説明

NICを備えたシステム機器および同システム機器の省電力制御方法

【課題】NICを備えるシステム機器において、Ethernetに対するリンク状況に応じて合理的なNIC部の省電力動作を実現させることを目的とする。
【解決手段】条件(リンク速度又はリンク有無)に応じてNIC部におけるプロトコル処理機能部及び/又は暗号化処理機能部に対しそれらの処理機能にそれぞれ対応した以下の省エネ処理を組み合わせて実行する。(1)リンク状況に応じてプロトコル処理をNIC側で行うかコントローラ側で行うかを決定し、コントローラ側で行う場合はNICにおけるプロトコル処理機能部および暗号化処理機能部への電源をオフにする。(2)リンク状況に応じて前記プロトコル処理機能部および暗号化処理機能部の各機能を実現するNICにおけるCPUの動作クロック周波数を変更する。(3)リンク状況に応じてNICにおけるハードウェアによる暗号化処理とソフトウェアによる暗号化処理とを切換える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワークを介してデータの送受信を行うためのNIC(Network Interface Card)を備えるシステム機器および同システム機器の省電力制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ネットワークを介してデータの送受信を行うためのNICを備えるシステム機器として、例えばホストPCとの間で画像データの授受が行われるデジタル複合機(以下、MFPと表記)がある。このようなMFPにおいては、一定時間以上操作されなかったりホストPCからのデータ送信がなかったりした場合、定着用ヒータ電源やプリンタコントローラの電源をオフにするなどの省エネモードに移行させることが行われている。
【0003】
例えば特許文献1には、画像形成装置が省エネモードに移行してもデータの送受信が行なえるようにネットワークの監視とデータの送受信を入出力部で処理するようにした技術が開示されており、特許文献2には、ネットワークを介して接続されている全てのホストコンピュータの電源がオフになっていることを検知した場合に、画像形成装置を省電力状態にする技術が開示されている。
また、特許文献3には、通信速度に応じてデータ処理CPUのクロック周波数を変更することにより省電力を図るようにしたデータ通信装置が開示されている。
【特許文献1】特開2003−089254号公報
【特許文献2】特開2004−110215号公報
【特許文献3】特開平7−321874号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1又は特許文献2に見られる先行技術は、NIC自身の省電力動作を図るものではなく、また、特許文献3の先行技術は単にデータ処理CPUの動作クロック周波数を変更するだけであり、NICが備えている複数の機能に対応した合理的な省電力動作を行わせることはできない。
例えば、暗号化チップが搭載されているNICにおいては、1Gbpsの速度でリンク接続し高速に暗号化処理が必要な環境の場合、暗号化チップの高速処理能力が有効に利用されるが、リンクが無い場合や10Mbps等低速リンクの場合でも1Gbpsと同様の処理、同レベルのデバイス駆動となるため、必要以上の電力を消費してしまうという問題が未解決になっている。
【0005】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、ネットワークを介してデータの送受信を行うためのNICを備えるシステム機器において、リンク速度又はリンク有無(以下、リンク状況という)に応じてNICにおける複数の機能に対応した合理的なNIC部の省電力動作を実現させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は次の技術手段を備えることを特徴とする。
第1の技術手段は、全体の制御を司るコントローラを備えると共に、ネットワークI/Fとプロトコル処理機能部および暗号化処理機能部を有するNICを備えるシステム機器であって、前記コントローラは、リンク状況に応じて前記NIC部におけるプロトコル処理機能部及び/又は暗号化処理機能部に対しそれらの処理機能にそれぞれ対応した異なる省エネ処理を組み合わせて実行することにより前記プロトコル処理機能部及び/又は暗号化処理機能部の各処理能力を選択的に低下又は停止させる省電力制御を行い、前記各処理機能部における構成要素が消費する電力をリンク状況に応じて段階的に低減させることを特徴としたものである。
【0007】
