説明

P2X7受容体アンタゴニストとしての2−アダマンチル誘導体

本発明は、式(I)
【化1】


(式中、A、B、X、nおよびmは明細書に記載した意味を有する)で示される化合物またはその医薬上許容される塩または溶媒和物またはプロドラッグを提供する。それらの製造方法、それらを含む医薬組成物、および治療におけるそれらの使用についても記載されている。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ある種のアダマンタン誘導体、それらの製造方法、それらを含む医薬組成物、および治療におけるそれらの使用に関するものである。特に、本発明は、P2X受容体アンタゴニストとして有効な2−アダマンチル誘導体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
P2X受容体(以前はP2Z受容体として知られていた)は、リガンドゲートイオンチャンネルであり、様々な細胞型、主として炎症/免疫プロセスに関与することが知られているもの、具体的にはマクロファージ、マスト細胞およびリンパ球(TおよびB)に存在する。細胞外ヌクレオチド、特にアデノシン三リン酸によるP2X受容体の活性化により、インターロイキン−1β(IL−1β)の放出および巨大細胞形成(マクロファージ/小グリア細胞)、脱顆粒(マスト細胞)および増殖(T細胞)、アポトーシスおよびL−セレクチン発散(リンパ球)が誘導される。P2X受容体はまた、抗原提示細胞(APC)、ケラチノサイト、唾液腺房細胞(耳下腺細胞)、肝細胞および血管間膜細胞にも存在する。
【0003】
P2X受容体がある一定の役割を演じ得る病因において、炎症、免疫または心臓血管疾患の処置で使用されるP2X受容体アンタゴニストとして有効な化合物を製造することは望ましい。
【0004】
P2X受容体でのアンタゴニスト活性を有する1−アダマンチル誘導体は、当業界では公知であり、例えば国際公開第99/29660号、国際公開第00/61569号および国際公開第01/94338号に報告されている。
【発明の開示】
【0005】
本発明は、式
【化1】

[式中、
Aは、フェニル、ピリジル、インドリル、インダゾリル、プリニル、ピリミジニル、チオフェニル、ベンゾチアゾリル、キノリニルまたはイソキノリニル基を表し、それらは各々、所望によりハロゲン、アミノ、ニトロ、シアノ、ヒドロキシル、所望によりヒドロキシルまたはハロゲンから選択される少なくとも1個の置換基により置換されていてもよいC−Cアルキル、C−Cアルコキシ、または式
【化2】

で示される基から選択される、同一または異なり得る1個またはそれ以上の置換基により置換され得、
Yは酸素または硫黄原子または基−N(R)−を表し、
pは0または1であり、
は、結合または所望によりヒドロキシル、ハロゲン、C−Cアルコキシ、C−Cアルキルチオ、C−Cヒドロキシアルキル、C−Cヒドロキシアルキルオキシ、C−Cアルコキシカルボニル、C−Cシクロアルキル、フェニル(所望によりハロゲン、ヒドロキシルおよびC−Cアルキルスルホニルアミノから選択される少なくとも1個の置換基により置換されていてもよい)、ベンジル、インドリル(所望によりC−Cアルコキシから選択される少なくとも1個の置換基により置換されていてもよい)、オキソピロリジニル、フェノキシ、ベンゾジオキソリル、フェノキシフェニル、ピペリジニルおよびベンジルオキシから選択される少なくとも1個の置換基により置換され得るC−Cアルキル基を表し、
は、水素、ヒドロキシル、または基−NRを表すが、ただし、Rが結合を表すとき、Rは、窒素、酸素および硫黄から選択される少なくとも1個の環ヘテロ原子を含み得る飽和または不飽和3−〜10−員環系を表し、上記環系は、所望によりヒドロキシル、アミノ(−NH)、C−Cアルキル、C−Cアルキルアミノ、−NH(CH)OH、−NH(CH)OH、NH(CH)OH、C−Cヒドロキシアルキル、ベンジル、および
【化3】

