ODC1の遺伝子型に基づく癌腫診断及び治療
本発明は、各例において、治療選択の指針としてODC1プロモーターの+316の位置の遺伝子型を決定する工程を含む、a)結腸直腸癌患者の生存、並びに高レベルのODC活性及び細胞ポリアミン含量の上昇と細胞増殖及び癌発症が部分的に関連している、その他の浸潤癌を有する患者の生存を予測するための、及びb)ODC1プロモーター遺伝子の対立ヌクレオチド配列又は+316番目の位置におけるSNP、並びに癌の治療方法に基づいて、そのような患者に対応する治療オプションを選択するための、方法及びキットを提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2009年6月3日に出願の米国仮特許出願第61/217682号、2009年6月3日に出願の同第61/217,679号、及び2009年5月14日に出願の同第61/216,216号の優先権を主張し、これら各出願の全文は参照することにより本明細書に組み入れられたものとする。
【0002】
(連邦政府後援研究に関する説明)
本発明は、国立衛生研究所(National Institute of Health)からの助成CA72008(EWG)、CA78134(HAC)、CA78285(HAC)、及びCA95060(EWG)、国立癌研究所(National Cancer Institute)からの規約N01−PC−35136、N01−PC−35139及びN01−PC−54404、並びに疾病対策予防センター(Centers for Disease Control and Prevention)からの同意1U58DP00807−01のもと、米国政府の支援を受けて行われた。米国政府は本発明に一定の権利を有する。
【0003】
本発明は一般的に、癌の生態及び医学の分野に関する。より具体的には、本発明は、癌腫及びそのリスク因子の診断、予防、及び治療方法に関する。
【背景技術】
【0004】
癌の化学予防研究を臨床業務へと変換する上での主な障害は、薬剤効力の限界及び有効性を上回る毒性であった(Psaty and Potter,2006;Lippman,2006)。例えば、結腸直腸腺腫(CRA)患者にD,L−α−ジフルオロメチルオルニチン(DFMO、エフロルニチン)及びスリンダクを併用し、長期にわたり毎日経口投与することが、立証された顕著なポリアミン阻害効果を有することが近年示されたが(Meyskens et al., 2008)、治療は軽度な無症状の中毒性難聴(McLaren et al., 2008)、及び高い基準の心血管リスクを有する患者での心血管イベントの増加(Zell et al., 2009)と関連した。特定の予防的又は治療的な治療計画に対する患者の適性を判定する、遺伝的特徴の同定が大きな利益をもたらすだろう。
【0005】
例えば、結腸直腸癌及びその他の癌腫への、効果的で、かつ、より毒性の低い治療及び予防方法が必要とされている。国立癌研究所によると、2009年の米国における新たな結腸直腸癌症例はおよそ147,000例であり、50,000人が結腸直腸癌により死亡した。現在の、特に大腸癌及びポリープの治療プロトコールは腫瘍の切除、化学療法、及び放射線治療を含む。ヒトODC1遺伝子のイントロン−1における一塩基多型(SNP)はODC1の転写に影響を及ぼし(Guo et al.,2000)、結腸直腸腺腫(CRA)リスクの遺伝子マーカーとして研究されてきた(Martinez et al.,2003;Barry et al.,2006;Hubner et al.,2008)。報告されたマイナーAアレル頻度はおよそ25%であり、人種/民族性にわたる差にも関わらず、ODC1遺伝子型分布は各人種間においてはハーディ・ワインベルグ平衡を取る(O’Brien et al.,2004;Zell et al.,2009)。ODC1マイナーAアレルをホモ接合で有する対象は、メジャーGアレルを有する対象と比較して、腺腫の再発のリスクが低い(Martinez et al.,2003;Hubner et al.,2008)。さらに、ODC1のAアレル(AA又はGA遺伝子型であってGG遺伝子型ではない)、及び報告されたアスピリンの使用は、結腸ポリープの再発の低下と関連があり(Martinez et al.,2003;Barry et al.,2006;Hubner et al.,2008)、進行した腺腫の50%低下リスクと統計的に有意であった(Barry et al.,2006)。ODC1遺伝子型が、腺腫の再発、組織のポリアミンへの反応、毒性プロファイルに異なって影響を及ぼすのかどうか、及び、予防的及び治療的処置の適性を決定するためにODC1遺伝子型をどのようにして用いることができるかが、大きな課題であろう。
【発明の概要】
【0006】
従って本発明では、少なくとも1つのODC1プロモーター遺伝子アレルにおける+316番目の位置の患者の遺伝子型を同定することに関する治療、予防及び/又は診断方法が提供される。
【0007】
1つの態様においては、
a)少なくとも1つのODC1プロモーター遺伝子アレルにおける+316番目の位置の患者の遺伝子型を決定する試験から結果を得る工程;及び
b)その結果が、ODC1プロモーター遺伝子の少なくとも1つのアレルにおける+316番目の位置の患者の遺伝子型がGであることを示す場合に、
(i)患者におけるオルニチンデカルボキシラーゼ(ODC)を阻害する第一の薬剤;と
(ii)第一の薬剤と組み合わせた場合に、患者における全ポリアミン含量を低減するようにポリアミン経路を調節する第二の薬剤、
とを含む効果量の医薬治療を患者に投与する工程、
を含む、患者における癌腫の予防的又は治療的処置の方法が提供される。
【0008】
いくつかの実施形態において第二の薬剤はまた、患者におけるスペルミジン/スペルミンN1−アセチルトランスフェラーゼの発現を上昇させる。いくつかの実施形態において結果は、前記遺伝子型を含む報告を受け取ること又は結果を表す患者病歴を取得することにより得られる。いくつかの実施形態において試験は、患者のODC1プロモーター遺伝子の1つのアレルにおける+316番目の位置のヌクレオチド塩基を決定する。いくつかの実施形態において試験は、患者のODC1プロモーター遺伝子の両方のアレルにおける+316番目の位置のヌクレオチド塩基を決定する。いくつかの実施形態において結果は、ODC1プロモーター遺伝子の両方のアレルにおける+316番目の位置の患者の遺伝子型がGGであることを示す。いくつかの実施形態において結果は、ODC1プロモーター遺伝子の両方のアレルにおける+316番目の位置の患者の遺伝子型がGAであることを示す。
【0009】
いくつかの実施形態において医薬治療は、患者が既に低用量での医薬治療を受けている場合に、試験の結果を得る工程の前に、第一又は第二の薬剤の用量を増加させる工程をさらに含む。いくつかの実施形態において医薬治療は、患者が既に低用量での医薬治療を受けている場合に、試験の結果を得る工程の前に、第一及び第二の薬剤の用量を増加させる工程をさらに含む。いくつかの実施形態において第一の薬剤は、α−ジフルオロメチルオルニチン(DFMO)である。いくつかの実施形態において第二の薬剤は、アスピリンを含まない非ステロイド抗炎症性薬(NSAID)である。いくつかの実施形態においてアスピリンを含まないNSAIDは、COX−2選択的阻害剤である。いくつかの実施形態においてアスピリンを含まないNSAIDは、スリンダク又はセレコキシブである。いくつかの実施形態においてアスピリンを含まないNSAIDは、スリンダクである。
【0010】
別の態様においては、
a)少なくとも1つのODC1プロモーター遺伝子アレルにおける+316番目の位置の、患者の遺伝子型を決定する試験から、結果を得る工程;及び
b)その結果が、ODC1プロモーター遺伝子の少なくとも1つのアレルにおける+316番目の位置の患者の遺伝子型がGであることを示す場合に、
(i)患者におけるオルニチンデカルボキシラーゼ(ODC)を阻害する第一の薬剤;及び
(ii)第一の薬剤と組み合わせた場合に、患者における全ポリアミン含量を低減するようにポリアミン経路を調節する第二の薬剤、
を含む効果量の医薬治療を患者に投与する工程、
を含む、患者における結腸直腸癌腫リスク因子の治療方法が提供され、
ここでこの方法は、患者における新しい異常腺窩巣、新しい腺腫性ポリープ又は新しい異形成性腺腫の形成を予防する。
【0011】
いくつかの実施形態において、第二の薬剤はまた、患者におけるスペルミジン/スペルミンN1−アセチルトランスフェラーゼの発現を上昇させる。いくつかの実施形態において、方法は、患者における新しい異常腺窩巣の形成を予防する。いくつかの実施形態において、方法は、患者における新しい腺腫性ポリープの形成を予防する。いくつかの実施形態において、方法は、患者における新しい異形成性腺腫の形成を予防する。いくつかの実施形態において、結果は、前記遺伝子型を含む報告を受け取ること又は結果を表す患者病歴を取得することにより得られる。いくつかの実施形態において、試験は、患者のODC1プロモーター遺伝子の1つのアレルにおける+316番目の位置のヌクレオチド塩基を決定する。いくつかの実施形態において、試験は、患者のODC1プロモーター遺伝子の両方のアレルにおける+316番目の位置のヌクレオチド塩基を決定する。いくつかの実施形態において、結果は、ODC1プロモーター遺伝子の両方のアレルにおける+316番目の位置の患者の遺伝子型がGGであることを示す。いくつかの実施形態において、結果は、ODC1プロモーター遺伝子の両方のアレルにおける+316番目の位置の患者の遺伝子型がGAであることを示す。
【0012】
いくつかの実施形態において、医薬治療は、患者が既に低用量での医薬治療を受けている場合に、試験の結果を得る工程の前に、第一又は第二の薬剤の用量を増加させる工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、医薬治療は、患者が既に低用量での医薬治療を受けている場合に、試験の結果を得る工程の前に、第一及び第二の薬剤の用量を増加させる工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、第一の薬剤は、α−ジフルオロメチルオルニチン(DFMO)である。いくつかの実施形態において、第二の薬剤は、アスピリンを含まない非ステロイド抗炎症性薬(NSAID)である。いくつかの実施形態において、アスピリンを含まないNSAIDは、COX−2選択的阻害剤である。いくつかの実施形態において、アスピリンを含まないNSAIDは、スリンダク又はセレコキシブである。いくつかの実施形態において、アスピリンを含まないNSAIDは、スリンダクである。
【0013】
別の態様においては、
a)少なくとも1つのODC1プロモーター遺伝子アレルにおける+316番目の位置の、患者の遺伝子型を決定する試験から、結果を得る工程;及び
b)その結果が、ODC1プロモーター遺伝子の少なくとも1つのアレルにおける+316番目の位置の患者の遺伝子型がGであることを示す場合、患者におけるオルニチンデカルボキシラーゼ(ODC)を阻害する第一の薬剤と、第一の薬剤と組み合わせた場合に患者における全ポリアミン含量を低減するようにポリアミン経路を調節する第二の薬剤との、併用における効果量の医薬治療による治療に対して、この患者が好適だと同定する工程、
を含む、癌腫の予防的又は治療的処置のために患者の適性を評価する方法が提供される。
【0014】
いくつかの実施形態において、第二の薬剤はまた、患者におけるスペルミジン/スペルミンN1−アセチルトランスフェラーゼの発現を上昇させる。いくつかの実施形態において、結果は、前記遺伝子型を含む報告を受け取ること又は結果を表す患者病歴を取得することにより得られる。いくつかの実施形態において、試験は、患者のODC1プロモーター遺伝子の1つのアレルにおける+316番目の位置のヌクレオチド塩基を決定する。いくつかの実施形態において、試験は、患者のODC1プロモーター遺伝子の両方のアレルにおける+316番目の位置のヌクレオチド塩基を決定する。いくつかの実施形態において、結果は、ODC1プロモーター遺伝子の両方のアレルにおける+316番目の位置の患者の遺伝子型がGGであることを示す。いくつかの実施形態において、結果は、ODC1プロモーター遺伝子の両方のアレルにおける+316番目の位置の患者の遺伝子型がGAであることを示す。いくつかの実施形態において、医薬治療は、患者が既に低用量での医薬治療を受けている場合に、試験の結果を得る工程の前に、第一又は第二の薬剤の用量を増加させる工程をさらに含む。
【0015】
いくつかの実施形態において、医薬治療は、患者が既に低用量での医薬治療を受けている場合に、試験の結果を得る工程の前に、第一及び第二の薬剤の用量を増加させる工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、第一の薬剤は、α−ジフルオロメチルオルニチン(DFMO)である。いくつかの実施形態において、第二の薬剤は、アスピリンを含まない非ステロイド抗炎症性薬(NSAID)である。いくつかの実施形態において、アスピリンを含まないNSAIDは、COX−2選択的阻害剤である。いくつかの実施形態において、アスピリンを含まないNSAIDは、スリンダク又はセレコキシブである。いくつかの実施形態において、アスピリンを含まないNSAIDは、スリンダクである。
【0016】
別の態様においては、
a)少なくとも1つのODC1プロモーター遺伝子アレルにおける+316番目の位置の、患者の遺伝子型を決定する試験から、結果を得る工程;及び
b)その結果が、ODC1プロモーター遺伝子の少なくとも1つのアレルにおける+316番目の位置の患者の遺伝子型がGであることを示す場合に、
(i)患者におけるオルニチンデカルボキシラーゼ(ODC)を阻害する第一の薬剤;と
(ii)患者におけるスペルミジン/スペルミンN1−アセチルトランスフェラーゼの発現を上昇させる第二の薬剤とを含む、
効果量の医薬治療を患者に投与する工程、
を含む、患者の癌腫瘍を切除可能にする方法を提供する。
【0017】
いくつかの実施形態において、結果は、前記遺伝子型を含む報告を受け取ること又は結果を表す患者病歴を取得することにより得られる。いくつかの実施形態において、試験は、患者のODC1プロモーター遺伝子の1つのアレルにおける+316番目の位置のヌクレオチド塩基を決定する。いくつかの実施形態において、試験は、患者のODC1プロモーター遺伝子の両方のアレルにおける+316番目の位置のヌクレオチド塩基を決定する。いくつかの実施形態において、結果は、ODC1プロモーター遺伝子の両方のアレルにおける+316番目の位置の患者の遺伝子型がGGであることを示す。いくつかの実施形態において、結果は、ODC1プロモーター遺伝子の両方のアレルにおける+316番目の位置の患者の遺伝子型がGAであることを示す。
【0018】
いくつかの実施形態において、医薬治療は、患者が既に低用量での医薬治療を受けている場合に、試験の結果を得る工程の前に、第一又は第二の薬剤の用量を増加させる工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、医薬治療は、患者が既に低用量での医薬治療を受けている場合に、試験の結果を得る工程の前に、第一及び第二の薬剤の用量を増加させる工程をさらに含む。
【0019】
いくつかの実施形態において、第一の薬剤は、α−ジフルオロメチルオルニチン(DFMO)である。
【0020】
いくつかの実施形態において、第二の薬剤は、アスピリンを含まない非ステロイド抗炎症性薬(NSAID)である。いくつかの実施形態において、アスピリンを含まないNSAIDは、COX−2選択的阻害剤である。いくつかの実施形態において、アスピリンを含まないNSAIDは、スリンダク又はセレコキシブである。いくつかの実施形態において、アスピリンを含まないNSAIDは、スリンダクである。
【0021】
別の態様においては、
a)少なくとも1つのODC1プロモーター遺伝子アレルにおける+316番目の位置の、患者の遺伝子型を決定する試験から、結果を得る工程;及び
b)その結果が、ODC1プロモーター遺伝子の少なくとも1つのアレルにおける+316番目の位置の患者の遺伝子型がGであることを示す場合に、併用において効果量のα−ジフルオロメチルオルニチン(DFMO)とアスピリンを含まない非ステロイド抗炎症性薬(NSAID)とを、患者に投与する工程、
を含む、癌腫の発生又は再発のリスクを有する患者における、癌腫の発生又は再発を予防する方法が提供される。
【0022】
いくつかの実施形態において、結果は、前記遺伝子型を含む報告を受け取ること又は結果を表す患者病歴を取得することにより得られる。いくつかの実施形態において、試験は、患者のODC1プロモーター遺伝子の1つのアレルにおける+316番目の位置のヌクレオチド塩基を決定する。いくつかの実施形態において、試験は、患者のODC1プロモーター遺伝子の両方のアレルにおける+316番目の位置のヌクレオチド塩基を決定する。いくつかの実施形態において、結果は、ODC1プロモーター遺伝子の両方のアレルにおける+316番目の位置の患者の遺伝子型がGGであることを示す。いくつかの実施形態において、結果は、ODC1プロモーター遺伝子の両方のアレルにおける+316番目の位置の患者の遺伝子型がGAであることを示す。
【0023】
別の態様においては、少なくとも1つのODC1プロモーター遺伝子アレルの+316番目の位置においてGを有することが同定された癌腫の発生又は再発のリスクを有する患者に、効果量のα−ジフルオロメチルオルニチン(DFMO)とアスピリンを含まない非ステロイド抗炎症性薬(NSAID)とを投与する工程を含む、α−ジフルオロメチルオルニチン(DFMO)及びアスピリンを含まない非ステロイド抗炎症性薬(NSAID)を用いた治療方法が提供される。
【0024】
いくつかの実施形態において、患者のODC1プロモーター遺伝子アレル両方の+316番目の位置における同定された遺伝子型はGGである。いくつかの実施形態において、患者のODC1プロモーター遺伝子アレル両方の+316番目の位置における同定された遺伝子型はGAである。
【0025】
別の態様においては、
a)少なくとも1つのODC1プロモーター遺伝子アレルにおける+316番目の位置の、患者の遺伝子型を決定する試験から、結果を得る工程;及び
b)結果が、患者のODC1プロモーター遺伝子の+316番目の位置における少なくとも1つのアレルがGであることを示す場合に、併用において効果量のα−ジフルオロメチルオルニチン(DFMO)とアスピリンを含まない非ステロイド抗炎症性薬(NSAID)とを患者に投与する工程、
を含む、患者における癌腫の治療方法が提供される。
【0026】
いくつかの実施形態において、結果は、前記遺伝子型を含む報告を受け取ること又は結果を表す患者病歴を取得することにより得られる。いくつかの実施形態において、試験は、患者のODC1プロモーター遺伝子の1つのアレルにおける+316番目の位置のヌクレオチド塩基を決定する。いくつかの実施形態において、試験は、患者のODC1プロモーター遺伝子の両方のアレルにおける+316番目の位置のヌクレオチド塩基を決定する。いくつかの実施形態において、結果は、ODC1プロモーター遺伝子の両方のアレルにおける+316番目の位置の患者の遺伝子型がGGであることを示す。いくつかの実施形態において、結果は、ODC1プロモーター遺伝子の両方のアレルにおける+316番目の位置の患者の遺伝子型がGAであることを示す。
【0027】
任意の上述した実施形態の変化形において、アスピリンを含まないNSAIDはCOX−2選択的阻害剤である。いくつかの実施形態において、アスピリンを含まないNSAIDはスリンダク又はセレコキシブである。いくつかの実施形態において、アスピリンを含まないNSAIDはスリンダクである。いくつかの実施形態において、DFMO及びスリンダクは全身に投与される。いくつかの実施形態において、DFMO及びスリンダクは別個の経路により投与される。いくつかの実施形態において、DFMO又はアスピリンを含まないNSAIDは経口的に、動脈内に又は静脈内に投与される。いくつかの実施形態において、DFMOは経口的に投与される。いくつかの実施形態において、DFMOの効果量は、500mg/日である。いくつかの実施形態において、DFMOは、静脈内に投与される。いくつかの実施形態において、DFMOの効果量は、約0.05〜約5.0g/m2/日である。いくつかの実施形態において、DFMO及びアスピリンを含まないNSAIDは、経口投与用に処方される。いくつかの実施形態において、DFMO及びアスピリンを含まないNSAIDは、固い又は軟らかい、カプセル又は錠剤として処方される。いくつかの実施形態において、DFMO及びアスピリンを含まないNSAIDは、12時間毎に投与される。いくつかの実施形態において、DFMO及びアスピリンを含まないNSAIDは、24時間毎に投与される。いくつかの実施形態において、スリンダクの効果量は、約10〜約1500mg/日である。いくつかの実施形態において、スリンダクの効果量は、約10〜約400mg/日である。いくつかの実施形態において、スリンダクの効果量は、150mg/日である。いくつかの実施形態において、DFMOは、スリンダクの前に投与される。いくつかの実施形態において、DFMOは、スリンダクの後に投与される。いくつかの実施形態において、DFMOは、スリンダクの前及び後に投与される。いくつかの実施形態において、DFMOは、スリンダクと同時に投与される。いくつかの実施形態において、DFMOは、少なくとも二度目に投与される。いくつかの実施形態において、スリンダクは、少なくとも二度目に投与される。
【0028】
任意の上述した実施形態の変化形においては、患者は固形癌を有し、前記方法は、前記固形癌の切除をさらに含む。いくつかの実施形態において、DFMO及びスリンダクは前記切除に先だって投与される。いくつかの実施形態において、DFMO及びスリンダクは前記切除の後に投与される。
【0029】
任意の上述した実施形態の変化形において、癌腫は、結腸直腸癌、乳癌、膵臓癌、脳腫瘍、肺癌、胃癌、血液癌、皮膚癌、精巣癌、前立腺癌、卵巣癌、肝臓癌又は食道癌、子宮頸癌、頭頸部癌、非メラノーマ性皮膚癌、神経芽細胞腫及び膠芽腫である。いくつかの実施形態において、癌腫は、結腸直腸癌である。いくつかの実施形態において、結腸直腸癌は、第I期である。いくつかの実施形態において、結腸直腸癌は、第II期である。いくつかの実施形態において、結腸直腸癌は、第III期である。いくつかの実施形態において、結腸直腸癌は、第IV期である。
【0030】
任意の上述した実施形態の変化形において、方法は、患者における新しい進行性結腸直腸新生物の形成を予防する。いくつかの実施形態において、方法は、患者における中毒性難聴又はそのリスクを予防する。いくつかの実施形態において、方法は、新しい進行性右側結腸直腸新生物の形成を予防する。いくつかの実施形態において、方法は、新しい進行性左側結腸直腸新生物の形成を予防する。
【0031】
任意の上述した実施形態の変化形において、患者は、結腸、直腸又は虫垂に1つ以上の腺腫性ポリープを有すると同定された。いくつかの実施形態において、患者は、1つ以上の進行した結腸直腸新生物を有すると同定された。いくつかの実施形態において、患者は、1つ以上の左側の進行した結腸直腸新生物を有すると同定された。いくつかの実施形態において、患者は、1つ以上の右側の進行した結腸直腸新生物を有すると同定された。いくつかの実施形態において、患者は、家族性腺腫性ポリポーシスであると診断された。いくつかの実施形態において、患者は、リンチ症候群であると診断された。いくつかの実施形態において、患者は、家族性結腸直腸癌タイプXであると診断された。いくつかの実施形態において、患者は、アムステルダム基準又はアムステルダム基準IIを満たす。いくつかの実施形態において、患者は、1回以上の結腸直腸腺腫の切除歴を有する。いくつかの実施形態において、患者は、上皮内癌又はODCの過剰な活性と関連した前癌病変を有する。いくつかの実施形態において、患者は、上皮内癌又は前癌病変及び細胞ポリアミンレベルの上昇を有する。
【0032】
任意の上述した実施形態の変化形において、患者はヒトである。
【0033】
請求項及び/又は明遺書中の「含んでいる(comprising)」という語に関する単語「a」又は「an」の使用は「1」を意味するが、この語は、「1以上の」、「少なくとも1の」、及び「1又は1を超える」の意味ともまた一致する。
【0034】
本出願を通して、語「約」は、装置の誤差固有の変化、値を決定するために用いる方法、又は研究対象間に存在する変動、を含む値を示すために用いられる。
【0035】
用語「含む」、「有する」及び「含有する」は、オープンエンドな連結動詞である。「含む」、「含んでいる」、「有する」、「有している」、「含有する」及び「含有している」のような、1つ以上のこれら動詞の任意の形態又は時制もまた、オープンエンドである。例えば、1つ以上の工程を「含む」、「有する」又は「含有する」任意の方法は、これら1つ以上の工程を有するとは限定されず、その他の記載されていない工程をもまた包含する。
【0036】
本明細書及び/又は請求項で使用する場合、用語「有効な」は、所望される、期待される、又は目的の結果を達成するのに十分であることを意味する。
【0037】
本明細書で使用する場合、用語「IC50」は、得られる最大反応の50%である、阻害用量を指す。
【0038】
本明細書で使用する場合、用語「患者」又は「対象」は、ヒト、サル、ウシ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコ、マウス、ラット、モルモット、又はその種のトランスジェニックのような、生きている哺乳類を指す。特定の実施形態において、患者又は対象は、霊長類である。ヒト対象の非限定的な例は、成人、若年、幼児及び胎児である。
【0039】
「薬学上許容可能な」は、それが、通常安全で、非毒性であり、そして、生物学的にもその他の点においても望ましい医薬組成物の調整において有用であることを意味し、かつ、それが獣医学的使用並びにヒトへの薬学的使用において許容可能であることを含む。
【0040】
「予防」又は「予防する」は、(1)対象又はリスクを有する患者及び/又は疾患の素因があるが、まだ、疾患のいずれの又は全ての病理又は徴候を経験又は表していない患者における疾患の発症を阻害すること、及び/又は(2)対象又はリスクを有する及び/又は疾患の素因があるが、まだ、疾患のいずれの又は全ての病理又は徴候を経験又は表していない患者における疾患の病理又は徴候の発症を遅らせること、を含む
【0041】
「効果量」、「治療上効果量」又は「薬学的効果量」は、疾患を治療するために対象又は患者に投与した場合に、疾患のそのような治療に効果を及ぼすのに十分な量を意味する。
【0042】
「治療」又は「治療する」は、(1)対象又は疾患の病理又は徴候を経験している又は表している患者における疾患を阻害すること(例えば、病理又は徴候のさらなる発症を阻むこと)、(2)対象又は疾患の病理又は徴候を経験している又は表している患者における疾患を改善すること(例えば、病理及び/又は徴候を反転させること)、及び/又は(3)対象又は疾患の病理又は徴候を経験している又は表している患者の疾患における、任意の測定可能な低下に影響を及ぼすこと、を含む。
【0043】
上述した定義は、参照することにより本明細書に組み入れられる任意の文献中の、いずれの一致しない定義に優先する。特定の語は定義されたが、定義されない任意の用語は明確でないことを示すと見なされるべきではない。むしろ、用いられる全ての用語は、当業者が本発明の範囲及び実際を理解できるように、本発明を明確に記載すると考えられる。
【0044】
本開示のその他の目的、特徴及び利点は、以下の詳細な説明から明らかになるだろう。しかしながら、詳細な説明及び特定の実施例は、本発明の特定の実施形態を示してはいるが、説明するためのみに示されるものであり、そのため、この詳細な説明から、本発明の精神及び範囲内の様々な変更及び調節が当業者には明らかとなるだろう。1つの一般処方に割り当てられた特定の化合物が、別の一般処方に属することができないということを意味するものではないことに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
以下の図表は本明細書の一部分をなし、本開示の特定の態様をさらに示すために含まれる。本発明は、本明細書に示したこれら図表のうちの1つと特定の実施形態の詳細との組み合わせによって、よりよく理解されるだろう。
【図1】ポリアミン制御に及ぼすMAD1及びc−MYCの異なる作用を示す図である。模式図は、ODC1+316マイナーA−アレルに結合したMAD1及びc−MYCが、ポリアミン制御に異なる効果を及ぼすことを提唱する。ODC阻害剤であるDFMO(ジフルオロメチルオルニチン)の効果もまた示した。
【図2】結腸直腸癌−特異的生存率の推定値を示す図である。この図は、ODC1+316遺伝子型によって分類した第III期結腸直腸癌の症例における、カプラン・マイヤー結腸直腸癌特異的生存率の推定値を示す。1994〜1996年の間に診断され、2008年の3月までフォローアップした、カリフォルニア大学アーバイン校(University of California Irvine)の、家族性結腸直腸癌の遺伝−環境研究(Gene−Environment Study of Familial Colorectal Cancer)からの症例を含む:ODC1 GG(64例、15結腸直腸癌による死亡)、ODC1 GA/AA(62例、25結腸直腸癌による死亡)。
【図3】ODC1プロモーターSNPの位置及び解析を示す図である。図3AはODC1プロモーターSNPの位置であるAを示す。この研究の調査におけるSNPは、ODC1転写開始点の3’側316番目のヌクレオチド(*)であった。このSNP残基は、下線を引いた配列である、2つの保存されているEボックスの間にあり、PstI制限酵素部位(枠線)に影響を与える(配列番号5)。図3Bは、ODC1 SNPのRFLP(restriction fragment length 多型)解析を示す。2種類の細胞型からDNAを得て、ODC1 SNP部位の周辺の領域をシークエンシングした。ODC1 SNP遺伝子座では、結腸由来のHT29細胞がヘテロ接合GAであり、HCT116細胞がホモ接合GGであることを確認した。各細胞型から得た、350−bpのこの領域のPCR産物をPstIを用いて消化した。消化産物が350bpよりも小さいことがA−アレルである証拠となる。
【図4】E−ボックスの発現及び免疫沈降解析を示す図である。ODC1プロモーターSNPの位置。図4Aは、結腸由来細胞におけるE−ボックスのタンパク質発現を示す。評価するタンパク質発現の+316 ODC1 SNPへの結合をウェスタンブロット解析により評価した。HT29及びHCT116細胞両方の抽出物をc−MYC、MAD1、及びMAD4について評価し、β−アクチンをローディングコントロールとして用いた。図4Bは、以下の実施例部分において記載したように実施したクロマチン免疫沈降解析による、アレル特異的な転写因子の結合の証拠資料を示す。HT29細胞を、これらの細胞がこの部位におけるヘテロ接合GAであることから、ODC1 A−アレルの供給源として用いた。HCT116細胞をODC1 G−アレルの供給源として用いた。
【図5】ODC1活性におけるc−MYC及びMAD1発現の効果を示す図である。図5Aは、HT29結腸由来細胞における、ODC1アレルに特異的なプロモーター活性に及ぼすc−MYC発現の効果を示す。ODC1プロモーターレポータープラスミドをpcDNA3.0プラスミド又はCMV−MYC発現ベクターと共にトランスフェクションした後に、プロモーター活性を測定した。プロモーター構築物は、−485〜−480bpに位置する第一のE−ボックス要素(野生型配列を「wt E−ボックス1」、突然変異体配列を「mut E−ボックス1」とした)の有無によって異なる。構築物はまた、ODC1 +316 SNP(「+316 G」又は「+316 A」)によっても異なる。*は、pcDNA3.0と共にトランスフェクションしたプロモーター活性との相対的な比較において、4つそれぞれがP≦0.013で統計的に有意であることを示す。図5Bは、HT29結腸腫瘍由来細胞におけるODC1アレル−特異的プロモーター活性に及ぼすMAD1発現の効果を示す。ODC1プロモーターレポータープラスミドをpcDNA3.1プラスミド又はpcDNA−MAD1プラスミドと共にトランスフェクションした後にプロモーター活性を測定した。プロモーター構築物については、この図のパネルAの凡例に記載した。*は、pcDNA3.1と共にトランスフェクションした場合のプロモーター活性と比較して、P=0.027で統計的に有意であることを示す。
【図6】腺腫性ポリープの減少を示す図である。この図は、偽薬と比較して、DFMO及びスリンダクで治療した患者の、腺腫性ポリープ再発のパーセンテージを示す。全腺腫の70%、進行した腺腫の92%、及び複数の腺腫の95%が減少した。
【図7】+316 ODC1遺伝子型に基づく薬理ゲノム有益性/リスク解析を示す図である。この図は、患者における+316 ODC1遺伝子型の機能として、治療群及び偽薬群における、偽薬に対する3年後の腺腫再発の低下(%)及び中毒性難聴(%)を比較する。中毒性難聴は聴力検査により決定した。
【図8】+316 ODC1遺伝子型に基づく薬理ゲノム有益性/リスク解析を示す図である。この図は、患者の+316 ODC1遺伝子型の機能として、治療群及び偽薬群における3年後の腺腫の再発(%)である利益と中毒性難聴のリスク(%)を比較する。中毒性難聴は聴力検査により決定した。
【図9】Min/+マウスにおける、結腸の大きさ当たりの腫瘍の平均数を示す図である。この図は、未処理対照と比較した場合の、3つの治療群における結腸の大きさ当たりの腫瘍の平均数を示す。The Jackson Laboratory(BarHarbor、Me.)から購入したマウス、オスのC57BL/6J−ApcMin/+とメスのC57/BL6を掛け合わせた。ヘテロ接合Minマウス(ApcMin/Apc+):(Apcの850番目のコドンにおけるナンセンス変異のヘテロ接合)を、テールチップ(tail−tip)DNAを用いたアレル特異的PCRアッセイにより、離脱を利用したジェノタイピングによって同定した。ホモ接合(Apc+/Apc+)の同腹子を対照とした。1つの治療は、試験の8日目に2%DFMO(Merrell Dow Research Inst.)を含む水を与えることであった。その他の治療においては、試験の21日目に、167ppmのスリンダク(Harlen Teklad)をAIN−93Gマウス飼料に添加した。3番目の治療においてはDFMO及びスリンダクの組み合わせを用いた。114日後、CO2窒息によりマウスを殺した。マウスから小腸及び結腸片を切除し、縦方向に切り開き、70%エタノール中で固定し、そして腫瘍を測定するために4℃に静置した。代表的な組織については組織病理学的評価も行った。
【図10】Min/+マウスの小腸における、大きさ当たりの腫瘍の平均数を示す図である。この図は、未処理対照と比較した場合の、3つの治療群における小腸の大きさ当たりの腫瘍の平均数を示す。実験の詳細については上述した図9を参照のこと。
【図11】Min/+マウスにおける治療の機能としての、グレードの高い腺腫の数を示す図である。この図は、治療の型によってどのようにグレードの高い腺腫の数が変動するかを示す。実験の詳細については上述した図9を参照のこと。
【発明を実施するための形態】
【0046】
いくつかの態様においては、少なくとも部分的には患者のODC1プロモーター遺伝子型に基づいて、適性、効力、毒性及び/又はオルニチンデカルボキシラーゼ(ODC)阻害剤及びスペルミジン/スペルミンN1−アセチルトランスフェラーゼ発現アゴニストを含む抗癌併用療法の用量を予測することを含む方法が提供される。
【0047】
本発明はまた、前癌症状を示している対象の癌の発症を予防するため及び/又は、新しい異常腺窩巣の形成、新しい腺腫性ポリープの形成又は新しい異形成性腺腫のような癌リスク因子の発症を予防するための、治療用化合物の送達をも含む。このカテゴリーの細胞は、少なくとも部分的に患者のODC1プロモーター遺伝子型に基づいて、癌状態へ進行する可能性を示している、ポリープ及びその他の前癌病変、前悪性腫瘍、前癌状態又はその他の異常な表現型が含まれる。
【0048】
I.ポリアミン代謝
過剰なポリアミンの形成は、長く、上皮癌発症、特に結腸直腸癌発症の原因とされてきた。ポリアミンは、転写、RNAの安定化、イオンチャネル開閉などを含む様々な過程に関与する、小さく、偏在する分子である(Wallace,2000)。ポリアミン合成における第一の酵素であるオルニチンデカルボキシラーゼ(ODC)は、哺乳類の正常な発生及び組織の修復に必須であるが、大部分の成熟した組織ではダウンレギュレートされている(Gerner and Meyskens,2004)。ポリアミンの代謝及び輸送における複数の異常は、複数の組織で腫瘍形成を促進することができるポリアミンレベルの上昇を生じる(Thomas and Thomas,2003)。
【0049】
ポリアミンの代謝は、結腸及びその他の癌への高い危険性と関連する症候群である、家族性腺腫性ポリポーシス(FAP)を有するヒトの腸上皮組織においてアップレギュレートされる(Giardiello et al.,1997)。
【0050】
FAPは、大腸腺腫性ポリポーシス(APC)腫瘍抑制遺伝子における突然変異によって生じると考えられ、また、ヒト細胞(Fultz and Gerner,2002)及びFAPのマウスモデル両方において、APCシグナル伝達がODC発現を制御することが示されてきた(Erdman et al.,1999)。
【0051】
野生型APCの発現はODC発現の低下を引き起こすが、突然変異体APCはODC発現の上昇を引き起こす。ODCのAPC依存性制御機構には、転写アクチベーターであるc−MYCと転写リプレッサーであるMAD1を含む、E−ボックス転写因子が関与する(Fultz and Gerner,2002; Martinez et al.,2003)。c−MYCは、他のものにより、ODC転写を制御することが示された(Bellofernandez et al.,1993)。ポリアミン代謝に含まれるいくつかの遺伝子は、多くの生物の最適な成長に必須の遺伝子であり、増殖していない及び/又は成熟した細胞及び組織においてはダウンレギュレートされている(Gerner and Meyskens,2004)。他にまとめられているように(Childs et al.,2003)、ポリアミンは、部分的に遺伝子の発現パターンに作用することにより、特定の細胞表現型に影響を及ぼす。
【0052】
以下に記載するように、ODC(すなわち、ポリアミン合成の律速酵素)活性の阻害及び/又は細胞内ポリアミンレベルの減少を含む方法は、ヒトにおいて、結腸直腸ポリープの再発の予防に顕著な効力を示した。本研究による疫学的及び実験の結果は、ODC中の遺伝的多型によるポリアミン恒常性の条件付きの制御を示し、+316 ODC SNPが結腸腺腫再発への保護となり得る、及び、結腸癌と診断された後の生存に有害となり得るというモデルを示唆するものである。この情報を結腸癌の予後の決定に用いることができる。癌の進行/再発のリスクが高い患者を同定することにより、早期の第三次予防の管理方法を開始することができる。加えてこの研究を、高リスクではあるが、他の点では最適な治療を受けた、第三次癌予防治療が有効だと考えられる局所結腸直腸癌患者を同定するために用いることができる。
【0053】
ポリアミン(例えばプトレッシン)が、およそ400ppmのプトレッシンを含有するオレンジジュースのような、多くの一般的な食物中に存在するという事実から、患者の食事に依存して、過剰ポリアミンの問題が悪化する場合がある。この点において、高ポリアミン食は禁忌であり、本明細書に示されたいくつかの実施形態においては、そのような食事は避けられる。2010年5月14日に出願された、Kavitha P.Raj、Jason A.Zell、Christine E.McLaren、Eugene W.Gerner、Frank L.Meyskens及びJeffrey Jacobによる米国仮特許出願、名称「Cancer Prevention and Treatment Methods Based on Dietary Polyamine Content」を参照のこと。またその全文は、参照することにより本明細書に組み入れられる。
【0054】
II.家族性腺腫性ポリポーシス
遺伝性ポリポーシス症候群である家族性腺腫性ポリポーシス(FAP)は、大腸腺腫性ポリポーシス(APC)腫瘍抑制遺伝子の生殖細胞突然変異の結果である(Su et al.,1992)。さまざまな表現型となる、この常染色体優性条件は、散発性結腸癌と診断される平均年齢よりも20歳早い40代における、一様に腺癌へと進行する、数百もの結腸癌の発生と関連する(Bussey,1990)。FAP発症前の対象についてのこれまでの研究において、正常に見える結腸直腸生検におけるポリアミン(スペルミジン及びスペルミン、並びにそのジアミン前駆体であるプトレッシン)のレベルが、正常な家系員対照よりも上昇していることが検出された(Giardiello et al.,1997)。哺乳類のポリアミン合成における第一の、かつ律速酵素であるオルニチンデカルボキシラーゼ(ODC)の活性もまた、FAP患者由来の正常に見える結腸粘膜生検で上昇している(Giardiello et al.,1997;Luk and Baylin,1984)。ポリアミンが適正な細胞増殖に必須であることから、これらの発見は注目されている(Pegg,1986)。さらに、酵素により活性化される不可逆性の阻害剤であるDFMOを用いたODC活性の抑制は、発癌性物質を処理した齧歯類−における結腸癌の発症を阻害する(Kingsnorth et al.,1983;Tempero et al.,1989)。
【0055】
以下に詳細に議論されるように、変異したAPC/apc遺伝子型がFAPと共通するMin(多重腸新生物)マウス(Lipkin,1997)を、ヒトFAP患者への有用な実験動物モデルとして用いた。Minマウスは、120日間の生存の間に、GI出血、閉塞及び死亡を引き起こす、100を超える胃腸腺腫/腺癌を胃腸管全体に発生させることができる。DFMO及びスリンダクの併用療法が、これらのマウスにおける腺腫の減少に効果的であることが示された(米国特許第6,258,845号;Gerner and Meyskens,2004)。Minマウスを、DFMO単独、スリンダク単独、又はDFMOとスリンダクとの併用のいずれかを用いて処理した場合の、結腸又は小腸いずれかでの腫瘍形成における結果を図9〜11に示す。
【0056】
III.オルニチンデカルボキシラーゼ−1多型
ポリアミン合成における第一の酵素であるオルニチンデカルボキシラーゼ(ODC)の活性は、正常な成長に必要であり、またその活性は結腸直腸癌を含む多くの癌において上昇している。本明細書においては、CRC症例における、+316 ODC一塩基多型(SNP)と結腸直腸癌(CRC)特異的生存との間の関連について試験し、そしてその結腸癌細胞における機能的異議について調査した。
【0057】
ヒトODC1遺伝子のイントロン−1中にある一塩基多型(SNP)は、ODC1転写に影響を及ぼし(Guo et al.,2000)、結腸直腸腺腫(CRA)リスクに対する遺伝子マーカーとして研究されてきた(Martinez et al.,2003;Barry et al.,2006;Hubner et al.,2008)。報告されたマイナーA−アレル頻度はおよそ25%であり、人種/民族性による差に関わらず、各人種におけるODC1遺伝子型分布はハーディ・ワインベルグ平衡を取る(O’Brien et al.,2004;Zell et al.,2009)。ODC1マイナーA−アレルホモ接合の対照は、メジャーG−アレルホモ接合の対照と比較して腺腫再発のリスクが低い(Martinez et al.,2003;Hubner et al.,2008)。さらに、ODC1 A−アレル(AA又はGA遺伝子型、であってGG遺伝子型ではない)及び報告されたアスピリンの使用は、結腸ポリープ再発の減少(Martinez et al.,2003;Barry et al.,2006;Hubner et al.,2008)、及び統計的に有意な進行した腺腫の50%低下(Barry et al.,2006)と関連した。
【0058】
E−ボックス転写因子のODCアレル特異的結合について研究を行い、2つのE−ボックス(図2Aに図示したE−ボックス2及び3)の間に位置する+316 ODC SNPの機能的意義を評価した。各細胞株遺伝子型は、この領域中に保存されているPstI制限酵素部位に影響を及ぼす。図2Bは、ヒト結腸HT29細胞をからのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)産物はPstI切断に対して部分的に感受性であったことを示し、このことはこれらの細胞が少なくとも1つのODC A−アレルを含むことを示唆している。同じプライマーを用いたヒト結腸HCT116細胞からのPCR産物は、PstIの作用に対して非感受性であり、このことはこれらの細胞がODC G−アレルのみを含むことを意味している。この結果は、ダイレクトDNAシークエンシングにより確認した。