第2の技術手段は、第1の技術手段において、前記省エネ処理の1つは、リンク状況に応じてプロトコル処理を前記NIC側で行うか前記コントローラ側で行うかを決定し、コントローラ側で行う場合はNICにおける前記プロトコル処理機能部および暗号化処理機能部への電力の供給を停止するものであることを特徴としたものである。
【0008】
第3の技術手段は、第2の技術手段において、前記複数の省エネ処理のもう1つは、前記プロトコル処理機能部および暗号化処理機能部における構成要素の1つであるCPUの動作クロック周波数をリンク状況に応じて変更するものであることを特徴としたものである。
【0009】
第4の技術手段は、第2又は3の技術手段において、前記複数の省エネ処理のさらにもう1つは、前記暗号化処理機能部が行う暗号化処理についてハードウェアによる暗号化とソフトウェアによる暗号化とをリンク状況に応じて切換えるものであることを特徴としたものである。
【0010】
第5の技術手段は、第1から4のいずれかの技術手段において、前記NICの前記各機能を実現する各構成要素の消費電力情報を記憶手段に記憶しておき、前記コントローラは、前記記憶手段から取得した前記各構成要素の消費電力情報に基づいて前記各省エネ処理のリンク状況に応じた最適な組み合わせを決定することを特徴としたものである。
【0011】
第6の技術手段は、第1から5のいずれかの技術手段において、前記省電力制御は、前記コントローラにおけるCPUが所定のプログラムを実行することにより行われることを特徴としたものである。
【0012】
第7の技術手段は、第6の技術手段において、前記所定のプログラムは前記NIC部における記憶手段から取得することを特徴としたものである。
【0013】
第8の技術手段は、第5から7のいずれかの技術手段において、前記各省エネ処理における電力消費順位をあらかじめ決定しておきその順位を、組み合わせた省エネ処理の実行順位に適応させることを特徴としたものである。
【0014】
第9の技術手段は、第1から8のいずれかの技術手段において、前記コントローラに複数のNICが接続されている場合、一方のNIC部についての前記省エネ処理の組み合わせ及び/又は組み合わせた省エネ処理の適用順位の決定条件に他方のNIC部における省電力状態を加えることを特徴としたものである。
【0015】
第10の技術手段は、ネットワークI/Fとプロトコル処理機能部および暗号化処理機能部を有するNICを備えるシステム機器の省電力制御方法であて、リンク状況に応じて前記NIC部におけるプロトコル処理機能部及び/又は暗号化処理機能部に対しそれらの処理機能にそれぞれ対応した異なる省エネ処理を組み合わせて実行することにより前記プロトコル処理機能部及び/又は暗号化処理機能部の各処理能力を選択的に低下又は停止させる省電力制御を行い、前記各処理機能部における構成要素が消費する電力をリンク状況に応じて段階的に低減させることを特徴としたものである。
【0016】
第11の技術手段は、第10の技術手段において、前記省エネ処理は、(1)リンク状況に応じてプロトコル処理をNIC側で行うかコントローラ側で行うかを決定し、コントローラ側で行う場合はNICにおけるプロトコル処理機能部および暗号化処理機能部への電源をオフにする。(2)リンク状況に応じて前記プロトコル処理機能部および暗号化処理機能部の各機能を実現するNICにおけるCPUの動作クロック周波数を変更する。(3)リンク状況に応じてNICにおけるハードウェアによる暗号化処理とソフトウェアによる暗号化処理とを切換えることを含むことを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ネットワークを介してデータの送受信を行うためのNICを備えるシステム機器において、リンク状況に応じて高速処理が必要な場合はNICが備えている本来の性能を発揮させ、高速処理が必要でない場合はNICにおける各処理能力を選択的に低下又は停止させることによってNICにおける各構成要素が消費する電力を段階的に低減させるようにしたので、NICの合理的な省電力動作が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、NICを備えたMFPを例に図面を参照しながら説明する。
図1(A)〜(C)は、プリンタコントローラに1つのNICが接続されているMFPにおいて、省電力制御を行う場合の説明図であり、ハッチングが施されている部分は省エネ処理の対象となる部分を表している。
【0019】
