説明

NEP阻害剤、内因性エンドセリン産生系阻害剤およびAT1受容体アンタゴニスト阻害剤を含有する医薬組成物

中性エンドペプチダーゼ少なくとも1種、内因性エンドセリン産生系阻害剤少なくとも1種およびAT1受容体アンタゴニスト少なくとも1種の相乗的な組み合わせを投与することに関する、心臓血管疾患、特に本態性高血圧、肺高血圧および/またはうっ血性心不全のための新規の組み合わせ治療を記載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1種の中性エンドペプチダーゼ(=NEP)阻害剤、少なくとも1種の内因性エンドセリン産生系阻害剤および少なくとも1種のAT1受容体アンタゴニストの相乗的な組み合わせによる、心臓血管疾患、特に本態性高血圧、肺高血圧および/または鬱血性心疾患のための新規の組み合わせ治療に関する。従って本発明は、NEP阻害剤、内因性エンドセリン産生系およびAT1受容体アンタゴニストを含有する新規の医薬組成物、ならびに哺乳動物およびヒトにおける心臓血管疾患の治療または予防における該医薬組成物の使用に関する。
【0002】
心臓血管、特に高血圧性心臓血管疾患の性質は多元的である。組み合わせ治療は、血液量、血管収縮、および交感神経系およびレニン−アンギオテンシン−アルドステロン系(=RAAS)活性の衝突を含む、血圧の上昇において重要な役割を果たす多様な病態生理学的な要因に対処することが示されており(たとえばM.R.Weir、Americal Journal of Hypertension 11(1998)、第163〜169頁を参照のこと)、これは潜在的に血圧の顕著な低下および標的器官の損傷に関するリスクの低下の両方をもたらす。固定された低用量の組み合わせ薬剤を使用することにより、それぞれの成分に関して単独治療によって必要とされる用量よりも低い用量もまた提供され、このことによって用量に依存する副作用の危険および関連したコンプライアンスの問題が低減される。
【0003】
刊行物EP0254032A2から、NEP阻害剤は、単独治療としてのアンギオテンシン変換酵素(=ACE)阻害剤が比較的効果が低い条件下で血圧を低下することができることが公知である。さらに該刊行物は、NEP阻害剤が高血圧の治療において使用されるその他の薬剤、たとえばACE阻害剤と組み合わせると、これらの薬剤の効果を増強することができることを開示している。従ってNEP阻害剤とACE阻害剤との両方を含有する医薬組成物が記載されている。
【0004】
刊行物WO03/059345A1は、特に心臓血管疾患の治療または予防のために、特定のAT1受容体アンタゴニスト、バルサルタンおよびNEP阻害剤を含有する医薬組成物を提供している。
【0005】
心臓血管疾患、特に本態性高血圧、肺高血圧および/または鬱血性心疾患の治療または予防におけるNEP阻害化合物の薬効は今日では広く認識されているものの、その作用プロファイルはなお、一定の固有の欠点を有している。心拍出量の減少および末梢抵抗の増大の結果である鬱血性心疾患では、肺循環および心臓自体中で血液の逆圧現象が生じる。結果として、心耳および心室の領域で心筋の壁張力の増加が生じる。そのような状況で、心臓は内分泌器として機能し、かつ分泌物は特に血流への心房性ナトリウムペプチド(=ANP)として機能する。その顕著な血管拡張作用およびナトリウム排泄増加作用/利尿作用に基づいて、ANPは、末梢抵抗の低下および循環血液量の減少の両方をもたらす。その結果、前負荷および後負荷が著しく減少する。このことは、内因性の血管保護メカニズムを構成する。この肯定的な内因性のメカニズムは、ANPが血漿中で極めて短い半減期を有するにすぎない点で限定されている。この理由は、ホルモンがNEPにより極めて迅速に分解されるからである。従って、薬理学的なNEP阻害は、ANPレベルを上昇させ、かつこれによりこの心臓血管保護メカニズムを促進する。
【0006】
鬱血性心疾患では、疾患と関連して心拍出量が低減することに基づいて、末梢血管抵抗における反射増加が生じる。その結果、心筋は増大した後負荷に対してポンプ輸送を開始しなくてはならない。このことは、心臓に対する負担をさらに増大する悪循環となり、かつ状況をさらに悪化させることになる。末梢抵抗の増大は、特に血管作動性ペプチドのエンドセリンにより媒介される。エンドセリン(=ET)は、目下知られているもっとも強力な内因性血管収縮物質であり、かつエンドセリン変換酵素(=ECE)が関与して前駆体の大エンドセリン(=bigET)から形成される。NEPは、ANPの分解のみではなく、エンドセリンの分解にも関与する。
【0007】
これらの理由により、内因性エンドセリン産生系を阻害することができる化合物と、またはNEPと内因性エンドセリン産生系とを二重に阻害する活性を有する化合物と、NEP−阻害活性を有する化合物との組み合わせは、本態性高血圧、肺高血圧および/または鬱血性心疾患のような心臓血管疾患の治療において、付加価値を提供するように思える。内因性エンドセリン産生系が阻害される結果として、エンドセリンの形成が阻止され、ひいては末梢抵抗における増大が抑制され、その結果、心筋に対する負担が軽減される。ANP分解酵素であるNEPが阻害される結果として、より高いANPレベルおよびANP作用の持続時間を延長することができる。このことは、ANP媒介される作用の内因性心臓保護メカニズム作用の強化につながる。しかしながら、NEPはETの分解に関与しうるので、純粋なNEP阻害は、ANPレベルにおける所望の増加に加えて、ETレベルにおける不所望の増加にもつながる。この理由により、NEPおよび内因性エンドセリン産生系の二重に作用する阻害による混合されたプロフィールは特に有利であると見なされる。というのも、これによりナトリウム排出増加作用/利尿作用を有するANP(NEP遮断による)の分解がいずれも防止され、かつ同時に、ETの形成が阻害されるからである。結果として、純粋なNEP阻害剤の付随的な副作用(エンドセリンレベルの増加)はもはや生じない。
【0008】
NEPおよび内因性エンドセリン産生系に対して二重に作用する組み合わされた阻害効果を有する化合物、つまりベンズアゼピン−、ベンゾオキサアゼピン−およびベンゾチアゼピン−N−酢酸誘導体が、刊行物EP0733642A1から公知である。EP0733642A1の構造的な範囲に該当する化合物のさらに有利な薬理学的特性は、刊行物EP0830863A1、WO00/48601A1およびWO01/03699A1から公知である。
【0009】
NEPおよび内因性エンドセリン産生系に対して組み合わされた阻害効果を有するホスホン酸置換されたベンズアゼピノン−N−酢酸誘導体は、刊行物EP0916679A1に開示されている。
【0010】
たとえば心臓血管状態または疾患の予防および/または治療のために有用な、アミドメチル−置換された1−(カルボキシアルキル)−シクロペンチルカルボニルアミノ−ベンズアゼピン−N−酢酸誘導体は、刊行物WO2005/030795A1に開示されている。
【0011】
刊行物WO02/094176A2から、刊行物EP0733642A1および刊行物EP0916679A1に開示されている化合物を含む特定の化合物が、メタロプロテアーゼIGS5の阻害により内因性エンドセリン産生系を阻害することが公知である。メタロプロテアーゼIGS5は、ヒト可溶性エンドペプチダーゼ(=hSEP)としても公知であり、かつたとえば刊行物WO02/0941176A2に記載されている。さらに、WO02/094176A2は、特に心臓血管疾患を予防または治療するための、組み合わされたNEP/hSEP阻害活性化合物の使用を開示している。
【0012】
本発明の課題は、心臓血管疾患、特に本態性高血圧、肺高血圧および/または鬱血性心臓疾患のための、効率が強化され、かつ有利な安全性プロフィールを有する新規の組み合わせ治療を提供することである。
【0013】
意外なことに、少なくとも1種のNEP阻害剤、少なくとも1種の内因性エンドセリン産生系阻害剤および付加的に少なくとも1種のAT1受容体アンタゴニストの組み合わせは、本態性高血圧、肺高血圧および/または鬱血性心臓疾患のような心臓血管疾患において、さらに強化された効率、および有利な安全プロフィールを提供することが判明した。
【0014】
従って本発明は、第一の態様では、それぞれ
a)第一の活性薬剤としての少なくとも1種のNEP阻害剤、
b)第二の活性薬剤としての少なくとも1種の内因性エンドセリン産生系阻害剤および
c)第三の活性薬剤としての少なくとも1種のAT1受容体アンタゴニスト
を薬理学的な有効量で含有している医薬組成物に関する。
【0015】
本発明による医薬組成物はさらに、および有利には通常の製薬学的に認容される添加剤および/またはキャリアを含有していてよい。本発明による医薬組成物はさらに、アセチルサリチル酸を含有していてよい。
【0016】
内因性エンドセリン産生系の阻害剤は、ECE阻害剤、hSEP阻害剤およびECEとhSEPとを阻害することができる二重に作用する化合物からなる群から選択することができる。ECEおよびhSEPを阻害することができる二重に作用する化合物が有利である。
【0017】
本発明による医薬組成物中で、少なくとも1種のNEP阻害剤(a)と、少なくとも1種の内因性エンドセリン産生系阻害剤(b)とのサブコンビネーションは、有利にはNEPと、内因性エンドセリン産生系とを阻害することができる二重に作用する化合物により実現することができる。NEPおよびhSEPを阻害することができる二重に作用する化合物は有利である。特に有利であるのは、一般式I
【化1】

[式中、
1は、水素であるか、または生体不安定性のカルボン酸エステルを形成する基であり、
Aは、サブグループa
【化2】

(式中、
2は、水素であるか、または生体不安定性のカルボン酸エステルを形成する基であり、かつ
3は、フェニル−C1〜C4−アルキル基であり、該基はフェニル環においてC1〜C4−アルキル、C1〜C4−アルコキシまたはハロゲンにより置換されていてもよく、またはナフチル−C1〜C4−アルキル基である)またはb
【化3】

