説明

RFプラズマカテーテルを用いて現場開窓を実施した場合の副作用を改善する方法及び構造体

主ステント−グラフトを患者の血管内に配置し、枝血管を主ステント−グラフトにより閉塞すると、RFプラズマカテーテルを用いて、灌流されるべき枝血管の口に隣接して位置する主ステント−グラフトのグラフトクロスの一部分を切除する。RFプラズマカテーテルの使用と関連した考えられる副作用的問題、例えば凝塊(乾燥状態の凝固血)又は恐らくは切断ステントストラットの発生を改善するため、生理的食塩水によるフラッシング、絶縁先端部を備えた新規なRFプラズマカテーテル又はこれら2つの組み合わせを用いる特殊プロセスが用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概略的にはステント−グラフトの使用に、詳細にはステント−グラフトの現場における開窓(fenestration)に関する。
【背景技術】
【0002】
従来型の主(血管)ステント−グラフトは、典型的には、複数の環状ステントリングで作られた半径方向に拡張可能な補強構造体及びルーメンを画定し、ステントリングが結合された円筒形のグラフト材料層(グラフトクロスと呼ばれる場合がある)を有する。ステントリングは、ストラットと呼ばれる真っ直ぐな部分を有する。主ステント−グラフトは、管状の人の血管に用いられるものとして周知である。
【0003】
説明すると、血管内動脈瘤排除は、主ステント−グラフトを用いて動脈の内部から加圧状態の流体の流れを排除する方法である。これにより、動脈瘤の破裂の恐れ及びこれと関連した死亡の恐れが減少する。
【0004】
カスタムの(個々の患者に合わせて作られる)側方開口部付きの主ステント−グラフトは、個々の患者の血管の特定の幾何学的形状に合うよう製作される場合がある。具体的に説明すると、例えば動脈瘤を持つ主血管から出ている枝血管の配置場所は、患者によって様々なので、このような状態を治療する主ステント−グラフトは、特定の患者の枝血管の位置にマッチするようカスタマイズされた側方開口部を備えた状態で製作される。しかしながら、主ステント−グラフトのカスタム製作は、比較的費用が高くつくと共に時間がこのような。
【0005】
主ステント−グラフトのカスタム製作を回避するため、主ステント−グラフトの側方開口部は、現場で形成される場合がある。一例を挙げると、動脈瘤を配置するために主ステント−グラフトを主血管、例えば大動脈内に配置する。開窓は、隣接の枝血管の位置に一致するよう現場で実施される場合がある。これについては、タヘリ(Taheri)の米国特許第5,617,878号明細書を参照されたい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5,617,878号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
主ステント−グラフトのグラフト材料は、主血管から出ている枝血管、例えば腎動脈の口のところで針により穿孔される。開窓は、典型的には、グラフト材料の針による小さな穿孔で開始される。穿孔は、円錐形拡張器で拡大されなければならない。
【0008】
例えば、拡張型バルーンを主ステント−グラフトのグラフト材料の針穿孔中に挿入する。しかしながら、バルーンを拡張させると共にグラフト材料を引き裂くには相当大きな力が必要である。
【0009】
このような相当大きな力を加えることは、制御することが困難であり、グラフト材料の引裂き又は他の問題の予測不可能性を招く。さらに、枝ステント−グラフトは、グラフト材料に割れ目(切れ目又は裂け目)を経時的に伝搬させる傾向がある。また、割れ目のエッジは、特定の用途に応じて、枝ステント−グラフトを破断させた。最後に、割れ目のエッジは、グラフト材料のばらばらになった繊維のほつれを生じさせ、このほつれは、経時的に広がる傾向があった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の方法は、主血管内の主ステント−グラフトの現場開窓の実施中における副作用的問題を減少させる高周波(RF)プラズマカテーテルを枝血管内に用いるステップを含む。枝血管が主ステント−グラフトにより閉塞され又は覆われているときにRFプラズマカテーテルを用いて主ステント−グラフトに現場で窓を作る。
【0011】
