説明

NiSi膜の形成方法、シリサイド膜の形成方法、シリサイドアニール用金属膜の形成方法、真空処理装置、及び成膜装置

【課題】 トレンチ及びホールパターンの底面や、側面に被覆カバレッジ性の良好なシリサイド膜を形成できるNiSi膜の形成方法及びシリサイド膜の形成方法、シリサイドアニール用金属膜の形成方法、真空処理装置、並びに成膜装置の提供。
【解決手段】Siを主組成とする基板上にNi膜を形成し、このNi膜を加熱処理することにより基板の上層にNiSi膜を形成する方法であって、NiSi膜を形成する加熱処理の前に、その加熱処理温度よりも低く、NiSi膜が形成されない温度で、Hガスを用いてNi膜をプレアニールしてNi膜中の不純物を除去し、次いで得られたNi膜をシリサイドアニールする。シリサイド膜を形成する前にプレアニールするためのプレアニール用のHガスを導入する手段を備えた装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、NiSi膜の形成方法、シリサイド膜の形成方法、シリサイドアニール用金属膜の形成方法、真空処理装置、及び成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体デバイスの微細化技術が進むにつれて、また、半導体デバイスが立体的な構造を取るにつれて、基板上に形成されたトレンチ及びホールパターンの底面や、側面にシリサイド膜を形成する用途が増えてきていると共に、この底面や側面に対する高カバレッジ性(段差被覆性)の要求が高まっている。
【0003】
このようなシリサイド膜を形成するための金属として、通常、Ti、Co、Ni等が使用されている。これらの金属の成膜には、従来、スパッタリング法が使われてきたが、微細化技術の進歩に伴って、底面や側面への被膜のカバレッジ性が悪くなり、適応が困難になってきている。
【0004】
このため、金属化合物をガス化して導入し、成膜を行うCVD法が開発されてきている。ところが、このCVD法は、金属原料ガスとして有機金属化合物を用いるため、成膜された膜中にC、N、Oなどの不純物が多く含まれてしまい、シリサイド化の加熱処理を行っても、シリサイド化反応が阻害され、従来のスパッタリング法で形成した金属膜よりもシリサイド膜形成が困難であるという問題がある。
【0005】
なお、CVD法による成膜のみでも、シリサイド膜が直接生じる高温(例えば、500℃)では、シリサイド膜形成は可能であるが、半導体デバイス等に必要な良好なシリサイド界面の形成が難しい。例えば、Niの場合、NiSi膜が良好な低抵抗界面を作るが、高温成膜ではNiSi膜が形成してしまい、フラットな低抵抗界面が出来ないという問題がある。また、このような高温成膜の場合、成膜速度は上昇するが、供給律速になり、被膜カバレッジ性が悪化するという問題もある。
【0006】
また、半導体デバイスを製造する際に、例えば、金属導体膜中の酸素を除去するためや、金属導体膜(例えば、Cu膜)中の不純物を除去して電気的特性の向上を図るためや、下地膜とCu膜との密着性の向上を図るため等に、水素アニール処理が行われている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−203211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、上述の従来技術の問題点を解決することにあり、Siを主組成とする基板やゲート電極に対して、金属膜と低抵抗電気コンタクトを取るために、トレンチ及びホールパターンの底面や、側面に被膜カバレッジ性の良好な低抵抗のシリサイド膜を形成できるNiSi膜の形成方法、シリサイド膜の形成方法、シリサイドアニール用金属膜の形成方法、真空処理装置、及び成膜装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、熱CVD法で作製した金属膜を、Hガス中で加熱処理を行うことにより、膜中の不純物濃度を低減させることができ、その後にシリサイド化を行うことにより、良好なシリサイド膜を形成できることに気が付き、また、このシリサイド膜形成方法を効率よく行うため、金属膜形成後、真空一貫処理で加熱処理できる成膜装置が有効であることに気が付き、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明のNiSi膜の形成方法は、Siを主組成とする基板上にNi膜を形成し、このNi膜を加熱処理することにより該基板の上層にNiSi膜を形成する方法であって、NiSi膜を形成する加熱処理の前に、その加熱処理温度よりも低く、NiSi膜が形成されない温度で、Hガスを用いて前記Ni膜をプレアニールし、Ni膜中の不純物を除去し、次いで得られたNi膜をシリサイドアニールしてNiSi膜を形成することを特徴とする。
【0011】
前記NiSi膜の形成方法において、Ni膜の形成原料として、ニッケルアルキルアミジネイト(ニッケルアルキルアミジナート)を用い、熱CVD法によりNi膜を形成することを特徴とする。
【0012】
本発明の低抵抗のシリサイド膜の形成方法は、Siを主組成とする基板上に金属膜を形成し、この金属膜を加熱処理することにより該基板の上層にシリサイド膜を形成する方法であって、シリサイド膜を形成する加熱処理の前に、その加熱処理温度よりも低く、低抵抗のシリサイド膜が形成されない温度で、Hガスを用いて前記金属膜をプレアニールし、金属膜中の不純物を除去し、次いで得られた金属膜をシリサイドアニールしてシリサイド膜を形成することを特徴とする。
【0013】
前記低抵抗のシリサイド膜の形成方法において、金属膜の形成原料として、ニッケルアルキルアミジネイト又はコバルトアルキルアミジネイト(コバルトアルキルアミジナート)を用い、熱CVD法により金属膜を形成することを特徴とする。
【0014】
本発明のシリサイドアニール用金属膜の形成方法は、Siを主組成とする基板上に熱CVD法により金属膜を形成し、この金属膜に対してHガスを用いてプレアニールすることにより該金属膜中の金属膜形成用原料由来の不純物である窒素を除去することを特徴とする。