(式中、
4は、水素であるか、または生体不安定性のホスホン酸エステルを形成する基であり、かつ
5は、水素であるか、または生体不安定性のホスホン酸エステルを形成する基である)またはc
【化4】

(式中、
6は、水素であるか、または生体不安定性のカルボン酸エステルを形成する基であり、
7は、水素であるか、C1〜C4−アルキルであるか、またはC1〜C4−ヒドロキシアルキルであり、このヒドロキシル基はC2〜C4−アルカノイルまたはアミノ酸残基によりエステル化されていてもよく、かつ
8は、C1〜C4−アルキルであるか、C1〜C4−アルコキシ−C1〜C4−アルキルであるか、C1〜C4−ヒドロキシアルキル(これは第二のヒドロキシル基およびそれぞれC2〜C4−アルカノイルまたはアミノ酸残基によりエステル化されていてもよい複数のヒドロキシル基により置換されていてもよい)であるか、(C0〜C4−アルキル)2アミノ−C1〜C6−アルキルであるか、C3〜C7−シクロアルキルであるか、C3〜C7−シクロアルキル−C1〜C4−アルキルであるか、フェニル−C1〜C4−アルキルであり、このフェニル基はC1〜C4−アルキル、C1〜C4−アルコキシおよび/またはハロゲンにより1置換または2置換されていてもよく、ナフチル−C1〜C4−アルキルであるか、C3〜C6−オキソアルキルであるか、フェニルカルボニルメチルであり、このフェニル基はC1〜C4−アルキル、C1〜C4−アルコキシおよび/またはハロゲンにより1置換または2置換されていてもよく、または2−オキソアゼパニルであるか、または
7およびR8は一緒になってC4〜C7−アルキレンであり、このメチレン基はカルボニル、窒素、酸素および/または硫黄により1〜2回置換されていてもよく、かつC2〜C4−アルカノイルまたはアミノ酸残基によりエステル化されていてもよいヒドロキシにより1回置換されていてもよいか、C1〜C4−アルキルであるか、C1〜C4−ヒドロキシアルキル(その際、ヒドロキシル基はC2〜C4−アルカノイルまたはアミノ酸残基によりエステル化されていてもよい)であるか、フェニルまたはベンジルである)から選択される基を表す]の二重に作用することができる化合物および/または式Iの酸の生理学的に認容される塩および/または式Icの化合物の生理学的に認容される酸付加塩である。
【0018】
式Iの化合物中の置換基がC1〜C4−アルキル基であるか、またはC1〜C4−アルキル基を有している場合、該アルキル基は直鎖状であっても、分枝鎖状であってもよい。式Iの化合物中で生体不安定性のエステルを形成する基が、低級アルキル基であるか、または低級アルキル基を有している場合、該アルキル基は直鎖状であっても、分枝鎖状であってもよく、かつ通常は1〜4個の炭素原子を有する。置換基が、ハロゲン、フッ素、塩素または臭素を有している場合、有利にフッ素または塩素を有している場合が特に有利である。置換基がC2〜C4−アルカノイルを有している場合、これは直鎖状であるか、または分枝鎖状であってよい。アセチルはC2〜C4−アルカノイルとして有利である。
【0019】
置換基が生体不安定性のエステルを形成する基である場合、これらは通常、活性薬剤の原理のプロドラッグである。プロドラッグは、それ自体不活性であるが、1もしくは複数の活性な代謝物質へと変換される治療剤である。プロドラッグは、親薬剤分子の有用性に対する若干の障壁を克服するために使用される薬剤分子の生体可逆性の誘導体である。これらの障壁は、可溶性、透過性、安定性、前全身性代謝および標的の限定を含むが、これらに限定されるものではない(たとえば、Medicinal Chemistry:Principles and Practice、1994年、ISBN0−85186−494−5、F.D.King編、第215頁;J.Stella、"Prodrugs as therapeutics"、Expert Opin.Ther.Patents、14(3)、第277〜第280頁、2004年;P.Ettmayer等、"Lessons learned from marketed and investigational prodrugs"、J.Med.Chem.、47、第2393〜2404頁、2004年)。
【0020】
式Iの遊離酸または部分エステルの適切な生理学的に適合性の塩は、そのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩またはアンモニウム塩、たとえばナトリウム塩もしくはカルシウム塩または生理学的に適合性の、薬理学的に中性の有機アミン、たとえばジエチルアミンまたはt−ブチルアミンを含む。
【0021】
一般式Ia
【化5】

[式中、R1、R2およびR3は上記のものを表す]の化合物および式Iaの酸の生理学的に適合性の塩は有利である。式Iaの化合物の有利な塩はたとえば刊行物WO03/059939A1に開示されており、これをここで引用することによって取り入れることとする。式Iaの化合物は2つのキラルな炭素原子、つまり、環構造(=3位)の3位に存在し、アミド側鎖を有する炭素原子と、基R3(=2′位)を有するアミド側鎖の炭素原子を有する。従って該化合物は複数の光学活性な立体異性体として、またはラセミ体として存在していてよい。本発明によれば、式Iaのラセミ体混合物および異性体純粋な化合物を使用することができる。
【0022】
式Iaの化合物は場合によりエステル化されたジカルボン酸誘導体である。投与形に依存して、生体不安定性のモノエステル、特に式中でR2が生体不安定性のエステルを形成する基であり、かつR1が水素である化合物、またはジカルボン酸が有利であり、ジカルボン酸は特に静脈内投与のために適切である。インビボで生理学的な条件下に分解し、式Iaの化合物の生物学的に利用可能な誘導体を放出することができる基は、生体不安定性のカルボン酸エステルR1およびR2を形成する基として適切である。この適切な例は、C1〜C4−アルキル基、特にメチル、エチル、n−プロピルおよびイソプロピル;C1〜C4−アルキルオキシ−C1〜C4−アルキルオキシ−C1〜C4−アルキル基、特にメトキシエトキシメチル;C3〜C7−シクロアルキル基、特にシクロヘキシル;C3〜C7−シクロアルキル−C1〜C4−アルキル基、特にシクロプロピルメチル;N,N−ジ−(C0〜C4−アルキル)アミノ−C1〜C6−アルキル基;フェニルまたはフェニル−C1〜C4−アルキル基(場合によりフェニル環においてハロゲン、C1〜C4−アルキルまたはC1〜C4−アルコキシにより、または2つの隣接する炭素原子に結合したC1〜C4−アルキレン鎖により置換されている);ジオキソラニルメチル基(場合によりC1〜C4−アルキルによりジオキソラン環において置換されている);C2〜C6−アルカノイルオキシ−C1〜C4−アルキル基(場合によりオキシ−C1〜C4−アルキル基においてC1〜C4−アルキルにより置換されている);複エステル、たとえば1−[[(C1〜C4−アルキル)カルボニル]オキシ]C1〜C4−アルキルエステル、たとえば(RS)−1−[[(イソプロピル)カルボニル]オキシ]エチルまたは(RS)−1−[[(エチル)カルボニル]オキシ]−2−メチルプロピル(製造に関してはたとえばF.W.Sum等、Bioorg.Med.Chem.Lett.9(1999)、第1921〜1926頁またはY.Yoshimura等、The Journal of Antibiotics 39/9(1986)第1329〜1342頁);カルボン酸エステル、たとえば1−[[(C4〜C7−シクロアルキルオキシ)カルボニル]オキシ]C1〜C4−アルキルエステル、有利には(RS)−1−[[(シクロヘキシルオキシ)−カルボニルオキシ]オキシ]エチル(=シレキセチル(cilexetil);その製造に関してはたとえばK.Kubo等、J.Med.Chem.36、(1993)第2343〜2349頁、以下では「Kubo等」として引用する))または2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル−C1〜C4−アルキルエステル(場合によりジオキソラン環中に二重結合を有する、有利には5−メチル−2−オキソ−1,3−ジオキソレン−4−イル−メチル(=メドキソミル(medoxomil)、その製造に関してはたとえば「Kubo等」を参照のこと)または2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル−メチル(=(メチル)エチレンカーボネート)。生体不安定性のエステルを形成する基が場合により置換されたフェニル−C1〜C4−アルキル基である場合、該基は1〜3個、有利には1個の炭素原子を有するアルキレン鎖を有していてよく、かつ有利には場合により置換されたベンジル、特に2−クロロベンジルまたは4−クロロベンジルを表す。生体不安定性のエステルを形成する基が、場合により置換されたフェニル基である場合、該基のフェニル環は低級アルキレン鎖により置換されており、これは3〜4個、有利には3個の炭素原子を有しており、かつ特にインダニルである。生体不安定性のエステルを形成する基が場合により置換されたC2〜C6−アルカノイルオキシ−C1〜C4−アルキル基である場合、C2〜C6−アルカノイル基は直鎖状であっても、分枝鎖状であってもよい。
【0023】
1は、有利には水素、C1〜C4−アルキル、p−メトキシベンジル、N,N−ジ−(C0〜C4−アルキル)アミノ−C1〜C6−アルキル、(RS)−1−[[(イソプロピル)カルボニル]オキシ]エチル、(RS)−1−[[(エチル)カルボニル]−オキシ]−2−メチルプロピル、(RS)−1−[[(シクロヘキシルオキシ)カルボニル]オキシ]エチル、5−メチル−2−オキソ−1,3−ジオキソレン−4−イル−メチル、2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル−メチルまたは(RS)−1−[[(エトキシ)カルボニル]オキシ]−エチルを表す。
【0024】
2は、有利には水素、エチル、メトキシエトキシメチル、(RS)−1−[[(イソプロピル)カルボニル]オキシ]エチル、(RS)−1−[[(エチル)カルボニル]オキシ]−2−メチルプロピル、(RS)−1−[[(シクロヘキシルオキシ)カルボニル]オキシ]エチル、5−メチル−2−オキソ−1,3−ジオキソレン−4−イル−メチル、2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル−メチルまたは(RS)−1−[[(エトキシ)カルボニル]オキソ]エチルを表す。
【0025】
さらに有利であるのは、式II
【化6】

