説明

MDM2の小分子阻害剤およびその使用

本発明は、p53とMDM2との間の相互作用の阻害剤として機能する小分子に関する。本発明は、さらに、細胞増殖を阻害し、細胞死を誘導し、細胞周期停止を誘導し、および/または追加の薬剤に対して細胞を感作させるためのこれらの化合物の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2006年8月30日に申請された、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国仮特許出願第60/841,150号に対して優先権を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、医療品化学の分野にある。特に、本発明は、p53とMDM2との間の相互作用のアンタゴニストとして機能する小分子、ならびに癌およびその他の疾患の治療のための、その治療学的使用に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
関連技術
侵襲性の癌細胞表現型は、細胞内シグナル伝達経路の脱制御につながる、種々の遺伝的および後成的な変化の結果である(Ponder,Nature 411:336(2001)(非特許文献1))。しかしながら、すべての癌細胞の共通点は、アポトーシスプログラムの実行への不適応であり、正常なアポトーシス機構における欠陥に起因する適切なアポトーシス欠損は、癌の特質である(Lowe et al.,Carcinogenesis 21:485(2000)(非特許文献2))。従って、正常なアポトーシス機構における欠陥に起因して癌細胞がアポトーシスプログラムを実行することが出来ないことは、多くの場合、化学療法、放射線療法、または免疫療法誘導性のアポトーシスへの耐性の増加に関連する。アポトーシスの欠陥に起因する、現在の治療プロトコルへの異なる起源のヒト癌の原発性または後天性の耐性は、現在の癌療法における主要な問題である(Lowe et al.,Carcinogenesis 21:485(2000)(非特許文献2);Nicholson,Nature 407:810(2000)(非特許文献3))。従って、癌患者の生存率および生活の質を改善するための、新規分子標的特異的抗癌療法を設計および開発することに向けた現在および将来の努力は、アポトーシスへの癌細胞の耐性を特異的に標的化する戦略を含まなくてはならない。この点に関して、癌細胞において直接的にアポトーシスを阻害する際に中心的役割を果たす決定的な負の調節因子を標的化することは、新規の抗癌薬物設計のための非常に前途有望な治療戦略を表す。
【0004】
p53腫瘍抑制遺伝子は、細胞周期の進行およびアポトーシスを制御する際に、中心的な役割を果たす(Vogelstein et al.,Nature 408:307(2000)(非特許文献4))。その腫瘍抑制遺伝子活性は、腫瘍細胞を根絶させるように刺激され得るので、これは抗癌薬物設計のための魅力的な治療標的である(Vogelstein et al.,Nature 408:307(2000)(非特許文献4);Chene,Nat.Rev.Cancer 3:102(2003)(非特許文献5))。p53の活性を刺激することに対する新規アプローチは、非ペプチド小分子阻害剤を使用した、タンパク質MDM2との相互作用の阻害によるものである(Chene,Nat.Rev.Cancer 3:102(2003)(非特許文献5);Vassilev et al.,Science 303:844(2004)(非特許文献6))。MDM2およびp53は、自己調節フィードバックループの一部である(Wu et al.,Genes Dev.7:1126(1993)(非特許文献7))。MDM2は、p53およびMDM2によって転写活性化され、次には、少なくとも3つのメカニズムによって、p53活性を阻害する(Wu et al.,Genes Dev.7:1126(1993)(非特許文献7))。第1に、MDM2タンパク質は、p53トランス活性化ドメインに直接的に結合し、それによって、P53媒介性トランス活性化を阻害する。第2に、MDM2タンパク質は、核外移行シグナル配列を含み、そしてp53への結合に際して、p53の核外移行を誘導し、p53が標的化されたDNAに結合することを妨害する。第3に、MDM2タンパク質は、E3ユビキチンリガーゼであり、p53への結合に際して、p53の分解を促進することが可能である。それゆえに、p53活性の強力な内因性細胞阻害剤として機能することによって、MDM2は、p53媒介性アポトーシス、細胞周期停止およびDNA修復を効率的に阻害する。それゆえに、MDM2に結合し、MDM2とp53との間の相互作用を遮断する小分子阻害剤は、機能的p53を有する細胞におけるp53の活性を促進し、細胞周期停止、アポトーシス、またはDNA修復等のp53媒介性細胞効果を刺激することが出来る(Chene,Nat.Rev.Cancer 3:102(2003)(非特許文献5);Vassilev et al.,Science 303:844(2004)(非特許文献6))。
【0005】
高親和性ペプチドを用いた阻害剤は、過去において上手く設計されてきたが(Garcia−Echeverria et al.,Med.Chem 43:3205(2000)(非特許文献8))、これらの阻害剤は、その乏しい細胞透過性およびインビボ生物学的利用能ゆえに、薬らしい分子ではない。製薬業界による集中的な取り組みにも関わらず、ハイスループットスクリーニング戦略は、強力な非ペプチド小分子阻害剤を同定する際に非常に限られた効果しか有さなかった。従って、p53−MDM2相互作用の非ペプチド性で薬物のような小分子阻害剤の必要性が存在する。
【0006】
p53−MDM2相互作用を標的とする非ペプチド小分子阻害剤の設計は、抗癌薬物設計のための魅力的な戦略として、現在、追及されている(Chene,Nat.Rev.Cancer 3:102(2003)(非特許文献5);Vassilev et al.,Science 303:844(2004)(非特許文献6))。この相互作用の構造的基礎は、X線結晶学によって確立されてきた(Kussie et al.,Science 274:948(1996)(非特許文献9))。結晶構造は、p53とMDM2との間の相互作用が、p53からの3つの疎水性残基(Phel9、Trp23およびLeu26)およびMDM2における小さな深い疎水性間隙によって主に媒介されることを示す。この疎水性間隙は、p53−MDM2相互作用を破壊することが出来る小分子阻害剤を設計するための理想的な部位である(Chene,Nat.Rev.Cancer 3:102(2003)(非特許文献5))。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Ponder,Nature 411:336(2001)
【非特許文献2】Lowe et al.,Carcinogenesis 21:485(2000)
【非特許文献3】Nicholson,Nature 407:810(2000)
【非特許文献4】Vogelstein et al.,Nature 408:307(2000)
【非特許文献5】Chene,Nat.Rev.Cancer 3:102(2003)
【非特許文献6】Vassilev et al.,Science 303:844(2004)
【非特許文献7】Wu et al.,Genes Dev.7:1126(1993)
【非特許文献8】Garcia−Echeverria et al.,Med.Chem 43:3205(2000)
【非特許文献9】Kussie et al.,Science 274:948(1996)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
遺伝的損傷またはアポトーシスの誘導因子への曝露(抗癌剤および放射線等)に反応して、癌細胞またはそれらの支持細胞がアポトーシスを受けることが出来ないことは癌の発生および進行の主要な要因であることが、一般的に受け入れられている。癌細胞またはそれらの支持細胞(例えば、腫瘍血管系における新生血管細胞)におけるアポトーシスの誘導は、今日、市販されている、または実施されている実質的にすべての有効な癌治療薬または放射線療法について、作用の普遍的なメカニズムであると考えられている。細胞がアポトーシスを受けることが出来ないことの1つの理由は、多くの場合において、機能的p53を含む腫瘍細胞におけるp53に対するMDM2の阻害作用に起因する、p53の腫瘍抑制遺伝子活性の減少である。p53活性の阻害は、アポトーシス経路における変化と細胞周期の調節を生じる。
【0009】
本発明は、p53またはp53関連タンパク質とMDM2またはMDM2関連タンパク質(例えば、MDMX)との間の相互作用を阻害することによる、治療上有効量の、p53およびp53関連タンパク質(例えば、p63、p73)の機能を増加させる薬物(例えば、小分子)への、癌に罹患している動物の曝露は、癌細胞または支持細胞の増殖を完全に阻害し、および/または、癌治療薬もしくは放射線療法の細胞死誘導活性に対する感受性をこのような集団での細胞に、より付与することを想定する。特に、本発明の阻害剤は、通常はp53の分解を促進するp53−MDM2相互作用を干渉することによって、p53の半減期を延長する可能性がある。本発明は、p53またはp53関連タンパク質とMDM2およびMDM2関連タンパク質との間の相互作用の阻害剤が、癌細胞において、細胞増殖阻害、アポトーシスおよび/または細胞周期停止を誘導するための単独療法として投与される場合、または、単独で癌治療薬または放射線療法のみを用いて治療された動物において、対応する細胞の割合を比較して、アポトーシスプログラムを実行することに対する感受性をより大きな割合の癌細胞または支持細胞に付与するために、他の細胞死誘導性もしくは細胞周期を破壊する癌治療薬または放射線療法(組み合わせ療法)等の、追加の薬剤との時間的関係で投与される場合に、複数の癌の種類の治療のための、満たされていない必要性を満たすことを意図する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一部の実施形態では、治療上有効量の本発明の化合物および一連の抗癌剤または放射線を用いた動物の組み合わせ治療は、かかる動物において、化合物または抗癌薬物/放射線で単独治療した動物と比較して、より大きな腫瘍反応および臨床的利益を生じる。言い換えれば、化合物は、すべての細胞のアポトーシスの閾値を低下させるので、抗癌薬物/放射線のアポトーシス誘導活性に反応するアポトーシスプログラムを上手く実行する細胞の割合が増加する。または、本発明の化合物は、より低い、それゆえより毒性が低く耐容性である用量の抗癌剤および/または放射線の投与が、抗癌剤/放射線単独の従来の用量と同様の腫瘍応答/臨床的利益を生じさせることを可能にするために使用されるであろう。すべての許可された抗癌薬物および放射線の治療のための用量は公知であるので、本発明は、それらと本発明の化合物の種々の組み合わせを意図する。さらに、本発明の化合物は、p53およびp53関連タンパク質のプロアポトーシスおよび/または細胞周期阻害活性を刺激することにより、少なくとも部分的に作用する可能性があるので、治療上有効量の化合物への癌細胞および支持細胞の曝露は、抗癌剤または放射線療法へ反応するアポトーシスプログラムを実行するための細胞の試みと一致するように、時間的に関連付けられるべきである。従って、ある実施形態では、一定の時間的関係と結び付けて本発明の組成物を投与するステップは、とりわけ有効な治療的手法を提供する。
【0011】
本発明の他の実施形態では、p53またはp53関連タンパク質とMDM2およびMDM2関連タンパク質との間の相互作用の阻害剤は、場合によっては、細胞周期停止を誘導する阻害剤の能力によって、一定の化学療法剤および放射線の毒性効果から正常(例えば、過剰増殖性ではない)細胞を保護する可能性がある。特には、本発明の阻害剤は、変異型または欠失型のp53を含む癌細胞に対しては効果を有さない一方、野生型p53を含む細胞において細胞周期停止を引き起こす可能性がある。この差別的保護効果は、化学療法剤のより高用量の使用もしくはより長い治療、またはかかる治療の毒性副作用を増加させない治療を可能にすることによって、より効果的な癌の治療を可能にし得る。
【0012】
本発明は、p53またはp53関連タンパク質とMDM2またはMDM2関連タンパク質との間の相互作用を阻害するため、ならびにアポトーシスおよび/または細胞周期停止の誘導因子に対する細胞の感受性を増加させるために有用な化合物に関する。特定の一実施形態では、化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグは、式I:

