説明

N−アセチルアルドースアミン又はN−アセチルアミノ酸からなる局所療法用組成物

【課題】内因性及び又は外因性老化に伴う皮膚、爪及び毛髪の変化又は損傷及び外因性要因によるこれらの変化又は損傷等の美容上及び皮膚医学上の種々の疾患を緩和又は改善する組成物の提供。
【解決手段】N−アセチル−アルドースアミン、N−アセチルアミノ酸及び関連化合物からなる組成物。N−アセチル−アルドースアミン、N−アセチルアミノ酸及び関連化合物は、相乗効果を高める又は得るために美容薬剤、治療薬剤又は他の局所剤をさらに含んでもよい。

【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
本発明は、N−アセチルアルドースアミン、N−アセチルアミノ酸、及び関連するN−アセチル化合物を含む局所療法用組成物に関するものであり、この組成物は種々の美容状態及び皮膚疾患、例えば内因的及び又は外因的老化に伴う老化の兆候、肌、爪及び毛髪の変化又は損傷、日光、紫外線照射、大気汚染、風、寒さ、熱、湿気、化学薬品、煙、喫煙などの外的因子による皮膚の変化又は損傷等及びかゆみ及び又は炎症による又はこれらを引き起こす特定の皮膚疾患を緩和または改善するために使用される。
【0002】
本願出願人による米国特許第5,091,171号には、アルファヒドロキシ酸、アルファケトン酸、重合体状のヒドロキシ酸、及びこれらに関連する化合物を含む酸としても塩基としても反応する(amphoteric)組成物で美容状態及び皮膚疾患を緩和するための予防又は治療法が、開示されている。また本願出願人による米国特許第5,547,988号及びこれらの関連特許には、外因的又は内因的老化に伴う肌、爪及び毛髪の変化の兆候を緩和又は改善するために2−ヒドロキシカルボン酸又は関連化合物からなる局所組成物を使用することが開示されている。また本願出願人による米国特許第5,385,938号及びこれらの関連特許には、アルファヒドロキシ酸、アルファケトン酸、重合体状のヒドロキシ酸及びこれらに関連する化合物を含む酸としても塩基としても反応する(amphoteric)組成物で美容状態及び皮膚疾患の症状を緩和する予防及び治療法が、開示されている。またさらに本発明の出願人による特許第5,258,391号、発明の名称「フェニルアルファアシロキシアルカン酸及びその誘導体及びその治療的使用」には、爪、皮膚、唇及び他の粘液性膜の角質化を改善するためにフェニルアルファアクリロキシアルカン酸及びその誘導体を含む局所組成物を使用することが開示されている。また米国特許第5,665,776号、発明の名称「治療剤の局所的作用を高める添加剤」には、化粧品又は薬剤の美容又は治療効果を増大させるためにヒドロキシカルボン酸またはその関連化合物を使用することが開示されている。本願出願人による米国特許第5,641,475号には、共同薬又は増幅薬(amplifier)として効果のある対生物作用活性化粧品、皮膚用薬剤又は予防剤及びアリール2−アセトキシエタン酸を含む局所組成物を使用することが開示されている。また米国特許第5,643,949号、発明の名称「フェニルアルファアシロキシアルカン酸及びその誘導体及びその治療的使用」には、爪、皮膚及び唇に局所的に塗布する美容又は皮膚治療用薬の美容又は治療効果を高めるために効果的な量のフェニルアルファアシロキシアルカン酸又はその誘導体を含む局所組成物が、開示されている。米国特許第4,603,146号、出願人Albert M. Klingmanには、上皮の成長を減少させる又は妨げる及び皮膚がある程度の堅さ、張り及び弾力性を回復及び維持できるように補助するためにビタミンA(トレチノイン)を利用することが開示されている。
【0003】
J. American Academy of Dermatology Vol. 15, 836−859頁及び886−887頁 (1986)に掲載されている”Topical Tretinoin for Photoaged Skin”と題されたKligman氏等の論文によると、0.05%のトレチノイン(全トランス形レチノイン酸としても知られている)をクリームに配合して毎日局所的に塗布した場合、光線による皮膚の損傷を改善できることが発見された。またJ. American Medical Association Vol. 259, 527-532頁(1988)に掲載された”Topical Tretinoin Improves Photoaged Skin: A Double-blind Vehicle-controlled Study”と題されたWeiss氏等による別の論文には、0.1%トレチノインを16週間毎日塗布した場合、賦形剤を単独で塗布した場合に比較して光線により老化した皮膚を改善できたということが報告されている。この研究に参加した患者の92%が皮膚炎の副作用を訴えた。この皮膚炎の特徴は、不規則に密集した紅斑、局所的な腫れ、乾燥肌及び軽度の鱗片脱落であった。これらの患者は、焼けるような痛み、刺痛又はかゆみを訴えた。J. American Academy of Dermatology Vol. 19, 169−175頁 (1988)に掲載された”Topical Tretinoin in the Treatment of Aging Skin”と題されたWeiss氏等によるさらに別の論文には、0.1%トレチノインクリームを8〜12ヶ月局所塗布した場合、老化した皮膚の臨床的兆候を改善できたことが報告されている。この治療時に患者は、目にひりひりした感じ及び軽度の皮膚刺激を副作用として訴えた。
【0004】
1996年10月16日に出願されたPCT出願第PCT/US96/16534号、発明の名称「N−アセチルシステイン及び臭気遮蔽剤(Odor Masking Materials)を含む局所組成物」には、0.01〜50%のN−アセチルシステイン又はその誘導体と、0.01〜0.5%の臭気遮蔽剤と、局所担体とからなる局所組成物が開示されており、この組成物は肌をきれいにする効果があることが記載されている。
【0005】
N−アセチルシステインは、アミノ酸を含むチオールであるN−アセチル化されたシステインであり、α−アセトアミド−β−メルカプトプロパン酸とも呼ばれている。N−アセチルシステインを含む局所組成物は、皺などの皮膚の物理的外観を向上させるということが記載されている。N−アセチルシステインは、遊離なチオール基を含み、従って酸化防止剤としても知られている。N−アセチルシステインの作用は酸化防止性能によるものだとされている。酸化防止物質としてN−アセチルシステインは、肺への有毒酸素に対する保護剤としても示されている。
【0006】
しかしながら、N−アセチルシステインには多くの見逃すことのできない種々の欠陥がある。N−アセチルシステインは通常の保存状態では劣化してしまい、悪臭を放つことが知られている。この悪臭は、劣化時のチオール化合物及び硫化水素の放出によるものであると考えられている。従って、N−アセチルシステインを含む局所組成物は、その強烈な悪臭のためにほとんど又は全く商業化されていないのが実情である。
【0007】
上記PCT出願には、この悪臭は重量で0.01〜0.5%の濃度で特定の香料を添加することによって遮蔽できるということが記載されている。この香料としては、芳香族エステル、脂肪酸エステル、芳香族アルコール、脂肪族アルコール、脂肪族ケトン、芳香族アルデヒド、脂肪族アルデヒド、芳香族エーテル及び脂肪族エーテルが挙げられれている。悪臭の原因であるチオール化合物と硫化水素は、化学的に中和又は破壊することができないので、多くの利用者にとってはこの一時的な遮蔽効果では満足のいくものではなく、従って、この方法は化粧品業界ではN−アセチルシステインの商業化を実現するには充分な解決策とは言えない。
【0008】
本発明者等は、N−アセチルアルドースアミン、N−アセチルアミノ酸及び関連する化合物は内因性老化及び又は外因性老化に伴う皮膚、爪、髪の変化の兆候を含む種々の美容状態及び皮膚医学上の兆候に局所的に効果的であることを発見した。N−アセチル化されたアミノ酸及び関連化合物はチオール基を含まず、このような治療には不必要な酸化防止剤としての機能を有していない。
【0009】
本発明は、内因性及び又は外因性老化及び外因性因子に伴う皮膚、爪及び毛髪の変化の兆候及び皮膚そう痒症などのかゆみ及び又は炎症に伴う及び又は起因する他の皮膚疾患を含む種々の美容状態及び皮膚医学的疾患を緩和することのできる方法及び組成物を提供することを目的としている。
【0010】
