説明

Notch経路を用いた組織型または器官型の操作

【課題】細胞のNotch経路機能を改変することにより細胞型、組織型または器官型の運命を改変する方法の提供。
【解決手段】Notch経路および1以上の細胞運命制御遺伝子経路の活性化状態を同時に変化させる。どんな分化状態の細胞にも利用することができる。得られた細胞を拡張して細胞置換療法に使用することにより、失われた細胞集団を再増殖させたり罹患および/または損傷した組織の再生を助長する。また、得られた細胞集団を組換え体にして、遺伝子療法に使用したり研究用の組織/器官モデルとして使用する。黄斑変性を治療する方法であって、網膜色素上皮細胞または網膜神経上皮細胞あるいは両方の組織細胞のNotch経路機能を改変する。改変された運命の細胞、組織または器官を形成するためのキット。Notch経路機能または細胞運命制御遺伝子経路機能に対するアゴニストまたはアンタゴニストをスクリーニングする。


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【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞のたどるはずであった細胞運命を改変する方法であって、
(a)該細胞のNotch経路機能に対するアゴニストまたはアンタゴニストにin vitroで該細胞を接触させることあるいは該細胞を含む生物に該細胞のNotch経路機能に対するアゴニストまたはアンタゴニストを投与することを含む方法により、該細胞のNotch経路機能を改変すること、
(b) ステップ(a)と同時に、該細胞の細胞運命制御遺伝子経路機能に対するアゴニストまたはアンタゴニストにin vitroで該細胞を接触させること、あるいは該細胞を有する生物に該細胞の細胞運命制御遺伝子経路機能に対するアゴニストまたはアンタゴニストを投与することを含む方法により、該細胞の細胞運命制御遺伝子経路の機能を改変すること、ここで、該細胞運命制御遺伝子経路は該Notch経路ではない、ならびに
(c) 細胞運命を決定づける条件に該細胞を付すこと、
を含んでなる、方法。
【請求項2】
Notch経路機能に対するアゴニストにin vitroで細胞を接触させることを含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
細胞運命制御遺伝子経路機能に対するアゴニストにin vitroで細胞を接触させることをさらに含んでなる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
細胞運命制御遺伝子経路機能に対するアンタゴニストにin vitroで細胞を接触させることをさらに含んでなる、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
細胞を含む生物にNotch経路機能に対するアゴニストと細胞運命制御遺伝子経路機能に対するアゴニストとを投与することを含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
細胞を含む生物にNotch経路機能に対するアゴニストと細胞運命制御遺伝子経路機能に対するアンタゴニストとを投与することを含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
Notch経路機能に対するアゴニストと細胞運命制御遺伝子経路機能に対するアゴニストとをコードしている1以上の核酸を、これらのアゴニストが細胞によって発現されるように、細胞に導入することを含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
Notch経路機能に対するアゴニストと細胞運命制御遺伝子経路機能に対するアンタゴニストとをコードしている1以上の核酸を、該アゴニストおよび該アンタゴニストが前記細胞によって発現されるように、細胞に導入することを含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
Notch経路機能に対するアゴニストがドミナントアクティブNotch突然変異体である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
アゴニストが精製されている、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
Notch経路機能に対するアゴニストと細胞運命制御遺伝子経路機能に対するアゴニストとを組換え的に発現する1以上の細胞を生物に投与することを含んでなる、請求項5に記載の方法。
【請求項12】
Notch経路機能に対するアゴニストと細胞運命制御遺伝子経路機能に対するアンタゴニストとを組換え的に発現する1以上の細胞を生物に投与することを含んでなる、請求項6に記載の方法。
【請求項13】
Notch経路機能に対するアンタゴニストにin vitroで細胞を接触させることを含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