【0015】
前記シリサイドアニール用金属膜の形成方法において、金属膜がNi膜又はCo膜であることを特徴とする。
【0016】
前記シリサイドアニール用金属膜の形成方法において、金属膜形成原料として、ニッケルアルキルアミジネイト又はコバルトアルキルアミジネイトを用いることを特徴とする。
【0017】
前記シリサイドアニール用金属膜の形成方法において、Hガスを用いるプレアニールを300〜400℃で行うことを特徴とする。
【0018】
本発明の第1の真空処理装置は、真空排気系を備えた成膜室を有し、該成膜室内の下部に設置した加熱手段を備えた基板支持ステージとその上部に設けたシャワープレートとを備え、該成膜室に還元ガスを導入するためのガス導入径路とニッケルアルキルアミジネイトガスからなるNi膜形成用原料ガスを導入するためのガス導入径路とが接続され、該Ni膜形成用原料ガスを導入するためのガス導入径路には原料容器が設けられ、この原料容器には液体化した原料をバブリングによりガス化して該成膜室内へ導入するための不活性ガス導入径路が接続されてなる、Siを主組成とする基板上にシリサイド化を目的としたNi膜を形成するための真空処理装置であって、真空下に形成されるNi膜をシリサイドアニールして該基板の上層にNiSi膜を形成する前に行われるNi膜の膜質を改善するプレアニール用のHガスを供給するためのガス供給径路が該成膜室に設けられていることを特徴とする。
【0019】
本発明の第2の真空処理装置は、真空排気系を備えた成膜室を有し、該成膜室内の下部に設置した加熱手段を備えた基板支持ステージとその上部に設けたシャワープレートとを備え、該成膜室に還元ガスを導入するためのガス導入径路とニッケルアルキルアミジネイトガス又はコバルトアルキルアミジネイトガスからなる金属膜形成用原料ガスを導入するためのガス導入径路とが接続され、該金属膜形成用原料ガスを導入するためのガス導入径路には原料容器が設けられ、この原料容器には液体化した原料をバブリングによりガス化して該成膜室内へ導入するための不活性ガス導入径路が接続されてなる、Siを主組成とする基板上にシリサイド化を目的とした金属膜を形成するための真空処理装置であって、真空下に形成された金属膜をシリサイドアニールして該基板の上層にシリサイド膜を形成する前に行われる金属膜の膜質を改善するプレアニール用のHガスを供給するためのガス供給径路が該成膜室に設けられていることを特徴とする。
【0020】
前記第2の真空処理装置において、成膜室が、さらに、プレアニールされた金属膜を真空のままシリサイド化を行うための加熱処理機構を備えていることを特徴とする。
【0021】
前記第1及び2の真空処理装置において、成膜室が、さらに、プレアニールを行うための加熱処理機構を備えていることを特徴とする。
【0022】
本発明の成膜装置は、真空排気系を備えた成膜室を有し、該成膜室内の下部に設置した加熱手段を備えた基板支持ステージとその上部に設けたシャワープレートとを備え、該成膜室に還元ガスを導入するためのガス導入径路とニッケルアルキルアミジネイトガスからなるNi膜形成用原料ガスを導入するためのガス導入径路とが接続され、該Ni膜形成用原料ガスを導入するためのガス導入径路には原料容器が設けられ、この原料容器には液体化した原料をバブリングによりガス化して該成膜室内へ導入するための不活性ガス導入径路が接続されてなる、Siを主組成とする基板上にシリサイド化を目的としたNi膜を形成する真空処理装置と、真空排気系を備えた成膜室を有し、該成膜室内の下部に設置した加熱手段を備えた基板支持ステージとその上部に設けたシャワープレートとを備え、該成膜室に、該真空処理装置により真空下に形成されたNi膜の膜質を改善するプレアニール用のHガスを供給するためのガス供給径路が設けられているプレアニール室と、真空排気系を備えた成膜室を有し、該成膜室内の下部に設置した加熱手段を備えた基板支持ステージを備え、該成膜室に、該プレアニール室において真空下に形成されたNi膜の膜質を改善するプレアニールを行ったNi膜を真空下NiSi化するためのシリサイドアニール室と、該基板のロード/アンロード室とを多角形の搬送室の周囲にゲートバルブを介して接続してなり、該ロード/アンロード室から搬送された該基板を処理するために、該搬送室を介して、該真空処理装置内、該プレアニール室内、及びシリサイドアニール室内へ基板を順次搬送・搬出できるように構成されてなることを特徴とする。
【0023】
本発明の成膜装置はまた、真空排気系を備えた成膜室を有し、該成膜室内の下部に設置した加熱手段を備えた基板支持ステージとその上部に設けたシャワープレートとを備え、該成膜室に還元ガスを導入するためのガス導入径路とニッケルアルキルアミジネイトガス又はコバルトアルキルアミジネイトガスからなる金属膜形成用原料ガスを導入するためのガス導入径路とが接続され、該金属膜形成用原料ガスを導入するためのガス導入径路には原料容器が設けられ、この原料容器には液体化した原料をバブリングによりガス化して該成膜室内へ導入するための不活性ガス導入径路が接続されてなる、Siを主組成とする基板上にシリサイド化を目的とした金属膜を形成する真空処理装置と、真空排気系を備えた成膜室を有し、該成膜室内の下部に設置した加熱手段を備えた基板支持ステージとその上部に設けたシャワープレートとを備え、該成膜室に、該真空処理装置により真空下に形成された金属膜の膜質を改善するプレアニール用のHガスを供給するためのガス供給径路が設けられているプレアニール室と、真空排気系を備えた成膜室を有し、該成膜室内の下部に設置した加熱手段を備えた基板支持ステージを備え、該成膜室に、該プレアニール室において真空下に形成された金属膜の膜質を改善するプレアニールを行った金属膜を真空下シリサイド化するためのシリサイドアニール室と、該基板のロード/アンロード室とを多角形の搬送室の周囲にゲートバルブを介して接続してなり、該ロード/アンロード室から搬送された該基板を処理するために、該搬送室を介して、該真空処理装置内、該プレアニール室内、及びシリサイドアニール室内へ基板を順次搬送・搬出できるように構成されてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、できるだけ低温で行うCVD法により金属膜を形成し、低温で金属膜中の不純物を除去して金属膜の膜質を改善してから、シリサイド化反応を行うので、所望の低抵抗NiSi膜(シリサイド膜)を作製することができ、また、反応律速条件で実施可能であるので、良好な被膜カバレッジ性を保持することができるという効果を奏する。また、金属膜の形成後、大気に暴露せずに真空一貫で処理することが可能であるので、不純物の蒸発を加速でき、再酸化などの不純物再汚染を最小限に抑えることが可能であるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明で使用する熱CVD装置の一構成例を示す模式的な概略図。