から選択される少なくとも1個の置換基により置換されていてもよいものとし、
は、水素原子または所望によりヒドロキシル、ハロゲンおよびC−Cアルコキシから選択される少なくとも1個の置換基により置換され得るC−Cアルキル基を表し、
およびRは、各々独立して、水素、ピロリジニル、ピペリジニル、C−Cアルキルカルボニル、C−Cアルケニル、またはC−Cアルキル{所望によりカルボキシル、ヒドロキシル、アミノ(−NH)、C−Cアルキルアミノ、ジ−C−Cアルキルアミノ、−NH(CH)OH、C−Cアルコキシ、C−Cアルキルチオ、C−Cアルコキシカルボニル、および窒素、酸素および硫黄から選択される少なくとも1個の環ヘテロ原子を含み得る飽和または不飽和3−〜10−員環系から選択される少なくとも1個の置換基により置換されていてもよい}を表し、上記環系は、所望によりハロゲン、ヒドロキシル、オキソ、カルボキシル、シアノ、C−Cアルキル、C−Cヒドロキシアルキル、−NR、−(CH)NRおよび−CONR1011から選択される少なくとも1個の置換基により置換されていてもよいものとし、
またはRおよびRは、それらが結合している窒素原子と一緒になって、窒素および酸素から選択される第2環ヘテロ原子を含み得る飽和4−〜8−員複素環を形成し得、環は、所望によりヒドロキシル、ハロゲン、C−Cアルキル、およびC−Cヒドロキシアルキルから選択される少なくとも1個の置換基により置換されていてもよいものとし、
rは、1、2、3、4、5または6であり、
およびRは、各々独立して、水素原子またはC−Cアルキル、C−CヒドロキシアルキルまたはC−Cシクロアルキル基を表すか、またはRおよびRは、それらが結合している窒素原子と一緒になって、3−〜8−員飽和複素環を形成し、
およびRは、各々独立して水素原子またはC−Cアルキル、C−CヒドロキシアルキルまたはC−Cシクロアルキル基を表すか、またはRおよびRは、それらが結合している窒素原子と一緒になって、3−〜8−員飽和複素環を形成し、そして
10およびR11は、各々独立して水素原子またはC−Cアルキル、C−CヒドロキシアルキルまたはC−Cシクロアルキル基を表すか、またはR10およびR11は、それらが結合している窒素原子と一緒になって、3−〜8−員飽和複素環を形成し、
Bは、C(O)NHまたはNHC(O)を表し、
nは、1、2、3、4、5または6であり、
各Xは、独立してハロゲンまたはC−Cアルコキシから選択され、そして
mは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、または9であり、
ただし、BがC(O)NHを表し、nが1であり、mが0であるとき、Aは非置換フェニル基ではないものとする]
で示される化合物またはその医薬上許容される塩、プロドラッグまたは溶媒和物を提供する。
【0006】
本明細書で使用されている「ハロゲン」という語は、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素を含み、特にフッ素または塩素である。
【0007】
特に指示しない場合、「アルキル」という語は、単独でもまたは組合わせて使用されているときでも、直鎖または分枝状鎖アルキル部分をいう。C−Cアルキル基は、1〜6個の炭素原子を有し、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシルなどを含む。従って、「C−Cアルキル基」および「C−Cアルキル基」は、1〜5個または1〜7個の炭素原子をそれぞれ有する直鎖または分枝状鎖アルキル部分を意味するものと理解すべきである。
【0008】
「シクロアルキル」という語は、3〜8個の炭素原子を有する飽和脂環式部分をいい、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルおよびシクロヘキシルを含む。
【0009】
「複素環(の)」という表現は、3〜10個の原子を有し、そのうち少なくとも1個が酸素、硫黄または窒素から選択されるヘテロ原子である、飽和および不飽和環を包含する。環は、単または二環式であり得、脂環式または芳香族特性を有し得る。二環式の環は、完全または部分的に芳香族特性を有し得る。不飽和環系は、完全または部分的に不飽和であり得る。窒素ヘテロ原子は、必要に応じて置換され、N−酸化物形態でもあり得る。硫黄原子は、S、S(O)またはS(O)形態であり得る。複素環が10未満である最大数の環原子を有するものとした場合、これが特記される。環ヘテロ原子が特にN、SまたはOのうちの一つであるか、または複素環が1個またはそれ以上のヘテロ原子を特定の組合わせで含むものとした場合、これが示される。
【0010】
「所望により置換されていてもよい」は、適切な利用可能位置で特定された一基または複数基による所望による置換を示すのに本明細書では使用される。
【0011】
「ヒドロキシアルキル」置換基は、1個またはそれ以上のヒドロキシル基を含み得るが、好ましくは1個のヒドロキシル基を含む。
【0012】
BがC(O)NHを表す場合、式(I)の化合物は、基A−C(O)NH−(CH)−を含み、BがNHC(O)を表すとき、式(I)の化合物は基A−NHC(O)−(CH)−を含むことがわかる。
【0013】
本発明の一実施態様において、Aは、所望により上記要領で置換されていてもよいフェニル、ピリジル、インドリルまたはキノリル基を表す。好ましくは、Aは、所望により上記要領で置換されていてもよいフェニル、ピリジルまたはキノリル基を表す。
【0014】
環Aにとって好ましい置換基には、ハロゲン(例えばフッ素または塩素)、アミノ、ニトロ、シアノ、ヒドロキシル、所望によりヒドロキシルおよびハロゲンから選択される少なくとも1個の置換基により置換されていてもよいC−Cアルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチルまたはヘキシル)、C−Cアルコキシ(例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペントキシまたはヘキソキシ)または式−[Y]−R−R(II)で示される基がある。
【0015】
Yが−N(R)−を表す場合、Rは、水素原子または所望によりヒドロキシル、ハロゲン(例えば、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素)およびC−Cアルコキシ(例えばメトキシまたはエトキシ)から選択される少なくとも1個の置換基(例えば、独立して1個、2個または3個の置換基)により置換され得るC−Cアルキル基である。
【0016】
好ましくは、Rは、水素原子または所望により少なくとも1個のヒドロキシル基により置換され得るC−Cアルキル基を表す。
【0017】
は、結合またはヒドロキシル、ハロゲン(例えばフッ素または塩素)、C−Cアルコキシ(例えば、メトキシまたはエトキシ)、C−Cアルキルチオ(例えば、メチル−またはエチル−チオ)、C−Cヒドロキシアルキル(例えばヒドロキシメチル)、C−Cヒドロキシアルキルオキシ、C−Cアルコキシカルボニル(例えば、メトキシカルボニル)、C−Cシクロアルキル(例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルまたはシクロヘキシル)、フェニル(所望によりハロゲン、ヒドロキシルおよびC−Cアルキルスルホニルアミノ、例えばメチルスルホニルアミノから選択される少なくとも1個の置換基により置換されていてもよい)、ベンジル、インドリル(所望によりC−Cアルコキシ、例えばメトキシから選択される少なくとも1個の置換基により置換されていてもよい)、オキソピロリジニル、フェノキシ、ベンゾジオキソリル、フェノキシフェニル、ピペリジニルおよびベンジルオキシから選択される少なくとも1個の置換基(例えば独立して1個、2個または3個の置換基)により置換された、C−C、好ましくはC−Cアルキル基を表す。
【0018】
本発明の一実施態様では、Rは、結合または所望により独立してヒドロキシル、C−Cアルコキシ、メチルチオ、C−Cヒドロキシアルキル、C−Cヒドロキシアルキルオキシ、メトキシカルボニル、C−Cシクロアルキル、フェニル(所望によりハロゲン、ヒドロキシルおよびメチルスルホニルアミノから選択される少なくとも1個の置換基により置換されていてもよい)、ベンジル、インドリル(所望により少なくとも1個のメトキシにより置換されていてもよい)、オキソピロリジニル、フェノキシ、ベンゾジオキソリル、フェノキシフェニル、ピペリジニルおよびベンジルオキシから選択される1個、2個または3個の置換基により置換され得るC−Cアルキル基を表す。
【0019】
は、水素、ヒドロキシル、または基−NRを表すが、ただし、Rが結合を表すとき、Rは、窒素、酸素および硫黄から選択される少なくとも1個の環ヘテロ原子(例えば、独立して1個、2個、3個または4個の環ヘテロ原子)を含み得る飽和または不飽和3−〜10−員環系を表し、前記環系は、所望によりヒドロキシル、アミノ(−NH)、C−Cアルキル、C−Cアルキルアミノ、−NH(CH)OH、−NH(CH)OH、C−Cヒドロキシアルキル、ベンジル、および
【化4】

