説明

IB‐MECAの合成方法

本発明は、IB-MECAの合成方法を提供する。より詳しくは、本発明は、IB-MECAの適切な製造(GMP)のための、単純且つ高収率の方法を提供する。この方法には、6-ハロプリン-9-リボシドとジオール保護試薬との反応、ジオールが保護された6-ハロプリンの第一級アルコールの酸化、ジオールが保護された6-ハロプリンと求核試薬(例えばメチルアミン)との反応、ハロゲン基のヨードベンジルアミンによる置換、及びジオールで保護された基の脱離が含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学の分野に属し、特にA3アデノシン受容体作用薬の合成に関する。
【背景技術】
【0002】
アデノシンは、代謝的に活性であり、且つストレスを受けている細胞によって細胞外に分泌される普遍的なプリンヌクレオシドである。アデノシンは、少なくとも4つのG-タンパク質共役型細胞表面受容体である、これまでに分類されているA1、A2a、A2b、及びA3とのその結合のために、重要な調節分子である[Linden B. TiPS 15: 298-306 (1994); Poulsen S, Bioorg Med Chem 6: 619-41 (1998)]。
【0003】
ほとんど全てのヒトの組織は、1つまたは複数のクラスのアデノシン受容体を発現し、これには、高密度で様々な腫瘍細胞が含まれる[Merighi S, et al. Br. J. Pharmacol, 134: 1215-1226 (2001)]。A1及びA3受容体の活性化は、キナーゼPKB/Akt及びPKAの活性低下及びcAMPの生成低減をもたらすGタンパク質シグナル伝達を引き起こす。これにより、細胞成長が阻害される[Fishman P, et al. Oncogene 21: 4060-4064 (2002)]。
【0004】
l-デオキシ-l-(6-{[(3-ヨードフェニル)メチル]アミノ}9H-プリン-9-イル)-N-メチル-β-d-リボフランウロンアミド(メチル l-[N6-(3-ヨードベンジル)-アデニン-9-イル]-β-D-イボフロンアミド、IB-MECA;MW=510.29 Da)は、A3受容体(Ki=0.47M)で特異的なサブマイクロモル効力を有する経口活性アデノシン受容体作用薬である。
【0005】
イン・ビボにて経口投与されたIB-MECAは、同系マウスモデル(黒色腫、結腸癌)及び異種移植マウスモデル(結腸及び前立腺癌)において、腫瘍の増殖を阻害する[Fishman P. et al. Anticancer Res. 23(3A): 2077-2083 (2003)]。
【0006】
マウスに経口でIB-MECAを与えることにより、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)の増加によって好中球の産生が刺激され、これに対応してIB-MECAが細胞毒性誘発骨髄毒性を防御することもまた判明している[Bar- Yehuda S, et al. Exp. Hematol. 30: 1390-139 (2002)]。経口IB-MECAはまた、ヌードマウスにおける結腸癌の進行を阻害し、この種族における細胞毒性薬剤療法の後に好中球回復を促進する。
【0007】
その受容体を介してアデノシンが炎症を制限する重要な役割をも担うことを示す、かなりの証拠が集められている。アデノシンの抗炎症効果は、TNF-α、インターロイキン-1、及びインターロイキン-6産生の阻害によって明示される。幾つかの抗炎症薬、例えばアスピリン、メトトレキサート、及びスルファサラジンの効果の媒介におけるアデノシンの関与が記載されており、炎症過程の調節におけるアデノシンの役割を裏付けている。最近の研究により、高度に選択的なA3アデノシン受容体(A3AR)作用薬IB-MECAがイン・ビトロにてTNF-α及びMIP-lαの産生を阻害する一方で、実験動物モデルにおいてコラーゲン及びアジュバント誘発関節炎(AIA)の発生を予防することが示唆された(WO2004/045627)。更に、A3ARがAIAラットの滑液及び末梢血単核細胞(PBMNC)中に高度に発現され、且つそのレベルがIB-MECA処理に際して下方制御することが示されている(WO2004/038419)。
【0008】
アデノシンA3受容体選択的作用薬、特にアデニン化合物、とりわけIB-MECAは、Jacobson Kらによって米国特許第5,773,423号明細書に最初に開示された。
【0009】
米国特許出願公開第2006/0014944号には、ヌクレオチドの合成方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】WO2004/045627
【特許文献2】WO2004/038419
【特許文献3】米国特許第5,773,423号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2006/0014944号
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Linden B. TiPS 15: 298-306 (1994); Poulsen S, Bioorg Med Chem 6: 619-41 (1998)
【非特許文献2】Merighi S, et al. Br. J. Pharmacol, 134: 1215-1226 (2001)
【非特許文献3】Fishman P, et al. Oncogene 21: 4060-4064 (2002)
【非特許文献4】Fishman P. et al. Anticancer Res. 23(3A): 2077-2083 (2003)
【非特許文献5】Bar- Yehuda S, et al. Exp. Hematol. 30: 1390-139 (2002)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
その第一の態様に従って、本発明は下式(I):
【化1】

を有するIB-MECAの化学合成方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明による方法は、
(i)下式(II):
【化2】

[式中、
XはCl、I、またはBrから選択されるハロゲンである]
の6-ハロプリン-9-リボシドとジオール保護試薬とを反応させて下式(III):
【化3】

のジオールが保護された6-ハロプリンを得る工程(ここで、前記ジオール保護試薬は、直鎖状または分枝状のC1-C6アルキル基を含む);
(ii)式(III)の前記ジオールが保護された6-ハロプリンにおいて、第一級アルコールを、式(IV):
【化4】

のそれぞれのカルボン酸誘導体に酸化する工程;
(iii)式(IV)の誘導体のカルボン酸基とメチルアミンとを反応させて、ジオールが保護された6-ハロプリン(III)のそれぞれのメチルアミド誘導体を得る工程(前記メチルアミド誘導体は式(V):
【化5】

を有する);
(iv)前記メチルアミド誘導体(V)のハロゲン基を3-ヨードベンジルアミンで置換して、式(VI):
【化6】

を有するジオールが保護されたIB-MECAを生成する工程;
(v)ジオール保護を脱離させて式(I)の前記IB-MECAを得る工程;
を含む。
【0014】
本発明はまた、本発明の方法によって得られたばかりの化学的に合成されたIB-MECA、並びに化学的に合成された前記IB-MECAを含む医薬組成物を提供する。
【0015】
本発明は、IB-MECAの合成のための有効な方法の開発、並びにこの方法がIB-MECAの現行の適切な製造(cGMP)のためにも好適であるとの発見に基づく。IB-MECAは、時にCF101なる語で呼称される。
【0016】
然るに、本明細書中には、
下式(I):
【化7】

を有するIB-MECAの化学合成のための方法であって、
(i)下式(II):
【化8】

[式中、
XはCl、I、またはBrから選択されるハロゲンである]
の6-ハロプリン-9-リボシドとジオール保護試薬とを反応させて下式(III):
【化9】

のジオールが保護された6-ハロプリンを得る工程(ここで、前記ジオール保護試薬は、直鎖状または分枝状のC1-C6アルキル基を含む);
(ii)式(III)の前記ジオールが保護された6-ハロプリンにおいて、第一級アルコールを、式(IV):
【化10】

のそれぞれのカルボキシル誘導体に酸化する工程;
(iii)式(IV)の誘導体のカルボン酸基とメチルアミンとを反応させて、ジオールが保護された6-ハロプリン(III)のそれぞれのメチルアミド誘導体を得る工程(前記メチルアミド誘導体は式(V):
【化11】

