説明

PTCヒーター及びその製造方法

【課題】熱伝逹効率、耐久性に優れ、材料コストダウン及び重量低減が可能であり、スムーズに性能が発揮できるPTCヒーターを提供する。
【解決手段】本発明は、黄銅素材でロードケースを製作し、その表面を柱石メッキする段階と、黄銅素材で放熱ピンを製作し、その表面を柱石メッキする段階と、前記ロードケースの内部に発熱モジュールを挿入してPTCロードを組立てる段階と、別途の固定具で前記PTCロードと前記放熱ピンを仮結合してソルダーリング接合する段階と、前記PTCロード及び放熱ピンの縦方向の両端部に上部ハウジング及び下部ハウジングを結合する段階と、を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PTC(PTC:Positive Tempersature Coefficient)ヒーターに係り、より詳しくは、PTCロードと放熱ピンがソルダーリング接合方式により結合され、熱伝逹効率、耐久性が向上し、材料コストダウン及び重量低減が可能なPTCヒーター及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両には室内の各部位に冷気及び暖気を選択的に供給するための空調システムが備えられており、夏期にはエアコンを作動させて冷気を供給し、冬期にはヒーターを稼動して暖気を供給する。
【0003】
一般的にヒーターの作動方式は、エンジンの内部を循環しながら加熱された冷却水及び送風機によって流入する空気が熱交換を行いながら車内に暖気を供給して暖房する方式であって、エンジンによって発生する熱を利用するためエネルギー効率の高い暖房方式である。
【0004】
しかし、冬期には始動後エンジンが加熱されるまでは一定の時間を必要とするため始動後直ちに暖房が行われない。よって暖房のためにエンジンが加熱された後冷却水の温度が高温になるまで、走行前に所定の時間エンジンを空回転させるようになり、それによるエネルギーの浪費及び環境汚染といった問題が生じる。
【0005】
かかる問題を防ぐために、エンジンが加熱される所定時間の間に別のプリーヒーター(Pre−Heater)を利用して車内を暖房する方法が利用されていたが、従来の熱線コイルを用いたヒーターは発熱量が高くて暖房は効果的に行われるが、火事の危険が高く、電熱線の寿命が短くて部品の修理及び交換がしばしば発生する不具合があった。
【0006】
そのため、近年、PTC(PTC:Positive Tempersature Coefficient)素子を用いたヒーターが開発されている。PTCヒーターは、火事の危険性が少なく、かつ寿命が長いため半分永久的に使用することができるという長所があるので、最近はその適用範囲が非常に拡大している。さらに、このようなプリーヒーター用に用いられるPTCヒーターはその特性上、相対的に少容量のヒーターが主に使用されていたが、最近は多様な車種とユーザの必要に応じて高容量のPTCヒーターが求められ開発されている傾向にある。
【0007】
図1及び図2は、従来技術による一般的なPTCヒーターの構造を簡単に示す分解斜視図である。
図1及び図2に示すように従来技術による一般的なPTCヒーターは、内部にPTC素子が挿入され、一側に陽極端子11が突設されて電気的に発熱する多数個のPTCロード10と、PTCロード10の両面に接触するように結合される放熱ピンモジュール20と、隣接する放熱ピンモジュール20の間に放熱ピンモジュール20と並んで配置される陰極端子30と、PTCロード10の縦方向の両端部にそれぞれ結合される上部ハウジング40及び下部ハウジング50とを含んでなる。
【0008】
この際、交互に並んで配置されるPTCロード10と、放熱ピンモジュール20及び陰極端子30が、上部ハウジング40及び下部ハウジング50の間において互いに密着結合できるように最外側放熱ピンモジュール20の左右外郭側にはサイドフレーム60が装着される。即ち、サイドフレーム60は内側方向に凸状の曲線形で形成されて上部ハウジング40及び下部ハウジング50に結合され、PTCロード10、放熱ピンモジュール20及び陰極端子30は、このような曲線形サイドフレーム60による弾性密着力によって互いに密着結合される。このような密着結合によってPTCロード10、放熱ピンモジュール20及び陰極端子30の間に相互電気伝達及び熱伝達が効率的に行われて全体的にPTCヒーターの構造が形成される。
【0009】