を有し、
式中、
Xは、CH、O、N、またはSであって、XがOまたはSである場合、Rは存在せず、
Yは、O、S、またはNR’であり、
、R、R、R、R、R、およびRは、独立して、Hまたは置換されてもよいアルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、アリール、複素環、COR’、OCOR’、CONR’R’’、NR’’COR’、NR’SOR’’、SONR’R’’、(C=NR’)NR’’R’’’、もしくはNR’R’’であり、または
は、RまたはRの1つを伴い、アリール、シクロアルキル、もしくは複素環基を形成し、Rは、Hまたは置換されてもよいアルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、アリール、複素環、COR’、OCOR’、CONR’R’’、SONR’R’’、もしくは(C=NR’)NR’’R’’’であり、
は、6−クロロ基および5−フルオロ基を表し、かつ
各R’、R’’およびR’’’は、独立して、Hまたは置換されてもよいアルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、アリール、もしくは複素環であり、または
R’およびR’’、またはR’’およびR’’’は、環を形成し、
およびRの1つは、CONRR’であり、RおよびR’の1つは、置換されてもよいシクロアルキル−アルキル基もしくはモノシクロ−ヘテロシクロアルキル基またはアルキル基の3位にヒドロキシル基を含まないジヒドロキシアルキルアミノ基である。
【0013】
本発明は、p53またはp53関連タンパク質とMDM2またはMDM2関連タンパク質との間の相互作用の阻害剤である、式Iによって表される化合物に関連する。本発明は、機能的p53またはp53関連タンパク質を含む細胞における細胞周期停止および/またはアポトーシスを誘導するための本発明の化合物の使用に関する。本発明は、さらに、アポトーシスおよび/または細胞周期停止の誘導因子等の追加の薬剤に対して細胞を感作させるため、ならびに化学療法剤を用いる治療の前の細胞周期停止の誘導を介する正常細胞の化学防御のための本発明の化合物の使用に関する。一実施形態では、本発明は、細胞を本発明の化合物と接触させるステップを含む、化学療法剤または化学療法治療に対する耐性を正常細胞に付与する方法に関する。一実施形態では、本発明は、過剰増殖性疾患を有する動物における正常細胞を化学療法剤または化学療法治療の毒性副作用から保護する方法に関し、本方法は、本発明の化合物を前記動物に投与するステップを含む。特定の実施形態では、本発明は、本発明の化合物を、化学療法を受ける動物へ投与するステップにより、化学療法剤の正常な非癌性細胞への投与によって引き起こされる障害、副作用、または状態の治療、改善、または予防を対象とする。化学療法によって引き起こされるかかる障害および状態の例としては、粘膜炎、口内炎、口内乾燥症、胃腸障害、および脱毛症が挙げられるが、これらに限定されない。
【0014】
本発明の化合物は、アポトーシス性細胞死の誘導に対して反応性であるもの等の障害、例えば、癌等の過剰増殖性疾患を含むアポトーシスの調節不全を特徴とする障害の治療、改善、または予防に有用である。ある実施形態では、化合物は、癌療法に対する耐性を特徴とする癌(例えば、化学療法剤耐性、放射線耐性、ホルモン耐性等である癌細胞)を治療、改善、または予防するために使用することが出来る。他の実施形態では、化合物は、機能的p53またはp53関連タンパク質の発現を特徴とする過剰増殖性疾患を治療するために使用することが出来る。他の実施形態では、本発明は、正常(例えば、過剰増殖性ではない)細胞を、これらの細胞における化学療法剤および細胞周期停止の誘導による治療の毒性副作用から保護するための、本発明の化合物の使用に関する。
【0015】
本発明は、細胞にアポトーシスを誘導するため、または細胞をアポトーシスの誘導因子に対して感作させるために、治療上有効量の式Iの化合物を含む薬学的組成物を提供する。
【0016】
本発明は、式Iの化合物と化合物を動物へ投与するための説明書とを含むキットをさらに提供する。キットは、他の治療剤、例えば、抗癌剤またはアポトーシス調節剤を任意に含むことが出来る。
【0017】
本発明は、さらに、式Iの化合物を作製する方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
発明の詳細な説明
本発明は、p53またはp53関連タンパク質とMDM2またはMDM2関連タンパク質との相互作用の阻害剤として機能する、式Iによって表される化合物に関する。MDM2またはMDM2関連タンパク質のp53またはp53関連タンパク質に対する負の効果を阻害することにより、これらの化合物は、アポトーシスおよび/または細胞周期停止の誘導因子に対して細胞を感作させ、一部の例では、それら自体がアポトーシスおよび/または細胞周期停止を誘導する。それゆえ、本発明は、単独で、または、追加の薬剤、例えば、アポトーシスの誘導因子または細胞周期破壊因子等と組み合わせて、細胞を式Iの化合物と接触させるステップを含む、アポトーシスおよび/または細胞周期停止の誘導因子に対して細胞を感作させる方法、ならびに細胞においてアポトーシスおよび/または細胞周期停止を誘導する方法に関する。さらに本発明は、式Iの化合物および追加の薬剤、例えば、アポトーシスの誘導因子を動物へ投与するステップを含む、アポトーシスの誘導に反応性である障害等、動物における障害を治療、改善、または予防する方法に関する。このような障害としては、アポトーシスの調節不全を特徴とするもの、および機能的p53またはp53関連タンパク質を発現する細胞の増殖を特徴とするものが挙げられる。他の実施形態では、本発明は、式Iの化合物を動物へ投与するステップを含む、動物における正常(例えば、過剰増殖性ではない)細胞を、化学療法剤および治療の毒性副作用から保護する方法に関する。
【0019】
「抗癌剤」および「抗癌薬物」という用語は、本明細書で使用されるとき、癌等の過剰増殖性疾患の治療において(例えば、哺乳類において)使用される、任意の治療剤(例えば、化学療法化合物および/または分子治療化合物)、アンチセンス療法、放射線療法、または外科的介入を示す。
【0020】
「プロドラッグ」という用語は、本明細書で使用されるとき、プロドラッグを活性な薬物に遊離または転換するために(例えば、酵素的に、生理学的に、機械的に、電磁的に)、標的の生理系の中で生体内変換(例えば、自発的または酵素的のいずれか)を必要とする親「薬物」分子の薬理学的に不活性な誘導体を示す。プロドラッグは、安定性、毒性、特異性の欠如、または生物学的利用能の制限に関連する問題を克服するように設計される。例示的なプロドラッグは、活性薬物分子それ自体および化学マスキング基(例えば、薬物の活性を可逆的に抑制する基)を含む。あるプロドラッグは、代謝条件下で切断可能な基を有する化合物のバリエーションまたは誘導体である。例示的なプロドラッグは、生理学的条件下で加溶媒分解を受ける場合、または酵素的分解もしくは他の生化学的転換(例えば、リン酸化、水素化、脱水素化、グリコシル化)を受ける場合、インビボまたはインビトロで、薬学的に活性になる。プロドラッグは、多くの場合、哺乳動物生物体において溶解性、組織適合性、または遅延放出の利点を提供する。(例えば、Bundgard,Design of Prodrugs,pp.7−9,21−24,Elsevier,Amsterdam(1985);およびSilverman,The Organic Chemistry of Drug Design and Drug Action,pp.352−401,Academic Press,San Diego,CA(1992)を参照のこと)。一般的なプロドラッグは、適したアルコール(例えば、低級アルカノール)と親酸の反応によって調製されたエステル、アミンと親の酸化合物の反応によって調製されたアミド、または反応してアシル化塩基誘導体を形成する塩基性基(例えば、低級アルキルアミド)等の酸誘導体を含む。
【0021】
「薬学的に許容される塩」という用語は、本明細書で使用されるとき、標的動物(例えば、哺乳動物)において生理学的に許容される、本発明の化合物の任意の塩(例えば、酸または塩基との反応によって得られる)を示す。本発明の化合物の塩は、無機または有機の酸および塩基から誘導されてもよい。酸の例としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、過塩素酸、フマル酸、マレイン酸、リン酸、グリコール酸、乳酸、サリチル酸、コハク酸、トルエン−p−スルホン酸、酒石酸、酢酸、クエン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ギ酸、安息香酸、マロン酸、スルホン酸、ナフタレン−2−スルホン酸、ベンゼルスルホン酸等が挙げられるが、これらに限定されない。シュウ酸等の他の酸は、それ自体は、薬学的に許容されないが、本発明の化合物およびそれらの薬学的に許容される酸付加塩を得る際の中間体として有用な塩の調製において使用してもよい。
【0022】
塩基の例としては、アルカリ金属(例えば、ナトリウム)水酸化物、アルカリ土類金属(例えば、マグネシウム)水酸化物、アンモニア、およびWはC1−4アルキルである、式NWの化合物等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0023】
塩の例としては、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホナート、重硫酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、樟脳酸塩、樟脳スルホン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、フルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、メシル酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、シュウ酸塩、パルモエート、ペクチン酸塩、過硫酸塩、フェニルプロピオン酸塩、ピクリン酸塩、ピバリン酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トシル酸塩、ウンデカン酸塩等が挙げられるが、これらに限定されない。塩の他の例としては、Na、NH、およびNW(Wは、C1−4アルキル基である)等の適したカチオンと化合物を形成する本発明の化合物のアニオンが挙げられる。治療用途のために、本発明の化合物の塩は、薬学的に許容されるものであることが想定される。しかしながら、薬学的に許容されない酸および塩基の塩もまた、例えば、薬学的に許容される化合物の調製または精製において用途を見出す可能性がある。
【0024】
「治療上有効量」という用語は、本明細書で使用されるとき、1つまたは複数の障害の徴候の改善を結果として生じ、または障害の進行を予防し、または障害の後退を引き起こすのに十分である治療剤の量を示す。例えば、癌の治療に関しては、一実施形態では、治療上有効量は、腫瘍増殖の速度を減少させ、腫瘍塊を減少させ、転移の数を減少させ、腫瘍の進行までの時間を増加させ、または生存時間を、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、もしくは少なくとも100%増加させる治療剤の量を示す。
【0025】
「感作」および「感作する」という用語は、本明細書で使用されるとき、第1の薬剤(例えば、式Iの化合物)の投与を通して、第2の薬剤の生物学的効果(例えば、細胞分裂、細胞成長、増殖、侵襲、血管形成、壊死、またはアポトーシスを含むが、これらに限定されない細胞機能の1つの側面の促進または遅延)に対して、動物または動物内の細胞をより感受性またはより反応性にすることを示す。標的細胞に対する第1の薬剤の感作効果は、第1の薬剤の投与ありおよびなしでの、第2の薬剤の投与に際して観察される、意図される生物学的効果(例えば、細胞成長、増殖、侵襲、血管形成、またはアポトーシスを含むがこれらに限定されない細胞機能の1つの側面の促進または遅延)における相違として計測され得る。感作された細胞の反応は、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、少なくとも150%、少なくとも200%、少なくとも350%、少なくとも300%、少なくとも350%、少なくとも400%、少なくとも450%、または少なくとも500%、第1の薬剤の非存在下での反応を超えて、増加され得る。
【0026】
「アポトーシスの調節不全」という用語は、本明細書で使用されるとき、アポトーシスを介して細胞が細胞死を受ける能力の任意の異常(例えば、素因)を示す。アポトーシスの調節不全は、種々の状態と関連するか、またはそれらによって誘導され、その非限定的な例としては、自己免疫障害(例えば、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、移植片対宿主病、重症筋無力症、またはシェーグレン症候群)、慢性炎症状態(例えば、乾癬、喘息またはクローン病)、過剰増殖性障害(例えば、腫瘍、B細胞リンパ腫、またはT細胞リンパ腫)、ウイルス感染(例えば、ヘルペス、パピローマ、またはHIV)、ならびに変形性関節症およびアテローム性動脈硬化症等の他の状態が挙げられる。調節不全が、ウイルス感染によって誘導されるか、またはそれに関連する場合、ウイルス感染は、調節不全が起こる時点またはそれが観察される時点で検出されるか、または検出されない可能性があるといことに注目すべきである。つまりは、ウイルス誘導性調節不全は、ウイルス感染の徴候が消失した後でも起こりうる。
【0027】
「機能的p53」という用語は、本明細書で使用されるとき、正常レベル、高レベル、または低レベルで発現される野生型P53、および少なくとも5%の野生型のp53の活性、例えば少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、またはそれ以上の野生型活性を保持している変異型P53を示す。
【0028】
「p53関連タンパク質」という用語は、本明細書で使用されるとき、p53と少なくとも25%の配列相同性を有し、腫瘍抑制遺伝子活性を有し、かつMDM2またはMDM2関連タンパク質との相互作用によって阻害されるタンパク質を示す。p53関連タンパク質の例としては、p63およびp73が挙げられるが、これらに限定されない。
【0029】
「MDM2関連タンパク質」という用語は、本明細書で使用されるとき、MDM2と少なくとも25%の配列相同性を有し、かつp53またはp53関連タンパク質と相互作用するタンパク質を示す。MDM2関連タンパク質の例としては、MDMXおよびHDM2が挙げられるが、これらに限定されない。
【0030】
「過剰増殖性疾患」という用語は、本明細書で使用されるとき、動物における増殖している細胞の局在化した集団が、正常な増殖の通常の制限によっては支配されない任意の状態を示す。過剰増殖性障害の例としては、腫瘍、新生物、リンパ腫等が挙げられる。新生物は、侵襲または転移をしない場合に良性といわれ、これらのいずれかをする場合に悪性といわれる。「転移性」細胞とは、細胞が、隣接している身体構造に侵潤しかつ破壊し得ることを意味する。過形成は、構造または機能における有意な変化を伴わない、組織または器官中の細胞数の増加を含む、細胞増殖の種類である。化生は、ある型の完全に分化した細胞が別の型の分化した細胞にとって代わる、制御された細胞増殖の種類である。
【0031】
活性化リンパ系細胞の病理学的増殖は、多くの場合、自己免疫障害または慢性炎症状態を結果として生じる。本明細書で使用されるとき、「自己免疫障害」という用語は、生物体自体の分子、細胞または組織を認識する抗体または免疫細胞を、その生物体が産生する任意の状態を示す。自己免疫障害の非限定的な例としては、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、バージャー病またはIgA腎症、セリアックスプルー、慢性疲労症候群、クローン病、皮膚筋炎、線維筋痛、移植片対宿主病、グレーブス病、橋本甲状腺炎、特発性血小板減少性紫斑病、扁平苔癬、多発性硬化症、重症筋無力症、乾癬、リウマチ熱、関節リウマチ、強皮症、シェーグレン症候群、全身性エリテマトーデス、1型糖尿病、潰瘍性大腸炎、白斑等が挙げられる。
【0032】
「新生物疾患」という用語は、本明細書で使用されるとき、良性(非癌性)または悪性(癌性)のいずれかである細胞の任意の異常な増殖を示す。
【0033】
「正常細胞」という用語は、本明細書で使用されるとき、異常な増殖または分裂を行わない細胞を示す。正常細胞は、非癌性であり、任意の過剰増殖性疾患または障害の一部ではない。
【0034】
「抗腫瘍薬」という用語は、本明細書で使用されるとき、標的とされる(例えば、悪性の)新生物の増殖、成長、または伝播を遅延させる任意の化合物を示す。
【0035】
「予防する」「予防すること」および「予防」という用語は、本明細書で使用されるとき、動物における病理学的細胞(例えば、過剰増殖性細胞または新生細胞)の発生の減少を示す。予防は、例えば、被験体における病理学的細胞が完全に存在しない、完全な状態であってもよい。予防は、被験体における病理学的細胞の発生が、本発明がない場合に発生しうる状態よりも少ないような部分的な状態でもよい。
【0036】
「アポトーシス調節剤」という用語は、本明細書で使用されるとき、アポトーシスを調節する(例えば、阻害、減少、増加、促進する)ことに関与する薬剤を示す。アポトーシス調節剤の例としては、Fas/CD95、TRAMP、TNF RI、DR1、DR2、DR3、DR4、DR5、DR6、FADD、およびRIP等の、これらに限定されない、デスドメインを含むタンパク質が挙げられる。他のアポトーシス調節剤の例としては、TNFα、Fasリガンド、Fas/CD95および他のTNFファミリー受容体に対する抗体、TRAIL(Apo2リガンドまたはApo2L/TRAILとしても知られる)、TRAIL−R1またはTRAIL−R2に対する抗体、Bcl−2、p53、BAX、BAD、Akt、CAD、PI3キナーゼ、PP1、およびカスパーゼタンパク質が挙げられるがこれらに限定されない。調節剤は、TNFファミリー受容体およびTNFファミリーリガンドのアゴニストおよびアンタゴニストを広範に含む。アポトーシス調節剤は、可溶性または膜結合性(例えば、リガンドまたは受容体)であってもよい。アポトーシス調節剤は、TNFまたはTNF関連リガンド、特に、TRAMPリガンド、Fas/CD95リガンド、TNFR−1リガンドまたはTRAIL等のアポトーシスの誘導因子であるものを含む。
【0037】
本発明の一側面では、p53とMDM2との間の相互作用の阻害剤は、下記式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグである:

