説明

IIA/IIB族のセレン化物硫黄ベースの蛍光体材料を使用して出力光を放射するデバイスおよび方法

【課題】高い輝度効率と良好な光出力安定性を伴う蛍光体を使用して、白色出力光を放射するLEDを提供する。
【解決手段】出力光を放射するためのデバイスおよび方法は、IIA/IIB族群元素セレン化物硫黄ベースの蛍光体材料(118)を使用し、デバイスの光源から放射されたオリジナル光の少なくとも一部を、より長い波長の光に変換し、出力光の光スペクトルを変更する。こうして、本デバイスと方法を使用して、白色光を出力することができる。また、本デバイスと方法では、チオガレートベース(Thiogallate-based)の蛍光体材料(119)を使用することもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IIA/IIB族のセレン化物硫黄ベースの蛍光体材料を使用して出力光を放射するデバイスおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
白熱灯、ハロゲン灯、蛍光灯などの従来の光源は、過去20年の間にあまり改善されていない。しかし、発光ダイオード(LED)は、動作効率の点で改善され、現在では交通信号および自動車のテールライトなど、従来の単色照明の用途において従来の光源と置き換わるようになった。これは一部には、LEDが、従来の光源に比べて多くの長所を有する事実による。これらの利点には、動作寿命が長いこと、消費電力が小さいこと、サイズが小さいこと、が含まれる。
【0003】
LEDは、典型的には単色の半導体光源で、現在は、UV、青、緑、黄色、赤まで種々の色が使用可能である。単色LEDは、狭帯域の放射特性により、直接「白色」光用途に使用することができない。白色光を生成するためには、単色LEDの出力光を、1つまたは複数の異なる波長の他の光と混合しなければならない。単色LEDを使用して白色光を生成する一般的な方法としては、(1)個別の赤色LED、緑色LED、青色LEDを一緒にパッケージングし、これらのLEDから放射される光を組み合わせて白色光を生成する方法、および、(2)UV、青、または緑のLEDに蛍光剤を導入し、LEDの半導体ダイから放射されるオリジナルの(元の)光の一部を、より長い波長の光に変換し、オリジナルのUV、青、または緑の光と組み合わせて白色光を生成する方法、という2種類の方法がある。
【0004】
単色LEDを使用して白色光を生成するこれらの2つの方法の間では、一般に、第1の方法より第2の方法が好まれる。第1の方法は、第2の方法とは対照的に、赤、緑、および青のLEDが、異なる動作電圧を要件とする半導体ダイを含むので、より複雑な駆動回路を必要とするためである。異なる動作電圧を要件とすることに加えて、赤、緑、および青のLEDは、動作寿命にわたって異なるように劣化するので、第1の方法を使用して長期間にわたって色を制御することが困難である。さらに、第2の方法で必要なのは単一のタイプの単色LEDだけであるので、構成が簡単で製造コストが安い第2の方法を使用して、よりコンパクトなデバイスを作成することができる。さらに、第2の方法はより広い光放射を生み、より高いカラーレンダリング特性を有する白色出力光に変換することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
白色光を生成する第2の方法に関する問題は、オリジナルのUV、青、または緑の光を変換するために現在使用される蛍光剤では、作成されたLEDが、時間の経過に従って、望ましい輝度効率および/または光出力安定性を達成することができないことである。
【0006】
この問題を鑑みて、高い輝度効率と良好な光出力安定性を伴う、1つまたは複数の蛍光体を使用して白色出力光を放射するLEDおよびその方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
出力光を放射するためのデバイスおよび方法は、IIA/IIB族元素セレン化物硫黄ベースの蛍光体材料を使用し、デバイスの光源から放射されたオリジナルの光の少なくとも一部を、より長い波長の光に変換し、出力光の光スペクトルを変更する。こうして、本デバイスと方法を使用して、白色光を出力することができる。また、本デバイスと方法では、チオガレートベース(Thiogallate-based)の蛍光体材料を使用することもできる。
【0008】
本発明の一実施形態に従う出力光を放射するデバイスは、第1のピーク波長の第1の光を放射する光源と、該光源に光学的に結合され、該第1の光を受光する波長シフト領域と、を含む。波長シフト領域は、IIA/IIB族元素セレン化物硫黄ベースの蛍光体材料を含む。この蛍光体材料は、該第1の光の少なくとも一部を、第2のピーク波長の第2の光に変換する性質を有する。第2の光は、出力光の成分となる。