から選択される少なくとも1個の置換基(例えば、独立して1個、2個、3個または4個の置換基)により置換されていてもよいものとする。
【0020】
が飽和または不飽和3〜10員環系を表すとき、この環系は、好ましくはシクロブチル、シクロヘキシル、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−イル、2,3−ジヒドロ−1H−インデニル、ピロリジニル、ピペリジニルまたはピペラジニルである。
【0021】
本発明の一実施態様において、RおよびRは、各々独立して、水素、ピロリジニル、C−Cアルキルカルボニル、C−Cアルケニル、またはC−Cアルキル{所望によりカルボキシル、ヒドロキシル、アミノ、C−Cアルキルアミノ、ジ−C−Cアルキルアミノ、−NH(CH)OH、C−Cアルコキシ、C−Cアルキルチオ、C−Cアルコキシカルボニル、および窒素、酸素および硫黄から選択される少なくとも1個の環ヘテロ原子(例、独立して1個、2個、3個または4個の環ヘテロ原子)を含み得る飽和または不飽和3−〜10−員環系から独立して選択される1個または2個の置換基により置換されていてもよい}を表し、前記環系は、所望によりフッ素、ヒドロキシル、オキソ、カルボキシル、シアノ、C−Cアルキル、C−Cヒドロキシアルキル、−NR、−(CH)NRおよび−CONR1011から選択される少なくとも1個の置換基(例、独立して1個、2個、3個または4個の置換基)により置換されていてもよい。
【0022】
前項で言及した飽和または不飽和3−〜10−員環系は、好ましくはシクロプロピル、シクロヘキシル、フェニル、チエニル、ピリジニル、フリル、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2−イル、3,4−ジヒドロ−2H−ピラニル、チアゾリル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリルおよびチアジアゾリルから選択される。
【0023】
本発明の別の実施態様において、RおよびRが、それらが結合している窒素原子と一緒になって、飽和6員複素環を形成する場合、この環は、所望によりヒドロキシル、ハロゲン(例えば、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素)、C−Cアルキル(例えばメチルまたはエチル)、およびC−Cヒドロキシアルキル(例えば、ヒドロキシメチルまたはヒドロキシエチル)から選択される少なくとも1個の置換基(例えば、独立して1個、2個、3個または4個の置換基)により置換されていてもよい。好ましくは、複素環は、ピペリジニル、ピペラジニルまたはモルホリニル環である。
【0024】
およびRは、各々独立して、水素原子、C−Cアルキル基、例えばメチルまたはエチル、C−Cヒドロキシアルキル基(例えば、ヒドロキシメチル)またはC−Cシクロアルキル基(例えばシクロペンチルまたはシクロヘキシル)を表すか、またはRおよびRは、それらが結合している窒素原子と一緒になって3〜8員飽和複素環(例えばピロリジニルまたはピペリジニル)を形成する。
【0025】
およびRは、各々独立して、水素原子、C−Cアルキル基、例えばメチルまたはエチル、C−Cヒドロキシアルキル基(例えば、ヒドロキシメチル)またはC−Cシクロアルキル基(例えばシクロペンチルまたはシクロヘキシル)を表すか、またはRおよびRは、それらが結合している窒素原子と一緒になって3〜8員飽和複素環(例えばピロリジニルまたはピペリジニル)を形成する。
【0026】
10およびR11は、各々独立して、水素原子、C−Cアルキル基、例えばメチルまたはエチル、C−Cヒドロキシアルキル基(例えば、ヒドロキシメチル)またはC−Cシクロアルキル基(例えばシクロペンチルまたはシクロヘキシル)を表すか、またはR10およびR11は、それらが結合している窒素原子と一緒になって3〜8員飽和複素環(例えばピロリジニルまたはピペリジニル)を形成する。
【0027】
好ましくは、環Aは、非置換であるかまたは所望によりハロゲンまたはヒドロキシルから選択される少なくとも1個の置換基により置換されていてもよいC−Cアルキル基、またはC−Cアルコキシから選択される、同一または異なり得る1個またはそれ以上の置換基により置換されている。環Aが置換されている場合、それは、好ましくは同一または異なり得る1個または2個の置換基により置換されている。
【0028】
好ましくは、nは1または2であり、特に1である。
Xは、好ましくはハロゲン(例えばフッ素、塩素または臭素)またはC−Cアルコキシ基、例えばメトキシまたはエトキシである。最も好ましくは、XはハロゲンまたはC−Cアルコキシ基、特にメトキシである。
【0029】
本発明の一実施態様では、mは1、2または3である。
別の実施態様では、mは0である。
【0030】
本発明化合物の環における置換基の数および性質は、立体化学的に望ましくない組合わせを回避するように選択されるものとする。
【0031】
本発明化合物の好ましい一群では、Aは、所望によりハロゲンまたはヒドロキシルから選択される少なくとも1個の置換基により置換されていてもよい、C−CアルコキシまたはC−Cアルキルから選択される、同一または異なり得る1個またはそれ以上の置換基により所望により置換されていてもよいフェニル、ピリジルまたはキノリニルであり、BはNHC(O)であり、mは0であり、nは1である。
【0032】
好ましい本発明化合物には、2−(2−アダマンチル)−N−(5−メトキシ−2−メチルフェニル)アセトアミド、2−(2−アダマンチル)−N−1H−インドール−4−イルアセトアミド、2−(1−アダマンチル)−N−キノリン−5−イルアセトアミド、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグまたは溶媒和物がある。
【0033】
本発明化合物が1個またはそれ以上の不斉置換炭素原子を含む場合、本発明は、鏡像体およびジアステレオマーを含む、立体異性体、およびそのラセミ混合物を含む混合物を全て包含する。また互変異性体およびその混合物も含まれる。
【0034】
ラセミ混合物は、公知手順を用いて個々の鏡像体に分離され得る(Advanced Organic Chemistry:第3版、著者 J. March、104−107頁参照)。適切な手順は、キラル助剤とラセミ物質の反応によるジアステレオマー誘導体の形成、次いで例えばクロマトグラフィーによるジアステレオマーの分離、次いで助剤(化学)種の開裂を含む。
【0035】
本発明化合物は、医薬上許容される塩として提供され得る。適切な医薬上許容される塩類には、塩基塩類、例えばアルカリ金属塩、例えばナトリウム、アルカリ土類金属塩、例えばカルシウムまたはマグネシウム、有機アミン塩、例えばトリエチルアミン、モルホリン、N−メチルピペリジン、N−エチルピペリジン、プロカイン、ジベンジルアミン、N,N−ジベンジルエチルアミンまたはアミノ酸、例えばリシンが含まれる。別の局面では、化合物が充分に塩基性である場合、適切な塩には酸付加塩、例えばメタンスルホン酸塩、フマル酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩およびリン酸および硫酸により形成される塩がある。
【0036】
式(I)で示される化合物の適切なプロドラッグは、インビボで加水分解されて式(I)の化合物を形成する化合物である。これらは、慣用的方法により製造され得る。
【0037】
さらに本発明は、上記式(I)の化合物、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグまたは溶媒和物の製造方法であって、
(a) BがNHC(O)を表すとき、式(III)
【化5】

[式中、Lは脱離基(例、ヒドロキシルまたはハロゲン)を表し、n、mおよびXは式(I)の場合と同じ意味を有する]
で示される化合物を、式(IV):A−NH [式中、Aは式(I)の場合と同じ意味を有する]で示される化合物と反応させるか、または
(b) BがC(O)NHを表すとき、式
【化6】

