全て、本発明の範囲に含まれるものである。好ましくは、本発明の化合物は少なくとも90%の単一の異性体(80%の鏡像異性体またはジアステレオマー過剰)を含有する形態で使用され、より好ましくは少なくとも95%(90%の鏡像異性体またはジアステレオマー過剰)、更に好ましくは少なくとも97.5%(95%の鏡像異性体またはジアステレオマー過剰)、そして最も好ましくは少なくとも99%(98%の鏡像異性体またはジアステレオマー過剰)である。ここで単一の立体異性体とされる化合物は、単一の異性体を少なくとも90%含有する形態で使用される化合物をいう。
【0067】
スキーム1
【0068】
【化18】

【0069】
【化19】

【0070】
本発明の一般構造6aの化合物は、スキーム1に示すように、D−酒石酸から多くの工程を経て合成できる:
最初に、D−酒石酸を式2の中間体に変換するには、異なる経路が可能である。まずフィッシャー型のエステル化を介して式1の化合物に変換してもよく(段階2)、これはアルキルもしくはアリールスルホン酸のような有機酸、または塩酸、硫酸、もしくは硝酸のような無機酸の存在下でアルコールを還流する。また式1の化合物は多くの会社から市販されている。
【0071】
次いで、多種にわたるアセタールまたはケタール保護基のいずれかを使用して式1の化合物を式2の保護されたジエステルに変換することができる(段階3)。R基はアセトニド、シクロヘキシリデンケタール、ベンジリデンアセタール、2−メトキシエトキシエチルアセタール、またはそれに関連するアセタールもしくはケタールのような、アセタールまたはケタールからなるものであってもよい。相当するケトンまたはアルデヒドと式1の化合物との酸で促進される縮合によってそのような基を配してもよい。これらは、p−トルエンスルホン酸とそれに関連するアルキルスルホン酸およびアリールスルホン酸、トリフルオロ酢酸、およびそれに関連するpKが2未満の有機カルボン酸のような有機酸、そして、硫酸、塩酸、リン酸、および硝酸のような無機酸のどちらによっても促進される。
【0072】
あるいはまた、アルコールRとアルデヒドまたはケトン成分との好適なエステル化を選択して、単一の反応容器内でD−酒石酸を式2の化合物に変換してもよい(段階1)。そのような反応は従前の化学文献に開示されている反応をモデルとしてもよい(Mash, E. A.; Nelson, K. A.; Van Deusen, S.; Hemperly, S. B. Org. Synth. Coll. Vol. VII, 155, 1990を参照すること)。
【0073】
式2の化合物の式3の化合物への還元(段階4)は、アルコール性媒質に混合したNaBH、THF、ジエチルエーテル、ジオキサン、およびMTBEのようなエーテル性溶媒に混合した水素化ホウ素リチウムまたは水素化アルミニウムリチウムとそれに関連する置換されたアルミニウムおよび水素化ホウ素のような、種々の還元剤を使用して行うことができる。
【0074】
式3のジオールは、多くの方法によって式4の化合物に変換することができる(段階5)。脱離基は、好ましくはハロゲン、アリール、またはアリールスルホネートである。ジオールを2当量以上の塩化p−トルエンスルホニル、塩化メタンスルホニルのような相当するハロゲン化スルホニルと、トリエチルアミン、ジエチルアミン、ジエチルイソプロピルアミン、DABCO、またはそれに関連するジ−もしくはトリアルキルアミンのような有機アミン塩基、またはDBUおよびDBNのようなアミジン塩基の存在下で反応させて、スルホネートを生成することができる。Xがハロゲンである化合物は、ジメチルホルムアミドおよびジメチルスルホキシドのような両性非プロトン性溶媒中で、そのようなスルホネート中間体をLiClまたはLiBrのような金属ハロゲン化物と反応させて調製することができる。あるいはまた、PBrおよびSOClのようなこの目的のための古典的な試薬を使用してアルコールから直接ハロゲン化物を合成してもよい。
【0075】
水溶性またはアルコール性酸性条件下で、式4の化合物を式5のジオールに変換してもよく(段階6)、これは遷移金属のハロゲン化物または第三族金属のハロゲン化物のようなルイス酸、またはp−トルエンスルホン酸とそれに関連するアルキルおよびアリールスルホン酸、トリフルオロ酢酸およびそれに関連するpK6未満の有機カルボン酸のようなプロトン性有機酸、そして硫酸、塩酸、リン酸、および硝酸のような無機酸によって促進される。RおよびRがメチルであり、Rがp−トルエンスルホネートである式4の化合物はAldrich Chemical社から市販されていることに留意されたい(以下のスキーム2を参照すること)。
【0076】
2段階法を用いて式5のジオールを式6および式6aの環状硫酸エステルに変換してもよく(段階7)、その方法では、ニート(neat)の、またはハロゲン化メタンおよびエタン、エステル、およびエーテルのような最も一般的な有機溶媒に混合した、塩化チオニルまたはイミダゾールチオニルの作用により、環状亜硫酸エステル中間体を生成する。反応は、トリエチルアミン、ジエチルアミン、ジエチルイソプロピルアミン、DABCO、またはそれに関連するトリアルキルアミンのような有機アミン塩基を伴ってもよい。環状亜硫酸エステル中間体の式6の硫酸エステルへの酸化は通常、Ru(III)触媒、および、過ヨウ素酸ナトリウムまたは次亜塩素酸ナトリウムもしくはカルシウムである最終的な(ultimate)酸化剤と共に、水性有機溶媒混液中で行う。あるいはまた、この段落の塩化チオニルおよびジイミダゾールチオニルについて記載したのと同一の反応条件下で塩化スルフリルまたはジイミダゾールスルフリルを使用して、ジオール5を環状硫酸エステル6に直接変換してもよい。
【0077】
遊離型ネルフィナビル塩基の生成経路には、スキーム2および3に示すような一連の中間体が含まれ、それぞれアジドアルコールおよびフタルイミドアルコール中間体を介して進行する。どちらの過程も式6および6aの環状硫酸エステル中間体を経る。その時点から後は分岐し、全く異なる経路で遊離型ネルフィナビル塩基を生成する。
【0078】
スキーム2:アジドアルコール経路を介した(2S,3S)−(−)−酒石酸からの遊離型ネルフィナビル塩基の合成
【0079】
【化20】