式中、
Xは、CH、O、N、またはSであって、XがOまたはSである場合、Rは存在せず、
YはO、S、またはNR’であり、
、R、R、R、R、R、およびRは、独立してHまたは置換されてもよいアルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、アリール、複素環、COR’、OCOR’、CONR’R’’、NR’’COR’、NR’SOR’’、SONR’R’’、(C=NR’)NR’’R’’’、もしくはNR’R’’であり、または、
は、RまたはRの1つとともにアリール、シクロアルキル、または複素環基を形成し、
は、Hまたは置換されてもよいアルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、アリール、複素環、COR’、OCOR’、CONR’R’’、SONR’R’’、もしくは(C=NR’)NR’’R’’’であり、
は、6−クロロおよび5−フルオロ基を表し、かつ
各R’、R’’およびR’’’は、独立して、Hまたは置換されてもよいアルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、アリールもしくは複素環であり、または、
R’およびR’’、またはR’’およびR’’’は、環を形成し、
式中、RおよびRの1つは、CONRR’であり、RおよびR’の1つは、置換されてもよいシクロアルキル−アルキルもしくはモノシクロ−ヘテロシクロアルキル基、またはアルキル基の3位にヒドロキシル基を含まないジヒドロキシアルキルアミノ基である。
【0038】
より特定の実施形態では、式IのRおよびRの1つは、置換または非置換アリール(例えば、フェニル)、置換または非置換ヘテロアリール、シクロアルキル、直鎖または分岐鎖アルキル、アミドまたはエステルである。
【0039】
別の実施形態では、RおよびRの1つは、C3−I8アルキル基、例えば、プロピル、イソプロピル、sec−ブチル、tert−ブチル、イソペンチル、シクロペンチル、ノルボルニル、またはアダマンチル、または5員もしくは6員のアリールもしくはヘテロアリール基である。
【0040】
別の実施形態では、式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグは、式IIまたは式III:

に示される立体化学構造を有する。
【0041】
一実施形態では、式Iの化合物は、式IV:

を有し、式中、R〜RおよびYは、上に定義した通りである。
【0042】
別の実施形態では、式IVの化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグは、式Vまたは式VI:

に示される立体化学構造を有する。
【0043】
一実施形態では、式Iの化合物は、式VII:

を有し、式中、R〜Rは、上に定義した通りである。
【0044】
別の実施形態では、式VIIの化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグは、式VIIIまたは式IX:

に示される立体化学構造を有する。
【0045】
一実施形態では、式Iの化合物は、式X:

を有し、
式中、
、R、RおよびRは上に定義され、
10は、Hであり、
11は、置換されてもよいシクロアルキル−アルキルもしくはモノシクロ−ヘテロシクロアルキル基、またはアルキル基の3位にヒドロキシル基を含まないジヒドロキシアルキルアミノ基であり、
またはR10およびR11は、一緒になって、置換されてもよいモノシクロ−ヘテロシクロアルキル基を形成する。
【0046】
置換シクロアルキル−アルキル基の例としては、1つまたは複数のヒドロキシル基によってさらに置換される、本明細書で以下に記載される、シクロアルキル基によって置換されるC1−6アルキルが挙げられる。ヘテロシクロアルキル基の例としては、本明細書で以下に記載されるモノシクロ−ヘテロシクロアルキル基によって置換されるC1−6アルキルが挙げられる。
【0047】
シクロアルキル−アルキル基の特定例としては、2−(3−ヒドロキシシクロペンチル)エチルアミノ基、および3−(3−ヒドロキシシクロペンチル)プロピルアミノ基が挙げられる。それぞれのヒドロキシル基は、RまたはSの配置のいずれかを有してもよい。
【0048】
置換ヘテロシクロアルキル基の特定例としては、2−(l−モルホリニル)エチルアミノ基および3−(l−モルホリニル)プロピルアミノ基が挙げられる。
【0049】
ジヒドロキシアルキルアミノ基の特定例としては、RおよびSの4,5−ジヒドロキシペンチルアミノ基、および4−ヒドロキシ−3−(メチルヒドロキシ)ブチルアミノ基が挙げられる。
【0050】
ヒドロキシル基がアルキル基の3位に存在しない場合、化合物は、その調製中に、改良された安定性を示すということが、予想される。任意の特定の理論に限定されることなく、改良された安定性は、アミドのアミノ基を置換する可能性のある求核3−ヒドロキシル基が存在しない、つまり環を含む6員のエステルを形成することによって生じる可能性がある。3−ヒドロキシ基を含まないジヒドロキシアルキル基は、かかる反応に関与せず、より安定になり、より高い収率で作製出来るということが考えられる。
【0051】
さらなる実施形態では、式Iの化合物は、式XI〜XXVI:

の1つを有し、
式中、R、R、R、R、R10およびR11は、上に定義される通りである。
【0052】
別の実施形態では、式Iの化合物は、式XXVIIおよびXXVIII:

の1つを有し、
式中、R、R、R、R、R10、およびR11は、上に定義される通りである。
【0053】
別の実施形態では、式Iの化合物は、式XLVIII:

を有し、
式中、
、R、R、RおよびRは、上に定義される通りである。
【0054】
さらなる実施形態では、式Iの化合物は、式XLIX〜LXIV:

の1つを有し、
式中、
、R、R、RおよびRは、上に定義される通りである。
【0055】
さらなる実施形態では、式Iの化合物は、式LXV:

を有し、
式中、
、R、R、R、R10、およびR11は、上に定義される通りである。
【0056】
さらなる実施形態では、式Iの化合物は、式LXVIおよびLXVII:

の1つを有し、
式中、
、R、R、R、R10、およびR11は、上に定義される通りである。
【0057】
本発明の特定の実施形態としては、以下の化合物:
















のいずれか1つが挙げられるが、これらに限定されない。
【0058】
本発明の別の特定の実施形態としては、以下の化合物:





のいずれか1つが挙げられるが、これらに限定されない。
【0059】
有用なアルキル基は、直鎖または分岐鎖のC1−18アルキル基、とりわけメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、t−ブチル、sec−ブチル、3−ペンチル、アダマンチル、ノルボルニル、および3−ヘキシル基を含む。
【0060】
有用なアルケニル基は、直鎖または分岐鎖のC2−18アルキル基、とりわけエテニル、プロペニル、イソプロペニル、ブテニル、イソブテニル、およびヘキセニルを含む。
【0061】
有用なアルキニル基は、C2−18アルキニル基、とりわけエチニル、プロピニル、ブチニル、および2−ブチニル基である。
【0062】
有用なシクロアルキル基は、C3−8シクロアルキルである。典型的なシクロアルキル基は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルおよびシクロヘプチルを含む。
【0063】
有用なアリール基は、C6−14アリール、とりわけフェニル、ナフチル、フェナントレニル、アントラセニル、インデニル、アズレニル、ビフェニル、ビフェニレニル、およびフルオレニル基を含む。
【0064】
有用なヘテロアリール基は、チエニル、ベンゾ[b]チエニル、ナフト[2,3−b]チエニル、チアントレニル、フリル、ピラニル、イソベンゾフラニル、クロメニル、キサンテニル、フェノキサンテニル、2H−ピロリル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、インドリジニル、イソインドリル、3H−インドリル、インドリル、インダゾリル、プリニル、4H−キノリジニル、イソキノリル、キノリル、フタルジニル、ナフチリジニル、キノザリニル、シンノリニル、プテリジニル、カルバゾリル、β−カルボリニル、フェナンスリジニル、アクリジニル、ペリミジニル、フェナントロリニル、フェナジニル、イソチアゾリル、フェノチアジニル、イソオキサゾリル、フラザニル、フェノキサジニル、1,4−ジヒドロキノキサリン−2,3−ジオン、7−アミノイソクマリン、ピリド[1,2−a]ピリミジン−4−オン、1,2−ベンゾイソオキサゾール−3−イル、ベンズイミダゾリル、2−オキシインドリル、および2−オキソベンズイミダゾリルを含む。ヘテロアリール基が環に窒素原子を含む場合、かかる窒素原子は、N−オキシド、例えば、ピリジルN−オキシド、ピラジニルN−オキシド、ピリミジニルN−オキシド等の形態であってもよい。
【0065】
有用な複素環基は、テトラヒドロフラニル、ピラニル、ピペリジニル(piperidinyl)、ピペリジニル(piperizinyl)、ピロリジニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、モルホリニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル等の単環式複素環基を含む。多環式複素環基は、インドリニル、イソインドリニル、キヌクリジニル、クロマニル、イソクロマニル、テトロノイル、テトラヒドロイソキノリニル基と、さらに、例えば、置換されてもよい5,6−ジヒドロ−8H−[1,2,4]トリアゾロ[4,3−A]ピラジニル基等のヘテロアリール環で融合される複素環基を含む。
【0066】
任意の置換基は、1つもしくは複数のアルキル;ハロ;ハロアルキル;シクロアルキル;1つもしくは複数の低級アルキル、低級アルコキシ、メチレンジオシキ、ハロ、ハロアルキル、アミノスルホニル、アリール、またはヘテロアリール基で置換されてもよいアリール;1つもしくは複数の低級アルキル、低級アルコキシ、メチレンジオシキ、ハロ、ハロアルキル、アミノスルホニル、アリール、またはヘテロアリール基で置換されてもよいアリールオキシ;アラルキル;1つもしくは複数の低級アルキル、低級アルコキシ、メチレンジオシキ、ハロ、ハロアルキル、アミノスルホニル、アリール、またはヘテロアリール基で置換されてもよいヘテロアリール;1つもしくは複数の低級アルキル、低級アルコキシ、メチレンジオシキ、ハロ、ハロアルキル、アミノスルホニル、アリール、またはヘテロアリール基で置換されてもよいヘテロアリールオキシ;アルコキシ;アルキルチオ;アリールチオ;アミド;アミノ;アミノアルキル、アルキルアミノ、アシルオキシ;1つもしくは複数の低級アルキル、低級アルコキシ、メチレンジオシキ、ハロ、ハロアルキル、アミノスルホニル、アリール、またはヘテロアリール基で置換されてもよいアリールアシルオキシ;1つもしくは複数の低級アルキル、低級アルコキシ、メチレンジオシキ、ハロ、ハロアルキル、アミノスルホニル、アリール、またはヘテロアリール基で置換されてもよいジフェニルフォスフィニルオキシ;1つもしくは複数の低級アルキル、低級アルコキシ、メチレンジオシキ、ハロ、ハロアルキル、アミノスルホニル、アリール、ヘテロアリール、アミノ酸置換スルホニル、またはアミノ酸誘導体置換スルホニル基で置換されてもよいヘテロシクロ;1つもしくは複数の低級アルキル、低級アルコキシ、メチレンジオシキ、ハロ、ハロアルキル、アミノスルホニル、アリール、またはヘテロアリール基で置換されてもよいヘテロシクロアシル;1つもしくは複数の低級アルキル、低級アルコキシ、メチレンジオシキ、ハロ、ハロアルキル、アミノスルホニル、アリール、またはヘテロアリール基で置換されてもよいヘテロシクロアルコキシ;1つもしくは複数の低級アルキル、低級アルコキシ、メチレンジオシキ、ハロ、ハロアルキル、アミノスルホニル、アリール、またはヘテロアリール基で置換されてもよい部分的に不飽和のヘテロシクロアルキル;または1つもしくは複数の低級アルキル、低級アルコキシ、メチレンジオシキ、ハロ、ハロアルキル、アミノスルホニル、アリール、またはヘテロアリール基で置換されてもよい部分的に不飽和のヘテロシクロアルキルオキシを含む。
【0067】
本発明のある化合物は、光学異性体を含む立体異性体として存在してもよい。本発明は、純粋な個々の立体異性体調製物と各々の濃縮調製物の両方、および、かかる立体異性体のラセミ混合物と当業者に周知の方法に従って分離され得る個々のエナンチオマーの両方のすべての立体異性体を含む。
【0068】
本発明の化合物およびプロセスは、本発明の化合物を調製することの出来る方法を例証する以下の合成スキームと結び付けるとより良好に理解されるであろう。出発物質は、商業的供給源から得るか、または当業者に周知の十分に確立されている文献の方法によって調製することができる。上に定義される化合物が、以下に示される合成における適切な試薬および薬剤の置換によって合成され得るということは、当業者によって、容易に理解されるであろう。
【0069】
式Xの一般構造を有する化合物は、主要段階として、不斉1,3−双極性環化付加を使用することによって合成される(スキーム1)。
スキーム1