【図2】シリサイド(NiSi)膜を形成するプロセスを説明するためのフロー図。
【図3】Ni/Si及びCo/Siの各相についての温度(℃)と抵抗値(arb.units)との関係を示すグラフ。
【図4】シリサイドアニール後の基板の断面SEM像を示す図であり、(a)は、アズデポ膜形成後にHプレアニールを行い、次いでシリサイドアニールを行って得られた膜のSEM像、そして(b)は、アズデポ膜形成後にHプレアニールを行わず、直ちにシリサイドアニールを行って得られた膜のSEM像。
【図5】AES分析結果を示すグラフであり、図4の場合に対応し、(a)は、アズデポ状態の膜(アズデポ膜)の場合、(b)は、アズデポ膜形成後にHプレアニールを行わず、直ちにシリサイドアニールを行って得られた膜の場合、そして(c)は、アズデポ膜形成後にHプレアニールを行い、次いでシリサイドアニールを行って得られた膜の場合のグラフ。
【図6】シリサイドアニールプロセスを実施した場合の各段階での基板の断面SEM像を時系列に並べて示す図であり、(a)は、アズデポ膜の場合、(b)は、アズデポ膜形成後にHプレアニールを行わず、直ちにシリサイドアニールを行って得られた膜の場合、(c)は、アズデポ膜形成後にHプレアニールを行って得られた膜の場合、(d)は、アズデポ膜形成後にHプレアニールを行い、次いでシリサイドアニールを行って得られた膜の場合のSEM像。
【図7】AES分析結果を示すグラフであり、図6の場合に対応し、(a)は、アズデポ膜の場合、(b)は、アズデポ膜形成後にHプレアニールを行わず、直ちにシリサイドアニールを行って得られた膜の場合、(c)は、アズデポ膜形成後にHプレアニールを行って得られた膜の場合、(d)は、アズデポ膜形成後にHプレアニールを行い、次いでシリサイドアニールを行って得られた膜の場合のグラフ。
【図8】本発明に係る成膜装置の一構成例を模式的に示す平面図。
【図9】実施例1において各種プレアニールガスを用いて得られた膜を有する基板の表面SEM像を示す図であり、(a)は、アズデポ膜の場合、(b)は、アズデポ膜形成後に直ちにシリサイドアニールを行って得られた膜の場合、(c)は、アズデポ膜形成後にHプレアニールを行って得られた膜の場合、(d)は、アズデポ膜形成後に後にHプレアニールを行い、次いでシリサイドアニールを行って得られた膜の場合、(e)は、アズデポ膜形成後にArプレアニールを行って得られた膜の場合、(f)は、アズデポ膜形成後にArプレアニールを行い、次いでシリサイドアニールを行って得られた膜の場合、(g)は、アズデポ膜形成後にNHプレアニールを行って得られた膜の場合、そして(h)は、アズデポ膜形成後にNHプレアニールを行い、次いでシリサイドアニールを行って得られた膜の場合のSEM像。
【図10】実施例2において得られた膜を有する基板の断面及び表面SEM像を示す図であり、(a−1)及び(a−2)は、それぞれ、アズデポ膜の断面及び表面のSEM像、(b−1)及び(b−2)は、それぞれ、アズデポ膜形成後に直ちにシリサイドアニールして得られた膜の断面及び表面のSEM像、(c−1)及び(c−2)は、それぞれ、アズデポ膜形成後にHプレアニールを行って得られた膜の断面及び表面のSEM像、(d−1)及び(d−2)は、それぞれ、アズデポ膜形成後にHプレアニールを行い、次いでシリサイドアニールを行って得られた膜の断面及び表面のSEM像。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を説明した後、図面を参照して、個々の要素について詳細に説明する。
【0027】
本発明に係るNiSi膜の形成方法の実施形態によれば、この形成方法は、Siを主組成とする基板上に、ニッケルアルキルアミジネイトガスを原料ガスとして用い、また、還元ガスとしてNH及びHを用い、熱CVD法により形成されたNi膜を加熱処理することにより基板の上層にNiSi膜を形成する方法であって、NiSi膜を形成する加熱処理の前に、その加熱処理温度よりも低く、NiSi膜が形成されない温度、一般に300〜400℃、好ましくは300〜350℃の温度で、Hガスを用い、前記Ni膜をプレアニールしてNi膜中の不純物を除去し、次いで一般に400〜500℃、好ましくは400〜450℃の温度で、得られたNi膜をシリサイドアニールしてNiSi膜を形成することからなる。なお、上記プレアニール処理の温度は、Ni膜を形成した装置内でプレアニール処理を行う場合には、その下限温度がNi膜を形成した温度であっても、Ni膜中の不純物Nを除くことができれば良い。
【0028】
本発明に係る低抵抗のシリサイド膜の形成方法の実施形態によれば、この形成方法は、Siを主組成とする基板上に、ニッケルアルキルアミジネイトガス又はコバルトアルキルアミジネイトガスを原料ガスとして用い、また、還元ガスとしてNH及びHを用い、熱CVD法により形成されたNi膜又はCo膜を加熱処理することにより基板の上層に低抵抗のシリサイド膜を形成する方法であって、低抵抗のシリサイド膜を形成する加熱処理の前に、その加熱処理温度よりも低く、低抵抗のシリサイド膜が形成されない温度、一般に300〜400℃、好ましくは300〜350℃の温度で、Hガスを用い、前記Ni膜又はCo膜をプレアニールして金属膜中の不純物を除去し、次いで一般に400〜500℃、好ましくは400〜450℃の温度で、得られたNi膜又はCo膜をシリサイドアニールしてシリサイド膜を形成することからなる。