【0080】
【化21】

【0081】
【化22】

【0082】
スキーム2は、上に詳細を記載したような変換反応を経て(2S,3S)−(−)−酒石酸をジアリールもしくはジアルキルスルホネート環状硫酸エステル6に変換する、一連の反応を示す。この反応機構には7を経由する6から8への変換も含まれるが、そこではアジ化ナトリウムが、第一級のアルキルまたはアリールスルホン酸エステル末端より不安定な硫酸官能基を独占的に攻撃し、アジドアルコール付加物8を収率95%で生成する。アジ化ナトリウムに加え、無機の金属アジ化物または有機のテトラアルキルアンモニウムアジ化物を使用してもよい。この変換に使用する溶媒は、アセトン、THF、DMF(N,N,−ジメチルホルムアミド)、DMAC(N,N−ジメチルアセトアミド)、DMSO、またはN−メチル−2−ピローリデンのような極性有機溶媒の水溶液で、25℃〜70℃の範囲内であるが、好ましい条件は水性アセトンで25℃である。この反応は種々の極性有機溶媒中で行うことができる。同じ化学が6のジハロゲン化類似体(6a)にも同様に適用されてきた。スキームに示す中間体6、相当するジハロゲン化類似体(6a)、およびそれに続く化合物を初めて調製したが、これは遊離型ネルフィナビル塩基の合成に有用である。発明者の知る限り、これは、脱離基を有する第一級炭素中心の存在下における分子内硫酸エステルとの、選択的な窒素(または他のいずれの)求核反応の最初の例である。無機のプロトン性強酸を使用して硫酸エステル7を加水分解する。代表的な理想的条件には、THFのような溶媒に混合した1〜2当量の水と共に使用するものがある。
【0083】
8から9への接触水素化は、Pd/炭素、水酸化パラジウム、および関連するPd(II)種のような種々のパラジウムと共に、1気圧、25℃という低圧、低温で実施することができる。この反応に好適な溶媒には、炭素数7以下のアルコール、酢酸エチルおよび関連する炭素数8以下のエステル、THF、および他のエーテルがある。HCl、HBr、硫酸、または硝酸のような プロトン性の強酸を使用する。好ましい条件は、溶媒としてメタノールとTHFの混合液を使用し、6MのHClの存在下、1気圧の水素で、5%パラジウム/炭素触媒を使用する。
【0084】
塩基の存在下でアミン塩を塩化3−アセトキシ−2−メチル−ベンゾイル(AMBCl)とカップリングさせると、オキサゾリン10が約90%の収率で生成する。この化合物およびその合成法は、米国特許出願第08/708,411号、発明者;M. Deason および K. Whitten、“HIV−プロテアーゼ阻害剤の合成のための中間体およびHIV−プロテアーゼ阻害剤の合成法”(1996年9月5日出願)に開示されている。カップリングは、THF、ジエチルエーテル、ジオキサン、メチルt−ブチルエーテル、または他のエーテル;酢酸エチル、酢酸メチル、および酢酸イソプロピルのようなエステル、ハロゲン化メタンおよびエタン、クロロベンゼンおよび他のハロゲン化ベンゼンのようなハロゲン化溶媒、アセトニトリルおよびプロピオニトリルのようなニトリル;エタノール、イソプロパノール、t−ブタノール、および関連するアルコールのような低級アルコール、そしてジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピローリドンおよび関連するアミド含有溶媒のような極性有機溶媒のような、最も一般的な有機溶媒中で行ってもよい。しばしば塩基が使用され、金属の水酸化物、炭酸水素塩、および炭酸塩のような多くの無機塩基、または、トリエチルアミン、ジエチルアミン、ジエチルイソプロピルアミン、DABCO(1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン)、または関連するジもしくはトリアルキルアミンのようなアミン、DBM(1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノン−5−エン)およびDBU(1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン)のようなアミジン塩基などの有機塩基のうちのいずれでもよい。25℃で数時間、THFに混合したトリエチルアミンを使用するのが好ましい条件であることが見出された。
【0085】
次いで、塩基および3S,4aR,8aR−3−N−t−ブチルカルボキシアミド−デカヒドロイソキノリン(PHIQ。これはProcos SpA社およびNSC Technologies社から購入でき、また米国特許第5,256,783号(これは参照によりここに組み込まれる)に記載される方法に従って調製することもできる)と処理して定量的に11を生成する。いくつかの塩基/溶媒の組合せの入れ替えが、この変換を行うのに適用できる。塩基は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、または炭素数7以下の類似のアルキルアルコールのようなアルコール性媒体に混合した、金属の炭酸塩、炭酸水素塩、または水酸化物のいずれでもよい。この過程に好ましい温度は25〜70℃の範囲内、または溶媒混合液の還流温度である。好ましい条件では、60℃で5〜10時間、イソプロパノールまたはメタノールに混合した炭酸カリウムを使用する。
【0086】
このスキームにおける次の段階は11とチオフェンオキシドとの反応であり、これによりオキサゾリン環が開裂して遊離型ネルフィナビル塩基を生成する。この変換は、ニートで、あるいは極性有機溶媒中で実施できる。好ましい溶媒はシクロヘキサノンやメチルイソブチルケトンのような炭素数が5より多いケトン、または、THFやジオキサンおよび関連する環状もしくは非環状エーテルのようなエーテルである。塩基を必要としてもよく、使用できる塩基には、金属の炭酸塩、炭酸水素塩、または水酸化物がある。反応は一般に溶媒の還流温度、またはそれに近い温度で行う。好ましい条件では、塩基として炭酸水素カリウムを使用し、メチルイソブチルケトンに混合した過剰量のチフェノール(thiphenol)を使用して還流する。
【0087】
スキーム3:フタルイミドアルコール経路を介した(−)−酒石酸からの遊離型ネルフィナビル塩基の合成
【0088】
【化23】

