説明

LEDパッケージ及びその製造方法

【課題】LEDパッケージから放出される光の量や色を所望の範囲内におさめられるようにしたLEDパッケージ及びその製造方法を提供する。
【解決手段】LEDチップが搭載されるパッド部と、LEDチップと電気的な接続を行うリード部と、LEDチップに所定の電気的な接続を行うためのボンディングワイヤと、該パッド部及びリード部を囲うように内壁が形成された凹部形状のキャビティを有する白色樹脂からなるリフレクター部とを備えたLEDパッケージにおいて、前記キャビティ内に、蛍光体が分散された封止樹脂が、少なくとも2層以上に分けられて充填されてなることを特徴とするLEDパッケージ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LEDチップ(Light Emitting Diode)を搭載するLED発光素子用リードフレームを備えたLEDパッケージ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、半導体集積回路やLED発光素子等の電子素子を搭載するためのリードフレームは、板状の鉄−ニッケル等の合金薄板、或いは銅−ニッケル−錫等の合金薄板からなるリードフレーム用金属材料を、その片面又は両面から塩化第二鉄等のエッチャントを用いてエッチング加工して製造される。このように製造されたリードフレームは、半導体集積回路やLED素子を搭載するためのパッド部(アイランド部)と、該パッド部とは絶縁状態とされて電子素子と電気的に接続が行われるリード部(アイランド部)とを備えた構成とされる。
【0003】
リードフレームのパッド部の表面側には、電子素子を載置するための搭載部(搭載面)が設けられている。そして、その裏面側には、LED発光素子等の電子素子本体から発生する駆動熱や電子素子周囲の環境条件による熱を放散させるための放熱部(放熱面)が設けられている。この放熱部により、電子素子側に熱が蓄積されないように放熱されるようになっている。
【0004】
上述のように設計されたリードフレーム等を用いて、LEDパッケージは作製されている。このLEDパッケージは、発光ダイオードを光源として用いた発光装置のことであり、ヒートシンク、リードフレーム、ケースが一体となっているものが最も一般的である。
ヒートシンクは熱の拡散を、リードフレームは電気的導通を、ケースは絶縁及び放熱効果をそれぞれ要求されている。これらで形成された基板にLEDチップを搭載し、エポキシ樹脂やシリコーン樹脂といった封止樹脂で樹脂モールドし、パッケージ化されたものをLEDパッケージという。
【0005】
近年、このLEDパッケージは、照明を始め、種々の電子部品に広く利用されている。そのため、LEDチップから放出される光を効率よく取り出すことが求められており、発光素子から直接放たれた光だけでなく、リフレクターを設けることで反射させ、外部に光をより多く放出されるような輝度の高いパッケージが求められている。
LEDチップから発光される高エネルギーの短波長光を外部に発光させ、しかもLEDの輝度を向上させるようにしたLEDパッケージとして、例えば特許文献1乃至3に記載されたものが提案されている。
【0006】
特許文献1に記載されたLEDパッケージでは、絶縁材料からなる基板上にLEDチップを搭載させ、LEDチップの一方の電極を一方の外部電極に接続させると共にLEDチップの他方の電極を他方の外部電極に接続させている。そして、LEDチップをドーム状の不織布で覆い、黄色蛍光体の表面に赤色系顔料を付着した顔料付き蛍光体を不織布の表面に担持させている。
【0007】
また、特許文献2に記載されたLEDパッケージでは、パッド部に紫外線を発光するLEDチップを搭載し、リフレクターの凹部にはLEDチップを被覆封止するコーティング層中に紫外線を可視光へ波長変換する蛍光体が分散状態で混入されている。これにより、LEDチップから発光された紫外光が蛍光体によって可視光に波長変換される。
また、別の例では、リフレクターの凹部にはLEDチップを被覆封止するコーティング層とその上に蛍光体が分散状態で混入された蛍光体層とが、二層で積層されている。この場合には、LEDチップから発光された紫外光がコーティング層を通って蛍光体層で可視光に変換されてすぐに外装体に入射するため可視光の取り出し効率が向上するとしている。