を有する);
(iv)メチルアミド誘導体(V)のハロゲン基を3-ヨードベンジルアミンで置換して、式(VI):
【化12】

を有するジオールで保護されたIB-MECAを生成する工程;
(v)ジオール保護を脱離させて式(I)の前記IB-MECAを得る工程;
を含む方法が開示される。
【0017】
本明細書においては、「保護試薬」なる語は、その後の化学反応における化学選択性を得るために官能基の化学修飾によって分子に導入される、あらゆる化学部分を示すために使用される。様々な保護試薬が、有機化学の分野に精通した当業者に知られている。本明細書中に使用されるように、保護試薬は、基質分子の官能基と反応して保護された基質を生成させる。この保護された基質は、前記保護された基質が晒される反応条件に対して安定であり、その後、この基質中に存在する別の官能性と適合性である条件下にて、保護された基質から脱離させて官能基を遊離させることができる。1,2-ジオールのヒドロキシル基は、個別に保護されても、環状ジオール保護基によって合同で保護されてもよい。適切なヒドロキシル保護基及びジオール保護基の例は、参照することにより本明細書中に援用される、T. W. Greene et al. "Protective Groups in Organic Synthesis", 3rd Ed., John Wiley and c Sons Inc., NY (1999)に見られる。
【0018】
本開示によれば、保護試薬はC1-C6アルキル部分を含む。本明細書に開示される一実施態様では、ジオール官能基の保護は、前記ジオール基を含む分子と保護試薬、例えば以下に限定されるものではないが、C3-C6ジアルキルオキシアルカンとを反応させる際に達成され、これによって基質分子上に保護環状アセチル部分が形成され、当業者に知られた適当な反応条件で容易に除去される。好ましくは、前記ジアルキルオキシアルカンはジメトキシプロパンである。
【0019】
別の実施態様では、ジオール保護は強酸と極性有機溶媒との存在下で達成される。強酸は、以下に限定されるものではないが、p-TsOH、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、蟻酸、塩酸、硫酸から選択されうる。極性有機溶媒は、別の実施態様によれば、水混和性溶媒であってよい。極性有機溶媒の非限定的例は、アセトンである。他には、酢酸エチル、メチルエチルケトン、クロロホルム、エタノール、メタノール、等が含まれうる。
【0020】
本明細書中で使用される「官能基」なる語は、その分子の物理特性及びその分子が別の試薬と起こしうる反応に関して、前記分子の物理的及び化学的な特徴の原因となる分子内の原子または原子団を示すために使用される。化合物に関しては様々な官能基が知られている。一実施態様によれば、前記官能基は、フラン環上に存在するジオール基である。本明細書中に開示される実施態様では、「ジオール」官能基は、隣接の炭素原子に結合した二つのヒドロキシル基(-OH)を意味する。
【0021】
本明細書中で使用される「酸化剤」なる語は、反応中で電子を受け取り、その酸化数が低減されるあらゆる物質を意味する。典型的な反応においては、酸化剤は、反応物質、例えばジオールが保護された式(III)の6-ハロプリンに酸素原子を容易に移動させ、これによってその酸素原子含量を増大させる。
【0022】
本明細書の開示に即して、同意で使用して良い「置換」及び「置換する」または「置き換える」なる語は、反応物質分子中での原子、部分、官能基、または置換基の、反応物質分子中の別の原子、部分、官能基、または置換基によるあらゆる置き換えを示すために使用してよい。
【0023】
本明細書の開示に即して、「求核置換」なる語は、「求核試薬」と呼称される、非共有電子対または負に荷電した部分を有する電子豊富な試薬が、基質分子の正荷電部分もしくは部分的正荷電部分(例えば塩化アシルのカルボン酸炭素)を攻撃して基または原子(「脱離基」とも呼称され、例えば攻撃される塩化アシル基質の塩化物アニオンである)を置換する反応に関する。
【0024】
本明細書中に開示される別の実施態様では、式(III)のジオールが保護された6-ハロプリン中の第一級アルコールの、対応するカルボン酸誘導体への酸化が、酸化剤の触媒量の存在下で行われる。
【0025】
第一級アルコールの、対応するカルボン酸への酸化のために適当でありうる酸化剤の非限定的列挙には、ルテニウム金属(Ru)、塩化ルテニウム、三酸化クロム、過ヨウ素酸ナトリウム、重クロム酸カリウム、過マンガン酸カリウム、酸化銀、硝酸、白金酸化物/酸素、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル(TEMPO)、亜塩素酸ナトリウム、及びこれらの混合物が含まれる。好ましくは、前記酸化は、触媒量のRuCl3及び過ヨード酸塩の存在下で達成される。
【0026】
式(IV)のカルボン酸誘導体の、式(V)のそれぞれのメチルアミド誘導体への変換は、ハロゲン化剤の存在下での求核置換及びその後の選択された求核試薬、例えばメチルアミンの導入によって達成される。
【0027】
本明細書の開示中で言及される「ハロゲン化剤」なる語は、分子中の基または部分をハロゲン原子で置換することのできる作用剤に関する。本明細書の開示に即して、ハロゲン化剤により、カルボン酸部分上のヒドロキシル基が置換され、よってメチルアミン求核剤との求核置換反応が起こり易くなるが、これは、置換される基が弱ルイス塩基として知られ、すなわち求核剤によって容易に置換されるハロゲンアニオンであるためである。ハロゲン化剤の非限定的例には、塩化チオニル(SOCl2)、五塩化リン(PCl5)を含む。好ましくは、ハロゲン化剤は、塩化チオニルである。
【0028】
最後に、フラン環のジオール部分上の保護基が除去される。典型的には、理論に縛られることなく、保護基の脱離は、強酸の存在下で行われる還元的開裂反応である。ジオール保護基の脱離は、強酸と極性非プロトン性溶媒との存在下で行われてよい。一実施態様によれば、強酸はHClであり、溶媒はテトラヒドロフラン(THF)である。反応過程のこの段階では、以下に限定されるものではないが、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジオキサン類及びヘキサメチルリン酸トリアミド(HMPA)を含む、当業者に知られた別の極性非プロトン性溶媒もまた使用してよい。
【0029】
一実施態様では、IB-MECAの製造方法は、下記のスキームに従って得られる。
【化13】

