説明

N−置換2−シアノピロリジンの製造法

本発明はN−(N'−置換グリシル)−2−シアノピロリジンの製造法であり、少なくとも
(a)ジメチルホルムアミドの存在下で、式(V)
【化1】


〔式中、XおよびXは互いに独立してハロゲンであり;Xはハロゲン、OH、O−C(=O)−CH、−O−SO−(C1−8)アルキルまたは−O−SO−(アリール)である。〕
の化合物と、L−プロリンアミドを反応させ、続いて
(b)得られた化合物を単離することなく脱水剤と反応させ、所望により続いて
(c)塩基の存在下、得られた化合物を単離せずに適当なアミンと反応させ、そして
(d)得られた遊離形または酸付加塩形の化合物を回収する
方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、N−(N'−置換グリシル)−2−シアノピロリジンの新規製造法および主にN−(N'−置換グリシル)−2(S)−シアノピロリジンを含む、該新規製造法により得ることができる組成物に関する。
【0002】
N−(N'−置換グリシル)−2−シアノピロリジン、とりわけ、遊離形または酸付加塩形の;式(I)
【化1】

〔式中、Rは下記で定義の通りである。〕
の化合物は、ジペプチジルペプチダーゼ−IV(DPP−IV)阻害剤であり、例えば、WO98/19998に記載されている。
【0003】
N−(N'−置換グリシル)−2−シアノピロリジン、とりわけ上記式(I)のものの慣用の製造法は、ハロゲン(好ましくは塩素または臭素)置換(2−シアノピロリジノ)カルボニルメチレンと適当なアミンとの反応を含む。該置換(2−シアノピロリジノ)カルボニルメチレンは、ハロアセチルハライドとL−プロリンアミドとの反応、続く、トリフルオロ酢酸無水物での脱水により得ることができる。この方法は、とりわけN−(N'−置換グリシル)−2−シアノピロリジンの工業的製造を考慮するとき、1−ハロアセチル−2−シアノピロリジン中間体およびその直接前駆体の両方が刺激物として分類されているため、明らかな欠点を有する。さらに、該方法は、数段階の水性後処理を必要とし、廃棄物問題と低収率をもたらす可能性がある。遊離1−ハロアセチル−2−シアノピロリジンを避けた固相化学に基づく別の合成法も最近報告されているが、著者らによると、この方法は規模拡大には適していない(N. Willand et al., Tetrahedron 58(2002)5741-5746)。故に、改善された方法の必要性が存在する。
【0004】
驚くべきことに、1−ハロアセチル−2−シアノピロリジン中間体が、該刺激物の単離を必要としない方法で製造できることを、本発明により発見した。該化合物は、したがって、直接、さらに適当なアミンと反応させ得る。加えて、該新規方法は、すべての溶媒の再使用を可能にし、唯一の副産物は無機塩である。該新規方法は高い全体的収率により特徴付けられ、産業的製造に適している。
【0005】
故に、本発明の目的は、N−(N'−置換グリシル)−2−シアノピロリジンの製造法であり、少なくとも
(a)ジメチルホルムアミドの存在下で、式(V)
【化2】

〔式中、XおよびXは、互いに独立してハロゲンであり;Xはハロゲン、OH、O−C(=O)−CH、−O−SO−(C1−8)アルキルまたは−O−SO−(アリール)である。〕
の化合物と、L−プロリンアミドを反応させ、続いて
(b)得られた化合物を単離することなく脱水剤と反応させ、所望により続いて
(c)塩基の存在下、得られた化合物を単離せずに適当なアミンと反応させ、そして
(d)得られた遊離形または酸付加塩形の化合物を回収する
ことを含む、方法である。
【0006】
が−O−SO−(アリール)であるとき、“アリール”なる用語は、環部分に6−12個の炭素原子を有する単環式または二環式芳香族性炭化水素基、例えばフェニル、ビフェニル、ナフチルおよびテトラヒドロナフチル(これらの各々は、所望により置換されている(C1−4)アルキル、例えばトリフルオロメチル、ハロ、ヒドロキシ、(C1−4)アルコキシ、アシルのような1−4個の置換基で、所望により置換されていてよい)を意味する。好ましくはアリール基はフェニル、または置換フェニルである。
【0007】
が−O−SO−(C1−8)アルキルまたは−O−SO−(アリール)であるとき、“アルキル”なる用語は、所望によりハロゲン、好ましくはフッ素、塩素、臭素またはヨウ素から選択される1−5個の置換基で置換されていてよい、直鎖または分枝鎖のいずれかを意味する。アルキル基の例は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル、イソブチル、トリフルオロメチルを含む。
【0008】
上記の方法において、アミンは1級または2級アミンのいずれかである。医薬化合物の合成のための、有機化学に有用なこのようなアミンは、当業者に既知である。1個または2個の有機基で置換された適当なアミンは、例えばWO03/002596におけるような公開されたDPP−IV阻害剤の構造に基づき、当業者が容易に選択できる。
【0009】
特に、本発明の目的は、遊離形または酸付加塩形の、式(I)
【化3】