細胞運命制御遺伝子経路機能に対するアゴニストにin vitroで細胞を接触させることをさらに含んでなる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
細胞運命制御遺伝子経路機能に対するアンタゴニストにin vitroで細胞を接触させることをさらに含んでなる、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
細胞を有する生物にNotch経路機能に対するアンタゴニストと細胞運命制御遺伝子経路機能に対するアゴニストとを投与することを含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
細胞を有する生物にNotch経路機能に対するアンタゴニストと細胞運命制御遺伝子経路機能に対するアンタゴニストとを投与することを含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
Notch経路機能に対するアンタゴニストと細胞運命制御遺伝子経路機能に対するアゴニストとをコードしている1以上の核酸を、該アンタゴニストおよび該アゴニストが細胞によって発現されるように、前記細胞に導入することを含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
Notch経路機能に対するアンタゴニストと細胞運命制御遺伝子経路機能に対するアンタゴニストとをコードしている1以上の核酸を、これらのアンタゴニストが細胞によって発現されるように、前記細胞に導入することを含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
Notch経路機能に対するアンタゴニストがドミナントネガティブNotch突然変異体である、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
アンタゴニストが精製されている、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
Notch経路機能に対するアンタゴニストと細胞運命制御遺伝子経路機能に対するアゴニストとを組換え的に発現する1以上の細胞を生物に投与することを含んでなる、請求項16に記載の方法。
【請求項23】
Notch経路機能に対するアンタゴニストと細胞運命制御遺伝子経路機能に対するアンタゴニストとを組換え的に発現する1以上の細胞を生物に投与することを含んでなる、請求項17に記載の方法。
【請求項24】
細胞運命制御遺伝子が転写因子をコードしている、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
転写因子がホメオドメインタンパク質である、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
ホメオドメインタンパク質がPaxタンパク質である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
Paxタンパク質が、ヒトまたはマウスのPax-1、Pax-2、Pax-3、Pax-4、Pax-5、Pax-6、Pax-7またはPax-8、ならびにショウジョウバエ(Drosophila)のEyelessおよびTwin of Eyelessからなる群より選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
ホメオドメインタンパク質がHoxタンパク質である、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
Hoxタンパク質が、哺乳動物のHox A1-7、Hox A9-11またはHox A13;Hox B1-9;Hox C4-6またはHox C8-13;Hox D1、Hox D3-4またはHox D8-13;ならびにショウジョウバエ(Drosophila)のLab、Pb、Dfd、Scr、Antp、Ubx、Abd-AおよびAbd-Bからなる群より選択される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
ホメオドメインタンパク質が、DLXタンパク質、LIMホメオドメインタンパク質、PBCタンパク質、MEINOXタンパク質、POUタンパク質、PTXタンパク質およびNKXタンパク質からなる群より選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項31】
転写因子が、Vestigialタンパク質、MADSドメインタンパク質、bHLHタンパク質、SOXタンパク質およびT-boxタンパク質からなる群より選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項32】
細胞運命制御遺伝子がシグナリング分子をコードしている、請求項1に記載の方法。
【請求項33】
シグナリング分子が、Hedgehogタンパク質、WNTタンパク質、およびTGF β/BMPタンパク質からなる群より選択される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
