説明

ITQ−13による芳香族化合物の転化

芳香族化合物の転化に適した原料を、転化条件の下でかつITQ−13を含む触媒の存在の下で接触処理することによる、芳香族化合物の転化プロセスが提供される。この転化プロセスの例として、芳香族化合物(キシレン)原料の異性化、トルエンからベンゼン及びキシレンを生成する不均化、芳香族化合物のアルキル化及びアルキル交換、軽質パラフィン及び軽質オレフィンの芳香族化合物への転化、ナフサの芳香族化合物への転化、及び、アルコールの芳香族化合物への転化が含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ITQ−13を含む触媒の存在の下における芳香族化合物の転化に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの芳香族系炭化水素は重要な商業製品である。例えば、パラキシレンはポリエステル繊維の生産に有用なきわめて価値ある商業製品である。
【0003】
芳香族化合物は、非芳香族化合物を芳香族化合物に転化することによって生成することができる。このような転化の一例は、芳香族化合物を生成するための脂肪族系炭化水素の脱水素環化−オリゴマー化である。このプロセスは、一般的に、ZSM−5のような中間孔径のゼオライト触媒を使用する。非芳香族化合物を芳香族化合物に転化するもう1つのプロセスは、C以上の炭素数の反応物質、主としてパラフィン及びナフテンを芳香族化合物に転化する改質に関するものである。このプロセスは、通常、ゼオライトL、Y及びXのような一官能基の大孔径ゼオライトか、あるいは、ハロゲンで酸性化された金属酸化物担体を含むことができる二官能基の触媒を使用する。
【0004】
また、有用度の低い芳香族化合物を有用度のより高い芳香族化合物に転化することもできる。このプロセスの例としては、トルエンからキシレンを生成するメチル化、トルエンからキシレン及びベンゼンを生成する不均化、及び、キシレン原料からパラキシレン富化した製品を製造する異性化がある。これらのプロセスは、一般的に、ZSM−5のような中間孔径のゼオライトを含む触媒を用いる。
【0005】
同時係属中の米国特許出願第09/866,907号(2001年5月29日出願)で現米国特許第6,471,941号において、多孔性の合成結晶材料ITQ−13がすでに提案されている。これは独自の3次元チャネル系を有する単結晶相の材料で、そのチャネル系は、四面体に配位された原子の10員環によって規定される2つのチャネル群と四面体配位原子の9員環による第3のチャネル群という3組のチャネル群によって構成されている。また、同時係属中の米国特許出願第60/362,100号(2002年3月5日出願)で国際公開第03/076550号においては、ITQ−13を含む触媒を用いて炭化水素をクラッキングするプロセスが述べられている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、3次元のチャネル系を有する多孔性の合成結晶材料を含む触媒の存在の下で、芳香族化合物の転化に適した原料を転化条件において接触処理することによって、芳香族化合物を転化するためのプロセスを目標としている。この多孔性合成結晶材料の3次元のチャネル系は、それぞれが四面体に配位された原子の10員環によって規定される全体として平行な第1組のチャネル群と、同様に四面体配位原子の10員環によって規定されかつ第1組のチャネル群と交差する全体として平行な第2組のチャネル群と、前記第1組及び前記第2組のチャネル群と交差するチャネル群で、それぞれが四面体配位原子の9員環によって規定される全体として平行な第3組のチャネル群とを含むものである。
【0007】
本発明は、1つの好ましい実施形態において、芳香族化合物を含む原材料を、その原材料とは異なった芳香族化合物を含む製品に転化するプロセスを目指している。このプロセスは、多孔性の合成結晶材料を含む触媒構成の存在の下で、芳香族化合物を含有する原材料を転化条件において接触処理することによって実行される。その多孔性合成結晶材料は、酸素原子によって架橋された四面体状原子の骨格構造を備えており、その四面体状原子の骨格構造は表1に示すナノメータの原子座標を有する単位セルによって規定される。ただし、各配位位置は±0.05ナノメータの範囲内で変化することがある。このようなプロセスの例として、トルエンからベンゼンとキシレンとを製造する不均化、エチルベンゼンの転化、キシレンの異性化、及び、芳香族炭化水素のアルキル化がある。
【0008】
本発明は、もう1つの好ましい実施形態において、非芳香族化合物を芳香族化合物に転化するプロセスを目指している。このプロセスは、多孔性の合成結晶材料を含む触媒構成の存在の下で、非芳香族化合物を転化条件において接触処理することによって実行される。その多孔性合成結晶材料は、酸素原子によって架橋された四面体状原子の骨格構造を備えており、その四面体状原子の骨格構造は表1に示すナノメータの原子座標を有する単位セルによって規定される。ただし、各配位位置は±0.05ナノメータの範囲内で変化することがある。このようなプロセスの例として、ナフサの接触改質、及び、C−C脂肪族炭化水素の脱水素環化−オリゴマー化がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本出願で用いる“芳香族化合物の転化”という用語は、非芳香族炭化水素を芳香族化合物に転化することによる芳香族化合物の製造を意味するものとする。また、本出願で用いる“芳香族化合物の転化”という用語は、芳香族化合物を含む原材料を、その原材料とは異なる芳香族化合物を含む製品に転化することをも含むものとする。さらにまた、本出願で用いる“芳香族化合物の転化”という用語は、芳香族炭化水素の種々の異性体の分離(例えばオルトキシレン及びメタキシレンからのパラキシレンの分離等)を目的とした、芳香族炭化水素(例えばキシレンのようなアルキル置換ベンゼン等)の選択吸着をも含むものとする。
【0010】
多孔性の合成結晶材料ITQ−13は、同時係属中の米国特許出願第09/866,907号で現米国特許第6,471,941号の公報に記載されている。ITQ−13は独自の3次元チャネル系を有する単結晶相で、3組のチャネル群を備えている。ITQ−13は、特に、それぞれが四面体に配位された原子の10員環によって規定される全体として平行な第1組のチャネル群と、同様に四面体配位原子の10員環によって規定されかつ第1組のチャネル群と直交して交差する全体として平行な第2組のチャネル群と、前記第1組及び前記第2組のチャネル群と交差するチャネル群で、それぞれが四面体配位原子の9員環によって規定される全体として平行な第3組のチャネル群とを含んでいる。第1組の10員環チャネルがそれぞれ約4.8Å×約5.5Åの断面寸法を有しているのに対して、第2組の10員環チャネルはそれぞれ約5.0Å×約5.7Åの断面寸法を有している。第3組の9員環チャネルはそれぞれ約4.0Å×約4.9Åの断面寸法を有している。
【0011】
ITQ−13の構造は、この材料のすべての構成元素を含む最小の構造単位である単位セルによって規定することができる。表1は、単位セル内の各四面体状原子の位置をナノメータで列挙したものである。各四面体状原子は酸素原子と結合しており、その酸素原子はまた隣接する四面体状原子に結合している。四面体状原子は他の結晶力(例えば、無機種または有機種の存在)によって動き回る可能性があるので、各配位位置に対して±0.05nmの変動範囲が含まれる。
【0012】
【表1】

【0013】
ITQ−13は、検知可能な不純物の結晶相をほとんどかあるいは全く含まない本質的に純粋な形で調製することができ、それが示すX線回折パターンは、次の表2に列挙した線によって、他の周知の結晶材料の合成したままの状態もしくは熱処理した状態のパターンと区別される。
【0014】
【表2】