【0029】
本発明に係るシリサイドアニール用金属膜の形成方法の実施形態によれば、この形成方法は、Siを主組成とする基板上に、熱CVD法により、金属膜形成原料としてニッケルアルキルアミジネイト又はコバルトアルキルアミジネイトを用い、Ni膜又はCo膜からなる金属膜を形成し、この金属膜に対してHガスを用いて、300〜400℃でプレアニールすることにより金属膜中の金属膜形成用原料由来の不純物である窒素を除去することからなる。
【0030】
本発明に係る真空処理装置の実施形態によれば、この真空処理装置は、真空排気系を備えた成膜室を有し、成膜室内の下部に設置された加熱手段を備えた基板支持ステージとその上部に設けられたシャワープレートとを備え、成膜室にNH及びHからなる還元ガスを導入するためのガス導入径路とニッケルアルキルアミジネイトガスからなるNi膜形成用原料ガスを導入するためのガス導入径路とが接続され、Ni膜形成用原料ガスを導入するためのガス導入径路には原料容器が設けられ、この原料容器には液体化した原料をバブリングによりガス化して成膜室内へ導入するための不活性ガス導入径路が接続されてなる、Siを主組成とする基板上にシリサイド化を目的としたNi膜を形成するための真空処理装置であって、さらにこの成膜室には、真空下に形成されるNi膜をシリサイドアニールして基板の上層にNiSi膜を形成する前に行われるNi膜の膜質を改善するプレアニール用のHガスを供給するためのガス供給径路が設けられており、そしてこの成膜室が、さらにまた、プレアニールされたNi膜を真空のままシリサイド化を行うための加熱処理機や、プレアニールを行うための加熱処理機構を備えていても良い。
【0031】
本発明に係る真空処理装置の別の実施形態によれば、この真空処理装置は、真空排気系を備えた成膜室を有し、成膜室内の下部に設置された加熱手段を備えた基板支持ステージとその上部に設けられたシャワープレートとを備え、成膜室にNH及びHからなる還元ガスを導入するためのガス導入径路とニッケルアルキルアミジネイトガス又はコバルトアルキルアミジネイトガスからなる金属膜形成用原料ガスを導入するためのガス導入径路とが接続され、金属膜形成用原料ガスを導入するためのガス導入径路には原料容器が設けられ、この原料容器には液体化した原料をバブリングによりガス化して成膜室内へ導入するための不活性ガス導入径路が接続されてなる、Siを主組成とする基板上にシリサイド化を目的とした金属膜を形成するための真空処理装置であって、さらにこの成膜室には、真空下に形成される金属膜をシリサイドアニールして基板の上層にシリサイド膜を形成する前に行われる金属膜の膜質を改善するプレアニール用のHガスを供給するためのガス供給径路が成膜室に設けられており、そしてこの成膜室が、さらにまた、プレアニールされた金属膜を真空のままシリサイド化を行うための加熱処理機構や、プレアニールを行うための加熱処理機構を備えていても良い。
【0032】
次いで、本発明の真空処理装置である熱CVD成膜装置について図1を参照して説明する。図1に示すように、真空処理装置は、成膜室11を有し、この成膜室内に原料ガス(例えば、ニッケルアルキルアミジネイトガス又はコバルトアルキルアミジネイトガス)及び還元ガス(例えば、NH及びHからなるガス)を導入するために、成膜室11の天井部に、原料容器12からのガス導入径路13、NHガスを導入するためのガス導入径路14及びHガスを導入するためのガス導入径路15が接続されている。これらのガス導入径路には、マスフローコントローラー及びバルブが介設されており、所定流量のNHガス及びHガスを、それぞれ、成膜室11内に導入できるように構成されている。成膜室11の天井部にはまた、キャリアガス(例えば、Ar等)を導入するためのガス導入径路16が接続されている。成膜室11内には、その下部に処理される基板Sを載置するための基板支持ステージ17が設置されており、また、その上部の天井部にはシャワープレート18が配置されている。原料容器12には原料ガス形成用の液体原料12aが充満されており、ガス導入径路16から分岐した径路16aから例えばArガス等を吹き込んで、バブリングにより原料ガスを形成せしめ、成膜室11内へ導入できるように構成されている。さらに、成膜室11内を所定の減圧に設定するための排気系19が接続されている。
【0033】
図1に示す真空処理装置の動作は従来技術の熱CVD装置の場合とほぼ同じであるので、簡略化して以下説明する。処理される基板Sを成膜室11内の基板支持ステージ17上に載置し、原料容器12からバブリング等により形成せしめた原料ガスを、また、ガス導入径路14及び15を介して還元ガスを、シャワープレート18を経て成膜室11内へ導入する。成膜室11内に載置されている基板Sは、所定の温度に加熱されており、また、成膜室11内は所定の減圧に保たれている。かくして、基板S上で成膜が行われ、所望の膜厚の金属膜が形成される。
【0034】
以下、Ni膜用原料として、ニッケルアルキルアミジネイト(N,N’−Ni((tBu)−amd)(以下、Ni−Amdと略す。))を用いて、熱CVDによりNi膜を形成し、Hプレアニールを行い、次いでシリサイドアニールを行うプロセスについて具体的に説明する。
【0035】
まず、Si基板(ウェハ)上に金属膜(Ni膜)を形成した後にシリサイド膜を形成する方法について、図2を参照して説明する。
【0036】
図2(a)〜(e)に示すように、Si基板上に形成されている自然酸化膜を通常の方法により除去し(a)、自然酸化膜の除去されたSi基板上に、CVD法やPVD法等により、通常のプロセス条件でNi膜を形成し(b)、Ni膜の形成されたSi基板に対して、所定の温度で最初の熱処理(プレアニール)を行ってSi基板上にNiSi膜を形成し(その際、この膜上に未反応のNi膜が残留している。)(c)、ウエットエッチングにより未反応のNi膜を除去し(d)、次いで所定の温度で2回目の熱処理(シリサイドアニール)を行ってシリサイド(NiSi)膜を形成する(e)。
