説明

IL−17FとIL−17Rとの間の相互作用の特性解析

本発明は、IL−17F媒介性の気道の炎症が、ヒト呼吸器上皮細胞の側底面上でIL−17Rを通してのシグナル伝達によって媒介される可能性があるという所見に関連している。そこで、本発明は、単離されて精製されたIL−17FもしくはIL−17Rポリヌクレオチドおよびポリペプチドを提供する。本発明は、IL−17F生物活性を阻害する、すなわち減少させる、制限する、遮断する、さもなければ低下させることのできる試験化合物をスクリーニングするための新規な方法、およびIL−17F生物活性に関連する障害、例えば、嚢胞性線維症を有する患者における、嚢胞性線維症における細菌感染に起因する肺症状の悪化を含む気道炎症にIL−17FのIL−17Rへの結合が及ぼす作用に関連する障害を診断する、予後診断する、および進行を監視するための方法にさらに向けられる。本発明は、IL−17F生物活性に関連する前記障害を介入(治療)および予防するための新規な治療薬および治療標的ならびに方法にさらに向けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、これにより参照して本明細書に全体として組み込まれる2005年2月14日に提出された米国仮特許出願第60/653,186号に対する優先権を主張する。
【0002】
(発明の背景)
(発明の分野)
本発明は、IL−17FのIL−17Rへの結合の作用についての特性解析に関する;詳細には、本発明は、IL−17FのIL−17Rへの結合が、例えば、嚢胞性線維症を有する患者における、嚢胞性線維症における細菌感染に起因する肺症状の悪化を含む気道炎症に及ぼす作用に関する。
【0003】
(関連背景技術)
IL−17Aは、顆粒球形成および炎症部位内への好中球の動員の両方を調節する前炎症性サイトカインである(Yao et al. (1995) J. Immunol. 155:5483-86; Ye et al. (2001) J. Exp. Med. 194:519-28;Kolls et al. (2003) Am. J. Respir. Cell Mol. Biol. 28:9-11;Laan et al. (1999) J. Immunol. 162:2347-52; Linden et al. (2000) Eur. Respir. J. 15:973-77)。これは、一部には、CXCケモカインの遊離を誘導する、および重要な顆粒球形成成長因子であるG−CSFの発現を調節するIL−17Aの両方の能力に起因する(Laan, supra; Moseley et al. (2003) Cytokine Growth Factor Rev. 14:155-74; Jones and Chan (2002) Am. J. Respir. Cell Mol. Biol. 26:748-53; Ye et al. (2001) Am. J. Respir. Cell Mol. Biol. 25:335-40; Ye et al. (2001) J. Exp. Med. 194:519-28)。IL−17Aに対する受容体、すなわちIL−17受容体(IL−17R)のホモ接合性欠失を有するマウスは、実験的グラム陰性肺炎に比較して増大した致死性、欠陥のある好中球動員、および減少した顆粒球形成を有する(Ye et al. (2001) J. Exp. Med. 194:519-28)。しかし、それらはリステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)もしくは結核菌(Mycobacteria tuberculosis)によって誘発される細胞内感染に対する増加した感受性を有していない(未公表の観察所見)。宿主防衛におけるこの欠陥はおそらく、一部には、コントロールマウスに比較して、IL−17R欠損性マウスにおけるグラム陰性細菌の惹起投与に応答したG−CSFにおける90%を超える減少、ならびに感染に対する有意に弱力化した応答に起因するようである(Ye et al. (2001) J. Exp. Med. 194:519-28)。
【0004】
近年、IL−17Aに加えて、5種の他のタンパク質がIL−17タンパク質ファミリーのメンバーであると同定されている;IL−17FはIL−17Aに対する緊密な配列相同性(タンパク質レベルで58%)、ならびにCXCケモカインの類似の誘導および類似の好中球動員プロファイルを有している(Moseley et al., supra; Li et al. (2000) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97:773-78; Starnes et al. (2001) J. Immunol. 167:4137-40; Starnes et al. (2002) J. Immunol. 169:642-46; Hurst et al. (2002) J. Immunol. 169:443-53; Aggarwal and Gurney (2002) J. Leukoc. Biol. 71:1-8; Hymowitz et al. (2001) EMBO J. 20:5332-41)。IL−17AおよびIL−17Fは、マウス第1染色体およびヒト第6染色体上で相互に直接隣接して存在しており、どちらのサイトカインもIL−23に応答してT細胞によって産生される(Chmiel et al. (2002) Clin. Rev. Allergy Immunol. 23:5-27; Aggarwal et al. (2003) J. Biol. Chem. 278(3):1910-14; Happel et al. (2003) J. Immunol. 170:4432-36; Kolls et al. (2004) Immunity 21 :467-76)。さらに、IL−17AおよびIL−17Fは、実験的グラム陰性細菌性肺炎において肺内で類似の時間経過をたどって誘導される(未公表の観察所見)。IL−17Fは、IL−17Rに対してIL−17Aに比較して1桁低い親和性を有するが、IL−17AおよびIL−17Fの両方がIL−17Rを介してシグナル伝達するのではないかという一部の推測があり、これはこれら2種のタンパク質が類似の生物活性を有するためである(Hymowitz et al., supra)。
【0005】
現在までに、IL−17FとIL−17Rとの間の相互作用は特性解析されていない。結果として、IL−17F媒介性シグナル伝達および気道炎症の直接的相関関係は、確定的には証明されていない。本発明は、この相関関係を提供する。詳細には、本発明によって提供される相関関係は、例えば、嚢胞性線維症を有する患者における、嚢胞性線維症における細菌感染に起因する肺症状の悪化を含む気道炎症の、IL−17Fを検出する方法による診断、予後診断、監視および/または治療を可能にする。
【0006】
(発明の概要)
気道内のIL−17F媒介性炎症を阻害する、例えば、減少する、制限する、遮断する、またはさもなければ低下させることのできる試験化合物をスクリーニングする方法が開示される。さらに、例えば、嚢胞性線維症を有する患者における、嚢胞性線維症における細菌感染に起因する肺症状の悪化を含む気道炎症を診断する、予後診断する、監視する、および/または治療する方法であって、IL−17Fを検出する工程を含む方法が開示される。
【0007】
本発明者らは、ヒト肺において、IL−17Rが呼吸器上皮細胞内で発現し、頂端面に比較して側底面上でより大きな発現を示すことを証明している。さらに、呼吸器上皮細胞の側底面上でのIL−17Rの増加した発現は、頂端に供給されたIL−17Fに比較して側底に供給されたIL−17Fによる成長因子(例えば、IL−1β、IL−2、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−10、IL−12p70、IL−13、IL−17、G−CSF、GM−CSF、IFN−γ、MCP−1、MIP−1β、TNF−α、GRO−αなど)のより強力な誘導と相関付けられている。これらの誘導された成長因子の中でも、GRO−α、G−CSF、IL−6、およびIL−8は、試験した全ドナーからのHBE細胞内での発現の最大誘導を証明した(n>7)。さらに、本発明者らは、阻害性の抗IL−17R抗体がサイトカイン/ケモカイン産生のIL−17F媒介性誘導を弱めることを証明したが、これはさらにIL−17FがIL−17Rへの結合によってHBE細胞内でのサイトカイン/ケモカイン産生を誘導する証拠をさらに提供する。本発明者らは、IL−17Fが、肺症状の悪化にも苦しんでいた嚢胞性線維症を有する患者から入院初日に採取した全試験サンプル中で検出可能であることもまた証明した。さらに、本発明者らは、これらの患者から採取したサンプル中のIL−17Fレベルにおける有意な低下が肺症状の悪化の治療と相関していることも証明した。
【0008】
したがって、1つの態様では、本発明は、IL−17FとIL−17Rとの間の相互作用を阻害する、例えば、減少させる、限定する、遮断する、またはさもなければ低下させることのできる試験化合物をスクリーニングする方法を提供する。本明細書に開示した方法は、IL−17FおよびIL−17Rを含有するサンプルを前記化合物と接触させる工程と、およびサンプル内でのIL−17FとIL−17Rとの間の相互作用が前記化合物と接触させられていないサンプル中でのIL−17FとIL−17Rとの間の相互作用に比較して減少しているかどうかを決定する工程とを含み、これにより前記化合物と接触させたサンプル内でのIL−17FとIL−17Rとの間の相互作用における減少が前記化合物をIL−17FとIL−17Rとの間の相互作用を阻害する化合物であることを同定する。本発明の1つの実施形態では、IL−17FとIL−17Rとの間の相互作用における減少は、サイトカイン発現、ケモカイン発現、および/または成長因子発現のIL−17F媒介性誘導における減少として検出される。
【0009】
また別の態様では、本発明は、被験者においてIL−17Fに関連する障害を診断する、予後診断する、および/または監視する方法であって、前記被験者からのサンプル中のIL−17F遺伝子産物の試験量を検出する工程と、前記試験量をコントロールサンプルにおけるIL−17F遺伝子産物の正常量と比較する工程とを含み、これにより正常量を有意に超える試験量はIL−17Fに関連する障害の診断において陽性の指標を提供する方法をさらに特徴とする。本発明の1つの実施形態では、本方法は、気道炎症、例えば肺症状の悪化を生じさせる気道炎症、感染因子によって惹起される気道炎症、嚢胞性線維症などを有する患者における気道炎症などを診断する、予後診断する、および/または監視する工程に向けられる。他の実施形態では、本発明の方法は、例えば抗IL−17F抗体を用いて、IL−17Fタンパク質を検出する工程を含む。
【0010】
また別の態様では、本発明は、例えば、嚢胞性線維症を有する患者における、嚢胞性線維症における細菌感染に起因する肺症状の悪化を含む気道炎症の危険性がある、または気道炎症と診断された被験者を治療する方法を提供する。本明細書に開示した治療する方法は、前記被験者に治療有効量のIL−17Fアンタゴニストを投与する工程を含む。
【0011】
1つの実施形態では、本発明は、被験者におけるIL−17Fに関連する障害を診断する方法であって、前記被験者からのサンプル中でIL−17F遺伝子産物の試験量を検出する工程と、前記試験量をコントロールサンプル中のIL−17F遺伝子産物の正常量と比較する工程とを含み、これにより、前記正常量を有意に超える試験量がIL−17Fに関連する障害の診断において陽性の指標を提供する方法を提供する。また別の実施形態では、IL−17Fに関連する障害は気道炎症である。また別の実施形態では、前記被験者は、嚢胞性線維症であると診断された患者である。また別の実施形態では、前記被験者は肺症状が悪化している。さらに別の実施形態では、肺症状の悪化は感染因子に起因する。また別の実施形態では、IL−17F遺伝子産物はIL−17Fタンパク質である。さらに別の実施形態では、IL−17Fタンパク質は抗IL−17F抗体を用いて検出される。
【0012】
また別の実施形態では、本発明は、IL−17FのIL−17Rへの結合を阻害できる化合物についてスクリーニングする方法であって、IL−17FおよびIL−17Rを含有するサンプルを1つの化合物と接触させる工程と、前記試験化合物と接触させたサンプル中でのIL−17FのIL−17Rへの結合が前記化合物と接触していないサンプル中でのIL−17FのIL−17Rへの結合に比較して減少しているかどうかを決定する工程とを含み、これにより前記化合物と接触させたサンプル中でのIL−17FのIL−17Rへの結合における減少が前記化合物をIL−17FのIL−17Rへの結合を阻害する化合物であると同定する方法を提供する。
【0013】
また別の実施形態では、本発明は、IL−17Fに関連する障害の危険性がある、またはIL−17Fに関連する障害を有すると診断された被験者を治療する方法であって、前記被験者に治療有効量のIL−17Fアンタゴニストを投与する工程を含む方法を提供する。また別の実施形態では、IL−17Fに関連する障害は気道炎症である。また別の実施形態では、前記被験者は、嚢胞性線維症であると診断された患者である。また別の実施形態では、前記被験者は肺症状が悪化している。さらに別の実施形態では、肺症状の悪化は感染因子に起因する。また別の実施形態では、IL−17Fアンタゴニストは、阻害性の抗IL−17F抗体、阻害性の抗IL−17R抗体、可溶性IL−17R、IL−17Rを含有する融合タンパク質、IL−17RのIL−17F結合フラグメントを含有する融合タンパク質、拮抗性低分子、アンチセンスIL−17F核酸分子、アンチセンスIL−17R核酸分子、siRNA IL−17F核酸分子、およびsiRNA IL−17R核酸分子からなる群より選択される。また別の実施形態では、本発明は、前記被験者に治療有効量の少なくとも1つの追加の治療薬を投与する工程をさらに含む。さらに別の実施形態では、前記少なくとも1つの追加の治療薬は、サイトカイン阻害剤、成長因子阻害剤、免疫抑制剤、抗炎症剤、代謝阻害剤、酵素阻害剤、細胞毒性剤、および細胞分裂阻害剤からなる群より選択される。さらにまた別の実施形態では、前記少なくとも1つの追加の治療薬は、TNFアンタゴニスト、抗TNF因子、IL−12アンタゴニスト、IL−15アンタゴニスト、IL−17アンタゴニスト、IL−18アンタゴニスト、IL−22アンタゴニスト、T細胞枯渇因子、B細胞枯渇因子、シクロスポリン、FK−506、CCI−779、エタネルセプト、インフリキシマブ、リツキシマブ、アダリムマブ、プレドニゾロン、アザチオプリン、金、スルファサラジン、クロロキン、ヒドロキシクロロキン、ミノサイクリン、アナキンラ、アバタセプト、メトトレキセート、レフルノミド、ラパマイシン、ラパマイシンアナログ、Cox−2阻害剤、cPLA2阻害剤、NSAID、p38阻害剤、B7.1、B7.2、ICOSL、ICOSおよび/またはCD28のアンタゴニスト、ならびにCTLA4のアゴニストからなる群より選択される。
【0014】
また別の実施形態では、本発明は、IL−17Fアンタゴニストおよび医薬上許容される担体を含む医薬組成物を提供する。また別の実施形態では、IL−17Fアンタゴニストは、阻害性の抗IL−17F抗体、阻害性の抗IL−17R抗体、可溶性IL−17R、IL−17Rを含有する融合タンパク質、IL−17RのIL−17F結合フラグメントを含有する融合タンパク質、拮抗性低分子、アンチセンスIL−17F核酸分子、アンチセンスIL−17R核酸分子、siRNA IL−17F核酸分子、およびsiRNA IL−17R核酸分子からなる群より選択される。
【0015】
また別の実施形態では、本発明は、IL−17Fアンタゴニストおよび細菌抗原を含むワクチンアジュバントを提供する。また別の実施形態では、IL−17Fアンタゴニストは、阻害性の抗IL−17F抗体、阻害性のIL−17R抗体、可溶性IL−17R、IL−17Rを含有する融合タンパク質、IL−17RのIL−17F結合フラグメントを含有する融合タンパク質、拮抗性低分子、アンチセンスIL−17F核酸分子、アンチセンスIL−17R核酸分子、siRNA IL−17F核酸分子、およびsiRNA IL−17R核酸分子からなる群より選択される。
【0016】
(発明の詳細な説明)
本発明は、一部には、以下の所見に基づいている:1)IL−17Rは、呼吸器上皮細胞の側底面上において最大レベルで発現する、2)IL−17Fは、呼吸器上皮細胞の側底側に供給された場合は、頂端側に供給された場合に比較して炎症性サイトカイン、ケモカイン、および/または成長因子の発現を刺激することにより強力である、3)サイトカイン、ケモカイン、および/または成長因子のIL−17F媒介性誘導は、阻害性の抗IL−17R抗体によって有意に減衰させられる、および4)IL−17F発現レベルは、例えば、嚢胞性線維症を有する患者における、嚢胞性線維症における細菌感染に起因する肺症状の悪化を含む気道炎症の進行に相関している。これらの所見は、呼吸器系の炎症性障害における、IL−17Fが果たす役割、およびIL−17Rを通してのその後のシグナル伝達を強力に支持している。
【0017】
そこで、本発明は、IL−17FおよびIL−17Rポリヌクレオチドおよびポリペプチド、ならびにそれらの使用に関する。そのような使用には、その後にIL−17FのIL−17Rへの結合を阻害する、すなわち減少させる、限定する、遮断する、さもなければ低下させることのできる試験化合物をスクリーニングする方法において使用できる特異的抗体の生成、サンプルもしくは被験者中で発現レベルを監視する方法(例えば、診断する、予後診断する、および/または監視するために)、および例えば、嚢胞性線維症を有する患者における、嚢胞性線維症における細菌感染に起因する肺症状の悪化を含む気道炎症を治療する方法が含まれるが、それらに限定されない。
【0018】
IL−17FおよびIL−17Rのポリヌクレオチドおよびポリペプチド
IL−17Fのヌクレオチドおよびアミノ酸配列は、当分野において公知であり、提供されている。ヒトIL−17Fのヌクレオチド配列は、配列番号1として規定されている。上記のヌクレオチド配列に対応する全長IL−17Fタンパク質のアミノ酸配列は、配列番号2として規定されている。成熟IL−17Fのアミノ酸配列は、配列番号2のほぼアミノ酸31で始まるタンパク質に対応する(例えば、参照して本明細書に全体として組み込まれる米国特許出願第10/102080号を参照されたい)。
【0019】
IL−17Rのヌクレオチドおよびアミノ酸配列は、当分野において公知であり、提供されている。ヒトIL−17Rのヌクレオチド配列は、ポリ(A)尾部を含む配列番号3として規定されている。上記のヌクレオチド配列に対応する全長IL−17Rタンパク質のアミノ酸配列は、配列番号4として規定されている。
【0020】
本発明に関連する核酸はDNAもしくはRNAを含んでいてよく、全部もしくは部分的に合成であってよい。本明細書に規定したヌクレオチド配列の言及は、特定された配列を伴うDNA分子を含んでおり、そしてその状況が他のことを必要としない限り、UがTと置換されている特定された配列を伴うRNA分子を含む。
【0021】
本発明に関連する単離されたポリヌクレオチドは、本明細書に開示したポリヌクレオチドをコードする配列と同一もしくは類似の配列を有する核酸を同定して単離するためのハイブリダイゼーションプローブおよびプライマーとして使用できる。核酸を同定して単離するためのハイブリダイゼーション方法には、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、サザンハイブリダイゼーション、インサイチューハイブリダイゼーションおよびノーザンハイブリダイゼーションが含まれ、当業者には周知である。
【0022】
ハイブリダイゼーション反応は、様々なストリンジェンシーの条件下で実施できる。ハイブリダイゼーション反応のストリンジェンシーには、任意の2つの核酸分子が相互にハイブリダイズするときに伴う困難が含まれる。好ましくは、各ハイブリダイジングするポリヌクレオチドは、減少したストリンジェンシー条件下、より好ましくはストリンジェントな条件下、および最も好ましくは高度にストリンジェントな条件下でその対応するポリヌクレオチドへハイブリダイズする。ストリンジェンシー条件の例は、以下の表1に示されている:高度にストリンジェントな条件は、例えば、条件A〜Fと少なくとも同様にストリンジェントである;ストリンジェントな条件は、例えば条件G〜Lと少なくとも同様にストリンジェントである;および減少したストリンジェンシー条件は、例えば、条件M〜Rと少なくとも同様にストリンジェントである。
【0023】
【表1】

【0024】
本発明に関連する単離されたポリヌクレオチドは、本明細書に開示したポリヌクレオチドの対立遺伝子変異体をコードする配列を有するDNAを同定して単離するためのハイブリダイゼーションプローブおよびプライマーとして使用できる。対立遺伝子変異体は、本明細書に開示したポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドと同一である、または有意な類似性を有するポリペプチドをコードする本明細書に開示したポリヌクレオチドの天然型代替形である。好ましくは、対立遺伝子変異体は、本明細書に開示したポリヌクレオチドと少なくとも90%の配列同一性(より好ましくは、少なくとも95%同一性;最も好ましくは、少なくとも99%同一性)を有する。または、有意な類似性は、核酸セグメントが選択的ハイブリダイゼーション条件(例えば、高度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件)下で本明細書に開示したポリヌクレオチドへハイブリダイズする場合に存在する。
【0025】
本発明に関連する単離されたポリヌクレオチドは、本明細書に開示したポリヌクレオチドと同種であるポリペプチドをコードする配列を有するDNAを同定して単離するためのハイブリダイゼーションプローブおよびプライマーとしても使用できる。これらのホモログは、本明細書に開示したポリペプチドおよびポリヌクレオチドの種とは相違する種から単離した、または同一種内に含まれるが、本明細書に開示したポリヌクレオチドおよびポリペプチドとの有意な配列類似性を伴うポリヌクレオチドおよびポリペプチドである。好ましくは、ポリヌクレオチドホモログは、本明細書に開示したポリヌクレオチドと少なくとも50%の配列同一性(より好ましくは、少なくとも75%の同一性;最も好ましくは、少なくとも90%の同一性)を有するが、他方ポリペプチドホモログは、本明細書に開示したポリペプチドと少なくとも30%の配列同一性(より好ましくは、少なくとも45%の同一性;最も好ましくは、少なくとも60%の同一性)を有する。好ましくは、本明細書に開示したポリヌクレオチドおよびポリペプチドのホモログは、哺乳動物種から単離されたホモログである。