【0089】
環状硫酸エステル6は、スキーム2および3に概説する反応経路の両方に共通の中間体である。更に、後者の場合、6をフタルイミドカリウムと反応させて得られるフタルイミドアルコール付加物7aが、保護されたアミン、および次の段階のオキサゾリン環生成に有用な前駆体の両方の役割をする。この変換は水性アセトンおよびDMF(N,N−ジメチルホルムアミド)中で速やかに進行するが、N−メチル−2−ピローリドンおよびN,N−ジメチルアセトアミドのような溶媒も使用できる。マレイミドおよびスクシンイミドから誘導されるイミド塩基は、この過程のフタルイミドの代替として機能しうる。7aから遊離型ネルフィナビル塩基を生成する反応経路は、スキーム2に示すアジドアルコールの経路とかなり異なるものである。スキーム3では、塩基/アルコール混合液の存在下で7aをエポキシオキサゾリン8aに変換するため、4炭素単位中に、異なる反応特性を有する2個の第一級求電子部位が生ずる。そのような塩基/アルコールの組み合わせには、アルキルアルコールと、無機の金属の炭酸塩、炭酸水素塩、または水酸化物がある。好ましい条件では、メタノールに混合した炭酸カリウムを使用する。使用するアルコールが厳密に何であるかにより、生成するエステルの機能性が決定する。8aのエポキシド末端を同一の反応容器内でPHIQと反応させ、約90%の収率で9aを生成する。
【0090】
9aをチオフェンオキシドと反応させてオキサゾリン環を開裂し、中間体10aを生成する。この変換は、ニートで、またはいずれかの極性有機溶媒中で行うことができる。好ましい溶媒は、シクロヘキサノンやメチルイソブチルケトンのような炭素数が5より大きいケトン、または、THF、ジオキサンおよび関連する環状もしくは非環状エーテルのようなエーテルである。塩基を必要としてもよく、使用できる塩基には、金属の炭酸塩、炭酸水素塩、または水酸化物がある。反応は一般に溶媒の還流温度、またはそれに近い温度で行う。好ましい条件では、塩基として炭酸カリウムを使用し、THFに混合した過剰量のチオフェノールを使用して還流する。次いで、生成したイソイミド10aをエタノールアミンを用いて加水分解し、遊離型アミン11aを生成する(全収率70%)。また、アルコール性溶媒に混合したヒドラジンを使用することもできる。11aはアルキルまたは芳香族酸塩のいずれとしてでも単離できるが、ショウノウスルホン酸および安息香酸が好ましい。その後、11aの塩または遊離型塩基を塩化3−アセトキシ−2−メチルベンゾイル(AMBCl)とカップリングさせて遊離型ネルフィナビル塩基(12)を生成する。この変換の方法は、米国特許出願第08/708,411号、発明者;M. Deason および K. Whitten、“HIV−プロテアーゼ阻害剤の合成のための中間体およびHIV−プロテアーゼ阻害剤の合成法”(1996年9月5日出願)に開示されており、これは参照によりここに組み込まれる。このスキームに記載される化合物7a〜11aは新規のものであり、遊離型ネルフィナビル塩基の調製に有用である。
【0091】
フタルイミドアルコールの経路は11aの段階でクロロアルコールの化学を通り(米国特許出願第08/708,411号、発明者;M. Deason および K. Whitten、“HIV−プロテアーゼ阻害剤の合成のための中間体およびHIV−プロテアーゼ阻害剤の合成法”(1996年9月5日出願)に開示されている)、高価なAMBClを最終段階で導入するので、先に記載したアジドアルコール法より安価であるかもしれない。商業用の製造のためには、フタルイミドアルコール経路にはクロロアルコール経路に関して、いくつかの利点がありうる。
【実施例】
【0092】
実施例の部
I.酒石酸経路のトシレート/アジ化物バージョンの方法
【0093】
【化24】

【0094】
【表1】

【0095】
参考文献: Mash, E. A.; Nelson, K. A.; Van Deusen, S.; Hemperly, S. B. Org. Synth. Coll. Vol. VII, 155(1990)
5Lの丸底フラスコに、505g(3.36mol)のD−酒石酸(Fluka、98〜99%ee)、1425mLの2,2−ジメトキシプロパン、20mLのメタノール、2.0gのTsOH水和物、および2250mLのシクロヘキサンを添加した。混合液を撹拌しながら還流し、アセトン/シクロヘキサンおよびメタノール/シクロヘキサン共沸混合物を52〜54℃で2日間にわたり徐々に留去した。これは、還流比約8:1を使用して種々のテークオフヘッド(takeoff head)で実施した。ヘッド温度が低下した時点で、加熱を増加して残存する2,2−ジメトキシプロパンおよび残存するシクロヘキサンを留去した。液体が出なくなった時点で加熱を停止し、残存する赤橙色の液体をH NMRで分析した。これはほぼ純粋な2からなっていた。この物質は、更なる精製を行わずに還元に使用することができた。H NMRのスペクトルは市販の物質と同一であることを示した:H NMR(CDCl)δ4.8(s、2H)、3.8(s、6H)、1.4(s、6H)。
【0096】
【化25】

【0097】
【表2】

【0098】
参考文献:Takano, S.ら;Synthesis, 1986e, 811
方法
1リットルの3つ口フラスコに、マグネティックスターラー、温度計、および滴下漏斗を配し、アルゴンでパージした。NaBH(13.05g、0.345mol)を350mlのエタノールに懸濁し、氷浴で5℃に冷却した。化合物2(50g、0.23mol)を150mlのエタノールに懸濁し、温度を20℃未満に保持しながら滴下添加した。次いで混合液を5〜10℃で2.5時間撹拌した。その後、これをロータリーエバポレーター(rotovap)で約1/3容量に濃縮し、MTBEで溶媒交換をした。 MTBE溶液の最終容量は約500mlであった。次にこれを濾過してボラン塩を除去し、75mlの飽和NaClで洗浄した。(生成物は非常に水溶性が高いので、洗浄は最小限にすべきである。)その後これをロータリーエバポレーターで濃縮し、黄色の油を得た。24.05g、収率65%。(出発物質に基づく修正収率は〜82%であり、〜20%の脱保護したジオールを含有した。)これは、更なる処理を行わずにトシル化に使用できた。H NMRスペクトルは市販の物質と同一であることを示した:H NMR(CDCl)δ4.0(br s、2H)、3.8(br d、2H)、3.7(br d、2H)、3.6(br s、2H)、1.4(s、6H)。
【0099】
【化26】

