説明

N−[フェニル(アルキルピペリジン−2−イル)メチル]ベンズアミド誘導体、この調製方法およびこの治療法における使用

本発明は、一般式(I)を有する化合物に関し、式中:Rは水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基、フェニルアルキル基、アルケニル基、またはアルキニル基を表し;Rはアルキル基、シクロアルキル基、またはシクロアルキルアルキル基を表し;Xは水素原子または1個またはそれ以上のハロゲン原子および/またはトリフルオロメチル、アルキルまたはアルコキシ基を表し;Rは水素原子、または1個またはそれ以上のハロゲン原子および/またはトリフルオロメチル基、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、フェニル基、シアノ基、アセチル基、ベンゾイル基、チオアルキル基、アルキルスルホニル基、カルボキシ基またはアルコキシカルボニル基、または式NRまたはSONRまたはCONRを有する基を表し、ここで、RおよびRは各々水素原子またはアルキルまたはシクロアルキル基を表すか、またはNRはピロリジン、ピペリジンまたはモルホリン環を表す。また、本発明は治療における前記化合物の使用に関する。


【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
本発明の化合物は、一般式(I)に対応する
【0002】
【化2】

式中、
は、水素原子、または1個またはそれ以上のフッ素原子で場合によって置換された直鎖もしくは分岐(C−C)アルキル基、または(C−C)シクロアルキル基、または(C−C)シクロアルキル(C−C)アルキル基、または1個もしくは2個のメトキシ基で場合によって置換されたフェニル(C−C)アルキル基、または(C−C)アルケニル基、または(C−C)アルキニル基のいずれかを表し;
は、直鎖もしくは分岐(C−C)アルキルまたは(C−C)シクロアルキル基、または(C−C)シクロアルキル(C−C)アルキル基のいずれかを表し;
Xは、水素原子、またはハロゲン原子およびトリフルオロメチル基、直鎖もしくは分岐(C−C)アルキル基および(C−C)アルコキシ基から選択される1またはそれ以上の置換基のいずれかを表し;
は、水素原子、またはハロゲン原子およびトリフルオロメチル基、直鎖もしくは分岐(C−C)アルキル基、(C−C)シクロアルキル基、(C−C)アルコキシ基、フェニル基、シアノ基、アセチル基、ベンゾイル基、(C−C)チオアルキル基、(C−C)アルキルスルホニル基、カルボキシル基ならびに(C−C)アルコキシカルボニル基から選択される1またはそれ以上の置換基、または、一般式NRまたはSONRまたはCONRで表される基のいずれかを表し、ここで、RおよびRは各々独立して水素原子または直鎖もしくは分岐(C−C)アルキルまたは(C−C)シクロアルキル基を表すか、またはRおよびRは、これらを有する窒素原子とともにピロリジン、ピペリジンまたはモルホリン環を形成する。
【0003】
式(I)の化合物は、Rが2、3、4、5または6位のいずれにあるかに応じて2または3の不斉中心を含む。従ってこれらは鏡像異性体またはジアステレオ異性体の形態で存在しうる。これらの鏡像異性体およびジアステレオ異性体、ならびにラセミ混合物をはじめとするこれらの混合物は、本発明の一部を成す。
【0004】
さらに詳しくは、式(I)の化合物は、ピペリジン置換基のシスまたはトランスの立体化学を有するトレオ((1S、2S)および(1R、2R))またはエリトロ((1S、2R)および(1R、2S))の鏡像異性体またはジアステレオ異性体の形態で、またはこのような異性体の混合物として存在しうる。
【0005】
式(I)の化合物は、塩基もしくは酸付加塩の形態で存在しうる。このような付加塩は、本発明の一部を成す。
【0006】
この塩は、医薬的に許容される酸を用いて調製することが有利であるが、例えば、式(I)の化合物を精製または単離するのに有用なこの他の酸の塩も、本発明の一部を成す。
【0007】
また、式(I)の化合物は、水和物または溶媒和物の形態で、すなわち1またはそれ以上の水分子とのまたは溶媒との会合または化合の形態で存在しうる。このような水和物および溶媒和物もまた、本発明の一部を成す。
【0008】
本発明の化合物は、グリシン輸送体glyt1および/またはglyt2の特異的阻害物質のような特定の活性を示す。
【0009】
が水素原子以外である一般式(I)の化合物は、以下のスキーム1によって示されるプロセスによって調製できる。
【0010】
【化3】

、RおよびXが前記で定義の通りである(Rは水素原子以外)一般式(II)のジアミンと、Yが活性化OH基または塩素原子を表し、Rが前記で定義の通りである一般式(III)の活性化酸または酸塩化物とのカップリングを、当業者に公知の方法を用いて実施する。
【0011】
が3、4、5または6位にある一般式(II)のジアミンは、以下のスキーム2によって示されるプロセスによって調製できる。
【0012】
第1の経路によれば、Rが前記で定義の通りであり、Bocが1,1−ジメチルエトキシカルボニル基を表す一般式(IV)のピペリジンのα−リチオ化を、TMEDA(N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン)の存在下、エーテル溶媒、例えばジエチルエーテル中、−78℃で、s−ブチルリチウムを用いて実施し、形成されたリチオアミンを、Xが前記で定義の通りである一般式(VI)のベンズアルデヒド誘導体とこのまま反応させる。このようにして、一般式(VIII)のアルコールと一般式(IX)の環状カルバメートの混合物が得られる。
【0013】