図1において、プリンタコントローラ10は、CPU11、ROM12、RAM13およびNICインターフェース(NICI/F)14を備えている。また、プリンタコントローラ10に接続されるNIC20は、CPU21、ROM22、RAM23、暗号化チップ(Encryption)24、MFPCインターフェース(MFPCI/F)25、EthernetI/F26を備えている。
プリンタコントローラは、PCから送られてきた印刷データをNIC I/F14を介して受信し、印刷データに対して所定の画像処理を行い、印刷用のビットマップデータに変換し、プリントエンジンに送信して印刷させる制御を行う。NICは、EthernetI/F26を通じてPCから送られたデータを受信し、受信データのプロトコル処理や暗号化処理を行って、プリンタコントローラにMFPC I/F25を介して送信する。
【0020】
プリンタコントローラ10のCPU11は、ROM12に格納されているプログラムや情報に基づいて各種の制御を行う機能を実現するが、本発明による省エネに関する制御以外についての説明は省略する。省エネを行うためのプログラムははじめからROM12に格納しておいてもよく、また、後述するようにNIC側の記憶手段に保存しておき、NICが接続されたときプリンタコントローラ10が吸い上げて取得するようにしてもよい。
CPU21は、NIC20が送受信したデータをROM22に記憶されているプログラムおよびプロトコル情報を用いてプロトコル処理をする。このときRAM23はCPU21における処理に必要な情報を読み出し可能に一時的に記憶する。
また、暗号化処理機能は、ROM22に格納されているプログラムをCPU21が実行することよりソフトウェアで実現するか、あるいは暗号化チップ25のハードウェアを用いて実現される。
【0021】
図2は、各条件すなわちEthernetに対するリンク速度またはEthernetに対するリンクの有無(以下、リンク状況という)における省エネ処理の組み合わせ、およびそれによる省エネ効果を表にしたものである。
先ず、省エネ処理(1)について説明すると、この省エネ処理は、上述したリンク速度またはリンクの有無に応じてプロトコル処理を含むネットワーク処理をNIC側のCPUで行うかプリンタコントローラ側のCPUで行うかを決定するものであり、リンク速度が遅いかリンク無しの場合はCPU21、ROM22、RAM23および暗号化チップ24への電力の供給を停止することにより、4.0Wの消費電力を節電するものである。なお、図2の省エネ処理(1)の場合に「MFPC:0W」としているのは、プリンタコントローラ側のCPUは受信データの画像処理として動作するため元々電力を消費し、NIC側のCPUで行なっていたプロトコル処理をプリンタコントローラ側のCPUで行なっても、新たに電力消費を必要としない、という考えに基づくものである。
また、図1(A)は上述した電力の供給を停止する構成部品の部分をハッチングして表している。この場合、EthernetI/F26はプリンタコントローラ側のCPU11が制御し、受信データのネットワーク処理はプリンタコントローラ10で行われる。リンク速度が100M bpsあるいは1G bpsのときは処理能力の高いNIC側のCPU21でネットワーク処理を行う。
なお、リンク速度の監視および上述した省エネ処理(1)およびこの後説明する省エネ処理(2)、(3)の組み合わせで行われる省エネの制御は、後述する省エネプログラムによってプリンタコントローラのCPU11が行う。
【0022】
次に、省エネ処理の対象箇所がCPUであることを表す図1(B)の省エネ処理(2)について説明すると、この省エネ処理は、リンク状況に応じてNIC側のCPU21の動作クロック周波数を変更するものであり、リンク速度が100 bpsの場合は、1G bpsの場合の500MHzから300MHzに下げることにより消費電力が2.0Wから1.2Wに低減し、その差0.8Wの節電になることを表している。リンク速度が10Mbpsあるいはリンク無しの場合はCPU21への電力供給が停止されるので省エネ処理(2)は無関係となる。
【0023】
省エネの対象箇所が暗号化チップであることを表す図1(C)の省エネネ処理(3)は、リンク状況に応じて、ハードウェアすなわち暗号化チップを用いる高速の暗号化処理(Enc HW)とソフトウェアで行う暗号化処理(Enc SW)を切換えることにより節電を図るものであり、図2の表では暗号化チップ24で暗号化処理を行う場合(Enc HW)の消費電力を0.3Wとし、ソフトウェアによる暗号化処理(Enc SW)の場合の消費電力を0としている。ソフトウェアによる暗号化処理の場合の消費電力を0としているのは、CPU21は暗号化処理以外のネットワーク処理でも動作して元々電力を使っているので、暗号化処理として新たに消費電力を必要としない、という考えに基づくものである。