【0026】
2つの配列間の「相同性」もしくは「配列同一性」(これらの用語は、本明細書では互換的に使用される)の計算は、以下の通りに実施される。配列は、最適比較のために整列させられる(例えば、最適アライメントのために第1および第2アミノ酸もしくは核酸配列の一方もしくは両方にギャップを導入することができ、非相同配列は比較目的のためには無視することができる)。好ましい実施形態では、比較のために整列させた参照配列の長さは、参照配列の長さの少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、いっそうより好ましくは少なくとも60%、およびさらにいっそうより好ましくは少なくとも70%、80%、90%、100%である。次に対応するアミノ酸位置もしくはヌクレオチド位置でのアミノ酸残基もしくはヌクレオチドが比較される。第1配列内の位置が第2配列内の対応する位置と同一アミノ酸残基もしくはヌクレオチドによって占められる場合は、それらの分子はその位置で同一である(本明細書で使用するアミノ酸もしくは核酸「同一性」は、アミノ酸もしくは核酸「相同性」と同等である)。2つの配列間の同一性率(%)は、2つの配列の最適アライメントのために導入する必要があるギャップの数および各ギャップの長さを考慮に入れた、配列によって共有される同一位置の数の関数である。
【0027】
配列の比較および2つの配列間の配列同一性率(%)の決定は、数学的アルゴリズムを用いて遂行できる。好ましい実施形態では、2つのアミノ酸配列間の同一性率(%)は、Blossum 62マトリックスもしくはPAM250マトリックスのどちらか、ならびに16、14、12、10、8、6、もしくは4のギャップ重量および1、2、3、4、5、もしくは6の長さ重量を用いてGCGソフトウエアパッケージ(www.gcg.comから入手できる)のGAPプログラム内に組み込まれている、Needleman and Wunsch ((1970) J. Mol. Biol. 48:444-53)アルゴリズムを用いて決定される。さらにまた別の好ましい実施形態では、2つのヌクレオチド配列間の配列同一性(%)は、NWSgapdna.CMPマトリックスならびに40、50、60、70、もしくは80のギャップ重量および1、2、3、4、5、もしくは6の長さ重量を用いて、GCGソフトウエアパッケージ(www.gcg.comで入手できる)内のGAPプログラムを用いて決定される。特に好ましいパラメータセット(および分子が本発明の配列同一性もしくは相同性限界内にあるかどうかを決定するためにどのパラメータを適用すべきかについて熟練者が不確かである場合に使用すべきパラメータセット)は、12のギャップペナルティ、4のギャップ伸長ペナルティ、および5のフレームシフトギャップペナルティを備えるBlossum 62スコアリングマトリックスである。2つのアミノ酸もしくはヌクレオチド配列間の配列同一性(%)は、さらにまたPAM120重量残基表(weight residue table)、12のギャップ長ペナルティおよび4のギャップペナルティを用いて、ALIGNプログラム(バージョン2.0)内に組み込まれているMeyers and Miller ((1989) CABIOS 4:11-17)のアルゴリズムを用いて決定することができる。
【0028】
本発明に関連する単離されたポリヌクレオチドは、本発明に関連するポリペプチドを発現する細胞および組織ならびにその下でそれらが発現する条件を同定するためのハイブリダイゼーションプローブおよびプライマーとして使用することもできる。
【0029】
さらに、細胞もしくは生物内で本発明に関連するポリヌクレオチドに対応する遺伝子の発現を変化させる(すなわち、強化する、減少させる、もしくは修飾する)ための本発明に関連するポリペプチドの機能は、そのポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを使用することによって直接的に試験できる。これらの「対応する遺伝子」は、本発明に関連するポリヌクレオチドがそれに由来するmRNAを生成するために転写される、本発明に関連するゲノムDNA配列である。
【0030】
本発明に関連する遺伝子の変化した発現は、細胞もしくは生物内において、様々な阻害性ポリヌクレオチド、例えば本発明に関連する遺伝子から転写されたmRNAに結合する、および/または開裂させるアンチセンスポリヌクレオチドおよびリボザイムの使用によって達成できる(例えば、Galderisi et al. (1999) J. Cell Physiol. 181:251-57; Sioud (2001) Curr. Mol. Med. 1:575-88を参照されたい)。例えばIL−17Fおよび/またはIL−17Rに対する阻害性ポリヌクレオチドは、例えばIL−17FのIL−17Rへの結合を阻害するためのアンタゴニストとして使用できる。結果として、そのような阻害性ポリヌクレオチドは、IL−17FのIL−17Rへの結合に関連する障害、例えば、嚢胞性線維症を有する患者における、例えば嚢胞性線維症における細菌感染に起因する肺症状の悪化を含む気道炎症を予防もしくは治療する際に有用な可能性がある。
【0031】
本発明に関連するアンチセンスポリヌクレオチドもしくはリボザイムは、本発明に関連する遺伝子の全コード鎖に、またはその一部分にのみ相補的である可能性がある。または、アンチセンスポリヌクレオチドもしくはリボザイムは、本発明に関連する遺伝子のコード鎖の非コーディング領域に相補的であってよい。アンチセンスポリヌクレオチドもしくはリボザイムは、当分野において周知の方法を用いて化学合成および酵素的ライゲーション反応を用いて構築することができる。化学合成されたポリヌクレオチドのヌクレオシド連鎖は、ヌクレアーゼ媒介性分解に抵抗する能力を強化するため、ならびにそれらの配列特異性を増加させるために修飾することができる。そのような連鎖の修飾には、ホスホロチオエート、メチルホスホネート、ホスホロアミデート、ボラノホスフェート、モルホリノ、およびペプチド核酸(PNA)連鎖が含まれるが、それらに限定されない(Galderisi et al., supra; Heasman (2002) Dev. Biol. 243:209-14; Micklefield (2001) Curr. Med. Chem. 8:1157-79)。または、これらの分子は、その中に本発明に関連するポリヌクレオチドがアンチセンス(すなわち、逆)方向でサブクローニングされている発現ベクターを用いて生物学的に生成することもできる。
【0032】
本発明の阻害性ポリヌクレオチドには、高度の特異性および親和性で二重鎖DNAの主要溝(groove)内で結合する三重鎖形成能オリゴヌクレオチド(TFO)もまた含まれる(Knauert and Glazer (2001) Hum. Mol. Genet. 10:2243-51)。本発明に関連する遺伝子の発現は、遺伝子の転写を防止する三重ラセン構造を形成するために遺伝子の調節領域(すなわち、プロモータおよび/またはエンハンサ配列)に相補的なTFOをターゲティングすることによって阻害することができる。
【0033】
本発明の1つの実施形態では、本発明の阻害性ポリヌクレオチドは短鎖干渉RNA(siRNA)分子である。これらのsiRNA分子は、標的mRNAの配列特異的分解を引き起こす短い(好ましくは19〜25ヌクレオチド;最も好ましくは19もしくは21ヌクレオチド)、二本鎖RNA分子である。この分解は、RNA干渉(RNAi)として公知である(例えば、Bass (2001) Nature 411 :428-29を参照されたい)。最初は下等生物において同定されたが、RNAiは、哺乳動物細胞へ効果的に適用されており、近年はFas mRNAを標的としたsiRNA分子を用いて処置されたマウスにおける劇症肝炎を防止することが証明されている(Song et al. (2003) Nature Med. 9:347-51)。さらに、クモ膜下に送達されたsiRNAは近年、ラットにおける2種のモデル(アゴニスト誘導性疼痛モデルおよび神経障害性疼痛モデル)での疼痛反応を遮断することが報告されている(Dorn et al. (2004) Nucleic Acids Res. 32(5):e49)。
【0034】
本発明のsiRNA分子は、2つの相補的な一本鎖RNA分子(それらの一方は標的mRNAの一部分にマッチする)を一緒にアニーリングすることによって(Fire et al.、米国特許第6,506,559)、または不可欠な二本鎖部分を生成するためにそれ自体の上で折り畳む一本鎖ヘアピンRNA分子の使用を通して生成することができる(Yu et al. (2002) Proc. Nail. Acad. Sci. USA 99:6047-52)。siRNA分子は、化学合成できる(Elbashir et al. (2001) Nature 411 :494-98)、または一本鎖DNAテンプレートを用いるインビトロ転写によって生成できる(Yu et al., supra)。または、siRNA分子は、一過性(Yu et al., supra; Sui et al. (2002) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 99:5515-20)または安定性(Paddison et al. (2002) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 99:1443-48)のいずれかで、センスおよびアンチセンスsiRNA配列を含有する発現ベクターを用いて生物学的に生成することができる。近年、一次ヒト細胞中での、効果的かつ配列特異的方法での標的mRNAのレベルの減少が、さらにその後にsiRNA中に処理されるヘアピンRNAを発現するアデノウイルスベクターを用いて証明された(Arts et al. (2003) Genome Res. 13:2325-32)。
【0035】
本発明に関連するポリヌクレオチドを標的とするsiRNA分子は、当分野において周知の基準に基づいて設計できる(例えば、Elbashir et al. (2001) EMBO J. 20:6877-88)。例えば、標的mRNAの標的セグメントは、好ましくはAA(最も好ましい)、TA、GA、もしくはCAで始まるべきである;siRNA分子のGC比は、好ましくは45〜55%であるべきである;siRNA分子は、好ましくは列内に3つの同一ヌクレオチドを含有していてはならない;siRNA分子は、好ましくは列内に7つの混合したG/Cを含有していてはならない;および標的セグメントは、好ましくは標的mRNAのORF領域内にあってよく、好ましくは、開始ATGの少なくとも75bp後および終止コドンの少なくとも75bp前に存在すべきである。これらの基準、または他の公知の基準(例えば、Reynolds et al. (2004) Nature Biotechnol. 22:326-30)に基づくと、本発明に関連するmRNAポリヌクレオチドを標的とする本発明に関連するsiRNA分子は、当業者であれば設計することができる。
【0036】
生物内での本発明に関連する遺伝子の変化した発現は、本発明に関連するポリヌクレオチドがそのゲノム内に導入されている非ヒトトランスジェニック動物の作製を通して達成することもできる。そのようなトランスジェニック動物には、本発明の遺伝子(すなわち、導入遺伝子)の複数コピーを有する動物が含まれる。組織特異的調節配列は、本発明に関連するポリペプチドの発現を特定細胞もしくは特定発達段階へ指示するために導入遺伝子へ機能的に連結させることができる。胚操作およびマイクロインジェクションによるトランスジェニック動物、特別には例えばマウスなどの動物を作製する方法は、慣習的になっており、当分野において周知である(例えば、Bockamp et al., Physiol. Genomics, 11:115-32 (2002))。
【0037】
生物内での本発明に関連する遺伝子の変化した発現は、本発明に関連するポリヌクレオチドに対応するその内因性遺伝子が外来ポリヌクレオチド配列の挿入を通して破断されている動物(すなわち、ノックアウト動物)の作製を通して達成することもできる。内因性遺伝子のコーディング領域は、破断させることができ、それにより非機能的タンパク質が生成される。または、内因性遺伝子の上流調節領域は、相違する調節エレメントを用いて破断もしくは置換することができ、その結果として依然として機能的であるタンパク質の変化した発現が生じる。ノックアウト動物を作製する方法には、同種組換えが含まれ、当分野において周知である(例えば、Wolfer et al., Trends Neurosci., 25:336-40 (2002))。
【0038】
本発明の単離されたポリヌクレオチドは、本発明に関連するポリヌクレオチド(その活性フラグメントおよび/または融合ポリペプチドを含む)の組換え生成のために、発現制御配列へ機能的に連結させる、および/または発現ベクター内にライゲートさせることもできる。組換えタンパク質を発現させる一般的方法は、当分野において周知である。
【0039】
本明細書で使用する発現ベクターは、それに連結しているまた別の核酸を輸送できる核酸分子を意味することが意図されている。1つのタイプのベクターは、追加のDNAセグメントをその中にライゲートできる環状二本鎖DNAループを意味するプラスミドである。また別のタイプのベクターはウイルスベクターであるが、このとき追加のDNAセグメントはウイルスゲノム内にライゲートさせることができる。特定のベクターは、それらがその中に導入される宿主細胞内で自律複製することができる(例えば、細菌性複製起点を有する細菌ベクターおよびエピソーム哺乳動物ベクター)。その他のベクター(例、非エピソーム哺乳動物ベクター)は、宿主細胞内へ導入されると宿主細胞のゲノム内に統合することができ、それらによって宿主ゲノムと一緒に複製される。さらに、特定のベクターは、それらがそれに機能的に連結させられる遺伝子の発現を指示することができる。そのようなベクターは、本明細書では組換え発現ベクター(または単純に、発現ベクター)と呼ばれる。一般に、組換えDNA技術において有用である発現ベクターは、しばしばプラスミドの形状にある。本明細書では、プラスミドおよびベクターは、プラスミドがベクターの最も一般的に使用される形状であるために互換的に使用できる。しかし、本発明は、発現ベクターの他の形状、例えば同等の機能を果たすウイルスベクター(例、複製欠損レトロウイルス、アデノウイルス、およびアデノ関連ウイルス)を含むことが意図されている。
【0040】
1つの実施形態では、本発明に関連するポリヌクレオチドは、組換えIL−17Fアゴニスト、例えば少なくとも1つの「IL−17F受容体結合モチーフ」の存在に基づいて同定できるアゴニストを作製するために使用される。本明細書で使用する用語「IL−17F受容体結合モチーフ」には、IL−17Fをその必要な受容体へ結合させるために重要であるアミノ酸配列もしくは残基が含まれる。IL−17Fアゴニストの例には、組換えIL−17F、および/またはそのフラグメント、例えばそのIL−17R結合フラグメントが含まれる。また別の実施形態では、本発明に関連するポリヌクレオチドは、IL−17Fアンタゴニスト(例えば、IL−17Fおよび/またはIL−17R阻害性ポリヌクレオチド;可溶性IL−17Rポリペプチド(フラグメント(例、IL−17F結合フラグメント)および/またはその融合タンパク質を含む);阻害性の抗IL−17Fもしくは抗IL−17R抗体;および/または拮抗性低分子など)を作製するために使用される。
【0041】
融合ポリペプチド、すなわち第2ポリペプチド部分と連結した第1ポリペプチド部分を作製する方法は、当分野において周知である。例えば、IL−17FポリペプチドもしくはIL−17Rポリペプチドは、そのフラグメントを含めて、第2ポリペプチド部分、例えば免疫グロブリンもしくはそのフラグメント(例、そのFc結合フラグメント)へ融合させることができる。一部の実施形態では、第1ポリペプチド部分は、例えば、全長IL−17FもしくはIL−17Rポリペプチドを含む。または、第1ポリペプチドは、全長未満のIL−17FもしくはIL−17Rポリペプチドを含んでいてよい。さらに、例えばIL−17FもしくはIL−17Rの可溶形は、「リンカー」配列を通して免疫グロブリンのFc部分へ融合させることができる。その他の融合タンパク質、例えばグルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)、Lex−A、チオレドキシン(TRX)もしくはマルトース結合タンパク質(MBP)もまた使用できる。
【0042】
第2ポリペプチド部分は、好ましくは可溶性である。一部の実施形態では、第2ポリペプチド部分は、連結したポリペプチドの半減期(例、血清中半減期)を増強する。一部の実施形態では、第2ポリペプチド部分は、融合ポリペプチドと第2IL−17FもしくはIL−17Rポリペプチドとの結合を促進する配列を含んでいる。好ましい実施形態では、第2ポリペプチドは、免疫グロブリンポリペプチドの少なくとも1つの領域を含む。免疫グロブリン融合ポリペプチドは当分野において公知であり、これによりそれらは全体が参照して本明細書に組み込まれる米国特許第5,516,964号;第5,225,538号;第5,428,130号;第5,514,582号;第5,714,147号;および第5,455,165号に記載されている。融合タンパク質は、追加して、第1ポリペプチド部分、例えば、IL−17FもしくはIL−17Rをそのフラグメントを含めて第2部分に結合させるリンカー配列を含む。そのようなリンカー配列の使用は、当分野において周知である。例えば、融合タンパク質は、ペプチドリンカー、例えば、アミノ酸長で約2〜20、より好ましくは10未満のペプチドリンカーを含むことができる。1つの実施形態では、ペプチドリンカーは長さが2アミノ酸であってよい。
【0043】
また別の実施形態では、組換えタンパク質は、そのN末端で異種シグナル配列(すなわち、IL−17FもしくはIL−17R核酸によってコードされるポリペプチド内に存在しないポリペプチド配列)を含む。例えば、また別のタンパク質からのシグナル配列はIL−17FもしくはIL−17Rポリペプチドと、そのフラグメントおよび/またはその融合タンパク質を含めて融合させることができる。所定の宿主細胞(例、哺乳動物宿主細胞)内では、組換えタンパク質の発現および/または分泌は異種シグナル配列の使用によって増加させることができる。融合タンパク質内に含めることのできるシグナルペプチドは、メリチンシグナルペプチドMKFLVNVALVFMVVYISYIYA(配列番号5)である。
【0044】
本発明の融合タンパク質は、標準組換えDNA技術によって生成できる。例えば、相違するポリペプチド配列をコードするDNAフラグメントは、従来型技術によって、例えばライゲーションのための平滑末端もしくは付着末端(stagger-ended termini)、適切な末端を提供するための制限酵素消化、適切に付着端の充填、望ましくない結合を回避するためのアルカリホスファターゼ処置、および酵素的ライゲーションを使用することによってフレーム内に一緒にライゲートされる。また別の実施形態では、融合遺伝子は自動DNA合成装置を含む従来型技術によって合成できる。または、遺伝子フラグメントのPCR増幅は、2つの連続遺伝子フラグメント間で相補的突出部を生じさせるアンカープライマーを用いて実施することができ、引き続いてキメラ遺伝子配列を生成するためにアニーリングして再増幅させることができる(例えば、Ausubel et al. (Eds.) CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY, John Wiley & Sons, 1992を参照)。さらに、融合部分(例、免疫グロブリン重鎖のFc領域)をコードする多数の発現ベクターを市販で入手できる。IL−17FもしくはIL−17Rをコードする核酸は、その融合部分が免疫グロブリンタンパク質へフレーム内で連結されるようにそのような発現ベクター内にクローニングすることができる。一部の実施形態では、IL−17FもしくはIL−17R融合ポリペプチドは、オリゴマー、例えば二量体もしくは三量体として存在する。
【0045】
本発明の組換え発現ベクターは、追加の配列、例えば宿主細胞内でベクターの複製を調節する配列(例、複製起点)および選択可能なマーカー遺伝子を運ぶことができる。選択可能なマーカー遺伝子は、ベクターがその中に導入されている宿主細胞の選択を促進する。例えば、典型的には、選択可能なマーカー遺伝子は、ベクターがその中に導入されている宿主細胞上で、薬物、例えばG418、ヒグロマイシンもしくはメトトレキセートに対する耐性を与える。好ましい選択可能なマーカー遺伝子には、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)遺伝子(メトトレキセート選択/増幅を用いてdhfr宿主細胞中で使用するため)およびneo遺伝子(G418選択のため)が含まれる。
【0046】
適切な調節配列、例えばプロモータ配列、ターミネータ配列、ポリアデニル化配列、エンハンサ配列、マーカー遺伝子、ならびにその他の配列、例えば適切に宿主細胞中でベクターの複製を調節する配列(例、複製起点)を含有する適切なベクターを選択または構築することができる。ベクターは、プラスミドもしくはウイルス性、例えば、適切にファージもしくはファージミドであってよい。さらなる詳細については、例えば、Molecular Cloning: a Laboratory Manual: 2nd ed., Sambrook et al., Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989を参照されたい。例えば、核酸構築物の調製、突然変異生成、シーケンシング、細胞内へのDNAの導入および遺伝子発現、ならびにタンパク質の分析における核酸を操作するための多数の公知の技術およびプロトコールは、Current Protocols in Molecular Biology, 2nd ed., Ausubel et al. eds., John Wiley & Sons, 1992の中に詳細に記載されている。
【0047】