一方、放熱ピンモジュール20はPTCロード10と空気の熱交換効率を向上するためのものであって、図1に示すように長手方向に波形になるように形成されて空気との熱接触面積を増加させる放熱ピン21と、放熱ピン21を収容、かつ固定することができるケース22と、ケース22の開放された一側を閉鎖するようにボルト24で結合されるカバー23とで構成される。即ち、実質的な熱交換効率向上のための構成である放熱ピン21に対する位置固定のために別途のケース22及びカバー23が備えられて放熱ピン21がPTCロード10から離脱したり移動しないように構成される。
【0010】
従って、放熱ピン10固定のための構成に別のケース22及びカバー23が備えられる放熱ピンモジュール20は、製作が複雑で、部品数が増加するなどの問題があるため、これを解決するためにPTCヒーターの製作方式を異にして放熱ピンモジュール20’を、図2に示すように単純な形態のピンガイド25と放熱ピン21で構成する方式が開発された。しかしこのような形態の放熱ピンモジュール20’もやはり放熱ピン21の位置固定のためのピンガイド25が必要であり、ピンガイド25は図2に示すように両短部25aが突出する形態で形成されるので、これは図1に比して単純化されたと言えるが、放熱ピンモジュール20’の製作工程及び部品が複雑であるという問題が相変らず残っていた。
【0011】
また、このような放熱ピンモジュール20、20’は放熱ピン21とPTCロード10の間に別のケース22またはピンガイド25のような部品が介在するため、PTCロード10から発熱する熱が放熱ピン21に伝達される熱伝達効率が低下し、さらにPTCロード10と放熱ピン21との接触がサイドフレーム60による弾性密着力によって行われるため、PTCロード10と放熱ピン21の表面照度によって相互接触が非効率的であり、これによって熱伝達効率が低下する問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2004−152809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明はかかる問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、PTCロードと放熱ピンがソルダーリング接合方式で結合されるため、結合力が向上して熱伝逹効率が向上し、また堅固な締結力によって耐久性が増加し、サイドフレームや放熱ピンカバーなどの削除が可能であるため材料コストダウン及び重量低減が可能であり、さらに柱石を用いたソルダーリング接合方法は相対的に低温状態で接合工程が行われるので接合過程でPTC素子の特性変化が防止できてスムーズに性能が発揮されるPTCヒーターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、黄銅素材でロードケースを製作し、その表面を柱石メッキする段階と、黄銅素材で放熱ピンを製作し、その表面を柱石メッキする段階と、前記ロードケースの内部に発熱モジュールを挿入してPTCロードを組立てる段階と、別途の固定具で前記PTCロードと前記放熱ピンを仮結合してソルダーリング接合する段階と、前記PTCロード及び放熱ピンの縦方向の両端部に上部ハウジング及び下部ハウジングを結合する段階と、を含むことを特徴とする。
【0015】
前記ソルダーリング接合する段階は、無煙ソルダーを用いてソルダーリング接合することを特徴とする。
【0016】
前記ソルダーリング接合する段階は、前記PTCロードと放熱ピンが仮結合された状態で前記放熱ピンの外郭側には長手方向に直線型のサイドフレームが結合されてソルダーリング接合されることを特徴とする。
【0017】
本発明はまた、黄銅素材で製作されて表面に柱石メッキされたロードケースの内部に発熱モジュールが挿入されるPTCロードと、黄銅素材で製作されて表面に柱石メッキされ、前記PTCロードの両面に接触されるように結合される放熱ピンと、前記PTCロードの縦方向の両端部にそれぞれ結合される上部ハウジング及び下部ハウジングと、を含み、前記PTCロード及び放熱ピンはソルダーリング接合されて結合されることを特徴とする。
【0018】