副作用的問題の軽減に寄与するステップは、開窓の実施前、実施中及び実施後に灌水溶液のパルスを噴射してRFプラズマカテーテルのRF電極周りに灌水溶液の微小環境(microenvironment)を作るステップを含む。副作用的問題の軽減に寄与するステップは、RFプラズマカテーテルに絶縁体を用いて主ステント−グラフトのストラットからのRF電極の離隔状態を維持して窓の形成中、ストラットの損傷を阻止するステップを更に含む。
【0012】
灌水溶液のパルスの噴射が、RFプラズマカテーテル中を通る灌水溶液の流れを開始させる。流れの開始後、時刻t1で電力をRFプラズマカテーテルのRF電極に供給することにより窓をステント−グラフトクロスに形成する。電力を供給しながら灌水溶液の流れを維持する。電力の供給を停止させた後、時刻t2で灌水溶液の流れを終了させる。灌水溶液の流れは、RF電極から血液を洗い流し、それにより、RF電極への電力の供給と関連した血液の加熱により生じた凝塊を減少させる。
【0013】
高周波(RF)プラズマカテーテル組立体は、ルーメンを画定する中央ライナを有する。高周波電極が中央ライナにその遠位端部のところで結合されている。高周波電極は、高周波電極を通る中央ライナのルーメンからの流路を提供するよう整列したルーメンを画定する。灌水溶液のパルス源が中央ライナに結合されている。外側絶縁体が高周波電極の周りに設けられている。外側絶縁体の円周方向外側エッジ表面が、高周波カテーテル組立体の外側円周方向エッジ表面の一部分を構成する。
【0014】
内側絶縁体が中央ライナと高周波電極との間に設けられている。内側絶縁体は、中央ライナのルーメンから高周波電極のルーメンまでの流路を提供するよう整列したルーメンを画定する。
【0015】
一具体例では、RF電極は、凸状外側エッジ表面を有する。別の具体例では、RF電極は、凹状外側エッジ表面を有する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の方法の一具体例のプロセスフローチャートである。
【図2A】主ステント−グラフトが枝血管の灌流を遮断している主血管内の主ステント−グラフトの略図である。
【図2B】枝血管内に位置決めされているRFプラズマカテーテルの具体例の略図である。
【図3A】図2BのRFプラズマカテーテルの位置の詳細図である。
【図3B】灌水溶液の流れを開始させた後における図3Aの形態に関する灌水溶液の流れを示す図である。
【図3C】RF電極への電力の供給を開始させた後における図3Bの形態に関する灌水溶液の流れを示す図である。
【図4】図2A、図2C及び図3A〜図3Cに示された具体例と関連した詳細なプロセス流れ図である。
【図5】RF電極に対するRFパルスのタイミングに関する灌水溶液のパルスのタイミングの一例を示す図である。
【図6】生理的食塩水利用型RFプラズマ電極開窓カテーテル組立体の一例の略図である。
【図7】ステントストラットとRFプラズマカテーテルのRF電極との離隔状態を維持する外側絶縁材を含むRFプラズマカテーテルの具体例の略図である。
【図8】凸状外側エッジ表面を備えたRF電極及び外側絶縁体を有するRFプラズマカテーテルの一具体例の断面図である。
【図9】図8のRF電極に適した凸状外側エッジ表面の略図である。
【図10】凸状外側エッジ表面を備えたRF電極及び外側絶縁体を有するRFプラズマカテーテルの一具体例の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一具体例では、主ステント−グラフトを患者の血管内に配置し、枝血管を主ステント−グラフトにより閉塞すると、RFプラズマカテーテルを用いて、灌流されるべき枝血管の口に隣接して位置する主ステント−グラフトのグラフトクロスの一部分を切除する。RFプラズマカテーテルの使用と関連した考えられる副作用的問題、例えば凝塊(乾燥状態の凝固血)又は恐らくは切断ステントストラットの発生を改善するため、生理的食塩水によるフラッシング、絶縁先端部を備えた新規なRFプラズマカテーテル又はこれら2つの組み合わせを用いる特殊プロセスが用いられる。
【0018】
RFプラズマカテーテル(これは、先行技術において現場窓を開始させて、機械的にこれを拡張するのに大きな力を加える必要があることと関連した予測不可能性をほぼなくしている)の普及を容易にして主ステント−グラフトの現場開窓を可能にするため、開窓の潜在的な副作用的問題が改善される。プロセス100(図1)の「副作用的問題を軽減するための開窓カテーテルを構成する」ステップ110というステップでは、高周波(RF)プラズマカテーテルは、(1)絶縁体と境を接するRFプラズマカテーテル電極及び(2)パルス化灌水機能という構成のうちの少なくとも一方の形態を含むよう構成される。次のステップは、「ステント−グラフトを取り付ける」ステップ120であり、このようなステップにおいて、主ステント−グラフトを周知の技術の使用により患者の主血管内に配置する。
