説明

RFIDタグとそれを用いた管理システム

【課題】本発明は、RFIDタグとそれを用いた管理システムに関するもので、金属表面によるアンテナ特性が劣化を抑制することを目的とするものである。
【解決手段】そしてこの目的を達成するために本発明は、表面、裏面、およびこれらの表、裏面を結ぶ側面に導電性膜24によりグランド領域28を形成した基板25と、この基板25に設けられた制御素子3とを備え、前記基板表面のグランド領域28の導電性膜24に、枠状の第1のスリット状除去部26を形成することにより、この基板25表面のグランド領域28内に、導電性膜24よりなる略λg/2のアンテナ領域27を形成し、このアンテナ領域27の、前記制御素子3のインピーダンスに対する共役インピーダンス該当部分に、前記制御素子3を電気的に接続したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生産管理、物流管理、物品管理などに用いられるRFIDタグと、それを用いた管理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
RFIDタグは、個別識別情報を記憶することができる制御素子を有するので、このRFIDタグを用いて生産管理、物流管理、物品管理などを行う管理システムが提案されている。
【0003】
すなわち、RFIDタグを管理物品に貼り付けておけば、制御器とRFIDタグとの交信により、個々の管理物品の所在を確認することができるので、管理物品の管理が大幅に効率化されるものである(なお、これに類似する先行文献としては、例えば下記特許文献1がある。)。
【特許文献1】特表2002−536726号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来例における課題は、RFIDタグを貼付した管理物品が金属表面を有するものであった場合に、RFIDタグのアンテナ特性が劣化し、それによって制御器との交信が適切に行われず、結論として、管理の効率化が図れなくなるということであった。
【0005】
すなわち、RFIDタグは制御器との交信用アンテナを有するのであるが、管理物品が金属表面を有するものであった場合には、その金属表面の影響で上記交信用アンテナのアンテナ特性が劣化し、結論として制御器との交信が適切に行われず、管理の効率化が図れなくなるのであった。
【0006】
そこで本発明は、アンテナ特性の劣化を抑制することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そしてこの目的を達成するために本発明は、表面、裏面、およびこれらの表、裏面を結ぶ側面に導電性膜によりグランド領域を形成した基板と、この基板に設けられた制御素子とを備え、前記基板表面のグランド領域の導電性膜に、枠状の第1のスリット状除去部を形成することにより、この基板表面のグランド領域内に、導電性膜よりなる略λg/2のアンテナ領域を形成し、このアンテナ領域の、前記制御素子のインピーダンスに対する共役インピーダンス該当部分に、前記制御素子を電気的に接続し、これにより所期の目的を達成するものである。
【発明の効果】
【0008】
以上のごとく本発明は、表面、裏面、およびこれらの表、裏面を結ぶ側面に導電性膜によりグランド領域を形成した基板と、この基板に設けられた制御素子とを備え、前記基板表面のグランド領域の導電性膜に、枠状の第1のスリット状除去部を形成することにより、この基板表面のグランド領域内に、導電性膜よりなる略λg/2のアンテナ領域を形成し、このアンテナ領域の、前記制御素子のインピーダンスに対する共役インピーダンス該当部分に、前記制御素子を電気的に接続したものであるので、アンテナ特性の劣化を抑制することができる。
【0009】
すなわち、本発明のRFIDタグは、表面、裏面、およびこれらの表、裏面を結ぶ側面に導電性膜によりグランド領域を形成した基板を設け、この基板表面のグランド領域の導電性膜に、枠状の第1のスリット状除去部を形成することにより、この基板表面のグランド領域内に、導電性膜よりなる略λg/2アンテナ領域を形成したものであるので、管理物品が金属表面を有するものであっても、基板表面、裏面、およびこれらの表、裏面を結ぶ側面に導電性膜よりなるグランド領域を設けていることにより、アンテナ特性が劣化しにくく、よって制御器との交信を適切に行え、管理の効率化が図れるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下本発明の一実施形態を、添付図面を用いて説明する。