【0070】
試薬および条件:a)CHCl−CHCN、KF−Al、マイクロ波、またはメタノール、ピペリジン還流;b)4Åモレキュラーシーブ、トルエン、70℃;c)アミン、室温;d)Pb(OAc)、CHCl−MeOH(1:1)、0℃、またはアンモニウムセリウム(IV)硝酸塩(CAN)、CHCN、KCO、室温。
【0071】
式LXVを有する化合物は、式Xの調製と同様の方法(スキーム5)によって調製される。
スキーム5

【0072】
試薬および条件:a)CHCl−CHCN、KF−Al、マイクロ波、またはメタノール、ピペリジン還流;b)4Åモレキュラーシーブ、トルエン、70℃;c)アミン、室温;d)Pb(OAc)、CHCl−MeOH(1:1)、0℃、またはアンモニウムセリウム(IV)硝酸塩(CAN)、CHCN、KCO、室温。
【0073】
本発明の一側面は、MDM2阻害剤化合物を調製する方法に関する。一実施形態では、本発明は、式Xを有する化合物を調製する方法に関し、本方法は、
a)式1の化合物を式2の化合物と、例えば、溶媒または溶媒の混合物(例えば、CHClおよびCHCN)中で、触媒(例えば、KF−Al)の存在下または適した溶媒中の塩基の存在下でマイクロ波で、式3の化合物を形成するために、縮合させるステップと、

b)式3の化合物を式4の化合物および式5の化合物と、例えば、非極性溶媒(例えば、トルエン)中で、脱水剤(例えば、4Åモレキュラーシーブ)の存在下で、上昇温度(例えば、約70℃)で、式6の化合物を形成するために、縮合するステップと、

c)式6の化合物を、酸化剤(例えば、Pb(OAc)、硝酸アンモニウムセリウム)でに、溶媒または溶媒の混合物(例えば、CHClおよびMeOH、CHCN)中で、適した温度(例えば、約0℃または室温)で、式X:

の化合物を形成するために、処理するステップと
を含む。
【0074】
別の実施形態では、本発明は、式LXVを有する化合物を調製する方法に関し、本方法は、
a)式16の化合物を、式2の化合物と、例えば、溶媒または溶媒の混合物(例えば、CHClおよびCHCN)中で、触媒(例えば、KF−Al)の存在下でまたは適した溶媒中の塩基の存在下で、マイクロ波で、式17の化合物を形成するために、縮合するステップと、

b)式17の化合物を式4の化合物および式5の化合物と、例えば、非極性溶媒(例えば、トルエン)中で、脱水剤(例えば、4Åモレキュラーシーブ)の存在下で、上昇温度(例えば、約70℃)で、式18の化合物を形成するために、縮合するステップと、

c)式18の化合物を酸化剤(例えば、Pb(OAc)、硝酸アンモニウムセリウム)で、溶媒または溶媒の混合物(例えば、CHClおよびMeOH、CHCN)中で、適した温度(例えば、約0℃または室温)で、式LXV:

の化合物を形成するために、処理するステップと
を含み、
式中、R、R、R、R10およびR11は、上に定義される通りである。
【0075】
本発明の一つの重要な側面は、式Iの化合物は、細胞周期停止および/またはアポトーシスを誘導し、さらに、単独でまたは追加のアポトーシス誘導シグナルに反応してのいずれかで、細胞周期停止および/またはアポトーシスの誘導を強化することである。それゆえに、これらの化合物は、細胞周期停止および/またはアポトーシスの誘導に対して、かかる誘導刺激に耐性がある細胞を含む細胞を感作することが想定される。本発明の、p53またはp53関連タンパク質とMDM2またはMDM2関連タンパク質との間の相互作用の阻害剤は、アポトーシスの誘導によって治療、改善、または予防され得る任意の障害において、アポトーシスを誘導するために使用することが出来る。一実施形態では、阻害剤は、機能的p53またはp53関連タンパク質を含む細胞においてアポトーシスを誘導するために使用することが出来る。
【0076】
別の実施形態では、本発明は、1つまたは複数のアポトーシス調節剤と結合するアポトーシス結合状態を調整することに関係する。アポトーシス調節剤の例としては、Fas/CD95、TRAMP、TNF RI、DR1、DR2、DR3、DR4、DR5、DR6、FADD、RIP、TNFα、Fasリガンド、TRAIL、TRAIL−R1またはTRAIL−R2に対する抗体、Bcl−2、p53、BAX、BAD、Akt、CAD、PI3キナーゼ、PP1、およびカスパーゼタンパク質が挙げられるが、これらに限定されない。アポトーシスの開始、決定、および分解相に関与する他の薬剤もまた含まれる。アポトーシス調節剤の例としては、その活性、存在、または濃度の変化により、被験体におけるアポトーシスを調節することの出来る薬剤が挙げられる。アポトーシス調節剤は、TNFまたはTNF関連リガンド、特にTRAMPリガンド、Fas/CD95リガンド、TNFR−1リガンド、またはTRAIL等、アポトーシスの誘導因子であるものを含む。
【0077】
ある実施形態では、本発明の組成物および方法は、動物(例えば、ヒトおよび獣医学的動物を含むがこれらに限定されない、哺乳動物被験体)における疾患を有する細胞、組織、器官、または病理学的状態および/または疾患状態を治療するために使用される。これに関して、種々の疾患および病理は、本発明の方法および組成物を使用する治療または予防に適用出来る。これらの疾患および状態の非限定的な例のリストとしては、乳癌、前立腺癌、リンパ腫、皮膚癌、膵臓癌、結腸癌、メラノーマ、悪性メラノーマ、卵巣癌、脳腫瘍、原発性脳腫瘍、頭頸部癌、神経膠腫、膠芽細胞腫、肝臓癌、膀胱癌、非小細胞肺癌、頭頸部癌腫、乳房癌腫、卵巣癌腫、肺癌腫、小細胞肺癌腫、ウィルムス腫瘍、子宮頚癌腫、精巣癌腫、膀胱癌腫、膵臓癌腫、胃癌腫、結腸癌腫、前立腺癌腫、泌尿生殖器癌腫、甲状腺癌腫、食道癌腫、骨髄腫、多発性骨髄腫、副腎癌腫、腎細胞癌腫、子宮内膜癌腫、副腎皮質癌腫、悪性膵島細胞腫、悪性カルチノイド癌腫、絨毛癌、菌状息肉腫、悪性高カルシウム血症、頸部過形成、白血病、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性顆粒球性白血病、急性顆粒球性白血病、ヘアリー細胞白血病、神経芽細胞腫、横紋筋肉腫、カポジ肉腫、真性赤血球増加症、本態性血小板血症、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、軟部組織肉腫、骨肉腫、原発性マクログロブリン血症、および網膜芽細胞腫等、TおよびB細胞媒介性自己免疫疾患、炎症性疾患、感染、過剰増殖性疾患、AIDS、変性状態、血管疾患等が挙げられるが、これらに限定されない。ある実施形態では、治療される癌細胞は、転移性である。他の実施形態では、治療される癌細胞は、抗癌剤に対して耐性を有する。
【0078】
ある実施形態では、本発明の組成物および方法での治療に適した感染は、ウイルス、細菌、真菌、マイコプラズマ、プリオン等によって引き起こされる感染を含むが、これらに限定されない。
【0079】
本発明のある実施形態は、有効量の式Iの化合物および少なくとも1つの追加の治療剤(化学療法な抗腫瘍薬、アポトーシス調節剤、抗菌剤、抗ウイルス剤、抗真菌剤、および抗炎症剤を含むが、これらに限定されない)を投与する方法、および/または治療技術(例えば、外科的介入および/または放射線療法)を提供する。
【0080】
多数の適した抗癌剤が、本発明の方法における使用のために想定される。実際、本発明は、アポトーシスを誘導する薬剤、ポリヌクレオチド(例えば、アンチセンス、リボザイム、siRNA)、ポリペプチド(例えば、酵素および抗体)、生物学的模倣剤(例えば、ゴシポールまたはBH3模倣剤)、Bax等Bcl−2ファミリータンパク質と結合(例えば、オリゴマー形成または複合体形成)する薬剤、アルカロイド、アルキル化剤、抗腫瘍抗生物質、代謝拮抗物質、ホルモン、プラチナ化合物、モノクローナルまたはポリクローナル抗体(例えば、抗癌薬物、毒素、デフェンシンと結合体化された抗体)、毒素、放射性核種、生物学的反応修飾物質(例えば、インターフェロン(例えば、IFN−α)およびインターロイキン(例えば、IL−2))、養子免疫療法薬剤、造血成長因子、腫瘍細胞分化を誘導する薬剤(例えば、オールトランス型レチノイン酸)、遺伝子治療試薬(例えば、アンチセンス療法試薬およびヌクレオチド)、腫瘍ワクチン、血管形成阻害剤、プロテオソーム阻害剤、NF−KB調節因子、抗CDK化合物、HDAC阻害剤等、多数の抗癌剤の投与を想定するが、これらに限定されない。開示される化合物と併用投与するのに適した化学療法化合物および抗癌療法の多数の他の例は、当業者に公知である。
【0081】
ある実施形態では、抗癌剤は、アポトーシスを誘導または刺激する薬剤を含む。アポトーシスを誘導する薬剤は、放射線(例えば、X線、ガンマ線、UV)、腫瘍壊死因子(TNF)関連因子(例えば、TNFファミリー受容体タンパク質、TNFファミリーリガンド、TRAIL、TRAIL−R1またはTRAIL−R2に対する抗体)、キナーゼ阻害剤(例えば、上皮細胞増殖因子受容体(EGFR)キナーゼ阻害剤、血管増殖因子受容体(VGFR)キナーゼ阻害剤、線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)キナーゼ阻害剤、血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)キナーゼ阻害剤、およびBcr−Ablキナーゼ阻害剤(GLEEVEC等))、アンチセンス分子、抗体(例えば、HERCEPTIN、RITUXAN、ZEVALIN、およびAVASTIN)、抗エストロゲン(例えば、ラロキシフェンおよびタモキシフェン)、抗アンドロゲン(例えば、フルタミド、ビカルタミド、フィナステリド、アミノグルテタミド、ケトコナゾールおよびコルチコステロイド)、シクロオキシゲナーゼ2(COX−2)阻害剤(例えば、セレコキシブ、メロキシカム、NS−398、および非ステロイド系抗炎症薬(NSAID))、抗炎症薬(例えば、ブタゾリジン、DECADRON、DELTASONE、デキサメサゾン、デキサメサゾンインテンソール、DEXONE、HEXADROL、ヒドロキシクロロキン、METICORTEN、ORADEXON、ORASONE、オキシフェンブタゾン、PEDIAPRED、フェニルブタゾン、PLAQUENIL、プレドニゾロン、プレドニゾン、PRELONE、およびTANDEARIL)、および癌化学治療薬(例えば、イリノテカン(CAMPTOSAR)、CPT−11、フルダラビン(FLUDARA)、ダカルバジン(DTIC)、デキサメサゾン、ミトキサントロン、MYLOTARG、VP−16、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、5−FU、ドキソルビシン、ゲムシタビン、ボルテゾミブ、ゲフィチニブ、ベバシズマブ、TAXOTEREまたはTAXOL)、細胞内シグナル伝達分子、セラミドおよびサイトカイン、スタウロスポリン等を含むが、これらに限定されない。
【0082】
さらに他の実施形態では、本発明の組成物および方法は、式Iの化合物、ならびにアルキル化剤、代謝拮抗物質、および天然物(例えば、ハーブおよび他の植物および/または動物由来の化合物)から選択される少なくとも1つの抗過剰増殖性または抗腫瘍性の薬剤を提供する。
【0083】
本発明の組成物および方法での使用に適したアルキル化剤は、1)ナイトロジェンマスタード(例えば、メクロレタミン、シクロホスファミド、イホスファミド、メルファラン(L−サルコリシン)、およびクロラムブシル)、2)エチレンイミンおよびメチルメラミン(例えば、ヘキサメチルメラミンおよびチオテパ)、3)スルホン酸アルキル(例えば、ブスルファン)、4)ニトロソ尿素(例えば、カルムスチン(BCNU)、ロムスチン(CCNU)、セムスチン(メチルCCNU)、およびストレプトゾシン(ストレプトゾトシン))、および5)トリアゼン(例えば、ダカルバジン(DTIC;ジメチルトリアゼノイミド−アゾレカルボキサミド)を含むが、これらに限定されない。
【0084】
ある実施形態では、本発明の組成物および方法での使用に適した代謝拮抗物質は、1)葉酸類似体(例えば、メトトレキサート(アメトプテリン))、2)ピリミジン類似体(例えば、フルオロウラシル(5−フルオロウラシル;5−FU)、フロクスウリジン(フルオロデオキシウリジン;FudR)、およびシタラビン(シトシンアラビノシド))、および3)プリン類似体(例えば、メルカプトプリン(6−メルカプトプリン;6−MP)、チオグアニン(6−チオグアニン;TG)、およびペントスタチン(2’−デオキシコフォルマイシン))を含むが、これらに限定されない。
【0085】
またさらなる実施形態では、本発明の組成物および方法での使用に適した化学療法剤は、1)ビンカアルカロイド(例えば、ビンブラスチン(VLB)、ビンクリスチン)、2)エピポドフィロトキシン(例えば、エトポシドおよびテニポシド)、3)抗生物質(例えば、ダクチノマイシン(アクチノマイシンD)、ダウノルビシン(ダウノマイシン、ルビドマイシン)、ドキソルビシン、ブレオマイシン、プリカマイシン(ミトラマイシン)、およびマイトマイシン(マイトマイシンC))、4)酵素(例えば、L−アスパラギナーゼ)、5)生物学的反応修飾物質(例えば、インターフェロン−アルファ)、6)プラチナ配位錯体(例えば、シスプラチン(cis−DDP)およびカルボプラチン)、7)アントラセネジオン(例えば、ミトキサントロン)、8)置換尿素(例えば、ヒドロキシ尿素)、9)メチルヒドラジン誘導体(例えば、プロカルバジン(N−メチルヒドラジン;MIH))、10)副腎皮質抑制剤(例えば、ミトタン(o,p’−DDD)およびアミノグルテチミド)、11)副腎皮質ステロイド(例えば、プレドニゾン)、12)プロゲスチン(例えば、カプロン酸ヒドロキシプロゲステロン、酢酸メドロキシプロゲステロン、および酢酸メゲストロール)、13)エストロゲン(例えば、ジエチルスチルベストロールおよびエチニルエストラジオール)、14)抗エストロゲン(例えば、タモキシフェン)、15)アンドロゲン(例えば、プロピオン酸テストステロンおよびフルオキシメステロン)、16)抗アンドロゲン(例えば、フルタミド)、および17)ゴナドトロピン放出ホルモン類似体(例えば、ロイプロリド)を含むが、これらに限定されない。
【0086】
癌療法の状況において日常的に使用される任意の腫瘍崩壊性薬剤が、本発明の組成物および方法における使用を見出す。例えば、米国食品医薬品局(U.S.Food and Drug Administration)は、米国における使用のために認可された腫瘍崩壊性薬剤の処方を維持する。米国食品医薬品局(U.S.F.D.A.)に対応する国際的な機関が同様の処方を維持する。表1は、米国における使用のために認可された例示的な抗腫瘍薬のリストを提供する。当業者は、すべての米国で許可された化学療法薬に対して必要とされる「製品ラベル」が、例示的な薬剤に対し、認可された適応症、投薬情報、毒性データ等を記載するということを認識するであろう。
【0087】
【表1】