[式中、X、mおよびnは式(I)の場合と同じ意味を有する]
で示される化合物を、式(VI):A−C(O)−L [式中、Lは脱離基(例、ヒドロキシルまたはハロゲン)を表し、Aは式(I)の場合と同じ意味を有する]で示される化合物と反応させ、
その後、必要ならば、
・生成された化合物を本発明によるさらなる化合物に変換する;および/または
・上記化合物の医薬上許容される塩またはプロドラッグまたは溶媒和物を形成する;
工程を含む方法を提供する。
【0038】
工程(a)および(b)において、カップリング反応は、好都合には有機溶媒、例えばジクロロメタン、N,N−ジメチルホルムアミドまたは1−メチル−2−ピロリジノン中で実施される。LまたはLがヒドロキシル基を表す場合、カップリング剤、例えばブロモ−トリス−ピロリジノ−ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBroP)を用いるのが必要または望ましいことであり得る。
【0039】
式(III)および(V)で示される化合物は、既知化合物であるか、または当業界で知られている方法と類似した方法による公知技術を用いて製造され得る。ある種のこれらの化合物についての製造方法の例は、後の実施例で与えられている。
【0040】
式(I)の化合物は、当業界で慣用的な標準手順を用いて式(I)のさらなる化合物に変換され得る。
【0041】
式(I)の化合物の製造は、様々な段階で、1個またはそれ以上の保護基の付加および除去を含み得るものとする。官能基の保護および脱保護は、Protective Groups in Organic Synthesis、第2版、T.W.GreeneおよびP.G.M. Wuts、ワイリー−インターサイエンス(1991)に記載されている。
【0042】
本発明化合物は、P2X受容体アンタゴニストとしての活性を有するため、慢性関節リウマチ、骨関節症、乾癬、アレルギー性皮膚炎、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気道過敏症、敗血症性ショック、糸球体腎炎、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、アテローム性動脈硬化症、悪性腫瘍細胞の増殖および転移、骨髄芽球性(myoblastic)白血病、糖尿病、アルツハイマー病、髄膜炎、骨粗鬆症、火傷、虚血性心疾患、卒中、拡張蛇行静脈、サルコイドーシス、鼻炎、急性および慢性疼痛、多発性硬化症、骨髄腫、悪性腫瘍に随伴する骨喪失および目の炎症性および神経変性疾患、例えば強膜炎、上強膜炎、ブドウ膜炎、シェーグレン症候群−角結膜炎、強膜角膜炎、視神経炎、糖尿病性網膜症、色素性網膜炎、抗マラリア薬誘発網膜症の処置で使用される医薬として指示される。それらはまた、感染疾患、例えば炭疽、特に細菌毒素により誘発または増悪される炎症疾患の処置において有利である。
【0043】
従って、さらなる局面によると、本発明は、ヒトまたは動物体の治療で使用される、前記の式(I)で示される化合物、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグまたは溶媒和物を提供する。
【0044】
本発明はまた、治療で使用される医薬の製造における、前記の式(I)で示される化合物、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグまたは溶媒和物の使用に関するものである。
【0045】
「治療」はまた、特記しない場合「予防」を含むものとする。「治療の」および「治療的に」という語もそれに準ずるものと解釈すべきである。
【0046】
さらなる局面において、本発明は、P2X受容体介在疾患状態の処置方法であって、温血動物に式(I)で示される化合物、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグまたは溶媒和物の治療有効量を投与することを含む方法を提供する。
【0047】
さらに本発明は、免疫抑制実施方法(例、慢性関節リウマチ、骨関節症、過敏性腸疾患、アテローム性動脈硬化症または乾癬の処置における)であって、前記の式(I)で示される化合物、またはその医薬上許容される塩または溶媒和物の治療有効量を患者に投与することを含む方法を提供する。
【0048】
本発明はまた、閉塞性気道疾患(例、喘息またはCOPD)の処置方法であって、前記の式(I)で示される化合物、またはその医薬上許容される塩または溶媒和物の治療有効量を患者に投与することを含む方法を提供する。
【0049】
投与用量は、使用化合物、投与方法、所望の処置および適応疾患により異なるものとする。典型的には、体重1kg当たり0.001mg〜30mgの範囲における有効成分の一日用量が容認される。この一日用量は、必要に応じて分割用量で与えられ得、容認される化合物の正確な量および投与経路は、当業界で公知の原則に従って処置されている患者の体重、年齢および性別並びに処置されている特定疾患の状態により異なり得る。
【0050】
式(I)の化合物およびその医薬上許容される塩、プロドラッグおよび溶媒和物は、それだけでも使用され得るが、一般的には医薬上許容されるアジュバント、希釈剤または担体と共に医薬組成物形態で投与される。投与方法により、医薬組成物は、好ましくは0.05〜99%w(重量パーセント)、さらに好ましくは0.10〜70%wの有効成分、および1〜99.95%w、さらに好ましくは30〜99.90%wの医薬上許容されるアジュバント、希釈剤または担体を含み、重量パーセンテージは全て組成物全体に基くものとする。
【0051】
従って、本発明はまた、医薬上許容されるアジュバント、希釈剤または担体と共に式(I)で示される化合物、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグまたは溶媒和物を含む医薬組成物を提供する。
【0052】
本発明の医薬組成物は、処置が望まれる疾患の状態についての標準的方法で、例えば経口、局所、非経口、頬側、経鼻、経膣または直腸投与または吸入により投与され得る。これらの目的について、本発明化合物は、当業界で公知の手段により、例えば錠剤、カプセル剤、水性または油性溶液、懸濁液、エマルション、クリーム、軟膏、ゲル、鼻スプレー、坐剤、微細分割散剤または吸入用エーロゾルの形態、並びに非経口(静脈内、筋肉内または注入を含む)用に滅菌水性または油性溶液または懸濁液または滅菌エマルションの形態に製剤され得る。
【0053】
本発明化合物に加えて、本発明医薬組成物はまた、上記で挙げた1種またはそれ以上の疾患状態の処置において貴重である1種またはそれ以上の薬理作用物質を含むか、またはそれと併用投与(同時または連続的)され得る。典型的には、単位用量形態は、約1mg〜500mgの本発明化合物を含む。
【0054】
すなわち、本発明はさらに、慢性関節リウマチ、骨関節症、骨粗鬆症、乾癬、炎症性腸疾患、COPD、喘息、アレルギー性鼻炎または癌または神経変性疾患、例えば多発性硬化症、アルツハイマー病または卒中のいずれか一つの処置を目的とする組合わせ療法に関するものである。
【0055】
慢性関節リウマチの処置については、本発明化合物は、適切には「生物学的作用物質」、例えばTNF−α阻害剤、例えば抗TNFモノクローナル抗体(例えばレミケード(Remicade)、CDP−870およびヒューミラ(Humira))およびTNF受容体免疫グロブリン分子(例えばエンブレル(登録))、IL−1受容体アンタゴニスト(例えばアナキンラ)およびIL−1トラップ、IL−18受容体、抗−IL6 Ab、抗CD20 Ab、抗IL−15 AbおよびCTLA4Igと組合わされ得る。
【0056】
組合わせての使用に適切な薬剤には、標準的非ステロイド系抗炎症剤(以後、NSAID)、例えばピロキシカム、ジクロフェナク、プロピオン酸類、例えばナプロキセン、フルルビプロフェン(flubiprofen)、フェノプロフェン、ケトプロフェンおよびイブプロフェン、フェナメート類、例えばメフェナム酸、インドメタシン、スリンダク、アパゾン、ピラゾロン類、例えばフェニルブタゾン、サリチレート類、例えばアスピリンがある。また、COX−2阻害剤(例えばメロキシカム、セレコキシブ、ロフェコキシブ、バルデコキシブおよびエトリコキシブ)およびシクロ−オキシゲナーゼ阻害性一酸化窒素供与体(CINOD)および「疾患修飾性薬剤」(DMARD)、例えばメトトレキセート、サルファサラジン、シクロスポリンA、レフノミド、シクレソニド、ヒドロキシクロロキン、d−ペニシラミン、アウラノフィンまたは非経口用または経口用の金も挙げられる。
【0057】
本発明はまた、本発明化合物を、ジロートン(zileuton)、ABT−761、フェンレウトン(fenleuton)、テポキサリン、アボット−79175、アボット−85761、N−(5−置換)−チオフェン−2−アルキルスルホンアミド、2,6−ジ−tert−ブチルフェノールヒドラゾン、メトキシテトラヒドロピラン、例えばゼネカZD−2138、化合物SB−210661、ピリジニル置換2nシアノナフタレン化合物、例えばL−739010、2−シアノキノリン化合物、例えばL−746530、インドールおよびキノリン化合物、例えばMK−591、MK−886およびBAY×1005から成る群から選択されるロイコトリエン生合成阻害剤、5−リポキシゲナーゼ(5−LO)阻害剤または5−リポキシゲナーゼ活性化タンパク質(FLAP)アンタゴニストと合わせた組合わせに関するものである。
【0058】