〔式中、Rは
a)R1aN(CH) − ここで
は、所望により(C1−4)アルキル、(C1−4)アルコキシ、ハロゲン、トリフルオロメチル、シアノまたはニトロでモノ置換または独立してジ置換されているピリジニルまたはピリミジニル部分;または所望により(C1−4)アルキル、(C1−4)アルコキシまたはハロゲンでモノ置換または独立してジ置換されているフェニルであり;
1aは水素または(C1−8)アルキルであり;そして
mは2または3である;
b)所望により1位を(C1−3)ヒドロキシアルキルで置換されている(C3−12)シクロアルキルである;
c)R(CH) − ここで
は、所望により(C1−4)アルキル、(C1−4)アルコキシ、ハロゲンまたはフェニルチオ(所望により、フェニル環をヒドロキシメチルでモノ置換されている)でモノ置換または独立してジ置換または独立してトリ置換されているフェニルであるか;または(C1−8)アルキル;所望により(C1−8)アルキルでモノ置換または多置換されている[3.1.1]二環式炭素環部分;所望により(C1−4)アルキル、(C1−4)アルコキシまたはハロゲンでモノ置換または独立してジ置換されているピリジニルまたはナフチル部分;シクロヘキセニル;または所望により置換されているアダマンチルであり;そして
nは1から3であるか;または
は、所望により(C1−4)アルキル、(C1−4)アルコキシまたはハロゲンでモノ置換または独立してジ置換されているフェノキシであり;そして
nは2または3である;
d)(R)CH(CH) − ここで
各Rは独立して、所望により(C1−4)アルキル、(C1−4)アルコキシまたはハロゲンでモノ置換または独立してジ置換されているフェニルである;
e)R(CH) − ここで
は2−オキソピロリジニルまたは(C2−4)アルコキシであり、そして
pは2から4である;
f)所望により1位を(C1−3)ヒドロキシアルキルでモノ置換されているイソプロピルである;または
g)R − ここで
は:インダニル;所望によりベンジルで置換されているピロリジニルまたはピペリジニル部分;所望により(C1−8)アルキルでモノ置換または多置換されている[2.2.1]−または[3.1.1]二環式炭素環部分;アダマンチル;置換アダマンチル;または所望によりヒドロキシ、ヒドロキシメチルまたは、フェニル(所望により(C1−4)アルキル、(C1−4)アルコキシまたはハロゲンでモノ置換または独立してジ置換されている)でモノ置換または独立して多置換されている(C1−8)アルキルである。〕
の化合物の製造法であり、
【0010】
(a)ジメチルホルムアミドの存在下で、式(V)
【化4】

〔式中、互いに独立して、XおよびXはハロゲンであり;Xはハロゲン、OH、O−C(=O)−CH、−O−SO−(C1−8)アルキルまたは−O−SO−(アリール)である。〕
の化合物と、L−プロリンアミドを反応させ、続いて
(b)得られた化合物を単離することなく脱水剤と反応させ、好ましくは所望により続いて
(c)塩基の存在下、得られた化合物を単離せずに適当なアミン、好ましくは式(VI)
【化5】