【0059】
転写アクチベーターであるc−MYC及び複数の転写リプレッサーを含む、HT29及びHCT116細胞においてE−ボックスに特異的に結合するタンパク質(例えばMAD1及びMAD4)の発現を、ウェスタンブロットにより実証した(図3A)。これらのタンパク質に対する抗体を用いて、ODCプロモーターの+316周辺領域のクロマチン免疫沈降(CHIP)解析を行った。図3Bに示したように、c−MYC、MAD1又はMAD4に対する抗体を用いたクロマチンの免疫沈降後に得たHT29 DNAから、ODCプロモーターに特異的なPCR産物を合成した。同様のクロマチン免疫沈降後にHCT116 DNAから合成したPCR産物は、HT29 DNAから合成したPCR産物と比較して、実質的に少なかった。これらの結果の定量は、c−MYC、MAD1、及びMAD4のODC SNP領域への結合が、ODC−Gアレルのみを含むHCT116細胞と比較して、1つのODC−Aアレルを含むHT29細胞において4〜14倍高いことを示した。
【0060】
ODCアレル−特異的プロモーター活性を評価した。E−ボックスのアクチベーター及びリプレッサーの発現に依存して、+316 ODC SNPがODCの発現に影響を及ぼすという仮説を、以下のように試験した。ODCアレル特異的プロモーター構築物と、転写アクチベーターであるc−MYC又はリプレッサーであるMAD1のいずれかを発現しているベクターとを同時に導入することにより、結腸癌由来HT29細胞の一過性のトランスフェクションを行った(図4A及び図4B)。標準誤差の線は、重複して行った単一の代表的な実験での、3回の測定における変動を反映している。これらの実験で用いたアレル特異的プロモーター−レポーターには、図2Aに示した3つ全てのE−ボックスが含まれた。図4Aに示したように、c−MYCの発現は、3つの保存されたE−ボックス及びODC−Aアレルを含むプロモーターに対して高い刺激効果を有した(wt E−ボックス1 +316 A、P=0.0014)。上流のE−ボックスを欠損させるとプロモーター活性が低下したが、c−MYCの発現はこの活性を刺激し続けた(mut E−ボックス1 +316 A、P=0.0013)。+316 SNP位置でGをAに置換すると、完全な5’に隣接した保存されたE−ボックスがあっても、c−MYCのプロモーター活性を刺激する能力が低下した。5’に隣接した保存されたE−ボックスへの変異の導入とODC−Gアレルとの組み合わせでは、プロモーター活性がさらに低下した。
【0061】
c−MYCよりも、MAD1をODCアレル−特異的プロモーターレポーターと共にトランスフェクションした場合(図4B)、リプレッサーは、3つ全てのE−ボックス及び野生型+316 A−アレルを含むODCプロモーターの活性のみを低下させることができた(P=0.027)。上流のE−ボックスを欠損させると(mut E−ボックス1 +316 A)、MAD1のODCプロモーター活性に及ぼす効果が有意に低下した。+316位置のGをAに置換すると、2つ又は3つのE−ボックスを含むプロモーターはMAD1による抑制に非感受性となった。
【0062】
IV.ジフルオロメチルオルニチン(DFMO)
エフロルニチンとしても知られるDFMOは、2−(ジフルオロメチル)−dl−オルニチンという化学名を有する。これは、ポリアミン生合成経路の律速酵素であるオルニチンデカルボキシラーゼ(ODC)の、酵素によって活性化される不可逆的な阻害剤である。ポリアミン合成のこの阻害の結果、この化合物は、多くの器官系での癌形成の予防、癌の成長の阻害、及び腫瘍サイズの低減において効果的となる。また、これはその他の抗腫瘍薬との相乗作用を有する。
【0063】
DFMOがマウスにおけるAPC依存性腸腫瘍形成を減少させることが示されてきた(Erdman et al.,1999)。ヒトにDFMOを毎日経口投与すると、ODC酵素活性及び多くの上皮組織におけるポリアミン含量が抑制される(Love et al.,1993;Gerner et al.,1994;Meyskens et al.,1994;Meyskens et al.,1998;Simoneau et al.,2001;Simoneau et al.,2008)。近年発明者らは、無作為化臨床試験において、DFMOが、非ステロイド抗炎症性薬(NSAID)スリンダクと併用することで、偽薬群と比較して、結腸腺腫を有する個体における腺腫再発率を顕著に低下させることを報告した(Meyskens et al.,2008)。
【0064】
DFMOは当初、Centre de Recherche Merrell、Strasbourgにより、合成された。現在、FDAによる認可には
・アフリカ睡眠病。高用量全身性IV用量形態−市販されない(Sanofi/WHO)
・男性型多毛症(アンドロゲン誘導性の過剰な体毛の成長)局所用量形態
が含まれ、現在、経口処方は認可されていない。
【0065】
良性前立腺肥大症の治療におけるDFMO及びその使用は、米国特許第4,413,141号、及び同第4,330,559号の2つの特許に記載されている。米国特許第4,413,141号には、DFMOがインビトロ及びインビボの両方において、ODCの強力な阻害剤であることが記載されている。DFMOの投与は、通常は積極的に生産されるポリアミンである、プトレッシン及びスペルミジンの細胞中での濃度低下をもたらす。加えて、標準的な腫瘍モデルに投与した場合に、DFMOが新生細胞の増殖を遅らせることができることが示されてきた。米国特許第4,330,559号では、良性前立腺肥大症の治療におけるDFMO及びDFMO誘導体の使用について記載されている。良性前立腺肥大症は、早い細胞増殖によって特徴付けられる多くの疾患状態と同様に、ポリアミン濃度の異常な上昇によって生じる。この文献中に記載された治療は、経口的又は非経口的のいずれかにより、患者に投与することができる
【0066】
有意な抗腫瘍効果のあるDFMOを継続的に投与することができる。この薬剤は、0.4g/m2/日というヒトへの低い用量では比較的毒性が低いが、腫瘍においてプトレッシン合成を阻害する。ラット腫瘍モデルを用いた研究は、DFMOの注入が、末梢の血小板の数を抑制することなく、腫瘍プトレッシンレベルを90%低下させることを示している。
【0067】
DFMOの使用に伴って観察される副作用には、4g/M2/日の高用量での聴力に及ぼす影響が挙げられるが、これは薬剤を中止することによって解消される。これらの聴力に及ぼす影響は、0.4g/M2/日の低用量を1年間まで投与した場合には観察されない(Meyskens et al.,1994)。加えて、ふらつき/めまいの症例がいくつか見られたが、薬剤を中止することで解消した。主に高「治療」用量のDFMO(>1.0g/m2/日)、そして第一に、これまでに化学療法を受けていた癌患者、又は骨髄損傷を有する患者を用いた研究において、血小板減少症が報告された。DFMO治療に関連する毒性は通常、その他の型の化学療法と同程度には重症でないが、限られた臨床試験においては、用量依存的に血小板減少症を促進することが認められている。さらに、ラットを用いた実験では、DFMOを12日間持続注入すると、対照と比較して、血小板の数が有意に低下することが示されている。その他の研究においても、血小板減少症が継続的なDFMOの静脈内治療による主要な毒性であるという、同様の観察がなされた。これらの発見は、DFMOが巨核球の骨髄前駆体のODC活性を有意に阻害し得ることを示唆するものである。DFMOは上皮創傷治癒のような、増殖性の修復過程を阻害し得る。
【0068】
第第3相臨床試験では、ジフルオロメチルオルニチン(DFMO)とスリンダク、又はマッチした偽薬を用いた36ヶ月の治療後の腺腫性ポリープの再発を評価した。一時的な聴力の低下がDFMOによる治療の既知の毒性であり、そのため一連の空気伝導聴力を解析するための包括的な方法が開発された。一般化された推定式は、周波数での繰り返し行った測定による、対象内での相関を評価することにより、治療群間での空気伝導純音閾値の平均差を推定した。290人の対象の結果、偽薬を投与した対象と比較した、DFMO及びスリンダクを投与した対象間における、基準値、年齢、及び周波数で補正した平均差は0.50dBであった(95%信頼区間、−0.64〜1.63dB;P=0.39)。通常の会話音域は500〜3,000Hzであり、推定される差の平均は0.99dB(−0.17〜2.14dB;P=0.09)であることを検出した。用量強度によっては、モデルに対する情報は加えられなかった。試験した全音域帯にわたり、連続した2つ以上の周波数で基準値から少なくとも15dBの聴力低下を経験した対象は、DFMO及びスリンダクの群では151人中14人(9.3%)、及び偽薬群で139人中4人(2.9%)であった(P=0.02)。治療後、少なくとも6ヶ月間継続した空気伝導検査は、治療群において聴力閾値の差の平均が1.08dB(−0.81〜2.96dB;P=0.26)に修正されたことを示した。偽薬群と比較して、DFMO及びスリンダク群において臨床的に有意な聴力低下を経験した対象の割合には有意な差はなかった。この薬剤が原因となる、中毒性難聴の推定されるリスクは8.4%(95%信頼区間、−2.0%〜18.8%;P=0.12)である。偽薬を投与した患者と比較して、DFMO及びスリンダクを投与した患者の平均閾値の差は、<2dBである。この研究の結果は、McLaren et al., 2008において詳細に議論されており、その全文は参照することにより本明細書に組み入れられる。本明細書においては、DFMO及びスリンダクのような薬剤を投与した患者での中毒性難聴を低減する及び/又は予防する方法が提供される。
【0069】
V.NSAID
NSAIDは非ステロイド性の抗炎症性薬である。抗炎症性作用に加えて、それらは鎮痛性、解熱性、及び血小板阻害作用を有する。それらは第一に、慢性関節炎の状態の治療、並びに疼痛及び炎症と関連する特定の軟部組織障害の治療に用いられる。それらは、アラキドン酸を、プロスタグランジンの前駆体である環状エンドペルオキシドに変換するシクロオキシゲナーゼを阻害し、プロスタグランジンの合成を遮断することによって作用する。プロスタグランジン合成の阻害が、それらの鎮痛性、解熱性、及び血小板阻害作用の主な要因であり、その他の機序もそれらの抗炎症性効果に寄与していると考えられる。特定のNSAIDはまた、リポキシゲナーゼ酵素又はホスホリパーゼCを阻害する場合があり、又はT−細胞の機能を調節する場合がある。(AMA Drug Evaluations Annual,1814−5,1994)。
【0070】
アスピリン、イブプロフェン、ピロキシカム(Reddy et al.,1990;Singh et al.,1994)、インドメタシン(Narisawa,1981)、及びスリンダク(Piazza et al.,1997;Rao et al.,1995)を含む非ステロイド抗炎症薬(NSAID)は、AOMで処理したラットモデルにおいて効果的に結腸癌の発症を阻害する。NSAIDはまた、活性化されたKi−rasを有する腫瘍の発生をも阻害する(Singh and Reddy,1995)。NSAIDは、腫瘍細胞におけるアポトーシスの誘導を介して癌の発症を阻害すると考えられる(Bedi et al.,1995;Lupulescu,1996;Piazza et al.,1995;Piazza et al.,1997b)。数多くの研究が、アポトーシスの誘導を含むNSAIDの化学予防特性が、プロスタグランジン合成を阻害するそれらの能力の機能であることを示唆している(総説DuBois et al.,1996;Lupulescu,1996;Vane and Botting,1997)。しかしながら、研究はNSAIDが、プロスタグランジン−依存性及び−非依存性機序の両方を介して作用し得ることを示している(Alberts et al.,1995;Piazza et al.,1997a;Thompson et al.,1995;Hanif,1996)。NSAIDスリンダクの代謝産物であるスルホン化スリンダクは、COX−阻害活性を欠くが、腫瘍細胞におけるアポトーシスを誘導し(Piazza et al.,1995;Piazza et al.,1997b)、そして癌発症の複数の齧歯類モデルにおける腫瘍の発生を阻害する(Thompson et al.,1995;Piazza et al.,1995,1997a)。
【0071】
ヒト臨床試験において、いくつかのNSAIDの効果が試験されてきた。イブプロフェンの第2a相試験(1ヶ月)が遂行され、300mg/日の用量でさえも、扁平粘膜におけるプロスタグランジンE2(PGE2)レベルの有意な減少が認められた。300mg用量のイブプロフェンは非常に低用量であり(治療用量は1200〜3000mg/日以上)、長期の使用においても毒性は見られないようである。しかしながら、動物化学予防モデルにおいては、イブプロフェンはその他のNSAIDに比べて効果が低い。
【0072】
A.スリンダク及びその主要な代謝産物である、スルホン化スリンダク及びスリンダク硫化物
スリンダクは、(Z)−5−フルオロ−2−メチル−1−((4(メチルスルフィニル)フェニル)メチレン)1H−インデン−3−酢酸という化学名を有する、非ステロイド性の、抗炎症性インデン誘導体である(Physician’s Desk Reference,1999)。インビボにおいてスルフィニル部分は、可逆的な還元により硫化代謝産物へと変換され、そして不可逆的な酸化によりスルホン化代謝産物(エクシスリンド)へと変換される。その全文が参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第6,258,845号を参照のこと。Ki−rasの活性化をも阻害するスリンダクは、COXを阻害する能力において異なるが、その両方ともがアポトーシスの誘導を介して化学予防効果を示すことができる、2つの異なる分子に代謝される。スルホン化スリンダクはCOX阻害活性を欠き、そしてプロスタグランジン合成とは独立した方法でアポトーシスの誘導を促進するようである。入手可能な証拠は、硫化物誘導体が生物学的に活性な化合物のうちの少なくとも1つであることを示している。これに基づき、スリンダクをプロドラッグとして検討することができる。
【0073】
スリンダク(クリノリル(登録商標))は、例えば、150mg及び200mgの錠剤として入手可能である。成人への最も一般的な用量は150〜200mgを1日2回、最大1日用量は400mgである。経口投与の後には、約90%の薬が吸収される。空腹患者においては約2時間後、食事と共に投与した場合には3〜4時間後にピーク血漿レベルに達する。スリンダクの平均半減期は7.8時間であり、硫化代謝産物の平均半減期は16.4時間である。その両方の全文が参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第3,647,858号及び同第3,654,349号はスリンダクの調製物を包含する。
【0074】
スリンダクは、変形性関節症、関節リウマチ、硬直性脊椎炎、急性痛風、及び急性肩胛痛徴候の徴候及び症状の、急性及び長期間の軽減のために適用される。スリンダク(1日当たり400mg)によってもたらされる鎮痛性及び抗炎症効果は、アスピリン(1日当たり4g)、イブプロフェン(1日当たり1200mg)、インドメタシン(1日当たり125mg)、及びフェニルブタゾン(1日当たり400〜600mg)による効果と同等である。スリンダクの副作用としては、腹痛及び悪心が主訴である、約20%の患者における中等度の胃腸への作用が挙げられる。眠気、頭痛、及び神経過敏が主訴であると報告された、CNSの副作用が最大で10%の患者において見られる。皮膚発疹及びかゆみが5%の患者に生じる。スリンダクを用いた慢性治療は、出血、潰瘍形成、及び穿孔のような重篤な胃腸毒性を引き起こす可能性がある。
【0075】
癌、具体的には結腸直腸ポリープ、の化学予防におけるスリンダクの使用可能性について、よく研究されてきた。最近の2つの特許、米国特許第5,814,625号及び同第5,843,929号は、ヒトにおける、スリンダクの化学予防としての使用可能性について詳述している。両特許の全文が参照により本明細書に組み入れられる。米国特許第5,814,625号において請求されたスリンダクの用量は1日当たり10mg〜1500mgの範囲であり、好ましい用量は1日当たり50mg〜500mgである。しかしながら、より高い用量での化学予防における単一の薬剤としてのスリンダクの使用に関わる最も大きな問題は、周知の毒性及び不耐性への中程度に高いリスクである。60歳を超える対象においては副作用の頻度がより高いことから、高齢者は特に作用を受けやすいようである。この年齢群の対象が最も結腸直腸癌を発生しやすく、そのため、最も化学予防からの恩恵を受けやすいことが知られている。
【0076】
スリンダク及びそのスルホン化代謝物であるエクシスリンドは、複数の型の癌の予防及び治療のために試験されてきており、臨床試験が続けられている。米国国立衛生研究所のデータベースであるClinical Trials.govは、2010年5月10日時点での、以下の概観を提供している。
【表1】
【0077】
B.ピロキシカム
4−ヒドロキシ−2−メチル−N−2−ピリジル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキサミド1,1−ジオキシドという化学名を有する薬剤は、関節リウマチ及び変形性関節症の治療においてよく確立された非ステロイド性抗炎症薬である。その有用性は、筋骨格障害、月経困難症、及び術後疼痛の治療において示されてきた。半減期が長いことから、1日1回の投与を行うことができる。この薬は、直腸内に投与すると有効であることが示されてきた。副作用として報告される主訴は胃腸の病気である。
【0078】
近年のIIb試験においては副作用を示したが、動物モデルにおいてピロキシカムが有効な化学予防薬であることが示されてきた(Pollard and Luckert,1989;Reddy et al.,1987)。NSAIDの副作用の大規模メタ解析もまた、ピロキシカムがその他のNSAIDよりも多くの副作用を有することを示している(Lanza et al.,1995)。スリンダクが家族性腺腫性ポリポーシス(FAP)患者の腺腫の退行をもたらすことが示されてきたが(Muscat et al.,1994)、散発性腺腫についての少なくとも1つの研究においてはそのような効果は認められなかった(Ladenheim et al.,1995)。
【0079】
DFMOは、それぞれの薬剤を個別に投与した場合、Ki−ras突然変異及び腫瘍形成においてピロキシカムよりも高い抑制効果を及ぼすが(Reddy et al.,1990)、DFMO及びピロキシカムの併用がAOMを処理した結腸癌発症のラットモデルにおいて相乗的な化学予防効果を有することが示された(Reddy et al.,1990)。1つの研究においては、DFMO又はピロキシカムをAOMを処理したラットに投与すると、Ki−ras突然変異を有する腫瘍の数が、90%から、それぞれ36%及び25%に減少した(Singh et al., 1994)。両薬剤とも、存在する腫瘍における生化学的に活性なp21rasの量を低下させた。
【0080】
C.NSAIDの併用
様々なNSAIDの併用もまた、様々な目的のために使用される。2つ以上のNSAIDを低用量で使用することにより、高用量の個々のNSAIDと関連する副作用又は毒性を低減することが可能である。例えば、いくつかの実施形態において、スリンダクをセレコキシブと共に使用することができる。いくつかの実施形態において、1つ又は両方のNSAIDはCOX−2選択的阻害剤である。単独又は併用において用いることが推奨されるNSAIDの例としては、イブプロフェン、ナプロキセン、フェノプロフェン、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、オキサプロジン、インドメタシン、スリンダク、エトドラク、ジクロフェナク、ピロキシカム、メロキシカム、テノキシカム、ドロキシカム、ロルノキシカム、イソキシカム、メフェナム酸、メクロフェナム酸、フルフェナム酸、トルフェナム酸、セレコキシブ、ロフェコキシブ、バルデコキシブ、パレコキシブ、ルミラコキシブ、又はエトリコキシブが挙げられるが、これらには限定されない。
【0081】
VI.エフロルニチン/スリンダク併用療法
対象に薬剤を低用量で併用して投与した化学予防薬の前臨床研究では、腺腫予防における付加的な毒性のほとんどない顕著な効果が示され、このことは、低用量での併用が腺腫再発予防のリスク対利益率を改善する方法であることを示唆している。
【0082】
上述したように、FAPと共通な変異型APC/apc遺伝子型を有するMin(多重腸新生物)マウスは、ヒトFAP患者に対する有用な実験動物モデルとなる(Lipkin、1997)。Minマウスは生後120日目までに、胃腸管全体に、GI出血、閉塞及び死亡を引き起こす、100を超える胃腸腺腫/腺癌を発症することができる。DFMOとスリンダクの併用療法が、これらマウスにおいて腺腫の減少に効果的であることが示された(米国特許第6,258,845号;Gerner and Meyskens, 2004)。Minマウスを、DFMO単独、スリンダク単独、又はDFMOとスリンダクとの併用のいずれかを用いて処理した場合の、結腸又は小腸いずれかでの腫瘍形成における結果を図9及び図10に示す。図9は、未処理対照と比較した場合の、3つの治療群における結腸の大きさ当たりの腫瘍の平均数を示す。図10は、未処理対照と比較した場合の、3つの治療群における小腸の大きさ当たりの腫瘍の平均数を示す。図11は、単独又は併用の治療によってどのようにグレードの高い腺腫の数が変動するかを示す。
【0083】
VII.患者プロファイルに基づくポリアミン阻害治療の効力
D,L−(−ジフルオロメチルオルニチン(DFMO、エフロルニチン)とスリンダクを併用して、長期間、毎日CRA患者に経口投与した場合に、ポリアミン阻害効力があること示されたが(Meyskens et al., 2008)、治療は中等度の無症状の中毒性難聴(McLaren et al., 2008)、及び高い基準値の心血管リスクを有する患者における心血管イベントの数の増加と関連した(Zell et al., 2009)。本発明者らは今回、偽薬群と比較して、ODC1遺伝子型が、腺腫再発、組織ポリアミン反応、又はエフロルニチンとスリンダクとの治療後の毒性プロファイルに差次的に作用することを決定した。
【0084】
腺腫(≧3mm)の切除歴を有する375人の患者を、ジフルオロメチルオルニチン(DFMO)500mg及びスリンダク150mgの投与を1日1回36ヶ月受ける群と、マッチした偽薬を受ける群とに無作為に割り当て、試験開始時での低用量のアスピリン(81mg)の使用及び臨床現場とにより分類した。無作為化又は試験脱落の3年後に、追跡調査のための結腸鏡検査を行った。群間における結腸直腸腺腫再発を対数二項回帰を用いて比較した。偽薬の投与を受けた患者でのアウトカムを、積極的な介入を受けた患者と比較した。結果は、(a)1つ以上の腺腫の再発が41.1%及び12.3%(リスク率、0.30;95%信頼区間、0.18〜0.49;P<0.001)であり;(b)1つ以上の進行した腺腫有する患者は偽薬群では8.5%であり、治療群では0.7%であった(リスク率、0.085;95%信頼区間、0.011〜0.65;P<0.001);及び(c)最終的な結腸鏡検査では、17人(13.2%)の患者が複数(>1)の腺腫を有したが、治療群では1人(0.7%;リスク率、0.055;0.0074−0.41;P<0.001)であった。重篤な有害事象(グレード≧3)は偽薬群の8.2%の患者において生じたが、積極的な介入を受けた群では11%であった(P=0.35)。基準値と比較して、聴力に変化があったと報告された患者の割合には、両群において有意な差は見られなかった。腺腫性ポリープの再発は、ほとんど副作用なく、DFMO及びスリンダクの低経口用量での併用によって顕著に減少した。この試験の詳細については以下で議論され、またその全文が参照により本明細書に組み入れられるMeyskens et al., 2008中で議論されている。
【0085】
本試験は、267人の試験後の結腸鏡検査が終了した後に、Data Safety Monitoring Board(DSMB)により中止された(試験が効力エンドポイントに達したため)。DSMBは、全ての安全性及び効力エンドポイントをモニタリングした。実施例部分において詳細に議論したように、この試験は、複数の機関における第3相結腸腺腫予防試験からの患者のデータの解析を含む。その全文が参照により本明細書に組み入れられる、Meyskens et al., 2008をもまた参照のこと。
【0086】
A.ODC1遺伝子型分布
カリフォルニア大学アーバイン校でのCRC gene−environment studyから同定された、全440の結腸直腸癌(CRC)症例をケースのみの解析(case−only analysis)に用いた。フォローアップ期間の中間値は11年であった。270(61%)の結腸癌症例、162(37%)の直腸癌症例、及び8(2%)の位置が特定されなかったCRC症例があった。表1に結腸及び直腸癌の臨床病理学的データを示す。全CRC症例におけるODC +316遺伝子型分布は、53%がGG、41%がGA、及び7%がAAであった。CRC症例におけるODC +316遺伝子型分布は、家族歴の有無に関わらず同様であった。年齢(P=0.38)、性別(P=0.56)、家族歴(P=0.94)、結腸直腸中の部位(P=0.55)、病歴(P=0.46)又は腫瘍悪性度(P=0.73)によるODC遺伝子型分布の有意な差はなかった。診断での期によってもODC遺伝子型分布に有意な差はなかった:I期(49%GG、42%GA、8%AA)、II期(56%GG、38%GA、6%AA)、III期(51%GG、43%GA、6%AA)、IV期(59%GG、37%GA、4%AA)(P=0.87)。民族性によりODC遺伝子型分布が有意に異なることが明かであった:カフカス人(382例:53%GG、41%GA、6%AA、マイナー−Aアレル頻度=26%)、アフリカ系アメリカ人(7例:71%GG、29%GA、0%AA、マイナー−Aアレル頻度=15%)、ヒスパニック(21例:57%GG、43%GA、0%AA、マイナー−Aアレル頻度=21%)、及びアジア人(27例:33%GG、41%GA、26%AA、マイナー−Aアレル頻度=46%)(P=0.009)。しかしながら、各人種中でのODC遺伝子型分布はハーディ・ワインベルグ平衡を取った(カフカス人P=0.36、アフリカ系アメリカ人P=0.66、ヒスパニックP=0.21、アジア人P=0.35)。
【0087】
B.腺腫の再発
ODC1遺伝子型分布は、126 GG(55%)、87 GA(38%)、及び15 AA(7%)であった。表1に示したように、試験開始時の臨床的特徴は異なった。年齢、性別、人種、アスピリンの使用、治療、ODC1遺伝子型、及び治療を予測変数として用いた回帰モデルでは、治療は、腺腫再発、組織ポリアミン反応、及び中毒性難聴の差のみに関連する因子であった。偽薬患者での腺腫再発のパターンがGG−50%、GA−35%、AA−29%であるのに対し、エフロルニチン/スリンダク患者でのパターンがGG−11%、GA−14%、AA−57%であるように、ODC1遺伝子型及び腺腫再発の治療のフルモデル(P=0.021)においては、統計的に有意な相互作用が検出された。
【0088】
ODC1遺伝子型と、このモデルでの治療との間には統計的に有意な相互作用が認められた(P=0.038)。ODC1遺伝子型と、組織プトレッシン反応又はこのフル回帰モデル中での反応におけるスペルミジン:スペルミン比との間には有意な関連はなかった(データは示さない)。補正を行ったあとの、このフル回帰モデルにおける治療に関連した腺腫再発の相対リスク(RR)は0.39(95%CI 0.24〜0.66)であった。心血管又は胃腸での有害事象に関しては、治療とODC1遺伝子型群との間に有意な関連は見られなかった(表3及び表4)。
【0089】
アスピリンの投与により腺腫再発のリスクが低下したCRA患者が少なくとも1つのA−アレルを有していることを示した先の報告とは対照的に(Martinez et al.,2003;Barry et al.,2006;Hubner et al.,2008)、ここでは、エフロルニチンとスリンダクとの腺腫阻害剤効果がメジャーGのホモ対合ODC1遺伝子型を有する患者でより高いことが認められた。ODC1遺伝子型分布は先のアスピリンを使用した試験(Martinez et al.,2003;Barry et al.,2006;Hubner et al.,2008)と同様であり、これまでの報告(Martinez et al.,2003;Hubner et al.,2008)と一致して、A−アレルは偽薬群における、有意でないより低い腺腫再発のリスクと関連した。腺腫再発及び中毒性難聴発症発症リスクが上昇する可能性の点についてはA−アレル、特にAAホモ接合、保有者への効果はより少なく、これらの結果は、長期間のエフロルニチン及びスリンダクへの曝露に対する反応は、ODC1 A−アレル保有者とGG遺伝子型患者とでは異なることを示した。
【0090】
C.生存解析
440のCRC症例のうち、138人(31%)は解析時点では死亡していた。症例のうち、死亡した64人(46%)はGG遺伝子型を保有し、対して、死亡した74人(54%)がAA/AG遺伝子型であった。死亡した138人のCRC症例のうち、102人の死因が特定できた。CRC症例のうち85人(83%)はCRCが原因で死亡した。少なくとも1つのA−アレル(ODC GA/AA)の症例(10年生存率=76%;P=0.031)と比較すると、ODC G−アレルのホモ接合を有する全CRC症例において、統計的に有意なCRC特異的生存の改善が見られた(10年生存率=84%)。期ごとのCRC特異的生存の解析により、AJCCのI期(P=0.055)、II期(P=0.61)、又はIV期(P=0.65)CRCにおいては、生存の差に有意差がないことが明らかになった。しかしながら、III期CRC患者においては、ODC GG遺伝子型は、CRC特異的な10年生存率の改善と関連した:ODC GA/AA遺伝子型症例において75%対60%;P=0.024(図1)。結腸癌症例においては、ODCGG遺伝子型を有する場合にODCGA/AAである例と比較して、統計的に有意なCRC特異的な生存への有益性が認められた(10年生存率=87%対79%;P=0.029)。このことは直腸癌の症例には見られなかった(ODC GGの10年生存率=78%対ODC GA/AA例72%;P=0.42)。
【0091】
年齢(年)、性別、民族性、CRCの家族歴、診断時でのTNM病期、結腸中での腫瘍の位置、組織学的サブタイプ、外科的治療、放射線治療、及び化学療法を用いて補正した後の、全CRC症例におけるODC遺伝子型に基づくCRC特異的な生存予測値は以下の通りである:ODC GGハザード率(HR)=1.00(基準値)、ODC GA HR=1.73、及びODC AA遺伝子型HR=1.73(P−trend=0.0283)。結腸例のみにおいては、上述した臨床変数で補正後のCRC特異的生存解析は、ODC +316 SNPがCRC特異的生存の独立した予測変数であることを明らかにした。ODC GG結腸癌症例と比較した場合の、死亡のCRC特異的リスクは(HR)、ODC GA遺伝子型については2.31(1.15〜4.64)であり、ODC AA遺伝子型については3.73(0.93〜14.99)であった(P−trend=0.006)(表2)。これらの結腸癌症例の全生存解析は、CRC特異的生存解析と一致した(表2)。直腸癌症例において、上述した臨床変数で補正後のCRC特異的生存解析は、ODC +316 SNPがCRC特異的生存についての独立した予測変数ではないことを明らかにした。ODC GG直腸癌の例(HR=1.00、基準値)と比較した場合、死亡のCRC特異的リスク(HR)は、ODC GAヘテロ接合については1.72(0.83〜3.57)であり、ODC AAホモ接合については1.93(0.56〜6.67)であった(P−trend=0.12)。
【0092】
上述したように、ODC +316遺伝子型分布は民族性によって異なる。偶然でない限り、観察された死亡リスクはODC遺伝子型に基づく差を反映するようであるが、このリスクは特定の民族群に限定され得る。そのため、単一の民族グループ内における遺伝子型特異的死亡リスクを評価するために、多変量解析をカフカス人の結腸癌症例について行った。234人のカフカス人の結腸癌症例において、37人はCRCが原因で死亡した。多変量CRC特異的生存解析により、前述した明かな臨床変数を用いて補正した後には、カフカス人の結腸癌症例においてはODC +316 SNPがCRC特異的生存の独立した予測変数であることが明らかになった。ODC GG遺伝子型(HR=1.00、基準値)と比較した場合、死亡のCRC特異的リスク(HR)は、ODC GA遺伝子型については2.67(1.22〜5.82)であり、ODC AA遺伝子型については6.28(1.46〜26.95)であった(P−trend=0.0018)。
【0093】
CRC症例における遺伝子型特異的な生存の差は結腸癌症例に限られた:ODC GG遺伝子型症例(HR=1.00、基準値)と比較して、補正したCRC−SSハザード率(HR)は、ODC GA症例については2.31(1.15〜4.64)であり、ODC AA3.73(0.93〜14.99)症例については(P−trend=0.006)であった。結腸癌細胞では、2つのE−ボックスに隣接したODC +316 SNPは、ODCプロモーター活性を規定する。E−ボックスのアクチベーターであるc−MYC及びリプレッサーであるMAD1とMAD4は、培養細胞においては、メジャーGアレルよりもマイナーAアレルに優先的に結合する。
【0094】
結腸直腸癌症例を11年間フォローアップしたこの集団ベースの解析に基づき、+316 ODC SNPが結腸癌症例における結腸直腸癌特異的生存と関連することが観察された。それぞれの付加的なODC A−アレルを有する、すなわちODC GGからGA及びAA(P−trend=0.006)の結腸癌症例においては、年齢、性別、民族性、腫瘍の病期、CRCの家族歴、腫瘍の位置、組織学、外科的治療、放射線治療、及び化学療法を用いて補正した後、統計的に有意なCRC特異的死亡リスクが上昇した。
【0095】
D.アレル特異的な転写因子の制御
ここに示した実験データは、我々の臨床観察の根底にある可能性のある、生物学的な機序への洞察を提供する。結腸癌上皮細胞ではE−ボックス転写因子が、Gアレルを含むプロモーターよりもAアレルを含むプロモーターにより多く結合するという証拠に見られるように、ODC +316 SNPが機能的に有意であることが示されてきた。アクチベーターであるc−MYC及びリプレッサーであるMAD1の両方が、GアレルよりもAアレルを含むレポーターエレメントのプロモーター活性に対して高い効果を及ぼすことを示した。これらの結果は、E−ボックス転写因子による、ODCのアレル特異的な制御を示唆するものである。ODC転写に作用すると我々が考えるODCタンパク質の酵素活性は、ODC +316 SNP遺伝子型からは影響を受けないようである。
【0096】
結腸細胞では、正常な結腸粘膜で発現する遺伝子である野生型APCの条件付きの発現がc−MYCの発現を抑制し、MAD1の発現を上昇させることが示されてきた(Fultz 及び Gerner,2002)。さらに、+316 SNPに依存して、野生型APCがODCのプロモーター活性を制御することができることが報告されてきた(Martinez et al.,2003)。FAPには罹患していない対象の正常に見える結腸粘膜では野生型APCが発現するが、散発性結腸腺腫の大部分においては変異した又は欠損したAPCが発現するという証拠が示されている(Iwamoto et al.,2000)。MYCは、正常な腸粘膜においては低いレベルで発現するが、そのレベルはAPCMin/+マウスの腸腺腫では上昇する。腸上皮におけるMYCの発現の条件付きノックアウトは、APCMin/+マウスの腸腫瘍形成を抑制する(Ignatenko et al.,2006)。上述したように、我々のグループ(Martinez et al.,2003)及びその他のグループ(Hubner etal.,2008)によるこれまでの研究は、予防試験における結腸ポリープ再発に対するODCA−アレルの、特にアスピリン使用者においての、保護的な役割を示した。しかしながら、ここに示した集団ベースの研究では、ODCA−アレルは低い生存と関連した。この明かな矛盾は、E−ボックスのアクチベーター及びリプレッサーの両方がODC A−アレルに選択的に結合するという、本明細書に示す結果によって説明され得る。本発明者らは、E−ボックスのリプレッサーを発現する正常な上皮から新生上皮への移行が、ODCA−アレルを有する対象においては遅延され得ると推測する。この効果がポリアミン合成の抑制をもたらし得る。しかしながら、形質転換した上皮がE−ボックス アクチベーター(c−MYCのような)を発現し始めた場合、その後の癌の進行は、ODCA遺伝子型を有する対象において生じやすいようである。結腸癌特異的死亡リスクに関する我々の結果は、その他の結果で示されている、特定の対象においては遺伝子環境相互作用の結果、ODC A−アレルが前立腺癌のリスクと関連し得る、という結果と一致する(O’Brien et al.,2004;Visvanathan et al.,2004)。そのような結腸癌の進行は、前立腺癌について示されてきたように(Simoneau et al.,2008)、ポリアミン合成が高められた結果であると考えられる。
【0097】
ODC SNPのような因子が、癌発症の促進及び阻害両方の効果を有し得るというこの発見は特異なものではない。例えば、形質転換増殖因子−ベータ(TGF−登録商標)は、癌の発症及び癌の進行において、種々の役割を有する(Derynck et al.,2001;Pardali and Moustakas,2007;Roberts and Wakefield,2003)。形質転換されていない細胞中のTGF(登録商標)は、細胞の増殖を阻害し、そしてアポトーシスを引き起こす。さらにこれはヒトの全腫瘍中で過剰発現し、癌のゆっくりとした進行、特に腫瘍の浸潤及び転移と関連する。ヒト結腸直腸腫瘍におけるODC活性について報告している1つの研究では、ODCの高い発現レベルが生存の改善と有意に関連があることが示された(Matsubara et al.,1995)。このことは、ODCの過剰発現はヒトの結腸直腸腺腫の形成を促進するが、確立された病変においてはODCの過剰発現が、増殖の増強を誘導することが可能であり、そして抗増殖治療に対する反応の改善と関連することを示唆するものである。しかしながら、その研究はODC遺伝子型による層別化を含まないため、これらの効果がODC遺伝子型から独立したものであるかについては分かっていない。
【0098】
観察されたODC +316 SNPとCRC特異的死亡との関連は、結腸癌症例に限定された。結腸癌症例中では、カフカス人に対して特に強い効果が観察された。その他の報告と同様に、ODC +316 SNPのアレル頻度は民族性によりかなり異なる(O’Brien et al.,2004)。本発明者らが、生存解析をカフカス人のみに限定した場合(すなわち、そのような解析に対して適切な、単一の民族群について解析した場合)、ODC +316 SNPの関連は有意であり、推定値は、全コホートについて観察された推定値よりもかなり高いかった。
【0099】
疫学的研究は、併発条件の欠如、一般状態、及び用いられた特定の化学療法を含む、その他の集団ベース解析と同様の制限を有する。加えて、UC Irvine Gene−Environment Study of Familial Colorectal Cancerの参加者から得られた組織生検試料がパラフィンに包埋された試料であるため、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いた組織ポリアミンの量の正確な評価に用いることができない。また、CRC診断の診断から研究への登録までに平均して16ヶ月の遅れがあったため、CRC生存者の比較的健康な群に有利な選択バイアスがかかる可能性がある。本研究では評価しなかったポリアミン代謝に作用を及ぼすその他の因子が、我々の観察を説明する可能性がある。例えば、アスピリンは、ポリアミンのアセチル化及び輸送を活性化し、ODC A−アレルと共に細胞及び組織でのポリアミン含量の低下に機能する(Gerner et al.,2004;Martinez et al.,2003;Babbar et al.,2006)。
【0100】
要約すると、発明者らは、結腸癌症例中のCRC特異的死亡における、ODC +316 SNPの臨床結果を観察した。加えて発明者らは、ヒト結腸癌細胞中のこの遺伝子の、c−MYC−及びMAD1依存性転写におけるODC +316 SNPの機能的意義をさらに確立した。これらの実験及び疫学的な発見は合わせて、これまでに報告された結腸腺腫の進行における役割とは異なる、結腸癌の進行におけるODC +316 SNPの役割を示唆するものである。これらの発見は、結腸癌進行のリスクを評価するために用いることができ、患者特異的薬理遺伝学的管理の指導、疾病監視、並びに二次的及び三次的な結腸癌予防に対する新規の標的方法の告知に用いることができる。
【0101】
E.まとめ
偽薬 患者における腺腫再発のパターンがGG−50%、GA−35%、AA−29%であったのに対してエフロルニチン/スリンダク患者ではGG−11%、GA−14%、AA−57%であったように、腺腫再発のフルモデルにおいては、ODC1遺伝子型と治療との間に統計的に有意な相互作用が検出された(P=0.021)。ここでは、CRA患者のうち、アスピリンの投与を受けて腺腫再発のリスクが低下した患者は少なくとも1つのA−アレルを有するというこれまでの報告とは対照的に(Martinez et al.,2003;Barry et al.,2006;Hubner et al.,2008)、エフロルニチン及びスリンダクの腺腫阻害効果は、メジャーGホモ接合ODC1遺伝子型を有する対象においてより高かった。これらの結果は、GG遺伝子型患者とは異なり、長期間のエフロルニチン及びスリンダクの曝露に対するODC1 A−アレル保有者の反応は種々であり、A−アレル保有者、特にAA ホモ接合の対象は、腺腫再発、及び中毒性難聴発生のリスクが上昇する可能性があるという点では、薬の効果を受けにくいことを示すものである。
【0102】
VIII.多型 解析
患者のODC1プロモーター遺伝子の、+316の位置における遺伝子型は、実施例部分に記載した特定の方法を含む、以下に示した方法を用いて決定することができる。これらの方法をさらに、当業者によって適用されるように、分子生物学の原理及び技術を用いて、変更及び最適化することができる。そのような原理及び技術は、例えば、参照することにより本明細書に組み入れられる、Small et al.,(2002)で教示される。一塩基多型(SNP)を同定するために用いられる一般的な方法を以下に示す。Kwok and Chen(2003)及びKwok(2001)による参考文献において、これらの方法のうちのいくつかについての概観が示されており、この両方は特に参照することにより本明細書に組み入れられる。
【0103】
ODC1上のSNPを、任意のこれらの方法又はその好適な変更型の使用にによって特徴付けることができる。そのような方法には、部位の直接的な若しくは間接的なシークエンシング、部位の各アレルが制限酵素部位を作出若しくは壊す場合の制限酵素の使用、アレル特異的ハイブリダイゼーションプローブの使用、多型の異なるアレルによってコードされるタンパク質に特異的な抗体の使用、又は任意のその他の生化学的解釈が挙げられる。
【0104】
A.DNA シークエンシング
多型の解析に一般的に用いられる方法は、多型に隣接した及び多型を含む遺伝子座のダイレクトDNAシークエンシングである。そのような解析は、「サンガー法」(Sanger et al.,1975)としても知られる「ダイデオキシ介在性連鎖停止法」、又は「マクサム・ギルバート法」(Maxam et al.,1977)としても知られる「化学的分解法」により行うことができる。目的の遺伝子の回収を促進するためには、ポリメラーゼ連鎖反応のような、ゲノム配列特異的増幅と組み合わせたシークエンシングを用いてもよい(Mullis et al.,1986;欧州特許出願第50,424号;欧州特許出願第84,796号、欧州特許出願第258,017号、欧州特許出願第237,362号;欧州特許出願第201,184号;米国特許第4,683,202号;同第4,582,788号;及び同第4,683,194号)、上記全ては参照することにより本明細書に組み入れられる。
【0105】
B.エキソヌクレアーゼ抵抗性