【0015】
これらのX線回折データは、銅のK−α線を用いて、ゲルマニウム固体検知器を備えたシンタグ(Scintag)回折装置によって得たものである。この回折データは、2θ(θはブラッグ角である)=0.02°のステップ走査により、各ステップの計測時間を10秒として記録された。面間隔dはオングストローム単位で計算し、線の相対強度I/Iは、バックグラウンドを超える最強線の強度の100分の1であり、プロフィル適合ルーチン(または二次微分アルゴリズム)を用いて誘導した。ローレンツ効果及び極性効果に対する強度の補正は行っていない。相対強度は、vs=非常に強い(80〜100)、s=強い(60〜80)、m=中位(40〜60)、w=弱い(20〜40)、及び、vw=非常に弱い(0〜20)の記号で表現される。この試料について単一の線として示した回折データは、多数の重なり合った線からなっており、結晶学的変化の差異のようなある一定の条件下で、分離または一部分離した線として現れる可能性があると理解するべきである。結晶学的変化には、一般的に、構造の変化を伴わない、単位セルのパラメータの小さな変化及び/または結晶の対称性における変化が含まれ得る。相対強度の変化を含むこれらの小さな影響は、また、カチオン含有量、骨格構造の構成、細孔充填の特性及び程度、結晶のサイズ及び形状、好ましい方位、及び、熱及び/または水熱履歴における差異の結果としても生じることがある。
【0016】
多孔性の合成結晶材料は、ほぼ表2に示したようなd間隔と相対強度との値を含むX線回折パターンを有していることが望ましい。
【0017】
ITQ−13は、次式:
:(n)YO
のモル数の関係を含む組成を有している。式中、Xは3価の元素(例えば、アルミニウム、ホウ素、鉄、インジウム及び/またはガリウム等)で、好ましくはホウ素であり、Yは4価の元素(例えば、ケイ素、スズ、チタン及び/またはゲルマニウム等)で、好ましくはケイ素であり、nは少なくとも5で、例えば5〜無限大であり、通常は40〜無限大である。許容されるn値から、ITQ−13は、3価の元素Xが全く存在しないかほぼ存在しない全ケイ質型で合成可能であることが理解される。
【0018】
ITQ−13の合成プロセスでは、鉱化剤としてフッ化物、特にHFを使用する。従って、ITQ−13は、合成したままの形態では、無水基準で、nモルのYO当たりの酸化物モル数に関して、次式:
(0.2〜0.4)R:X:(n)YO:(0.4〜0.8)F
のような組成を有している。式中、Rは有機部分である。R及びF成分は、結晶化中にそれらが存在する結果として材料に付随しているが、これらは、以下に詳細に記述する後結晶化法によって容易に除去される。
【0019】
合成されたままのITQ−13中のいかなるカチオンも、所定の程度まで、また材料のX/YOモル比に応じて、周知の技術に従ってイオン交換することにより、少なくとも部分的には他のカチオンと置換することができる。好ましい置換カチオンとして、金属イオン、水素イオン、例えばアンモニウムイオンのような水素前駆体及びそれらの混合物がある。特に好ましいカチオンは、触媒活性を、ある種の炭化水素の転化反応に適合させるものである。これらには、水素、希土類金属、並びに、元素周期律表の第IIA、IIIA、IVA、VA、IB、IIB,IIIB、IVB、VB、VIB、VIIB及びVIII族の金属が含まれる。
【0020】
合成されたままのITQ−13に、合成に使用したあらゆる有機成分の一部またはすべてを除去するための処理を施してもよい。これは、合成されたままの材料を、少なくとも約370℃の温度で少なくとも1分間、一般には20時間を超えない時間加熱する熱処理によって簡便に行われる。熱処理に大気圧以下の圧力を用いることもできるが、利便性の点から大気圧が望ましい。この熱処理は約925℃までの温度で行うことができる。熱処理生成物、特に、金属、水素及びアンモニウム型の生成物は、ある種の有機物、例えば炭化水素の転化反応の触媒に特に有用である。
【0021】
ITQ−13は、本発明のプロセスに使用する前に少なくとも部分的に脱水処理することが望ましい。これは、空気、窒素等の雰囲気中で、かつ、大気圧、大気圧以下あるいは大気圧以上の圧力において、200℃〜約370℃の範囲の温度に30分〜48時間加熱することによって行うことができる。脱水は、また、ITQ−13を単に室温で減圧状態に置くことによっても行うことができるが、十分な脱水量を得るには長時間が必要になる。
【0022】
ケイ酸塩型及びホウケイ酸塩型のITQ−13は、水の供給源、場合によってはホウ素酸化物、4価の元素Y(例えばケイ素等)の酸化物、以下に述べる構造指向剤(R)及びフッ化物イオンを含む反応混合物で、酸化物のモル比に関して次の範囲内の組成を有する反応混合物から調製することができる。
【0023】
【表3】

【0024】
本明細書で用いる有機構造指向剤Rは、ヘキサメトニウム[ヘキサメチレンビス(トリメチルアンモニウム)]ジカチオンであり、好ましくはヘキサメトニウムジヒドロキシドである。ヘキサメトニウムジヒドロキシドは、市販のヘキサメトニウムブロミドをアニオン交換することによって容易に調製することができる。
【0025】
ITQ−13の結晶化は、適切な反応容器(例えば、ポリエチレンのジャーあるいはテフロン(登録商標)ライニングのまたはステンレス鋼製のオートクレーブ等)内で、約120℃〜約160℃の温度において、用いられる温度で結晶化が生起するに十分な時間(例えば約12時間〜約30日間)、静置状態あるいは攪拌状態に置くことによって行うことができる。その後、結晶を液体から分離して回収する。
【0026】
反応混合物の成分は1つ以上の供給源から供給し得ることを理解すべきである。反応混合物はバッチ式または連続式のいずれによっても調製可能である。新しい結晶材料の結晶サイズ及び結晶化の時間は、使用する反応混合物の特性及び結晶化の条件によって変化する。
【0027】
ITQ−13の合成は、結晶生成品の結晶核を、少なくとも0.01パーセント、好ましくは0.10パーセント、さらに好ましくは1パーセント(全重量基準で)添加することによって促進してもよい。
【0028】
本発明のプロセスに使用するITQ−13は、好ましくはアルミノケイ酸塩型もしくはホウアルミノケイ酸塩型であり、さらに好ましくはシリカ対アルミナのモル比が約1000以下のものである。アルミノケイ酸塩型のITQ−13は、ケイ酸塩型及びホウケイ酸塩型から、周知の後合成法によって、例えばホウケイ酸塩材料をアルミニウムイオン源でイオン交換することによって容易に調製することができる。
【0029】
“α値”は、接触分解の活性がその例となる触媒の酸活性を意味している。α試験は、米国特許第3,354,078号公報、並びに、「触媒ジャーナル(The Journal of Catalysis)」誌、第4巻、p522−529(1965);第6巻、p278(1966);及び第61巻、p395(1980)に記載されており、いずれも、その記述に関して、本参照によって本明細書の開示に含まれる。通常、結晶性のITQ−13を含む触媒は約1〜約900の範囲のα値、より好ましくは約2〜約400の範囲のα値を有する。
【0030】
結晶性のITQ−13は、芳香族転化プロセスに用いる温度並びに他の条件に耐性を有する結合材料と組み合わせて使用してもよい。このような結合剤には、合成または天然の物質、並びに粘土、シリカ、アルミナ及び/または金属酸化物のような無機材が含まれる。後者は、天然のものでもよく、また、シリカ及び金属酸化物の混合物を含むゼラチン状の沈殿物もしくはゲルの形態のものでもよい。ITQ−13と複合化させることができる天然産の粘土には、モンモリロナイト及びカオリン群のものが含まれる。これらの粘土群には、一般にディクシー粘土、マクナミー−ジョージア粘土及びフロリダ粘土として知られるサブベントナイト及びカオリンがあり、あるいは、主要な鉱物成分がハロイサイト、カオリナイト、ディッカイト、ナクライトまたはアノーキサイトであるような他のものも含まれる。これらの粘土は、採掘されたままの未処理の状態でも、あるいは、初めに焼成、酸処理または化学修飾を施した状態でも用いることができる。
【0031】
上記の材料に加えて、ITQ−13は多孔性の基材と複合化させてもよい。この多孔性基材は、例えば、活性炭、炭素繊維、アルミナ、シリカ−アルミナ、シリカ−マグネシア、シリカ−ジルコニア、シリカ−トリア、シリカ−ベリリア及びシリカ−チタニア、並びに、三成分系物質(例えば、シリカ−アルミナ−トリア、シリカ−アルミナ−ジルコニア、シリカ−アルミナ−マグネシア及びシリカ−マグネシア−ジルコニア等)である。ITQ−13は、また、MCM−41及びMCM−48のような中間細孔のアモルファスモレキュラーシーブと複合化させてもよい。さらにまた、ITQ−13は結晶性の細孔モレキュラーシーブ材料と複合化させてもよい。この材料の例が国際公開第96/16004号公報に開示されている。
【0032】
ITQ−13成分と結合材との相対比率は大きく変化し、ITQ−13の含有量は約1〜約99重量パーセントの範囲に及ぶが、より好ましくはITQ−13成分が約10〜約70重量パーセントの範囲内であり、さらに好ましくは約20〜約50パーセントである。
【0033】
触媒は、また、少なくとも1つの水素化/脱水素金属を含んでもよい。1つまたは複数の水素化/脱水素金属という場合、元素態(すなわちゼロ価)の1つまたは複数の金属、あるいは、酸化物、硫化物、ハロゲン化物、カルボン酸塩その他同種のもののような、触媒活性を有する他の形態の1つまたは複数の金属を含むことが意図されている。このような金属は当業者には周知されているところであり、例えば、元素周期律表の第IIIA、IVA、VA、VIA、VIIA、VIII、IB、IIB、IIIB、IVB、VB、VIB、及び、VB族の1つまたは複数の金属がそれに含まれる。適切な金属の例として、第VIII族の金属(すなわちPt、Pd、Ir、Rh、Os、Ru、Ni、Co及びFe)、第IVA族の金属(すなわちSn及びPb)、第VA族の金属(すなわちSb及びBi)、及び、第VIIB族の金属(すなわちMn,Tc及びRe)がある。場合によっては、貴金属(すなわちPt、Pd、Ir、Rh、Os及びRu)が望ましい。
【0034】
触媒中に存在する金属の量は、一般的に約0.001〜約20重量パーセント、好ましくは0.05〜3.0重量パーセントであるような有効量とすることになろう。この量は金属の特性によって変化するであろうが、高活性金属特に白金の場合は、低活性金属の必要量よりも少量で済む。
【0035】
ITQ−13は、芳香族化合物のさまざまな転化プロセスの触媒として使用することができる。芳香族化合物が別の芳香族化合物に転化される芳香族化合物の転化プロセスの例には、次の(A)〜(J)のようなプロセスが含まれる。但し、この例はこれに限られるわけではない。
(A)ジアルキル置換ベンゼン、例えばキシレンの異性化。代表的な反応条件として、約230℃〜約510℃の温度、約1気圧〜約50気圧の圧力、約0.1hr−1〜約200hr−1の重量空間速度、及び、0(水素添加なし)〜約100の水素/炭化水素モル比が含まれる。
(B)モノアルキル置換ベンゼンの不均化、例えばトルエンからベンゼン及びキシレンを生成する不均化。代表的な反応条件として、約200℃〜約760℃の温度、ほぼ大気圧〜約60気圧の圧力、及び、約0.08hr−1〜約20hr−1の重量空間速度が含まれる。
(C)芳香族化合物のアルキル化。例えば、ベンゼン並びにC及びCアルキルベンゼンを、アルキル化剤(例えば、オレフィン、ホルムアルデヒド及びハロゲン化アルキル)と、オキシジェネート(例えばエーテル及びアルコール)との存在の下でアルキル化する場合がその例である。代表的な反応条件として、約340℃〜約500℃の温度、ほぼ大気圧〜約200気圧の圧力、約2hr−1〜約2000hr−1の重量空間速度、及び、約1/1〜約20/1の芳香族炭化水素/アルキル化剤モル比が含まれる。
(D)ポリアルキル芳香族化合物の存在の下での芳香族化合物のアルキル交換。代表的な反応条件として、約340℃〜約600℃の温度、ほぼ大気圧〜約200気圧の圧力、約10hr−1〜約1000hr−1の重量空間速度、及び、約1/1〜約16/1の芳香族炭化水素/ポリアルキル芳香族炭化水素モル比が含まれる。
(E)アルキル芳香族化合物の脱アルキル。エチルベンゼンの場合は、エチルベンゼンをベンゼン及びエタンに転化することができる。代表的な反応条件として、約230℃〜約510℃の温度、約1気圧〜約50気圧の圧力、約0.1hr−1〜約200hr−1の重量空間速度、及び、0(水素添加なし)〜約100の水素/炭化水素モル比が含まれる。
(F)エチルベンゼンからキシレンを生成する異性化。反応条件の例として、約300℃〜約550℃の温度、約50〜500psigの圧力、及び、約1〜約20のLHSVが含まれる。
(G)異性体の分離を目的としたキシレンの吸着。
(H)ジアルキルナフタレン、例えばジメチルナフタレンから異性体の混合物を生成する異性化。ジメチルナフタレンの異性体の中で、2,6−ジメチルナフタレンは、特製品ポリエステル製造用の重要なモノマーである2,6−ナフタレンジカルボン酸を製造する際の基本的な中間体である。代表的な反応条件として、約230℃〜約510℃の温度、約1気圧〜約50気圧の圧力、約0.1hr−1〜約200hr−1の重量空間速度、及び、0(水素添加なし)〜約100の水素/炭化水素モル比が含まれる。
(I)モノアルキル置換ナフタレンの不均化、例えばモノメチルナフタレンからジメチルナフタレン及びナフタレンを生成する不均化。代表的な反応条件として、約200℃〜約760℃の温度、ほぼ大気圧〜約60気圧の圧力、及び、約0.08hr−1〜約20hr−1の重量空間速度が含まれる。
(J)アルキル置換芳香族化合物の酸化、例えば、パラキシレンのパラテレフタル酸への転化、クメンのフェノール及びアセトンへの転化、並びに2,6−ジメチルナフタレンの2,6−ナフタレンジカルボン酸への転化。
【0036】
本発明のプロセスによって別の芳香族化合物に転化することができる芳香族化合物の例として、次の(A)及び(B)のような化合物がある。但し、この例はこれに限られるわけではない。
(A)次式:I
【0037】
【化1】

