説明

P2X7モジュレーターとしてのピロールおよびイソインドールカルボキサミド誘導体

本発明は、式(I):


[式中:
は、水素、ハロゲン、C1−6アルキル、C6−10アリールメチル−、C2−6アルケニル、C2−6アルキニルまたはC3−6シクロアルキルメチル−を意味し、該C1−6アルキル、C6−10アリールメチル−、C2−6アルケニル、C2−6アルキニルまたはC3−6シクロアルキルメチル−はいずれも、1、2または3個のハロゲン原子により置換されていてもよく;
は、水素、フッ素またはメチルを意味し;
あるいは、RおよびRは、それらが結合している炭素原子と一緒になって、C1−6アルキル、C2−6アルケニルおよびC2−6アルキニルからなる群から選択される、同じでも異なっていてもよい、1、2または3個の置換基により置換されていてもよいベンゼン環を形成する]
で示される化合物またはその医薬上許容される塩に関する。該化合物またはその塩は、P2X7受容体機能をモジュレートし、P2X7受容体でのATP効果に拮抗することができる。また、本発明は、P2X7受容体により介在される障害、例えば疼痛、炎症または神経変性疾患の治療における、かかる化合物またはその塩もしくは医薬組成物の使用を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、P2X7受容体機能を調節し、かつP2X7受容体にてATPの効果を拮抗し得る複素環アミド誘導体(P2X7受容体アンタゴニスト);それらの調製方法;それらを含む医薬組成物;および治療における該化合物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
P2X7受容体は、造血系の細胞、例えば、マクロファージ、ミクログリア、マスト細胞およびリンパ球(TおよびB)において発現され(例えば、Colloら,Neuropharmacology,Vol.36,pp1277−1283(1997)を参照のこと)、かつ細胞外ヌクレオチド、特に、アデノシン三リン酸(ATP)により活性化されるリガンド依存性イオン−チャネル型である。P2X7受容体の活性化は、巨細胞形成、脱顆粒、細胞傷害性細胞死、CD62L脱落、細胞増殖の調節、ならびにインターロイキン1(IL−1β)および腫瘍壊死因子(TNFα)(例えば、Hideら、Journal of Neurochemistry,Vol.75,pp965−972(2000))のごとき前炎症性サイトカインの放出に関与している。P2X7受容体はまた、抗原提示細胞、ケラチノサイト、耳下腺細胞、肝細胞、赤血球、赤血球白血球細胞、単球、線維芽細胞、骨髄細胞、ニューロンおよび腎メサンギウム細胞にある。さらに、P2X7受容体は、中枢および抹消神経系にあるシナプス前終末により発現され、また、グリア細胞においてグルタミン酸の放出を調節することが示されている(Anderson,C.ら Drug.Dev.Res.,Vol.50,page 92(2000))。
【0003】
免疫系の主要な細胞へのP2X7受容体の局在化は、これらの細胞から重要な炎症性メディエーターを放出する該受容体の能力と相まって、疼痛および神経変性障害を含む多様な疾患の治療におけるP2X7受容体アンタゴニストの潜在的役割を示唆している。前臨床インビボ研究は、P2X7受容体を炎症性および神経因性疼痛の両方に直接関係付けており(Dell’Antonioら、Neurosci.Lett.,Vol.327,pp87−90(2002)、Chessell,IPら、Pain,Vol.114,pp386−396(2005))、一方で、P2X7受容体が皮質ニューロンのミクログリア細胞誘発性の死を介在するというインビトロでの証拠がある(Skaper,S.D.ら、、Program No.937.7.2005 Abstract Viewer/Itinerary Planner.Washington,DC:Society for Neuroscience,2005.Online)。加えて、アルツハイマー病のマウスモデルにおいてβ−アミロイドプラーク周囲にP2X7受容体のアップレギュレーションが観察された(Parvathenani,L.ら、J.Biol.Chem.,Vol.278(15),pp13309−13317(2003))。
【0004】
T.KatoおよびM.Sato、Yakugaku Zasshi,1972,92(12),1507−1514は、N−ベンジル−1−ベンジル−3−メチル−5−オキソ−3−ピロリン−2−カルボキサミドを化合物(VIIId)として開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、P2X7受容体機能を調節し、かつP2X7受容体にてATPの効果を拮抗し得る化合物(P2X7受容体アンタゴニスト)を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一の態様において、式(I):
【化1】