【0011】
図1において、1は例えば冷蔵庫等の管理物品で、この管理物品1は図示していないが、搬送装置(例えばコンベアー)により複数個が連続的に出荷場所(例えばトラックターミナル)に移送されている。
【0012】
この管理物品1は本実施形態では冷蔵庫であって、その外表面が全て金属板により形成されたものである。
【0013】
さて、このようにその外表面が全て金属板により形成された個々の管理物品1の前面上部には、この図1に示すように、RFIDタグ2が、例えばこのRFIDタグ2の裏面に設けた接着テープにより貼付されている。
【0014】
各管理物品1に貼付されRFIDタグ2には、図2に示すように制御素子3が搭載され、この制御素子3には個別識別情報を記憶する記憶部3aが内蔵されている。
【0015】
各管理物品1に貼付されたRFIDタグ2は、それが貼付された管理物品1毎の個別識別情報(例えば製造番号、製造日等)が、その制御素子3の記憶部3aに記憶させられており、これにより例えば「製造番号1番」の冷蔵庫が現在どこにあるのかが、管理されるようになっている。
【0016】
その管理を行うのが図1に示す制御器4で、この制御器4は、そのリーダーライタ5を介してRFIDタグ2と交信し、その内部に設けた上記記憶部3aに記憶された個別識別情報を読み取り、管理するようになっている。
【0017】
図2は制御器4のリーダーライタ5と、RFIDタグ2の電気的なブロック図を示し、先ず制御器4からの指示によりリーダーライタ5の制御部6からRFIDタグ2に例えば「管理番号1は存在するか?」という問い合わせが行われる。
【0018】
この問い合わせ信号は、変調回路7により、953MHzの搬送波を変調し、送信回路8、アンテナ9を介してRFIDタグ2に向け出力される。
【0019】
RFIDタグ2は、そのアンテナ部10で問い合わせ信号を受信し、ダイオード11とコンデンサ12で、上記アンテナ9からの信号の搬送波からDC電圧を発生させ、この発生したDC電圧により、制御回路13、復調回路14、変調回路15、上記記憶部3aを起動する。
【0020】
すると、制御回路13からの指示で復調回路14は、受信信号から上記「管理番号1は存在するか?」という問い合わせを復調する。
【0021】
また、制御回路13は、上記復調回路14への指示と同時に、記憶部3aに対して記憶している個別識別情報を聞き出している。
【0022】
記憶部3aに記憶された個別識別情報が「管理番号1」であった場合、この制御回路13は、その問い合わせに対して、「管理番号1」が存在することを、変調回路15を介してスイッチ16のON、OFFを行うことで答える。
【0023】
つまり、スイッチ16がONすれば、アンテナ部10のa点と、グランド部17のb点とが短絡され、逆にスイッチ16がOFFされればアンテナ部10のa点と、グランド部17のb点とが開放され、このようなスイッチ16のON、OFFの繰り返しパターンにより、結論としてRFIDタグ2のアンテナ部10から、リーダーライタ5のアンテナ18に「管理番号1」が存在することが報告される。
【0024】
リーダーライタ5では、受信回路19を介して返信信号が復調回路20に伝達され、復調した信号により制御部6は「管理番号1」の存在を確認し、制御器4へと報告することになる。
【0025】
また、制御器4からの指示によりリーダーライタ5の制御部6からRFIDタグ2に、「管理番号1は存在するか?」と、問い合わせが行われたにもかかわらず、「管理番号1」を記憶したRFIDタグ2が存在しない場合には、返信がないので、制御器4はこの「返信なし」から、「管理番号1」が存在しないことを確認する。
【0026】
なお、この図2において21は電源回路、22はクロック回路、23はマッチング用のコンデンサを示している。
【0027】
さて以上のようなRFIDタグ2は、図3〜図5のような構成となっている。
【0028】
図3はRFIDタグ2の斜視図、図4は一部切欠斜視図、図5は背面図である。
【0029】
これら図3〜図5に示すように、本実施形態のRFIDタグ2は、全面(表面、裏面、およびこれらの表、裏面を結ぶ全周の側面)に導電性膜(図3〜図5においては斜線を設けて判別しやすくしている)24を有する誘電体製の基板25と、この基板25に設けられた制御素子3とを備えている。
【0030】
そして、この基板25の表面の導電性膜24には、図3、図4に示すごとく、長方形枠状のスリット状除去部26を形成し、この長方形枠状のスリット状除去部26内部分の導電性膜24により長方形状のアンテナ領域27を形成している。