そこで、本発明のまた別の態様は、本明細書に開示した核酸を含む宿主細胞を提供する。さらにまた別の態様は、そのような核酸を宿主細胞中に導入する工程を含む方法を提供する。導入は、任意の利用可能な技術を使用できる。真核細胞については、適切な技術は、カルシウムホスフェート形質移入、DEAE−デキストラン、エレクトロポレーション、リポソーム媒介性形質移入、およびレトロウイルスもしくはその他のウイルス、例えばワクシニアウイルス、もしくは昆虫細胞についてはバキュロウイルスを用いる形質導入を含むことができる。細菌細胞については、適切な技術は、カルシウムクロライド形質転換、エレクトロポレーションおよびバクテリオファージを用いる形質移入を含むことができる。導入の後には、核酸からの発現を引き起こす、もしくは可能にする工程、例えばその遺伝子を発現させるための条件下で宿主細胞を培養する工程を行なうことができる。
【0048】
多数の細胞系は、本発明に関連するポリペプチドの組換え発現のための適切な宿主細胞として機能することができる。哺乳動物宿主細胞系には、例えば、COS細胞、CHO細胞、293細胞、A431細胞、3T3細胞、CV−1細胞、HeLa細胞、L細胞、BHK21細胞、HL−60細胞、U937細胞、HaK細胞、Jurkat細胞、ならびに一次組織および一次外植片のインビトロ培養に由来する細胞株が含まれる。
【0049】
または、下等真核生物、例えば酵母内、または原核生物内で本発明に関連するポリペプチドを組換え生成することも可能なはずである。潜在的に適合する酵母株には、サッカロミセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、クリュベロミセス(Kluyveromyces)株、およびカンジダ(Candida)株が含まれる。潜在的に適合する細菌株には、大腸菌(Escherichia coli)、枯草菌(Bacillus subtilis)、およびサルモネラ・ティフィリウム(Salmonella typhimurium)が含まれる。本発明に関連するポリペプチドが酵母もしくは細菌内で作製される場合は、機能性を得るために、例えば、適切な部位のリン酸化またはグリコシル化によってそれらを修飾することが必要な場合がある。そのような共有結合は、周知の化学的もしくは酵素的方法を用いて遂行できる。
【0050】
細菌内での発現は、組換えタンパク質を組み込んでいる封入体の形成を生じさせることがある。そこで、活性もしくはより活性な物質を生成するために、組換えタンパク質のリフォールディングが必要になることがある。細菌性封入体から正確に折り畳まれた異種タンパク質を入手するための数種の方法は、当分野において公知である。これらの方法は、一般に、それらの封入体からタンパク質を可溶化させる工程と、次にカオトロピック剤を用いてそのタンパク質を完全に変性させる工程とを含む。タンパク質の一次アミノ酸配列内にシステイン残基が存在する場合は、ジスルフィド結合(レドックス系)の正確な形成を可能にする環境においてリフォールディングを遂行することがしばしば必要になる。リフォールディングの一般的方法は、Kohno (1990) Meth. Enzymol. 185:187-95に開示されている。欧州特許第0433225号、および米国特許第5,399,677号は、他の適切な方法を記載している。
【0051】
本発明に関連するポリペプチドは、1つまたは複数の昆虫発現ベクター、例えばバキュロウイルス内で本発明の単離されたポリヌクレオチドを適切なコントロール配列へ機能的に連結させる工程、および昆虫細胞発現系を使用する工程によって組換え生成することもできる。バキュロウイルス/Sf9発現系のための材料および方法は、市販のキット形(例、MaxBac(登録商標)キット、Invitrogen社、カリフォルニア州カールスバッド)で入手できる。
【0052】
適切な宿主細胞中での組換え発現に続いて、本発明の組換えポリペプチドは、公知の精製プロセス、例えばゲル濾過およびイオン交換クロマトグラフィを用いて培養培地もしくは細胞抽出物から精製することができる。例えば、IL−17FもしくはIL−17Rタンパク質(そのフラグメントおよび/または融合タンパク質を含む)は、馴化培地から精製できる。例えば、IL−17Rの膜結合形は、発現細胞から全膜分画を調製する工程と、非イオン性洗剤、例えばTriton X−100を用いて膜を抽出する工程とによって精製できる。本発明に関連するポリペプチドは、市販で入手できるタンパク質濃縮フィルタ、例えばAmiconもしくはMillipore Pellicon限外濾過装置を用いて濃縮できる。濃縮工程後、濃縮物を精製マトリックス、例えばゲル濾過媒体へ適用できる。または、アニオン交換樹脂、例えばペンダント基であるジエチルアミノエチル(DEAE)もしくはポリエチレンイミン(PEI)基を有するマトリックスもしくは基質を使用できる。これらのマトリックスは、タンパク質精製において一般に使用されるアクリルアミド、アガロース、デキストラン、セルロースもしくは他のタイプであってよい。または、カチオン交換工程を使用できる。適切なカチオン交換体には、スルホプロピルもしくはカルボキシメチル基を含む様々な不溶性マトリックスが含まれる。スルホプロピル基が好ましい(例、S−Sepharose(登録商標)カラム)。培養上清からの組換えタンパク質の精製は、さらにまたコンカナバリンA−アガロース、ヘパリン−TOYOPEARL(登録商標)(Toyo Soda Manufacturing社、日本国)もしくはCibacrom blue 3GA Sepharose(登録商標)などの親和性樹脂への1つまたは複数のカラム工程;または樹脂、例えばフェニルエーテル、ブチルエーテル、もしくはプロピルエーテルを用いる疎水性相互作用クロマトグラフィによる工程;またはイムノアフィニティクロマトグラフィによる工程を含むことができる。最後に、疎水性逆相高速液体クロマトグラフィ(RP−HPLC)媒体、例えばペンダントメチルもしくは他の脂肪族基を有するシリカゲルを用いる1つまたは複数のRP−HPLC工程を使用すると、組換えタンパク質をさらに精製することができる。組換えタンパク質に対する抗体(例えば、本明細書に記載した方法を用いて記載された抗体)を含むアフィニティカラムもまた、公知の方法によって精製する際に使用できる。上記の精製工程の一部もしくは全部は、様々な組み合わせで、または他の公知の方法とともに、実質的に精製されて単離された組換えタンパク質を提供するために使用することもできる。好ましくは、単離された組換えタンパク質は、それが実質的に他の哺乳動物タンパク質を含んでいないように精製される。さらに、これらの精製プロセスは、本発明のポリペプチドを、天然起源を含む他の起源から精製するためにも使用できる。例えば、本発明に関連するポリペプチド、例えばIL−17FもしくはIL−17Rポリペプチド(そのフラグメントおよび/または融合タンパク質を含む)は、トランスジェニック動物の生成物として、例えばトランスジェニックウシ、ヤギ、ブタ、もしくはヒツジの乳汁の構成成分として発現させられ、上述したように精製することができる。
【0053】
または、これらのポリペプチドは、精製を促進する形状で組換え発現させることもできる。例えば、本ポリペプチドは、タンパク質、例えばマルトース結合タンパク質(MBP)、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)、もしくはチオレドキシン(TRX)との融合体として発現させることができる。そのような融合タンパク質を発現および精製するためのキットは、各々New England BioLabs社(マサチューセッツ州ベバリー)、Pharmacia社(ニュージャージー州ピスカタウェイ)、およびInvitrogen社から市販で入手できる。組換えタンパク質は、小エピトープを用いてタグ付けし、引き続いてそのエピトープに対する特異的抗体を用いて同定もしくは精製することもできる。好ましいエピトープは、FLAGエピトープであり、Eastman Kodak社(コネチカット州ニューヘブン)から市販で入手できる。
【0054】
本発明に関連するポリペプチドは、公知の従来型化学合成によって生成することもできる。そのようなポリペプチドを化学的に合成するための方法は、当業者には周知である。そのような化学合成ポリペプチドは、天然の精製されたポリペプチドと共通する生物学的特性を有することができ、したがって天然ポリペプチドに対する生物活性もしくは免疫学的置換体として使用できる。
【0055】
本発明に関連するポリペプチドは、本明細書に開示したポリペプチドとは構造的に相違する(例えば、わずかに変化した配列を有する)が、本明細書に開示したポリペプチドと実質的に同一の生化学的特性を有する(例えば、機能的に非必須アミノ酸残基においてのみ荷電している)分子も含むことができる。そのような分子には、変化、置換、交換、挿入、もしくは欠失を含有する天然型対立遺伝子変異体および故意に人工的に作り出された変異体が含まれる。そのような変化、置換、交換、挿入、もしくは欠失のための技術は、当業者には周知である。一部の実施形態では、ポリペプチド成分は、タンパク質分解に対して(非突然変異配列に比較して)より耐性である配列を生じさせる天然型配列(野生型)における突然変異を有する変異体ポリペプチドとして提供される。
【0056】
IL−17FもしくはIL−17Rポリペプチド、およびそのフラグメントおよび/または融合ポリペプチドは、IL−17Fに結合できる、および/またはIL−17F生物活性を阻害できる物質、すなわち拮抗物質をスクリーニングするために使用できる。そのようなアンタゴニスト、例えば阻害性ポリヌクレオチド、ポリペプチド(そのフラグメントおよび融合タンパク質を含む)、抗体、小化合物などは、例えばIL−17FのIL−17Rへの結合を阻害することによってIL−17F生物活性を阻害できる。固定化された、もしくは固定化されていない所望の結合タンパク質を利用する結合アッセイは当分野において周知であり、この目的にIL−17Rを含む本発明に関連するポリペプチドと一緒に使用できる。精製された細胞をベースにする、またはタンパク質をベースにする(細胞無含有)スクリーニングアッセイは、そのような物質を同定するために使用できる。例えば、IL−17Fタンパク質は、精製された形状で担体上に固定化することができ、潜在的リガンドの精製されたIL−17Fへの結合を測定できる。
【0057】
抗体
本発明者らは、肺症状の悪化にも苦しんでいた嚢胞性線維症を有する患者から採取した喀痰サンプル中でIL−17Fを検出するために、IL−17Fへ特異的に結合する抗IL−17F抗体(すなわち、完全抗体およびその抗原結合フラグメント)を使用した。さらに、本発明者らは、炎症性サイトカイン(例、GRO−αおよびG−CSF)のIL−17F媒介性産生に拮抗するためにIL−17Rに対して特異的なモノクローナル抗体を使用した。そこで、本発明の1つの実施形態では、拮抗性抗IL−17Fもしくは抗IL−17R抗体は、IL−17Fに関連する障害、例えば、嚢胞性線維症を有する患者における、例えば嚢胞性線維症における細菌感染に起因する肺症状の悪化を含む気道炎症を診断する、予後診断する、監視する、および/または治療する際に有用な可能性がある。これらの抗体は、ヒト、ヒト化、キメラ、またはインビトロ生成抗体であってよい。
【0058】
当業者は、本明細書で使用する用語「抗体」は、少なくとも1つ、および好ましくは2つの、重(H)鎖可変領域(本明細書ではVHと略する)、および少なくとも1つおよび好ましくは2つの軽(L)鎖可変領域(本明細書ではVLと略する)を含むタンパク質を意味する。VHおよびVL領域は、さらに、より保存された用語「フレームワーク領域」(FR)である領域が組み入れられている「相補性決定領域」(CDR)と称する超可変領域に分割することができる。FRおよびCDRの範囲は、正確に規定されている(Kabat et al. (1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No. 91-3242; and Chothia et al. (1987) J. Mol. Biol. 196:901-17、これにより参照して組み込まれる)。各VHおよびVLは、3つのCDRおよび4つのFRから構成されており、以下の順序でアミノ末端からカルボキシ末端へ配列されている:FRl、CDRl、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。
【0059】
本抗体は、それにより重鎖および軽鎖免疫グロブリン各々を形成するために重鎖および軽鎖定常領域をさらに含んでいてよい。1つの実施形態では、本抗体は、2本の重鎖免疫グロブリンおよび2本の軽鎖免疫グロブリンの四量体であるが、このとき重鎖および軽鎖免疫グロブリンは、例えばジスルフィド結合によって相互結合されている。重鎖定常領域は、3つのドメインであるCH1、CH2およびCH3から構成される。軽鎖定常領域は、1つのドメインCLから構成される。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含有している。これらの抗体の定常領域は、典型的には、免疫系の様々な細胞(例、エフェクタ細胞)および古典的補体系の第1構成成分(C1q)を含む宿主組織もしくは因子への抗体の結合を媒介する。
【0060】
免疫グロブリンは、免疫グロブリン遺伝子によって実質的にコードされる1つまたは複数のポリペプチドからなるタンパク質を意味する。認識されたヒト免疫グロブリン遺伝子には、κ、λ、α(IgA1およびIgA2)、γ(IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)、δ、εおよびμ定常領域遺伝子、ならびに無数の免疫グロブリン可変領域遺伝子が含まれる。全長免疫グロブリン「軽鎖」(約25Kd、もしくは214アミノ酸)は、NH末端では可変領域遺伝子(約110アミノ酸)およびCOOH末端ではκもしくはλ定常領域遺伝子によってコードされる。全長免疫グロブリン「重鎖」(約50Kd、もしくは446アミノ酸)は、可変領域遺伝子(約116アミノ酸)および他の上記の定常領域の1つ、例えばγ(約330アミノ酸をコードする)によって同様にコードされる。免疫グロブリン重鎖定常領域遺伝子は、抗体クラス、すなわちアイソタイプ(例、IgMもしくはIgG1)をコードする。本明細書で使用する抗体の抗原結合フラグメント(または単純に「抗体部分」、もしくは「フラグメント」)は、抗原(例、CD3)へ特異的に結合する能力を維持している全長抗体の1つまたは複数のフラグメントを意味する。抗体の用語「抗原結合フラグメント」に含まれる結合フラグメントの例には、(i)VL、VH、CLおよびCH1ドメインからなる一価フラグメントであるFabフラグメント、;(ii)ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFabフラグメントを含む二価フラグメントであるF(ab’)フラグメント;(iii)VHおよびCH1ドメインからなるFdフラグメント;(iv)抗体の1本のアームのVLおよびVHドメインからなるFvフラグメント;(v)VHドメインからなるdAbフラグメント(Ward et al. (1989) Nature 341:544-46);および(vi)単離された相補性決定領域(CDR)が含まれる。さらに、Fvフラグメントの2つのドメインであるVLおよびVHは個別遺伝子によってコードされるが、それらは組み換え方法を用いて、その中でVLおよびVH領域対が一価分子(一本鎖Fv(scFv)として知られる;例えばBird et al. (1988) Science 242:423-26; and Huston et al. (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-83を参照)を形成する単一タンパク質鎖として作製されることを可能にする合成リンカーによって結合できる。そのような一本鎖抗体も、抗体の用語「抗原結合フラグメント」の中に含まれることが意図されている。これらの抗体フラグメントは、当業者に公知の従来型技術を用いて入手され、これらのフラグメントは完全抗体と同一方法で有用性についてスクリーニングされる。
【0061】
本発明のポリペプチドに対する抗体分子、例えばIL−17FもしくはIL−17Rに対する抗体は、当業者には周知の方法によって生成できる。例えば、モノクローナル抗体は、公知の方法によるハイブリドーマの生成によって生成できる。この方法で生成されたハイブリドーマは、次に標準方法、例えば酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)を用いて、本発明のポリペプチドと特異的に結合する抗体を生成する1つまたは複数のハイブリドーマを同定するためにスクリーニングされる。例えば、本発明のIL−17Fタンパク質は、IL−17Fタンパク質と反応するポリクローナルおよびモノクローナル抗体を入手するために動物を免疫するために使用できる。同様に、IL−17Rタンパク質は、IL−17Rと特異的に反応するポリクローナルおよびモノクローナル抗体を入手するために使用できる。ペプチド免疫原は、追加してカルボキシル末端でシステイン残基を含有していてよく、そしてハプテン、例えばスカシガイヘモシアニン(KLH)へコンジュゲートすることができる。追加のペプチド免疫原は、チロシン残基を硫酸化チロシン残基と交換することによって生成できる。そのようなペプチドを合成するための方法は、当分野において、例えばMerrifield (1963) J. Amer. Chem. Soc. 85:2149-54; Krstenansky et al. (1987) FEBS Lett. 211:10におけるように周知である。本発明の全長ポリペプチドは、免疫原として使用できる、またはポリペプチドの抗原性ペプチドフラグメントを使用できる。本発明のポリペプチドの抗原性ペプチドは、少なくとも7つの連続アミノ酸残基を含んでおり、ペプチドに対して立てられた抗体がそのポリペプチドとの特異的免疫複合体を形成するようにエピトープを含む。好ましくは、抗原性ペプチドは、少なくとも10アミノ酸残基、より好ましくは少なくとも15アミノ酸残基、いっそうより好ましくは少なくとも20アミノ酸残基、および最も好ましくは少なくとも30アミノ酸残基を含む。
【0062】
モノクローナル抗体は、組換えDNAテクノロジーの当業者に公知の他の方法によって生成できる。モノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを調製する代替法として、本発明のポリペプチドに対するモノクローナル抗体は、それによって本発明に関連するポリペプチドに結合する免疫グロブリンライブラリメンバーを単離するために、本発明に関連するポリペプチド(例、IL−17FもしくはIL−17R)を用いて組換えコンビナトリアル免疫グロブリンライブラリ(例、抗体ファージ提示ライブラリ)をスクリーニングすることによって同定して単離することができる。ファージ提示ライブラリを生成してスクリーニングするための技術および市販で入手できるキットは、当業者には周知である。さらに、抗体提示ライブラリを生成およびスクリーニングする際に使用するために特に適する方法および試薬の例は、文献の中に見いだすことができる。例えば、「コンビナトリアル抗体提示」法は周知であり、特定の抗原特異性を有する抗体フラグメントを同定して単離するために開発され、そしてモノクローナル抗体を生成するために利用できる(コンビナトリアル抗体提示の説明については、例えば、Sastry et al. (1989) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:5728; Huse et al. (1989) Science 246:1275; Orlandi et al. (1989) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:3833を参照されたい)。上述したような免疫原を用いて動物を免疫した後、結果として生じたB細胞プールの抗体レパートリーはクローニングされる。オリゴマープライマーの混合物およびPCRを用いて免疫グロブリン分子の様々な集団の可変領域のDNA配列を入手するための方法は、一般に公知である。例えば、5’リーダー(シグナルペプチド)配列および/またはフレームワーク1(FR1)配列に対応する混合したオリゴヌクレオチドプライマー、ならびに保存された3’定常領域に対するプライマーは、多数のマウス抗体からの重鎖および軽鎖可変領域のPCR増幅のために使用できる(Larrick et al. (1991) Biotechniques 11:152-56)。類似の戦略は、ヒト抗体からヒト重鎖および軽鎖可変領域を増幅させるためにも使用できる(Larrick et al. (1991) Methods: Companion to Methods in Enzymology 2:106-10)。
【0063】
ポリクローナル血清および抗体は、本発明のポリペプチドを用いて適切な被験者を免疫することによって生成できる。免疫された被験者における抗体力価は、標準技術によって、例えば固定化タンパク質を用いるELISAを使用して経時的に監視できる。所望であれば、本発明のポリペプチドに対して向けられた抗体分子は、その被験者もしくは培養培地から単離することができ、さらに周知の技術、例えばタンパク質AクロマトグラフィによってIgG分画を入手するためにさらに精製できる。
【0064】
本発明のポリペプチドに対する抗体のフラグメントは、当分野において周知の方法による抗体の開裂によって生成できる。例えば、免疫学的に活性なFabおよびF(ab’)フラグメントは、抗体を酵素、例えばペプシンで処置することによって生成できる。
【0065】
ヒト抗体は、追加して、抗原負荷に応答して動物の内因性抗体よりむしろ完全ヒト抗体を生成できるように修飾されているトランスジェニック非ヒト動物を用いて生成することができる(例えば、PCT国際特許公開WO94/02602を参照されたい)。非ヒト宿主内での重鎖および軽鎖免疫グロブリンをコードする内因性遺伝子は無能力化されており、そしてヒト重鎖および軽鎖免疫グロブリンをコードする活性遺伝子座は宿主のゲノム内に挿入されている。ヒト遺伝子は、例えば必要なヒトDNAセグメントを含有する酵母人工染色体を用いて組み込まれる。すべての所望の修飾を提供する動物は、次に修飾の全部より少ない補体を含有する中間トランスジェニック動物を異種交配させることによって子孫として入手される。そのような非ヒト動物の好ましい実施形態はマウスであり、PCT国際特許公開WO96/33735およびWO96/34096に開示されたXENOMOUSE(商標)と称されている。この動物は、完全ヒト免疫グロブリンを分泌するB細胞を生成する。これらの抗体は、当該の免疫原を用いた免疫後に、例えばポリクローナル抗体の配合物として動物から直接的に、もしくは動物に由来する不死化B細胞、例えばモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマから入手できる。さらに、ヒト可変領域を備える免疫グロブリンをコードする遺伝子は抗体を直接的に入手するために回収して発現させることができる、または抗体のアナログ、例えば一本鎖Fv分子を入手するためにさらに修飾することができる。