〔式中、Rは、式(I)の化合物に関して定義の通りである。〕
の化合物と反応させ、そして
(d)得られた遊離形または酸付加塩形の化合物を回収する
ことを含む、方法である。
【0011】
反応(a)は、簡便には不活性雰囲気下で、かつ、ジメチルホルムアミドおよびさらなる不活性、有機溶媒またはこのような溶媒の混合物、好ましくは酢酸イソプロピルまたは酢酸エチルの存在下で行う。温度は、好ましくは約5°から約45℃および最も好ましくは約10°から約35℃である。好ましくは2から20%モル過剰の式(V)を使用する。好ましくは、塩基を添加しない。好ましいのは、XとXの両方がハロゲン、好ましくは塩素または臭素、特に好ましくはXとXが同じであり、そして最も好ましくは、XおよびXが両方とも塩素である、式(V)の化合物である。
【0012】
反応(b)は、簡便には不活性雰囲気下で、かつ、不活性、有機溶媒、好ましくは酢酸イソプロピルとジメチルホルムアミドの混合物の存在下で行う。温度は、好ましくは約15°から約45℃および最も好ましくは約20°から約35℃である。適当な脱水剤は、(ハロアルキレン)ジアルキルアンモニウムハロゲン化物(ここで、アルキルまたはアルキレンは、好ましくは1から4個の炭素原子の直鎖状、炭素鎖、最も好ましくはメチルまたはメチレンであり、そしてハロゲンは、クロロ、ブロモまたはヨード、最も好ましくは、クロロである)である。脱水剤として最も好ましいのは、ビルスマイヤー試薬、すなわち(クロロメチレン)ジメチル塩化アンモニウムである。好ましくは2から20%モル過剰の脱水剤を使用する。続いて、すべての過剰なビルスマイヤー試薬を、少量の水の添加により分解し得る。
【0013】
反応(c)は、簡便には不活性雰囲気下で行い、そこで、(b)の得られた反応産物を、式(VI)のアミン化合物の、不活性、有機溶媒、好ましくは2−ブタノン、アセトン、アセトニトリルまたはジメチルホルムアミド中の溶液または懸濁液に添加する。温度は、好ましくは約5°から約60℃および最も好ましくは約10°から約35℃である。好ましくは触媒量(例えば1から10%、好ましくは約5%)のヨウ化カリウムを使用する。式(VI)のアミンは、5から35%モル過剰、好ましくは10から25%モル過剰で使用する。簡便には、2から10当量、好ましくは約5.5当量で使用する塩基は、アルカリ炭酸塩またはNaOH、好ましくはNaCOまたはKCOおよび最も好ましくはKCOである。
【0014】
回収(d)は、簡便には反応混合物を濾過し、溶媒を減圧下で蒸発させ、粗生成物を、有機または無機塩基を含む溶媒から再結晶することを含む。好ましい態様において、溶媒は、N−塩基、例えば1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、テトラメチルグアニジン、N(C)、N(C)、イソブチルモルホリンまたはテトラメチルピペリジンを含む。
【0015】
式(I)の化合物は、“遊離形”または酸付加塩の形で存在できる。塩形は、既知の方法で“遊離形”から回収でき、逆も可能である。酸付加塩は、例えば薬学的に許容される有機または無機酸のものである。好ましい酸付加塩は、塩酸塩であるが、メタンスルホン酸塩、硫酸塩、リン酸塩、クエン酸塩、乳酸塩および酢酸塩も使用できる。
【0016】
“アルキル”および“アルコキシ”は、いずれも、直鎖または分枝鎖であり、後者の例は、イソプロピルおよびtert−ブチルである。
Rは、好ましくは上記で定義のa)またはc)である。
【0017】
は、好ましくは所望により上記の通りに置換されているピリジニルまたはピリミジニルまたはピペラジニル部分である。R1aは、好ましくは水素である。Rは、好ましくは所望により置換されているフェニルまたはアダマンチルである。Rは、好ましくは非置換フェニルである。Rは、好ましくは上記で定義のアルコキシである。Rは、好ましくは上記で定義の所望により置換されているアルキルであり、mは、好ましくは2である。nは、好ましくは1または2、とりわけ2である。pは、好ましくは2または3、とりわけ3である。
