説明

LED素子用リードフレーム基板および発光素子

【課題】LED素子用リードフレーム基板の切断時に発生するタイバーのバリを低減するとともに、切断工具の負荷も低減できるようにする。
【解決手段】LEDチップ搭載部2と電気的接続エリア部3とがY方向において離間されて対向配置された単位リードフレーム1Bを含む個片化されたリードフレーム基板を形成するためのリードフレーム基板11であって、単位リードフレーム1Bが、Y方向に離間して複数配列されるとともにY方向と交差するX方向に延びるタイバー部60、70によって複数連結されたリードフレーム1と、LEDチップ搭載部2および電気的接続エリア部3の一部を除くリードフレーム1の部位を覆う樹脂部とを備え、Y方向において樹脂部およびタイバー部60、70を、X方向において樹脂部を、それぞれ切断することで、個片化されたリードフレーム基板を製造できるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LED(Light Emitting Diode)素子用リードフレーム基板および発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、LED素子が実装されるリードフレームは、鉄−ニッケル等の合金薄板、銅−ニッケル−錫等の合金薄板からなるリードフレーム用金属板材を、その片面または両面から塩化第二鉄等のエッチャントを用いてフォトエッチング加工することで製造される。また、かかるリードフレームは、LEDチップを搭載するためのパッド(アイランド部)を有するLEDチップ搭載部と、このLEDチップ搭載部に対して離間配置された、LEDチップと電気的に接続されるインナーリード及びアウターリードを有する電気的接続エリア部を備えている(特許文献1〜3参照)。
上記リードフレームのパッドは、その表面側にLED素子を載置するための搭載部(搭載面)と、その裏面側には、LEDチップから発生する駆動熱やLEDチッブ周囲の環境条件による熱を放散されるための放熱部(放熱板)を備えており、LEDチップに熱が蓄積されないように、パッド裏面側の放熱部から外界側に熱が放出されるように構成されている。
【0003】
このようなリードフレーム(単位リードフレーム)は、金属板材をエッチングするなどして、複数のリードフレームパターンが、タイバーと称される連結部によって2方向に連結された2次元的なパターンからなるリードフレームを形成した後、樹脂モールド成形を行って、LED素子用リードフレーム基板を形成し、LED素子の配線工程の前後のいずれかの工程でこのLED素子用リードフレーム基板をタイバーが貫通する切断代に沿って切断して個片化することより製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−8071号公報
【特許文献2】特開2003−347600号公報
【特許文献3】特開2004−172160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような従来技術のLED素子用リードフレーム基板および発光素子には以下の問題があった。
従来技術では、LED素子用リードフレーム基板を切断して個片化するとき、樹脂部とともにタイバーを切断しなければならないため、切断面にバリが生じたり、切断時の負荷になって切断工具が摩耗したりするという問題がある。
【0006】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、LED素子用リードフレーム基板の切断時に発生するタイバーのバリを低減するとともに、切断工具の負荷も低減できるLED素子用リードフレーム基板および発光素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明では、LEDチップを搭載されるパッドを有するLEDチップ搭載部と前記LEDチップに電気的に接続されるリードを形成する電気的接続エリア部とが第1の方向において離間されて対向配置された単位リードフレームを含む個片基板を形成するためのLED素子用リードフレーム基板であって、前記単位リードフレームが、前記第1の方向に離間して複数配列されるとともに前記第1の方向と交差する第2の方向に延びるタイバーによって複数連結されたリードフレームと、前記LEDチップ搭載部および前記電気的接続エリア部の一部を除く前記リードフレームの部位を覆う樹脂部とを備え、前記第1の方向において前記樹脂部および前記タイバーを、前記第2の方向において前記樹脂部を、それぞれ切断することで、前記個片基板を製造できるようにした構成とする。
【0008】