【0030】
本発明の方法の一つの利点は、これがIB-MECAの大スケールでの製造にも応用できることである。
【0031】
本明細書の開示に即して、大スケールでの製造とは、数十グラムからキログラムの最終生成物物質量を意味する。具体的実施例に示されるとおり、中間の生成過程は不要である。当業者に認識される通り、中間の精製工程によれば最終生成物の収率が低下し、したがって典型的には大スケールの製造には適さない。本発明の方法は、小スケール並びに大スケールでのIB-MECAの製造に適当であることが判明した。
【0032】
更に、本発明の方法は、IB-MECAの適切な製造(GMP)に適当であることが確認された。GMPが製剤原料(活性医薬成分(API)としても既知)及び薬剤製品(欧州では医薬品として既知)、医療機器、イン・ビボ及びイン・ビトロの診断薬、並びに食品の製造のための規則、規約、及び指針を示すことは周知である。合衆国では、GMPは、「cGMP」もしくは「現行の適切な製造」と呼称される。この語は、医薬製品の製造及び品質制御試験の制御及び管理のために、世界中で認識されている。
【0033】
本明細書の開示の別の一態様では、本発明の方法によって得られたばかりの、化学的に合成された式(I)のIB-MECAが提供される。
【0034】
本明細書の開示の更に別の一実施態様では、本発明の方法によって得られたばかりの化学的に合成されたIB-MECAを含む医薬組成物が提供される。
【0035】
本発明の医薬組成物は、様々な疾患の治療または予防のために使用されてよい。「治療」等の語は、本明細書中では、所望の薬理学的及び生理学的効果を得ることを意味して使用される。この効果は、その疾患、症状、または状態の予防もしくは部分的予防の観点から予防的であってよく、且つ/または疾患、状態、症状、または前記疾患に起因する有害事象の部分的又は完全な治癒の観点から治療的であってよい。本明細書中に使用される「治療」なる語は、ほ乳類、特にヒトにおける疾患のあらゆる治療を網羅し、且つ(a)当該疾患に罹患し易くされていてもよいが依然罹患したと診断されてはいない対象において疾患の発生を予防すること、すなわち前記疾患に罹患し易くされていてもよいが依然この疾患の症状を経験しても呈してもいない対象においてこの疾患を発生させないこと;(b)当該疾患を抑制すること、すなわち、この疾患またはその臨床症状の発生を泊めるまたは低減すること;あるいは(c)当該疾患を緩和すること、すなわちこの疾患及び/またはその症状もしくは状態の軽減を引き起こすこと;
を含む。
【0036】
本発明の組成物によって治療可能な疾患の非限定的な列挙には、WO2004/045627、WO2005/063246、WO/2005/111053、及びWO2006/059328に一般的に開示される炎症;WO2000/040251及び米国特許仮出願第60/838,863号に一般的に開示される癌;PCT国際特許出願No. IL2006/000130、WO2006/011130、及び米国特許出願公開第11/604,905号に一般的に開示されるドライアイ;WO02/055085に一般的に開示されるウィルス複製;PCT国際特許出願No. IL2006/001374に一般的に開示される変形性関節症;並びにWO2006/048884に一般的に開示される骨吸収増加が含まれ、上記出願全ての内容は、参照することにより本明細書中に援用される。
【実施例1】
【0037】
(原料)
6-クロロプリン-9-リボース(Wilshire Technologiesより入手)
p-TsOH H2O(Aldrichより入手)
2,2-ジメトキシプロパン(Aldrichより入手)
塩化ルテニウム(III)水和物(Aldrichより入手)
3-ヨードベンジルアミンHCl(Apolloより入手)
TBAI(Aldrichより入手)
CH3CN(Fisherより入手)
H2NCH3(Aldrichより入手)
SOCl2(Aldrichより入手)
NaIO4(Aldrichより入手)
【0038】
(方法)
(実施例1:IB-MECAの合成)
1. アセトニド(III)の調製
1.1 合成操作
6-クロロプリン-9-リボースアセトニド(III)を、市販の6-クロロプリン-9-リボース(II)から、p-トルエンスルホン酸触媒の存在下での2,2-ジメトキシプロパンでの処理により調製した。
【0039】
リボシド(II)からアセトニド(III)への変換は、およそ48時間を要して20-25℃で完了に至る。利用したワークアップ方法は、以下に概説され、これには水酸化ナトリウム水溶液でのクエンチ、混合物の濃縮乾燥、これに次ぐ塩化メチレン中への水性抽出ワークアップが含まれる。その後、アセトニド(III)を、硫酸マグネシウムで乾燥させることによって単離し、濾過して乾燥剤を除去し、アセトニトリルに溶媒交換をして生成物を沈降させ、濾過により回収して真空乾燥させた。アセトニド(III)の二次回収物を、母液の濃縮及びアセトニトリル中でのスラリーからの単離によって得た。6-クロロプリン-9-リボース(II)からのアセトニド(III)の(二回分の回収物の)混合収率は、85.7%であった。
【0040】
下記は、アセトニド(III)の調製のために行った合成工程の概要である(全ての試薬、質量及び容量の等量は、6-クロロ-9-リボシド(II)の投入量に対して算定される)。
−式IIのリボシド(1当量)をアセトン(23容量)に加え、反応混合物の撹拌を開始した。
−次いで、TsOH(0.05当量)及び2,2-ジメトキシプロパン(3.5当量)を前記反応混合物に加えた。
−前記反応混合物を20℃−25℃にて48乃至96時間に亘って撹拌し、その間にHPLCによって反応完了を決定するためにサンプルを採った。完了条件は、リボシド(II)が2%以下(NMT)になることである。
−前記反応を、1NのNaOH(0.052当量)の添加及び1時間に亘る撹拌によってクエンチした。
−その後、生成する混合物を、回転式エバポレーターを使用して30℃−40℃にて乾燥させた。
−その後、生成する残渣を、CH2Cl2(10容量)と水(10容量)との間で分配し、15分間に亘って撹拌して静置した。
−相が分離し、水性相をCH2Cl2で抽出した(2×3容量)。
−有機抽出物を混合し、MgSO4(2.5当量)で乾燥させた。
−抽出物の混合物を珪藻土パッドで濾過し、ケークをCH2Cl2(1.5容量)で処理した。
−濾液を、回転式エバポレーターで30℃−40℃にて濃縮乾燥させた。
−残渣を、CH3CN(2容量)中で55℃−65℃にて1時間に亘りスラリー化させた(slurred)。
−前記スラリーを0℃−10℃に冷却し、その後0℃−10℃で少なくとも1時間おいた。
−その後、生成物を、濾過と生成するケークの低温CH3CN(0.5容量)での洗浄とによって回収した。
−生成物(ケーク)を25℃−35℃にて乾燥させて式IIIのアセトニドを得た(一次回収物)。理論収率は59−76%であり、純度は96.6乃至99.5%であった。
−収率を増大させるため、二次回収物を求めて母液を回収した。
−二次回収物から濾液を濃縮乾燥させた。
−残渣を、CH3CN(0.15容量)中で55℃−65℃にて少なくとも30分間に亘ってスラリー化させた。
−生成物を0℃−10℃に冷却し、その後0℃で少なくとも1時間おいた。
−生成物(ケーク)を濾過によって回収し、低温CH3CN(0.03容量)で洗った。
−生成物を25℃−35℃にて乾燥させて式IIIのアセトニドを得た(二次回収物)。理論収率は9−14%であり、純度は96.2乃至97.8%であった。
二つの回収物からの理論収率は、73−85%であった。
【0041】
1.1 アセトニド(III)の調製方法の最適化
式IIのリボシド(30g)と2,2-ジメトキシプロパンとを、既定条件(工程1−3、上記概要の通り)を用いて反応させ、アセトニド(III)をアセトン中の溶液として得た。この混合物を、1Nの水酸化ナトリウム水溶液でクエンチし(工程4、上記概要の通り)、少量ずつに分けた。
【0042】
1.2 水からのアセトニド(III)の単離
上記アセトン溶液を、減圧下で回転式エバポレーターを用いて9容量にまで濃縮した後、水(27容量)で希釈して、20分間に亘って機械撹拌した。バッチ温度を23℃から28℃に上昇させたところ、いくらかの沈降が観察された。混合物を4℃に冷却し、3−5℃で1時間おいた。微細な結晶固体として物質の沈降が観察された。沈殿を濾過により回収し、水−アセトン(2:1、1.5容量)で洗い、真空下(30in.Hg)で常温にて乾燥させ、淡黄色固体としてアセトニド(III)を収率68%及び純度98.8%(AUC、HPLC)で得た。
【0043】
アセトニド(III)の収率を上げるために、より高濃度のアセトン/水混合物からその単離を行った。従って、アセトン溶液を上記のように9容量にまで濃縮した後、水(9容量)で希釈して、10分間に亘って撹拌した。混合物を更に12.5容量にまで濃縮したところ
(算出されたアセトン−水比は2.6:1であった)、生成物が結晶物質として沈降した。混合物を撹拌しつつ5℃に冷却し、30分間置いた後に生成物を濾過によって回収し、水−アセトン(2:1、1.5容量)で洗い、真空下で常温にて乾燥させ、淡黄色固体としてアセトニド(III)を収率80%及び純度99.3%(AUC、HPLC)で得た。アセトニド(III)の収率及び純度のいずれもがこの方法を用いることにより向上した。
【0044】
1.3 アセトニトリルからのアセトニド(III)の単離
アセトン溶液を減圧下で6容量にまで濃縮したところ、クエンチされた反応混合物から生成物が沈降した。多量の前記固体を溶解させるためには、アセトニトリル(15容量)を要した。混合物を澄ませ、濾液を減圧下で回転式エバポレーターにより3容量にまで濃縮した。得られるスラリーを60℃(浴温)にて1時間に亘り撹拌した後、5℃に冷却して1時間おいた。生成物を濾過によって回収し、水−アセトン(2:1、1.5容量)で洗い、真空下で常温にて乾燥させ、淡黄色固体としてアセトニド(III)を収率65%及び純度98.5%(AUC、HPLC)で得た。