本発明者らは、N−アセチルアルドースアミン、N−アセチルアミノ酸及び関連化合物が予期しない特性を有することを発見して本発明に至った。N−アセチルアルドースアミン、N−アセチルアミノ酸及び関連化合物を含む組成物を局所的に塗布することによって、内因性及び又は外因性老化に関連する皮膚、爪及び毛髪の変化の美容的及び臨床的兆候、又は日光、放射線、空気汚染、風、冷気、湿気、熱、化学薬品、煙及び喫煙などの外因性因子による損傷などの美容状態及び皮膚科的疾患を改善できることを発見した。
【0011】
内因性及び又は外因性老化に伴う及び外因性因子による皮膚の変化の兆候及び皮膚の損傷の具体例としては、皮膚の薄化;脆化;皮膚線及び細皺の深化;横皺及び小皺;傷;皮膚の萎縮;色素沈着、できもの及び斑点、小結節及び斑状皮膚;前癌性外傷;堅い、つやが無い、凹凸がある、粗い、乾燥している及び又は黄色がかった等の特徴を有する皮膚の弾性の変化;皮膚の弾性及び反動性の低下;皮膚潤滑物質の減少;グリコースアミノグリカン及びプロテオグリカンの質及び量の変化;コラーゲン及び弾性繊維の質及び量の変化;日光による弾性繊維症;コラーゲン繊維の減少;乳頭状皮層の弾性繊維の数及び直径の縮小;引っかき傷;皮下脂肪組織の減少;皮層の厚化につながる皮層に溜まる異常弾性物質;老化したように見える皮膚;及び毛細管拡張症などが挙げられる。
【0012】
内因性老化に伴う爪及び毛髪の変化の兆候及び外因性因子による爪及び毛髪の損傷の具体例としては、爪及び毛髪の薄化、脆化、割裂、艶又は光沢の欠如、表面の凹凸化、及び弾性及び柔軟性の損失などが挙げられる。
【0013】
本発明の目的に従って、薬学上許容される賦形剤内(vehicle)に治療上効果的な量のN−アセチルアルドースアミン、N−アセチルアミノ酸及び関連化合物からなる群から選択される少なくとも1つの化合物を含む美容状態又は皮膚医学上の疾患の局所治療のための組成物が提供される。本発明の1つの態様においては、この組成物はさらに美容薬、治療薬又は他の局所剤を含む。
【0014】
さらに本発明の目的に従って、薬学上許容される賦形剤内にN−アセチルアルドースアミン、N−アセチルアミノ酸及び関連化合物からなる群から選択される少なくとも1つの化合物を含む組成物を治療上効果的な量、局所的に塗布することからなる美容状態及び皮膚医学的疾患の治療方法が提供される。本発明の1態様では、この方法は薬学上許容される賦形剤内にN−アセチルアルドースアミン、N−アセチルアミノ酸及び関連化合物からなる群から選択される少なくとも1つの化合物と少なくとも1つの美容薬、治療薬又は他の局所剤からなる組成物を治療上効果的な量、局所的に塗布することからなる。
【0015】
内因性及び又は外因性老化及び外因性因子に伴う皮膚、爪及び頭髪の変化を局所的に治療するのに有用なN−アセチルアルドースアミン、N−アセチルアミノ酸及び関連するN−アセチル化合物は、N−アセチル−リボースアミン、N−アセチル−アラビノースアミン、N−アセチル−グルコースアミン、N−アセチルガラクトースアミン及びN−アセチル−マンノースアミン等のアミノ糖の誘導体及びN−アセチル−グルシン、N−アセチル−プロリン、N−アセチル−リジン、N−アセチル−アルギニン及びN−アセチル−トリプトファン等のアミノ酸のN−アセチル誘導体である。
【0016】
本発明のその他の目的及び利点は、以下の説明に明示され、また以下の説明から自明となり、本発明を実施することにより理解されよう。本発明の目的及び利点は、特許請求の範囲に特に記載した組成物及び方法により実現及び達成される。
【0017】
1.N−アセチル−アルドースアミン、N−アセチルアミノ酸及びこれらの関連化合物
(i)N−アセチル−アルドースアミン
本発明の1つの態様は、N−アセチル−アルドースアミン及びこれに関連する化合物からなる組成物に関する。N−アセチル−アルドースアミンは、好ましくは炭素鎖の2位の位置にアセチルアミノ基を有するN−アセチル化されたアミノ糖である。本発明では、種々の美容上及び皮膚医学的兆候に局所的に有効なN−アセチル−アルドースアミンは、次の構造式で表すことができる。
【化1】

ここで、nは好ましくは1〜19の整数であり、RはCHO、CONH及びCOORからなる群から選択され、RはH、I、F、Cl、Br及び1〜19個の炭素原子を有する飽和又は不飽和、異性又は非異性、又は直鎖又は分枝鎖又は環式のアルキル、アラルキル又はアリール基からなる群から選択され、RはH、及び1〜9個の炭素原子を有するアルキル又はアリール基からなる群から選択される。N−アセチル−アルドースアミンは、飽和又は不飽和、異性又は非異性、直鎖又は分枝鎖又は環式で存在してもよい。N−アセチル−アルドースアミンの典型的な環は、5員環(フラノース型)又は6員環(ピラノース型)である。
【0018】
N−アセチル−アルドースアミン及び関連化合物の典型例を次に示す。N−アセチル−グリセロースアミン、N−アセチル−エリスロースアミン、N−アセチル−トレオースアミン、N−アセチル−リボースアミン、N−アセチル−アラビノースアミン、N−アセチル−キシロースアミン、N−アセチル−リキソースアミン、N−アセチル−アロースアミン、N−アセチル−アルトロースアミン、N−アセチル−グルコースアミン、N−アセチル−マンノースアミン、N−アセチル−グロースアミン、N−アセチル−イド−スアミン、N−アセチル−ガラクトースアミン、N−アセチル−タロースアミン、N−アセチル−グルコヘプトースアミン、N−アセチル−ガラクトヘプトースアミン、N−アセチル−マンノヘプトースアミン、N−アセチルラクトースアミン、N−アセチルムラミン酸、N−アセチルノイラミン、N−アセチルノイラミンラクトース、N−アセチル−グリセラミン酸、N−アセチル−エリトロースアミン酸、N−アセチル−トレーオースアミン酸、N−アセチル−リボースアミン酸、N−アセチル−アラビノースアミン酸、N−アセチル−キシロースアミン酸、N−アセチル−リキソースアミン酸、N−アセチル−アロースアミン酸、N−アセチル−アルトロースアミン酸、N−アセチル−グルコースアミン酸、N−アセチル−マンノースアミン酸、N−アセチル−グロースアミン酸、N−アセチル−イドースアミン酸、N−アセチル−ガラクトースアミン酸、N−アセチル−タロースアミン酸、N−アセチル−ヘプトグルコースアミン酸、N−アセチル−ヘプトガラクトースアミン酸、N−アセチル−ヘプトマンノースアミン酸及びN−アセチル−N−アセチルノイラミン酸。これら酸性化合物のアミド及びエステルも本発明に包含される。5員環又は6員環状の例としては、2−アセトアミド−2−デオキシ−D−リボフラノシド、2−アセトアミド−2−デオキシ−D−リボピラノシド、2−アセトアミド−2−デオキシ−D−グルコフラノシド、2−アセトアミド−2−デオキシ−D−グルコピラノサイド、2−アセトアミド−2−デオキシ−D−ガラクトフラノシド及び2−アセトアミド−2−デオキシ−D−ガラクトピラノシドが挙げられる。
【0019】
(ii)N−アセチルアミノ酸
本発明の別の態様は、N−アセチルアミノ酸及びこれに関連する化合物からなる組成物に関する。N−アセチルアミノ酸は、アミノ酸のN−アセチル誘導体である。本発明では、種々の美容上及び皮膚医学的兆候に局所的に有効なN−アセチルアミノ酸及び関連化合物は、次の構造式で表すことができる。
【化2】

ここで、RはH又は1〜14個の炭素原子を有するアルキル又はアラルキル基であり、nは0〜5の整数であり、RはOH、NH、又はORであり、Rは1〜9個の炭素原子を有するアルキル、アラルキル又はアリール基であり、アルキル、アラルキル又はアリール基は、飽和又は非飽和、異性又は非異性、直鎖又は分枝鎖又は環式であってもよく、さらにRはOH、SH、SCH、COOH、CONH、グアニジン又は複素環を有していてもよく、炭素原子に結合したHはI、F、Cl、Br又は1〜9の炭素原子を有するアルコキシ基で置換されていてもよい。N−アセチルアミノ酸は異性体又は非異性体として、遊離の酸、塩、ラクトン、アミド又はエステルの形態として存在してもよい。
【0020】