多型部位に存在するヌクレオチドの同一性を決定するために用いることができるその他の方法には、特殊なエキソヌクレアーゼ抵抗性ヌクレオチド誘導体の使用がある(米国特許第4,656,127号)。研究においては、多型部位のすぐ3’側の対立配列に相補的なプライマーがDNAにハイブリダイズする。DNA上の多型部位が、存在する特定のエキソヌクレオチド抵抗性ヌクレオチド誘導体に相補的なヌクレオチドを含む場合、ポリメラーゼにより誘導体がその後ハイブリダイズしたプライマーの末端に組み入れられる。そのような組み込みによって、プライマーはエキソヌクレアーゼによる開裂に対して抵抗性になり、そしてプライマーを検出できるようになる。エキソヌクレオチド抵抗性ヌクレオチド誘導体の同一性が既知であるため、DNAの多型部位中に存在する特定のヌクレオチドを決定することができる。
【0106】
C.マイクロシークエンシング法
DNA中の多型部位を評価するための、その他の複数のプライマーを用いた組み込み技術についてが記載されてきた(Komher et al.,1989;Sokolov,1990;Syvanen 1990;Kuppuswamy et al.,1991;Prezant et al.,1992;Ugozzoll et al.,1992;Nyren et al.,1993)。これらの方法は、多型部位中の塩基を識別するために、標識したデオキシヌクレオチドを組み込むことに基づいている。シグナルは組み込まれたデオキシヌクレオチドの数に比例するため、同じヌクレオチドの解析中に生じる多型は、解析の長さに比例するシグナルを生じる(Syvanen et al.,1990)。
【0107】
D.溶液中での伸長
仏国特許第2,650,840号明細書及び国際公開第91/02087号では、多型部位でのヌクレオチドの単一性の決定するための、溶液ベースの方法が議論されている。これらの方法では、多型部位のすぐ3’側の対立配列に相補的なプライマーが使用される。その部位のヌクレオチドの単一性は、プライマーが多型部位のヌクレオチドに相補的な場合にプライマーの末端に組み込まれる標識されたダイデオキシヌクレオチド誘導体を用いて決定される。
【0108】
E.ジェネティックビット(Genetic Bit)解析又は固相での伸長
国際公開第92/15712号では、多型部位の3’配列に相補的な、標識されたターミネーター及びプライマー混合物を使用した方法が記載されている。標識されたターミネーターが組み込まれるとき、そのターミネーターは評価する標的分子の多型部位に存在するヌクレオチドに相補的であり、そのため同定することができる。この場合、プライマー又は標的分子は固相上に固定化される。
【0109】
F.オリゴヌクレオチドライゲーションアッセイ(OLA)
これは、異なる方法論を用いた、別の固相での方法である(Landegren et al.,1988)。標的DNAの1本の鎖に隣接した配列にハイブリダイズすることができる、2本のオリゴヌクレオチドを使用する。これらオリゴヌクレオチドのうちの1本をビオチン化し、もう1本は検出できるように標識する。標的分子中に正確に相補的な配列がある場合、オリゴヌクレオチドが隣接した末端に、ライゲーション基質を作出するようにハイブリダイズする。ライゲーションにより、アビジンを用いた標識オリゴヌクレオチドの検出が可能になる。この方法に基づいたPCRとの組み合わせによる、その他の核酸検出アッセイについてもまた記載がある(Nickerson et al.,1990)。この方法では、PCRは標的DNAの指数関数型増幅を達成するために用いられ、その後標的DNAがOLAを用いて検出される。
【0110】
G.リガーゼ/ポリメラーゼ介在性ジェネティックビット(Genetic Bi)解析
米国特許第5,952,174号では、標的分子に隣接した配列にハイブリダイズすることができる2本のプライマーを含む方法がまた記載されている。ハイブリダイゼーション産物は、標的が固定化された固相支持体上に形成される。この方法では、単一ヌクレオチドの間隔で、プライマー同士が分離されるようにハイブリダイゼーションが起こる。ポリメラーゼ存在下においてこのハイブリダイゼーション産物をインキュベートすると、リガーゼと少なくとも1つのデオキシヌクレオシド三リン酸を含むヌクレオシド三リン酸との混合物が、ハイブリダイズしたオリゴヌクレオチドに隣接した任意の対と結合することができる。リガーゼを添加することにより、シグナル、伸長及びライゲーションに必要な2つの反応を生じる。この方法は、伸長又はライゲーションいずれかを単独で用いた方法よりも高い特異性及び低い「ノイズ」を提供し、またポリメラーゼを用いたアッセイとは異なり、固相に結合されるシグナルに対する二回目のハイブリダイゼーション及びライゲーション工程を組み合わせることにより、この方法はポリメラーゼ 工程の特異性を高める。
【0111】
H.侵襲的開裂反応(Invasive cleavage reaction)
侵襲的開裂反応は、特定の多型について、細胞DNAを評価するために用いることができる。INVADER(登録商標)と呼ばれる技術がそのような反応を利用している(例えば、de Arruda et al.,2002;Stevens et al.,2003,参照することにより組み入れられる)。通常、1)標的部位の上流のオリゴヌクレオチド(「上流オリゴ」)、2)標的部位をカバーするプローブであるオリゴヌクレオチド(「プローブ」)、及び、3)標的部位を含む一本鎖DNA(「標的」)、の3種類の核酸分子を用いる。上流オリゴ及びプローブは、重複しないが連続した配列を含む。プローブは、フルオレセインのようなドナーフルオロフォア、及びDabcylのようなアクセプター色素を含む。上流オリゴの3’末端にあるヌクレオチドは、プローブ−標的複合体の最初の塩基と重複(「侵襲」)する。その後プローブは、フルオロフォア/クエンチャー対の分離を生じる構造−特異的5’ヌクレアーゼにより開裂され、これにより検出される蛍光の量が増加する。Lu et al.,2004を参照のこと。
【0112】
いくつかの例においては、アッセイは固相表面上又はアレイ形態において実施される。
【0113】
I.SNPを検出するためのその他の方法
多型を同定及び検出するための複数のその他特定の方法を以下に示し、これらの方法は本発明のODC1遺伝子の多型の同定に関してそれ自体又は好適な変更を伴って用いることができる。複数のその他の方法はまた、ワールドワイドウェブのNCBIのSNPウェブサイト、ncbi.nlm.nih.gov/SNPにも記載されており、このサイトは参照することにより本明細書に組み入れられる。
【0114】
特定の実施形態においては、どのSNPが余剰であり、どのSNPが関連する研究に必須であるかを正確に同定することを可能にする、集団における任意の指定された遺伝子座における拡散したハプロタイプを決定することもできる。関連する研究に必須なSNPは「ハプロタイプ タグSNP(htSNP)」と呼ばれ、遺伝子又は連鎖不均衡な領域のハプロタイプを捕らえることができるマーカーである。方法の例としては、それぞれが参照することにより本明細書に組み入れられる、Johnson et al.(2001)及びKe及びCardon(2003)を参照のこと。
【0115】
VDA−アッセイは、TaKaRa LA Taq試薬及びその他の標準的な反応条件を用いたlong PCR法による、ゲノムセグメントのPCRによる増幅を利用する。long増幅では、約2,000〜12,000bpの大きさのDNAを増幅することができる。産物のvariant detector array(VDA)へのハイブリダイゼーションは、Affymetrix High Throughput Screening Centerにより行い、そしてコンピュータ化されたソフトウェアを用いて解析することができる。
【0116】
チップアッセイと呼ばれる方法は、標準的な又はlong PCRプロトコールによる、ゲノムセグメントのPCR増幅を利用する。ハイブリダイゼーション産物はVDAにより解析される(参照することにより本明細書に組み入れられる、Halushka et al.(1999))。SNPは通常、ハイブリダイゼーションパターンのコンピュータ解析に基づいて「確実な(certain)」又は「可能性が高い(Likely)」に分類される。ヌクレオチドシークエンシングのような別の検出方法との比較により、「確実な」SNPの100%が確認され、この方法では73%の「可能性が高い」SNPが確認された。
【0117】
その他の方法は単に、PCRでの増幅と、続く関連する制限酵素による消化を含む。さらにその他の方法は、既知のゲノム領域由来の、精製したRCR産物のシークエンシングを含む。
【0118】
さらなる別の方法においては、個々のエキソン又は大きなエキソンの重複している断片がPCRによって増幅される。プライマーは報告されている又はデータベース上の配列に基づいて設計され、ゲノムDNAのPCR増幅は以下の条件により行われる:鋳型DNA 200ng、プライマーそれぞれ0.5μM、dCTP、dATP、dTTP及びdGTPそれぞれ80[M、5% ホルムアミド、1.5mM MgCl2、Taq ポリメラーゼ0.5 U、並びにTaq緩衝液0.1 容量。サーマルサイクラーによる増幅を行い、得られたPCR産物を様々な条件下で、例えば15%の尿素を含む5又は10% ポリアクリルアミドゲルを用い、5% グリセロールを含む又は含まない条件で、一本差高次構造多型(PCR−single strand conformation polymorphism、PCR−SSCP)解析により解析する。電気泳動は一晩かけて行われる。移動度のシフトを示すPCR産物を再度増幅し、そしてヌクレオチドの変異を同定するためにシークエンシングする。
【0119】
CGAP−GAI (DEMIGLACE)と呼ばれる方法では、配列データ及びアライメントデータ(PHRAP.aceファイルから)、配列ベースコールの品質スコア(PHRED品質ファイルから)、距離情報(PHYLIP dnadist及びneighbourプログラムから)並びにベースコールデータ(PHRED「−d」switchから)をメモリにロードする。配列をアライメントし、得られたアセンブリーの一致しない部分についての縦方向のひとまとまり(「スライス(slice)」)を解析する。任意のそのようなスライスが候補SNPだと考えられる(DEMIGLACE)。真に多型を示しているのではないと考えられるスライスを除去するために、DEMIGLACEでは、数多くのフィルターが用いられる。これらのフィルターには、(i)neighboring配列品質スコアが40%以上低下する場合に、示されたスライス中のいずれの配列をもSNPとしての検討からは除外するフィルター;(ii)ピークの大きさが、そのヌクレオチド型についての全ベースコール中の15パーセンタイルよりも低い場合に、そのコールを除外するフィルター;(iii)一致を含む多数の不一致を有する領域をSNPの計算に含めないようにするフィルター;(iv)コールされたピーク中に、25%以上の面積を占める別のコールが存在するベースコールを、検討から除去するフィルター;(v)1方向からの読みのみにおいて生じた変異を除去するフィルター、が含まれる。PHRED品質スコアは、スライス中の各ヌクレオチドについての誤識別率値に変換された。ある特定の位置にヌクレオチド不均一性の証拠があるという事後確率を計算するためには、標準的なベイズ法が用いられる。
【0120】
CU−RDF(RESEQ)と呼ばれる方法では、それぞれのSNPに特異的プライマーを用いて、血液から単離されたDNAからPCR増幅を行い、一般的な精製プロトコールにより用いられなかったプライマー及び遊離ヌクレオチドを除去した後に、同じプライマーまたはネスティッドプライマーを用いて、ダイレクトシークエンシングを行う。
【0121】
DEBNICK(METHOD−B)と呼ばれる方法では、クラスター化したEST配列の比較分析を行い、蛍光を用いたDNA配列決定によって確認しる。DEBNICK(METHOD−C)と呼ばれる関連方法では、クラスター化したEST配列の比較分析(ミスマッチ部位でのphred品質が>20、SNPの5’側及び3’側の5塩基にわたって平均phred品質が>=20、SNPの5’側及び3’側の5塩基でミスマッチなし、それぞれのアレルが少なくとも2回出現する)を行い、トレースを調べることによって確認する。
【0122】
ERO(RESEQ)として認識される方法では、電子的に公表されたSTSに対して新しいプライマーセットを設計し、10種類のマウス系統からDNAを増幅するために用いる。次いで、それぞれの系統からの増幅産物をゲル精製し、33P標識ターミネーターを用いた標準的なジデオキシサイクルシークエンシング法を用いて配列を決定する。次いで、全てのddATP反応終結物を、シークエンシングゲルの隣接するレーンにロードし、その後、全てのddGTP反応物をロードする(以下同様)。放射線像を視覚的に走査することにより、SNPを同定する。
【0123】
ERO(RESEQ−HT)として認識される別の方法では、電子的に公表されたマウスDNA配列に対して新しいプライマーセットを設計し、10種類のマウス系統からDNAを増幅するために用いる。それぞれの系統からの増幅産物を、エキソヌクレアーゼI及びエビアルカリホスファターゼによる処理によってシークエンシング用に調製する。シークエンシングはABI Prism Big Dye Terminator Ready Reaction Kit(Perkin−Elmer)を用いて行い、そして配列試料を3700 DNA Analyzer (96キャピラリーシーケンサー)にかける。
【0124】
FGU−CBT(SCA2−SNP)は、SNP含有領域をプライマーSCA2−FP3及びSCA2−RP3を用いてPCR増幅する方法である。最終濃度にして5mM Tris、25mM KCl、0.75mM MgCl2、0.05% ゼラチン、20pmolの各プライマー、及び0.5UのTaqDNAポリメラーゼを含む50ml反応液中で、約100ngのゲノムDNAを増幅する。試料を変性、アニール、伸長させ、そしてPCR産物をアガロースゲルから切り出したバンドから(例えば、QIAquickゲル抽出キット(Qiagen)を用いて)精製し、ダイターミネーター法を用いてABI Prism 377自動DNAシーケンサーとPCRプライマーを使用してシークエンシングする。
【0125】
JBLACK(SEQ/RESTRICT)として識別される方法では、ゲノムDNAを用いて2つの独立したPCR反応を行う。第1の反応からの産物をシークエンシングにより解析し、唯一のFspI制限部位を明かにする。第2のPCR反応産物中の変異を、FspIで消化することにより確認する。
【0126】
KWOK(1)により記載された方法では、PCR産物を、ダイターミネーター化学を用いたダイレクトDNAシークエンシングすることにより、無作為に選択された4人の対象からの高品質なゲノム配列データを比較することによって、SNPを同定する(Kwok et al.,1996を参照のこと)。KWOK(2)として識別される関連方法では、重複するラージインサートクローン(例えば、細菌人工染色体(BAC)又はP1人工染色体(PAC))からの高品質ゲノム配列データを比較することにより、SNPを同定する。次いで、このSNPを含むSTSが開発し、様々な集団におけるSNPの存在を、プールされたDNAのシークエンシングにより確認する(Taillon−Miller et al.,1998参照のこと)。KWOK(3)と呼ばれる別の類似する方法では、重複するラージインサートクローン(BAC又はPAC)からの高品質ゲノム配列データを比較することにより、SNPを同定する。このアプローチによって発見されたSNPは、2つのドナー染色体間のDNA配列変異に相当するが、一般集団におけるアレル頻度はまだ決定されていない。KWOK(5)の方法では、ホモ接合性DNA試料及び1つ以上のプールされたDNA試料からの高品質ゲノム配列データを、ダイターミネーター化学を用いたPCR産物のダイレクトDNAシークエンシングを用いて比較することによってSNPを同定する。使用されるSTSは、公的に入手可能なデータベースで見られる配列データを用いて開発する。具体的には、全ての遺伝子座でホモ接合性であることが分かっている全胞状奇胎(complete hydatidiform mole:CHM)及び80人のCEPH親からのDNA試料プールをPCRすることにより、これらのSTSを増幅する(Kwok et al.,1994を参照のこと)。
【0127】
別のこのような方法であるKWOK(Overlap Snp Detection With Poly Bayes)では、ラージインサートヒトゲノムクローン配列の重複領域の自動コンピュータ解析により、SNPを発見する。データ取得のために、クローン配列を大規模シークエンシングセンターから直接入手する。これは、ベースクオリティ(base quality)配列が存在しない/GenBankを介して入手できないために必要である。生データ処理は、一貫性のため、クローン配列及び付随するベースクオリティ情報の分析を伴う。関連するベースクオリティ配列のない、完成した(「ベースパーフェクト(base perfect)」、誤識別率1/10,000bp未満)配列には、一定のベースクオリティ値40(1/10,000bpの誤識別率)を割り当てる。ベースクオリティ値のないドラフト配列は拒否される。処理した配列をローカルデータベースに入力する。マスキングした既知のヒト反復を含む、各配列のバージョンも格納する。リピートマスキング(repeat masking)はプログラム「MASKERAID」を用いて行う。重複検出:推定重複はプログラム「WUBLAST」を用いて検出する。その後に、偽の重複検出結果(すなわち、真の重複と相対するものとして、配列重複のために生じる一対のクローン配列間の類似性)を除去するために、いくつかのフィルタリング工程を行う。重複の全長、全パーセント類似性、高いベースクオリティ値「高品質ミスマッチ」を有するヌクレオチド間の配列差異の数。結果をまた、Washington University Genome Sequencing Centerのゲノムクローン制限断片地図の結果、完成者の重複に関する報告、及びNCBIの配列コンティグ構築の取り組みの結果とも比較する。SNP検出:重複するクローン配列対は、「POLYBAYES」SNP検出ソフトウェアを用いて、候補SNP部位について分析する。配列対間の配列差異は、配列決定の誤りと相対するものとして、真の配列変異を表す確率についてスコア付けする。この処理には、両配列のベースクオリティ値が存在することが必要である。ハイスコア候補を抽出する。この検索は置換型一塩基対変異に限定される。候補SNPの信頼スコア(confidence score)はPOLYBAYESソフトウェアを用いて計算する。
【0128】
KWOK(TaqManアッセイ)として識別される方法では、90人の無作為対象の遺伝子型を決定するために、TaqManアッセイを用いる。KYUGEN(Q1)として識別される方法では、指定された集団のDNA試料をプールし、PLACE−SSCPによって解析する。DNAプールを対象とした解析における各対立遺伝子のピークの高さを、ヘテロ接合体における各アレルのピークの高さによって補正し、その後、アレル頻度の計算に用いる。この方法により、10%を超えるアレル頻度が確実に定量される。アレル頻度=0(ゼロ)は、そのアレルが個体間で見られたが、対応するピークがプール解析においては見られなかったことを意味する。アレル頻度=0〜0.1は、マイナーアレルがプールにおいて検出されるが、ピークが小さすぎて確実に定量できないことを示す。
【0129】
KYUGEN(方法1)として認識されるさらに別の方法では、PCR産物を蛍光色素で後標識し、SSCP条件(PLACE−SSCP)の下、自動キャピラリー電気泳動装置を用いて分析する。一連の実験においては、2種類のプールされたDNA(日本人プール及びCEPH親プール)を使用して、又は使用せずに、4種類以上の個々のDNAを分析する。アレルを目視検査によって同定する。異なる遺伝子型を有する個々のDNAをシークエンシングし、SNPを同定する。ヘテロ接合体におけるピークの高さを用いてシグナルバイアスを補正した後、プールした試料のピークの高さからアレル頻度を概算する。PCRプライマーには、両鎖を後標識するために末端に5’−ATT又は5’−GTTを有するようにタグがつけられている。緩衝液(10mM Tris−HCl、pH8.3又は9.3、50mM KCl、2.0mM MgCl2)、0.25μMの各プライマー、200μMの各dNTP、及び0.025単位/μlのTaq DNAポリメラーゼ(抗Taq抗体と予め混合されている))を含む反応混合液中で、DNA試料(10ng/μl)を増幅する。DNAポリメラーゼIのクレノウ断片の交換反応により、PCR産物の2本の鎖を別々に、R110及びR6Gで修飾されたヌクレオチドで標識する。この反応をEDTAの添加によって停止し、取り込まれなかったヌクレオチドは仔ウシ腸アルカリホスファターゼを添加することにより脱リン酸化する。SSCPの場合、蛍光標識PCR産物及びTAMRA標識内部マーカーの一部分が脱イオン化ホルムアミドに添加され、変性される。ABI Prism 310 Genetic Analyzerを用いて、電気泳動をキャピラリー内で行う。データ収集及びデータ処理のためにGenescanソフトウェア(P−E Biosystems)を用いる。SSCPにおいて異なる遺伝子型を示したものを含む対象(2〜11人)のDNAを、ABI Prism 310シーケンサーを用いた、ビックダイターミネーター化学によるダイレクトシークエンシングにかける。ABI Prism 310から得られた複数の配列トレースファイルをPhred/Phrapによって処理及び整列し、Consedビューアを用いて閲覧する。SNPをPolyPhredソフトウェア及び目視検査によって同定する。
【0130】
KYUGEN(方法2)として識別されるさらに別の方法では、変性HPLC(denaturing HPLC)(DHPLC)又はPLACE−SSCP(Inazuka et al.,1997)によって、異なる遺伝子型を有する個体を調査し、SNPを同定するために、これらの配列を決定する。PCRは、両鎖の後標識のために末端に5’−ATT又は5’−GTTのタグが付けられたプライマーを用いて行う。DHPLC分析は、WAVE DNA断片改正装置(Transgenomic)を用いて行う。PCR産物をDNASepカラムに注入し、WAVE Makerプログラム(Transgenomic)を用いて決められた条件下で分離する。DNAポリメラーゼIクレノウ断片の交換反応により、PCR産物の2本の鎖を別々に、R110及びR6Gで修飾されたヌクレオチドで標識する。この反応をEDTAの添加によって停止させ、取り込まれなかったヌクレオチドは仔ウシ腸アルカリホスファターゼを添加することによって脱リン酸化する。電気泳動の後、SSCPをABI Prism 310 Genetic Analyzerを用いてキャピラリー内で行う。Genescanソフトウェア(P−E Biosystems)。個体(DHPLC又はSSCPにおいて異なる遺伝子型を示した個体を含む)のDNAを、ABI Prism 310シーケンサーを用いた、ビックダイターミネーター化学によるダイレクトシークエンシングかける。ABI Prism 310から得られた複数の配列トレースファイルをPhred/Phrapにより処理及び整列し、Consedビューアを用いて閲覧する。SNPをPolyPhredソフトウェア及び目視検査によって同定する。UnigeneにおけるEST配列のトレースクロマトグラムデータをPHREDを用いて処理する。SNPの可能性がある塩基を同定するために、PHRAP、BRO、及びPOAプログラムによって作成された、各Unigeneクラスターについての多重配列アラインメントから、一塩基ミスマッチが報告される。BROは、可能性のある、誤って報告されたEST方向を修正したのに対して、POAは、偽のSNPを生じることがある遺伝子の混合/キメラを示す非直線アラインメント構造を同定及び解析した。生クロマトグラムの高さ、鋭さ、重複、及び間隔;配列決定の誤り率;文脈依存性(context−sensitivity);cDNAライブラリーの由来などのデータを評価しながら、配列決定の誤り、ミスアラインメント、又はあいまい性(ambiguity)、ミスクラスタリング又はキメラEST配列と比べて、真の多型の証拠を評価するためには、ベイズ推論を用いる。
【0131】
IX.医薬製剤及び投与経路
本開示の治療用化合物は、例えば、経口又は注入(例えば皮下、静脈内、腹腔内など)による、様々な方法によって投与することができる。活性化合物を不活性化し得る酸及びその他の天然の条件の作用から化合物を保護するために、投与経路に依存して、活性化合物を材料中に被覆加工してもよい。疾患又は損傷部位に、それらをまた持続的な潅流/注入によって投与してもよい。
【0132】
治療用化合物を非経口投与以外の方法で投与するには、治療用化合物をその不活化から保護する化合物で被覆すること、又は不活化から保護する化合物と共に投与することが必要な場合がある。例えば、治療用化合物を、リポソーム、又は希釈剤のような適切な担体中において患者に投与することができる。薬学上許容可能な希釈剤としては、生理的食塩水及び水溶性緩衝液が挙げられる。リポソームには、水中油中水型CGF乳剤並びに標準的なリポソームが含まれる(Strejan et al.,1984)。
【0133】
治療用化合物を、非経口的、腹膜内、髄腔内、又は大脳内に投与してもよい。グリセロール、液体ポリエチレングリコール、及びその混合物並びに油中に分散剤を調製することができる。一般的な保管及び使用条件下では、これらの調整物に微生物の成長を防ぐための保存料を加えても良い。
【0134】
注入での使用に好適な医薬組成物は、無菌の水溶性溶液(水溶性の場合)又は分散剤、及び無菌的で注入可能な溶液又は分散剤を即時調製するための無菌的な粉末を含む。いずれの場合にも、組成物は無菌的でなくてはならず、かつ、容易にシリンジを用いて注入できる(syringability)程度の流動性を有していなければならない。組成物は製造及び保管条件下では安定でなければならず、かつ細菌及び真菌のような微生物の汚染作用に対して保護されていなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、多価アルコール(グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコールなどのような)、好適なその混合物、及び植物油を含む、溶媒又は分散剤、であってもよい。適当な流動性を、例えば、レシチンのような包被剤の使用、分散剤の場合には必要とされる粒子サイズの維持、及び界面活性剤の使用により、維持することができる。微生物による作用の予防は、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどの様々な抗細菌及び抗菌薬によって達成することができる。多くの場合、組成物中に、例えば、糖、塩化ナトリウム、又は、マンニトール及びソルビトールのような多価アルコールなどの等張剤を加えることが好ましい。組成物に、例えばモノステアリン酸アルミニウム又はゼラチンのような、吸収を遅らせる薬剤を加えることによって、注入可能な組成物を持続的に吸収させることができる。
【0135】
無菌的な注入可能溶液は、治療用化合物と上に列挙した成分の1つ又は組み合わせとを、必要な量の適切な溶媒に組み入れること、そして必要な場合にはその後滅菌することにより、調製することができる。通常、分散剤は、基本的な分散媒及び上に列挙したもののうちの必要とされるその他の成分とを含む無菌的な担体中に、治療用化合物を組み入れることにより調製される。無菌的な注入可能溶液調製用の、無菌的な粉末剤を調製する場合に好ましい方法は、活性成分(すなわち、治療用化合物)と任意の付加的に所望される成分(予めフィルターを通して滅菌したその溶液から)との粉末を得るために、真空乾燥及び凍結乾燥することである。
【0136】
治療用化合物を、例えば、不活性な希釈剤又は吸収可能で食用の担体と共に、経口的に投与することができる。治療用化合物及びその他の成分を、外側が堅い又は軟らかいゼラチンのカプセル中に封入しても、錠剤に打錠しても、又は対象の食事に直接組み入れてもよい。経口での治療用投与のために、治療用化合物を賦形剤と共に組み入れてもよく、そして摂取可能な錠剤、口腔錠剤、トローチ、カプセル、エリキシール、懸濁液、シロップ、ウェハースなどの剤型において使用してもよい。当然のことながら、組成物及び調整物中の治療用化合物のパーセンテージは多様になりうる。そのような治療に有用な組成物中の治療用化合物の量は、得られるだろう好適な用量である。
【0137】
投与を容易にするため及び用量を均一にするために、非経口用組成物を、用量単位形態で処方することは特に有効である。本明細書で使用する場合、用量単位形態とは、治療する対象への単一用量の投与に適した、物理的に個別の単位を指し、各単位は、必要とされる医薬担体と共に、所望される治療効果を生じるように予め計算された量の治療用化合物を含む。本発明における容量単位形態についての詳述は、(a)治療用化合物の独特な特徴及び達成される特定の治療効果、並びに(b)選択された条件下での患者の治療における、そのような治療用化合物の配合に関しての当該分野において内在する制限、により規定され、かつそれらに直接的に依存する。
【0138】
治療用化合物を局所的に、皮膚、目、又は粘膜に、投与してもよい。あるいは、肺への局所的送達が所望される場合には、治療用化合物を乾燥粉末又はエアロゾル製剤の形態において吸入によって投与してもよい。
【0139】
活性化合物は、患者における条件と関連する条件を治療するのに効果的な治療上効果量の用量において、投与される。例えば、化合物の効力を、ヒト疾患の治療における効力の予測となりうる、動物モデル系(実施例及び図表において示したようなモデル系)において評価することができる。
【0140】
対象に投与される、本開示の化合物又は本開示の化合物を含む組成物の実際の用量は、年齢、性別、体重、症状の重篤度、治療する疾患の型、これまでの又は同時の治療介入、対象の特発性疾患及び投与経路のような物理的及び生理学的な因子により決定され得る。これらの因子は、熟練した技術者により決定され得る。一般的には、投与に関する施術者が、個々の対象における組成物中の活性成分の濃度、及び適切な用量を決定するだろう。いずれかの合併症が生じた場合、各医師は用量を調節してもよい。
【0141】
典型的には、1日1回以上の又は数日に渡る投与用量での効果量は、約0.001mg/kg〜約1000mg/kg、約0.01mg/kg〜約750mg/kg、約100mg/kg〜約500mg/kg、約1.0mg/kg〜約250mg/kg、約10.0mg/kg〜約150mg/kgと、多様になるだろう(当然のことながら、投与形態及び上記で議論した因子による)。その他の好適な用量範囲は、1日当たり1mg〜10000mg、1日当たり100mg〜10000mg、1日当たり500mg〜10000mg、及び1日当たり500mg〜1000mg、を含む。いくつかの特定の実施形態においては、その量は、1日当たり10,000mg未満であり、1日当たり750mg〜9000mgの範囲である。
【0142】
効果量は、1mg/kg/日未満、500mg/kg/日未満、250mg/kg/日未満、100mg/kg/日未満、50mg/kg/日未満、25mg/kg/日未満又は10mg/kg/日未満となり得る。あるいは、1mg/kg/日〜200mg/kg/日の範囲となり得る。例えば、糖尿病性患者の治療に関しては、単位用量は、未治療対象と比較して、血中グルコースを少なくとも40%低下させる量となり得る。別の実施形態においては、単用量は、血中グルコースレベルを非糖尿病対象の血中グルコースレベルの±10%まで低下させる量である。
【0143】
その他の非限定的な例において用量は、1投与当たり、体重1キログラム当たり約1マイクログラム、体重1キログラム当たり約5マイクログラム、体重1キログラム当たり約10マイクログラム、体重1キログラム当たり約50マイクログラム、体重1キログラム当たり約100マイクログラム、体重1キログラム当たり約200マイクログラム、体重1キログラム当たり約350マイクログラム、体重1キログラム当たり約500マイクログラム、体重1キログラム当たり約1ミリグラム、体重1キログラム当たり約5ミリグラム、体重1キログラム当たり約10ミリグラム、体重1キログラム当たり約50ミリグラム、体重1キログラム当たり約100ミリグラム、体重1キログラム当たり約200ミリグラム、体重1キログラム当たり約350ミリグラム、体重1キログラム当たり約500ミリグラム、から体重1キログラム当たり約1000mg以上、及びここから導き出せる任意の範囲を含み得る。本明細書において挙げた数値から導き出せる範囲の非限定的な例においては、上述した数値に基づいて、体重1キログラム当たり約5mgから体重1キログラム当たり約100mg、体重1キログラム当たり約5マイクログラムから体重1キログラム当たり約500ミリグラム、などの範囲を投与することができる。
【0144】
特定の実施形態において、本開示の医薬組成物は、例えば、少なくとも約0.1%の本開示の化合物を含んでいてもよい。その他の実施形態においては、本開示の化合物は例えば、単位重量の約2%〜約75%、又は約25%〜約60%、及びそこから導き出せる任意の範囲を占めていてもよい。
【0145】
薬剤の単回又は複数回投与も検討される。複数回投与についての所望される時間間隔は、慣習的な実験のみしか行わない当業者によっても決定することができる。一例として、対象は、およそ12時間間隔で、1日2回の投与を受ける場合がある。いくつかの実施形態において、薬剤は1日1回投与される。
【0146】
薬剤は、慣習的か計画に則って投与され得る。本明細書で使用する場合、慣習的な計画とは、予め設定された期間を指す。慣習的な計画は、計画が予め決められる限りにおいて、その長さが同一又は異なる期間を包含し得る。例えば、慣習的な計画は、1日2回、毎日、隔日、2日おき、3日おき、4日おき、5日おき、週に1回、月に1回又はこれらの間で設定される任意の日数又は週での投与を含み得る。あるいは、予め決められた慣習的な計画は、第1週では1日2回、その後数ヶ月にわたっては1日1回、などの投与計画を含み得る。その他の実施形態においては、本発明は、経口で摂取され、かつ食事の時間に影響を受ける又は影響を受けない薬剤を提供する。従って、例えば、対象が食事を済ませた後又は食事の前に、毎朝及び/又は毎晩、その薬剤を摂取することができる。
【0147】
X.併用療法
効果的な併用療法は、単一の組成物若しくは両方の薬剤を含む薬理学的な製剤、又は、1つの組成物が本発明の化合物を、そして別の組成物が第二の薬剤を含み、同時に投与される2つの別個の組成物又は製剤によって達成され得る。あるいは、治療は、数分から数ヶ月の範囲の間隔で、その他の薬剤による治療の前にもその後になってもよい。
【0148】
「A」が第一の薬剤(例えば、DFMO)を、そして「B」が第二の薬剤(例えば、スリンダク)を示すような、様々な組み合わせを用いることができ、それらの非限定的な例を以下に記載する。
A/B/A B/A/B B/B/A A/A/B A/B/B B/A/A A/B/B/B B/A/B/B
B/B/B/A B/B/A/B A/A/B/B A/B/A/B A/B/B/A B/B/A/A
B/A/B/A B/A/A/B A/A/A/B B/A/A/A A/B/A/A A/A/B/A
【0149】
XI.実施例
以下に、本発明の好ましい実施形態を示すための実施例を含む。発明者らにより、本発明を実施する上でよく機能することが発見された技術を示す、実施例において開示された技術は、従って、技術の実施の好ましい形態を構成すると考えることできることを当業者は理解すべきである。しかしながら、本開示を踏まえて、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、開示された特定の実施形態に多くの変更を行うことができ、それでもなお好ましい又は同様の結果を得ることができることを当業者は理解するべきである。
【0150】
実施例1−疫学的研究:CRC特異的生存とODC +316 SNPとの関連
実験デザイン:研究では、集団ベース研究であるUC Irvine Gene−Environment Study of Familial CRC(1994〜1996の間に診断し、2008年3月までフォローアップした)からの、偶発的CRC症例を有する440人を対象とした。ODC遺伝子型(GG対AA/GA)に依存するCRC特異的生存(CRC−SS)を一次アウトカムとした。ウェスタンブロット及びクロマチン免疫沈降(CHIP)アッセイにより、ヒト結腸癌細胞株におけるE−ボックス転写因子のODCアレル特異的な結合を決定した。プロモーター構築物を、転写アクチベーターであるc−MYC又はリプレッサーであるMAD1のいずれかを発現しているベクターと組み合わせて使用することにより、ODCアレル特異的プロモーター活性を決定した。
【0151】
結果:CRC症例における遺伝子型特異的生存の差は、結腸癌症例に限定された。ODC GG遺伝子型症例(HR=1.00、基準値)と比較して、補正したCRC−SSハザード率(HR)は、ODC GA症例では2.31(1.15〜4.64)、ODC AA症例では3.73(0.93〜14.99)であった(P−trend=0.006)。結腸癌細胞では、2つのE−ボックスに隣接したODC +316 SNPは、ODCのプロモーター活性を規定するものである。培養細胞においては、E−ボックスのアクチベーターである−MYC並びにリプレッサーであるMAD1及びMAD4は、メジャーGアレルと比較して、マイナーAアレルに優先的に結合する。
【0152】
対象母集団:我々は、1994〜1996に行われ2008年3月までフォローアップされた、University of California, Irvine Gene−Environment Study of Familial Colorectal Cancer (Peel et al.,2000;Zell et al.,2007)に登録された、侵襲性CRCの偶発的症例について研究を行った。本研究は、結腸直腸癌症例の大規模な集団ベースコホートにおけるHNPCCの頻度を決定するようにデザインされた。2008年4月のデータを用い、Cancer Surveillance Program of Orange County/San Diego Imperial Organization for Cancer Controlの集団ベース癌登録から対象者を決定した。元の研究では(Peel et al.,2000)、1994から1996に診断した、CRCを有する全対象(Orange County、CA在住の全ての年齢の)を確認した。1994から1995の間にSan Diego and Imperial Counties、CAで診断した、65歳より高齢の全対象もまた確認した。その後、彼らが研究に適格であり(その時点で生存していることが確認され、連絡先が分かっている場合)、かつ、主治医が接触を許可した場合に、その症例の対象に連絡を取った。研究の登録時に、対象者は採血及び医学情報の提供を許可する同意書にサインした。本研究は、UC Irvine Institutional Review Board(#93−257)により認可された。生命状態及びフォローアップを含む臨床的及び人口統計学的データは、先に記載された局所性癌登録データベース(Peel et al., 2000;Zell et al.,2007;Zell et al.,2008)との連携から得た。腫瘍、節、転移(TNM)の病期分類の決定は、入手可能な場合には、存在するAJCCコードからのものであり、これまでに報告されているように(Le et al., 2008)疾患コードの評価に変換した。一親等血縁者の癌の家族歴を、登録時に実施した電話による面談中の自己申告によって確認した(Zell et al.,2008;Ziogas and Anton−Culver,2003)。アムステルダム基準によって定義されている、遺伝性非ポリポーシス結腸癌(HNPCC)を有する22症例を同定し、解析から除外した。CRCの診断から研究への登録(すなわち、家族歴についての面談を行った日時)までの平均期間は16ヶ月であった(95% CI 12〜23ヶ月)。
【0153】
DNAの抽出及びODC +316 SNP遺伝子型決定(genotyping)。
QIAGEN QIAamp DNA Midi又はMini Kits(Qiagen)を用い、製造業者による説明書に従って、2.0 mLの赤血球塊試料からDNAを抽出した。+316での多型塩基を含む172bpの断片を増幅するように設計したオリゴヌクレオチドプライマーを用いてODC +316 SNPの遺伝子型決定を行った(Applied Biosystems,Foster City,CA)。異なる5’標識(6−カルボキシフルオレセイン又はVIC)及び同じ3’クエンチャー色素(6−カルボキシテトラメチルローダミン)(23)を用いて、アレル特異的TaqManプローブを合成した。これまでに報告されているように(Martinez et al.,2003;Guo et al.,2000)、各PCR反応(全量5μL)には、10ngの対象DNA、30pmolの各プライマー、12.5pmolの各TaqManプローブ、及び1xTaqMan Universal PCR Master Mix(Applied Biosystems, Foster City, CA)が含まれた。
【0154】
統計分析−集団ベース研究
予測されたODC GG遺伝子型対ODC GA/AA遺伝子型の1:1の比率に基づき(Martinez et al.,2003;Barry et al.2006;Hubner et al.,2008;Guo et al.,2000)、標本サイズを決定した。UC IrvineでのGene−Environment Study of Familial CRCにおける、結腸及び直腸癌1154症例からのデータの先の解析は、CRC特異的10年生存率がおよそ66%であることを明らかにした(Zell et al.,2008)。発明者らは、ODC遺伝子型のみに基づくCRC特異的生存においては、我々の標本サイズの計算では、15%より大きい差が生じると提案した。従って、有意水準5%、検出力80%で2群間でのCRC特異的10年生存における提案された差(第1群55%対第2群70%)を検出するために、全315対象を必要とした。481のDNA試料のうち440についての遺伝子型決定が成功した。DNA濃度が低かったこと、及び/又はDNAの質が良くなかったことから、41例(8.5%)についてはODC +316遺伝子型の決定はできなかったが、遺伝子型決定が成功した例と成功しなかった例との間には、臨床病理学的な差は観察されなかった。従って、この研究は一次エンドポイントを検討するのに十分であった。
【0155】
結腸及び直腸症例間での、人口統計学的、臨床的、及び病理学的な変数の比較を、名義変数についてはピアソンのカイ二乗統計又はフィッシャーの直接確率検定を用いて、そして連続変数についてはスチューデントのt検定を用いて行った。結腸直腸癌特異的生存は、CRCそのものによる死亡として定義し、フォローアップ終了時に生存している、フォローアップの喪失、又はCRC以外の原因による死亡、の例においてはデータ取得を打ち切った。全生存(OS)は、何らかの原因による死亡として定義した。カプラン・マイヤー法を用いて結腸及び直腸癌症例についての生存曲線を構築し、単変量解析については対数ランク検定を用いて解析した。全CRC症例、結腸癌症例、及び直腸癌症例については、診断からプロファイルまでの時間(ODC遺伝子型に基づく、全及びCRC特異的死亡の補正したリスク)を用いてコックスの比例ハザードモデル解析を行った。生存におけるODC遺伝子型(GG、GA、又はAA)の効果を、年齢、性別、民族性、CRCの家族歴、診断時におけるTNMの病期、結腸中での腫瘍の位置、組織学的サブタイプ、外科的治療、放射線治療、及び化学療法などの共変数を考慮して、コックスモデルを使用して解析した。モデル中の各変数はダミー変数を用いてコード化した。全ての解析はSAS 9.2 統計ソフトウェア(SAS Institute,Cary,NC)を用いて行った。両側P値が<0.05のときに統計的に有意であるとみなした。
【0156】
実施例2−実験的研究:結腸癌細胞におけるODC +316 SNPの制御
細胞培養
ヒト結腸癌細胞株HT29及びHCT116をMcCoyの5A培地(Invitrogen,Carlsbad,CA)中で維持した。使用した全ての培地には10% FBSと1% ペニシリン/ストレプトマイシン溶液(Invitrogen, Carlsbad,CA)を添加した。培養を、37℃、加湿、5%CO2雰囲気下で維持した。
【0157】
遺伝子型決定アッセイ
多型のPstI部位を検出するために、HT29及びHCT116細胞由来のDNA試料をPCR−RFLP法にかけた。以下のプライマー(5’−TCTGCGCTTCCCCATGGGGCT−3’(配列番号1)及び5’−TTTCCCAACCCTTCG−3’(配列番号2))を用い、PCRにより配列を増幅した。各反応液は、1μl DNA、4pmolの各プライマー、12.5μl 2xPCR Pre Mixes 緩衝液「G」(EPICENTRE Biotechnologies,Madison,WI)及び0.5単位のTaq DNA ポリメラーゼを最終容量25μl中に含んだ。予測されるPCR産物のサイズは351bpであった。増幅した後、10〜20μlのPCR産物を30μl反応液中、10単位のPstIを用いて、37℃で2時間消化した。PstI部位を含むHT29細胞(GA)由来のDNAからは、156及び195bpの2つの断片が得られた。