更に特許文献3に記載されたLED発光装置では、LEDチップを囲うリフレクターの内壁に光反射性のフィラーを含有する樹脂層を被覆形成し、リフレクターの凹部に封止部材を充填している。
【0008】
また、他の例として、図3に示すLEDパッケージ50では、リードフレームを構成する金属部51のパッド部51aにLEDチップ52が搭載され、ワイヤーWでLEDチップ52の所定の端子とリード部52が接続されている。図3のLEDパッケージ50は、LEDチップ52のパッド部51aがわの面にある別の所定の端子が、パッド部51aと電気的に接続されているものである。LEDチップ52のパッド部51aとの接続端子が、LEDチップ52の上面側に配置されている場合は、別のワイヤーによりパッド部51aと接続する構成とすればよい。
また、LEDチップ52とそのリード部56を囲うように絶縁性の白色樹脂からなるリフレクター部53が形成されている。リフレクター部53の凹部には例えば黄色蛍光体54が均一の密度で分散混合された透明封止樹脂55が充填されている。
そのため、LEDチップ52から発光する例えば短波長でエネルギーの高い青色光は一部が黄色蛍光体54によって当って励起されてある確率で黄色光となり、青色光と黄色光とで擬似白色光を発生させるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】実用新案登録第3117306号公報
【特許文献2】特開2003−197978号公報
【特許文献3】特開2007−42668号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、図3に示すように、一般的なLEDパッケージ50では、LEDチップ52から発光する青色光の一部が封止樹脂55中に含まれている黄色蛍光体54に衝突して黄色光になり、それらが混合した光がLEDパッケージ50から放出される。
ここで、封止樹脂55中の黄色蛍光体54の含有量が、各LEDパッケージ50で異なっていると、放出される光の量や色が所望の範囲からずれて各LEDパッケージ50で異なってくるという不具合が発生する。
また、封止樹脂55中の黄色蛍光体54の分散が不均一であった場合においても、やはり、放出される光の量や色が異なり所望の範囲からずれるという不具合が発生する。
また、LEDチップ52自体の品質のばらつきにより、放出される光の量や色が所望の範囲からずれる、ということもある。
【0011】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであって、LEDチップ自体の品質のばらつき、封止樹脂中の蛍光体の含有量のばらつきや分散の不均一などがあっても、各LEDパッケージから放出される光の量や色を所望の範囲内におさめられるようにしたLEDパッケージ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によるLEDパッケージは、LEDチップが搭載されるパッド部と、LEDチップと電気的な接続を行うリード部と、LEDチップに所定の電気的な接続を行うためのボンディングワイヤと、該パッド部及びリード部を囲うように内壁が形成された凹部形状のキャビティを有する白色樹脂からなるリフレクター部とを備えたLEDパッケージにおいて、
前記キャビティ内に、蛍光体が分散された封止樹脂が、少なくとも2層以上に分けられて充填されてなることを特徴とする。
本発明によるLEDパッケージによれば、蛍光体が分散された封止樹脂を2回以上に分けて充填することにより、ある封止樹脂層をいったん形成した後に、次の封止樹脂層の樹脂量や、封止樹脂中の蛍光体の濃度、種類を調整して充填することができる。これによりLEDパッケージから放出される光の量や色を、所望の範囲内におさめたものとすることが可能となる。
【0013】
また、2層以上の封止樹脂のうち、最初に充填される封止樹脂の層は、LEDチップとボンディングワイヤを埋めるのに十分な厚さであり、かつ、最終的な封止樹脂全体の厚さよりは薄いことが好ましい。
最初に充填される封止樹脂がLEDチップとボンディングワイヤの周囲に隙間なく充填されていれば、LEDチップの発光計測の際に短絡などの不具合が発生するのを防止することができる。また、封止樹脂を2層以上に分けて充填するためには、最初に充填される封止樹脂の層は、最終的な封止樹脂全体の厚さより薄くしておく必要がある。