N−アセチルアミノ酸及び関連化合物の代表例としては、N−アセチル−グリシン、N−アセチル−アラニン、N−アセチル−バリン、N−アセチル−ロイシン、N−アセチル−イソロイシン、N−アセチル−セリン、N−アセチル−トレオニン、N−アセチル−チロシン、N−アセチル−システイン、N−アセチル−メチオニン、N−アセチル−アスパラギン酸、N−アセチル−アスパラギン、N−アセチル−グルタミン酸、N−アセチル−グルタミン、N−アセチル−アルギニン、N−アセチル−リジン、N−アセチル−ヒスチジン、N−アセチル−フェニルアラニン、N−アセチル−チロシン、N−アセチル−トリプトファン、N−アセチル−プロリン、N−アセチル−β−アラニン、N−アセチル−タウリン、N−アセチル−アミノブタン酸、N−アセチル−ヒドロキシプロリン、N−アセチル−カナバニン、N−アセチル−ヒドロキシリシン、N−アセチル−シクロセリン、N−アセチル−ホモアルギニン、N−アセチル−ノルロイシン、N−アセチル−ノルバリン、N−アセチル−ホモセリン、N−アセチル−メチルセリン、N−アセチル−ヒドロキシバリン、N−アセチル−エチオニン、N−アセチル−メトキシニン、N−アセチル−β−アミノイソブタン酸、N−アセチル−ホモシステイン、N−アセチル−システインスルフィン酸、N−アセチル−ホモフェニルアラニン、N−アセチル−ホモトリプトファン、N−アセチル−5−ヒドロキシトリプタミン(N−アセチルセロトニン)、N−アセチルトリプタミン、N−アセチル−オルニチン、N−アセチル−シトルリン、N−アセチル−アルギノ琥珀酸、N−アセチル−ドーパ、N−アセチル−3−イオドチロシン、N−アセチル−3,5−ジイオドチロシン、N−アセチル−3,5,3’−トリイオドチロニン、N−アセチル−チロキシン、N−アセチル−クレアチン、N−アセチル−クレアチニン、N−アセチル−システイン及びN−アセチル−ホモシステインが挙げられる。
【0021】
これらN−アセチルアミノ酸及び関連化合物は、遊離の酸、塩、ラクトン、アミド又はエステルの形態で存在してもよい。そのような化合物の例としては、N−アセチル−システインアンモニウム塩、N−アセチル−ホモシステインチオラクトン、N−アセチル−L−システインメチルエステル、N−アセチル−L−チロシンアミド、N−アセチル−L−チロシンエチルエステル、N−アセチル−セリンアミド、N−アセチルグリシンメチルエステル、N−アセチルグリシンアミド及びN−アセチル−トライプトファンメチル、エチル、プロピル又はイソプロピルエステルが挙げられる。
【0022】
N−アセチルアミノ酸に関連するN−アセチル化合物としては、2〜5つのモノマーユニットを有するN−アセチルアミノ酸から形成された二量体及びオリゴマーが挙げられる。その具体例としては、N−アセチルグリシルグリシン及びそのアミド及びエステル、N−アセチルグリシル−ロイシン及びそのアミド及びエステル、N−アセチルグリシルトリプトファン、N−アセチルグリシル−グルタミン酸及びそのアミド及びエステル、N−アセチルチロシル−フェニルアラニン及びそのアミド及びエステル、N−アセチルグリシル−リシン及びそのアミド及びエステル、N−アセチルロイシル−グリシン及びそのアミド及びエステル、N−アセチルグリシル−グリシル−グリシン及びそのアミド及びエステル、及びN−アセチルグリシル−リシル−ヒドロキシプロリン及びそのアミド及びエステルが挙げられる。
【0023】
好ましいN−アセチルアミノ酸及びその関連化合物は、上記一般式で表される化合物であるが、N−アセチルシステイン及びその誘導体は除外する。N−アセチルシステインは、通常の貯蔵条件下では劣化し、悪臭を放つことが知られている。この悪臭は、劣化時にチオール化合物と硫化水素が放出されることが原因だと考えられている。N−アセチルシステイン及びその誘導体は、悪臭を放つので本発明で使用するには好ましくない。
【0024】
2.N−アセチル−アルドースアミン、N−アセチルアミノ酸及びこれらの関連化合物の局所的使用
(i)N−アセチル−アルドースアミン、N−アセチルアミノ酸及びこれらに関連する化合物
ここで説明したN−アセチル−アルドースアミン、N−アセチルアミノ酸及びこれらに関連するN−アセチル化合物からなる組成物は、内因性老化及び又は外因性老化に伴う種々の美容状態の変化及び皮膚医学的疾患だけでなく外的因子による皮膚の変化又は損傷に局所的に有効である。これらの組成物は、N−アセチル−アルドースアミン、N−アセチルアミノ酸又は関連するN−アセチル化合物のうち1つ以上を含む。好ましい態様では、当該組成物は内因性及び又は外因性老化に伴う皮膚、毛髪及び爪の変化及び外的因子が原因するこれらの変化又は損傷に使用される。
【0025】
皮膚の変化を伴う老化については米国特許第4,603,146号にその基本的事項が説明されている。特に老化による皮膚の変化について、老化の進行に伴う上皮及び真皮の変化の観点から以下に簡単に説明する。
【0026】
加齢及び日光及び他の環境による外傷により細胞の分裂速度が遅くなる(新しくなる細胞自体の量が減少する)。細胞は、大きさ、形及び色素における著しい不規則性を示し、下方から上方へと細胞の規則性(極性)が失われる。上皮の厚みが減少する(萎縮)。水分の損失及び薬物の透過を防ぐバリアーからなる角質層は、大きなグループの細胞の脱離(剥離)又は個々の細胞の群生により異常をきたし、その結果肌荒れ、鱗片及び乾燥肌の原因になる。生きている上皮細胞が表面で剥離する角質化して死滅した細胞へと正常に転換しなくなる、即ち分化に障害が生じる。このような異常分化の結果、異常な上皮の成長又は腫瘍の多くの病巣となり、その中でも最もおこりやすく重要なのが光線角化症である。数年後に光線角化症は、基底細胞及び扁平上皮細胞癌と呼ばれる皮膚癌に転換することがある。色素生成細胞(メラニン細胞)もまた変型して黒く成長する場合(黒子型黒色腫、ほくろ)があり、これは悪性の黒色腫に進行する可能性がある。
【0027】
真皮の繊維を形成する細胞は、年をとるにつれて通常日光によって損傷した顔の皮膚で小さくなり且つ乏しくなってくる。これによりコラーゲン繊維が著しく失われ、皮膚がたるみ且つ伸びやすくなってしまう。さらに弾力性のある繊維は、正常な状態ではなくなり引っ張ってもすぐに戻らなくなる。繊維成分はその95%がコラーゲンである皮膚の容積の90%を上回るため、これらの繊維、特にコラーゲンの減損が主として皺、弛み及び弾性力の低下の原因になる。
【0028】
さらに、細い血管はその壁が薄くなり、膨張し、破裂する場合がある。これにより血管への供給が困難になる。
【0029】
内因性老化に伴う爪及び頭髪の変化の兆候並びに外因的要因によるこれらの損傷は、薄化、潤滑物質及び艶の不足、凹凸化、脆化及び裂開、及び柔軟性及び弾性の低下などが挙げられる。
【0030】
老化した皮膚の兆候に対する従来の対処方法としては、化粧品の使用及びフェノール、トリクロロ酢酸及び化学的ピーリング剤などを使用した医療処置、及び形成手術などがあった。このような医療処置は費用がかかり且つ危険であり、重大な副作用を伴い、皮膚の表面的な外観を変化させるだけであり、根本の老化過程を有効的に変えるものではない。
【0031】
本発明の組成物を皮膚、頭髪又は爪に局所的に塗布することにより内因的及び又は外因的老化及び外因的要因に伴う美容状態及び皮膚医学的疾患だけでなく上述の皮膚、頭髪及び爪の変化の特徴を有する疾患にも有効に作用する。これらの具体的兆候としては、角質化の阻害、真皮成分の合成不良、及び皮膚、爪及び毛髪の老化に伴う変化として特徴付けられるもの;及び皮膚、爪及び毛髪の乾燥又は弛み;乾燥肌;手掌及び足底の過角化症;皮膚、爪及び毛髪の表面の凹凸化及び荒れ;ふけ症;ダリエル病;慢性の単純苔蘚;角化症;ざ瘡;偽尋常性毛瘡;湿疹;乾癬;頭皮及び皮膚のかゆみ;そう痒症;いぼ;ヘルペス;老化によるしみ;黒子;肝斑;吹き出物;過角化症;過色素沈着;コラーゲン、グリコースアミノグリカン、プロテオグリカン及びエラスチン合成の異常又は低下及びこれらの成分の真皮における量の減少;引っかき傷;皮膚の皺;顔の小皺及び皺;皮膚、爪及び毛髪の薄化;長い間太陽光に曝されることによる弾性繊維症及び皮膚、爪及び毛髪の弾性及び柔軟性の欠乏による厚化;潤滑物質及び光沢の欠如;皮膚の感覚低下及び年齢よりも老けて見られる皮膚、爪及び毛髪の状態;爪及び毛髪の脆化及び裂開;及び他の局所的状態及び兆候などが挙げられる。
【0032】
(ii)組み合わせ組成物
さらに相乗効果を高めるあるいは得るためにN−アセチル−アルドースアミン、N−アセチルアミノ酸及び関連するN−アセチル化合物の内1つ以上を含む組成物を美容的、医薬的局所剤又は他の局所剤からなる組成物に混合してもよい。
【0033】
この態様において、本発明の組成物はN−アセチル−アルドースアミン、N−アセチルアミノ酸及び関連するN−アセチル化合物の内1つ以上を含むことによってこれらに関連しない美容的又は医薬的局所剤の治療効果を高めることができる。N−アセチル−アルドースアミン、N−アセチルアミノ酸及び関連するN−アセチル化合物からなる群から選択される少なくとも1つの化合物は、内因的老化に伴う皮膚、爪又は毛髪の変化の兆候又は外因的要因による損傷を緩和又は改善するための局所治療用の美容的又は医薬的局所剤からなる組成物に混合してもよい。このように組成物を混合することにより単純な相加効果ではなくその治療効果を相乗的に増加することができる。