さらに本発明は、本発明化合物を、フェノチアジン−3−オン、例えばL−651392、アミジノ化合物、例えばCGS−25019c、ベンゾオキサラミン、例えばオンタゾラスト(ontazolast)、ベンゼンカルボキシイミダミド、例えばBIIL284/260、および化合物、例えばザフィルルカスト、アブルカスト、モンテルカスト、プランルカスト、ベルルカスト(MK−679)、RG−12525、Ro−245913、イラルカスト(CGP45715A)およびBAY×7195から成る群から選択されるロイコトリエンLTB、LTC、LTD、LTEについての受容体アンタゴニストと合わせた組合わせに関するものである。
【0059】
さらに本発明は、本発明化合物を、イソ型PDE4Dの阻害剤を含むPDE4阻害剤と合わせた組合わせに関するものである。
【0060】
さらに本発明は、本発明化合物を、セチリジン、ロラタジン、デスロラタジン、フェキソフェナジン、アステミゾール、アゼラスチンおよびクロルフェニラミンを含む抗ヒスタミンH受容体アンタゴニストと合わせた組合わせに関するものである。
【0061】
さらに本発明は、本発明化合物を、胃保護性H受容体アンタゴニストまたはプロトンポンプ阻害剤(例えばオメプラゾール)と合わせた組合わせに関するものである。
【0062】
さらに本発明は、本発明化合物と、プロピルヘキセドリン、フェニレフリン、フェニルプロパノールアミン、シュードエフェドリン、ナファゾリン塩酸塩、オキシメタゾリン塩酸塩、テトラヒドロゾリン塩酸塩、キシロメタゾリン塩酸塩、およびエチルノルエピネフリン塩酸塩を含む、α−およびα−アドレナリン受容体アゴニスト血管収縮薬交感神経作用薬剤を合わせた組合わせに関するものである。
【0063】
さらに本発明は、本発明化合物と、臭化イプラトロピウム、臭化チオトロピウム、臭化オキシトロピウム、ピレンゼピンおよびテレンゼピンを含む抗コリン作用薬を合わせた組合わせに関するものである。
【0064】
さらに本発明は、本発明化合物と、β−〜β−アドレナリン受容体アゴニスト、例えばメタプロテレノール、イソプロテレノール、イソプレナリン、アルブテロール、サルブタモール、ホルモテロール、サルメテロール、テルブタリン、オルシプレナリン、ビトルテロールメシレート、およびピルブテロール、またはメチルキサンタニン、例えばテオフィリンおよびアミノフィリン、クロモグリク酸ナトリウム、またはムスカリン受容体(M1、M2およびM3)アンタゴニストを合わせた組合わせに関するものである。
【0065】
さらに本発明は、本発明化合物と、ケモカイン受容体機能の他のモジュレーター、例えばCCR1、CCR2、CCR2A、CCR2B、CCR3、CCR5、CCR6、CCR7、CCR8、CCR9、CCR10およびCCR11(C−Cファミリーについて)、CXCR1、CXCR3、CXCR4およびCXCR5(C−X−Cファミリーについて)およびCXCR1(C−X−Cファミリーについて)を合わせた組合わせに関するものである。
【0066】
さらに本発明は、本発明化合物をインスリン様成長因子I型(IGF−1)ミメティックと合わせた組合わせに関するものである。
【0067】
さらに本発明は、本発明化合物を、吸入グルココルチコイド、例えばプレドニゾン、プレドニゾロン、フルニソリド、トリアムシノロンアセトニド、ベクロメタゾンジプロピオネート、ブデソニド、プロピオン酸フルチカゾン、およびフランカルボン酸と合わせた全身的副作用の低い組合わせに関するものである。
【0068】
さらに本発明は、本発明化合物を、(a)トリプターゼ阻害剤、(b)血小板活性化因子(PAF)アンタゴニスト、(c)インターロイキン変換酵素(ICE)阻害剤、(d)IMPDH阻害剤、(e)VLA−4アンタゴニストを含む接着分子阻害剤、(f)カテプシン、(g)MAPキナーゼ阻害剤、(h)グルコース−6リン酸デヒドロゲナーゼ阻害剤、(i)キニン−B−およびB−受容体アンタゴニスト、(j)抗痛風剤、例、コルヒチン、(k)キサンチンオキシダーゼ阻害剤、例、アロプリノール、(l)尿酸排泄剤、例、プロベネシド、スルフィンピラゾン、およびベンズブロマロン、(m)成長ホルモン分泌促進薬、(n)トランスホーミング増殖因子(TGFβ)、(o)血小板由来増殖因子(PDGF)、(p)線維芽細胞増殖因子、例、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、(q)顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、(r)カプサイシンクリーム、(s)NKP−608C、SB−233412(タルネタント)およびD−4418から成る群から選択されるタキキニンNKおよびNK受容体アンタゴニスト、および(t)UT−77およびZD−0892から成る群から選択されるエラスターゼ阻害剤、(u)誘導型一酸化窒素シンターゼ阻害剤(iNOS)または(v)TH2細胞で発現される化学誘引物質受容体−相同性分子、(CRTH2アンタゴニスト)と合わせた組合わせに関するものである。
【0069】
さらに本発明は、本発明化合物を、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)の阻害剤、すなわちストロメライシン、コラゲナーゼ、およびゼラチナーゼ、並びにアグリカナーゼ、特にコラゲナーゼ−1(MMP−1)、コラゲナーゼ−2(MMP−8)、コラゲナーゼ−3(MMP−13)、ストロメライシン−1(MMP−3)、ストロメライシン−2(MMP−10)、およびストロメライシン−3(MMP−11)と合わせた組合わせに関するものである。
【0070】
本発明化合物はまた、変形性関節症処置用の既存治療剤との組合わせでも使用され得る。組合わせで使用されるのに適切な薬剤には、標準非ステロイド系抗炎症剤(以後、NSAID)、例えばピロキシカム、ジクロフェナク、プロピオン酸類、例えばナプロキセン、フルルビプロフェン(flubiprofen)、フェノプロフェン、ケトプロフェンおよびイブプロフェン、フェナメート類、例えばメフェナム酸、インドメタシン、スリンダク、アパゾン、ピラゾロン、例えばフェニルブタゾン、サリチレート類、例えばアスピリン、誘導型一酸化窒素シンターゼ阻害剤(iNOS阻害剤)、COX−2阻害剤、例えばセレコキシブ、バルデコキシブ、ロフェコキシブおよびエトリコキシブ、およびシクロ−オキシゲナーゼ阻害性一酸化窒素供与体(CINOD)鎮痛薬(例えばパラセタモールおよびトラマドール)、軟骨修復剤、例えばジアセレイン、ドキシサイリン(doxycyline)およびグルコサミン、および関節内治療薬、例えばコルチコステロイドおよびヒアルロン酸類、例えばヒアルガンおよびシンビスクがある。
【0071】
本発明化合物はまた、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎およびクローン病)処置用の既存治療剤と組合わせて使用され得る。使用に適した薬剤には、サルファサラジン、5−アミノ−サリチレート、チオプリン、アザチオプリンおよび6−メカプトルリンおよびコルチコステロイド、例えばブデソニドがある。
【0072】
本発明化合物はまた、抗癌剤、例えばエンドスタチンおよびアンギオスタチンまたは細胞傷害性薬剤、例えばアドリアマイシン、ダウノマイシン、シスプラチン、エトポシド、タキソール、タキソテールおよびファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤、VegF阻害剤、COX−2阻害剤および抗代謝薬、例えばメトトレキセート、抗新生物薬、特にビンカアルカロイド、例えばビンブラスチンおよびビンクリスチンを含む抗有糸分裂性薬剤と組合わせて使用され得る。
【0073】
本発明化合物はまた、抗ウイルス剤、例えばビラセプト(Viracept)、AZT、アシクロビルおよびファムシクロビル、および殺菌性化合物、例えばバラント(Valant)と組合わせて使用され得る。
【0074】
本発明化合物はまた、心臓血管薬、例えばカルシウムチャンネル遮断薬、脂質低下薬、例えばスタチン、フィブラート、β−遮断薬、Ace阻害剤、アンギオテンシン−2受容体アンタゴニストおよび血小板凝集阻害剤と組合わせて使用され得る。
【0075】
本発明化合物はまた、CNS薬、例えば抗うつ薬(例えばセルトラリン)、抗パーキンソン薬(例えばデプレニル、L−ドーパ、レキップ(Requip)、ミラペックス(Mirapex)、MAOB阻害剤、例えばセレギン(selegine)およびラサギリン、comP阻害剤、例えばタスマー(Tasmar)、A−2阻害剤、ドーパミン再取込阻害剤、NMDAアンタゴニスト、ニコチンアゴニスト、ドーパミンアゴニストおよび神経型一酸化窒素シンターゼ阻害剤)、および抗アルツハイマー病薬、例えばドネペジル、タクリン、COX−2阻害剤、プロペントフィリンまたはメトリフォネートと組合わせて使用され得る。
【0076】
本発明化合物はまた、骨粗鬆症薬、例えばロロキシフェン、ドロロキシフェン、ラソホキシフェンまたはホソマックスおよび免疫抑制剤、例えばFK−506、ラパマイシン、シクロスポリン、アザチオプリンおよびメトトレキセートと組合わせて使用され得る。
【0077】
本発明化合物の活性および選択性は、例えば国際公開第99/29660号に記載されている適切な検定法を用いて測定され得る。
【0078】
以下、非限定的実施例により、本発明についてさらに詳しく説明する。関連のある出発材料は市販されているか、または文献に記載されているかまたは当業者に熟知されているかまたは本明細書の実施例に記載されている いずれかの好都合な方法により製造され得る。
【実施例】
【0079】
実施例1
2−(2−アダマンチル)−N−(5−メトキシ−2−メチルフェニル)アセトアミド
【化7】