【0018】
ピリジニルは、好ましくはピリジン−2−イルである;それは、好ましくは非置換または5位を、好ましくはモノ置換されている。ピリミジニルは、好ましくはピリミジン−2−イルである。それは、好ましくは非置換または、好ましくは4位をモノ置換されている。ピリジニルおよびピリミジニルの置換基として好ましいのは、ハロゲン、シアノおよびニトロ、とりわけシアノである。
【0019】
フェニルは、置換されているとき、好ましくはモノ置換されている;それは、好ましくはハロゲン、好ましくは塩素、またはメトキシで置換されている。それは、好ましくは2−、4−および/または5位、とりわけ4位で置換されている。
【0020】
(C3−12)シクロアルキルは、好ましくはシクロペンチルまたはシクロヘキシルである。置換されているとき、それは、好ましくはヒドロキシメチルで置換されている。(C2−4)アルコキシは、好ましくは1個または2個の炭素原子のものであり、それはとりわけメトキシである。(C1−8)アルコキシは、好ましくは3個の炭素原子のものであり、それはとりわけイソプロポキシである。ハロゲンは、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素、好ましくはフッ素、塩素または臭素、とりわけ塩素である。(C1−8)アルキルは、好ましくは1から6個、好ましくは1個から4個または3個から5個、とりわけ2個または3個の炭素原子のもの、またはメチルである。(C1−4)アルキルは、好ましくはメチルまたはエチル、とりわけメチルである。(C1−3)ヒドロキシアルキルは、好ましくはヒドロキシメチルである。
【0021】
所望により上記の通りに置換されている[3.1.1]二環式炭素環部分は、好ましくは、所望により6位をでジ置換されている、ビシクロ[3.1.1]ヘプト−2−イルであるか、または、所望により、2位を1個のメチル基で、かつ6位を2個のメチル基でトリ置換されている、ビシクロ[3.1.1]ヘプト−3−イルである。所望により上記の通りに置換されている[2.2.1]二環式炭素環部分は、好ましくはビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イルである。
【0022】
ナフチルは、好ましくは1−ナフチルである。シクロヘキセンは、好ましくはシクロヘキシ−1−エン−l−イルである。アダマンチルは、好ましくは非置換であるか、1個またはそれ以上、例えば2置換基で置換されている、1−または2−アダマンチルである。好ましい置換基は、アルキル、−OR10または−NR1112であり;ここで、R10、R11およびR12は独立して水素、アルキル、C1−8アルカノイル、カルバミル、または−CONR1314であり;ここで、R13およびR14は独立してアルキル、非置換または置換アリールであり、ここで、R13およびR14の1個は、さらに水素であるかまたはR13およびR14が一体となってC2−7アルキレンである。
【0023】
所望により上記の通りに置換されているピロリジニルまたはピペリジニル部分は、好ましくはピロリジン−3−イルまたはピペリジン−4−イルである。それが置換されているとき、それは、好ましくはN−置換である。
【0024】
非常に好ましいのは、
RがR(CH)−であり、そしてRが置換アダマンチルであり;そして
nが0、1、2または3である;
遊離形または酸付加塩形の;式(I)の化合物である。
【0025】
好ましいグループは、アダマンチル上の置換基が、架橋基の末端に結合している、式(I)の化合物である。
【0026】
とりわけ好ましい化合物は、遊離形または酸付加塩形の、式
【化6】