請求項2に記載の発明では、発光素子において、請求項1に記載のLED素子用リードフレーム基板の前記タイバーを切断して製造された前記個片基板上にLEDチップを搭載した構成とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明のLED素子用リードフレーム基板および発光素子によれば、タイバーを第2の方向のみに設けることで、切断されるタイバーの数を低減することができるため、LED素子用リードフレーム基板の切断時に発生するタイバーのバリを低減するとともに、切断工具の負荷や摩耗量を低減できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態の発光素子の構成を示す模式的な平面図、右側面図、およびD視の側面図である。
【図2】本発明の実施形態の発光素子の構成を示す模式的な裏面図である。
【図3】図1におけるA−A断面図である。
【図4】図1におけるB−B断面図である。
【図5】本発明の実施形態のLED素子用リードフレーム基板を示す平面図、およびリードフレームの平面図である。
【図6】比較例のリードフレームの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下では、本発明の実施形態のLED素子用リードフレーム基板、および発光素子について添付図面を参照して説明する。
図1(a)、(b)は、本発明の実施形態の発光素子の構成を示す模式的な平面図、および右側面図である。図1(c)は、図1(a)におけるD視の側面図である。図2は、本発明の実施形態の発光素子の構成を示す模式的な裏面図である。図3は、図1(a)におけるA−A断面図である。図4は、図1(a)におけるB−B断面図である。
【0012】
本実施形態の発光素子50の概略構成は、図1(a)、(b)、(c)、図2〜図4に示すように、外形が直方体状に形成されており、銅−ニッケル−錫等の合金板をフォトエッチング加工することにより形成された後、切断されて個片化されたリードフレーム1A(図1(a)参照)と、LED素子であるLEDチップ10と、個片化されたリードフレーム1AおよびLEDチップ10をパッケージングする樹脂パッケージ4(樹脂部)と、LEDチップ10を光透過可能に封止する透明樹脂部9とを備える。
ここで、個片化されたリードフレーム1Aおよび樹脂パッケージ4は、個片化されたリードフレーム基板11A(個片基板、図1(a)参照)を構成している。
以下では、図1(a)に示すように、発光素子50の平面視において互いに直交する側面に沿う方向を、X方向(図1(a)の左側から右側に向かう方向)、Y方向(図1(b)の下側から上側に向かう方向)と称する。
樹脂パッケージ4の中心部には、円状に開口し内部側のLEDチップ搭載部2、電気的接続エリア部3に向かうにつれて縮径するテーパー面で構成された穴部であるリフレクター部5が設けられている。
【0013】
個片化されたリードフレーム1Aは、LEDチップ10を搭載するために1乃至複数箇所に形成されたパッド2aを有するLEDチップ搭載部2と、LEDチップ10との電気的接続を行うためのリード3aが形成された電気的接続エリア部3を有している。
LEDチップ搭載部2と電気的接続エリア部3とは、リフレクター部5の内部側で離間領域GをあけてY方向(第1の方向)に対向されており、X方向に延びる離間領域Gに樹脂パッケージ4の一部が充填されることにより、電気的に絶縁されている(図3参照)。
本実施形態では、パッド2aはLEDチップ搭載部2においてリフレクター部5の内側の領域、リード3aは電気的接続エリア部3においてリフレクター部5の内側の領域に設けられている。
【0014】
図1(a)、図4に示すように、LEDチップ搭載部2のX方向の両側面には、離間領域Gに隣接する位置において角棒状のタイバー部6X(タイバー)がX方向に沿って突出されている。
また、LEDチップ搭載部2のY方向負方向側には、発光素子50の外形よりも内側に位置するY方向に平行な側面2dが形成されている。
【0015】
電気的接続エリア部3のX方向の両側面には、離間領域Gに隣接する位置において角棒状のタイバー部7X(タイバー)がX方向に沿って突出されている。
また、電気的接続エリア部3のY方向正方向側には、発光素子50の外形よりも内側に位置するY方向に平行な側面3cが形成されている。
【0016】
タイバー部6Xは、個片化されたリードフレーム1Aが個片化される前の後述するリードフレーム1において、LEDチップ搭載部2同士をX方向に連結していた後述のタイバー部60が切断されることにより形成されたものである。
タイバー部7Xは、後述するリードフレーム1において、電気的接続エリア部3同士をX方向に連結していた後述のタイバー部70が切断されることにより形成されたものである。
