PID制御装置及びPID制御方法
【課題】PID制御対象を制御するためのPIDパラメータを決定して、該PIDパラメータを用いて、上記制御対象を制御する場合に、予測モデルを構築しないで最適なPIDパラメータを容易に決定できるようにして、制御の信頼性を向上させる。
【解決手段】時刻tの時点での制御対象への入力、該制御対象からの出力及び目標値をそれぞれu(t)、y(t)及びr(t)とし、上記入力の差分に対する重み係数をλとし、むだ時間をkとし、差分演算子をΔとしたとき、
φ(t+k)=y(t+k)−r(t)+λΔu(t)
で表される一般化出力φ(t+k)が小さくなるように、上記PIDパラメータを決定する。
【解決手段】時刻tの時点での制御対象への入力、該制御対象からの出力及び目標値をそれぞれu(t)、y(t)及びr(t)とし、上記入力の差分に対する重み係数をλとし、むだ時間をkとし、差分演算子をΔとしたとき、
φ(t+k)=y(t+k)−r(t)+λΔu(t)
で表される一般化出力φ(t+k)が小さくなるように、上記PIDパラメータを決定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PID制御対象を制御するためのPIDパラメータを決定して、このPIDパラメータを用いて上記制御対象を制御するPID制御装置及びPID制御方法に関する技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
近年、産業界においては、資源高騰の煽りを受けて、生産性の向上や省エネルギー・省力化、品質向上、生産コストの低減がより一層進められている。このような現状において、制御システムが果たす役割はこれまで以上に重要視されてきている。とりわけ化学プロセスや石油精製プロセス等においては、操業条件の変更(製品銘柄の変更等)、原料及び環境の変化、又はシステムそのものが持つ非線形性等により、対象とするシステムの特性が変化することが往々にして存在する。そのようなシステムに対して高精度な制御性を得るためには、本来、システムの特性に対応して制御システム(PIDパラメータ)が自己調整されることが望ましい。その一つのアプローチとしてセルフチューニング制御法があり、非特許文献1には、この考え方に基づいたセルフチューニングPID制御法が開示されている。この非特許文献1のセルフチューニングPID制御法は、一般化最小分散制御(GMVC)に基づくPIDパラメータ調整法であって、評価規範の最小化に基づいて制御則(GMVC則)を導出する。そして、PID制御対象への入力と該入力に対する該制御対象からの出力(モデル化誤差)とに基づいて構築した予測モデルに基づいて、上記制御則(GMVC則)を用いてPIDパラメータを決定する。
【非特許文献1】山本、兼田,「一般化最小分散制御則に基づくセルフチューニングPID制御器の一設計」,システム制御情報学会論文誌,1998年,第11巻,第1号,p.1−9
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記従来のPIDパラメータ決定方法では、予測モデルの構築(つまりシステムパラメータの同定)を逐次行わなければならず、信頼性の面で問題がある。すなわち、制御対象からの出力にノイズが加わって誤ったモデルを構築する可能性があり、このように誤ったモデルを構築すると、制御系が却って不安定になる可能性が高くなる。また、モデル化誤差(予測誤差)に基づいて制御系が調整されるため、定常状態でかつモデル化誤差が小さい場合に制御性能を改善することができない。
【0004】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、予測モデルを構築しないで最適なPIDパラメータを容易に決定できるようにして、制御の信頼性を向上させるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、この発明では、一般化出力が小さくなるようにPIDパラメータを決定するようにした。
【0006】
具体的には、請求項1の発明では、PID制御対象を制御するためのPIDパラメータを決定するPIDパラメータ決定手段と、該PIDパラメータ決定手段により決定されたPIDパラメータを用いて、上記制御対象を制御する制御手段とを備えたPID制御装置を対象とする。
【0007】
そして、上記PIDパラメータ決定手段は、時刻tの時点での上記制御対象への入力、該制御対象からの出力及び目標値をそれぞれu(t)、y(t)及びr(t)とし、上記入力の差分に対する重み係数をλとし、むだ時間をkとし、差分演算子をΔとしたとき、
φ(t+k)=y(t+k)−r(t)+λΔu(t)
で表される一般化出力φ(t+k)が小さくなるように、上記PIDパラメータを決定するよう構成されているものとする。
【0008】
上記の構成により、PIDパラメータ決定手段によってPIDパラメータが決定され、制御手段により、その決定されたPIDパラメータを用いて制御対象が制御される。上記PIDパラメータ決定手段は、PIDパラメータを決定する際、一般化出力φ(t+k)が小さくなるようにする。ここで、一般化出力φ(t+k)は、制御誤差と、重み係数が掛けられた入力の差分との和であるので、一般化出力φ(t+k)を小さくすることで、制御誤差及び入力の差分を小さくすることができる。制御誤差と入力の差分との比率は、重み係数λで決まるので、どちらをより小さくするかによって重み係数λを決定すればよい。この結果、製品品質を確保しつつ、入力の差分(入力の振れ)を抑えて、アクチュエータに多大な負担がかかるのを防止することができる。また、一般化出力φ(t+k)を常に小さくなるようにPIDパラメータを決定するので、定常状態であっても制御性能を改善することができるとともに、予測モデルを構築しなくても済む。よって、最適なPIDパラメータを容易に決定することができるとともに、制御の信頼性を向上させることができる。
