説明

O/W乳化組成物

【課題】 紫外線防御能、製剤安定性、使用感に優れるO/W乳化組成物を提供する。
【解決手段】 成分(a)及び(b)を含み、成分(a)を含有する乳化粒子の平均粒子径が800nm以下であるO/W乳化組成物:
(a)(a1)オクトクリレン、(a2)メトキシケイ皮酸エチルヘキシル、及び(a3)4−t−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタンを含む有機紫外線吸収剤;
(b)一般式(1)又は(2)のポリオキシエチレン・ポリオキシアルキレンアルキルエーテルブロックポリマー;
(化1)
O−(PO)m−(EO)n−H ・・・(1)
[Rは炭素数16〜18の炭化水素基;POはオキシプロピレン基;EOはオキシエチレン基;POとEOとはブロック状に付加;m、nはそれぞれPO、EOの平均付加モル数で4≦m<70、10≦n<70、m<n。]
(化2)
O−(AO)p−(EO)q−R ・・・(2)
[R、Rは同一もしくは異なっていてもよく、それぞれ炭素数1〜4の炭化水素基;AOは炭素数3〜4のオキシアルキレン基;EOはオキシエチレン基;AOとEOとはブロック状に付加;p、qはそれぞれAO、EOの平均付加モル数で1≦p≦70、1≦q≦70、0.5<(q/(p+q))<0.8]。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水中油型(O/W)乳化組成物、特に油溶性の有機紫外線吸収剤を含有し、製剤安定性ならびに使用感に優れ、日焼け止め化粧料として好適なO/W乳化組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧料に、有機紫外線吸収剤や、微粒子酸化チタンや微粒子酸化亜鉛などの無機紫外線散乱剤を配合して紫外線防御能を付与することが広く行われている。特に近年、紫外線による皮膚への影響が広く知られるようになり、また、美白に対するユーザーの意識向上などもあって、より高い紫外線防御能を発揮し、しかも使用感のよい化粧料が求められている。
【0003】
これらの化粧料のうち、O/W乳化組成物は、油分を配合しながらもみずみずしくさっぱりとした使用感が得られることから、乳液、クリームなどの基礎化粧料としてはもちろん、ファンデーションや日焼け止め化粧料などの製品においても汎用される。
しかし、微粒子酸化チタンや微粒子酸化亜鉛などの無機紫外線遮蔽性粉体を多量に配合してUV−B〜UV−Aの広い領域にわたって高い紫外線防御能を付与しようとすると、仕上がりが白っぽくなったり、きしみ感や粉っぽさを生じることがある。
【0004】
一方、有機紫外線吸収剤は一般に高極性油であるものが多く、これは上記のような白浮きやきしみ感、粉っぽさなどの問題を生じないが、べたつきが大きく、肌へ塗布した際にO/W乳化組成物のみずみずしい使用感が損なわれ、また、乳化安定性も低くなる傾向がある。特に、有機紫外線吸収剤としてオクトクリレンとメトキシケイ皮酸エチルヘキシルとを併用した場合には、優れた紫外線防御能が発揮されるものの、乳化安定性や使用感の高いO/W乳化組成物を得ることは困難であった。
【0005】
また、4−t−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタンはUV−AからUV−Bまで、特にUV−Aの領域で紫外線吸収能を有する非常に優れた有機紫外線吸収剤であるが、本質的に常温では結晶性の固体であり、これを油相中に溶解してO/W乳化組成物に配合しようとすると、溶解しにくく、経時的に析出してしまうという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、紫外線吸収剤を組み合わせることで、高い紫外線防御能を実現することができるが、乳化組成物とする際には、乳化安定性をもたせるために界面活性剤を多量に配合する必要があり、紫外線防御能を有する乳液特有の油っぽい使用感が出てしまう傾向にある。
本発明は前記背景技術に鑑みなされたものであり、その目的は紫外線防御能、製剤安定性、ならびにべたつきがなくみずみずしい使用感に優れるO/W乳化組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明者らが鋭意検討を行った結果、オクトクリレンおよびメトキシケイ皮酸エチルヘキシルを含む油相に4−t−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタンを溶解し、この油相を特定の乳化剤を用いて一定以下の乳化粒子径とすることにより、紫外線防御能や経時的な製剤安定性に優れ、べたつきがなくみずみずしい使用感のO/W乳化組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明にかかるO/W乳化組成物は、下記成分(a)及び成分(b)を含み、成分(a)を含有する乳化粒子の平均粒子径が800nm以下であることを特徴とする:
(a)下記(a1)、(a2)及び(a3)を含む有機紫外線吸収剤:
(a1)オクトクリレン、
(a2)メトキシケイ皮酸エチルヘキシル、
(a3)4−t−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン;
(b)下記一般式(1)又は(2)で示されるポリオキシエチレン・ポリオキシアルキレンアルキルエーテルブロックポリマー;
(化1)
O−(PO)m−(EO)n−H ・・・(1)
[式中、Rは炭素数16〜18の炭化水素基、POはオキシプロピレン基、EOはオキシエチレン基である。POとEOとはブロック状に付加している。m、nはそれぞれPO、EOの平均付加モル数を意味し、4≦m<70、10≦n<70、m<nである。]
(化2)
O−(AO)p−(EO)q−R ・・・(2)
[式中、R、Rは同一もしくは異なっていてもよく、それぞれ炭素数1〜4の炭化水素基、AOは炭素数3〜4のオキシアルキレン基、EOはオキシエチレン基である。AOとEOとはブロック状に付加している。p、qはそれぞれAO、EOの平均付加モル数を意味し、1≦p≦70、1≦q≦70、0.5<(q/(p+q))<0.8である。]
【0009】
前記O/W乳化組成物において、成分(a)を8質量%以上含むことが好適である。
前記O/W乳化組成物において、成分(b)を0.5〜3質量%含むことが好適である。
また、本発明は、前記O/W乳化組成物からなる日焼け止め化粧料を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、4−t−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタンをオクトクリレン及びメトキシケイ皮酸エチルヘキシルを含む油相に溶解し、この油相を特定の乳化剤を用いて一定以下の乳化粒子径にまで微細乳化することにより、広いUV領域において高い紫外線防御能を発揮し、製剤安定性や使用感にも優れるO/W乳化組成物を得ることができる。本組成物は有機紫外線吸収剤を高配合することが可能であり、日焼け止め化粧料などに非常に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(a)有機紫外線吸収剤
本発明に用いられる有機紫外線吸収剤のうち、(a1)オクトクリレン(化学名:2−エチルヘキシル 2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート)は、常温で油状の紫外線吸収剤であり、例えば「ユビヌルN539」(BASF社)、「パルソール340」(DSMニュートリションジャパン社)等として市販されているものを簡便に使用できる。
オクトクリレンの配合量は、目的に応じて適宜設定可能であるが、紫外線防御能や固体成分の溶解性などの点から、本発明のO/W乳化組成物中においては1質量%以上、さらには2質量%以上、特に3質量%以上とすることが好ましい。一方、過剰に配合するとべたつきや油っぽさなどを生じて使用感が悪化するので、本発明のO/W乳化組成物中においては10質量%以下、さらには8質量%以下、特に6質量%以下とすることが好ましい。
【0012】
(a2)メトキシケイ皮酸エチルヘキシル(オクチルメトキシシンナメート)は、常温で油状の紫外線吸収剤であり、例えば「パルソールMCX」(DSMニュートリションジャパン社)等として市販されているものを簡便に使用できる。
メトキシケイ皮酸エチルヘキシルの配合量は、目的に応じて適宜設定可能であるが、紫外線防御能や固体成分の溶解性などの点から、本発明のO/W乳化組成物中においては1質量%以上、さらには2質量%以上、特に4質量%以上とすることが好ましい。一方、過剰に配合するとべたつきや油っぽさなどを生じて使用感が悪化するので、本発明のO/W乳化組成物中においては7.5質量%以下、さらには7質量%以下、特に6質量%以下とすることが好ましい。
【0013】
(a3)4−t−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタンは、常温で固体の紫外線吸収剤であり、「パルソール1789」(DSMニュートリションジャパン社)等として市販されているものを簡便に使用できる。
4−t−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタンの配合量は、目的に応じて適宜設定可能であるが、紫外線防御能などの点から、本発明のO/W乳化組成物中において0.5質量%以上、さらには1質量%以上、特に1.5質量%以上とすることが好ましい。一方、過剰に配合すると経時的に結晶が析出しやすくなるので、本発明のO/W乳化組成物中においては5質量%以下、さらには4質量%以下、特に3質量%以下とすることが好ましい。
【0014】