【0066】
さらに、本発明のポリペプチドに対するキメラ、ヒト化、および一本鎖抗体は、ヒトおよび非ヒト部分を含んでおり、標準組換えDNA技術および/または組換えコンビナトリアル免疫グロブリンライブラリを用いて生成できる。ヒト化抗体は、内因性免疫グロブリン重鎖および軽鎖遺伝子を発現することはできないが、ヒト重鎖および軽鎖遺伝子を発現することはできるトランスジェニックマウスを用いて生成することもできる。例えば、ヒトモノクローナル抗体(mAb)、例えばIL−17Fに対して立てられたmAbは、マウス免疫グロブリン遺伝子ではなくむしろヒト免疫グロブリン遺伝子を有しているトランスジェニックマウスを用いて生成することができる。当該の抗原を用いて免役したこれらのトランスジェニックマウスからの脾細胞は次に、ヒトタンパク質由来のエピトープに対して特異的親和性を有するヒトmAbを分泌するハイブリドーマを生成するために使用できる(例えば、Wood et al., 国際出願公開WO91/00906; Kucherlapati et al., WO91/10741; Lonberg et al., WO92/03918; Kay et al., WO92/03917; Lonberg et al. (1994) Nature 368:856-59; Green et al. (1994) Nat. Genet. 7:13-21; Morrison et al. (1994) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:6851-55; Bruggeman (1993) Year Immunol 7:33-40; Tuaillon et al. (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:3720-24; Bruggeman et al. (1991) Eur. J. Immunol. 21:1323-26を参照されたい)。
【0067】
キメラ免疫グロブリン鎖を含むキメラ抗体は、当分野において公知の組換えDNA技術によって生成できる。例えば、マウス(または他の種)モノクローナル抗体分子のFc定常領域をコードする遺伝子は、マウスFcをコードする領域を除去するために制限酵素を用いて消化され、そしてヒトFc定常領域をコードする遺伝子の同等部分は置換される(例えば、Robinson et al., 国際出願公開PCT/US86/02269; Akira et al., 欧州特許出願第184,187号; Taniguchi, 欧州特許出願第171,496号; Morrison et al., 欧州特許出願第173,494号; Neuberger et al., 国際出願公開WO86/01533; Cabilly et al., 米国特許第4,816,567号; Cabilly et al., 欧州特許出願第125,023号; Better et al. (1988) Science 240:1041-43; Liu et al. (1987) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84:3439-43; Liu et al. (1987) J. Immunol. 139:3521-26; Sun et al. (1987) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84:214-18; Nishimura et al. (1987) Cancer Res. 47:999-1005; Wood et al. (1985) Nature 314:446-49; and Shaw et al. (1988) J. Natl. Cancer Inst. 80:1553-59を参照されたい)。
【0068】
抗体もしくは免疫グロブリン鎖は、当分野において公知の方法によってヒト化できる。ヒト化免疫グロブリン鎖を含むヒト化抗体は、抗原結合に直接的には関係していないFv可変領域の配列をヒトFv可変領域由来の同等配列と置換することによって生成できる。ヒト化抗体を生成するための一般的方法は、それらの全体がこれにより参照して組み込まれるMorrison (1985) Science 229:1202-07; Oi et al. (1986) BioTechniques 4:214; Queen et al.、米国特許第5,585,089号;5,693,761号;5,693,762号によって提供される。それらの方法には、重鎖もしくは軽鎖の少なくとも1つ由来の免疫グロブリンFv可変領域の全部もしくは一部をコードする核酸配列を単離する、操作する、および発現する工程が含まれる。そのような核酸配列の起源は当業者には周知であり、例えば、所定標的に対する抗体を生成するハイブリドーマから入手できる。ヒト化抗体、もしくはそのフラグメントをコードする組換えDNAは、次に適切な発現ベクター内にクローニングすることができる。
【0069】
ヒト化もしくはCDRグラフト化抗体分子または免疫グロブリンは、CDRグラフト化もしくはCDR置換によって生成できるが、このとき免疫グロブリン鎖の1つ、2つ、もしくは全CDRを交換することができる。例えば、これによりそれらの全体の内容が参照して組み込まれる米国特許第5,225,539号;Jones et al. (1986) Nature 321:552-25; Verhoeyan et al. (1988) Science 239:1534; Beidler et al. (1988) J. Immunol. 141:4053-60; Winter, 米国特許第5,225,539号を参照されたい。Winterは、本発明のヒト化抗体を調製するために使用できるCDRグラフト化法について記載しており(英国特許出願GB2,188,638A; Winter, 米国特許第5,225,539号)、それらの内容はこれにより参照して組み込まれる。特定のヒト抗体のCDRは全部が、非ヒトCDRの少なくとも一部分と交換することができる、またはCDRの一部だけを非ヒトCDRと交換することができる。ヒト化抗体を所定抗原に結合させるために必要とされるCDRの数を交換することだけが必要である。
【0070】
例えば、抗体の他の部分、例えば定常領域を欠失させる、付加する、もしくは置換することによって修飾されているモノクローナル、キメラおよびヒト化抗体もまた本発明の範囲内に含まれる。非限定的例として、抗体は、定常領域を欠失させることによって、定常領域をまた別の定常領域、例えば抗体の半減期、安定性、もしくは親和性を増加させることが意図される定常領域、もしくは他の種もしくは抗体クラス由来の定常領域と交換することによって、または例えば、グリコシル化部位の数、エフェクタ細胞機能、Fc受容体(FcR)結合、補体固定化などを変化させるために定常領域内の1つまたは複数のアミノ酸を修飾することによって修飾することができる。抗体定常領域を変化させる方法は、当分野において公知である。変化した機能、例えばエフェクタリガンド、例えば細胞上のFcR、もしくは補体のC1構成成分に対する変化した親和性を備える抗体は、抗体の定常部分内の少なくとも1つのアミノ酸残基を相違する残基と交換することによって生成できる(例えば、それらの全体の内容がこれにより参照して組み込まれるEP388,151A1,米国特許第5,624,821号および5,648,260号を参照されたい)。マウス(もしくは他の種の)免疫グロブリンに対する類似タイプの変化は、これらの機能を減少もしくは排除するために適用できる。そのような変化は当分野において公知である。例えば、FcR(例、FcγR1)、もしくはC1q結合に対する抗体(例、IgG、例えばヒトIgG)のFc領域の親和性は、特定された残基をその側鎖上で適切な官能基を有する残基と交換することによって、または荷電官能基、例えばグルタミン酸塩もしくはアスパラギン酸塩、または芳香族非極性残基、例えばフェニルアラニン、チロシン、トリプトファンもしくはアラニンを導入することによって変化させることが可能である(例えば、米国特許第5,624,821号を参照されたい)。本発明の抗IL−17Fもしくは抗IL−17R抗体は、上清、細胞溶解物、または細胞表面上でIL−17FもしくはIL−17Rポリペプチドを各々、単離する、精製する、および/または検出するために有用なことがある。さらに、当業者は、IL−17FもしくはIL−17Rに対する抗体をそれによって以下に記載するスクリーニング方法において使用する方法を認識するであろう。本明細書に開示した抗体は、臨床検査方法の一部として、例えばIL−17Fタンパク質レベルを監視するために診断的に、または抗体の抗原を含む細胞もしくは組織へ治療用モジュレータをターゲティングするために臨床的にさらに使用できる。例えば、低分子などの治療薬、または本発明の他の治療薬は、IL−17FもしくはIL−17Rを各々発現する細胞もしくは組織へ治療薬をターゲティングするために、抗IL−17Fもしくは抗IL−17R抗体へ連結させることができる。または、IL−17Fおよび/またはIL−17Rに対する抗体は、阻害性抗体として、すなわちIL−17FのIL−17Rへの結合を減少させる、限定する、遮断する、さもなければ低下させるためのアンタゴニストとして使用できる。
【0071】
本発明において使用するための抗体に加えて、他の分子もまた、IL−17Fホモ二量体、IL−17Aホモ二量体、および/またはIL−17F/IL−17Aホモ二量体の活性を変調させるために使用できる。そのような分子には、低分子免疫薬学的(SMIP(商標))薬物(Trubion Pharmaceuticals社、ワシントン州シアトル)が含まれる。SMIPは、抗原、対受容体などの同族構造に対する結合ドメイン、1つのシステイン残基を有する、もしくは有さないヒンジ領域ポリペプチド、ならびに免疫グロブリンCH2およびCH3ドメインから構成される一本鎖ポリペプチドである(さらに、www.trubion.comも参照されたい)。SMIPならびにそれらの使用および用途は、例えば米国特許出願第2003/0118592号、第2003/0133939号、第2004/0058445号、第2005/0136049号、第2005/0175614号、第2005/0180970号、第2005/0186216号、第2005/0202012号、第2005/0202023号、第2005/0202,028号、第2005/0202534号、および第2005/0238646号、ならびにそれらの関連特許ファミリーメンバーに開示されており、それらは全体が参照して本明細書に全体として組み込まれる。
【0072】
スクリーニングアッセイ
本発明の関連するポリヌクレオチドおよびポリペプチドは、それらに対する抗体も含めて、細胞もしくは生物中でIL−17Aの活性を変調させることができ、それによって炎症反応の潜在的調節剤である、抗体を含む、薬理学的物質もしくは物質に対する主要化合物を同定するためのスクリーニングアッセイにおいて使用できる。例えば、IL−17F(天然型もしくは組換えのいずれか)を含有するサンプルは複数の試験化合物の1つ(生物剤もしくは小有機分子のいずれか)と接触させ、そして処置されたサンプル各々の中のIL−17Fの生物活性を未処置サンプルもしくは様々な試験化合物と接触させたサンプル中のIL−17Fの生物活性と比較できる。そのような比較は、試験化合物のいずれかが、1)それによりIL−17Fのアンタゴニストであることを指示する、IL−17Fの発現もしくは生物活性の実質的に減少したレベル、2)それによりIL−17Fのアゴニストであることを指示する、IL−17Fの発現もしくは生物活性の実質的に増加したレベルを生じさせるかどうかを決定するであろう。1つの実施形態では、IL−17F活性を変調させることのできる試験化合物の同定は、高スループットスクリーニングアッセイ、例えばBIACORE(登録商標)(Biacore International AB社、スウェーデン国ウプサラ)、BRET(生物発光共鳴エネルギー転移)、およびFRET(蛍光共鳴エネルギー転移)アッセイ、ならびにELISAおよびセルベースアッセイを用いて実施される。
【0073】
低分子
IL−17Fに関連する障害、例えば、嚢胞性線維症を有する患者における、例えば嚢胞性線維症における細菌感染に起因する肺症状の悪化を含む気道炎症に罹患した(もしくは危険性がある)生物(もしくは被験者)、またはそのような障害に関係するそのような生物(もしくは被験者)由来の細胞における減少したIL−17F活性は、IL−17Fに拮抗する、すなわちその活性を阻害する低分子(通常は有機低分子)の使用によって達成することもできる。新規の拮抗性低分子は、上述したスクリーニング方法によって同定することができ、以下に記載する本発明の治療方法において使用できる。
【0074】
用語「低分子」は、高分子ではない化合物を意味する(例えば、Karp (2000) Bioinformatics Ontology 16:269-85; Verkman (2004) AJP-CeIl Physiol. 286:465-74を参照されたい)。そこで、低分子はしばしば、例えば1,000ダルトン未満の化合物であると見なされている(例えば、Voet and Voet, Biochemistry, 2nded., ed. N. Rose, Wiley and Sons, New York, 14 (1995)を参照されたい)。例えば、Davis et al. (2005) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 102:5981-86は、フォレート、メトトレキセート、および神経ペプチドを指示するために低分子という語句を使用しているが、他方Halpin and Harbury (2004) PLos Biology 2:1022-30は、低分子遺伝子産物、例えばDNA、RNAおよびペプチドを指示するためにこの語句を使用している。天然低分子の例には、コレステロール、神経トランスミッタ、アプタマ、およびsiRNAが含まれるがそれらに限定されない;合成低分子の例には、多数の市販で入手できる低分子データベース、例えばFCD(Fine Chemicals Database)、SMID(Small Molecule Interaction Database)、ChEBI(Chemical Entities of Biological Interest)、およびCSD(Cambridge Structural Database)の中に列挙された様々な化学物質が含まれるがそれらに限定されない(例えば、Alfarano et al. (2005) Nuc. Acids Res. Database Issue 33:D416-24を参照されたい)。
【0075】
IL−17Fに関連する障害を診断する、予後診断する、および進行を監視するための方法
本発明は、被験者におけるIL−17Fに関連する障害(例えば、IL−17Fの生物活性における増加に直接的もしくは間接的に関係する障害)を診断する、予後診断する、および進行を監視するための方法であって、IL−17F活性のアップレギュレーションを検出する工程による、例えば、ヒト被験者におけるそのような方法の使用を含むがそれらに限定されない、IL−17Fのアップレギュレーションを検出する工程による方法を提供する。これらの方法は、例えばIL−17FもしくはIL−17Rポリヌクレオチド(もしくはそのフラグメント);IL−17FもしくはIL−17Rポリペプチド(もしくはそのフラグメントおよび/または融合タンパク質);IL−17FもしくはIL−17Rポリペプチドに対する抗体(もしくはその誘導体);または例えば臨床状況において便宜的に使用できる、本明細書に記載したIL−17FもしくはIL−17Rポリヌクレオチドおよび/またはポリペプチドのモジュレータを含む群のうちの少なくとも1つを含む事前に包装された診断キットを利用する工程によって実施できる。さらに、当業者は、例えば、IL−17Fのアップレギュレーションは、間接的方法、例えば免疫細胞、例えば好中球の数を計数する工程によっても検出できることを認識するであろう。
【0076】
「診断」もしくは「診断する工程」は、病的状態の存在もしくは不在を同定する工程を意味する。診断方法には、被験者(ヒトもしくは非ヒト動物)由来の生物学的サンプル中のIL−17Fの遺伝子産物(例えば、RNA、cDNA、もしくはポリペプチド、それらのフラグメントを含む)の試験量を決定する工程によって、およびその試験量を正常量もしくは範囲(すなわち、IL−17Fに関連する障害に罹患していないことが公知の個体からの量もしくは範囲)と比較する工程とによってIL−17F生物活性のアップレギュレーションを検出する工程が含まれる。特定診断方法はIL−17Fに関連する障害の確定診断を提供しない場合があるが、その方法が診断に役立つ陽性の指標を提供するかどうかには十分である。
【0077】
本発明は、例えば、IL−17F活性のアップレギュレーションを検出する工程によって、例えばIL−17Fのアップレギュレーションを検出する工程によって、そのような障害を予後診断するための方法をさらに提供する。「予後診断」もしくは「予後診断する工程」は、病的状態の予想される発生および/または重症度を予測する工程を意味する。予後診断方法は、被験者由来の生物学的サンプル中のIL−17Fの遺伝子産物の試験量を決定する工程と、そして前記試験量をIL−17Fの遺伝子産物に対する予後診断量もしくは範囲(すなわち、様々な重症度の、IL−17Fに関連する障害を有する個体からの量もしくは範囲)と比較する工程と、を含む。試験サンプル中の様々な量のIL−17F遺伝子産物は、IL−17Fに関連する障害についての特定の予後と一致している。特定予後レベルでのある量のIL−17F遺伝子産物の検出は、その被験者にとっての予後診断を提供する。
【0078】
本発明は、例えば、IL−17F活性のアップレギュレーションを検出する工程によって、例えばIL−17Fのアップレギュレーションを検出する工程によって、IL−17Fに関連するそのような障害の進行もしくは経過を監視するための方法をさらに提供する。監視する工程は、第1および第2の時点に被験者から採取された生物学的サンプル中のIL−17Fの遺伝子産物の試験量を決定する工程と、そしてそれらの量を比較する工程とを含む。第1および第2の時点間でのIL−17Fの遺伝子産物の量における変化は、IL−17F関連性障害の経過における変化を指示しており、量における減少はそのような障害の寛解を指示し、そして量における増加はそのような障害の進行を指示する。そのような監視アッセイは、自己免疫障害に対して治療されている患者における特定治療的介入の有効性を評価するためにもまた有用である。
【0079】
上記に記載した方法における増加したIL−17Fは、生体液(例、全血、血漿、および尿)、細胞(例、全細胞、細胞分画、および細胞抽出物)、ならびにその他の組織を含む様々な生物学的サンプル中で検出できる。生物学的サンプルは、組織の切片、例えば組織学検査のために採取された生検標本および冷凍切片をさらに含む。好ましい生物学的サンプルには、血液、血漿、リンパ液、組織生検標本、尿、CSF(脳脊髄液)、滑液、およびBAL(気管支肺胞洗浄液)が含まれる。生物学的サンプルの分析は、必ずしも被験者からの細胞もしくは組織の除去を必要としないことは理解されるであろう。例えば、IL−17F遺伝子産物(例、抗体、核酸)へ結合する適切に標識された物質は、被験者に投与して、標準イメージング技術(例、CAT、NMR(MRI)、およびPET)を用いて(標的に結合した場合は)視認することができる。
【0080】
本発明の診断および予後診断アッセイでは、IL−17F遺伝子産物が検出され、試験量を生成するために定量される。試験量は、次に正常量もしくは範囲と比較される。正常量もしくは範囲を有意に超える試験量は、IL−17Fに関連する障害の診断における陽性の指標である。以下ではIL−17F遺伝子産物を検出および定量する特定方法を記載する。
【0081】
IL−17F遺伝子産物の正常量もしくはベースラインレベルは、任意の特定サンプルタイプおよび集団について決定できる。一般に、IL−17Fタンパク質もしくはmRNAのベースライン(正常)レベルは、正常(すなわち、健常)被験者由来の生物学的サンプルタイプ中でのIL−17Fタンパク質もしくはmRNAの各々の量を測定する工程によって決定される。または、IL−17F遺伝子産物の正常値は、疾患(もしくは疾患の可能性がある)試験細胞もしくは組織が由来した同一被験者から採取された健常細胞もしくは組織中での量を測定することによって決定できる。IL−17F遺伝子産物の量(正常量もしくは試験量のいずれか)は、1つの細胞、全タンパク質、もしくは容積ベースで決定もしくは表示することができる。サンプルの細胞量を決定するためには、構成的に発現した遺伝子産物または生物学的サンプルが由来したタイプの細胞中で公知のレベルで発現した他の遺伝子産物のレベルを測定できる。
【0082】
本発明のアッセイ方法は、必ずしもIL−17F遺伝子産物の絶対値の測定を必要としないことは理解されるであろうが、これはこれらの方法の多数の用途には相対値で十分なためである。IL−17F遺伝子産物の量もしくは存在度に加えて、変異体もしくは異常なIL−17F遺伝子産物もしくはそれらの発現パターン(例、突然変異転写体、短縮ポリペプチド)は、正常な遺伝子産物および発現パターンとの比較によって同定できる。
【0083】
2つのサンプル中での特定遺伝子もしくはタンパク質の発現が有意に類似する、または有意に相違する、例えば所与のレベルより有意に高い、もしくは有意に低いかどうかは、遺伝子自体に、そして特に相違する個体間もしくは相違するサンプル間での発現の変動性に左右される。発現レベルが有意に類似であるか相違しているかを決定することは、当分野における技術の範囲内にある。例えばIL−17FもしくはIL−17R発現レベルにおける個体、種、器官、組織、または細胞間の遺伝的変異などの要素は、例えば2つのサンプル間のIL−17FもしくはIL−17Rの発現レベルが有意に類似するか、もしくは有意に相違するか、例えば有意に所与レベルを超えているかを決定するために(必要な場合に、必要に応じて)考慮に入れることができる。個体、種、器官、組織、もしくは細胞間の遺伝子発現における自然な異質性の結果として、「有意に類似する」もしくは「有意に超える」などの語句は、正確なパーセンテージもしくは数値として規定できないが、むしろ本発明を実施する当業者によって確定されることは可能である。