【0014】
また、蛍光体は黄色蛍光体であることが好ましく、この場合、LEDチップが発光する光はエネルギーの高い青色光であることが好ましい。
この構成によって、青色光の一部は封止樹脂中に分散された黄色蛍光体に衝突し、さらにその一部が黄色光に励起されるため、黄色蛍光体に衝突しない青色光と黄色光との色のバランスによって疑似白色光を外部に発光できる。各層の封止樹脂中に分散された黄色蛍光体の濃度や、封止樹脂の量(封止樹脂層の厚さ)を調整することにより、LEDパッケージから放出される光の量や色を、所望の範囲内におさめたものとすることが可能となる。
【0015】
また、蛍光体は赤色蛍光体、緑色蛍光体及び青色蛍光体であることが好ましく、この場合、LEDチップが発光する光はエネルギーの高い近紫外光であることが好ましい。
この構成によって、近紫外光の一部は封止樹脂中に分散された赤色蛍光体、緑色蛍光体、青色蛍光体に衝突し、さらにその一部が各色光に励起されるため、青色光と赤色光と緑色光との色のバランスによって疑似白色光を外部に発光できる。各層の封止樹脂中に分散された赤色蛍光体、緑色蛍光体、青色蛍光体のそれぞれの濃度や、封止樹脂の量(封止樹脂層の厚さ)を調整することにより、LEDパッケージから放出される光の量や色を、所望の範囲内におさめたものとすることが可能となる。
【0016】
本発明によるLEDパッケージの製造方法は、LEDチップが搭載されるパッド部と、LEDチップと電気的な接続を行うリード部と、LEDチップに所定の電気的な接続を行うためのボンディングワイヤと、該パッド部及びリード部を囲うように内壁が形成された凹部形状のキャビティを有する白色樹脂からなるリフレクター部とを備えたLED発光素子用リードフレームを形成し、前記キャビティ内に、蛍光体が分散された封止樹脂を充填する際に、少なくとも2層以上になるよう分けて充填するようにしたことを特徴とする。
本発明によるLEDパッケージの製造方法によれば、蛍光体が分散された封止樹脂を2回以上に分けて充填することにより、ある封止樹脂層をいったん形成した後に、次の封止樹脂層の樹脂量や、封止樹脂中の蛍光体の濃度、種類を調整して充填することができる。これによりLEDパッケージから放出される光の量や色を、最終的に所望の範囲内におさめることが可能となる。
【0017】
また、2層以上の封止樹脂のうち、最初に充填される封止樹脂の層は、LEDチップとボンディングワイヤを埋めるのに十分な厚さであり、かつ、最終的な封止樹脂全体の厚さよりは薄いことが好ましい。
最初に充填される封止樹脂がLEDチップとボンディングワイヤの周囲に隙間なく充填されていれば、LEDチップの発光計測の際に短絡などの不具合が発生するのを防止することができる。また、封止樹脂を2層以上に分けて充填するためには、最初に充填される封止樹脂の層は、最終的な封止樹脂全体の厚さより薄くしておく必要がある。
【0018】
また、2層以上の封止樹脂のある層を充填した後に、LEDチップの発光を計測し、その光量または/および色の計測値から、次の層として充填する封止樹脂の量、または/および封止樹脂中の蛍光体の濃度または/および種類を調整することが望ましい。
このように、ある封止樹脂層を充填した後に、LEDチップの発光を計測してその光量や色の計測値を評価することにより、次の層として充填する封止樹脂の量や封止樹脂中の蛍光体の濃度、種類をよりきめ細かく調整することが可能になる。
【0019】
また、封止樹脂の各層の充填は、ポッテイング方式によることが望ましい。
封止樹脂量の調整を行う際には、1nL〜50nL程度の精度で樹脂の充填量を調整可能であることが望ましい。液体状の封止樹脂をキャビティ内に滴下するポッテイング方式は、このような微調整が可能な充填方式である。
【0020】
また、LEDチップから射出される光は青色光であり、蛍光体は黄色蛍光体であることが好ましい。
この構成によって、青色光の一部は封止樹脂中に分散された黄色蛍光体に衝突し、さらにその一部が黄色光に励起されるため、黄色蛍光体に衝突しない青色光と黄色光との色のバランスによって疑似白色光を外部に発光できる。各層の封止樹脂中に分散された黄色蛍光体の濃度や、封止樹脂の量(封止樹脂層の厚さ)を調整することにより、LEDパッケージから放出される光の量や色を、所望の範囲内におさめたものとすることが可能となる。