【0019】
「副作用的問題を軽減させながら開窓を実施する」ステップ130という最終ステップでは、ステップ110のRFプラズマカテーテルを用いて、灌流されるべき枝血管の口に隣接した主ステント−グラフトのグラフトクロスの一部分を切除する。ステップ130の終了後、枝グラフト配置プロセスが、先行技術において知られているように続き、従って、これについては本明細書においては説明しない。
【0020】
パルス化灌水機能をステップ130で用いる場合、RFプラズマカテーテルを通って灌水溶液のパルスを噴射し、血液が窓の部位とRFプラズマカテーテル電極の両方から洗い流されるようにする。RFプラズマカテーテル電極が外側絶縁体と境を接する場合、ステントストラットは、プラズマ及びプラズマによって生じた熱から遮蔽される。この結果、主ステント−グラフトストラットを切断する恐れが減少する。変形例として、RFプラズマカテーテルは、パルス化灌水機能と、外側絶縁体と円周方向に境を接するRFプラズマカテーテル電極との両方を含んでも良く、それにより凝塊とステントストラットを損傷させる恐れの両方が減少する。
【0021】
パルス化灌水機能を用いた方法100の詳細な例が、図2A、図2B、図3A、図3B、図3C及び図4〜図6に記載されている。この例では、方法400(図4)が用いられる。方法400におけるステップ(プロセス)のシーケンスは、幾つかの考えられるシーケンスのうちの1つを表している。この開示内容を考慮して、当業者であれば、現場で開窓するRFプラズマカテーテルを用いた場合の副作用的問題を改善する利点を依然として達成しながら、特定の手技に合わせて適宜シーケンスを改造することができる。
【0022】
「ステント−グラフトを取り付ける」ステップ410では、主ステント−グラフト230(図2A)を患者の血管210、例えば、大動脈及び枝血管、例えば無名動脈、左総頸動脈及び左鎖骨下動脈内に配置するが、このような動脈は、下降大動脈の種々の動脈であっても良い。血管210は、動脈瘤211を含む。主ステント−グラフト230は、ステントストラット231及びステント−グラフトクロス232を含む複数本のステントストラットを有する。主ステント−グラフト230の構成は、当業者には知られている。
【0023】
主ステント−グラフト230は、枝血管220の口221を閉塞する。このため、主ス天と−グラフト230の開口部は、枝血管220の灌流を可能にするために必要とされる。
【0024】
「RF開窓カテーテルを挿入する」ステップ415(図4)では、灌水機能を備えたRFプラズマカテーテル240(図2B)を従来技術の使用により患者の体内に挿入して枝血管220内に位置決めする(図2B及び図3A参照)。
【0025】
「RF電極を位置決めする」ステップ420では、RFプラズマカテーテル240のRFプラズマカテーテル電極(RF電極と呼ばれる場合がある)を図3Aに詳細に示されているように、2本のストラット331の間でステント−グラフトクロス332に隣接して位置決めしてこれに接触するようにする。RF電極341をステント−グラフトクロス332に当てて配置し、この例では、凹み335がステント−グラフトクロス332に作られるようにする。これは、例示にすぎず、このような器具の使用をこのような凹みに限定するものではない。一般に、最善の開窓結果は、RF電極341がステント−グラフトクロス332と接触状態にある場合に得られるということが観察された。
【0026】
RFプラズマカテーテル340は、ルーメン343と呼ばれる場合のあるチャネル343を備えた環状本体342を有し、このチャネルは、灌水溶液源に結合されている。この例では、チャネル343は、RFプラズマカテーテル340の長手方向軸線344に沿ってこの周りに差し向けられている。RF電極341は又、RF電極341を通るルーメン343からの流路を提供するよう整列されたルーメンを画定している。
【0027】