【0009】
請求項2の発明は、PID制御対象を制御するためのPIDパラメータを決定するPIDパラメータ決定ステップと、該PIDパラメータ決定ステップで決定されたPIDパラメータを用いて、上記制御対象を制御する制御ステップとを備えたPID制御方法の発明である。
【0010】
そして、この発明では、上記PIDパラメータ決定ステップは、時刻tの時点での上記制御対象への入力、該制御対象からの出力及び目標値をそれぞれu(t)、y(t)及びr(t)とし、上記入力の差分に対する重み係数をλとし、むだ時間をkとし、差分演算子をΔとしたとき、
φ(t+k)=y(t+k)−r(t)+λΔu(t)
で表される一般化出力φ(t+k)が小さくなるように上記PIDパラメータを決定するステップであるものとする。
【0011】
この発明により、請求項1の発明と同様の作用効果が得られる。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明のPID制御装置及びPID制御方法によると、一般化出力が小さくなるようにPIDパラメータを決定するようにしたので、予測モデルを構築しないで最適なPIDパラメータを容易に決定することができ、制御の信頼性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0014】
図1は本発明の実施形態に係るPID制御装置を示し、このPID制御装置は、PID制御対象を制御するためのPIDパラメータを決定するPIDパラメータ決定手段としてのPIDパラメータ決定部1と、該PIDパラメータ決定部1により決定されたPIDパラメータを用いて、上記制御対象を制御する制御手段としてのPID制御部2とを備えている。
【0015】
図1において、rは目標値、uは上記制御対象への入力(操作量)、yは上記制御対象からの出力(制御量)、eは制御誤差、ξは平均が0でかつ分散がσ2のガウス性白色雑音である。また、Pは上記制御対象での伝達関数、CはPID制御部2での伝達関数を示す。さらに、Δは差分演算子を表し、Δ=1−z−1で定義され、z−1は時間遅れ演算子である。
【0016】
ここで、下記の式(1)で表される、1入力1出力の離散時間モデルを考える。この式(1)は、CARIMA(Controlled Auto-Regressive and Integrated Moving Average)モデルである。尚、式(1)において、kはむだ時間であり、u(t)、y(t)及びξ(t)は、時刻tの時点での入力、出力及び白色雑音をそれぞれ示す。
【0017】
【数1】
【0018】
上記式(1)中のA(z−1)及びB(z−1)は、下記の式(2)で示される多項式であって、互いに既約であるとする。
【0019】
【数2】
【0020】
尚、z-kB(z−1)/A(z−1)は上記制御対象での伝達関数P(z−1)に相当するものである。
【0021】
上記入力と制御誤差との間には、下記の式(3)で示すような関係がある。尚、式(3)において、r(t)は時刻tの時点での目標値(本実施形態では、tの値に関係なく一定)であり、e(t)は時刻tの時点での制御誤差である。
【0022】
【数3】
【0023】
また、式(3)をPIDパラメータ(比例ゲインkc、積分時間TI及び微分時間TD)で書き直すと、下記の式(4)のようになる。尚、Tsはサンプリング時間である。
【0024】
【数4】
【0025】
さらに、Kp=kc、KI=kcTs/TI、KD=kcTD/Tsとすると、式(4)は式(5)に書き換えられる。KIは積分ゲインと呼ばれ、KDは微分ゲインと呼ばれ、比例ゲインKp、積分ゲインKI及び微分ゲインKDもPIDパラメータと呼ばれる。
【0026】
【数5】
【0027】
上記PIDパラメータ決定部1は、下記の式(6)で表される一般化出力φ(t+k)が小さくなるように、上記PIDパラメータ(比例ゲインKp、積分ゲインKI及び微分ゲインKD)を決定する。
【0028】
【数6】
【0029】
このPIDパラメータの決定方法を具体的に説明する。
【0030】
上記式(6)は、上記式(1)及び(3)を用いて、下記の式(7)に変形することができる。
【0031】
【数7】
【0032】
上記式(7)において、S(z−1)は下記の式(8)で表される。
【0033】
【数8】
【0034】
上記式(8)において、T(z−1)は下記の式(9)で表される。
【0035】
【数9】
【0036】
また、上記式(7)及び式(8)におけるG(z−1)は、下記の式(10)(Diphantine方程式)を満たすものである。
【0037】
【数10】
【0038】
上記式(7)より、一般化出力φ(t+k)は、時刻tの時点での雑音と、時刻t+kの時点での雑音とに分離することができ、最適な制御を行えば、時刻tの時点での雑音の項(式(7)の右辺第2項)は出来る限り小さく(延いては0に)することができる。一方、時刻t+kの時点での雑音の項は、将来に生じる雑音であるため、制御することができない雑音である。そこで、式(7)の右辺第2項の雑音を出来る限り小さくすることを考える。