【0100】
【表3】

【0101】
参考文献:J. Org. Chem. 1980, 45, 2995
方法
ジオール(351g、2.16mol)を2.0LのMTBEに溶解し、EtN(640ml、466g、4.60mol)を添加した。TsCl(860g、4.51mol、2.08当量)を固体で一度に添加し、温度を40℃未満に保持した。混合液を、添加終了後17時間撹拌した。TLC分析は、CHCl/EtOAc(70:30)を使用してPMA展開で実施できる。ジオール(R=0.10)、モノトシレート(R=0.0.45)、およびジトシレート(R=0.88)は反応の進行中に容易に観測できる。反応混液を水(2x2.0L)、1N HCl(1x1.0L)および食塩水(1x1.0L)で逐次洗浄した。相をNaSOで乾燥し、エバポレートして橙色の油を得た(873g、85%)。これをH NMRで分析したところ、ジトシレートに約10%のTsClが混入していることを示した。これは、更なる精製を行わずに直接加水分解反応に使用できた。H NMRのスペクトルは市販の物質と同一であることを示した:H NMR(CDCl)δ7.8(d、4H)、7.4(d、4H)、4.2−4.0(重複 m、6H)、2.4(s、6H)、1.2(s、6H)。
【0102】
【化27】

【0103】
【表4】

【0104】
方法
前段階で得た粗アセトニド(約873g)を4倍容の95%エタノールに溶解し、1倍容の1M HClを添加した。混合液を加熱し、3時間還流した。溶液の少量をエバポレートしH NMRで分析したところ、反応が完了していることを示した。二つの方法を使用してよい。溶媒をエバポレートして生成物を直接得てもよく、これはH NMRで溶媒以外に、他の有機物質は生成されないことを示す。しかしながら、これは通常EtOHと水が混入する。あるいはまた、溶媒の大部分をロータリーエバポレートして除去し、残存物をEtOAcで(2回)抽出してもよい。合一した抽出液を水および食塩水で洗浄し、NaSOで乾燥した。濾過して乾燥剤を除去し、ロータリーエバポレートで溶媒を除去して、571gの濃灰褐色(dark tan gray)の固形物を得た(ジオールアセトニドから61%)。H NMRはジトシレートジオールに少量のEtOAcが混入していることを示した。これを直接次の段階に使用した。H NMRスペクトルは市販の物質と同一であることを示した:H NMR(CDCl)δ7.8(d、4H)、7.4(d、4H)、4.1(m、4H)、3.9(app t、2H)、3.0(br s、2H)、2.4(s、6H)。
【0105】
【化28】

【0106】
【表5】

【0107】
方法
2リットルの3つ口フラスコにジオール5(100g、0.23mol)および750mLの塩化メチレンを入れた。これを氷浴で5℃に冷却しアルゴンでパージした。塩化チオニル(71.2g、44ml、0.6mol)を滴下添加し、次いで混合液を一晩(18時間)放置して室温とした。ガスの放出が終始観測された。その後、混合液をロータリーエバポレーターで濃縮し、105.5gの褐色の油を得た(収率96%)。反応に次いでTLCを行うことができる(20%EtOAc/CHCl:SiO)。この物質はすぐ次の段階に使用できる。
【0108】
【表6】

【0109】
方法
3リットルの3つ口フラスコに亜硫酸エステル5a(105.5g、0.22mol)を400mLのアセトニトリルおよび1000mLの脱イオン水と共に入れた。これは油と溶媒の2相の混合液となった。塩化ルテニウム(III)(20mg)を添加し、混合液をアルゴン下で撹拌した。過ヨウ素酸ナトリウム(67.4g、0.32mol)を4回に分けて添加した。添加後、発熱は観測されなかった。この混合液を室温で2時間撹拌し、反応混液から生成物を徐々に結晶化させた。これを濾過し、50℃の真空オーブンで一晩乾燥した。94.6gの褐色固形物を得た(収率87%)。濾液をメチルt−ブチルエーテルで抽出し、濃縮して更に6gの物質を得、全収率は93%であった。H NMR(CDCl)δ7.8(d、4H)、7.4(d、4H)、5.0(m、2H)、4.4(m、4H)、3.0(br s、2H)、2.5(s、6H)。
【0110】
【化29】

【0111】
【表7】

【0112】
方法
環状硫酸エステル(545.4g、1.10mol)を2500mLのアセトンおよび500mLの水に溶解した(沈殿は存在しなかった)。周囲温度で撹拌しつつ、アジ化ナトリウム(1.21mol、1.1当量、78.6g)を10分間にわたり4回に分けて添加した。温度上昇は観測されなかった。反応に次いでHPLCを行った。24時間後、HPLCは反応液が5%の出発物質と単一の主生成物を含有することを示した。更に5gのNaNを添加し、反応液を更に18時間撹拌した。この時点でのHPLC分析では、出発物質が消費され、橙色の溶液を生成したことを示した。溶媒の大部分を真空で除去し、橙色の油から白色の固形物を結晶化させた。この水で湿った固まりを注意深くフラスコから取り出して濾過し、水(約 1L)で洗浄してグーチゴムのついたブフナー漏斗で圧搾乾燥した。これにより955.6gの湿性固形物を得た(expect 613.3g)。これを直接次の段階に使用した。
【0113】
【化30】

【0114】
【表8】

【0115】
方法
この固形物を2200mLのTHFに溶解し、0.5mLの濃硫酸を添加した。混合液はわずかに混濁した。沈殿物および発熱は観測されなかった。HPLC分析では、1時間後、全く反応していないことを示した。8mLの濃硫酸を添加し、混合液を周囲温度で18時間撹拌した。この時点のHPLC分析は、約40:60 出発物質/加水分解産物を示し、約200mLの水を反応液から分離、除去した。混合液を750gの硫酸ナトリウムを通して濾過し、更に5mLの硫酸を添加した。全反応時間で43時間後、HPLC分析では硫酸エステルが存在しないことを示した。少量を抽出したところ、アジドアルコールのみで、硫酸エステルは存在しないことを示した。
【0116】
12Lのガラス反応器で、溶液を2200mLのメタノール、500mLの6N HCl、および50gの5%Pd/活性炭素で希釈した。水素ガスを18時間、徐々に溶液に通した。TLC分析(EtOAc/CHCl 10:90)は痕跡量のアジ化物を示したため、反応液を更に20時間撹拌した。混合液を焼結ガラス漏斗上のセライト層を通して濾過し、1.5LのTHFで洗浄し、明黄色の溶液を得た。これをエバポレートして、非常に湿性の高い、べたべたした油を得た。これを3LのEtOAcに溶解し、500mLの水および500mLの食塩水で洗浄した。溶液をNaSOで乾燥し、エバポレートして、464.0gの淡褐色の油を得た。これをH NMRで分析したところ、7%のEtOAcが混入していることを示した。混合物は431gのアミン塩を含有していると考えられる。H NMR(CDOD)δ 7.8(重複 d、4H)、7.5(重複 d、4H)、4.3(dd、1H)、4.2−4.0(重複 m、4H)、3.6(m、1H)、2.6(s、6H);高分解能質量分析スペクトルでは、C1824NOとしたときの計算値:430.0994;実測値430.0983。
【0117】
【化31】