【0037】
上記した最初のプレアニールは低温で行い、準安定なシリサイドを形成した後に、未反応のNi膜を除去する。この場合、最初のプレアニールを低温で行うのは、Siの拡散反応が進みすぎて、ゲート電極と拡散層形状の周辺部にまで余分なシリサイド膜が形成されるのを防ぐためである。なお、上記Ni膜の膜厚には特に制限はないが、コスト面から見ると、できるだけ薄い膜の方が良い。厚すぎると、シリサイド化を途中で止めて、未反応Ni膜をエッチ除去するコストが余分にかかるという問題があるからである。最適な膜厚であれば、そのようなエッチ除去の手間を省いて、シリサイド膜を形成できる。
【0038】
図3に、Ni/Si及びCo/Siにおける、金属リッチ相、NiSi、NiSi、CoSi、CoSi、CoSiについての温度(℃)と抵抗値(arb.units)との関係を示す。図3から明らかなように、NiSi、CoSiの場合に抵抗値が低くなることが分かる。
【0039】
次いで、上記Ni−Amdを用いて行う成膜について具体的に説明する。110℃程度に加熱されて保持された原料容器内に、Ni膜形成用原料としてNi−Amdを溶解した液を充填する。原料ガスの導入径路及び成膜室の壁面は、配管内及び成膜室壁面への原料吸着を抑制するため、120℃以上に加温し、基板支持ステージ温度は350℃以下、例えば200〜280℃に保持する。
【0040】
Ni−Amdを成膜室まで輸送するキャリアガスにはAr等の不活性ガスを用い、例えば流量150sccm程度にてバブリングさせれば良い。
【0041】
Ni−Amdガスは単なる熱分解では280℃以下で成膜速度が極めて遅いため、還元ガスとしてHとNHとを使用する。還元ガスの総量はキャリアガス流量の2倍以上とし、H/(H+NH)比は0.9以下とすれば良く、H:NH=1:1でも良い。
【0042】
上記の条件にてNi成膜を行う。
【0043】
成膜終了後、プレアニール(Hプレアニール)をする場合にはHフローが可能なチャンバに搬送する。真空中搬送であっても、一度大気に取り出してから搬送してもどちらでも良い。この場合、成膜終了後の基板を冷却することなく、そのままの状態で次の処理チャンバへ搬送すればよい。成膜温度がプレアニール温度範囲内であれば、そのままプレアニールを行い、プレアニール温度範囲よりも低ければ、加熱してプレアニールを行えば良い。
【0044】
Ni膜に対する上記プレアニールにおけるガス種としては、以下の実施例で説明するように、Hガスを使用することが必要であり、ArガスやNHガスでは所望の目的を達成することができない。
【0045】
以下で説明する図5及び7のAES結果より明らかなように、原料ガス由来や、NH還元ガス由来のNがアズデポ膜中に十数%程度混入していることが分かっている。Hプレアニールによりアズデポ膜中の不純物であるNがNH等として除去されることにより金属膜の膜質が改善され、良好なシリサイド界面が形成されたものと考えられる。
【0046】
プレアニールの加熱温度は一般に300〜400℃、好ましくは300〜350℃の温度で、保持時間は5min程度で行う。この温度範囲内で行えば、プレアニールの効果を達成でき、特にNi膜中に存在する不純物であるNが減少・除去され得る。一方、この温度範囲を外れると、プレアニールの効果を達成できない。
【0047】
プレアニールの後、通常の方法でシリサイドアニール処理を行なった。この場合の処理温度は400〜500℃、好ましくは400〜450℃である。この温度範囲内であれば、良好なシリサイド化が起こり、Niの場合、NiSi膜が形成され得る。
【0048】
以下の実施例1と同様なCVD条件で成膜(アズデポ膜形成)した後に、Hプレアニールを行い、次いでシリサイドアニールを行って得られた膜の場合、及びアズデポ膜形成後にHプレアニールを行わず、直ちにシリサイドアニールを行って得られた膜の場合について、それぞれ、シリサイドアニール後の基板断面のSEM像を図4(a)及び(b)に示す。また、図5(a)〜(c)に、アズデポ膜(a)、アズデポ膜形成後にHプレアニールを行わず、直ちにシリサイドアニールを行って得られた膜(b)、及びアズデポ膜形成後にHプレアニールを行い、次いでシリサイドアニールを行って得られた膜(c)について、それぞれ、AES分析を行った結果を示す。
【0049】
図4(a)から明らかなように、アズデポ後にHプレアニールを行い、次いでシリサイドアニールを行った場合は、全面でシリサイド化反応が起きていることが分かる。この点については、図5(c)に示すAES分析の結果からもNiSiが形成されていることが分かる。Hプレアニールを行うことにより、アズデポ膜中に不純物として存在しているN(図5(a))が除去されている(図5(c))ために、このような結果が得られたものと考えられる。
【0050】
一方、図4(b)から明らかなように、アズデポ膜形成後にHプレアニールを行わず、直ちにシリサイドアニールを行った場合は、シリサイド化反応は起きているが、結晶方位に沿った楔状の反応が起きていることが分かる。結晶方位に沿った楔状の反応は、高抵抗なNiSiが形成していると考えられる。このNiSiが形成されてしまうと、低抵抗なNiSiにすることはできない。図5(b)から明らかなように、Hプレアニールを行わないと、得られたシリサイド膜中に不純物Nが残留していることから、このような結果が得られたものと考えられる。
【0051】
上記図4の場合と同様に、シリサイドアニールプロセスを実施した場合の各段階での基板の断面SEM像を時系列に並べて、図6(a)〜(d)に示す。図6(a)は、以下の実施例1と同様な条件で形成したアズデポ膜のSEM像、図6(b)は、アズデポ膜形成後にHプレアニールを行わず、直ちにシリサイドアニールを行って得られた膜のSEM像、図6(c)は、アズデポ膜形成後にHプレアニールを行って得られた膜のSEM像、図6(d)は、アズデポ膜形成後にHプレアニールを行い、次いでシリサイドアニールを行って得られた膜のSEM像を示す。