または
【化7】

〔式中、R'はヒドロキシ、C1−7アルコキシ、C1−8アルカノイルオキシ、またはR'''R''''N−C(O)O−であり、ここで、R'''およびR''''は、独立して、C1−7アルキルまたはフェニル(非置換またはC1−7アルキル、C1−7アルコキシ、ハロゲンおよびトリフルオロメチルから選択される置換基で置換されている)であり、R'''はさらに水素であるか;またはR'''およびR''''は、一体となって、C3−6アルキレンであり;そしてR''は水素であるか;またはR'およびR''は、独立してC1−7アルキルである。〕
の化合物である。
【0027】
非常に特に好ましいのは、R'がヒドロキシであり、そしてR''が水素である、遊離形または酸付加塩形の式(IA)の化合物である。この化合物はまたピロリジン、1−[(3−ヒドロキシ−1−アダマンチル)アミノ]アセチル−2−シアノ−、(S)またはLAF237としても既知である。
【0028】
好ましい適当なアミンは、遊離形または酸付加塩形の式(VI)
【化8】

〔好ましいRは、式(I)に関する定義と同じであり、とりわけRはR(CH)−であり、そしてRは、とりわけ上記で定義の置換アダマンチルであり;そして
nは0、1、2または3である。〕
の化合物である。
【0029】
式(I)の化合物は、光学活性異性体または立体異性体の形で存在し、慣用技術で分離および回収できるが、上記の方法は、式(I)の化合物を、N−(N'−置換グリシル)−2(S)−シアノピロリジンの高い(少なくとも95%)エナンチオマー純度で製造することができる。
【0030】
故に、本発明のさらなる目的は、上記の方法により得ることができ、95%から99,9%がN−(N'−置換グリシル)−2(S)−シアノピロリジンであり、そして5%から0,1%がN−(N'−置換グリシル)−2(R)−シアノピロリジンである、とりわけ98%から99,9%がN−(N'−置換グリシル)−2(S)−シアノピロリジンであり、そして2%から0,1%がN−(N'−置換グリシル)−2(R)−シアノピロリジンである、好ましくは98%から99,99%がN−(N'−置換グリシル)−2(S)−シアノピロリジンであり、そして2%から0,01%がN−(N'−置換グリシル)−2(R)−シアノピロリジンである、および非常に好ましくは99%から99,99%がN−(N'−置換グリシル)−2(S)−シアノピロリジンであり、そして1%から0,01%がN−(N'−置換グリシル)−2(R)−シアノピロリジンである、N−(N'−置換グリシル)−2(S)−シアノピロリジンおよびN−(N'−置換グリシル)−2(R)−シアノピロリジンの組成物である。
【0031】
さらなる態様において、本発明は、95%から99,9%がN−(N'−置換グリシル)−2(S)−シアノピロリジンであり、そして5%から0,1%がN−(N'−置換グリシル)−2(R)−シアノピロリジンである、好ましくは95%から99,99%がN−(N'−置換グリシル)−2(S)−シアノピロリジンであり、そして5%から0,01%がN−(N'−置換グリシル)−2(R)−シアノピロリジンである、最も好ましくは98%から99,99%がN−(N'−置換グリシル)−2(S)−シアノピロリジンであり、そして2%から0,01%がN−(N'−置換グリシル)−2(R)−シアノピロリジンである、そして非常に好ましくは99%から99,99%がN−(N'−置換グリシル)−2(S)−シアノピロリジンであり、そして1%から0,01%がN−(N'−置換グリシル)−2(R)−シアノピロリジンである、N−(N'−置換グリシル)−2(S)−シアノピロリジンおよびN−(N'−置換グリシル)−2(R)−シアノピロリジンを含む組成物、例えば医薬組成物に及ぶ。好ましい例は、99%から99,5%がN−(N'−置換グリシル)−2(S)−シアノピロリジンであり、そして1%から0,5%がN−(N'−置換グリシル)−2(R)−シアノピロリジンであるか、または99,2%から99,9%がN−(N'−置換グリシル)−2(S)−シアノピロリジンであり、そして0.8%から0,1%がN−(N'−置換グリシル)−2(R)−シアノピロリジンである、N−(N'−置換グリシル)−2(S)−シアノピロリジンおよびN−(N'−置換グリシル)−2(R)−シアノピロリジンの組成物、例えば医薬組成物である。
【0032】
本発明のさらなる目的は、上記の方法により得ることができる、N−(N'−置換グリシル)−2(S)−シアノピロリジンおよび/またはN−(N'−置換グリシル)−2(R)−シアノピロリジンの組成物である。
【0033】
好ましくは、本発明は、好ましくは上記の方法により得ることができる、N−(N'−置換グリシル)−2(S)−シアノピロリジンおよび/またはN−(N'−置換グリシル)−2(R)−シアノピロリジンを含み、唯一の副産物が無機塩である、組成物である。