【0084】
本発明の診断、予後診断、および監視アッセイは、生物学的サンプル中でIL−17F遺伝子産物を検出して定量する工程を含む。IL−17F遺伝子産物にはmRNAおよびポリペプチドが含まれ、どちらも当業者には周知の方法を用いて測定できる。
【0085】
例えば、mRNAは、ハイブリダイゼーションをベースとするアッセイ、例えばノーザンハイブリダイゼーション、インサイチューハイブリダイゼーション、ドットおよびスロットブロット、ならびにオリゴヌクレオチドアレイを用いて直接的に検出および定量することができる。ハイブリダイゼーションをベースとするアッセイは、プローブ核酸が標的核酸にハイブリダイズさせるアッセイを意味する。一部のフォーマットでは、標的、プローブ、または両方が固定化される。固定化された核酸は、DNA、RNA、または他のオリゴヌクレオチドもしくはポリヌクレオチドであってよく、そして天然型もしくは非天然型ヌクレオチド、ヌクレオチドアナログ、または主鎖を含んでいてよい。本発明において使用するための核酸プローブ配列を(IL−17Fの核酸配列に基づいて)選択する方法は、当分野において周知である。
【0086】
または、mRNAは検出および定量の前に増幅させることができる。そのような増幅をベースとするアッセイは当分野において周知であり、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、逆転写PCR(RT−PCR)、PCR酵素結合免疫吸着検定法(PCR−ELISA)、およびリガーゼ連鎖反応(LCR)が含まれる。増幅させたIL−17F遺伝子産物(例、mRNAまたはcDNA)を生成および検出するためのプライマーおよびプローブは、IL−17Fの核酸配列に基づいて当業者によって無用な実験を行なわずに容易に設計および生成することができる。増幅させたIL−17F遺伝子産物は、例えば、ゲル電気泳動法;プローブ核酸へのハイブリダイゼーション;シーケンシング;蛍光、燐光、もしくは放射性シグナルの検出;または様々な周知の方法のいずれかによって直接的に分析できる。さらに、標的核酸配列の増幅によって生成したシグナルを増大させるための方法は、当業者には公知である。当業者は、いずれの増幅方法が使用されても、当分野において公知の様々な定量方法(例、定量的PCR)を遺伝子産物の定量が所望の場合には使用できることを認識するであろう。
【0087】
IL−17Fポリペプチド(もしくはそのフラグメント)は、上述したように生成できる各抗IL−17F抗体を使用して様々な周知の免疫学的アッセイを用いて検出できる。免疫学的アッセイは、例えばIL−17Fポリペプチド(もしくはそのフラグメント)へ特異的に結合する抗体(例えば、ポリクローナル、モノクローナル、キメラ、ヒト化、scFv、および/またはそのフラグメント)を利用するアッセイを意味する。本発明の実践のために適合するそのような周知の免疫学的アッセイには、ELISA、ラジオイムノアッセイ(RIA)、免疫沈降法、免疫蛍光、蛍光活性化セルソーティング(FACS)、およびウェスタンブロッティングが含まれる。当業者はさらに、IL−17Fポリペプチドは標識したIL−17Rポリペプチドを用いて検出できることもまた認識するであろう。
【0088】
当業者は、上述した方法が、例えば、嚢胞性線維症を有する患者における、嚢胞性線維症における細菌感染に起因する肺症状の悪化を含む気道炎症を含むがそれには限定されないIL−17Fに関連する障害に適用できることを理解するであろう。
【0089】
療法におけるIL−17Fアンタゴニストの使用
本発明者らは、本発明者らが最初に、IL−17FによるIL−17Rの結合は、例えば、嚢胞性線維症を有する患者における、嚢胞性線維症における細菌感染に起因する肺症状の悪化を含む気道炎症と相関していることを認識したと考えている。そこで、本発明は、例えば、嚢胞性線維症を有する患者における、嚢胞性線維症における細菌感染に起因する肺症状の悪化を含む気道炎症を治療するためのIL−17Fアンタゴニストを使用する方法を開示する。
【0090】
上述した方法を用いて同定されたIL−17FもしくはIL−17Rポリヌクレオチドおよび/またはポリペプチド活性のモジュレータを含む本明細書に開示したIL−17Fアンタゴニストは、インビトロ、エックスビボで使用できる、または医薬組成物中に組み込んで、例えば、嚢胞性線維症を有する患者における、嚢胞性線維症における細菌感染に起因する肺症状の悪化を含む気道炎症を治療するために、IL−17Fアンタゴニスト(IL−17Fおよび/またはIL−17R阻害性ポリヌクレオチド;可溶性IL−17Rポリペプチド(そのフラグメントおよび/または融合タンパク質を含む);阻害性の抗IL−17Fもしくは抗IL−17R抗体;および/または拮抗性低分子など)の投与によって、個体へインビボで投与することができる。IL−17Fアンタゴニストを投与すべきかどうかを決定する際に考慮すべき数種の薬理ゲノミクスアプローチは当業者には周知であり、ゲノムワイド(genome−wide)関連、候補遺伝子アプローチ、および遺伝子発現プロファイリングが含まれる。本発明の医薬組成物は、その企図された投与経路(例えば、経口組成物は、一般に不活性希釈剤もしくは食用担体を含む)と適合するように調製される。その他の投与経路の非限定的例には、非経口(例、静脈内)、皮内、皮下、経口(例、吸入)、経皮(局所)、経粘膜、および直腸投与が含まれる。各企図された経路と適合する医薬組成物は、当分野において周知である。
【0091】
IL−17Fアンタゴニストは、医薬上許容される担体と結合した場合に医薬組成物として使用できる。そのような組成物は、IL−17Fアンタゴニストおよび担体に加えて、様々な希釈剤、充填剤、塩、緩衝剤、安定剤、可溶化剤、および当分野において周知のその他の物質を含有することができる。用語「医薬上許容される」は、有効成分の生物活性の有効性を妨害しない物質の非毒性量を意味する。担体の特性は、投与経路に依存するであろう。
【0092】
本発明の医薬組成物は、さらにまたサイトカイン、リンホカイン、もしくは他の造血因子、例えばM−CSF、GM−CSF、IL−I、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12、IL−14、IL−15、G−CSF、幹細胞因子およびエリスロポエチンを含有していてよい。本医薬組成物は、さらにまた以下でより詳細に記載する抗サイトカイン抗体を含んでいてよい。本医薬組成物は、血栓溶解性もしくは抗血栓性因子、例えばプラスミノーゲンアクチベータおよび第VIII因子を含有していてよい。本医薬組成物は、さらに以下でより詳細に記載する他の抗炎症剤を含んでいてよい。そのような追加の因子および/または物質は、本医薬組成物中に、IL−17Fアンタゴニストとの相乗作用を生成するため、またはIL−17Fアンタゴニストによって誘発される副作用を最小限に抑えるために含むことができる。これとは逆に、IL−17Fアンタゴニストは、特定のサイトカイン、リンホカイン、他の造血因子、血栓溶解性もしくは抗血栓性因子、または抗炎症剤の配合物中に、そのサイトカイン、リンホカイン、他の造血因子、血栓溶解性もしくは抗血栓性因子、または抗炎症剤の副作用を最小限に抑えるために含められてもよい。
【0093】
本発明の医薬組成物は、IL−17Fアンタゴニストが、他の医薬上許容される担体に加えて、両親媒性物質、例えばミセル、不溶性単層、液晶、または水溶液中の薄層として凝集形で存在する脂質と結合されているリポソームの形状であってよい。リポソーム配合物のために適合する脂質には、制限なく、モノグリセリド、ジグリセリド、スルファチド、リゾレシチン、リン脂質、サポニン、胆汁酸などが含まれる。そのようなリポソーム配合物の調製は、例えば、それらの全体が参照して本明細書に組み込まれる米国特許第4,235,871号;米国特許第4,501,728号;米国特許第4,837,028号;および米国特許第4,737,323号に開示されているように、当業者のレベルの範囲内に含まれる。
【0094】
本明細書で使用する用語「治療有効量」は、有意な患者の有益性、例えばそのような状態の症状の改善、治癒、もしくは治癒速度の増加を示すために十分である医薬組成物もしくは方法の各活性成分の総量を意味する。単独で投与された個々の有効成分に適用される場合は、この用語はその成分単独に関する。組み合わせに適用される場合は、この用語は、組み合わせて、連続で、もしくは同時のいずれで投与されても、治療作用を生じさせる有効成分の結合量を意味する。本発明の治療方法もしくは使用を実施する際には、治療有効量のIL−17Fアンタゴニストが被験者、例えば哺乳動物(好ましくはヒト)へ投与される。IL−17Fアンタゴニストは、本発明の方法によって、単独で、または他の療法、例えばサイトカイン、リンホカインもしくは他の造血因子、または抗炎症剤と組み合わせて投与することができる。1つまたは複数の物質と共投与される場合は、IL−17Fアンタゴニストは、第2物質と同時に、または連続して投与することができる。連続的に投与される場合は、担当医師は、例えばIL−17Rポリペプチド(もしくはその融合タンパク質)および/または阻害性抗体の、他の物質と組み合わせた適切な投与順序を決定するであろう。
【0095】
治療有効量のIL−17Fアンタゴニストが経口投与される場合は、結合剤は、錠剤、カプセル剤、散剤、液剤もしくはエリキシル剤の形状にあるであろう。錠剤形で投与される場合は、本発明の医薬組成物は、追加して固体担体、例えばゼラチンもしくはアジュバントを含有する場合がある。錠剤、カプセル剤、および散剤は、約5〜95%の結合剤、および好ましくは約25〜90%の結合剤を含有している。液剤形で投与される場合は、液状担体、例えば水、石油、動物もしくは植物起源の油、例えば落花生油(集団内での落花生アレルギーの頻度を念頭に置いた上ではあるが)、鉱油、大豆油、もしくはゴマ油、または合成油を加えることができる。本医薬組成物の液剤形は、さらに生理的食塩液、デキストロースもしくは他の糖溶液、またはグリコール類、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、もしくはポリエチレングリコールを含有していてよい。液剤形で投与される場合は、本医薬組成物は、重量で約0.5〜90%の結合剤、および好ましくは重量で約1〜50%の結合剤を含有している。
【0096】
治療有効量のIL−17Fアンタゴニストが静脈内、皮内、もしくは皮下注射によって投与される場合は、IL−17Fアンタゴニストは、発熱物質を含有していない、非経口的に許容される水溶液の形状であろう。そのような非経口的に許容されるタンパク質溶液の、pH、等張性、安定性などを十分に顧慮した調製は、当業者の技術の範囲内である。静脈内、皮内、もしくは皮下注射のために好ましい医薬組成物は、IL−17Fアンタゴニストに加えて、等張性ビヒクル、例えば塩化ナトリウム注射液、リンガー注射液、デキストロース注射液、デキストロースおよび塩化ナトリウム注射液、乳酸加リンガー注射液、または当分野において公知の他のビヒクルを含んでいなければならない。本発明の医薬組成物は、さらに安定剤、保存剤、緩衝剤、酸化防止剤、または当業者に公知の他の添加物を含有していてよい。
【0097】
本発明の医薬組成物中のIL−17Fアンタゴニストの量は、治療される状態の性質および重症度、ならびにその患者が受けていた先行治療の性質に依存するであろう。最終的には、担当医師が、それを用いて各個別患者を治療するIL−17Fアンタゴニストの量を決定するであろう。最初に、担当医師は低用量のIL−17Fアンタゴニストを投与し、患者の応答を観察するであろう。より高用量のIL−17Fアンタゴニストは、その患者にとって最適の治療作用が入手されるまで投与することができ、その時点で用量は一般にはそれ以上増量されない。本発明の方法を実践するために使用された様々な医薬組成物は、体重1kgにつき、約0.1μg〜約100mgのIL−17Fアンタゴニスト、例えば組換えIL−17R(その融合タンパク質を含む)を含有しているべきであると企図されている。
【0098】
本発明の医薬組成物を用いる静脈内(i.v.)療法の期間は、治療される疾患の重症度、ならびに各個別患者の状態および潜在的な固有の応答に依存して変動するであろう。IL−17Fアンタゴニストの各投与期間は12〜24時間の持続i.v.投与の範囲内にあってよいことが企図されている。さらに、本発明の医薬組成物を用いる皮下(s.c.)療法も企図されている。これらの療法は、1日1回、週1回、またはより好ましくは1週おきに、もしくは月1回投与することができる。IL−17Fアンタゴニストが低分子(例えば、経口送達のため)である場合は、これらの療法は、1日1回、1日2回、1日3回などで投与できることもまた企図されている。最終的には、担当医師が、i.v.もしくはs.c療法、もしくは低分子を用いた療法の適切な期間、および本発明の医薬組成物を用いる療法の投与時期を決定するであろう。
【0099】
本発明のポリヌクレオチドおよびタンパク質は、以下に規定した使用もしくは生物活性(本明細書で言及したアッセイと結び付いている生物活性を含む)の1つまたは複数を示すことが予想されている。本発明のタンパク質について記載された使用もしくは活性は、そのようなタンパク質の投与もしくは使用によって、またはそのようなタンパク質をコードするポリヌクレオチドの投与もしくは使用(例えば、DNAの導入に適合する遺伝子療法もしくはベクターなど)によって提供できる。
【0100】
気道炎症を減少させるためのIL−17Fアンタゴニストの使用
1つの態様では、本発明は、例えば、嚢胞性線維症を有する患者における、嚢胞性線維症における細菌感染に起因する肺症状の悪化を含む気道炎症を減少させる方法を特徴とする。本方法は、細胞もしくは集団のIL−17F活性を阻害するために十分な量で、細胞集団をIL−17Fアンタゴニスト(例えば、IL−17Fおよび/またはIL−17R阻害性ポリヌクレオチド;可溶性IL−17Rポリペプチド(フラグメントおよび/またはその融合タンパク質を含む);阻害性の抗IL−17Fもしくは抗IL−17R抗体;および/または拮抗性低分子など)と接触させる工程を含んでいてよい。
【0101】
これらの方法は、少なくとも一部には、IL−17FがIL−17Rに結合する(実施例4)、そして嚢胞性線維症を有する患者の喀痰中のIL−17F濃度が肺症状の悪化の程度と直接的に相関している(実施例7)という所見に基づいている。したがって、IL−17Fアンタゴニスト、すなわちIL−17F活性を阻害する分子(例、抗IL−17F抗体)は、例えば、嚢胞性線維症を有する患者における、嚢胞性線維症における細菌感染に起因する肺症状の悪化を含む気道炎症を減少させるために使用できる。
【0102】
IL−17Fアンタゴニストを使用する方法は、さらにまたIL−17F炎症活性を阻害するために使用でき、このため、様々な免疫障害を治療もしくは予防するために使用できる。治療もしくは予防できる障害の非限定的例には、移植片拒絶反応、自己免疫疾患(例えば、糖尿病、関節炎(関節リウマチ、若年性慢性関節リウマチ、変形性関節症、乾癬性関節炎を含む)、多発性硬化症、脳脊髄炎、筋無力症、全身性エリテマトーデス、自己免疫性甲状腺炎、皮膚炎(アトピー性皮膚炎および湿疹性皮膚炎)、乾癬、シェーグレン症候群、クローン病、アフタ性潰瘍、虹彩炎、結膜炎、角結膜炎、潰瘍性大腸炎、脊椎関節症、強直性脊椎炎、内因性喘息、アレルギー性喘息、皮膚エリテマトーデス、強皮症、膣炎、直腸炎、薬疹、ハンセン病反転反応、ハンセン性結節性紅斑、自己免疫性ブドウ膜炎、アレルギー性脳脊髄炎、急性壊死性出血性脳症、特発性両側性進行性感音難聴、再生不良性貧血、真正赤血球性貧血、特発性血小板減少症、多発性軟骨炎、ヴェグナー肉芽腫症、慢性活動性肝炎、スティーブンス・ジョンソン症候群、特発性スプルー、扁平苔癬、バセドー病、サルコイドーシス、原発性胆汁性肝硬変、後部ブドウ膜炎、および間質性肺線維症)、移植片対宿主疾患、およびアレルギー、例えばアトピー性アレルギーが含まれるがそれらに限定されない。IL−17Fアンタゴニスト、例えば阻害性のIL−17F抗体の投与を含む方法を用いて治療できる好ましい障害には、例えば、嚢胞性線維症を有する患者における、例えば嚢胞性線維症における細菌感染に起因する肺症状の悪化を含む気道炎症が含まれる。
【0103】
IL−17Fアンタゴニスト(例えば、IL−17Fおよび/またはIL−17R阻害性ポリヌクレオチド;可溶性IL−17Rポリペプチド(フラグメントおよび/またはその融合タンパク質を含む);阻害性の抗IL−17Fもしくは抗IL−17R抗体;および/または拮抗性低分子など)を使用すると、免疫応答を様々な方法で調節することが可能である。ダウンレギュレーションは、既に進行中の炎症性応答を阻害もしくは遮断する工程の形状であってよい、または炎症性応答の誘導を防止する工程を含んでいてよい。
【0104】
1つの実施形態では、その医薬組成物を含むIL−17Fアンタゴニストは、併用療法で投与される、すなわち他の物質、例えば病的状態もしくは障害、例えば免疫障害および炎症性疾患(気道炎症を含む)を治療するために有用な治療薬と併用される。この状況における用語「併用して」は、物質が同時もしくは連続的のいずれかの実質的に同時性で投与されることを意味する。連続的に与えられる場合は、第2化合物の投与開始時には、2種の化合物の第1は、好ましくは治療部位で依然として有効濃度で検出可能である。
【0105】
例えば、併用療法は、以下でより詳細に記載するように、1つまたは複数の追加の治療薬、例えば1つまたは複数のサイトカインおよび成長因子阻害剤、免疫抑制剤、抗炎症剤、代謝阻害剤、酵素阻害剤、および/または細胞毒性もしくは細胞分裂阻害剤と共調製された、および/または共投与された、1つまたは複数のIL−17Fアンタゴニスト(例えば、IL−17Fおよび/もしくはIL−17R阻害性ポリヌクレオチド;可溶性IL−17Rポリペプチド(そのフラグメントおよび/または融合タンパク質を含む);阻害性の抗IL−17Fもしくは抗IL−17R抗体;および/または拮抗性低分子など)を含むことができる。さらに、本明細書に記載した1以上のIL−17Fアンタゴニストは、本明細書に記載した2つまたは複数の治療薬と組み合わせて使用できる。そのような併用療法は、有益にも、投与される治療薬の低用量を利用するので、様々な単剤療法に結び付いた可能性のある毒性もしくは合併症が回避される。さらに、本明細書に開示した治療薬は、IL−17Fシグナル伝達経路とは相違する経路に作用するので、したがってIL−17Fアンタゴニストの作用を増強する、および/または相乗作用を与えると予想される。
【0106】
IL−17Fアンタゴニストと組み合わせて使用される好ましい治療薬は、炎症性応答(気道炎症を含む)における様々な段階で妨害する物質である。1つの実施形態では、本明細書に記載した1つまたは複数のIL−17Fアンタゴニストは、1つまたは複数の追加の物質、例えば他のサイトカインもしくは成長因子アンタゴニスト(例、可溶性受容体、ペプチド阻害剤、低分子、リガンド融合体);または他の標的に結合する抗体もしくはそれらの抗原結合フラグメント(例えば、他のサイトカインもしくは成長因子、それらの受容体、または他の細胞表面分子に結合する抗体);ならびに抗炎症性サイトカインもしくはそれらのアゴニストと共調製する、およびまたは共投与することができる。そのため、本明細書に記載した1つまたは複数のIL−17Fアンタゴニストは、1つまたは複数のサイトカイン阻害剤、成長因子阻害剤、免疫抑制剤、抗炎症剤、代謝阻害剤、酵素阻害剤、細胞毒性剤、および細胞分裂阻害剤と組み合わせて使用できる。本明細書に記載したIL−17Fアンタゴニストと組み合わせて使用できる物質の非限定的例には、1つまたは複数のインターロイキン(IL)もしくはそれらの受容体のアンタゴニスト、例えばIL−1、IL−2、IL−6、IL−7、IL−8、IL−12、IL−13、IL−15、IL−16、IL−18、およびIL−22のアンタゴニスト;サイトカインもしくは成長因子もしくはそれらの受容体、例えば腫瘍壊死因子(TNF)、LT、EMAP−II、GM−CSF、FGFおよびPDGFのアンタゴニストが含まれるがそれらに限定されない。IL−17Fアンタゴニストは、例えば細胞表面分子、例えばCD2、CD3、CD4、CD8、CD20(例えば、CD20阻害剤であるリツキシマブ(RITUXAN(登録商標))、CD25、CD28、CD30、CD40、CD45、CD69、CD80(B7.1)、CD86(B7.2)、CD90、またはCD154(gp39もしくはCD40L)、もしくはLFA−l/ICAM−1およびVLA−4/VCAM−1を含むそれらのリガンドに対する抗体の阻害剤と組み合わせて使用できる(Yusuf-Makagiansar et al. (2002) Med. Res. Rev. 22:146-67)。本明細書に記載したIL−17Fアンタゴニストと組み合わせて使用できる好ましいアンタゴニストには、IL−1、IL−12、TNFα、IL−15、IL−18、およびIL−22のアンタゴニストが含まれる。
【0107】
それらの物質の例には、IL−12アンタゴニスト、例えばIL−12(好ましくはヒトIL−12)に結合するキメラ、ヒト化、ヒトもしくはインビトロ生成抗体(もしくはその抗原結合フラグメント)、例えば、WO00/56772に開示された抗体:IL−12受容体阻害剤、例えばヒトIL−12受容体に対する抗体;およびIL−12受容体、例えばヒトIL−12受容体の可溶性フラグメントが含まれる。IL−15アンタゴニストの例には、IL−15もしくはその受容体に対する抗体(もしくはその抗原結合フラグメント)、例えば、ヒトIL−15もしくはその受容体に対するキメラ、ヒト化、ヒトもしくはインビトロ生成抗体、IL−15受容体の可溶性フラグメント、およびIL−15結合タンパク質が含まれる。IL−18アンタゴニストの例には、例えば、ヒトIL−18に対するキメラ、ヒト化、ヒトもしくはインビトロ生成抗体(もしくはその抗原結合フラグメント)、IL−18受容体の可溶性フラグメント、およびIL−18結合タンパク質が含まれる(IL-18BP, Mallat et al. (2001) Circ. Res. 89:e41-45)。IL−1アンタゴニストの例には、インターロイキン1変換酵素(ICE)阻害剤、例えばVx740、IL−1アンタゴニスト、例えばIL−1RA(アナキンラ−KINERET(商標)、Amgen社)、sIL1RII(Immunex社)、および抗IL−1受容体抗体(もしくはその抗原結合フラグメント)が含まれる。