【0118】
【表9】

【0119】
方法
この油を3.0LのTHFに溶解し、Ar下で9℃に冷却した。AMB−Cl(206.7g、0.97mol、1.05当量)を液体で添加した。1000mL(約10当量)のEtNを600mLのTHFに混合した溶液を添加用漏斗を通して徐々に添加し、温度を観測した。内部温度は溶液の最初の300mL(最初の約1.5当量)を添加する間に25℃まで上昇して沈静した。溶液の残りを20分間にわたり迅速に添加して、塩酸トリエチルアミンの沈殿を含む褐色の溶液を得た。冷浴を除去し、混合液を周囲温度で16時間撹拌した。溶液の少量を調べたところ、出発物質は存在せず、完全にオキサゾリンに変換されたことを示した。溶媒の大部分を真空で除去して残渣を2LのEtOAcに溶解し、水、飽和NaHCO水溶液(1L)、水(1L)、および食塩水(1L)で逐次洗浄した。溶液をNaSOで乾燥し、エバポレートして、ヒドロキシトシレートの橙色の油を得た。H NMR(CDCl)δ 7.8(d、4H)、7.6(d、2H)、7.4(d、4H)、7.2(t、1H)、7.1(d、1H)、4.4−4.2(重複 m、4H)、4.1(dd、1H)、3.m、1H)、2.5(s、3H)、2.4(s、3H)、2.3(s、3H);高分解能質量分析スペクトルでは、C2123NOS+Csとしたときの計算値:566.0250;実測値:566.0275。
【0120】
【化32】

【0121】
【表10】

【0122】
方法
ヒドロキシトシレート10を、12.50gのPHIQ(52.3mmolのPHIQ、約1.0当量)および159mmol(3当量)のKCOと共に、175mLのIPAに溶解した。混合液を70℃に加熱して20時間撹拌した。濃厚な白色沈殿が反応混液から徐々に生成した。この時点でのTLC分析(塩化メチレン/EtOAc 70:30)は、エポキシドまたはヒドロキシトシレートを示さず、ベースラインのストリーク/スポットのみを示した。IPAの大部分を真空で除去して残渣を300mLの水に移し、6N HClでpHを約7〜8とした。混合液を30分間撹拌し、濾過した。生成した白色固形物を水でよく洗浄して真空下で乾燥し、19.0g(アジド硫酸エステルから68%)のPHIQ付加物11のオフホワイト色の固形物を得た。粗生成物は、別の経路で生成したものと同一である。粗生成物を、180mLのメタノールと3675mLの水の混合液に懸濁し、40℃で1時間加熱した。固形物を40℃で濾過し、500mLの水で洗浄した。湿った固形物を反応容器に再度充填し、3Lの水と300mLのメタノールに懸濁して58℃に加熱した。混合液を約50℃に冷却して濾過した。濾過した固形物を1Lの水、1Lのn−BuOAcで逐次洗浄した。固形物を約28mmHgで乾燥し、215.7gの11を得た。これはHPLC分析したところ、91.3%の純度であった。H NMR(DMSOd)δ 9.6(br s、1H)、7.4(br s、1H)、7.2−7.0(重複 m、2H)、6.9(d、1H)、4.8(br s、1H)、4.5(m、1H)、4.3(app t、1H)、4.2(app t、1H)、3.8(m、1H)、2.9(br d、1H)、2.6(br d、1H)、2.4−1.4(重複 m、15H)、2.4(s、3H)、1.2(s、9H);13C NMR(DMSOd)d 173.6、164.3、156.5、130.1、126.5、125.2、120.9、117.3、70.5、70.4、70.2、67.9、60.1、59.5、50.8、36.5、34.0、31.5、31.0、29.8、26.9、26.5、21.0、14.0;高分解能質量分析スペクトルでは、C2640としたときの(M+H)の計算値:458.3019;実測値:458.3008。
【0123】
【化33】

【0124】
方法
化合物11(215g、1.0当量)を、KHCO(94.1g、2.0当量)およびチオフェノール(193mL、4.0当量)と共に1720mLのMIBKに懸濁した。混合液に窒素を2分間スパージ(sparged)した後、徐々にスパージしながら加熱して6.5時間還流した。トルエンを添加し(1720mL)、混合液を1時間還流した後、5.5時間にわたり徐々に放冷させて周辺温度とした。混合液を濾過して860mLのトルエンで洗浄した。固形物を約28mmHg、55〜60℃で、一晩乾燥し、317gの粗化合物12を得た。これをアセトンおよび水のそれぞれ2377mLずつの混合液に懸濁し、約60℃で2.5時間加熱した。混合液を徐々に放冷させて周辺温度とし、濾過した。固形物を850mLのアセトンと850mLの水の混合液で洗浄し、55〜60℃で24時間乾燥して215gの生成された化合物12を得た。この物質をHPLCで分析したところ98%の純度であり、H NMRスペクトルは別の経路で調製した物質と同一であった。
【0125】
II.酒石酸経路のトシレート/フタルイミドバージョンの方法
フタルイミドアルコール(7a)の調製法:
【0126】
【化34】