【0039】
ここで、上記一般化出力φ(t+k)を時刻tでの一般化出力φ(t)で書き直すと、下記の式(11)のようになる。
【0040】
【数11】
【0041】
そして、φ(t)=L(z−1)ξ(t)とすると、
ξ(t−k)=φ(t−k)/L(z−1)
となるので、上記式(11)は下記の式(12)のように変形される。尚、式(12)において、ε(t)=G(z−1)ξ(t)である。
【0042】
【数12】
【0043】
さらに、上記式(12)は、自己回帰パラメータαi(i=1,2,…m)を用いて、下記の式(13)のように書ける。
【0044】
【数13】
【0045】
上記式(13)において、iの値は正確には1〜無限大となるが、近似的に次数m(例えば20)で打ち切る。
【0046】
上記式(13)は雑音モデルであり、この雑音モデルを最小二乗法で同定する。すなわち、最適な制御を行えば、上述の如く、式(13)の右辺第2項は0になるので、こうなるように自己回帰パラメータαiを最小二乗法で同定する。このとき、同定のためのデータをn個(例えば500個)用いるとする。
【0047】
上記式(13)を、式(14)〜式(17)で示すベクトルを用いて書き直すと、式(18)のようになる。尚、式(14)〜式(16)において、[・,・,…,・]Tは、行ベクトルを列ベクトルに転置することを意味する。
【0048】
【数14】
【0049】
【数15】
【0050】
そして、下記の式(19)のJを、式(20)のようにα(t)で偏微分した値が0になるようにする。
【0051】
【数16】
【0052】
【数17】
【0053】
式(20)より、パラメータα(t)は式(21)のようになる。
【0054】
【数18】
【0055】
ここで、性能評価指標として、下記の式(22)で表される制御性能評価指標κを考える。Jminは、式(18)の右辺第1項の雑音の分散であり、J0は右辺第2項の雑音の分散である。
【0056】
【数19】
【0057】
上記制御性能評価指標κの値は0〜1の範囲内にあり、最適な制御を行えば、J0は0になるので、制御性能評価指標κの値は1になる。そこで、制御性能評価指標κの値が1になるように、PIDパラメータ(比例ゲインKp、積分ゲインKI及び微分ゲインKD)を、下記の式(23)で表される最急降下法を用いて決定する。
【0058】
【数20】
【0059】
尚、上記式(23)のK(t)は下記の式(24)で表されるベクトルであり、ηは学習係数を表す。
【0060】
【数21】
【0061】
上記式(23)は式(25)に書き換えることができる。
【0062】
【数22】
【0063】
このようにしてPIDパラメータを決定することで、上記式(6)の一般化出力φ(t+k)を小さくしていくことができる(制御性能評価指標κの値は1に近づいていく)。このPIDパラメータを用いて、制御対象を制御することで、制御誤差e及び入力の差分Δuを小さくすることができ、製品品質を確保しつつ、入力の差分(入力の振れ)を抑えて、アクチュエータに多大な負担がかかるのを防止することができる。また、一般化出力φ(t+k)を常に小さくなるようにPIDパラメータを決定するので、定常状態であっても制御性能を改善することができるとともに、予測モデルを構築しなくても済む。よって、最適なPIDパラメータを容易に決定することができるとともに、制御の信頼性を向上させることができる。
【0064】
(数値例1)
先ず、初期PIDパラメータが不適切な場合を考える。制御対象を、下記の式(26)のような一次遅れ+むだ時間系で与えるものとし、サンプリング間隔Tsは20秒とした。そして、初期PIDパラメータを、Kp=0.75、KI=0.15、KD=0.15とした。但し、サンプリング間隔毎に評価を行うのではなく、評価間隔を50ステップとした。
【0065】
【数23】
【0066】
制御対象への入力の差分に対する重み係数λを1.0にして、本発明の方法とPIDパラメータを固定して用いる方法(以下、固定PID法という)とで制御性能評価指標κの値がどのように変化するかを調べた。この結果を図2に示す。また、本発明の方法により調整したPIDパラメータの時間的推移を図3に示す。本発明の方法によると、制御性能評価指標κが改善する(1に近づく)ようにPIDパラメータが調整され、10000ステップ以降に制御性能評価指標κが改善していることが分かる。
【0067】
さらに、制御誤差e、入力の差分Δu及び入力uの時間的推移を図4〜図6にそれぞれ示す。各図の(a)が本発明の方法によるものであり、(b)が固定PID法によるものである。このことより、本発明の方法では、制御誤差e、入力の差分Δu及び入力uが、10000ステップ以降に、僅かではあるが、固定PID法よりも小さくなっていることが分かる。
【0068】
続いて、重み係数λを100にして、本発明の方法と固定PID法とで制御性能評価指標κの値がどのように変化するかを調べた。この結果を図7に示す。また、本発明の方法により調整したPIDパラメータの時間的推移を図8に示す。本発明の方法によると、5000ステップ以降に制御性能評価指標κが改善していることが分かる。
【0069】
さらに、制御誤差e、入力の差分Δu及び入力uの時間的推移を図9〜図11にそれぞれ示す。各図の(a)が本発明の方法によるものであり、(b)が固定PID法によるものである。このことより、本発明の方法では、特に入力の差分Δu及び入力uが、固定PID法よりも明らかに小さくなっていることが分かる。これは、重み係数λを前例よりもかなり大きくしたためである。したがって、入力の差分Δuの分散(又は入力uの分散)の最小化に重きを置く場合には、重み係数λを大きくすればよい。逆に、制御誤差eの分散の最小化に重きを置く場合には、重み係数λを小さくすればよい。