細胞を細胞増殖条件に付すことにより前記細胞を拡張して細胞集団を産生することをさらに含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項35】
細胞移植片を提供することにより患者を治療する方法であって、請求項34に記載の方法に従って特定の細胞運命の細胞を産生することおよび該細胞を該患者に投与することを含んでなる、方法。
【請求項36】
患者の黄斑変性を治療する方法であって、該患者の網膜色素上皮または網膜神経上皮のNotch経路機能を作動させることを含んでなる、方法。
【請求項37】
Pax6経路機能を作動させることをさらに含んでなる、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
Notch経路機能を作動させることが、Notch経路機能に対するタンパク質アゴニストに網膜色素上皮または網膜神経上皮を接触させることを含む、請求項36または37に記載の方法。
【請求項39】
Notch経路機能に対するタンパク質アゴニストが、DeltaおよびSerrateからなる群より選択される、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
Notch経路機能を作動させることが、Notch経路機能に対するアゴニストをコードしている核酸に網膜色素上皮または網膜神経上皮を接触させることを含む、請求項36または37に記載の方法。
【請求項41】
核酸が、Notch、DeltaまたはSerrateのドミナントアクティブ突然変異体をコードしている、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
患者がヒトである、請求項37に記載の方法。
【請求項43】
Pax6経路機能を作動させることが、ヒトPax6をコードしている核酸に網膜色素上皮または網膜神経上皮を接触させることを含む、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
Pax6経路機能を作動させることが、核インターナリゼーションシグナルに機能的に結合された組換えヒトPax6タンパク質に網膜色素上皮または網膜神経上皮を接触させることを含む、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
成熟細胞型の細胞運命を変化させる方法であって、
(a) 該細胞のNotch経路機能に対するアンタゴニストにin vitroで該細胞を接触させること、あるいは該細胞を含む生物に該細胞のNotch経路機能に対するアンタゴニストを投与することを含む方法により、該細胞のNotch経路機能を拮抗させること、
(b) ステップ(a)の後で、該細胞のNotch経路機能に対するアゴニストにin vitroで該細胞を接触させること、あるいは該細胞を有する生物に該細胞のNotch経路機能に対するアゴニストを投与することを含む方法により、該細胞のNotch経路機能を作動させること、
(c) ステップ(b)と同時に、該細胞の細胞運命制御遺伝子経路機能に対するアゴニストまたはアンタゴニストにin vitroで該細胞を接触させること、あるいは該細胞を含む生物に該細胞の細胞運命制御遺伝子経路機能に対するアゴニストまたはアンタゴニストを投与することを含む方法により、該細胞の細胞運命制御遺伝子経路の機能を改変すること、ならびに
(c) 細胞運命を決定づける条件に該細胞を付すこと、
を含んでなる、方法。
【請求項46】
(a)Notch経路機能を改変する分子と(b)細胞運命制御遺伝子機能を改変する分子とを1以上の容器中に含んでなるキット。
【請求項47】
(a)の分子がアゴニストである、請求項46に記載のキット。
【請求項48】
(a)の分子および前記(b)の分子が精製されている、請求項46に記載のキット。
【請求項49】
(a)の分子が、ドミナントアクティブNotch突然変異体であるか、またはそのような突然変異体をコードしている配列を機能しうる形でプロモーターに連結して含む核酸である、請求項47に記載のキット。
【請求項50】
細胞運命の改変が、組織型または器官型の変化である、請求項1、5、6、16または17に記載の方法。
【請求項51】
細胞が哺乳動物細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項52】
細胞がヒト細胞である、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
細胞のたどるはずであった細胞運命を改変する方法であって、
(a)該細胞のNotch経路機能に対するアゴニストまたはアンタゴニストにin vitroで該細胞を接触させること、あるいは該細胞を含む生物に該細胞のNotch経路機能に対するアゴニストまたはアンタゴニストを投与することを含む方法により、該細胞のNotch経路機能を改変すること、ならびに