【0034】
治療薬の多くは、まず最初にターゲット組織でその受容体と相互作用することによって治療効果を発揮する。多くの薬剤受容体は、酵素、細胞膜成分又は細胞の特定の成分などの機能的高分子である。薬剤の特定の受容体分子に対する結合親和性又は相互作用特性は、薬剤の化学的構造に左右される。治療薬の多くは、本発明のN−アセチル化合物と化学的に異なるので、各々の受容体分子は相互に異なり、薬理学的作用及び治療効果も異なる。このような条件下では、薬剤を含有する組成物にN−アセチル−アルドースアミン、N−アセチルアミノ酸及び又は関連するN−アセチル化合物を配合すると、次のような2つの結果のいずれか一方が生じる。
【0035】
(a)組成物及び薬剤のいずれの効果も向上または実質的な変化が認められない。この場合、全体の臨床効果は混合効果であり、即ち、薬剤単独による効果とN−アセチル−アルドースアミン、N−アセチルアミノ酸又は関連するN−アセチル化合物単独による効果との混合効果である。またこの場合、薬剤とその受容体分子との相互作用は、N−アセチル−アルドースアミン、N−アセチルアミノ酸又は関連するN−アセチル化合物の存在によって影響されずまた妨げられもしない。N−アセチル−アルドースアミン、N−アセチルアミノ酸又は関連するN−アセチル化合物は、薬剤の受容体分子に対する結合親和性又は相互作用を補助することも促進することもしない。このような組成物の組み合わせから得られる臨床的結果は、単なる混合効果である。
【0036】
(b)組成物及び薬剤のいずれかの効果における治療作用の増大又は実質的な損失。この場合、薬剤とその受容体分子との相互作用は、N−アセチル−アルドースアミン、N−アセチルアミノ酸又は関連するN−アセチル化合物の存在によりプラス又はマイナスのいずれかの影響を受ける。プラスの効果の観点では、N−アセチル−アルドースアミン、N−アセチルアミノ酸又は関連するN−アセチル化合物は、薬剤に対する受容体分子の親和性を増加させることにより、又はより良好且つ効果的な補酵素としてあるいは受容体分子に対する薬剤の結合を良好にするために障壁を崩壊させ又は障害を除去することによりアクティベーターとして作用することによって、例えば天然阻害剤の除去による酵素活性化により増幅効果を発揮する。これらいずれの場合も、全体的臨床効果はいずれか一方の単独効果から予期し得ない治療効果の増大に起因する。
【0037】
マイナスの効果について言えば、N−アセチル−アルドースアミン、N−アセチルアミノ酸又は関連するN−アセチル化合物が、受容体分子に対する薬剤の結合親和性に干渉するか又はこれを減少させる、即ち競合剤又は阻害剤として作用する。このような場合、全体的臨床効果は、いずれか一方のの単独効果から予期し得ない治療効果の実質的な低下又は完全な喪失に起因する。
【0038】
本発明らは、ほとんどの場合、N−アセチル−アルドースアミン、N−アセチルアミノ酸又は関連するN−アセチル化合物を組成物に混合すると美容剤及び医薬剤の治療効果が増幅され、即ち上記(b)に示した結果が観察されることを発見した。
【0039】
N−アセチル−アルドースアミン、N−アセチルアミノ酸又は関連するN−アセチル化合物により活性化される美容及び医薬剤は、加齢斑、角化症及び皺を改善又は根治する美容及び医薬剤;局所鎮痛薬及び麻酔薬;抗アクネ薬;抗菌剤;抗酵母剤;抗茸瘤剤;抗ウイルス剤;ふけ防止剤、抗皮膚炎剤、抗ヒスタミン剤;抗そう痒症剤;制吐剤;乗り物酔い抑制剤;抗炎症剤;抗過角化症剤;発汗抑制剤;抗乾癬剤;抗脂漏症剤;ヘアーコンディショナー及びヘアートリートメント剤;皮膚の老化防止剤及び皺抑制剤;日焼け止め及び日焼け防止剤;皮膚漂白剤;脱色素剤;ビタミン;コルチコステロイド;日焼けローション;ホルモン;レチノイド及び他の皮膚医薬剤を含む。
【0040】
美容及び医薬剤の具体例としては、クロトリマゾール、ケトコナゾール、ミコナゾール、グリセオフルビン、エコナゾール、メトロニダゾール、ヒドロキシジン、ジフェニルヒドラミン、プラモキシン、リドカイン、プロカイン、メピバカイン、モノベンゾン、エリトロマイシン、テトラサイクリン、クリンダマイシン、メクロサイクリン、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノエーテル、ミノサイクリン、ナプロクサン、イブプロフェン、テオフィリン、クロモリン、アルブテロール、レチノール、酢酸レチニル、パルミチン酸レチニル、レチナール、レチノイン酸、13−シスレチノイン酸、ヒドロコルチゾン、21−酢酸ヒドロコルチゾン、17−吉草酸ヒドロコルチゾン、17−酪酸ヒドロコルチゾン、吉草酸ベタメタゾン、ジプロピオン酸ベタメタゾン、トリアムシノロンアセトニド、フルオシノニド、プロピオン酸クロベタゾール、過酸化ベンゾイル、こうじ酸、クロタミトン、プロプラノロール、プロメタジン、サリチル酸、ビタミンE及びビタミンE酢酸などが挙げられる。
【0041】
N−アセチル−アルドースアミン、N−アセチルアミノ酸又は関連するN−アセチル化合物の内1つ以上の化合物と混合され得る別の美容剤または他の薬剤は、ヒドロキシ酸、ケトン酸及びこれらの関連化合物である。ヒドロキシ酸の具体例としては、ヒドロキシモノカルボン酸、ヒドロキシジカルボン酸、2−ヒドロキシカルボン酸、他のカルボキシル基を持つ化合物、2−ケトカルボン酸及びこれらに関連する化合物。この点については例えば、米国特許第5,422,370号、同第5,547,988号、同第5,470,880号及び同第5,385,938号を参照されたい。これらヒドロキシ酸は、遊離の酸、エステル、ラクトンとして、有機塩基又は無機アルカリで形成された塩の形態で、あるいは立体異性体として存在してよい。ヒドロキシ酸及び関連する化合物の典型例としては、グリコール酸、マンデル酸、乳酸、トロパ酸、メチル乳酸、ラクトビオン酸、酒石酸、くえん酸、グルクロン酸、りぼん酸、グルコノラクトン、リボノラクトン、グリコリルグリコーレート、ラクチルラクテート、トリ乳酸及び多乳酸などが挙げられる。
【0042】
さらに別の具体例として、フェニルアルファアシルオキシアルカン酸及びその誘導体が挙げられる。これらの化合物は遊離の酸、ラクトン又は塩の形態あるいは立体異性体として存在してもよい。この点については米国特許第5,258,391号及び同第5,643,949号を参照されたい。このような化合物の典型例としては、ジフェニルアルファアセトキシ酢酸、フェニルアルファアセトキシ酢酸、フェニルアルファメチルアルファアセトキシ酢酸、フェニルアルファアセトキシプロパン酸及び2−フェニルベータアセトキシプロパン酸が挙げられる。
【0043】
3.美容的及び治療用薬剤組成物の調整
N−アセチル−アルドースアミン、N−アセチルアミノ酸又は関連するN−アセチル化合物からなる本発明の組成物は、溶液、ゲル、ローション、クリーム、軟膏、スプレー、スティック、パウダー、マスク又は他の皮膚、爪及び毛髪に局所的に塗布するのに適した形態として調整される。
【0044】
溶液形態の組成物を調整するには、本発明のN−アセチル化合物の内の少なくとも1つを水、エタノール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジイソプロピルアジピン酸及び又は他の局所治療で許容される賦形剤から調整される溶液に溶解する。N−アセチル化合物を単独で使用した場合の濃度、2つ以上のN−アセチル化合物からなる組成物の場合はその総濃度、は重量で全体の0.01〜99.9%の範囲であり、好ましくは0.1〜50%の範囲であり、さらに好ましくは0.5〜25%の範囲である。本発明で予想される態様では、組成物の重量全体で0.1〜0.2%、0.2〜0.3%、0.3〜0.4%、0.4〜0.5%、0.5〜0.6%、0.6〜0.7%、0.7〜0.8%、0.8〜0.9%、0.9〜1%、1〜2%、2〜3%、3〜4%、4〜5%、5〜6%、6〜7%、7〜8%、8〜9%、9〜10%、10〜14%、14〜18%、18〜22%、22〜26%、26〜30%、30〜35%、35〜40%、40〜45%、45〜50%、50〜60%、60〜70%、70〜80%、80〜90%及び90〜99.9%である。
【0045】