【0038】
によって表される単環式アルキル芳香族化合物、式中、R、R及びRは、水素と、1〜約12個の炭素原子、好ましくは1〜4個の炭素原子を有するアルキル基またはアルケニル基とからなる群から独立に選定される。
(B)次式:II
【0039】
【化2】

【0040】
によって表される二環式アルキル芳香族化合物、式中、R及びRは、水素と、1〜約12個の炭素原子、好ましくは1〜4個の炭素原子を有するアルキル基またはアルケニル基とからなる群から独立に選定され、
Yは0〜2の整数であり、
Zは0〜2の整数である。
【0041】
R、R、R、R及びRの例には、直鎖のまたは枝分かれしたアルキル基及びアルケニル基が含まれる。これらの基の例としては、メチル基、エチル基、エチレン基、n−プロピル基、イソプロピル基、プロピレン基、n−ブチル基、イソブチル基、ブチレン基、もしくはこれらのあらゆる組み合わせがある。好ましい基はメチル基である。
【0042】
前記式Iに該当する単環式芳香族化合物の例として、例えば、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、スチレン、キシレン(パラキシレン、オルトキシレン及びメタキシレン等)、ジエチルベンゼン(1,4−ジエチルベンゼン、1,2−ジエチルベンゼン及び1,3−ジエチルベンゼン等)、トリメチルベンゼン(メシチレン(1,3,5−トリメチルベンゼン)、ヘミメリテン(1,2,3−トリメチルベンゼン)及びプソイドクメン(1,2,4−トリメチルベンゼン)等)、エチルトルエン、トリエチルベンゼン(1,3,5−トリエチルベンゼン等)、メチルプロピルベンゼン、エチルプロピルベンゼン、ジプロピルベンゼン、ジイソプロピルベンゼン、トリイソプロピルベンゼン、その他同種のものがある。
【0043】
前記式IIに該当する二環式芳香族化合物の例として、1−メチルナフタレン、2−メチルナフタレン、ジアルキルナフタレン(1,2−ジメチルナフタレン、1,2−ジエチルナフタレン、2,3−ジメチルナフタレン、2,3−ジプロピルナフタレン、2,6−ジメチルナフタレン、2,6−ジブチルナフタレン等)、その他同種のものがある。
【0044】
転化される芳香族化合物及び結果として生成される製品の例を次表に示す。
【0045】
【表4】

【0046】
非芳香族化合物が芳香族化合物に転化される芳香族化合物の転化プロセスの例には、次の(A)〜(F)のようなプロセスが含まれる。但し、この例はこれに限られるわけではない。
(A)軽質パラフィンから芳香族化合物及びオレフィンを生成する転化。代表的な反応条件として、約375℃〜約760℃の温度、及び、約10〜約2000psigの圧力が含まれる。
(B)軽質オレフィンから芳香族化合物を生成する転化。反応条件の例として、約175℃〜約760℃の温度、及び、約100〜約2000psigの圧力が含まれる。
(C)例えばC−C10のナフサ及び同類の混合物から高芳香族の混合物を生成する転化。このように、好ましくは約40℃以上約200℃以下の沸点範囲を有する直鎖炭化水素及び若干の側鎖を有する炭化水素を、オクタン価が大幅に高い芳香族化合物を含む製品に転化することができる。代表的な反応には、約400℃〜600℃、好ましくは480℃〜550℃の範囲の温度、大気圧〜40バールの範囲の圧力、及び、0.1〜15の時間当たり液空間速度(LHSV)が含まれる。
(D)6員環を有する脂環式化合物の脱水素。代表的な反応条件として、約300℃〜約700℃の温度、約0.1〜約10気圧の圧力、約0.1hr−1〜約20hr−1の重量空間速度が含まれる。
(E)例えばメタノールのようなアルコール、あるいはエーテル、ジメチルエーテル、もしくはそれらの混合物から芳香族化合物を生成する転化。代表的な反応条件として、約275℃〜約600℃の温度、約0.5〜約50気圧の圧力、及び、約0.5hr−1〜約50hr−1のLHSVが含まれる。このプロセスの例は米国特許第4,088,706号公報に開示されており、それは、この参照によって本明細書の開示に含まれる。
(F)シクロヘキサントリオールからベンゼンを生成する脱水のような、アルコールから芳香族化合物を生成する脱水。
【0047】
芳香族化合物の転化の反応条件には、一般的に、約200℃〜約760℃の温度、ほぼ大気圧〜約200気圧の圧力、及び、約0.08−1〜約2000hr−1の重量空間速度が含まれる。
【0048】
ITQ−13を含む触媒は、芳香族化合物の転化(例えば、トルエンの不均化、キシレンの異性化、芳香族化合物のアルキル化、軽質オレフィンの芳香族化合物への転化、その他同種の転化)に使用する場合、選択性強化剤(selectivating agent)によって選択性を強化する(selectivated)ことができる。この場合、“選択性強化剤”という用語は、ITQ−13の形状選択性(例えばパラ選択性)を増大するであろう物質を指して用いている。触媒は、リン化合物及び/または種々の金属酸化物(例えば酸化カルシウム、酸化マグネシウム等のようなアルカリ土類金属の酸化物、希土類金属の酸化物、酸化ランタン、及び、酸化ホウ素、チタニア、酸化アンチモン及び酸化マンガンのような他の金属酸化物)で触媒表面を処理することによって、その選択性を強化することができる。触媒は、また、触媒にコークスを被覆することによって選択性を高めることができる。
【0049】
選択性の強化は、さらに、有機ケイ素化合物を用いて実現することができる。この有機ケイ素化合物は、シリコーン及びシロキサンを含むポリシロキサンと、ジシラン及びアルコキシシランを含むシランとを含むものでよい。
【0050】
有機ケイ素化合物は、一般式:
【0051】
【化3】