塩化チオニル(3.0ml)および2−アダマンチル酢酸(96mg)を、79℃で5分間攪拌しながら一緒に加熱した後、室温に冷却し、濃縮した。残さをジクロロメタン(5ml)に再溶解し、ジクロロメタン(10ml)中の5−メトキシ−2−メチルアニリン(180mg)およびトリエチルアミン(2.0ml)の溶液に加えた。1時間攪拌後、ジクロロメタン(60ml)および塩酸水溶液(40ml、2M)を加え、層を分離し、有機画分を乾燥し、濾過し、蒸発させた。精製(SiO、ジクロロメタン)により、標記化合物(0.12g)を得た。
1H NMR (400 MHz, d6-DMSO) δ 9.15 (1H, s), 7.08 (1H, d), 7.05 (1H, d) 6.65 (1H, dd), 3.69 (3H, s), 2.49 (2H, m), 2.21 (1H, m), 2.10 (3H, s), 2.00-1.92 (2H, m), 1.89-1.67 (10H, m), 1.56-1.49 (2H, m).
MS: APCI (+ve) 314 (M+H+)
MP: 193-196℃
【0080】
実施例2
2−(2−アダマンチル)−N−1H−インドール−4−イルアセトアミド
【化8】

ジメチルホルムアミド(5ml)中の1H−インドール−4−アミン(20mg)の溶液に、1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(29mg)、N,N−ジメチルピリジン−4−アミン(18.5mg)および2−アダマンチル酢酸(29mg)を連続攪拌しながら加えた。混合物を窒素下で2時間60℃に加熱した。それに続いて反応物を室温に冷却し、次いで酢酸エチル(20ml)および水(20ml)間に分配した。さらに水相を酢酸エチル(2×20ml)で抽出し、有機相を合わせて硫酸水素カリウム水溶液(2×10ml、2M)、飽和重炭酸ナトリウム水溶液(2×10ml)およびブライン(20ml)で洗浄した。次いで、有機相を乾燥し、濾過し、真空下で蒸発させることにより、白色固体(23mg)として標記化合物を得た。
1H NMR (300 MHz, CDC13) δ 7.77-7.75 (1H, m), 7.22-7.14 (3H,m), 6.47 (1H, d), 2.60 (2H, d), 2.40 (1H, bt), 1.96-1.86 (4H,m), 1.76 (2H, s), 1.53 (6H,s).
MS: APCI (+ve) 309 (M+H+).
MP: 206-208℃
【0081】
実施例3
2−(1−アダマンチル)−N−キノリン−5−イルアセトアミド
【化9】