ローション、クリーム又は軟膏状の局所組成物の調整では、N−アセチル化合物を最初に水、エタノール、プロピレングリコール、ジイソプロピルアジピン酸及び又は他の賦形剤に溶解し、得られた溶液をローション、クリーム又は軟膏にするために所望のベース又は薬学上許容できる賦形剤と混合する。N−アセチル化合物の濃度は、上述の溶液の例で説明したものと同じである。
【0046】
本発明の局所治療用組成物は、ゲル又はシャンプー形態に調整することもできる。ゲル状組成物は、典型的にはキトサン、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリクォーターニウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルバメル又はアンモニア化されたグリシリチネートなどのゲル化剤をN−アセチル化合物を含む溶液に加えて調整される。ゲル化剤の濃度は、好ましくは重量で組成物全体の0.1〜4%の範囲である。シャンプー状の組成物の調整では、N−アセチル化合物を最初にシャンプーベースと混合する。ゲル又はシャンプーに使用するN−アセチル化合物の濃度は、上記で説明したものと同じである。
【0047】
相乗効果が得られるように組成物を組み合わせるために美容、医薬剤又は他の薬剤を処方に従って溶解又は混合することによって上記組成物の任意の1種に配合する。
【0048】
本発明のN−アセチル化合物の局所供給用の他の組成物の形態は、当業者によって容易に調整又は処方される。
以下は、本発明による処方の具体例である。これらの例では限られた化合物及び処方が用いられているが、以下の例は例示的なものであり本発明を限定するものではない。
【0049】
実施例1
N−アセチル−アルドースアミン、N−アセチルアミノ酸又は関連するN−アセチル化合物を含むクリーム状の組成物は、典型的には次の様に処方される。N−アセチル−α−D−グルコースアミン10グラムを30mlの温水に溶解し、得られた溶液を60グラムのクリームベース又は市販の親水性軟膏と均一に混合する。得られた白色クリームは10%のN−アセチル−グルコースアミンを含有する。1%及び5%のN−アセチル−グルコースアミンを含むクリームを同じ方法で1グラム及び5グラムのN−アセチル−α−D−グルコースアミンを使用し39ml及び35mlの水で溶解して調整した。
【0050】
実施例2
1グラムのN−アセチル−D−マンノースアミンを20mlの温水で溶解し、得られた溶液を79グラムのクリームベース又は市販の親水性軟膏と均一に混合した。得られた白色のクリームは1%のN−アセチル−マンノースアミンを含有する。
【0051】
実施例3
0.5グラムのN−アセチル−L−グルタミンを20mlの温水で溶解し、得られた溶液を79.5グラムのクリームベース又は市販の親水性軟膏と均一に混合した。得られた白色のクリームは0.5%のN−アセチル−L−グルタミンを含有する。
【0052】
実施例4
2グラムのN−アセチル−DL−プロリンを20mlの温水で溶解し、得られた溶液を78グラムのクリームベース又は市販の親水性軟膏と均一に混合した。得られた白色のクリームは、2%のN−アセチル−プロリンを含有する。
【0053】
実施例5
3グラムのN−アセチル−グリシンを20mlの温水で溶解し、得られた溶液を77グラムのクリームベース又は市販の親水性軟膏と均一に混合した。得られた白色のクリームは、3%のN−アセチル−グリシンを含有する。
【0054】
実施例6
4グラムのN−アセチル−L−アルギニンを20mlの温水で溶解し、得られた溶液を76グラムのクリームベース又は市販の親水性軟膏と均一に混合した。得られた白色のクリームは、4%のN−アセチル−アルギニンを含有する。
【0055】
実施例7
N−アセチル−アルドースアミン、N−アセチルアミノ酸又は関連するN−アセチル化合物を含む典型的な溶液状組成物は、次のように処方される。0.5グラムのN−アセチル−α−D−グルコースアミンを40mlの水、40mlのエタノール及び20mlのプロピレングリコールから調整された99.5mlの溶液に溶解した。得られた組成物は、0.5%のN−アセチル−グルコースアミンを含む。5%のN−アセチル−グルコースアミンを含む溶液を5グラムのN−アセチル−α−D−グルコースアミンを95mlの溶液に溶解した以外は同じ方法で処方した。
【0056】
実施例8
1グラムのN−アセチル−D−ガラクトースアミンを40mlの水、40mlのエタノール及び20mlのプロピレングリコールから調整された99mlの溶液に溶解した。得られた組成物は1%のN−アセチル−ガラクトースアミンを含有する。
【0057】
実施例9
2グラムのN−アセチル−L−チロシンアミドを40mlの水、40mlのエタノール及び20mlのプロピレングリコールから調整された98mlの溶液で溶解した。得られた組成物は、2%のN−アセチル−チロシンアミドを含有する。
【0058】
実施例10
0.5グラムのN−アセチル−L−リジンを40mlの水、40mlのエタノール及び20mlのプロピレングリコールから調整された99.5mlの溶液で溶解した。得られた組成物は、0.5%のN−アセチル−リジンを含有する。
【0059】
実施例11
0.2グラムのN−アセチル−L−チロシンを40mlの水、40mlのエタノール及び20mlのプロピレングリコールから調整された99.8mlの溶液で溶解した。得られた組成物は、0.2%のN−アセチル−チロシンを含有する。
【0060】
実施例12
0.5グラムのN−アセチル−L−システインメチルエステルを40mlの水、40mlのエタノール及び20mlのプロピレングリコールから調整された99.5mlの溶液で溶解した。得られた組成物は、0.5%のN−アセチル−L−システインメチルエステルを含有する。
【0061】
実施例13
3グラムのN−アセチル−L−チロシンエチルエステルを80mlのエタノール及び20mlのプロピレングリコールから調整された97mlの溶液に溶解した。得られた組成物は、3%のN−アセチル−チロシンエチルエステルを含有する。
【0062】
実施例14
2グラムのN−アセチル−L−システインを80mlの水及び20mlのプロプレングリコールから調整された98mlの溶液に溶解した。得られた組成物は2%のN−アセチル−システインを含有する。
【0063】
実施例15
湿疹及び他の炎症性の皮膚病のための例えばN−アセチルアミノ酸エステル及びヒドロコルチゾン17−吉草酸からなる典型的な混合組成物は、次の様に処方される。
3グラムのN−アセチル−L−チロシンエチルエステル及び0.4グラムのヒドロコルチゾン17−吉草酸を20mlの温かいプロピレングリコールに溶解し、得られた溶液を76.6グラムのクリームベース又は市販の親水性軟膏と均一に混合した。得られた白色クリームのpHは5.1であり、3%のN−アセチル−L−チロシンエチルエステルと0.4%のヒドロコルチゾン17−吉草酸を含む。
【0064】
実施例16
例えばN−アセチル−アルドースアミンと抗かゆみ剤とからなる混合組成物の典型例は、次の様に処方される。
2グラムのN−アセチル−α−D−グルコースアミンを10mlの水に溶解し、得られた溶液を2グラムのグルコノラクトンを含む4mlの水内で2グラムのジフェニルヒドラミンと混合した。溶液を80グラムのクリームベース又は市販の親水性軟膏と均一に混合した。得られた組成物のpHは5.1であり、2%のN−アセチル−D−グルコースアミンと2%のジフェニルアミンを含有する。
右下足部に慢性苔蘚症によるかゆみを訴えている66歳の男性患者の当該部位に上記クリームを局所的に塗布した。2、3分後かゆみが完全に消え、12時間かゆみを感じなかった。
【0065】
4.N−アセチル−アルドースアミン、N−アセチルアミノ酸及び関連N−アセチル化合物を使用した外用及び治療
本発明のN−アセチル−アルドースアミン、N−アセチルアミノ酸及び関連するN−アセチル化合物を含む組成物は、皮膚、毛髪又は爪のあらゆる領域に塗布することができる。具体的には、手、腕、首、脚、足、胴体、爪甲及びあま皮を含む爪及び顔の表面及び周囲に塗布することができる。具体的な顔の部分は、鼻、額、及び目の周りなどである。該組成物は密封包帯を使用して又は使用しないで塗布することができる。あらゆる密封手段を使用することが可能である。さらにこのような密封手段を所望の結果が得られるように用いることは当業者の知識の範囲内である。
【0066】