【0052】
で表すことができるシロキサンを含んでいる。式中、Rは、水素、ハロゲン、ヒドロキシル基、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基、アラルキル基、ハロゲン化アラルキル基、アルカリール基、あるいはハロゲン化アルカリール基である。炭化水素置換基は、一般的に1〜約10個の炭素原子を含むもので、好ましくは、メチル基、エチル基もしくはフェニル基である。RはRと同じ基から選定され、nは整数で、少なくとも2、一般的には3〜約1000の範囲である。使用するシリコーン化合物の分子量は、一般的には約80〜約20,000、好ましくは約150〜約10,000である。代表的なシリコーン化合物には、ジメチルシリコーン、ジエチルシリコーン、フェニルメチルシリコーン、メチル水素シリコーン、エチル水素シリコーン、フェニル水素シリコーン、メチルエチルシリコーン、フェニルエチルシリコーン、ジフェニルシリコーン、メチルトリフルオロプロピルシリコーン、エチルトリフルオロプロピルシリコーン、ポリジメチルシリコーン、テトラクロロフェニルメチルシリコーン、テトラクロロフェニルエチルシリコーン、テトラクロロフェニルフェニルシリコーン、メチルビニルシリコーン、及び、エチルビニルシリコーンが含まれる。シリコーン化合物は線状である必要はなく、環状であってもよい(例えば、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、ヘキサフェニルシクロトリシロキサン及びオクタフェニルシクロテトラシロキサン等)。これらの化合物の混合物も、他の官能基を有するシリコーンと同様に用いてもよい。
【0053】
シラン、アルコキシシラン(例えばテトラメトキシシラン)を含む他のケイ素化合物も同様に使用することができる。これらの有用なケイ素含有選択性強化剤は、一般式:
【0054】
【化4】