【0108】
TNFアンタゴニストの例には、TNF(例、ヒトTNFα)に対するキメラ、ヒト化、ヒトもしくはインビトロ生成抗体(もしくはその抗原結合フラグメント)、例えばHUMIRA(商標)(D2E7、ヒトTNFα抗体、米国特許第6,258,562号)、CDP−571/CDP−870/BAY−10−3356(ヒト化抗TNFα抗体;Celltech/Pharmacia社)、cA2(キメラ抗TNFα抗体;REMICADE(登録商標)、Centocor社);抗TNF抗体フラグメント(例、CPD870);TNF受容体の可溶性フラグメント、例えば、p55もしくはp75 ヒトTNF受容体もしくはその誘導体、例えば、75kd TNFR−IgG(75kD TNF受容体−IgG融合タンパク質、ENBREL(商標);Immunex社)、p55kd TNFR−IgG(55kD TNF受容体−IgG融合タンパク質(LENERCEPT(登録商標));酵素アンタゴニスト、例えば、TNFα変換酵素(TACE)阻害剤(例えば、α−スルホニルヒドロキサム酸誘導体、WO01/55,112、およびN−ヒドロキシホルムアミドTACE阻害剤GW 3333、−005、もしくは−022);およびTNF−bp/s−TNFR(可溶性TNF結合タンパク質)が含まれる。好ましいTNFアンタゴニストは、TNF受容体、例えばp55もしくはp75 ヒトTNF受容体もしくはその誘導体の可溶性フラグメント、例えば75kd TNFR−IgG、およびTNFα変換酵素(TACE)阻害剤である。
【0109】
他の実施形態では、本明細書に記載したIL−17Fアンタゴニストは、次のうちの1つまたは複数と組み合わせて投与することができる:IL−13アンタゴニスト、例えば可溶性IL−13受容体(sIL−13)および/またはIL−13に対する抗体;IL−2アンタゴニスト、例えばDAB 486−IL−2および/またはDAB 389−IL−2(IL−2融合タンパク質)、および/またはIL−2Rに対する抗体、例えば抗Tac(ヒト化抗IL−2R;Protein Design Labs社)。さらにまた別の組み合わせには、非枯渇性抗CD−4阻害剤(IDEC−CE9.1/SB 210396;非枯渇性霊長類化抗CD4抗体;IDEC/SmithKline社)と組み合わせた、IL−17Fアンタゴニスト(例えば、IL−17Fおよび/またはIL−17R阻害性ポリヌクレオチド;可溶性IL−17Rポリペプチド(フラグメントおよび/またはその融合タンパク質を含む);阻害性の抗IL−17Fもしくは抗IL−17R抗体;および/または拮抗性低分子など)が含まれる。さらに他の好ましい組み合わせには、抗体、可溶性受容体もしくは拮抗性リガンド;ならびにp−セレクチン糖タンパク質リガンド(PSGL)、抗炎症性サイトカイン、例えば、IL−4(DNAX/Schering社);IL−10(SCH 52000;組換えIL−10 DNAX/Schering社);IL−13およびTGF−β、ならびにそれらのアゴニスト(例、アゴニスト抗体)を含む共刺激性経路CD80(B7.1)もしくはCD86(B7.2)のアンタゴニストが含まれる。
【0110】
他の実施形態では、1つまたは複数のIL−17Fアンタゴニストは、1つまたは複数の抗炎症薬、免疫抑制剤、または代謝もしくは酵素阻害剤と共調製、および/または共投与することができる。本明細書に記載したIL−17Fアンタゴニストと組み合わせて使用できる薬物もしくは阻害剤の非限定的例には、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、例えば、イブプロフェン、テニダプ、ナプロキセン、メロキシカム、ピロキシカム、ジクロフェナク、およびインドメタシン;スルファサラジン;コルチコステロイド剤、例えばプレドニゾロン;サイトカイン抑制性抗炎症薬(CSAID);ヌクレオチド生合成の阻害剤、例えば、プリン生合成の阻害剤、葉酸塩アンタゴニスト(例、メトトレキセート(N−[4−[[(2,4−ジアミノ−6−プテリジニル)メチル]メチルアミノ]ベンゾイル]−L−グルタミン酸);およびピリミジン生合成の阻害剤、例えばジヒドロオロト酸脱水素酵素(DHODH)阻害剤(例、レフルノミド)のうちの1つまたは複数が含まれるが、それらに限定されない。IL−17Fアンタゴニストと組み合わせて使用するために好ましい治療薬には、NSAID、CSAID、(DHODH)阻害剤(例、レフルノミド)、および葉酸塩アンタゴニスト(例、メトトレキセート)が含まれる。
【0111】
追加の阻害剤の例には、コルチコステロイド剤(経口、吸入および局所注射);免疫抑制剤、例えば、シクロスポリン、タクロリムス(FK−506);およびmTOR阻害剤、例えば、シロリムス(ラパマイシン−RAPAMUNE(商標)もしくはラパマイシン誘導体、例えば、可溶性ラパマイシン誘導体(例、エステルラパマイシン誘導体、例えば、CCI−779(Elit (2002) Curr. Opin. Investig. Drugs 3(8):1249-53; Huang et al. (2002) Curr. Opin. Investig. Drugs 3(2):295-304);TNFαもしくはIL−1(例、IRAK、NIK、IKK、p38もしくはMAPキナーゼ阻害剤)などの前炎症性サイトカインによるシグナル伝達を妨害する物質;Cox2阻害剤、例えば、セレコキシブ、ロフェコキシブ、およびそれらの変異体;ホスホジエステラーゼ阻害剤、例えば、R973401(ホスホジエステラーゼIV型阻害剤)、ホスホリパーゼ阻害剤、例えば、細胞質ホスホリパーゼ2(cPLA2)(例、トリフルオロメチルケトンアナログ(米国特許第6,350,892号));血管内皮細胞成長因子もしくは成長因子受容体の阻害剤、例えばVEGF阻害剤および/またはVEGF−R阻害剤;および血管形成の阻害剤のうちの1つまたは複数が含まれる。IL−17Fアンタゴニストと組み合わせて使用するために好ましい治療薬は、免疫抑制剤、例えば、シクロスポリン、タクロリムス(FK−506);mTOR阻害剤、例えば、シロリムス(ラパマイシン)もしくはラパマイシン誘導体、例えば、可溶性ラパマイシン誘導体(例、エステルラパマイシン誘導体、例えば、CCI−779);Cox2阻害剤、例えば、セレコキシブおよびその変異体;ならびにホスホリパーゼ阻害剤、例えば、細胞質ホスホリパーゼ2の阻害剤(cPLA2)、例えば、トリフルオロメチルケトンアナログである。
【0112】
IL−17Fアンタゴニストと組み合わせて使用できる治療薬の追加の例には、6−メルカプトプリン(6−MP);アザチオプリン;スルファサラジン;メサラジン;オルサラジン;クロロキニン/ヒドロキシクロロキン(PLAQUENIL(登録商標));ペンシラミン;アウロチオマレート(aurothiornalate)(筋肉内および経口);アザチオプリン;コルヒチン;β−2アドレナリン受容体アゴニスト(サルブタモール、テルブタリン、サルメテロール);キサンチン(テオフィリン、アミノフィリン);クロモグリケート;ネドクロミル;ケトチフェン;イプラトロピウムおよびオキシトロピウム;ミコフェノレートモフェチル;アデノシンアゴニスト;抗血栓薬;補体阻害剤;およびアドレナリン作用薬のうちの1つまたは複数が含まれる。
【0113】
以下ではIL−17Fに関連する特異的障害を治療もしくは予防するために他の治療薬と組み合わせた本明細書に開示したIL−17Fアンタゴニストの使用についてより詳細に考察する。
【0114】
関節障害(例えば、慢性関節リウマチ、炎症性関節炎、慢性関節リウマチ、若年性慢性関節リウマチ、変形性関節症および乾癬性関節炎)を治療もしくは予防するための、IL−17Fアンタゴニストをそれと組み合わせることのできる物質の非限定的例には、本明細書に記載したIL−12アンタゴニスト;NSAID;CSAID;TNF、例えばTNFα、本明細書に記載したアンタゴニスト;本明細書に記載した非枯渇性抗CD4抗体;本明細書に記載したIL−2アンタゴニスト;抗炎症性サイトカイン、例えば、IL−4、IL−10、IL−13およびTGF−α、もしくはそれらのアゴニスト;本明細書に記載したIL−1もしくはIL−1受容体アンタゴニスト;本明細書に記載したホスホジエステラーゼ阻害剤;本明細書に記載したCox−2阻害剤;イロプロスト;メトトレキセート;サリドマイドおよびサリドマイド関連薬(例、Celgen);レフルノミド;プラスミノーゲン活性化の阻害剤、例えば、トラネキサム酸;サイトカイン阻害剤、例えばT−614;プロスタグランジンE1;アザチオプリン;インターロイキン1変換酵素(ICE)の阻害剤;zap−70および/または1ck阻害剤(チロシンキナーゼzap−70もしくは1ckの阻害剤);本明細書に記載した血管内皮細胞成長因子もしくは血管内皮細胞成長因子受容体の阻害剤;本明細書に記載した血管形成の阻害剤;コルチコステロイド系抗炎症薬(例、SB203580);TNFコンバターゼ阻害剤;IL−11;IL−13;IL−17阻害剤;金;ペニシラミン;クロロキン;ヒドロキシクロロキン;クロラムブシル;シクロホスファミド;シクロスポリン;全リンパ照射;抗胸腺細胞グロブリン;CD5−毒素;経口投与されるペプチドおよびコラーゲン;ロベンザリット二ナトリウム;サイトカイン調節剤(CRA)HP228およびHP466(Houghten Pharmaceuticals社);ICAM−1アンチセンスホスホロチオエートオリゴデオキシヌクレオチド(ISIS 2302;Isis Pharmaceuticals社);可溶性補体受容体1(TP10;T Cell Sciences社);プレドニゾン;オルゴテイン;グリコサミノグリカンポリサルフェート;ミノサイクリン(MINOCIN(登録商標));抗IL−2R抗体;海洋および植物性脂質(魚および植物種子脂肪酸);オーラノフィン;フェニルブタゾン;メクロフェナム酸;フルフェナム酸;静脈内免疫グロブリン;ジロートン;ミコフェノール酸(RS−61443);タクロリムス(FK−506);シロリムス(ラパマイシン);アミプリロース(therafectin);クラドリビン(2−クロロデオキシアデノシン);およびアザリビンのうちの1つまたは複数が含まれる。好ましい組み合わせには、メトトレキセートもしくはレフルノミドと、そして中等症もしくは重症の慢性関節リウマチの症例ではシクロスポリンと組み合わせた、1つまたは複数のIL−17Fアンタゴニスト(例えば、IL−17Fおよび/またはIL−17R阻害性ポリヌクレオチド;可溶性IL−17Rポリペプチド(フラグメントおよび/またはその融合タンパク質を含む);阻害性の抗IL−17Fもしくは抗IL−17R抗体;および/または拮抗性低分子など)が含まれる。
【0115】
関節炎性障害を治療するためにIL−17Fアンタゴニストと組み合わせて使用するための阻害剤の好ましい例には、TNFアンタゴニスト(例えば、TNFに結合する、キメラ、ヒト化、ヒトもしくはインビトロ生成抗体、もしくはそれらの抗原結合フラグメント;TNF受容体の可溶性フラグメント、例えばp55もしくはp75 ヒトTNF受容体もしくはそれらの誘導体、例えば75kd TNFR−IgG(75kD TNF受容体−IgG融合タンパク質、ENBREL(商標)、p55kD TNF受容体−IgG融合タンパク質;TNF酵素アンタゴニスト、例えば、TNF−α変換酵素(TACE)阻害剤);IL−12、IL−15、IL−18、IL−22のアンタゴニスト;T細胞およびB細胞枯渇因子(例、抗CD4もしくは抗CD22抗体);低分子阻害剤、例えば、メトトレキセートおよびレフルノミド;シロリムス(ラパマイシン−RAPAMUNE(登録商標)およびそれらのアナログ、例えば、CCI−779;cox−2およびcPLA2阻害剤;NSAID;p38阻害剤;TPL−2、Mk−2およびNFκB阻害剤;RAGEもしくは可溶性RAGE;P−セレクチンもしくはPSGL−1阻害剤(例えば、低分子阻害剤、それに対する抗体、例えばP−セレクチンに対する抗体);エストロゲン受容体β(ERB)アゴニストもしくはERG−NFκBアンタゴニストが含まれる。1つまたは複数のIL−17Fアンタゴニスト(例えば、1L−17Fおよび/またはIL−17R阻害性ポリヌクレオチド;可溶性IL−17Rポリペプチド(そのフラグメントおよび/または融合タンパク質を含む);阻害性の抗IL−17Fもしくは抗IL−R抗体;および/または拮抗性低分子など)と共投与および/または共調製できる最も好ましい追加の治療薬には、TNF受容体の可溶性フラグメント、例えば、p55もしくはp75 ヒトTNF受容体もしくはそれらの誘導体、例えば75 kdTNFR−IgG(75kD TNF受容体−IgG融合タンパク質、ENBREL(商標));メトトレキセート、レフルノミド、もしくはシロリムス(ラパマイシン)もしくはそのアナログ、例えばCCI−779のうちの1つまたは複数が含まれる。
【0116】
多発性硬化症を治療もしくは予防するためにIL−17Fアンタゴニストをそれと組み合わせることのできる物質の非限定的例には、次のインターフェロン、例えばインターフェロンα1a(例、AVONEX(商標)、Biogen社)およびインターフェロン1b(BETASERON(商標)、Chiron/Berlex社);コポリマー1(Cop−1;COPAXONE(商標)、Teva Pharmaceutical Industries社);高圧酸素;静脈内免疫グロブリン;クラドリビン;本明細書に記載したTNFアンタゴニスト;コルチコステロイド剤;プレドニゾロン;メチルプレドニゾロン;アザチオプリン;シクロホスファミド;シクロスポリン:シクロスポリンA、メトトレキセート;4−アミノピリジン;およびチザニジンが含まれる。IL−17Fアンタゴニストと組み合わせて使用できる追加のアンタゴニストには、他のヒトサイトカインもしくは成長因子、例えば、TNF、LT、IL−1、IL−2、IL−6、IL−7、IL−8、IL−12、IL−15、IL−16、IL−18、EMAP−11、GM−CSF、FGF、およびPDGFに対する抗体もしくはアンタゴニストが含まれる。本明細書に記載したIL−17Fアンタゴニストは、細胞表面分子、例えばCD2、CD3、CD4、CD8、CD25、CD28、CD30、CD40、CD45、CD69、CD80、CD86、CD90もしくはそれらのリガンドに対する抗体と組み合わせることができる。IL−17Fアンタゴニストは、さらにまた物質、例えば、メトトレキセート、シクロスポリン、FK506、ラパマイシン、ミコフェノール酸モフェチル、レフルノミド、NSAID、例えば、イブプロフェン、コルチコステロイド剤、例えばプレドニゾロン、ホスホジエステラーゼ阻害剤、アデノシンアゴニスト、抗血栓薬、補体阻害剤、アドレナリン作用薬、本明細書に記載した前炎症性サイトカインによるシグナル伝達を妨害する物質、IL−1b変換酵素阻害剤(例、Vx740)、抗P7、PSGL、TACE阻害剤、T細胞シグナル伝達阻害剤、例えばキナーゼ阻害剤、メタロプロテイナーゼ阻害剤、スルファサラジン、アザチオプリン、6−メルカプトプリン、アンジオテンシン変換酵素阻害剤、可溶性サイトカイン受容体および本明細書に記載したそれらの誘導体、ならびに抗炎症性サイトカイン(例、IL−4、IL−10、IL−13およびTGF)と組み合わせることもできる。
【0117】
多発性硬化症に対してそれとIL−17Fアンタゴニストを組み合わせることのできる治療薬の好ましい例には、インターフェロン−β、例えば、IFNβ−1aおよびIFNβ−1b;コパクソン、コルチコステロイド剤、IL−1阻害剤、TNF阻害剤、CD40リガンドおよびCD80に対する抗体、IL−12アンタゴニストが含まれる。
【0118】
炎症性腸疾患(例、クローン病、潰瘍性大腸炎)を治療もしくは予防するためにIL−17Fアンタゴニスト(例えば、IL−17Fおよび/またはIL−17R阻害性ポリヌクレオチド;可溶性IL−17Rポリペプチド(フラグメントおよび/またはその融合タンパク質を含む);阻害性の抗IL−17Fもしくは抗IL−17R抗体;および/または拮抗性低分子など)をそれと組み合わせることのできる物質の非限定的例には、ブデソニド(budenoside);上皮成長因子;コルチコステロイド剤;シクロスポリン;スルファサラジン;アミノサリチル酸塩;6−メルカプトプリン;アザチオプリン;メトロニダゾール;リポキシゲナーゼ阻害剤;メサラミン;オルサラジン;バルサラジド;酸化防止剤;トロンボキサン阻害剤;IL−1受容体アンタゴニスト;抗IL−Rモノクローナル抗体;抗IL−6モノクローナル抗体;成長因子;エラスターゼ阻害剤;ピリジニル−イミダゾール化合物;本明細書に記載したTNFアンタゴニスト;IL−4、IL−10、IL−13および/またはTGFβサイトカインもしくはそれらのアゴニスト(例、アゴニスト抗体);IL−11;プレドニゾロン、デキサメタゾンもしくはブデソニドのグルクロニドもしくはデキストランコンジュゲート化プロドラッグ;ICAM−1アンチセンスホスホロチオエートオリゴデオキシヌクレオチド(ISIS 2302;Isis Pharmaceuticals社);可溶性補体受容体1(TP10;T Cell Sciences社);徐放性メサラジン;メトトレキセート;血小板活性化因子(PAF)のアンタゴニスト;シプロフロキサシン;およびリグノカインが含まれる。
【0119】
1つの実施形態では、IL−17Fアンタゴニスト(例えば、IL−17Fおよび/またはIL−17R阻害性ポリヌクレオチド;可溶性IL−17Rポリペプチド(フラグメントおよび/またはその融合タンパク質を含む);阻害性の抗IL−17Fもしくは抗IL−17R抗体;および/または拮抗性低分子など)を、免疫応答、例えば移植片拒絶反応を調節する際に関係する他の標的に向けて立てられた1つまたは複数の抗体と組み合わせて使用できる。免疫応答を治療もしくは予防するための、本発明のIL−17Fアンタゴニストをそれと組み合わせて使用できる物質の非限定的例には、以下の他の細胞表面分子、例えばCD25(インターロイキン2受容体−a)、CD11a(LFA−1)、CD54(ICAM−1)、CD4、CD45、CD28/CTLA4(CD80(B7.1)、例えばCTLA4 Ig−アバタセプト(ORENCIA(登録商標))、ICOSL、ICOSおよび/またはCD86(B7.2)に対する抗体が含まれるが、それらに限定されない。さらにまた別の実施形態では、IL−17Fアンタゴニストは、1つまたは複数の一般的免疫抑制剤、例えばシクロスポリンAもしくはFK506と組み合わせて使用される。
【0120】
他の実施形態では、IL−17Fアンタゴニストは、例えば、嚢胞性線維症を有する患者における、例えば嚢胞性線維症における細菌感染に起因する肺症状の悪化を含む炎症性疾患、例えば気道炎症に対するワクチンアジュバントとして使用される。これらのタイプの障害を治療するためのアジュバントの組み合わせは、様々な抗原と組み合わせて使用するために適合する。抗原は、タンパク質に由来するペプチドもしくはポリペプチド、ならびに以下の:糖、タンパク質、ポリヌクレオチドもしくはオリゴヌクレオチド、自己抗原、アミロイドペプチドタンパク質、移植抗原、アレルゲン、または他の高分子成分のうちのいずれかのフラグメントを含んでいてよい。一部の例では、1つより多い抗原が抗原性組成物に含まれる。
【0121】
例えば、脊椎動物宿主内でのアレルゲンに対する応答を抑えるための、本発明のアジュバントの組み合わせを含有する所望のワクチンは、アレルゲンもしくはそのフラグメントを含有するワクチンを含む。そのようなアレルゲンの例は、これにより参照して本明細書にその全体が組み込まれる米国特許第5,830,877号および国際特許出願公開WO99/51259に記載されており、花粉、昆虫毒液、動物皮膚アカ、真菌胞子および薬物(例えば、ペニシリン)を含む。ワクチンは、アレルギー反応の公知の原因であるIgE抗体の産生を妨害する。また別の例では、脊椎動物宿主内でのアミロイド沈着を特徴とする疾患を予防もしくは治療するための、本発明のアジュバントの組み合わせを含有する望ましいワクチンは、アミロイドペプチドタンパク質(APP)の部分を含有するワクチンを含む。この疾患は、様々に、アルツハイマー病、アミロイドーシスもしくはアミロイド形成疾患と呼ばれている。そこで、本発明のワクチンには、本発明のアジュバントの組み合わせ+Aβペプチド、ならびにAβペプチドのフラグメントおよびAβペプチドに対する抗体もしくはそのフラグメントが含まれる。
【0122】
1)細胞機能を提示する抗原をダウンレギュレートする;および2)免疫抑制を管理するための併用療法の方法は当分野において周知である(例えば、Xiao et al. (2003) BioDrugs 17:103-11; Kuwana (2002) Hum. Immunol. 63:1156-63; Lu et al. (2002) Transplantation 73:S19-S22; Rifle et al. (2002) Transplantation 73:S1-S2; Mancini et al. (2004) Crit. Care. Nurs. Q. 27:61-64を参照)。
【0123】
したがって本発明のまた別の態様は、IL−17Fアンタゴニスト(例えば、IL−17FまたはIL−17R阻害性ポリヌクレオチド;可溶性IL−17Rポリペプチド(フラグメントおよび/またはその融合タンパク質を含む);阻害性の抗IL−17Fもしくは抗IL−17R抗体;および/または拮抗性低分子など)の投与を実施するためのキットに関する。1つの実施形態では、本キットは、医薬担体中で調製された1つまたは複数の結合剤と、および少なくとも1つの物質、例えば、1つまたは複数の個別医薬製剤中で適切に調製された治療薬と、を含む。
【0124】
本特許出願を通して言及した全参考文献、特許、および特許出願公開の全内容は、これにより参照して本明細書に組み込まれる。
(実施例)
以下の実施例は、本発明の例示的実施形態を提供しており、決して本発明を限定するものではない。当業者は、極めて多数の他の実施形態が本発明の範囲内に含まれることを理解するであろう。
【実施例1】
【0125】
材料および方法
実施例1.1:ヒト気道組織由来の一次細胞培養