(b) 改変された細胞運命の細胞が産生されるまで、Notch経路機能に対する該改変を保持しながら、細胞運命を決定づける条件に該細胞を付すこと、
を含んでなる、方法。
【請求項54】
1以上の細胞により形成されるはずであったものとは異なる型の器官を形成する方法であって、
(a)該器官のNotch経路機能に対するアゴニストまたはアンタゴニストにin vitroで該細胞を接触させること、あるいは該細胞を有する生物に該器官のNotch経路機能に対するアゴニストまたはアンタゴニストを投与することを含む方法により、1以上の細胞のNotch経路機能を改変すること、ならびに
(b) 器官を形成する細胞集団が産生されるまで、Notch経路機能に対する該改変を保持しながら、器官分化および細胞増殖を引き起こす条件に該細胞を付すこと、
を含んでなる、方法。
【請求項55】
Notch経路機能に対するアゴニストにin vitroで細胞を接触させることを含んでなる、請求項53または54に記載の方法。
【請求項56】
Notch経路機能に対するアンタゴニストにin vitroで細胞を接触させることを含んでなる、請求項53または54に記載の方法。
【請求項57】
細胞を細胞増殖条件に付すことにより前記細胞を拡張して細胞集団を産生することをさらに含んでなる、請求項53または54に記載の方法。
【請求項58】
細胞移植片を提供することにより患者を治療する方法であって、請求項53に記載の方法に従って特定の細胞運命の細胞を産生することおよび該細胞を該患者に投与することを含んでなる、方法。
【請求項59】
器官移植片を提供することにより患者を治療する方法であって、請求項54に記載の方法に従って特定の型の器官を形成することおよび該器官を該患者に投与することを含んでなる、方法。
【請求項60】
細胞が哺乳動物細胞である、請求項53または54に記載の方法。
【請求項61】
細胞がヒト細胞である、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
ステップ(a)と同時に、細胞の細胞運命制御遺伝子経路機能に対するアゴニストまたはアンタゴニストにin vitroで細胞を接触させることあるいは細胞を有する生物に細胞の細胞運命制御遺伝子経路機能に対するアゴニストまたはアンタゴニストを投与することを含む方法により、細胞の細胞運命制御遺伝子経路の機能を改変すること、ここで、該細胞運命制御遺伝子経路はNotch経路ではない、をさらに含んでなる、請求項54に記載の方法。
【請求項63】
Notch経路機能に対するアゴニストまたはアンタゴニストおよび前記細胞運命制御遺伝子経路機能に対するアゴニストまたはアンタゴニストが精製されている、請求項1に記載の方法。
【請求項64】
前記方法により生じる細胞運命がアポトーシスである、請求項1または53に記載の方法。
【請求項65】
細胞がヒト細胞である、請求項63に記載の方法。
【請求項66】
細胞が癌細胞である、請求項64に記載の方法。
【請求項67】
Notch経路機能に対するアゴニストまたはアンタゴニストをスクリーニングする方法であって、
(a) 細胞の細胞運命制御遺伝子経路機能を改変すること、
(b) 細胞運命を決定づける条件に該細胞を付しながら、Notch経路機能に対する1以上の試験アゴニストまたは試験アンタゴニストに該細胞を接触させるかあるいは該試験アゴニストまたは該試験アンタゴニストを該細胞中で組換え的に発現させること、ならびに
(c) 該細胞の細胞運命が改変されたかを、該試験アゴニストまたは該試験アンタゴニストに接触させてもいないし該試験アゴニストまたは該試験アンタゴニストを発現してもいない細胞と比較して調べること、
を含んでなる、方法。
【請求項68】
細胞運命制御遺伝子経路機能に対するアゴニストまたはアンタゴニストをスクリーニングする方法であって、
(a) 細胞のNotch経路機能を改変すること、
(b) 細胞運命を決定づける条件に該細胞を付しながら、細胞運命制御遺伝子経路機能に対する1以上の試験アゴニストまたは試験アンタゴニストに該細胞を接触させるかあるいは該試験アゴニストまたは該試験アンタゴニストを該細胞中で組換え的に発現させること、ならびに
(c) 該細胞の細胞運命が改変されたかを、該試験アゴニストまたは該試験アンタゴニストに接触させてもいないし該試験アゴニストまたは該試験アンタゴニストを発現してもいない細胞と比較して調べること、
を含んでなる、方法。
【請求項69】
細胞のたどるはずであった細胞運命がアポトーシスである、請求項1または53に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−19520(P2011−19520A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−181243(P2010−181243)
【出願日】平成22年8月13日(2010.8.13)
【分割の表示】特願2001−509216(P2001−509216)の分割
【原出願日】平成11年7月12日(1999.7.12)
【出願人】(502016574)
【出願人】(502017191)
【Fターム(参考)】