したがって、リンク速度が1Gのときは処理能力の高い暗号化チップによる暗号化処理(Enc SW)を用いるが、100M bpsでは例えばROM22に格納されているプログラムを実行してソフトウェアによる暗号化処理(Enc SW)に切換えることにより0.3Wの節電効果を得る。
【0024】
以上の省エネ処理を組み合わせて適用することにより得られる省エネ効果について、条件すなわちリンク状況毎にまとめると次のようになる。1Gの場合では上述したように省エネは行われない。100M bpsの場合は、省エネ処理(2)すなわちNIC側のCPU動作クロック周波数を300MHzに下げることで消費電力が2.0Wから1.2Wとなって0.8Wの節電となり、省エネ処理(3)すなわち暗号化処理をハードウェアからソフトウェアに切換えることで0.3Wの節電となり、その他の消費電力(ROMやRAMの分)を1.7Wとするとトータルの消費電力は2.9Wとなり、トータルで1.1Wの省エネ効果が得られる。また、10MHzまたはリンク無しでは、省エネ処理(1)すなわちEthernetI/F26以外への電力の供給を停止することより4.0Wの省エネ効果が得られる。
【0025】
図3は、プリンタコントローラに複数のNICが接続される例を示したものであり、第1のNIC I/F14−1に有線NIC20、第2のNIC I/F14−2に無線NIC30が接続されている様子を表している。無線NIC30におけるCPU31、ROM32、RAM33、暗号化チップ(Encryption)34、プリンタコントローラI/F(MFPCI/F)35および無線I/F36は、有線NICの場合とその機能は同じなので説明は省略する。
【0026】
図4は、無線NIC30の場合の各条件における省エネ処理の組み合わせ、およびそれによる効果を示す表である。なお、この実施形態における有線NICについては図2の場合と同様である。図4において条件として記載してある「11g/54 bps」、「11b/11 bps」は、それぞれ無線LAN規格のIEEE802.11g、IEEE802.11bの意味である。
図4の例では、NIC全体の消費電力を3.0Wとし、CPU動作クロック周波数が400MHzでの消費電力を1.5W、ハードウェアによる暗号化処理(Enc HW)を0.3W、その他を1.2Wとしている。
この場合の省エネ処理としては、条件11g/54M bpsでは省エネ処理は行われず、11b/11 bpsおよびリンク無し場合に省エネ処理(1)として無線I/F36以外の構成部品すなわちCPU31、ROM32、RAM33、暗号化チップ34への電力の供給を停止し、無線I/F36はプリンタコントローラ側のCPU11が制御し、送受信データのプロトコル処理にプリンタコントローラ側のCPU11を用いる。この省エネ処理(1)により、3.0Wの省エネ効果が得られる。
【0027】
複数NICを持つプリンタコントローラの場合、各省エネ処理の組み合わせ、その適用順位について、リンク状況だけでなくもう一方のNICの省電力状態も決定条件につけ加えるようにしても良い。例えば、無線リンクが11b/11M bpsの場合、有線NIC20の方のプロトコル処理としてプリンタコントローラ10のCPU11が使用されていれば無線の方はNIC30のCPU31で、有線NIC20の方のプロトコル処理でプリンタコントローラ10のCPU11が使用されていなければ無線NIC30の方のプロトコル処理はプリンタコントローラ10のCPU11で、といったように決定する。
【0028】
図5はその具体例を示したもので、有線NIC20のネットワーク処理がプリンタコントローラ10のCPU11で行われている場合、リンク速度が11b/11M bpsならば省エネ処理(1)としてプロトコル処理は無線NICのCPU31、省エネ処理(2)としてCPU動作周クロック波数を200MHz、省エネ処理(3)として暗号化処理をソフトウェア(Enc SW)でそれぞれ行うようにした組み合わせを採用している。この場合はCPUの動作クロック周波数で0.4W、ソフトウェアによる暗号化処理(Enc SW)で0.3Wの節電ができるのでトータルで0.7Wの省エネ効果が得られることを表している。それ以外の条件の場合については図4と同じなので説明は省略する。
【0029】