また、これらの化合物は、以下のように第2の経路によって得ることもできる:一般式(V)のアルデヒドは、文献に記載された方法に従って調製するか、または上記の条件下でリチオ化およびジメチルホルムアルデヒドとの縮合後、一般式(IV)のピペリジンから調製する。次いで、エーテル溶媒、例えばジエチルエーテル中、−30℃から室温の間で、Xが前記で定義の通りであり、Mが金属、例えばリチウムを表す一般式(VII)の誘導体と反応させると、一般式(VIII)および(IX)の化合物が得られる。トレオ/エリトロ配置の一般式(VIII)のアルコールを、トレオ配置の一般式(XI)のアルコールへ以下のように2段階で変換する:アルコールを、塩素系溶剤、例えばジクロロメタン中、室温で、酸化剤、例えばクロロクロム酸ピリジニウムを用いて酸化させ、一般式(X)のケトンとし、次いで、このケトンをエーテル溶媒、例えばテトラヒドロフラン中、−78℃から室温の間で、還元剤、例えばK−Selectride(登録商標)またはL−Selectride(登録商標)(水素化トリ−s−ブチルホウ素カリウムまたはリチウム)を用いて、ジアステレオ選択的に還元し、一般式(XI)のトレオ配置のアルコールとする。
【0014】
次いで、トレオ配置の一般式(XI)のカルバメートを、エーテル溶媒、例えばテトラヒドロフラン中、室温から還流温度の間で、混合水素化物、例えば水素化リチウムアルミニウムの作用によって還元し、一般式(XII)のトレオN−メチルアミノアルコールとする。同じ還元条件下で、一般式(IX)のトレオ環状カルバメートも一般式(XII)のトレオN−メチルアミノアルコール誘導体となる。
【0015】
一般式(IX)のトレオ/エリトロ環状カルバメート混合物は、一般式(XII)のトレオ/エリトロ誘導体の混合物となり、これをシリカゲルでのクロマトグラフィーによって精製および分離すると、純粋なトレオ化合物と純粋なエリトロ化合物が得られる。
【0016】
【化4】

次いで、一般式(XII)のトレオアルコールを、Rがメチル基を表す一般式(II)のトレオ中間体へ2段階で変換する:まずアルコール官能基を、塩素系溶剤、例えばジクロロメタン中、および塩基、例えばトリエチルアミンの存在下、0℃から室温で、塩化メタンスルホニルの作用によって、求電子性基、例えばメタンスルホン酸基へ変換し、次いで、この求電子性基を、アルコール、例えばエタノール中、密閉媒質、例えばオートクレーブ中、−50℃から室温の間で、−50℃の液化アンモニアと反応させる。
【0017】
また、トレオ配置の一般式(XI)のカルバメートを、アルコール、例えばメタノール中で、強塩基、例えば水酸化カリウム水溶液を用いて脱保護すると、一般式(XIII)のトレオアミノアルコールが得られる。同じ加水分解条件下で、一般式(IX)の環状カルバメートは一般式(XIII)のアミノアルコールとなる。
【0018】
次いで、塩基、例えば炭酸カリウムの存在下、極性溶媒、例えばN,N−ジメチルホルムアミド中、室温から100℃の間で、Rが前記で定義の通りであるが、水素原子以外であり、Zがハロゲン原子を表す、式RZのハロゲン化誘導体を用いて、N−アルキル化を実施すると、一般式(XIV)のアルキル化誘導体が得られる。次いで、一般式(XIV)のアルキル化誘導体を、一般式(XII)のアルコールに関して記載されるように一般式(II)の中間体へ変換する。
【0019】
このプロセスを、一般式(IX)のエリトロ誘導体を用いて上記と同様に実施すると、一般式(I)のエリトロ化合物が得られる。
【0020】
が2位にある一般式(II)のジアミンは、以下のスキーム3に示されるプロセスによって調製できる。
【0021】
【化5】

が前記で定義の通りである一般式(XV)のピペリジノンを、還流テトラヒドロフラン中で、一般式(XVI)の有機金属試薬と反応させ、反応媒質をカリウムシアン化物溶液で処理すると、一般式(XVII)のアミノニトリルが得られる。次いで、この生成物を、エーテル溶媒、例えばジエチルエーテルまたはテトラヒドロフラン中、−90℃から−30℃の間で、Xが前記で定義の通りである一般式(VII)のリチウム化誘導体と反応させると、一般式(XVIII)の中間体イミンが得られ、これを、プロトン性溶媒、例えばメタノール中、0℃から室温の間で、還元剤、例えば水素化ホウ素ナトリウムを用いて還元すると一般式(II)のトレオ第一アミンが得られる。
【0022】
が水素原子を表す一般式(I)の化合物は、R
−例えば酸化剤またはルイス酸、例えば三臭化ホウ素を用いてピペリジン環の窒素を脱保護することによって、または水素分解によって、場合によって置換されていてもよいフェニルメチル基、
−または、例えばPd複合体を用いてピペリジン環の窒素を脱保護することによる、アルケニル基、好ましくはアリル基
のいずれかを表す、一般式(I)の化合物から調製でき、Rが水素原子を表す一般式(I)の化合物が得られる。
【0023】
一般式(XV)のピペリジノンは市販されている。
【0024】
さらに、一般式(I)のキラル化合物は、キラルカラムでの高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によるラセミ化合物の分離によって、またはキラル酸、例えば酒石酸、カンファースルホン酸、酒石酸ジベンゾイルまたはN−アセチルロイシンを用いることによる、アルコール系の溶媒中でのジアステレオ異性体の塩の分別再晶出および優先再晶出を介する、一般式(II)のラセミアミンの分割によって得ることができる。
【0025】