【0021】
また、LEDチップから射出される光は近紫外線であり、蛍光体は赤色蛍光体、緑色蛍光体、青色蛍光体であってもよい。
この構成によって、近紫外光の一部は封止樹脂中に分散された赤色蛍光体、緑色蛍光体、青色蛍光体に衝突し、さらにその一部が各色光に励起されるため、青色光と赤色光と緑色光との色のバランスによって疑似白色光を外部に発光できる。各層の封止樹脂中に分散された赤色蛍光体、緑色蛍光体、青色蛍光体のそれぞれの濃度や、封止樹脂の量(封止樹脂層の厚さ)を調整することにより、LEDパッケージから放出される光の量や色を、所望の範囲内におさめたものとすることが可能となる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係るLEDパッケージおよびその製造方法によれば、キャビティ内に、蛍光体が分散された封止樹脂が、少なくとも2層以上に分けられて充填されているから、ある封止樹脂層をいったん形成した後に、次の封止樹脂層の樹脂量や、封止樹脂中の蛍光体の濃度、種類を調整して充填することができる。上記調整は、LEDチップの発光を計測してその光量や色の計測値を評価したうえで調整量を決定することもできる。これによりLEDパッケージから放出される光の量や色を、所望の範囲内におさめたものとすることが可能となる。
【0023】
これにより、複数のLEDパッケージの放出光の量や色を揃えることが容易になる、という効果がある。また、LEDチップの発光のばらつき(発光の光量、色のばらつき)にも、ある程度対応できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態によるLEDパッケージの平面図である。
【図2】図1に示すLEDパッケージのP−P線断面図であり、(a)は最初に充填される封止樹脂層が形成された状態を示す図、(b)は2層目の封止樹脂層として蛍光体が多く分散された封止樹脂を使用した場合を示す図、(c)は2層目の封止樹脂層として充填する樹脂量を少なくした場合を示す図、である。
【図3】従来のLEDパッケージの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態によるLEDパッケージについて図面を参照して詳細に説明する。
図1及び図2に示すLEDパッケージ1において、LED発光素子用リードフレーム(以下、単にリードフレームと称する)2は、金属部からなる板状のリードフレーム本体3と、リードフレーム本体3の上面に樹脂モールドした絶縁性の白色樹脂4とを備えている。
白色樹脂4はLEDチップ10を収容する凹部が一体形成されたリフレクター部6であり、この凹部はキャビティ5を構成する。LEDチップ10は例えば青色発光LEDチップである。なお、外装体は省略されている。
【0026】
リードフレーム本体3の金属部は、例えば板状の鉄−ニッケル等の合金薄板、或いは銅−ニッケル−錫等の合金薄板からなっている。リードフレーム本体3は、この金属合金製の板状の基材をエッチングすることにより形成される部材であって、LEDチップ10を搭載するパッド部7とLEDチップ10に電力を供給するリード部8とがスリット9によって分離され、スリット9内には絶縁性の樹脂が充填されてパッド部7とリード部8を絶縁している。
パッド部7は、図2に示すように、表面(上面)がLEDチップ10を搭載するための搭載面Aとされており、搭載面Aの反対側の裏面(下面)はパッド放熱面Bとされている。パッド放熱面Bは、LEDチップ10から発生する駆動熱やLEDチップ10の周囲環境条件から熱を放散させる放熱部として機能する。
【0027】
リード部8は、パッド部7の水平方向にスリット9を介して所定間隔離間した位置に配置されている。なお、リード部8は例えばパッド部7の両側に分離して一対設けられている構成でもよい。リード部8は、パッド部7と同様の厚みを有しており、リード部8の表面(上面)が、LEDチップ10に電気的に接続される接続面Cとされ、接続面Cの反対側の裏面(下面)が、リード部8において発生する熱を放熱する放熱部として機能するリード放熱面Dとされている。
【0028】
例えば、パッド部7の搭載面Aとリード部8の接続面Cとは、同一の板状基材から形成されるため、特段の加工を行わない限り、同一平面とされている。同様に、パッド部7のパッド放熱面B及びリード部8のリード放熱面Dも同一平面とされている。