【0009】
本発明の一実施形態に従う、出力光を放射する方法は、第1のピーク波長の第1の光を生成するステップと、該第1の光を受光するステップであって、該第1の光の少なくとも一部を、IIA/IIB族元素セレン化物硫黄ベースの蛍光体材料を使用して、第2のピークの波長の第2の光に変換することを含む、ステップと、該第2の光を出力光の成分として放射するステップと、を含む。
【0010】
本発明の他の態様および利点は、本発明の原理の例として図示された図面と共に次の詳細な説明を読むと明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1を参照すると、本発明の一実施形態に従う、蛍光体変換白色発光ダイオード((white phosphor-converted light emitting diode(LED))100が示されている。LED100は、高い輝度効率と良好な光出力安定性を備えた「白色」出力光を生成するように設計される。LED100が生成したオリジナルの光の一部を、IIA/IIB族セレン化物硫黄ベースの蛍光体材料を使用して、より長い波長の光に変換することによって、白色出力光が生成される。さらに、LED100は、チオガレートベースの蛍光体材料などの1つまたは複数の追加の蛍光体材料を使用することができる。
【0012】
図1に示すように、蛍光体変換白色LED100は、リードフレームが装着されたLEDである。LED100は、LEDダイ102、リードフレーム104と106、ワイヤ108、およびランプ110を含む。LEDダイ102は、特定のピーク波長の光を生成する半導体チップである。一実施形態では、LEDダイ102は、可視スペクトルの青色波長範囲中にピーク波長を有する光を生成するように設計される。該波長は、約420nmから490nmである。LEDダイ102は、リードフレーム104上に配置され、ワイヤ108を介して他のリードフレーム106に電気接続される。リードフレーム104と106は、LEDダイ102を駆動するのに必要な電力を提供する。LEDダイ102は、ランプ110内に収められており、該ランプ110は、LEDダイ102から放射される光を伝播するための媒体となる。ランプ110は、メインセクション112と出力セクション114を含む。この実施形態では、ランプ110の出力セクション114は、ドーム型で、レンズとして機能する。こうして、出力光としてLED100から放射された光は、ランプ110のドーム型の出力セクション114によって集光される。しかし、他の実施形態では、ランプ100の出力セクション114は、水平方向に平面であってもよい。
【0013】
蛍光体変換白色LED100のランプ110は、透明な物質で作成される。これは透明エポキシ(clear epoxy)などの任意の透明な材料であってよく、LEDダイ102からの光がランプを介して伝達し、ランプの出力セクション114から放射することができるようにする。この実施形態では、ランプ110は、やはり光伝播の媒体である波長シフト領域116を含む。該波長シフト領域は、透明な物質と、IIA/IIB族元素セレン化物硫黄ベースの蛍光体材料(fluorescent phosphor materials based on Group IIA/IIB element Selenide Sulfur based phosphor material)118およびチオガレートベースの蛍光体材(Thiogallate-based phosphor material)119という2種類の蛍光体材料と、の混合で作成される。IIA/IIB族元素セレン化物硫黄ベース蛍光体材料118およびチオガレートベース蛍光体材料119を使用し、LEDダイ102が放射したオリジナルの光の一部を、よりエネルギーの低い(より波長の長い)光に変換する。IIA/IIB族元素セレン化物硫黄ベース蛍光体材料118は、LEDダイ102からの第1のピーク波長のオリジナル光の一部を吸収する。これによって、IIA/IIB元素セレン化物硫黄ベース蛍光体材料の原子が励起され、第2のピーク波長の、より長い波長の光が放射される。一実施形態では、IIA/IIB族元素セレン化物ベースの蛍光体材料118は、LEDダイ102からのオリジナル光の一部を、可視スペクトルのオレンジ/赤波長範囲内の、より長いピーク波長の光に変換する性質を有する。該波長は、約585nmから800nmである。同様に、チオガレートベースの蛍光体材料119も、LEDダイ102からのオリジナル光の一部を吸収する。これによって、チオガレートベースの蛍光体材料の原子が励起され、第3のピーク波長の、より長い波長の光が放射される。一実施形態では、チオガレートベースの蛍光体材料119は、LEDダイ102からのオリジナル光の一部を、可視スペクトルの緑の波長範囲内の、より長いピーク波長の光に変換する性質を有する。該波長は、約490nm〜575nmである。変換された光の第2のピーク波長と第3のピーク波長は、オリジナルの光のピーク波長と、IIA/IIB族元素セレン化物硫黄ベースの蛍光体材料118およびチオガレートベースの蛍光体材料119とによって、部分的に定義される。LEDダイ102からの吸収されないオリジナル光と、該変換された光とが組み合わされ、「白色」光が生成される。白色光は、LED100の出力光として、ランプ110の光出力セクション114から放射される。