【0070】
(数値例2)
次にシステム変動が生じる場合を考える。制御対象を、下記の式(27)で与え、各種システムパラメータ(時定数T、システムゲインK及びむだ時間k)を式(28)〜(30)のようにそれぞれ変化させた。但し、式(28)〜(30)において、t1=2000、h=1000であり、サンプリング間隔Tsは1秒とした。
【0071】
【数24】
【0072】
入力の差分に対する重み係数λを100にして、本発明の方法で制御性能評価指標κの値がどのように変化するかを調べた。この結果を図12に示す。また、本発明の方法により調整したPIDパラメータの時間的推移を図13に示す。これにより、本発明の方法では、システム変動があっても、定常状態であっても、制御性能評価指標κを改善する方向に常にPIDパラメータが修正されていることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、PID制御対象を制御するためのPIDパラメータを決定して、このPIDパラメータを用いて上記制御対象を制御するPID制御装置及びPID制御方法に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の実施形態に係るPID制御装置を示すブロック図である。
【図2】数値例1(λ=1.0)での制御結果であり、本発明の方法と固定PID法とによる制御性能評価指標の時間的推移を示すグラフである。
【図3】数値例1(λ=1.0)での本発明の方法による制御結果であり、(a)は比例ゲインの時間的推移を、(b)は積分ゲインの時間的推移を、(c)は微分ゲインの時間的推移をそれぞれ示すグラフである。
【図4】数値例1(λ=1.0)での制御結果であり、(a)は本発明の方法による制御誤差の時間的推移を、(b)は固定PID法による制御誤差の時間的推移をそれぞれ示すグラフである。
【図5】数値例1(λ=1.0)での制御結果であり、(a)は本発明の方法による制御対象への入力の差分の時間的推移を、(b)は固定PID法による制御対象への入力の差分の時間的推移をそれぞれ示すグラフである。
【図6】数値例1(λ=1.0)での制御結果であり、(a)は本発明の方法による制御対象への入力の時間的推移を、(b)は固定PID法による制御対象への入力の時間的推移をそれぞれ示すグラフである。
【図7】数値例1(λ=100)での制御結果であり、本発明の方法と固定PID法とによる制御性能評価指標の時間的推移を示すグラフである。
【図8】数値例1(λ=100)での本発明の方法による制御結果であり、(a)は比例ゲインの時間的推移を、(b)は積分ゲインの時間的推移を、(c)は微分ゲインの時間的推移をそれぞれ示すグラフである。
【図9】数値例1(λ=100)での制御結果であり、(a)は本発明の方法による制御誤差の時間的推移を、(b)は固定PID法による制御誤差の時間的推移をそれぞれ示すグラフである。
【図10】数値例1(λ=100)での制御結果であり、(a)は本発明の方法による制御対象への入力の差分の時間的推移を、(b)は固定PID法による制御対象への入力の差分の時間的推移をそれぞれ示すグラフである。
【図11】数値例1(λ=100)での制御結果であり、(a)は本発明の方法による制御対象への入力の時間的推移を、(b)は固定PID法による制御対象への入力の時間的推移をそれぞれ示すグラフである。
【図12】数値例2での本発明の方法による制御結果であり、制御性能評価指標の時間的推移を示すグラフである。
【図13】数値例2での本発明の方法による制御結果であり、(a)は比例ゲインの時間的推移を、(b)は積分ゲインの時間的推移を、(c)は微分ゲインの時間的推移をそれぞれ示すグラフである。
【符号の説明】
【0075】
1 PIDパラメータ決定部(PIDパラメータ決定手段)
2 PID制御部(制御手段)
【技術分野】
【0001】
本発明は、PID制御対象を制御するためのPIDパラメータを決定して、このPIDパラメータを用いて上記制御対象を制御するPID制御装置及びPID制御方法に関する技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
近年、産業界においては、資源高騰の煽りを受けて、生産性の向上や省エネルギー・省力化、品質向上、生産コストの低減がより一層進められている。このような現状において、制御システムが果たす役割はこれまで以上に重要視されてきている。とりわけ化学プロセスや石油精製プロセス等においては、操業条件の変更(製品銘柄の変更等)、原料及び環境の変化、又はシステムそのものが持つ非線形性等により、対象とするシステムの特性が変化することが往々にして存在する。そのようなシステムに対して高精度な制御性を得るためには、本来、システムの特性に対応して制御システム(PIDパラメータ)が自己調整されることが望ましい。その一つのアプローチとしてセルフチューニング制御法があり、非特許文献1には、この考え方に基づいたセルフチューニングPID制御法が開示されている。この非特許文献1のセルフチューニングPID制御法は、一般化最小分散制御(GMVC)に基づくPIDパラメータ調整法であって、評価規範の最小化に基づいて制御則(GMVC則)を導出する。そして、PID制御対象への入力と該入力に対する該制御対象からの出力(モデル化誤差)とに基づいて構築した予測モデルに基づいて、上記制御則(GMVC則)を用いてPIDパラメータを決定する。