【0127】
【表11】

【0128】
化合物6、フタルイミドカリウム、アセトン、および198mLの水を22Lの反応容器に充填して撹拌した。発熱が観測された(35〜40℃)。発熱が沈静するまで混合液を4時間撹拌した。混合液をHPLCで分析して反応の完了を確認した(反応混液3滴を25倍容のアセトニトリルおよび0.1M酢酸アンモニウムの溶液で希釈した)。混合液を50℃に加温した。66mLの濃硫酸を10分間にわたって添加した。上記のようにHPLCで混合液を分析して加水分解の完了を確認した。多量の沈殿(硫酸カリウム)が観測された。
【0129】
反応液を50〜55℃で20分間保持した。5.5Lの水を5分間にわたって迅速に添加し、撹拌を強めた。更に5.5Lの水を1時間にわたって添加した。温度は37℃に上昇した。生成物が溶液から生成する(falling out)のが観測された。生成物を1時間にわたって25℃に冷却し、その後1時間保持するか、または一晩撹拌した。固形物を濾過し、水で洗浄した。固形物を35℃の真空(29mmHg)オーブン中で一晩、または含水量が1%未満になるまで乾燥した。7aの収量は1205g(96.6%)であった;HPLCによる純度は92.9%。H NMR(CDCl)δ 7.87−7.83(m、1H)、7.79−7.74(m、3H)7.70(d、J=8.1Hz、2H)、7.62(d、J=8.1Hz、2H)、7.26(d、J=8.1Hz、2H)、7.16(d、J=8.1Hz、2H)、4.63(app t、J=9.2Hz、1H)、4.55−4.39(m、3H)、4.06(dd、J=3.7、10.7Hz、1H)、3.96(dd、J=4.4、10.7Hz、1H)、3.40(br s、1H)、2.38(s、3H)、2.25(s、3H);高分解能質量分析スペクトルでは、C2625NO+Csとしたときの計算値:692.0025;実測値:692.0036。
【0130】
9aの調製法
【0131】
【化35】

【0132】
【表12】

【0133】
化合物7a、炭酸カリウム、2Lのアセトニトリル、および3Lのメタノールを22Lの反応容器に充填した。混合液を撹拌し、50℃に加温して3時間保持した後、HPLCで分析した(反応混液3滴をアセトニトリルと0.1M酢酸アンモニウムの1:1溶液25滴で希釈した)。おおよそ、〜63%のエポキシオキサゾリン中間体8aと<5%の出発物質を含有していた。1Lのメタノールに溶解したPHIQを添加し、バッチの温度を60℃に上げた。混合液をこの温度で3時間保持した。HPLC分析では、この段階で生成物が70%近くであることを示していた。5Lの水を1〜2分間にわたって添加し、ヒーターを除去した。バッチの温度は約40℃であった。5Lの水を1時間にわたって混合液に添加し、室温まで冷却した後、その温度で1時間保持した。次いで反応混液を濾過して固形物を1.5Lの水で洗浄し、50℃のオーブンで一晩乾燥した。9aの収量は577gであった(74%)。HPLCによる純度は99%を上回っていた。H NMR(CDCl)δ 7.79(d、J=7Hz、1H)、7.65(d、J=7Hz、1H)、7.56−7.48(m、2H)、5.99(br s、1H)、4.50−4.43(m、3H)、3.89(s、3H)、3.28(s、1H)、3.04(d、J=11.4Hz、1H)、2.59−2.51(m、2H)、2.34−2.23(m、2H)、1.93(app q、J=12.9Hz、1H)、1.87−1.59(重複 m、h.)、1.53−1.15(重複 m、6H)、1.36(s、9H);高分解能質量分析スペクトルでは、C2739+Csとしたときの計算値:618.1944;実測値618.1956。
【0134】
化合物11aの調製法
【0135】
【化36】

【0136】
【表13】

【0137】
化合物9a、炭酸水素カリウム、および6LのTHFを22Lの反応容器に充填し、混合液の表面をアルゴンでパージして撹拌し、脱気した。チオフェノールを一度に添加し、20分間スパージを継続した。バッチを還流温度とし(67℃)、26時間還流させた後、HPLCで分析した。10%の未反応の出発物質と共に、2つの中間体イソイミドが〜85:15の割合で生成した。エタノールアミンの全量を一度に充填し、20時間還流を継続した。バッチをHPLCで確認し、45℃に冷却した。5LのMTBEと5Lの飽和炭酸水素ナトリウム溶液を添加した。混合液を30分間撹拌し、沈降させた。相を分離した。水相は3LのMTBEで再抽出し、有機相を合一した。MTBE抽出物を5Lの炭酸水素ナトリウム溶液で洗浄し、有機相を分離した。水相については、HPLCで化合物10aの存在を確認した。揮発性物質の60%を除去し(先の実験から、この濃度でのTHFの存在は結晶化を著しく妨げるため、全ての溶媒が除去されていることを確認した)、濃縮物を50℃に加温した。安息香酸を一度に添加した。混合液を1時間保持した。沈殿を誘導するために種晶を添加し、2.8Lのヘキサンを添加した。混合液を室温まで冷却し、1時間保持した。固形物を全て濾過し、1LのMTBEで洗浄した。母液を濃縮して油を得、2LのMTBEを添加し、混合液を50℃に加温した後冷却して室温とし、生成物を濾過した。濾液について、この操作を繰り返した。全ての固形物を合一し、50℃の真空オーブンで一晩乾燥した。濾液には、固形物として得られなかった化合物10aが15〜20%が残存していた。11aの収量は602gであった(52%;200gのスケールで同様に実施した場合には71%の収率であったことに留意されたい)。HPLCによる純度は99%を上回っていた。H NMR(CDOD)δ 7.97(d、J=8Hz、2H)、7.56(d、J=8Hz、2H)、7.5−7.1(重複 m、6H)、3.77(m、2H)、3.10(m、1H)、2.96(m、2H)、2.74(d、J=8.5Hz、1H)、2.51(t、J=12.5Hz、1H)、2.36(dd、J=2.5、13Hz、1H)、2.26(d、J=11.5Hz、1H)、2.02(q、J=2.5、13Hz、1H)、2.0−1.2(重複 m、12H)、1.31(s、9H) 。
【0138】
遊離型ネルフィナビル塩基の調製法
【0139】
【化37】