ヒト気管支上皮(HBE)細胞は、以前に記載されたように(Devor et al. (2000) Am. J. Physiol. - Cell Physiol. 279:C461-79)、臓器移植レシピエント自身の肺、またはドナー肺の未使用切片から単離した。気道を周囲外膜組織から切除し、ペニシリン、ストレプトマイシン、およびアムホテリシンBを含有する氷温HEPES緩衝最小必須培地中に置いた。低温ハンクス平衡塩液(HBSS)を用いて複数回にわたり洗浄した後、軟骨性気道セグメントを縦方向に切開し、0.1% プロテアーゼXIV(Sigma社、ミズーリ州セントルイス)中において4℃で一晩インキュベートした。気道上皮細胞は、鉗子の鈍端を用いて上皮を穏やかにこすり取ることによって入手した。回収した細胞は、IV型ヒト胎盤コラーゲン(Sigma社)をコーティングした組織培養プレート上の気管支上皮増殖培地(BEGM;Clonetics社、カリフォルニア州サンディエゴ)およびケラチノサイト−血清無含有培地(K−SFM;Invitrogen社)の1:1混合液中でプレーティングした。これらの条件下で5〜7日後、細胞をトリプシン処理し、HBSS中で洗浄し、BEGM/K−SFM中で100%コンフルエンスでIV型ヒト胎盤コラーゲンを被覆したCorning/CoStar Transwellフィルタ上に播種した。24時間後、細胞をTranswellフィルタから頂端培地を除去することによって空気−液体界面に配置し、そして側底培地を、分化を促進するために2% UltroSer G(BioSepra社)を含有するDMEM/F12(Invitrogen社)と取り換えた。二相性培養条件下で、繊毛および粘膜分泌顆粒の形成を伴う粘膜繊毛上皮が観察された。これらの培養は、サイトカイン処置を開始する24時間前の血清に由来した。
【0126】
実施例1.2:サイトカインおよび抗体処置
IL−17AおよびIL−17F(R&D Systems社、ミネソタ州ミネアポリス)をF12/DMEM中に溶解させ、最終濃度が0、1、10もしくは100ng/mlとなるように一次HBE培養の頂端および/または基底表面の両方へ直接的に加えた。TNF−α(Biosource International社、カリフォルニア州カマリロ)は、1ng/mlの最終濃度で使用した。抗ヒトIL−17受容体モノクローナル抗体(R&D Systems社)がIL−17F生物活性に及ぼす阻害作用を試験するために、この抗体を、ED50の10倍を超える2μg/mlの最終濃度で培養に加え、そしてヒト皮膚線維芽細胞によるサイトカイン、ケモカインおよび/または成長因子分泌を決定した。組換えヒトIL−R:Fcキメラ(R&D Systems社)を1μg/mlで使用した。TNF受容体中和試験では、抗ヒトTNF−RI(Biosource International社)を10μg/mlの濃度で使用した、および/または組換えヒトTNF−RII:Fcキメラ(R&D Systems社)を0.5μg/mlの濃度で使用した。
【0127】
実施例1.3:DEFB4遺伝子発現のRNA単離/RT−PCR分析
RNAは、TriZOL LS試薬(Invitrogen社)を製造業者のプロトコールにしたがって使用して24時間のインキュベーション後に培養から抽出した。Taqman PCRは、ABI PRISM 7700配列検出システム(Applied Biosystems社)上での逆転写および増幅後にヒトβディフェンシン−4(DEFB104)遺伝子発現を試験するために実施した。DEFB104のための遺伝子特異的プライマーは、Applied Biosystems社から購入した。PCR反応は96ウエル光学反応プレート内で実施したが、各ウエルは、25μlのSYBR Green PCR Masterミックス、0.5μlの各プライマー(最終濃度:900nM)、19μlの水および5μlのcDNAサンプルとの50μlの反応混合液を含有していた。閾値サイクル(Ct)値は、1回の反応内で発生する蛍光が2標準偏差を超えるサイクル数を反映している。各サンプルの相対mRNA量は、ハウスキーピング遺伝子18sのCtと比較して、そのCtに基づいて計算した。結果は、比較発現レベル(2−ΔΔCT)として表示されている。リアルタイムPCRは、各サンプルについて3回ずつ実施し、平均値を計算した。この方法を少なくとも3回の独立実験において実施した。
【0128】
実施例1.4:Bio−PlexおよびELISAの測定
頂端および側底培地中のIL−lβ、IL−2、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−10、IL−12p70、IL−13、IL−17、G−CSF、GM−CSF、IFN−γ、MCP−1、MIP−1β、およびTNF−αを同時に定量するためのBio−Plexヒトサイトカインアッセイ(BIO−RAD社)を推奨方法にしたがって実施した。G−CSFおよびGRO−αは、別個のELISAキット(R&D Systems社)を製造業者の取扱説明書にしたがって用いて測定した。ヒトIL−17Fは、Wyeth社(マサチューセッツ州ケンブリッジ)によって提供された抗体を用いて測定した。
【0129】
実施例1.5:免疫組織化学検査
抗ヒトIL−17R抗体(Santa Cruz Biotechnology社、カリフォルニア州サンタクルーズ)を使用してヒト肺組織切片由来の呼吸器上皮細胞上でのIL−17F受容体の発現を特性解析した。染色は、二次抗体としてのCy−3コンジュゲート化ウサギ抗ヤギ抗体(Sigma社)および封入剤としてのfluoromount Gを用いて実施した。前染色を遮断するためにはウサギ血清を使用した。染色画像は、Olympus Provis蛍光顕微鏡に取り付けられたカメラを用いて記録し、画像はさらにOlympus Software(Olympus社、ニューヨーク州メルビル)を用いて分析した。
【0130】
気液界面上で増殖させた分極HBE細胞上でのTNF受容体I(TNF−RI)およびII(TNF−RII)の発現を特性解析するために、マウス抗ヒトTNF−RIおよびTNF−RIIモノクローナル抗体(R&D Systems社)を一次抗体として使用し、Alexa 488ヤギ抗体(Molecular Probes社、オレゴン州ユージーン)を二次抗体として使用した。DAPIを含むProlong Gold antifade(Molecular Probes社)を封入剤として使用した。画像はAxioplan 2汎用イメージング顕微鏡に取り付けられたカメラによって記録し、さらにSlidebook 4.0ソフトウエア(どちらもIntelligent Imaging Innovations社、コロラド州デンバー)およびMetamorphソフトウエア(Universal Imaging社、ペンシルベニア州ダウニングタウン)を用いて分析した。
【0131】
実施例1.6:ヒト被験者
緑膿菌(P.aeruginosa)がコロニー形成している嚢胞性線維症を有しており、入院を必要とするほど肺症状が悪化している成人患者(平均年齢22歳)を本試験に登録し、入院第1日、ならびに抗生物質および強化呼吸療法の開始10および20日後に、喀痰中の炎症のバイオマーカーを測定した。喀痰サンプルは、Sputolysin(Behring Diagnostics社、ニュージャージー州サマービル)を用いて処理した。手短には、喀痰1mgに付き1mlの10% Sputolysinを加え、サンプルを強力に攪拌しながら37℃で5分間インキュベートし、注入ピペットを用いて強力に混合した。次にサンプルを4℃で5分間にわたり2,000rpmで遠心分離し、上清をBio−PlexおよびELISAによってアッセイした。
【0132】
実施例1.7:ウェスタンブロット分析
処理した喀痰由来のウェスタンブロットサンプルは、SDS−PAGE上で分離した(1レーンに付き12.4μgのタンパク質)。ゲル上で分離したタンパク質は、140mAで1時間かけてImmobilon−P膜(Millipore社、マサチューセッツ州ベッドフォード)へ移した。この膜は、5% BSAを含有するPBSを用いて4℃で一晩ブロッキングした。ブロットはウサギ抗ヒトp19抗体を用いて室温で1時間かけて染色し、二次アルカリホスファターゼコンジュゲート化ヤギ抗ウサギIgG(BIO−RAD社)およびBCEP/NBT試薬(BIO−RAD Laboratories社、カリフォルニア州ハーキュリーズ)を用いたインキュベーションによって発現させた。
【0133】
実施例1.8:統計的分析
データは、StatView統計的ソフトウエア(Brainpower社、カリフォルニア州カラバサス)を用いて分析した。データが正規分布している群間の比較はスチューデントのt検定を用いて実施し、複数の群間もしくはノンパラメトリックデータ間の比較は分散分析を用いて実施した。シェフェの検定を事後検定として使用した。順序比較を行なうためには、マン・ホイットニー検定もしくはウィルコクソンの対応のあるサンプル検定を使用した。有意性はp値<0.05で容認された。
【実施例2】
【0134】
IL−17Fはヒト気管支上皮細胞によるG−CSF、GRO−αおよびMCP−1発現をアップレギュレートする
実施例1.1に記載したBio−PlexおよびELISAアッセイを用いて、頂端および側底培地の両方に対して、気液界面で増殖させたヒト一次気管支上皮細胞中で(実施例1参照)IL−17AおよびIL−17Fによって調節される可能性があるサイトカイン、ケモカインおよび/または成長因子についてスクリーニングした。IL−17Aによって誘導されると既に報告された(データは示していない)2つの因子であるIL−8およびIL−6に加えて、G−CSF、GRO−αおよびMCP−1分泌における有意な誘導は、IL−17AおよびIL−17Fで処置された一次HBE細胞中において24時間後に検出された(表2)。これらのデータは、相違する気道ドナーから分離された成長因子の絶対量における変動性のために、誘導倍率としてグラフ化されている。これらの作用は、用量依存性であり(図1A;表2)、最高作用は100ng/mlの濃度で観察された。IL−17Aは、24時間後にG−CSF、GRO−αおよびMCP−1を誘導することに関して重量/重量ベースでIL−17Fより強力であった。10ng/mlのIL−17AおよびIL−17Fを用いて実施した時間経過は、IL−17AおよびIL−17FがG−CSF、GRO−αおよびMCP−1に及ぼす作用が時間依存性であり(図1B)、最高作用は24時間後に観察されることを示した。これらの動的試験に基づいて、以下の実験の大多数は、10ng/mlのIL−17AもしくはIL−17Fおよび24時間のインキュベーション時間を用いて実施された。
【0135】
【表2】

【実施例3】
【0136】
IL−17FはG−CSFおよびGRO−α分泌を誘導するためにTNF−αと相乗作用性である
IL−17AとTNF−αとの相乗作用は報告されているので、IL−17F(10ng/ml)およびTNF−α(1ng/ml)の併用が一次HBE細胞によるG−CSFおよびGRO−α分泌をアップレギュレートする作用を決定した。サイトカインの最適濃度は、以前の実験で決定されていた(データは示していない)。HBE細胞は、IL−17FをTNF−αと24時間にわたり結合させた場合に、G−CSFおよびGRO−α分泌における相乗作用を示した(図2Aおよび2B)。この相乗作用は、刺激性サイトカイン混合物を抗IL−17R mAbとプレインキュベートすることによって阻害されたが、可溶性IL−17R:Fcキメラタンパク質もしくはアイソタイプがマッチしたコントロールAbを用いた場合は阻害されなかった(アイソタイプのデータは示していない)。しかし、抗IL−17R mAbおよび可溶性IL−17R:Fcタンパク質はどちらも、G−CSFにおけるIL−17A誘導性増加を阻害することに有効であった(図2C)。これらのデータは、IL−17AおよびIL−17F誘導性G−CSF応答のどちらにとってもIL−17Rが極めて重要であることを示唆している。
【実施例4】
【0137】
IL−17AおよびIL−17Fによって誘導されたGRO−αおよびG−CSF分泌は抗IL−17受容体Abによって減少する
IL−17AおよびIL−17Fに応答したGRO−αおよびG−CSF分泌の分極化を決定するために、一次HBE細胞をIL−17AおよびIL−17Fで24時間刺激し、そしてGRO−αおよびG−CSFを頂端もしくは側底液中でアッセイした。GRO−αおよびG−CSFはどちらも頂端側および側底側の両方で分泌され、GRO−αはG−CSFに比較して側底側分泌においてより大きな誘導を示した(図3)。抗IL−17R Abとのプレインキュベーションは、頂端および側底培地においてIL−17AおよびIL−17Fの両方によって媒介されるGRO−αおよびG−CSF分泌の誘導を有意に阻止した(図3)。これらの結果は、HBE細胞上でIL−17AもしくはIL−17F活性のどちらかがG−CSFおよびGRO−α産生を誘導するためにはIL−17Rが必要とされるという意見を支持している。
【実施例5】
【0138】
IL−17AおよびIL−17FはDEFB104の発現をアップレギュレートする
IL−17AおよびIL−17F(どちらも10ng/ml)をHBE培養に加え、24時間後にRNAを抽出し、ヒトβディフェンシン−4mRNA発現(DEFB104遺伝子)をリアルタイムRT−PCRによって分析し、18sのリボソームRNAへ標準化した。DEFB104は用量依存方法でIL−17AおよびIL−17Fの両方によってアップレギュレートされたが(図4A)、IL−17Aは24時間にわたる10ng/mlでIL−17Fより高い誘導倍率を有した(ΔΔCT:各々、−3.34±0.44SEM対−2.23±0.31SEM)。2μg/mlの抗IL−17R抗体とのプレインキュベーションは100ng/mlのIL−17Aおよび100ng/mlのIL−17Fの作用を部分的に、各々、62.5%および77.6%を阻害したが、これはIL−17受容体シグナル伝達が両方のサイトカインによるDEFB104のアップレギュレーションのためにも必要とされることを指示している(図4B)。最後に、DEFB104誘導に対するIL−17A(1ng/ml)およびIL−17F(10ng/ml)とTNF−α(1mg/ml)との組み合わせの作用を評価した。IL−17AおよびTNF−α、またはIL−17FおよびTNF−αのいずれかの組み合わせを用いると付加的作用が見いだされた(図4C)。IL−17AおよびIL−17F両方の組み合わせもまたDEFB104誘導に付加的作用を生成した(図4C)。
【実施例6】
【0139】
IL−17受容体は、呼吸器上皮細胞の側底面上で機能的に発現する
IL−17受容体のための免疫組織化学的染色をヒト肺標本の冷凍切片について実施した。非特異的染色を示さなかったコントロール切片とは対照的に、IL−17Rは呼吸器上皮細胞中ならびに肺実質細胞中で発現して、主として呼吸器上皮細胞の側底面に局在することが見いだされた(データは示していない)。この免疫組織化学的所見を確証するために、HBE細胞を側底培地もしくは頂端培地中でIL−17AもしくはIL−17Fと一緒に24時間インキュベートする実験を設計した。G−CSFおよびGRO−αのための馴化側底培地をアッセイし、どちらの成長因子もIL−17AおよびIL−17Fを側底培地に適用した場合にアップレギュレートされることが見いだされた。しかし、IL−17AもしくはIL−17Fを頂端へ適用した場合にはGRO−αもしくはG−CSFの誘導は観察されなかった(図5)。これらをまとめると、これらのデータは、IL−17F生物活性がHBE細胞の側底側でIL−17Rを通してのシグナル伝達によって発生することを示唆している。
【実施例7】
【0140】
TNF受容体IおよびIIは呼吸器上皮細胞の側底面上で構造的および機能的に発現する
TNF受容体I(TNF−RI)およびII(TNF−RII)は、抗ヒトTNF−RIおよび抗ヒトTNF−RIIモノクローナル抗体を用いてTranswell膜上で増殖させた分極一次HBE細胞上で染色した。両方の受容体がHBE細胞中で発現することが見いだされた(データは示していない)。陰性コントロールとして、二次抗体だけを用いてフィルタを染色すると、非特異的染色を示さなかった(データは示していない)。さらにその上、ZX軸の再構築は、TNF−RIおよびTNF−RIIがHBE細胞の外側膜の、密着帯の下方に局在することを証明した(データは示していない)。
【0141】
この免疫組織化学的所見を確証するために、HBE細胞を側底培地もしくは頂端培地中でIL−17Fおよび/またはTNF−αと一緒に24時間インキュベートする実験を設計した。側底馴化培地をアッセイした。G−CSFは、IL−17Fおよび/またはTNF−αを側底培地に適用した場合にアップレギュレートされたが、IL−17Fおよび/またはTNF−αを頂端に適用してもG−CSFの誘導は観察されなかった(図6A)。これらをまとめると、これらのデータは、IL−17FおよびTNF−αの間の相乗作用を導くシグナル伝達がHBE細胞中において側底で発生することを示唆している。
【0142】
IL−17FおよびTNF−αの間の相乗作用のために必要とされるシグナル伝達にとってのTNF受容体IおよびIIの重要性を解明するために、HBE細胞を抗ヒトTNF−RIおよび組換えヒトTNF−RII:Fcキメラの一方もしくは両方と一緒にプレインキュベートした。IL−17FおよびTNF−αを結合した後にG−CSF分泌へ及ぼす相乗作用は、抗ヒトTNF−RIおよび組換えTNF−RII:Fcキメラによって遮断された(図6B)。予想外にも、抗ヒトTNF−RIもしくはTNF−RII:Fcキメラのどちらかの存在下でのIL−17FおよびTNF−αの併用に応答してHBE細胞によって分泌されるG−CSFのレベルは、IL−17F刺激に応答してHBE細胞によって分泌されるG−CSFのレベルより低かったが(図6B)、これはIL−17FがHBE培養へ単独で適用された場合でさえ、それがこれらの細胞によって持続性で分泌されるTNF−αと相互作用することによって相乗作用を有することを示唆している。TNF RII:Fcキメラとのインキュベーションだけが、HBE細胞によるG−CSF分泌をIL−17A刺激に応答してHBE細胞によって分泌されるG−CSFのレベルにほぼ同等のレベルまで減少させた(図6C)。
【実施例8】
【0143】
IL−17AおよびIL−17Fレベルは肺症状が悪化している嚢胞性線維症患者において増加する
嚢胞性線維症(CF)は、持続性気管支内感染および好中球性肺炎症(Karp et al. (2004) Nat. Immunol. 5:388-92)ならびに高喀痰中CXCL8レベル(Smountas et al. (2004) Clin. Biochem 37:1031-36; Sagel et al. (2001), Am. J. Respir. Crit. Care Med. 164:1425-31)を特徴とする肺疾患である。Ye and colleagues ((2001) J. Exp. Med. 194:519-527) は以前に、IL−17Rシグナル伝達がグラム陰性菌性感染に応答したマウス肺中でのCXCL2発現のために極めて重要であることを証明しており、IL−17AおよびIL−17Fは肺症状が悪化しているCF患者の喀痰中でアップレギュレートされるであろうと仮説が立てられた。これを支持して、予備試験は、喘息もしくは胃食道逆流疾患に起因する慢性の咳を伴うコントロールに比較して、進行中の肺症状の悪化のための気管支鏡検査を受けているCF患者における高いIL−17Aレベルを証明した(データは示していない)。これらのサンプルは、臨床的に気管支鏡検査を実施する決定のために選択の偏りを受ける可能性があるので、肺症状が悪化している(入院および静脈内抗生物質投与を必要とする)8例の成人CF患者(平均年齢:22歳)由来の喀痰サンプル中のIL−17A、IL−17Fおよび近位メディエータIL−23(p19)を調査対象に選択した。入院第1日に、IL−17AおよびIL−17Fの増加したレベルは、CFではないと診断された4例の被験者から採取された喀痰サンプルと比較した場合に容易に検出できた(IL−17Aについては59.58pg/ml±5.22(S.E.M)対4.17±2.13;およびIL−17Fについては84.67±10.87対20.1±3.25)。喀痰は、抗生物質治療中に連続的に採取して分析した。IL−17AおよびIL−17F濃度は第20日までに劇的に減少し(図7A)、CFではないと診断された被験者に類似するレベルに到達した。これらの患者の喀痰中で1パネルの他の18種のサイトカインはLuminexサイトカインビーズを用いて測定したところ、IL−8、IL−6、G−CSF、GRO−α、MCP−1、MIP−1β、TNF−α、GM−CSFおよびIL−1βもまた入院第1日に増加していたが、第20日までに印象的に減少して(例えば、図7B)、IL−17AおよびIL−17Fについて所見されるパターンに類似する総合パターンを示すことが見いだされた。類似の発現パターンは、サイトカイン/ケモカイン濃度が全タンパク質含量について補正されてもされなくても所見された。最後に、大部分がマクロファージおよび樹状細胞の生成物であるIL−23はIL−17AおよびIL−17Fの近位レギュレータであるので、IL−23 p19タンパク質の存在を検出するために、喀痰サンプル[抗生物質処置の直前(入院第1日)および構成物質処置の20日後に肺症状悪化に苦しむ3例の嚢胞性線維症患者から入手した]のウェスタンブロット分析を実施した。IL−23は肺症状が悪化しているCF患者全例において検出された;患者3例中2例では、IL−23のレベルは入院第1日の方が高く、第20日までに減少した(データは示していない)。
【実施例9】
【0144】
考察