【0158】
ウェスタンブロット解析
細胞を回収、溶解し、そしてタンパク質を12.5% SDS−PAGEゲルを用いて分離した。電気泳動により、タンパク質をHybond−Cメンブレン上に移した。Blotto A(TTBS溶液に溶解したブロッキンググレードの脱脂粉乳5%)を用いて膜のブロッキングを行い、そしてBlotto Aで1:300に希釈した一次抗体(Santa Cruz Biotechnology,Santa Cruz,CA)を用いてプロービングした。一次抗体と共に4℃で一晩インキュベートし、その後適切なHRP−タグ二次抗体(1:1000 希釈)は1時間、室温でインキュベートした。ECL Western Detection試薬(Amersham Biosciences,Piscataway,NJ)を用いて化学発光の検出を行い、Biomax XAR フィルム(Kodak)に露光した。
【0159】
クロマチン免疫沈降(CHIP)
製造業者によって推奨されている方法で、市販のキットを用いてCHIPアッセイを行った(Upstate Biotech,Lake Placid,NY,USA)。簡単に説明すると、DNAとタンパク質が架橋するように細胞を1%のホルムアルデヒドで処理し、DNA−タンパク質複合体を200〜1000bpの長さになるように超音波処理により破壊した。溶解物を、プロテアーゼ阻害剤を含む免疫沈降(IP)希釈緩衝液により10倍に希釈した。クロマチンを沈降させるためにc−MYC、MAD1及びMAD4に対する抗体(Santa Cruz Biotechnology,Santa Cruz,CA)を用い、さらなる試料には抗体を加えずに、抗体を含まない(−Ab)対照とした。試料を回転させながら、4℃で一晩免疫沈降させた。60μlのサケ精子DNA/プロテインAアガローススラリーを添加して回転させながら4℃で1時間インキュベートし、その後軽く遠心分離(1000rpm、1分)を行うことで、免疫複合体を得た。プロテインAアガロースの沈殿を低塩緩衝液、高塩緩衝液、LiCl緩衝液及びTE緩衝液を用いて洗浄した。その後、250μlの溶出緩衝液(0.1M NaHCO3、1% SDS)を2回添加することにより、複合体を溶出させ、そして0.2M NaClと共に65℃で4時間加熱することによりDNA−タンパク質間架橋を反転させた。操作は、抗体を含むDNA及び−Ab DNA対照を含む全ての試料について行った。DNAを30μlのddH2O中に再懸濁した。PCR産物及びそのサイズの可視化のために、標準的なPCR反応を行った。PCRに用いたODCプライマー配列は、5’−CCTGGGCGCTCTGAGGT−3’(配列番号3)17mer)及び5’−AGGAAGCGGCGCCTCAA−3’(配列番号4)(17mer)であった。TaqMan gene expression assays kit(Applied Biosystems, Foster City,CA)を用い、ABI7700配列検出システム上で定量的リアルタイムPCRを行った。相対的な結合の計算についての詳細は、製造業者のウェブサイト上で見ることができる (http://www.appliedbiosystems.com/)。
【0160】
一過性トランスフェクション
一過性のトランスフェクションを、LipofectAMINE 試薬(Invitrogen,Carlsbad,CA)を用いて、製造業者によるプロトコールに従って、添付の書類中で詳細に述べたように、行った。HCT116及びHT29細胞を、1μgのpGL3−ODC/A又はpGL3−ODC/Gプラスミド(Martinez et al.,2003)を用いて、0.01μgのRenilla−TKプラスミドと共にトランスフェクションした。Renilla−TKプラスミドはPromega(Madison,WI)から購入し、全てのプロモーター−レポーター トランスフェクション実験におけるトランスフェクション効率の対照として用いた。c−MYCを用いた実験では、ODC pGL3−プラスミドを、pcDNA 3.0又はCMV−c−MYC発現ベクター(OriGene,Rockville,MD)のいずれかと共にトランスフェクションした。MAD1を用いた実験では、ODCプラスミドを、pcDNA 3.1又はpcDNA−MAD1のいずれかと共にトランスフェクションした。c−MYCとMAD1とを共にトランスフェクションする実験では、ODC遺伝子の最初の1.6Kbを含むODCプロモーターレポーター構築物をpGL3ベクター中にクローニングした。この構築物は、完全なE−ボックス1(−485〜−480bp)(wt E−ボックス 1)又は欠損したE−ボックス1(mut E−ボックス1)を含んだ。加えて、+316 ODC SNPの両変異体を用い、全部で4種類の異なる構築物を作出した。6時間インキュベートした後、細胞を20% FBSを含む完全培地に加え、一晩生育させた。トランスフェクションの翌日、20% FBSを含む完全培地を10% FBSを含む培地と交換した。トランスフェクションした48時間後、細胞をPBSで洗浄し、そしてDual Luciferase アッセイ キット(Promega,Madison,WI)のPassive Lysis 緩衝液中で溶解した。Turner Designs TD−20/20 ルミノメーターを用い、製造業者による通りに二重ルシフェラーゼ活性を測定し、そして相対的なルシフェラーゼ単位(RLU)として表した。実験には3セットの試料を用い、少なくとも2回繰り返して行った。
【0161】
統計分析−実験的研究
一過性のトランスフェクション実験には、2標本t検定を用いた(Microsoft Excel Microsoft Corp., Redmond, WA)。HT29結腸癌細胞における、c−MYC発現のODCアレル特異的プロモーター活性への効果を、第一のE−ボックス要素の部分が異なる((a)野生型(wt)E−ボックス1m+316 G、(b)突然変異体(mut)E−ボックス1 +316 G、(c)wt E−ボックス1 +316 A、及び(d)mut E−ボックス1 +316 A)ODC プロモーター構築物を用いて評価した。2標本t検定を用いて、各プロモーター構築物をpcDNA3.0プラスミドと共にトランスフェクションした細胞とCMV−c−MYC発現ベクターと共にトランスフェクションした細胞との間のプロモーター活性を比較した。同様に、MAD1発現のODCアレル特異的プロモーター活性への効果を評価するために、2標本t検定を用いて、pcDNA3.0プラスミドと共にトランスフェクションしたプロモーター構築物とpcDNA−MAD1プラスミドと共にトランスフェクションしたプロモーター構築物との間のプロモーター活性を比較した。両側P値が<0.05のときに統計的に有意であると見なした。
【0162】
実施例3−ODC1遺伝子型の異なる作用
この研究は、多施設第3相結腸腺腫予防試験(Meyskens et al.,2008)からの患者データの解析を含む。375患者が登録され、267患者の試験終了時の結腸鏡検査が完了した後にData Safety Monitoring Board(DSMB)により打ち切られた(研究がその効力エンドポイントに達したため)。DSMBは、安全性及び効力エンドポイントをモニタリングした。ODC1 SNPの重要性を示すデータ(2) を考慮してプロトコールを変更した2002年11月以降に、研究に賛同した228人の患者から(246患者中、先に無作為化した159人を含み、129患者中の69人はこの日付以降に無作為化した)、遺伝子型決定解析用の血液試料を回収した。患者由来のゲノムDNA上のODC1(rs2302615)遺伝子型決定は、アレル特異的TaqManプローブを用いて、これまでに記載されているように行った(Guo et al.,2000)。直腸組織におけるポリアミン含量は、無作為に選択した8つの直腸粘膜生検試料のうち3つを用いて、これまでに記載されているように決定した(Meyskens et al.,1998;Seiler及びKnodgen,1980)。組織ポリアミン反応は、25%から45%までの範囲の反応値について行った。
【0163】
ODC1遺伝子型を、優性モデル(AA/GA対GG患者)において解析した。2つの遺伝子型群にわたる非正規に分布した連続変数については、ウイルコクソン順位和検定を行った。基準カテゴリー変数及び遺伝子型群との間の関連を評価するためには、カイ二乗検定又はフィッシャー直接確率検定を用いた。一次アウトカム(腺腫再発)については、予測変数(治療群、年齢、性別、人種(カフカス人対その他)、アスピリンの使用、ODC1遺伝子型(優性モデルにおいては)、及び遺伝子型相互作用による治療を示す期間)を用いた対数2項回帰(Log binomial regression)を行った。二次アウトカム(直腸組織ポリアミン反応、毒性)については、治療群の効果、遺伝子型、及び治療と遺伝子型との相互作用を、フルログ2項モデル(full log binomial model)を用いて試験した。統計分析は、SAS 9.2 統計ソフトウェア(SAS Inc. Cary,NC)を用いて行った。試験への登録及び試料の回収/解析については、患者からの書面によるインフォームドコンセントを取得した。本研究は、全委員による審査の後でUC Irvine institutional review board(IRB protocol #2002−2261)により、及び参加型研究の部分においては各ローカルIRBにより、認可された。
【0164】
ODC1遺伝子型分布は、126GG(55%)、87GA(38%)、及び15AA(7%)であった。表1に示したように、基準となる臨床特徴は差を明かにした。補正後のフル回帰モデルにおける治療に関連した腺腫再発の相対リスク(RR)は0.39(95%CI 0.24〜0.66)であった。偽薬又は治療それぞれを受けた患者においては、ODC1 GG患者では23%対22%、ODC1 GA患者では20%対21%、及びODC1 AA患者では0%(7人中0人)対57%(7人中4人)の割合で中毒性難聴が発症した。
【0165】
【表2】
【0166】
【表3】
【0167】
【表4】
【0168】
【表5】
【0169】
本明細書において開示し、請求した全ての方法は、本開示を踏まえた不当な実験を用いることなく、実施及び遂行することができる。好ましい実施形態の観点から、本発明の方法を記載してきたが、本発明の概念、精神及び範囲から逸脱することなく、本明細書において記載した方法及び工程又は工程の順序の変形型を適用し得ることが当業者には明かだろう。さらに具体的には、同じ又は同様の結果を得るために、本明細書において記載した薬剤を、化学的及び生理学的の両方で関係した薬剤と置換してもよい。そのような当業者に明かな全ての置換及び変更は、添付の請求項によって規定されるように、本発明の精神、範囲及び概念に含まれると見なされる。
【0170】
参考文献
以下の参考文献は、本明細書において示す方法の例又はその他の詳細を捕捉する範囲において、特に参照することにより本明細書に組み入れられる。
米国特許第3,647,858号
米国特許第3,654,349号
米国特許第4,330,559号
米国特許第4,413,141号
米国特許第4,582,788号
米国特許第4,656,127号
米国特許第4,683,194号
米国特許第4,683,202号
米国特許第5,814,625号
米国特許第5,843,929号
米国特許第5,952,174号
米国特許第6,258,845号
Alberts et al.,J.Cell.Biochem.Supp.,(22):18−23,1995..
AMA Drug Evaluations Annual,1814−1815,1994.
Babbar et al.,Biochem.J.,394:317−24,2006.
Babbar et al.,J.Biol.Chem.,278(48):47762−47775,2003.
Barry et al.,J.Natl.Cancer Inst.,98(20):1494−500,2006.
Bedi et al.,Cancer Res.,55(9):1811−1816,1995.
Bellofernandez et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:7804−8,1993.
Bussey, Hepatology,12(1):175−6.1990
Childs et al.,Cell.Molec.Life Sci.,60:1394−1406,2003.
de Arruda et al.,Expert Rev.Mol.Diagn.,2(5):487−496,2002.
Derynck et al.,Nature Genetics,29:117−29,2001.
DuBois et al.,Cancer Res.,56:733−737,1996.
Erdman et al.,Carcinogenesis,20:1709−13,1999.
欧州特許出願第201,184号
欧州特許出願第237,362号
欧州特許出願第258,017号
欧州特許出願第50,424号
欧州特許出願第84,796号
仏国特許出願第2,650,840号
Fultz and Gerner,Mol.Carcinog.,34:10−8,2002.
Gerner and Meyskens,Nature Rev.Cancer,4:781−92.,2004.
Gerner et al.,Cancer Epidemoil.Biomarkers Prev.,3:325−330,1994.
Giardiello et al.,Cancer Res.,(57):199−201,1997.
Guo et al.,Cancer Res. 60(22):6314−6317,2000.
Halushka et al.,Nat.Genet.,22(3):239−247,1999.
Hanif et al.,Biochemical Pharmacology,(52):237 245,1996.
Hubner et al.,Clin CancerRes.,14(8):2303−9,2008.
Ignatenko et al.,Cancer Biol.Ther.,5(12):1658−64,2006.
Inazuka et al.,Genome Res,7(11):1094−1103,1997.
Iwamoto et al.,Carcinogenesis,21:1935−40,2000.
Johnson et al.,Nat.Genet.,29(2):233−237,2001.
Ke and Cardon Bioinformatics,19(2):287−288,2003.
Keller and Giardiello,Cancer Biol.Ther.,2(4 Suppl 1):S140−9,2003.
Kingsnorth et al.,Cancer Res.,43(9):4035−8,1983.
Komher, et al.,Nucl.Acids.Res.17:7779−7784,1989.
Kuppuswamy, et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,88:1143−1147,1991.
Kwok and Chen,Curr Issues Mol.Biol.,Apr;5(2):43−60,2003.
Kwok et al.,Genomics,23(1):138−144,1994.
Kwok,Annu.Rev.Genomics Hum.Genet.,2:235−258,2001.
Kwok et al.,Genomics,31(1):123−6,1996.
Ladenheim et al.,Gastroenterology,108:1083−1087,1995.
Landegren, et al.,Science,241:1077−1080,1988.
Lanza et al.,Arch.Intern.Med.,155:1371−1377,1995.
Le et al.,Cancer Epidemiol.Biomarkers Prev.,17:1950−62,2008.
Lipkin,J.Cell Biochem.Suppl.,28−29:144−7,1997.
Lippman,Nat.Clin.Pract.Oncol.,3(10):523,2006.
Love et al.,J.Natl.Cancer Inst.,85:732−7,1993.
Lu et al.,Eukaryot Cell.,3(6):1544−56,2004.
Luk and Baylin N.Engl.J.Med.,311(2):80−83,1984.
Lupulescu,Cancer Detect.Prev.,20(6):634−637,1996.
Martinez et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,100:7859−64,2003.
Matsubara et al.,Clinical Cancer Res.,1:665−71,1995.
Maxam, et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,74:560,1977.
McLaren et al.,CancerPrev.Res.,1(7):514−21,2008.
Meyskens et al.,Cancer Prev.Res.,1(1):32−8,2008.
Meyskens et al.,J.Natl.CancerInst.,86(15):1122−1130,1994.
Meyskens et al.,J.Natl.Cancer Inst.,90(16):1212−8,1998.
Mullis et al.,Cold Spring Harbor Symp.Quant.Biol.51:263−273,1986.
Muscat et al.,Cancer,74:1847−1854,1994.
Narisawa et al.,Cancer Res.,41(5):1954−1957,1981.
Nickerson et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,87:8923−8927,1990.
Nyren et al.,Anal.Biochem.208:171−175,1993.
O’Brien et al.,Molec.Carcinog.,41(2):120−3,2004.
Pardali and Moustakas,Biochimica et Biophysica Acta,1775:21−62,2007.
国際公開第91/02087号
国際公開第92/15712号
Peel et al.,J.Natl.Cancer Inst.,92:1517−22,2000.
Pegg,Biochem.,234(2):249−262,1986.
Physician’s Desk Reference,Medical Economics Data,Montville,N.J.,1745−1747,1999
Piazza et al.,Cancer Res.,(55):311 3116,1995.
Piazza et al.,Cancer Res.,(57):2452−2459,1997a.
Piazza et al.,Cancer Res.,(57):2909−2915,1997b.
Pollard and Luckert,Cancer Res.,49:6471−6473,1989.
Prezant et al.,Hum.Mutat.,1:159−164,1992.
Psaty and Potter,N.Engl.J.Med.,355(9):950−2,2006.
Rao et al.,Cancer Res.,(55):1464−1472,1995.
Reddy et al.,Cancer Res.,(50):2562−2568,1990.
Reddy et al.,Cancer Res.,47:5340−5346,1987.
Rice et al., Mol. Cancer Ther., 2(9):885−92, 2003.
Roberts and Wakefield,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,100:8621−3,2003.
Sanger et al.,J.Molec.Biol.,94:441,1975.
Seiler and Knodgen,J.Chromatogr.,221(2):227−235,1980.
Simoneau et al.,Cancer Epidemiol.Biomarkers Prev.,17:292−9,2008.
Simoneau et al.,J.Natl.Cancer Inst.,93:57−9,2001.
Singh and Reddy,Annals.NY Acad.Sci.,(768):205 209,1995.
Singh et al.,Carcinogenesis,(15):1317 1323,1994.
Small et al.,N. Engl.J.Med.,347:1135−1142,2002.
Sokolov,Nucl.Acids Res.18:3671,1990.
Stevens et al.,Biotechniques,34:198−203,2003.
Strejan et al.,Cell Immunol.,84(1):171−184,1984.
Su et al.,Science,(256):668−670,1992.
Syvanen et al.,Genomics8:684−692,1990.
Taillon−Miller et al.,Genome Res,8(7):748−754,1998.
Tempero et al.,Cancer Res.,49(21):5793−7,1989.
Thomas and Thomas,J.Cell Mol.Med.,7:113−26,2003.
Thompson et al.,J.Natl.Cancer Inst.,(87):125−1260,1995.
Ugozzoll et al.,GATA 9:107−112,1992.
Vane and Botting,Adv Exp Med Biol.,433:131−8,1997.
Visvanathan et al.,J.Urol.,171(2 Pt 1):652−5,2004.
Wallace,Eur.J.Clin.Invest.,30:1−3,2000.
Zell et al.,Cancer Epidemiol.Biomarkers Prev.,17:3134−40,2008.
Zell et al.,Cancer Prev.Res.,2(3):209−12,2009.
Zell et al.,Clin.Cancer Res.,15(19):6208−16,2009.
Zell et al.,Intl.J.Cancer,120:459−68,2007.
Ziogas and Anton−Culver,Am.J.Prev.Med.,24:190−8,2003.
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2009年6月3日に出願の米国仮特許出願第61/217682号、2009年6月3日に出願の同第61/217,679号、及び2009年5月14日に出願の同第61/216,216号の優先権を主張し、これら各出願の全文は参照することにより本明細書に組み入れられたものとする。
【0002】
(連邦政府後援研究に関する説明)
本発明は、国立衛生研究所(National Institute of Health)からの助成CA72008(EWG)、CA78134(HAC)、CA78285(HAC)、及びCA95060(EWG)、国立癌研究所(National Cancer Institute)からの規約N01−PC−35136、N01−PC−35139及びN01−PC−54404、並びに疾病対策予防センター(Centers for Disease Control and Prevention)からの同意1U58DP00807−01のもと、米国政府の支援を受けて行われた。米国政府は本発明に一定の権利を有する。
【0003】
本発明は一般的に、癌の生態及び医学の分野に関する。より具体的には、本発明は、癌腫及びそのリスク因子の診断、予防、及び治療方法に関する。
【背景技術】
【0004】
癌の化学予防研究を臨床業務へと変換する上での主な障害は、薬剤効力の限界及び有効性を上回る毒性であった(Psaty and Potter,2006;Lippman,2006)。例えば、結腸直腸腺腫(CRA)患者にD,L−α−ジフルオロメチルオルニチン(DFMO、エフロルニチン)及びスリンダクを併用し、長期にわたり毎日経口投与することが、立証された顕著なポリアミン阻害効果を有することが近年示されたが(Meyskens et al., 2008)、治療は軽度な無症状の中毒性難聴(McLaren et al., 2008)、及び高い基準の心血管リスクを有する患者での心血管イベントの増加(Zell et al., 2009)と関連した。特定の予防的又は治療的な治療計画に対する患者の適性を判定する、遺伝的特徴の同定が大きな利益をもたらすだろう。
【0005】
例えば、結腸直腸癌及びその他の癌腫への、効果的で、かつ、より毒性の低い治療及び予防方法が必要とされている。国立癌研究所によると、2009年の米国における新たな結腸直腸癌症例はおよそ147,000例であり、50,000人が結腸直腸癌により死亡した。現在の、特に大腸癌及びポリープの治療プロトコールは腫瘍の切除、化学療法、及び放射線治療を含む。ヒトODC1遺伝子のイントロン−1における一塩基多型(SNP)はODC1の転写に影響を及ぼし(Guo et al.,2000)、結腸直腸腺腫(CRA)リスクの遺伝子マーカーとして研究されてきた(Martinez et al.,2003;Barry et al.,2006;Hubner et al.,2008)。報告されたマイナーAアレル頻度はおよそ25%であり、人種/民族性にわたる差にも関わらず、ODC1遺伝子型分布は各人種間においてはハーディ・ワインベルグ平衡を取る(O’Brien et al.,2004;Zell et al.,2009)。ODC1マイナーAアレルをホモ接合で有する対象は、メジャーGアレルを有する対象と比較して、腺腫の再発のリスクが低い(Martinez et al.,2003;Hubner et al.,2008)。さらに、ODC1のAアレル(AA又はGA遺伝子型であってGG遺伝子型ではない)、及び報告されたアスピリンの使用は、結腸ポリープの再発の低下と関連があり(Martinez et al.,2003;Barry et al.,2006;Hubner et al.,2008)、進行した腺腫の50%低下リスクと統計的に有意であった(Barry et al.,2006)。ODC1遺伝子型が、腺腫の再発、組織のポリアミンへの反応、毒性プロファイルに異なって影響を及ぼすのかどうか、及び、予防的及び治療的処置の適性を決定するためにODC1遺伝子型をどのようにして用いることができるかが、大きな課題であろう。
【発明の概要】
【0006】
従って本発明では、少なくとも1つのODC1プロモーター遺伝子アレルにおける+316番目の位置の患者の遺伝子型を同定することに関する治療、予防及び/又は診断方法が提供される。
【0007】
1つの態様においては、
a)少なくとも1つのODC1プロモーター遺伝子アレルにおける+316番目の位置の患者の遺伝子型を決定する試験から結果を得る工程;及び
b)その結果が、ODC1プロモーター遺伝子の少なくとも1つのアレルにおける+316番目の位置の患者の遺伝子型がGであることを示す場合に、
(i)患者におけるオルニチンデカルボキシラーゼ(ODC)を阻害する第一の薬剤;と
(ii)第一の薬剤と組み合わせた場合に、患者における全ポリアミン含量を低減するようにポリアミン経路を調節する第二の薬剤、
とを含む効果量の医薬治療を患者に投与する工程、
を含む、患者における癌腫の予防的又は治療的処置の方法が提供される。
【0008】
いくつかの実施形態において第二の薬剤はまた、患者におけるスペルミジン/スペルミンN1−アセチルトランスフェラーゼの発現を上昇させる。いくつかの実施形態において結果は、前記遺伝子型を含む報告を受け取ること又は結果を表す患者病歴を取得することにより得られる。いくつかの実施形態において試験は、患者のODC1プロモーター遺伝子の1つのアレルにおける+316番目の位置のヌクレオチド塩基を決定する。いくつかの実施形態において試験は、患者のODC1プロモーター遺伝子の両方のアレルにおける+316番目の位置のヌクレオチド塩基を決定する。いくつかの実施形態において結果は、ODC1プロモーター遺伝子の両方のアレルにおける+316番目の位置の患者の遺伝子型がGGであることを示す。いくつかの実施形態において結果は、ODC1プロモーター遺伝子の両方のアレルにおける+316番目の位置の患者の遺伝子型がGAであることを示す。
【0009】
いくつかの実施形態において医薬治療は、患者が既に低用量での医薬治療を受けている場合に、試験の結果を得る工程の前に、第一又は第二の薬剤の用量を増加させる工程をさらに含む。いくつかの実施形態において医薬治療は、患者が既に低用量での医薬治療を受けている場合に、試験の結果を得る工程の前に、第一及び第二の薬剤の用量を増加させる工程をさらに含む。いくつかの実施形態において第一の薬剤は、α−ジフルオロメチルオルニチン(DFMO)である。いくつかの実施形態において第二の薬剤は、アスピリンを含まない非ステロイド抗炎症性薬(NSAID)である。いくつかの実施形態においてアスピリンを含まないNSAIDは、COX−2選択的阻害剤である。いくつかの実施形態においてアスピリンを含まないNSAIDは、スリンダク又はセレコキシブである。いくつかの実施形態においてアスピリンを含まないNSAIDは、スリンダクである。
【0010】
別の態様においては、
a)少なくとも1つのODC1プロモーター遺伝子アレルにおける+316番目の位置の、患者の遺伝子型を決定する試験から、結果を得る工程;及び
b)その結果が、ODC1プロモーター遺伝子の少なくとも1つのアレルにおける+316番目の位置の患者の遺伝子型がGであることを示す場合に、
(i)患者におけるオルニチンデカルボキシラーゼ(ODC)を阻害する第一の薬剤;及び
(ii)第一の薬剤と組み合わせた場合に、患者における全ポリアミン含量を低減するようにポリアミン経路を調節する第二の薬剤、
を含む効果量の医薬治療を患者に投与する工程、
を含む、患者における結腸直腸癌腫リスク因子の治療方法が提供され、
ここでこの方法は、患者における新しい異常腺窩巣、新しい腺腫性ポリープ又は新しい異形成性腺腫の形成を予防する。
【0011】
いくつかの実施形態において、第二の薬剤はまた、患者におけるスペルミジン/スペルミンN1−アセチルトランスフェラーゼの発現を上昇させる。いくつかの実施形態において、方法は、患者における新しい異常腺窩巣の形成を予防する。いくつかの実施形態において、方法は、患者における新しい腺腫性ポリープの形成を予防する。いくつかの実施形態において、方法は、患者における新しい異形成性腺腫の形成を予防する。いくつかの実施形態において、結果は、前記遺伝子型を含む報告を受け取ること又は結果を表す患者病歴を取得することにより得られる。いくつかの実施形態において、試験は、患者のODC1プロモーター遺伝子の1つのアレルにおける+316番目の位置のヌクレオチド塩基を決定する。いくつかの実施形態において、試験は、患者のODC1プロモーター遺伝子の両方のアレルにおける+316番目の位置のヌクレオチド塩基を決定する。いくつかの実施形態において、結果は、ODC1プロモーター遺伝子の両方のアレルにおける+316番目の位置の患者の遺伝子型がGGであることを示す。いくつかの実施形態において、結果は、ODC1プロモーター遺伝子の両方のアレルにおける+316番目の位置の患者の遺伝子型がGAであることを示す。
【0012】
いくつかの実施形態において、医薬治療は、患者が既に低用量での医薬治療を受けている場合に、試験の結果を得る工程の前に、第一又は第二の薬剤の用量を増加させる工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、医薬治療は、患者が既に低用量での医薬治療を受けている場合に、試験の結果を得る工程の前に、第一及び第二の薬剤の用量を増加させる工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、第一の薬剤は、α−ジフルオロメチルオルニチン(DFMO)である。いくつかの実施形態において、第二の薬剤は、アスピリンを含まない非ステロイド抗炎症性薬(NSAID)である。いくつかの実施形態において、アスピリンを含まないNSAIDは、COX−2選択的阻害剤である。いくつかの実施形態において、アスピリンを含まないNSAIDは、スリンダク又はセレコキシブである。いくつかの実施形態において、アスピリンを含まないNSAIDは、スリンダクである。
【0013】
別の態様においては、
a)少なくとも1つのODC1プロモーター遺伝子アレルにおける+316番目の位置の、患者の遺伝子型を決定する試験から、結果を得る工程;及び
b)その結果が、ODC1プロモーター遺伝子の少なくとも1つのアレルにおける+316番目の位置の患者の遺伝子型がGであることを示す場合、患者におけるオルニチンデカルボキシラーゼ(ODC)を阻害する第一の薬剤と、第一の薬剤と組み合わせた場合に患者における全ポリアミン含量を低減するようにポリアミン経路を調節する第二の薬剤との、併用における効果量の医薬治療による治療に対して、この患者が好適だと同定する工程、
を含む、癌腫の予防的又は治療的処置のために患者の適性を評価する方法が提供される。
【0014】
いくつかの実施形態において、第二の薬剤はまた、患者におけるスペルミジン/スペルミンN1−アセチルトランスフェラーゼの発現を上昇させる。いくつかの実施形態において、結果は、前記遺伝子型を含む報告を受け取ること又は結果を表す患者病歴を取得することにより得られる。いくつかの実施形態において、試験は、患者のODC1プロモーター遺伝子の1つのアレルにおける+316番目の位置のヌクレオチド塩基を決定する。いくつかの実施形態において、試験は、患者のODC1プロモーター遺伝子の両方のアレルにおける+316番目の位置のヌクレオチド塩基を決定する。いくつかの実施形態において、結果は、ODC1プロモーター遺伝子の両方のアレルにおける+316番目の位置の患者の遺伝子型がGGであることを示す。いくつかの実施形態において、結果は、ODC1プロモーター遺伝子の両方のアレルにおける+316番目の位置の患者の遺伝子型がGAであることを示す。いくつかの実施形態において、医薬治療は、患者が既に低用量での医薬治療を受けている場合に、試験の結果を得る工程の前に、第一又は第二の薬剤の用量を増加させる工程をさらに含む。
【0015】
いくつかの実施形態において、医薬治療は、患者が既に低用量での医薬治療を受けている場合に、試験の結果を得る工程の前に、第一及び第二の薬剤の用量を増加させる工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、第一の薬剤は、α−ジフルオロメチルオルニチン(DFMO)である。いくつかの実施形態において、第二の薬剤は、アスピリンを含まない非ステロイド抗炎症性薬(NSAID)である。いくつかの実施形態において、アスピリンを含まないNSAIDは、COX−2選択的阻害剤である。いくつかの実施形態において、アスピリンを含まないNSAIDは、スリンダク又はセレコキシブである。いくつかの実施形態において、アスピリンを含まないNSAIDは、スリンダクである。
【0016】
別の態様においては、
a)少なくとも1つのODC1プロモーター遺伝子アレルにおける+316番目の位置の、患者の遺伝子型を決定する試験から、結果を得る工程;及び
b)その結果が、ODC1プロモーター遺伝子の少なくとも1つのアレルにおける+316番目の位置の患者の遺伝子型がGであることを示す場合に、
(i)患者におけるオルニチンデカルボキシラーゼ(ODC)を阻害する第一の薬剤;と
(ii)患者におけるスペルミジン/スペルミンN1−アセチルトランスフェラーゼの発現を上昇させる第二の薬剤とを含む、
効果量の医薬治療を患者に投与する工程、
を含む、患者の癌腫瘍を切除可能にする方法を提供する。
【0017】
いくつかの実施形態において、結果は、前記遺伝子型を含む報告を受け取ること又は結果を表す患者病歴を取得することにより得られる。いくつかの実施形態において、試験は、患者のODC1プロモーター遺伝子の1つのアレルにおける+316番目の位置のヌクレオチド塩基を決定する。いくつかの実施形態において、試験は、患者のODC1プロモーター遺伝子の両方のアレルにおける+316番目の位置のヌクレオチド塩基を決定する。いくつかの実施形態において、結果は、ODC1プロモーター遺伝子の両方のアレルにおける+316番目の位置の患者の遺伝子型がGGであることを示す。いくつかの実施形態において、結果は、ODC1プロモーター遺伝子の両方のアレルにおける+316番目の位置の患者の遺伝子型がGAであることを示す。
【0018】
いくつかの実施形態において、医薬治療は、患者が既に低用量での医薬治療を受けている場合に、試験の結果を得る工程の前に、第一又は第二の薬剤の用量を増加させる工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、医薬治療は、患者が既に低用量での医薬治療を受けている場合に、試験の結果を得る工程の前に、第一及び第二の薬剤の用量を増加させる工程をさらに含む。
【0019】
いくつかの実施形態において、第一の薬剤は、α−ジフルオロメチルオルニチン(DFMO)である。
【0020】
いくつかの実施形態において、第二の薬剤は、アスピリンを含まない非ステロイド抗炎症性薬(NSAID)である。いくつかの実施形態において、アスピリンを含まないNSAIDは、COX−2選択的阻害剤である。いくつかの実施形態において、アスピリンを含まないNSAIDは、スリンダク又はセレコキシブである。いくつかの実施形態において、アスピリンを含まないNSAIDは、スリンダクである。
【0021】
別の態様においては、
a)少なくとも1つのODC1プロモーター遺伝子アレルにおける+316番目の位置の、患者の遺伝子型を決定する試験から、結果を得る工程;及び
b)その結果が、ODC1プロモーター遺伝子の少なくとも1つのアレルにおける+316番目の位置の患者の遺伝子型がGであることを示す場合に、併用において効果量のα−ジフルオロメチルオルニチン(DFMO)とアスピリンを含まない非ステロイド抗炎症性薬(NSAID)とを、患者に投与する工程、
を含む、癌腫の発生又は再発のリスクを有する患者における、癌腫の発生又は再発を予防する方法が提供される。
【0022】
いくつかの実施形態において、結果は、前記遺伝子型を含む報告を受け取ること又は結果を表す患者病歴を取得することにより得られる。いくつかの実施形態において、試験は、患者のODC1プロモーター遺伝子の1つのアレルにおける+316番目の位置のヌクレオチド塩基を決定する。いくつかの実施形態において、試験は、患者のODC1プロモーター遺伝子の両方のアレルにおける+316番目の位置のヌクレオチド塩基を決定する。いくつかの実施形態において、結果は、ODC1プロモーター遺伝子の両方のアレルにおける+316番目の位置の患者の遺伝子型がGGであることを示す。いくつかの実施形態において、結果は、ODC1プロモーター遺伝子の両方のアレルにおける+316番目の位置の患者の遺伝子型がGAであることを示す。
【0023】
別の態様においては、少なくとも1つのODC1プロモーター遺伝子アレルの+316番目の位置においてGを有することが同定された癌腫の発生又は再発のリスクを有する患者に、効果量のα−ジフルオロメチルオルニチン(DFMO)とアスピリンを含まない非ステロイド抗炎症性薬(NSAID)とを投与する工程を含む、α−ジフルオロメチルオルニチン(DFMO)及びアスピリンを含まない非ステロイド抗炎症性薬(NSAID)を用いた治療方法が提供される。
【0024】
いくつかの実施形態において、患者のODC1プロモーター遺伝子アレル両方の+316番目の位置における同定された遺伝子型はGGである。いくつかの実施形態において、患者のODC1プロモーター遺伝子アレル両方の+316番目の位置における同定された遺伝子型はGAである。
【0025】
別の態様においては、
a)少なくとも1つのODC1プロモーター遺伝子アレルにおける+316番目の位置の、患者の遺伝子型を決定する試験から、結果を得る工程;及び
b)結果が、患者のODC1プロモーター遺伝子の+316番目の位置における少なくとも1つのアレルがGであることを示す場合に、併用において効果量のα−ジフルオロメチルオルニチン(DFMO)とアスピリンを含まない非ステロイド抗炎症性薬(NSAID)とを患者に投与する工程、
を含む、患者における癌腫の治療方法が提供される。
【0026】
いくつかの実施形態において、結果は、前記遺伝子型を含む報告を受け取ること又は結果を表す患者病歴を取得することにより得られる。いくつかの実施形態において、試験は、患者のODC1プロモーター遺伝子の1つのアレルにおける+316番目の位置のヌクレオチド塩基を決定する。いくつかの実施形態において、試験は、患者のODC1プロモーター遺伝子の両方のアレルにおける+316番目の位置のヌクレオチド塩基を決定する。いくつかの実施形態において、結果は、ODC1プロモーター遺伝子の両方のアレルにおける+316番目の位置の患者の遺伝子型がGGであることを示す。いくつかの実施形態において、結果は、ODC1プロモーター遺伝子の両方のアレルにおける+316番目の位置の患者の遺伝子型がGAであることを示す。
【0027】
任意の上述した実施形態の変化形において、アスピリンを含まないNSAIDはCOX−2選択的阻害剤である。いくつかの実施形態において、アスピリンを含まないNSAIDはスリンダク又はセレコキシブである。いくつかの実施形態において、アスピリンを含まないNSAIDはスリンダクである。いくつかの実施形態において、DFMO及びスリンダクは全身に投与される。いくつかの実施形態において、DFMO及びスリンダクは別個の経路により投与される。いくつかの実施形態において、DFMO又はアスピリンを含まないNSAIDは経口的に、動脈内に又は静脈内に投与される。いくつかの実施形態において、DFMOは経口的に投与される。いくつかの実施形態において、DFMOの効果量は、500mg/日である。いくつかの実施形態において、DFMOは、静脈内に投与される。いくつかの実施形態において、DFMOの効果量は、約0.05〜約5.0g/m2/日である。いくつかの実施形態において、DFMO及びアスピリンを含まないNSAIDは、経口投与用に処方される。いくつかの実施形態において、DFMO及びアスピリンを含まないNSAIDは、固い又は軟らかい、カプセル又は錠剤として処方される。いくつかの実施形態において、DFMO及びアスピリンを含まないNSAIDは、12時間毎に投与される。いくつかの実施形態において、DFMO及びアスピリンを含まないNSAIDは、24時間毎に投与される。いくつかの実施形態において、スリンダクの効果量は、約10〜約1500mg/日である。いくつかの実施形態において、スリンダクの効果量は、約10〜約400mg/日である。いくつかの実施形態において、スリンダクの効果量は、150mg/日である。いくつかの実施形態において、DFMOは、スリンダクの前に投与される。いくつかの実施形態において、DFMOは、スリンダクの後に投与される。いくつかの実施形態において、DFMOは、スリンダクの前及び後に投与される。いくつかの実施形態において、DFMOは、スリンダクと同時に投与される。いくつかの実施形態において、DFMOは、少なくとも二度目に投与される。いくつかの実施形態において、スリンダクは、少なくとも二度目に投与される。
【0028】
任意の上述した実施形態の変化形においては、患者は固形癌を有し、前記方法は、前記固形癌の切除をさらに含む。いくつかの実施形態において、DFMO及びスリンダクは前記切除に先だって投与される。いくつかの実施形態において、DFMO及びスリンダクは前記切除の後に投与される。
【0029】
任意の上述した実施形態の変化形において、癌腫は、結腸直腸癌、乳癌、膵臓癌、脳腫瘍、肺癌、胃癌、血液癌、皮膚癌、精巣癌、前立腺癌、卵巣癌、肝臓癌又は食道癌、子宮頸癌、頭頸部癌、非メラノーマ性皮膚癌、神経芽細胞腫及び膠芽腫である。いくつかの実施形態において、癌腫は、結腸直腸癌である。いくつかの実施形態において、結腸直腸癌は、第I期である。いくつかの実施形態において、結腸直腸癌は、第II期である。いくつかの実施形態において、結腸直腸癌は、第III期である。いくつかの実施形態において、結腸直腸癌は、第IV期である。
【0030】