【0088】
抗癌剤は、抗癌活性を有することが同定されているが、米国食品医薬品局もしくは他の対応する機関によって現在認可されていないか、または新規用途のための評価を受けている化合物をさらに含む。例としては、3−AP、12−O−テトラデカノイルホルボール−13−アセテート、17AAG、852A、ABI−007、ABR−217620、ABT−751、ADI−PEG20、AE−941、AG−013736、AGRO100、アラノシン、AMG706、抗体G250、アンチネオプラストン、AP23573、アパジキオン(apaziquone)、APC8015、アチプリモッド、ATN−161、アトラセンテン、アザシチジン、BB−10901、BCX−1777、ベバシズマブ、BG00001、ビカルタミド、BMS247550、ボルテゾミブ、ブリオスタチン−1、ブセレリン、カルシトリオール、CCI−779、CDB−2914、セフィキシム、セツキシマブ、CG0070、シレンジチド、クロファラビン、コンブレタスタチンA4ホスフェート、CP−675,206、CP−724,714、CpG7909、クルクミン、デシタビン、DENSPM、ドキセルカルシフェロール、E7070、E7389、エクテイナシジン743、エファプロキシラール、エフロニチン、EKB−569、エンザスタウリン、エーロチニブ、エキシスリンド、フェンレチニド、フラボピリドール、フルダラビン、フルタミド、フォテムスチン、FR901228、G17DT、ガリキシマブ、ゲフィチニブ、ゲニステイン、グルフォスファミド、GTI−2040、ヒストレリン、HKI−272、ホモハリングトニン、HSPPC−96、hul4.18−インターロイキン−2融合タンパク質、HuMax−CD4、イロプロスト、イミキモド、インフリキシマブ、インターロイキン−12、IPI−504、イロフルベン、イキサベピロン、ラパチニブ、レナリドミド、レスタウルチニブ、ロイプロリド、LMB−9イムノトキシン、ロナファルニブ、ルニリキシマブ、マフォスファミド、MB07133、MDX−010、MLN2704、モノクローナル抗体3F8、モノクローナル抗体J591、モテキサフィン、MS−275、MVA−MUCl−IL2、ニルタミド、ニトロカンプトテシン、ノラトレキセド二塩酸塩、ノルバデックス、NS−9、O6−ベンジルグアニン、オブリメルセンナトリウム、ONYX−015、オレゴボマブ、OSI−774、パニツムマブ、パラプラチン、PD−0325901、ペメトレキセド、PHY906、ピオグリタゾン、ピルフェニドン、ピキサントロン、PS−341、PSC833、PXD101、ピラゾロアクリジン、R115777、RAD001、ランピルナーゼ、レベッカマイシン類似体、rhuアンジオスタチンタンパク質、rhuMab2C4、ロシグリタゾン、ルビテカン、S−1、S−8184、サトラプラチン、SB−,15992、SGN−0010、SGN−40、ソラフェニブ、SR31747A、ST1571、SU011248、スベロイルアニリドヒデロキサム酸、スラミン、タラボスタット、タラムパネル、タリクイダール、テムシロリムス、TGFa−PE38イムノトキシン、サリドマイド、タイマルファシン、チピファニブ、チラパザミン、TLK286、トラベクテジン、グルクロン酸トリメトレキサート、TroVax、UCN−I、バルプロ酸、ビンフルニン、VNP40101M、ボロシキシマブ、ボリノスタット、VX−680、ZD1839、ZD6474、ジロイトンおよびゾスクイダール三塩酸塩が挙げられるが、これらに限定されない。
【0089】
抗癌剤および他の治療剤のより詳細な説明のために、当業者は、Physician’s Desk ReferenceおよびGoodman and Gilmanの「Pharmaceutical Basis of Therapeutics」tenth edition,Eds.Hardman et al.,2002を含むが、これらに限定されない多数のマニュアルを参照する。
【0090】
本発明は、放射線療法とともに式Iの化合物を投与する方法を提供する。本発明は、動物への放射線の治療線量を照射するために使用される、種類、量、または照射および投与の系によって制限されない。例えば、動物は、光子放射線療法、粒子ビーム放射線療法、他の種類の放射線療法、およびこれらの組み合わせを受けることが可能である。ある実施形態では、放射線は、線形加速器を使用して動物に照射される。さらに他の実施形態では、放射線は、ガンマナイフを使用して、照射される。
【0091】
放射線源は、動物に対して外部または内部であってもよい。外部放射線療法は、最も一般的であり、例えば、線形加速器を使用して皮膚を通して腫瘍部位に、高エネルギーな放射線のビームを向けることを含む。放射線のビームが腫瘍部位に集中する一方で、正常な健康組織への曝露を回避することはほぼ不可能である。しかしながら、外部放射線は、通常、動物によって十分に許容される。内部放射線療法は、腫瘍部位で、またはその近位で、身体の内部にビーズ、ワイヤ、ペレット、カプセル、粒子等の放射線放出源を移植することを含み、これは癌細胞を特異的に標的にする照射系の使用を含む(例えば、癌細胞結合リガンドに付着された粒子を使用する)。かかる移植は、治療後に除去することが出来、または身体中に不活性状態で放置することが出来る。内部放射線療法の種類は、近接照射療法、組織内照射、腔内照射、放射免疫療法等を含むが、これらに限定されない。
【0092】
動物は、任意で、放射線増感剤(例えば、メトロニダゾール、ミソニダゾール、動脈内Budr、静脈内ヨードデオキシウリジン(IudR)、ニトロイミダゾール、5−置換−4−ニトロイミダゾール、2H−イソインドレジオン、[[(2−ブロモエチル)−アミノ]メチル]−ニトロ−1H−イミダゾール−1−エタノール、ニトロアニリン誘導体、DNA−アフィニック低酸素症選択的細胞毒、ハロゲン化DNAリガンド、1,2,4ベンゾトリアジンオキシド、2−ニトロイミダゾール誘導体、フッ素含有ニトロアゾール誘導体、ベンズアミド、ニコチンアミド、アクリジン−インターカレーター、5−チオトレトラゾール誘導体、3−ニトロ−1,2,4−トリアゾール、4,5−ジニトロイミダゾール誘導体、ヒドロキシル化テキサフィリン、シスプラチン、マイトマイシン、チリパザミン、ニトロソ尿素、メルカプトプリン、メトトレキサート、フルオロウラシル、ブレオマイシン、ビンクリスチン、カルボプラチン、エピルビシン、ドキソルビシン、シクロホスファミド、ビンデシン、エトポシド、パクリタキセル、熱(温熱療法)等)、放射線防御剤(例えば、システアミン、アミノアルキル二水素ホスホロチオエート、アミフォスチン(WR2721)、IL−1、IL−6等)を受けることが可能である。放射線増感剤は、腫瘍細胞の殺傷を増強する。放射線防御剤は、健康な組織を放射線の有害な影響から保護する。
【0093】
放射線の線量が、許容されない負の副作用なく、動物によって許容される限り、任意の種類の放射線を、動物に投与することが出来る。適した種類の放射線療法は、例えば、電離(電磁)放射線療法(例えば、X線またはガンマ線)または粒子ビーム放射線療法(例えば、線形高エネルギー放射線)を含む。電離放射線は、電離、すなわち、電子の獲得または損失を産生するのに十分なエネルギーを有する粒子または光子を含む放射線として定義される(例えば、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる、米国特許第5,770,581号に記載されるように)。放射線の効果は、臨床医によって、少なくとも部分的に制御することが出来る。一実施形態では、放射線の線量は、最大の標的細胞曝露および毒性の減少のために分割される。
【0094】
一実施形態では、動物に投与される放射線の全体の線量は、約0.01グレイ(Gy)〜約100Gyである。別の実施形態では、約10Gy〜約65Gy(例えば、約15Gy、20Gy、25Gy、30Gy、35Gy、40Gy、45Gy、50Gy、55Gy、または60Gy)が治療中に投与される。ある実施形態では、放射線の全線量は、1日の間に投与され得るが、全体の線量は、理想的には、数日間に分割されて投与される。望ましくは、放射線療法は、少なくとも約3日間、例えば、少なくとも5、7、10、14、17、21、25、28、32、35、38、42、46、52、または56日間(約1〜8週間)の間に投与される。従って、放射線の1日の線量は、およそ1〜5Gy(例えば、約1Gy、1.5Gy、1.8Gy、2Gy、2.5Gy、2.8Gy、3Gy、3.2Gy、3.5Gy、3.8Gy、4Gy、4.2Gy、または4.5Gy)、または1〜2Gy(例えば、1.5〜2Gy)を含むであろう。放射線の1日の線量は、標的とされた細胞の破壊を誘導するのに十分である。一定期間に渡って引き伸ばされた場合、一実施形態では、放射線は、毎日投与されず、それにより、動物が休養することが可能になり、療法の効果が実現する。例えば、放射線は、望ましくは、治療の各週に対して5日間連続で投与され、2日間投与されず、それにより、1週間につき2日間の休養を可能にする。しかしながら、放射線は、動物の反応性および任意の潜在的な副作用に応じて、1日/週、2日/週、3日/週、4日/週、5日/週、6日/週、または7日すべて/週、投与され得る。放射線療法は、療法期間の任意の時点で開始され得る。一実施形態では、放射線は、1週目または2週目に開始され、療法期間の残りの期間に投与され得る。例えば、放射線は、例えば、固形腫瘍を治療するための6週間を含む療法期間のうち1〜6週目または2〜6週目に投与される。または、放射線は、5週間を含む療法期間のうち1〜5週目または2〜5週目に投与される。しかし、これらの例示的な放射線療法投与スケジュールは、本発明を限定することを意図しない。
【0095】
抗微生物治療剤もまた、本発明において治療剤として使用することが可能である。微生物の機能を破壊し、阻害し、または他の方法で弱める任意の薬剤、さらに、かかる活性を有すると考えられる任意の薬剤を使用することが可能である。抗菌性薬剤は、単独でまたは組み合わせて使用される、天然および合成抗生物質、抗体、阻害タンパク質(例えば、デフェンシン)、アンチセンス核酸、膜破壊剤等を含むが、これらに限定されない。実際に、抗菌剤、抗ウイルス剤、抗真菌剤等を含むが、これらに限定されない任意の種類の抗生剤を使用してもよい。
【0096】
本発明のある実施形態では、式Iの化合物および1つまたは複数の治療剤または抗癌剤が、異なる周期で、異なる期間で、異なる濃度で、異なる投与経路によって等の1つまたは複数の条件下で、動物に投与される。ある実施形態では、化合物は、治療剤または抗癌剤の前、例えば、治療剤または抗癌剤の投与の、0.5、1、2、3、4、5、10、12、もしくは18時間前、1、2、3、4、5、もしくは6日前、または1、2、3、もしくは4週間前に投与される。ある実施形態では、化合物は、治療剤または抗癌剤の後、例えば、抗癌剤の投与の、0.5、1、2、3、4、5、10、12、もしくは18時間後、1、2、3、4、5、もしくは6日間後、または1、2、3、もしくは4週間後に投与される。ある実施形態では、化合物および治療剤または抗癌剤は、同時であるが異なるスケジュールで投与され、例えば、化合物は毎日投与される一方で、治療剤または抗癌剤は、1週間毎に1回、2週間毎に1回、3週間毎に1回、または4週間毎に1回で投与される。他の実施形態では、化合物は、1週間に1回投与される一方で、治療剤または抗癌剤は、毎日、1週間毎に1回、2週間毎に1回、3週間毎に1回、または4週間毎に1回で投与される。
【0097】
本発明の範囲内の組成物は、本発明の化合物が、その意図する目的を達成するために有効である量で含まれる、すべての組成物を含む。個々の必要性が変化する一方で、各成分の有効量の最適範囲の決定は、当業者の範囲内である。典型的には、化合物は、哺乳動物へ、例えば、ヒトに、経口的に、1日当たり、アポトーシスの誘導に応答する障害について治療される哺乳動物の体重の0.0025〜50mg/kgの用量、または等量のその薬学的に許容される塩で、投与することが可能である。一実施形態では、かかる障害を治療、改善、予防するために、約0.01〜約25mg/kgが経口投与される。筋肉内注射に関して、用量は、一般的には、経口用量の約半分である。例えば、適した筋肉内用量は、約0.0025〜約25mg/kg、または約0.01〜約5mg/kgになるであろう。
【0098】
経口単位用量は、約0.01〜約1000mg、例えば、約0.1〜約100mgの化合物を含んでもよい。単位用量は、それぞれが、約0.1〜約10mg、都合良くは、約0.25〜50mgの化合物またはその溶媒和物を含む、1つまたは複数の錠剤またはカプセルとして、毎日1回または複数回投与することが可能である。
【0099】
局所製剤では、化合物は、担体の1グラム当たり約0.01〜100mgの濃度で存在することが可能である。一実施形態では、化合物は、約0.07〜1.0mg/ml、例えば、約0.1〜0.5mg/mlの濃度で、および一実施形態では、約0.4mg/mlの濃度で存在する。
【0100】
未加工の化学物質としての化合物を投与することに加えて、本発明の化合物は、薬学的に使用され得る調製物への化合物の加工を容易にする、賦形剤および補助剤を含む、適した薬学的に許容される担体を含む薬学的調製物の一部として投与することが可能である。調製物、特に、経口的または局所的に投与することができ、錠剤、糖衣錠、遅延放出トローチおよびカプセル、マウスリンスおよびマウスウォッシュ、ゲル、液体懸濁液、ヘアリンス、ヘアゲル、シャンプー等の投与の1つの種類のために使用され得るこれらの調製物、およびさらには、坐剤等の経直腸的に投与され得る調製物は、静脈内注入、注射による、局所的または経口的な投与に適した溶液と同様に、約0.01〜99パーセント、一実施形態では約0.25〜75パーセントの活性化合物を、賦形剤とともに含む。
【0101】
本発明の薬学的組成物は、本発明の化合物の有益な効果を経験する可能性がある任意の動物に投与することが可能である。かかる動物で最も注目されるのは、哺乳動物、例えば、ヒトであるが、本発明は、そのように限定されることを意図しない。他の動物には、獣医学的な動物(ウシ、ヒツジ、ブタ、ウマ、イヌ、ネコ等)が含まれる。
【0102】
該化合物およびその薬学的組成物は、それらの意図する目的を達成する任意の手段によって投与することが可能である。例えば、投与は、非経口的、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内、経皮的、口腔、くも膜下腔内、頭蓋内、鼻腔内または局所的な経路によるものであることが可能である。代替的に、または同時に、投与は、経口経路によるものであることが可能である。投与される投薬量は、受け手の年齢、健康、体重、同時に行われる治療の種類、もしあれば、治療の頻度、および望まれる効果の性質によって異なるであろう。
【0103】
本発明の薬学的調製物は、それ自体が周知である様式で、例えば、従来の混合、顆粒化、糖衣作製、溶解、または凍結乾燥の加工で製造される。従って、経口使用のための薬学的調製物は、活性化合物を固形賦形剤と組み合わせること、任意で結果として生じる混合物を粉砕すること、および適した補助剤を加えた後、所望に応じてまたは必要に応じて、錠剤または糖衣錠のコアを得るために、顆粒の混合物を加工することによって、得ることが出来る。
【0104】
適した賦形剤は、特に、サッカリド、例えば、ラクトースまたはスクロース、マンニトールまたはソルビトール、セルロース調製物および/またはリン酸カルシウム、例えば、リン酸三カルシウムまたはリン酸水素カルシウム、等の充填剤、さらには、例えば、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、および/またはポリビニルピロリドンを使用するデンプンペースト等の結合剤である。所望に応じて、上述のデンプン、さらにはカルボキシメチルデンプン、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸もしくはその塩、例えば、アルギン酸ナトリウム等の崩壊剤を加えることが可能である。補助剤は、とりわけ、流動調節剤および滑剤、例えば、ステアリン酸マグネシウムまたはステアリン酸カルシウム等のシリカ、タルク、ステアリン酸またはその塩、および/またはポリエチレングリコールである。糖衣錠コアは、適したコーティングを提供され、所望に応じて、それらは、胃液に対して抵抗性がある。本目的において、濃縮サッカリド溶液を使用することが可能であり、それらは、任意で、アラビアガム、タルク、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコールおよび/または二酸化チタン、ラッカー溶液および適した有機溶媒または溶媒混合物を含むことが可能である。胃液に対して抵抗性があるコーティングを産生するために、フタル酸アセチルセルロースまたはフタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース等の、適したセルロース調製物の溶液が使用される。染料または色素は、例えば、同定のため、または活性化合物用量の組み合わせを特徴付けるために、錠剤または糖衣錠コーティングに加えてもよい。
【0105】
経口的に使用され得る他の薬学的調製物は、ゼラチン製の押し込み型カプセル、さらには、ゼラチン製およびグリセロールまたはソルビトール等の可逆剤製のソフト密封カプセルを含む。押し込み型カプセルは、ラクトース等の充填材、デンプン等の結合剤、および/またはタルクもしくはステアリン酸マグネシウム等の滑剤、ならびに、任意で安定剤と混合することが可能である顆粒の形態で、活性化合物を含むことが出来る。ソフトカプセルでは、活性化合物は、一実施形態では、脂肪油または液体パラフィン等の適した液体で溶解または懸濁される。さらには、安定剤を加えることが可能である。
【0106】
経直腸的に使用され得る可能な薬学的調製物は、例えば、1つまたは複数の活性化合物と坐剤基剤の組み合わせからなる坐剤を含む。適した坐剤基剤は、例えば、天然または合成トリグリセリド、またはパラフィン炭化水素である。さらには、活性化合物と基剤との組み合わせからなるゼラチン直腸カプセルを使用することもさらに可能である。可能な基剤材料は、例えば、液体トリグリセリド、ポリエチレングリコール、またはパラフィン炭化水素を含む。
【0107】
非経口的投与のための適した製剤は、水溶性の形態での活性化合物の水溶液、例えば、水溶性塩およびアルカリ溶液を含む。さらには、適切な油性注射懸濁液としての活性化合物の懸濁液を投与することが可能である。適した親油性溶媒または媒体は、脂肪油、例えば、ゴマ油、または合成脂肪酸エステル、例えば、オレイン酸エチルまたはトリグリセリドまたはポリエチレングリコール400を含む。水性注射懸濁液は、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、および/またはデキストランを含む、懸濁液の粘性を増加させる物質を含むことが可能である。任意で、懸濁液は、安定剤をさらに含むことが可能である。
【0108】
本発明の局所用組成物は、一実施形態では、適切な担体の選択によって、オイル、クリーム、ローション、軟膏等として製剤化する。適した担体は、植物油または鉱油、白色ワセリン(白色ソフトパラフィン)、分岐鎖脂肪またはオイル、動物脂肪および高分子量アルコール(C12より大きい)を含む。担体は、活性成分が可溶性であるものであってよい。所望に応じて、乳化剤、安定剤、保湿剤、および抗酸化剤もまた、色または香りを付与する薬剤と同様に含まれてもよい。加えて、経皮的浸透促進剤が、これらの局所製剤において利用され得る。かかる促進剤の例は、米国特許第3,989,816号および第4,444,762号において見ることが出来る。
【0109】
クリームは、鉱油、自己乳化蜜蝋および水の混合液から製剤化することが出来、この混合液中で、アーモンド油等の少量の油で溶解された活性成分が混合される。かかるクリームの典型例は、水約40に対し、蜜蝋約20、鉱油約40、およびアーモンド油約1を含むものである。
【0110】
軟膏は、アーモンド油等の植物油中の活性成分の溶液を温めたソフトパラフィンと混合しその混合物を冷却することにより、製剤化することが出来る。かかる軟膏の典型例は、約30重量%のアーモンド油および約70重量%の白色ソフトパラフィンを含むものである。
【0111】
ローションは、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコール等の適した高分子量アルコール中に、活性成分を溶解することによって、好都合に調製することが可能である。
【0112】
以下の実施例は、本発明の方法および組成物の例示であって、限定するものではない。通常、臨床的療法に含まれ、かつ当業者に明白である種々の条件およびパラメータの他の適した改変および適合は、本発明の精神および範囲内である。
【0113】
実施例1
6−クロロ−4’−(3−クロロ−フェニル)−2’−(2,2−ジメチル−プロピル)−5−フルオロ−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−スピロ[インドール−3,3’−ピロリジン]−5’−カルボン酸(3,4−ジヒドロキシ−ブチル)−アミド