【0034】
本発明はまた;
i)
a)1個またはそれ以上の薬学的に許容される賦形剤、および
b)少なくとも1個の上記の方法により得ることができるN−(N'−置換グリシル)−2(S)−シアノピロリジン
を含む、医薬組成物;
【0035】
ii)
a)1個またはそれ以上の薬学的に許容される賦形剤、および
b)少なくとも1個のN−(N'−置換グリシル)−2(S)−シアノピロリジン、および
c)0.00001%から5重量%の少なくとも1個の(ハロアルキレン)ジアルキルアンモニウムハロゲン化物、好ましくはクロロメチレン)ジメチル塩化アンモニウム
を含む、医薬組成物
にも関する。
【0036】
好ましくは、N−(N'−置換グリシル)−2(S)−シアノピロリジンは、上記の方法により得ることができる。
【0037】
好ましいN−(N'−置換グリシル)−2(S)−シアノピロリジンは、上記の方法において好ましい化合物として記載のものである。
【0038】
実施例
実施例1)
ピロリジン、1−[(3−ヒドロキシ−1−アダマンチル)アミノ]アセチル−2−シアノ−、(S)の製造:
工程(a)
メカニカルスターラーを備えた1500ml反応器に、212g 酢酸イソプロピルおよび19.8g ジメチルホルムアミドを入れる。反応器を不活性雰囲気化する(inertized)。IT(内部温度)約15℃で、125g クロロアセチルクロライドを15分以内に添加し、添加収量後、ITを約15℃に調節し、110g L−プロリンアミドの304g ジメチルホルムアミド溶液を1時間以内に添加する。添加漏斗を18g 酢酸イソプロピルで濯ぐ。反応混合物をIT約35℃で、1.5時間温める。
【0039】
工程(b)
約15℃に冷却後、142g ビルスマイヤー試薬を少しずつ添加する。反応混合物を1時間、IT約25℃で攪拌する。最高IT25℃で、4.4g 水を添加する。
【0040】
工程(c)
メカニカルスターラーを備えた4.5l反応器に、733gの炭酸カリウム、194g 3−ヒドロキシアミノアダマンタン、8.0g ヨウ化カリウムおよび880g 2−ブタノンを入れる。懸濁液を約35℃に温める。この温度で、工程b)(粗(S)−1−クロロアセチル−ピロリジン−2−カルボニトリル)の937g 溶液を1.5時間以内に添加する。添加漏斗を20g 2−ブタノンで濯ぐ。さらに1時間攪拌後、懸濁液をIT約70℃で、30分温める。温懸濁液を濾過し、フィルターケーキを3回温331g 2−ブタノンで濯ぐ。濾液をJT(ジャケット温度)約60℃で減圧下(約20mbar)濃縮する。
【0041】
工程(d)
JT約60℃で、8.8g 1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エンおよび44g イソプロパノールを添加し、30分、IT約60℃で攪拌する。得られた懸濁液をIT約40℃に冷却し、JT40℃で、814g t−ブチルメチルエーテルを添加する。懸濁液をIT約20℃に冷却し、その温度で少なくとも2時間攪拌し、次いで約−10℃−0℃に冷却し、1時間攪拌し、濾過する。濾過“ケーキ”を2回168gの冷却した(約−10℃)イソプロパノールとt−ブチルメチルエーテルの1:1(v:v)混合物で洗浄する。粗生成物(247g)を減圧下、JT約55℃で乾燥させる。
【0042】
実施例2:
ピロリジン、1−[(3−ヒドロキシ−1−アダマンチル)アミノ]アセチル−2−シアノ−、(S)の精製:
メカニカルスターラーを備えた750ml反応器に、199gの粗1−[(3−ヒドロキシ−アダマンタ−1−イルアミノ)−アセチル]−ピロリジン−2(S)−カルボニトリル)、800g 2−ブタノンを入れる。混合物を還流温度(JT95℃)に加熱し、15分攪拌する。混合物を温かい(JT75℃)反応器に濾過して入れ、フィルターケーキを80g 2−ブタノンで洗浄する。ITを70℃に調節し、1.6g 2−ブタノンに懸濁した0.18g(1−[(3−ヒドロキシ−アダマンタ−1−イルアミノ)−アセチル]−ピロリジン−2(S)−カルボニトリル)を添加する。得られた懸濁液を30分攪拌し、IT50℃に2時間以内に、続いて30℃に1時間以内に、最後に0℃に1時間以内に冷却し、さらに1時間攪拌する。この後、懸濁液を濾過し、粗生成物を2回60.4g 2−ブタノンおよび55.5g t−ブチルメチルエーテルの冷却した(0℃)混合物で洗浄する。生成物を減圧下、JT約55℃で乾燥させる。融点は148℃である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
N−(N'−置換グリシル)−2−シアノピロリジンを製造する方法であり、少なくとも
(a)ジメチルホルムアミドの存在下で、式(V)
【化1】