一般式(IV)のピペリジン類は、当業者に公知の方法によれば、市販されているかまたは文献に記載されている対応するピペリジン類の窒素を、例えば、Boc基で保護することによって調製する。一般式(IV)のピペリジンからリチオピペリジンを形成する方法および一般式(VI)のベンズアルデヒドとのこの反応は、J.O.C.、55、(1990)、2578から2580頁に記載されているものと同様である。Xが水素原子を表す一般式(VII)のフェニルリチウム化合物は市販されている。この置換誘導体は、Tetrahedron Lett.、57、33、(1996)、5905から5908頁に記載されているものと同様の方法によって調製できる。Rが2、4、5および6位にあるメチル基を表す一般式(V)のアルデヒドは、J.O.C.、58、(1993)、1109から117頁およびJ.Chem.Soc.、Perkin Trans.1、(2002)、1438から1443頁に記載されている。式RZのハロ誘導体は市販されている。一般式(III)の特定の酸および酸塩化物は市販されているか、またはこれらが新規のものである場合には、特許EP−0556672およびUS−3801636ならびにJ.Chem.Soc.、(1927)、25、Chem.Pharm.Bull.、(1992)、1789から1792頁、Aust.J.Chem.、(1984)、1938から1950頁およびJ.O.C.、(1980)、527頁に記載されたものと同様の方法によって得ることができる。
【0026】
以下の実施例は、本発明のいくつかの化合物の調製を例示する。微量元素分析、IRおよびNMRスペクトルならびにキラルカラムでのHPLCにより構造を確認し、化合物のエナンチオマー純度を得る。
【0027】
実施例の表題中の括弧内に示した数字は、後で示す表の最初の列の数字に対応する。
【0028】
化合物名中、ハイフン「−」はこの語句の一部を成し、下線記号「_」は単に改行を示すのに役立つ;この時点で改行が起こらない場合は削除されなくてはならず、通常のハイフンまたはスペースで置き換えてはならない。
【実施例1】
【0029】
(化合物1)
シス−トレオ−2−クロロ−N−[(1,6−ジメチル−2−ピペリジル)−(フェニル)メチル]−3−(トリフルオロメチル)ベンズアミドヒドロクロリド1:1
【0030】
1.1. 1,1−ジメチルエチルシス−[2−ヒドロキシ(フェニル)メチル−6−メチル]ピペリジン−1−カルボキシレート
1g(4.4mmol)の1,1−ジメチルエチルシス−2−ホルミル−6−メチルピペリジン−1−カルボキシレートを、窒素雰囲気下、50ml丸底フラスコに入れた無水テトラヒドロフラン15mlに入れ、この媒質を−78℃に冷却し、テトラヒドロフランに溶かした臭化フェニルマグネシウムの1M溶液4.4ml(4.4mmol)を滴下し、この混合物を2時間攪拌しながら−50℃まで昇温させる。
【0031】
飽和塩化アンモニウム水溶液を用いて加水分解した後、水相を分離し、酢酸エチルで抽出する。合わせた有機相を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮し、残渣を、酢酸エチルとシクロヘキサンの混合物で溶出するシリカゲルでのカラムクロマトグラフィーにより精製する。1.15gのアルコールがトレオ/エリトロジアステレオ異性体混合物の形態で得られる。
【0032】
1.2. 1,1−ジメチルエチルシス−2−メチル−6−(フェニルカルボニル)−ピペリジン−1−カルボキシレート
ジクロロメタン20ml中に懸濁した0.12g(1.5mmol)の酢酸ナトリウム、および1.2g(5.5mmol)のクロロクロム酸ピリジニウムを、100ml丸底フラスコへ逐次入れ、この後ジクロロメタン20mlに溶かした1.15g(3.76mmol)の1,1−ジメチルエチルシス−[2−ヒドロキシ(フェニル)メチル−6−メチル]ピペリジン−1−カルボキシレートの溶液を添加する。この混合物は急速に黒変し、これを室温で4時間攪拌させておく。
【0033】
エチルエーテル30mlを加え、混合物を濾過し、すすぎ、減圧下で濃縮し、残渣を、酢酸エチルとシクロヘキサンの混合物で溶出するシリカゲルでのカラムクロマトグラフィーにより精製する。
【0034】
0.46gのケトンが白色の固体の形態で得られる。
【0035】
融点:92から93℃。
【0036】
1.3. 1,1−ジメチルエチルシス−トレオ−[2−ヒドロキシ(フェニル)−メチル−6−メチル]ピペリジン−1−カルボキシレート
0.46g(1.5mmol)の1,1−ジメチルエチルシス−2−メチル−6−(フェニルカルボニル)ピペリジン−1−カルボキシレートを、100ml丸底フラスコに入れた無水テトラヒドロフラン40mlに入れ、この溶液を−78℃に冷却し、テトラヒドロフランに溶かしたL−Selectride(登録商標)(水素化トリ−s−ブチルホウ素リチウム)の1M溶液4.6ml(4.6mmol)を滴下し、混合物を−78℃で5時間攪拌する。
【0037】
得られた混合物を、冷条件下で3.2mlの水および3.2mlの35%過酸化水素水溶液で徐々に加水分解し、この混合物を2時間攪拌しながら室温に戻す。
【0038】
得られた混合物を水および酢酸エチルで希釈し、相を分離し、水相を酢酸エチルで抽出する。合わせた有機相を洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、蒸発させた後、残渣を、酢酸エチルとシクロヘキサンの混合物で溶出するシリカゲルでのカラムクロマトグラフィーにより精製する。
【0039】
0.38gのトレオ−シス異性体が無色の油状物質の形態で得られる。
【0040】
1.4. シス−トレオ−(1,6−ジメチル−2−ピペリジル)フェニルメタノール
0.24g(6.3mmol)の水素化リチウムアルミニウムを、窒素雰囲気下、25ml二口フラスコに入れた無水テトラヒドロフラン7mlに入れ、この混合物を還流まで加熱し、テトラヒドロフラン3mlに溶かした0.38g(1.2mmol)の1,1−ジメチルエチルシス−トレオ−[2−ヒドロキシ(フェニル)メチル−6−メチル]ピペリジン−1−カルボキシレートの溶液を加え、この混合物を3.5時間還流で維持する。