【0114】
実施例2
6−クロロ−4’−(3−クロロ−フェニル)−2’−(2,2−ジメチル−プロピル)−5−フルオロ−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−スピロ[インドール−3,3’−ピロリジン]−5’−カルボン酸(2,3−ジヒドロキシ−プロピル)−アミド

【0115】
実施例3
6−クロロ−4’−(3−クロロ−フェニル)−2’−(2,2−ジメチル−プロピル)−5−フルオロ−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−スピロ[インドール−3,3’−ピロリジン]−5’−カルボン酸(3,5−ジヒドロキシ−ペンチル)−アミド

【0116】
実施例4
6−クロロ−4’−(3−クロロ−フェニル)−2’−(2,2−ジメチル−プロピル)−5−フルオロ−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−スピロ[インドール−3,3’−ピロリジン]−5’−カルボン酸[2−(3−ヒドロキシ−シクロペンチル)−エチル]−アミド

【0117】
実施例5
6−クロロ−4’−(3−クロロ−フェニル)−2’−(2,2−ジメチル−プロピル)−5−フルオロ−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−スピロ[インドール−3,3’−ピロリジン]−5’−カルボン酸[2−(3−ヒドロキシ−シクロペンチル)−エチル]−アミド

【0118】
実施例6
6−クロロ−4’−(3−クロロ−フェニル)−2’−(2,2−ジメチル−プロピル)−5−フルオロ−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−スピロ[インドール−3,3’−ピロリジン]−5’−カルボン酸[2−(3−ヒドロキシ−シクロペンチル)−エチル]−アミド

【0119】
実施例7
6−クロロ−4’−(3−クロロ−フェニル)−2’−(2,2−ジメチル−プロピル)−5−フルオロ−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−スピロ[インドール−3,3’−ピロリジン]−5’−カルボン酸[2−(3−ヒドロキシ−シクロペンチル)−エチル]−アミド

