説明

LED光源装置とそれを用いた観察装置および内視鏡

【課題】内視鏡では構成を簡単にして小型化、特に挿入部が細いことが求められている。LEDは小型化に優位であるが従来のLEDを用いた光源装置はR(赤),G(緑),B(青)色のLEDを用意し3本の光ファイバを用意しているため挿入部が太くなってしまう。またLEDそれぞれに駆動回路が必要であり、白色を出すためには3個のLEDの出力バランスの調整が必要であり色再現性が困難である。
【解決手段】LEDの出力光と光ファイバなどの導光部材の間に波長変換部材として配置した蛍光材を可動することにより、前記導光部材から出力される光を切り替え可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工業用あるいは医療用途の照明に用いられるLED光源装置及びそれを用いた観察装置に関する。特に出力光を白色または青色、または紫色等に選択可能な照明光源に用いられ、出力光を選択することによって励起発光や屈折率を利用した検査、観察に用いられる観察装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医療用の内視鏡では白色光で体内を照らし(照明光学系)CCDカメラなどにて体内画像を得ている。照明光学系はキセノンランプ等の高輝度ランプ、ランプ出力を集光する集光レンズ(反射ミラー等も含まれる)、集光した光を体内に導く光ファイバで構成されたライトガイド、さらにはライトガイドからの出力を体内に照射するための照明レンズで構成されている。
【0003】
これら従来の照明光学系で用いられる高輝度ランプは発熱や、消費電力が大きく、形状が大きくなってしまうなどの問題からLEDを用いた照明光学系が提案されている。
【0004】
特許文献1ではLEDを用いた内視鏡の光源装置が開示されている。LED発光部としてのR(赤)、G(緑)、B(青)の3色と各々に対応する光ファイバを3本用意すれば、面順次式の内視鏡装置に用いることが出来る。面順次式内視鏡とはR,G,Bの照明光を切り替えて順次被写体に照射して被写体を撮像し観察するもので高画質な映像が得られる。
【0005】
例えば、紫色や青色の光を当てると正常な組織は蛍光を出すが、癌の部分は蛍光を出しにくくなり暗く見えにくくなるため区別が出来る。青色の光を当てた場合の画像と、3色をそれぞれ当てて得られた画像を組み合わせた画像(白色光で得られた画像に相当)とを比較することで癌を発見することが出来る。
【0006】
このように照明光の色を変えて励起発光する検査や屈折率を利用した検査や観察が行われている。その他にも紫外(UV)光を用いた場合の応用としては、樹脂を硬化させる作用や、光触媒を用いた殺菌作用等が考えられている。
【0007】
上記のように紫外、紫、青色の範囲は励起発光、屈折率、UV硬化などを利用した検査、加工技術には優位な光であることがわかる。
【特許文献1】特許第3088165号
【非特許文献1】「次世代照らす白色LED」平成15年度応用物理学会関西支部シンポジウム、平成15年11月
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
内視鏡では構成を簡単にして小型化、特に挿入部が細いことが求められている。LEDは小型化に優位であるが従来のLEDを用いた光源装置はR(赤),G(緑),B(青)色のLEDを用意し3本の光ファイバを用意しているため挿入部が太くなってしまう。またLEDそれぞれに駆動回路が必要であり、白色を出すためには3個のLEDの出力バランスの調整が必要であり色再現性が困難である。
【0009】
上記課題を解決するために、従来3色で行われていた観察を、例えば白色光以外に青色または紫色があれば内視鏡としては十分機能すると言う考えに基づいて、一つのLEDで白色及び青色(または紫色、またはUV)の2色切り替えが出来る小型化可能な光源を開発することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明はこれらの課題を解決するためのものであり、LEDの出力光を導光部材を介して出射するようにしたLED光源装置において、前記LEDの光路上に、蛍光材を選択的に配置可能としたことを特徴とする。
【0011】
さらに前記LEDの出力光は青色系または紫外光であり、前記蛍光材を透過した光は白色光であることを特徴とする。
【0012】
さらに前記蛍光材を光路上に選択的に配置するための移動手段を有することを特徴とする。
【0013】
さらに前記導光部材が光ファイバであることを特徴とする。
【0014】