【0052】
また、図7(a)〜(d)に、上記図6のSEM像を撮影した各膜に対応して、各膜のAES分析結果を示す。図7(a)は、アズデポ膜の場合、図7(b)は、アズデポ膜形成後にHプレアニールを行わず、直ちにシリサイドアニールを行って得られた膜の場合、図7(c)は、アズデポ膜形成後にHプレアニールを行って得られた膜の場合、図7(d)は、アズデポ膜形成後にHプレアニールを行い、次いでシリサイドアニールを行って得られた膜の場合のAES分析結果を示す。
【0053】
図7(c)から明らかなように、Hプレアニールによりアズデポ膜中の不純物、特にNが除去されていることが分かる。図7(b)及び(d)については、上記図5(b)及び(c)について説明した通りである。また、図7(d)の場合、Ni/Si境界がアズデポ膜の時よりブロードになっており、シリサイド化反応が起きていることが分かる(Niシリサイドにおいては、Niが拡散種である)。さらに、図6(d)及び7(d)から、NiSi膜が形成されていることが分かる。
【0054】
上記ではSi基板を用いて説明したが、本発明ではSiを主組成とする基板であれば、同様に良好なシリサイド膜が形成され得る。Siを主組成とする基板としては、例えば、Si基板、SiC基板及びSiGe基板等を挙げることができる。なお、金属膜であるアズデポ膜中の不純物を低下させ、金属膜と基板との反応を促進するという観点からは、Ni及びCo以外の他の金属を主組成とした金属膜を有する半導体デバイス等にも適応可能である。
【0055】
また、上記ではNi膜の場合について説明したが、Co膜の場合も、熱CVD法等により形成されたCo膜に対して、Ni膜の場合と同様に、Hプレアニールをして、不純物Nを除去した後に、シリサイドアニールを行えば、低抵抗のCoSi膜を形成することができる。
【0056】
本発明に係る成膜装置の実施の形態について図8を参照して以下説明する。
【0057】
この成膜装置8は、多角形形状の搬送室81の各辺に、ゲートバルブ82を介して、真空処理装置83、プレアニール室84、シリサイドアニール室85が接続されてなり、また、搬送室81にはゲートバルブ82を介してロード/アンロード室86が接続されており、ロード/アンロード室86から搬送された基板を処理するために、搬送ロボットにより、搬送室81を介して、真空処理装置83内、プレアニール室84内、及びシリサイドアニール室85内へ基板を順次搬送・搬出できるように構成されている。また、搬送室、その周囲に配置される基板処理装置ないしは基板処理室、及びロード/アンロード室等は、それぞれが真空排気系と接続されていても、或いは全体を纏めて1つの真空排気系で制御しても良いことは勿論である。
【0058】
上記真空処理装置83は、真空排気系を備えた成膜室を有し、成膜室内の下部に設置した加熱手段を備えた基板支持ステージとその上部に設けたシャワープレートとを備え、成膜室に還元ガスを導入するためのガス導入径路とニッケルアルキルアミジネイトガス又はコバルトアルキルアミジネイトガスからなる金属膜形成用原料ガスを導入するためのガス導入径路とが接続され、金属膜形成用原料ガスを導入するためのガス導入径路には原料容器が設けられ、この原料容器には液体化した原料をバブリングによりガス化して成膜室内へ導入するための不活性ガス導入径路が接続されてなる、Siを主組成とする基板上にシリサイド化を目的とした金属膜を形成する装置である。
【0059】
上記プレアニール室84は、真空排気系を備えた成膜室を有し、成膜室内の下部に設置した加熱手段を備えた基板支持ステージとその上部に設けたシャワープレートとを備え、成膜室に、真空処理装置により真空下に形成された金属膜の膜質を改善するプレアニール用のHガスを供給するためのガス供給径路が設けられているものである。
【0060】
上記シリサイドアニール室85は、真空排気系を備えた成膜室を有し、成膜室内の下部に設置した加熱手段を備えた基板支持ステージを備え、成膜室に、プレアニール室において真空下に形成された金属膜の膜質を改善するプレアニールを行った金属膜を真空下シリサイド化するためのものである。
【0061】
この成膜装置は、上記のようにしてシリサイド膜を形成した後、所望によりさらにこの膜上に他の膜を形成させたり、又は他の処理を行ったりする場合には、そのような膜形成工程や他の処理工程を行う1つ又は複数の装置を搬送室81の周りにゲートバルブ82を介して配置し、搬送室81内の搬送ロボットにより、順次搬入/搬出を行って、それぞれの処理を行うことができるように構成することができる。
【実施例1】
【0062】
本実施例では、熱CVD法により形成したNi膜に対してプレアニールする際に、プレアニール用ガス種として、Hガス、Arガス及びNHガスをそれぞれ用いて同じ条件下でプレアニールを行い、その後シリサイドアニールを行った。
【0063】
熱CVD法によるNi膜の形成は、原料ガスとしてNi−Amdガス並びに還元ガスとしてNHガス及びHガスを用い、シャワープレート温度:150℃、原料容器温度:130℃、基板支持ステージ温度:240℃、キャリアガス(Ar)流量:150sccm、NHガス流量:150sccm、Hガス流量:150sccm、成膜圧力:390Paで行った。また、Hガス、Arガス及びNHガスのそれぞれによるプレアニールは350℃で300秒の間行い、シリサイドアニールは400℃で行った。
【0064】
それぞれの工程における基板表面のSEM像を図9(a)〜(h)に示す。すなわち、図9(a)〜(h)は、それぞれ、アズデポ膜(a)、アズデポ膜形成後にプレアニールを行わず、直ちにシリサイドアニールして得られた膜(b)、アズデポ膜形成後にHプレアニールを行って得られた膜(c)、アズデポ膜形成後にHプレアニールを行い、次いでシリサイドアニールを行って得られた膜(d)、アズデポ膜形成後にArプレアニールを行って得られた膜(e)、アズデポ膜形成後にArプレアニールを行い、次いでシリサイドアニールを行って得られた膜(f)、アズデポ膜形成後にNHプレアニールを行って得られた膜(g)、そしてアズデポ膜形成後にNHプレアニールを行い、次いでシリサイドアニールを行って得られた膜(h)についてのSEM像を示す。