【0017】
パッド2aとリード3aとの表面には、LEDチップ10のボンディングおよびリード3aに対するワイヤーボンディングを良好に行うためのめっきが施されている。めっきの種類としては、銀めっき、金めっき、パラジウムめっきなどの中から用途に合わせて自由に選択することができる。また、銀めっき、金めっき、パラジウムめっきなどを施すに先立ち、熱拡散性の優れたニッケルめっきなど下地めっきを行ってもよい。
【0018】
樹脂パッケージ4は、発光素子50の主要な外形を形成しており、図1(a)に示すように、リフレクター部5の開口の周囲を覆う上面4eと、X方向負方向、正方向側の側面をそれぞれ構成する側面4a、4bと、Y方向正方向、負方向側の側面をそれぞれ構成する側面4c、4dとを備える。
これら側面4a、4b、4c、4dは、後述するリードフレーム1をX方向、Y方向に沿って切断することで形成されたものである。
このため、後述のタイバー部60、70の切り口である切断面6a、7a、6b、7bは、切断面6a、7aが側面4aと、切断面6b、7bが側面4bと、それぞれ同一平面に整列している。
これに対して、LEDチップ搭載部2の側面2dと電気的接続エリア部3の側面3cとは、それぞれ樹脂パッケージ4の側面4c、4dよりも内部側に位置しており、樹脂パッケージ4によって覆われている。
【0019】
また、上面4eに対して厚さ方向反対側となる面は、図2に示すように、切断面6a、6bを除いてLEDチップ搭載部2の外周を囲む領域と、切断面7a、7bを除いて電気的接続エリア部3の外周を囲む領域と、離間領域Gに対応する領域とに、LEDチップ搭載部2および電気的接続エリア部3の表面と整列した平面からなる底面4fが形成されている。
【0020】
樹脂パッケージ4の材質としては、例えば、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネイト樹脂、芳香族系ポリエステル樹脂(不飽和ポリエステル樹脂)などが挙げられ、これらの樹脂から1種の樹脂を用いたり、複数の樹脂を混合した混合樹脂を用いたりすることができる。
また、樹脂パッケージ4には、リフレクター部5における反射特性を向上するため、SiO2、TiO、Al、酸化ジルコニウム、セラミック材からなる微粒子、あるいは、これら微粒子を1種以上混合したからなる混合物などを採用することができる。混合物を用いる場合、混合比率は構成することで、反射率特性を適宜の反射率に調整することができる。例えば、上記の添加剤を組み合わせることで、90〜96%程度の反射率が得られる。
また、これらの添加物は、硬質の微粒子であるため、樹脂パッケージ4を補強する効果もある。
【0021】
LEDチップ10は、リフレクター部5の略中心となる位置においてn極電極がパッド2aにボンディングされている。また、LEDチップ10のp極電極は、ボンディングワイヤーWによって、リード3aと電気的に接続されている。
LEDチップ10が搭載されたリフレクター部5の内側には、透明樹脂が充填されて透明樹脂部9が形成され、これにより、LEDチップ10が透明樹脂部9内に封止されている。透明樹脂部9の材質としては、例えば、シリコーン系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、フッ素系樹脂などを採用することができる。
このため、LEDチップ10で励起されたLED光は、透明樹脂部9内を進んでリフレクター部5によって反射されることにより、リフレクター部5の開口側に放射されるようになっている。
なお、本実施形態では、例えば図3、4に示すように、透明樹脂部9の開口側の表面は、樹脂パッケージ4の上面4eと整列した平坦面として描かれているが、透明樹脂部9の表面は、例えばドーム状に突出した形状に形成してもよい。この場合、透明樹脂部9が集光作用を備えるためドーム形状によってLED光の放射角を適宜の放射角に調整することができる。
【0022】
次に、本実施形態の発光素子50の製造方法の一例について説明する。
図5(a)は、本発明の実施形態のLED素子用リードフレーム基板を示す平面図である。図5(b)は、本発明の実施形態のリードフレームの平面図である。図6は、比較例のリードフレームの平面図である。
【0023】
本方法では、発光素子50を製造するため、図5(a)に示す1枚のリードフレーム基板11(LED素子用リードフレーム基板)を製造し、このリードフレーム基板11を切断して個片化することにより発光素子50の構成要素である個片化されたリードフレーム基板11Aを形成する。