[式中:
は、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、C3−6シクロアルキル、C3−6シクロアルキルメチル−またはピリジニルメチル−(これらはいずれも、1、2または3個のハロゲン原子により置換されていてもよい);または非置換フェニルまたはベンジルを意味し;
は、水素、ハロゲン、C1−6アルキル、C6−10アリールメチル−、C2−6アルケニル、C2−6アルキニルまたはC3−6シクロアルキルメチル−を意味し、該C1−6アルキル、C6−10アリールメチル−、C2−6アルケニル、C2−6アルキニルまたはC3−6シクロアルキルメチル−はいずれも、1、2または3個のハロゲン原子により置換されていてもよく;
は、水素、フッ素またはメチルを意味し;
あるいは、RおよびRは、それらが結合している炭素原子と一緒になって、C1−6アルキル、C2−6アルケニルおよびC2−6アルキニルからなる群から選択される、同じでも異なっていてもよい、1、2または3個の置換基により置換されていてもよいベンゼン環を形成し;
は、水素、フッ素またはメチルを意味し;
、R、R、RおよびRは、独立して、水素、ハロゲン(例えば、フッ素または塩素)、シアノ、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、C3−6シクロアルキルまたはフェニルを意味し、該C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、C3−6シクロアルキルまたはフェニルはいずれも、1、2または3個のハロゲン原子により置換されていてもよく;またはRおよびRは、それらが結合している炭素原子と一緒になって、1、2または3個のハロゲン原子により置換されていてもよいベンゼン環を形成する:
ただし、RおよびRが、両方とも、水素またはフッ素から選択される場合、少なくとも1つのR、RおよびRは、ハロゲン原子である]
で示される化合物またはその医薬上許容される塩を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本明細書にて用いられる場合、(基または基の一部として用いられる)「アルキル」なる用語は、特定数の炭素原子を含む直鎖または分枝鎖炭化水素鎖をいう。例えば、C1−6アルキルは、少なくとも1個、多くても6個の炭素原子を含む直鎖または分枝鎖炭化水素鎖を意味する。アルキルの例は、メチル(Me)、エチル(Et)、n−プロピル、i−プロピル、n−ヘキシルおよびi−ヘキシルを含むが、これらに限定されない。
【0008】
本明細書にて用いられる場合、「アルケニル」なる用語は、特定数の炭素原子を含み、少なくとも1つの炭素−炭素結合が二重結合である、直鎖または分枝鎖炭化水素鎖をいう。アルケニルの例は、エテニル、プロペニル、n−ブテニル、i−ブテニル、n−ペンテニルおよびi−ペンテニルを含むが、これらに限定されない。
【0009】
本明細書にて用いられる場合、「アルキニル」なる用語は、特定数の炭素原子を含み、少なくとも1つの炭素−炭素結合が三重結合である、直鎖または分枝炭化水素鎖をいう。アルキニルの例は、エチニル、プロピニル、ブチニル、i−ペンチニル、n−ペンチニル、i−ヘキシニルおよびn−ヘキシニルを含むが、これらに限定されない。
【0010】
別記しない限り、「シクロアルキル」なる用語は、閉環式の3ないし6員の非芳香環、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルまたはシクロヘキシルを意味する。
【0011】
本明細書にて用いられる場合、「アリール」なる用語は、少なくとも1つの環が芳香族である、C6−10単環式または二環式炭化水素環をいう。かかる基の例はフェニルおよびナフチルを含む。
【0012】
別記しない限り、本明細書中、「ハロゲン」なる用語は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素から選択される基を表すために用いられる。
【0013】
基(例えば、R、R、R、R、R、R、R、Rおよび/またはR)、例えば、具体例が本明細書に記載されている異なる基の具体例のすべての可能性ある組み合わせの特定の、好ましい、適当な、または他の具体例のすべての可能性ある組み合わせを包含し、開示することは理解されよう。
【0014】
本発明のある特定の具体例において、Rは、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C3−6シクロアルキルまたはピリジニルメチル−(これらはいずれも、1、2または3個のハロゲン原子により置換されていてもよい);または非置換フェニルまたはベンジルである。
【0015】
特定の具体例において、Rは、非置換C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、C3−6シクロアルキル、ピリジニルメチル−、フェニルまたはベンジルである。さらに特定の具体例において、Rは、非置換C1−4アルキル、C3−5シクロアルキル、ピリジニルメチル−、フェニルまたはベンジルである。
好ましくは、Rは、メチルまたはエチルである。より好ましくは、Rはメチルである。
【0016】
本発明の一の特定の具体例において、Rは、水素、ハロゲン、C1−6アルキル、C6−10アリールメチル−、C2−6アルケニル、C2−6アルキニルまたはC3−6シクロアルキルメチル−である。
【0017】
さらに特定の具体例において、Rは、水素またはメチルである。さらに特定の具体例において、Rは水素である。
本発明の一の特定の具体例において、Rは、水素またはメチルである。さらに特定の具体例において、Rはメチルである。
【0018】
本発明の別の具体例において、RおよびRは、それらが結合している炭素原子と一緒になって、C1−6アルキル、C2−6アルケニルおよびC2−6アルキニルからなる群から選択される、同じでも異なっていてもよい、1、2または3個(例えば、1または2個)の置換基により置換されていてもよいベンゼン環を形成する。この場合、特定の具体例において、RおよびRは、それらが結合している炭素原子と一緒になって、C1−4アルキル(例えば、メチルまたはエチル、例えばメチル)であり、同じでも異なっていてもよい、1、2または3個(例えば、1または2個)の置換基により置換されていてもよいベンゼン環を形成する。この場合、さらに特定の具体例において、RおよびRは、それらが結合している炭素原子と一緒になって、非置換ベンゼン環を形成する。
【0019】
本発明の特定の具体例において、Rは、水素またはメチル(例えば、水素)およびRは、水素またはメチル(例えば、メチル)であるか;
あるいは、RおよびRは、それらが結合している炭素原子と一緒になって、非置換ベンゼン環を形成する。さらに特定の具体例において、RおよびRは、それらが結合している炭素原子と一緒になって、非置換ベンゼン環を形成する。
【0020】
本発明の特定の具体例において、Rは、水素またはメチルである。さらに特定の具体例において、Rは水素である。
本発明の一の特定の具体例において、R、R、R、RおよびRは、独立して、水素、ハロゲン(例えば、フッ素または塩素)、シアノ、トリフルオロメチルまたは非置換C1−6アルキルであるか;またはRおよびRは、それらが結合している炭素原子と一緒になって、非置換ベンゼン環を形成する。さらに特定の具体例において、R、R、R、RおよびRは、独立して、水素、ハロゲン(例えば、フッ素または塩素)、メチルまたはトリフルオロメチルである。より詳細な具体例において、R、R、R、RおよびRは、独立して、水素、塩素、フッ素、臭素、メチルまたはトリフルオロメチル;例えば、水素、塩素、フッ素、メチルまたはトリフルオロメチルである。
【0021】
本発明の一の特定の具体例において:
が、非置換C1−4アルキル、C2−4アルケニル、C3−5シクロアルキル、ピリジニルメチル−、フェニルまたはベンジルであり(特に、Rは、メチルまたはエチルである);
およびRが、水素またはメチルであるか、またはRおよびRは、それらが結合している炭素原子と一緒になって、非置換ベンゼン環を形成し;
、R、R、RおよびRは、独立して、水素、塩素、フッ素、臭素、メチルまたはトリフルオロメチルである、
式(I)で示されるまたはその医薬上許容される塩を提供する。
【0022】
好ましくは、Rは、メチルまたはエチル(例えば、メチル)であり;
およびRは、水素またはメチルであるか、またはRおよびRは、それらが結合している炭素原子と一緒になって、非置換ベンゼン環を形成し;
、R、R、RおよびRは、独立して、水素、塩素、フッ素、臭素、メチルまたはトリフルオロメチルである。
【0023】
本発明のすべての具体例において、RおよびRが、両方とも、水素またはフッ素から選択される場合、少なくとも1つのR、RおよびRは、ハロゲン原子である。
【0024】
本発明の特定の具体例において、RおよびRが、両方とも、水素またはフッ素から選択される場合、少なくとも1つのR、RおよびRは、ハロゲン原子であり、R、RおよびRの1つまでがCF基である。
【0025】
本発明の特定の態様において、下記に示す実施例E1〜E7から選択される化合物を提供する。
【0026】
本発明の好ましい具体例において:
N−{[2−クロロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル]メチル}−2−エチル−3−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−1−カルボキサミド:
【化2】

(例えば、E4を参照)、または
N−[(2,4−ジクロロフェニル)メチル]−2−メチル−3−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−1−カルボキサミド:
【化3】

(例えば、E5を参照)、または
N−{[2−クロロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル]メチル}−2−メチル−3−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−1−カルボキサミド:
【化4】