【0014】
一実施形態では、ランプ110の波長シフト領域116内に含まれるIIA/IIB族元素セレン化物硫黄ベースの蛍光体材料118は、亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、および/または、バリウム(Ba)を含む。IIA/IIB族元素セレン化物硫黄ベースの蛍光体材料118は、銅(Cu)、塩素(Cl)、フッ素(F)、臭素(Br)、銀(Ag)、希土類元素(rare earth element)などの、1つまたは複数の適切なドーパントによって活性化される。一実施形態では、IIA/IIB族元素セレン化物硫黄ベース蛍光体材料118は、Zn、セレン化物、および硫黄で作成された蛍光体であり、好ましくは、ZnSe0.50.5:Cu、Cl蛍光体である。
【0015】
ランプ110の波長シフト領域116に含まれる、チオガレートベースの蛍光体材料119は、希土類元素などの1つまたは複数の適切なドーパントによって活性化される金属チオガレートベース(metal-Thiogallate-based)の蛍光体材料であることができる。金属チオガレートベースの蛍光体材料は、MNで定義される構造を有することができる。ここで、Mは、バリウム(Ba)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、マグネシウム(Mg)などのIIA族の元素であり、Nは、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)などのIIIA族の元素である。xとyは、数字であり、例えば、xは2に等しくyは4に等しい、または、xは4に等しくyは7に等しい。代替としては、金属チオガレートベースの蛍光体材料は、MMNによって定義される構造を有していてもよい。一実施形態では、チオガレートベースの蛍光体材料119は、希土類元素などの1つまたは複数の適切なドーパントによって活性化されるバリウムストロンチウムガリウム硫化物(Barium Strontium Gallium Sulfide)である。好ましくは、チオガレートベースの蛍光体材料119は、BaSrGa:Euで作成される蛍光体である。
【0016】
好ましいZnSe0.50.5:Cu、Cl蛍光体を、種々の技術で合成することができる。1つの技術は、ドープされていないZnSeとZnSを、1:1のモル比で、乾式に粉砕(dry-milling、ドライミル)し、5μm未満ほどの微細な粉末または結晶にすることを含む。ついで、少量のCuClドーパントを、脱イオン水またはメタノールなどのアルコール類からの溶液に加え、ドープされていないZnSe0.50.5粉末と共にボールミル(ball-mill)する。溶液に加えるCuClドーパントの量は、数ppm(parts per million)の最少量から、ZnSe0.50.5材とCuClドーパントの合計重量の約4パーセントまでの任意の量であってよい。次に、ドープさた材料は、摂氏約100度(100℃)でオーブン乾燥(oven-dry)し、この結果得られたケーク(cake)を再びドライミルして、微粒子を生成する。ミルされた材料を、石英るつぼなどのるつぼに入れ、1〜2時間に渡って摂氏約1000度(1000℃)の不活性雰囲気下で焼結する。次に、必要に応じて、焼結された材料をふるいにかけ、所望の粒度分布(particle size distribution)を有するZnSe0.50.5:Cu蛍光体粉末を生成する。所望の粒度分布は、ミクロン範囲であってよい。
【0017】
ZnSe0.50.5:Cu、Cl蛍光体粉末をさらに加工し、シリカコーティング(silica coating)を伴う蛍光体粒子を生成することができる。蛍光体粒子を透明な物質と混合して、ランプ110の波長シフト領域116などのLED内の波長シフト領域を形成するときに、蛍光体粒子上のシリカコーティングは、蛍光体粒子のクラスタ形成または集塊(agglomeration)を低減させることができる。蛍光体粒子のクラスタ化または集塊が起きると、作成されたLEDにより生成される出力光が、不均一な色分布を有することがある。
【0018】