IL−17AもしくはIL−17Fは、感染性(Ye et al. (2001) Am. J. Respir. Cell Mol. Biol. 25:335-40)および抗原性刺激(Hellings et al. (2003) Am. J. Respir. Cell Mol. Biol. 28:42-50)の両方に応答して活性化されたT細胞の生成物(Moseley (2003) Cytokine Growth Factor Rev. 14:155-74)である。グラム陰性細菌のリポポリサッカリドは、TLR4依存性およびIL−23依存性経路を通してIL−17AおよびIL−17Fを誘導すると思われる(Happel et al. (2003) J. Immunol.170:4432-36; Aggarwal et al. (2003) J. Biol. Chem. 278:1910-14; Linden and Adachi (2002) Allergy 57:769-75)。肺におけるIL−17AもしくはIL−17Fの過剰発現は、CXCケモカインおよび好中球動員の誘導を生じさせる(Ye et al. (2001) Am. J. Respir. Cell Mol. Biol. 25:335-40; Hurst et al. (2002) J. Immunol. 169:443-53)。遺伝子ターゲティングを通してのIL−17Rシグナル伝達の欠損症は、顆粒球生成および肺好中球動員の両方における欠損を伴うグラム陰性細菌性肺感染に対する増加した感受性を生じさせる(Ye et al. (2001) J. Exp. Med. 194:519-28)。IL−17Aの阻害は、リポポリサッカリド誘導性肺好中球動員を減少させることもまた報告されている(Laan et al. (1999) J. Immunol. 162:2347-52; Ferretti et al. (2003) J. Immunol. 170:2106-12.)。IL−17Rノックアウトマウスにおける顆粒球生成の欠損には、G−CSF遊離における90%を超える減少が結び付いている(Ye et al. (2001) J. Exp. Med. 194:519-28)。さらに、IL−17Aの全身性過剰発現は、一部にはG−CSFに依存する顆粒球生成における顕著な誘導を生じさせる(Schwarzenberger et al. (1998) J. Immunol. 161:6383-89; Schwarzenberger et al. (2000) J. Immunol. 164:4783-89)。
【0145】
肺内でのG−CSFおよびCXCケモカインGRO−αを調節する際のIL−17AもしくはIL−17Fの役割をより明確に規定するために、肺組織中でのIL−17受容体発現を試験したところ、基底呼吸器上皮細胞中でIL−17Rの有意な発現が見いだされた。分極HBE細胞とIL−17AおよびIL−17F両方とのインキュベーションは、G−CSFおよびGRO−αに加えてIL−8およびIL−6の誘導(データは示していない)を含む、Bio−Plexによって測定したサイトカイン応答と類似のプロファイルを生じさせた。IL−17FはTNF−αと相乗作用してヒト肺から単離された気管支上皮細胞によるG−CSFおよびGRO−αの産生をさらに誘導することもまた証明された。これらの所見とは対照的に、Numasaki and coworkers ((2004) Immunol. Lett. 95:97-104)は、IL−17FがG−CSFのTNF−α誘導性分泌に対する阻害作用を有することを報告した。しかし、Numasakiの研究は、この応答が相違する可能性がある肺微小血管内皮細胞中で実施された。
【0146】
IL−17AおよびIL−17FはどちらもGRO−αおよびG−CSF分泌を調節する際にIL−17受容体を含むと思われるが、これはIL−17Rに対して特異的なモノクローナル抗体はIL−17AおよびIL−17Fに応答したこれらのサイトカインの遊離を有意に弱めるからである。しかし、この受容体を用いた場合の低いリガンド効率のために(Hymowitz et al. (2001) EMBO J. 20:5332-41)、IL−17Fに関係する共受容体の可能性を排除することはできない(Kolls and Linden (2004) Immunity 21 :467-76)。IL−17Fは最近、インビトロでIL−17RCへ結合することが証明されている(Kuestner et al. (2005) Keystone Symposia: Cytokines, Disease, and Therapeutic Intervention, 49(Abstract))。これらのデータを支持して、可溶性IL−17RはHBE細胞中のIL−17A生物活性を阻害することに有効であったが、IL−17Fには有効ではなかった。これらのデータは、IL−17Fの結合が細胞膜受容体については相違すること、またはIL−17F応答のためにはIL−17Rを含む共受容体複合体が必要とされることを示唆している。また別の可能性は、mAbのIL−17RCに対する交差反応性である;しかしこれは、IL−17RCのIL−17Rへの相同性が15%に過ぎないのでありそうもない(Kolls (2004) Immunity 21 :467-76))。さらに、IL−17A、IL−17F、およびTNF−αの生物活性は、リガンドが側底へ適用された場合に最大であったが、これはIL−17A、IL−17F、およびTNF−αシグナル伝達がおそらく気道上皮細胞の側底面を通して発生することを示唆している。この受容体局在は目的論的意味をなすが、それはIL−17AおよびIL−17Fの顕著な潜在的起源は、粘膜下間隙内に存在できる活性化T細胞であるためである(Kolls and Linden (2004) Immunity 21 :467-76)。実際に、Langrish and colleaguesは最近、IL−17AおよびIL−17FならびにTNF−αを共発現するThIL−17細胞の集団を規定した(Langrish et al. (2005) J. Exp. Med. 201(2):233-40)。そこで、ThIL−17細胞は、炎症応答を媒介するヒト気管支上皮細胞と相互作用する極めて重要な細胞集団を表す可能性がある。可溶性TNF−αを用いて、TNF−RIがIL−17AおよびIL−17Fとの相乗作用のために極めて重要であることが証明された。しかし、HBE細胞はTNF−RIIも発現するので、これらの細胞は、優先的に結合してTNF−RIIを通してシグナル伝達するThIL−17上で発現した細胞表面TNFに応答することができる(Grell et al. (1995) Cell 83:793-802)。注目すべきであるのは、HBE細胞中でのG−CSFおよびGRO−α応答(図7を参照)を引き出すために使用された濃度は、喀痰中で検出された濃度より約10〜100倍高いという事実である。これはおそらく、肺中の局所組織濃度が喀痰(プロテアーゼが富裕である)中より高い可能性があるという事実、またはIL−17AおよびIL−17FはTNF−αなどの相乗作用性サイトカインがpg/ml濃度でシグナル伝達することを必要とする可能性があるという事実(Kolls (2004) Immunity 21 :467-76)を反映している。TNF−αとIL−17AおよびIL−17Fとの相乗作用の機序は完全には解明されていないが、1つの機序は、その後の遺伝子転写を駆動する(Shen et al. (2005) J. Leukoc. Biol. 77:388-99)、転写因子、例えばC/EBPδの相乗作用性誘導を含む可能性がある。
【0147】
IL−17Aは、関節リウマチ(Lubberts (2003) Curr. Opin. Investig. Drugs 4:572-77)、多発性硬化症(Lock et al. Nat. Med. 8:500-08)、および炎症性腸疾患(Fujino et al. (2003) Gut 52:65-70)を含む多数の炎症性自己免疫疾患においてアップレギュレートされると報告されている。最近、T細胞由来IL−17AおよびIL−17Fは、マクロファージおよび樹状細胞上のTLR4ならびにその後のこれらの細胞によるIL−23産生によって調節されることが証明されている。さらに、IL−17AおよびIL−17Fは類似の染色体位置を有しており、おそらく遺伝子重複事象から発生した。これらのデータ、IL−17AおよびIL−17Fが肺好中球増加症を媒介する能力(Laan et al. (1999) J. Immunol. 162:2347-52)、およびCFにおける慢性炎症が主として好中球性であるという事実に基づくと、IL−17AおよびIL−17Fは、慢性グラム陰性細菌感染、例えば気管支拡張症もしくは嚢胞性線維症(CF)などの状況における気道炎症において何らかの役割を果たす可能性が高い。
【0148】
このような目的で、IL−17AおよびIL−17Fはどちらも肺症状が悪化している成人CF患者の喀痰中で増加することが見いだされた。さらに、IL−17AおよびIL−17Fレベルの上昇には以前に同定された炎症メディエータ、例えばIL−8(Sagel et al. (2001) Am. J. Respir. Crit. Care Med. 164:1425-31)およびG−CSF(Schuster et al. (1995) Eur. Arch. Otorhinolaryngol. 252(suppl. 1):S59-S60)が結び付いており、これはこれらのIL−17ファミリーメンバーがこれらの患者の気道内への進行中の好中球動員において何らかの役割を果たす可能性があることを示唆している。さらに、IL−17AおよびIL−17Fは、CFを有する患者におけるCXCケモカインおよびG−CSF遊離を調節できると仮定されている。さらに、IL−23p19は濃縮喀痰中において100ng/mlに近いレベルで検出されたが、そのレベルはIL−17のヒトT細胞産生を生じさせる範囲内に明確に含まれている(Eijnden et al. (2005) Eur. J. Immunol. 35:469-75)。
【0149】
これらのデータは、臨床サンプル中のIL−17Fを測定した最初のデータであると考えられる。慢性炎症は嚢胞性線維症の状況における肺機能低下にとって極めて重要であると考えられるので、本明細書に含めたデータは、IL−17AおよびIL−17Fが、好中球媒介性炎症を拮抗するための極めて優れた治療薬を表す2つのIL−17ファミリーメンバーであることを示唆している。さらに、IL−17Rシグナル伝達に拮抗する戦略は、IL−17AおよびIL−17Fの作用をどちらも遮断する可能性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0150】
【図1】(左のパネル)1ng/ml、10ng/ml、もしくは100ng/ml(x軸)のIL−17A(■)またはIL−17F(□)いずれかを用いて、24時間にわたり処置された一次ヒト気管支上皮(HBE)細胞から採取した側底培地中のGRO−α、G−CSFおよびMCP−1タンパク質レベルの濃度(コントロール培地と比較した倍率変化;y軸)を図1に示した。(右のパネル)4、8、16もしくは24時間にわたり(x軸)、10ng/mlのIL−17A(■)またはIL−17F(□)を用いて刺激されたHBE細胞から採取された側底培地中のGRO−α、G−CSF、およびMCP−1の濃度(pg/ml;y軸)を図1に示した。結果は、代表的な1回の実験からの3例のサンプルの平均値±SEMとして表示した。
【図2】A)以下の4つの条件(x軸):IL−17F(10ng/ml)、TNF−α(1ng/ml)、IL−17F(10ng/ml)+TNF−α(1ng/ml)、もしくは抗IL−17R mAbとともにプレインキュベートしたIL−17F+TNF−αのうちの1つを用いて処置した一次HBE細胞から採取した側底培地中のGRO−α、B)以下の4つの条件(x軸):IL−17F(10ng/ml)、TNF−α(1ng/ml)、IL−17F(10ng/ml)+TNF−α(1ng/ml)、IL−17R−Fc(1μg/ml)とともにプレインキュベートしたIL−17F+TNF−α、もしくは抗IL−17R mAbとともにプレインキュベートしたIL−17F+TNF−αのうちの1つを用いて処置した一次HBE細胞から採取した側底培地中のG−CSF、またはC)以下の4つの条件(x軸):IL−17A(10ng/ml)、TNF−α(1ng/ml)、IL−17A(10ng/ml)+TNF−α(1ng/ml)、IL−17R−Fc(1μg/ml)とともにプレインキュベートしたIL−17A+TNF−α、もしくは抗IL−17R mAbとともにプレインキュベートしたIL−17A+IL−17F+TNF−αのうちの1つを用いて処置した一次HBE細胞から採取した側底培地中のG−CSF、の濃度(コントロール培地と比較した倍率変化;y軸)を図2に示した。結果は、3回の個別実験からの平均値±SEMとして表示した(*はANOVAによるp<0.05を意味する)。
【図3】10ng/mlのIL−17AもしくはIL−17Fのいずれかを用いて24時間のインキュベーション前の30分間にわたり2μg/mlのIL−17受容体抗体(抗IL−17R)を用いて前処置した(各グラフの第2および第4の棒)、もしくは未処置(第1および第3の棒)のいずれかであった一次HBE細胞から採取した頂端もしくは側底培地中のA)GRO−αおよびB)G−CSFの濃度(コントロール培地と比較した倍率変化;y軸)を図3に示した。結果は、3回の個別実験からの平均値±SEMとして表示した(*はANOVAによるp<0.05を意味する)。
【図4】リアルタイムPCRによって分析した、18sの発現レベルに相対的に定量して、コントロールを用いて標準化した、そしてA)24時間にわたり1ng/ml、10ng/ml、もしくは100ng/ml(x軸)のIL−17A(■)もしくはIL−17F(□)を用いて刺激した、B)培地へIL−17AもしくはIL−17Fを添加する前に抗IL−17R抗体を用いてプレインキュベートした、またはC)IL−17A単独、IL−17F単独、TNF−α単独、もしくはTNF−α+IL−17AもしくはIL−17Fのいずれかを用いてインキュベートした一次HBE細胞中におけるDEFB104の比較発現レベル(y軸)を図4に示した。結果は、3回の個別実験からの平均値±SEMとして表示した(*はANOVAによるp<0.05を意味する)。
【図5】側底面もしくは頂端面に10ng/mlのIL−17AもしくはIL−17Fのいずれかを添加した後の一次HBE細胞によるG−CSF(■)およびGRO−α(□)濃度(コントロールと比較した倍率変化;y軸)を図5に示した。結果は、代表的な1回の実験からの3例のサンプルの平均値±SEMとして表示した(*は、ANOVAによるp<0.05を意味する)。
【図6】A)24時間にわたり10ng/mlのIL−17Fおよび/または10ng/mlのTNF−α(x軸)を用いて処置した一次HBE細胞から採取した頂端もしくは側底培地中、B)10ng/mlのIL−17Fおよび/または10ng/mlのTNF−αのいずれかとともに24時間にわたりインキュベーションする2時間前に坑ヒトTNF−RIおよび/またはTNF−RII:Fcキメラ(0.5μg/ml)を用いて前処置した一次HBE細胞から採取した側底培地中、またはC)10ng/mlのIL−17Aおよび/または10ng/mlのTNF−αのいずれかを用いた24時間のインキュベーションの2時間前に抗ヒト TNF−RIおよび/またはTNF−RII:Fcキメラ(0.5μg/ml)を用いて前処置した一次HBE細胞から採取した側底培地中におけるG−CSFの濃度(コントロール培地と比較した倍率変化;y軸)を図6に示す。結果は、3回の個別実験からの平均値±SEMとして表示した(*はANOVAによるp<0.05を意味する)。
【図7】処置前(PRE−処置)、抗生物質処置(ATB)10日後、またはATB20日後に、肺症状の悪化に苦しんでいる、嚢胞性線維症を有する患者から入手した喀痰サンプル中におけるA)IL−17AおよびIL−17F、ならびにB)(上方パネル)IL−8、および(下方パネル)IL−6、GM−CSF、G−CSF、MCP−1、MIP−1β、IL−1β、およびTNF−αの濃度(pg/ml;y軸)を図7に示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者におけるIL−17Fに関連する障害を診断する方法であって、
前記被験者からのサンプル中でIL−17F遺伝子産物の試験量を検出する工程と、
前記試験量をコントロールサンプル中のIL−17F遺伝子産物の正常量と比較する工程とを含み、
これにより、前記正常量を有意に超える試験量がIL−17Fに関連する障害の診断において陽性の指標を提供する、方法。
【請求項2】
IL−17Fに関連する障害は気道炎症である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
被験者は、嚢胞性線維症であると診断された患者である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
被験者は、肺症状が悪化している、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
肺症状の悪化は感染因子に起因する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
IL−17F遺伝子産物はIL−17Fタンパク質である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
IL−17Fタンパク質は、抗IL−17F抗体を用いて検出される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
IL−17FのIL−17Rへの結合を阻害できる化合物についてスクリーニングする方法であって:
IL−17FおよびIL−17Rを含有するサンプルを化合物と接触させる工程と、
前記試験化合物と接触させたサンプル中でのIL−17FのIL−17Rへの結合が前記化合物と接触していないサンプル中でのIL−17FのIL−17Rへの結合に比較して減少しているかどうかを決定する工程とを含み、
これにより前記化合物と接触させたサンプル中でのIL−17FのIL−17Rへの結合における減少が前記化合物をIL−17FのIL−17Rへの結合を阻害する化合物であると同定する、方法。
【請求項9】
IL−17Fに関連する障害の危険性がある、またはIL−17Fに関連する障害を有すると診断された被験者を治療する方法であって、前記被験者に治療有効量のIL−17Fアンタゴニストを投与する工程を含む、方法。
【請求項10】
IL−17Fに関連する障害は気道炎症である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
被験者は、嚢胞性線維症であると診断された患者である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
被験者は、肺症状が悪化している、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
肺症状の悪化は感染因子に起因する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
IL−17Fアンタゴニストは、阻害性の抗IL−17F抗体、阻害性の抗IL−17R抗体、可溶性IL−17R、IL−17Rを含有する融合タンパク質、IL−17RのIL−17F結合フラグメントを含有する融合タンパク質、拮抗性低分子、アンチセンスIL−17F核酸分子、アンチセンスIL−17R核酸分子、siRNA IL−17F核酸分子、およびsiRNA IL−17R核酸分子からなる群より選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
被験者に治療有効量の少なくとも1つの追加の治療薬を投与する工程をさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
少なくとも1つの追加の治療薬は、サイトカイン阻害剤、成長因子阻害剤、免疫抑制剤、抗炎症剤、代謝阻害剤、酵素阻害剤、細胞毒性剤、および細胞分裂阻害剤からなる群より選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
少なくとも1つの追加の治療薬は、TNFアンタゴニスト、抗TNF因子、IL−12アンタゴニスト、IL−15アンタゴニスト、IL−17アンタゴニスト、IL−18アンタゴニスト、IL−22アンタゴニスト、T細胞枯渇因子、B細胞枯渇因子、シクロスポリン、FK−506、CCI−779、エタネルセプト、インフリキシマブ、リツキシマブ、アダリムマブ、プレドニゾロン、アザチオプリン、金、スルファサラジン、クロロキン、ヒドロキシクロロキン、ミノサイクリン、アナキンラ、アバタセプト、メトトレキセート、レフルノミド、ラパマイシン、ラパマイシンアナログ、Cox−2阻害剤、cPLA2阻害剤、NSAID、p38阻害剤、B7.1、B7.2、ICOSL、ICOSおよび/またはCD28のアンタゴニスト、ならびにCTLA4のアゴニストからなる群より選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
IL−17Fアンタゴニストおよび医薬上許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項19】
IL−17Fアンタゴニストは、阻害性の抗IL−17F抗体、阻害性の抗IL−17R抗体、可溶性IL−17R、IL−17Rを含有する融合タンパク質、IL−17RのIL−17F結合フラグメントを含有する融合タンパク質、拮抗性低分子、アンチセンスIL−17F核酸分子、アンチセンスIL−17R核酸分子、siRNA IL−17F核酸分子、およびsiRNA IL−17R核酸分子からなる群より選択される、請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項20】
IL−17Fアンタゴニストおよび細菌性抗原を含むワクチンアジュバント。
【請求項21】
IL−17Fアンタゴニストは、阻害性の抗IL−17F抗体、阻害性の抗IL−17R抗体、可溶性IL−17R、IL−17Rを含有する融合タンパク質、IL−17RのIL−17F結合フラグメントを含有する融合タンパク質、拮抗性低分子、アンチセンスIL−17F核酸分子、アンチセンスIL−17R核酸分子、siRNA IL−17F核酸分子、およびsiRNA IL−17R核酸分子からなる群より選択される、請求項20に記載のワクチンアジュバント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2008−532493(P2008−532493A)
【公表日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−555353(P2007−555353)
【出願日】平成18年2月14日(2006.2.14)
【国際出願番号】PCT/US2006/005273
【国際公開番号】WO2006/088925
【国際公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【出願人】(591011502)ワイス (573)
【氏名又は名称原語表記】Wyeth
【出願人】(501102988)ユニバーシティ オブ ピッツバーグ オブ ザ コモンウェルス システム オブ ハイヤー エデュケイション (24)
【Fターム(参考)】