(例えば、E7を参照)
を提供する。
【0027】
P2X7のアンタゴニストは、様々な疼痛状態(例えば、神経因性疼痛、慢性炎症性疼痛および内臓痛)、炎症および神経変性、特に、アルツハイマー病の予防、治療または改善において有用であってもよい。P2X7アンタゴニストはまた、関節リウマチおよび炎症性腸疾患の管理において有用な治療剤であり得る。
【0028】
P2X7受容体機能を調節し、かつP2X7受容体にてATPの効果を拮抗し得る本発明の化合物またはその塩(P2X7受容体アンタゴニスト)は、P2X7受容体機能の競合的アンタゴニスト、逆アゴニスト、または負のアロステリック調節因子であり得る。
【0029】
幾つかの場合において、式(I)のある種の化合物はその酸付加塩を形成してもよい。医薬において用いるために式(I)で示される化合物は塩として用いられてもよいことは明らかだろう。かかる場合、該塩は医薬上許容される必要がある。医薬上許容される塩は、Berge,BighleyおよびMonkhouse,J.Pharm.Sci.,1977,66,1−19により記載されたものを含む。本発明の化合物が塩基性である場合、医薬上許容される塩(酸付加塩の場合)、一の具体例において、無機酸および有機酸、例えば化合物と酸の混合物を含む医薬上許容される酸から調製される。かかる酸は、酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、粘液酸、硝酸、パモ酸、パントテン酸、リン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、p−トルエンスルホン酸等を含む。特定の具体例において、医薬上許容される酸は、ベンゼンスルホン酸、カンファースルホン酸、エタンスルホン酸、臭化水素酸、塩酸、メタンスルホン酸、硝酸、リン酸、硫酸またはp−トルエンスルホン酸である。
【0030】
医薬上許容される塩の例としては、マレイン酸、フマル酸、安息香酸、アスコルビン酸、パモ酸、コハク酸、塩酸、硫酸、ビスメチレンサリチル酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、プロピオン酸、酒石酸、サリチル酸、クエン酸、グルコン酸、アスパラギン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、イタコン酸、グリコール酸、p−アミノ安息香酸、グルタミン酸、ベンゼンスルホン酸、シクロヘキシルスルファミン酸、リン酸および硝酸から形成されたものが挙げられる。
【0031】
式(I)で示される化合物またはその塩は、結晶または非結晶形態にて調製されてもよく、結晶ならば、所望により溶媒和されてもよく、例えば、水和物であってもよい。本発明は化学量論的な溶媒和物(例えば、水和物)ならびに様々な量の溶媒(例えば、水)を含む化合物をその範囲内に含む。
【0032】
式(I)で示される化合物またはその塩は、立体異性形態(例えば、ジアステレオマーおよびエナンチオマー)にて存在することができ、本発明はこれらの立体異性形態の各々およびラセミ体を含むそれらの混合物にまで及ぶ。異なる立体異性形態は、一般的な方法により互いに分離されてもよく、あるいは、特定の異性体は立体特異的または不斉合成により得ることができる。本明細書の実施例において、最終生成物の組成は特徴付けられておらず、したがって、最終生成物の立体化学は示していない。しかしながら、生成物混合物の主な成分のキラリティーは、出発材料のキラリティーを反映していると考えられ、エナンチオマー過剰率は用いた合成方法に依存しており、また、類似の実施例(そのような実施例が存在する場合)について測定されたものと同様であろう。したがって、一のキラル形態にて示される化合物または塩は、適当な出発材料を用いて、別のキラル形態にて調製され得ると考えられる。あるいは、ラセミ出発材料が用いられる場合、ラセミ生成物が得られ、一般的な方法により単一のエナンチオマーが分離され得ると考えられよう。本発明はまた任意の互変異性形態およびその混合物にまで及ぶ。
【0033】
本発明は同位体で標識された化合物または塩も含み、これは、1つまたは複数の原子が通常自然界で見出される原子質量または質量数とは異なる原子質量または質量数を有する原子により置換されているという事実を除き、式(I)およびその下位式で示されるものと同一である。本発明の化合物または塩に取り入れられ得る同位体の例としては、水素、炭素、窒素、酸素、リン、フッ素、ヨウ素および塩素の同位体、例えば、3H、11C、14C、18F、123Iおよび125Iが挙げられる。
【0034】
前記した同位体および/または他の原子の他の同位体を含む本発明の化合物および該化合物の医薬上許容される塩は本発明の範囲内である。同位体で標識された本発明の化合物またはその塩、例えば、3H、14Cなどの放射性同位体が取り入れられているものは、薬剤および/または基質組織分布アッセイにおいて有用であり得る。トリチウム、すなわち、3H、および炭素−14、すなわち、14C同位体はそれらの準備し易さおよび検出能のために特に好ましい。11Cおよび8F同位体はPET(ポジトロンエミッション断層撮影)において特に有用であり、125I同位体はSPECT(シングルフォトエミッションコンピュータ断層撮影)において特に有用である。PETおよびSPECTは脳撮像において有用である。さらに、重水素、すなわち、2Hのごときより重い同位体で置き換えることにより、インビボ半減期の増大または必要用量の軽減などの、より高い代謝的安定性に起因するある種の治療上の利点を得ることができ、それ故に、このような置き換えは幾つかの場合において好ましくあってもよい。同位体で標識された本発明の式(I)およびその下位式で示される化合物またはその塩は、一の具体例において、同位体で標識されていない試薬の代わりに容易に入手できる同位体で標識された試薬を用いて、以下のスキームおよび/または実施例において開示される手段を実施することにより、調製される。
【0035】
本発明のさらなる態様において、放射性同位体標識化合物または塩ではない式(I)で示される化合物またはその医薬上許容される塩を提供する。特定の具体例において、化合物または塩は、同位体標識化合物または塩ではない。
【0036】
化合物の調製
式(I):
【化5】

[式中、可変基は、上記と同意義である]
で示される化合物またはその塩および溶媒和物は、本明細書に記載の方法論により調製することができ、これは、本発明のさらなる態様を構成する。
【0037】
本発明のさらなる態様により、式(I)で示される化合物またはその医薬上許容される塩の製造方法であって:
(a)式(2)で示されるカルボン酸(またはその活性化誘導体)を、式(3)で示されるアミンとカップリングさせること(スキーム1を参照)(式中、R、R、R、R、R、R、R、R、およびRは、上記と同意義であり、化合物(2)および(3)は、保護されていてもよい);
(b)式(4)で示される化合物を、適当な塩、例えば塩化リチウム、および適当な塩基、例えばトリエチルアミンで、適当な溶媒、例えばテトラヒドロフラン中、適当な温度、0℃〜室温で処理すること(スキーム2を参照)(式中、R、R、R、R、R、R、R、R、およびRは、上記と同意義であり、化合物(4)は、保護されていてもよい);
(c)保護されている式(I)を脱保護すること(保護基およびその除去方法としては、T.W.GreeneおよびP.G.M.Wuts「Protective Groups in Organic Synthesis」(J.WileyおよびSons,3rd Ed.1999)に見ることができる);
(d)式(I)で示される化合物を、他の式(I)で示される化合物に相互変換すること(慣用的な相互変換法の例としては、エピマー化、酸化、還元、アルキル化、芳香族置換、求核置換、アミドカップリングおよびエステル加水分解が挙げられる);
を含む方法を提供する。
【0038】
【化6】

【0039】
式(2)で示される酸および式(3)で示されるアミンのカップリングは、典型的には、適当な溶媒、例えばDMFおよび/またはジクロロメタン中、適当な温度、例えば0℃〜室温での、活性化剤、例えばN−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド塩酸塩またはポリマー支持カルボジイミド、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBT)または1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾール(HOAt)、および任意に、適当な塩基、第三級アルキルアミン(例えば、ジイソプロピルエチルアミン、N−エチルモルホリン、トリエチルアミン)またはピリジンの使用を含む。別法として、(2)および(3)のカップリングは、O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェートおよび適当な第三級アルキルアミン、例えばジイソプロピルエチルアミンで、適当な溶媒、例えばジメチルホルムアミド中、適当な温度、例えば室温で処理することにより行うことができる。別法として、式(2)で示される化合物は、活性化誘導体(例えば、酸クロライド、混合無水物、活性エステル(例えば、O−アシル−イソウレア))として用いられ、プロセス(a)の環境下で、典型的には、該活性化誘導体をアミンで処理することを含む(Ogliaruso,M.A.;Wolfe,J.F. The Chemistry of Functional Groups(Ed.Patai,S.)Suppl.B:The Chemistry of Acid Derivatives,Pt.1(John WileyおよびSons,1979),pp442−8;Beckwith,A.L.J. The Chemistry of Functional Groups(Ed.Patai,S.)Suppl.B:The Chemistry of Amides(Ed.Zabricky,J.)(John WileyおよびSons,1970),pp 73 ff)。
【0040】
【化7】

【0041】
式(2)および(4)で示される化合物の調製の代表的な方法を、下記スキーム3〜4に示す。
【化8】

【0042】
工程(i)は、典型的には、(5)を、アルコール、例えばエタノールおよび酸、例えば濃硫酸で、適当な溶媒、例えばトルエン中、適当な温度、例えば室温〜120℃で処理することを含む。
工程(ii)は、典型的には、(6)を、ハロゲン、例えば臭素での処理、適当な溶媒、例えばクロロホルム中、適当な温度、例えば室温〜還流温度での、ランプ、例えば120Wタングステン電球で照射を含む。
工程(iii)は、典型的には、適当な溶媒、例えばテトラヒドロフラン中、適当な温度、例えば室温での(7)のアミン(8)での処理を含む。
脱保護工程(iv)は、典型的には、カルボン酸エステルを、酸に変換する標準的な方法、例えば、適当な溶媒、例えばエタノールおよび水の混合物中、適当な温度、例えば0℃〜室温での適当な水酸化物塩(例えば、水酸化ナトリウム)の使用を含む。
【0043】
【化9】