【0045】
これらの実験から、アセトニド(III)がアセトンに比べて水にもアセトニトリルにも比較的に不溶性であることが明白であった。水/アセトンからのアセトニド(III)の単離によって最良の結果が得られている。この反応を繰り返し、アセトニド(III)が、上述の変更を用いてリボシド(30g)から収率79%(27.1g)及び純度99.54%(AUC、HPLC)で調製された。最適化された条件により、液体−液体抽出工程、二度の蒸発乾燥、及びアセトニド(III)の二次回収物の単離の排除が可能になった。このワークアップ操作の有効性が改善されたことにより、アセトニド(III)の単離のためのサイクル時間が著しく短縮される。
【0046】
2. カルボン酸(IV)の調製方法
2.1 合成操作
アセトニド(III)を、三塩化ルテニウム/過ヨウ素酸ナトリウムシステムを水性アセトニトリル中で使用する酸化によってカルボン酸(IV)に変換した。この反応は発熱性であり、過ヨウ素酸ナトリウムを添加すると、5℃から31℃に比較的迅速に温度上昇する。
【0047】
下記は、カルボン酸(IV)の調製のための合成工程の概要である。
1.式IIIのアセトニド(1当量)及びアセトニトリル(14.9容量)を反応器に仕込んだ。
2.更に、反応器にRuCI3(0.01質量、1.6mol%)を加え、次いで水(4容量)を加えた。
3.その後、テトラブチルアンモニウムヨーダイド(TBAI)を反応器に加えた(0.01質量、1mol%)。
4.生成した混合物を5℃に冷却した。
5.冷却した前記混合物に、NaIO4(1.5質量、2当量)を、この混合物の温度を30℃未満に維持するよう少量ずつ加えた。
6.前記混合物を15℃−30℃にて撹拌し、反応の完了を確認するためにTLCにより観察した。
7.反応生成物を濾過して無機物を除去し、濾過されたケークをアセトニトリル(6容量)で濯いだ。
8.濾液を回転式エバポレーターで30℃−40℃(浴温)にて濃縮乾燥させた。この段階で、生成物は、揮発性のRuO4の蒸発により脱色した。
9.残渣をTHF(1.67容量)中、15℃−25℃にてスラリー化させ、回転式エバポレーターのフラスコから新たな反応器に移した。
10.THF(18.5容量)を前記の新たな反応器に加え、30分間に亘って撹拌した。
11.工程10の生成物を、その後DEパッドで濾過し、ケークはTHF(0.66容量)で濯いだ。
12.濾液を回転式エバポレーターで30℃−40℃(浴温)にて濃縮乾燥させた。
13.残渣を、CH3CN(2.33容量)中で30℃−40℃にて完全に流動性になるまでスラリー化させた。
14.その後、工程13の生成物を回転式エバポレーターで30℃−40℃にて濃縮乾燥させた。
15.IPAc(酢酸イソプロピル)(17.5容量)を回転式エバポレーターのフラスコから少量ずつ反応器に加え、反応生成物を反応器に移した。
16.水(5容量)を更に反応器に加え、反応器内の混合物を2時間に亘って撹拌した。
17.相を分離させ、有機相を水(5容量)で洗った。
18.水性相を混合し、IPAc(3容量)で逆抽出した。
19.有機相を混合し、Na2SO4(1.67当量)で一時間に亘って乾燥させた。
20.生成物を濾過して乾燥剤を除去し、濾液(ケーク)をIPAc(2容量)で濯いだ。
21.その後、濾液を回収して回転式エバポレーター(30℃-40℃)で乾燥させた。
22.その後、残渣を真空オーブン中、30℃-40℃にて、一定質量となるまで乾燥させた。固体を粉砕し、一定質量が達成されるまで乾燥を継続した。理論収率85%、理論純度92-93%(HPLC)。
【0048】
2.1 カルボン酸(IV)のためのワークアップの最適化
試料をバッチから取り、6℃に冷却したところ、非常に高粘度のスラリーが生成した。アセトニトリル(4容量)を添加したところ、固形物質の大部分が溶解したが、この混合物を、4容量になるまで再度濃縮した。6℃に冷却して一時間維持したところ、試料はもちの良いスラリーを生成した。生成物を濾過によって回収し、水で洗い、乾燥させ、酸3を乳白色固体として95.3%の純度(AUC、HPLC)で得た。
【0049】
反応混合物の残りを、上記の操作で記載したようにワークアップし、カルボン酸(IV)を7.0質量%のIPAcを含む77%の収率で得た。これは、7.4質量%(IPAc)を含む85%の収率でのアセトニド(III)の調製についての従前のcGMP結果に匹敵する。
【0050】
酸化反応を繰り返し、カルボン酸(IV)を、上記試料について記載の通り水/アセトニトリルからの結晶化によって単離した。この際、反応混合物は、最初のアセトニトリル/水でのストリップ(上記概要中の工程8)の間には脱色せず、カルボン酸(IV)が灰色固体として、収率78%及び純度97.9%(AUC、HPLC)で単離された。仮に酸化反応を25℃未満で行うことに起因するとされる、こうした「非脱色」挙動は、従前のIB-MECAのcGMPバッチの調製の間に観察され、生成されるAPIの品質には影響しなかった。カール・フィッシャー分析により、このバッチが0.19%の水を含むことが示された。
【0051】
2.2 カルボン酸(IV)の調製における、遅延発熱の制御
アセトニド(III)の酸化は、遅延発熱及びこれに続く過ヨード酸ナトリウムの添加によって達成された。能動冷却の中断により、バッチ温度が5℃から30℃に急速に上昇した。これは、とりわけ固定された製造装置へのスケールアップの際に、安全上の著しい問題を呈する。
【0052】
発熱をより良く制御するために、三塩化ルテニウムと過ヨード酸ナトリウムとの混合物への基質(アセトニド(III))の逆添加を行った。アセトニド(III)(5g)を、アセトニトリル−水中の溶液として、水中の酸化剤混合物に、30-35℃にて2時間に亘って加えた。一般的な方式の添加について通常観察されるように、反応は16時間後に完了した。改善されたワークアップ条件を用いるが、5℃に代えて20℃まで冷却したところ、酸3が白色固体として、62%の収率及び99.3%の純度(AUC、HPLC)で得られた。物質の二次回収物を、母液の濾過によって単離したところ、ここで更なる結晶化が起こり、水で洗い、乾燥させることによって、酸3が乳白色固体として、19%の収率及び98.2%の純度(AUC、HPLC)で得られた。酸3の二度の回収についての総収率は、81%であった。いずれの回収物も、次の工程(すなわち、IB-MECAアセトニド(IV)の調製)における使用に適当であった。
【0053】
2.3 カルボン酸(IV)についての条件の最適化
アセトニド(III)(25g)を、酸化混合物への基質の逆添加を利用して、カルボン酸(IV)に変換した。酸化が完了したところでバッチを濾過して無機不純物を除去し、フィルターケークをアセトニトリル(6容量)で洗った。濾液を更なる水(3容量)で希釈し、アセトニトリル(およそ21容量)及び水(およそ7容量)中のカルボン酸(IV)の溶液を得た。バッチを26-36℃での真空蒸留によって、8容量に濃縮した。この時点でのアセトニトリル-水の理論比は、それぞれ40:60であった。バッチを5-10℃に冷却して結晶化を誘発し、1時間に亘って静置した。生成物を濾過によって回収し、水で洗い、乾燥させて、酸3を白色固体として75%の収率及び99.75%の純度(AUC、HPLC)で得た。
【0054】
この最適化された方法により、抽出ワークアップ、THF及びIPAcの使用、1回の濾過及び4回の蒸発乾燥の必要がなくなった。カルボン酸(IV)の単離のためのサイクル時間は著しく短縮され、生成物は容易に取扱可能な形態で単離された。IPAc含量について修正したところ、既存の操作と新たに開発された操作とは匹敵するものであり(それぞれ77%対75%)、カルボン酸(IV)はアセトニトリル−水からの結晶化によってより高い純度で単離された(97.9-99.7%)。
【0055】
3. IB-MECAアセトニド(VI)の調製方法
カルボン酸(IV)を、以下に概説する三工程によってIB-MECAアセトニド(VI)に変換する。カルボン酸(IV)は、アセトニトリル中の塩化チオニルを用いる処理によってまず酸塩化物に変換され、次いでジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)の存在下でのメチルアミンとの反応によってアミド(V)に変換された。アミド(V)と3-ヨードベンジルアミン塩酸塩とのカップリングにより、IB-MECAアセトニド(VI)が得られる。中間体酸塩化物及びアミド(V)は単離されない。
【0056】
3.1 3-ヨードベンジルアミン塩酸塩の精製
3-ヨードベンジルアミン塩酸塩の品質は、合成の結果に著しい影響を及ぼした。特に、3塩酸塩、3-ヨードベンジルアミン塩酸塩中に存在する不純物、並びにこれより誘導される不純物は、APIを含む後処理プロセスの間は存続することが知られていた。IB-MECAの調製を成功させるために、3-ヨードベンジルアミン塩酸塩中の3ブロモベンジルアミン塩酸塩について、0.5%以下という上限が設けられた。適正化作業のための3-ヨードベンジルアミン塩酸塩の適当な市販供給が得られなかったため、精製の方法が探索された。
【0057】
IB-MECAの合成において使用された溶媒を使用して、3-ヨードベンジルアミン塩酸塩について可溶化研究を行い、その結果を下記の表1にまとめた。3-ヨードベンジルアミン塩酸塩がプロトン性溶媒から再結晶したが、これは非プロトン性有機溶媒には不溶性であった。非プロトン性有機溶媒中での高温(還流)スラリーの間には、純度向上は観察されなかった。
【0058】
【表1】