【0041】
得られた混合物を冷却し、0.1M酒石酸カリウムナトリウム溶液で徐々に加水分解し、この混合物を一晩攪拌する。得られた混合物を濾過し、沈殿をテトラヒドロフランですすぎ、濾液を減圧下で濃縮し、残渣を、ジクロロメタンとメタノールの混合物で溶出するシリカゲルでのカラムクロマトグラフィーにより精製する。
【0042】
0.11gの無色の油状生成物が得られる。
【0043】
1.5. シス−トレオ−(1,6−ジメチル−2−ピペリジル)フェニル−メタンアミン
0.11g(0.52mmol)のシス−トレオ−(1,6−ジメチル−2−ピペリジル)フェニルメタノールおよび0.11ml(0.78mmol)のトリエチルアミンを、窒素雰囲気下、25ml丸底フラスコに入れた無水ジクロロメタン7mlに入れ、この媒質を0℃に冷却し、0.06ml(0.78mmol)の塩化メタンスルホニルを加え、この混合物を2時間かけてゆっくりと室温に戻らせ、減圧下で濃縮する。
【0044】
液化アンモニアを、マグネチックスターラーを備えたオートクレーブに入れ、−50℃に冷却し、無水エタノール30mlに溶解した前記で調製した粗メタンスルホン酸塩溶液を加え、オートクレーブを閉じて混合物を48時間攪拌する。この混合物を丸底フラスコへ移し、濃縮乾固し、残渣を水およびジクロロメタンで希釈し、相を分離し、水相をジクロロメタンで抽出する。合わせた有機相を洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、蒸発させた後、0.1gのアミンを油状化合物の形態で単離し、これを次の工程でさらなる精製を行わずに用いる。
【0045】
1.6. シス−トレオ−2−クロロ−N−[(1,6−ジメチル−2−ピペリジル)−(フェニル)メチル]−3−(トリフルオロメチル)ベンズアミドヒドロクロリド1:1
0.13g(0.58mmol)の2−クロロ−3−トリフルオロメタン−安息香酸、0.11g(0.59mmol)の1−[3−(ジメチルアミン)プロピル]−3−エチルカルボジイミドヒドロクロリドおよびジクロロメタン4mlに溶解した0.03g(0.24mmol)のジメチルアミノピリジンを、25ml丸底フラスコに逐次入れ、ジクロロメタン1mlに溶かした0.10g(0.48mmol)のシス−トレオ−(1,6−ジメチル−2−ピペリジル)フェニルメタン−アミンを加え、この混合物を5時間攪拌させておく。
【0046】
得られた混合物を水で処理し、ジクロロメタンで数回抽出する。有機相を水で、この後1N水酸化ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、溶媒を減圧下で蒸発除去した後、残渣を、ジクロロメタンとメタノールの混合物で溶出するシリカゲルでのカラムクロマトグラフィーにより精製する。
【0047】
0.18gの油状生成物が得られ、これを2−プロパノール中1N塩化水素溶液から塩酸塩の形態で単離する。
【0048】
0.12gの塩酸塩が白色の固体の形態で最終的に単離される。
【0049】
融点:208から209℃。
【実施例2】
【0050】
(化合物9)
シス−トレオ−2−クロロ−N−[(1,4−ジメチル−2−ピペリジル)−(フェニル)メチル]−3−(トリフルオロメチル)ベンズアミドヒドロクロリド1:1
【0051】
2.1. シス−7−メチル−1−フェニルヘキサヒドロ[1,3]オキサゾロ[3,4−a]ピリジン−3−オン
無水ジエチルエーテル130mlに溶解した14.2g(71.2mmol)の1,1−ジメチルエチル4−メチル−ピペリジン−1−カルボキシレートを、アルゴン雰囲気下、1lの丸底フラスコへ入れ、この媒質を−70℃に冷却する。14ml(92.5mmol)のTMEDA(N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン)を加え、続いてシクロヘキサン中s−ブチルリチウムの1.3M溶液70ml(92.5mmol)を添加し、この混合物を0.5時間かけて攪拌しながら30℃まで戻させる。
【0052】
次いで、無水ジエチルエーテル40ml中のベンズアルデヒド(予め蒸留済み)11.33ml(106.8mmol)の溶液を加え、この混合物を12時間かけて攪拌しながら室温まで戻させる。
【0053】
水を用いて加水分解した後、水相を分離し、酢酸エチルで抽出する。合わせた有機相を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮し、残渣を、ジクロロメタンとメタノールの混合物で溶出するシリカゲルでのカラムクロマトグラフィーにより精製する。
【0054】
3.3gの無色の油状物質のシストレオ/エリトロ異性体の混合物が得られる。
【0055】
2.2 シス−トレオ−(1,4−ジメチル−2−ピペリジル)フェニルメタノール
2.71g(71.5mmol)の水素化リチウムアルミニウムを、窒素雰囲気下、500ml二口フラスコに入れた無水テトラヒドロフラン120mlに入れ、この混合物を還流まで加熱し、テトラヒドロフラン40mlに溶かした3.33g(14.3mmol)のシス−7−メチル−1−フェニルヘキサヒドロ[1,3]オキサゾロ[3,4−a]ピリジン−3−オンの溶液を加え、還流を5.5時間継続した。
【0056】
この混合物を冷却し、0.1M酒石酸カリウムナトリウム溶液を用いて徐々に加水分解し、一晩攪拌する。
【0057】
得られた混合物を濾過し、沈殿をテトラヒドロフランですすぎ、濾液を減圧下で濃縮し、残渣を、ジクロロメタンとメタノールの混合物で溶出するシリカゲルでのカラムクロマトグラフィーにより精製する。
【0058】
0.95gの生成物が無色の油状物質の形態で得られる。
【0059】
2.3. シス−トレオ−(1,4−ジメチル−2−ピペリジル)フェニルメタン−アミン