【非特許文献1】山本、兼田,「一般化最小分散制御則に基づくセルフチューニングPID制御器の一設計」,システム制御情報学会論文誌,1998年,第11巻,第1号,p.1−9
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記従来のPIDパラメータ決定方法では、予測モデルの構築(つまりシステムパラメータの同定)を逐次行わなければならず、信頼性の面で問題がある。すなわち、制御対象からの出力にノイズが加わって誤ったモデルを構築する可能性があり、このように誤ったモデルを構築すると、制御系が却って不安定になる可能性が高くなる。また、モデル化誤差(予測誤差)に基づいて制御系が調整されるため、定常状態でかつモデル化誤差が小さい場合に制御性能を改善することができない。
【0004】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、予測モデルを構築しないで最適なPIDパラメータを容易に決定できるようにして、制御の信頼性を向上させるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、この発明では、一般化出力が小さくなるようにPIDパラメータを決定するようにした。
【0006】
具体的には、請求項1の発明では、PID制御対象を制御するためのPIDパラメータを決定するPIDパラメータ決定手段と、該PIDパラメータ決定手段により決定されたPIDパラメータを用いて、上記制御対象を制御する制御手段とを備えたPID制御装置を対象とする。
【0007】
そして、上記PIDパラメータ決定手段は、時刻tの時点での上記制御対象への入力、該制御対象からの出力及び目標値をそれぞれu(t)、y(t)及びr(t)とし、上記入力の差分に対する重み係数をλとし、むだ時間をkとし、差分演算子をΔとしたとき、
φ(t+k)=y(t+k)−r(t)+λΔu(t)
で表される一般化出力φ(t+k)が小さくなるように、上記PIDパラメータを決定するよう構成されているものとする。
【0008】
上記の構成により、PIDパラメータ決定手段によってPIDパラメータが決定され、制御手段により、その決定されたPIDパラメータを用いて制御対象が制御される。上記PIDパラメータ決定手段は、PIDパラメータを決定する際、一般化出力φ(t+k)が小さくなるようにする。ここで、一般化出力φ(t+k)は、制御誤差と、重み係数が掛けられた入力の差分との和であるので、一般化出力φ(t+k)を小さくすることで、制御誤差及び入力の差分を小さくすることができる。制御誤差と入力の差分との比率は、重み係数λで決まるので、どちらをより小さくするかによって重み係数λを決定すればよい。この結果、製品品質を確保しつつ、入力の差分(入力の振れ)を抑えて、アクチュエータに多大な負担がかかるのを防止することができる。また、一般化出力φ(t+k)を常に小さくなるようにPIDパラメータを決定するので、定常状態であっても制御性能を改善することができるとともに、予測モデルを構築しなくても済む。よって、最適なPIDパラメータを容易に決定することができるとともに、制御の信頼性を向上させることができる。
【0009】
請求項2の発明は、PID制御対象を制御するためのPIDパラメータを決定するPIDパラメータ決定ステップと、該PIDパラメータ決定ステップで決定されたPIDパラメータを用いて、上記制御対象を制御する制御ステップとを備えたPID制御方法の発明である。
【0010】
そして、この発明では、上記PIDパラメータ決定ステップは、時刻tの時点での上記制御対象への入力、該制御対象からの出力及び目標値をそれぞれu(t)、y(t)及びr(t)とし、上記入力の差分に対する重み係数をλとし、むだ時間をkとし、差分演算子をΔとしたとき、
φ(t+k)=y(t+k)−r(t)+λΔu(t)
で表される一般化出力φ(t+k)が小さくなるように上記PIDパラメータを決定するステップであるものとする。
【0011】
この発明により、請求項1の発明と同様の作用効果が得られる。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明のPID制御装置及びPID制御方法によると、一般化出力が小さくなるようにPIDパラメータを決定するようにしたので、予測モデルを構築しないで最適なPIDパラメータを容易に決定することができ、制御の信頼性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0014】
図1は本発明の実施形態に係るPID制御装置を示し、このPID制御装置は、PID制御対象を制御するためのPIDパラメータを決定するPIDパラメータ決定手段としてのPIDパラメータ決定部1と、該PIDパラメータ決定部1により決定されたPIDパラメータを用いて、上記制御対象を制御する制御手段としてのPID制御部2とを備えている。
【0015】
図1において、rは目標値、uは上記制御対象への入力(操作量)、yは上記制御対象からの出力(制御量)、eは制御誤差、ξは平均が0でかつ分散がσ2のガウス性白色雑音である。また、Pは上記制御対象での伝達関数、CはPID制御部2での伝達関数を示す。さらに、Δは差分演算子を表し、Δ=1−z−1で定義され、z−1は時間遅れ演算子である。