RFプラズマカテーテル340のRF電極341は、焼灼(電気凝固)器具に用いられる電源とほぼ同じ電源に結合されている。一般に、RF電極341は、導電性材料で作られている。一例では、RF電極341は、超弾性形状記憶材料、例えばニチノールで作られる。別の例では、電極341は、ステンレス鋼で作られる。他の例では、RF電極341は、例えば画像化プロセスを用いてRF電極341の視覚化を助けるために放射線不透過性材料で作られ、従って、RF電極341は、X線を用いて視認できるようになる。RF電極341を形成することができる放射線不透過性材料の例示としては、白金−イリジウム、タンタル、金及びステンレス鋼が挙げられる。
【0028】
この実施形態では、電極(図示せず)が患者に結合され、代表的には、導電性生理的食塩水ヒドロゲルのパッドが患者に取り付けられ、このヒドロゲルも又、電源に結合される。この電極は、接地又は共通電極と呼ばれ、この電極は、例えば導電性ゲルを用いて患者に電気的に接続される。
【0029】
RF電極341を備えたRFプラズマカテーテル340の特定の形態は、この例では、RFプラズマカテーテルがこの例のパルス化灌水と関連してプラズマを用いて開口部をグラフトクロス332に作ることができる限り、必要不可欠であるというわけではない。方法400に用いられるのに適したRFプラズマカテーテルは、以下に完全に記載されていると共に、2006年11月7日にウォルタ・ブルスゼウスキ(Walter Bruszewski)及びパトリック・マクオーレイ(Patrick MacAulay)によって出願された係属中の且つ共通譲受人の米国特許出願第11/557,204号明細書(発明の名称:Cutting Radio Frequency Catheter for Creating Fenestrations in Graft Cloth)に記載されている。
【0030】
RF電極、即ちRF電極341が定位置に配置した後、「灌水溶液のパルスを噴射する」ステップ425において、灌水溶液350(図3B)の噴射を、チャネル343を介して開始する。灌水溶液350の流量及び圧力は、付近に位置する血液が口321の中のRF電極341の周りの領域及びRF電極341の周りの凹み330から洗い流されるよう選択される。当業者であれば理解できるように、RF電極341が定位置に位置する前に、例えば、グラフトクロス332と接触状態にある前であっても灌水溶液350の流れを開始させることができる。
【0031】
灌水溶液350の流れが維持されている間、「窓を形成する」ステップ430において、電力をRF電極341に供給する。プラズマが作られ、その結果、穴がグラフトクロス332に切断形成され、即ち、窓336が作られる(図3C)。プラズマからの熱は、窓336のエッジを溶融させる。図3Cに示されているように、灌水溶液350は、窓336を通って主ステント−グラフト330の内容積部内に流れる。
【0032】
窓336の形成に続き、灌水溶液350の流れを続けて、遂には、「灌水溶液のパルスを停止させる」ステップ435において流れを停止させるようにする。場合によっては、ステント−グラフトを枝血管320内に配置し、RFプラズマカテーテル340を患者から抜去する際に用いられる残りのプロセスは、従来公知のプロセスとほぼ同じであり、従って、本開示内容が分かりにくくなるのを避けるためにこれ以上本明細書においては説明しない。
【0033】
この例では、開窓の直前、開窓中及び開窓直後において、RF電極の付近の血液は、その付近から洗い流され、灌水溶液の流れの続行によって開窓部位から遮断される。RF電極341に対するRFパルス520のタイミングに関する灌水溶液510のパルスのタイミングの一例が、図5に示されている。
【0034】
時点0では、ステップ425において灌水溶液パルス510を開始させる。期間t1後の時点「T−RFパルス開始」では、ステップ430において電力をRF電極341に供給し、時点「T−RFパルス終了」まで電力が維持される。時点「T−RFパルス終了」から期間t2後に、ステップ435では、時点Tendで灌水溶液の流れを停止させる。図5の垂直変位は、意味はなく、2つのパルス相互間に何らかの関係を特定するものではない。同様に、図5は、特定のパルス立ち上がり時間及び立ち下がり時間について検討されるオプションを限定するものではない。
【0035】
灌水溶液510のパルスの初期エッジは、RF電極の近くの血液を希釈し始め、続行する流れは、血液を開窓部位及びRF電極341から洗い流す。パルス510と関連した流れの続行は、血液が開窓部位及びRF電極341に達するのを阻止する。このため、灌水溶液510のパルスは、RFパルス520が有効である間、血液を洗い流すと共に血液を開窓部位及びRF電極341から遮断する。灌水溶液は、RFエネルギーを導く。