【0055】
によって特徴付けられるシランを含んでいる。式中、R、R、R及びRは、水素、ヒドロキシル基、ハロゲン、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルコキシ基、アリール基、ハロゲン化アルカリール基からなる群から独立に選定される。これらの化合物の混合物も使用することができる。
【0056】
好ましいケイ素含有選択性強化剤として、ジメチルフェニルメチルポリシロキサン(例えばダウ(Dow)−550)及びフェニルメチルポリシロキサン(例えばダウ(Dow)−710)がある。ダウ−550及びダウ−710は、ミシガン州ミドランド(Midland)のダウ・ケミカル会社(Dow Chemical Co.,)から市販されている。
【0057】
選択性を強化するケイ素化合物用の適切な担体の例として、5個以上の炭素を有する線状アルカン、枝分かれアルカン及び環式アルカンがある。本発明の方法においては、担体は、約70℃以上の沸点を有する線状アルカン、枝分かれアルカンもしくは環式アルカンであることが好ましく、さらに6個以上の炭素を含むものが最も望ましい。場合によっては、水素化分解装置のリサイクルオイルのような低揮発性有機化合物の混合物も担体として使用することができる。選択性強化剤の最も好ましい低揮発性炭化水素担体はデカン及びドデカンである。
【0058】
触媒は、液体の担体中において、液体の有機ケイ素化合物で単一処理または多重処理することによって選択性を高めることができる。この処理に引き続いて、処理材料を酸素含有雰囲気中で焼成する。また、触媒はシリカ及びコークスによっても選択性の強化を図ることができる。
【0059】
本発明のプロセスはトルエンの気相不均化に特別に適用し得ることが分かっている。この気相不均化反応は、不均化反応条件の下でトルエンを含む原料の流れを、ITQ−13を含む触媒と接触させる工程を含んでおり、それによって、未反応(未転化)トルエンとベンゼン及びキシレンとの混合物を含む製品混合物を生成する。
【0060】
好ましい実施形態においては、触媒の選択性を強化して、高収量のパラキシレンを生産する。コークスを選択性強化剤とする場合は、触媒をリアクター層において熱分解可能な有機化合物(例えばトルエン)に曝露することによって選択性の強化を行うとよい。その曝露条件は、前記化合物の分解温度を超える温度(例えば、約480℃〜約650℃、より好ましくは540℃〜650℃)において、触媒1ポンド当たり約0.1〜20原料lb/hrの範囲のWHSVで、約1〜100気圧の範囲の圧力において、かつ、有機化合物1モル当たり0〜約2モルの水素、より好ましくは約0.1〜約2モルの水素の存在の下で、かつまた場合によっては、有機化合物1モル当たり0〜10モルの窒素もしくは他の不活性ガスの存在の下で行うという条件である。このプロセスは、十分な量のコークスが触媒表面に被覆されるまで、すなわち、一般的には少なくとも約2重量%のコークス、より好ましくは約8〜約40重量%のコークスが被覆されるまでの時間実施される。
【0061】
不均化を実施する条件は、通常、約375℃〜550℃、より好ましくは約400℃〜485℃の温度、0〜約10、好ましくは約0.1〜5、より好ましくは約0.1〜1の水素対トルエンのモル比、及び、約1〜100気圧の圧力の諸条件を含み、かつ、約0.5〜50のWHSVで行われる。
【0062】
不均化プロセスは、リアクター層内に充填された触媒の固定層系または移動層系を用いて、バッチ操作、半連続操作、あるいは連続操作として実行すればよい。触媒は、コークスの焼損によってコークスが不活性化してくると、周知のように、酸素含有雰囲気中で高温度において所望の程度まで再生することができる。
【0063】
本発明のプロセスは、ITQ−13を含む触媒の存在の下で芳香族化合物(例えばベンゼンまたはトルエン)をアルキル化剤でアルキル化することによって、アルキル化芳香族化合物(例えばキシレン)を生産するプロセスに特別に適用し得ることが分かっている。適切な芳香族化合物の例として、ベンゼン、トルエン、オルトキシレン、メタキシレン、パラキシレン、エチルベンゼン、オルトエチルトルエン、メタエチルトルエン、パラエチルトルエン、1,2,3−トリメチルベンゼン、1,2,4−トリメチルベンゼン、及び、1,3,5−トリメチルベンゼンがある。さらに分子量が高いアルキル芳香族化合物も適している。
【0064】
本発明における使用に適したアルキル化剤には、オレフィン、アルコール、アルケン、アルキン、アルデヒド、エーテル、アセチレン、及び、少なくとも1個の反応性アルキル基を有するその他あらゆる非環式化合物が含まれる。適切なアルコールにはメタノール、エタノール、n−プロパノール、及び、イソプロパノールが含まれる。オレフィンは、C〜C20のオレフィン、好ましくはC〜C12のオレフィンで、これらの直鎖形態及び枝分かれ形態を含むオレフィンとすることができる。適切なオレフィンは、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン、1−ペンテン、1−ヘキセン、2−ヘキセン、シクロヘキセン、メチルシクロヘキセン、2,3−ジメチル−1−ペンテン、1−オクテン、ジイソブチレン、1−ノネン及び1−デセン、ドデセン、その他同種のものである。
【0065】
アルキル化される芳香族化合物がトルエンで、アルキル化剤がメタノールの場合は、少なくとも60%のメタノールがキシレン形成のために転化されることが望ましい。メタノールの利用度は、(転化されたメタノールのモル数)/(形成されたキシレンのモル数−形成されたベンゼンのモル数)によって定められる。ベンゼンは、トルエンのキシレン及びベンゼンへの不均化反応によって形成されるいかなるキシレンをも考慮に入れるために差し引かれる。
【0066】
トルエンの不均化及び芳香族化合物のアルキル化は反応蒸留によって行うことができる。本明細書で用いる“反応蒸留”という用語は、反応領域から製品を同時除去しながら、所要の製品(例えばキシレン)を生産することを意味している。また、本明細書で用いる“反応/蒸留塔”という用語は、転化処理される芳香族化合物(例えばトルエン)がITQ−13を含む触媒の存在の下で接触処理されて所要の製品(例えばキシレン)を生産する塔を意味しており、所要の製品がその塔から抜き出される。
【0067】
反応蒸留反応は反応/蒸留塔内で遂行されることが望ましい。この実施形態では、転化処理される芳香族化合物(例えばトルエン)は、通常、反応/蒸留塔に連続供給され、結果としての製品は反応/蒸留塔の底部から連続的に引き抜かれる。この実施形態では、反応/蒸留塔からの所要製品の連続的取り出しが、塔内で達成される反応度を増進させ、副生品の形成を低く維持したままできわめて高い転化率を実現する。反応蒸留の実施に適した設備が、国際公開第99/38823号公報に記載されている。
【0068】
本発明は、また、C芳香族原料中の1つ以上のキシレン異性体を異性化して、平衡値に近い比率のオルト、メタ及びパラキシレンを得るプロセスに特別に適用し得ることが分かっている。特に、キシレンの異性化は、パラキシレンを製造する分離プロセスと連結して用いられる。例えば、C芳香族化合物の混合流れの中のパラキシレンの一部は、周知のプロセス(例えば結晶化、吸着等)によって回収するとよい。その後、この処理ずみの流れをキシレン異性化条件の下で反応させて、オルト、メタ及びパラキシレンを平衡値に近い比率に回復させる。原料中のエチルベンゼンは流れから除去されるか、あるいは反応プロセス中にキシレンまたはベンゼンに転化される。これらは蒸留によって容易に分離される。異性化処理された材料は新鮮原料とブレンドされ、この混合流れは重質及び軽質の副生品を除去するために蒸留される。その結果得られるC芳香族化合物の流れは、サイクルを繰り返すためにリサイクルされる。
【0069】
気相においては、適切な異性化条件として、250℃〜600℃、好ましくは300℃〜550℃の範囲の温度、0.5〜50絶対気圧、好ましくは10〜25絶対気圧の範囲の圧力、及び、0.1〜100、好ましくは0.5〜50の重量空間速度(WHSV)が含まれる。場合によっては、気相における異性化は、アルキルベンゼン1モル当たり0.1〜30.0モルの水素の存在の下で行われる。
【0070】
キシレンの異性化反応は、通常、ITQ−13を含む触媒を充填した固定層のリアクターにおいて行われる。キシレンの異性化反応は、また、2種類の触媒を用いた順次段階層においても実施することができる。この実施形態においては、各触媒が分離された個別の層内にあるか、あるいは、1つの触媒が1つの層の一部を形成し、第2の触媒が、その層の残りの部分を形成しておりしかも第1の触媒に対して下流側に位置している。第1の触媒は主としてエチルベンゼンの転化に用いられ、第2の触媒が主としてキシレンの異性化に用いられる。この実施形態では、ITQ−13を含む触媒を第2の触媒とし、第1の触媒はエチルベンゼンの転化に特に適合した触媒(例えば水素化金属を添着したZSM−5)とするのが望ましい。この実施形態では、ITQ−13を含む触媒が、好ましくは層容積の約10〜約90パーセントを占めることになるであろう。
【0071】
エチルベンゼンを含む原料の異性化に用いる場合は、触媒は少なくとも1つの水素化金属を含んでいることが望ましいであろう。
【0072】
本発明のプロセスは、ポリアルキル芳香族化合物のアルキル交換に特別に適用し得ることが分かっている。このプロセスに用いる原料は、通常、少なくとも9個の炭素原子を有する芳香族化合物(例えば、メシチレン(1,3,5−トリメチルベンゼン)、ジュレン(1,2,4,5−テトラメチルベンゼン)、ヘミメリテン(1,3,3−トリメチルベンゼン)、プソイドクメン(1,2,4−トリメチルベンゼン)、プレニテン(1,2,3,4−トリメチルベンゼン)、イソジュレン(1,2,3,4−テトラメチルベンゼン)、及び、1,3,5−トリエチルベンゼン等)を1種類以上含んでいるであろう。原料は、また、多(マルチ)アルキル芳香族化合物(例えば、ナフタレン/メチルナフタテンを伴ったペンタメチルベンゼン)を含むものとすることもできる。ITQ−13を含む触媒は、キシレンを生産するには、水素化の成分(例えば、白金、パラジウムまたはレニウム)と組み合わせて、単独であるいはトルエン及び/またはベンゼンの存在の下で、C+アルキル芳香族化合物の接触転化に使用するのが好ましい。この転化は、代表的条件として、約650〜約950°F(340〜510℃)、好ましくは約750〜約850°F(400〜450℃)の温度、約100〜約600psig(790〜4240kPa)、好ましくは約200〜約500psig(1480〜3550kPa)の圧力、約0.1〜約200hr−1、好ましくは約0.5〜約20hr−1の重量空間速度(WHSV)、及び、約1〜約5、好ましくは約1〜約3の水素H対炭化水素HCのモル比、において効果的に行われる。
【0073】
一般的には、反応温度は、少なくとも部分的な液相を維持するために約340℃〜500℃の範囲にあることが好ましく、また、圧力は、約50psig〜約1000psig、好ましくは300psig〜600psigの範囲に、重量空間速度は、約0.1〜10の範囲にあることが好ましいであろう。
【0074】
本発明のプロセスは、2〜約6個の炭素原子を含む脂肪族炭化水素の脱水素環化−オリゴマー化による芳香族化合物の生産に特別に適用し得ることが分かっている。この脂肪族炭化水素は、開鎖でも、直鎖でもあるいは環式でもよく、また、飽和化合物でも、不飽和化合物でも、あるいはこれらの混合物であってもよい。このような炭化水素の例として、エタン、エチレン、プロパン、プロピレン、n−ブタン、n−ブテン、イソブタン、イソブテン、直鎖、枝分かれ及び環式ペンタン、ペンテン、ヘキサン、及び、ヘキセンがある。
【0075】
脱水素環化−オリゴマー化の代表的な条件として、約350℃〜約650℃の温度、約1〜約20気圧の圧力、約0.2〜約5の重量空間速度(WHSV)が含まれる。このプロセスに用いる触媒は、ガリウム、亜鉛、もしくはこれらの混合物を含んでいることが望ましいであろう。ガリウムまたは亜鉛は、ITQ−13の中に合成中に組み込んでもよく、また、合成後に、交換または含浸または他の方法でITQ−13中に組み込んでもよい。好ましくは0.05〜10重量%、最も好ましくは0.1〜2.0重量%のガリウムもしくは亜鉛を触媒に結合させる。
【0076】
本発明のプロセスは、C6+の脂肪族炭化水素、望ましくはC−Cの脂肪族炭化水素を芳香族化合物に転化する接触改質プロセスに特別に適用し得ることが分かっている。このプロセスは、C6+の脂肪族炭化水素を、転化条件の下で、ITQ−13及び第VIII族のような脱水素金属(例えば白金)を含む触媒に通すことによって行われる。
【0077】
ITQ−13は芳香族炭化水素(例えばアルキル置換ベンゼン)の選択的分離に適用し得ることが分かっている。この分離の1例は、C異性体(例えばパラキシレン)の分離である。分離プロセスすなわち吸着中に、アルキル置換ベンゼン(例えばメタキシレン及び/またはオルトキシレン)は他の異性体(例えばパラキシレン)に転化されることがある。
【0078】
吸着プロセスは、気体、液体または混合相のいずれかとして存在する芳香族炭化水素含有混合物を、ITQ−13と接触処理することを含んでおり、それは、ITQ−13の内部空孔構造の中に所望の芳香族炭化水素(例えばアルキル置換ベンゼン)を選択吸着するに十分な時間行われる。吸着されない混合物の成分は、ITQ−13との接触中に吸着可能な異性体に転化されることがある。収着されたアルキル置換ベンゼンは、その後、従来の脱着法によって、ITQ−13の内部空孔構造から回収される。
【0079】
吸着プロセスを進行させる温度は、被吸着成分の脱着温度以下に維持されている限り、それほど重要とは見なされない。プロセスを進めるための好ましい温度は常温〜約150℃である。
【実施例1】
【0080】
ホウケイ酸塩型ITQ−13を、次式のモル数組成式:
1SiO:0.01B:0.073R(OH):0.22R’(NMe 1.05HF:7.0H
を有するゲルから合成した。式中、R(OH)はヘキサメトニウムジヒドロキシド、R’(NMeはN,N,N’,N’−テトラメチルヘキサン−1,6−ジアミンである。結晶化を促進するITQ−13の結晶核として4重量%のSiOを添加した。ゲルに用いたヘキサメトニウムジヒドロキシドは、市販されているヘキサメトニウムジブロミドを、アンバーライト(Amberlite)IRN−78樹脂を水酸化物源として用いて直接アニオン交換することによって調製した。
【0081】
合成ゲルは、シリカ(Aldrich−Syton HT−50)を300グラム、ホウ酸を3.09グラム、54.9重量パーセントのヘキサメトニウムヒドロキシド溶液を78.05グラム、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサン−1,6−ジアミンを93.9グラム、48重量パーセントのHFを109.4グラム、及び、ITQ−13の結晶核を6.01グラム、PFA(過フルオロアルキオキシルテフロン(perfluorialkyokyl−Teflon))のボトルの中に加えて調製した。ボトルは30分間振とうした。混合物のpHは7.3であった。ボトルは2リットルのオートクレーブの中に入れて、1℃/minで135℃まで加熱し、135℃に21日間保持した。この終了時点で、混合物のpHは7.1であった。続いて、固形分をろ過して、水洗浄し、一定重量になるまで80℃で乾燥した。合成したままの材料の重量は151.9グラムであった。合成したままの材料のX線回折パターンを図5に示す。
【0082】
合成したままの材料は、薄層(約0.1g/cm)として、N 2℃/minの下で230℃まで加熱して2時間保持し、さらに2℃/minで540℃まで加熱して(ramping)8時間保持することによって焼成した。引き続いて、ガスを乾燥空気に切り替えて、試料を540℃に8時間保持し、その後乾燥空気下で冷却した。焼成した材料のX線回折パターンを図6に示す。ホウ素のNMR分析はホウ素含有量が800ppmであることを示した。
【0083】
焼成ITQ−13を45グラム、Al(NOOを98.3グラム、及び、HOを540グラム、PFAボトルの中に入れて混合することによって、焼成した材料をホウ素型からアルミニウム型に転化した。ボトルは2Lのオートクレーブの中に入れて、1℃/minで135℃まで加熱し、135℃に3日間保持した。生成物をろ過し、洗浄水のpHが5以上になるまでHOで洗浄し、続いて、一定重量になるまで80℃で乾燥した。生成された材料量は43グラムであった。X線回折結果(図7)は、焼成製品が、ほぼ1〜2重量パーセントのZSM−50不純物を含むITQ−13であることを示している。アルミニウムのNMR分析は、製品のSi/Al原子比が800であることを示した。製品のα値は2と決定された。
【実施例2】
【0084】
キシレンの異性化を、固定層の下向流リアクター内において、実施例1のアルミノケイ酸塩型触媒構成上で、98重量パーセントのメタキシレン及び2重量パーセントのオルトキシレンを含むキシレン原料を用いて実施した。試験条件として、温度360℃、圧力200psig、H対炭化水素のモル比2、及び、重量空間速度2が含まれる。試験の結果を次の表IIIに示す。
【0085】
【表5】