また、リード部8の接続面Cはパッド部7に実装されるLEDチップ10に対してワイヤーボンディングやチップボンディングによって接続されており、本実施形態では、例えば金線等からなるワイヤーWを介して電気的に接続されている。
なお、接続面Cへのメッキは、銀メッキ、金メッキ、パラジウムメッキ等の中から用途に合わせて自由に選択することができる。また、このように接続面Cにメッキをするのに先立って、接続面Cに対して熱拡散性に優れたニッケルメッキ等の下地メッキを行なってもよい。
【0029】
リードフレーム本体3の上面に形成されるキャビティ5は白色樹脂4で周囲に内壁5aを成形した略逆円錐台形状の凹部として形成され、その内壁5aはパッド部7及びリード8部を含むリードフレーム本体3の表面と共に略逆円錐台形状のLEDチップ収納空間を形成する。
そして、キャビティ5の略逆円錐台形状の凹部内には、図2(b)または(c)に示すように、黄色蛍光体13が分散して含まれている透明封止樹脂12の層12aおよび層12bが、この順に充填されている。透明封止樹脂12は高光透過率(透過率90〜95%以上)を有する樹脂である。
【0030】
ここで、LEDチップ10は例えば高エネルギーで短波長410nmの青色光を発光するものであり、この青色光の一部が黄色蛍光体13に衝突することで青色光から励起されて青色光よりもエネルギーの低い黄色光となる。そして、発光された青色光と励起された黄色光との色のバランスで擬似白色光となって外部に発光することになる。
【0031】
なお、白色樹脂4として、例えばポリアミド系樹脂(芳香族ポリアミド系樹脂を含む)、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネイト樹脂、芳香族系ポリエステル樹脂(不飽和ポリエステル樹脂)、ポリフタルアミド(PPA)、液晶ポリマー(LCP)、ナイロン6T等を採用できる。
透明封止樹脂12は、例えばエポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフタルアミド等を用いることができ、これらのうちの2種又は3種以上の混合系を用いてもよい。
また、黄色蛍光体13として、例えばイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体を用いることができ、この蛍光体であれば青色系の光を黄色または黄緑色系の光に効率よく変換できる。なお、イットリウムの一部または全部をLaまたはLuに置換したものを用いることができ、また、アルミニウムの一部または全部をInまたはScに置換したものを用いることもできる。
【0032】
次に、本実施形態によるLEDパッケージ1の製造方法について説明する。
まずは、リードフレーム2を製造する過程を説明する。即ち、Fe−Ni等の合金薄膜またはCu−Ni−Sn等の金属合金製の板状をなすリードフレーム用金属材料を用意する。この金属材料の上面と裏面にフォトレジスト(感光性樹脂)を塗布してレジスト層を形成し、所定のパターン露光用フォトマスクを用いてフォトレジスト層にパターンを露光し、次いで、現像、必要に応じて硬膜処理をする。
これにより、金属材料の上面にパッド部7のチップ搭載用上面A、リード部8の電気接続エリアCを形成する部分を残してフォトレジストが現像除去されたレジストパターンが形成される。
【0033】
次に、レジストパターンが形成された金属材料の上面に、フォトレジスト非形成部を塩化第二鉄等のエッチャントを用いてエッチング加工処理(ハーフエッチング処理)を行なう。これにより、パッド部7及びリード部8となるべき部分の間には、範囲の狭いレジストパターンが配置されていることにより、比較的深度の小さいエッチング部分が形成される。これにより、金属材料の上面に凹凸形状が形成される。裏面にも同様に凹凸形状が形成される。
【0034】
次に、トランスファーモールド成形もしくは射出成形によりパッド部7とリード部8をスリット9の絶縁樹脂で保持すると共に、リフレクター部6とキャビティ5の部分を絶縁性の白色樹脂4で成形する。これにより、リフレクター部6はパッド部7とリード部8の上面の周囲の白色樹脂4によって略逆円錐台形状で上方に拡径された内壁5aの反射面を有するキャビティ5が形成される。