【0036】
灌水溶液510のパルスは、開窓部位を血液の流れから隔離するので、RFプラズマカテーテルは、血液ではなく、灌水溶液の微小環境中でグラフトクロスを切断する。このため、環境は、本質的には灌水溶液である。その結果、凝塊を発生させる可能性は、なくなるわけではないが減少する。というのは、血液は、プラズマがグラフトクロスを切断するために作られる微小環境から除去されるからである。典型的な灌水溶液の導電性は、血液よりもかなり高いことが知られているので、RF開窓の電力効率が向上する。高い効率では、短いプラズマ放電又は低電力放電が可能である。これにより、放電持続時間が減少すると共に熱も又、凝塊の形成を減少させる。
【0037】
一具体例では、期間t1及び期間t2は、同一の持続時間であり。例えば、50ms(ミリ秒)である。この具体例では、RFパルス520の持続時間は、1000msであり、従って、灌水溶液パルス510の持続時間は、1100msである。変形例として、別の具体例では、期間t1及び期間t2は、互いに異なる持続時間を有しても良い。
【0038】
また、主ステント−グラフトを通る血液の流れを遮断し、デュアルコアRFプラズマカテーテルを補助血管を介して用い、生理的食塩水をカテーテルの一方のコア中に噴射し、カテーテルの他方のコアを開いて生理的食塩水ドレーンとして用い、切断を実施し、引き続き生理的食塩水を注入し、このように、凝塊、グラフトクロスへの小さな粒子を全て洗い流し、次にステントグラフト又はステント−グラフトを通る流れを遮断しないようにするためにデュアルバルーンが用いられる場合がある。
【0039】
図6は、上述の方法に用いられるのに適したRFプラズマカテーテル640と呼ばれる場合のある生理的食塩水利用型RFプラズマ電極開窓カテーテル組立体640の一例の略図である。RFプラズマカテーテル640は、RFプラズマカテーテル640の近位端部のところに位置するRF電極641を有し、オペレータのハンドル616は、RFプラズマカテーテル640の近位端部のところに位置する3つのポート643,644,645を有する。本明細書で用いるRFプラズマカテーテル640の遠位端部という表現は、オペレータのハンドル616を基準としている。
【0040】
以下により完全に説明するように、RF電極641は、RF導体(図示せず)に電気的に接続され、このRF導体は、ポート645内の受け具に連結される。RF導体は、RFプラズマカテーテル640の遠位端部から近位端部まで延びている。
【0041】
一具体例では、RF導体は、金属ワイヤ、例えば銅、鋼、NiTi又はステンレス鋼ワイヤであり、或いは、RF電極641と同種の材料で作られる。RF導体は、RF電極641に溶接され又ははんだ付けされ、環状中央ライナ(図示せず)に巻き付けられる。環状中央ライナは、灌水溶液610の流れのための連続チャネルが利用できるようRF電極641に結合される。ワイヤは、絶縁体であり、シリコーンエラストマー、ポリアミド又はポリウレタンである覆いを有するのが良い。
【0042】
1本又は複数本の熱可塑性チューブを中央ライナ及びRF導体に被せて熱収縮させ、それによりRF電極641からハンドル616まで延びるカテーテルシャフト642を形成する。中央ライナが熱可塑性チューブで覆われているカテーテルシャフト642を形成する技術は、先行技術において用いられている技術と同じであり、従って、この説明を考慮する当業者には知られている。例えば、カテーテルシャフトを通る電力及び流れチャネルを提供する技術は、1999年6月29日にハイサグエレ等(Haissaguerre et al)の米国特許第5,916,213号明細書(発明の名称:Systems and Methods for Tissue Mapping and Ablation)に記載されており、この米国特許を参照により引用し、その記載内容を当該技術分野における技術のレベルの証拠として本明細書の一部とする。
【0043】
RF導体は、RF電力線を介してポート645を通ってRF電源(図示せず)に電気的に接続されている。この例では、RF電力線660は、ポート645の受け口にプラグ接続されているバナナジャックで終端している。使用中、RF電源は、RF電力線660を介してRF電力をRF導体に、RF電極641に供給する。
【0044】