(a3)4−t−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタンは、溶解しにくく、経時的に析出しやすいという問題を有するが、本発明では、(a1)オクトクリレンと(a2)メトキシケイ皮酸エチルヘキシルを含む油相に4−t−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタンを配合することで、溶解安定性に優れたO/W乳化組成物を製造することができる。溶解安定性の点から、{(a1)の配合量+(a2)の配合量}/(a3)の配合量は2以上、特に4.5以上であることが好ましい。
【0015】
また、紫外線防御能を考慮すると、(a)有機紫外線吸収剤の配合量は、O/W乳化組成物中8質量%以上、さらには9質量%以上、特に10.5質量%以上であることが好ましい。本発明においては、油溶性有機紫外線吸収剤をこのように高配合した場合でも、製剤安定性や使用感に優れたO/W乳化組成物が得られる。
【0016】
(b)ポリオキシエチレン・ポリオキシアルキレンアルキルエーテルブロックポリマー
本発明では、成分(a)を含む油相の乳化剤として、下記一般式(1)又は(2)で示されるポリオキシエチレン・ポリオキシアルキレンアルキルエーテルブロックポリマーの1種以上を用いることが好適である。本乳化剤を用いれば、成分(a)を含む油相が微細化・安定化されたO/W乳化組成物を容易に製造することができる。
【0017】
(化3)
O−(PO)m−(EO)n−H ・・・(1)
【0018】
一般式(1)において、Rは炭素数16〜18の炭化水素基であり、好ましくは飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素基である。例えば、パルミチル、ステアリル、イソステアリル、オレイル、リノリル等が挙げられる。
POはオキシプロピレン基、EOはオキシエチレン基である。
一般式(1)において、PO、EOはブロック状に結合していなければならない。ランダム状に結合している場合には、製剤安定性が十分に得られない。なお、プロピレンオキシドおよびエチレンオキシドの付加する順序は特に指定はない。またブロック状には2段ブロックのみならず、3段以上のブロックも含まれる。
m、nはそれぞれPO、EOの平均付加モル数を意味し、4≦m<70、10≦n<70、m<nである。
【0019】
一般式(1)のブロックポリマーの分子量は、好ましくは800以上、さらに好ましくは1500以上である。分子量800未満では効果が低い。また分子量の上限は特に規定できないが、分子量が大きくなっていくにつれべたつき感が生じる傾向がある。
一般式(1)で示されるブロックポリマーとしては、例えば、ニッコールPBC44(日光ケミカルズ社)などが挙げられる。
【0020】
(化4)
O−(AO)p−(EO)q−R ・・・(2)
【0021】
一般式(2)において、R、Rは同一もしくは異なっていてもよく、それぞれ炭素数1〜4の炭化水素基であり、好ましくは飽和の脂肪族炭化水素基である。例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチルが挙げられ、より好ましくはメチル、エチルである。
AOは炭素数3〜4のオキシアルキレン基であり、オキシプロピル基、オキシブチレン基が挙げられる。EOはオキシエチレン基である。
一般式(2)において、AO、EOはブロック状に結合している。ランダム状に結合している場合には、製剤安定性が十分に得られない。なお、エチレンオキシドおよびアルキレンオキシドの付加する順序は特に指定はない。またブロック状には2段ブロックのみならず、3段以上のブロックも含まれる。
p、qはそれぞれAO、EOの平均付加モル数を意味し、1≦p≦70、1≦q≦70、0.5<(q/(p+q))<0.8である。
【0022】
一般式(2)のブロックポリマーの分子量は、好ましくは1000以上、さらに好ましくは3000以上である。分子量1000未満では効果が低い。また分子量の上限は特に規定できないが、分子量が大きくなっていくにつれべたつき感が生じる傾向がある。
一般式(2)のブロックポリマーは、公知の方法で製造することができる。例えば、水酸基を有している化合物にエチレンオキシドおよび炭素数3〜4のアルキレンオキシドを付加重合した後、ハロゲン化アルキルをアルカリ触媒存在下にエーテル反応させることによって得ることができる(例えば、特開2004−83541号公報等)。
【0023】
一般式(2)のブロックポリマーとしては、具体的にはPOE(14)POP(7)ジメチルエーテル、POE(15)POP(5)ジメチルエーテル、POE(27)POP(14)ジメチルエーテル、POE(55)POP(28)ジメチルエーテル、POE(50)POP(40)ジメチルエーテル、POE(55)POP(30)ジメチルエーテル、POE(14)POB(7)ジメチルエーテル等が挙げられる。