このため、リードフレーム基板11は、個片化されたリードフレーム基板11AがX方向およびY方向に複数隣接して配置され、それらの間にX方向に切断するためのY方向に延ばされたX方向切断代Cと、Y方向に切断するためX方向に延ばされたY方向切断代Cとが設けられた形状を有する。
図5(a)、(b)は模式図のため、X方向切断代C、Y方向切断代Cは直線で描いているが、実際には、切断に用いるダイシングブレードの刃幅に等しい幅を有する帯状の領域である。また、図示の直線を帯状の領域の中心軸線を表している。
【0024】
リードフレーム基板11を製造するには、図5(b)に示すリードフレーム1を製造した後に、樹脂パッケージ4を成形する。そこで、まず、リードフレーム1の形状について説明する。
【0025】
リードフレーム1は、個片化されたリードフレーム基板11AのY方向となる方向(以下、単にY方向)に沿って、LEDチップ搭載部2と電気的接続エリア部3とが交互に間隔をおいて配列され、個片化されたリードフレーム基板11AのX方向となる方向(以下、単にX方向)に沿って、LEDチップ搭載部2同士、電気的接続エリア部3同士が間隔をおいて隣り合うように配列されている。
1つの個片化されたリードフレーム1Aを構成するLEDチップ搭載部2および電気的接続エリア部3の対、すなわち、X方向切断代C、Y方向切断代Cで囲まれる矩形(二点鎖線で示す)内のLEDチップ搭載部2および電気的接続エリア部3を単位リードフレーム1Bと称すると、単位リードフレーム1BにおけるLEDチップ搭載部2および電気的接続エリア部3の間には、板厚方向に貫通して離間領域Gを形成する孔部gが、X方向に隣り合う複数の単位リードフレーム1Bに跨って設けられている。
また、X方向切断代Cを挟んで隣接するLEDチップ搭載部2同士、電気的接続エリア部3同士の間は、X方向に隣り合う複数の単位リードフレーム1Bに跨って設けられた孔部hによって離間されている。
各LEDチップ搭載部2および各電気的接続エリア部3のX方向の側面には、孔部gに沿ってX方向(第2の方向)に延ばされ、X方向の長さがX方向切断代Cの幅よりも長い角棒状のタイバー部60、70(タイバー)がそれぞれ架設されている。
このような構成のタイバー部60、70により、LEDチップ搭載部2同士、電気的接続エリア部3同士は、X方向切断代Cの幅よりも広い間隔をあけて連結されている。
このような構成により、各孔部hは、隣り合うLEDチップ搭載部2同士のX方向の側面とタイバー部60とで囲まれたY方向に延びる溝部hと、隣り合う電気的接続エリア部3同士のX方向の側面とタイバー部70とで囲まれた溝部hとをそれぞれ備える。
【0026】
このようなリードフレーム1の構成により、リードフレーム1は、X方向切断代C、Y方向切断代Cが交差する領域を内側に含む孔部hと、X方向切断代C、Y方向切断代Cに囲まれた矩形状領域をX方向に横断する孔部gとが形成された孔あき板状の部材である。
また、本実施形態では、リードフレーム1の外縁部は矩形枠状に形成され、この外縁部の枠体間において、タイバー部60によってX方向に連結された複数のLEDチップ搭載部2と、タイバー部70によってX方向に連結された複数の電気的接続エリア部3とが、交互にY方向に配列されて、一体化された板状部材になっている。
【0027】
発光素子50の製造工程は、リードフレーム形成工程、樹脂パッケージ成形工程、LEDチップ搭載工程、透明樹脂部成形工程、および切断工程を備える。
【0028】
リードフレーム形成工程は、例えば、銅−ニッケル−錫等の金属合金からなる金属板材をエッチング処理することにより孔部h、gを貫通させて、リードフレーム1を形成する工程である。エッチング処理は、金属板材の表裏面をハーフエッチング処理してもよいし、金属板材の一方の面から一方向にエッチング処理してもよい。
例えば、リードフレーム1の表面となる金属板材の一方の面にフォトレジストを塗布して、フォトレジスト層を形成する。
次に、孔部h、gを除く領域を覆うパターン露光用フォトマスクを介してフォトレジスト層を露光し、フォトレジスト層を現像して非露光部のフォトレジストを除去し、必要に応じて硬膜処理を行う。
これにより、金属板材の一方の面は、リードフレーム1の表面における孔部h、gを除く領域のパターンを有するフォトレジストによって覆われ、孔部h、gに対応する表面は、フォトレジスト非形成部となる。
【0029】
次に、リードフレーム1の裏面となる金属板材の他方の面に、耐腐食用の樹脂フィルムを貼着して、この金属板材のフォトレジスト非形成部を、一方の面側から金属板材の厚さの半分以上の深さまで、例えば塩化第二鉄等のエッチャントを用いてエッチング加工(ハーフエッチング処理)する。
ハーフエッチング処理終了後、洗浄を行い、フォトレジストおよび耐腐食用樹脂フィルムを除去する。
【0030】