0.95g(4.3mmol)のシス−トレオ−(1,4−ジメチル−2−ピペリジル)フェニルメタノールおよび0.9ml(6.5mmol)のトリエチルアミンを、窒素雰囲気下、10ml丸底フラスコに入れた無水ジクロロメタン40mlに入れ、この媒質を0℃に冷却し、0.5ml(6.5mmol)の塩化メタンスルホニルを加え、この混合物を2時間かけてゆっくりと室温に戻らせ、減圧下で濃縮する。
【0060】
液化アンモニアを、マグネチックスターラーを備えたオートクレーブに入れ、−50℃に冷却し、無水エタノール30mlに溶解した前記で調製した粗メタンスルホン酸塩溶液を加え、オートクレーブを閉じて混合物を48時間攪拌する。この混合物を丸底フラスコへ移し、濃縮乾固し、残渣を、水およびジクロロメタンで希釈し、相を分離し、水相をジクロロメタンで抽出する。合わせた有機相を洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、蒸発させた後、0.8gのアミンが油状化合物の形態で単離され、これを次の工程でさらなる精製を行わずに用いる。
【0061】
2.4. シス−トレオ−2−クロロ−N−[(1,4−ジメチル−2−ピペリジル)−(フェニル)メチル]−3−(トリフルオロメチル)ベンズアミドヒドロクロリド1:1
0.98g(4.38mmol)の2−クロロ−3−トリフルオロメタン−安息香酸、0.85g(4.46mmol)の1−[3−(ジメチルアミン)プロピル]−3−エチルカルボジイミドヒドロクロリドおよびジクロロメタン20mlに溶解した0.22g(1.83mmol)のジメチルアミノピリジンを、50ml丸底フラスコに逐次入れ、ジクロロメタン4mlに溶解した0.8g(3.66mmol)のシス−トレオ−(1,4−ジメチル−2−ピペリジル)フェニルメタンアミンを加え、この混合物を12時間攪拌する。
【0062】
得られた混合物を水で処理し、ジクロロメタンで数回抽出する。有機相を水で、この後1N水酸化ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、溶媒を減圧下で蒸発除去した後、残渣を、ジクロロメタンとメタノールの混合物で溶出するシリカゲルでのカラムクロマトグラフィーにより精製する。
【0063】
0.32gの油状生成物が得られ、これを2−プロパノール中、0.1N塩化水素溶液から塩酸塩の形態で単離する。
【0064】
0.28gの塩酸塩が白色の固体の形態で最終的単離される。
【0065】
融点:209から211℃。
【実施例3】
【0066】
(化合物5)
トランス−トレオ−2−クロロ−N−[(1,5−ジメチル−2−ピペリジル)−(4−フルオロフェニル)メチル]−3−(トリフルオロメチル)ベンズアミドヒドロクロリド1:1
【0067】
1,1−ジメチルエチル4−メチルピペリジン−1−カルボキシレートを1,1−ジメチルエチル5−メチルピペリジン−1−カルボキシレートに、またベンズアルデヒドを4−フルオロ−ベンズアルデヒドに置き換え、実施例2と同じように実施することにより、対応するアルコールとイソキサゾリドンの混合物が得られる。得られたイソキサゾリドンを水素化リチウムアルミニウムで還元するとトランス−トレオアミノアルコール化合物が得られ、2−クロロ−3−トリフルオロ−メタン安息香酸を用いて実施例2の工程2.3および2.4に記載の方法に従ってこれを用いる。
【0068】
融点:220から222℃。
【実施例4】
【0069】
(化合物10)
トレオ−2−クロロ−N−[(1,2−ジメチル−2−ピペリジル)(フェニル)−メチル]−3−(トリフルオロメチル)ベンズアミドヒドロクロリド1:1
【0070】
4.1. 1,2−ジメチルピペリジン−2−カルボニトリル
テトラヒドロフラン中、1.4M臭化メチルマグネシウム溶液22ml(31mmol)を、窒素雰囲気下、コンデンサーおよびマグネチックスターラーを備えた500ml三口フラスコへ入れ、続いてテトラヒドロフラン20mlに溶かした5g(44.2mmol)の1−メチルピペリジン−2−オンの溶液を添加し、この混合物を2時間攪拌しながら還流する。
【0071】
この混合物を放冷し、50mlの2N塩酸溶液を加え、得られた混合物を酢酸エチルで抽出する。次いで、水相を重炭酸ナトリウムでpH6に調整し、2.9g(2.8mmol)のシアン化カリウムを加える。次いで、この混合物を25℃で12時間攪拌する。
【0072】
10%重炭酸ナトリウム溶液を添加し、混合物を酢酸エチルで抽出する。合わせた有機相を洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、蒸発させた後、3gの生成物が油状化合物の形態で得られ、これを次の工程でさらなる精製を行わずに用いる。
【0073】
4.2. 1−(1,2−ジメチル−2−ピペリジル)−1−フェニルメタンアミン
フェニルリチウムの溶液を、マグネチックスターラーを備えた250ml丸底フラスコ中、アルゴン雰囲気下、−78℃でテトラヒドロフラン50mlに溶かした6.8g(43.4mmol)のブロモベンゼンおよびブチルリチウム17.4ml(ヘキサン中2.5M)で出発して調製する。テトラヒドロフラン50m1に溶かした3g(21.71mmol)の1,2−ジメチルピペリジン−2−カルボニトリルの溶液を−78℃で入れ、この混合物(黄色の溶液)を攪拌し、1時間かけて室温に戻させる。水を加え、得られた混合物を酢酸エチルで抽出する。合わせた有機相を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、イミンを減圧下で濃縮する。残渣を、メタノール50mlを入れた250ml丸底フラスコ中に入れる。この混合物を0℃まで冷却し、4g(108mmol)の水素化ホウ素ナトリウムを徐々に加える。混合物の温度を1時間かけて室温に戻させる間、1時間攪拌を継続する。この混合物を減圧下で濃縮し、残渣を水および酢酸エチルに入れる。この相を分離し、水相を酢酸エチルで抽出する。合わせた有機相を洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、蒸発させた後、3.2gの生成物が油状化合物の形態で得られ、これを次の工程でさらなる精製を行わずに用いる。