〔式中、XおよびXは、互いに独立してハロゲンであり;Xはハロゲン、OH、O−C(=O)−CH、−O−SO−(C1−8)アルキルまたは−O−SO−(アリール)である。〕
の化合物と、L−プロリンアミドを反応させ、続いて
(b)得られた化合物を単離することなく脱水剤と反応させ、所望により続いて
(c)塩基の存在下、得られた化合物を単離せずに適当なアミンと反応させ、そして
(d)得られた遊離形または酸付加塩形の化合物を回収する
ことを含む、方法。
【請求項2】
N−(N'−置換グリシル)−2−シアノピロリジンが、遊離形または酸付加塩形の式(I)
【化2】

〔式中、Rは
a)R1aN(CH) − ここで
は、所望により(C1−4)アルキル、(C1−4)アルコキシ、ハロゲン、トリフルオロメチル、シアノまたはニトロでモノ置換または独立してジ置換されているピリジニルまたはピリミジニル部分;または所望により(C1−4)アルキル、(C1−4)アルコキシまたはハロゲンでモノ置換または独立してジ置換されているフェニルであり;
1aは水素または(C1−8)アルキルであり;そして
mは2または3である;
b)所望により1位を(C1−3)ヒドロキシアルキルでモノ置換されている(C3−12)シクロアルキルである;
c)R(CH) − ここで
は、所望により(C1−4)アルキル、(C1−4)アルコキシ、ハロゲンまたはフェニルチオ(所望により、フェニル環をヒドロキシメチルでモノ置換されている)でモノ置換または独立してジ置換または独立してトリ置換されているフェニルであるか;または(C1−8)アルキル;所望により(C1−8)アルキルでモノ置換または多置換されている[3.1.1]二環式炭素環部分;所望により(C1−4)アルキル、(C1−4)アルコキシまたはハロゲンでモノ置換または独立してジ置換されているピリジニルまたはナフチル部分;シクロヘキセニル;または所望により置換されているアダマンチルであり;そして
nは1から3であるか;または
は、所望により(C1−4)アルキル、(C1−4)アルコキシまたはハロゲンでモノ置換または独立してジ置換されているフェノキシであり;そして
nは2または3である;
d)(R)CH(CH) − ここで
各Rは独立して、所望により(C1−4)アルキル、(C1−4)アルコキシまたはハロゲンでモノ置換または独立してジ置換されているフェニルである;
e)R(CH) − ここで
は2−オキソピロリジニルまたは(C2−4)アルコキシであり、そして
pは2から4である;
f)所望により1位を(C1−3)ヒドロキシアルキルでモノ置換されているイソプロピルである;または
g)R − ここで
は:インダニル;所望によりベンジルで置換されているピロリジニルまたはピペリジニル部分;所望により(C1−8)アルキルでモノ置換または多置換されている[2.2.1]−または[3.1.1]二環式炭素環部分;アダマンチル;置換アダマンチル;または所望によりヒドロキシ、ヒドロキシメチルまたは、フェニル(所望により(C1−4)アルキル、(C1−4)アルコキシまたはハロゲンでモノ置換または独立してジ置換されている)でモノ置換または独立して多置換されている(C1−8)アルキルである。〕
の化合物である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
工程(b)の脱水剤が(ハロアルキレン)ジアルキルアンモニウムハロゲン化物である、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
工程(b)の脱水剤が(クロロメチレン)ジメチルアンモニウムクロリドである、請求項1または2記載の方法。
【請求項5】
工程(c)のアミンが、式(VI)
NR (VI)
〔式中、Rは、請求項2の式(I)に関して定義の通りである。〕
の化合物である、請求項2記載の方法。
【請求項6】
(a)ジメチルホルムアミドの存在下で、式(V)
【化3】