前記上部ハウジング及び下部ハウジングの両側端部には長手方向に直線型のサイドフレームが装着されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、PTCロードと放熱ピンがソルダーリング接合方式で結合されるため、結合力が向上して熱伝逹効率が向上し、また堅固な締結力によって耐久性が増加し、サイドフレームや放熱ピンカバーなどの削除が可能であるため材料コストダウン及び重量低減が可能であり、さらに柱石を用いたソルダーリング接合方法は相対的に低温状態で接合工程が行われるので、接合過程中にPTC素子の特性変化が防止できてスムーズに性能が発揮される効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】従来技術による一般的なPTCヒーターの構造を簡単に示す分解斜視図である。
【図2】従来技術による一般的なPTCヒーターの構造を簡単に示す分解斜視図である。
【図3】本発明の一実施例によるPTCヒーターの製作方法を示すフローチャットである。
【図4】本発明の一実施例によるPTCロードの内部構造を概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明は、黄銅素材でロードケース11を製作し、その表面を柱石メッキする段階(S1)と、黄銅素材で放熱ピン21を製作し、その表面を柱石メッキする段階(S2)と、上記ロードケース11の内部に発熱モジュールを挿入してPTCロード10を組立てる段階(S3)と、別の固定具でPTCロード10と放熱ピン21を仮結合してソルダーリング接合する段階(S4、S5)と、PTCロード10及び放熱ピン21の縦方向の両端部に上部ハウジング40及び下部ハウジング50を結合する段階(S6)とを含むことを特徴とするPTCヒーターの製作方法である。
【0022】
さらに、本発明は、黄銅素材で製作されて表面に柱石メッキされたロードケース11の内部に発熱モジュールが挿入されるPTCロード10と、黄銅素材で製作されて表面に柱石メッキされ、PTCロード10の両面に接触するように結合される放熱ピン21と、PTCロード10の縦方向の両端部にそれぞれ結合される上部ハウジング40及び下部ハウジング50とを含み、PTCロード10及び放熱ピン21はソルダーリング接合されて結合されることを特徴とするPTCヒーターの製作方法である。
【0023】
以下、本発明の好ましい実施例を添付の図面を用いて詳しく説明する。
図3は本発明の一実施例によるPTCヒーターの製作方法を示すフローチャートであり、図4は本発明の一実施例によるPTCロードの内部構造を概略的に示す断面図である。
本発明の一実施例によるPTCヒーターは、PTCロード10と、放熱ピン21と、上部ハウジング40及び下部ハウジング50とを含んでなり、陰極端子は従来技術のように放熱ピン21と並んで配置することもでき、或いはPTCロード10の外側面に接触するように別途に上部ハウジング40に結合される方式で配置することもできる。
【0024】
PTCロード10はロードケース11の内部に電気的に発熱する発熱モジュールが挿入される形態で構成されるが、発熱モジュールは図4に示すように電気的に発熱するPTC素子18と、電気が供給される陽極端子17と、陽極端子17とロードケース11を電気的に絶縁するインシュレーター12で構成される。
本発明のPTCヒーターは、従来技術と異なって、サイドフレームの弾性密着力による結合方式ではなく、ソルダーリング(soldering)接合する方式により構成要素が結合される方式である。従って、ロードケース11と放熱ピン21が黄銅素材で製作され、表面に柱石メッキされた後ソルダーリング接合方式で結合されてPTCロード10と放熱ピン21との熱伝逹効率が向上する構造である。
【0025】
より詳しく見れば、本発明のPTCヒーターは黄銅素材で製作されて表面に柱石メッキされたロードケース11の内部に発熱モジュールが挿入されるPTCロード10と、横銅素材で製作されて表面に柱石メッキされてPTCロード10の両面に接触されるように結合される放熱ピン21と、PTCロード10の縦方向の両端部にそれぞれ結合される上部ハウジング40及び下部ハウジング50とを含んでなる。この際、PTCロード10及び放熱ピン21はソルダーリング接合される方式で結合される。
【0026】
また、図1及び図2に示すように本発明の一実施例によるサイドフレーム60は、上部ハウジング40及び下部ハウジング50と共にフレーム構造を形成するように放熱ピン21の外郭側に、即ち上部ハウジング40及び下部ハウジング50の両側端部に結合することができるが、サイドフレーム60は従来の技術と異なってPTCロード10及び放熱ピン21に弾性密着力の作用が不要なため、長手方向に湾曲形ではなく、前述のように長手方向に直線形で形成されてフレーム構造を形成する。
【0027】