【0044】
反応は、典型的には、式(11)で示されるジカルボニル化合物、式(12)で示されるビス(アルキルオキシ)ホスホリル酢酸、式(13)で示されるイソシアニドおよび式(14)で示されるアミンの混合物を、適当な溶媒、例えばメタノール中、適当な温度、例えば室温〜160℃で撹拌することを含む。化合物(13)および(14)は、所望により保護されていてもよい。これと類似の方法は、化学文献に記載されている(例えば、H.TyeおよびM.Whittaker,Org.Biomol.Chem.,2004,2,813−815;G.C.B.Harriman WO9900362A1)。
【0045】
一般式(5)、(8)、(11)、(12)、(13)および(14)で示される化合物は、典型的には、市販されているか、または、当業者により、化学文献に記載の方法を用いて(または類似の方法を用いて)容易に調製することができる。
【0046】
関連する場合、医薬上許容される塩は、適当な酸または酸誘導体との反応により、慣用的に調製してもよい。
【0047】
臨床的適応
本発明の化合物または医薬上許容される塩は、P2X7受容体機能を調節し、かつP2X7受容体においてATPの効果を拮抗し得るので、該化合物は、急性疼痛、慢性疼痛、慢性関節痛、筋骨格系疼痛、神経因性疼痛、炎症性疼痛、内臓痛、癌に付随する疼痛、片頭痛に付随する疼痛、緊張性頭痛および群発性頭痛、機能性腸障害に付随する疼痛、腰部および頸部疼痛、捻挫および筋挫傷に付随する疼痛、交感神経依存性疼痛;筋炎;インフルエンザまたは他のウイルス感染、例えば、風邪に付随する疼痛、リウマチ熱に付随する疼痛、心筋虚血に付随する疼痛、術後疼痛、癌化学療法、頭痛、歯痛および月経困難症を含む疼痛の治療において有用であってもよいと考えられる。
【0048】
慢性関節痛状態は、関節リウマチ、骨関節炎、リウマチ様脊椎炎、痛風性関節炎および若年性関節炎を含む。
【0049】
機能性腸障害に付随する疼痛は、非潰瘍性消化不良、非心臓性胸痛および過敏性腸症候群を含む。
【0050】
神経因性疼痛症候群は、糖尿病性神経障害、坐骨神経痛、非特異性腰痛、三叉神経痛、多発性硬化症による疼痛、線維筋痛、HIV−関連神経障害、ヘルペス後神経痛、三叉神経痛、および身体外傷、切断術、幻肢症候群、脊髄手術、癌、毒素または慢性炎症性状態に起因する疼痛を含む。加えて、神経因性疼痛状態は、通常は痛くない感覚、例えば、「しびれてピリピリする感覚」に付随する疼痛(錯感覚および感覚異常)、接触に対する感受性の増大(知覚過敏)、非侵害性刺激後の痛み(動的、静的、熱的または冷的アロディニア)、侵害性刺激に対する感受性の増大(熱的、冷的、機械的痛覚過敏)、刺激の除去後に引き続き存在する痛み(痛覚過敏)、または選択的感覚経路の欠如もしくは欠損(痛覚鈍麻)を含む。
【0051】
本発明の化合物により潜在的に治療され得る他の状態は、熱、炎症、免疫疾患、血小板機能異常疾患(例えば、血管閉塞性疾患)、インポテンスまたは勃起機能不全;異常な骨代謝または再吸収により特徴付けられる骨疾患;非ステロイド性抗炎症薬(NSAID’s)およびシクロオキシゲナーゼ−2(COX−2)阻害剤の血行力学的副作用、循環器疾患;神経変性疾患および神経変性、外傷後の神経変性、耳鳴、依存誘発性物質、例えば、オピオイド(例えば、モルヒネ)、CNS抑制薬(例えば、エタノール)、精神刺激剤(例えば、コカイン)およびニコチンへの依存;I型糖尿病の合併症、腎臓機能障害、肝機能障害(例えば、肝炎、肝硬変)、胃腸障害(例えば、下痢)、結腸癌、過活動膀胱および急迫性尿失禁を含む。鬱およびアルコール依存症も本発明の化合物により潜在的に治療され得る。
【0052】
炎症性状態は、皮膚状態(例えば、日焼け、熱傷、湿疹、皮膚炎、アレルギー性皮膚炎、乾癬)、髄膜炎、眼疾患、例えば、緑内障、網膜炎、網膜症、ブドウ膜炎および眼組織への急性損傷(例えば、結膜炎);炎症性肺障害(例えば、喘息、気管支炎、気腫、アレルギー性鼻炎、呼吸窮迫症候群、愛鳩家病、農夫肺、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気道過敏症);胃腸管障害(例えば、アフター性潰瘍、クローン病、アトピー性胃炎、胃炎バリアロフォルム(gastritis varialoforme)、潰瘍性大腸炎、セリアック病、限局性回腸炎、過敏性腸症候群、炎症性腸疾患、胃腸逆流障害);臓器移植、および炎症性要素を伴う他の状態、例えば、血管疾患、片頭痛、結節性動脈周囲炎、甲状腺炎、再生不良性貧血、ホジキン病、強皮症、重症筋無力症、多発性硬化症、サルコイドーシス、ネフローゼ症候群、ベーチェット病、歯肉炎、心筋虚血、発熱、全身性エリテマトーデス、多発性筋炎、腱炎、滑液包炎およびシェーグレン症候群を含む。
【0053】
免疫疾患は、自己免疫疾患、免疫不全疾患または臓器移植を含む。
【0054】
異常な骨代謝または再吸収により特徴付けられる骨疾患は、骨粗鬆症(特に、閉経後骨粗鬆症)、高カルシウム血症、副甲状腺機能高進症、パジェット病の骨疾患、骨溶解、骨転移を伴うまたは伴わない悪性腫瘍の高カルシウム血症、関節リウマチ、歯周炎、骨関節炎、骨痛、骨減少症、癌悪液質、結石症(特に、尿路結石)、固形癌、痛風および強直性脊椎炎、腱炎および滑液包炎を含む。
【0055】
循環器疾患は、高血圧または心筋虚血;アテローム性動脈硬化症;機能性または器質性静脈不全;静脈瘤療法;痔核;および動脈圧の著しい低下に付随するショック状態(例えば、敗血症ショック)を含む。
【0056】
神経変性疾患は、認知症、特に、変性認知症(老年性認知症、レヴィー小体に伴う認知症、アルツハイマー病、ピック病、ハンチントン舞踏病、パーキンソン病およびクロイツフェルト−ヤコブ病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)および運動ニューロン疾患を含む);血管性認知症(多発脳梗塞性認知症を含む);ならびに頭蓋内占拠性病変;外傷;感染および関連状態(HIV感染、髄膜炎および帯状疱疹を含む);代謝;毒素;無酸素症およびビタミン欠乏に付随する認知症;ならびに加齢に付随する軽度認識障害、特に、加齢関連記憶障害を含む。
【0057】
式(I)で示される化合物またはその医薬上許容される塩は、神経保護のため、および卒中、心停止、肺バイパス術、外傷性脳損傷、脊髄損傷等のごとき外傷後の神経変性の治療において有用であってもよい。
【0058】
本発明の化合物またはその医薬上許容される塩は、悪性細胞成長および/または転移、および筋原性白血病の治療において有用であってもよい。
【0059】
I型糖尿病の合併症は、糖尿病性細小血管症、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、黄斑変性症、緑内障、ネフローゼ症候群、再生不良性貧血、ブドウ膜炎、川崎病およびサルコイドーシスを含む。
【0060】
腎臓機能障害は、腎炎、糸球体腎炎、特に、メサンギウム増殖性糸球体腎炎、および腎炎症候群を含む。
【0061】
明確に別記されない限り、治療への言及は、確立した症状の治療および予防的治療の両方を含むことが理解されるべきである。
【0062】
故に、本発明のさらなる一の態様によれば、治療において用いるため、および/またはヒトまたは獣医用医薬において用いるための式(I)で示される化合物またはその医薬上許容される塩が提供される。
【0063】
本発明の別の態様によれば、哺乳動物、例えばヒトまたはラット、例えばヒトにおける、P2X7受容体により介在される症状、例えば、本明細書において開示されている症状または疾患(特に、疼痛、炎症または神経変性疾患、さらに具体的には、疼痛、例えば炎症性疼痛、神経因性疼痛または内臓痛)の治療または予防(例えば、治療)において用いるための式(I)で示される化合物またはその医薬上許容される塩が提供される。
【0064】
本発明のさらなる一の態様によれば、P2X7受容体により介在される症状、例えば、本明細書において開示されている症状または疾患(特に、疼痛、炎症または神経変性疾患、さらに具体的には、疼痛、例えば炎症性疼痛、神経因性疼痛または内臓痛)を患っているヒトまたは動物(例えば、齧歯類、例えばラット)対象の治療方法であって、該対象へ式(I)で示される化合物またはその医薬上許容される塩を有効量投与することを含む方法が提供される。
【0065】
本発明のさらなる一の態様によれば、疼痛、炎症または神経変性疾患を患っているヒトまたは動物(例えば、齧歯類、例えばラット)対象、例えばヒト対象の治療方法であって、該対象へ式(I)で示される化合物またはその医薬上許容される塩を有効量投与することを含む方法が提供される。
【0066】
本発明のよりさらなる一の態様によれば、炎症性疼痛、神経因性疼痛または内臓痛を患っているヒトまたは動物対象の治療方法であって、該対象へ式(I)で示される化合物またはその医薬上許容される塩を有効量投与することを含む方法が提供される。
【0067】
本発明のさらなる一の態様によれば、アルツハイマー病を患っている対象、例えば、ヒト対象の治療方法であって、該対象へ式(I)で示される化合物またはその医薬上許容される塩を有効量投与することを含む方法が提供される。
【0068】
本発明の別の態様によれば、哺乳動物、例えばヒトまたは齧歯類、例えばヒトまたはラット、例えばヒトにおける、P2X7受容体の作用により介在される症状、例えば、本明細書において開示されている症状または疾患(特に、疼痛、炎症または神経変性疾患、さらに具体的には、疼痛、例えば炎症性疼痛、神経因性疼痛または内臓痛)の治療または予防(例えば、治療)用医薬の製造のための式(I)で示される化合物またはその医薬上許容される塩の使用が提供される。
【0069】
本発明の別の態様によれば、哺乳動物、例えばヒトまたは齧歯類、例えばヒトまたはラット、例えばヒトにおける、疼痛、炎症、免疫疾患、骨疾患または神経変性疾患(特に、疼痛、炎症または神経変性疾患、さらに具体的には、疼痛、例えば炎症性疼痛、神経因性疼痛または内臓痛)の治療または予防(例えば、治療)用医薬の製造のための式(I)で示される化合物またはその医薬上許容される塩の使用が提供される。
【0070】
本発明の別の態様によれば、例えば、哺乳動物、例えばヒトまたは齧歯類、例えばヒトまたはラット、例えばヒトにおける、炎症性疼痛、神経因性疼痛または内臓痛の治療または予防(例えば、治療)用医薬の製造のための式(I)で示される化合物またはその医薬上許容される塩の使用が提供される。
【0071】
本発明の一の態様において、例えば、哺乳動物、例えばヒトまたは齧歯類、例えばヒトまたはラット、例えばヒトにおける、アルツハイマー病の治療または予防(例えば、治療)用医薬の製造のための式(I)で示される化合物またはその医薬上許容される塩の使用が提供される。
【0072】
ヒトおよび他の哺乳類の治療のために式(I)で示される化合物またはその医薬上許容される塩を使用するために、通常、それらは医薬組成物に関する標準的な薬務に従って処方される。故に、本発明の別の態様において、ヒトまたは獣医用医薬における使用に適合された、式(I)で示される化合物またはその医薬上許容される塩を含む医薬組成物が提供される。
【0073】
式(I)で示される化合物またはその医薬上許容される塩を治療において用いるために、通常、それらは標準的な薬務に従って医薬組成物に処方され得る。
【0074】
本発明は式(I)で示される化合物またはその医薬上許容される塩、および所望により医薬上許容される担体または賦形剤を含む医薬組成物も提供する。
【0075】
適当には周囲温度および大気圧にて混合により調製されてもよい本発明の医薬組成物は、通常、経口、非経口または直腸投与に適しており、それ自体は、錠剤、カプセル剤、経口液体調製物、散剤、顆粒剤、ロゼンジ、復元用散剤、注射用もしくは注入用溶液もしくは懸濁液または坐剤の形態であってもよい。経口投与可能な組成物が一般的に好ましい。
【0076】
経口投与用の錠剤およびカプセル剤は単位投与形態であってもよく、慣用的な賦形剤、例えば、結合剤、充填剤、錠剤用潤滑剤、崩壊剤および許容される湿潤剤を含んでいてもよい。錠剤は、通常の薬務においてよく知られている方法に従ってコーティングされてもよい。
経口液体調製物は、例えば、水性または油性懸濁液、溶液、エマルジョン、シロップまたはエリキシルの形態であってもよく、或いは、使用前に水または他の適当なビヒクルを用いて復元するための乾燥製品の形態であってもよい。かかる液体調製物は、慣用的な添加物、例えば、懸濁化剤、乳化剤、非水性ビヒクル(食用油を含んでいてもよい)、防腐剤、および所望により、慣用的な香味剤または着色剤を含んでいてもよい。
【0077】
非経口投与に関して、例えば、本発明の化合物またはその医薬上許容される塩および滅菌ビヒクルを利用して流体単位投与形態が調製される。一の特定の具体例において、用いるビヒクルおよび濃度に応じて、化合物または塩はビヒクル中に懸濁または溶解される。溶液を調製する場合、化合物または塩は注射用に溶解され、ついで、フィルター滅菌され、その後、適当なバイアルまたはアンプルに充填および密封され得る。一の具体例において、局所麻酔薬、防腐剤および緩衝剤のごときアジュバントがビヒクル中に溶解される。安定性を高めるために、組成物は、例えば、バイアルに充填され減圧下で水を除去した後に、凍結され得る。非経口用懸濁液は、典型的には、化合物またはその塩を、典型的にはビヒクル中に溶解する代わりに懸濁させ、かつ滅菌が濾過により容易に達成され得ないという点を除き、実質的に同じ様式で調製される。化合物または塩は、例えば、滅菌ビヒクル中に懸濁する前に、エチレンオキシドに暴露させることにより滅菌され得る。特定の具体例において、化合物の一様分布を促進するために、界面活性剤または湿潤剤が組成物中に含まれる。
【0078】
一の具体例において、組成物は、0.1%〜99重量%、特に、10〜60重量%の活性物質(本発明の化合物または塩)を、例えば投与方法に応じて含有する。
【0079】
上記した障害の治療において用いられる化合物または塩の投与量は、障害の重症度、患者の体重および/または他の同様の因子により変化するだろう。しかしながら、一般的な指針として、0.05〜1000mg、例えば0.05〜200mg、例えば20〜40mgの本発明の化合物または塩の単位用量(化合物として測定)が用いられる。一の具体例において、かかる単位用量は、1日1回で、例えば哺乳動物、例えばヒトに投与される;別法として、かかる単位用量は、1日1回以上(例えば、2回)で、例えば哺乳動物、例えばヒトに投与される。かかる治療は、数週間または数ヶ月に及んでもよい。
【0080】
式(I)で示される化合物またはその塩は、他の治療剤、例えば上記障害の治療に有用である、またはあり得る医薬と組み合わせて用いてもよい。
【0081】
かかる他の薬剤の適当な例としては、WO2007/008155およびWO2007/008157に記載されているような呼吸器障害(例えば、喘息および慢性閉塞性肺疾患(COPD))の治療用の、β2−アゴニスト(β2アドレナリン受容体アゴニストとしても知られている;例えば、フォルモテロール)および/またはコルチコステロイド(例えば、ブデソニド、フルチカゾン(例えば、プロピオン酸エステルまたはフロ酸エステルとして)、モメタゾン(例えば、フロ酸エステルとして)、ベクロメタゾン(例えば、17−プロピオン酸エステルまたは17,21−ジプロピオン酸エステルとして)、シクレソニド、アリアムシノロン(例えば、アセトニドとして)、フルニソリド、ロフレポニドおよびブチキソコルト(例えば、プロピオン酸エステルとして)が挙げられる。
【0082】
さらなる治療剤としては、WO2006/083214に記載されている心臓血管障害(例えば、アテローム性動脈硬化症)の治療用の、3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリールコエンザイムA(HMGCoA)リダクターゼ阻害剤(例えば、アトルバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチンおよびシムバスタチン)が挙げられる。
【0083】
さらなる治療剤としては、WO2005/025571に記載されている炎症性疾患または障害(例えば、関節リウマチまたは変形性関節症)の治療用の、非ステロイド性抗炎症剤(NSAID;例えば、イブプロフェン、ナプロキセン、アスピリン、セレコキシブ、ジクロフェナク、エトドラク、フェノプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、ケトララク、オキサプロジン、ナブメトン、スリンダク、トルメチン、ロフェコキシブ、バルデコキシブ、ルマリコキシブ、メロキシカム、エトリコキシブおよびパレコキシブ)が挙げられる。
【0084】
さらなる治療剤としては、WO2004/105798に記載の炎症性疾患または障害(例えば、関節リウマチまたは変形性関節症)の治療用の、腫瘍壊死因子α(TNFα)阻害剤(例えば、エタネルセプトまたは抗TNFα抗体、例えばインフリキシマブおよびアダリムマブ)が挙げられる。
【0085】
さらなる治療剤としては、WO2004/105797に記載の炎症性疾患または障害(例えば、関節リウマチ)の治療用の、2−ヒドロキシ−5−[[4−[(2−ピリジニルアミノ)スルホニル]フェニル]アゾ]安息香酸(スルファサラジン)が挙げられる。
【0086】
さらなる治療剤としては、WO2004/105796に記載の炎症性疾患または障害(例えば、関節リウマチ)の治療用の、N−[4−[[(2,4−ジアミノ−6−プテリジニル)メチル]メチルアミノ]ベンゾイル]−L−グルタミン酸(メトトレキサート)が挙げられる。
【0087】
さらなる治療剤としては、WO2004/073704に記載の炎症性疾患または障害(例えば、関節リウマチ)の治療用の、プロTNFα転換酵素(TACE)阻害剤が挙げられる。
【0088】
さらなる治療剤としては、WO2006/003517に記載のIL−1介在疾患(例えば、関節リウマチ)の治療用の:
a)スルファサラジン;
b)スタチン、例えばアトルバスタチン、ロバスタチン、プラバスタチン、シムバスタチン、フルバスタチン、セリバスタチン、クリルバスタチン、ダルバスタチン、ロスバスタチン、テニバスタチン、フルインドスタチン、ベロスタチン、ダルバスタチン、ニスバスタチン、ベルバスタチン、ピタバスタチン、リバスタチン、グレンバスタチン、エプタスタチン、テニバスタチン、フルラスタチン、ロスバスタチンまたはイタバスタチン;
c)グルココルチコイド剤、例えばデキサメタゾン、メチルプレドニソロン、プレドニソロン、プロドニゾンおよびヒドロコルチゾン;
d)p38キナーゼ阻害剤;
e)抗−IL−6−受容体抗体;
f)アナキンラ;
g)抗−IL−1モノクローナル抗体;
h)JAK3蛋白質チロシンキナーゼ阻害剤;
i)抗−マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)モノクローナル抗体;または
j)抗−CD20モノクローナル抗体、例えばリツキシマブ、PRO70769、HuMax−CD20(Genmab AJS)、AME−133(Applied Molecular Evolution)、またはhA20(Immunomedics,Inc.)
が挙げられる。
【0089】
化合物が他の治療剤と組み合わせて用いられる場合、化合物は、いずれの有利な経路で、連続して、または同時に投与することができる。
【0090】
かくして、本発明は、さらなる態様において、式(I)で示される化合物またはその医薬上許容される塩と、さらなる治療剤との組み合わせを提供する。
【0091】
上記に言及した組み合わせは、有利には、医薬処方の形態で提供されてもよく、かくして、上記した組み合わせと医薬上許容される担体または賦形剤を含む医薬処方は、本発明のさらなる態様に含まれる。かかる組み合わせの個々の成分は、別個に連続して、または同時に投与されてもよく、組み合わせ医薬処方であってもよい。
【0092】
式(I)で示される化合物またはその医薬上許容される塩が、同じ病態に対する第二の治療剤と組み合わせて用いられる場合、各々の化合物の投与量は、化合物を単独で用いる場合とは異なり得る。
【0093】
以下の記載および実施例は、本発明の化合物の調製を説明するものであって、限定するものではない。
【実施例】
【0094】
実施例
実施例1:1−シクロプロピル−N−[(2,4−ジクロロフェニル)メチル]−3−メチル−5−オキソ−2,5−ジヒドロ−1H−ピロール−2−カルボキサミド(E1)
【化10】