【0120】
実施例8
6−クロロ−4’−(3−クロロ−4−フルオロ−フェニル)−2’−(2,2−ジメチル−プロピル)−5−フルオロ−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−スピロ[インドール−3,3’−ピロリジン]−5’−カルボン酸(4,5−ジヒドロキシ−ペンチル)−アミド

【0121】
実施例9
6−クロロ−4’−(3−クロロ−4−フルオロ−フェニル)−2’−(2,2−ジメチル−プロピル)−5−フルオロ−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−スピロ[インドール−3,3’−ピロリジン]−5’−カルボン酸(3−モルホリン−4−イル−プロピル)−アミド

【0122】
実施例10
6−クロロ−4’−(3−クロロ−2−フルオロ−フェニル)−2’−(2,2−ジメチル−プロピル)−5−フルオロ−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−スピロ[インドール−3,3’−ピロリジン]−5’−カルボン酸(4−ヒドロキシ−3−ヒドロキシメチル−ブチル)−アミド

【0123】
実施例11

【0124】
実施例12
6−クロロ−4’−(3−クロロ−2−フルオロ−フェニル)−2’−(2,2−ジメチル−プロピル)−5−フルオロ−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−スピロ[インドール−3,3’−ピロリジン]−5’−カルボン酸(3,4−ジヒドロキシ−ブチル)−アミド
(MI−419)

【0125】
実施例13
6−クロロ−4’−(3−クロロ−フェニル)−2’−(2,2−ジメチル−プロピル)−5−フルオロ−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−スピロ[インドール−3,3’−ピロリジン]−5’−カルボン酸(2−モルホリン−4−イル−エチル)−アミド

【0126】
実施例14
6−クロロ−4’−(3−クロロ−フェニル)−2’−(2,2−ジメチル−プロピル)−5−フルオロ−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−スピロ[インドール−3,3’−ピロリジン]−5’−カルボン酸(3−モルホリン−4−イル−プロピル)−アミド

【0127】
実施例15
6−クロロ−4’−(3−クロロ−フェニル)−2’−(2,2−ジメチル−プロピル)−5−フルオロ−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−スピロ[インドール−3,3’−ピロリジン]−5’−カルボン酸(4,5−ジヒドロキシ−ペンチル)−アミド

【0128】
実施例16
6−クロロ−4’−(3−クロロ−フェニル)−2’−(2,2−ジメチル−プロピル)−5−フルオロ−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−スピロ[インドール−3,3’−ピロリジン]−5’−カルボン酸(4−ヒドロキシ−3−ヒドロキシメチル−ブチル)−アミド

【0129】
実施例17
(2’R,3S,3’’S,4’R,5’R)6−クロロ−4’−(3−クロロ−4−フルオロ−フェニル)−2’−(2,2−ジメチル−プロピル)−5−フルオロ−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−スピロ[インドール−3,3’−ピロリジン]−5’−カルボン酸(3,4−ジヒドロキシ−ブチル)−アミド
(MI−319)

【0130】
実施例18

【0131】
実施例19
6−クロロ−4’−(3−クロロ−4−フルオロフェニル)−2’−シクロペンチルメチル−5−フルオロ−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−スピロ[インドール−3,3’−ピロリジン]−5’−カルボン酸(3,4−ジヒドロキシ−ブチル)−アミド
(MDM2−319−1)

【0132】
実施例20

【0133】
実施例21

【0134】
実施例22
6−クロロ−4’−(3−クロロ−4−フルオロフェニル)−2’−シクロヘキシル−5−フルオロ−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−スピロ[インドール−3,3’−ピロリジン]−5’−カルボン酸(3,4−ジヒドロキシ−ブチル)−アミド
(MDM2−319−4)

【0135】
実施例23

【0136】
実施例24
6−クロロ−4’−(3−クロロ−4−フルオロフェニル)−2’−(2,2−ジメチル−プロピル)−5−フルオロ−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−スピロ[インドール−3,3’−ピロリジン]−5’−カルボン酸[2−(3−ヒドロキシ−シクロペンチル)−エチル]−アミド
(MDM2−319−6)

【0137】
実施例25

【0138】
実施例26
6−クロロ−4’−(3−クロロ−4−フルオロフェニル)−2’−シクロペンチル−5−フルオロ−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−スピロ[インドール−3,3’−ピロリジン]−5’−カルボン酸(3,4−ジヒドロキシ−ブチル)−アミド
(MI−319−8)

【0139】
実施例27
6−クロロ−4’−(3−クロロ−4−フルオロフェニル)−2’−(2,2−ジメチル−プロピル)−5−フルオロ−5’−(4−メチル−ピペラジン−1−カルボニル)−1H−スピロ[インドール−3,3’−ピロリジン]−2−オン
(MI−319−9)

【0140】
実施例28

【0141】
実施例29

【0142】
実施例30

【0143】
実施例31

【0144】
実施例32
1’−アセチル−6−クロロ−4’−(3−クロロ−4−フルオロフェニル)−2’−(2,2−ジメチル−プロピル)−5−フルオロ−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−スピロ[インドール−3,3’−ピロリジン]−5’−カルボン酸(3,4−ジヒドロキシ−ブチル)−アミド
(MI−319−13)

【0145】
実施例33
6−クロロ−4’−(3−クロロ−4−フルオロフェニル)−2’−(2,2−ジメチル−プロピル)−5−フルオロ−2−オキソ−1’−オキシ−1,2,4’,5’−テトラヒドロ−スピロ[インドール−3,3’−ピロール]−5’−カルボン酸(3,4−ジヒドロキシ−ブチル)−アミド
(MI−319−14)

【0146】
実施例34
{[6−クロロ−4’−(3−クロロ−4−フルオロフェニル)−2’−(2,2−ジメチル−プロピル)−5−フルオロ−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−スピロ[インドール−3,3’−ピロリジン]−5’−カルボニル]−アミノ}−酢酸
(MI−319−15)

【0147】
実施例35

【0148】
実施例36
6−クロロ−4’−(3−クロロ−4−フルオロフェニル)−2’−(2,2−ジメチル−プロピル)−5−フルオロ−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−スピロ[インドール−3,3’−ピロリジン]−5’−カルボン酸(2−イミダゾル−1−イル−エチル)−アミド
(MI−319−17)

【0149】
実施例37
7−{[6−クロロ−4’−(3−クロロ−4−フルオロフェニル)−2’−(2,2−ジメチル−プロピル)−5−フルオロ−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−スピロ[インドール−3,3’−ピロリジン]−5’−カルボニル]−アミノ}−3,5−ジヒドロキシ−ヘプタン酸
(MI−319−18)

【0150】
実施例38
6−クロロ−4’−(3−クロロ−4−フルオロフェニル)−2’−(2,2−ジメチル−プロピル)−5−フルオロ−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−スピロ[インドール−3,3’−ピロリジン]−5’−カルボン酸(2,3,4−トリヒドロキシ−ブチル)−アミド
(MI−319−19)

【0151】
実施例39
6−クロロ−4’−(3−クロロ−4−フルオロフェニル)−2’−(2,2−ジメチル−プロピル)−5−フルオロ−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−スピロ[インドール−3,3’−ピロリジン]−5’−カルボン酸(2−グアニジノ−エチル)−アミド
(MI−319−20)

【0152】
実施例40

【0153】
実施例41
6−クロロ−4’−(3−クロロ−4−フルオロフェニル)−5−フルオロ−2’−(2−メチル−プロペニル)−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−スピロ[インドール−3,3’−ピロリジン]−5’−カルボン酸(3,4−ジヒドロキシ−ブチル)−アミド

【0154】
実施例42
6−クロロ−4’−(3−クロロ−4−フルオロフェニル)−2’−(2,2−ジメチル−プロピル)−5−フルオロ−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−スピロ[インドール−3,3’−ピロリジン]−5’−カルボン酸(2−ウレイド−エチル)−アミド

【0155】
実施例43
(2’R,3S,4’R,5’R)−6−クロロ−N−((S)−3,4−ジヒドロキシブチル)−5−フルオロ−4’−(3−フルオロフェニル)−2’−ネオペンチル−2−オキソスピロ[インドリン−3,3’−ピロリジン]−5’−カルボキサミド
(MI−519−1)

【0156】
実施例44
(2’R,3S,4’S,5’R)−6−クロロ−4’−(2,3−ジフルオロフェニル)−N−((S)−3,4−ジヒドロキシブチル)−5−フルオロ−2’−ネオペンチル−2−オキソスピロ[インドリン−3,3’−ピロリジン]−5’−カルボキサミド
(MI−519−2)

【0157】
実施例45
(2’R,3S,4’R,5’R)−6−クロロ−4’−(3,4−ジフルオロフェニル)−N−((S)−3,4−ジヒドロキシブチル)−5−フルオロ−2’−ネオペンチル−2−オキソスピロ[インドリン−3,3’−ピロリジン]−5’−カルボキサミド
(MI−519−3)

【0158】
実施例46
(2’R,3S,4’S,5’R)−6−クロロ−4’−(2,5−ジフルオロフェニル)−N−((S)−3,4−ジヒドロキシブチル)−5−フルオロ−2’−ネオペンチル−2−オキソスピロ[インドリン−3,3’−ピロリジン]−5’−カルボキサミド
(MI−519−5)

【0159】
実施例47
(2’R,3S,4’S,5’R)−6−クロロ−N−((S)−3,4−ジヒドロキシブチル)−5−フルオロ−4’−(2−フルオロフェニル)−2’−ネオペンチル−2−オキソスピロ[インドリン−3,3’−ピロリジン]−5’−カルボキサミド
(MI−519−6)

【0160】
実施例48
(2’R,3S,4’R,5’R)−6−クロロ−N−((S)−3,4−ジヒドロキシブチル)−5−フルオロ−4’−(4−フルオロフェニル)−2’−ネオペンチル−2−オキソスピロ[インドリン−3,3’−ピロリジン]−5’−カルボキサミド
(MI−519−7)

【0161】
実施例49
細胞増殖阻害
ペプチド系阻害剤に対する非ペプチド小分子阻害剤の1つの大きな利点は、その優れた細胞透過性である。p53−MDM2相互作用の強力な非ペプチド阻害剤は、野生型形態のp53とともにp53の活性の刺激を通じて、癌細胞において細胞の増殖および分裂の阻害に有効であろうということが予測される。さらに、それらは、p53の損失または突然変異したp53の非機能的形態のいずれかを伴い、癌細胞では選択性を有するということが予測される。これらの予測を検査するため、細胞増殖アッセイがヒト前立腺癌LNCaP(p53野生型)およびPC−3(p53ヌル)細胞株を使用して、開発された。本発明の化合物の毒性作用が検査された。
【0162】
細胞を、96ウェル平底細胞培養プレートに、3〜4×10細胞/ウェルの密度で播種し、4日間化合物の存在下でインキュベートした。化合物の濃度を増加させる処理の後、細胞増殖阻害の速度を、WST−8(2−(2−メトキシ−4−ニトロフェニル)−3−(4−ニトロフェニル)−5−(2,4ジスルホフェニル)−2H−テトラゾリウムモノナトリウム塩(Dojindo Molecular Technologies Inc.,Gaithersburg,Maryland)を使用して決定した。WST−8を、10%の最終濃度で各ウェルに加え、プレート37℃で2〜3時間、インキュベートした。試料の吸光度をプレートリーダー(Molecular Device−TECAN ULTRA)で450nmで測定した。細胞増殖を50%阻害した化合物の濃度(IC50)を、未処理の細胞の吸光度を化合物で処理された細胞と比較することによって計算した。表2に示されるように、本発明の化合物では、p53陽性LNCaP細胞における細胞増殖の阻害の効果が、p53陰性PC3細胞と比較して約5倍〜約50倍高かった。
【0163】
本発明の化合物を、HCT116(野生型P53)およびHT−29(変異型P53)結腸癌細胞株に対して、同様に検査した。表2に示されるように、検査された化合物の大部分は、p53陽性HCT116細胞における細胞増殖阻害に関して、p53陰性HCT116細胞と比較してより高い効力を表し、効力の最も大きな差は約25倍であった。
【0164】
正常細胞も野生型p53を有するため、新規な抗癌薬物としてのp53−MDM2相互作用の阻害剤を開発することに関して見込まれる問題は、それらが、非選択性でありかつ癌細胞を殺傷するのと同様に正常な細胞を破壊する活性を有する可能性があるということである。化合物は、野生型p53を伴う、正常なヒト前立腺上皮細胞(PrEC)において評価され、癌細胞に対して良好な選択性を示すかどうかが確認されるであろう。
【0165】
【表2】