【0016】
ここで、下記の式(1)で表される、1入力1出力の離散時間モデルを考える。この式(1)は、CARIMA(Controlled Auto-Regressive and Integrated Moving Average)モデルである。尚、式(1)において、kはむだ時間であり、u(t)、y(t)及びξ(t)は、時刻tの時点での入力、出力及び白色雑音をそれぞれ示す。
【0017】
【数1】
【0018】
上記式(1)中のA(z−1)及びB(z−1)は、下記の式(2)で示される多項式であって、互いに既約であるとする。
【0019】
【数2】
【0020】
尚、z-kB(z−1)/A(z−1)は上記制御対象での伝達関数P(z−1)に相当するものである。
【0021】
上記入力と制御誤差との間には、下記の式(3)で示すような関係がある。尚、式(3)において、r(t)は時刻tの時点での目標値(本実施形態では、tの値に関係なく一定)であり、e(t)は時刻tの時点での制御誤差である。
【0022】
【数3】
【0023】
また、式(3)をPIDパラメータ(比例ゲインkc、積分時間TI及び微分時間TD)で書き直すと、下記の式(4)のようになる。尚、Tsはサンプリング時間である。
【0024】
【数4】
【0025】
さらに、Kp=kc、KI=kcTs/TI、KD=kcTD/Tsとすると、式(4)は式(5)に書き換えられる。KIは積分ゲインと呼ばれ、KDは微分ゲインと呼ばれ、比例ゲインKp、積分ゲインKI及び微分ゲインKDもPIDパラメータと呼ばれる。
【0026】
【数5】
【0027】
上記PIDパラメータ決定部1は、下記の式(6)で表される一般化出力φ(t+k)が小さくなるように、上記PIDパラメータ(比例ゲインKp、積分ゲインKI及び微分ゲインKD)を決定する。
【0028】
【数6】
【0029】
このPIDパラメータの決定方法を具体的に説明する。
【0030】
上記式(6)は、上記式(1)及び(3)を用いて、下記の式(7)に変形することができる。
【0031】
【数7】
【0032】
上記式(7)において、S(z−1)は下記の式(8)で表される。
【0033】
【数8】
【0034】
上記式(8)において、T(z−1)は下記の式(9)で表される。
【0035】
【数9】
【0036】
また、上記式(7)及び式(8)におけるG(z−1)は、下記の式(10)(Diphantine方程式)を満たすものである。
【0037】
【数10】
【0038】
上記式(7)より、一般化出力φ(t+k)は、時刻tの時点での雑音と、時刻t+kの時点での雑音とに分離することができ、最適な制御を行えば、時刻tの時点での雑音の項(式(7)の右辺第2項)は出来る限り小さく(延いては0に)することができる。一方、時刻t+kの時点での雑音の項は、将来に生じる雑音であるため、制御することができない雑音である。そこで、式(7)の右辺第2項の雑音を出来る限り小さくすることを考える。
【0039】
ここで、上記一般化出力φ(t+k)を時刻tでの一般化出力φ(t)で書き直すと、下記の式(11)のようになる。
【0040】
【数11】
【0041】
そして、φ(t)=L(z−1)ξ(t)とすると、
ξ(t−k)=φ(t−k)/L(z−1)
となるので、上記式(11)は下記の式(12)のように変形される。尚、式(12)において、ε(t)=G(z−1)ξ(t)である。
【0042】
【数12】
【0043】
さらに、上記式(12)は、自己回帰パラメータαi(i=1,2,…m)を用いて、下記の式(13)のように書ける。
【0044】
【数13】
【0045】
上記式(13)において、iの値は正確には1〜無限大となるが、近似的に次数m(例えば20)で打ち切る。
【0046】
上記式(13)は雑音モデルであり、この雑音モデルを最小二乗法で同定する。すなわち、最適な制御を行えば、上述の如く、式(13)の右辺第2項は0になるので、こうなるように自己回帰パラメータαiを最小二乗法で同定する。このとき、同定のためのデータをn個(例えば500個)用いるとする。
【0047】
上記式(13)を、式(14)〜式(17)で示すベクトルを用いて書き直すと、式(18)のようになる。尚、式(14)〜式(16)において、[・,・,…,・]Tは、行ベクトルを列ベクトルに転置することを意味する。
【0048】
【数14】
【0049】
【数15】
【0050】
そして、下記の式(19)のJを、式(20)のようにα(t)で偏微分した値が0になるようにする。
【0051】
【数16】
【0052】
【数17】
【0053】
式(20)より、パラメータα(t)は式(21)のようになる。
【0054】
【数18】
【0055】
ここで、性能評価指標として、下記の式(22)で表される制御性能評価指標κを考える。Jminは、式(18)の右辺第1項の雑音の分散であり、J0は右辺第2項の雑音の分散である。
【0056】
【数19】
【0057】
上記制御性能評価指標κの値は0〜1の範囲内にあり、最適な制御を行えば、J0は0になるので、制御性能評価指標κの値は1になる。そこで、制御性能評価指標κの値が1になるように、PIDパラメータ(比例ゲインKp、積分ゲインKI及び微分ゲインKD)を、下記の式(23)で表される最急降下法を用いて決定する。
【0058】
【数20】
【0059】
尚、上記式(23)のK(t)は下記の式(24)で表されるベクトルであり、ηは学習係数を表す。
【0060】