本発明の組成物をこれらの領域に種々の頻度及び期間塗布することができる。この点については、当業者であれば所望の結果が得られるように頻度及び期間を適宜変更することができる。例えば、本発明の組成物を1日に1回、1日に1回以上又は1週間に1回以上というように塗布頻度を変えることができる。1日に1回以上塗布する場合、1日に1〜3回又はそれ以上塗布することができる。週単位で塗布する場合、1週間に1〜12回又はそれ以上塗布することができる。本発明の組成物による治療期間も、適宜選択することできる。例えば、本発明の組成物を1〜6週間又はそれ以上あるいは1〜6ヶ月又はそれ以上塗布してもよい。治療期間は継続的であってもよい。当業者であれば所望の結果を得るため及び又は維持するために使用頻度と期間の相互作用を考慮することができる。
【0067】
また当業者であれば所望の効果を得るために使用頻度及び期間に合わせて本発明の組成物の濃度を適宜変更することができる。例えば高濃度の組成物であれば頻度を少なく且つ短期間塗布される。対照的に低濃度の組成物であればより頻繁に且つ長期間塗布される。
【0068】
試験結果
測定方法
老化に伴う皮膚の変化に関する調査の1つにおいて、次のような測微カリパスによって皮膚の厚みを測定した。皮膚を滑らないように金鋼砂クロスで内面がコートされた2x6cmの金属ヒンジでつかみ、患者が不快感を示すまで手動できつく締め付けた。2つのヒンジ片の厚みを含む2つの皮膚層全体の厚みを測微カリパスで測定した。2つのヒンジ片を2つの皮膚層の実際の厚みを得るために差し引いた。同じ個所で3回測定を行い、皮膚の厚みを算出するために平均値を使用した。
【0069】
1.乾燥症及びドライスキン
下足部に乾燥症を有する66歳の男性患者に5%のN−アセチル−グルコースアミンクリームを1日に2回、1週間局所的に塗布した。局所治療の2、3日後、皮膚のあれが減少し且つ鱗状の皮膚状態が改善され、皮膚に滑らかさが感じられた。この局所治療から1週間後、乾燥肌が通常の肌の状態に戻った。この結果はN−アセチル−グルコースアミンは乾燥症及びドライスキンの局所治療に効果があったことを示す。
【0070】
2.アクネ
多数の丘疹及び膿疱を有する思春期性アクネを有する27歳の女性患者に5%のN−アセチル−グルコースアミン溶液を1日2回塗布した。2、3日後、患部の殆どの炎症が減少し、徐々に根絶することができた。この結果はN−アセチル−グルコースアミンはアクネの局所治療に効果があったことを示す。
【0071】
3.N−アセチル化合物の皮膚に対する効果
局所的に塗布された本発明のN−アセチル化合物の生物学的効果を調べるために58〜81歳の範囲の7人の女性患者と1人の男性患者がこの実験に参加した。この実験に使用した処方例は、80mlの水と20mlのプロピレングリコールから調整された溶液に含まれた2%のN−アセチル−L−システインであった。
試験部位は前腕前部から5cmの前腕の伸筋上のHays粘着ストリップに設けられたHayes Test Chambersで形成された格子パターンとして形成された複数の一辺が1cmの正方形である。各試験チャンバー、(1辺が1cmの正方形)は0.033mlの試験溶液で充分浸された四角片のフィルター紙を含む。
試験チャンバーをSanford Sharpie永久マーカーで印された輪郭部を残して皮膚に押し付けた。部位を試験溶液を連続塗布するために再度マーカーで印を付けた。賦形剤を用いた対照部位を逆の上腕部に設けた。各チャンバーのフィルター紙を0.033mlの溶液で満たし、試験及び賦形剤チャンバーをHayes粘着テープで所定の位置に固定した。これらチャンバーを1週間に2回取り外し、新しいものと交換した。この試験は5週間行った。
直径3mm又は4mmの型抜きされた生検試験片を本実験の最後に得た。その試験片を処理し分析した。いくつかの組織特性の測定も行った。
試験及び対照部位から得られた試験片をすぐに定着薬内に入れ、組織化学的な染色処理を行った。
Micro Image Analysis Sytemで表皮厚を測定し、平均(mean)厚を表皮の面積/水平方向の長さで表した。乳頭状真皮(papillary dermis)の厚さも測定した。
N−アセチル−システインで処理された皮膚では、全て対照に較べて上皮の厚みに平均で96%の増加が見られた。さらに全ての試験部位では対照に較べて乳頭状真皮におけるヒアルロン酸の生成に47〜227%の増加が認められた。
上記の結果は、本発明のN−アセチル化合物は皺及び内因及び外因的老化に伴う皮膚、爪及び毛髪の変化を含む種々の美容及び皮膚医学的兆候の治療に局所的に有効であるということを示している。
【0072】
4.N−アセチル−グルコースアミンの皮膚への効果
74歳の女性患者の右上腕部に10%のN−アセチル−グルコースアミンクリームを1日に2回、3週間塗布した。3週間後、治療されていない左上腕部の皮膚を引っ張ったときまだ弛みが感じられ、比較的皮膚が薄く皺があった。これとは対照的に右上腕部の皮膚を引っ張ったとき、より引き締まっており、滑らかで、ふくらみがあり皺も少なかった。左上腕部の皮膚の厚さに変化は見られなかったが、右上腕部は測微カリパスで測定したところ皮膚の厚さが37%増加していた。この結果はN−アセチル−グルコースアミンが、皺及び老化に伴う皮膚、爪又は毛髪の変化に対する局所治療に効果があることを示している。
【0073】
5.N−アセチル−DL−ホモシステインチオラクトンの皮膚への効果
76歳の男性患者の右上腕部に5%のN−アセチル−DL−ホモシステインチオラクトンクリームを1日に2回、3週間塗布した。3週間後、治療されていない左上腕部の皮膚を、引っ張ったときまだ弛みが感じられ、比較的皮膚が薄く皺があった。これとは対照的に右上腕部の皮膚を、引っ張ったとき、より引き締まっており、滑らかで、ふくらみがあり皺も少なかった。左上腕部の皮膚の厚さに変化は見られなかったが、右上腕部は測微カリパスで測定したところ皮膚の厚みが89%増加していた。この結果はN−アセチル−DL−ホモシステインチオラクトンが、皺及び老化に伴う皮膚、爪又は毛髪の変化に対する局所治療に効果があることを示している。
【0074】
6.N−アセチル−L−システインの皮膚への効果
71歳の女性患者の右上腕部に5%のN−アセチル−L−システインホモシステインクリームを1日に2回、3週間塗布した。3週間後、治療されていない左上腕部の皮膚を、引っ張ったときまだ弛みが感じられ、比較的皮膚が薄く皺があった。これとは対照的に右上腕部の皮膚を、引っ張ったとき、より引き締まっており、滑らかで、ふくらみがあり皺も少なかった。左上腕部の皮膚の厚さに変化は見られなかったが、右上腕部は測微カリパスで測定したところ皮膚の厚みが14%増加していた。この結果はN−アセチル−L−システインが、皺及び老化に伴う皮膚、爪又は毛髪の変化に対する局所治療に効果があることを示している。
【0075】
7.N−アセチル−L−システインメチルエステルの皮膚への効果
年齢59歳の女性患者の上腕部に5%のN−アセチル−L−システインメチルエステルクリームを1日に2回、3週間塗布した。3週間後、治療されていない左上腕部の皮膚を引っ張ったときまだ弛みが感じられ、比較的皮膚が薄く皺があった。これとは対照的に右上腕部の皮膚を引っ張ったとき、より引き締まっており、滑らかで、ふくらみがあり皺も少なかった。左上腕部の皮膚の厚さに変化は見られなかったが、右上腕部は測微カリパスで測定したところ皮膚の厚みが13%増加していた。この結果はN−アセチル−L−システインメチルエステルが、皺及び老化に伴う皮膚、爪又は毛髪の変化に対する局所治療に効果があることを示している。
【0076】
8.N−アセチル−L−システインメチルエステルの皮膚への効果
年齢79歳の女性患者の左上腕部に10%のN−アセチル−L−システインメチルエステルクリームを1日に2回、3週間塗布した。3週間後、治療されていない右上腕部の皮膚を引っ張ったときまだ弛みが感じられ、比較的皮膚が薄く皺があった。これとは対照的に左上腕部の皮膚を引っ張ったとき、より引き締まっており、滑らかで、ふくらみがあり皺も少なかった。右上腕部の皮膚の厚さに変化は見られなかったが、左上腕部は測微カリパスで測定したところ皮膚の厚みが26%増加していた。この結果はN−アセチル−L−システインメチルエステルが、皺及び老化に伴う皮膚、爪又は毛髪の変化に対する局所治療に効果があることを示している。
【0077】
9.N−アセチル−L−システインメチルエステルの皮膚への効果
年齢76歳の男性患者の左上腕部に5%のN−アセチル−L−システインメチルエステルクリームを1日に2回、3週間塗布した。3週間後、治療されていない右上腕部の皮膚を引っ張ったときまだ弛みが感じられ、比較的皮膚が薄く皺があった。これとは対照的に左上腕部の皮膚を引っ張ったとき、より引き締まっており、滑らかで、ふくらみがあり皺も少なかった。右上腕部の皮膚の厚さに変化は見られなかったが、左上腕部は測微カリパスで測定したところ皮膚の厚みが87%増加していた。この結果はN−アセチル−L−システインメチルエステルが、皺及び老化に伴う皮膚、爪又は毛髪の変化に対する局所治療に効果があることを示している。