の2−[1−(1−カルボキシメチル−2−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[b]アゼピン−3−イルカルバモイル)−シクロペンチルメチル]−4−フェニル−酪酸エチルエステル(あるいは3−[1−{2′−(エトキシカルボニル)}−4′−フェニルブチル]−シクロペンタン−1−カルボニルアミノ}−2,3,4,5−テトラヒドロ−2−オキソ−1H−ベンズアゼピン−1−酢酸とも称する)、式III
【化7】

の2−[1−(1−カルボキシメチル−2−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[b]アゼピン−3−イルカルバモイル)−シクロペンチルメチル]−4−ナフタレン−1−イル−酪酸エチルエステル(あるいは3−[1−{2−(エトキシカルボニル)−4−(1−ナフチル)ブチル]シクロペンチル}カルボニル}アミノ]−2−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンズアゼピン−1−イル}酢酸とも称する)、式IV
【化8】

の2−[1−(1−カルボキシメチル−2−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[b]アゼピン−3−イルカルバモイル)−シクロペンチルメチル]−4−フェニル−酪酸、式V
【化9】

の2−[1−(1−カルボキシメチル−2−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[b]アゼピン−3−イルカルバモイル)−シクロペンチルメチル]−4−ナフタレン−1−イル−酪酸、および式II、III、IVおよび/またはVの酸の生理学的に適合性の塩からなる群から選択される化合物である。式II、III、IVおよびVの化合物は特に、その3S,2′R形において適切である。最も有利であるのは、その3S,2′R形での、「ダグルトリル(daglutril)」または「SLV306」としても公知の式IIの化合物である。式Iaの化合物は、たとえば刊行物EP0733642A1から公知であり、該刊行物をここで引用することにより取り入れるものとする。該化合物は、該刊行物に開示されているか、言及されている製造方法により、または前記の製造方法と同様に製造することができる。
【0026】
さらに、一般式Ib
【化10】

[式中、R1、R4およびR5は、上記のものを表す]の化合物または式Ibの酸の生理学的に適合性の塩を、NEPと、内因性エンドセリン産生系とを抑制することができる、二重に作用する化合物として使用することができる。式Ibの化合物は、たとえば刊行物EP0916679A1から公知であり、これをここで引用することにより取り入れるものとする。該化合物は、該刊行物に開示されているか、または言及されている製造方法により、または前記の製造方法と同様に製造することができる。
【0027】
式Ibの化合物中の生体不安定性のカルボン酸エステルを形成する適切な基R1は、上記の式Iaの化合物に関して特定されているものである。
【0028】
生体不安定性のホスホン酸エステルを形成する基として適切な基R4およびR5は、インビボで生理学的な条件下に除去されてそれぞれのホスホン酸官能基を放出することができる基である。たとえばこの目的のために適切な基は、低級アルキル基、C2〜C6−アルカノイルオキシメチル基(場合によりオキシメチル基において、低級アルキルにより置換されている)、またはフェニルまたはそのフェニル環が場合により低級アルキル、低級アルコキシにより、または2つの隣接する炭素原子に結合している低級アルキレン鎖によりモノ置換もしくはポリ置換されているフェニル−低級アルキル基である。生体不安定性のエステルを形成する基R4および/またはR5が低級アルキルであるか、または低級アルキルを有する場合、該アルキルは分枝鎖状であっても、非分枝鎖状であってもよく、かつ1〜4個の炭素原子を有していてよい。R4および/またはR5が場合により置換されたアルカノイルオキシメチル基である場合、これは有利には2〜6個、好ましくは3〜5個の炭素原子を有する分枝鎖状のアルカノイルオキシ基を有していてよく、かつたとえばピバロイルオキシメチル基(=t−ブチルカルボニルオキシメチル基)であってよい。R4および/またはR5が場合により置換されたフェニル低級アルキル基である場合、該アルキル基は1〜3個、有利には1個の炭素原子を有するアルキレン鎖を有していてよい。フェニル環が低級アルキレン鎖により置換されている場合、該アルキレン鎖は、3〜4個、特に3個の炭素原子を有していてよく、かつ置換されているフェニル環は特にインダニルである。
【0029】
式Ibの化合物は、キラルな炭素原子、つまりベンゾアゼピン構造の3位にアミド側鎖を有する炭素原子を有している。従って該化合物は2つの光学活性立体異性体の形で、またはラセミ体として存在していてよい。本発明は、式Iの化合物のラセミ体混合物および異性体純粋な化合物の両方を含む。式Ibの化合物中のR4およびR5が、水素ではなく、かつそれぞれが異なった意味を有している場合、ホスホン酸基のリン原子はキラルであってもよい。本発明はまたキラルなリン原子の結果として形成される、式Ibの異性体混合物および異性体純粋な化合物にも関する。
【0030】
本発明により式Ibの化合物を使用する場合、(3−{[1−(ベンジルオキシ−エトキシ−ホスホリルメチル)−シクロペンタンカルボニル]−アミノ}−2−オキソ−2,3,4,5−テトラ−ヒドロ−ベンゾ[b]アゼピン−1−イル)酢酸t−ブチルエステルおよびイソ酪酸1−[[1−(1−カルボキシメチル−2−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[b]アゼピン−3−イルカルバモイル)−シクロペンチル−メチル]−(1−イソブチリルオキシ−エトキシ)−ホスフィノイルオキシ]−エチルエステルが有利である。前記の化合物はいずれも、キラルな炭素原子における立体化学(上記を参照のこと)が「S」である、つまり「(3S)」立体配置である場合に特に有利である。式Ibの化合物は、たとえば刊行物EP0916679A1から公知であり、かつ該刊行物に開示されているか、または言及されている製造方法により、または前記の製造方法と同様に製造することができる。
【0031】
一般式Ic
【化11】