また、NICにおける各構成部品の消費電力はNICの種類やメーカによって異なるので、省エネ処理の組み合わせもそれに対応させて決定する。図6の具体例で説明すると、例えば、CPU動作クロック周波数を500MHzから300MHzに下げた場合(省エネ処理(2))の省エネ効果については、システムAの方は0.8W(2.0W−1.2W)であるのに対しシステムBの方は0.5W(2.0W−1.5W)、また暗号化処理をハードウェアで行う場合の消費電力については、システムAの方は0.3Wであるのに対しシステムBの方は0.6Wであり、また、その他の消費電力についてはシステムAの方は1.7W、システムBの方は1.4Wとなっている。
【0030】
このような相違の場合、図6の例でみるとリンク速度が100MHzの場合、システムAでは省エネ処理(2)として動作クロック周波数を500MHzから300MHzに下げて0.8Wの節電効果を得ているのに対しシステムBでは動作周周波数は下げずに暗号化をハードウェアからソフトウェアに切り替えて0.6Wの節電効果を得ている。CPUの処理能力よりも暗号化処理能力の方を優先させる場合はシステムAの組み合わせとなり、暗号処理能力よりCPUの処理能力を優先させるのであればシステムBの方の組み合わせを選択することになる。
【0031】
また、リンク速度が10Mbpsの場合の組み合わせとして、システムAの方はCPUの動作クロック周波数を300MHzに下げることにより0.8W、暗号化処理をソフトウェアに切り替えることにより0.3W、トータルで1.1Wの節電効果が得られ、システムBの方は、動作クロック周波数を300MHzに下げることにより0.5W、暗号化処理をソフトウェアに切り替えることにより0.6W、トータルで1.1Wの節電効果が得られるので、結果として同じ消費電力の節電効果となる。
【0032】
図7は、EthernetI/F部をプリンタコントローラ部に設けるようにし、NICにEthernetI/Fを搭載しないでNICモジュール基板を構成する例を示したものである。この場合、低速リンクでのプロトコル処理をプリンタコントローラで行えるようにしておくことにより、NICモジュール基板30が接続されていなくともMFPはネットワークを介してのデータの授受が可能となり、NICモジュール基板30は必要に応じて接続する。
【0033】
この場合も、上述した省電力制御プログラムをNICモジュール基板に設けたROM32又は別の記憶手段に格納しておき、この基板をプリンタコントローラ部に接続した際にプリンタコントローラがそのプログラムをダウンロードできるようにしておく。ここで同様の省電力制御を行うことにより、NICに適切な省電力動作を行わせることができる。
またこの場合も、NICにおけるCPUの動作クロック周波数毎の消費電力や暗号化チップ、その他ROM、RAM等の消費電力はメーカや型番等で異なっていることから、それらの情報もあらかじめフラッシュメモリなど記憶手段に保存しておき、省電力制御プログラムのダウンロード時にそれらの情報も読み取り可能にしておく。
【0034】
次に、上述した省エネが実行される場合の各処理フローについて図8〜図17に用いて説明する。なお、図中において、「Et」は有線(Ethernet)、「Rf」は無線、「Enc」は暗号化(Encryption)の意味である。図8は、プリンタコントローラのCPUが行う処理フローを示す図である。装置の電源がオンになると(S1)、プリンタコントローラおよびEthernetI/Fを初期化し、Et-NICモジュール部の電源をオフにする(S2)。Et-Linkステータスに変化がなければ(S3/N)ステップS5に進み、Et-NICのフラグがリセットされなければ(S5/N)ステップS3に戻る。ステップS3でEt-Linkステータスに変化すなわちリンク状況に変化があると、そのステータス(図2における「条件」)に応じた省エネ設定を行い、ステップS6でネットワークのプロトコル処理を行い、プロトコル処理が終わるとステップS3に戻る。
【0035】
図9は、有線NIC(以下、Et-NIC)のCPU処理フローを示し、図8のフローにおいてステップS3でEt-Linkのステータスに変化があり、ステップS4の省エネ設定でネットワーク処理や暗号化処理がNIC側で行われる場合である。
すなわち、本例のようにリンク速度が100Mbpsあるいは1Gbpsの場合、プリンタコントローラ10からの制御により電源オンになり(S11)、先ず、Et-NICモジュール部(CPU、ROM、RAM、暗号化チップ)を初期化する(S12)。続いてEt-NICのフラグがセットされている場合(S13/Y)は暗号化のソフト処理を含まないネットワークデータのプロトコル処理を行い(S14)、Et-NICのフラグがセットされていない場合(S13/N)は暗号化のソフト処理を含むネットワークデータのプロトコル処理を行い(S15)、ステップS13に戻る。
【0036】