任意の上述した実施形態の変化形において、方法は、患者における新しい進行性結腸直腸新生物の形成を予防する。いくつかの実施形態において、方法は、患者における中毒性難聴又はそのリスクを予防する。いくつかの実施形態において、方法は、新しい進行性右側結腸直腸新生物の形成を予防する。いくつかの実施形態において、方法は、新しい進行性左側結腸直腸新生物の形成を予防する。
【0031】
任意の上述した実施形態の変化形において、患者は、結腸、直腸又は虫垂に1つ以上の腺腫性ポリープを有すると同定された。いくつかの実施形態において、患者は、1つ以上の進行した結腸直腸新生物を有すると同定された。いくつかの実施形態において、患者は、1つ以上の左側の進行した結腸直腸新生物を有すると同定された。いくつかの実施形態において、患者は、1つ以上の右側の進行した結腸直腸新生物を有すると同定された。いくつかの実施形態において、患者は、家族性腺腫性ポリポーシスであると診断された。いくつかの実施形態において、患者は、リンチ症候群であると診断された。いくつかの実施形態において、患者は、家族性結腸直腸癌タイプXであると診断された。いくつかの実施形態において、患者は、アムステルダム基準又はアムステルダム基準IIを満たす。いくつかの実施形態において、患者は、1回以上の結腸直腸腺腫の切除歴を有する。いくつかの実施形態において、患者は、上皮内癌又はODCの過剰な活性と関連した前癌病変を有する。いくつかの実施形態において、患者は、上皮内癌又は前癌病変及び細胞ポリアミンレベルの上昇を有する。
【0032】
任意の上述した実施形態の変化形において、患者はヒトである。
【0033】
請求項及び/又は明遺書中の「含んでいる(comprising)」という語に関する単語「a」又は「an」の使用は「1」を意味するが、この語は、「1以上の」、「少なくとも1の」、及び「1又は1を超える」の意味ともまた一致する。
【0034】
本出願を通して、語「約」は、装置の誤差固有の変化、値を決定するために用いる方法、又は研究対象間に存在する変動、を含む値を示すために用いられる。
【0035】
用語「含む」、「有する」及び「含有する」は、オープンエンドな連結動詞である。「含む」、「含んでいる」、「有する」、「有している」、「含有する」及び「含有している」のような、1つ以上のこれら動詞の任意の形態又は時制もまた、オープンエンドである。例えば、1つ以上の工程を「含む」、「有する」又は「含有する」任意の方法は、これら1つ以上の工程を有するとは限定されず、その他の記載されていない工程をもまた包含する。
【0036】
本明細書及び/又は請求項で使用する場合、用語「有効な」は、所望される、期待される、又は目的の結果を達成するのに十分であることを意味する。
【0037】
本明細書で使用する場合、用語「IC50」は、得られる最大反応の50%である、阻害用量を指す。
【0038】
本明細書で使用する場合、用語「患者」又は「対象」は、ヒト、サル、ウシ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコ、マウス、ラット、モルモット、又はその種のトランスジェニックのような、生きている哺乳類を指す。特定の実施形態において、患者又は対象は、霊長類である。ヒト対象の非限定的な例は、成人、若年、幼児及び胎児である。
【0039】
「薬学上許容可能な」は、それが、通常安全で、非毒性であり、そして、生物学的にもその他の点においても望ましい医薬組成物の調整において有用であることを意味し、かつ、それが獣医学的使用並びにヒトへの薬学的使用において許容可能であることを含む。
【0040】
「予防」又は「予防する」は、(1)対象又はリスクを有する患者及び/又は疾患の素因があるが、まだ、疾患のいずれの又は全ての病理又は徴候を経験又は表していない患者における疾患の発症を阻害すること、及び/又は(2)対象又はリスクを有する及び/又は疾患の素因があるが、まだ、疾患のいずれの又は全ての病理又は徴候を経験又は表していない患者における疾患の病理又は徴候の発症を遅らせること、を含む
【0041】
「効果量」、「治療上効果量」又は「薬学的効果量」は、疾患を治療するために対象又は患者に投与した場合に、疾患のそのような治療に効果を及ぼすのに十分な量を意味する。
【0042】
「治療」又は「治療する」は、(1)対象又は疾患の病理又は徴候を経験している又は表している患者における疾患を阻害すること(例えば、病理又は徴候のさらなる発症を阻むこと)、(2)対象又は疾患の病理又は徴候を経験している又は表している患者における疾患を改善すること(例えば、病理及び/又は徴候を反転させること)、及び/又は(3)対象又は疾患の病理又は徴候を経験している又は表している患者の疾患における、任意の測定可能な低下に影響を及ぼすこと、を含む。
【0043】
上述した定義は、参照することにより本明細書に組み入れられる任意の文献中の、いずれの一致しない定義に優先する。特定の語は定義されたが、定義されない任意の用語は明確でないことを示すと見なされるべきではない。むしろ、用いられる全ての用語は、当業者が本発明の範囲及び実際を理解できるように、本発明を明確に記載すると考えられる。
【0044】
本開示のその他の目的、特徴及び利点は、以下の詳細な説明から明らかになるだろう。しかしながら、詳細な説明及び特定の実施例は、本発明の特定の実施形態を示してはいるが、説明するためのみに示されるものであり、そのため、この詳細な説明から、本発明の精神及び範囲内の様々な変更及び調節が当業者には明らかとなるだろう。1つの一般処方に割り当てられた特定の化合物が、別の一般処方に属することができないということを意味するものではないことに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
以下の図表は本明細書の一部分をなし、本開示の特定の態様をさらに示すために含まれる。本発明は、本明細書に示したこれら図表のうちの1つと特定の実施形態の詳細との組み合わせによって、よりよく理解されるだろう。
【図1】ポリアミン制御に及ぼすMAD1及びc−MYCの異なる作用を示す図である。模式図は、ODC1+316マイナーA−アレルに結合したMAD1及びc−MYCが、ポリアミン制御に異なる効果を及ぼすことを提唱する。ODC阻害剤であるDFMO(ジフルオロメチルオルニチン)の効果もまた示した。
【図2】結腸直腸癌−特異的生存率の推定値を示す図である。この図は、ODC1+316遺伝子型によって分類した第III期結腸直腸癌の症例における、カプラン・マイヤー結腸直腸癌特異的生存率の推定値を示す。1994〜1996年の間に診断され、2008年の3月までフォローアップした、カリフォルニア大学アーバイン校(University of California Irvine)の、家族性結腸直腸癌の遺伝−環境研究(Gene−Environment Study of Familial Colorectal Cancer)からの症例を含む:ODC1 GG(64例、15結腸直腸癌による死亡)、ODC1 GA/AA(62例、25結腸直腸癌による死亡)。
【図3】ODC1プロモーターSNPの位置及び解析を示す図である。図3AはODC1プロモーターSNPの位置であるAを示す。この研究の調査におけるSNPは、ODC1転写開始点の3’側316番目のヌクレオチド(*)であった。このSNP残基は、下線を引いた配列である、2つの保存されているEボックスの間にあり、PstI制限酵素部位(枠線)に影響を与える(配列番号5)。図3Bは、ODC1 SNPのRFLP(restriction fragment length 多型)解析を示す。2種類の細胞型からDNAを得て、ODC1 SNP部位の周辺の領域をシークエンシングした。ODC1 SNP遺伝子座では、結腸由来のHT29細胞がヘテロ接合GAであり、HCT116細胞がホモ接合GGであることを確認した。各細胞型から得た、350−bpのこの領域のPCR産物をPstIを用いて消化した。消化産物が350bpよりも小さいことがA−アレルである証拠となる。
【図4】E−ボックスの発現及び免疫沈降解析を示す図である。ODC1プロモーターSNPの位置。図4Aは、結腸由来細胞におけるE−ボックスのタンパク質発現を示す。評価するタンパク質発現の+316 ODC1 SNPへの結合をウェスタンブロット解析により評価した。HT29及びHCT116細胞両方の抽出物をc−MYC、MAD1、及びMAD4について評価し、β−アクチンをローディングコントロールとして用いた。図4Bは、以下の実施例部分において記載したように実施したクロマチン免疫沈降解析による、アレル特異的な転写因子の結合の証拠資料を示す。HT29細胞を、これらの細胞がこの部位におけるヘテロ接合GAであることから、ODC1 A−アレルの供給源として用いた。HCT116細胞をODC1 G−アレルの供給源として用いた。
【図5】ODC1活性におけるc−MYC及びMAD1発現の効果を示す図である。図5Aは、HT29結腸由来細胞における、ODC1アレルに特異的なプロモーター活性に及ぼすc−MYC発現の効果を示す。ODC1プロモーターレポータープラスミドをpcDNA3.0プラスミド又はCMV−MYC発現ベクターと共にトランスフェクションした後に、プロモーター活性を測定した。プロモーター構築物は、−485〜−480bpに位置する第一のE−ボックス要素(野生型配列を「wt E−ボックス1」、突然変異体配列を「mut E−ボックス1」とした)の有無によって異なる。構築物はまた、ODC1 +316 SNP(「+316 G」又は「+316 A」)によっても異なる。*は、pcDNA3.0と共にトランスフェクションしたプロモーター活性との相対的な比較において、4つそれぞれがP≦0.013で統計的に有意であることを示す。図5Bは、HT29結腸腫瘍由来細胞におけるODC1アレル−特異的プロモーター活性に及ぼすMAD1発現の効果を示す。ODC1プロモーターレポータープラスミドをpcDNA3.1プラスミド又はpcDNA−MAD1プラスミドと共にトランスフェクションした後にプロモーター活性を測定した。プロモーター構築物については、この図のパネルAの凡例に記載した。*は、pcDNA3.1と共にトランスフェクションした場合のプロモーター活性と比較して、P=0.027で統計的に有意であることを示す。
【図6】腺腫性ポリープの減少を示す図である。この図は、偽薬と比較して、DFMO及びスリンダクで治療した患者の、腺腫性ポリープ再発のパーセンテージを示す。全腺腫の70%、進行した腺腫の92%、及び複数の腺腫の95%が減少した。
【図7】+316 ODC1遺伝子型に基づく薬理ゲノム有益性/リスク解析を示す図である。この図は、患者における+316 ODC1遺伝子型の機能として、治療群及び偽薬群における、偽薬に対する3年後の腺腫再発の低下(%)及び中毒性難聴(%)を比較する。中毒性難聴は聴力検査により決定した。
【図8】+316 ODC1遺伝子型に基づく薬理ゲノム有益性/リスク解析を示す図である。この図は、患者の+316 ODC1遺伝子型の機能として、治療群及び偽薬群における3年後の腺腫の再発(%)である利益と中毒性難聴のリスク(%)を比較する。中毒性難聴は聴力検査により決定した。
【図9】Min/+マウスにおける、結腸の大きさ当たりの腫瘍の平均数を示す図である。この図は、未処理対照と比較した場合の、3つの治療群における結腸の大きさ当たりの腫瘍の平均数を示す。The Jackson Laboratory(BarHarbor、Me.)から購入したマウス、オスのC57BL/6J−ApcMin/+とメスのC57/BL6を掛け合わせた。ヘテロ接合Minマウス(ApcMin/Apc+):(Apcの850番目のコドンにおけるナンセンス変異のヘテロ接合)を、テールチップ(tail−tip)DNAを用いたアレル特異的PCRアッセイにより、離脱を利用したジェノタイピングによって同定した。ホモ接合(Apc+/Apc+)の同腹子を対照とした。1つの治療は、試験の8日目に2%DFMO(Merrell Dow Research Inst.)を含む水を与えることであった。その他の治療においては、試験の21日目に、167ppmのスリンダク(Harlen Teklad)をAIN−93Gマウス飼料に添加した。3番目の治療においてはDFMO及びスリンダクの組み合わせを用いた。114日後、CO2窒息によりマウスを殺した。マウスから小腸及び結腸片を切除し、縦方向に切り開き、70%エタノール中で固定し、そして腫瘍を測定するために4℃に静置した。代表的な組織については組織病理学的評価も行った。
【図10】Min/+マウスの小腸における、大きさ当たりの腫瘍の平均数を示す図である。この図は、未処理対照と比較した場合の、3つの治療群における小腸の大きさ当たりの腫瘍の平均数を示す。実験の詳細については上述した図9を参照のこと。
【図11】Min/+マウスにおける治療の機能としての、グレードの高い腺腫の数を示す図である。この図は、治療の型によってどのようにグレードの高い腺腫の数が変動するかを示す。実験の詳細については上述した図9を参照のこと。
【発明を実施するための形態】
【0046】
いくつかの態様においては、少なくとも部分的には患者のODC1プロモーター遺伝子型に基づいて、適性、効力、毒性及び/又はオルニチンデカルボキシラーゼ(ODC)阻害剤及びスペルミジン/スペルミンN1−アセチルトランスフェラーゼ発現アゴニストを含む抗癌併用療法の用量を予測することを含む方法が提供される。
【0047】
本発明はまた、前癌症状を示している対象の癌の発症を予防するため及び/又は、新しい異常腺窩巣の形成、新しい腺腫性ポリープの形成又は新しい異形成性腺腫のような癌リスク因子の発症を予防するための、治療用化合物の送達をも含む。このカテゴリーの細胞は、少なくとも部分的に患者のODC1プロモーター遺伝子型に基づいて、癌状態へ進行する可能性を示している、ポリープ及びその他の前癌病変、前悪性腫瘍、前癌状態又はその他の異常な表現型が含まれる。
【0048】
I.ポリアミン代謝
過剰なポリアミンの形成は、長く、上皮癌発症、特に結腸直腸癌発症の原因とされてきた。ポリアミンは、転写、RNAの安定化、イオンチャネル開閉などを含む様々な過程に関与する、小さく、偏在する分子である(Wallace,2000)。ポリアミン合成における第一の酵素であるオルニチンデカルボキシラーゼ(ODC)は、哺乳類の正常な発生及び組織の修復に必須であるが、大部分の成熟した組織ではダウンレギュレートされている(Gerner and Meyskens,2004)。ポリアミンの代謝及び輸送における複数の異常は、複数の組織で腫瘍形成を促進することができるポリアミンレベルの上昇を生じる(Thomas and Thomas,2003)。
【0049】
ポリアミンの代謝は、結腸及びその他の癌への高い危険性と関連する症候群である、家族性腺腫性ポリポーシス(FAP)を有するヒトの腸上皮組織においてアップレギュレートされる(Giardiello et al.,1997)。
【0050】
FAPは、大腸腺腫性ポリポーシス(APC)腫瘍抑制遺伝子における突然変異によって生じると考えられ、また、ヒト細胞(Fultz and Gerner,2002)及びFAPのマウスモデル両方において、APCシグナル伝達がODC発現を制御することが示されてきた(Erdman et al.,1999)。
【0051】
野生型APCの発現はODC発現の低下を引き起こすが、突然変異体APCはODC発現の上昇を引き起こす。ODCのAPC依存性制御機構には、転写アクチベーターであるc−MYCと転写リプレッサーであるMAD1を含む、E−ボックス転写因子が関与する(Fultz and Gerner,2002; Martinez et al.,2003)。c−MYCは、他のものにより、ODC転写を制御することが示された(Bellofernandez et al.,1993)。ポリアミン代謝に含まれるいくつかの遺伝子は、多くの生物の最適な成長に必須の遺伝子であり、増殖していない及び/又は成熟した細胞及び組織においてはダウンレギュレートされている(Gerner and Meyskens,2004)。他にまとめられているように(Childs et al.,2003)、ポリアミンは、部分的に遺伝子の発現パターンに作用することにより、特定の細胞表現型に影響を及ぼす。
【0052】
以下に記載するように、ODC(すなわち、ポリアミン合成の律速酵素)活性の阻害及び/又は細胞内ポリアミンレベルの減少を含む方法は、ヒトにおいて、結腸直腸ポリープの再発の予防に顕著な効力を示した。本研究による疫学的及び実験の結果は、ODC中の遺伝的多型によるポリアミン恒常性の条件付きの制御を示し、+316 ODC SNPが結腸腺腫再発への保護となり得る、及び、結腸癌と診断された後の生存に有害となり得るというモデルを示唆するものである。この情報を結腸癌の予後の決定に用いることができる。癌の進行/再発のリスクが高い患者を同定することにより、早期の第三次予防の管理方法を開始することができる。加えてこの研究を、高リスクではあるが、他の点では最適な治療を受けた、第三次癌予防治療が有効だと考えられる局所結腸直腸癌患者を同定するために用いることができる。
【0053】
ポリアミン(例えばプトレッシン)が、およそ400ppmのプトレッシンを含有するオレンジジュースのような、多くの一般的な食物中に存在するという事実から、患者の食事に依存して、過剰ポリアミンの問題が悪化する場合がある。この点において、高ポリアミン食は禁忌であり、本明細書に示されたいくつかの実施形態においては、そのような食事は避けられる。2010年5月14日に出願された、Kavitha P.Raj、Jason A.Zell、Christine E.McLaren、Eugene W.Gerner、Frank L.Meyskens及びJeffrey Jacobによる米国仮特許出願、名称「Cancer Prevention and Treatment Methods Based on Dietary Polyamine Content」を参照のこと。またその全文は、参照することにより本明細書に組み入れられる。
【0054】
II.家族性腺腫性ポリポーシス
遺伝性ポリポーシス症候群である家族性腺腫性ポリポーシス(FAP)は、大腸腺腫性ポリポーシス(APC)腫瘍抑制遺伝子の生殖細胞突然変異の結果である(Su et al.,1992)。さまざまな表現型となる、この常染色体優性条件は、散発性結腸癌と診断される平均年齢よりも20歳早い40代における、一様に腺癌へと進行する、数百もの結腸癌の発生と関連する(Bussey,1990)。FAP発症前の対象についてのこれまでの研究において、正常に見える結腸直腸生検におけるポリアミン(スペルミジン及びスペルミン、並びにそのジアミン前駆体であるプトレッシン)のレベルが、正常な家系員対照よりも上昇していることが検出された(Giardiello et al.,1997)。哺乳類のポリアミン合成における第一の、かつ律速酵素であるオルニチンデカルボキシラーゼ(ODC)の活性もまた、FAP患者由来の正常に見える結腸粘膜生検で上昇している(Giardiello et al.,1997;Luk and Baylin,1984)。ポリアミンが適正な細胞増殖に必須であることから、これらの発見は注目されている(Pegg,1986)。さらに、酵素により活性化される不可逆性の阻害剤であるDFMOを用いたODC活性の抑制は、発癌性物質を処理した齧歯類−における結腸癌の発症を阻害する(Kingsnorth et al.,1983;Tempero et al.,1989)。
【0055】
以下に詳細に議論されるように、変異したAPC/apc遺伝子型がFAPと共通するMin(多重腸新生物)マウス(Lipkin,1997)を、ヒトFAP患者への有用な実験動物モデルとして用いた。Minマウスは、120日間の生存の間に、GI出血、閉塞及び死亡を引き起こす、100を超える胃腸腺腫/腺癌を胃腸管全体に発生させることができる。DFMO及びスリンダクの併用療法が、これらのマウスにおける腺腫の減少に効果的であることが示された(米国特許第6,258,845号;Gerner and Meyskens,2004)。Minマウスを、DFMO単独、スリンダク単独、又はDFMOとスリンダクとの併用のいずれかを用いて処理した場合の、結腸又は小腸いずれかでの腫瘍形成における結果を図9〜11に示す。
【0056】
III.オルニチンデカルボキシラーゼ−1多型
ポリアミン合成における第一の酵素であるオルニチンデカルボキシラーゼ(ODC)の活性は、正常な成長に必要であり、またその活性は結腸直腸癌を含む多くの癌において上昇している。本明細書においては、CRC症例における、+316 ODC一塩基多型(SNP)と結腸直腸癌(CRC)特異的生存との間の関連について試験し、そしてその結腸癌細胞における機能的異議について調査した。
【0057】
ヒトODC1遺伝子のイントロン−1中にある一塩基多型(SNP)は、ODC1転写に影響を及ぼし(Guo et al.,2000)、結腸直腸腺腫(CRA)リスクに対する遺伝子マーカーとして研究されてきた(Martinez et al.,2003;Barry et al.,2006;Hubner et al.,2008)。報告されたマイナーA−アレル頻度はおよそ25%であり、人種/民族性による差に関わらず、各人種におけるODC1遺伝子型分布はハーディ・ワインベルグ平衡を取る(O’Brien et al.,2004;Zell et al.,2009)。ODC1マイナーA−アレルホモ接合の対照は、メジャーG−アレルホモ接合の対照と比較して腺腫再発のリスクが低い(Martinez et al.,2003;Hubner et al.,2008)。さらに、ODC1 A−アレル(AA又はGA遺伝子型、であってGG遺伝子型ではない)及び報告されたアスピリンの使用は、結腸ポリープ再発の減少(Martinez et al.,2003;Barry et al.,2006;Hubner et al.,2008)、及び統計的に有意な進行した腺腫の50%低下(Barry et al.,2006)と関連した。
【0058】
E−ボックス転写因子のODCアレル特異的結合について研究を行い、2つのE−ボックス(図2Aに図示したE−ボックス2及び3)の間に位置する+316 ODC SNPの機能的意義を評価した。各細胞株遺伝子型は、この領域中に保存されているPstI制限酵素部位に影響を及ぼす。図2Bは、ヒト結腸HT29細胞をからのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)産物はPstI切断に対して部分的に感受性であったことを示し、このことはこれらの細胞が少なくとも1つのODC A−アレルを含むことを示唆している。同じプライマーを用いたヒト結腸HCT116細胞からのPCR産物は、PstIの作用に対して非感受性であり、このことはこれらの細胞がODC G−アレルのみを含むことを意味している。この結果は、ダイレクトDNAシークエンシングにより確認した。
【0059】
転写アクチベーターであるc−MYC及び複数の転写リプレッサーを含む、HT29及びHCT116細胞においてE−ボックスに特異的に結合するタンパク質(例えばMAD1及びMAD4)の発現を、ウェスタンブロットにより実証した(図3A)。これらのタンパク質に対する抗体を用いて、ODCプロモーターの+316周辺領域のクロマチン免疫沈降(CHIP)解析を行った。図3Bに示したように、c−MYC、MAD1又はMAD4に対する抗体を用いたクロマチンの免疫沈降後に得たHT29 DNAから、ODCプロモーターに特異的なPCR産物を合成した。同様のクロマチン免疫沈降後にHCT116 DNAから合成したPCR産物は、HT29 DNAから合成したPCR産物と比較して、実質的に少なかった。これらの結果の定量は、c−MYC、MAD1、及びMAD4のODC SNP領域への結合が、ODC−Gアレルのみを含むHCT116細胞と比較して、1つのODC−Aアレルを含むHT29細胞において4〜14倍高いことを示した。
【0060】
ODCアレル−特異的プロモーター活性を評価した。E−ボックスのアクチベーター及びリプレッサーの発現に依存して、+316 ODC SNPがODCの発現に影響を及ぼすという仮説を、以下のように試験した。ODCアレル特異的プロモーター構築物と、転写アクチベーターであるc−MYC又はリプレッサーであるMAD1のいずれかを発現しているベクターとを同時に導入することにより、結腸癌由来HT29細胞の一過性のトランスフェクションを行った(図4A及び図4B)。標準誤差の線は、重複して行った単一の代表的な実験での、3回の測定における変動を反映している。これらの実験で用いたアレル特異的プロモーター−レポーターには、図2Aに示した3つ全てのE−ボックスが含まれた。図4Aに示したように、c−MYCの発現は、3つの保存されたE−ボックス及びODC−Aアレルを含むプロモーターに対して高い刺激効果を有した(wt E−ボックス1 +316 A、P=0.0014)。上流のE−ボックスを欠損させるとプロモーター活性が低下したが、c−MYCの発現はこの活性を刺激し続けた(mut E−ボックス1 +316 A、P=0.0013)。+316 SNP位置でGをAに置換すると、完全な5’に隣接した保存されたE−ボックスがあっても、c−MYCのプロモーター活性を刺激する能力が低下した。5’に隣接した保存されたE−ボックスへの変異の導入とODC−Gアレルとの組み合わせでは、プロモーター活性がさらに低下した。
【0061】
c−MYCよりも、MAD1をODCアレル−特異的プロモーターレポーターと共にトランスフェクションした場合(図4B)、リプレッサーは、3つ全てのE−ボックス及び野生型+316 A−アレルを含むODCプロモーターの活性のみを低下させることができた(P=0.027)。上流のE−ボックスを欠損させると(mut E−ボックス1 +316 A)、MAD1のODCプロモーター活性に及ぼす効果が有意に低下した。+316位置のGをAに置換すると、2つ又は3つのE−ボックスを含むプロモーターはMAD1による抑制に非感受性となった。
【0062】
IV.ジフルオロメチルオルニチン(DFMO)
エフロルニチンとしても知られるDFMOは、2−(ジフルオロメチル)−dl−オルニチンという化学名を有する。これは、ポリアミン生合成経路の律速酵素であるオルニチンデカルボキシラーゼ(ODC)の、酵素によって活性化される不可逆的な阻害剤である。ポリアミン合成のこの阻害の結果、この化合物は、多くの器官系での癌形成の予防、癌の成長の阻害、及び腫瘍サイズの低減において効果的となる。また、これはその他の抗腫瘍薬との相乗作用を有する。
【0063】
DFMOがマウスにおけるAPC依存性腸腫瘍形成を減少させることが示されてきた(Erdman et al.,1999)。ヒトにDFMOを毎日経口投与すると、ODC酵素活性及び多くの上皮組織におけるポリアミン含量が抑制される(Love et al.,1993;Gerner et al.,1994;Meyskens et al.,1994;Meyskens et al.,1998;Simoneau et al.,2001;Simoneau et al.,2008)。近年発明者らは、無作為化臨床試験において、DFMOが、非ステロイド抗炎症性薬(NSAID)スリンダクと併用することで、偽薬群と比較して、結腸腺腫を有する個体における腺腫再発率を顕著に低下させることを報告した(Meyskens et al.,2008)。
【0064】
DFMOは当初、Centre de Recherche Merrell、Strasbourgにより、合成された。現在、FDAによる認可には
・アフリカ睡眠病。高用量全身性IV用量形態−市販されない(Sanofi/WHO)
・男性型多毛症(アンドロゲン誘導性の過剰な体毛の成長)局所用量形態
が含まれ、現在、経口処方は認可されていない。
【0065】
良性前立腺肥大症の治療におけるDFMO及びその使用は、米国特許第4,413,141号、及び同第4,330,559号の2つの特許に記載されている。米国特許第4,413,141号には、DFMOがインビトロ及びインビボの両方において、ODCの強力な阻害剤であることが記載されている。DFMOの投与は、通常は積極的に生産されるポリアミンである、プトレッシン及びスペルミジンの細胞中での濃度低下をもたらす。加えて、標準的な腫瘍モデルに投与した場合に、DFMOが新生細胞の増殖を遅らせることができることが示されてきた。米国特許第4,330,559号では、良性前立腺肥大症の治療におけるDFMO及びDFMO誘導体の使用について記載されている。良性前立腺肥大症は、早い細胞増殖によって特徴付けられる多くの疾患状態と同様に、ポリアミン濃度の異常な上昇によって生じる。この文献中に記載された治療は、経口的又は非経口的のいずれかにより、患者に投与することができる
【0066】
有意な抗腫瘍効果のあるDFMOを継続的に投与することができる。この薬剤は、0.4g/m2/日というヒトへの低い用量では比較的毒性が低いが、腫瘍においてプトレッシン合成を阻害する。ラット腫瘍モデルを用いた研究は、DFMOの注入が、末梢の血小板の数を抑制することなく、腫瘍プトレッシンレベルを90%低下させることを示している。
【0067】
DFMOの使用に伴って観察される副作用には、4g/M2/日の高用量での聴力に及ぼす影響が挙げられるが、これは薬剤を中止することによって解消される。これらの聴力に及ぼす影響は、0.4g/M2/日の低用量を1年間まで投与した場合には観察されない(Meyskens et al.,1994)。加えて、ふらつき/めまいの症例がいくつか見られたが、薬剤を中止することで解消した。主に高「治療」用量のDFMO(>1.0g/m2/日)、そして第一に、これまでに化学療法を受けていた癌患者、又は骨髄損傷を有する患者を用いた研究において、血小板減少症が報告された。DFMO治療に関連する毒性は通常、その他の型の化学療法と同程度には重症でないが、限られた臨床試験においては、用量依存的に血小板減少症を促進することが認められている。さらに、ラットを用いた実験では、DFMOを12日間持続注入すると、対照と比較して、血小板の数が有意に低下することが示されている。その他の研究においても、血小板減少症が継続的なDFMOの静脈内治療による主要な毒性であるという、同様の観察がなされた。これらの発見は、DFMOが巨核球の骨髄前駆体のODC活性を有意に阻害し得ることを示唆するものである。DFMOは上皮創傷治癒のような、増殖性の修復過程を阻害し得る。
【0068】
第第3相臨床試験では、ジフルオロメチルオルニチン(DFMO)とスリンダク、又はマッチした偽薬を用いた36ヶ月の治療後の腺腫性ポリープの再発を評価した。一時的な聴力の低下がDFMOによる治療の既知の毒性であり、そのため一連の空気伝導聴力を解析するための包括的な方法が開発された。一般化された推定式は、周波数での繰り返し行った測定による、対象内での相関を評価することにより、治療群間での空気伝導純音閾値の平均差を推定した。290人の対象の結果、偽薬を投与した対象と比較した、DFMO及びスリンダクを投与した対象間における、基準値、年齢、及び周波数で補正した平均差は0.50dBであった(95%信頼区間、−0.64〜1.63dB;P=0.39)。通常の会話音域は500〜3,000Hzであり、推定される差の平均は0.99dB(−0.17〜2.14dB;P=0.09)であることを検出した。用量強度によっては、モデルに対する情報は加えられなかった。試験した全音域帯にわたり、連続した2つ以上の周波数で基準値から少なくとも15dBの聴力低下を経験した対象は、DFMO及びスリンダクの群では151人中14人(9.3%)、及び偽薬群で139人中4人(2.9%)であった(P=0.02)。治療後、少なくとも6ヶ月間継続した空気伝導検査は、治療群において聴力閾値の差の平均が1.08dB(−0.81〜2.96dB;P=0.26)に修正されたことを示した。偽薬群と比較して、DFMO及びスリンダク群において臨床的に有意な聴力低下を経験した対象の割合には有意な差はなかった。この薬剤が原因となる、中毒性難聴の推定されるリスクは8.4%(95%信頼区間、−2.0%〜18.8%;P=0.12)である。偽薬を投与した患者と比較して、DFMO及びスリンダクを投与した患者の平均閾値の差は、<2dBである。この研究の結果は、McLaren et al., 2008において詳細に議論されており、その全文は参照することにより本明細書に組み入れられる。本明細書においては、DFMO及びスリンダクのような薬剤を投与した患者での中毒性難聴を低減する及び/又は予防する方法が提供される。
【0069】
V.NSAID
NSAIDは非ステロイド性の抗炎症性薬である。抗炎症性作用に加えて、それらは鎮痛性、解熱性、及び血小板阻害作用を有する。それらは第一に、慢性関節炎の状態の治療、並びに疼痛及び炎症と関連する特定の軟部組織障害の治療に用いられる。それらは、アラキドン酸を、プロスタグランジンの前駆体である環状エンドペルオキシドに変換するシクロオキシゲナーゼを阻害し、プロスタグランジンの合成を遮断することによって作用する。プロスタグランジン合成の阻害が、それらの鎮痛性、解熱性、及び血小板阻害作用の主な要因であり、その他の機序もそれらの抗炎症性効果に寄与していると考えられる。特定のNSAIDはまた、リポキシゲナーゼ酵素又はホスホリパーゼCを阻害する場合があり、又はT−細胞の機能を調節する場合がある。(AMA Drug Evaluations Annual,1814−5,1994)。
【0070】
アスピリン、イブプロフェン、ピロキシカム(Reddy et al.,1990;Singh et al.,1994)、インドメタシン(Narisawa,1981)、及びスリンダク(Piazza et al.,1997;Rao et al.,1995)を含む非ステロイド抗炎症薬(NSAID)は、AOMで処理したラットモデルにおいて効果的に結腸癌の発症を阻害する。NSAIDはまた、活性化されたKi−rasを有する腫瘍の発生をも阻害する(Singh and Reddy,1995)。NSAIDは、腫瘍細胞におけるアポトーシスの誘導を介して癌の発症を阻害すると考えられる(Bedi et al.,1995;Lupulescu,1996;Piazza et al.,1995;Piazza et al.,1997b)。数多くの研究が、アポトーシスの誘導を含むNSAIDの化学予防特性が、プロスタグランジン合成を阻害するそれらの能力の機能であることを示唆している(総説DuBois et al.,1996;Lupulescu,1996;Vane and Botting,1997)。しかしながら、研究はNSAIDが、プロスタグランジン−依存性及び−非依存性機序の両方を介して作用し得ることを示している(Alberts et al.,1995;Piazza et al.,1997a;Thompson et al.,1995;Hanif,1996)。NSAIDスリンダクの代謝産物であるスルホン化スリンダクは、COX−阻害活性を欠くが、腫瘍細胞におけるアポトーシスを誘導し(Piazza et al.,1995;Piazza et al.,1997b)、そして癌発症の複数の齧歯類モデルにおける腫瘍の発生を阻害する(Thompson et al.,1995;Piazza et al.,1995,1997a)。
【0071】
ヒト臨床試験において、いくつかのNSAIDの効果が試験されてきた。イブプロフェンの第2a相試験(1ヶ月)が遂行され、300mg/日の用量でさえも、扁平粘膜におけるプロスタグランジンE2(PGE2)レベルの有意な減少が認められた。300mg用量のイブプロフェンは非常に低用量であり(治療用量は1200〜3000mg/日以上)、長期の使用においても毒性は見られないようである。しかしながら、動物化学予防モデルにおいては、イブプロフェンはその他のNSAIDに比べて効果が低い。
【0072】
A.スリンダク及びその主要な代謝産物である、スルホン化スリンダク及びスリンダク硫化物
スリンダクは、(Z)−5−フルオロ−2−メチル−1−((4(メチルスルフィニル)フェニル)メチレン)1H−インデン−3−酢酸という化学名を有する、非ステロイド性の、抗炎症性インデン誘導体である(Physician’s Desk Reference,1999)。インビボにおいてスルフィニル部分は、可逆的な還元により硫化代謝産物へと変換され、そして不可逆的な酸化によりスルホン化代謝産物(エクシスリンド)へと変換される。その全文が参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第6,258,845号を参照のこと。Ki−rasの活性化をも阻害するスリンダクは、COXを阻害する能力において異なるが、その両方ともがアポトーシスの誘導を介して化学予防効果を示すことができる、2つの異なる分子に代謝される。スルホン化スリンダクはCOX阻害活性を欠き、そしてプロスタグランジン合成とは独立した方法でアポトーシスの誘導を促進するようである。入手可能な証拠は、硫化物誘導体が生物学的に活性な化合物のうちの少なくとも1つであることを示している。これに基づき、スリンダクをプロドラッグとして検討することができる。
【0073】
スリンダク(クリノリル(登録商標))は、例えば、150mg及び200mgの錠剤として入手可能である。成人への最も一般的な用量は150〜200mgを1日2回、最大1日用量は400mgである。経口投与の後には、約90%の薬が吸収される。空腹患者においては約2時間後、食事と共に投与した場合には3〜4時間後にピーク血漿レベルに達する。スリンダクの平均半減期は7.8時間であり、硫化代謝産物の平均半減期は16.4時間である。その両方の全文が参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第3,647,858号及び同第3,654,349号はスリンダクの調製物を包含する。
【0074】
スリンダクは、変形性関節症、関節リウマチ、硬直性脊椎炎、急性痛風、及び急性肩胛痛徴候の徴候及び症状の、急性及び長期間の軽減のために適用される。スリンダク(1日当たり400mg)によってもたらされる鎮痛性及び抗炎症効果は、アスピリン(1日当たり4g)、イブプロフェン(1日当たり1200mg)、インドメタシン(1日当たり125mg)、及びフェニルブタゾン(1日当たり400〜600mg)による効果と同等である。スリンダクの副作用としては、腹痛及び悪心が主訴である、約20%の患者における中等度の胃腸への作用が挙げられる。眠気、頭痛、及び神経過敏が主訴であると報告された、CNSの副作用が最大で10%の患者において見られる。皮膚発疹及びかゆみが5%の患者に生じる。スリンダクを用いた慢性治療は、出血、潰瘍形成、及び穿孔のような重篤な胃腸毒性を引き起こす可能性がある。
【0075】
癌、具体的には結腸直腸ポリープ、の化学予防におけるスリンダクの使用可能性について、よく研究されてきた。最近の2つの特許、米国特許第5,814,625号及び同第5,843,929号は、ヒトにおける、スリンダクの化学予防としての使用可能性について詳述している。両特許の全文が参照により本明細書に組み入れられる。米国特許第5,814,625号において請求されたスリンダクの用量は1日当たり10mg〜1500mgの範囲であり、好ましい用量は1日当たり50mg〜500mgである。しかしながら、より高い用量での化学予防における単一の薬剤としてのスリンダクの使用に関わる最も大きな問題は、周知の毒性及び不耐性への中程度に高いリスクである。60歳を超える対象においては副作用の頻度がより高いことから、高齢者は特に作用を受けやすいようである。この年齢群の対象が最も結腸直腸癌を発生しやすく、そのため、最も化学予防からの恩恵を受けやすいことが知られている。
【0076】
スリンダク及びそのスルホン化代謝物であるエクシスリンドは、複数の型の癌の予防及び治療のために試験されてきており、臨床試験が続けられている。米国国立衛生研究所のデータベースであるClinical Trials.govは、2010年5月10日時点での、以下の概観を提供している。
【表1】
【0077】
B.ピロキシカム
4−ヒドロキシ−2−メチル−N−2−ピリジル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキサミド1,1−ジオキシドという化学名を有する薬剤は、関節リウマチ及び変形性関節症の治療においてよく確立された非ステロイド性抗炎症薬である。その有用性は、筋骨格障害、月経困難症、及び術後疼痛の治療において示されてきた。半減期が長いことから、1日1回の投与を行うことができる。この薬は、直腸内に投与すると有効であることが示されてきた。副作用として報告される主訴は胃腸の病気である。
【0078】
近年のIIb試験においては副作用を示したが、動物モデルにおいてピロキシカムが有効な化学予防薬であることが示されてきた(Pollard and Luckert,1989;Reddy et al.,1987)。NSAIDの副作用の大規模メタ解析もまた、ピロキシカムがその他のNSAIDよりも多くの副作用を有することを示している(Lanza et al.,1995)。スリンダクが家族性腺腫性ポリポーシス(FAP)患者の腺腫の退行をもたらすことが示されてきたが(Muscat et al.,1994)、散発性腺腫についての少なくとも1つの研究においてはそのような効果は認められなかった(Ladenheim et al.,1995)。
【0079】
DFMOは、それぞれの薬剤を個別に投与した場合、Ki−ras突然変異及び腫瘍形成においてピロキシカムよりも高い抑制効果を及ぼすが(Reddy et al.,1990)、DFMO及びピロキシカムの併用がAOMを処理した結腸癌発症のラットモデルにおいて相乗的な化学予防効果を有することが示された(Reddy et al.,1990)。1つの研究においては、DFMO又はピロキシカムをAOMを処理したラットに投与すると、Ki−ras突然変異を有する腫瘍の数が、90%から、それぞれ36%及び25%に減少した(Singh et al., 1994)。両薬剤とも、存在する腫瘍における生化学的に活性なp21rasの量を低下させた。
【0080】
C.NSAIDの併用
様々なNSAIDの併用もまた、様々な目的のために使用される。2つ以上のNSAIDを低用量で使用することにより、高用量の個々のNSAIDと関連する副作用又は毒性を低減することが可能である。例えば、いくつかの実施形態において、スリンダクをセレコキシブと共に使用することができる。いくつかの実施形態において、1つ又は両方のNSAIDはCOX−2選択的阻害剤である。単独又は併用において用いることが推奨されるNSAIDの例としては、イブプロフェン、ナプロキセン、フェノプロフェン、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、オキサプロジン、インドメタシン、スリンダク、エトドラク、ジクロフェナク、ピロキシカム、メロキシカム、テノキシカム、ドロキシカム、ロルノキシカム、イソキシカム、メフェナム酸、メクロフェナム酸、フルフェナム酸、トルフェナム酸、セレコキシブ、ロフェコキシブ、バルデコキシブ、パレコキシブ、ルミラコキシブ、又はエトリコキシブが挙げられるが、これらには限定されない。
【0081】
VI.エフロルニチン/スリンダク併用療法
対象に薬剤を低用量で併用して投与した化学予防薬の前臨床研究では、腺腫予防における付加的な毒性のほとんどない顕著な効果が示され、このことは、低用量での併用が腺腫再発予防のリスク対利益率を改善する方法であることを示唆している。
【0082】
上述したように、FAPと共通な変異型APC/apc遺伝子型を有するMin(多重腸新生物)マウスは、ヒトFAP患者に対する有用な実験動物モデルとなる(Lipkin、1997)。Minマウスは生後120日目までに、胃腸管全体に、GI出血、閉塞及び死亡を引き起こす、100を超える胃腸腺腫/腺癌を発症することができる。DFMOとスリンダクの併用療法が、これらマウスにおいて腺腫の減少に効果的であることが示された(米国特許第6,258,845号;Gerner and Meyskens, 2004)。Minマウスを、DFMO単独、スリンダク単独、又はDFMOとスリンダクとの併用のいずれかを用いて処理した場合の、結腸又は小腸いずれかでの腫瘍形成における結果を図9及び図10に示す。図9は、未処理対照と比較した場合の、3つの治療群における結腸の大きさ当たりの腫瘍の平均数を示す。図10は、未処理対照と比較した場合の、3つの治療群における小腸の大きさ当たりの腫瘍の平均数を示す。図11は、単独又は併用の治療によってどのようにグレードの高い腺腫の数が変動するかを示す。
【0083】
VII.患者プロファイルに基づくポリアミン阻害治療の効力
D,L−(−ジフルオロメチルオルニチン(DFMO、エフロルニチン)とスリンダクを併用して、長期間、毎日CRA患者に経口投与した場合に、ポリアミン阻害効力があること示されたが(Meyskens et al., 2008)、治療は中等度の無症状の中毒性難聴(McLaren et al., 2008)、及び高い基準値の心血管リスクを有する患者における心血管イベントの数の増加と関連した(Zell et al., 2009)。本発明者らは今回、偽薬群と比較して、ODC1遺伝子型が、腺腫再発、組織ポリアミン反応、又はエフロルニチンとスリンダクとの治療後の毒性プロファイルに差次的に作用することを決定した。
【0084】