【0035】
そして、内壁5aで囲まれた領域内のリードフレーム本体3のパッド部7の搭載面Aとリード部8の接続面Cに、耐熱拡散性に優れたNiめっき等の下地めっきを行い、その後に、銀めっき、金めっき、パラジウムめっき等を行う。ここで、LEDパッケージ1を外部基板に搭載、接続するために、パッド部7の放熱用裏面B及びリード部8の放熱用裏面Dにも銀めっき、金めっき、パラジウムめっき等を行ってもよい。
このようにして凹部の内壁5aが上方に向かって外側に傾斜して拡径するキャビティ5として形成され、キャビティ5の底部にパッド部7の搭載面A及びリード部8の接続面Cが露出するリードフレーム2が成形される。
【0036】
次に、上述したリードフレーム2からLEDパッケージ1を製造する方法について説明する。
まず、製造したリードフレーム2のパッド部7の搭載面AにLEDチップ10を搭載する。この搭載の際に、LEDチップ10の所定端子とパッド部7の搭載面Aの電気的な接続を形成するようにしても良いし、図1に示しているようにワイヤーWを用いてワイヤーボンディングしてもよい。
また、LEDチップ10の別の所定端子とリード部8の接続面CとをワイヤーWを用いてワイヤーボンディングする。
次に、図2(a)に示すように、リードフレーム本体3上に白色樹脂4によって形成されたキャビティ5の内部に、黄色蛍光体13が分散された封止樹脂12を充填し、封止樹脂層12aを形成する。封止樹脂層12aは、LEDチップ10およびワイヤーWを完全に覆うのに十分な厚さで、かつ、封止樹脂の最終的な厚さよりは薄くしておく。
【0037】
封止樹脂層12aが所定の厚さで形成されたら、LEDチップ10の点灯試験を行う。この点灯試験は、パッド部7およびリード部8を介してLEDチップ10に所定の電気を供給することにより実施することが可能である。ここでLEDパッケージ1からの放出光について、光量や色(放出光の分光強度分布や、分光強度分布から得られる各種の代表値など)を計測する。
【0038】
この放出光の光量や色についての計測結果をもとに、封止樹脂層12bの条件を決める。すなわち、封止樹脂層12bとして使用する封止樹脂中の黄色蛍光体13の濃度、封止樹脂層12bの厚さなどを決定する。
例えば、放出光の色について「青色光が強すぎる」という計測結果であった場合は、封止樹脂層12bの黄色蛍光体13の濃度を高くするか、または、層厚を大きくすればよい。
「光量が弱すぎる」という計測結果であった場合は、封止樹脂層12bの層厚は小さく、ただし放出光の色のバランスを崩さないよう黄色蛍光体13の濃度は高くする、などの対応をとるようにすればよい。
【0039】
図2(b)は、封止樹脂層12bの形成の際に、黄色蛍光体13の濃度を調整する方式をとった場合の模式図である。
図2(c)は、封止樹脂層12bの形成の際に、その層厚を調整する方式をとった場合を示したものである。
以上の説明においては、封止樹脂層が2層である場合について説明したが、封止樹脂層が3層以上あってもかまわない。
【0040】
なお、本発明は上述の実施形態によるLEDパッケージ1及びその製造方法に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
例えば、上述の実施形態ではLED発光素子として青色光を発光する青色光LEDチップ10を用いたが、これに代えて近紫外光を発光する近紫外光LEDを採用してもよい。
この場合、3原色である赤色蛍光体Rと緑色蛍光体Gと青色蛍光体Bとを透明封止樹脂12内に分散させるようにし、2層目以降の封止樹脂層に用いる透明封止樹脂は、各蛍光体の濃度の絶対値や相対値を調整したもの、とすることも可能である。
【0041】
なお、蛍光体の濃度をさまざまな値にとった封止樹脂を多数種類用意しておくのは、生産性やコスト的な面から困難である。したがって、蛍光体の濃度が所定値で固定された封止樹脂1種類を使って2層目以降の層厚を調整するという方式か、蛍光体の濃度が互いに異なる数種類の封止樹脂を使って、2層目以降の封止樹脂の蛍光体濃度の選択と層厚調整を併用するという方式のいずれかが、現実的である。
【0042】