次に、図8のステップS4における省エネ設定について、図10〜12図により説明する。リンク速度が1G bpsの場合に行われる設定処理は図10に示すように、先ず、Et-NIC CPUの動作クロック周波数を500MHzにセットし(S21)、Et-NICのフラグをセットし(S22)、Et-Entのフラグをセットし(S23)、Et-NICモジュール部(CPU、ROM、RAMおよび暗号化チップ)への電源をオンして(S24)終了する。前述したように、この場合はNICでの省電力効果は生じない。
【0037】
リンク速度が100M bpsの場合の省エネ設定は図11に示すように、Et-NIC CPUの動作クロック周波数を300MHzにセットし(S31)、Et-NICのフラグをセットし(S32)、Et-Entのフラグをセットし(S33)、暗号化チップを除くEt-NICモジュール部(CPU、ROMおよびRAM)への電源をオンして(S34)終了する。
【0038】
リンク速度が10M bpsおよびリンク無しの場合の省エネ設定は図12に示すように、Et-NICのフラグをリセットし(S41)、Et-NICモジュール部すなわちCPU、ROM、RAMおよび暗号化チップの電源をオフにし(S24)、終了する。
【0039】
図13は、図3に示したEt-NICとRf-NICを備えた環境でのプリンタコントローラにおけるCPUの処理フローを示す図である。
装置の電源がオンすると(S51)、MFPC、EthernetI/FおよびRf-IFの初期化を行うと共に、Et-NICモジュール部およびRf-NICモジュール部の電源をオフにし(S52)、Et-Linkステータスに変化があれば(S53/Y)省エネ設定を行い(S54)、Et-Linkステータスに変化がなければ(S53/N)ステップS55に進む。次いで、Et-NICのフラグがリセットされていれば(S55/Y)Etネットワークデータのプロトコル処理を行い(S56)、Et-NICのフラグがリセットされていなければ(S55/N)ステップS57に進む。
【0040】
ステップS57でRf-Linkステータスに変化があると(S57/Y)、そのステータス(図4又は図5における「条件」)に応じた省エネ設定を行い(S58)、ステップS57でRf-Linkステータスに変化がなければ(S57/N)ステップS59に進む。
ステップS59でRf-NICのフラグがリセットされていると(S59/Y)Rtネットワークデータのプロトコル処理を行って(S60)ステップS53に戻り、Rt-NICのフラグがリセットされていなければ(S59/N)ステップS53に戻って同様の処理を繰り返す。
【0041】
また、Rf-NICにおけるCPUの処理フローは図14に示すように、電源がオンされると(S61)、Rf-NICモジュール部(CPU、ROM、RAM、暗号化チップ)初期化を行い(S62)、Rf-NICのフラグがセットされている場合(S63/Y)は暗号化のソフト処理を含まないネットワークデータのプロトコル処理を行い(S64)、Rf-NICのフラグがセットされていない場合(S63/N)は暗号化のソフト処理を含むネットワークデータのプロトコル処理を行って(S65)、ステップS63に戻る、といった処理フローになる。
【0042】
次に、図13のステップS58における省エネ設定について説明する。
先ず、図4の場合において、リンク速度が54M bpsの場合、省エネ設定のフローは図15に示すように、先ず、Rf-NIC CPUの動作クロック周波数を400MHzにセットし(S71)、Rf-NICのフラグをセットし(S72)、Rf-Encのフラグをリセットし(S73)、Rf-NICモジュール部(CPU、ROM、RAMおよび暗号化チップ)への電源をオンして(S24)終了する。前述したように、この場合はNICでの省電力効果は生じない。
【0043】
また、リンク速度が11M bps又はリンク無しの場合の省エネ設定は図16に示すように、Rf-NICのフラグをリセットし(S81)、Rf-NICモジュール部(CPU、ROM、RAMおよび暗号化チップ)への電源をオフして(S82)終了する。
【0044】
図17は、図3において、有線NIC20における送受信データのネットワーク処理をプリンタコントローラ10のCPU11で行う場合(図5の表で条件:11b/11Mbps、省エネ処理(1):MFPC)、無線NIC30のCPU31の動作クロック周波数を200MHzに下げてネットワーク処理を行う省エネ処理(1)の省エネ設定フローを示す。先ず、Et-NICのフラグがリセットされているか否かを判断し(S91)、リセットされている場合(S91/Y)、Rf-NIC CPU周波数を200MHzにセットし(S92)、続いてRf-NIC、Rf-Encの各フラグをそれぞれセットし(S93,S94)、Rf-NICモジュール部(CPU/ROM/RAM/Enc-Chip)の電源をオンにし(S95)、処理を終了する。一方、ステップS91でEt-NICのフラグがリセとされていない場合はRf-NICのフラグをリセットし(S96)、Rf-NICモジュール部(CPU/ROM/RAM/Enc-Chip)の電源をオフにし(S97)、処理を終了する。