【0031】
また、長方形枠状のスリット状除去部26の外方部分の導電性膜24、つまり基板25の表面の長方形枠状のスリット状除去部26外方、および基板25の裏面全面、および基板25の全外周に設けている導電性膜24により、グランド領域28を形成している。
【0032】
また、図3に示すように、長方形枠状のスリット状除去部26内の導電性膜24により形成された長方形状のアンテナ領域27の、長辺部30の長さは略λg/2としている(ここで、λgは線路波長を示す。つまり、グランド部を有するλ/2型アンテナを構成するものである。)。
【0033】
このようなλ/2型アンテナを構成した場合、図3におけるアンテナ領域27の上、下の短辺部29部分が高電位部分になる。
【0034】
逆に図3におけるアンテナ領域27の上、下方向の中央部分が低電位になる。
【0035】
そして、アンテナ領域27の上記高電位部分(具体的には図3における上方の短辺部29部分)に、給電線路31、32を介して、上記制御素子3を電気的に接続している。
【0036】
ここで、アンテナ領域27における制御素子3の電気的接続ポイントは、上記制御素子3のインピーダンスに対する共役インピーダンス該当部分であり、このポイントを接続ポイントとするために、給電線路31、32をアンテナ領域27内に設けている。
【0037】
なお、これら給電線路31、32は次のようにして形成している。
【0038】
すなわち、アンテナ領域27における、上方の短辺部29部分には、このスリット状除去部26に、所定間隔をおいて対向するスリット状除去部33を設けている。そして、これらスリット状除去部26と、スリット状除去部33間のアンテナ領域27で、上記給電線路31を形成している。
【0039】
またこの給電線路31につながる給電線路32を形成するためにスリット状除去部33から下方に向けてスリット状除去部34、35を形成し、これらのスリット状除去部34、35間のアンテナ領域27で、給電線路32を形成している。
【0040】
したがって、制御素子3には、アンテナ領域27における高電位部分から、給電線路31、32を介して高周波電力が供給されるようになっている。
【0041】
なお、本実施形態において、給電線路31、32を設けた理由は、インピーダンス整合をとるため、および帯域幅調整、利得調整等を行うためである。
【0042】
また、本実施形態においては、インピーダンス整合をとるため、および帯域幅調整、利得調整等を行うために、長方形枠状のスリット状除去部26の図3の上方に位置する短辺部26a部分に、基板表面のアンテナ領域27の導電性膜24と、グランド領域28の導電性膜24とを接続するショートポイント36を設けている。
【0043】
さらに、基板25表面のアンテナ領域27におけるスリット状除去部33の両側にショートポイント37、38を設けたのも、インピーダンス整合をとるため、および帯域幅調整、利得調整等を行うためである。
【0044】
以上のような構成のRFIDタグ2は、その基板25の裏面側の導電性膜24に、例えば両面テープ等の貼り付け手段(図示せず)を設け、それにより図1のごとく管理物品1に貼付される。
【0045】
この管理物品1は本実施形態では冷蔵庫で、その外周面全体が金属板により形成されている。
【0046】
そこで、本実施形態のRFIDタグ2は、上述のごとく、誘電体製の基板25の表面、裏面、およびこれらの表、裏面を結ぶ全側面に導電性膜24を設けてグランド領域28とし、また表面のグランド領域28の内方にアンテナ領域27を設けている。
【0047】
このため、RFIDタグ2のアンテナ領域27は、その裏面側に存在する管理物品1の金属表面により、そのアンテナ特性が劣化するのを抑制することができ、その結果として図2に示す制御器4のリーダーライタ5との交信が適切に行われることとなる。
【0048】
したがって、制御器4により、複数の管理物品1の管理が適切に、効率よく行えることとなる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
以上のごとく本発明は、表面、裏面、およびこれらの表、裏面を結ぶ側面に導電性膜によりグランド領域を形成した基板と、この基板に設けられた制御素子とを備え、前記基板表面のグランド領域の導電性膜に、枠状の第1のスリット状除去部を形成することにより、この基板表面のグランド領域内に、導電性膜よりなる略λg/2のアンテナ領域を形成し、このアンテナ領域の、前記制御素子のインピーダンスに対する共役インピーダンス該当部分に、前記制御素子を電気的に接続したものであるので、アンテナ特性の劣化を抑制することができる。