腺腫(≧3mm)の切除歴を有する375人の患者を、ジフルオロメチルオルニチン(DFMO)500mg及びスリンダク150mgの投与を1日1回36ヶ月受ける群と、マッチした偽薬を受ける群とに無作為に割り当て、試験開始時での低用量のアスピリン(81mg)の使用及び臨床現場とにより分類した。無作為化又は試験脱落の3年後に、追跡調査のための結腸鏡検査を行った。群間における結腸直腸腺腫再発を対数二項回帰を用いて比較した。偽薬の投与を受けた患者でのアウトカムを、積極的な介入を受けた患者と比較した。結果は、(a)1つ以上の腺腫の再発が41.1%及び12.3%(リスク率、0.30;95%信頼区間、0.18〜0.49;P<0.001)であり;(b)1つ以上の進行した腺腫有する患者は偽薬群では8.5%であり、治療群では0.7%であった(リスク率、0.085;95%信頼区間、0.011〜0.65;P<0.001);及び(c)最終的な結腸鏡検査では、17人(13.2%)の患者が複数(>1)の腺腫を有したが、治療群では1人(0.7%;リスク率、0.055;0.0074−0.41;P<0.001)であった。重篤な有害事象(グレード≧3)は偽薬群の8.2%の患者において生じたが、積極的な介入を受けた群では11%であった(P=0.35)。基準値と比較して、聴力に変化があったと報告された患者の割合には、両群において有意な差は見られなかった。腺腫性ポリープの再発は、ほとんど副作用なく、DFMO及びスリンダクの低経口用量での併用によって顕著に減少した。この試験の詳細については以下で議論され、またその全文が参照により本明細書に組み入れられるMeyskens et al., 2008中で議論されている。
【0085】
本試験は、267人の試験後の結腸鏡検査が終了した後に、Data Safety Monitoring Board(DSMB)により中止された(試験が効力エンドポイントに達したため)。DSMBは、全ての安全性及び効力エンドポイントをモニタリングした。実施例部分において詳細に議論したように、この試験は、複数の機関における第3相結腸腺腫予防試験からの患者のデータの解析を含む。その全文が参照により本明細書に組み入れられる、Meyskens et al., 2008をもまた参照のこと。
【0086】
A.ODC1遺伝子型分布
カリフォルニア大学アーバイン校でのCRC gene−environment studyから同定された、全440の結腸直腸癌(CRC)症例をケースのみの解析(case−only analysis)に用いた。フォローアップ期間の中間値は11年であった。270(61%)の結腸癌症例、162(37%)の直腸癌症例、及び8(2%)の位置が特定されなかったCRC症例があった。表1に結腸及び直腸癌の臨床病理学的データを示す。全CRC症例におけるODC +316遺伝子型分布は、53%がGG、41%がGA、及び7%がAAであった。CRC症例におけるODC +316遺伝子型分布は、家族歴の有無に関わらず同様であった。年齢(P=0.38)、性別(P=0.56)、家族歴(P=0.94)、結腸直腸中の部位(P=0.55)、病歴(P=0.46)又は腫瘍悪性度(P=0.73)によるODC遺伝子型分布の有意な差はなかった。診断での期によってもODC遺伝子型分布に有意な差はなかった:I期(49%GG、42%GA、8%AA)、II期(56%GG、38%GA、6%AA)、III期(51%GG、43%GA、6%AA)、IV期(59%GG、37%GA、4%AA)(P=0.87)。民族性によりODC遺伝子型分布が有意に異なることが明かであった:カフカス人(382例:53%GG、41%GA、6%AA、マイナー−Aアレル頻度=26%)、アフリカ系アメリカ人(7例:71%GG、29%GA、0%AA、マイナー−Aアレル頻度=15%)、ヒスパニック(21例:57%GG、43%GA、0%AA、マイナー−Aアレル頻度=21%)、及びアジア人(27例:33%GG、41%GA、26%AA、マイナー−Aアレル頻度=46%)(P=0.009)。しかしながら、各人種中でのODC遺伝子型分布はハーディ・ワインベルグ平衡を取った(カフカス人P=0.36、アフリカ系アメリカ人P=0.66、ヒスパニックP=0.21、アジア人P=0.35)。
【0087】
B.腺腫の再発
ODC1遺伝子型分布は、126 GG(55%)、87 GA(38%)、及び15 AA(7%)であった。表1に示したように、試験開始時の臨床的特徴は異なった。年齢、性別、人種、アスピリンの使用、治療、ODC1遺伝子型、及び治療を予測変数として用いた回帰モデルでは、治療は、腺腫再発、組織ポリアミン反応、及び中毒性難聴の差のみに関連する因子であった。偽薬患者での腺腫再発のパターンがGG−50%、GA−35%、AA−29%であるのに対し、エフロルニチン/スリンダク患者でのパターンがGG−11%、GA−14%、AA−57%であるように、ODC1遺伝子型及び腺腫再発の治療のフルモデル(P=0.021)においては、統計的に有意な相互作用が検出された。
【0088】
ODC1遺伝子型と、このモデルでの治療との間には統計的に有意な相互作用が認められた(P=0.038)。ODC1遺伝子型と、組織プトレッシン反応又はこのフル回帰モデル中での反応におけるスペルミジン:スペルミン比との間には有意な関連はなかった(データは示さない)。補正を行ったあとの、このフル回帰モデルにおける治療に関連した腺腫再発の相対リスク(RR)は0.39(95%CI 0.24〜0.66)であった。心血管又は胃腸での有害事象に関しては、治療とODC1遺伝子型群との間に有意な関連は見られなかった(表3及び表4)。
【0089】
アスピリンの投与により腺腫再発のリスクが低下したCRA患者が少なくとも1つのA−アレルを有していることを示した先の報告とは対照的に(Martinez et al.,2003;Barry et al.,2006;Hubner et al.,2008)、ここでは、エフロルニチンとスリンダクとの腺腫阻害剤効果がメジャーGのホモ対合ODC1遺伝子型を有する患者でより高いことが認められた。ODC1遺伝子型分布は先のアスピリンを使用した試験(Martinez et al.,2003;Barry et al.,2006;Hubner et al.,2008)と同様であり、これまでの報告(Martinez et al.,2003;Hubner et al.,2008)と一致して、A−アレルは偽薬群における、有意でないより低い腺腫再発のリスクと関連した。腺腫再発及び中毒性難聴発症発症リスクが上昇する可能性の点についてはA−アレル、特にAAホモ接合、保有者への効果はより少なく、これらの結果は、長期間のエフロルニチン及びスリンダクへの曝露に対する反応は、ODC1 A−アレル保有者とGG遺伝子型患者とでは異なることを示した。
【0090】
C.生存解析
440のCRC症例のうち、138人(31%)は解析時点では死亡していた。症例のうち、死亡した64人(46%)はGG遺伝子型を保有し、対して、死亡した74人(54%)がAA/AG遺伝子型であった。死亡した138人のCRC症例のうち、102人の死因が特定できた。CRC症例のうち85人(83%)はCRCが原因で死亡した。少なくとも1つのA−アレル(ODC GA/AA)の症例(10年生存率=76%;P=0.031)と比較すると、ODC G−アレルのホモ接合を有する全CRC症例において、統計的に有意なCRC特異的生存の改善が見られた(10年生存率=84%)。期ごとのCRC特異的生存の解析により、AJCCのI期(P=0.055)、II期(P=0.61)、又はIV期(P=0.65)CRCにおいては、生存の差に有意差がないことが明らかになった。しかしながら、III期CRC患者においては、ODC GG遺伝子型は、CRC特異的な10年生存率の改善と関連した:ODC GA/AA遺伝子型症例において75%対60%;P=0.024(図1)。結腸癌症例においては、ODCGG遺伝子型を有する場合にODCGA/AAである例と比較して、統計的に有意なCRC特異的な生存への有益性が認められた(10年生存率=87%対79%;P=0.029)。このことは直腸癌の症例には見られなかった(ODC GGの10年生存率=78%対ODC GA/AA例72%;P=0.42)。
【0091】
年齢(年)、性別、民族性、CRCの家族歴、診断時でのTNM病期、結腸中での腫瘍の位置、組織学的サブタイプ、外科的治療、放射線治療、及び化学療法を用いて補正した後の、全CRC症例におけるODC遺伝子型に基づくCRC特異的な生存予測値は以下の通りである:ODC GGハザード率(HR)=1.00(基準値)、ODC GA HR=1.73、及びODC AA遺伝子型HR=1.73(P−trend=0.0283)。結腸例のみにおいては、上述した臨床変数で補正後のCRC特異的生存解析は、ODC +316 SNPがCRC特異的生存の独立した予測変数であることを明らかにした。ODC GG結腸癌症例と比較した場合の、死亡のCRC特異的リスクは(HR)、ODC GA遺伝子型については2.31(1.15〜4.64)であり、ODC AA遺伝子型については3.73(0.93〜14.99)であった(P−trend=0.006)(表2)。これらの結腸癌症例の全生存解析は、CRC特異的生存解析と一致した(表2)。直腸癌症例において、上述した臨床変数で補正後のCRC特異的生存解析は、ODC +316 SNPがCRC特異的生存についての独立した予測変数ではないことを明らかにした。ODC GG直腸癌の例(HR=1.00、基準値)と比較した場合、死亡のCRC特異的リスク(HR)は、ODC GAヘテロ接合については1.72(0.83〜3.57)であり、ODC AAホモ接合については1.93(0.56〜6.67)であった(P−trend=0.12)。
【0092】
上述したように、ODC +316遺伝子型分布は民族性によって異なる。偶然でない限り、観察された死亡リスクはODC遺伝子型に基づく差を反映するようであるが、このリスクは特定の民族群に限定され得る。そのため、単一の民族グループ内における遺伝子型特異的死亡リスクを評価するために、多変量解析をカフカス人の結腸癌症例について行った。234人のカフカス人の結腸癌症例において、37人はCRCが原因で死亡した。多変量CRC特異的生存解析により、前述した明かな臨床変数を用いて補正した後には、カフカス人の結腸癌症例においてはODC +316 SNPがCRC特異的生存の独立した予測変数であることが明らかになった。ODC GG遺伝子型(HR=1.00、基準値)と比較した場合、死亡のCRC特異的リスク(HR)は、ODC GA遺伝子型については2.67(1.22〜5.82)であり、ODC AA遺伝子型については6.28(1.46〜26.95)であった(P−trend=0.0018)。
【0093】
CRC症例における遺伝子型特異的な生存の差は結腸癌症例に限られた:ODC GG遺伝子型症例(HR=1.00、基準値)と比較して、補正したCRC−SSハザード率(HR)は、ODC GA症例については2.31(1.15〜4.64)であり、ODC AA3.73(0.93〜14.99)症例については(P−trend=0.006)であった。結腸癌細胞では、2つのE−ボックスに隣接したODC +316 SNPは、ODCプロモーター活性を規定する。E−ボックスのアクチベーターであるc−MYC及びリプレッサーであるMAD1とMAD4は、培養細胞においては、メジャーGアレルよりもマイナーAアレルに優先的に結合する。
【0094】
結腸直腸癌症例を11年間フォローアップしたこの集団ベースの解析に基づき、+316 ODC SNPが結腸癌症例における結腸直腸癌特異的生存と関連することが観察された。それぞれの付加的なODC A−アレルを有する、すなわちODC GGからGA及びAA(P−trend=0.006)の結腸癌症例においては、年齢、性別、民族性、腫瘍の病期、CRCの家族歴、腫瘍の位置、組織学、外科的治療、放射線治療、及び化学療法を用いて補正した後、統計的に有意なCRC特異的死亡リスクが上昇した。
【0095】
D.アレル特異的な転写因子の制御
ここに示した実験データは、我々の臨床観察の根底にある可能性のある、生物学的な機序への洞察を提供する。結腸癌上皮細胞ではE−ボックス転写因子が、Gアレルを含むプロモーターよりもAアレルを含むプロモーターにより多く結合するという証拠に見られるように、ODC +316 SNPが機能的に有意であることが示されてきた。アクチベーターであるc−MYC及びリプレッサーであるMAD1の両方が、GアレルよりもAアレルを含むレポーターエレメントのプロモーター活性に対して高い効果を及ぼすことを示した。これらの結果は、E−ボックス転写因子による、ODCのアレル特異的な制御を示唆するものである。ODC転写に作用すると我々が考えるODCタンパク質の酵素活性は、ODC +316 SNP遺伝子型からは影響を受けないようである。
【0096】
結腸細胞では、正常な結腸粘膜で発現する遺伝子である野生型APCの条件付きの発現がc−MYCの発現を抑制し、MAD1の発現を上昇させることが示されてきた(Fultz 及び Gerner,2002)。さらに、+316 SNPに依存して、野生型APCがODCのプロモーター活性を制御することができることが報告されてきた(Martinez et al.,2003)。FAPには罹患していない対象の正常に見える結腸粘膜では野生型APCが発現するが、散発性結腸腺腫の大部分においては変異した又は欠損したAPCが発現するという証拠が示されている(Iwamoto et al.,2000)。MYCは、正常な腸粘膜においては低いレベルで発現するが、そのレベルはAPCMin/+マウスの腸腺腫では上昇する。腸上皮におけるMYCの発現の条件付きノックアウトは、APCMin/+マウスの腸腫瘍形成を抑制する(Ignatenko et al.,2006)。上述したように、我々のグループ(Martinez et al.,2003)及びその他のグループ(Hubner etal.,2008)によるこれまでの研究は、予防試験における結腸ポリープ再発に対するODCA−アレルの、特にアスピリン使用者においての、保護的な役割を示した。しかしながら、ここに示した集団ベースの研究では、ODCA−アレルは低い生存と関連した。この明かな矛盾は、E−ボックスのアクチベーター及びリプレッサーの両方がODC A−アレルに選択的に結合するという、本明細書に示す結果によって説明され得る。本発明者らは、E−ボックスのリプレッサーを発現する正常な上皮から新生上皮への移行が、ODCA−アレルを有する対象においては遅延され得ると推測する。この効果がポリアミン合成の抑制をもたらし得る。しかしながら、形質転換した上皮がE−ボックス アクチベーター(c−MYCのような)を発現し始めた場合、その後の癌の進行は、ODCA遺伝子型を有する対象において生じやすいようである。結腸癌特異的死亡リスクに関する我々の結果は、その他の結果で示されている、特定の対象においては遺伝子環境相互作用の結果、ODC A−アレルが前立腺癌のリスクと関連し得る、という結果と一致する(O’Brien et al.,2004;Visvanathan et al.,2004)。そのような結腸癌の進行は、前立腺癌について示されてきたように(Simoneau et al.,2008)、ポリアミン合成が高められた結果であると考えられる。
【0097】
ODC SNPのような因子が、癌発症の促進及び阻害両方の効果を有し得るというこの発見は特異なものではない。例えば、形質転換増殖因子−ベータ(TGF−登録商標)は、癌の発症及び癌の進行において、種々の役割を有する(Derynck et al.,2001;Pardali and Moustakas,2007;Roberts and Wakefield,2003)。形質転換されていない細胞中のTGF(登録商標)は、細胞の増殖を阻害し、そしてアポトーシスを引き起こす。さらにこれはヒトの全腫瘍中で過剰発現し、癌のゆっくりとした進行、特に腫瘍の浸潤及び転移と関連する。ヒト結腸直腸腫瘍におけるODC活性について報告している1つの研究では、ODCの高い発現レベルが生存の改善と有意に関連があることが示された(Matsubara et al.,1995)。このことは、ODCの過剰発現はヒトの結腸直腸腺腫の形成を促進するが、確立された病変においてはODCの過剰発現が、増殖の増強を誘導することが可能であり、そして抗増殖治療に対する反応の改善と関連することを示唆するものである。しかしながら、その研究はODC遺伝子型による層別化を含まないため、これらの効果がODC遺伝子型から独立したものであるかについては分かっていない。
【0098】
観察されたODC +316 SNPとCRC特異的死亡との関連は、結腸癌症例に限定された。結腸癌症例中では、カフカス人に対して特に強い効果が観察された。その他の報告と同様に、ODC +316 SNPのアレル頻度は民族性によりかなり異なる(O’Brien et al.,2004)。本発明者らが、生存解析をカフカス人のみに限定した場合(すなわち、そのような解析に対して適切な、単一の民族群について解析した場合)、ODC +316 SNPの関連は有意であり、推定値は、全コホートについて観察された推定値よりもかなり高いかった。
【0099】
疫学的研究は、併発条件の欠如、一般状態、及び用いられた特定の化学療法を含む、その他の集団ベース解析と同様の制限を有する。加えて、UC Irvine Gene−Environment Study of Familial Colorectal Cancerの参加者から得られた組織生検試料がパラフィンに包埋された試料であるため、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いた組織ポリアミンの量の正確な評価に用いることができない。また、CRC診断の診断から研究への登録までに平均して16ヶ月の遅れがあったため、CRC生存者の比較的健康な群に有利な選択バイアスがかかる可能性がある。本研究では評価しなかったポリアミン代謝に作用を及ぼすその他の因子が、我々の観察を説明する可能性がある。例えば、アスピリンは、ポリアミンのアセチル化及び輸送を活性化し、ODC A−アレルと共に細胞及び組織でのポリアミン含量の低下に機能する(Gerner et al.,2004;Martinez et al.,2003;Babbar et al.,2006)。
【0100】
要約すると、発明者らは、結腸癌症例中のCRC特異的死亡における、ODC +316 SNPの臨床結果を観察した。加えて発明者らは、ヒト結腸癌細胞中のこの遺伝子の、c−MYC−及びMAD1依存性転写におけるODC +316 SNPの機能的意義をさらに確立した。これらの実験及び疫学的な発見は合わせて、これまでに報告された結腸腺腫の進行における役割とは異なる、結腸癌の進行におけるODC +316 SNPの役割を示唆するものである。これらの発見は、結腸癌進行のリスクを評価するために用いることができ、患者特異的薬理遺伝学的管理の指導、疾病監視、並びに二次的及び三次的な結腸癌予防に対する新規の標的方法の告知に用いることができる。
【0101】
E.まとめ
偽薬 患者における腺腫再発のパターンがGG−50%、GA−35%、AA−29%であったのに対してエフロルニチン/スリンダク患者ではGG−11%、GA−14%、AA−57%であったように、腺腫再発のフルモデルにおいては、ODC1遺伝子型と治療との間に統計的に有意な相互作用が検出された(P=0.021)。ここでは、CRA患者のうち、アスピリンの投与を受けて腺腫再発のリスクが低下した患者は少なくとも1つのA−アレルを有するというこれまでの報告とは対照的に(Martinez et al.,2003;Barry et al.,2006;Hubner et al.,2008)、エフロルニチン及びスリンダクの腺腫阻害効果は、メジャーGホモ接合ODC1遺伝子型を有する対象においてより高かった。これらの結果は、GG遺伝子型患者とは異なり、長期間のエフロルニチン及びスリンダクの曝露に対するODC1 A−アレル保有者の反応は種々であり、A−アレル保有者、特にAA ホモ接合の対象は、腺腫再発、及び中毒性難聴発生のリスクが上昇する可能性があるという点では、薬の効果を受けにくいことを示すものである。
【0102】
VIII.多型 解析
患者のODC1プロモーター遺伝子の、+316の位置における遺伝子型は、実施例部分に記載した特定の方法を含む、以下に示した方法を用いて決定することができる。これらの方法をさらに、当業者によって適用されるように、分子生物学の原理及び技術を用いて、変更及び最適化することができる。そのような原理及び技術は、例えば、参照することにより本明細書に組み入れられる、Small et al.,(2002)で教示される。一塩基多型(SNP)を同定するために用いられる一般的な方法を以下に示す。Kwok and Chen(2003)及びKwok(2001)による参考文献において、これらの方法のうちのいくつかについての概観が示されており、この両方は特に参照することにより本明細書に組み入れられる。
【0103】
ODC1上のSNPを、任意のこれらの方法又はその好適な変更型の使用にによって特徴付けることができる。そのような方法には、部位の直接的な若しくは間接的なシークエンシング、部位の各アレルが制限酵素部位を作出若しくは壊す場合の制限酵素の使用、アレル特異的ハイブリダイゼーションプローブの使用、多型の異なるアレルによってコードされるタンパク質に特異的な抗体の使用、又は任意のその他の生化学的解釈が挙げられる。
【0104】
A.DNA シークエンシング
多型の解析に一般的に用いられる方法は、多型に隣接した及び多型を含む遺伝子座のダイレクトDNAシークエンシングである。そのような解析は、「サンガー法」(Sanger et al.,1975)としても知られる「ダイデオキシ介在性連鎖停止法」、又は「マクサム・ギルバート法」(Maxam et al.,1977)としても知られる「化学的分解法」により行うことができる。目的の遺伝子の回収を促進するためには、ポリメラーゼ連鎖反応のような、ゲノム配列特異的増幅と組み合わせたシークエンシングを用いてもよい(Mullis et al.,1986;欧州特許出願第50,424号;欧州特許出願第84,796号、欧州特許出願第258,017号、欧州特許出願第237,362号;欧州特許出願第201,184号;米国特許第4,683,202号;同第4,582,788号;及び同第4,683,194号)、上記全ては参照することにより本明細書に組み入れられる。
【0105】
B.エキソヌクレアーゼ抵抗性
多型部位に存在するヌクレオチドの同一性を決定するために用いることができるその他の方法には、特殊なエキソヌクレアーゼ抵抗性ヌクレオチド誘導体の使用がある(米国特許第4,656,127号)。研究においては、多型部位のすぐ3’側の対立配列に相補的なプライマーがDNAにハイブリダイズする。DNA上の多型部位が、存在する特定のエキソヌクレオチド抵抗性ヌクレオチド誘導体に相補的なヌクレオチドを含む場合、ポリメラーゼにより誘導体がその後ハイブリダイズしたプライマーの末端に組み入れられる。そのような組み込みによって、プライマーはエキソヌクレアーゼによる開裂に対して抵抗性になり、そしてプライマーを検出できるようになる。エキソヌクレオチド抵抗性ヌクレオチド誘導体の同一性が既知であるため、DNAの多型部位中に存在する特定のヌクレオチドを決定することができる。
【0106】
C.マイクロシークエンシング法
DNA中の多型部位を評価するための、その他の複数のプライマーを用いた組み込み技術についてが記載されてきた(Komher et al.,1989;Sokolov,1990;Syvanen 1990;Kuppuswamy et al.,1991;Prezant et al.,1992;Ugozzoll et al.,1992;Nyren et al.,1993)。これらの方法は、多型部位中の塩基を識別するために、標識したデオキシヌクレオチドを組み込むことに基づいている。シグナルは組み込まれたデオキシヌクレオチドの数に比例するため、同じヌクレオチドの解析中に生じる多型は、解析の長さに比例するシグナルを生じる(Syvanen et al.,1990)。
【0107】
D.溶液中での伸長
仏国特許第2,650,840号明細書及び国際公開第91/02087号では、多型部位でのヌクレオチドの単一性の決定するための、溶液ベースの方法が議論されている。これらの方法では、多型部位のすぐ3’側の対立配列に相補的なプライマーが使用される。その部位のヌクレオチドの単一性は、プライマーが多型部位のヌクレオチドに相補的な場合にプライマーの末端に組み込まれる標識されたダイデオキシヌクレオチド誘導体を用いて決定される。
【0108】
E.ジェネティックビット(Genetic Bit)解析又は固相での伸長
国際公開第92/15712号では、多型部位の3’配列に相補的な、標識されたターミネーター及びプライマー混合物を使用した方法が記載されている。標識されたターミネーターが組み込まれるとき、そのターミネーターは評価する標的分子の多型部位に存在するヌクレオチドに相補的であり、そのため同定することができる。この場合、プライマー又は標的分子は固相上に固定化される。
【0109】
F.オリゴヌクレオチドライゲーションアッセイ(OLA)
これは、異なる方法論を用いた、別の固相での方法である(Landegren et al.,1988)。標的DNAの1本の鎖に隣接した配列にハイブリダイズすることができる、2本のオリゴヌクレオチドを使用する。これらオリゴヌクレオチドのうちの1本をビオチン化し、もう1本は検出できるように標識する。標的分子中に正確に相補的な配列がある場合、オリゴヌクレオチドが隣接した末端に、ライゲーション基質を作出するようにハイブリダイズする。ライゲーションにより、アビジンを用いた標識オリゴヌクレオチドの検出が可能になる。この方法に基づいたPCRとの組み合わせによる、その他の核酸検出アッセイについてもまた記載がある(Nickerson et al.,1990)。この方法では、PCRは標的DNAの指数関数型増幅を達成するために用いられ、その後標的DNAがOLAを用いて検出される。
【0110】
G.リガーゼ/ポリメラーゼ介在性ジェネティックビット(Genetic Bi)解析
米国特許第5,952,174号では、標的分子に隣接した配列にハイブリダイズすることができる2本のプライマーを含む方法がまた記載されている。ハイブリダイゼーション産物は、標的が固定化された固相支持体上に形成される。この方法では、単一ヌクレオチドの間隔で、プライマー同士が分離されるようにハイブリダイゼーションが起こる。ポリメラーゼ存在下においてこのハイブリダイゼーション産物をインキュベートすると、リガーゼと少なくとも1つのデオキシヌクレオシド三リン酸を含むヌクレオシド三リン酸との混合物が、ハイブリダイズしたオリゴヌクレオチドに隣接した任意の対と結合することができる。リガーゼを添加することにより、シグナル、伸長及びライゲーションに必要な2つの反応を生じる。この方法は、伸長又はライゲーションいずれかを単独で用いた方法よりも高い特異性及び低い「ノイズ」を提供し、またポリメラーゼを用いたアッセイとは異なり、固相に結合されるシグナルに対する二回目のハイブリダイゼーション及びライゲーション工程を組み合わせることにより、この方法はポリメラーゼ 工程の特異性を高める。
【0111】
H.侵襲的開裂反応(Invasive cleavage reaction)
侵襲的開裂反応は、特定の多型について、細胞DNAを評価するために用いることができる。INVADER(登録商標)と呼ばれる技術がそのような反応を利用している(例えば、de Arruda et al.,2002;Stevens et al.,2003,参照することにより組み入れられる)。通常、1)標的部位の上流のオリゴヌクレオチド(「上流オリゴ」)、2)標的部位をカバーするプローブであるオリゴヌクレオチド(「プローブ」)、及び、3)標的部位を含む一本鎖DNA(「標的」)、の3種類の核酸分子を用いる。上流オリゴ及びプローブは、重複しないが連続した配列を含む。プローブは、フルオレセインのようなドナーフルオロフォア、及びDabcylのようなアクセプター色素を含む。上流オリゴの3’末端にあるヌクレオチドは、プローブ−標的複合体の最初の塩基と重複(「侵襲」)する。その後プローブは、フルオロフォア/クエンチャー対の分離を生じる構造−特異的5’ヌクレアーゼにより開裂され、これにより検出される蛍光の量が増加する。Lu et al.,2004を参照のこと。
【0112】
いくつかの例においては、アッセイは固相表面上又はアレイ形態において実施される。
【0113】
I.SNPを検出するためのその他の方法
多型を同定及び検出するための複数のその他特定の方法を以下に示し、これらの方法は本発明のODC1遺伝子の多型の同定に関してそれ自体又は好適な変更を伴って用いることができる。複数のその他の方法はまた、ワールドワイドウェブのNCBIのSNPウェブサイト、ncbi.nlm.nih.gov/SNPにも記載されており、このサイトは参照することにより本明細書に組み入れられる。
【0114】
特定の実施形態においては、どのSNPが余剰であり、どのSNPが関連する研究に必須であるかを正確に同定することを可能にする、集団における任意の指定された遺伝子座における拡散したハプロタイプを決定することもできる。関連する研究に必須なSNPは「ハプロタイプ タグSNP(htSNP)」と呼ばれ、遺伝子又は連鎖不均衡な領域のハプロタイプを捕らえることができるマーカーである。方法の例としては、それぞれが参照することにより本明細書に組み入れられる、Johnson et al.(2001)及びKe及びCardon(2003)を参照のこと。
【0115】
VDA−アッセイは、TaKaRa LA Taq試薬及びその他の標準的な反応条件を用いたlong PCR法による、ゲノムセグメントのPCRによる増幅を利用する。long増幅では、約2,000〜12,000bpの大きさのDNAを増幅することができる。産物のvariant detector array(VDA)へのハイブリダイゼーションは、Affymetrix High Throughput Screening Centerにより行い、そしてコンピュータ化されたソフトウェアを用いて解析することができる。
【0116】
チップアッセイと呼ばれる方法は、標準的な又はlong PCRプロトコールによる、ゲノムセグメントのPCR増幅を利用する。ハイブリダイゼーション産物はVDAにより解析される(参照することにより本明細書に組み入れられる、Halushka et al.(1999))。SNPは通常、ハイブリダイゼーションパターンのコンピュータ解析に基づいて「確実な(certain)」又は「可能性が高い(Likely)」に分類される。ヌクレオチドシークエンシングのような別の検出方法との比較により、「確実な」SNPの100%が確認され、この方法では73%の「可能性が高い」SNPが確認された。
【0117】
その他の方法は単に、PCRでの増幅と、続く関連する制限酵素による消化を含む。さらにその他の方法は、既知のゲノム領域由来の、精製したRCR産物のシークエンシングを含む。
【0118】
さらなる別の方法においては、個々のエキソン又は大きなエキソンの重複している断片がPCRによって増幅される。プライマーは報告されている又はデータベース上の配列に基づいて設計され、ゲノムDNAのPCR増幅は以下の条件により行われる:鋳型DNA 200ng、プライマーそれぞれ0.5μM、dCTP、dATP、dTTP及びdGTPそれぞれ80[M、5% ホルムアミド、1.5mM MgCl2、Taq ポリメラーゼ0.5 U、並びにTaq緩衝液0.1 容量。サーマルサイクラーによる増幅を行い、得られたPCR産物を様々な条件下で、例えば15%の尿素を含む5又は10% ポリアクリルアミドゲルを用い、5% グリセロールを含む又は含まない条件で、一本差高次構造多型(PCR−single strand conformation polymorphism、PCR−SSCP)解析により解析する。電気泳動は一晩かけて行われる。移動度のシフトを示すPCR産物を再度増幅し、そしてヌクレオチドの変異を同定するためにシークエンシングする。
【0119】
CGAP−GAI (DEMIGLACE)と呼ばれる方法では、配列データ及びアライメントデータ(PHRAP.aceファイルから)、配列ベースコールの品質スコア(PHRED品質ファイルから)、距離情報(PHYLIP dnadist及びneighbourプログラムから)並びにベースコールデータ(PHRED「−d」switchから)をメモリにロードする。配列をアライメントし、得られたアセンブリーの一致しない部分についての縦方向のひとまとまり(「スライス(slice)」)を解析する。任意のそのようなスライスが候補SNPだと考えられる(DEMIGLACE)。真に多型を示しているのではないと考えられるスライスを除去するために、DEMIGLACEでは、数多くのフィルターが用いられる。これらのフィルターには、(i)neighboring配列品質スコアが40%以上低下する場合に、示されたスライス中のいずれの配列をもSNPとしての検討からは除外するフィルター;(ii)ピークの大きさが、そのヌクレオチド型についての全ベースコール中の15パーセンタイルよりも低い場合に、そのコールを除外するフィルター;(iii)一致を含む多数の不一致を有する領域をSNPの計算に含めないようにするフィルター;(iv)コールされたピーク中に、25%以上の面積を占める別のコールが存在するベースコールを、検討から除去するフィルター;(v)1方向からの読みのみにおいて生じた変異を除去するフィルター、が含まれる。PHRED品質スコアは、スライス中の各ヌクレオチドについての誤識別率値に変換された。ある特定の位置にヌクレオチド不均一性の証拠があるという事後確率を計算するためには、標準的なベイズ法が用いられる。
【0120】
CU−RDF(RESEQ)と呼ばれる方法では、それぞれのSNPに特異的プライマーを用いて、血液から単離されたDNAからPCR増幅を行い、一般的な精製プロトコールにより用いられなかったプライマー及び遊離ヌクレオチドを除去した後に、同じプライマーまたはネスティッドプライマーを用いて、ダイレクトシークエンシングを行う。
【0121】
DEBNICK(METHOD−B)と呼ばれる方法では、クラスター化したEST配列の比較分析を行い、蛍光を用いたDNA配列決定によって確認しる。DEBNICK(METHOD−C)と呼ばれる関連方法では、クラスター化したEST配列の比較分析(ミスマッチ部位でのphred品質が>20、SNPの5’側及び3’側の5塩基にわたって平均phred品質が>=20、SNPの5’側及び3’側の5塩基でミスマッチなし、それぞれのアレルが少なくとも2回出現する)を行い、トレースを調べることによって確認する。
【0122】
ERO(RESEQ)として認識される方法では、電子的に公表されたSTSに対して新しいプライマーセットを設計し、10種類のマウス系統からDNAを増幅するために用いる。次いで、それぞれの系統からの増幅産物をゲル精製し、33P標識ターミネーターを用いた標準的なジデオキシサイクルシークエンシング法を用いて配列を決定する。次いで、全てのddATP反応終結物を、シークエンシングゲルの隣接するレーンにロードし、その後、全てのddGTP反応物をロードする(以下同様)。放射線像を視覚的に走査することにより、SNPを同定する。
【0123】
ERO(RESEQ−HT)として認識される別の方法では、電子的に公表されたマウスDNA配列に対して新しいプライマーセットを設計し、10種類のマウス系統からDNAを増幅するために用いる。それぞれの系統からの増幅産物を、エキソヌクレアーゼI及びエビアルカリホスファターゼによる処理によってシークエンシング用に調製する。シークエンシングはABI Prism Big Dye Terminator Ready Reaction Kit(Perkin−Elmer)を用いて行い、そして配列試料を3700 DNA Analyzer (96キャピラリーシーケンサー)にかける。
【0124】
FGU−CBT(SCA2−SNP)は、SNP含有領域をプライマーSCA2−FP3及びSCA2−RP3を用いてPCR増幅する方法である。最終濃度にして5mM Tris、25mM KCl、0.75mM MgCl2、0.05% ゼラチン、20pmolの各プライマー、及び0.5UのTaqDNAポリメラーゼを含む50ml反応液中で、約100ngのゲノムDNAを増幅する。試料を変性、アニール、伸長させ、そしてPCR産物をアガロースゲルから切り出したバンドから(例えば、QIAquickゲル抽出キット(Qiagen)を用いて)精製し、ダイターミネーター法を用いてABI Prism 377自動DNAシーケンサーとPCRプライマーを使用してシークエンシングする。
【0125】
JBLACK(SEQ/RESTRICT)として識別される方法では、ゲノムDNAを用いて2つの独立したPCR反応を行う。第1の反応からの産物をシークエンシングにより解析し、唯一のFspI制限部位を明かにする。第2のPCR反応産物中の変異を、FspIで消化することにより確認する。
【0126】
KWOK(1)により記載された方法では、PCR産物を、ダイターミネーター化学を用いたダイレクトDNAシークエンシングすることにより、無作為に選択された4人の対象からの高品質なゲノム配列データを比較することによって、SNPを同定する(Kwok et al.,1996を参照のこと)。KWOK(2)として識別される関連方法では、重複するラージインサートクローン(例えば、細菌人工染色体(BAC)又はP1人工染色体(PAC))からの高品質ゲノム配列データを比較することにより、SNPを同定する。次いで、このSNPを含むSTSが開発し、様々な集団におけるSNPの存在を、プールされたDNAのシークエンシングにより確認する(Taillon−Miller et al.,1998参照のこと)。KWOK(3)と呼ばれる別の類似する方法では、重複するラージインサートクローン(BAC又はPAC)からの高品質ゲノム配列データを比較することにより、SNPを同定する。このアプローチによって発見されたSNPは、2つのドナー染色体間のDNA配列変異に相当するが、一般集団におけるアレル頻度はまだ決定されていない。KWOK(5)の方法では、ホモ接合性DNA試料及び1つ以上のプールされたDNA試料からの高品質ゲノム配列データを、ダイターミネーター化学を用いたPCR産物のダイレクトDNAシークエンシングを用いて比較することによってSNPを同定する。使用されるSTSは、公的に入手可能なデータベースで見られる配列データを用いて開発する。具体的には、全ての遺伝子座でホモ接合性であることが分かっている全胞状奇胎(complete hydatidiform mole:CHM)及び80人のCEPH親からのDNA試料プールをPCRすることにより、これらのSTSを増幅する(Kwok et al.,1994を参照のこと)。
【0127】
別のこのような方法であるKWOK(Overlap Snp Detection With Poly Bayes)では、ラージインサートヒトゲノムクローン配列の重複領域の自動コンピュータ解析により、SNPを発見する。データ取得のために、クローン配列を大規模シークエンシングセンターから直接入手する。これは、ベースクオリティ(base quality)配列が存在しない/GenBankを介して入手できないために必要である。生データ処理は、一貫性のため、クローン配列及び付随するベースクオリティ情報の分析を伴う。関連するベースクオリティ配列のない、完成した(「ベースパーフェクト(base perfect)」、誤識別率1/10,000bp未満)配列には、一定のベースクオリティ値40(1/10,000bpの誤識別率)を割り当てる。ベースクオリティ値のないドラフト配列は拒否される。処理した配列をローカルデータベースに入力する。マスキングした既知のヒト反復を含む、各配列のバージョンも格納する。リピートマスキング(repeat masking)はプログラム「MASKERAID」を用いて行う。重複検出:推定重複はプログラム「WUBLAST」を用いて検出する。その後に、偽の重複検出結果(すなわち、真の重複と相対するものとして、配列重複のために生じる一対のクローン配列間の類似性)を除去するために、いくつかのフィルタリング工程を行う。重複の全長、全パーセント類似性、高いベースクオリティ値「高品質ミスマッチ」を有するヌクレオチド間の配列差異の数。結果をまた、Washington University Genome Sequencing Centerのゲノムクローン制限断片地図の結果、完成者の重複に関する報告、及びNCBIの配列コンティグ構築の取り組みの結果とも比較する。SNP検出:重複するクローン配列対は、「POLYBAYES」SNP検出ソフトウェアを用いて、候補SNP部位について分析する。配列対間の配列差異は、配列決定の誤りと相対するものとして、真の配列変異を表す確率についてスコア付けする。この処理には、両配列のベースクオリティ値が存在することが必要である。ハイスコア候補を抽出する。この検索は置換型一塩基対変異に限定される。候補SNPの信頼スコア(confidence score)はPOLYBAYESソフトウェアを用いて計算する。
【0128】
KWOK(TaqManアッセイ)として識別される方法では、90人の無作為対象の遺伝子型を決定するために、TaqManアッセイを用いる。KYUGEN(Q1)として識別される方法では、指定された集団のDNA試料をプールし、PLACE−SSCPによって解析する。DNAプールを対象とした解析における各対立遺伝子のピークの高さを、ヘテロ接合体における各アレルのピークの高さによって補正し、その後、アレル頻度の計算に用いる。この方法により、10%を超えるアレル頻度が確実に定量される。アレル頻度=0(ゼロ)は、そのアレルが個体間で見られたが、対応するピークがプール解析においては見られなかったことを意味する。アレル頻度=0〜0.1は、マイナーアレルがプールにおいて検出されるが、ピークが小さすぎて確実に定量できないことを示す。
【0129】
KYUGEN(方法1)として認識されるさらに別の方法では、PCR産物を蛍光色素で後標識し、SSCP条件(PLACE−SSCP)の下、自動キャピラリー電気泳動装置を用いて分析する。一連の実験においては、2種類のプールされたDNA(日本人プール及びCEPH親プール)を使用して、又は使用せずに、4種類以上の個々のDNAを分析する。アレルを目視検査によって同定する。異なる遺伝子型を有する個々のDNAをシークエンシングし、SNPを同定する。ヘテロ接合体におけるピークの高さを用いてシグナルバイアスを補正した後、プールした試料のピークの高さからアレル頻度を概算する。PCRプライマーには、両鎖を後標識するために末端に5’−ATT又は5’−GTTを有するようにタグがつけられている。緩衝液(10mM Tris−HCl、pH8.3又は9.3、50mM KCl、2.0mM MgCl2)、0.25μMの各プライマー、200μMの各dNTP、及び0.025単位/μlのTaq DNAポリメラーゼ(抗Taq抗体と予め混合されている))を含む反応混合液中で、DNA試料(10ng/μl)を増幅する。DNAポリメラーゼIのクレノウ断片の交換反応により、PCR産物の2本の鎖を別々に、R110及びR6Gで修飾されたヌクレオチドで標識する。この反応をEDTAの添加によって停止し、取り込まれなかったヌクレオチドは仔ウシ腸アルカリホスファターゼを添加することにより脱リン酸化する。SSCPの場合、蛍光標識PCR産物及びTAMRA標識内部マーカーの一部分が脱イオン化ホルムアミドに添加され、変性される。ABI Prism 310 Genetic Analyzerを用いて、電気泳動をキャピラリー内で行う。データ収集及びデータ処理のためにGenescanソフトウェア(P−E Biosystems)を用いる。SSCPにおいて異なる遺伝子型を示したものを含む対象(2〜11人)のDNAを、ABI Prism 310シーケンサーを用いた、ビックダイターミネーター化学によるダイレクトシークエンシングにかける。ABI Prism 310から得られた複数の配列トレースファイルをPhred/Phrapによって処理及び整列し、Consedビューアを用いて閲覧する。SNPをPolyPhredソフトウェア及び目視検査によって同定する。
【0130】