一例を挙げると、RF電源は、200〜500kHz周波数範囲で動作する。
【0045】
別の例として、RF電源の電力出力は、50〜300ワットであり、100〜300ワット/秒をもたらすことができる。例えば、RF電源は、バリーラボ・コウテリー(Valleylab Cautery)社製のRF発振器(コロラド州ボールダー・ロングボウ・ドライブ5720所在のバリーラボ社製のModel Force FX(登録商標)電気外科発振器)であり、ただし、多くのRF発振器のうちの任意の1つを使用することができる。特定の周波数及び電力出力範囲が提供されているが、これらは例示に過ぎない。
【0046】
ポート644は、灌水溶液の源、例えば生理的食塩水の袋に結合されている。代表的には、0.9%NaClが用いられ、考えられる代替手段は、平衡塩類溶液、例えばリンガー及びハンクスBSSであり、これは、等張性の生理的食塩水でなければならない。具体的に説明すると、生理的食塩水の袋の出力流れ673は、生理的食塩水ポンプ672の入力ポートに連結される。生理的食塩水ポンプ672の出力ポートは、生理的食塩水供給管671に連結され、この生理的食塩水供給管は、生理的食塩水流入ポート644に連結される。ポート644は、カテーテルシャフト642のルーメンと呼ばれる場合のある内部チャネルに生理的食塩水を供給するよう構成されている。
【0047】
一具体例では、生理的食塩水ポンプ672は、ローラ式ポンプである。別の具体例では、生理的食塩水ポンプ672は、容量形ポンプである。生理的食塩水ポンプ672は、2〜15気圧の圧力で50〜100ml/分の流量をもたらす。生理的食塩水袋673及び生理的食塩水ポンプ672からの生理的食塩水は、灌水溶液670の源となる。
【0048】
ポート643は、ガイドワイヤ646を通過させることができるトウイ−ボルスト(Touhy-Borst)式アダプタであり、ガイドワイヤは、カテーテルを開窓部位まで案内し、ガイドワイヤを開窓中、引き戻すのが良い。別の例として、ガイドワイヤ646は、ガイドワイヤ646の遠位端部のところに補足構造体(コルク栓抜き形の構造体)を有する。係属中の米国特許出願第11/557,204号明細書に記載されているように、補足構造体は、RF電極641によりグラフト材料から切断されたグラフト材料のフラップを補足する。
【0049】
ガイドワイヤ646、例えば0.035インチ(0.89mm)ガイドワイヤがポート643のガイドワイヤルーメンから出て延びている。ガイドワイヤ646は、上述のチャネル内でカテーテルシャフト642の長さを貫通して延びている。ガイドワイヤとの電気的結合に問題は見つからなかったが、ガイドワイヤは、誘電体被膜を有するのが良く又は誘電体で作られるのが良く或いは、案内カテーテル内に収納されるのが良い。
【0050】
現場開窓のためのRFプラズマカテーテル740(図7)を用いた場合の副作用的問題を軽減する別の例では、RFプラズマカテーテル740のRFプラズマカテーテル電極741は、外側絶縁体745と境を接している。外側絶縁体745は、この具体例では、耐熱性電気絶縁体である。この場合、耐熱性という表現は、外側絶縁体745を高温の近くで用いることができるということを意味している。というのは、外側絶縁体745は、熱の不良導体であり、従って、電気絶縁体だけでなく高温からの断熱材として働くからである。
【0051】
外側絶縁体745により、RF電極741を主ステント−グラフトストラット731から離隔することができ、他方、RF電極741は、開窓中、主ステント−グラフトクロス742に確実に接触し、例えば、これを押し下げる。この離隔により、ステントストラット731は、開窓中に生じるプラズマ及びプラズマにより生じる熱から効果的に遮蔽される。この結果、RFプラズマカテーテル740が偶発的にストラット731を切断する恐れがなくならないまでも大幅に減少する。
【0052】
図8は、ステントストラットとRF電極との間の離隔状態を維持する外側絶縁体845を有するRFプラズマカテーテル840の一具体例の一部分の断面図である。この具体例では、RFプラズマカテーテル840は、RF電極841、内側絶縁体847、中央ライナ846及びカテーテルシャフト本体842を更に有している。
【0053】