ZnSe0.50.5:Cu、Cl蛍光体粒子にシリカコーティングを適用するために、ふるいにかけられた該材料をアニール処理にかけて、該蛍光体粒子をアニール(anneal)して汚染物質を除去する。次に、蛍光体粒子とシリカ粉末を混合し、該混合物を、摂氏約200度の炉の中で加熱する。熱が加えられると、蛍光体粒子上に薄いシリカコーティングが形成される。蛍光体粒子上のシリカの量は、蛍光体粒子に対して約1%である。この結果得られる、シリカコーティングを伴うZnSe0.50.5:Cu、Cl蛍光体粒子は、30ミクロンに等しいかまたは30ミクロン未満の粒径を有することができる。
【0019】
好ましいBaSrGa:Eu蛍光体を、種々の技術で合成することができる。1つの技術は、前駆体(precursor)として、BaS、SrS、Gaを使用することを含む。前駆体は、脱イオン水またはメタノールなどのアルコール類からの溶液内で、少量のEuドーパント、フラックス(flux)(C1とF)、および過剰な硫黄と共に、ボールミルされる。溶液に加えるEuドーパントの量は、最少量から、全成分の合計重量の約10パーセントまでの間の任意の値であってよい。ついで、ドープされた材料を乾燥してミルし、微粒子を生成する。ついで、ミルされた粒子を、石英るつぼなどのるつぼに入れ、1〜2時間に渡って摂氏約800度(800℃)の不活性雰囲気下で焼結する。ついで、必要に応じて、焼結された材料をふるいにかけ、所望の粒度分布を有するBaSrGa:Eu蛍光体粉末を生成する。粒度分布は、ミクロン範囲であってよい。
【0020】
ZnSe0.50.5:Cu、Cl蛍光体粉末と同様に、BaSrGa:Eu蛍光体粉末についてもさらに処理して、シリカコーティングを伴う蛍光体粒子を生成することができる。この結果得られる、シリカコーティングを伴うBaSrGa:Eu蛍光体粒子は、40ミクロンに等しいかまたは40ミクロン未満の粒径を有することができる。
【0021】
ZnSe0.50.5:Cu、ClとBaSrGa:Euの合成プロセスが終了すると、ZnSe0.50.5:Cu、ClとBaSrGa:Euの蛍光体粉末を、たとえばエポキシなどのランプ110と同じ透明物質と混合して、LEDダイ102の周囲に堆積させ、ランプの波長シフト領域116を形成する。2つの異なるタイプの蛍光体粉末間の比率を調節して、蛍光体変換白色LED100について異なる色特性を生成することができる。たとえば、ZnSe0.50.5:Cu、Cl蛍光体粉末とBaSrGa:Eu蛍光体粉末の間の比率は、[1:7]であることができる。ランプ110の残りの部分に、ZnSe0.50.5:Cu、ClとBaSrGa:Euの蛍光体粉末を含まない透明な物質を堆積させることにより、LED100を製作することができる。図1では、ランプ110の波長シフト領域116は四角形として示されているが、波長シフト領域を、図3Aに示すように半球形などの別の形状に構成することもできる。さらに他の実施形態では、波長シフト領域116は、LEDダイ102に物理的に結合しなくてもよい。このような実施形態では、波長シフト領域116は、ランプ110内の任意の他の位置に設けることができる。
【0022】
図2A、図2B、図2Cでは、本発明の一実施形態に従う、代替のランプ構成を備える蛍光体変換白色LED200A、200B、200Cを示す。図2Aの蛍光体変換白色LED200Aは、ランプ全体が波長シフト領域であるランプ210Aを含む。したがってこの構成では、ランプ210A全体が、透明な物質と、IIA/IIB族元素セレン化物硫黄ベースの蛍光体材料118およびチオガレートベースの蛍光体材料119との混合物で作成される。図2Bの蛍光体変換白色LED200Bは、波長シフト領域216Bがランプの外側表面に位置するランプ210Bを含む。したがってこの構成では、IIA/IIB族元素セレン化物硫黄ベースの蛍光体材料118およびチオガレートベースの蛍光体材料119を含まないランプ210Bの領域を、最初にLEDダイ102上にわたって形成し、ついで、透明な物質と蛍光体材料の混合物を、この領域上に堆積させて、ランプの波長シフト領域216Bを形成する。図2Cの蛍光体変換白色LED200Cは、波長シフト領域216Cが、LEDダイ102上にコーティングされた、透明な物質と、IIA/IIB族元素セレン化物硫黄ベース蛍光体材料118およびチオガレートベース蛍光体材料119との混合物の薄層であるランプ210Cを含む。したがってこの構成では、まずLEDダイ102を、透明な物質と、IIA/IIB族元素セレン化物硫黄ベースの蛍光体材料118チオガレートベースの蛍光体材料119との混合物でコーティングまたはカバーして波長シフト領域216Cを形成し、次に、波長シフト領域の上に、蛍光体材料を含まない透明な物質を堆積させることによって、ランプ210Cの残りの部分を形成することができる。たとえば、LED200Cの波長シフト領域216Cの厚さは、LEDダイ102が生成する光の色に依存して、10ミクロンと60ミクロンの間であることができる。
【0023】