ジエチル (2−{シクロプロピル[1−({[(2,4−ジクロロフェニル)メチル]アミノ}−カルボニル)−2−オキソプロピル]アミノ}−2−オキソエチル)ホスフォネート(0.043g、0.087mmol、以下に記載のように調製した)の無水テトラヒドロフラン(2.5ml)中溶液に、0℃で、塩化リチウム(0.016g、0.39mmol)を加えた。混合物をすべての塩化リチウムが溶解するまで撹拌し、ついで、トリエチルアミン(0.066ml、0.87mmol)を加えた。混合物を室温に加温し、18時間撹拌した。減圧下で溶媒を蒸発させて、得られた残渣を、マス−ディレクテッド自動HPLCに付して、1−シクロプロピル−N−[(2,4−ジクロロフェニル)メチル]−3−メチル−5−オキソ−2,5−ジヒドロ−1H−ピロール−2−カルボキサミド(0.012g)を白色固体として得た。
LC/MS[M+H]=339/341、保持時間=2.43分
【0095】
上記で用いたジエチル (2−{シクロプロピル[1−({[(2,4−ジクロロフェニル)メチル]アミノ}−カルボニル)−2−オキソプロピル]アミノ}−2−オキソエチル)ホスフォネートは以下のように調製することができる:
メチルグリオキサル(0.153ml、1mmol)のメタノール(2ml)中溶液に、シクロプロピルアミン(0.069ml、1mmol)を加えた。22℃で5分間撹拌した後、混合物を[ビス(エチルオキシ)ホスホリル]酢酸(0.161ml、1mmol)および(2,4−ジクロロフェニル)メチルイソシアニド(0.188g、1mmol)で処理した。ついで、混合物を22℃で18時間撹拌し、減圧下で溶媒を除去し、得られた残渣を、マス−ディレクテッド自動HPLCに付して、ジエチル (2−{シクロプロピル[1−({[(2,4−ジクロロフェニル)メチル]アミノ}−カルボニル)−2−オキソプロピル]アミノ}−2−オキソエチル)ホスフォネート(0.043g)を褐色ガムとして得た。
LC/MS[M+H]=493/495、保持時間=3.14分
【0096】
実施例2:N−[(2,4−ジクロロフェニル)メチル]−2−エチル−3−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−1−カルボキサミド(E2)
【化11】