中央ライナ846は、内径873及び外径874を備えた円筒形の環状体である。中央ライナ846の内側円周方向縁部表面は、直径873を有し、ルーメン843と呼ばれる場合のあるチャネル843を画定している。内径873は、0.018インチ(0.46mm)〜0.042インチ(1.07mm)であるのが良く、この具体例では、0.039インチ(0.99mm)である。外径874は、0.022インチ(0.56mm)〜0.046インチ(1.17mm)であるのが良く、この具体例では、0.043インチ(1.10mm)である。中央ライナ846は、ポリマーチューブ、例えばポリイミド、ステンレス鋼ワイヤ編組強化ポリイミド、ポリアミド、PEEK又はHDPEで作られるのが良い。
【0054】
中央ライナ846の遠位端部846Aは、内側絶縁体847内に設けられている。内側絶縁体847は、耐熱電気絶縁体として機能する材料で作られている。例えば、耐超高温被削性セラミックは、次の特性、即ち、3100°F(1704.4℃)の最高温度、181Btu/時Xインチ/平方フィートの熱伝導率を有する。用いるのに適したセラミックの1つ、例えば、耐超高温非孔質高アルミナ質セラミック(Very High Temperature Nonporous High-Alumina Ceramics)は、カリフォルニア州サンタフェスプリングス所在のマクマスター−カー・インダストリアル・サプライ(McMaster-Carr Industrial Supply)社から得ることができる。
【0055】
内側絶縁体847の正確な形状及び寸法は、開窓中、中央ライナ846をRF電極841内に溜まる熱から絶縁し、中央ライナ846の構造的健全性又は一体性及び物理的健全性又は一体性がその熱によって損なわれないように選択される。この例では、内側絶縁体847は、環状壁847Aを有し、この環状壁は、その一端部の周りに外部リップ847Bを有すると共にその反対側の端部の周りに内部リップ847Cを有している。
【0056】
環状壁847Aの内径は、内側絶縁体847が中央ライナ846に取り付けられるよう中央ライナ846の外径874に基づいて選択される。代表的には、内側絶縁体847は、耐熱エポキシ接着剤を用いて外側ライナ846に結合される。この例では、環状壁847Aの外径は、0.060インチ(1.52mm)である。しかしながら、この値は、例示に過ぎず、一具体例では、外径は、0.040インチ(1.02mm)〜0.100インチ(2.54mm)の範囲から選択される。
【0057】
外部リップ847Bの外径及び長手方向軸線844に沿う外部リップ847Bの長さは、中央ライナ846をRF電極841の環状区分841Bから伝動された熱から隔離するよう選択される。リップの長さは、0.020〜0.025インチ(0.51〜0.64mm)であり、その直径は、0.070〜0.080インチ(1.78〜2.03mm)である。内部リップ847Bの内径は、直径873である。長手方向軸線844に沿う内部リップ847Bの長さは、中央ライナ846をRF電極841から伝動された熱から隔離するよう選択される。この具体例では、内部絶縁体847は、長手方向軸線844に沿う長さ878を有し、この長さは、0.020〜0.025インチである。
【0058】
上述した外側絶縁体845は、耐熱電気絶縁体である。この実施例では、外側絶縁体845の全体形状は、外側絶縁体845とRF電極841の両方をRFプラズマカテーテル840に取り付け易くする一方で、外周縁表面845Aに隣接して位置するステントストラットをRF電極841と関連した熱及びプラズマから絶縁するよう図8に示されているように改造された内縁表面を備えた環状のものである。外側絶縁体845は、内側絶縁体847と同種の材料で作られている。
【0059】
この具体例では、外周縁表面845Aは、長手方向軸線に沿って0.010〜0.030インチ(0.25〜0.76mm)の長さ876を有する。しかしながら、この値は、例示に過ぎない。離隔外側エッジ表面845Bは長手方向軸線844に対してほぼ横方向に0.010〜0.015インチ(0.25〜0.38mm)の長さ872を有する。しかしながら、この値は、例示に過ぎず、一具体例では、この長さは、0.13mm(0.005インチ)〜0.51mm(0.020インチ)の範囲から選択される。外側絶縁体845の内径は、RF電極841の環状壁841Bの厚さで決まる。
【0060】
RF電極841は、凸状外側エッジ表面841Aを有し、この表面は、この具体例では、滑らかな円弧である。しかしながら、これは例示に過ぎず、考えられる実施形態をこの特定の形状に限定するものではない。図9は、RF電極941のための別の凸状外側エッジ表面941Aを示しているRF電極841は、図8に矢印によって示されているように、生理的食塩水が中央ライナ843、内側絶縁体847及びRF電極841の各々のルーメンを妨げられない状態で通って流れることができるような直径873を備えた内周縁表面を備えている。