〔式中、Xはハロゲンであり;Xはハロゲン、OH、O−C(=O)−CHX、−O−SO−(C1−8)アルキルまたは−O−SO−(アリール)である。〕
の化合物と、L−プロリンアミドを反応させ、続いて
(b)得られた化合物を単離することなく(クロロメチレン)ジメチルアンモニウムクロリドと反応させ、続いて
(c)塩基の存在下、得られた化合物を単離せずに式(VI)
【化4】

〔式中、Rは、式(I)の化合物に関して定義の通りである。〕
と反応させ、そして
(d)得られた遊離形または酸付加塩形の化合物を回収する
ことを含む、請求項2記載の方法。
【請求項7】
式中、RがR(CH)−であり、そしてRが置換アダマンチルであり;そしてnが0、1、2または3である、請求項6記載の方法。
【請求項8】
請求項1または2記載の方法により得ることができ、95%から99,9%がN−(N'−置換グリシル)−2(S)−シアノピロリジンであり、そして、5%から0,1%がN−(N'−置換グリシル)−2(R)−シアノピロリジンである、とりわけ98%から99,99%がN−(N'−置換グリシル)−2(S)−シアノピロリジンであり、そして2%から0,01%がN−(N'−置換グリシル)−2(R)−シアノピロリジンである、N−(N'−置換グリシル)−2(S)−シアノピロリジンおよびN−(N'−置換グリシル)−2(R)−シアノピロリジンを含む、組成物。
【請求項9】
98%から99,9%がN−(N'−置換グリシル)−2(S)−シアノピロリジンであり、そして2%から0,1%がN−(N'−置換グリシル)−2(R)−シアノピロリジンである、好ましくは98%から99,99%がN−(N'−置換グリシル)−2(S)−シアノピロリジンであり、そして2%から0,01%がN−(N'−置換グリシル)−2(R)−シアノピロリジンである、最も好ましくは99%から99,99%がN−(N'−置換グリシル)−2(S)−シアノピロリジンであり、そして1%から0,01%がN−(N'−置換グリシル)−2(R)−シアノピロリジンである、N−(N'−置換グリシル)−2(S)−シアノピロリジンおよびN−(N'−置換グリシル)−2(R)−シアノピロリジンを含む、組成物。
【請求項10】
請求項1または2記載の方法により得ることができる、N−(N'−置換グリシル)−2(S)−シアノピロリジンおよびN−(N'−置換グリシル)−2(R)−シアノピロリジンを含む、組成物。
【請求項11】
a)1個またはそれ以上の薬学的に許容される賦形剤、および
b)少なくとも1個の請求項1または2記載の方法により得ることができるN−(N'−置換グリシル)−2(S)−シアノピロリジン
を含む、医薬組成物。
【請求項12】
a)1個またはそれ以上の薬学的に許容される賦形剤、および
b)少なくとも1個のN−(N'−置換グリシル)−2(S)−シアノピロリジン、および
c)0.00001%から5重量%の少なくとも1個の(ハロアルキレン)ジアルキルアンモニウムハロゲン化物
を含む、医薬組成物。
【請求項13】
N−(N'−置換グリシル)−2(S)−シアノピロリジンが、請求項1または2記載の方法により得ることができる、請求項12記載の組成物。
【請求項14】
N−(N'−置換グリシル)−2(S)−シアノピロリジンが、遊離形または酸付加塩形の式
【化5】

〔式中、R'はヒドロキシであり、そしてR''は水素である。〕
の化合物である、請求項8から13のいずれかに記載の組成物。

【公表番号】特表2006−523645(P2006−523645A)
【公表日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−505132(P2006−505132)
【出願日】平成16年4月15日(2004.4.15)
【国際出願番号】PCT/EP2004/003980
【国際公開番号】WO2004/092127
【国際公開日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(597011463)ノバルティス アクチエンゲゼルシャフト (942)
【Fターム(参考)】