[式中、R1、R6、R7およびR8は、上記のものを表す]の化合物および式Icの酸の生理学的に適合性の塩および/または式Icの化合物の生理学的に適合性の酸付加塩もまた、本発明による薬理組成物中でNEPおよび内因性エンドテリン産生系を阻害することができる、二重に作用する化合物として使用するために有利である。式Icの化合物は、たとえば刊行物WO2005/030795A1から公知であり、該刊行物をここで引用することにより取り入れるものとする。該化合物は該刊行物に開示されているか、または言及されている製造方法により、または前記の製造方法と同様に製造することができる。
【0032】
式Icの化合物中で、置換基R7および/またはR8が塩基性の基、特に窒素を有している場合、式Icの化合物は、酸付加塩の形で存在していてもよい。式Icの化合物の生理学的に適合性の酸付加塩は、無機酸、たとえば硫酸、リン酸、ハロゲン化水素酸、有利には塩酸との、または有機酸、たとえば低級脂肪族モノカルボン酸、ジカルボン酸またはトリカルボン酸、たとえばマレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、またはスルホン酸、たとえば低級アルカンスルホン酸、たとえばメタンスルホン酸との通常の塩である。
【0033】
式Icの化合物中で生体不安定性のカルボン酸エステルを形成する適切な基R1は、上記の式Iaの化合物に関して特定された基である。式Icの化合物中で生体不安定性のカルボン酸エステルを形成する適切な基R6は、上記の式Iaの化合物中の基R2に関して特定された基である。
【0034】
7は有利には、水素、メチル、エチル、2−ヒドロキシエチルまたは3−ヒドロキシプロピルを表し、ヒドロキシル基はそれぞれ場合によりC2〜C4−アルカノイルまたはアミノ酸残基によりエステル化されていてもよい。
【0035】
8が(C0〜C4−アルキル)2アミノ−C1〜C6−アルキルを表す場合、1もしくは2のC0〜C4−アルキル基は相互に無関係に存在していてよい。より具体的には、「(C0〜C4−アルキル)2アミノ−C1〜C6−アルキル」は、明確に「(C02−アルキルアミノ−C1〜C6−アルキル」、「(C0)(C1〜C4)−アルキルアミノ−C1〜C6−アルキル」および「(C1〜C42−アルキルアミノ−C1〜C6−アルキル」を表す。「(C02−アルキルアミノ−C1〜C6−アルキル」は、C1〜C6−アルキルまたはC1〜C6−アルキレンに結合している非置換の第一級(=−NH2)アミノ基を表し、「(C0)(C1〜C4)−アルキルアミノ−C1〜C6−アルキル」は、(C1〜C4)−アルキルによりモノ置換されており、かつC1〜C6−アルキルまたはC1〜C6−アルキレンに結合している第二級アミノ基を表し、「(C1〜C42−アルキルアミノ−C1〜C6−アルキル」は、(C1〜C4)−アルキルによりジ置換されており、かつC1〜C6−アルキルまたはC1〜C6−アルキレンに結合した第三級アミノ基を表す。R8は有利にはイソプロピル、メトキシエチル、2−ヒドロキシエチルまたは3−ヒドロキシプロピル(ヒドロキシル基はそれぞれ場合によりC2〜C4−アルカノイルまたはアミノ酸残基によりエステル化されていてもよい)、3−アセチルオキシ−n−プロピル、シクロプロピルメチル、2−メトキシベンジル、4−メトキシベンジル、4−メトキシフェニルエチル、2,4−ジメトキシベンジル、1−ナフチルメチル、3−オキソ−1,1−ジメチルブチル、フェニル−2−オキソエチル、2−(4−メトキシフェニル)−2−オキソエチル、3−(2−オキソアゼパニル)、(C0〜C4−アルキル)2アミノ−C1〜C6−アルキル、特にジメチルアミノ−n−プロピル、(メチル)アミノエチル、アミノ−n−プロピル、アミノ−n−ブチルまたはアミノ−n−ペンチルである。
【0036】
7およびR8が一緒になって、そのメチレン基が場合により置き換えられているか、または置換されているC4〜C7−アルキレンである場合、そのつど、モルホリン、ピペリジン、4−ケトピペリジン、4−ヒドロキシピペリジン、場合によりヒドロキシル基に存在するC2〜C4−アルカノイルまたはアミノ酸残基であり、ピペラジンまたはピロリジンが有利である。
【0037】
式Icの化合物中で、ヒドロキシル基がアミノ酸残基によりエステル化されている場合、これらのアミノ酸残基は天然もしくは合成の、α−アミノ酸またはβ−アミノ酸から誘導されていてもよい。使用することができる適切なアミノ酸は、たとえばアラニン、2−アミノヘキサノン酸(=ノルロイシン)、2−アミノペンタノン酸(=ノルバリン)、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、3,4−ジヒドロキシフェニルアラニン(=ドーパ)、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、オルニチン(=2,5−ジアミノ吉草酸)、5−オキソ−2−ピロリジンカルボン酸(=ピログルタミン酸)、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、チロニン、トリプトファン、チロシンおよびバリンからなる群から選択される。アラニン、アスパラギン、グルタミン、グリシン、イソロイシン、ロイシン、リジン、オルニチン、フェニルアラニン、プロリンおよびバリンから誘導されるアミノ酸残基が有利である。
【0038】
式Icの化合物は、2つのキラルな炭素原子、つまりベンズアゼピン構造の3位にアミド側鎖を有する炭素原子(=Cb*)と、基「−COOR6」を有する炭素原子(=Ca*)とを有する。従って該化合物は全部で4つの立体異性体で存在しうる。本発明は、立体異性体の混合物およびエナンチオマーの両方を含み、かつ式Icの異性体純粋な化合物も含む。式Icの異性体純粋な化合物が有利である。特に有利であるのは、ベンズアゼピン構造の3位にアミド側鎖を有する炭素原子が、S−立体配置である式Icの化合物である。基「−COOR6」を有するキラルな炭素原子「*a」に関して、本発明の文脈における本発明により有利な式Iの化合物の立体配置は、前記の立体配置の呼称「rel1」である。これはキラル中心である「*a」における有利な立体配置「rel1」がおそらく「S」立体配置と同様であるという公知の立体配置の適切な化合物の同様の観察から得ることができる。
【0039】
式Icの特に有利な化合物は、
2−{[1−({[1−(カルボキシメチル)−2−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1−ベンズアゼピン−3−イル]アミノ}−カルボニル)シクロペンチル]メチル}−4−{イソプロピル(メチル)アミノ]−4−オキソブタノン酸、
2−{[1−({[1−(カルボキシメチル)−2−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1−ベンズアゼピン−3−イル]アミノ}−カルボニル)シクロペンチル]メチル}−4−(ジメチルアミノ)−4−オキソブタノン酸、
2−{[1−({[1−(カルボキシメチル)−2−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1−ベンズアゼピン−3−イル]アミノ}カルボニル)シクロペンチル]メチル}−4−(ジエチルアミノ)−4−オキソブタノン酸、
2−{[1−({[1−(カルボキシメチル)−2−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1−ベンズアゼピン−3−イル]アミノ}カルボニル)シクロペンチル]メチル}−4−[(2−ヒドロキシエチル)(メチル)アミノ]−4−オキソブタノン酸、
2−{[1−({[1−(カルボキシメチル)−2−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1−ベンズアゼピン−3−イル]アミノ}カルボニル)シクロペンチル]メチル}−4−[(3−ヒドロキシプロピル)(メチル)アミノ]−4−オキソブタノン酸、
2−{[1−({[1−(カルボキシメチル)−2−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1−ベンズアゼピン−3−イル]アミノ}−カルボニル)シクロペンチル]メチル}−4−(4−ヒドロキシピペリジン−1−イル)−4−オキソブタノン酸、
2−{[1−({[1−(カルボキシメチル)−2−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1−ベンズアゼピン−3−イル]アミノ}−カルボニル)シクロペンチル]メチル}−4−オキソ−4−[4−(L−バリルオキシ)ピペリジン−1−イル]ブタノン酸、
2−{[1−({[1−(カルボキシメチル)−2−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1−ベンズアゼピン−3−イル]アミノ}−カルボニル)シクロペンチル]メチル}−4−モルホリン−4−イル−4−オキソブタノン酸、
2−{[1−({[1−(カルボキシメチル)−2−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1−ベンズアゼピン−3−イル]アミノ}−カルボニル)シクロペンチル]メチル}−4−オキソ−4−(4−オキソピペリジン−1−イル)ブタノン酸、
4−[ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノ]−2−{[1−({[1−(カルボキシメチル)−2−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1−ベンズアゼピン−3−イル]アミノ}カルボニル)シクロペンチル]メチル}−4−オキソブタノン酸、
2−{[1−({[1−(カルボキシメチル)−2−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1−ベンズアゼピン−3−イル]アミノ}カルボニル)シクロペンチル]メチル}−4−{エチル[3−(エチルアミノ)プロピル]アミノ}−4−オキソブタノン酸、
2−{[1−({[1−(カルボキシメチル)−2−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1−ベンズアゼピン−3−イル]アミノ}−カルボニル)シクロペンチル]メチル}−4−[[2−(ジメチルアミノ)エチル](メチル)アミノ]−4−オキソブタノン酸、
4−[(3−アミノプロピル)(エチル)アミノ]−2−{[1−({[1−(カルボキシメチル)−2−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1−ベンズアゼピン−3−イル]アミノ}カルボニル)シクロペンチル]メチル}−4−オキソブタノン酸、
2−{[1−({[1−(カルボキシメチル)−2−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1−ベンズアゼピン−3−イル]アミノ}−カルボニル)シクロペンチル]メチル}−4−{メチル[2−(メチルアミノ)エチル]アミノ}−4−オキソブタノン酸、
4−[(4−アミノブチル)(メチル)アミノ]−2−{[1−({[1−(カルボキシメチル)−2−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1−ベンズアゼピン−3−イル]アミノ}カルボニル)シクロペンチル]メチル}−4−オキソブタノン酸、
4−[(4−アミノブチル)(エチル)アミノ]−2−{[1−({[1−(カルボキシメチル)−2−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1−ベンズアゼピン−3−イル]アミノ}カルボニル)シクロペンチル]メチル}−4−オキソブタノン酸、
2−{[1−({[1−(カルボキシメチル)−2−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1−ベンズアゼピン−3−イル]アミノ}−カルボニル)シクロペンチル]メチル}−4−{メチル[3−(メチルアミノ)プロピル]アミノ}−4−オキソブタノン酸および
4−[(5−アミノペンチル)(メチル)アミノ]−2−{[1−({[1−(カルボキシメチル)−2−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1−ベンズアゼピン−3−イル]アミノ}カルボニル)シクロペンチル]メチル}−4−オキソブタノン酸およびこれらの生体不安定性のエステルおよび式Icのこれらの化合物の酸の生理学的に適合性の塩および/または式Icのこれらの化合物の生理学的に適合性の酸付加塩からなる群から選択される。
【0040】
AT1受容体アンタゴニストは、哺乳動物およびヒトにおいてアンギオテンシンII受容体のAT1サブタイプを選択的にブロックすることができる薬理学的に活性な薬剤化合物であり、たとえば抗高血圧特性を有することが公知である。本発明により使用することができるAT1受容体アンタゴニストは、アビテサルタン、ベンジルロサルタン、カンデサルタン、エリサルタン、エンブサルタン、エノルタソサルタン、エプロサルタン、フォンサルタン、フォラサルタン、グリシルロサルタン、イルベサルタン、イソテオリン、ロサルタン、ミルファサルタン、オルメサルタン、オポミサルタン、プラトサルタン、リピサルタン、サプリサルタン、サララシン、サルメシン、タソサルタン、テルミサルタン、バルサルタン、ゾラサルタン;キッセイKRH−94、ルソファルマコLR−B/057、ルソファルマコLR−B/081、ルソファルマコLR−B/087、サールSC−52458、サンキョーCS−866、タケダTAK−536、ウリアックUR−7247、A−81282、A−81988、BIBR−363、BIBS−39、BISB−222、BMS−180560、BMS−184698、CGP−38560A、CGP−48369、CGP−49870、CGP−63170、CI−996、CV−11194、DA−2079、DE−3489、DMP−811、DuP−167、DuP−532、GA−0056、E−4177、EMD−66397、EMD−73495、EXP−063、EXP−929、EXP−3174、EXP−6155、EXP−6803、EXP−7711、EXP−9270、FK−739、HN−65021、HR−720、ICI−D6888、ICI−D7155、ICI−D8731、KRI−1177、KT3−671、KW−3433、L−158809、L−158978、L−159282、L−159689、L−159874、L−161177、L−162154、L−162234、L−162441、L−163007、L−163017、LY−235656、LY−285434、LY−301875、LY−302289、LY−315995、ME−3221、PD−123177、PD−123319、PD−150304、RG−13647、RWL−38970、RWJ−46458、S−8307、S−8308、SL−91.0102、U−96849、U−97018、UP−269−6、UP−275−22、WAY−126227、WK−1492.2K、WK−1360、X−6803、XH−148、XR−510、YM−358、YM−31472、ZD−6888、ZD−7155およびZD−8731またはこれらの生理学的に適合性の塩、溶媒和物、プロドラッグまたはエステルからなる群から選択されていてよく、これらは自体公知である。
【0041】
有利なAT1受容体アンタゴニストは、アビエサルタン、ベンジルロサルタン、カンデサルタン、エリサルタン、エンブサルタン、エノルタソサルタン、エプロサルタン、フォンサルタン、フォラサルタン、グリシルロサルタン、イルベサルタン、ロサルタン、ミルファサルタン、オルメサルタン、オポミサルタン、プラトサルタン、リピサルタン、サプリサルタン、タソサルタン、テルミサルタン、バルサルタン、ゾラサルタン;キッセイKRH−94、ルソファルマコLR−B/081、サールSC−52458、サンキョーCS−866、タケダTAK−536、ウリアックUR−7247またはこれらの生理学的に適合性の塩、溶媒和物、プロドラッグまたはエステルからなる群から選択されている。カンデサルタン、エプロサルタンおよびロサルタンはさらに有利なAT1受容体アンタゴニストである。エプロサルタンは通常、そのメシレートの形で使用される。ロサルタンは通常、ロサルタンカリウムの形で使用される。カンデサルタンは通常、カンデサルタンシレキセチルの形で使用される。
【0042】
心臓血管の状態または疾患の治療および/または予防において有利に使用することができるその他の医薬組成物は、
a)第一の活性薬剤として、少なくとも1種のNEP阻害剤、
b)第二の活性薬剤として、少なくとも1種の内因性エンドセリン産生系阻害剤および
d)第三の別の活性薬剤として、少なくとも1種の古典的心臓血管薬
をそれぞれ、薬理学的に有効な量で含有している。