【0140】
【表14】

【0141】
11aを3Lのエタノールに懸濁し、0℃に冷却した。温度を10℃未満に保持しつつ、トリエチルアミンを一度に充填した。容器の温度を15℃未満に保持しつつ、300mLのTHFに溶解したAMBClを充填した。混合液を加温して室温とし、HPLCで式11aの化合物の消費量を確認した(次の操作に進む前に残存する11aは2%未満であった)。50% NaOHを一度に充填し、バッチを還流させた(75℃)。600mLのメタノールを添加して混合液を希釈した。混合液をHPLCで分析し、加水分解の完了を確認した。バッチを室温に冷却した。8Lの2.5% HClが入った22Lの反応容器に、激しく撹拌しながら懸濁液を徐々に注入した。この懸濁液のpHを5〜6の間に調整した。バッチを55℃に加温し、この温度で1時間保持した後、高温のまま濾過した。固形物を水で洗浄した。濾液をHPLCで分析したところ、大部分が安息香酸で、遊離型ネルフィナビル塩基はほとんど含有しないことを示した。湿った固形物を65℃の真空オーブンで一晩乾燥した。粗遊離型ネルフィナビル塩基の収量は1.45Kgであった(100%;バッチはまだ45〜55%の水で湿っており、1.1%の安息香酸および無機塩を含有していることに留意されたい)。
【0142】
遊離型ネルフィナビル塩基の結晶化
湿った固形物の一部(正味〜500g AG1346)を8.25Lのアセトンおよび1.1Lの水と合一した。加熱して還流した。これに1Lのアセトンおよび1Lの水を添加した。高温の混合液をセライトを通して濾過した。濾液を冷却して室温とした後、3℃として1時間保持した。混合液を濾過し、固形物を3Lの2:1 アセトン/水で洗浄した。固形物を70℃の真空オーブンで一晩乾燥した。遊離型ネルフィナビル塩基の収量は416gであった(81%)。HPLCで分析したところ、純度は99.4%であったが、まだ0.52%の安息香酸を含有していた。
【0143】
遊離型ネルフィナビル塩基の再懸濁:
上記の固形物を4Lの水に懸濁した(pH〜4.92)。1.9gの50% NaOHをこれに添加した(この時点でのpHは11.8)。これに27mLの2.5% HClを添加し、pHを7.5〜8の間に調整した。これを60℃に加熱して1時間保持し、高温のまま濾過した。固形物を温水(40℃)で洗浄した。固形物を70℃の真空オーブンで乾燥した。収量は386gであった(98%)。濾液は大部分が安息香酸で、遊離型ネルフィナビル塩基はほとんど含有していなかった。HPLCで分析したところ、純度は>99.9%であり、安息香酸は0.1%未満であった。この物質を分光分析したところ、他の経路で調製した物質と同一であった。
【0144】
(態様)
好ましくは、本発明は以下の態様を含む。
態様1. 式6の化合物:
【0145】
【化38】

【0146】
式中、Rはそれぞれ独立して、アリールもしくはアルキルである;または薬剤的に許容しうるその塩もしくは溶媒和物。
態様2. 式6aの化合物:
【0147】
【化39】

【0148】
式中、Xはそれぞれ独立してハロゲンである;または薬剤的に許容しうるその塩もしくは溶媒和物。
態様3. 式7の化合物:
【0149】
【化40】

【0150】
式中、Rはそれぞれ独立してアリールもしくはアルキルである;または薬剤的に許容しうるその塩もしくは溶媒和物。
態様4. 式8の化合物:
【0151】
【化41】

【0152】
式中、Rはそれぞれ独立してアリールもしくはアルキルである;または薬剤的に許容しうるその塩もしくは溶媒和物。
態様5. 式9の化合物:
【0153】
【化42】

【0154】
式中、Rはそれぞれ独立してアリールもしくはアルキルである;または薬剤的に許容しうるその塩もしくは溶媒和物。
態様6. 式10の化合物:
【0155】
【化43】

【0156】
式中、Rはアリールもしくはアルキルである;または薬剤的に許容しうるその塩もしくは溶媒和物。
態様7. 式7aの化合物:
【0157】
【化44】

【0158】
式中、Rはそれぞれ独立してアリールもしくはアルキルである;または薬剤的に許容しうるその塩もしくは溶媒和物。
態様8. 式8aの化合物:
【0159】
【化45】

【0160】
式中、Rはアルキルである;または薬剤的に許容しうるその塩もしくは溶媒和物。
態様9. 式9aの化合物:
【0161】
【化46】

【0162】
式中、Rはアルキルである;または薬剤的に許容しうるその塩もしくは溶媒和物。
態様10. 式10aの化合物:
【0163】
【化47】

【0164】
または薬剤的に許容しうるその塩もしくは溶媒和物。
態様11. 式6の化合物:
【0165】
【化48】

【0166】
式中、Rはそれぞれ独立してアリールまたはアルキルである;
の製造法であって、十分条件下における、式5の化合物:
【0167】
【化49】

【0168】
式中、Rはそれぞれ独立してアリールまたはアルキルである;
の式6の化合物への変換を含んでなる上記方法。
態様12. 式6aの化合物:
【0169】
【化50】

【0170】
式中、Xはそれぞれ独立してハロゲンである;
の製造法であって、十分条件下における、式5の化合物:
【0171】
【化51】

【0172】
式中、Rはそれぞれ独立してアリールまたはアルキルである;
の式6aの化合物への変換を含んでなる上記方法。
態様13. 式7の化合物:
【0173】
【化52】

【0174】
式中、Rはそれぞれ独立してアリールまたはアルキルである;
の製造法であって、十分条件下における、式6の化合物:
【0175】
【化53】

【0176】
式中、Rはそれぞれ独立してアリールまたはアルキルである;
の式7の化合物への変換を含んでなる上記方法。
態様14. 式7の化合物:
【0177】
【化54】

【0178】
式中、Rはそれぞれ独立してアリールまたはアルキルである;
の製造法であって、十分条件下における、式6aの化合物:
【0179】
【化55】

【0180】
式中、Xはそれぞれ独立してハロゲンである;
の式7の化合物への変換を含んでなる上記方法。
態様15. 式8の化合物:
【0181】
【化56】

【0182】
式中、Rはそれぞれ独立してアリールまたはアルキルである;
の製造法であって、十分条件下における、式7の化合物:
【0183】
【化57】

【0184】
式中、Rはそれぞれ独立してアリールまたはアルキルである;
の式8の化合物への変換を含んでなる上記方法。
態様16. 式9の化合物:
【0185】
【化58】

【0186】
式中、Rはアリールまたはアルキルである;
の製造法であって、十分条件下における、式8の化合物:
【0187】
【化59】

【0188】
式中、Rはそれぞれ独立してアリールまたはアルキルである;
の式9の化合物への変換を含んでなる上記方法。
態様17. 式10の化合物:
【0189】
【化60】