【0086】
表IIIのデータは、ITQ−13を含む触媒によるキシレンの異性化が、低キシレン損失でかつ定常的な触媒性能を24時間維持したまま、ほぼ平衡状態のキシレン混合物を生産したことを示している。
【実施例3】
【0087】
キシレンの異性化/エチルベンゼンの転化を、固定層の下向流リアクター内において、実施例1のアルミノケイ酸塩型触媒構成上で、90重量パーセントのメタキシレン及び10重量パーセントのエチルベンゼンを含むキシレン原料を用いて実施した。試験に用いた条件は実施例3と同じとした。試験の結果を次の表IVに示す。
【0088】
【表6】

【0089】
表IVのデータは、ITQ−13を含む触媒によるキシレンの異性化が、エチルベンゼンを十分に転化させながら、ほぼ平衡状態のキシレン混合物を生産したことを示している。
【実施例4】
【0090】
トルエンのメチル化を、固定層の下向流リアクター内において、実施例1のアルミノケイ酸塩型触媒構成2グラム上で実施した。試験は、特記なき限り次の操作条件で行った。すなわち、温度=600℃、圧力=15psig、H/炭化水素モル比=0.8、純メタノール及びトルエン原料のモル比1:3、WHSV=3.9h−1である。触媒装填量は2gであった。試験結果は図8のグラフに示されている。
【0091】
この結果は、トルエンの転化率が22〜25パーセントであったことを示している。メタノールの転化率は100パーセントであり、この転化の70パーセントはキシレンへの転化であった。1:3モル比の原料混合物に対しては、トルエンの最大転化率は約33%であることが予期される。
【実施例5】
【0092】
アルミノケイ酸塩型ITQ−13を、次式のモル数組成式:
0.004Al:1SiO:0.0227GeO:0.1515R(OH):0.3788HF:4.09H
を有するゲルから合成した。式中、R(OH)はヘキサメトニウムジヒドロキシドである。結晶化を促進するITQ−13の結晶核として3重量%のSiOを添加した。ゲルに用いたヘキサメトニウムジヒドロキシドは、市販されているヘキサメトニウムジブロミドを、アンバーライト(Amberlite)IRN−78樹脂を水酸化物源として用いて直接アニオン交換することによって調製した。
【0093】
合成ゲルは、シリカ(Aldrich−Syton VN 3SP−PM)を119グラム、GeO(Aldrich)を4.71グラム、硝酸アルミニウム9水和物(Aldrich)を5.63グラム、54.9重量パーセントのヘキサメトニウムヒドロキシド溶液を129.2グラム、ITQ−13の結晶核を3.61グラム、水を68.9グラム、及び、48重量パーセントのHFを31.3グラム、1リットルのPFA(過フルオロアルキオキシルテフロン)のボトルの中に加えて調製した。
【0094】
ボトルは、振とうしてから2リットルのオートクレーブの中に入れ、圧力を300psiとして、1℃/minで140℃まで加熱し、140℃に14日間保持した。冷却後、この材料をろ過して、多量の水で洗浄し、加熱ランプの下で空気乾燥した。合成したままの材料の重量は136グラムであった。
【0095】
合成したままの材料約125グラムを、薄層として、乾燥空気の下で温度1℃/minで540℃まで加熱して1時間保持し、その後、室温に冷却した。冷却後、104グラムの材料を得た。45.1グラムの試料を1リットルのPFA(過フルオロアルキオキシルテフロン)のボトルの中に入れ、次に、水を532.5グラム、硝酸アルミニウム9水和物(Aldrich)を98.46グラム、ボトルに加えた。混合物を135℃に加熱し、3日間保持した。結果として得た材料をろ過し、多量の水で洗浄し、オーブン内において、135℃で2時間乾燥し、続いて、乾燥空気の下で冷却した。材料のX線回折パターン(図9)は、製品が、不純物をほぼ含まないITQ−13であることを示している。マジック角回転アルミニウムNMR分析(図10)は、水溶液中の硝酸アルミニウムに関して、53.1ppmに予期したピークがあることを示している。計量された基準物質に対するNMRスペクトルの積分値は、アルミニウムの濃度が2800ppmであったことを示している。材料のα値は39と決定された。
【実施例6】
【0096】
トルエンのメチル化を、固定層の下向流リアクター内において、実施例5のアルミノケイ酸塩型触媒構成2グラム上で実施した。試験条件として、温度500℃、圧力15psig、H対炭化水素のモル比0.8、及び、試験の最初75時間の触媒基準重量空間速度3.9hr−1、その後の触媒基準重量空間速度5.07hr−1、並びに、メタノール対トルエンのモル比1:3が含まれる。試験を約110時間継続した後、触媒を再生した。この再生は、初めに、空気流量を50cc/minとして、3℃/minの速度で、室温から530℃まで触媒を加熱して行った。触媒は500℃に10時間保持し、その後、室温に冷却した。1:3モル比の原料混合物に対しては、メタノールとの反応から期待されるトルエンの最大転化率は約33%となるであろう。試験の結果を図11に示す。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】四面体状原子の位置を示す、ITQ−13の単位セルの概略図である。
【図2】同じく四面体状原子の位置を示す、ITQ−13の9員環チャネル系の概略図である。
【図3】図2と同様の、ITQ−13の10員環チャネル系の概略図である。
【図4】図2と同様の、ITQ−13の10員環チャネル系の概略図である。
【図5】実施例1のホウ素含有ITQ−13製品の合成したままの状態と焼成した状態とのX線回折パターンを示す図である。
【図6】実施例1のホウ素含有ITQ−13製品の合成したままの状態と焼成した状態とのX線回折パターンを示す図である。
【図7】実施例1のアルミニウム含有ITQ−13製品のX線回折パターンを示す図である。
【図8】実施例4の試験結果を示すグラフである。
【図9】実施例5のアルミニウム含有ITQ−13製品のX線回折パターンを示す図である。
【図10】実施例5のアルミニウム含有ITQ−13製品のマジック角回転アルミニウムNMRを示す図である。
【図11】実施例6の試験結果を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族化合物の転化に適した原料を、転化条件の下で、3次元のチャネル系を有する多孔性の合成結晶材料を含む触媒と接触させる工程を含むプロセスであって、この3次元チャネル系が、それぞれが四面体に配位された原子の10員環によって規定される全体として平行な第1組のチャネル群と、同じく四面体配位原子の10員環によって規定されかつ前記第1組のチャネル群と交差する全体として平行な第2組のチャネル群と、前記第1組及び前記第2組のチャネル群と交差するチャネル群であって、それぞれが四面体配位原子の9員環によって規定される全体として平行な第3組のチャネル群とを含んでいるプロセス。
【請求項2】
前記多孔性合成結晶材料が、酸素原子によって架橋された四面体状原子の骨格構造を備えており、この四面体状原子の骨格構造は表1に示すナノメータの原子座標を有する単位セルによって規定され、各座標位置は±0.05ナノメータの範囲内で変化することがある、請求項1記載のプロセス。
【請求項3】
前記多孔性合成結晶材料が、表2に実質的に記載されているようなd−間隔と相対強度値とを含むX線回折パターンを有する、請求項1または2記載のプロセス。
【請求項4】
前記多孔性合成結晶材料が、次式:
:(n)YO
のモル数の関係を含む組成を有し、式中、nは少なくとも約5であり、Xは3価の元素、Yは4価の元素である、請求項1〜3のいずれか1項記載のプロセス。
【請求項5】
前記Xが、ホウ素、鉄、インジウム、ガリウム、アルミニウム、及び、これらの組み合わせからなる群から選定された3価の元素であり、前記Yが、ケイ素、スズ、チタン、ゲルマニウム、及び、これらの組み合わせからなる群から選定された4価の元素である、請求項4記載のプロセス。
【請求項6】
前記Xがホウ素またはアルミニウムを含み、前記Yがケイ素を含む、請求項5記載のプロセス。
【請求項7】
前記Xがアルミニウムである、請求項6記載のプロセス。
【請求項8】
前記多孔性合成結晶材料のシリカ対アルミナのモル比が1000未満である、請求項7記載のプロセス。
【請求項9】
前記触媒が少なくとも1つの水素化/脱水素金属をさらに含む、請求項1〜8のいずれか1項記載のプロセス。
【請求項10】
前記少なくとも1つの水素化/脱水素金属が第VIII族の金属及び第VIIB族の金属からなる群から選定される、請求項9記載のプロセス。
【請求項11】
前記芳香族化合物の転化が、芳香族化合物を含む原料を、その原料とは異なる芳香族化合物を含む生成物にする転化を含む、請求項1〜10のいずれか1項記載のプロセス。
【請求項12】
前記原料が、
(A)
【化1】