【0043】
適切な古典的心臓血管薬は、非選択的なα−アドレナリン受容体アンタゴニスト、たとえばトラゾリンまたはフェノキシベンズアミン、選択的なα−アドレナリン受容愛アンタゴニスト、たとえばドキサゾシン、プラゾシン、テトラゾシンまたはウラピジル、β−アドレナリン受容体アンタゴニスト、たとえばアセブトロール、アルプレノロール、アテノロール、ブタキソロール、ビソプロロール、ブプラノロール、カラゾロール、カルテオロール、セリプロロール、メピンドロール、メチプラノロール、メトプロロール、ナドロール、オキシプレノロール、ペンブトロール、ピンドロール、プロプラノロール、ソタロールまたはチモロール、α−およびβ−アドレナリン受容体の混合されたアンタゴニスト、たとえばカルベジロールまたはラベトロール、ガングリオンブロッカー、たとえばレセルピンまたはグアネチジン、α−2−アドレナリン受容体アゴニスト(中心に作用するα−2−アドレナリン受容体アゴニストを含む)、たとえばクロニジン、グアンファシン、グアナベンズメチルドーパおよびモキソニジン、レニン−阻害剤、たとえばアルスキレン、ACE−阻害剤、たとえばベナゼプリル、カプトプリル、キラザプリル、エナラプリル、フォシノプリル、イミダプリル、リシノプリル、モエキシプリル、キナプリル、ペリドプリル、ラミプリル、スピラプリルまたはトランドラプリル、混合された、または選択的なエンドセリン受容体アンタゴニスト、たとえばアトラセンタン、ボセンタン、クラゾセンタン、ダルセンタン、シタキセンタン、テゾセンタン、BMS−193884またはJ−104132、直接的な血管拡張剤、たとえばジアゾキシド、ジヒドララジン、ヒドララジンまたはミノキシジル、混合されたACE/NEP−阻害剤、たとえばオマパトリレート、ECE−阻害剤、たとえばFR−901533、PD−069185、CGS−26303、CGS−34043、CGS−35066、CGS−30084、CGS−35066、SM−19712、Ro0677447、選択的なNEP−阻害剤、バソプレシンアンタゴニスト、アルドステロン受容体アンタゴニスト、たとえばエプレレノン、アンギオテンシンワクチン、およびウロテンシンII受容体アンタゴニストからなる群から選択することができる。有利には、古典的な心臓血管薬は、2−[1−(1−カルボキシメチル−2−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[b]アゼピン−3−イルカルバモイル)−シクロペンチルメチル]−4−フェニル−酪酸エチルエステル、2−[1−(1−カルボキシメチル−2−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[b]アゼピン−3−イルカルバモイル)−シクロペンチルメチル]−4−ナフタレン−1−イル−酪酸エチルエステル、2−[1−(1−カルボキシメチル−2−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[b]アゼピン−3−イルカルバモイル)−シクロペンチルメチル]−4−フェニル−酪酸、2−[1−(1−カルボキシメチル−2−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[b]アゼピン−3−イルカルバモイル)−シクロペンチルメチル]−4−ナフタレン−1−イル−酪酸、およびこれらの生理学的に適合性の塩からなる群から選択された薬剤と一緒に投与してもよい。さらに有利には古典的心臓血管薬はダグルトリルと一緒に投与してもよい。
【0044】
本発明による医薬組成物は、自体公知の方法により製造することができ、従って、薬用量の薬理活性薬剤を、単独で、または1種類以上の製薬学的に認容性の添加剤および/またはキャリアーと組み合わせて含有する、哺乳動物またはヒトに腸内投与、たとえば経口または直腸投与、または非経口投与するために適切な製剤として、特に腸内または非経口投与のために適切な製剤として得ることができる。腸内または非経口投与のための医薬組成物は、たとえば単位服用量の形で、たとえばコーティング錠、錠剤、カプセルまたは坐剤およびまたアンプルの形である。これらは自体公知の方法により、たとえば通例の混合、造粒、被覆、可溶化または凍結乾燥法を使用して製造される。典型的な経口製剤は、コーティング錠、錠剤、カプセル、シロップ剤、エリキシル剤および懸濁剤を含む。カプセルは活性薬剤をたとえば粉末、顆粒、ペレット、小球またはマイクロタブレットの形で含有していてよい。たとえば本発明による医薬組成物は、約0.1%〜90%、有利には約1%〜約80%の活性薬剤を含有し、残分は製薬学的に認容性の添加剤および/またはキャリアーであってよい。従って経口投与のための医薬組成物は、活性化合物と固体の付形剤とを合し、所望の場合には得られた混合物を造粒し、かつ所望の場合には、もしくは必要であれば、該混合物または顆粒を、適切な添加剤を添加した後に錠剤またはコーティング錠コアへと加工することにより得られる。一般的な注射用製剤は液剤および懸濁剤を含む。
【0045】
本発明による医薬組成物の1実施態様では、活性薬剤(a)、(b)および(c)は、1つの合された単位服用量の形で、たとえば1つの錠剤またはカプセルとして、つまり物理的に組み合わせて得られ、かつ一緒に投与することができる。このような組み合わされた単位服用量の形では、異なった活性薬剤(a)、(b)および(c)を相互に分離して、たとえば前記の錠剤中で異なった層により、たとえば従来技術において公知の不活性な中間層により分離して、または前記カプセル中で異なったコンパートメントにより(すなわちコンパートメント化して)分離することができる。相応する活性薬剤またはその製薬学的に認容性の塩は、その水和物の形で使用してもよく、または結晶化のために使用される別の溶剤を含有していてもよい。単位服用量の形は、固定された組み合わせであってもよい。単位服用量の形、特に固定された活性薬剤(a)、(b)および(c)の固定された組み合わせは、この実施態様の有利な代替法である。ダグルトリルとエプロサルタン、ダグルトリルとカンデサルタン、またはダグルトリルとロサルタンとを含有する固定された組み合わせは、本発明の有利な実施態様である。
【0046】
別の実施態様では、活性薬剤(a)、(b)および(c)は、2つ以上の別々の単位服用量の形として、たとえば2つ以上の錠剤またはカプセルとして得られ、かつ投与されてもよく、その際、該錠剤またはカプセルは、相互に物理的に分離されている。2つ以上の別々の単位服用量の形は、同時に投与しても、段階的に(別々に)、たとえば1つ1つを任意の順序で連続して投与してもよい。従って活性薬剤は同時でも、または一日のうち異なった時間に分けても、任意の順序で投与することができ、その際、最適な投与規制は通常、医師の処方により決定される。NEPと内因性エンドセリン産生系とを阻害することができる二重に作用する化合物を使用して活性薬剤(a)および(b)の組み合わせを実施する場合、医薬組成物中の活性薬剤[(a)+(b)]および(c)は、有利には2つの別々の剤形として、通常は組み合わされた使用にとって相補的な、もしくはバランスがとれた形で、たとえば2つの異なった錠剤またはカプセルとして、通常はさらに製薬学的に認容性の添加剤および/またはキャリアーを含有するか、または単一のカプセルの異なったコンパートメント中に存在していてよい。従ってこの実施態様では、少なくとも1種のAT1受容体アンタゴニストが単位1回服用量の形で物理的に相互の活性薬剤から分離して存在している。
【0047】
上記の製剤において使用するために一般的な製薬学的に認容性の添加剤および/またはキャリアーは、たとえば次のものである:糖類、たとえばラクトース、スクロース、マンニトールおよびソルビトール;デンプン、たとえばトウモロコシデンプン、タピオカデンプンおよびジャガイモデンプン;セルロースおよびセルロース誘導体、たとえばカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロールおよびメチルセルロース;リン酸カルシウム、たとえばリン酸二カルシウムおよびリン酸三カルシウム;硫酸ナトリウム;硫酸カルシウム、ポリビニルピロリドン;ポリビニルアルコール;ステアリン酸;アルカリ土類金属ステアリン酸塩、たとえばステアリン酸マグネシウムおよびステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、植物油、たとえば落花生油、綿実油、胡麻油、オリーブ油およびコーン油;非イオン性、カチオン性およびアニオン性の界面活性剤;エチレングリコールポリマー;β−シクロデキストリン、脂肪アルコール;および加水分解された穀類固形分、ならびにその他の非毒性の相容性充填材、結合剤、崩壊剤、たとえばタルクのような添加剤;緩衝剤、保存剤、酸化防止剤、滑剤、香料その他医薬組成物において通常使用される添加剤である。
【0048】
前記の第一の実施態様の特別の実施態様では、本発明はまた、単一の包装中の複数の別々の容器中に
i1)1つの独立した容器中に、少なくとも1種の中性エンドペプチダーゼ阻害剤を含有する製剤形を含有し、かつ第二の独立した容器中に、少なくとも1種の内因性エンドセリン産生系阻害剤を含有する製剤形を含有するか、または
i2)1つの独立した容器中に、中性エンドペプチダーゼと内因エンドセリン産生系とを阻害することができる二重に作用する化合物を含有する製剤形を含有し、かつ
ii)別の独立した容器中に、少なくとも1種のAT1受容体アンタゴニストを含有する製剤形を含有する
組み合わせて使用するための剤形を含有するキットに関する。
【0049】
キットの形は特に有利であるが、しかし分離された成分が異なった剤形で投与されなくてはならないか、または異なった投与間隔で投与される場合には限定されない。剤形は有利には錠剤またはカプセルのような経口投与形であってよい。独立した容器はたとえばブリスターパック、特に経口製剤が錠剤またはコーティング錠である場合には、箱または医薬製剤を包装するために通常使用されるその他の容器であってよい。1つの独立した容器中に、中性エンドペプチダーゼと、内因性エンドセリン産生系とを阻害することができる二重に作用する化合物を含有する薬剤形と、別の独立した容器中に少なくとも1種のAT1受容体アンタゴニストを含有する薬剤形とから成るキットの代替案が有利である。該キットはさらに、異なったキット構成要素をどのように使用すると、活性成分の提供された組み合わせによって最も良い治療結果が得られるかについてのリーフレットまたはその他の指示の記載を含んでいてよい。
【0050】
第二の実施態様では、本発明はまた、哺乳動物およびヒトにおける心臓血管疾患、特に高血圧および/または心不全;本態性高血圧および/または肺高血圧を予防または治療するための医薬組成物または医薬品を製造するための、少なくとも1種のNEP阻害剤を、少なくとも1種の内因性エンドセリン産生系阻害剤および少なくとも1種のAT1受容体アンタゴニストと組み合わせた使用に関する。
【0051】
第三の実施態様では本発明は、治療もしくは予防を必要としている被験者に有効量で少なくとも1種のNEP阻害剤、少なくとも1種の内因性エンドセリン産生系阻害剤および少なくとも1種のAT1受容体アンタゴニストを組み合わせて投与することからなる、哺乳動物およびヒトにおける心臓血管疾患を治療または予防する方法に関する。このような治療を必要としている被験者は、特に、心臓血管疾患、特に高血圧および/または心不全、本態性高血圧および/または肺高血圧に罹患しているか、または罹患しやすいヒトまたは哺乳動物である。さらに、本発明による組み合わせ治療は、内皮性機能障害および/または性機能障害、特に男性の機能障害、より具体的には勃起機能障害の治療および/または予防にとって適切であるか、または有利であるとも思われる。活性薬剤(a)、(b)および(c)は、一緒に、相互に連続して、または別々に1つの組み合わされた単位服用量の形として、たとえば1つの錠剤またはカプセルとして得られ、かつ一緒に投与することができる。従って活性薬剤は任意の順序で同時に投与することも一日のうちで異なった時間に分けて投与することもでき、その際、最適な投与規制は通常、医師による処方により決定される。
【0052】
第三の態様の特別な実施態様では、中性エンドペプチダーゼと内因性エンドセリン産生系とを阻害することができる二重に作用する化合物の固定された組み合わせと、AT1受容体アンタゴニストとを使用することができる。ダグルトリルとエプロサルタン、ダグルトリルとカンデサルタン、またはダグルトリルとロサルタンとの固定された組み合わせは、この特別な実施態様の有利な代替法である。
【0053】
薬理試験法の記載
本発明による組み合わせ治療の有利な効果はたとえば臨床試験プロトコルおよびラットを用いた動物モデルにおいて示すことができる。
【0054】
臨床試験プロトコル
鬱血性心不全(=CHF)に罹患したヒトにおいて12時間にわたる右の心臓カテーテル法、無作為化されたプラセボコントロールの対照群、多施設、経口ダグルトリル(上記を参照のこと)の1回量試験を実施した。それぞれの被験者はダグルトリルまたはプラセボの1回量を投与された。試験は3回の訪問(またはin−subjectsが含まれる場合には試験日)からなっていた。歩行可能な被験者は2晩と1日、病院に滞在した。
【0055】
効果を評価するための基準は、全身血管抵抗(=SVR)、肺毛細管けつ入圧(=PCWP)、心拍出量(=CO)、心拍数(=HR)、肺および全身の収縮期血圧、拡張期血圧および平均血圧、肺血管抵抗(=PVR)、一回拍出量(=SVI)、心係数(=CI)、経肺勾配および神経ホルモンであった。
【0056】
第一の効率パラメータは、SVRに関する6時間にわたるベースラインからの最大の減少であり、かつ共分散の分析を使用した治療群の間で比較し、その際、ベースライン値を共分散として、および中心とNYHA分類を因子として使用した。試験はα=0.05の全体的に顕著なレベルで片側に実施した。多重比較人為要素に関する調整は、ダンネット法(Dunnett's procedure)により調整した。さらに、ダグルトリルに関する用量−反応関係の存在を、一次、二次および三次対比を調査することにより評価した。第二の効率パラメータは、PCWPに関するベースラインからの最大の変化であり、かつ第一の変数と同様に分析した。12時間にわたるベースラインからの最大の減少、個々の時点および曲線の下の調整された領域(=AUC)に関して6時間および12時間にわたる変化を、SVRおよびPCWPに関して、問題となっている主要なパラメータと同様の統計学的な方法を使用して分析した。全てのその他の第三の効率パラメータは、第一の効率パラメータに関してと同様の統計学的な方法を使用して分析した。
【0057】
安全性を評価するための基準は、実験室での変数、心電図(=ECG)、理学的検査、生命徴候および副作用(=AEs)である。
【0058】
混在に関する基準は、男性または女性の(妊娠可能性のない)被験者、年齢18歳以上85歳以下からなり、少なくとも3ヶ月の慢性、症候性の、軽度ないし重度の(NYHA分類II−IV)CHFの履歴を有する、記録された収縮期機能障害(超音波心臓検査法により35%以下の左心室駆出分画(=LVEF))を有し、試験登録の少なくとも1週間前に個別的に最適化された投薬規制の安定した用量を投与されていた被験者である。
【0059】
(96)の被験者をスクリーニングし、かつ(75)を無作為化し、かつ分析し、(18)の被験者が200mgのダグルトリル群であり、(20)の被験者が400mgのダグルトリル群であり、(19)の被験者が800mgのダグルトリル群であり、かつ(18)の被験者がプラセボ群であった。サブグループの分析において、試験において75の無作為化された被験者をサブグループ、つまり診断基準が存在するか、または存在しないプラセボ群とダグルトリル群とに分割した。診断基準は、ロサルタンカリウムの随伴的な投薬がランダム割付の前に行われ、かつその後に継続されるかどうかに基づいていた。プラセボ群において、1人の患者はロサルタンカリウムを投与され、これに対して15人の患者はロサルタンカリウムを投与されなかった。ダグルトリル群では、5人の患者がロサルタンカリウムを投与され、これに対して49人の患者はロサルタンカリウムを投与されなかった。
【0060】
最初の6時間(0.5、6時間、データが存在しない時点がない場合にのみ計算した)にわたる平均値(平均、標準偏差(=SD)n)の合計統計値を記載する。診断基準が存在するおよび存在しないサブグループの両方に関して、プラセボ修正した平均値および合計統計値(平均的な変化、変化の標準誤差(=SE)および標準化した平均変化(=平均/SE)が示されている。
【0061】
この試験モデルでは、それぞれ無作為化の前および無作為化の後でAT1受容体アンタゴニスト(ロサルタン)の随伴的な投薬に加えてダグルトリルを投与することによって、以下の第1表に記載されているような平均肺動脈圧(=MPAP、0.5〜6時間)のプラセボ修正された平均的な変化が示された。
【0062】
【表1】