【0050】
すなわち、本発明のRFIDタグは、表面、裏面、およびこれらの表、裏面を結ぶ側面に導電性膜によりグランド領域を形成した基板を設け、この基板表面のグランド領域の導電性膜に、枠状の第1のスリット状除去部を形成することにより、この基板表面のグランド領域内に、導電性膜よりなる略λg/2のアンテナ領域を形成したものであるので、管理物品が金属表面を有するものであっても、基板表面、裏面、およびこれらの表、裏面を結ぶ側面に導電性膜よりなるグランド領域を設けていることにより、アンテナ特性が劣化しにくく、よって制御器との交信を適切に行え、管理の効率化が図れるのである。
【0051】
したがって、生産管理、物流管理、物品管理などの管理システムに広く活用が期待されるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の一実施形態の管理システムを示す斜視図
【図2】同管理システムの電気的なブロック図
【図3】同管理システムに用いられるRFIDタグの斜視図
【図4】同RFIDタグの一部切欠斜視図
【図5】同RFIDタグの背面図
【符号の説明】
【0053】
1 管理物品
2 RFIDタグ
3 制御素子
3a 記憶部
4 制御器
5 リーダーライタ
6 制御部
7 変調回路
8 送信回路
9 アンテナ
10 アンテナ部
11 ダイオード
12 コンデンサ
13 制御回路
14 復調回路
15 変調回路
16 スイッチ
17 グランド部
18 アンテナ
19 受信回路
20 復調回路
21 電源回路
22 クロック回路
23 コンデンサ
24 導電性膜
25 基板
26 (長方形枠状の)スリット状除去部
26a 短辺部
27 アンテナ領域
28 グランド領域
29 短辺部
30 長辺部
31 給電線路
32 給電線路
33 スリット状除去部
34 スリット状除去部
35 スリット状除去部
36 ショートポイント
37 ショートポイント
38 ショートポイント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面、裏面、およびこれらの表、裏面を結ぶ側面に導電性膜によりグランド領域を形成した基板と、この基板に設けられた制御素子とを備え、前記基板表面のグランド領域の導電性膜に、枠状の第1のスリット状除去部を形成することにより、この基板表面のグランド領域内に、導電性膜よりなる略λg/2のアンテナ領域を形成し、このアンテナ領域の、前記制御素子のインピーダンスに対する共役インピーダンス該当部分に、前記制御素子を電気的に接続したRFIDタグ。
【請求項2】
基板の全側面に導電性膜によるグランド領域を形成した請求項1に記載のRFIDタグ。
【請求項3】
第1のスリット状除去部を長方形枠状とし、この長方形枠状内部分の導電性膜でアンテナ領域を形成した請求項1または2に記載のRFIDタグ。
【請求項4】
アンテナ領域における高電位部分に制御素子を電気的に接続した請求項3に記載のRFIDタグ。
【請求項5】
アンテナ領域における高電位部分に、第2のスリット状除去部を設けて第1の給電線路を形成し、この第1の給電線路に、制御素子を電気的に接続した請求項4に記載のRFIDタグ。
【請求項6】
第1のスリット状除去部には、アンテナ領域における高電位部分と、グランド領域とを接続するショートポイントを設けた請求項1〜5のいずれか一つに記載のRFIDタグ。
【請求項7】
制御素子は、個別識別情報の記憶部を有する請求項1〜6のいずれか一つに記載のRFIDタグ。
【請求項8】
基板の裏面には、貼り付け手段を設けた請求項1〜7のいずれか一つに記載のRFIDタグ。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一つに記載のRFIDタグと、このRFIDタグと交信する制御器とを有する管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−212761(P2009−212761A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−53013(P2008−53013)
【出願日】平成20年3月4日(2008.3.4)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】