5−キノリンアミンを用いて実施例2の方法に従って製造した。
MS: APCI (+ve) 321 (M+H+)。
【0082】
薬理学的分析
ある種の化合物、例えばベンゾイルベンゾイルアデノシン三リン酸(bbATP)は、原形質膜における細孔の形成に影響を及ぼす、P2X受容体のアゴニストであることが知られている(Drug Development Research(1996)、37(3)、126頁)。従って、受容体が臭化エチジウム(蛍光性DNAプローブ)の存在下でbbATPを用いて活性化されると、細胞内DNA結合臭化エチジウムの蛍光の増加が観察される。蛍光の増加は、P2X受容体活性化の尺度として、すなわちP2X受容体に対する化合物の効果を定量するのに使用され得る。
【0083】
この要領で、実施例の標記化合物を、P2X受容体でのアンタゴニスト活性について試験した。試験を96ウェル平底マイクロタイタープレートにおいて実施し、ウェルを、10−4M臭化エチジウム含有THP−1細胞懸濁液(2.5×10細胞/ml)200μl、10−5M bbATP含有高カリウム緩衝液25μl、および3×10−5M試験化合物含有高カリウム緩衝液25μlを含む試験液250μlで満たした。プレートを、プラスチックシートで覆い、1時間37℃でインキュベーションした。次いで、プレートをパーキン−エルマー蛍光プレート読取装置で読取った、励起520nm、放射595nm、スリット幅:Ex15nm、Em20nm。比較目的のため、bbATP(P2X受容体アゴニスト)およびピリドキサル5−リン酸(P2X受容体アンタゴニスト)を対照として試験で別々に使用した。得られた読取結果から、pIC50値を各試験化合物について計算するが、この値はbbATPアゴニスト活性を50%低減化するのに必要とされる試験化合物濃度の負の対数である。実施例の化合物は各々、6より大きいpIC50値を有するアンタゴニスト活性を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】

【化1】

[式中、
Aは、フェニル、ピリジル、インドリル、インダゾリル、プリニル、ピリミジニル、チオフェニル、ベンゾチアゾリル、キノリニルまたはイソキノリニル基を表し、それらは各々、所望によりハロゲン、アミノ、ニトロ、シアノ、ヒドロキシル、所望によりヒドロキシルまたはハロゲンから選択される少なくとも1個の置換基により置換されていてもよいC−Cアルキル、C−Cアルコキシ、または式
【化2】

で示される基から選択される、同一または異なり得る1個またはそれ以上の置換基により置換され得、
Yは酸素または硫黄原子または基−N(R)−を表し、
pは0または1であり、
は、結合または所望によりヒドロキシル、ハロゲン、C−Cアルコキシ、C−Cアルキルチオ、C−Cヒドロキシアルキル、C−Cヒドロキシアルキルオキシ、C−Cアルコキシカルボニル、C−Cシクロアルキル、フェニル(所望によりハロゲン、ヒドロキシルおよびC−Cアルキルスルホニルアミノから選択される少なくとも1個の置換基により置換されていてもよい)、ベンジル、インドリル(所望によりC−Cアルコキシから選択される少なくとも1個の置換基により置換されていてもよい)、オキソピロリジニル、フェノキシ、ベンゾジオキソリル、フェノキシフェニル、ピペリジニルおよびベンジルオキシから選択される少なくとも1個の置換基により置換され得るC−Cアルキル基を表し、
は、水素、ヒドロキシル、または基−NRを表すが、ただし、Rが結合を表すとき、Rは、窒素、酸素および硫黄から選択される少なくとも1個の環ヘテロ原子を含み得る飽和または不飽和3−〜10−員環系を表し、環系は、所望によりヒドロキシル、アミノ(−NH)、C−Cアルキル、C−Cアルキルアミノ、−NH(CH)OH、−NH(CH)OH、NH(CH)OH、C−Cヒドロキシアルキル、ベンジル、および
【化3】