なお、上記POE、POP、POBは、それぞれポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレンの略であり、以下このように略して記載することがある。
【0024】
これらブロックポリマーは、少量で成分(a)を含む油相を微細・安定に乳化することができるので、界面活性剤によるべたつきを生じることなく安定なO/W乳化組成物を得ることができる。ただし、少なすぎると安定なO/W乳化組成物が得られないので、ブロックポリマーの配合量としては、組成物中0.5〜3質量%、さらには0.5〜2質量%、特に0.5〜1質量%が好ましい。
【0025】
本発明のO/W乳化組成物には、上記必須成分に加えて、本発明の効果に特に影響のない限り、化粧料に配合可能な他の成分を配合してよい。例えば、粉末成分、液体油脂、固体油脂、ロウ、炭化水素、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル、シリコーン、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤、保湿剤、水溶性高分子、増粘剤、皮膜剤、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤、金属イオン封鎖剤、低級アルコール、多価アルコール、糖、アミノ酸、有機アミン、高分子エマルジョン、pH調整剤、皮膚栄養剤、ビタミン、酸化防止剤、酸化防止助剤、香料、水等を必要に応じて適宜配合することができる。
【0026】
本発明のO/W乳化組成物には上記(a1)〜(a3)以外の有機紫外線吸収剤も配合可能である。配合可能な有機紫外線吸収剤としては、化粧料に通常使用される油性紫外線吸収剤が挙げられる。例えば、トリアジン系紫外線吸収剤(例えば、ビスレゾルシニルトリアジン、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン等);オクチルトリアゾン(2,4,6−トリス[4−(2−エチルヘキシルオキシカルボニル)アニリノ]1,3,5−トリアジン);安息香酸系紫外線吸収剤(例えば、パラアミノ安息香酸(以下、PABAと略す)、PABAモノグリセリンエステル、N,N-ジプロポキシPABAエチルエステル、N,N-ジエトキシPABAエチルエステル、N,N-ジメチルPABAエチルエステル、N,N-ジメチルPABAブチルエステル、N,N-ジメチルPABAエチルエステル等);アントラニル酸系紫外線吸収剤(例えば、ホモメンチル-N-アセチルアントラニレート等);サリチル酸系紫外線吸収剤(例えば、アミルサリシレート、メンチルサリシレート、ホモメンチルサリシレート、オクチルサリシレート、フェニルサリシレート、ベンジルサリシレート、p-イソプロパノールフェニルサリシレート等);ケイ皮酸系紫外線吸収剤(例えば、オクチルシンナメート、エチル-4-イソプロピルシンナメート、メチル-2,5-ジイソプロピルシンナメート、エチル-2,4-ジイソプロピルシンナメート、メチル-2,4-ジイソプロピルシンナメート、プロピル-p-メトキシシンナメート、イソプロピル-p-メトキシシンナメート、イソアミル-p-メトキシシンナメート、オクチル-p-メトキシシンナメート(2-エチルヘキシル-p-メトキシシンナメート) 、2-エトキシエチル-p-メトキシシンナメート、シクロヘキシル-p-メトキシシンナメート、エチル-α-シアノ-β-フェニルシンナメート、2-エチルヘキシル-α-シアノ-β-フェニルシンナメート、グリセリルモノ-2-エチルヘキサノイル-ジパラメトキシシンナメート等);ベンゾフェノン系紫外線吸収剤(例えば、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2'-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2'-ジヒドロキシ-4,4'-ジメトキシベンゾフェノン、2,2',4,4'-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-4'-メチルベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4- メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸塩、4-フェニルベンゾフェノン、2-エチルヘキシル-4'-フェニル-ベンゾフェノン-2-カルボキシレート、2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノン、4-ヒドロキシ-3-カルボキシベンゾフェノン等);3-(4'-メチルベンジリデン)-d,l-カンファー、3-ベンジリデン-d,l-カンファー;2-フェニル-5-メチルベンゾキサゾール;2,2'-ヒドロキシ-5-メチルフェニルベンゾトリアゾール;2-(2'-ヒドロキシ-5'-t-オクチルフェニル) ベンゾトリアゾール;2-(2'-ヒドロキシ-5'-メチルフェニルベンゾトリアゾール;ジベンザラジン;ジアニソイルメタン;5-(3,3-ジメチル-2-ノルボルニリデン)-3-ペンタン-2-オン、メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール、4,4-ジアリールブタジェン等が挙げられる。