【数21】
【0061】
上記式(23)は式(25)に書き換えることができる。
【0062】
【数22】
【0063】
このようにしてPIDパラメータを決定することで、上記式(6)の一般化出力φ(t+k)を小さくしていくことができる(制御性能評価指標κの値は1に近づいていく)。このPIDパラメータを用いて、制御対象を制御することで、制御誤差e及び入力の差分Δuを小さくすることができ、製品品質を確保しつつ、入力の差分(入力の振れ)を抑えて、アクチュエータに多大な負担がかかるのを防止することができる。また、一般化出力φ(t+k)を常に小さくなるようにPIDパラメータを決定するので、定常状態であっても制御性能を改善することができるとともに、予測モデルを構築しなくても済む。よって、最適なPIDパラメータを容易に決定することができるとともに、制御の信頼性を向上させることができる。
【0064】
(数値例1)
先ず、初期PIDパラメータが不適切な場合を考える。制御対象を、下記の式(26)のような一次遅れ+むだ時間系で与えるものとし、サンプリング間隔Tsは20秒とした。そして、初期PIDパラメータを、Kp=0.75、KI=0.15、KD=0.15とした。但し、サンプリング間隔毎に評価を行うのではなく、評価間隔を50ステップとした。
【0065】
【数23】
【0066】
制御対象への入力の差分に対する重み係数λを1.0にして、本発明の方法とPIDパラメータを固定して用いる方法(以下、固定PID法という)とで制御性能評価指標κの値がどのように変化するかを調べた。この結果を図2に示す。また、本発明の方法により調整したPIDパラメータの時間的推移を図3に示す。本発明の方法によると、制御性能評価指標κが改善する(1に近づく)ようにPIDパラメータが調整され、10000ステップ以降に制御性能評価指標κが改善していることが分かる。
【0067】
さらに、制御誤差e、入力の差分Δu及び入力uの時間的推移を図4〜図6にそれぞれ示す。各図の(a)が本発明の方法によるものであり、(b)が固定PID法によるものである。このことより、本発明の方法では、制御誤差e、入力の差分Δu及び入力uが、10000ステップ以降に、僅かではあるが、固定PID法よりも小さくなっていることが分かる。
【0068】
続いて、重み係数λを100にして、本発明の方法と固定PID法とで制御性能評価指標κの値がどのように変化するかを調べた。この結果を図7に示す。また、本発明の方法により調整したPIDパラメータの時間的推移を図8に示す。本発明の方法によると、5000ステップ以降に制御性能評価指標κが改善していることが分かる。
【0069】
さらに、制御誤差e、入力の差分Δu及び入力uの時間的推移を図9〜図11にそれぞれ示す。各図の(a)が本発明の方法によるものであり、(b)が固定PID法によるものである。このことより、本発明の方法では、特に入力の差分Δu及び入力uが、固定PID法よりも明らかに小さくなっていることが分かる。これは、重み係数λを前例よりもかなり大きくしたためである。したがって、入力の差分Δuの分散(又は入力uの分散)の最小化に重きを置く場合には、重み係数λを大きくすればよい。逆に、制御誤差eの分散の最小化に重きを置く場合には、重み係数λを小さくすればよい。
【0070】
(数値例2)
次にシステム変動が生じる場合を考える。制御対象を、下記の式(27)で与え、各種システムパラメータ(時定数T、システムゲインK及びむだ時間k)を式(28)〜(30)のようにそれぞれ変化させた。但し、式(28)〜(30)において、t1=2000、h=1000であり、サンプリング間隔Tsは1秒とした。
【0071】
【数24】
【0072】
入力の差分に対する重み係数λを100にして、本発明の方法で制御性能評価指標κの値がどのように変化するかを調べた。この結果を図12に示す。また、本発明の方法により調整したPIDパラメータの時間的推移を図13に示す。これにより、本発明の方法では、システム変動があっても、定常状態であっても、制御性能評価指標κを改善する方向に常にPIDパラメータが修正されていることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、PID制御対象を制御するためのPIDパラメータを決定して、このPIDパラメータを用いて上記制御対象を制御するPID制御装置及びPID制御方法に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の実施形態に係るPID制御装置を示すブロック図である。
【図2】数値例1(λ=1.0)での制御結果であり、本発明の方法と固定PID法とによる制御性能評価指標の時間的推移を示すグラフである。
【図3】数値例1(λ=1.0)での本発明の方法による制御結果であり、(a)は比例ゲインの時間的推移を、(b)は積分ゲインの時間的推移を、(c)は微分ゲインの時間的推移をそれぞれ示すグラフである。
【図4】数値例1(λ=1.0)での制御結果であり、(a)は本発明の方法による制御誤差の時間的推移を、(b)は固定PID法による制御誤差の時間的推移をそれぞれ示すグラフである。
【図5】数値例1(λ=1.0)での制御結果であり、(a)は本発明の方法による制御対象への入力の差分の時間的推移を、(b)は固定PID法による制御対象への入力の差分の時間的推移をそれぞれ示すグラフである。
【図6】数値例1(λ=1.0)での制御結果であり、(a)は本発明の方法による制御対象への入力の時間的推移を、(b)は固定PID法による制御対象への入力の時間的推移をそれぞれ示すグラフである。