から選択される少なくとも1個の置換基により置換されていてもよいものとし、
は、水素原子または所望によりヒドロキシル、ハロゲンおよびC−Cアルコキシから選択される少なくとも1個の置換基により置換され得るC−Cアルキル基を表し、
およびRは、各々独立して、水素、ピロリジニル、ピペリジニル、C−Cアルキルカルボニル、C−Cアルケニル、またはC−Cアルキル{所望によりカルボキシル、ヒドロキシル、アミノ(−NH)、C−Cアルキルアミノ、ジ−C−Cアルキルアミノ、−NH(CH)OH、C−Cアルコキシ、C−Cアルキルチオ、C−Cアルコキシカルボニル、および窒素、酸素および硫黄から選択される少なくとも1個の環ヘテロ原子を含み得る飽和または不飽和3−〜10−員環系から選択される少なくとも1個の置換基により置換されていてもよい}を表し、環系は、所望によりハロゲン、ヒドロキシル、オキソ、カルボキシル、シアノ、C−Cアルキル、C−Cヒドロキシアルキル、−NR、−(CH)NRおよび−CONR1011から選択される少なくとも1個の置換基により置換されていてもよいものとし、
またはRおよびRは、それらが結合している窒素原子と一緒になって、窒素および酸素から選択される第2環ヘテロ原子を含み得る飽和4−〜8−員複素環を形成し得、環は、所望によりヒドロキシル、ハロゲン、C−Cアルキル、およびC−Cヒドロキシアルキルから選択される少なくとも1個の置換基により置換されていてもよいものとし、
rは、1、2、3、4、5または6であり、
およびRは、各々独立して、水素原子またはC−Cアルキル、C−CヒドロキシアルキルまたはC−Cシクロアルキル基を表すか、またはRおよびRは、それらが結合している窒素原子と一緒になって、3−〜8−員飽和複素環を形成し、
およびRは、各々独立して水素原子またはC−Cアルキル、C−CヒドロキシアルキルまたはC−Cシクロアルキル基を表すか、またはRおよびRは、それらが結合している窒素原子と一緒になって、3−〜8−員飽和複素環を形成し、そして
10およびR11は、各々独立して水素原子またはC−Cアルキル、C−CヒドロキシアルキルまたはC−Cシクロアルキル基を表すか、またはR10およびR11は、それらが結合している窒素原子と一緒になって、3−〜8−員飽和複素環を形成し、
Bは、C(O)NHまたはNHC(O)を表し、
nは、1、2、3、4、5または6であり、
各Xは、独立してハロゲンまたはC−Cアルコキシから選択され、そして
mは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、または9であり、
ただし、BがC(O)NHを表し、nが1であり、mが0であるとき、Aは非置換フェニル基ではないものとする]
で示される化合物またはその医薬上許容される塩、プロドラッグまたは溶媒和物。
【請求項2】
Aが、フェニル、ピリジル、インドリルまたはキノリニル基から選択される、置換または非置換の基を表す、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Aが、所望によりハロゲンまたはヒドロキシルから選択される少なくとも1個の置換基により置換されていてもよい、C−CアルコキシまたはC−Cアルキルから選択される、同一または異なり得る1個またはそれ以上の置換基により置換されている、請求項1または請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
BがNHC(O)を表す、請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項5】
mが1、2または3である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項6】
XがハロゲンまたはC−Cアルコキシである、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
mが0である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項8】
nが1または2である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項9】
2−(2−アダマンチル)−N−(1H−インドール−4−イル)アセトアミド;および
2−(2−アダマンチル)−N−(5−メトキシ−2−メチルフェニル)アセトアミド;
2−(1−アダマンチル)−N−キノリン−5−イルアセトアミド;
から選択される、請求項1に記載の式(I)で示される化合物またはその医薬上許容される塩、プロドラッグまたは溶媒和物。
【請求項10】
医薬上許容されるアジュバント、希釈剤または担体と共に、請求項1〜9のいずれか1項に記載の式(I)で示される化合物またはその医薬上許容される塩、プロドラッグまたは溶媒和物を含む医薬組成物。
【請求項11】
1種またはそれ以上の追加的医薬活性成分と組合わせて、請求項1〜9のいずれか1項に記載の式(I)で示される化合物またはその医薬上許容される塩、プロドラッグまたは溶媒和物を含む医薬組成物。
【請求項12】
請求項10に記載の医薬組成物の製造方法であって、請求項1〜9のいずれか1項に記載の式(I)で示される化合物、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグまたは溶媒和物を、医薬上許容されるアジュバント、希釈剤または担体と混合する工程を含む方法。
【請求項13】
治療で使用される請求項1〜9のいずれか1項に記載の式(I)で示される化合物またはその医薬上許容される塩、プロドラッグまたは溶媒和物。
【請求項14】
P2X受容体が介在する疾患状態の処置に使用される医薬の製造における請求項1〜9のいずれか1項に記載の式(I)で示される化合物またはその医薬上許容される塩、プロドラッグまたは溶媒和物の使用。
【請求項15】
閉塞性気道疾患の処置で使用される医薬の製造における請求項1〜9のいずれか1項に記載の式(I)の化合物またはその医薬上許容される塩、プロドラッグまたは溶媒和物の使用。
【請求項16】
閉塞性気道疾患が喘息または慢性閉塞性肺疾患である、請求項14に記載の使用。
【請求項17】
骨関節症の処置で使用される医薬の製造における請求項1〜9のいずれか1項に記載の式(I)で示される化合物またはその医薬上許容される塩、プロドラッグまたは溶媒和物の使用。
【請求項18】
慢性関節リウマチの処置で使用される医薬の製造における請求項1〜9のいずれか1項に記載の式(I)で示される化合物またはその医薬上許容される塩、プロドラッグまたは溶媒和物の使用。
【請求項19】
アテローム性動脈硬化症の処置で使用される医薬の製造における請求項1〜15のいずれか1項に記載の式(I)で示される化合物またはその医薬上許容される塩、プロドラッグまたは溶媒和物の使用。
【請求項20】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の式(I)で示される化合物またはその医薬上許容される塩、プロドラッグまたは溶媒和物の治療有効量を患者に投与することを含む、慢性関節リウマチまたは骨関節症の処置方法。
【請求項21】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の式(I)で示される化合物またはその医薬上許容される塩、プロドラッグまたは溶媒和物の治療有効量を患者に投与することを含む、閉塞性気道疾患の処置方法。
【請求項22】
式(I)の化合物またはその医薬上許容される塩、プロドラッグまたは溶媒和物の製造方法であって、
(a) BがNHC(O)を表すとき、式(III)
【化4】

[式中、Lは脱離基を表し、n、mおよびXは式(I)の場合と同じ意味を有する]
で示される化合物を、式(IV):A−NH [式中、Aは式(I)の場合と同じ意味を有する]で示される化合物と反応させるか、または
(b) BがC(O)NHを表すとき、式
【化5】

[式中、X、mおよびnは式(I)の場合と同じ意味を有する]
で示される化合物を、式(VI):A−C(O)−L [式中、Lは脱離基を表し、Aは式(I)の場合と同じ意味を有する]で示される化合物と反応させ、
所望により、その後以下の工程:
・生成された化合物を本発明によるさらなる化合物に変換させる;および/または
・上記化合物の医薬上許容される塩またはプロドラッグまたは溶媒和物を形成する;
の一つまたはそれ以上を実施する
ことを含む方法。

【公表番号】特表2007−501782(P2007−501782A)
【公表日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−522527(P2006−522527)
【出願日】平成16年7月28日(2004.7.28)
【国際出願番号】PCT/SE2004/001154
【国際公開番号】WO2005/014529
【国際公開日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【出願人】(391008951)アストラゼネカ・アクチエボラーグ (625)
【氏名又は名称原語表記】ASTRAZENECA AKTIEBOLAG
【Fターム(参考)】