【0027】
本発明のO/W乳化組成物は、成分(a)を含む乳化粒子の平均粒子径が800nm以下のものである。粒子径が800nmを超えると使用感が悪くなり、また、製剤安定性の低下(経時的な油分の分離やクリーミングの発生、凝集、析出等)を生じる。
本発明に用いられる乳化方法は、乳化粒子を800nm以下にまで微細に乳化できる限り任意の方法を採用できる。例えば、高圧乳化法や、少量の水の存在下(あるいは非存在下)で多価アルコールなどの親水性溶媒を用いる微細乳化法(例えば特公昭57−29213号公報、特開2006−182724号公報など)などが挙げられるが、これらに制限されるものではない。
【0028】
このような本発明のO/W乳化組成物は、オクトクリレンとメトキシケイ皮酸エチルヘキシルと4−t−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタンとを含む平均粒子径800nm以下の乳化粒子が連続相である水相中に分散し、油相は4−t−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタンが溶解した均一相であることが好適である。
【0029】
その製造方法は特に制限されないが、典型的には、(a1)オクトクリレン、(a2)メトキシケイ皮酸エチルヘキシル、(a3)4−t−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタンを混合溶解した油相と、水相とを、(b)ポリオキシエチレン・ポリオキシアルキレンアルキルエーテルブロックポリマーを用いて、乳化することにより得ることができる。ここで、(b)ポリオキシエチレン・ポリオキシアルキレンアルキルエーテルブロックポリマーは、あらかじめ水相に添加しておくことが好適である。また、特に問題のない限り、他の成分をその相溶性や親和性に応じて油相又は水相に配合してもよい。
【0030】
本発明のO/W乳化組成物は、日焼け止め機能が望まれる各種化粧料に適用可能であり、乳液、クリーム、化粧下地料の他、ファンデーション、口紅などのメークアップ化粧料にも適用可能である。
【実施例】
【0031】
以下、具体例を挙げて本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。配合量は特に記載のない限り質量%である。なお、本発明で用いた評価方法は次の通りである。
【0032】
評価(1):平均乳化粒子径
製造直後の試料の乳化粒子の平均粒子径をゼータサイザー(Zetasizer Nano ZS (シスメックス社))で測定した。
○:平均粒子径が800nm以下である。
×:平均粒子径が800nmを超える。
【0033】
評価(2):乳化安定性
試料を50℃で1ヶ月保存した後の外観を肉眼で観察し、下記の基準で評価した。
○:油浮きやクリーミングなどがない。
△:油浮きやクリーミングなどがわずかにある。
×:油浮きやクリーミングがある。
【0034】
評価(3):使用感
女性パネラー20名によって、製造直後の試料を顔部に手で塗布してもらい、塗布中のべたつきのなさについてアンケートを行い、下記の基準で評価した。
○:べたつかないと答えたパネラーが16名以上。
△:べたつかないと答えたパネラーが6名以上、15名以下。
×:べたつかないと答えたパネラーが5名以下。
【0035】
評価(4):溶解安定性
試料の油分を溶解し、0℃で1ヶ月保存した後の析出物を肉眼で観察し、下記の基準で評価した。
○:結晶や不溶物が析出しない。
△:結晶や不溶物が若干析出した。
×:結晶や不溶物が析出した。
【0036】
評価(5):紫外線防御能
製造直後の試料の紫外線防御能をin vitro SPECTRO PHOTOMETER U-4100(HITACHI社)で測定し、下記の基準で評価した。
○:310nmでの吸光度が基準サンプル(in vivo測定値SPF16)よりも高い。
×:310nmでの吸光度が基準サンプル(in vivo測定値SPF16)よりも低い。
【0037】
試験例1 乳化粒子径
下記製法に基づき、表1に示す配合組成よりなるO/W組成物を調製した。そして、各試料を上記評価方法(1)〜(4)で評価した。なお、評価方法(1)については上記方法で測定を行い、具体的な数値で示した。結果を表1に示す。
【0038】
・製法1
(パーツ1)
(1)の一部、(7)と(8)を混合し、(6)を徐々に添加し乳化する。この乳化物に、(3)〜(5)、(10)〜(12)、(16)を溶解混合したものを添加し、乳化してパーツ1を得た。