【0074】
4.3.トレオ−2−クロロ−N−[(1,2−ジメチル−2−ピペリジル)−(フェニル)メチル]−3−(トリフルオロメチル)ベンズアミドヒドロクロリド1:1
0.41g(1.8mmol)の1−(1,2−ジメチル−2−ピペリジル)−1−フェニルメタンアミン、0.3ml(2.25mmol)のトリエチルアミンおよび0.54g(2.25mmol)の2−クロロ−3−(トリフルオロメチル)−ベンゾイルクロリドを、100ml丸底フラスコに入れたジクロロメタン20mlに逐次入れ、この混合物を室温で1時間攪拌する。
【0075】
得られた混合物を水で処理し、ジクロロメタンで数回抽出する。有機相を水で、この後1N水酸化ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、溶媒を減圧下で蒸発除去した後、残渣を、ジクロロメタンとメタノールの混合物で溶出するシリカゲルでのカラムクロマトグラフィーにより精製する。
【0076】
0.36gの油状生成物が得られる。
【0077】
この生成物を、2−プロパノール中、塩化水素0.1N溶液を用いて塩酸塩へ変換する。
【0078】
0.14gの塩酸塩は白色の固体の形態で最終的に単離される。
【0079】
融点:239から241℃。
【0080】
以下表は、いくつかの本発明の化合物の番号の化学構造および物理特性を説明する。
【0081】
「塩」の欄の「HCl」は塩酸塩を意味する。
【0082】
【表1】


【0083】
本発明の化合物を一連の薬理学的試験に付し、これによって治療上有効な物質としてのこれらの価値が実証された。
【0084】
天然のヒト輸送体glyt1を発現するSK−N−MC細胞におけるグリシン輸送の研究
天然のヒト輸送体glyt1を発現するSK−N−MC細胞(ヒト神経上皮細胞)における[14C]グリシンの取り込みを、試験化合物の存在下または不在下で取り込まれた放射能を測定することにより調べる。細胞を、0.02%フィブロネクチンで前処理したプレートで48時間単層として培養する。実験の当日、培地を除去し、細胞をKrebs−HEPESバッファー([4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸)pH7.4で洗浄する。バッファー(対照バッチ)または種々の濃度の試験化合物のいずれかの存在下または10mMグリシン(非特異的取り込みの測定)の存在下、37℃で10分間のプレインキュベーションの後、次いで、10μMの[14C]グリシン(比放射能112mCi/mmol)を加える。インキュベーションを37℃で10分間継続し、pH7.4 Krebs−HEPESバッファーで2回洗浄して反応をクエンチする。次いで、液体シンチラント100μlを添加し、1時間攪拌した後、細胞によって取り込まれた放射能を推定する。計数はMicrobeta Tri−Lux(商標)カウンターで実施する。化合物の有効性は、対照バッチと10mMのグリシンを入れたバッチによって取り込まれた放射能の差によって定まるグリシンの特異的取り込みを50%減少させる化合物の濃度であるIC50によって決定する。
【0085】
この試験において最も活性のある本発明の化合物のIC50は、約0.001から10μMである。
【0086】
いくつかの化合物の個別の結果は次の通りである(μMで表したIC50):
化合物1 0.51
化合物5 0.1
化合物9 0.09
化合物10 0.008
【0087】
マウス皮質ホモジネートにおける[14C]グリシンの取り込みに対する化合物の阻害活性についてのex−vivo研究
実験の当日に、体重20から25gの雄OF1 Iffa Credoマウスに、調べる化合物の用量を増加させて、経口投与(蒸留水中Tween/メトセル(Methocel)(商標)0.5%溶液中で、試験分子を乳鉢の中で粉砕した調製物)または腹膜内投与(分子の溶解度に従って、試験分子を生理食塩水に溶解したもの、またはTween/メトセルの0.5%水溶液中で、乳鉢の中で粉砕した調製物)する。対照群はビヒクルで処置する。mg/kgで表した用量、投与経路および処置時間を、調べる分子の関数として求める。投与から所定の時間後に動物を断頭により安楽死させた後、各動物の皮質を迅速に氷上に取り出し、計量し、4℃で保存するか、−80℃で凍結する(いずれの場合もサンプルは最大1日間保存する)。各サンプルを、10ml/組織1gの割合のpH7.4 Krebs−HEPESバッファー中でホモジナイズする。各ホモジネート20μlを10mMのL−アラニンおよびバッファーの存在下、室温で10分間インキュベートする。非特異的取り込みは、グリシン10mMを対照群へ添加することにより測定する。真空濾過により反応をクエンチし、保持される放射能を、Microbeta Tri−lux(商標)カウンターを用いて計数することによって固体シンチレーションにより推定する。[14C]グリシンの取り込みの阻害物質は、各ホモジネートに取り込まれる放射性リガンドの量を減少させる。化合物の活性は、対照群と比較して[14C]グリシンの取り込みの50%を阻害する用量である、このED50によって評価する。
【0088】
この試験で最も強力な本発明の化合物のED50は、腹膜内または経口投与で0.1から5mg/kgである。
【0089】