【0063】
試験結果は、NEPと内因性エンドセリン産生系とを阻害することができる二重に作用する化合物、つまりダグルトリルをAT1受容体アンタゴニストに加えて投与することが、NEPと内因性エンドセリン産生系とを阻害することができる二重に作用する化合物、つまりダグルトリルを単独で投与することから生じる影響よりも顕著に肺血圧へ有利な影響を及ぼすことを示している。
【0064】
動物試験モデル
オスの自然発症高血圧ラット(=SHR、Charles Riverからのインスリン抵抗性系統、生後6ヶ月)に、血圧および心拍数を連続的にモニタリングするための遠隔操作発信器を取り付けた(以下に記載)。ベースライン(未処理の)条件下で3日間モニタリングした後で、動物をAT1受容体アンタゴニスト(エプロサルタンメシレート、以下では実験Iとよぶ、またはカンデサルタンシレキセチル、以下では実験IIとよぶ)またはAY1受容体アンタゴニストおよびダグルトリルを組み合わせて投与される2つのグループに分割した。実験IIには、ダグルトリルのみを投与されるラットの第三のグループが含まれる。化合物を飲料水により投与し、かつ週に2回、水のボトルを秤量することにより一日の薬剤摂取量を測定した。実験Iにおいて意図される一日量は、エプロサルタンメシレート60mg/kg/日および、組み合わせ群では、さらにダグルトリル100mg/kg/日であった。実験IIでは、意図される一日量は、カンデサルタンシレキセチル1mg/kg、およびダグルトリルのみ、および組み合わせ群においてダグルトリル100mg/kgであった。血圧、心拍数および歩行活動を連続的にモニタリングするための遠隔操作発信器(TA11PA−C40、Data Sciences、USA)は、吸入によるハロタン麻酔下で腹腔内に移植した。正中線腹部切開を行い、かつ腹膜後脂肪および結合組織を除去することにより腹部大動脈を視覚化した。腎動脈の尾側に結紮を行い、大動脈を22Gの針で穿刺し、かつカテーテルを大動脈に前進させた。入口点を組織接着剤(Vetbond(R)、3M、USA)で接着し、結紮糸を除去し、かつ腹部切開を閉じた。大動脈圧の測定を5分(=min)ごとに4秒間(=s)、そのつど500Hzのサンプリング速度で行い、かつ相応する雰囲気圧に関して修正した(雰囲気圧モニター、C11PR、Data Sciences、USA)。
【0065】
飲料水中のAT1受容体アンタゴニストおよびダグルトリルの濃度は、意図される一日摂取量を確保するために、1週間に1回調整した。実験Iでは、33日の処置期間を通じた平均的な一日の水摂取量は、エプロサルタン群およびエプロサルタンおよびダグルトリル群においてそれぞれ51ml/kgおよび56ml/kgであり、結果として両方の群においてエプロサルタン62mg/kg/日、および組み合わせ群においてダグルトリル104mg/kg/日の摂取量となった。実験IIでは、25日の処置期間を通じた平均的な一日の水摂取量は、64ml/kg(カンデサルタン単独)、62ml/kg(ダグルトリル単独)および62ml/kg(カンデサルタンおよびダグルトリル)であり、結果として、カンデサルタン群および組み合わせ群の両方で、カンデサルタン0.9mg/kgの一日量、ならびにダグルトリル群および組み合わせ群ではそれぞれダグルトリル101mg/kgおよび98mg/kgであった。
【0066】
データクエストシステムにより5分間隔でサンプリングした血圧、心拍数および活性値を、個別的な24時間(=h)平均値の計算のために使用した。これらの24時間平均値をエクセルにエクスポートし、かつ心収縮期の血圧(=SBP)、拡張期の血圧(=DBP)、心拍数(=HR)および歩行活動(=ACT)の群平均値を、異なった処置群に関して計算した。統計学的な分析のために、ベースライン値(前)を化合物を適用する3日前から計算し、かつAT1受容体アンタゴニスト、ダグルトリルおよびこれらの組み合わせの効果を、このベースライン値(治療期間の平均値からベースライン値を減じた値)に対して計算した。分散分析を使用することにより統計学的な比較を行い、次いでAT1受容体アンタゴニスト群と組み合わせ群との比較のために、スチューデントの両側t検定を、いずれもP<0.05の誤差レベルで行った。
【0067】
この検定モデルでは、ダグルトリル単独およびAT1受容体アンタゴニスト(エプロサルタンメシレートまたはカンデサルタンシレキセチル)と組み合わせた投与、およびAT1受容体アンタゴニスト単独投与との比較は、以下の第2表および第3表に記載されているような結果を示した:
【表2】