図3A、図3B、図3C、図3Dに示すように、代替の実施形態では、LEDダイを載せる蛍光体変換白色LEDのリードフレームは、リフレクタカップ(reflector cup)を含むことができる。図3Aから図3Dは、リフレクタカップ322を有するリードフレーム320を含む異なるランプ構成を備えた、蛍光体変換白色LED300A、300B、300C、300Dを示す。LEDダイにより生成された光の一部が、リードフレーム320で反射されて、有用な出力光として各LEDから放射されるように、リフレクタカップ322は、LEDダイ102が位置づけられるくぼんだ領域を提供する。
【0024】
上述の異なるランプ構成は、表面実装型(surface-mounted)LEDなどの他のタイプのLEDに適用して、本発明に従う、IIA/IIB族元素セレン化物硫黄ベース蛍光体材料およびチオガレートベース蛍光体材料を備える、他のタイプの蛍光体変換白色LEDを生成することができる。さらに、これらの異なるランプ構成を、半導体レーザデバイスなどの他のタイプの発光デバイスに適用し、本発明に従う他のタイプの発光デバイスを生成することもできる。これらの発光デバイスにおいて、光源は、レーザダイオードなど、LEDダイ以外の任意の光源であってもよい。
【0025】
次に図4を参照すると、本発明の一実施形態に従う、青色(440nm〜480nm)LEDダイを備えた蛍光体変換LEDの光スペクトル424が示されている。このLEDの波長シフト領域は、エポキシ(epoxy)に対して、65%のZnSe0.50.5:Cu、Cl蛍光体およびBaSrGa:Eu蛍光体材料で形成される。LEDの波長シフト領域に含まれるZnSe0.50.5:Cu、Cl蛍光体材料およびBaSrGa:Eu蛍光体材料のパーセンテージ量すなわち負荷率(loading content)を、蛍光体の効率に従って変えることができる。たとえば、ドーパント(複数可)の量を変えることによって蛍光体材料効率を上昇させるにつれ、ZnSe0.50.5:Cu、Cl蛍光体およびBaSrGa:Eu蛍光体の負荷率を減少させることができる。光スペクトル424は、約460nmの第1のピーク波長426を含み、これは、青色LEDダイから放射される光のピーク波長に対応する。光スペクトル424はまた、LED波長シフト領域のBaSrGa:Eu蛍光体によって変換された光のピーク波長である約540nmの第2のピーク波長428と、LED波長シフト領域のZnSe0.50.5:Cu、Cl蛍光体によって変換された光のピーク波長である約625nmの第3のピーク波長430と、を含む。
【0026】
次に、図5を参照して、本発明の一実施形態に従う、出力光を生成する方法を説明する。ブロック502では、第1のピーク波長の第1の光を生成する。第1の光は、LEDダイによって生成されることができる。次にブロック504では、第1の光を受光し、該第1の光の一部を、IIA/IIB族元素セレン化物硫黄ベースの蛍光体材料を使用して、第2のピーク波長の第2の光に変換する。ブロック504では、該第1の光の一部を、チオガレートベースの蛍光体材料などの1つまたは複数の蛍光体材料を使用して、別の光に変換することができる。次にブロック506では、第1の光と第2の光を、出力光の成分として放射する。
【0027】
本発明の特定の実施形態を記述および図示したが、本発明は説明および図示した特定の形態または構成部品の配置に限定されるものではない。さらに、本発明は白色出力光を生成するデバイスと方法に限定されるものではない。また本発明は、他のタイプの出力光を生成するデバイスおよび方法を含む。たとえば、本発明に従う、IIA/IIB族元素セレン化物硫黄ベース蛍光体材料および/またはチオガレートベース蛍光体材料を使用して、発光デバイスにおいて、光源が生成するオリジナルの光のうちの実質的に全部を、異なる波長の光に変換することができ、この場合、出力光の色が白色でなくなることもありうる。本発明の範囲は、特許請求の範囲の請求項および請求項の等価物によって定義される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施形態に従う、蛍光体変換白色LEDを示す図である。
【図2A】本発明の一実施形態に従う、代替のランプ構成を備えた、蛍光体変換白色LEDを示す図。
【図2B】本発明の一実施形態に従う、代替のランプ構成を備えた、蛍光体変換白色LEDを示す図。
【図2C】本発明の一実施形態に従う、代替のランプ構成を備えた、蛍光体変換白色LEDを示す図。
【図3A】本発明の代替の実施形態に従う、リフレクタカップを有するリードフレームを備えた蛍光体変換白色LEDを示す図。
【図3B】本発明の代替の実施形態に従う、リフレクタカップを有するリードフレームを備えた蛍光体変換白色LEDを示す図。
【図3C】本発明の代替の実施形態に従う、リフレクタカップを有するリードフレームを備えた蛍光体変換白色LEDを示す図。