2−エチル−3−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−1−カルボン酸(0.061g、0.3mmol、以下に記載のように調製した)を、無水ジメチルホルムアミド(5ml)中に溶解し、これに1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(0.045g、0.3mmol)、ジイソプロピルエチルアミン(0.105ml、0.6mmol)、[(2,4−ジクロロフェニル)メチル]アミン(0.054g、0.3mmol)およびO−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(0.114g、0.3mmol)を加えた。混合物を3時間撹拌し、ついで、一晩静置した。混合物を水(50ml)および少量の飽和塩化ナトリウム水溶液で希釈し、酢酸エチル(3×20ml)で抽出した。有機フラクションを合し、10%炭酸ナトリウム水溶液(50ml)、ついで、飽和塩化ナトリウム水溶液(50ml)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、蒸発させて、ガムを得た。このガムを、マス−ディレクテッド自動HPLCにより精製して、N−[(2,4−ジクロロフェニル)メチル]−2−エチル−3−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−1−カルボキサミド(0.056g)を得た。
LC/MS[M+H]=363、保持時間=2.76分
【0097】
上記で用いた2−エチル−3−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−1−カルボン酸は以下のように調製することができる:
(i)ホモフタル酸[(2−カルボキシフェニル)酢酸](5g、28mmol)、エタノール(23ml)、トルエン(12ml)および濃硫酸(0.5ml)の混合物を、Dean−Stark装置を用いて、6時間加熱還流して反応の間に生じた水を除去し、ついで、一晩加熱還流した。混合物を20℃に冷却し、トルエン(約50ml)で希釈し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(約50ml)で洗浄した。水層を分離し、さらにトルエン(約50ml)で抽出し、ついで、合したトルエン洗浄液を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、ついで、硫酸マグネシウムで乾燥し、蒸発させた。得られた黄色油を、ヘキサン中酢酸エチル0〜25%勾配(10カラム容量)、ついで、ヘキサン中酢酸エチル25−50%勾配(2カラム容量)で溶出する自動フラッシュシリカゲルカラムクロマトグラフィー(Biotage SP4を用いる)により精製して、2−[2−(エチルオキシ)−2−オキソエチル]安息香酸エチル(5.9g)を淡黄色油として得た。
LC/MS[M+H]=237、保持時間=2.93分
【0098】
(ii)2−[2−(エチルオキシ)−2−オキソエチル]安息香酸エチル(4.15g、17.5mmol)のクロロホルム(70ml)中溶液を、臭素(1.3ml、25mmol)で処理し、120Wのタングステン電球を照射しながら還流温度で5時間撹拌した。混合物を20℃に冷却し、蒸発させ、ヘキサン中酢酸エチル0−10%勾配(10カラム容量)で溶出する自動フラッシュシリカゲルカラムクロマトグラフィー(Biotage SP4を用いる)により精製して、2−[1−ブロモ−2−(エチルオキシ)−2−オキソエチル]安息香酸エチル(2.77g)を淡黄色油として得た。
LC/MS保持時間=3.24分
【0099】
(iii)2−[1−ブロモ−2−(エチルオキシ)−2−オキソエチル]安息香酸エチル(2.11g、6.7mmol)の無水テトラヒドロフラン(200ml)中溶液を、2Mのエチルアミンのテトラヒドロフラン(8ml、16mmol)中溶液で処理し、20℃で48時間処理した。テトラヒドロフランを減圧下で除去し、ついで、残渣を酢酸エチル(150ml)および水(150ml)中に溶解した。水相を分離し、さらに酢酸エチル(100ml)で抽出し、ついで、合した有機フラクションを、飽和塩化ナトリウム水溶液(150ml)で洗浄し、ついで、硫酸マグネシウムで乾燥し、蒸発させて、黄色油を得た。油を、ヘキサン中酢酸エチル10−50%勾配で溶出する自動フラッシュシリカゲルカラムクロマトグラフィー(Biotage SP4を用いる)により精製して、2−エチル−3−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−1−カルボン酸エチル(1.4g)を無色油として得、これを静置して固体化し、さらに精製することなく次の工程に用いた。
LC/MS[M+H]=234、保持時間=2.33分
【0100】
(iv)2−エチル−3−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−1−カルボン酸エチル(0.283g、1.2mmol)のエタノール(6ml)および水(6ml)中溶液を、2M水酸化ナトリウム水溶液(0.6ml)で処理し、20℃で1.5時間撹拌した。出発物質がこの段階で依然として存在していたので、さらに2M水酸化ナトリウム水溶液のアリコート(0.8ml)を加え、さらに4時間撹拌を続けた。混合物を蒸発させて、エタノールを除去し、水性残渣を水(40ml)で希釈し、ジエチルエーテル(25ml)で洗浄し、ついで、2Mの塩化水素水溶液を用いてpH2に調整し、ジクロロメタン(4×25ml)で抽出した。有機抽出物を合し、疎水性フリットを通して濾過し、蒸発させて、2−エチル−3−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−1−カルボン酸を白色固体として得(0.255g)、これをさらに精製することなく用いた。
LC/MS[M+H]=206、保持時間=1.48分
【0101】
実施例3〜7
上記で用いた[(2,4−ジクロロフェニル)メチル]アミンの代わりに適当なアミン(またはその塩)を用いることにより、実施例2に記載の方法と類似の方法で、下記化合物(表1)を調製した。表1で用いたすべてのアミンは、市販されているか、あるいは、特記しない限り、先行化学文献に記載されたルートでおいて調製することができる。加えて、実施例5〜7の場合において、前記したプロシージャの工程(iii)において用いたエチルアミンの代わりにメチルアミンを用いた。
【0102】
【表1】