本発明のPTCヒーターは、、先ず黄銅素材でロードケース11を製作し、その表面を柱石メッキをし(S1)、黄銅素材で放熱ピン21を製作し、その表面を柱石メッキをする(S2)。
このように製作されたロードケース11の内部に発熱モジュールを挿入してPTCロード10を組立てた状態で(S3)、別の固定具(図示せず)で組立てられたPTCロード10と放熱ピン21を仮結合する(S4)。
このように結合されたPTCロード10と放熱ピン21をソルダーリング用材でソルダーリング接合した後(S5)、ソルダーリング接合されたPTCロード10及び放熱ピン21の縦方向の両端部に上部ハウジング40及び下部ハウジング50とをそれぞれ結合してPTCヒーターの製作が完了する。
ソルダーリング接合時には、無煙ソルダー(PB free)を用いてソルダーリング接合することができる。
【0028】
一方、サイドフレームは装着しないこともあるが、本発明では放熱ピン21の外郭側に装着する。サイドフレームは、PTCロード10と放熱ピン21が別の固定具によって仮結合された状態で放熱ピン21の外郭側に長手方向に直線型のサイドフレームが結合され、その後サイドフレームと共にソルダーリング接合される方式で結合することができる。しかしサイドフレームは別に装着しないで構成することもできる。
【0029】
本発明のPTCヒーターは、このような構造によってPTCロード10と放熱ピン21がソルダーリング接合方式で結合されるため結合力が向上して熱伝逹効率が向上し、また堅固な締結力によって耐久性が増加し、サイドフレームや放熱ピンカバーなどの削除が可能なため材料コストダウン及び重量低減が可能である。また、柱石を用いたソルダーリング接合方法は相対的に低温状態で接合工程が行われるので、接合中にPTC素子の特性変化が防止できてスムーズに性能が発揮される。
【0030】
以上、本発明に関する好ましい実施例を説明したが、本発明は前記実施例に限定されず、本発明の属する技術範囲を逸脱しない範囲での全ての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0031】
10 PTCロード
20 放熱ピンモジュール
30 陰極端子
40 上部ハウジング
50 下部ハウジング
60 サイドフレーム


【特許請求の範囲】
【請求項1】
黄銅素材でロードケースを製作し、その表面を柱石メッキする段階と、
黄銅素材で放熱ピンを製作し、その表面を柱石メッキする段階と、
前記ロードケースの内部に発熱モジュールを挿入してPTCロードを組立てる段階と、
別途の固定具で前記PTCロードと前記放熱ピンを仮結合してソルダーリング接合する段階と、
前記PTCロード及び放熱ピンの縦方向の両端部に上部ハウジング及び下部ハウジングを結合する段階と、
を含むことを特徴とするPTCヒーターの製作方法。
【請求項2】
前記ソルダーリング接合する段階は、無煙ソルダーを用いてソルダーリング接合することを特徴とする請求項1記載のPTCヒーターの製作方法。
【請求項3】
前記ソルダーリング接合する段階は、前記PTCロードと放熱ピンが仮結合された状態で前記放熱ピンの外郭側には長手方向に直線型のサイドフレームが結合されてソルダーリング接合されることを特徴とする請求項1記載のPTCヒーターの製作方法。
【請求項4】
黄銅素材で製作されて表面に柱石メッキされたロードケースの内部に発熱モジュールが挿入されるPTCロードと、
黄銅素材で製作されて表面に柱石メッキされ、前記PTCロードの両面に接触されるように結合される放熱ピンと、
前記PTCロードの縦方向の両端部にそれぞれ結合される上部ハウジング及び下部ハウジングと、
を含み、
前記PTCロード及び放熱ピンはソルダーリング接合されて結合されることを特徴とするPTCヒーター。
【請求項5】
前記上部ハウジング及び下部ハウジングの両側端部には長手方向に直線型のサイドフレームが装着されることを特徴とする請求項4記載のPTCヒーター。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−135278(P2010−135278A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−42027(P2009−42027)
【出願日】平成21年2月25日(2009.2.25)
【出願人】(591251636)現代自動車株式会社 (1,064)
【出願人】(500518050)起亞自動車株式会社 (449)
【出願人】(509055345)モディンコリア有限会社 (3)
【Fターム(参考)】