【図3D】本発明の代替の実施形態に従う、リフレクタカップを有するリードフレームを備えた蛍光体変換白色LEDを示す図。
【図4】本発明の一実施形態に従う、蛍光体変換白色LEDの光スペクトルを示す図。
【図5】本発明の一実施形態に従う、出力光を放射する方法のフロー図。
【符号の説明】
【0029】
100 発光ダイオード(LED)
102 LEDダイ
104 リードフレーム
106 リードフレーム
108 ワイヤ
110 ランプ
112 メインセクション
114 出力セクション
116 波長シフト領域
118 IIA/IIB族元素セレン化物硫黄ベースの蛍光体材料
119 チオガレートベースの蛍光体材料
322 リフレクタカップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力光を放出するデバイスであって、
第1のピーク波長の第1の光を放射する光源(102)と、
前記第1の光源に光学的に結合され、該第1の光を受光する波長シフト領域(116、210A、216B、216C)と、を備え、
前記波長シフト領域は、前記第1の光の少なくとも一部を、第2のピーク波長の第2の光に変換する性質を有するIIA/IIB族元素セレン化物硫黄ベースの蛍光体材料(118)を含んでおり、該第2の光が、前記出力光の成分となる、
デバイス。
【請求項2】
前記IIA/IIB族元素セレン化物硫黄ベースの蛍光体材料は、少なくとも1つの希土類元素でドープされる、
請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記IIA/IIB族元素セレン化物硫黄ベースの蛍光体材料は、亜鉛、カドミウム、カルシウム、マグネシウム、バリウムからなるグループから選択される元素を含む、
請求項1または2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記IIA/IIB族元素セレン化物硫黄ベースの蛍光体材料は、ZnSe0.50.5:Cu、Clの化学式で定義される、銅と塩素で活性化された亜鉛セレン化物硫黄を含む、
請求項3に記載のデバイス。
【請求項5】
前記波長シフト領域(116、210A、216B、216C)は、前記第1の光の一部を、前記出力光の成分である第3のピーク波長の第3の光に変換する性質を有するチオガレートベースの蛍光体材料(119)を含む、
請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
出力光を放出させるための方法であって、
第1のピーク波長の第1の光を生成するステップ(502)と、
前記第1の光を受光するステップ(504)であって、該第1の光の少なくとも一部を、IIA/IIB族元素セレン化物硫黄ベースの蛍光体材料(118)を使用して、第2のピーク波長の第2の光に変換することを含む、ステップと、
前記第2の光を、前記出力光の成分として放射するステップ(506)と、
を含む、方法。
【請求項7】
前記IIA/IIB族元素セレン化物硫黄ベースの蛍光体材料(118)は、少なくとも1つの希土類元素でドープされる
請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記IIA/IIB族元素セレン化物硫黄ベースの蛍光体材料(118)は、亜鉛、カドミウム、カルシウム、マグネシウム、バリウムからなるグループから選択される元素を含む、
請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
前記受光するステップは、前記第1の光の一部を、チオガレートベースの蛍光体材料(119)を使用して、前記出力光の成分である第3のピーク波長の第3の光に変換することを含む、
請求項6から8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記IIA/IIB族元素セレン化物硫黄ベースの蛍光体材料(118)および前記チオガレートベースの蛍光体材料(119)のうちの少なくとも一方は、シリカコーティングを有する蛍光体粒子を含む、
請求項9に記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−24935(P2006−24935A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−196200(P2005−196200)
【出願日】平成17年7月5日(2005.7.5)
【出願人】(399117121)アジレント・テクノロジーズ・インク (710)
【氏名又は名称原語表記】AGILENT TECHNOLOGIES, INC.
【住所又は居所原語表記】395 Page Mill Road Palo Alto,California U.S.A.
【Fターム(参考)】