さらに前記光ファイバがプラスチック光ファイバ(POF)からなり、その出射端を凹状としたことを特徴とする。
【0015】
また前記LED光源装置の出力光を被測定物に照射することを特徴とする。
【0016】
また前記記載のLED光源装置を用いて、LED自体の出力光を被測定物に照射したときの映像と、前記蛍光材を介した白色光を被測定物に照射したときの映像とを比較観察するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、LEDの出力光の光路上に波長変換部材として蛍光材を選択的に配置可能(すなわち可動)とすることで、一つのLEDを用いて白色光と青色(または紫色)が選択可能となり、小型で挿入部が細い内視鏡用LED光源装置を提供できる。
【0018】
またLEDとしてUV光を選択すれば、白色光とUV光を選択的でき、一台で照明用白色光源と樹脂硬化用UV光源を供えた小型光源を提供出来る効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1は本発明の第1の実施形態を示す構成図である。LEDチップ1、反射鏡2、封止材3、集光レンズ4、POF5、蛍光基板6、リニア駆動モータ7で構成されている。
【0020】
LEDチップ1は青色で発光し集光レンズ4で集められ蛍光基板6を通過しPOF5に導かれPOF5の出力端側からは白色光が出力される。
【0021】
反射鏡2はLEDチップ1からの出力光を反射し、集光レンズ4に集まる光束を増やすためのもので、封止材3はLEDチップ1を保護する働きと、それ自身のもつ光の屈折率によりレンズ機能があり集光レンズ4に集めやすい効果をももたらす。またPOF5の先端は球面形状で凹状に研磨加工されている。
【0022】
蛍光基板6は蛍光部6aと透明部6bからなり、透明の樹脂またはガラスで出来ており、蛍光部6aにはLED光で蛍光を発生する蛍光材が塗布されている。リニア駆動モータ7により蛍光基板6を移動させることにより、LEDの光路上における蛍光材の出し入れが可能である。蛍光部6aがLEDの光路上にある場合は蛍光状態となり白色光が得られるが、光路上に透明部6bがある場合はLEDチップ1からの出力がそのままPOF5から出力されることになる。
【0023】
上記実施形態では、蛍光基板6を移動させる手段としてリニア駆動モータ7を用いているが、移動させる手段としては回転手段を用いるなどさまざまなバリエーションが考えられる。また透明部6bは、蛍光部6aと屈折率が同程度になるようにして光学系の設計を容易にするために設けたものであり、無くてもかまわない。
【0024】
LEDチップ1と蛍光材の選択については、非特許文献1に記されている。青色〜紫外LEDにはGaN系化合物半導体が用いられ、白色LEDの方式には(1)青色LEDと黄色発光の蛍光体(YAG蛍光体)、(2)紫色、紫外LEDとR・G・B蛍光体、の2通りがある。
【0025】
ここでは上記2通りの選択が可能である。なおR・G・B蛍光体とは赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の蛍光体3種類を組み合わせたものである。このように構成することで、一つのLEDで白色光と青色(または紫色)の選択が可能となり、小型で挿入部が細い内視鏡用LED光源装置を提供できる。
【0026】
またLEDとしてUV光を選択すれば、白色光とUV光を選択的でき、一台で照明用白色光源と樹脂硬化用UV光源を供えた小型光源を提供出来る効果がある。
【0027】
さらに図7(b)に示すようにPOF5の先端部5aを球面形状(半径5mm)で凹状にすることで出力ビーム8の広がりを大きくすることができる。POF先端5aが平坦の場合(図7(a))、出力ビーム8の広がり角は30度であるが、半径5mmの凹面にすると(図7(b))ビーム広がり角は50度になる。
【0028】
このようにPOF5の先端を加工することで照明レンズの機能を持たせられる効果がある。
【実施例】
【0029】
図1の実施形態に基づき実施例を説明する。図2は使用したLEDチップの発光スペクトラム波形である。LEDチップ1は青色LED(GaN)で、波長は450nm付近である。反射鏡2はアルミコーティングされ高い反射率を有している。封止材3は樹脂でありレンズ機能を持たせてLEDチップ1からの出力光の広がりを狭める働きも有している。集光レンズ4はLEDチップ1の光をPOF5に集光するもので、非球面コンデンサーレンズの構成であり、POF5に効率よく集光するように設計されている。POF5はφ2mmの図6に示した透過損失波長特性を有するアクリル系ファイバである。長さは3mである。蛍光基板6はガラス基板で出来ており約半分の蛍光部6aにはYAG蛍光材が塗布されている。また蛍光基板6は、可動コイル型のリニア駆動モータ7により図1の上下方向に移動することが出来る。