次に、リードフレーム1の表面に耐腐食用の樹脂フィルムを貼着し、リードフレーム1の裏面となる金属板材の他方の面にフォトレジストを塗布して、フォトレジスト層を形成する。そして、表面からのエッチング処理と同様に孔部h、gを除く領域をハーフエッチング処理する。
これにより、孔部h、gが金属板材の厚さ方向に貫通し、リードフレーム1が形成される。
以上で、リードフレーム形成工程が終了する。
【0031】
次に、樹脂パッケージ成形工程を行う。本工程は、リードフレーム1に樹脂パッケージ4を形成する工程である。
すなわち、樹脂パッケージ4の形状を成形するための金型の凹部内にリードフレーム1を装填する。このとき、リードフレーム1の裏面は、金型の成形面に密着して配置され、リードフレーム1の表面は、金型の成形面に対して、隙間を有している。
リードフレーム1を装填したら、例えば射出成形によって、樹脂パッケージ4を構成する樹脂材料を金型内に充填して成形を行う。
まず、樹脂材料は、リードフレーム1の表面において、パッド2aおよびリード3a以外の所定領域に、樹脂パッケージ4の形状に充填される。
さらに、樹脂パッケージ4を形成する樹脂材料は、金型の凹部とリードフレームとの間に形成された隙間に回り込むように充填されて固化する。このため、リードフレーム1の孔部h、gには樹脂材料が充填される。
樹脂材料の充填が終了し、樹脂材料が固化したら成形品を脱型する。
ここで、LEDチップ搭載部2、電気的接続エリア部3と金型の合わせ面の密着状態等により、例えばリフレクター部5の開口下部5a(図5参照)等から成形バリが発生し、リフレクター部5内に露出するパッド2a、リード3aが樹脂に覆われている場合がある。そのような場合は、適宜のバリ除去手段を用いて、パッド2a、リード3a上の樹脂の除去を行う。
これにより、図5(a)に示すようなリードフレーム基板11が製造される。
以上で、樹脂パッケージ成形工程が終了する。
【0032】
次に、LEDチップ搭載工程を行う。本工程は、リードフレーム基板11の各パッド2a、各リード3aにめっき被膜を形成した後、LEDチップ10をパッド2aに搭載して、リード3aに配線する工程である。
まず、電解めっき法や無電解めっき法によって、パッド2a、リード3aに銀めっき、金めっき、パラジウムめっきなどを施す。
次に、LEDチップ10のn極電極をパッド2aにボンディングし、ボンディングされたLEDチップ10のp極電極をボンディングワイヤーWによって、リード3aに配線する。
以上で、LEDチップ搭載工程が終了する。
【0033】
次に、透明樹脂部成形工程を行う。本工程は、LEDチップ10が搭載されたリードフレーム基板11の各リフレクター部5に透明樹脂部9を充填してLEDチップ10を封止し、透明樹脂部9を固化させる工程である。
例えば、透明樹脂部9の材質として、シリコーン系樹脂を採用する場合、液体状態にしてリフレクター部5内に充填してから加熱して固化させる。
以上で、透明樹脂部成形工程が終了する。
【0034】
次に、切断工程を行う。本工程は、リードフレーム基板11を、例えばダイシング装置などの切断装置にセットして、X方向切断代C、Y方向切断代Cにおいて切断を行い、これにより個片化されたリードフレーム基板11Aを製造する工程である。
本工程では、リードフレーム1の構成から、Y方向切断代Cにおいて切断する際には、樹脂パッケージ4とともに、タイバー部60、70が切断される。一方、X方向切断代Cにおいて切断する際には、樹脂パッケージ4のみが切断される。
また、タイバー部60、70は、それぞれタイバー部6X、7Xに分断され、切り口として、図1(a)に示すように、側面4b側には側面4bと同一平面に整列する切断面6b、7bが、側面4a側には側面4aと同一平面である切断面6a、7aが形成される。
このようにして、リードフレーム基板11から複数の個片化されたリードフレーム基板11Aが製造される。
以上で、切断工程が終了する。
このようにして、発光素子50が製造される。
【0035】
本実施形態の切断工程では、切断するタイバー部は、X方向に延びるタイバー部60、70のみであるため、LEDチップ搭載部2および電気的接続エリア部3が、X方向の他に、X方向と交差するY方向にもタイバー部で連結されている場合に比べて、タイバー部の切断量を確実に低減することができる。
このため、タイバー部の切断によるバリの発生が低減される。また、ダイシングブレードなどの切断工具の摩耗も低減される。
【0036】
図6に示すリードフレーム100は、互いに交差する2方向にタイバー部が設けられた比較例である。
リードフレーム100は、本実施形態のリードフレーム1に加えて単位リードフレーム1B間をY方向に連結するタイバー部80と、タイバー部60、70の間をX方向切断代C上でY方向に連結するタイバー部90とが追加されたものである。