の計算:MDM2[10nM];F−6[1nM];新規試料MDM2タンパク質:
:0.88±0.41nM(双曲型方程式;1nM6Fを用いる)
:2.22±0.93nM(Klotzプロット;1nM6Fを用いる)
【0166】
実施例50
P53およびその標的遺伝子産物MDM2およびP21の発現に対するMDM2阻害剤の効果
癌細胞を、検査化合物または0.1%DMSOで24時間処理する。細胞をトリプシン処理によって収集し、冷リン酸緩衝生理食塩水、pH7.5(Invitrogen,Carlsbad,CA)で洗浄する。細胞を、2mMオルトバナジウム酸ナトリウム、1mMフェニルメチルスルホニルフルオリドおよびプロステアーゼインヒビターカクテル(Roche Applied Science,Indianapolis,IN)を含む氷冷溶解緩衝液(50mM Tris(pH7.5)、150mM NaCl、1mM EDTA(pH8.0)、25mMフッ化ナトリウム、1%NP−40および0.1%SDS)で30分間溶解する。次に、細胞抽出物を、4℃にて、12,000×gで10分間遠心分離して、精製溶解物を得る。タンパク質を、バイオラッドの色素によって見積もる。35μgタンパク質を含む細胞溶解物を、4〜20%のトリス−グリシンゲル(Invitrogen,Carlsbad,CA)上で分離し、ポリ(ビニリデンジフルオリド)膜に転写する。転写膜上のタンパク質免疫検出を、抗p53(Ab−6,Oncogene Research Products,Boston,MA)、抗MDM2(SMP14,Santa Cruz Biotechnology,Santa Cruz,CA)および抗p21(BD Biosciences,San Diego,CA)マウスモノクローナル抗体を使用して実施する。β−アクチンに対する抗体(Sigma,St Louis,MO)を、タンパク質負荷を評価するために使用する。RKO(野生型p53)およびHT−29(変異型p53)結腸癌細胞株を、本発明の化合物で24時間処理する場合、化合物はp53およびその標的遺伝子産物の蓄積を、野生型p53を発現するRKO細胞においてのみ誘導するということが予想される。
【0167】
実施例51
MDM2阻害剤によって誘導される細胞死およびアポトーシス
RKO(野生型p53)およびHT−29(変異型p53)結腸癌細胞株ならびにCCD−18Co正常結腸線維芽細胞を、6ウェルペトリディッシュ中で、4日間、本発明の化合物の用量を増加させながら処理する。トリパンブルー色素排除アッセイを実施し、細胞死を誘導する阻害剤の能力を決定する。処理の4日後、浮遊細胞および接着細胞を収集し、0.2%のトリパンブルー溶液(Sigma,St Louis,MO)で染色する。各処理を、三連で実施し、少なくとも100個の細胞が計数される。青く染色された細胞、または形態学的に健常ではない細胞を死滅細胞として点数付けする。アポトーシスを評価するため、検査阻害剤有りまたは無しで処理された細胞におけるサブ二倍体DNA含有量を、ヨウ化プロジウム(PI)染色で分析する。冷PBSで1回洗浄した後、細胞を、−20℃で1日間70%エタノールに固定する。エタノール固定細胞を、それから、PBSで2回洗浄し、PBS中に50μg/mlのヨウ化プロジウム(PI)および100μg/mlのRNAse Aを含む染色溶液で、20分間、暗室にて室温で染色する。細胞の獲得およびサブ二倍体のDNA含有量の分析を、CellQuestソフトウェアを使用して、フローサイトメトリーによって実施する。野生型p53を発現する癌細胞のみが、化合物の投与に反応してアポトーシスを受けるということが予想される。
【0168】
実施例52
結腸癌細胞の細胞周期進行に対するMDM2阻害剤の効果
細胞周期進行を、RKO(野生型p53)およびHT−29(変異型p53)結腸癌細胞株ならびにCCD−18Co正常結腸線維芽細胞において、ブロモデオキシウリジン(BrdU)の取り込み、その後のFITC標識抗BrdU抗体を用いる染色によりS期の細胞を決定することによって、および製造業者(BD Biosciences,San Jose,CA)の指示書に従い、7−アミノアクチノマイシンD(7−AAD)を用いる染色により全体のDNA含有量を決定することによって、評価する。端的には、癌および正常細胞を、1晩のインキュベーションの後に、検査化合物有りまたは無しで、22時間処理し、続いて、10μMのBrdUを用いてさらに2時間のインキュベーションを行う。細胞を収集し、固定し、FITC標識抗BrdUおよび7−AADで染色する。細胞周期の分布を、フローサイトメトリーによって分析する。細胞を獲得し、CellQuestソフトウェア(BD Biosciences)を使用してデータを分析する。本発明の化合物は、両方とも野生型p53を発現する、RKO癌細胞およびCCD−18Co正常結腸線維芽細胞においてS期の用量依存的な欠失を誘導するであろうということが予想される。化合物は、変異型p53を発現するHT−29細胞の細胞周期進行に対しては大きな効果は有さないであろうということがさらに予想される。
【0169】
実施例53
MDM2阻害剤を用いる化学療法からの正常細胞の保護
PrEC正常前立腺上皮細胞を、6ウェルプレートに播種し、本発明の化合物で24時間インキュベートし、それから1μMのTAXOL(パクリタキセル)を2日間加える。トリパンブルーは、細胞の生存度を決定するために使用される。データから、正常前立腺上皮細胞が本発明の化合物で前処理される場合に、細胞はTAXOLから保護されることを示すことが予想される。
【0170】
ここで本発明を十分に説明してきたが、本発明は、広範かつ等価な範囲の条件、処方、および他のパラメータの中で、本発明またはその任意の実施形態の範囲に影響することなく、実施可能であるということが、当業者によって理解されるであろう。本明細書に引用されるすべての特許、特許出願、および刊行物は、それらの全体が参照により完全に本明細書に組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式Iを有する化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグ:

式中、Xは、CH、O、N、またはSであって、Xが、OまたはSである場合、Rは、存在せず、
Yは、O、S、またはNR’であり、
、R、R、R、R、R、およびRは、独立して、Hまたは置換されてもよいアルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、アリール、複素環、COR’、OCOR’、CONR’R’’、NR’’COR’、NR’SOR’’、SONR’R’’、(C=NR’)NR’’R’’’、もしくはNR’R’’であり、あるいは、
は、RまたはRの1つとともに、アリール、シクロアルキル、または複素環基を形成し、
は、Hまたは置換されてもよいアルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、アリール、複素環、COR’、OCOR’、CONR’R’’、SONR’R’’、もしくは(C=NR’)NR’’R’’’であり、
は、6−クロロ基および5−フルオロ基を示し、かつ
各R’、R’’およびR’’’は、独立して、Hまたは置換されてもよいアルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、アリール、もしくは複素環であり、あるいは、
R’およびR’’、またはR’’およびR’’’は、環を形成し、
およびRの1つは、CONRR’であり、RおよびR’の1つは、置換されてもよいシクロアルキル−アルキル基もしくはモノシクロ−ヘテロシクロアルキル基、または前記アルキル基の3位にヒドロキシル基を含まないジヒドロキシアルキルアミノ基である。
【請求項2】
式IIまたは式III:

を有する、請求項1に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグ。
【請求項3】
式IV:

を有する、請求項1に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグ。
【請求項4】
式Vまたは式VI:

を有する、請求項3に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグ。
【請求項5】
式VII:

を有する、請求項1に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグ。
【請求項6】
式VIIIまたは式IX:

を有する、請求項5に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグ。
【請求項7】
およびRの1つが、置換されてもよいアリールまたはヘテロアリールである、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
およびRの1つが、シクロアルキル、直鎖もしくは分岐鎖のアルキル、アミドまたはエステルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
およびRの1つが、C3−18アルキル、アリール、またはヘテロアリールである、請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
式X:

を有する化合物であって、
式中、
10が、水素であり、
11が、置換されてもよいシクロアルキル−アルキル基もしくはモノシクロ−ヘテロシクロアルキル基、または前記アルキル基の3位にヒドロキシル基を含まないジヒドロキシアルキルアミノ基であり、
あるいはR10およびR11が、一緒になって、置換されてもよいモノシクロ−ヘテロシクロアルキル基を形成する、請求項1に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグ。
【請求項11】
式XI〜XXVI:

の1つを有する、請求項10に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグ。
【請求項12】
式XXVIIまたは式XXVIII:

を有する化合物であって、
式中、
10が、水素であり、かつ
11が、置換されてもよいシクロアルキル−アルキル基もしくはモノシクロ−ヘテロシクロアルキル基、または前記アルキル基の3位にヒドロキシル基を含まないジヒドロキシアルキルアミノ基であり、
あるいはR10およびR11が、一緒になって、置換されてもよいモノシクロ−ヘテロシクロアルキル基を形成する、請求項1に記載の化合物、または薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグ。
【請求項13】
式XLVIII:

を有する、請求項1に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグ。
【請求項14】
式XLIX〜LXIV:

の1つを有する、請求項13に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグ。
【請求項15】
式LXV:

を有する化合物であって、
式中、
10が、水素であり、かつ
11が、置換されてもよいシクロアルキル−アルキル基もしくはモノシクロ−ヘテロシクロアルキル基、または前記アルキル基の3位にヒドロキシル基を含まないジヒドロキシアルキルアミノ基であり、
あるいはR10およびR11が、一緒になって、置換されてもよいモノシクロ−ヘテロシクロアルキル基を形成する、請求項1に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグ。
【請求項16】
式LXVIおよびLXVII:

の1つを有する、請求項15に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグ。
【請求項17】
















から成る群より選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項18】



から成る群より選択される化合物。
【請求項19】

である、請求項1に記載の化合物。
【請求項20】
請求項1または18の化合物および薬学的に許容される担体を含む、薬学的組成物。
【請求項21】
細胞において、細胞の増殖および/もしくは分裂を阻害する、アポトーシスを誘導する、ならびに/または細胞周期停止を誘導する方法であって、前記細胞を請求項1または18に記載の化合物と接触させるステップを含む、方法。
【請求項22】
追加の薬剤に対する感受性を細胞に付与する方法であって、細胞を請求項1または18に記載の化合物と接触させるステップを含む、方法。
【請求項23】
前記細胞を追加の薬剤と接触させるステップをさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記追加の薬剤が、化学療法剤である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記追加の薬剤が、放射線である、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
動物における障害を治療、改善、または予防する方法であって、治療上有効量の請求項1または18に記載の化合物を前記動物に投与するステップを含む、方法。
【請求項27】
追加の薬剤を投与するステップをさらに含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記追加の薬剤が、化学療法剤である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記追加の薬剤が、放射線である、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記障害が、過剰増殖性疾患である、請求項26に記載の方法。
【請求項31】
過剰増殖性疾患が、癌である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
請求項1に記載の化合物が、前記追加の薬剤の前に投与される、請求項27に記載の方法。
【請求項33】
請求項1に記載の化合物が、前記追加の薬剤の後に投与される、請求項27に記載の方法。
【請求項34】
請求項1に記載の化合物が、前記追加の薬剤と同時に投与される、請求項27に記載の方法。
【請求項35】
細胞におけるp53またはp53関連タンパク質とMDM2またはMDM2関連タンパク質との間の相互作用を阻害する方法であって、前記細胞を請求項1または18に記載の化合物に曝露するステップを含む、方法。
【請求項36】
機能的p53またはp53関連タンパク質を含む過剰増殖性細胞の増殖を阻害する方法であって、細胞を請求項1または18に記載の化合物に曝露するステップを含む、方法。
【請求項37】
動物において、機能的p53またはp53関連タンパク質の発現を特徴とする過剰増殖性疾患を治療、改善、または予防する方法であって、治療上有効量の請求項1または18に記載の化合物を前記動物に投与するステップを含む、方法。
【請求項38】
化学療法剤または化学療法治療に対する耐性を正常細胞に付与する方法であって、細胞を請求項1または18に記載の化合物と接触させるステップを含む、方法。
【請求項39】
前記正常細胞が、野生型p53を含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
過剰増殖性疾患を伴う動物における正常細胞を化学療法剤または化学療法治療の毒性副作用から保護する方法であって、請求項1または18に記載の化合物を前記動物に投与するステップを含む、方法。
【請求項41】
前記正常細胞が、野生型p53を含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記過剰増殖性疾患が、癌である、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
前記癌が、p53の変異または欠失を含む、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
化学療法剤の投与または化学療法治療によって引き起こされる障害または状態を治療、改善、または予防するための方法であって、請求項1または18に記載の化合物を、化学療法剤または化学療法治療を受けている動物に同時投与するステップを含む、方法。
【請求項45】
前記障害または状態が、粘膜炎、口内炎、口内乾燥症、胃腸障害、または脱毛症である、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
請求項1または18に記載の化合物が、前記化学療法剤の投与または治療の前に、前記動物に投与される、請求項44に記載の方法。
【請求項47】
請求項1または18に記載の化合物を含む、キット。
【請求項48】
前記化合物を動物に投与するための説明書をさらに含む、請求項47に記載のキット。
【請求項49】
追加の薬剤をさらに含む、請求項47に記載のキット。
【請求項50】
前記追加の薬剤が、化学療法剤である、請求項49に記載のキット。
【請求項51】
前記説明書が、前記化合物を過剰増殖性疾患を有する動物に投与するためのものである、請求項48に記載のキット。
【請求項52】
前記過剰増殖性疾患が癌である、請求項51に記載のキット。
【請求項53】

から成る群より選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項54】



から成る群より選択される、化合物。

【公表番号】特表2010−502620(P2010−502620A)
【公表日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−526729(P2009−526729)
【出願日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際出願番号】PCT/US2007/019128
【国際公開番号】WO2008/036168
【国際公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(509057567)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ ミシガン (1)
【Fターム(参考)】