【0103】
マス−ディレクテッド自動HPLC
上記実施例において記載された場合、マス−ディレクテッド自動HPLCによる精製は、下記の装置および条件を用いて行った:
ハードウェア
Waters 2525 Binary Gradient Module
Waters 515 Makeup Pump
Waters Pump Control Module
Waters 2767 Inject Collect
Waters Column Fluidics Manager
Waters 2996 Photodiode Array Detector
Waters ZQ Mass Spectrometer
Gilson 202 fraction collector
Gilson Aspec waste collector
ソフトウェア
Waters MassLynx version 4SP2
カラム
用いたカラムは、Waters Atlantisであり、これは、直径19mm×100mm(スモールスケール)および30mm×100mm(ラージスケール)である。固定相粒度は、5μmである。
溶媒
A:水性溶媒=水+0.1%ギ酸
B:有機溶媒=アセトニトリル+0.1%ギ酸
メイクアップ溶媒=メタノール:水80:20
針洗浄溶媒=メタノール
方法
目的の化合物の分析保持時間に応じて5つの方法がある。これらのランタイムは13.5−分であり、10−分勾配、ついで、3.5分のカラム洗浄および再平衡工程からなる。
ラージ/スモールスケール1.0−1.5=5−30%B
ラージ/スモールスケール1.5−2.2=15−55%B
ラージ/スモールスケール2.2−2.9=30−85%B
ラージ/スモールスケール2.9−3.6=50−99%B
ラージ/スモールスケール3.6−5.0=80−99%B(6分、ついで、7.5分フラッシュおよび再平衡)
流速
上記した全ての方法の流速は、20ml/分(スモールスケール)または40ml/分(ラージスケール)であった。
【0104】
液体クロマトグラフィー/質量スペクトル
上記実施例の液体クロマトグラフィー/質量スペクトル(LC/MS)による分析は、以下の装置および条件を用いて行った:
ハードウェア
Agilent 1100 GradientPump
Agilent 1100 Autosampler
Agilent 1100 DADDetector
Agilent 1100 Degasser
Agilent 1100 Oven
Agilent 1100 Controller
Waters ZQ Mass Spectrometer
Sedere Sedex 85
ソフトウェア
Waters MassLynx version 4.0 SP2
カラム
用いたカラムはWaters Atlantisであり、これの直径は4.6mm×50mmである。固定相粒度は3μmである。
溶媒
A:水性溶媒=水+0.05%ギ酸
B:有機溶媒=アセトニトリル+0.05%ギ酸
方法
用いた一般法のランタイムは5分である。
【表2】