【0065】
図9(a)〜(h)から明らかなように、NiSi膜が形成されるシリサイド化反応を確認できたのはHプレアニールを行った場合のみであり、ArやNHによるプレアニールでは目的とするシリサイド膜は得られなかった。
【0066】
上記した図5及び7のAES結果に鑑みれば、アズデポ状態のNi膜中に混入されている原料ガス由来やNH還元ガス由来のNが、HプレアニールによりNH等として除去されることによりNi膜の膜質が改善され、良好な低抵抗シリサイド(NiSi)界面が形成されたものと考えられる。一方、Arガス及びNHガスによるプレアニールの場合には、そのような作用がなかったからであると考えられる。
【実施例2】
【0067】
本実施例では、原料ガスとしてNi−Amdガス並びに還元ガスとしてNHガス及びHガスを用い、(1)熱CVD法によりSi基板上にNi膜を形成した場合、(2)このアズデポ膜に対してHプレアニールせずに、直ちにシリサイドアニールしてシリサイド膜を形成した場合、(3)このアズデポ膜に対してHプレアニールだけした場合、及び(4)このアズデポ膜に対してHプレアニールし、次いでシリサイドアニールしてシリサイド膜を形成した場合について、基板上に形成された膜について、基板断面及び表面のSEM像を検討し、得られた膜の抵抗値を測定した。
【0068】
熱CVD法によるNi膜の形成は、シャワープレート温度:150℃、原料容器温度:130℃、基板支持ステージ温度:200℃、キャリアガス(Ar)流量:150sccm、NHガス流量:150sccm、Hガス流量:150sccm、成膜圧力:390Paで行った。また、Hプレアニールは350℃で300秒の間行い、シリサイドアニールは400℃で行った。
【0069】
得られたSEM像を図10(a−1)〜(d−2)に示す。図10(a−1)及び(a−2)は、それぞれ、アズデポ膜の断面及び表面のSEM像であり、この膜の抵抗値は39Ω/□(ohm/sq)であった。図10(b−1)及び(b−2)は、それぞれ、アズデポ膜に対して、直ちにシリサイドアニールして得られたシリサイド膜の断面及び表面のSEM像であり、得られた膜の抵抗値は10.9Ω/□(ohm/sq)であった。図10(c−1)及び(c−2)は、それぞれ、アズデポ膜に対してHプレアニールだけした場合の膜の断面及び表面のSEM像であり、得られた膜の抵抗値は8.8Ω/□(ohm/sq)であった。図10(d−1)及び(d−2)は、それぞれ、アズデポ膜に対してHプレアニールし、次いでシリサイドアニールして得られたシリサイド膜の断面及び表面のSEM像であり、得られた膜の抵抗値は3.1Ω/□(ohm/sq)であった。
【0070】
上記したように、本発明の方法により得られたシリサイド膜の抵抗値が最も低かった(図10(d−1)及び(d−2))。図10(d−1)及び(d−2)から明らかなように、本発明の方法によれば、全面がシリサイド(NiSi)化していた。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明によれば、低抵抗のシリサイド膜を提供できるので、シリサイド膜を適用する半導体デバイスを製造する技術分野で利用可能である。
【符号の説明】
【0072】
8 成膜装置 11 成膜室
12 原料容器 12a 液体原料
13、14、15、16 ガス導入径路
16a 径路 17 基板支持ステージ
18 シャワープレート 19 排気系
81 搬送室 82 ゲートバルブ
83 真空処理装置 84 プレアニール室
85 シリサイドアニール室 86 ロード/アンロード室
S 基板


【特許請求の範囲】
【請求項1】
Siを主組成とする基板上にNi膜を形成し、このNi膜を加熱処理することにより該基板の上層にNiSi膜を形成する方法であって、NiSi膜を形成する加熱処理の前に、その加熱処理温度よりも低く、NiSi膜が形成されない温度で、Hガスを用いて前記Ni膜をプレアニールし、Ni膜中の不純物を除去し、次いで得られたNi膜をシリサイドアニールしてNiSi膜を形成することを特徴とするNiSi膜の形成方法。
【請求項2】
請求項1において、Ni膜の形成原料として、ニッケルアルキルアミジネイトを用い、熱CVD法によりNi膜を形成することを特徴とするNiSi膜の形成方法。
【請求項3】
Siを主組成とする基板上に金属膜を形成し、この金属膜を加熱処理することにより該基板の上層にシリサイド膜を形成する方法であって、シリサイド膜を形成する加熱処理の前に、その加熱処理温度よりも低く、低抵抗のシリサイド膜が形成されない温度で、Hガスを用いて前記金属膜をプレアニールし、金属膜中の不純物を除去し、次いで得られた金属膜をシリサイドアニールして低抵抗のシリサイド膜を形成することを特徴とするシリサイド膜の形成方法。
【請求項4】
請求項3において、金属膜の形成原料として、ニッケルアルキルアミジネイト又はコバルトアルキルアミジネイトを用い、熱CVD法により金属膜を形成することを特徴とするシリサイド膜の形成方法。
【請求項5】
Siを主組成とする基板上に熱CVD法により金属膜を形成し、この金属膜に対してHガスを用いてプレアニールすることにより該金属膜中の金属膜形成用原料由来の不純物である窒素を除去することを特徴とするシリサイドアニール用金属膜の形成方法。
【請求項6】
請求項5において、金属膜がNi膜又はCo膜であることを特徴とするシリサイドアニール用金属膜の形成方法。
【請求項7】
請求項5又は6において、金属膜形成原料として、ニッケルアルキルアミジネイト又はコバルトアルキルアミジネイトを用いることを特徴とするシリサイドアニール用金属膜の形成方法。
【請求項8】
請求項5〜7のいずれか1項において、Hガスを用いるプレアニールを300〜400℃で行うことを特徴とするシリサイドアニール用金属膜の形成方法。
【請求項9】