KYUGEN(方法2)として識別されるさらに別の方法では、変性HPLC(denaturing HPLC)(DHPLC)又はPLACE−SSCP(Inazuka et al.,1997)によって、異なる遺伝子型を有する個体を調査し、SNPを同定するために、これらの配列を決定する。PCRは、両鎖の後標識のために末端に5’−ATT又は5’−GTTのタグが付けられたプライマーを用いて行う。DHPLC分析は、WAVE DNA断片改正装置(Transgenomic)を用いて行う。PCR産物をDNASepカラムに注入し、WAVE Makerプログラム(Transgenomic)を用いて決められた条件下で分離する。DNAポリメラーゼIクレノウ断片の交換反応により、PCR産物の2本の鎖を別々に、R110及びR6Gで修飾されたヌクレオチドで標識する。この反応をEDTAの添加によって停止させ、取り込まれなかったヌクレオチドは仔ウシ腸アルカリホスファターゼを添加することによって脱リン酸化する。電気泳動の後、SSCPをABI Prism 310 Genetic Analyzerを用いてキャピラリー内で行う。Genescanソフトウェア(P−E Biosystems)。個体(DHPLC又はSSCPにおいて異なる遺伝子型を示した個体を含む)のDNAを、ABI Prism 310シーケンサーを用いた、ビックダイターミネーター化学によるダイレクトシークエンシングかける。ABI Prism 310から得られた複数の配列トレースファイルをPhred/Phrapにより処理及び整列し、Consedビューアを用いて閲覧する。SNPをPolyPhredソフトウェア及び目視検査によって同定する。UnigeneにおけるEST配列のトレースクロマトグラムデータをPHREDを用いて処理する。SNPの可能性がある塩基を同定するために、PHRAP、BRO、及びPOAプログラムによって作成された、各Unigeneクラスターについての多重配列アラインメントから、一塩基ミスマッチが報告される。BROは、可能性のある、誤って報告されたEST方向を修正したのに対して、POAは、偽のSNPを生じることがある遺伝子の混合/キメラを示す非直線アラインメント構造を同定及び解析した。生クロマトグラムの高さ、鋭さ、重複、及び間隔;配列決定の誤り率;文脈依存性(context−sensitivity);cDNAライブラリーの由来などのデータを評価しながら、配列決定の誤り、ミスアラインメント、又はあいまい性(ambiguity)、ミスクラスタリング又はキメラEST配列と比べて、真の多型の証拠を評価するためには、ベイズ推論を用いる。
【0131】
IX.医薬製剤及び投与経路
本開示の治療用化合物は、例えば、経口又は注入(例えば皮下、静脈内、腹腔内など)による、様々な方法によって投与することができる。活性化合物を不活性化し得る酸及びその他の天然の条件の作用から化合物を保護するために、投与経路に依存して、活性化合物を材料中に被覆加工してもよい。疾患又は損傷部位に、それらをまた持続的な潅流/注入によって投与してもよい。
【0132】
治療用化合物を非経口投与以外の方法で投与するには、治療用化合物をその不活化から保護する化合物で被覆すること、又は不活化から保護する化合物と共に投与することが必要な場合がある。例えば、治療用化合物を、リポソーム、又は希釈剤のような適切な担体中において患者に投与することができる。薬学上許容可能な希釈剤としては、生理的食塩水及び水溶性緩衝液が挙げられる。リポソームには、水中油中水型CGF乳剤並びに標準的なリポソームが含まれる(Strejan et al.,1984)。
【0133】
治療用化合物を、非経口的、腹膜内、髄腔内、又は大脳内に投与してもよい。グリセロール、液体ポリエチレングリコール、及びその混合物並びに油中に分散剤を調製することができる。一般的な保管及び使用条件下では、これらの調整物に微生物の成長を防ぐための保存料を加えても良い。
【0134】
注入での使用に好適な医薬組成物は、無菌の水溶性溶液(水溶性の場合)又は分散剤、及び無菌的で注入可能な溶液又は分散剤を即時調製するための無菌的な粉末を含む。いずれの場合にも、組成物は無菌的でなくてはならず、かつ、容易にシリンジを用いて注入できる(syringability)程度の流動性を有していなければならない。組成物は製造及び保管条件下では安定でなければならず、かつ細菌及び真菌のような微生物の汚染作用に対して保護されていなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、多価アルコール(グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコールなどのような)、好適なその混合物、及び植物油を含む、溶媒又は分散剤、であってもよい。適当な流動性を、例えば、レシチンのような包被剤の使用、分散剤の場合には必要とされる粒子サイズの維持、及び界面活性剤の使用により、維持することができる。微生物による作用の予防は、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどの様々な抗細菌及び抗菌薬によって達成することができる。多くの場合、組成物中に、例えば、糖、塩化ナトリウム、又は、マンニトール及びソルビトールのような多価アルコールなどの等張剤を加えることが好ましい。組成物に、例えばモノステアリン酸アルミニウム又はゼラチンのような、吸収を遅らせる薬剤を加えることによって、注入可能な組成物を持続的に吸収させることができる。
【0135】
無菌的な注入可能溶液は、治療用化合物と上に列挙した成分の1つ又は組み合わせとを、必要な量の適切な溶媒に組み入れること、そして必要な場合にはその後滅菌することにより、調製することができる。通常、分散剤は、基本的な分散媒及び上に列挙したもののうちの必要とされるその他の成分とを含む無菌的な担体中に、治療用化合物を組み入れることにより調製される。無菌的な注入可能溶液調製用の、無菌的な粉末剤を調製する場合に好ましい方法は、活性成分(すなわち、治療用化合物)と任意の付加的に所望される成分(予めフィルターを通して滅菌したその溶液から)との粉末を得るために、真空乾燥及び凍結乾燥することである。
【0136】
治療用化合物を、例えば、不活性な希釈剤又は吸収可能で食用の担体と共に、経口的に投与することができる。治療用化合物及びその他の成分を、外側が堅い又は軟らかいゼラチンのカプセル中に封入しても、錠剤に打錠しても、又は対象の食事に直接組み入れてもよい。経口での治療用投与のために、治療用化合物を賦形剤と共に組み入れてもよく、そして摂取可能な錠剤、口腔錠剤、トローチ、カプセル、エリキシール、懸濁液、シロップ、ウェハースなどの剤型において使用してもよい。当然のことながら、組成物及び調整物中の治療用化合物のパーセンテージは多様になりうる。そのような治療に有用な組成物中の治療用化合物の量は、得られるだろう好適な用量である。
【0137】
投与を容易にするため及び用量を均一にするために、非経口用組成物を、用量単位形態で処方することは特に有効である。本明細書で使用する場合、用量単位形態とは、治療する対象への単一用量の投与に適した、物理的に個別の単位を指し、各単位は、必要とされる医薬担体と共に、所望される治療効果を生じるように予め計算された量の治療用化合物を含む。本発明における容量単位形態についての詳述は、(a)治療用化合物の独特な特徴及び達成される特定の治療効果、並びに(b)選択された条件下での患者の治療における、そのような治療用化合物の配合に関しての当該分野において内在する制限、により規定され、かつそれらに直接的に依存する。
【0138】
治療用化合物を局所的に、皮膚、目、又は粘膜に、投与してもよい。あるいは、肺への局所的送達が所望される場合には、治療用化合物を乾燥粉末又はエアロゾル製剤の形態において吸入によって投与してもよい。
【0139】
活性化合物は、患者における条件と関連する条件を治療するのに効果的な治療上効果量の用量において、投与される。例えば、化合物の効力を、ヒト疾患の治療における効力の予測となりうる、動物モデル系(実施例及び図表において示したようなモデル系)において評価することができる。
【0140】
対象に投与される、本開示の化合物又は本開示の化合物を含む組成物の実際の用量は、年齢、性別、体重、症状の重篤度、治療する疾患の型、これまでの又は同時の治療介入、対象の特発性疾患及び投与経路のような物理的及び生理学的な因子により決定され得る。これらの因子は、熟練した技術者により決定され得る。一般的には、投与に関する施術者が、個々の対象における組成物中の活性成分の濃度、及び適切な用量を決定するだろう。いずれかの合併症が生じた場合、各医師は用量を調節してもよい。
【0141】
典型的には、1日1回以上の又は数日に渡る投与用量での効果量は、約0.001mg/kg〜約1000mg/kg、約0.01mg/kg〜約750mg/kg、約100mg/kg〜約500mg/kg、約1.0mg/kg〜約250mg/kg、約10.0mg/kg〜約150mg/kgと、多様になるだろう(当然のことながら、投与形態及び上記で議論した因子による)。その他の好適な用量範囲は、1日当たり1mg〜10000mg、1日当たり100mg〜10000mg、1日当たり500mg〜10000mg、及び1日当たり500mg〜1000mg、を含む。いくつかの特定の実施形態においては、その量は、1日当たり10,000mg未満であり、1日当たり750mg〜9000mgの範囲である。
【0142】
効果量は、1mg/kg/日未満、500mg/kg/日未満、250mg/kg/日未満、100mg/kg/日未満、50mg/kg/日未満、25mg/kg/日未満又は10mg/kg/日未満となり得る。あるいは、1mg/kg/日〜200mg/kg/日の範囲となり得る。例えば、糖尿病性患者の治療に関しては、単位用量は、未治療対象と比較して、血中グルコースを少なくとも40%低下させる量となり得る。別の実施形態においては、単用量は、血中グルコースレベルを非糖尿病対象の血中グルコースレベルの±10%まで低下させる量である。
【0143】
その他の非限定的な例において用量は、1投与当たり、体重1キログラム当たり約1マイクログラム、体重1キログラム当たり約5マイクログラム、体重1キログラム当たり約10マイクログラム、体重1キログラム当たり約50マイクログラム、体重1キログラム当たり約100マイクログラム、体重1キログラム当たり約200マイクログラム、体重1キログラム当たり約350マイクログラム、体重1キログラム当たり約500マイクログラム、体重1キログラム当たり約1ミリグラム、体重1キログラム当たり約5ミリグラム、体重1キログラム当たり約10ミリグラム、体重1キログラム当たり約50ミリグラム、体重1キログラム当たり約100ミリグラム、体重1キログラム当たり約200ミリグラム、体重1キログラム当たり約350ミリグラム、体重1キログラム当たり約500ミリグラム、から体重1キログラム当たり約1000mg以上、及びここから導き出せる任意の範囲を含み得る。本明細書において挙げた数値から導き出せる範囲の非限定的な例においては、上述した数値に基づいて、体重1キログラム当たり約5mgから体重1キログラム当たり約100mg、体重1キログラム当たり約5マイクログラムから体重1キログラム当たり約500ミリグラム、などの範囲を投与することができる。
【0144】
特定の実施形態において、本開示の医薬組成物は、例えば、少なくとも約0.1%の本開示の化合物を含んでいてもよい。その他の実施形態においては、本開示の化合物は例えば、単位重量の約2%〜約75%、又は約25%〜約60%、及びそこから導き出せる任意の範囲を占めていてもよい。
【0145】
薬剤の単回又は複数回投与も検討される。複数回投与についての所望される時間間隔は、慣習的な実験のみしか行わない当業者によっても決定することができる。一例として、対象は、およそ12時間間隔で、1日2回の投与を受ける場合がある。いくつかの実施形態において、薬剤は1日1回投与される。
【0146】
薬剤は、慣習的か計画に則って投与され得る。本明細書で使用する場合、慣習的な計画とは、予め設定された期間を指す。慣習的な計画は、計画が予め決められる限りにおいて、その長さが同一又は異なる期間を包含し得る。例えば、慣習的な計画は、1日2回、毎日、隔日、2日おき、3日おき、4日おき、5日おき、週に1回、月に1回又はこれらの間で設定される任意の日数又は週での投与を含み得る。あるいは、予め決められた慣習的な計画は、第1週では1日2回、その後数ヶ月にわたっては1日1回、などの投与計画を含み得る。その他の実施形態においては、本発明は、経口で摂取され、かつ食事の時間に影響を受ける又は影響を受けない薬剤を提供する。従って、例えば、対象が食事を済ませた後又は食事の前に、毎朝及び/又は毎晩、その薬剤を摂取することができる。
【0147】
X.併用療法
効果的な併用療法は、単一の組成物若しくは両方の薬剤を含む薬理学的な製剤、又は、1つの組成物が本発明の化合物を、そして別の組成物が第二の薬剤を含み、同時に投与される2つの別個の組成物又は製剤によって達成され得る。あるいは、治療は、数分から数ヶ月の範囲の間隔で、その他の薬剤による治療の前にもその後になってもよい。
【0148】
「A」が第一の薬剤(例えば、DFMO)を、そして「B」が第二の薬剤(例えば、スリンダク)を示すような、様々な組み合わせを用いることができ、それらの非限定的な例を以下に記載する。
A/B/A B/A/B B/B/A A/A/B A/B/B B/A/A A/B/B/B B/A/B/B
B/B/B/A B/B/A/B A/A/B/B A/B/A/B A/B/B/A B/B/A/A
B/A/B/A B/A/A/B A/A/A/B B/A/A/A A/B/A/A A/A/B/A
【0149】
XI.実施例
以下に、本発明の好ましい実施形態を示すための実施例を含む。発明者らにより、本発明を実施する上でよく機能することが発見された技術を示す、実施例において開示された技術は、従って、技術の実施の好ましい形態を構成すると考えることできることを当業者は理解すべきである。しかしながら、本開示を踏まえて、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、開示された特定の実施形態に多くの変更を行うことができ、それでもなお好ましい又は同様の結果を得ることができることを当業者は理解するべきである。
【0150】
実施例1−疫学的研究:CRC特異的生存とODC +316 SNPとの関連
実験デザイン:研究では、集団ベース研究であるUC Irvine Gene−Environment Study of Familial CRC(1994〜1996の間に診断し、2008年3月までフォローアップした)からの、偶発的CRC症例を有する440人を対象とした。ODC遺伝子型(GG対AA/GA)に依存するCRC特異的生存(CRC−SS)を一次アウトカムとした。ウェスタンブロット及びクロマチン免疫沈降(CHIP)アッセイにより、ヒト結腸癌細胞株におけるE−ボックス転写因子のODCアレル特異的な結合を決定した。プロモーター構築物を、転写アクチベーターであるc−MYC又はリプレッサーであるMAD1のいずれかを発現しているベクターと組み合わせて使用することにより、ODCアレル特異的プロモーター活性を決定した。
【0151】
結果:CRC症例における遺伝子型特異的生存の差は、結腸癌症例に限定された。ODC GG遺伝子型症例(HR=1.00、基準値)と比較して、補正したCRC−SSハザード率(HR)は、ODC GA症例では2.31(1.15〜4.64)、ODC AA症例では3.73(0.93〜14.99)であった(P−trend=0.006)。結腸癌細胞では、2つのE−ボックスに隣接したODC +316 SNPは、ODCのプロモーター活性を規定するものである。培養細胞においては、E−ボックスのアクチベーターである−MYC並びにリプレッサーであるMAD1及びMAD4は、メジャーGアレルと比較して、マイナーAアレルに優先的に結合する。
【0152】
対象母集団:我々は、1994〜1996に行われ2008年3月までフォローアップされた、University of California, Irvine Gene−Environment Study of Familial Colorectal Cancer (Peel et al.,2000;Zell et al.,2007)に登録された、侵襲性CRCの偶発的症例について研究を行った。本研究は、結腸直腸癌症例の大規模な集団ベースコホートにおけるHNPCCの頻度を決定するようにデザインされた。2008年4月のデータを用い、Cancer Surveillance Program of Orange County/San Diego Imperial Organization for Cancer Controlの集団ベース癌登録から対象者を決定した。元の研究では(Peel et al.,2000)、1994から1996に診断した、CRCを有する全対象(Orange County、CA在住の全ての年齢の)を確認した。1994から1995の間にSan Diego and Imperial Counties、CAで診断した、65歳より高齢の全対象もまた確認した。その後、彼らが研究に適格であり(その時点で生存していることが確認され、連絡先が分かっている場合)、かつ、主治医が接触を許可した場合に、その症例の対象に連絡を取った。研究の登録時に、対象者は採血及び医学情報の提供を許可する同意書にサインした。本研究は、UC Irvine Institutional Review Board(#93−257)により認可された。生命状態及びフォローアップを含む臨床的及び人口統計学的データは、先に記載された局所性癌登録データベース(Peel et al., 2000;Zell et al.,2007;Zell et al.,2008)との連携から得た。腫瘍、節、転移(TNM)の病期分類の決定は、入手可能な場合には、存在するAJCCコードからのものであり、これまでに報告されているように(Le et al., 2008)疾患コードの評価に変換した。一親等血縁者の癌の家族歴を、登録時に実施した電話による面談中の自己申告によって確認した(Zell et al.,2008;Ziogas and Anton−Culver,2003)。アムステルダム基準によって定義されている、遺伝性非ポリポーシス結腸癌(HNPCC)を有する22症例を同定し、解析から除外した。CRCの診断から研究への登録(すなわち、家族歴についての面談を行った日時)までの平均期間は16ヶ月であった(95% CI 12〜23ヶ月)。
【0153】
DNAの抽出及びODC +316 SNP遺伝子型決定(genotyping)。
QIAGEN QIAamp DNA Midi又はMini Kits(Qiagen)を用い、製造業者による説明書に従って、2.0 mLの赤血球塊試料からDNAを抽出した。+316での多型塩基を含む172bpの断片を増幅するように設計したオリゴヌクレオチドプライマーを用いてODC +316 SNPの遺伝子型決定を行った(Applied Biosystems,Foster City,CA)。異なる5’標識(6−カルボキシフルオレセイン又はVIC)及び同じ3’クエンチャー色素(6−カルボキシテトラメチルローダミン)(23)を用いて、アレル特異的TaqManプローブを合成した。これまでに報告されているように(Martinez et al.,2003;Guo et al.,2000)、各PCR反応(全量5μL)には、10ngの対象DNA、30pmolの各プライマー、12.5pmolの各TaqManプローブ、及び1xTaqMan Universal PCR Master Mix(Applied Biosystems, Foster City, CA)が含まれた。
【0154】
統計分析−集団ベース研究
予測されたODC GG遺伝子型対ODC GA/AA遺伝子型の1:1の比率に基づき(Martinez et al.,2003;Barry et al.2006;Hubner et al.,2008;Guo et al.,2000)、標本サイズを決定した。UC IrvineでのGene−Environment Study of Familial CRCにおける、結腸及び直腸癌1154症例からのデータの先の解析は、CRC特異的10年生存率がおよそ66%であることを明らかにした(Zell et al.,2008)。発明者らは、ODC遺伝子型のみに基づくCRC特異的生存においては、我々の標本サイズの計算では、15%より大きい差が生じると提案した。従って、有意水準5%、検出力80%で2群間でのCRC特異的10年生存における提案された差(第1群55%対第2群70%)を検出するために、全315対象を必要とした。481のDNA試料のうち440についての遺伝子型決定が成功した。DNA濃度が低かったこと、及び/又はDNAの質が良くなかったことから、41例(8.5%)についてはODC +316遺伝子型の決定はできなかったが、遺伝子型決定が成功した例と成功しなかった例との間には、臨床病理学的な差は観察されなかった。従って、この研究は一次エンドポイントを検討するのに十分であった。
【0155】
結腸及び直腸症例間での、人口統計学的、臨床的、及び病理学的な変数の比較を、名義変数についてはピアソンのカイ二乗統計又はフィッシャーの直接確率検定を用いて、そして連続変数についてはスチューデントのt検定を用いて行った。結腸直腸癌特異的生存は、CRCそのものによる死亡として定義し、フォローアップ終了時に生存している、フォローアップの喪失、又はCRC以外の原因による死亡、の例においてはデータ取得を打ち切った。全生存(OS)は、何らかの原因による死亡として定義した。カプラン・マイヤー法を用いて結腸及び直腸癌症例についての生存曲線を構築し、単変量解析については対数ランク検定を用いて解析した。全CRC症例、結腸癌症例、及び直腸癌症例については、診断からプロファイルまでの時間(ODC遺伝子型に基づく、全及びCRC特異的死亡の補正したリスク)を用いてコックスの比例ハザードモデル解析を行った。生存におけるODC遺伝子型(GG、GA、又はAA)の効果を、年齢、性別、民族性、CRCの家族歴、診断時におけるTNMの病期、結腸中での腫瘍の位置、組織学的サブタイプ、外科的治療、放射線治療、及び化学療法などの共変数を考慮して、コックスモデルを使用して解析した。モデル中の各変数はダミー変数を用いてコード化した。全ての解析はSAS 9.2 統計ソフトウェア(SAS Institute,Cary,NC)を用いて行った。両側P値が<0.05のときに統計的に有意であるとみなした。
【0156】
実施例2−実験的研究:結腸癌細胞におけるODC +316 SNPの制御
細胞培養
ヒト結腸癌細胞株HT29及びHCT116をMcCoyの5A培地(Invitrogen,Carlsbad,CA)中で維持した。使用した全ての培地には10% FBSと1% ペニシリン/ストレプトマイシン溶液(Invitrogen, Carlsbad,CA)を添加した。培養を、37℃、加湿、5%CO2雰囲気下で維持した。
【0157】
遺伝子型決定アッセイ
多型のPstI部位を検出するために、HT29及びHCT116細胞由来のDNA試料をPCR−RFLP法にかけた。以下のプライマー(5’−TCTGCGCTTCCCCATGGGGCT−3’(配列番号1)及び5’−TTTCCCAACCCTTCG−3’(配列番号2))を用い、PCRにより配列を増幅した。各反応液は、1μl DNA、4pmolの各プライマー、12.5μl 2xPCR Pre Mixes 緩衝液「G」(EPICENTRE Biotechnologies,Madison,WI)及び0.5単位のTaq DNA ポリメラーゼを最終容量25μl中に含んだ。予測されるPCR産物のサイズは351bpであった。増幅した後、10〜20μlのPCR産物を30μl反応液中、10単位のPstIを用いて、37℃で2時間消化した。PstI部位を含むHT29細胞(GA)由来のDNAからは、156及び195bpの2つの断片が得られた。
【0158】
ウェスタンブロット解析
細胞を回収、溶解し、そしてタンパク質を12.5% SDS−PAGEゲルを用いて分離した。電気泳動により、タンパク質をHybond−Cメンブレン上に移した。Blotto A(TTBS溶液に溶解したブロッキンググレードの脱脂粉乳5%)を用いて膜のブロッキングを行い、そしてBlotto Aで1:300に希釈した一次抗体(Santa Cruz Biotechnology,Santa Cruz,CA)を用いてプロービングした。一次抗体と共に4℃で一晩インキュベートし、その後適切なHRP−タグ二次抗体(1:1000 希釈)は1時間、室温でインキュベートした。ECL Western Detection試薬(Amersham Biosciences,Piscataway,NJ)を用いて化学発光の検出を行い、Biomax XAR フィルム(Kodak)に露光した。
【0159】
クロマチン免疫沈降(CHIP)
製造業者によって推奨されている方法で、市販のキットを用いてCHIPアッセイを行った(Upstate Biotech,Lake Placid,NY,USA)。簡単に説明すると、DNAとタンパク質が架橋するように細胞を1%のホルムアルデヒドで処理し、DNA−タンパク質複合体を200〜1000bpの長さになるように超音波処理により破壊した。溶解物を、プロテアーゼ阻害剤を含む免疫沈降(IP)希釈緩衝液により10倍に希釈した。クロマチンを沈降させるためにc−MYC、MAD1及びMAD4に対する抗体(Santa Cruz Biotechnology,Santa Cruz,CA)を用い、さらなる試料には抗体を加えずに、抗体を含まない(−Ab)対照とした。試料を回転させながら、4℃で一晩免疫沈降させた。60μlのサケ精子DNA/プロテインAアガローススラリーを添加して回転させながら4℃で1時間インキュベートし、その後軽く遠心分離(1000rpm、1分)を行うことで、免疫複合体を得た。プロテインAアガロースの沈殿を低塩緩衝液、高塩緩衝液、LiCl緩衝液及びTE緩衝液を用いて洗浄した。その後、250μlの溶出緩衝液(0.1M NaHCO3、1% SDS)を2回添加することにより、複合体を溶出させ、そして0.2M NaClと共に65℃で4時間加熱することによりDNA−タンパク質間架橋を反転させた。操作は、抗体を含むDNA及び−Ab DNA対照を含む全ての試料について行った。DNAを30μlのddH2O中に再懸濁した。PCR産物及びそのサイズの可視化のために、標準的なPCR反応を行った。PCRに用いたODCプライマー配列は、5’−CCTGGGCGCTCTGAGGT−3’(配列番号3)17mer)及び5’−AGGAAGCGGCGCCTCAA−3’(配列番号4)(17mer)であった。TaqMan gene expression assays kit(Applied Biosystems, Foster City,CA)を用い、ABI7700配列検出システム上で定量的リアルタイムPCRを行った。相対的な結合の計算についての詳細は、製造業者のウェブサイト上で見ることができる (http://www.appliedbiosystems.com/)。
【0160】
一過性トランスフェクション
一過性のトランスフェクションを、LipofectAMINE 試薬(Invitrogen,Carlsbad,CA)を用いて、製造業者によるプロトコールに従って、添付の書類中で詳細に述べたように、行った。HCT116及びHT29細胞を、1μgのpGL3−ODC/A又はpGL3−ODC/Gプラスミド(Martinez et al.,2003)を用いて、0.01μgのRenilla−TKプラスミドと共にトランスフェクションした。Renilla−TKプラスミドはPromega(Madison,WI)から購入し、全てのプロモーター−レポーター トランスフェクション実験におけるトランスフェクション効率の対照として用いた。c−MYCを用いた実験では、ODC pGL3−プラスミドを、pcDNA 3.0又はCMV−c−MYC発現ベクター(OriGene,Rockville,MD)のいずれかと共にトランスフェクションした。MAD1を用いた実験では、ODCプラスミドを、pcDNA 3.1又はpcDNA−MAD1のいずれかと共にトランスフェクションした。c−MYCとMAD1とを共にトランスフェクションする実験では、ODC遺伝子の最初の1.6Kbを含むODCプロモーターレポーター構築物をpGL3ベクター中にクローニングした。この構築物は、完全なE−ボックス1(−485〜−480bp)(wt E−ボックス 1)又は欠損したE−ボックス1(mut E−ボックス1)を含んだ。加えて、+316 ODC SNPの両変異体を用い、全部で4種類の異なる構築物を作出した。6時間インキュベートした後、細胞を20% FBSを含む完全培地に加え、一晩生育させた。トランスフェクションの翌日、20% FBSを含む完全培地を10% FBSを含む培地と交換した。トランスフェクションした48時間後、細胞をPBSで洗浄し、そしてDual Luciferase アッセイ キット(Promega,Madison,WI)のPassive Lysis 緩衝液中で溶解した。Turner Designs TD−20/20 ルミノメーターを用い、製造業者による通りに二重ルシフェラーゼ活性を測定し、そして相対的なルシフェラーゼ単位(RLU)として表した。実験には3セットの試料を用い、少なくとも2回繰り返して行った。
【0161】
統計分析−実験的研究
一過性のトランスフェクション実験には、2標本t検定を用いた(Microsoft Excel Microsoft Corp., Redmond, WA)。HT29結腸癌細胞における、c−MYC発現のODCアレル特異的プロモーター活性への効果を、第一のE−ボックス要素の部分が異なる((a)野生型(wt)E−ボックス1m+316 G、(b)突然変異体(mut)E−ボックス1 +316 G、(c)wt E−ボックス1 +316 A、及び(d)mut E−ボックス1 +316 A)ODC プロモーター構築物を用いて評価した。2標本t検定を用いて、各プロモーター構築物をpcDNA3.0プラスミドと共にトランスフェクションした細胞とCMV−c−MYC発現ベクターと共にトランスフェクションした細胞との間のプロモーター活性を比較した。同様に、MAD1発現のODCアレル特異的プロモーター活性への効果を評価するために、2標本t検定を用いて、pcDNA3.0プラスミドと共にトランスフェクションしたプロモーター構築物とpcDNA−MAD1プラスミドと共にトランスフェクションしたプロモーター構築物との間のプロモーター活性を比較した。両側P値が<0.05のときに統計的に有意であると見なした。
【0162】
実施例3−ODC1遺伝子型の異なる作用
この研究は、多施設第3相結腸腺腫予防試験(Meyskens et al.,2008)からの患者データの解析を含む。375患者が登録され、267患者の試験終了時の結腸鏡検査が完了した後にData Safety Monitoring Board(DSMB)により打ち切られた(研究がその効力エンドポイントに達したため)。DSMBは、安全性及び効力エンドポイントをモニタリングした。ODC1 SNPの重要性を示すデータ(2) を考慮してプロトコールを変更した2002年11月以降に、研究に賛同した228人の患者から(246患者中、先に無作為化した159人を含み、129患者中の69人はこの日付以降に無作為化した)、遺伝子型決定解析用の血液試料を回収した。患者由来のゲノムDNA上のODC1(rs2302615)遺伝子型決定は、アレル特異的TaqManプローブを用いて、これまでに記載されているように行った(Guo et al.,2000)。直腸組織におけるポリアミン含量は、無作為に選択した8つの直腸粘膜生検試料のうち3つを用いて、これまでに記載されているように決定した(Meyskens et al.,1998;Seiler及びKnodgen,1980)。組織ポリアミン反応は、25%から45%までの範囲の反応値について行った。
【0163】
ODC1遺伝子型を、優性モデル(AA/GA対GG患者)において解析した。2つの遺伝子型群にわたる非正規に分布した連続変数については、ウイルコクソン順位和検定を行った。基準カテゴリー変数及び遺伝子型群との間の関連を評価するためには、カイ二乗検定又はフィッシャー直接確率検定を用いた。一次アウトカム(腺腫再発)については、予測変数(治療群、年齢、性別、人種(カフカス人対その他)、アスピリンの使用、ODC1遺伝子型(優性モデルにおいては)、及び遺伝子型相互作用による治療を示す期間)を用いた対数2項回帰(Log binomial regression)を行った。二次アウトカム(直腸組織ポリアミン反応、毒性)については、治療群の効果、遺伝子型、及び治療と遺伝子型との相互作用を、フルログ2項モデル(full log binomial model)を用いて試験した。統計分析は、SAS 9.2 統計ソフトウェア(SAS Inc. Cary,NC)を用いて行った。試験への登録及び試料の回収/解析については、患者からの書面によるインフォームドコンセントを取得した。本研究は、全委員による審査の後でUC Irvine institutional review board(IRB protocol #2002−2261)により、及び参加型研究の部分においては各ローカルIRBにより、認可された。
【0164】
ODC1遺伝子型分布は、126GG(55%)、87GA(38%)、及び15AA(7%)であった。表1に示したように、基準となる臨床特徴は差を明かにした。補正後のフル回帰モデルにおける治療に関連した腺腫再発の相対リスク(RR)は0.39(95%CI 0.24〜0.66)であった。偽薬又は治療それぞれを受けた患者においては、ODC1 GG患者では23%対22%、ODC1 GA患者では20%対21%、及びODC1 AA患者では0%(7人中0人)対57%(7人中4人)の割合で中毒性難聴が発症した。
【0165】
【表2】
【0166】
【表3】
【0167】
【表4】
【0168】
【表5】
【0169】
本明細書において開示し、請求した全ての方法は、本開示を踏まえた不当な実験を用いることなく、実施及び遂行することができる。好ましい実施形態の観点から、本発明の方法を記載してきたが、本発明の概念、精神及び範囲から逸脱することなく、本明細書において記載した方法及び工程又は工程の順序の変形型を適用し得ることが当業者には明かだろう。さらに具体的には、同じ又は同様の結果を得るために、本明細書において記載した薬剤を、化学的及び生理学的の両方で関係した薬剤と置換してもよい。そのような当業者に明かな全ての置換及び変更は、添付の請求項によって規定されるように、本発明の精神、範囲及び概念に含まれると見なされる。
【0170】
参考文献
以下の参考文献は、本明細書において示す方法の例又はその他の詳細を捕捉する範囲において、特に参照することにより本明細書に組み入れられる。
米国特許第3,647,858号
米国特許第3,654,349号
米国特許第4,330,559号
米国特許第4,413,141号
米国特許第4,582,788号
米国特許第4,656,127号
米国特許第4,683,194号
米国特許第4,683,202号
米国特許第5,814,625号
米国特許第5,843,929号
米国特許第5,952,174号
米国特許第6,258,845号
Alberts et al.,J.Cell.Biochem.Supp.,(22):18−23,1995..
AMA Drug Evaluations Annual,1814−1815,1994.
Babbar et al.,Biochem.J.,394:317−24,2006.
Babbar et al.,J.Biol.Chem.,278(48):47762−47775,2003.
Barry et al.,J.Natl.Cancer Inst.,98(20):1494−500,2006.
Bedi et al.,Cancer Res.,55(9):1811−1816,1995.
Bellofernandez et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:7804−8,1993.
Bussey, Hepatology,12(1):175−6.1990
Childs et al.,Cell.Molec.Life Sci.,60:1394−1406,2003.
de Arruda et al.,Expert Rev.Mol.Diagn.,2(5):487−496,2002.
Derynck et al.,Nature Genetics,29:117−29,2001.
DuBois et al.,Cancer Res.,56:733−737,1996.
Erdman et al.,Carcinogenesis,20:1709−13,1999.
欧州特許出願第201,184号
欧州特許出願第237,362号
欧州特許出願第258,017号
欧州特許出願第50,424号
欧州特許出願第84,796号
仏国特許出願第2,650,840号
Fultz and Gerner,Mol.Carcinog.,34:10−8,2002.
Gerner and Meyskens,Nature Rev.Cancer,4:781−92.,2004.
Gerner et al.,Cancer Epidemoil.Biomarkers Prev.,3:325−330,1994.
Giardiello et al.,Cancer Res.,(57):199−201,1997.
Guo et al.,Cancer Res. 60(22):6314−6317,2000.
Halushka et al.,Nat.Genet.,22(3):239−247,1999.
Hanif et al.,Biochemical Pharmacology,(52):237 245,1996.
Hubner et al.,Clin CancerRes.,14(8):2303−9,2008.
Ignatenko et al.,Cancer Biol.Ther.,5(12):1658−64,2006.
Inazuka et al.,Genome Res,7(11):1094−1103,1997.
Iwamoto et al.,Carcinogenesis,21:1935−40,2000.
Johnson et al.,Nat.Genet.,29(2):233−237,2001.
Ke and Cardon Bioinformatics,19(2):287−288,2003.
Keller and Giardiello,Cancer Biol.Ther.,2(4 Suppl 1):S140−9,2003.
Kingsnorth et al.,Cancer Res.,43(9):4035−8,1983.
Komher, et al.,Nucl.Acids.Res.17:7779−7784,1989.
Kuppuswamy, et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,88:1143−1147,1991.
Kwok and Chen,Curr Issues Mol.Biol.,Apr;5(2):43−60,2003.
Kwok et al.,Genomics,23(1):138−144,1994.
Kwok,Annu.Rev.Genomics Hum.Genet.,2:235−258,2001.
Kwok et al.,Genomics,31(1):123−6,1996.
Ladenheim et al.,Gastroenterology,108:1083−1087,1995.
Landegren, et al.,Science,241:1077−1080,1988.
Lanza et al.,Arch.Intern.Med.,155:1371−1377,1995.
Le et al.,Cancer Epidemiol.Biomarkers Prev.,17:1950−62,2008.
Lipkin,J.Cell Biochem.Suppl.,28−29:144−7,1997.
Lippman,Nat.Clin.Pract.Oncol.,3(10):523,2006.
Love et al.,J.Natl.Cancer Inst.,85:732−7,1993.
Lu et al.,Eukaryot Cell.,3(6):1544−56,2004.
Luk and Baylin N.Engl.J.Med.,311(2):80−83,1984.
Lupulescu,Cancer Detect.Prev.,20(6):634−637,1996.
Martinez et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,100:7859−64,2003.
Matsubara et al.,Clinical Cancer Res.,1:665−71,1995.
Maxam, et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,74:560,1977.
McLaren et al.,CancerPrev.Res.,1(7):514−21,2008.
Meyskens et al.,Cancer Prev.Res.,1(1):32−8,2008.
Meyskens et al.,J.Natl.CancerInst.,86(15):1122−1130,1994.
Meyskens et al.,J.Natl.Cancer Inst.,90(16):1212−8,1998.
Mullis et al.,Cold Spring Harbor Symp.Quant.Biol.51:263−273,1986.
Muscat et al.,Cancer,74:1847−1854,1994.
Narisawa et al.,Cancer Res.,41(5):1954−1957,1981.
Nickerson et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,87:8923−8927,1990.
Nyren et al.,Anal.Biochem.208:171−175,1993.
O’Brien et al.,Molec.Carcinog.,41(2):120−3,2004.
Pardali and Moustakas,Biochimica et Biophysica Acta,1775:21−62,2007.
国際公開第91/02087号
国際公開第92/15712号
Peel et al.,J.Natl.Cancer Inst.,92:1517−22,2000.
Pegg,Biochem.,234(2):249−262,1986.
Physician’s Desk Reference,Medical Economics Data,Montville,N.J.,1745−1747,1999
Piazza et al.,Cancer Res.,(55):311 3116,1995.
Piazza et al.,Cancer Res.,(57):2452−2459,1997a.
Piazza et al.,Cancer Res.,(57):2909−2915,1997b.
Pollard and Luckert,Cancer Res.,49:6471−6473,1989.
Prezant et al.,Hum.Mutat.,1:159−164,1992.
Psaty and Potter,N.Engl.J.Med.,355(9):950−2,2006.
Rao et al.,Cancer Res.,(55):1464−1472,1995.
Reddy et al.,Cancer Res.,(50):2562−2568,1990.
Reddy et al.,Cancer Res.,47:5340−5346,1987.
Rice et al., Mol. Cancer Ther., 2(9):885−92, 2003.
Roberts and Wakefield,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,100:8621−3,2003.
Sanger et al.,J.Molec.Biol.,94:441,1975.
Seiler and Knodgen,J.Chromatogr.,221(2):227−235,1980.
Simoneau et al.,Cancer Epidemiol.Biomarkers Prev.,17:292−9,2008.
Simoneau et al.,J.Natl.Cancer Inst.,93:57−9,2001.
Singh and Reddy,Annals.NY Acad.Sci.,(768):205 209,1995.
Singh et al.,Carcinogenesis,(15):1317 1323,1994.
Small et al.,N. Engl.J.Med.,347:1135−1142,2002.
Sokolov,Nucl.Acids Res.18:3671,1990.
Stevens et al.,Biotechniques,34:198−203,2003.
Strejan et al.,Cell Immunol.,84(1):171−184,1984.
Su et al.,Science,(256):668−670,1992.
Syvanen et al.,Genomics8:684−692,1990.
Taillon−Miller et al.,Genome Res,8(7):748−754,1998.
Tempero et al.,Cancer Res.,49(21):5793−7,1989.
Thomas and Thomas,J.Cell Mol.Med.,7:113−26,2003.
Thompson et al.,J.Natl.Cancer Inst.,(87):125−1260,1995.
Ugozzoll et al.,GATA 9:107−112,1992.
Vane and Botting,Adv Exp Med Biol.,433:131−8,1997.
Visvanathan et al.,J.Urol.,171(2 Pt 1):652−5,2004.