【0061】
RF電極841の環状壁841Bは、環状部分841Bが内側絶縁体847の周りに嵌って耐熱エポキシ接着剤によってこれに取り付けられるような内径を有する。この例では、環状壁841Bの外径は、0.070インチ(1.78mm)である。しかしながら、この値は例示に過ぎない。環状壁841Bの長さ877は、電力を供給するために用いられる電線をRF電極841に取り付け易くすると共にRF電極841をRFプラズマカテーテル840に確実に取り付けるよう選択される。この具体例では、長さ877は、0.050インチ(1.27mm)である。
【0062】
カテーテルシャフト本体842は、上述したように熱可塑性チューブから作られる。
【0063】
図10は、RFプラズマカテーテル1040の別の具体例の一部分の断面図であり、このカテーテルは、ステントストラットとRF電極との間の離隔状態を維持する外側絶縁体1045を有している。この具体例では、RFプラズマカテーテル1040は、RF電極1041、内側絶縁体1047、中央ライナ1046及びカテーテルシャフト本体1042を更に有している。外側絶縁体1045、内側絶縁体1046、中央ライナ1046及びカテーテルシャフト本体1042は、それぞれ、上述した外側絶縁体845、内側絶縁体847、中央ライナ846及びカテーテルシャフト本体1042と同じであり、従って、これらについての説明を参照により引用する。
【0064】
RF電極1041は、外側エッジ表面がこの具体例では滑らかな円弧である凹状外側エッジ表面1041Aとリング状外側エッジ表面1041Bの組み合わせである点を除き、RF電極841とほぼ同じである。しかしながら、これは例示に過ぎず、考えられる実施形態をこの特定の形状に限定するものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
切断用高周波カテーテル組立体であって、
ルーメンを画定する中央ライナと、
前記中央ライナに該中央ライナの遠位端部で結合された高周波電極であって、該高周波電極を通る前記中央ライナの前記ルーメンからの流路を提供するよう整列したルーメンを画定する高周波電極と、
前記中央ライナに結合された灌水溶液のパルス源と、を備えている、
ことを特徴とする切断用高周波カテーテル組立体。
【請求項2】
前記高周波電極の周りに設けられた外側絶縁体を更に有し、
該外側絶縁体の円周方向外側エッジ表面が、前記高周波カテーテル組立体の外側円周方向エッジ表面の一部分を構成する、
請求項1記載の切断用高周波カテーテル組立体。
【請求項3】
前記中央ライナと前記高周波電極との間に設けられた内側絶縁体を更に有し、
該内側絶縁体は、前記中央ライナの前記ルーメンから前記高周波電極の前記ルーメンまでの流路を提供するよう整列したルーメンを画定する、
請求項1記載の切断用高周波カテーテル組立体。
【請求項4】
前記中央ライナと前記高周波電極との間に設けられた内側絶縁体を更に有し、
該内側絶縁体は、前記中央ライナの前記ルーメンから前記高周波電極の前記ルーメンまでの流路を提供するよう整列したルーメンを画定する、
請求項2記載の切断用高周波カテーテル組立体。
【請求項5】
前記高周波電極は、凸状外側エッジ表面を更に有する、
請求項1記載の切断用高周波カテーテル組立体。
【請求項6】
前記高周波電極は、凹状外側エッジ表面を更に有する、
請求項1記載の切断用高周波カテーテル組立体。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2011−516113(P2011−516113A)
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−500846(P2011−500846)
【出願日】平成21年3月2日(2009.3.2)
【国際出願番号】PCT/US2009/035761
【国際公開番号】WO2010/014267
【国際公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(502129357)メドトロニック カルディオ ヴァスキュラー インコーポレイテッド (125)
【Fターム(参考)】