【0059】
水(4容量)からの再結晶により、3-ヨードベンジルアミン塩酸塩中の3-ブロモベンジルアミン塩酸塩のレベルが許容できるレベルに低減された。概念実証における使用のための供給を生み出すために、3-ヨードベンジルアミン塩酸塩(150g、ex. Apin)を水から78.6%の収率で再結晶させた。3-ブロモベンジルアミン塩酸塩の濃度は、0.92%から0.38%に低減された。
【0060】
変更された条件を使用して調製されたカルボン酸(IV)のバッチを、以下に概説する操作を使用してIB-MECAアセトニド(VI)に変換した。全ての試薬、質量および容量の等量は、カルボン酸(IV)の投入量に対して算定される。
【0061】
1. 式IVのカルボン酸誘導体(1当量)を、アセトニトリル(10容量)と混合したところ、高濃度のスラリーが生成し、この高濃度のスラリーを20℃-25℃で撹拌した;
2. 撹拌したスラリーにハロゲン化剤、すなわち塩化チオニル(1.6当量)を加え、混合物を少なくとも一時間撹拌したところ溶液が生成した;
3. 反応の完了を、IPAc-MeOH(10:1)でのTLC溶出により観察した。
4. 反応溶液を濃縮し(塩化チオニルを除去し)、20℃(浴温)の回転式エバポレーターによってオイルとした。
-アセトニトリル(0.5容量)を加え、混合物を再度オイルにまで濃縮した。このオイルは高濃度の酸塩化物を含んでいた。
5. 酸塩化物をアセトニトリル(10.4容量)に再溶解させ、撹拌しつつ2℃未満に冷却した。
6. メチルアミン(THF中、2M溶液、1.05当量)を加え、混合物の温度を5℃未満に維持した。白色沈殿物(メチルアミン塩酸塩と推定)が反応器中に観察された。
7. 生成物を、5℃未満で少なくとも15分間に亘って撹拌した。
8. その後、DIPEA(1.5当量)を加え、系の温度を5℃未満に維持した。
9. 能動冷却を中断し、反応混合物の温度をおよそ2時間で20℃にまで上昇させた。
10. 反応の完了を、IPAc-MeOH(10:1)でのTLC溶出により観察した。完了したところで、MeCN/THF中のアミド(V)の溶液が得られた。
11. アミド(V)の溶液に、3-ヨードベンジルアミン塩酸塩(1.35当量)を加え、次いでDIPEA(5当量)を加えた。
12. 混合物を70℃に加熱し、反応の完了を観察した。理論反応時間は、14-16時間であり、完了条件は残留アミド(V)が0.7%未満であった。
13. 完了したところで、生成物を40℃未満に冷却し、回転式エバポレーターによってオイルに濃縮した。この時点での起泡は特に回避した。
14. その後、残渣をIPAc(8容量)に溶解させた。
15. 溶解させた残渣に、NaHCO3の飽和水溶液(7容量)を加え、混合物を少なくとも30分間に亘って撹拌した。
16. その後、撹拌を停止して静置し、相分離させた。
17. 有機相を水(4容量)で洗った。
18. 混合水性相をIPAcで逆抽出した(2×3.4容量)。
19. 有機抽出物を混合し、回転式エバポレーターによって濃縮して残渣とした。
20. 生成物をMeOH(4容量)中でスラリー化させた後、回転式エバポレーターによって濃縮して残渣とした。
21. MeOH(4容量)を工程20の生成物に加え、撹拌しつつ溶解するまで(およそ65℃に)加熱した。
22. その後、工程21の生成物を30℃未満に冷却して結晶化を誘発させた。
23. その後、結晶化生成物を濾過によって回収し、フィルターケークを低温(13℃)MeOH(1.8容量)で洗った。
24. ケークを、真空中、30℃-40℃にて乾燥させてIB-MECAアセトニド(VI)を得た。
25. MeOHからの再結晶及び乾燥を必要に応じて繰り返し、出荷規格内のIB-MECAアセトニド(VI)を得た。理論収率は48%であった。
【0062】
IB-MECAアセトニド(VI)が、メタノールからの1回の再結晶の後に、白色固体として収率80%及び純度99.52%(AUC、HPLC)にて単離された。3-ブロモベンジルアミン塩酸塩由来の不純物が、0.21%未満(規格:0.5%以下)の濃度で観察され、他の全不純物は0.1%未満であった。これらの結果は、アセトニド(III)及びカルボン酸(IV)を調製するために使用された変更により、IB-MECAアセトニド(VI)の調製における使用に適当な物質が製造されたことを示した。この結果はまた、より高品質の酸3(純度98.2-99.3%、従前のものは92-93%)の使用により、多数回の再結晶を必要とせずに非常に高純度のIB-MECAアセトニド(VI)の調製が可能になることを示した。HPLCデータはさらに、IB-MECAアセトニド(VI)の単離の間に最高2.3%までのIPC濃度からアミド(V)がうまく除去されうることを示した。
【0063】
4. IB-MECA(I)の調製方法
IB-MECA(I)を、塩酸溶液を使用するIB-MECAアセトニド(VI)の脱保護によって調製した。
上記IB-MECAアセトニド(VI)のバッチを以下に概説される方法の工程(工程1-10)を使用して脱保護し、IB-MCA(I)を、白色固体として収率90%及び純度99.67%(AUC、HPLC)で得た。3-ブロモベンジルアミン塩酸塩由来の不純物の濃度は0.18%であり、他に0.1%を超える不純物はなかった。
【0064】
1. IB-MECAアセトニド(VI)(1当量)及びTHF(5容量)を反応器に加えた。
2. 撹拌を開始し、次いで1Nの塩酸(5容量)を加えた。混合物を16℃から25℃に加温した。
3. その後、混合物を50℃に能動加熱して反応の完了をHPLCによって観察した。完了条件は残留アセトニドが1.5%以下であった。理論反応時間は8時間であった。8時間後に完了していない場合は、バッチ温度を40℃に下げて不純物の生成を回避した。
4. 生成物を40℃にて濾過した。
5. 濾過した生成物を、少なくとも15℃に冷却した後、温度を10℃-25℃に維持しつつ、飽和NaHCO3(15容量)でクエンチした。生成物が、塩基との接触に際して沈降した。
6. 混合物を、10℃-25℃にて少なくとも12時間に亘って撹拌した。
7. 固体を濾過によって回収し、フィルターケークをH2O(5×0.95容量)で濯いだ。
8. 洗った生成物を、次にメタノール-水(9:1、9.9容量)中、50℃にて少なくとも30分間スラリー化させた後、15℃-25℃に冷却した。
9. 生成物を濾過によって回収し、フィルターケークをメタノール-水(9:1、0.27容量)で洗った。
10. 生成物を30℃-40℃にて真空乾燥させてIB-MECA(I)を得た。理論収率は81%であった。
11. 生成物を、水(4.14容量)中、35℃-14℃にて、少なくとも3時間に亘って再度スラリー化させた。
12. 再スラリー化生成物を25℃に冷却した後、濾過によって回収した。
13. フィルターケークを水(2×1容量)で洗った。
14. 洗ったケークを55℃-65℃にて乾燥させ、IB-MECA(I)を得た。理論回収率は78%であった。
【0065】
(実施例2:IB-MECA(I)の大スケール合成のための概念実証)
6-クロロプリン-9-リボシド(II)からのIB-MECA(I)の合成のために開発された最適化条件を実証するために、50gのIB-MECA(I)の調製のために上記操作を行った。したがって、6-クロロプリン-9-リボシド(II)を、以下に記載する方法を用いてアセトニド(III)に変換した。全ての試薬、質量及び容量の等量は、リボシドの投入量に対して算定される。
【0066】
アセトニド(III)の最適化された調製方法
1. リボシド(II)(1当量)を反応器に加え、次いでアセトン(23容量)の添加及び撹拌を行った。
2. 反応器に、TsOH(0.05当量)を加え、次いで2,2-ジメトキシプロパン(3.5当量)を加えた。
3. 混合物を、20℃-25℃にて48-96時間に亘って撹拌し、HPLCによって反応の完了について試験した。完了条件はリボシドNMT2%であった。
4. 反応を、1NのNaOH(0.052当量)の添加及び1時間に亘る撹拌によってクエンチした。
5. 生成物を回転式エバポレーター(30℃-40℃)によって9容量にまで濃縮した。
6. その後、水(9容量)を加えた。
7. 生成物を回転式エバポレーター(30℃-40℃)によって12.5容量にまで濃縮した。
8. 混合物を0℃-5℃に冷却し、0℃-5℃に少なくとも1時間に亘って維持した。
9. 生成物を吸引濾過によって回収した後、低温(0℃-5℃)H2O/アセトン(2:1、1.5容量)で濯いだ。
10. その後、生成物を40℃で乾燥させて、アセトニド(III)を得た。理論収率は79%であった。
【0067】
アセトニド(III)を、6-クロロプリン-9-リボシド(II)(163.3g)から、82.2%の収率(153.1g)の白色固体及び淡黄色結晶として、99.58%の純度(AUC、HPLC)で単離した。反応は、63時間後に完了し(上記概要の工程3)、工程7が終了した時点で一晩(14時間)おいた。(上記概要の)工程9における濾過の直前のバッチの温度は2℃であり、乾燥時間は17時間であった。バッチの稼働中、処理に問題点は無かった。アセトニド(III)(147.2g)をそのまま用い、以下に記載の方法を使用して酸3に変換した。全ての試薬、質量及び容量の等量は、アセトニド(III)の投入量に対して算定される。