マウス脊髄ホモジネートにおけるグリシン輸送の研究
輸送体glyt2による[14C]グリシンの取り込みを、マウス脊髄ホモジネートにおいて試験化合物の存在下または不在下で取り込まれる放射能を測定することにより調べる。
【0090】
動物(実験当日の体重20から25gの雄OF1 Iffa Credoマウス)を安楽死させた後、各動物の脊髄を迅速に採取し、計量し、氷上で保存する。サンプルを25ml/組織1gの割合のpH7.4 Krebs−HEPESバッファー([4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸)中でホモジナイズする。
【0091】
50μlのホモジネートを、pH7.4 Krebs−HEPESバッファーと種々の濃度の試験化合物の存在下、または非特異的取り込みを測定するためグリシン10mMの存在下、25℃で10分間プレインキュベートする。次いで、[14C]グリシン(比放射能=112mCi/mmol)を25℃で10分かけて添加して最終濃度を10μMとする。真空濾過により反応をクエンチし、放射能を、Microbeta Tri−lux(商標)カウンターで計数することによって固体シンチレーションにより推定する。化合物の有効性は、対照バッチと10mMのグリシンを入れたバッチによって取り込まれた放射能の差によって定まるグリシンの特異的取り込みを50%減少させることが可能な濃度であるIC50によって決定する。
【0092】
この試験において最も活性のある本発明の化合物のIC50は、約0.001から10μMである。
【0093】
いくつかの化合物の個別の結果は次の通りである(μMで表したIC50):
化合物1 0.12
化合物9 0.07
【0094】
マウス脊髄ホモジネートにおける[14C]グリシンの取り込みに対する化合物の阻害活性についてのex−vivo研究
実験の当日に、体重20から25gの雄OF1 Iffa Credoマウスへ、調べる化合物の用量を増加させて、経口投与(蒸留水中Tween/メトセル(商標)0.5%溶液中で、試験化合物を乳鉢の中で粉砕した調製物)または腹膜内投与(生理食塩水に溶解した試験化合物、または蒸留水中Tween/メトセル(商標)0.5%溶液中で、乳鉢の中で粉砕した試験化合物)する。対照群はビヒクルで処置する。mg/kgで表した用量、投与経路、処置時間および安楽死の時間を、調べる化合物の関数として求める。
【0095】
投与から所定の時間後に動物を断頭により安楽死させた後、脊髄を迅速に採取し、計量し、ガラスシンチレーションフラスコに入れ、砕氷中で保存するか、−80℃で凍結する(いずれの場合もサンプルは最大1日間保存する)。各サンプルを、25ml/組織1gの割合のpH7.4 Krebs−HEPESバッファー中でホモジナイズする。各ホモジネート50μlをバッファーの存在下、室温で10分間インキュベートする。
【0096】
非特異的取り込みは、グリシン10mMを対照群へ添加することにより求める。
【0097】
真空濾過によって反応をクエンチし、放射能を、Microbeta Tri−lux(商標)カウンターで計数することによって固体シンチレーションにより推定する。
【0098】
14C]グリシンの取り込みの阻害物質は、各ホモジネートに取り込まれる放射性リガンドの量を減少させる。化合物の活性は、対照群と比較して[14C]グリシンの取り込みの50%を阻害するのに有効な用量である、このED50によって評価する。
【0099】
この試験で最も活性な本発明の化合物のED50値は、腹膜内または経口投与で1から20mg/kgである。
【0100】
本発明の化合物に対して実施した試験の結果により、これらが、脳に存在するグリシン輸送体glyt1および脳または脊髄に存在するglyt2の阻害物質であることが示された。
【0101】
従って、本発明に記載の化合物を医薬、詳しくは、グリシン輸送体glyt1および/またはglyt2を阻害する医薬を調製するために使用できる。
【0102】
従って、この別の側面によれば、本発明の主題は式(I)の化合物、または医薬的に許容される酸を含むこの付加塩、または式(I)の化合物の水和物または溶媒和物を含む医薬である。
【0103】
本発明の化合物は、特に、認知症、精神病、詳しくは、統合失調症(欠損型および生産型)および神経抑制薬により誘発される急性または慢性錐体外路症状に関連する行動障害のため、多様な形の不安神経症、パニック発作、恐怖症、強迫性障害の治療のため、心因性鬱病をはじめとする、多様な形の鬱病を治療するため、アルコール中毒もしくはアルコールを断つことに起因する障害、性行動障害、摂食障害を治療するため、また偏頭痛を治療するために使用できる。
【0104】
さらに、本発明の化合物は、リウマチおよび急性の脊髄症状における有痛性筋拘縮を治療するため、髄質性または大脳性の痙性拘縮を治療するため、軽度から中程度の急性および亜急性疼痛の対症療法のため、激痛および/または慢性疼痛、神経性疼痛および難治性疼痛を治療するため、パーキンソン病および神経変性が原因のまたは神経抑制薬によって誘発されるパーキンソン病様症状を治療するため、原発性部分癲癇および続発性全般癲癇の単純症状または複合症状、混合型およびこの他の癲癇症候群を別の抗癲癇薬治療に加えて、または単独療法において治療するため、睡眠時無呼吸の治療のため、ならびに神経保護のために使用できる。
【0105】
また、塩基または医薬的に許容される塩もしくは溶媒和物の形態で、および必要に応じて適した賦形剤を含む混合物としての本発明の少なくとも1種の化合物の有効用量を含む薬剤組成物も本発明の主題である。このような賦形剤は、製薬形態および所望の投与様式に従って選択する。
【0106】
従って、本発明の薬剤組成物は、経口、舌下、皮下、筋肉内、静脈内、局所、気管内、鼻腔内、経皮、直腸または眼内投与を対象とできる。