【0068】
表には治療を開始する前に測定された変化と対応ベースライン値との対比が示されている。群あたり、n=5匹の動物である。SEM=測定の標準誤差、両側ANOVA、n.s.=顕著ではない、*P<0.05は両側t検定のエプロサルタン対エプロサルタン+ダグルトリル、(1)は実験IIからのデータである。
【0069】
【表3】

【0070】
表には治療を開始する前に測定された変化と対応ベースライン値との対比が示されている。群あたり、n=5匹の動物である。両側ANOVA、n.s.=顕著でない、*P<0.01は両側t検定のカンデサルタン対カンデサルタン+ダグルトリルである。
【0071】
両方の実験において、収縮期血圧における低下は、組み合わせ群(t検定、P<0.05)において、それぞれのAT1受容体アンタゴニスト単独で投与された群におけるよりも顕著に大きかった。さらに、ダグルトリルは、単独で投与される場合、このモデルでは血圧の低下につながらなかった。
【0072】
活性薬剤の用量は種々の要因、たとえば投与法、種、年齢および/または個体の条件に依存しうる。本発明による薬学的な組み合わせの活性薬剤のために適切な用量は、薬用量、たとえば市販されているような用量である。通常、経口投与の場合、約4mg〜約600mgのおよその一日量が、たとえば体重約75kgの患者のために活性薬剤のそれぞれに関して推定される。たとえば本発明による医薬組成物は有利には、ECEとhSEPとを阻害することができる二重に作用する化合物として、ダグルトリル5〜600mgの範囲で含有していてよい。本発明による医薬組成物中に存在するAT1受容体アンタゴニストの用量範囲は、特に使用される物質に依存して変化してもよく、かつ(そのつど、化合物の塩または溶媒和物ではなく、純粋な活性物質に関して計算して)たとえばカンデサルタンについては4〜32mg、エプロサルタンに関しては300〜600mg、イルベサルタンに関しては75〜300mg、ロサルタンに関しては25〜100mg、テルミサルタンに関しては20〜80mgまたはバルサルタンに関しては40〜320mgであってよい。医薬組成物の投与は、一日三回までであってよい。一日一回の投与形が有利である。
【0073】
例I:
ダグルトリルおよびロサルタンを含有するカプセル:
カプセルあたり以下の組成を有するカプセルを製造した:
ダグルトリルリン酸三カルシウム塩 200mg
ロサルタンカリウム 50mg
トウモロコシデンプン 50mg
ラクトース 80mg
酢酸エチル 適量
酢酸エチルを使用して、活性薬剤、トウモロコシデンプンおよびラクトースを均一なペースト状の混合物へと加工した。該ペーストを粉砕し、かつ得られる顆粒を適切なトレー上に置き、かつ45℃で乾燥させて溶剤を除去した。乾燥した顆粒を粉砕装置に通過させ、かつ以下の添加剤と共にミキサー中で混合し:
タルク 5mg
ステアリン酸マグネシウム 5mg
トウモロコシデンプン 9mg
かつ、次いで400mgのカプセル(=カプセルサイズ0)に充填した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)NEP阻害剤少なくとも1種、
b)内因性エンドセリン産生系阻害剤少なくとも1種および
c)AT1受容体アンタゴニスト少なくとも1種
のそれぞれの薬理的な有効量を含有する医薬組成物。
【請求項2】
さらに製薬的に認容される添加剤またはキャリアーを少なくとも1種含有する、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項3】
さらにアセチルサリチル酸を含有する、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記組成物が、錠剤、コーティング錠、カプセル、シロップ剤、エリキシル剤または懸濁剤からなる群から選択される経口投与可能な剤形を含む、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項5】
少なくとも1種のAT1受容体アンタゴニストが、NEP阻害剤および内因性エンドセリン産生系阻害剤から物理的に分離されている単位1回服用量の形で存在している、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項6】
内因性エンドセリン産生系阻害剤が、エンドセリン変換酵素、ヒト可溶性エンドペプチダーゼ阻害剤およびエンドセリン変換酵素とヒト可溶性エンドペプチダーゼとの両方を阻害することができる二重に作用する化合物からなる群から選択される、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項7】
(a)中性エンドペプチダーゼ阻害剤少なくとも1種、および(b)内因性エンドセリン産生系阻害剤少なくとも1種のサブコンビネーションとして、中性エンドペプチダーゼと内因性エンドセリン産生系とを阻害することができる二重に作用する化合物を含有する、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項8】
(a)中性エンドペプチダーゼ阻害剤少なくとも1種、および(b)内因性エンドセリン産生系阻害剤少なくとも1種のサブコンビネーションとして、中性エンドペプチダーゼとヒト可溶性エンドペプチダーゼとを阻害することができる二重に作用する化合物を含有する、請求項7記載の医薬組成物。
【請求項9】
中性エンドペプチダーゼと内因性エンドセリン産生系とを阻害することができる前記の二重に作用する化合物が、一般式I
【化1】

[式中、
1は、水素であるか、または生体不安定性のカルボン酸エステルを形成する基であり、
Aは、サブグループ(a)
【化2】

(式中、
2は、水素であるか、または生体不安定性のカルボン酸エステルを形成する基であり、かつ
3は、フェニル−C1〜C4−アルキル基であり、該基はフェニル環においてC1〜C4−アルキル、C1〜C4−アルコキシまたはハロゲンにより置換されていてもよく、またはナフチル−C1〜C4−アルキル基である)または(b)
【化3】

(式中、
4は、水素であるか、または生体不安定性のホスホン酸エステルを形成する基であり、かつ
5は、水素であるか、または生体不安定性のホスホン酸エステルを形成する基である)または(c)
【化4】

(式中、
6は、水素であるか、または生体不安定性のカルボン酸エステルを形成する基であり、
7は、水素であるか、C1〜C4−アルキルであるか、またはC1〜C4−ヒドロキシアルキルであり、このヒドロキシル基はC2〜C4−アルカノイルまたはアミノ酸残基によりエステル化されていてもよく、かつ
8は、C1〜C4−アルキルであるか、C1〜C4−アルコキシ−C1〜C4−アルキルであるか、C1〜C4−ヒドロキシアルキル(これは第二のヒドロキシル基およびそれぞれC2〜C4−アルカノイルまたはアミノ酸残基によりエステル化されていてもよい複数のヒドロキシル基により置換されていてもよい)であるか、(C0〜C4−アルキル)2アミノ−C1〜C6−アルキルであるか、C3〜C7−シクロアルキルであるか、C3〜C7−シクロアルキル−C1〜C4−アルキルであるか、フェニル−C1〜C4−アルキル(このフェニル基はC1〜C4−アルキル、C1〜C4−アルコキシおよび/またはハロゲンにより1置換または2置換されていてもよい)であるか、ナフチル−C1〜C4−アルキルであるか、C3〜C6−オキソアルキルであるか、フェニルカルボニルメチル(このフェニル基はC1〜C4−アルキル、C1〜C4−アルコキシおよび/またはハロゲンにより1置換または2置換されていてもよい)であるか、または2−オキソアゼパニルであるか、あるいは
7およびR8は一緒になって、C4〜C7−アルキレンであり、このメチレン基はカルボニル、窒素、酸素および/または硫黄により1〜2回置換されていてもよく、かつC2〜C4−アルカノイルまたはアミノ酸残基によりエステル化されていてもよいヒドロキシにより1回置換されていてもよく、C1〜C4−アルキルであるか、C1〜C4−ヒドロキシアルキルであり、このヒドロキシル基はC2〜C4−アルカノイルまたはアミノ酸残基によりエステル化されていてもよく、フェニルまたはベンジルである)から選択される基を表す]の化合物であるか、または該化合物の生理学的に適合性の塩である、請求項7または8記載の医薬組成物。
【請求項10】
中性エンドペプチダーゼと内因性エンドセリン産生系とを阻害することができる二重に作用する化合物が、一般式Ia
【化5】