【0068】
カルボン酸(IV)の最適化された調製方法
1. NaIO4(2.30当量)、TBAI(1mol%)、及び水(2当量)を反応器に加え、撹拌してスラリーを生成させた。
2. RuCl3(1.6mol%)を加え、計量容器を水(1容量)で濯いだ。
3. 反応混合物を、撹拌しつつ30℃に加熱した。
4. アセトニトリル(12容量)中の溶液としてのアセトニド(III)及び水(1容量)を反応混合物に加え、温度を30℃-35℃に維持した。添加の完了までには2時間かかることが予測された。添加が完了した時点で、アセトニトリル(3容量)を含むアセトニド(III)溶液が入った容器を濯ぎ、生成物に加えた。
5. 混合物を30℃-35℃に冷却し、TLCによって反応の完了を観察した。理論上の反応時間は16時間であった。
6. 生成物を20℃-25℃に冷却し、濾過して無機不純物を除去した。
7. 反応器及びフィルターケークをアセトニトリル(6容量)で濯ぎ、濾液を水(3容量)で希釈した。
8. 濾液を回転式エバポレーターによって25℃-35℃にて8容量にまで濃縮した。この段階で、生成物は、揮発性RuO4の蒸発によって脱色した。
9. 生成物を5℃-10℃に冷却して結晶化を誘発させ、少なくとも1時間おいた。
10. その後、生成物を濾過によって回収し、フィルターケークを水(3×3容量)で洗った。
11. 生成物を、真空中、35℃-45℃にて乾燥させて酸(IV)を得た。理論収率は75%であった。
【0069】
アセトニド(III)を3時間かけて反応混合物に加え、36℃の最高浴温に到達させた。酸化は、14時間後に完了した(TLC分析)。20℃-25℃に冷却した(上記概要中の工程6)ところ、バッチは予想外に暗色化し、橙色から緑色に変化し、RuVIからRuIIIへのルテニウム種の変化を示した。また、バッチは、濃縮によりアセトニトリルの濃度が減少する間には脱色しなかった。酸(IV)が、最終的には、暗緑色固体として収率63%(96.2g)及び純度98.9%(AUC、HPLC)で単離された。従前の研究によって、着色を引き起こす不純物が後処理プロセスの間に除去されることが示されていたことから、生成物を、更なる処理をせずに続けて用いた。カルボン酸(IV)(75g)を、実施例1に記載の方法を用いてIB-MECAアセトニド(VI)に変換した。
【0070】
酸塩化物を調製するための塩素化反応は、70分後に完了し(実施例1の概要中の工程3)、バッチは濃縮の間にかなり起泡した(実施例1の工程4及び5)。メチルアミン(THF中、2Mの溶液)を16分間かけて酸塩化物溶液に加えたが、最高バッチ温度は5℃であった。酸塩化物のアミド(V)への変換は2時間後に完了したが、この2時間の間にバッチを5℃から17℃に加温した(実施例1の工程10及び11)。3-ヨードベンジルアミン塩酸塩とアミド(V)とのカップリングは、完了までに16時間を要した(実施例1の工程13)。抽出ワークアップの間に、著しい量の固形物質が観察された。(実施例1の)工程17では、過剰量のNaHCO4が混合物から析出するが、これは(実施例1の)工程18の間により多くの水を加えることで解消可能である。生成物が析出し、IB-MECAアセトニド(VI)を再溶解させるために水(5容量)及びIPAc(5容量)の添加を要した。(実施例1の)工程18の終点での水性相のHPLC分析により、IB-MECAアセトニド(VI)が顕著な濃度で存在してはいないことが示された。したがって、IPAcでの水性相の逆抽出(実施例1の工程19)は省略した。IB-MECAアセトニド(VI)は、最終的には暗緑色固体として、収率75.2%(91.6g)及び純度99.79%で単離された。3-ヨードベンジルアミン塩酸塩中に0.38%存在した「臭素不純物」は、0.21%の相対濃度で観察された。バッチは、単離処理の終了時には顕著に脱色したが完全には脱色しなかった(投入カルボン酸(IV)は暗緑色であった)。
【0071】
IB-MECAアセトニド(VI)(85g)を、実施例1に概説される方法を用いて脱保護してIB-MECA(I)を白色固体とし、収率84.5%(67g)及び純度99.83%で得た。アセトニド開裂は9.5時間後に完了し(実施例1の工程3)、生成物は、メタノール-水スラリー後の回収時に脱色した(実施例1の工程9)。残留メタノールを除去するために水中スラリーとした後、生成物を非常にゆっくりと濾過し、非常な困難を伴って乾燥機に移した。IB-MECAの純度は、メタノール-水からのその最初の単離と水からの再スラリー化後とでは変わりなかった。
【0072】
(実施例3:IB-MECA(I)のcGMP製造)
6-クロロプリン-9-リボシドアセトニドのcGMP製造
200Lの反応器に、穏やかに撹拌しつつアセトン(115L、23容量)及び6-クロロプリン-9-リボシド(5.0kg、17.4mol、1.0wt/1.0vol)を仕込んだ。次いで、p-TsOH・H2O(166g、0.88mol、0.05当量、0.033質量)及び2,2-ジメトキシプロパン(7.6L、62mol、3.54当量、1.52容量)を加え、生じた黄色懸濁液を常温で撹拌した。45時間後、生じた黄緑色溶液のサンプルをとったところ、HPLCによる分析から出発物質が変換により0.42%存在することが明らかになった(総純度96.9エリア%)。バッチを、1NのNaOH(900rnL、0.90mol、0.05当量、0.18容量)の添加によって中和した。この添加にはおよそ2分間かかり、最終pHは7であった。このバッチを、1時間撹拌しておいた。生じた黄色混濁混合物を、減圧下、35±5℃にて、回転式エバポレーターで8時間かけて、45L(9.0容量)の体積に達するまで濃縮した。濃縮物は、N2下、2-8℃にて貯蔵した。
【0073】
濃縮物を、200Lの反応器に移して撹拌を開始した。水(45L、9.0容量)を加え、生じた希釈懸濁液を55分間撹拌した。バッチを、真空蒸留のための加熱マントルを設置した72Lの反応器に少量ずつ移した。35±5℃での蒸留を開始し、62Lのバッチ体積(12.4容量)に達するまで進行させた(蒸留は、完了後の30℃以下での静置を含めて2日間に亘って行った。)。バッチを、冷却バスを設置した72Lの反応器に移した。バッチを温度が5℃以下に達するまで4.5時間に亘って冷却し、更に1時間に亘って撹拌した。シャークスキン濾紙を用いて固形物を濾過し、ケークを低温の2:1水/アセトン(7.5L、1.5容量)で濯いだ(総濾過時間は、ケークにN2を通気させて乾燥を促進する工程を含めておよそ1時間40分間であった。)。湿った固形物(5.99kg)を6つのガラストレイに移し、40±5℃のオーブン中、真空下で乾燥させた。47時間乾燥させた後、バッチをN2下で4milのLDPE(二重バッグ)に実装し、ファイバードラム中に貯蔵した。6-クロロプリン-9-リボシドアセトニド(4505g、79%)が得られた。
【0074】
IB-MECAアセトニドのcGMP製造
冷却バス中に保持した72Lの反応器に、CH3CN(37L、14.8容量)を仕込んだ。撹拌を常温で開始した。ここに、6-クロロプリンアセトニド(2234g及び266g、合計=2500g=1.0質量=1.0容量、7.65mol)、塩化ルテニウム(III)水和物(25g、0.121mol、0.016当量、0.010質量)、水(10L、4.0容量)、及びTBAI(25g、0.068mol、0.009当量、0.010質量)を加えた。生じた混合物を、氷水冷却バスを用いて1時間に亘って5℃に冷却し、バッチ内温度を10℃未満に維持しつつ、NaIO4(3750g、17.5mol、2.3当量、1.5質量)を加えた。50分後に氷/溶媒バスを空け、バッチを常温に戻した(バッチ温度は、2時間の間に最高33℃に達した。バッチ温度がこの温度を超えないように冷水浴を適用した。)生じた高粘度の橙褐色の懸濁液を15-30℃にて21時間に亘って撹拌した。TLCでの分析(IPAc、UV検出)により、6-クロロプリン-9-リボシドアセトニドの消失が示された。黄色懸濁液(21℃)を、液滴が落ちなくなるまで30分間に亘って濾過した。CH3CN(15L、6.0容量)を用いて反応器及びケークを濯いだ。濾液は、三回に分けて、水浴を40±5℃に設定した回転式エバポレーターで11時間に亘って濃縮した。
【0075】
72Lの反応器に、生じた残渣(7.7kg)及び純水(22.5L、9容量)を仕込んだ。常温で撹拌を開始した。1時間後に、バッチ(23℃)を濾過し、反応器及びケークを純水(7.5L、3容量)で濯いだ。湿ったケーク(4.7kg)を6つの乾燥トレイに移し、40℃に設定した真空オーブン中で6日間に亘って乾燥させた。IPC KF(仕様設定0.6%未満)及び1H NMR(DMSO-d6)により、物質が許容範囲であることが示された。6-クロロプリン酸(2145g、82%)が得られ、これを、N2下にてテフロン(登録商標)で内張された蓋のついたアンバーガラス瓶に貯蔵した。