【0045】
以上説明したように、本発明によれば、システム機器のNICにおいて、電力消費を抑える複数の省エネ処理を、リンク速度に応じた適切な組合せを採用することで、リンク速度が必要とする処理能力を確保した上で、最適な省電力動作を行わせることが可能になる。
また、複数のNICが接続されている場合、一方のNIC(有線)の省電力状態(プリンタコントローラでプロトコル処理)により、他方のNIC(無線)でのプロトコル処理を高速のNIC側で実行する等の省エネ処理を採用することで、各NICの処理能力を確保した上で、全体的に最適な省電力動作を行わせることも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施形態において、省エネ処理の対象となるNIC上の箇所を示す説明図である。
【図2】一つの有線NICを備えた画像形成装置において省エネを行う場合の省エネ処理の基本的な組み合わせ例とその省エネ効果を示す表である。
【図3】プリンタコントローラに2つのNIC(有線NICと無線NIC)が接続される場合の説明図である。
【図4】無線NICの場合の各条件における省エネ処理の組み合わせ例とそれによる省エネ効果を示す表である。
【図5】プリンタコントローラに2つのNIC(有線NICと無線NIC)が接続される場合の省エネ処理の組み合わせ方についての説明図である。
【図6】NICの種類が異なる場合の省エネ処理の組み合わせ例とその省エネ効果比較例を示す表である。
【図7】EthernetI/F部をプリンタコントローラ側に設けるようにした場合の説明図である。
【図8】基本的な省エネ処理の組み合わせにおけるプリンタコントローラのCPUが行う処理フローを示す図である。
【図9】省エネ処理の組み合わせにおけるEt(有線)NICのCPUが行う処理フローを示す図である。
【図10】Et-NICの1Gbpsにおける省エネ設定のフローチャートを示す図である。
【図11】Et-NICの100Mbpsにおける省エネ設定のフローチャートを示す図である。
【図12】Et-NICの10Mbps又はリンク無しにおける省エネ設定のフローチャートを示す図である。
【図13】2つのNIC(有線NICと無線NIC)接続されている場合のプリンタコントローラのCPUが行う処理フローを示す図である。
【図14】省エネ処理の組み合わせにおけるRf(無線)NICのCPUが行う処理フローを示す図である。
【図15】Rf-NICの54Mbpsにおける省エネ設定のフローチャートを示す図である。
【図16】Rf-NICの11Mbpsにおける省エネ設定のフローチャートを示す図である。
【図17】有線NICの省エネ状態を条件に加えた場合のRf-NICの11Mbpsにおける省エネ設定のフローチャートを示す図である。
【符号の説明】
【0047】
10…プリンタコントローラ、11…CPU、12…ROM、13…RAM、14…NIC I/F、20…(有線)NIC、21…CPU、22…ROM、23…RAM、24…暗号化チップ、25…MFPCI/F、26…EthernetI/F、30…(無線)NIC、31…CPU、32…ROM、33…RAM、34…暗号化チップ、35…MFPCI/F、36…無線I/F。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
全体の制御を司るコントローラを備えると共に、ネットワークI/Fとプロトコル処理機能部および暗号化処理機能部を有するNICを備えるシステム機器であって、前記コントローラは、リンク状況に応じて前記NIC部におけるプロトコル処理機能部及び/又は暗号化処理機能部に対しそれらの処理機能にそれぞれ対応した異なる省エネ処理を組み合わせて実行することにより前記プロトコル処理機能部及び/又は暗号化処理機能部の各処理能力を選択的に低下又は停止させる省電力制御を行い、前記各処理機能部における構成要素が消費する電力をリンク状況に応じて段階的に低減させることを特徴とするNICを備えるシステム機器。
【請求項2】