[式中、
1は、水素であるか、または生体不安定性のカルボン酸エステルを形成する基であり、
2は、水素であるか、または生体不安定性のカルボン酸エステルを形成する基であり、かつ
3は、フェニル環においてC1〜C4−アルキル、C1〜C4−アルコキシまたはハロゲンにより置換されていてもよいフェニル−C1〜C4−アルキル基であるか、またはナフチル−C1〜C4−アルキル基である]
の化合物であるか、または該化合物の生理学的に適合性の塩である、請求項9記載の医薬組成物。
【請求項11】
中性エンドペプチダーゼと、内因性エンドセリン産生系とを阻害することができる二重に作用する化合物が、
2−[1−(1−カルボキシメチル−2−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[b]アゼピン−3−イルカルバモイル)−シクロペンチルメチル]−4−フェニル−酪酸エチルエステル、
2−[1−(1−カルボキシメチル−2−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[b]アゼピン−3−イルカルバモイル)−シクロペンチルメチル]−4−ナフタレン−1−イル−酪酸エチルエステル、
2−[1−(1−カルボキシメチル−2−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[b]アゼピン−3−イルカルバモイル)−シクロペンチルメチル]−4−フェニル−酪酸、
2−[1−(1−カルボキシメチル−2−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[b]アゼピン−3−イルカルバモイル)−シクロペンチルメチル]−4−ナフタレン−1−イル−酪酸
およびこれらの生理学的に適合性の塩からなる群から選択されている、請求項10記載の医薬組成物。
【請求項12】
中性エンドペプチダーゼと、内因性エンドセリン産生系とを阻害することができる前記の二重に作用する化合物が、一般式Ic
【化6】

[式中、
6は、水素であるか、または生体不安定性のエステルを形成する基であり、
7は、水素であるか、C1〜C4−アルキルであるか、またはC1〜C4−ヒドロキシアルキルであり、このヒドロキシル基は、C2〜C4−アルカノイルまたはアミノ酸残基によりエステル化されていてもよく、かつ
8は、C1〜C4−アルキルであるか、C1〜C4−アルコキシ−C1〜C4−アルキルであるか、C1〜C4−ヒドロキシアルキル(これは第二のヒドロキシル基およびそれぞれC2〜C4−アルカノイルまたはアミノ酸残基によりエステル化されていてもよい複数のヒドロキシル基により置換されていてもよい)であるか、(C0〜C4−アルキル)2アミノ−C1〜C6−アルキルであるか、C3〜C7−シクロアルキルであるか、C3〜C7−シクロアルキル−C1〜C4−アルキルであるか、フェニル−C1〜C4−アルキルであり、このフェニル基はC1〜C4−アルキル、C1〜C4−アルコキシおよび/またはハロゲンにより1置換または2置換されていてもよく、ナフチル−C1〜C4−アルキルであるか、C3〜C6−オキソアルキルであるか、フェニルカルボニルメチルであり、このフェニル基はC1〜C4−アルキル、C1〜C4−アルコキシおよび/またはハロゲンにより1置換または2置換されていてもよく、または2−オキソアゼパニルであるか、あるいは
7およびR8は一緒になって、C4〜C7−アルキレンであり、このメチレン基はカルボニル、窒素、酸素および/または硫黄により1〜2回置換されていてもよく、かつC2〜C4−アルカノイルまたはアミノ酸残基によりエステル化されていてもよいヒドロキシにより1回置換されていてもく、C1〜C4−アルキルであるか、C1〜C4−ヒドロキシアルキルであり、このヒドロキシル基はC2〜C4−アルカノイルまたはアミノ酸残基によりエステル化されていてもよく、フェニルまたはベンジルである]の化合物であるか、またはこれらの生理学的に適合性の塩である、請求項9記載の医薬組成物。
【請求項13】
式Icの化合物中で、R7は水素、メチル、エチル、2−ヒドロキシエチルまたは3−ヒドロキシプロピルであり、その際、ヒドロキシル基はそれぞれC2〜C4−アルカノイルまたはアミノ酸残基によりエステル化されていてもよい、請求項12記載の医薬組成物。
【請求項14】
式Icの化合物中で、R8は、イソプロピル、メトキシエチル、2−ヒドロキシエチルまたは3−ヒドロキシプロピル(それぞれのヒドロキシル基はC2〜C4−アルカノイルまたはアミノ酸残基によりエステル化されていてもよい)、3−アセチルオキシ−n−プロピル、シクロプロピルメチル、2−メトキシベンジル、4−メトキシベンジル、4−メトキシフェニルエチル、2,4−ジメトキシベンジル、1−ナフチルメチル、3−オキソ−1,1−ジメチルブチル、フェニル−2−オキソエチル、2−(4−メトキシフェニル)−2−オキソエチル、3−(2−オキソアゼパニル)、(C0〜C4−アルキル)2アミノ−C1〜C6−アルキル、特にジメチルアミノ−n−プロピル、(メチル)アミノエチル、アミノ−n−プロピル、アミノ−n−ブチルまたはアミノ−n−ペンチルである、請求項12記載の医薬組成物。
【請求項15】
AT1受容体アンタゴニストが、アビテサルタン、ベンジルロサルタン、カンデサルタン、エリサルタン、エンブサルタン、エノルタソサルタン、エプロサルタン、フォンサルタン、フォラサルタン、グリシルロサルタン、イルベサルタン、イソテオリン、ロサルタン、ミルファサルタン、オルメサルタン、オポミサルタン、プラトサルタン、リピサルタン、サプリサルタン、サララシン、サルメシン、タソサルタン、テルミサルタン、バルサルタン、ゾラサルタン;キッセイKRH−94、ルソファルマコLR−B/057、ルソファルマコLR−B/081、ルソファルマコLR−B/087、サールSC−52458、サンキョーCS−866、タケダTAK−536、ウリアックUR−7247、A−81282、A−81988、BIBR−363、BIBS−39、BISB−222、BMS−180560、BMS−184698、CGP−38560A、CGP−48369、CGP−49870、CGP−63170、CI−996、CV−11194、DA−2079、DE−3489、DMP−811、DuP−167、DuP−532、GA−0056、E−4177、EMD−66397、EMD−73495、EXP−063、EXP−929、EXP−3174、EXP−6155、EXP−6803、EXP−7711、EXP−9270、FK−739、HN−65021、HR−720、ICI−D6888、ICI−D7155、ICI−D8731、KRI−1177、KT3−671、KW−3433、L−158809、L−158978、L−159282、L−159689、L−159874、L−161177、L−162154、L−162234、L−162441、L−163007、L−163017、LY−235656、LY−285434、LY−301875、LY−302289、LY−315995、ME−3221、PD−123177、PD−123319、PD−150304、RG−13647、RWJ−38970、RWJ−46458、S−8307、S−8308、SL−91.0102、U−96849、U−97018、UP−269−6、UP−275−22、WAY−126227、WK−1492.2K、WK−1360、X−6803、XH−148、XR−510、YM−358、YM−31472、ZD−6888、ZD−7155およびZD−8731からなる群から選択されている、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項16】
AT1受容体アンタゴニストが、アビエサルタン、ベンジルロサルタン、カンデサルタン、エリサルタン、エンブサルタン、エノルタソサルタン、エプロサルタン、フォンサルタン、フォラサルタン、グリシルロサルタン、イルベサルタン、ロサルタン、ミルファサルタン、オルメサルタン、オポミサルタン、プラトサルタン、リピサルタン、サプリサルタン、タソサルタン、テルミサルタン、バルサルタン、ゾラサルタン;キッセイKRH−94、ルソファルマコLR−B/081、サールSC−52458、サンキョーCS−866、タケダTAK−536、ウリアックUR−7247またはこれらの生理学的に適合性の塩、溶媒和物、プロドラッグまたはエステルからなる群から選択されている、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項17】
AT1受容体アンタゴニストが、カンデサルタン、エプロサルタンまたはロサルタンである、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項18】
哺乳動物およびヒトにおいて心臓血管疾患を予防または治療する医薬品を製造するための、少なくとも1種の内因性エンドセリン産生系阻害剤および少なくとも1種のAT1受容体アンタゴニストとが組み合わされた、少なくとも1種の中性エンドペプチダーゼ阻害剤の使用。
【請求項19】
心臓血管疾患が、本態性高血圧、肺高血圧および鬱血性心不全からなる群から選択される、請求項18記載の使用。
【請求項20】
i1)1つの独立した容器中に、少なくとも1種の中性エンドペプチダーゼ阻害剤を含有する製剤を含有し、かつ第二の独立した容器中に、少なくとも1種の内因性エンドセリン産生系阻害剤を含有する製剤を含有するか、または
i2)1つの独立した容器中に、中性エンドペプチダーゼと内因性エンドセリン産生系とを阻害することができる二重に作用する化合物を含有する製剤を含有し、かつ
ii)別の独立した容器中に、少なくとも1種のAT1受容体アンタゴニストを含有する製剤を含有する
組み合わせて使用するための製剤を、単一の包装中の独立した複数の容器中に含有するキット。
【請求項21】
i)1つの独立した容器中に、中性エンドペプチダーゼと内因性エンドセリン産生系とを阻害することができる二重に作用する化合物を含有する製剤を含有し、かつ
ii)別の独立した容器中に、少なくとも1種のAT1受容体アンタゴニストを含有する製剤を含有する
組み合わせて使用するための製剤を、単一の包装中の独立した複数の容器中に含有する、請求項20記載のキット。

【公表番号】特表2008−503546(P2008−503546A)
【公表日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−517296(P2007−517296)
【出願日】平成17年6月22日(2005.6.22)
【国際出願番号】PCT/EP2005/052915
【国際公開番号】WO2006/000564
【国際公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【出願人】(391027619)ゾルファイ ファーマスーティカルズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (46)
【氏名又は名称原語表記】Solvay Pharmaceuticals GmbH
【住所又は居所原語表記】Hans−Boeckler−Allee 20, D−30173 Hannover,Germany
【Fターム(参考)】