【0030】
このような状態でLEDチップ1を点灯させる。蛍光基板6の蛍光部6aがLEDチップ1とPOF5の光路上にある場合にはPOF5の出力端から白色光が出力される。図3は出力される青色LEDを用いた白色光のスペクトラム波形である。ただしここで得られる白色光は青色と黄色が主に混合した擬似白色光である。
【0031】
さらにPOF5の出力端から青色だけを取り出す場合には、透明部6bがLEDチップ1とPOF5の光路上に来るようにリニア駆動モータ7を制御する。このとき得られる出力光は図3のような発光スペクトラムになる。
【0032】
上記のように構成することで、一つのLEDで青色及び白色の切り替えが可能であり、2色で観察することが出来、小型で挿入部が細い内視鏡用LED光源装置を提供できる。
【0033】
ここでは青色LEDを用いたが上記LEDチップ1を紫色またはUV光を用いてそれに前述したようその光に対応する蛍光体を選択すれば紫色、UV光さらに白色光の選択が可能となる。
【0034】
図4は紫色LEDの発光スペクトラムであり、図5は紫色LEDを用いた白色光の発光スペクトラムを示す図である。このとき使用した蛍光体はR・G・B蛍光体である。図3のスペクトラムに比べ630nm付近の赤色が強化され、より太陽光に近いスペクトラムが得られている。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明におけるLED光源装置及びそれを用いた観察装置の実施形態を示す図である。
【図2】青色LEDの発光スペクトルを示す図である。
【図3】青色LEDを用いた場合の出力端の発光スペクトルを示す図である。
【図4】紫色LEDの発光スペクトルを示す図である。
【図5】紫色LEDを用いた場合の出力端の発光スペクトラムを示す図である。
【図6】POFの透過損失波長特性を示す図である。
【図7】(a)は本発明における出力端側POFの形状が平坦の場合の出力光ビーム広がり角を示し、(b)は本発明における出力端側POFの形状が球面凹状の場合の出力光ビーム広がり角を示す。
【図8】従来のLED光源装置の例を示す図である。
【符号の説明】
【0036】
1:LEDチップ
2:反射鏡
3:封止材
4:集光レンズ
5:POF
5a:先端部
6:蛍光基板
6a:蛍光部
6b:透明部
7:リニア駆動モータ
8:出力ビーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
LEDの出力光を導光部材を介して出射するようにしたLED光源装置において、前記LEDの光路上に、蛍光材を選択的に配置可能としたことを特徴とするLED光源装置。
【請求項2】
前記LEDの出力光は青色系または紫外光であり、前記蛍光材を透過した光は白色光であることを特徴とする請求項1記載のLED光源装置。
【請求項3】
前記蛍光材を光路上に選択的に配置するための移動手段を有することを特徴とする請求項1または2記載のLED光源装置。
【請求項4】
前記導光部材が光ファイバであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のLED光源装置。
【請求項5】
前記光ファイバがプラスチック光ファイバ(POF)からなり、その出射端を凹状としたことを特徴とする請求項4記載のLED光源装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のLED光源装置の出力光を被測定物に照射することを特徴とする観察装置。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかに記載のLED光源装置を用いて、LED自体の出力光を被測定物に照射したときの映像と、前記蛍光材を介した白色光を被測定物に照射したときの映像とを比較観察するようにしたことを特徴とする内視鏡。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−34723(P2006−34723A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−220724(P2004−220724)
【出願日】平成16年7月28日(2004.7.28)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】