請求項1に記載のNICを備えるシステム機器において、前記省エネ処理の1つは、リンク状況に応じてプロトコル処理を前記NIC側で行うか前記コントローラ側で行うかを決定し、コントローラ側で行う場合はNICにおける前記プロトコル処理機能部および暗号化処理機能部への電力の供給を停止するものであることを特徴とするNICを備えるシステム機器。
【請求項3】
請求項2に記載のNICを備えるシステム機器において、前記複数の省エネ処理のもう1つは、前記プロトコル処理機能部および暗号化処理機能部における構成要素の1つであるCPUの動作クロック周波数をリンク状況に応じて変更するものであることを特徴とするNICを備えるシステム機器。
【請求項4】
請求項2又は3に記載のNICを備えるシステム機器において、前記複数の省エネ処理のさらにもう1つは、前記暗号化処理機能部が行う暗号化処理についてハードウェアによる暗号化とソフトウェアによる暗号化とをリンク状況に応じて切換えるものであることを特徴とするNICを備えるシステム機器。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載のNICを備えるシステム機器において、前記NICの前記各機能を実現する各構成要素の消費電力情報を記憶手段に記憶しておき、前記コントローラは、前記記憶手段から取得した前記各構成要素の消費電力情報に基づいて前記各省エネ処理のリンク状況に応じた最適な組み合わせを決定することを特徴とするNICを備えるシステム機器。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載のNICを備えるシステム機器において、前記省電力制御は、前記コントローラにおけるCPUが所定のプログラムを実行することにより行われることを特徴とするNICを備えるシステム機器。
【請求項7】
請求項6に記載のNICを備えるシステム機器において、前記所定のプログラムは前記NIC部における記憶手段から取得することを特徴とするNICを備えるシステム機器。
【請求項8】
請求項5から7のいずれかに記載のNICを備えるシステム機器において、前記各省エネ処理における電力消費順位をあらかじめ決定しておきその順位を、組み合わせた省エネ処理の実行順位に適応させることを特徴とするNICを備えるシステム機器。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載のNICを備えるシステム機器において、前記コントローラに複数のNICが接続されている場合、一方のNIC部についての前記省エネ処理の組み合わせ及び/又は組み合わせた省エネ処理の適用順位の決定条件に他方のNIC部における省電力状態を加えることを特徴とするNICを備えるシステム機器。
【請求項10】
ネットワークI/Fとプロトコル処理機能部および暗号化処理機能部を有するNICを備えるシステム機器の省電力制御方法であって、
リンク状況に応じて前記NIC部におけるプロトコル処理機能部及び/又は暗号化処理機能部に対しそれらの処理機能にそれぞれ対応した異なる省エネ処理を組み合わせて実行することにより前記プロトコル処理機能部及び/又は暗号化処理機能部の各処理能力を選択的に低下又は停止させる省電力制御を行い、前記各処理機能部における構成要素が消費する電力をリンク状況に応じて段階的に低減させることを特徴とするNICを備えるシステム機器の省電力制御方法。
【請求項11】
請求項10に記載のNICを備えるシステム機器の省電力制御方法において、前記省エネ処理は、
(1)リンク状況に応じてプロトコル処理をNIC側で行うかコントローラ側で行うかを決定し、コントローラ側で行う場合はNICにおけるプロトコル処理機能部および暗号化処理機能部への電源をオフにする。
(2)リンク状況に応じて前記プロトコル処理機能部および暗号化処理機能部の各機能を実現するNICにおけるCPUの動作クロック周波数を変更する。
(3)リンク状況に応じてNICにおけるハードウェアによる暗号化処理とソフトウェアによる暗号化処理とを切換える。
を含むことを特徴とするNICを備えるシステム機器の省電力制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2008−139932(P2008−139932A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−323005(P2006−323005)
【出願日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ETHERNET
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】