【図7】数値例1(λ=100)での制御結果であり、本発明の方法と固定PID法とによる制御性能評価指標の時間的推移を示すグラフである。
【図8】数値例1(λ=100)での本発明の方法による制御結果であり、(a)は比例ゲインの時間的推移を、(b)は積分ゲインの時間的推移を、(c)は微分ゲインの時間的推移をそれぞれ示すグラフである。
【図9】数値例1(λ=100)での制御結果であり、(a)は本発明の方法による制御誤差の時間的推移を、(b)は固定PID法による制御誤差の時間的推移をそれぞれ示すグラフである。
【図10】数値例1(λ=100)での制御結果であり、(a)は本発明の方法による制御対象への入力の差分の時間的推移を、(b)は固定PID法による制御対象への入力の差分の時間的推移をそれぞれ示すグラフである。
【図11】数値例1(λ=100)での制御結果であり、(a)は本発明の方法による制御対象への入力の時間的推移を、(b)は固定PID法による制御対象への入力の時間的推移をそれぞれ示すグラフである。
【図12】数値例2での本発明の方法による制御結果であり、制御性能評価指標の時間的推移を示すグラフである。
【図13】数値例2での本発明の方法による制御結果であり、(a)は比例ゲインの時間的推移を、(b)は積分ゲインの時間的推移を、(c)は微分ゲインの時間的推移をそれぞれ示すグラフである。
【符号の説明】
【0075】
1 PIDパラメータ決定部(PIDパラメータ決定手段)
2 PID制御部(制御手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
PID制御対象を制御するためのPIDパラメータを決定するPIDパラメータ決定手段と、該PIDパラメータ決定手段により決定されたPIDパラメータを用いて、上記制御対象を制御する制御手段とを備えたPID制御装置であって、
上記PIDパラメータ決定手段は、時刻tの時点での上記制御対象への入力、該制御対象からの出力及び目標値をそれぞれu(t)、y(t)及びr(t)とし、上記入力の差分に対する重み係数をλとし、むだ時間をkとし、差分演算子をΔとしたとき、
φ(t+k)=y(t+k)−r(t)+λΔu(t)
で表される一般化出力φ(t+k)が小さくなるように、上記PIDパラメータを決定するよう構成されていることを特徴とするPID制御装置。
【請求項2】
PID制御対象を制御するためのPIDパラメータを決定するPIDパラメータ決定ステップと、該PIDパラメータ決定ステップで決定されたPIDパラメータを用いて、上記制御対象を制御する制御ステップとを備えたPID制御方法であって、
上記PIDパラメータ決定ステップは、時刻tの時点での上記制御対象への入力、該制御対象からの出力及び目標値をそれぞれu(t)、y(t)及びr(t)とし、上記入力の差分に対する重み係数をλとし、むだ時間をkとし、差分演算子をΔとしたとき、
φ(t+k)=y(t+k)−r(t)+λΔu(t)
で表される一般化出力φ(t+k)が小さくなるように上記PIDパラメータを決定するステップであることを特徴とするPID制御方法。
【請求項1】
PID制御対象を制御するためのPIDパラメータを決定するPIDパラメータ決定手段と、該PIDパラメータ決定手段により決定されたPIDパラメータを用いて、上記制御対象を制御する制御手段とを備えたPID制御装置であって、
上記PIDパラメータ決定手段は、時刻tの時点での上記制御対象への入力、該制御対象からの出力及び目標値をそれぞれu(t)、y(t)及びr(t)とし、上記入力の差分に対する重み係数をλとし、むだ時間をkとし、差分演算子をΔとしたとき、
φ(t+k)=y(t+k)−r(t)+λΔu(t)
で表される一般化出力φ(t+k)が小さくなるように、上記PIDパラメータを決定するよう構成されていることを特徴とするPID制御装置。
【請求項2】
PID制御対象を制御するためのPIDパラメータを決定するPIDパラメータ決定ステップと、該PIDパラメータ決定ステップで決定されたPIDパラメータを用いて、上記制御対象を制御する制御ステップとを備えたPID制御方法であって、
上記PIDパラメータ決定ステップは、時刻tの時点での上記制御対象への入力、該制御対象からの出力及び目標値をそれぞれu(t)、y(t)及びr(t)とし、上記入力の差分に対する重み係数をλとし、むだ時間をkとし、差分演算子をΔとしたとき、
φ(t+k)=y(t+k)−r(t)+λΔu(t)
で表される一般化出力φ(t+k)が小さくなるように上記PIDパラメータを決定するステップであることを特徴とするPID制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2008−181221(P2008−181221A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−12848(P2007−12848)
【出願日】平成19年1月23日(2007.1.23)
【出願人】(504136568)国立大学法人広島大学 (924)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年1月23日(2007.1.23)
【出願人】(504136568)国立大学法人広島大学 (924)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]