式中、R、R及びRは、水素と、1〜約12個の炭素原子、好ましくは1〜4個の炭素原子を有するアルキル基またはアルケニル基とからなる群から独立に選定される、上記式によって表される単環式アルキル芳香族化合物、及び、
(B)
【化2】

式中、R及びRは、水素と、1〜約4個の炭素原子を有するアルキル基またはアルケニル基とからなる群から独立に選定され、
Yは0〜2の整数であり、
Zは0〜2の整数である、
上記式によって表される二環式アルキル芳香族化合物
からなる群から選定される少なくとも1つの芳香族化合物を含む、請求項11記載のプロセス。
【請求項13】
R、R、R、R及びRが、水素、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、及び、n−ブチル基からなる群から独立に選定される、請求項12記載のプロセス。
【請求項14】
前記原料が、少なくとも1つのI式の芳香族化合物を含み、R、R、R、R及びRが、水素、メチル基及びエチル基からなる群から独立に選定される、請求項13記載のプロセス。
【請求項15】
前記原料が、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、スチレン、キシレン、1,4−ジエチルベンゼン、1,2−ジエチルベンゼン、1,3−1,3,5−トリメチルベンゼン、1,2,3−トリメチルベンゼン、1,2,4−トリメチルベンゼン、1,3,5−トリエチルベンゼン、メチルプロピルベンゼン、エチルプロピルベンゼン、ジプロピルベンゼン、ジイソプロピルベンゼン、及び、トリイソプロピルベンゼンからなる群から選定される少なくとも1つの芳香族化合物を含む、請求項11記載のプロセス。
【請求項16】
前記原料が、1−メチルナフタレン、2−メチルナフタレン、1,2−ジメチルナフタレン、1,2−ジエチルナフタレン、2,3−ジメチルナフタレン、2,3−ジプロピルナフタレン、2,6−ジメチルナフタレン、及び、2,6−ジブチルナフタレンからなる群から選定される少なくとも1つの芳香族化合物を含む、請求項11記載のプロセス。
【請求項17】
前記原料中に存在する前記少なくとも1つの芳香族化合物が、ベンゼン、トルエン、キシレン、及び、これらの混合物からなる群から選定される、請求項11記載のプロセス。
【請求項18】
前記芳香族化合物の転化が、ジアルキル置換ベンゼンの異性化、モノアルキル置換ベンゼンの不均化、芳香族化合物のアルキル化、ポリアルキル芳香族化合物の存在の下での芳香族化合物のアルキル交換、アルキル芳香族化合物の脱アルキル、エチルベンゼンからキシレンを生成する異性化、ジアルキルナフタレンの異性化からなる群から選定される、請求項11記載のプロセス。
【請求項19】
前記芳香族化合物の転化が、トルエンの不均化、キシレンの異性化、及び、芳香族化合物のアルキル化からなる群から選定される、請求項11記載のプロセス。
【請求項20】
前記生成物がキシレンを含む、請求項11〜19のいずれか1項記載のプロセス。
【請求項21】
前記触媒が選択性強化剤(selectivating agent)をさらに含む、請求項1〜20のいずれか1項記載のプロセス。
【請求項22】
前記選択性強化剤が、シリカ、コークス、リン、アルカリ土類金属の酸化物、希土類金属の酸化物、酸化ランタン、酸化ホウ素、チタニア、酸化アンチモン、酸化マンガン、チタニア、及び、これらの混合物からなる群から選定される、請求項21記載のプロセス。
【請求項23】
前記芳香族化合物の転化が、芳香族化合物のアルキル化またはトルエンの不均化である、請求項11〜22のいずれか1項記載のプロセス。
【請求項24】
前記芳香族化合物の転化が、キシレンの転化/エチルベンゼンの転化である、請求項11〜22のいずれか1項記載のプロセス。
【請求項25】
前記原料が、エチルベンゼンと、パラキシレンの含有率が熱力学的平衡状態よりも低いキシレンとを含むC混合物であり、前記キシレン転化/エチルベンゼン転化が、前記C混合物をエチルベンゼンの転化に適した触媒と接触させてエチルベンゼンが低減した生成物を生成させ、このエチルベンゼン低減生成物を、ITQ−13を含む前記触媒と接触させることによって行われる、請求項24記載のプロセス。
【請求項26】
前記エチルベンゼンの転化に適した触媒がZSM−5を含む、請求項25記載のプロセス。
【請求項27】
前記芳香族化合物の転化が、トルエンのメチル化によるキシレンの生成である、請求項11〜22のいずれか1項記載のプロセス。
【請求項28】
前記メチル化剤がメタノールであり、このメタノールの少なくとも60パーセントが転化される、請求項27記載のプロセス。
【請求項29】
前記芳香族化合物の転化が、非芳香族化合物の芳香族化合物への転化を含む、請求項11記載のプロセス。
【請求項30】
前記芳香族化合物の転化が、軽質パラフィンの芳香族化合物とオレフィンとへの転化、軽質オレフィンの芳香族化合物への転化、ナフサの芳香族化合物への転化、6員環を有する脂環式化合物の脱水素、オキシジェネートの芳香族化合物への転化からなる群から選定される、請求項29記載のプロセス。
【請求項31】
前記芳香族化合物転化の生成物が、ベンゼン、トルエン、キシレン、及び、これらの混合物からなる群から選定される、請求項29または30記載のプロセス。
【請求項32】
前記芳香族化合物の転化が、約200℃〜約760℃の温度、ほぼ大気圧〜約200気圧の圧力、及び、約0.08−1〜約2000hr−1の重量空間速度を含む条件において実施される、請求項1〜31のいずれか1項記載のプロセス。
【請求項33】
他の芳香族炭化水素との混和物中の、ITQ−13の空孔サイズよりも小さい限界寸法を有する芳香族炭化水素の選択的分離を含み、そのプロセスはその混和物をITQ−13と接触させることを含む、請求項1〜10のいずれか1項記載の芳香族化合物転化プロセス。
【請求項34】
前記選択的分離が、パラキシレンを含有するC芳香族化合物異性体を含む混和物からのパラキシレンの選択的分離である、請求項33記載のプロセス。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族化合物の転化に適した原料を、転化条件の下で、3次元のチャネル系を有する多孔性の合成結晶材料を含む触媒と接触させる工程を含むプロセスであって、この3次元チャネル系が、それぞれが四面体に配位された原子の10員環によって規定される全体として平行な第1組のチャネル群と、同じく四面体配位原子の10員環によって規定されかつ前記第1組のチャネル群と交差する全体として平行な第2組のチャネル群と、前記第1組及び前記第2組のチャネル群と交差するチャネル群であって、それぞれが四面体配位原子の9員環によって規定される全体として平行な第3組のチャネル群とを含んでいるプロセス。
【請求項2】
前記多孔性合成結晶材料が、酸素原子によって架橋された四面体状原子の骨格構造を備えており、この四面体状原子の骨格構造は、下記の表1に示すナノメータの原子座標を有する単位セルによって規定され、各座標位置は±0.05ナノメータの範囲内で変化することがある、請求項1記載のプロセス。
【表1】