【0107】
単位投与形は、例えば、錠剤、ゲルカプセル剤、顆粒剤、散剤、経口または注射用溶液または懸濁液、経皮パッチまたは坐剤であり得る。局所投与にはポマード、ローション剤および点眼剤を想定してもよい。
【0108】
例として、本発明の化合物の錠剤の形態での投与単位形には以下の成分を含めることができる:
本発明の化合物 50.0mg
マンニトール 223.75mg
クロスカラメロース(croscaramellose)ナトリウム 6.0mg
コーンスターチ 15.0mg
ヒドロキシプロピルメチルセルロース 2.25mg
ステアリン酸マグネシウム 3.0mg
前記単位形は、剤形に従い、体重1kgあたり0.01から20mgの有効成分の毎日投与を可能にするよう投与される。
【0109】
より高用量または低用量が適切である特別な場合もあり得、このような用量も本発明の関連から逸脱しない。常套手段に従って、各患者に対して適切な投与量は、投与様式、体重およびこの患者の応答によって医師が決定する。
【0110】
この別の側面によれば、本発明はまた、患者への、有効量の本発明の化合物、またはこの医薬的に許容される塩または水和物または溶媒和物の投与を含む、前記の病状の治療方法に関する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)に対応する化合物
【化1】

(式中、
は、水素原子、または1個またはそれ以上のフッ素原子で場合によって置換された直鎖もしくは分岐(C−C)アルキル基、または(C−C)シクロアルキル基、または(C−C)シクロアルキル(C−C)アルキル基、または1個もしくは2個のメトキシ基で場合によって置換されたフェニル(C−C)アルキル基、または(C−C)アルケニル基、または(C−C)アルキニル基のいずれかを表し;
は、直鎖もしくは分岐(C−C)アルキルまたは(C−C)シクロアルキル基、または(C−C)シクロアルキル(C−C)アルキル基のいずれかを表し;
Xは、水素原子、またはハロゲン原子およびトリフルオロメチル基、直鎖もしくは分岐(C−C)アルキル基および(C−C)アルコキシ基から選択される1またはそれ以上の置換基のいずれかを表し;
は、水素原子、またはハロゲン原子およびトリフルオロメチル基、直鎖もしくは分岐(C−C)アルキル基、(C−C)シクロアルキル基、(C−C)アルコキシ基、フェニル基、シアノ基、アセチル基、ベンゾイル基、(C−C)チオアルキル基、(C−C)アルキルスルホニル基、カルボキシル基ならびに(C−C)アルコキシカルボニル基から選択される1またはそれ以上の置換基、または、一般式NRまたはSONRまたはCONRで表される基のいずれかを表し、ここで、RおよびRは各々独立して水素原子または直鎖もしくは分岐(C−C)アルキルまたは(C−C)シクロアルキル基を表すか、またはRおよびRは、これらを有する窒素原子とともにピロリジン、ピペリジンまたはモルホリン環を形成する;)
であって、遊離塩基または酸付加塩、水和物または溶媒和物の形態の化合物。
【請求項2】
トレオ配置であり、遊離塩基または酸付加塩、水和物または溶媒和物の形態であることを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
(1S、2S)または(1R、2R)配置であり、遊離塩基または酸付加塩、水和物または溶媒和物の形態であることを特徴とする、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
エリトロ配置であり、遊離塩基または酸付加塩、水和物または溶媒和物の形態であることを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
(1S、2R)または(1R、2S)配置であり;遊離塩基または酸付加塩、水和物または溶媒和物の形態であることを特徴とする、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の化合物、または医薬的に許容される酸とこの化合物の付加塩、または式(I)の化合物の水和物もしくは溶媒和物を含むことを特徴とする、医薬。
【請求項7】
請求項1から5のいずれか一項に記載の化合物、またはこの化合物の医薬的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和物と、少なくとも1種の医薬的に許容される賦形剤とを含むことを特徴とする、薬剤組成物。
【請求項8】
認知症、精神病に関連する行動障害、多様な形の不安神経症、パニック発作、恐怖症、強迫性障害、多様な形の鬱病、アルコール中毒もしくはアルコールを断つことに起因する障害、性行動障害、摂食障害および偏頭痛を治療するための医薬を製造するための、請求項1から5の一項に記載の式(I)の化合物の使用。
【請求項9】
拘縮、疼痛、パーキンソン病およびパーキンソン病様症状、癲癇、混合型およびこの他の癲癇症候群を別の抗癲癇薬治療に加えてまたは単独療法で、ならびに睡眠時無呼吸を治療するための、また神経保護のための医薬を製造するための、請求項1から5の一項に記載の式(I)の化合物の使用。

【公表番号】特表2007−508360(P2007−508360A)
【公表日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−534799(P2006−534799)
【出願日】平成16年10月15日(2004.10.15)
【国際出願番号】PCT/FR2004/002642
【国際公開番号】WO2005/037782
【国際公開日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(504456798)サノフイ−アベンテイス (433)
【Fターム(参考)】