【0078】
10.N−アセチル−DL−ホモシステインチオラクトンの皮膚への効果
年齢59歳の女性患者の左上腕部に5%のN−アセチル−DL−ホモシステインチオラクトンクリームを1日に2回、3週間塗布した。3週間後、治療されていない右上腕部の皮膚を引っ張ったときまだ弛みが感じられ、比較的皮膚が薄く皺があった。これとは対照的に左上腕部の皮膚を引っ張ったとき、より引き締まっており、滑らかで、ふくらみがあり皺も少なかった。右上腕部の皮膚の厚さに変化は見られなかったが、左上腕部は測微カリパスで測定したところ皮膚の厚みが21%増加していた。この結果はN−アセチル−DL−ホモシステインチオラクトンが、皺及び老化に伴う皮膚、爪又は毛髪の変化に対する局所治療に効果があることを示している。
【0079】
11.N−アセチル−DL−トリプトファンの皮膚への効果
年齢71歳の女性患者の左上腕部に10%のN−アセチル−DL−トリプトファンクリームを1日に2回、3週間塗布した。3週間後、治療されていない右上腕部の皮膚を引っ張ったときまだ弛みが感じられ、比較的皮膚が薄く皺があった。これとは対照的に左上腕部の皮膚を引っ張ったとき、より引き締まっており、滑らかで、ふくらみがあり皺も少なかった。右上腕部の皮膚の厚さに変化は見られなかったが、左上腕部は測微カリパスで測定したところ皮膚の厚みが11%増加していた。この結果はN−アセチル−DL−トリプトファンが、皺及び老化に伴う皮膚、爪又は毛髪の変化に対する局所治療に効果があることを示している。
【0080】
12.N−アセチル−L−チロシンエチルエステルの皮膚への効果
年齢47歳の女性患者の左上腕部に10%のN−アセチル−L−チロシンエチルエステルクリームを1日に2回、4週間塗布した。4週間後、治療されていない右上腕部の皮膚を引っ張ったときまだ弛みが感じられ、比較的皮膚が薄く皺があった。これとは対照的に左上腕部の皮膚を引っ張ったとき、より引き締まっており、滑らかで、ふくらみがあり皺も少なかった。右上腕部の皮膚の厚さに変化は見られなかったが、左上腕部は測微カリパスで測定したところ皮膚の厚みが11%増加していた。この結果はN−アセチル−L−チロシンエチルエステルが、皺及び老化に伴う皮膚、爪又は毛髪の変化に対する局所治療に効果があることを示している。
【0081】
13.N−アセチル−DL−トリプトファンの皮膚への効果
年齢53歳の女性患者の右上腕部に10%のN−アセチル−DL−トリプトファンクリームを1日に2回、3週間塗布した。3週間後、治療されていない左上腕部の皮膚を引っ張ったときまだ弛みが感じられ、比較的皮膚が薄く皺があった。これとは対照的に右上腕部の皮膚を引っ張ったとき、より引き締まっており、滑らかで、ふくらみがあり皺も少なかった。左上腕部の皮膚の厚さに変化は見られなかったが、右上腕部は測微カリパスで測定したところ皮膚の厚みが21%増加していた。この結果はN−アセチル−DL−トリプトファンが、皺及び老化に伴う皮膚、爪又は毛髪の変化に対する局所治療に効果があることを示している。
【0082】
14.N−アセチル−L−アルギニンの皮膚への効果
年齢47歳の女性患者の右上腕部に10%のN−アセチル−L−アルギニンクリームを1日に2回、4週間塗布した。4週間後、治療されていない左上腕部の皮膚を持ち上げたときまだ弛みが感じられ、比較的皮膚が薄く皺があった。これとは対照的に右上腕部の皮膚を引っ張ったとき、より引き締まっており、滑らかで、ふくらみがあり皺も少なかった。左上腕部の皮膚の厚さに変化は見られなかったが、右上腕部は測微カリパスで測定したところ皮膚の厚みが32%増加していた。この結果はN−アセチル−L−アルギニンが、皺及び老化に伴う皮膚、爪又は毛髪の変化に対する局所治療に効果があることを示している。
【0083】
15.N−アセチル−DL−トリプトファンの皮膚への効果
年齢66歳の女性患者の左上腕部に10%のN−アセチル−DL−トリプトファンクリームを1日に2回、5週間塗布した。5週間後、治療されていない右上腕部の皮膚を引っ張ったときまだ弛みが感じられ、比較的皮膚が薄く皺があった。これとは対照的に左上腕部の皮膚を引っ張ったとき、より引き締まっており、滑らかで、ふくらみがあり皺も少なかった。右上腕部の皮膚の厚さに変化は見られなかったが、左上腕部は測微カリパスで測定したところ皮膚の厚みが12%増加していた。この結果はN−アセチル−DL−トリプトファンが、皺及び老化に伴う皮膚、爪又は毛髪の変化に対する局所治療に効果があることを示している。
【0084】
16.N−アセチル−L−チロシンエチルエステルの皮膚への効果
年齢72歳の女性患者の右上腕部に10%のN−アセチル−L−チロシンエチルエステルクリームを1日に2回、4週間塗布した。4週間後、治療されていない左上腕部の皮膚を引っ張ったときまだ弛みが感じられ、比較的皮膚が薄く皺があった。これとは対照的に右上腕部の皮膚を引っ張ったとき、より引き締まっており、滑らかで、ふくらみがあり皺も少なかった。左上腕部の皮膚の厚さに変化は見られなかったが、右上腕部は測微カリパスで測定したところ皮膚の厚みが34%増加していた。この結果はN−アセチル−L−チロシンエチルエステルが、皺及び老化に伴う皮膚、爪又は毛髪の変化に対する局所治療に効果があることを示している。
【0085】
17.N−アセチル−L−アルギニンの皮膚への効果
年齢72歳の女性患者の左上腕部に10%のN−アセチル−L−アルギニンクリームを1日に2回、4週間塗布した。4週間後、治療されていない右上腕部の皮膚を引っ張ったときまだ弛みが感じられ、比較的皮膚が薄く皺があった。これとは対照的に左上腕部の皮膚を引っ張ったとき、より引き締まっており、滑らかで、ふくらみがあり皺も少なかった。右上腕部の皮膚の厚さに変化は見られなかったが、左上腕部は測微カリパスで測定したところ皮膚の厚みが22%増加していた。この結果はN−アセチル−L−アルギニンが、皺及び老化に伴う皮膚、爪又は毛髪の変化に対する局所治療に効果があることを示している。
【0086】
18.混合組成物の皮膚への効果
年齢72歳の女性患者の右上腕部にそれぞれ10%のN−アセチル−α−D−グルコースアミンと10%のグルコノラクトンから処方された混合クリームを1日に2回、3週間塗布した。3週間後、治療されていない左上腕部の皮膚を引っ張ったときまだ弛みが感じられ、比較的皮膚が薄く皺があった。これとは対照的に右上腕部の皮膚を引っ張ったとき、より引き締まっており、滑らかで、ふくらみがあり皺も少なかった。左上腕部の皮膚の厚さに変化は見られなかったが、右上腕部は測微カリパスで測定したところ皮膚の厚みが118%増加していた。この結果はN−アセチル−グルコースアミンは他の局所剤と組み合わせた場合、皺及び内因及び外因的老化に伴う皮膚、爪又は毛髪の変化などの種々の美容及び皮膚医学的兆候の局所治療に効果があることを示している。
【0087】
19.N−アセチルアミノ酸の頭皮への効果
例えばN−アセチルアミノ酸からなる毛髪、頭皮、爪及び皮膚などの局所利用に好適な組成物は、次のように処方される。2グラムのN−アセチル−DL−プロリンを40mlの水、40mlのエタノール及び20mlのプロピレングリコールから調整された98mlの溶液に溶解した。得られた組成物のpHは2.7であり、2%のN−アセチル−DL−プロリンを含んでいた。頭皮にかゆみのある年齢66歳の男性患者のかゆみのある領域に上記組成物を局所塗布した。2,3分後、頭皮のかゆみは完全になくなり、24時間頭皮にかゆみを感じなかった。
【0088】
20.混合組成物(抗菌剤)の爪又は頭皮への効果
爪又は頭皮の感染に対する例えばN−アセチルアミノ酸と抗菌剤とを組み合わせた組成物は次のように処方される。2グラムのN−アセチルグリシンを40mlの水、40mlのエタノール及び20mlのプロピレングリコールから調整された98mlの溶液に溶解した。得られた組成物は2%のN−アセチルグリシンを含み、爪又は頭皮のコンディショナーとして使用した。爪又は頭皮の感染症用に2グラムN−アセチルグリシン及び2グラムのクロトリマゾ−ルを40mlの水、40mlのエタノール及び20mlのプロピレングリコールから調整された96mlの溶液に溶解した。得られた組成物のpHは、3.7であり、2%のN−アセチルグリシン及び2%のクロトリマゾ−ルを含んでおり、爪又は頭皮の感染症に局所的に有効であった。