【0190】
式中、Rはアリールまたはアルキルである;
の製造法であって十分条件下における、式9の化合物:
【0191】
【化61】

【0192】
式中、Rはそれぞれ独立してアリールまたはアルキルである;
の式10の化合物への変換を含んでなる上記方法。
態様18. 式11の化合物:
【0193】
【化62】

【0194】
の製造法であって、十分条件下における、式10の化合物:
【0195】
【化63】

【0196】
式中、Rはアリールまたはアルキルである;
の式11の化合物への変換を含んでなる上記方法。
態様19. 式7aの化合物:
【0197】
【化64】

【0198】
式中、Rはそれぞれ独立してアリールまたはアルキルである;
の製造法であって、十分条件下における、式6の化合物:
【0199】
【化65】

【0200】
式中、Rはそれぞれ独立してアリールまたはアルキルである;
の式7aの化合物への変換を含んでなる上記方法。
態様20. 式7aの化合物:
【0201】
【化66】

【0202】
式中、Rはそれぞれ独立してアリールまたはアルキルである;
の製造法であって、十分条件下における、式6aの化合物:
【0203】
【化67】

【0204】
式中、Xはそれぞれ独立してハロゲンである;
の式7aの化合物への変換を含んでなる上記方法。
態様21. 式8aの化合物:
【0205】
【化68】

【0206】
式中、Rはアルキルである;
の製造法であって、十分条件下における、式7aの化合物:
【0207】
【化69】

【0208】
式中、Rはそれぞれ独立してアリールまたはアルキルである;
の式8aの化合物への変換を含んでなる上記方法。
態様22. 式9aの化合物:
【0209】
【化70】

【0210】
式中、Rはアルキルである;
の製造法であって、十分条件下における、式8aの化合物:
【0211】
【化71】

【0212】
式中、Rはアルキルである;
の式9aの化合物への変換を含んでなる上記方法。
態様23. 式10aの化合物:
【0213】
【化72】

【0214】
の製造法であって、十分条件下における、式9aの化合物:
【0215】
【化73】

【0216】
式中、Rはアルキルである;
の式10aの化合物への変換を含んでなる上記方法。
態様24. 式11aの化合物:
【0217】
【化74】

【0218】
式中、Yは好適な塩のアニオンである;
の製造法であって、十分条件下における、式10aの化合物:
【0219】
【化75】

【0220】
の式11aの化合物への変換を含んでなる上記方法。
態様25. ネルフィナビルメシレート
【0221】
【化76】

【0222】
の製造法であって、以下の段階:
十分条件下で、式10の化合物
【0223】
【化77】

【0224】
式中、Rはアリールまたはアルキルである;
を、式11の化合物
【0225】
【化78】

【0226】
に変換し:
十分条件下で、式11の該化合物を式12の化合物
【0227】
【化79】

【0228】
に変換し:そして、
十分条件下で、式12の該化合物をネルフィナビルメシレートに変換する;
を含んでなる上記方法。
【0229】
態様26. ネルフィナビルメシレート
【0230】
【化80】

【0231】
の製造法であって、以下の段階:
十分条件下で、式10aの化合物
【0232】
【化81】

【0233】
を、式11aの化合物
【0234】
【化82】

【0235】
に変換し:
十分条件下で、式11aの該化合物を式12の化合物
【0236】
【化83】

【0237】
に変換し:そして、
十分条件下で、式12の該化合物をネルフィナビルメシレートに変換する;
を含んでなる上記方法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式7aの化合物:
【化1】

式中、Rはそれぞれ独立してアリールもしくはアルキルである;または薬剤的に許容しうるその塩もしくは溶媒和物。
【請求項2】
式8aの化合物:
【化2】

式中、Rはアルキルである;または薬剤的に許容しうるその塩もしくは溶媒和物。
【請求項3】
式9aの化合物:
【化3】

式中、Rはアルキルである;または薬剤的に許容しうるその塩もしくは溶媒和物。
【請求項4】
式10aの化合物:
【化4】

または薬剤的に許容しうるその塩もしくは溶媒和物。
【請求項5】
式7aの化合物:
【化5】

式中、Rはそれぞれ独立してアリールまたはアルキルである;
の製造法であって、十分条件下における、式6の化合物:
【化6】

式中、Rはそれぞれ独立してアリールまたはアルキルである;
の式7aの化合物への変換を含んでなる上記方法。
【請求項6】
式7aの化合物:
【化7】

式中、Rはそれぞれ独立してアリールまたはアルキルである;
の製造法であって、十分条件下における、式6aの化合物:
【化8】

式中、Xはそれぞれ独立してハロゲンである;
の式7aの化合物への変換を含んでなる上記方法。
【請求項7】
式8aの化合物:
【化9】

式中、Rはアルキルである;
の製造法であって、十分条件下における、式7aの化合物:
【化10】

式中、Rはそれぞれ独立してアリールまたはアルキルである;
の式8aの化合物への変換を含んでなる上記方法。
【請求項8】
式9aの化合物:
【化11】

式中、Rはアルキルである;
の製造法であって、十分条件下における、式8aの化合物:
【化12】

式中、Rはアルキルである;
の式9aの化合物への変換を含んでなる上記方法。
【請求項9】
式10aの化合物:
【化13】

の製造法であって、十分条件下における、式9aの化合物:
【化14】

式中、Rはアルキルである;
の式10aの化合物への変換を含んでなる上記方法。
【請求項10】
式11aの化合物:
【化15】

式中、Yは好適な塩のアニオンである;
の製造法であって、十分条件下における、式10aの化合物:
【化16】

の式11aの化合物への変換を含んでなる上記方法。
【請求項11】
ネルフィナビルメシレート
【化17】

の製造法であって、以下の段階:
十分条件下で、式10aの化合物
【化18】

を、式11aの化合物
【化19】

に変換し:
十分条件下で、式11aの該化合物を式12の化合物
【化20】

に変換し:そして、
十分条件下で、式12の該化合物をネルフィナビルメシレートに変換する;
を含んでなる上記方法。

【公開番号】特開2009−40788(P2009−40788A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−215289(P2008−215289)
【出願日】平成20年8月25日(2008.8.25)
【分割の表示】特願平10−512832の分割
【原出願日】平成9年9月4日(1997.9.4)
【出願人】(500281453)アグロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレーテッド (4)
【出願人】(000004569)日本たばこ産業株式会社 (406)
【Fターム(参考)】