(パーツ2)
(1)の一部、(13)〜(15)を溶解混合し、(2)、(17)を溶解混合したものを添加し、混合してパーツ2を得た。
パーツ2にパーツ1を均一分散し、湿潤分散した(1)の一部、(9)を添加し、目的とするO/W乳化組成物を得た。
【0039】
・製法2
(パーツ1)
(3)〜(5)、(10)〜(12)、(16)を溶解混合したものと、(6)を混合してパーツ1を得た。
(パーツ2)
(1)の一部、(7)、(8)を混合したものと、(1)の一部、(13)〜(15)を混合したものを混合し、次いで、(2)、(17)を溶解混合したものを添加し、混合してパーツ2を得た。
パーツ2にパーツ1を均一分散し、湿潤分散した(1)の一部、(9)を添加し、目的とするO/W乳化組成物を得た。
【0040】
【表1】

*:PEMULEN TR-2(BF Goodrich社)
【0041】
表1によると、同じ組成であっても、試験例1−2のように乳化粒子径が大きいと、肌への塗布中にややべたつき感があり、乳化安定性も不十分であることがわかる。
本発明者らによる検討の結果、乳化粒子の平均粒子径が800nm以下である場合に、乳化安定性および使用性の優れたO/W乳化組成物が得られることが明らかになった。
【0042】
試験例2 界面活性剤の配合量
試験例1−1において、乳化剤であるブロックポリマー[POE(20)POP(8)セチルエーテル]の配合量を変えた以外は同様にして、O/W乳化組成物を調製した。そして、各試料を上記評価方法(1)〜(4)で評価した。結果を表2に示す。
【0043】
【表2】

【0044】
表2によると、ブロックポリマーが少なすぎると乳化安定性が低下する傾向があり、過剰な使用は塗布中のべたつき感を生じることがわかる。
このようなことから、ブロックポリマーは本発明のO/W乳化組成物中0.5〜3質量%、さらには0.5〜2質量%、特に0.5〜1質量%が好適である。
本発明によれば、上記表2のように、極少量の乳化剤(例えば1質量%以下)で多量の油溶性有機紫外線吸収剤(例えば10質量%以上)を安定に乳化し、紫外線防御能、製剤安定性ならびに使用感に優れたO/W乳化組成物を提供することが可能である。
【0045】
試験例3 界面活性剤の種類
試験例1−1において、乳化剤であるブロックポリマー[POE(20)POP(8)セチルエーテル]の種類を変えた以外は同様にして、O/W乳化組成物を調製した。そして、各試料を上記評価方法(1)〜(4)で評価した。結果を表3に示す。
【0046】
【表3】

【0047】
表3によると、試験例1−1や試験例3−1のポリオキシエチレン・ポリオキシアルキレンアルキルエーテルブロックポリマーは成分(a)を含む乳化粒子を800nm以下にまで容易に乳化でき、製剤安定性、使用感に優れるO/W乳化組成物が得られることがわかる。しかし、試験例3−2のポリオキシエチレン・ポリオキシアルキレンアルキルエーテルブロックポリマーや他の非イオン性界面活性剤では、同程度のHLBのものを用いた場合であっても、このようなO/W乳化組成物を得ることは困難であった。
【0048】
試験例4 ポリオキシエチレン・ポリオキシアルキレンアルキルエーテルブロックポリマーのEO、PO平均付加モル数
成分(a)を含む乳化粒子を800nm以下に乳化できるポリオキシエチレン・ポリオキシアルキレンアルキルエーテルブロックポリマーの詳細について検討を行った。
試験例1−1において、乳化剤であるブロックポリマー[POE(20)POP(8)セチルエーテル]のEOの平均付加モル数m、POの平均付加モル数n(C1633O−(PO)m−(EO)n−H)を変えた以外は同様にして、O/W乳化組成物を調製した。そして、各試料を上記評価方法(1)で評価した。結果を表4に示す。
【0049】
【表4】

【0050】
表4によると、EOの付加モル数が10未満、POの付加モル数が4未満の場合、試料の乳化粒子の平均粒子径が800nmを超えてしまうことが明らかとなった。また、さらなる検討の結果、EOの付加モル数もしくはPOの付加モル数が70以上になると、取り扱い性が悪くなってしまうことが明らかとなった。
このようなことから、一般式RO−(PO)m−(EO)n−Hで表されるポリオキシエチレン・ポリオキシアルキレンアルキルエーテルブロックポリマーは、4≦m<70、10≦n<70、m<nを満たすことが必要である。
一般式RO−(AO)p−(EO)q−Rで表されるポリオキシエチレン・ポリオキシアルキレンアルキルエーテルブロックポリマーについても、試験例3−1、3−2や上記と同様の検討により、本発明のO/W乳化組成物を得るために必要なAOとEOの平均付加モル数pとq(1≦p≦70、1≦q≦70、0.5<(q/(p+q)))<0.8)が明らかになった。
【0051】