各封止樹脂層として透明封止樹脂12を充填する際は、ポッテイング方式を利用することが望ましい。ポッテイング方式は、ノズルから液体状の封止樹脂をキャビティ内に滴下するものであり、充填量の微調整がしやすいという特徴がある。金型を使用するトランスファーモールド方式などは、金型の形状で樹脂の充填量が決まってしまい、微調整は困難である。
さらに、LEDパッケージの製造方式として、多数個をマトリックス状などに並べた状態で製造して最終的に1個ずつまたは所定個数ずつ連結した状態に切り離す、というものがある。このような製造方式の場合もポッテイング方式であれば、各LEDパッケージについて、封止樹脂の蛍光体濃度を選択したり、封止樹脂の充填量を調整したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0043】
1 LEDパッケージ
2 リードフレーム
3 リードフレーム本体
4 白色樹脂
5 キャビティ
5a 内壁
6 リフレクター部
7 パッド部
8 リード部
10 LEDチップ
12 透明封止樹脂
12a、12b 封止樹脂層
13 黄色蛍光体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
LEDチップが搭載されるパッド部と、LEDチップと電気的な接続を行うリード部と、LEDチップに所定の電気的な接続を行うためのボンディングワイヤと、該パッド部及びリード部を囲うように内壁が形成された凹部形状のキャビティを有する白色樹脂からなるリフレクター部とを備えたLEDパッケージにおいて、
前記キャビティ内に、蛍光体が分散された封止樹脂が、少なくとも2層以上に分けられて充填されてなることを特徴とするLEDパッケージ。
【請求項2】
前記2層以上の封止樹脂のうち、最初に充填される封止樹脂の層は、前記LEDチップと前記ボンディングワイヤを埋めるのに十分な厚さであり、かつ、最終的な封止樹脂全体の厚さよりは薄いことを特徴とする請求項1に記載のLEDパッケージ。
【請求項3】
前記蛍光体は黄色蛍光体である請求項1または2に記載されたLEDパッケージ。
【請求項4】
前記蛍光体は、赤色蛍光体、緑色蛍光体及び青色蛍光体である請求項1または2に記載されたLEDパッケージ。
【請求項5】
LEDチップが搭載されるパッド部と、LEDチップと電気的な接続を行うリード部と、LEDチップに所定の電気的な接続を行うためのボンディングワイヤと、該パッド部及びリード部を囲うように内壁が形成された凹部形状のキャビティを有する白色樹脂からなるリフレクター部とを備えたLED発光素子用リードフレームを形成し、
前記キャビティ内に、蛍光体が分散された封止樹脂を充填する際に、少なくとも2層以上になるよう分けて充填するようにしたことを特徴とするLEDパッケージの製造方法。
【請求項6】
前記2層以上の封止樹脂のうち、最初に充填される封止樹脂の層は、前記LEDチップと前記ボンディングワイヤを埋めるのに十分な厚さであり、かつ、最終的な封止樹脂全体の厚さよりは薄いことを特徴とする請求項5に記載のLEDパッケージの製造方法。
【請求項7】
前記2層以上の封止樹脂のある層を充填した後に、前記LEDチップの発光を計測し、その光量または/および色の計測値から、次の層として充填する封止樹脂の量、または/および封止樹脂中の蛍光体の濃度または/および種類を調整するようにした請求項5または6に記載されたLEDパッケージの製造方法。
【請求項8】
前記2層以上の封止樹脂の充填は、ポッテイング方式によることを特徴とする請求項5乃至7のいずれか1項に記載されたLEDパッケージの製造方法。
【請求項9】
前記LEDチップから射出される光は青色光であり、前記蛍光体は黄色蛍光体である請求項5乃至8のいずれか1項に記載されたLEDパッケージの製造方法。
【請求項10】
前記LEDチップから射出される光は近紫外線であり、前記蛍光体は赤色蛍光体、緑色蛍光体、青色蛍光体である請求項5乃至8のいずれか1項に記載されたLEDパッケージの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−227202(P2012−227202A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−90890(P2011−90890)
【出願日】平成23年4月15日(2011.4.15)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】