このようなリードフレーム100を用いてリードフレーム基板を形成した場合、タイバー部60、70に加えて、タイバー部80、90も切断しなければならないため、切断によるバリが格段に発生しやすくなり、切断工具の摩耗も激しくなる。
また、X方向切断代Cに沿う方向に設けられたタイバー部90は、製作誤差や切断誤差などによって、万一、X方向切断代Cから外れた位置に形成されると、切断によって除去されない部分が残り、LEDチップ搭載部2と電気的接続エリア部3とが短絡してしまう。
本実施形態では、このようなタイバー部90を設けないため、LEDチップ搭載部2と電気的接続エリア部3とを確実に絶縁することができる。
【0037】
本実施形態のリードフレーム基板11および発光素子50によれば、タイバー部を、単位リードフレーム1BにおいてLEDチップ搭載部2および電気的接続エリア部3が対向する方向と交差するY方向にのみに設けることで、切断されるタイバー部の数を低減することができるため、LED素子用リードフレーム基板の切断時に発生するタイバーのバリを低減するとともに、切断工具の負荷や摩耗量を低減できる。
【0038】
なお、上記の説明では、LEDチップ搭載工程および透明樹脂部成形工程を行った後で切断工程を行う場合の例で説明したが、切断工程は、適宜の時期に行うことができる。
例えば、樹脂パッケージ成形工程の次にLEDチップ搭載工程を行った後に切断工程を行ってもよいし、樹脂パッケージ成形工程とLEDチップ搭載工程の間に切断工程を行ってもよい。
【0039】
また、上記の説明では、LEDチップ搭載部2および電気的接続エリア部3がY方向に対向するときに、タイバー部60、70をY方向と直交するX方向に延ばして設けた場合の例で説明したが、Y方向を第1の方向とするとき、タイバー部60、70を延ばす方向は、Y方向と交差する第2の方向であればよく、X方向には限定されない。例えば、Y方向と90°以外の角度で交差した方向でもよい。
また、タイバーの形状は、角棒状には限定されず、例えば、切断代の両端部から切断代の中心に向かって断面積が減少する形状や、厚さ方向に段差が形成された形状などの断面積が変化する形状でもよい。
【0040】
また、上記実施形態に説明したすべての構成要素は、本発明の技術的思想の範囲で適宜組み合わせを代えたり、削除したりして実施することができる。
【符号の説明】
【0041】
1 リードフレーム
1A 個片化されたリードフレーム
1B 単位リードフレーム
2 LEDチップ搭載部
2a パッド
3 電気的接続エリア部
3a リード
4 樹脂パッケージ(樹脂部)
4f 底面
5 リフレクター部
6X、7X タイバー部
60、70 タイバー部(タイバー)
6a、6b、7a、7b 切断面
9 透明樹脂部
10 LEDチップ
11 リードフレーム基板
11A 個片化されたリードフレーム基板(個片基板)
50 発光素子
X方向切断代
Y方向切断代
G 離間領域
g、h 孔部
r、s 溝部
W ボンディングワイヤー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
LEDチップを搭載されるパッドを有するLEDチップ搭載部と前記LEDチップに電気的に接続されるリードを形成する電気的接続エリア部とが第1の方向において離間されて対向配置された単位リードフレームを含む個片基板を形成するためのLED素子用リードフレーム基板であって、
前記単位リードフレームが、前記第1の方向に離間して複数配列されるとともに前記第1の方向と交差する第2の方向に延びるタイバーによって複数連結されたリードフレームと、
前記LEDチップ搭載部および前記電気的接続エリア部の一部を除く前記リードフレームの部位を覆う樹脂部とを備え、
前記第1の方向において前記樹脂部および前記タイバーを、前記第2の方向において前記樹脂部を、それぞれ切断することで、前記個片基板を製造できるようにした
ことを特徴とするLED素子用リードフレーム基板。
【請求項2】
請求項1に記載のLED素子用リードフレーム基板の前記タイバーを切断して製造された前記個片基板上にLEDチップを搭載したことを特徴とする発光素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−182180(P2012−182180A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−42215(P2011−42215)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】