試験例5 4−t−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタンの配合割合
試験例1−1において、4−t−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタンの配合量を変えた以外は同様にしてO/W乳化組成物を調製した。そして、各試料を上記評価方法(4)で評価した。結果を表5に示す。
【0052】
【表5】

【0053】
表5によれば、4−t−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタンをオクトクリレンとメトキシケイ皮酸エチルヘキシルを含む油相に配合すると、多量に溶解することが可能である。
しかし、試験例5−2のように、オクトクリレンおよびメトキシケイ皮酸エチルヘキシルと、4−t−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタンの配合割合が2:1を超えると、溶解性が徐々に悪くなってしまう。
したがって、本発明にかかる{(a1)の配合量+(a2)の配合量}/(a3)の配合量は2以上、特に4.5以上とすることが好ましい。
【0054】
試験例6 有機紫外線吸収剤の配合量
試験例1−1において、有機紫外線吸収剤の配合量を変えた以外は同様にしてO/W乳化組成物を調製した。そして、各試料を上記評価方法(1)〜(5)で評価した。結果を表6に示す。
【0055】
【表6】

【0056】
表6によると、さまざまな配合量の有機紫外線吸収剤を配合した試料は、いずれも平均乳化粒子径が800nm以下であった(例えば試験例5−1は483nm、試験例5−2は522nm)。
しかし、試験例6−1、6−2、試験例5−1のように、有機紫外線吸収剤の配合量が少ないと、乳化安定性は良い組成物ができるが、紫外線防御能には劣ってしまう。
また、試験例6−3、6−4、試験例5−2のように、有機紫外線吸収剤を過剰に配合した場合、べたつきや、乳化安定性の低下を生じることがわかる。
以上のことから、本発明にかかるO/W乳化組成物において、オクトクリレンは10質量%以下、メトキシケイ皮酸エチルヘキシルは7.5質量%以下、4−t−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタンは5質量%以下とすることが好ましい。
また、紫外線防御能を考慮すると、有機紫外線吸収剤の合計量を8質量%以上、さらには9質量%以上、特に10.5質量%以上とすることが好ましい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(a)及び成分(b)を含み、成分(a)を含有する乳化粒子の平均粒子径が800nm以下であることを特徴とするO/W乳化組成物:
(a)下記(a1)、(a2)及び(a3)を含む有機紫外線吸収剤:
(a1)オクトクリレン、
(a2)メトキシケイ皮酸エチルヘキシル、
(a3)4−t−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン;
(b)下記一般式(1)又は(2)で示されるポリオキシエチレン・ポリオキシアルキレンアルキルエーテルブロックポリマー;
(化1)
O−(PO)m−(EO)n−H ・・・(1)
[式中、Rは炭素数16〜18の炭化水素基、POはオキシプロピレン基、EOはオキシエチレン基である。POとEOとはブロック状に付加している。m、nはそれぞれPO、EOの平均付加モル数を意味し、4≦m<70、10≦n<70、m<nである。]
(化2)
O−(AO)p−(EO)q−R ・・・(2)
[式中、R、Rは同一もしくは異なっていてもよく、それぞれ炭素数1〜4の炭化水素基、AOは炭素数3〜4のオキシアルキレン基、EOはオキシエチレン基である。AOとEOとはブロック状に付加している。p、qはそれぞれAO、EOの平均付加モル数を意味し、1≦p≦70、1≦q≦70、0.5<(q/(p+q))<0.8である。]
【請求項2】
請求項1記載の組成物において、成分(a)を8質量%以上含むことを特徴とするO/W乳化組成物。
【請求項3】
請求項1又は2記載の組成物において、成分(b)を0.5〜3質量%含むことを特徴とするO/W乳化組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のO/W乳化組成物からなる日焼け止め化粧料。

【公開番号】特開2011−207826(P2011−207826A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−78039(P2010−78039)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000001959)株式会社 資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】