【請求項3】
前記多孔性合成結晶材料が、下記の表2に実質的に記載されているようなd−間隔と相対強度値とを含むX線回折パターンを有する、請求項1または2記載のプロセス。
【表2】

【請求項4】
前記多孔性合成結晶材料が、次式:
:(n)YO
のモル数の関係を含む組成を有し、式中、nは少なくとも約5であり、Xは3価の元素、Yは4価の元素である、請求項1〜3のいずれか1項記載のプロセス。
【請求項5】
前記Xが、ホウ素、鉄、インジウム、ガリウム、アルミニウム、及び、これらの組み合わせからなる群から選定された3価の元素であり、前記Yが、ケイ素、スズ、チタン、ゲルマニウム、及び、これらの組み合わせからなる群から選定された4価の元素である、請求項4記載のプロセス。
【請求項6】
前記Xがホウ素またはアルミニウムを含み、前記Yがケイ素を含む、請求項5記載のプロセス。
【請求項7】
前記Xがアルミニウムである、請求項6記載のプロセス。
【請求項8】
前記多孔性合成結晶材料のシリカ対アルミナのモル比が1000未満である、請求項7記載のプロセス。
【請求項9】
前記触媒が少なくとも1つの水素化/脱水素金属をさらに含む、請求項1〜8のいずれか1項記載のプロセス。
【請求項10】
前記少なくとも1つの水素化/脱水素金属が第VIII族の金属及び第VIIB族の金属からなる群から選定される、請求項9記載のプロセス。
【請求項11】
前記芳香族化合物の転化が、芳香族化合物を含む原料を、その原料とは異なる芳香族化合物を含む生成物にする転化を含む、請求項1〜10のいずれか1項記載のプロセス。
【請求項12】
前記原料が、
(A)
【化1】

式中、R、R及びRは、水素と、1〜約12個の炭素原子、好ましくは1〜4個の炭素原子を有するアルキル基またはアルケニル基とからなる群から独立に選定される、上記式によって表される単環式アルキル芳香族化合物、及び、
(B)
【化2】

式中、R及びRは、水素と、1〜約4個の炭素原子を有するアルキル基またはアルケニル基とからなる群から独立に選定され、
Yは0〜2の整数であり、
Zは0〜2の整数である、
上記式によって表される二環式アルキル芳香族化合物
からなる群から選定される少なくとも1つの芳香族化合物を含む、請求項11記載のプロセス。
【請求項13】
R、R、R、R及びRが、水素、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、及び、n−ブチル基からなる群から独立に選定される、請求項12記載のプロセス。
【請求項14】
前記原料が、少なくとも1つのI式の芳香族化合物を含み、R、R、R、R及びRが、水素、メチル基及びエチル基からなる群から独立に選定される、請求項13記載のプロセス。
【請求項15】
前記原料が、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、スチレン、キシレン、1,4−ジエチルベンゼン、1,2−ジエチルベンゼン、1,3−1,3,5−トリメチルベンゼン、1,2,3−トリメチルベンゼン、1,2,4−トリメチルベンゼン、1,3,5−トリエチルベンゼン、メチルプロピルベンゼン、エチルプロピルベンゼン、ジプロピルベンゼン、ジイソプロピルベンゼン、及び、トリイソプロピルベンゼンからなる群から選定される少なくとも1つの芳香族化合物を含む、請求項11記載のプロセス。
【請求項16】
前記原料が、1−メチルナフタレン、2−メチルナフタレン、1,2−ジメチルナフタレン、1,2−ジエチルナフタレン、2,3−ジメチルナフタレン、2,3−ジプロピルナフタレン、2,6−ジメチルナフタレン、及び、2,6−ジブチルナフタレンからなる群から選定される少なくとも1つの芳香族化合物を含む、請求項11記載のプロセス。
【請求項17】
前記原料中に存在する前記少なくとも1つの芳香族化合物が、ベンゼン、トルエン、キシレン、及び、これらの混合物からなる群から選定される、請求項11記載のプロセス。
【請求項18】
前記芳香族化合物の転化が、ジアルキル置換ベンゼンの異性化、モノアルキル置換ベンゼンの不均化、芳香族化合物のアルキル化、ポリアルキル芳香族化合物の存在の下での芳香族化合物のアルキル交換、アルキル芳香族化合物の脱アルキル、エチルベンゼンからキシレンを生成する異性化、ジアルキルナフタレンの異性化からなる群から選定される、請求項11記載のプロセス。
【請求項19】
前記芳香族化合物の転化が、トルエンの不均化、キシレンの異性化、及び、芳香族化合物のアルキル化からなる群から選定される、請求項11記載のプロセス。
【請求項20】
前記生成物がキシレンを含む、請求項11〜19のいずれか1項記載のプロセス。
【請求項21】
前記触媒が選択性強化剤(selectivating agent)をさらに含む、請求項1〜20のいずれか1項記載のプロセス。
【請求項22】
前記選択性強化剤が、シリカ、コークス、リン、アルカリ土類金属の酸化物、希土類金属の酸化物、酸化ランタン、酸化ホウ素、チタニア、酸化アンチモン、酸化マンガン、チタニア、及び、これらの混合物からなる群から選定される、請求項21記載のプロセス。
【請求項23】
前記芳香族化合物の転化が、芳香族化合物のアルキル化またはトルエンの不均化である、請求項11〜22のいずれか1項記載のプロセス。
【請求項24】
前記芳香族化合物の転化が、キシレンの転化/エチルベンゼンの転化である、請求項11〜22のいずれか1項記載のプロセス。
【請求項25】
前記原料が、エチルベンゼンと、パラキシレンの含有率が熱力学的平衡状態よりも低いキシレンとを含むC混合物であり、前記キシレン転化/エチルベンゼン転化が、前記C混合物をエチルベンゼンの転化に適した触媒と接触させてエチルベンゼンが低減した生成物を生成させ、このエチルベンゼン低減生成物を、ITQ−13を含む前記触媒と接触させることによって行われる、請求項24記載のプロセス。
【請求項26】
前記エチルベンゼンの転化に適した触媒がZSM−5を含む、請求項25記載のプロセス。
【請求項27】
前記芳香族化合物の転化が、トルエンのメチル化によるキシレンの生成である、請求項11〜22のいずれか1項記載のプロセス。
【請求項28】
前記メチル化剤がメタノールであり、このメタノールの少なくとも60パーセントが転化される、請求項27記載のプロセス。
【請求項29】
前記芳香族化合物の転化が、非芳香族化合物の芳香族化合物への転化を含む、請求項11記載のプロセス。
【請求項30】
前記芳香族化合物の転化が、軽質パラフィンの芳香族化合物とオレフィンとへの転化、軽質オレフィンの芳香族化合物への転化、ナフサの芳香族化合物への転化、6員環を有する脂環式化合物の脱水素、オキシジェネートの芳香族化合物への転化からなる群から選定される、請求項29記載のプロセス。
【請求項31】
前記芳香族化合物転化の生成物が、ベンゼン、トルエン、キシレン、及び、これらの混合物からなる群から選定される、請求項29または30記載のプロセス。
【請求項32】
前記芳香族化合物の転化が、約200℃〜約760℃の温度、ほぼ大気圧〜約200気圧の圧力、及び、約0.08−1〜約2000hr−1の重量空間速度を含む条件において実施される、請求項1〜31のいずれか1項記載のプロセス。
【請求項33】
他の芳香族炭化水素との混和物中の、ITQ−13の空孔サイズよりも小さい限界寸法を有する芳香族炭化水素の選択的分離を含み、そのプロセスはその混和物をITQ−13と接触させることを含む、請求項1〜10のいずれか1項記載の芳香族化合物転化プロセス。
【請求項34】
前記選択的分離が、パラキシレンを含有するC芳香族化合物異性体を含む混和物からのパラキシレンの選択的分離である、請求項33記載のプロセス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2006−504784(P2006−504784A)
【公表日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−550038(P2004−550038)
【出願日】平成15年10月17日(2003.10.17)
【国際出願番号】PCT/US2003/032969
【国際公開番号】WO2004/041756
【国際公開日】平成16年5月21日(2004.5.21)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
TEFLON
【出願人】(599134676)エクソンモービル・ケミカル・パテンツ・インク (301)
【Fターム(参考)】