上記方法の流速は、3ml/分である。
一般法の注入容量は5μlである。
カラム温度は30℃である。
UV検出範囲は、220〜330nmである。
【0105】
薬理データ
本発明の化合物は、以下の研究に従って、P2X7受容体におけるインビトロ生物活性について試験されてもよい:
【0106】
エチジウム蓄積アッセイ
以下の組成(mM単位):140mMのNaCl、HEPES 10、N−メチル−D−グルカミン 5、KCl 5.6、D−グルコース 10、CaCl 0.5(pH7.4)のNaClアッセイバッファーを用いて研究を行った。ヒト組み換えP2X7受容体を発現するHEK293細胞を、ポリ−L−リジンで予め処理した96ウェルプレートにて18〜24時間成長させた(ヒトP2X7受容体のクローニングはUS6,133,434に記載されている)。細胞を350μlのアッセイバッファーで2回洗浄し、その後、50μlのアンタゴニストを加えた。ついで、細胞を室温で(19〜21℃)30分間インキュベートし、その後、ATPおよびエチジウム(100μMの最終アッセイ濃度)を加えた。ATP濃度は、受容体型についてのEC80付近を選択し、ヒトP2X7受容体についての研究では1mMであった。インキュベーションを8または16分間続け、5mMのP2X7受容体アンタゴニスト、リアクティブブラック(reactiveblack)5(アルドリッチ(Aldrich))を含む1.3Mのスクロースを25μl加えることにより終了した。エチジウムの細胞内蓄積は、キャンベラパッカード(CanberraPackard)のフルオロカウント(Fluorocount)(パンボーン(Pangbourne),UK)を用いて、プレート下からの蛍光(530nmの励起波長および620nmの発光波長)を測定することにより決定した。ATP応答を阻止するためのアンタゴニストpIC50値は、反復カーブフィッティング技法を用いて決定した。
【0107】
蛍光イメージングプレートリーダー(FLIPR)Caアッセイ
以下の組成(mM単位):137 NaCl;20 HEPES;5.37 KCl;4.17 NaHCO;1 CaCl;0.5 MgSO;および1g/LのD−グルコース(pH7.4)のNaClアッセイバッファーを用いて、ヒトP2X7についての研究を行った。
【0108】
ヒト組み換えP2X7受容体を発現するHEK293細胞を、ポリ−L−リジンで予め処理した384ウェルプレートにて42〜48時間成長させた(ヒトP2X7受容体のクローニングはUS6,133,434に記載されている)。細胞を80μlのアッセイバッファーで3回洗浄し、2μMのフルオ(Fluo)4(テフラブズ(Teflabs))を37℃で1時間ロードし、再度3回洗浄し、30μlのバッファーと共に残し、その後、10μlの4倍濃縮したアンタゴニストを加えた。ついで、細胞を室温で30分間インキュベートし、その後、60μMの最終アッセイ濃度のベンゾイルベンゾイル−ATP(BzATP)を加えた(オンライン式,FLIPR384またはFLIPR3装置による(モレキュラーデバイス))。BzATP濃度は、受容体型についてのEC80付近を選択した。インキュベーションおよび読み取りを90秒間続け、細胞内カルシウム増大を、FLIPR CCDカメラを用いてプレート下からの蛍光(488nmの励起波長および516nmの発光波長)を測定することにより決定した。BzATP応答を阻止するためのアンタゴニストpIC50値は、反復カーブフィッティング技法を用いて決定した。
【0109】
実施例1〜7の化合物を、FLIPR Caアッセイおよび/またはエチジウム蓄積アッセイにて、ヒトP2X7受容体アンタゴニスト活性について試験し、FLIPR Caアッセイでは4.7を超えるpIC50値を、および/またはエチジウム蓄積アッセイでは5.5を超えるpIC50値を有することが見出された。実施例1、2、4、5、6および7の化合物は、エチジウム蓄積アッセイにおいて、約6.2以上のpIC50値を有することが見出された。実施例4、5および7の化合物は、エチジウム蓄積アッセイにおいて、約6.9以上のpIC50値を有することが見出された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

[式中:
は、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、C3−6シクロアルキル、C3−6シクロアルキルメチル−またはピリジニルメチル−(これらはいずれも、1、2または3個のハロゲン原子により置換されていてもよい);または非置換フェニルまたはベンジルを意味し;
は、水素、ハロゲン、C1−6アルキル、C6−10アリールメチル−、C2−6アルケニル、C2−6アルキニルまたはC3−6シクロアルキルメチル−を意味し、該C1−6アルキル、C6−10アリールメチル−、C2−6アルケニル、C2−6アルキニルまたはC3−6シクロアルキルメチル−はいずれも、1、2または3個のハロゲン原子により置換されていてもよく;
は、水素、フッ素またはメチルを意味し;
あるいは、RおよびRは、それらが結合している炭素原子と一緒になって、C1−6アルキル、C2−6アルケニルおよびC2−6アルキニルからなる群から選択される、同じでも異なっていてもよい、1、2または3個の置換基により置換されていてもよいベンゼン環を形成し;
は、水素、フッ素またはメチルを意味し;
、R、R、RおよびRは、独立して、水素、ハロゲン、シアノ、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、C3−6シクロアルキルまたはフェニルを意味し、該C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、C3−6シクロアルキルまたはフェニルはいずれも、1、2または3個のハロゲン原子により置換されていてもよく;またはRおよびRは、それらが結合している炭素原子と一緒になって、1、2または3個のハロゲン原子により置換されていてもよいベンゼン環を形成する:
ただし、RおよびRが、両方とも、水素またはフッ素から選択される場合、少なくとも1つのR、RおよびRは、ハロゲン原子である]
で示される化合物またはその医薬上許容される塩。
【請求項2】
が、非置換C1−4アルキル、C3−5シクロアルキル、ピリジニルメチル−、フェニルまたはベンジルである、請求項1記載の化合物または塩。
【請求項3】
が、メチルまたはエチルである、請求項1記載の化合物または塩。
【請求項4】
がメチルである、請求項1記載の化合物または塩。
【請求項5】
が水素またはメチルであり、Rが水素またはメチルであるか;
あるいは、RおよびRが、それらが結合している炭素原子と一緒になって、非置換ベンゼン環を形成する、請求項1、2、3または4記載の化合物または塩。
【請求項6】
およびRが、それらが結合している炭素原子と一緒になって、非置換ベンゼン環を形成する、請求項5記載の化合物または塩。
【請求項7】
が水素またはメチルである、請求項1〜6いずれか一項記載の化合物または塩。
【請求項8】
が水素である、請求項7記載の化合物または塩。
【請求項9】
、R、R、RおよびRが、独立して、水素、ハロゲン、シアノ、トリフルオロメチルまたは非置換C1−6アルキルであるか;または、RおよびRが、それらが結合している炭素原子と一緒になって、非置換ベンゼン環を形成する、上記請求項いずれか一項記載の化合物または塩。
【請求項10】
が、非置換C1−4アルキル、C2−4アルケニル、C3−5シクロアルキル、ピリジニルメチル−、フェニルまたはベンジルであり;
およびRが、水素またはメチルであるか、またはRおよびRが、それらが結合している炭素原子と一緒になって非置換ベンゼン環を形成し;
、R、R、RおよびRが、独立して、水素、塩素、フッ素、臭素、メチルまたはトリフルオロメチルである、上記請求項いずれか一項記載の化合物または塩。
【請求項11】
がメチルまたはエチルである、請求項10記載の化合物または塩。
【請求項12】
E1〜E7から選択される化合物。
【請求項13】
N−{[2−クロロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル]メチル}−2−エチル−3−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−1−カルボキサミド:
【化2】

または
N−[(2,4−ジクロロフェニル)メチル]−2−メチル−3−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−1−カルボキサミド:
【化3】

または
N−{[2−クロロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル]メチル}−2−メチル−3−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−1−カルボキサミド:
【化4】

から選択される化合物。
【請求項14】
上記請求項いずれか一項記載の化合物またはその医薬上許容される塩および医薬上許容される担体または賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項15】
治療において用いるための請求項1〜13いずれか一項記載の化合物またはその医薬上許容される塩。
【請求項16】
疼痛、炎症または神経変性疾患をわずらっているヒトまたは動物対象の治療方法であって、該対象に、請求項1〜13いずれか一項記載の化合物またはその医薬上許容される塩を投与することを含む方法。
【請求項17】
疼痛、炎症または神経変性疾患の治療または予防用の医薬の製造における、請求項1〜13いずれか一項記載の化合物またはその医薬上許容される塩の使用。

【公表番号】特表2010−522709(P2010−522709A)
【公表日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−500229(P2010−500229)
【出願日】平成20年3月20日(2008.3.20)
【国際出願番号】PCT/EP2008/053343
【国際公開番号】WO2008/116814
【国際公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【出願人】(397009934)グラクソ グループ リミテッド (832)
【氏名又は名称原語表記】GLAXO GROUP LIMITED
【住所又は居所原語表記】Glaxo Wellcome House,Berkeley Avenue Greenford,Middlesex UB6 0NN,Great Britain
【Fターム(参考)】