【0076】
粗製IB-MECAアセトニドの製造のための典型的な操作
72Lの反応器に、移動を達成するためにCH3CN(31.7L、12.2容量)を用いて6-クロロプリン酸[2600g、7.63mol、1.0質量=1.0容量]を仕込み、撹拌を開始した。塩化チオニル(889mL、12.2mol、1.60当量、0.342容量)を高濃度の灰色スラリーに加え、混合物を30℃未満で4時間に亘り撹拌した。生じたおよそ0.5mlの暗色溶液をMeOH(2mL、HPLC等級、フィッシャー)に加え、TLC(UV検出、IPAc/MeOH、10:1)による検出で出発物質の消失を確認した。6.5時間に亘り、バッチ溶液を、回転式エバポレーターで、真空下にて蒸留が止まるまで濃縮し(水浴は最初に25±5℃に設定し、徐々に35±5℃に温度を上げた)、CH3CN(825mL、0.32容量)を用いて反応器を濯いだ。水浴の熱源を切り、CH3CN(7.6L、2.9容量)をフラスコ中の残渣に加えた。減圧せずに、バッチが完全に流動性になるまでフラスコを回転させた後、これを金盥の中に設置した72Lの反応器に移した。撹拌を開始し、更にCH3CN(25.5L、9.8容量)を加えた。氷水/溶媒バスを用いて、バッチ内温度が2℃未満になるまでバッチを冷却し(これには1時間かかった)、バッチ内温度を7℃未満に維持しつつ、THF中の2Mのメチルアミン(4004mL、8.01mol、1.05当量、1.54容量)を、5Lの滴下漏斗から52分間かけて加えた。次いで、DIPEA(1976mL、11.3mol、1.5当量、0.76容量)を、5Lの滴下漏斗から1時間かけて加え、バッチを常温に戻しつつ11時間に亘って撹拌した(バッチのpHは9であった)。典型的には、この操作についてのバッチの最低温度は0℃であった。TLC(UV検出、IPAc/MeOH、10:1)による分析で、6-クロロプリン酸/塩化アシルの消失及び高度継続性の(higher-running)主要な一生成物の生成が示された。バッチを、加熱マントルに設置され、水冷式還流管を取り付けた別の72Lの反応器に移した。CH3CN(1.3L、0.5容量)を移動の補助に用いた。撹拌を開始し、3-ヨードベンジルアミン・HCl(2777g、10.30mol、1.35当量、1.068質量)を加えた。次いで、DIPEA(6656mL、38mol、5.0当量、2.56容量)を加え、混合物を70±5℃に25時間に亘って加熱した。HPLCでの分析により、変換によっても残っている6-クロロプリンアミドは0.70であり、然るに0.70%以下の規格に合致することが示された。熱源のスイッチを切り、バッチを一晩冷却した。バッチを、8時間に亘り真空下にて、40±5℃の回転式エバポレーターで、蒸留が停止するまで濃縮した。CH3CN(1650mL、0.63容量)を使用して反応器を濯いだ。IPAc(5.36L、2.1容量)を用いて、残渣を72Lの反応器に移した。更なるIPAc(20.4L、7.85容量)を反応器に加え、撹拌を開始した。ここに、飽和重炭酸ナトリウム溶液(22.2L、8.5容量)を加えた。30分間の撹拌の後、二相系を10分間静置して水性の下相を回収した(さらなる水(5L)を二相混合物中に残る少量の固形物を溶解させるために添加した)。残りの有機相を水(12.7L、4.9容量)で洗い、25分間の撹拌時間及び38分間の静置時間をとった。混合有機相を、真空下にて、40±5℃の回転式エバポレーターで、蒸留が停止するまで(6時間に亘り)濃縮した。カーボイをIPAc(825mL、0.32容量)で洗った。段階的に、生成した残渣を、回転式エバポレーターのフラスコ中でMeOH(12.7L、4.9容量)を用いてスラリー化させ、蒸留が止まるまで濃縮した(4.5時間)。粗製のIB-MECAアセトニド(7.2kg)が湿った褐色固体として得られ、これを更なる処理及びバッチ混合のために貯蔵した。HPLCでの分析は、純度91.3エリア%のIB-MECAアセトニドを示した。
【0077】
粗製IB-MECAアセトニドの精製
粗製の、MeOHで湿ったIB-MECAアセトニド(15kg、91エリア%)を、60-65℃にてMeOH(34L)から再結晶させた。生じたフィルターケークを低温MeOH(15.3L)で濯ぎ、8つの乾燥トレイに移した(バッチ重量10kg)。HPLCでの分析により、濾液中に65エリア%の純度でIB-MECAアセトニドが存在することが示された。ピークの高さから、1kgのこの物質がこの操作に消費されたことが算定された。バッチを、40℃に設定した真空オーブン中でおよそ22時間に亘って乾燥させた(7945g)。HPLCでの分析は、2つの顕著な不純物によってRRT0.64(0.32エリア%)及びRRT1.30(0.58エリア%)で汚染された所望の生成物を、99.0エリア%の純度で示した。これらのピークのマススペクトルは以下の通りである。
RRT=0.64
MW=424.19
m/e:424.19(100%)、425.19(23.9%)、426.19(4.0%)、425.18(2.2%)
C, 59.42;H, 5.70;N, 19.80;O, 15.08。
RRT 1.30
MW=752.34gr/mol
m/e:752.01(100.0%)、753.01(32.4%)、754.02(4.5%)、754.01(1.5%)
C, 43.10;H, 3.48;I, 33.74;N, 11.17;O, 8.51。
【0078】
この物質を、再度MeOH(23.8L)から60-65℃にて再結晶させた。生じたフィルターケークを低温MeOH(2×8L)で濯いだ。総濾過時間は85分間であった。ケークをN2気流下で貯蔵した。HPLCによるケークの分析は、2つの顕著な少量の不純物によってRRT0.64(0.07エリア%)及びRRT1.30(0.16エリア%)で汚染された所望の生成物を、99.77エリア%の純度で示した。三度目の任意の再結晶化に代えて、バッチを6つの乾燥トレイ(バッチ重量7.4kg)に移した。バッチを40℃に設定した真空オーブン中にて、およそ60時間に亘って乾燥させた。これにより、IB-MECAアセトニド(7097g)が、アンバーガラス瓶中に実装した後に白色固体として得られた。貯蔵は常温で行われた。
【0079】
IB-MECAのcGMP製造
72L反応器に、THF(18.1L、5.1容量)、IB-MECAアセトニド(3.55kg、6.45mol、1.0質量/1.0容量)、及びINのHCl溶液(17.8L、17.8mol、2.76当量、5.0容量)を仕込んだ。生じた暗緑色の撹拌スラリーを、50±5℃におよそ8時間加熱したところ、この時点でのHPLC分析は、IB-MECAに対して1.16%のIB-MECAアセトニドが残っていることを示した(すなわち1.5%未満の規格に合致)。バッチをおよそ40℃に冷却した後、輸送ポンプを通してインラインフィルターで濾過した。空にした反応器及び輸送ラインをTHF(600mL、0.17容量)で濯いだ。得られた濾液を、低温室(2-8℃)で一晩貯蔵した。200Lの反応器に、冷却した飽和NaHCO3溶液(53.6L、15容量、16℃)をインラインフィルターを通して加え、撹拌を開始した。IB-MECAを多く含んだ濾液(15℃)を、インラインフィルターを備えた輸送ポンプから、30分間かけて200Lの反応器に加えた。生じた白色沈殿物を一晩撹拌しておいた(20±2℃で起こった沈降の間に、温度変動はほとんどなく、冷却は適用されず、少量の起泡があった。スラリーのpHはpH7.5であった。)バッチを、ナイロン濾布を用いて濾過し、空にした反応器及びケークを水(5×3.4L、4.8容量)で濯いだ。ケークをN2気流下で吸引し(総濾過時間は5.5時間であった。)、更なる処理のために実装し、低温室に貯蔵した。このバッチ(9.2kgの湿重量)は、HPLCにより、0.20エリア%をこえる不純物を全く含まない99.5エリア%の純度であることが示された。
【0080】
(実施例4:IB-MECAのキロスケールcGMP製造過程の比較)
スキーム1は、本明細書に従い、添付のクレームに規定される、IB-MECAのキロスケール調製のために用いられる操作を示す(典型的な収率及びHPLC純度が示される)。スキーム1に表記の製造工程は、上記実施例1に詳説されるIB-MECAの調製のための製造方法に類似している。この方法を用いたIB-MECAの単一バッチ製造は、最高で6kgであった(HPLCにより、99.5エリア%純度、0.18%を超える不純物は皆無)。cGMP製造は、市販の6-クロロプリン-9-リボシド(10kg)を用いて開始され、IB-MECA(6kg、総理論収率34%(60質量%))をもたらした。
スキーム2は、IB-MECAの製造方法の変形を示す(典型的な収率及びHPLC純度が示される)。相違はワークアップ、反応の順序、投入した試薬の当量、使用した溶媒、ひいては収率にある。スキーム2の操作では、シリカゲルカラムクロマトグラフィーと逆相バイオタージ精製との両方を利用した。スキーム2の方法は、350g及び2kgのスケールで行われ、IB-MECAをそれぞれ(32 g、9質量%)及び(414g、21質量%)でもたらした。
【0081】
【化14】