Wallace,Eur.J.Clin.Invest.,30:1−3,2000.
Zell et al.,Cancer Epidemiol.Biomarkers Prev.,17:3134−40,2008.
Zell et al.,Cancer Prev.Res.,2(3):209−12,2009.
Zell et al.,Clin.Cancer Res.,15(19):6208−16,2009.
Zell et al.,Intl.J.Cancer,120:459−68,2007.
Ziogas and Anton−Culver,Am.J.Prev.Med.,24:190−8,2003.
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者における癌腫の予防的又は治療的処置の方法であって、
a)前記患者の遺伝子型を決定する試験から、少なくとも1つのODC1プロモーター遺伝子アレルの+316番目の位置の結果を得る工程;及び
b)前記結果が、前記ODC1プロモーター遺伝子の少なくとも1つのアレルにおける+316番目の位置の前記患者の遺伝子型がGであることを示す場合に、
(i)前記患者におけるオルニチンデカルボキシラーゼ(ODC)を阻害する第一の薬剤;及び
(ii)前記第一の薬剤と組み合わせた場合に、前記患者における全ポリアミン含量を低減するようにポリアミン経路を調節する第二の薬剤、
を含む、効果量の医薬治療を前記患者に投与する工程、
を含む方法。
【請求項2】
前記第二の薬剤が、前記患者におけるスペルミジン/スペルミンN1−アセチルトランスフェラーゼの発現をもまた上昇させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記結果が、前記遺伝子型を含む報告を受け取ること又は前記結果を表す患者病歴を取得することにより得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記試験が、前記患者の前記ODC1プロモーター遺伝子の1つのアレルにおける+316番目の位置のヌクレオチド塩基を決定する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記試験が、前記患者の前記ODC1プロモーター遺伝子の両方のアレルにおける+316番目の位置のヌクレオチド塩基を決定する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記結果が、前記ODC1プロモーター遺伝子の両方のアレルにおける+316番目の位置の前記患者の遺伝子型がGGであることを示す、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記結果が、前記ODC1プロモーター遺伝子の両方のアレルにおける+316番目の位置の前記患者の遺伝子型がGAであることを示す、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記医薬治療が、前記患者が既に低用量での前記医薬治療を受けている場合に、前記試験の結果を得る工程の前に、前記第一又は前記第二の薬剤の用量を増加させる工程をさらに含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記医薬治療が、前記患者が既に低用量での前記医薬治療を受けている場合に、前記試験の結果を得る工程に前に、前記第一及び前記第二の薬剤の用量を増加させる工程をさらに含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記第一の薬剤がα−ジフルオロメチルオルニチン(DFMO)である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記第二の薬剤がアスピリンを含まない非ステロイド抗炎症性薬(NSAID)である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記アスピリンを含まないNSAIDがCOX−2選択的阻害剤である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記アスピリンを含まないNSAIDがスリンダク又はセレコキシブである、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記アスピリンを含まないNSAIDがスリンダクである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
患者における結腸直腸癌腫リスク因子の治療方法であって、
a)前記患者の遺伝子型を決定する試験から、少なくとも1つのODC1プロモーター遺伝子アレルにおける+316番目の位置の結果を得る工程;及び
b)前記結果が、前記ODC1プロモーター遺伝子の少なくとも1つのアレルにおける+316番目の位置の前記患者の遺伝子型がGであることを示す場合に、
(i)前記患者におけるオルニチンデカルボキシラーゼ(ODC)を阻害する第一の薬剤;及び
(ii)前記第一の薬剤と組み合わせた場合に、前記患者における全ポリアミン含量を低減するようにポリアミン経路を調節する第二の薬剤
を含む効果量の医薬治療を前記患者に投与する工程、を含み、
前記患者における新しい異常腺窩巣、新しい腺腫性ポリープ又は新しい異形成性腺腫の形成を予防する方法。
【請求項16】
前記第二の薬剤が、前記患者におけるスペルミジン/スペルミンN1−アセチルトランスフェラーゼの発現をもまた上昇させる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記方法が、前記患者における新しい異常腺窩巣の形成を予防する、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記方法が、前記患者における新しい腺腫性ポリープの形成を予防する、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記方法が、前記患者における新しい異形成性腺腫の形成を予防する、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記結果が、前記遺伝子型を含む報告を受け取ること又は前記結果を表す患者病歴を取得することにより得られる、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
前記試験が、前記患者の前記ODC1プロモーター遺伝子の1つのアレルにおける+316番目の位置のヌクレオチド塩基を決定する、請求項15に記載の方法。
【請求項22】
前記試験が、前記患者の前記ODC1プロモーター遺伝子の両方のアレルにおける+316番目の位置のヌクレオチド塩基を決定する、請求項15に記載の方法。
【請求項23】
前記結果が、前記ODC1プロモーター遺伝子の両方のアレルにおける+316番目の位置の前記患者の遺伝子型がGGであることを示す、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記結果が、前記ODC1プロモーター遺伝子の両方のアレルにおける+316番目の位置の前記患者の遺伝子型がGAであることを示す、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記医薬治療が、前記患者が既に低用量での前記医薬治療を受けている場合に、前記試験の結果を得る工程の前に、前記第一又は前記第二の薬剤の用量を増加させる工程をさらに含む、請求項15〜24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記医薬治療が、前記患者が既に低用量での前記医薬治療を受けている場合に、前記試験の結果を得る工程の前に、前記第一及び前記第二の薬剤の用量を増加させる工程をさらに含む、請求項15〜24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記第一の薬剤がα−ジフルオロメチルオルニチン(DFMO)である、請求項15〜26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記第二の薬剤がアスピリンを含まない非ステロイド抗炎症性薬(NSAID)である、請求項15〜26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記アスピリンを含まないNSAIDがCOX−2選択的阻害剤である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記アスピリンを含まないNSAIDがスリンダク又はセレコキシブである、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記アスピリンを含まないNSAIDがスリンダクである、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
癌腫の予防的又は治療的処置のために、患者の適性を評価する方法であって、
a)前記患者の遺伝子型を決定する試験から、少なくとも1つのODC1プロモーター遺伝子アレルにおける+316番目の位置の結果を得る工程;及び
b)前記結果が、前記ODC1プロモーター遺伝子の少なくとも1つのアレルにおける+316番目の位置の前記患者の遺伝子型がGであることを示す場合に、前記患者におけるオルニチンデカルボキシラーゼ(ODC)を阻害する第一の薬剤と前記第一の薬剤と組み合わせた場合に、前記患者における全ポリアミン含量を低減するようにポリアミン経路を調節する第二の薬剤との、併用おける効果量の医薬治療による治療に対して、この患者が好適だと同定する工程、
を含む方法。
【請求項33】
前記第二の薬剤が、前記患者におけるスペルミジン/スペルミンN1−アセチルトランスフェラーゼの発現をもまた上昇させる、請求項1に記載の方法。
【請求項34】
前記結果が、前記遺伝子型を含む報告を受け取ること又は前記結果を表す患者病歴を取得することにより得られる、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記試験が、前記患者のODC1プロモーター遺伝子の1つのアレルにおける+316番目の位置のヌクレオチド塩基を決定する、請求項32に記載の方法。
【請求項36】
前記試験が、前記患者の前記ODC1プロモーター遺伝子の両方のアレルにおける+316番目の位置のヌクレオチド塩基を決定する、請求項32に記載の方法。
【請求項37】
前記結果が、前記ODC1プロモーター遺伝子の両方のアレルにおける+316番目の位置の前記患者の遺伝子型がGGであることを示す、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記結果が、前記ODC1プロモーター遺伝子の両方のアレルにおける+316番目の位置の前記患者の遺伝子型がGAであることを示す、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
前記医薬治療が、前記患者が既に低用量での前記医薬治療を受けている場合に、前記試験の結果を得る工程の前に、前記第一又は前記第二の薬剤の用量を増加させる工程をさらに含む、請求項32〜38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
前記医薬治療が、前記患者が既に低用量での前記医薬治療を受けている場合に、前記試験の結果を得る工程の前に、前記第一及び前記第二の薬剤の用量を増加させる工程をさらに含む、請求項32〜38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
前記第一の薬剤がα−ジフルオロメチルオルニチン(DFMO)である、請求項32〜40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
前記第二の薬剤がアスピリンを含まない非ステロイド抗炎症性薬(NSAID)である、請求項32〜40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
前記アスピリンを含まないNSAIDがCOX−2選択的阻害剤である、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記アスピリンを含まないNSAIDがスリンダク又はセレコキシブである、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
前記アスピリンを含まないNSAIDがスリンダクである、請求項42に記載の方法。
【請求項46】
患者の癌腫瘍を切除可能にする方法であって、
a)前記患者の遺伝子型を決定する試験から、少なくとも1つのODC1プロモーター遺伝子アレルにおける+316番目の位置の結果を得る工程;及び
b)前記結果が、前記ODC1プロモーター遺伝子の少なくとも1つのアレルにおける+316番目の位置の前記患者の遺伝子型がGであることを示す場合に、
(i)前記患者におけるオルニチンデカルボキシラーゼ(ODC)を阻害する第一の薬剤;及び
(ii)前記患者におけるスペルミジン/スペルミンN1−アセチルトランスフェラーゼの発現を上昇させる第二の薬剤、
を含む、効果量の医薬治療を患者に投与する工程、
を含む方法。
【請求項47】
前記結果が、前記遺伝子型を含む報告を受け取ること又は結果を表す患者病歴を取得することにより得られる、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記試験が、前記患者のODC1プロモーター遺伝子の1つのアレルにおける+316番目の位置のヌクレオチド塩基を決定する、請求項46に記載の方法。
【請求項49】
前記試験が、前記患者の前記ODC1プロモーター遺伝子の両方のアレルにおける+316番目の位置のヌクレオチド塩基を決定する、請求項46に記載の方法。
【請求項50】
前記結果が、前記ODC1プロモーター遺伝子の両方のアレルにおける+316番目の位置の前記患者の遺伝子型がGGであることを示す、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記結果が、前記ODC1プロモーター遺伝子の両方のアレルにおける+316番目の位置の前記患者の遺伝子型がGAであることを示す、請求項49に記載の方法。
【請求項52】
前記医薬治療が、前記患者が既に低用量での前記医薬治療を受けている場合に、前記試験の結果を得る工程の前に、前記第一又は前記第二の薬剤の用量を増加させる工程をさらに含む、請求項46〜51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
前記医薬治療が、前記患者が既に低用量での前記医薬治療を受けている場合に、前記試験の結果を得る工程の前に、前記第一及び前記第二の薬剤の用量を増加させる工程をさらに含む、請求項46〜51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項54】
前記第一の薬剤がα−ジフルオロメチルオルニチン(DFMO)である、請求項46〜53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項55】
前記第二の薬剤がアスピリンを含まない非ステロイド抗炎症性薬(NSAID)である、請求項46〜53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項56】
前記アスピリンを含まないNSAIDがCOX−2選択的阻害剤である、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記アスピリンを含まないNSAIDがスリンダク又はセレコキシブである、請求項55に記載の方法。
【請求項58】
前記アスピリンを含まないNSAIDがスリンダクである、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
癌腫の発生又は再発のリスクを有する患者における、癌腫の発生又は再発を予防する方法であって、
a)前記患者の遺伝子型を決定する試験から、少なくとも1つのODC1プロモーター遺伝子アレルにおける+316番目の位置の結果を得る工程;及び
b)前記結果が、前記ODC1プロモーター遺伝子の少なくとも1つのアレルにおける+316番目の位置の前記患者の遺伝子型がGであることを示す場合に、併用において効果量のα−ジフルオロメチルオルニチン(DFMO)とアスピリンを含まない非ステロイド抗炎症性薬(NSAID)とを、患者に投与する工程、
を含む方法。
【請求項60】
前記結果が、前記遺伝子型を含む報告を受け取ること又は結果を表す患者病歴を取得することにより得られる、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記試験が、前記患者のODC1プロモーター遺伝子の1つのアレルにおける+316番目の位置のヌクレオチド塩基を決定する、請求項59に記載の方法。
【請求項62】
前記試験が、前記患者の前記ODC1プロモーター遺伝子の両方のアレルにおける+316番目の位置のヌクレオチド塩基を決定する、請求項59に記載の方法。
【請求項63】
前記結果が、前記ODC1プロモーター遺伝子の両方のアレルにおける+316番目の位置の前記患者の遺伝子型がGGであることを示す、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記結果が、前記ODC1プロモーター遺伝子の両方のアレルにおける+316番目の位置の前記患者の遺伝子型がGAであることを示す、請求項62に記載の方法。
【請求項65】
少なくとも1つのODC1プロモーター遺伝子アレルの+316番目の位置にGを有することが同定された患者に、効果量のα−ジフルオロメチルオルニチン(DFMO)とアスピリンを含まない非ステロイド抗炎症性薬(NSAID)とを投与する工程を含む、α−ジフルオロメチルオルニチン(DFMO)及びアスピリンを含まない非ステロイド抗炎症性薬(NSAID)を用いた、癌腫の発生又は再発のリスクを有する患者の治療方法。
【請求項66】
前記患者のODC1プロモーター遺伝子アレル両方の、+316番目の位置の同定された遺伝子型がGGである、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記患者のODC1プロモーター遺伝子アレル両方の、+316番目の位置の同定された遺伝子型がGAである、請求項65に記載の方法。
【請求項68】
患者における癌腫を治療する方法であって、
a)前記患者の遺伝子型を決定する試験から、少なくとも1つのODC1プロモーター遺伝子アレルにおける+316番目の位置の結果を得る工程;及び
b)前記結果が、前記患者の遺伝子型の前記ODC1プロモーター遺伝子における+316番目の位置の少なくとも1つのアレルがGであることを示す場合に、α−ジフルオロメチルオルニチン(DFMO)及びアスピリンを含まない非ステロイド抗炎症性薬(NSAID)の、併用における効果量を前記患者に投与する工程、
を含む方法。
【請求項69】
前記結果が、前記遺伝子型を含む報告を受け取ること又は前記結果を表す患者病歴を取得することにより得られる、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
前記試験が、前記患者の前記ODC1プロモーター遺伝子の1つのアレルにおける+316番目の位置のヌクレオチド塩基を決定する、請求項68に記載の方法。
【請求項71】
前記試験が、前記患者の前記ODC1プロモーター遺伝子の両方のアレルにおける+316番目の位置のヌクレオチド塩基を決定する、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
前記結果が、前記ODC1プロモーター遺伝子の両方のアレルにおける+316番目の位置の前記患者の遺伝子型がGGであることを示す、請求項68に記載の方法。
【請求項73】
前記結果が、前記ODC1プロモーター遺伝子の両方のアレルにおける+316番目の位置の前記患者の遺伝子型がGAであることを示す、請求項68に記載の方法。
【請求項74】
前記アスピリンを含まないNSAIDがCOX−2選択的阻害剤である、請求項11、28、42、55及び59〜73のいずれか1項に記載の方法。
【請求項75】
前記アスピリンを含まないNSAIDがスリンダク又はセレコキシブである、請求項11、28、42、55及び59〜73のいずれか1項に記載の方法。
【請求項76】
前記アスピリンを含まないNSAIDがスリンダクである、請求項11、28、42、55及び59〜73のいずれか1項に記載の方法。
【請求項77】
DFMO及びスリンダクを全身に投与する、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
DFMO及びスリンダクを別個の経路により投与する、請求項76に記載の方法。
【請求項79】
前記DFMO又はアスピリンを含まないNSAIDを、経口的に、動脈内に又は静脈内に投与する、請求項76に記載の方法。
【請求項80】
前記DFMOを経口的に投与する、請求項79に記載の方法。
【請求項81】
前記DFMOの効果量が、500mg/日である、請求項80に記載の方法。
【請求項82】
前記DFMOを静脈内に投与する、請求項79に記載の方法。
【請求項83】
前記DFMOの効果量が、約0.05〜約5.0g/m2/日である、請求項82に記載の方法。
【請求項84】
前記DFMO及びアスピリンを含まないNSAIDを経口投与用に処方する、請求項79に記載の方法。
【請求項85】
前記DFMO及びアスピリンを含まないNSAIDを、固い又は軟らかい、カプセル又は錠剤として処方する、請求項84に記載の方法。
【請求項86】
前記DFMO及びアスピリンを含まないNSAIDを、12時間毎に投与する、請求項76に記載の方法。
【請求項87】
前記DFMO及びアスピリンを含まないNSAIDを、24時間毎に投与する、請求項76に記載の方法。
【請求項88】
前記スリンダクの効果量が約10〜約1500mg/日である、請求項76に記載の方法。
【請求項89】
前記スリンダクの効果量が、約10〜約400mg/日である、請求項88に記載の方法。
【請求項90】
前記スリンダクの効果量が150mg/日である、請求項88に記載の方法。
【請求項91】
DFMOを、スリンダクの前に投与する、請求項76に記載の方法。
【請求項92】
DFMOを、スリンダクの後に投与する、請求項76に記載の方法。
【請求項93】
DFMOを、スリンダクの前及び後に投与する、請求項76に記載の方法。
【請求項94】
DFMOをスリンダクと同時に投与する、請求項76に記載の方法。
【請求項95】
DFMOを、少なくとも二度目に投与する、請求項76に記載の方法。
【請求項96】
スリンダクを、少なくとも二度目に投与する、請求項76に記載の方法。
【請求項97】
前記患者が固形癌を有し、かつ、前記固形癌の切除をさらに含む方法である、請求項76に記載の方法。
【請求項98】
前記切除の前にDFMO及びスリンダクを投与する、請求項97に記載の方法。
【請求項99】
前記切除の後にDFMO及びスリンダクを投与する、請求項97に記載の方法。
【請求項100】
前記癌腫が、結腸直腸癌、乳癌、膵臓癌、脳腫瘍、肺癌、胃癌、血液癌、皮膚癌、精巣癌、前立腺癌、卵巣癌、肝臓癌又は食道癌、子宮頸癌、頭頸部癌、非メラノーマ性皮膚癌、神経芽細胞腫及び膠芽腫である、請求項1〜99のいずれか1項に記載の方法。
【請求項101】
前記癌腫が結腸直腸癌である、請求項100に記載の方法。
【請求項102】
前記結腸直腸癌がI期である、請求項101に記載の方法。
【請求項103】
前記結腸直腸癌がII期である、請求項101に記載の方法。
【請求項104】
前記結腸直腸癌がIII期である、請求項101に記載の方法。
【請求項105】
前記結腸直腸癌がIV期である、請求項101に記載の方法。
【請求項106】
前記患者における、新しい進行性結腸直腸新生物の形成を予防する、請求項1〜31及び59−105のいずれか1項に記載の方法。
【請求項107】
前記患者における、中毒性難聴又はそのリスクを予防する、請求項1〜31及び59〜105のいずれか1項に記載の方法。
【請求項108】
新しい進行性右側結腸直腸新生物の形成を予防する、請求項106に記載の方法。
【請求項109】
新しい進行性左側結腸直腸新生物の形成を予防する、請求項106に記載の方法。
【請求項110】
前記患者が結腸、直腸又は虫垂に1つ以上の腺腫性ポリープを有することが同定されている、請求項1〜109のいずれか1項に記載の方法。
【請求項111】
前記患者が1つ以上の進行した結腸直腸新生物を有することが同定されている、請求項1〜109のいずれか1項に記載の方法。
【請求項112】
前記患者が1つ以上の左側の進行した結腸直腸新生物を有することが同定されている、請求項1〜109のいずれか1項に記載の方法。
【請求項113】
前記患者が1つ以上の右側の進行した結腸直腸新生物を有することが同定されている、請求項1〜109のいずれか1項に記載の方法。
【請求項114】
前記患者が家族性腺腫性ポリポーシスであると診断されている、請求項1〜109のいずれか1項に記載の方法。
【請求項115】
前記患者がリンチ症候群であると診断されている、請求項1〜109のいずれか1項に記載の方法。
【請求項116】
前記患者が家族性結腸直腸癌タイプXであると診断されている、請求項1〜109のいずれか1項に記載の方法。
【請求項117】
前記患者がアムステルダム基準又はアムステルダム基準IIを満たしている、請求項1〜109のいずれか1項に記載の方法。
【請求項118】
前記患者が1つ以上の結腸直腸腺腫の切除歴を有する、請求項1〜117のいずれか1項に記載の方法。.
【請求項119】
前記患者がODCの過剰な活性に関連した上皮内癌又は前癌病変を有する、請求項1〜118のいずれか1項に記載の方法。
【請求項120】
前記患者が上皮内癌又は前癌病変及び上昇した細胞ポリアミンレベルを有する、請求項1〜118のいずれか1項に記載の方法。
【請求項121】
前記患者がヒトである、請求項1〜120のいずれか1項に記載の方法。
【請求項1】
患者における癌腫の予防的又は治療的処置の方法であって、
a)前記患者の遺伝子型を決定する試験から、少なくとも1つのODC1プロモーター遺伝子アレルの+316番目の位置の結果を得る工程;及び
b)前記結果が、前記ODC1プロモーター遺伝子の少なくとも1つのアレルにおける+316番目の位置の前記患者の遺伝子型がGであることを示す場合に、
(i)前記患者におけるオルニチンデカルボキシラーゼ(ODC)を阻害する第一の薬剤;及び
(ii)前記第一の薬剤と組み合わせた場合に、前記患者における全ポリアミン含量を低減するようにポリアミン経路を調節する第二の薬剤、
を含む、効果量の医薬治療を前記患者に投与する工程、
を含む方法。
【請求項2】
前記第二の薬剤が、前記患者におけるスペルミジン/スペルミンN1−アセチルトランスフェラーゼの発現をもまた上昇させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記結果が、前記遺伝子型を含む報告を受け取ること又は前記結果を表す患者病歴を取得することにより得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記試験が、前記患者の前記ODC1プロモーター遺伝子の1つのアレルにおける+316番目の位置のヌクレオチド塩基を決定する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記試験が、前記患者の前記ODC1プロモーター遺伝子の両方のアレルにおける+316番目の位置のヌクレオチド塩基を決定する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記結果が、前記ODC1プロモーター遺伝子の両方のアレルにおける+316番目の位置の前記患者の遺伝子型がGGであることを示す、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記結果が、前記ODC1プロモーター遺伝子の両方のアレルにおける+316番目の位置の前記患者の遺伝子型がGAであることを示す、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記医薬治療が、前記患者が既に低用量での前記医薬治療を受けている場合に、前記試験の結果を得る工程の前に、前記第一又は前記第二の薬剤の用量を増加させる工程をさらに含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記医薬治療が、前記患者が既に低用量での前記医薬治療を受けている場合に、前記試験の結果を得る工程に前に、前記第一及び前記第二の薬剤の用量を増加させる工程をさらに含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記第一の薬剤がα−ジフルオロメチルオルニチン(DFMO)である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記第二の薬剤がアスピリンを含まない非ステロイド抗炎症性薬(NSAID)である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記アスピリンを含まないNSAIDがCOX−2選択的阻害剤である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記アスピリンを含まないNSAIDがスリンダク又はセレコキシブである、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記アスピリンを含まないNSAIDがスリンダクである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
患者における結腸直腸癌腫リスク因子の治療方法であって、
a)前記患者の遺伝子型を決定する試験から、少なくとも1つのODC1プロモーター遺伝子アレルにおける+316番目の位置の結果を得る工程;及び
b)前記結果が、前記ODC1プロモーター遺伝子の少なくとも1つのアレルにおける+316番目の位置の前記患者の遺伝子型がGであることを示す場合に、
(i)前記患者におけるオルニチンデカルボキシラーゼ(ODC)を阻害する第一の薬剤;及び
(ii)前記第一の薬剤と組み合わせた場合に、前記患者における全ポリアミン含量を低減するようにポリアミン経路を調節する第二の薬剤
を含む効果量の医薬治療を前記患者に投与する工程、を含み、
前記患者における新しい異常腺窩巣、新しい腺腫性ポリープ又は新しい異形成性腺腫の形成を予防する方法。
【請求項16】
前記第二の薬剤が、前記患者におけるスペルミジン/スペルミンN1−アセチルトランスフェラーゼの発現をもまた上昇させる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記方法が、前記患者における新しい異常腺窩巣の形成を予防する、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記方法が、前記患者における新しい腺腫性ポリープの形成を予防する、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記方法が、前記患者における新しい異形成性腺腫の形成を予防する、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記結果が、前記遺伝子型を含む報告を受け取ること又は前記結果を表す患者病歴を取得することにより得られる、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
前記試験が、前記患者の前記ODC1プロモーター遺伝子の1つのアレルにおける+316番目の位置のヌクレオチド塩基を決定する、請求項15に記載の方法。
【請求項22】
前記試験が、前記患者の前記ODC1プロモーター遺伝子の両方のアレルにおける+316番目の位置のヌクレオチド塩基を決定する、請求項15に記載の方法。
【請求項23】
前記結果が、前記ODC1プロモーター遺伝子の両方のアレルにおける+316番目の位置の前記患者の遺伝子型がGGであることを示す、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記結果が、前記ODC1プロモーター遺伝子の両方のアレルにおける+316番目の位置の前記患者の遺伝子型がGAであることを示す、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記医薬治療が、前記患者が既に低用量での前記医薬治療を受けている場合に、前記試験の結果を得る工程の前に、前記第一又は前記第二の薬剤の用量を増加させる工程をさらに含む、請求項15〜24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記医薬治療が、前記患者が既に低用量での前記医薬治療を受けている場合に、前記試験の結果を得る工程の前に、前記第一及び前記第二の薬剤の用量を増加させる工程をさらに含む、請求項15〜24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記第一の薬剤がα−ジフルオロメチルオルニチン(DFMO)である、請求項15〜26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記第二の薬剤がアスピリンを含まない非ステロイド抗炎症性薬(NSAID)である、請求項15〜26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記アスピリンを含まないNSAIDがCOX−2選択的阻害剤である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記アスピリンを含まないNSAIDがスリンダク又はセレコキシブである、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記アスピリンを含まないNSAIDがスリンダクである、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
癌腫の予防的又は治療的処置のために、患者の適性を評価する方法であって、
a)前記患者の遺伝子型を決定する試験から、少なくとも1つのODC1プロモーター遺伝子アレルにおける+316番目の位置の結果を得る工程;及び
b)前記結果が、前記ODC1プロモーター遺伝子の少なくとも1つのアレルにおける+316番目の位置の前記患者の遺伝子型がGであることを示す場合に、前記患者におけるオルニチンデカルボキシラーゼ(ODC)を阻害する第一の薬剤と前記第一の薬剤と組み合わせた場合に、前記患者における全ポリアミン含量を低減するようにポリアミン経路を調節する第二の薬剤との、併用おける効果量の医薬治療による治療に対して、この患者が好適だと同定する工程、
を含む方法。
【請求項33】
前記第二の薬剤が、前記患者におけるスペルミジン/スペルミンN1−アセチルトランスフェラーゼの発現をもまた上昇させる、請求項1に記載の方法。
【請求項34】
前記結果が、前記遺伝子型を含む報告を受け取ること又は前記結果を表す患者病歴を取得することにより得られる、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記試験が、前記患者のODC1プロモーター遺伝子の1つのアレルにおける+316番目の位置のヌクレオチド塩基を決定する、請求項32に記載の方法。
【請求項36】
前記試験が、前記患者の前記ODC1プロモーター遺伝子の両方のアレルにおける+316番目の位置のヌクレオチド塩基を決定する、請求項32に記載の方法。
【請求項37】
前記結果が、前記ODC1プロモーター遺伝子の両方のアレルにおける+316番目の位置の前記患者の遺伝子型がGGであることを示す、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記結果が、前記ODC1プロモーター遺伝子の両方のアレルにおける+316番目の位置の前記患者の遺伝子型がGAであることを示す、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
前記医薬治療が、前記患者が既に低用量での前記医薬治療を受けている場合に、前記試験の結果を得る工程の前に、前記第一又は前記第二の薬剤の用量を増加させる工程をさらに含む、請求項32〜38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
前記医薬治療が、前記患者が既に低用量での前記医薬治療を受けている場合に、前記試験の結果を得る工程の前に、前記第一及び前記第二の薬剤の用量を増加させる工程をさらに含む、請求項32〜38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
前記第一の薬剤がα−ジフルオロメチルオルニチン(DFMO)である、請求項32〜40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
前記第二の薬剤がアスピリンを含まない非ステロイド抗炎症性薬(NSAID)である、請求項32〜40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
前記アスピリンを含まないNSAIDがCOX−2選択的阻害剤である、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記アスピリンを含まないNSAIDがスリンダク又はセレコキシブである、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
前記アスピリンを含まないNSAIDがスリンダクである、請求項42に記載の方法。
【請求項46】
患者の癌腫瘍を切除可能にする方法であって、
a)前記患者の遺伝子型を決定する試験から、少なくとも1つのODC1プロモーター遺伝子アレルにおける+316番目の位置の結果を得る工程;及び
b)前記結果が、前記ODC1プロモーター遺伝子の少なくとも1つのアレルにおける+316番目の位置の前記患者の遺伝子型がGであることを示す場合に、
(i)前記患者におけるオルニチンデカルボキシラーゼ(ODC)を阻害する第一の薬剤;及び
(ii)前記患者におけるスペルミジン/スペルミンN1−アセチルトランスフェラーゼの発現を上昇させる第二の薬剤、
を含む、効果量の医薬治療を患者に投与する工程、
を含む方法。
【請求項47】
前記結果が、前記遺伝子型を含む報告を受け取ること又は結果を表す患者病歴を取得することにより得られる、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記試験が、前記患者のODC1プロモーター遺伝子の1つのアレルにおける+316番目の位置のヌクレオチド塩基を決定する、請求項46に記載の方法。
【請求項49】
前記試験が、前記患者の前記ODC1プロモーター遺伝子の両方のアレルにおける+316番目の位置のヌクレオチド塩基を決定する、請求項46に記載の方法。
【請求項50】
前記結果が、前記ODC1プロモーター遺伝子の両方のアレルにおける+316番目の位置の前記患者の遺伝子型がGGであることを示す、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記結果が、前記ODC1プロモーター遺伝子の両方のアレルにおける+316番目の位置の前記患者の遺伝子型がGAであることを示す、請求項49に記載の方法。
【請求項52】
前記医薬治療が、前記患者が既に低用量での前記医薬治療を受けている場合に、前記試験の結果を得る工程の前に、前記第一又は前記第二の薬剤の用量を増加させる工程をさらに含む、請求項46〜51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
前記医薬治療が、前記患者が既に低用量での前記医薬治療を受けている場合に、前記試験の結果を得る工程の前に、前記第一及び前記第二の薬剤の用量を増加させる工程をさらに含む、請求項46〜51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項54】
前記第一の薬剤がα−ジフルオロメチルオルニチン(DFMO)である、請求項46〜53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項55】
前記第二の薬剤がアスピリンを含まない非ステロイド抗炎症性薬(NSAID)である、請求項46〜53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項56】
前記アスピリンを含まないNSAIDがCOX−2選択的阻害剤である、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記アスピリンを含まないNSAIDがスリンダク又はセレコキシブである、請求項55に記載の方法。
【請求項58】
前記アスピリンを含まないNSAIDがスリンダクである、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
癌腫の発生又は再発のリスクを有する患者における、癌腫の発生又は再発を予防する方法であって、
a)前記患者の遺伝子型を決定する試験から、少なくとも1つのODC1プロモーター遺伝子アレルにおける+316番目の位置の結果を得る工程;及び
b)前記結果が、前記ODC1プロモーター遺伝子の少なくとも1つのアレルにおける+316番目の位置の前記患者の遺伝子型がGであることを示す場合に、併用において効果量のα−ジフルオロメチルオルニチン(DFMO)とアスピリンを含まない非ステロイド抗炎症性薬(NSAID)とを、患者に投与する工程、
を含む方法。
【請求項60】
前記結果が、前記遺伝子型を含む報告を受け取ること又は結果を表す患者病歴を取得することにより得られる、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記試験が、前記患者のODC1プロモーター遺伝子の1つのアレルにおける+316番目の位置のヌクレオチド塩基を決定する、請求項59に記載の方法。
【請求項62】
前記試験が、前記患者の前記ODC1プロモーター遺伝子の両方のアレルにおける+316番目の位置のヌクレオチド塩基を決定する、請求項59に記載の方法。
【請求項63】
前記結果が、前記ODC1プロモーター遺伝子の両方のアレルにおける+316番目の位置の前記患者の遺伝子型がGGであることを示す、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記結果が、前記ODC1プロモーター遺伝子の両方のアレルにおける+316番目の位置の前記患者の遺伝子型がGAであることを示す、請求項62に記載の方法。
【請求項65】
少なくとも1つのODC1プロモーター遺伝子アレルの+316番目の位置にGを有することが同定された患者に、効果量のα−ジフルオロメチルオルニチン(DFMO)とアスピリンを含まない非ステロイド抗炎症性薬(NSAID)とを投与する工程を含む、α−ジフルオロメチルオルニチン(DFMO)及びアスピリンを含まない非ステロイド抗炎症性薬(NSAID)を用いた、癌腫の発生又は再発のリスクを有する患者の治療方法。
【請求項66】
前記患者のODC1プロモーター遺伝子アレル両方の、+316番目の位置の同定された遺伝子型がGGである、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記患者のODC1プロモーター遺伝子アレル両方の、+316番目の位置の同定された遺伝子型がGAである、請求項65に記載の方法。
【請求項68】
患者における癌腫を治療する方法であって、
a)前記患者の遺伝子型を決定する試験から、少なくとも1つのODC1プロモーター遺伝子アレルにおける+316番目の位置の結果を得る工程;及び
b)前記結果が、前記患者の遺伝子型の前記ODC1プロモーター遺伝子における+316番目の位置の少なくとも1つのアレルがGであることを示す場合に、α−ジフルオロメチルオルニチン(DFMO)及びアスピリンを含まない非ステロイド抗炎症性薬(NSAID)の、併用における効果量を前記患者に投与する工程、
を含む方法。
【請求項69】
前記結果が、前記遺伝子型を含む報告を受け取ること又は前記結果を表す患者病歴を取得することにより得られる、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
前記試験が、前記患者の前記ODC1プロモーター遺伝子の1つのアレルにおける+316番目の位置のヌクレオチド塩基を決定する、請求項68に記載の方法。
【請求項71】
前記試験が、前記患者の前記ODC1プロモーター遺伝子の両方のアレルにおける+316番目の位置のヌクレオチド塩基を決定する、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
前記結果が、前記ODC1プロモーター遺伝子の両方のアレルにおける+316番目の位置の前記患者の遺伝子型がGGであることを示す、請求項68に記載の方法。
【請求項73】
前記結果が、前記ODC1プロモーター遺伝子の両方のアレルにおける+316番目の位置の前記患者の遺伝子型がGAであることを示す、請求項68に記載の方法。
【請求項74】
前記アスピリンを含まないNSAIDがCOX−2選択的阻害剤である、請求項11、28、42、55及び59〜73のいずれか1項に記載の方法。
【請求項75】
前記アスピリンを含まないNSAIDがスリンダク又はセレコキシブである、請求項11、28、42、55及び59〜73のいずれか1項に記載の方法。
【請求項76】
前記アスピリンを含まないNSAIDがスリンダクである、請求項11、28、42、55及び59〜73のいずれか1項に記載の方法。
【請求項77】
DFMO及びスリンダクを全身に投与する、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
DFMO及びスリンダクを別個の経路により投与する、請求項76に記載の方法。
【請求項79】
前記DFMO又はアスピリンを含まないNSAIDを、経口的に、動脈内に又は静脈内に投与する、請求項76に記載の方法。
【請求項80】
前記DFMOを経口的に投与する、請求項79に記載の方法。
【請求項81】
前記DFMOの効果量が、500mg/日である、請求項80に記載の方法。
【請求項82】
前記DFMOを静脈内に投与する、請求項79に記載の方法。
【請求項83】
前記DFMOの効果量が、約0.05〜約5.0g/m2/日である、請求項82に記載の方法。
【請求項84】
前記DFMO及びアスピリンを含まないNSAIDを経口投与用に処方する、請求項79に記載の方法。
【請求項85】
前記DFMO及びアスピリンを含まないNSAIDを、固い又は軟らかい、カプセル又は錠剤として処方する、請求項84に記載の方法。
【請求項86】
前記DFMO及びアスピリンを含まないNSAIDを、12時間毎に投与する、請求項76に記載の方法。
【請求項87】
前記DFMO及びアスピリンを含まないNSAIDを、24時間毎に投与する、請求項76に記載の方法。
【請求項88】
前記スリンダクの効果量が約10〜約1500mg/日である、請求項76に記載の方法。
【請求項89】
前記スリンダクの効果量が、約10〜約400mg/日である、請求項88に記載の方法。
【請求項90】
前記スリンダクの効果量が150mg/日である、請求項88に記載の方法。
【請求項91】
DFMOを、スリンダクの前に投与する、請求項76に記載の方法。
【請求項92】
DFMOを、スリンダクの後に投与する、請求項76に記載の方法。
【請求項93】
DFMOを、スリンダクの前及び後に投与する、請求項76に記載の方法。
【請求項94】
DFMOをスリンダクと同時に投与する、請求項76に記載の方法。
【請求項95】
DFMOを、少なくとも二度目に投与する、請求項76に記載の方法。
【請求項96】
スリンダクを、少なくとも二度目に投与する、請求項76に記載の方法。
【請求項97】
前記患者が固形癌を有し、かつ、前記固形癌の切除をさらに含む方法である、請求項76に記載の方法。
【請求項98】
前記切除の前にDFMO及びスリンダクを投与する、請求項97に記載の方法。
【請求項99】
前記切除の後にDFMO及びスリンダクを投与する、請求項97に記載の方法。
【請求項100】
前記癌腫が、結腸直腸癌、乳癌、膵臓癌、脳腫瘍、肺癌、胃癌、血液癌、皮膚癌、精巣癌、前立腺癌、卵巣癌、肝臓癌又は食道癌、子宮頸癌、頭頸部癌、非メラノーマ性皮膚癌、神経芽細胞腫及び膠芽腫である、請求項1〜99のいずれか1項に記載の方法。
【請求項101】
前記癌腫が結腸直腸癌である、請求項100に記載の方法。
【請求項102】
前記結腸直腸癌がI期である、請求項101に記載の方法。
【請求項103】
前記結腸直腸癌がII期である、請求項101に記載の方法。
【請求項104】
前記結腸直腸癌がIII期である、請求項101に記載の方法。
【請求項105】
前記結腸直腸癌がIV期である、請求項101に記載の方法。
【請求項106】
前記患者における、新しい進行性結腸直腸新生物の形成を予防する、請求項1〜31及び59−105のいずれか1項に記載の方法。
【請求項107】
前記患者における、中毒性難聴又はそのリスクを予防する、請求項1〜31及び59〜105のいずれか1項に記載の方法。
【請求項108】
新しい進行性右側結腸直腸新生物の形成を予防する、請求項106に記載の方法。
【請求項109】
新しい進行性左側結腸直腸新生物の形成を予防する、請求項106に記載の方法。
【請求項110】
前記患者が結腸、直腸又は虫垂に1つ以上の腺腫性ポリープを有することが同定されている、請求項1〜109のいずれか1項に記載の方法。
【請求項111】
前記患者が1つ以上の進行した結腸直腸新生物を有することが同定されている、請求項1〜109のいずれか1項に記載の方法。
【請求項112】
前記患者が1つ以上の左側の進行した結腸直腸新生物を有することが同定されている、請求項1〜109のいずれか1項に記載の方法。
【請求項113】
前記患者が1つ以上の右側の進行した結腸直腸新生物を有することが同定されている、請求項1〜109のいずれか1項に記載の方法。
【請求項114】
前記患者が家族性腺腫性ポリポーシスであると診断されている、請求項1〜109のいずれか1項に記載の方法。
【請求項115】
前記患者がリンチ症候群であると診断されている、請求項1〜109のいずれか1項に記載の方法。
【請求項116】
前記患者が家族性結腸直腸癌タイプXであると診断されている、請求項1〜109のいずれか1項に記載の方法。
【請求項117】
前記患者がアムステルダム基準又はアムステルダム基準IIを満たしている、請求項1〜109のいずれか1項に記載の方法。
【請求項118】
前記患者が1つ以上の結腸直腸腺腫の切除歴を有する、請求項1〜117のいずれか1項に記載の方法。.
【請求項119】
前記患者がODCの過剰な活性に関連した上皮内癌又は前癌病変を有する、請求項1〜118のいずれか1項に記載の方法。
【請求項120】
前記患者が上皮内癌又は前癌病変及び上昇した細胞ポリアミンレベルを有する、請求項1〜118のいずれか1項に記載の方法。
【請求項121】
前記患者がヒトである、請求項1〜120のいずれか1項に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2012−526852(P2012−526852A)
【公表日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−511052(P2012−511052)
【出願日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【国際出願番号】PCT/US2010/034974
【国際公開番号】WO2010/132817
【国際公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(502446151)アリゾナ ボード オブ リージェンツ オン ビハーフ オブ ザ ユニバーシティー オブ アリゾナ (1)
【出願人】(511274363)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア,ア カリフォルニア コーポレーション (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【国際出願番号】PCT/US2010/034974
【国際公開番号】WO2010/132817
【国際公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(502446151)アリゾナ ボード オブ リージェンツ オン ビハーフ オブ ザ ユニバーシティー オブ アリゾナ (1)
【出願人】(511274363)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア,ア カリフォルニア コーポレーション (1)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]