【0089】
21.N−アセチルアミノシャンプー組成物
毛髪、頭皮又は体を洗うための例えばN−アセチルアミノ酸からなる局所に使用するシャンプー組成物は、次のように処方される。4グラムのN−アセチル−L−アルギニンを20mlの水に溶解し、得られた溶液を76グラムのシャンプーベースと均一に混合した。シャンプー組成物のpHは、6.6で、4%のN−アセチル−L−アルギニンを含んでいた。
【0090】
22.N−アセチル−L−リジンの脂性頭皮への効果
2グラムのN−アセチル−L−リジンを40mlの水、40mlのエタノール及び20mlのプロピレングリコールから調整された98mlの溶液で溶解した。得られた組成物のpHは、6.5であり、2%のN−アセチル−L−リジンを含んでいた。年齢66歳の男性患者の脂性でそう痒症の頭皮に上記組成物を局所的に塗布した。温風でその部位を乾かし、余分な溶液を除去した。2、3分後頭皮のかゆみは完全になくなり、12時間かゆみを感じなかった。
【0091】
23.N−アセチル−DL−プロリンのそう痒症への効果
およそ1年間従来の局所抗炎症剤に良好な反応を示さなかった炎症性丘疹の皮膚障害に悩まされていた慢性グローバー(Grover’sDisese)症の77歳の男性患者に5%のN−アセチル−DL−プロリンの白色の水油混合クリームをかゆみを訴えている箇所に塗布した。2、3分後、強度のかゆみは完全になくなり、12時間かゆみを感じなかった。
【0092】
24.N−アセチル−D−ガラクトースアミンの蕁麻疹の効果
原因不明の急性の蕁麻疹を患った72歳の女性患者は、市販の抗かゆみ剤に良好な反応を示さなかった。この患者に5%のN−アセチル−D−ガラクトースアミンの溶液を蕁麻疹の症状を訴えている部位に局所塗布した。2、3分後、強度のかゆみは完全になくなり、24時間かゆみを訴えず、蕁麻疹の症状も無くなった。
【0093】
25.N−アセチル−DL−プロリンの皮膚のかゆみ及び乾燥症の効果
慢性の硬貨状湿疹及びそう痒症の乾燥肌の86歳の女性患者のその症状を訴えている箇所に5%のN−アセチル−DL−プロリン溶液を塗布した。2、3分後、かゆみは完全になくなり、48時間かゆみを感じなかった。
【0094】
26.N−アセチル−DL−プロリンの皮膚のかゆみに対する効果
従来の抗あせも剤の使用が原因で腋窩にかゆみを訴えている76歳の男性患者にその症状を訴えている部位に5%のN−アセチル−DL−プロリン溶液を塗布した。2、3分後かゆみは完全になくなり、5日間かゆみを感じなかった。
【0095】
27.N−アセチル−L−グルタミンのそう痒症に対する効果
およそ1年間従来の局所抗炎症剤に良好な反応を示さなかった炎症性丘疹の皮膚障害に悩まされていた慢性グローバー(Grover’sDisese)症の77歳の男性患者に容量で水4部、エタノール4部及びプロピレングリコール2部から調整された5%のN−アセチル−L−グルタミンを含む溶液を塗布した。2、3分後強度のかゆみは完全になくなり、24時間かゆみを感じなかった。
【0096】
28.N−アセチル−α−D−グルコースアミンのそう痒症に対する効果
およそ1年間従来の局所抗炎症剤に良好な反応を示さなかった炎症性丘疹の皮膚障害に悩まされていた慢性グローバー(Grover’sDisese)症の77歳の男性患者に容量で水4部、エタノール4部及びプロピレングリコール2部から調整された5%のN−アセチル−α−D−グルコースアミンを含む溶液を塗布した。2、3分後強度のかゆみは完全になくなり、24時間かゆみを感じなかった。
【0097】
この発明は、その精神又は本質的な特徴から逸脱しない限り他の特定の形態で具体化することができる。従ってここで説明した実施例はあらゆる点において例示的であり、これに限定されるべきものではない。さらにここで引用した全ての公報の開示内容は、それぞれが個々に引用されていたとしても同じ程度に全体としてここに包含されるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚に局所的に塗布することによって美容上の疾患を治療するための組成物であって、該組成物は、治療上効果的な量のN−アセチル−チロシンをそのアミドまたはエステルとして含み、前記美容上の疾患が、皮膚の皺、顔の小皺及び皺および皮膚の薄化からなる群から選択される組成物。
【請求項2】
前記美容上の疾患が、顔の小皺及び皺および皮膚の薄化からなる群から選択されることを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記N−アセチル−チロシンがN−アセチル−チロシンメチルエステル、N−アセチル−チロシンエチルエステル、N−アセチル−チロシンプロピルエステル、N−アセチル−チロシンイソプロピルエステル、N−アセチル−チロシンブチルエステル、N−アセチル−チロシンアミルエステル、N−アセチル−チロシンヘキシルエステルおよびN−アセチル−チロシンオクチルエステルからなる群から選択されるN−アセチル−チロシンアミドまたはN−アセチル−チロシンエステルであることを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項4】
前記N−アセチルチロシンがN−アセチル−チロシンアミドまたはN−アセチル−チロシンエステルであり、前記美容状の疾患が顔の小皺及び皺および皮膚の薄化からなる群から選択されることを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項5】
皮膚に局所的に塗布することによって美容上及び皮膚医学的疾患を治療するための組成物であって、該組成物は、治療上効果的な量のN−アセチル−チロシンアミドまたはN−アセチル−チロシンエステルと、美容上または他の局所薬剤とを含み、この薬剤が皺を改善又は根治する薬剤、皮膚の老化防止剤及び皺抑制剤、日焼け止め及び日焼け防止剤、ビタミン、ホルモンおよびレチノイドからなる群から選択される組成物。
【請求項6】
前記美容上または他の局所薬剤がレチノール、酢酸レチニル、パルミチン酸レチニル、レチノイン酸、13−シスレチノイン酸、ビタミンEおよびビタミンE酢酸からなる群から選択されることを特徴とする請求項5記載の組成物。
【請求項7】
皮膚に局所的に塗布することによって美容上の疾患を治療するための組成物であって、該組成物は、N−アセチル−グルコサミン、N−アセチル−システイン、N−アセチル−トリプトファンおよびN−アセチル−アルギニンからなる群から選択されるN−アセチル化合物を治療上効果的な量含み、前記美容状の疾患が顔の小皺及び皺および皮膚の薄化からなる群から選択される組成物。
【請求項8】
前記組成物が皮膚の厚みを増加させるためのものであることを特徴とする請求項7記載の組成物。
【請求項9】
皮膚に局所的に塗布することによって美容上の疾患を治療するための組成物であって、該組成物は、N−アセチル−プロリン、N−アセチル−グルタミン、N−アセチル−グルコサミンおよびN−アセチルガラクトースアミンからなる群から選択されるN−アセチル化合物を遊離の酸、塩、アミドまたはエステルとして治療上効果的な量含み、前記美容状の疾患がかゆみである組成物。
【請求項10】
前記N−アセチル−プロリンがN−アセチル−プロリン−メチルエステル、N−アセチル−プロリン−エチルエステル、N−アセチル−プロリン−プロピルエステル、N−アセチル−プロリン−イソプロピルエステル、N−アセチル−プロリン−ブチルエステル、N−アセチル−プロリン−アミルエステル、N−アセチル−プロリン−ヘキシルエステルおよびN−アセチル−プロリン−オクチルエステルからなる群から選択されるN−アセチル−プロリンアミドまたはN−アセチル−プロリンエステルであることを特徴とする請求項9記載の組成物。
【請求項11】
皮膚に局所的に塗布することによって美容上の疾患を治療するための組成物であって、該組成物は、治療上効果的な量のN−アセチル−グルコサミンを含み、前記美容上の疾患が、にきびである組成物。


【公開番号】特開2012−72172(P2012−72172A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−259785(P2011−259785)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【分割の表示】特願2000−591974(P2000−591974)の分割
【原出願日】平成12年1月7日(2000.1.7)
【出願人】(592101013)
【出願人】(592101024)
【Fターム(参考)】