【0082】
【化15】

【0083】
IB-MECAのcGMP製造のために利用された、スキーム1の処理工程とスキーム2の処理工程との間には、下記の通り多数の重要な相違が見られた。
【0084】
工程A 6-クロロプリンアセトニドの調製
スキーム2による方法では、加えられたp-TsOH・H2O及び2,2-ジメトキシプロパンの量が、収率及び品質に不利な影響を与えることなく反応速度を増大させるために増量された。これにより、費用のかかる反応容器滞留時間が半分に短縮された。スケール上では、最初の操作は一貫性を欠き、不完全な反応をもたらした。反応を完了まで推進するためには、更なる試薬を少量ずつ、3週間の期間に亘って添加せねばならず、総反応溶液に著しい増大をまねいた。これらの投入量もまた、生じるおそれのある副生成物を最小限にとどめるように最適化された。
【0085】
添付のクレームの範囲の対象でもあるスキーム1に従う方法は、スキーム2の方法について達成されたものと同等の収率で、一度の回収物として、高品質の物質をもたらした。
【0086】
スキーム1に詳説される方法によれば、IB-MECAアセトニドを得るためのその後の試薬及び溶媒の添加は、酸の単離質量に基づいていた。一方のスキーム2の方法によれば、試薬と溶媒との添加は、単離された前駆体中間体(6-クロロプリンアセトニド)の質量に対してであった。然るに、スラリー、抽出IPAc/H20ワークアップ、及びNa2SO4乾燥操作は、それぞれスキーム1の方法においては排除された。
【0087】
スキーム1における酸は、取扱が容易な形態で水から単離されたが、これは残留水含量規格に合うようにオーブン乾燥してよい(後続の塩化アシル生成は水感受性である)。許容できる酸中の残留水の上限は、0.6質量%未満と決定された。これは、単純な真空オーブン乾燥によって品質を犠牲にすることなく一貫性をもって満たされた。回収は、フィルターケークの洗浄容量を増大させること及び前述の不要な処理を排除することによって促進された。
【0088】
工程C IB-MECAアセトニドの調製
2つのスキーム間には、三つの合成変換(3-ヨードベンジルアミンとの反応、その後の塩化アシル生成、及び最後のMeNH2とのアミド生成)の順序に著しい相違がある。試薬の添加は、6-クロロプリン酸の投入量に対して最適化された(上記工程B参照)。スキーム1では、これらの反応のために単一の反応溶媒(CH3CN)が使用された。これは、スキーム2の方法を利用した場合に遭遇するエステル不純物の生成を排除した(図示なし)。更に、スキーム1におけるこの工程の順序によれば、最も高価な原料(3-ヨードベンジルアミン)は合成の最終段階で使用された。スキーム2の方法におけるシリカゲルカラムクロマトグラフィー精製の必要性は、MeOH再結晶によって置き換えられている(スキーム1)。この時点で、幾つか別の、おそらくは工程不純物が認識された(図示なし)。
【0089】
工程D IB-MECAの調製
スキーム2の方法において利用されたバイオタージ精製は、スキーム1ではMeOH再結晶によって前駆体IB-MECAアセトニドの純度が改善されたため、もはや不要であった。いずれのスキームにおいても、アセトニド脱保護(酸性条件)の間に熱分解が起こったことが判明しており、このため反応時間は(収率に不利に影響を与えることなく)8時間に限られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下式(I):
【化1】

を有するIB-MECAの化学合成のための方法であって、
(i)下式(II):
【化2】

[式中、
XはCl、I、またはBrから選択されるハロゲンである]
の6-ハロプリン-9-リボシドとジオール保護試薬とを反応させて、下式(III):
【化3】

のジオールが保護された6-ハロプリンを得る工程(ここで、前記ジオール保護試薬は、直鎖状または分枝状のC1-C6アルキル基を含む);
(ii)式(III)の前記ジオールが保護された6-ハロプリンにおいて、第一級アルコールを、式(IV):
【化4】

のそれぞれのカルボン酸誘導体に酸化する工程;
(iii)式(IV)の誘導体のカルボン酸基とメチルアミンとを反応させて、ジオールが保護された6-ハロプリン(III)のそれぞれのメチルアミド誘導体を得る工程(前記メチルアミド誘導体は式(V):
【化5】

を有する);
(iv)メチルアミド誘導体(V)のハロゲン基を3-ヨードベンジルアミンで置換して、式(VI):
【化6】

を有するジオールが保護されたIB-MECAを生成する工程;
(v)ジオール保護を脱離させて式(I)の前記IB-MECAを得る工程;
を含む方法。
【請求項2】
前記ハロゲンがクロライドである、請求項1の方法。
【請求項3】
前記保護基がC3-C6ジアルキルオキシアルカンである、請求項1または2の方法。
【請求項4】
前記ジアルキルオキシアルカンが2,2-ジメトキシプロパンである、請求項3の方法。
【請求項5】
前記ジオール保護が、強酸及び極性有機溶媒の存在下で達成される、請求項1乃至4のいずれか一項の方法。
【請求項6】
前記強酸が、p-TsOH、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、蟻酸、塩酸、硫酸から選択される、請求項5の方法。
【請求項7】
前記極性有機溶媒が水混和性溶媒である、請求項5の方法。
【請求項8】
前記極性有機溶媒がアセトンである、請求項7の方法。
【請求項9】
式(III)の前記ジオールが保護された6-ハロプリン中の第一級アルコールの、対応するカルボン酸誘導体への前記酸化が、ルテニウム金属、塩化ルテニウム、三酸化クロム、過ヨウ素酸ナトリウム、重クロム酸カリウム、過マンガン酸カリウム、酸化銀、硝酸、白金酸化物/酸素、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル(TEMPO)、亜塩素酸ナトリウム、及びこれらの混合物から選択される酸化剤の触媒量の存在下で達成される、請求項1乃至8のいずれか一項の方法。
【請求項10】
前記酸化が、触媒量のRuCl3及び過ヨード酸塩の存在下で達成される、請求項9の方法。
【請求項11】
式(IV)のカルボン酸誘導体の、式(V)のそれぞれの前記メチルアミド誘導体への変換が、ハロゲン化剤の存在下での求核置換及びその後の前記メチルアミンの導入によって達成される、請求項1乃至10のいずれか一項の方法。
【請求項12】
前記ハロゲン化剤が、SOCl2及びPCl5から選択される、請求項11の方法。
【請求項13】
ジオール保護基の脱離が、強酸及び極性非プロトン性溶媒の存在下で行われる、請求項1乃至12のいずれか一項の方法。
【請求項14】
前記強酸がHClであり、前記溶媒がテトラヒドロフラン(THF)である、請求項13の方法。
【請求項15】
IB-MECAの大スケール合成を可能にする、請求項1乃至14のいずれか一項の方法。
【請求項16】
IB-MECAの適切な製造(GMP)のための、請求項1乃至15のいずれか一項の方法。
【請求項17】
請求項1乃至16のいずれか一項の方法によって得られた化学的に合成されたIB-MECA。
【請求項18】
請求項17のIB-MECAを含む医薬組成物。

【公表番号】特表2010−521452(P2010−521452A)
【公表日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−553282(P2009−553282)
【出願日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際出願番号】PCT/IL2008/000360
【国際公開番号】WO2008/111082
【国際公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願人】(507028608)キャン−ファイト・バイオファーマ・リミテッド (12)
【Fターム(参考)】