真空排気系を備えた成膜室を有し、該成膜室内の下部に設置した加熱手段を備えた基板支持ステージとその上部に設けたシャワープレートとを備え、該成膜室に還元ガスを導入するためのガス導入径路とニッケルアルキルアミジネイトガスからなるNi膜形成用原料ガスを導入するためのガス導入径路とが接続され、該Ni膜形成用原料ガスを導入するためのガス導入径路には原料容器が設けられ、この原料容器には液体化した原料をバブリングによりガス化して該成膜室内へ導入するための不活性ガス導入径路が接続されてなる、Siを主組成とする基板上にシリサイド化を目的としたNi膜を形成するための真空処理装置であって、真空下に形成されるNi膜をシリサイドアニールして該基板の上層にNiSi膜を形成する前に行われるNi膜の膜質を改善するプレアニール用のHガスを供給するためのガス供給径路が該成膜室に設けられていることを特徴とする真空処理装置。
【請求項10】
真空排気系を備えた成膜室を有し、該成膜室内の下部に設置した加熱手段を備えた基板支持ステージとその上部に設けたシャワープレートとを備え、該成膜室に還元ガスを導入するためのガス導入径路とニッケルアルキルアミジネイトガス又はコバルトアルキルアミジネイトガスからなる金属膜形成用原料ガスを導入するためのガス導入径路とが接続され、該金属膜形成用原料ガスを導入するためのガス導入径路には原料容器が設けられ、この原料容器には液体化した原料をバブリングによりガス化して該成膜室内へ導入するための不活性ガス導入径路が接続されてなる、Siを主組成とする基板上にシリサイド化を目的とした金属膜を形成するための真空処理装置であって、真空下に形成された金属膜をシリサイドアニールして該基板の上層にシリサイド膜を形成する前に行われる金属膜の膜質を改善するプレアニール用のHガスを供給するためのガス供給径路が該成膜室に設けられていることを特徴とする真空処理装置。
【請求項11】
請求項10において、成膜室が、さらに、プレアニールされた金属膜を真空のままシリサイド化を行うための加熱処理機構を備えていることを特徴とする真空処理装置。
【請求項12】
請求項10又は11において、成膜室が、さらに、プレアニールを行うための加熱処理機構を備えていることを特徴とする真空処理装置。
【請求項13】
真空排気系を備えた成膜室を有し、該成膜室内の下部に設置した加熱手段を備えた基板支持ステージとその上部に設けたシャワープレートとを備え、該成膜室に還元ガスを導入するためのガス導入径路とニッケルアルキルアミジネイトガスからなるNi膜形成用原料ガスを導入するためのガス導入径路とが接続され、該Ni膜形成用原料ガスを導入するためのガス導入径路には原料容器が設けられ、この原料容器には液体化した原料をバブリングによりガス化して該成膜室内へ導入するための不活性ガス導入径路が接続されてなる、Siを主組成とする基板上にシリサイド化を目的としたNi膜を形成する真空処理装置と、真空排気系を備えた成膜室を有し、該成膜室内の下部に設置した加熱手段を備えた基板支持ステージとその上部に設けたシャワープレートとを備え、該成膜室に、該真空処理装置により真空下に形成されたNi膜の膜質を改善するプレアニール用のHガスを供給するためのガス供給径路が設けられているプレアニール室と、真空排気系を備えた成膜室を有し、該成膜室内の下部に設置した加熱手段を備えた基板支持ステージを備え、該成膜室に、該プレアニール室において真空下に形成されたNi膜の膜質を改善するプレアニールを行ったNi膜を真空下NiSi化するためのシリサイドアニール室と、該基板のロード/アンロード室とを多角形の搬送室の周囲にゲートバルブを介して接続してなり、該ロード/アンロード室から搬送された該基板を処理するために、該搬送室を介して、該真空処理装置内、該プレアニール室内、及びシリサイドアニール室内へ基板を順次搬送・搬出できるように構成されてなることを特徴とする成膜装置。
【請求項14】
真空排気系を備えた成膜室を有し、該成膜室内の下部に設置した加熱手段を備えた基板支持ステージとその上部に設けたシャワープレートとを備え、該成膜室に還元ガスを導入するためのガス導入径路とニッケルアルキルアミジネイトガス又はコバルトアルキルアミジネイトガスからなる金属膜形成用原料ガスを導入するためのガス導入径路とが接続され、該金属膜形成用原料ガスを導入するためのガス導入径路には原料容器が設けられ、この原料容器には液体化した原料をバブリングによりガス化して該成膜室内へ導入するための不活性ガス導入径路が接続されてなる、Siを主組成とする基板上にシリサイド化を目的とした金属膜を形成する真空処理装置と、真空排気系を備えた成膜室を有し、該成膜室内の下部に設置した加熱手段を備えた基板支持ステージとその上部に設けたシャワープレートとを備え、該成膜室に、該真空処理装置により真空下に形成された金属膜の膜質を改善するプレアニール用のHガスを供給するためのガス供給径路が設けられているプレアニール室と、真空排気系を備えた成膜室を有し、該成膜室内の下部に設置した加熱手段を備えた基板支持ステージを備え、該成膜室に、該プレアニール室において真空下に形成された金属膜の膜質を改善するプレアニールを行った金属膜を真空下シリサイド化するためのシリサイドアニール室と、該基板のロード/アンロード室とを多角形の搬送室の周囲にゲートバルブを介して接続してなり、該ロード/アンロード室から搬送された該基板を処理するために、該搬送室を介して、該真空処理装置内、該プレアニール室内、及びシリサイドアニール室内へ基板を順次搬送・搬出できるように構成されてなることを特徴とする成膜装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図4】
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【図6】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−204655(P2012−204655A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−68514(P2011−68514)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】