説明

RFIDタグ及びRFIDタグシステム

【目的】 パッシブ型のRFIDタグで目的のリーダライタにだけ情報を発信できるようにする。
【構成】 ICチップ4及びコイルアンテナ3を備えたパッシブ型のRFID1タグであって、コイルアンテナ3に手動で接続と切断を切り換え可能なアンテナスイッチ6を設けている。ユーザが目的とするリーダ/ライタの近くでのみアンテナスイッチ6を入れてRFIDタグ1をそのリーダ/ライタに近接させることによって、目的とするリーダ/ライタとだけ送受信を行うことができ、それ以外の意図しないリーダ/ライタや成りすましのリーダ/ライタとの送受信を回避することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体メモリを内蔵し、このメモリに対する情報の読み書きを非接触で行うことが可能なRFIDタグ、およびそのRFIDタグを使用するRFIDタグシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、製造・流通・販売などの各業界において、管理、搬送される物品にRFID(Radio Frequency Identification)タグと称する記憶媒体を取り付け、リーダライタとの無線通信によりその物品に関する情報を非接触で読み書きするRFIDシステムが普及している。RFIDタグは、メモリICや通信用のアンテナ回路などを備えた非接触式ICタグとも称されるものであり、物品に貼りつけやすいよう薄型で湾曲可能なシールタイプのものや、超小型のものなどが提供されている。
【0003】
また、このRFIDタグの起動電力に係る分類として、電池を持たないパッシブ型と、電池を内蔵したアクティブ型がある。パッシブ型は、リーダ/ライタから電波を受信することによってRFIDタグの内部回路に起電力が生じ、自動的にメモリ内の情報を発信する。アクティブ型は、内蔵する電池により起動し、リーダ/ライタからの情報を要求する電波に応じてメモリ内の情報を発信する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、パッシブ型の場合は情報を要求する電波を発信した全てのリーダ/ライタに対して情報を発信するようになっている。そのため、本来情報を発信すべきリーダ/ライタと異なる成りすましのリーダ/ライタに対しても情報を発信してしまうので、セキュリティ上に問題があった。
【0005】
また、アクティブ型の場合には内蔵電池の寿命により使用できる期間が限定される問題がある。そこで、電池交換可能に構成しようとすると、電池の着脱部分を対塵性や耐水性を考慮した密閉度の高い構成とする必要があるため、コスト高となってしまう。また、アクティブ型は電波を遠くまで伝送することが可能なため、意図しないリーダ/ライタが転送データを読み取ってしまう危険性もあった。
なお、リーダ/ライタがパッシブ型とアクティブ型の両方の機能を有するシステムに対しては、RFIDタグもそれぞれ対応するものを1つずつ用意する必要があり、資源効率上ムダが多く、コスト高の原因となっていた。
【0006】
この発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、RFIDタグ及びRFIDタグシステムにおいて、次のような目的を有する。
パッシブ型のRFIDタグで、目的のリーダ/ライタにだけ情報を発信できるようにする。
アクティブ型のRFIDタグで使用寿命の制限をなくし、低い製造コストで対塵性や耐水性を向上させるようにする。
さらに、パッシブ型とアクティブ型の両方に対応できるRFIDタグを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は上記の目的を達成するため、メモリIC及びアンテナ回路を備えたパッシブ型のRFIDタグにおいて、アンテナ回路に手動で接続と切断を切り換え可能なアンテナスイッチを設けたものである。
【0008】
また、メモリIC、アンテナ回路及び電源部を備えたアクティブ型のRFIDタグにおいて、上記電源部に手動の発電手段を設けるとよい。
さらに、上記電源部から上記記憶メモリICへの電力の供給と停止を切り換え可能な電源スイッチを設けるとよい。
【0009】
また、記憶メモリIC、アンテナ回路及び電源部を備えたRFIDタグにおいて、上記電源部から上記憶メモリICへ電力を供給してアクティブ型として機能させる状態と、上記電源部とメモリICとを切断してパッシブ型として機能させる状態とを切り換える機能切換スイッチを設けるとよい。
【0010】
上記いずれかのRFIDタグと、そのRFIDタグとの間で電波の送受信を行うリーダ/ライタと、そのリーダ/ライタで受信した情報を処理するデータ処理装置とからなるPFIDタグシステムも提供する。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、パッシブ型のRFIDタグで目的のリーダ/ライタにだけ情報を発信することができる。
また、アクティブ型のRFIDタグでも使用寿命に限りがなくなるとともに、低い製造コストで高い対塵性や耐水性を実現できる。
さらに、パッシブ型とアクティブ型の両方に対応できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、この発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて具体的に説明する。
〔第1実施例〕
まず、この発明の第1実施例によるRFIDタグ及びこのRFIDタグを使用するRFIDタグシステムについて説明する。
【0013】
図1はこの発明によるRFIDタグの第1実施例の構成を模式的に示す平面図であり、図2は同じくそのA−A線に沿う断面図である。図1、図2において、このRFIDタグ1はカードタイプのものであって、適宜の絶縁材からなる名刺サイズの基板カード2と、この基板カード2の片面に1本のアンテナ線を略矩形の一筆書き状にプリント形成したコイルアンテナ3と、このコイルアンテナ3の両端間に接続されているICチップ4と、ループ配置のアンテナ線の外周と内周の端部を橋渡しして接続するためのブリッジ5と、アンテナ線の一箇所に設けられたアンテナスイッチ6とを備えている。そのコイルアンテナ3とアンテナスイッチ6とによってアンテナ回路を構成している。
【0014】
ICチップ4はメモリICとして機能するものであり、図3に示すように、電源整流部41と、大きな記憶容量を有するメモリ42と、コイルアンテナ3が受信した電波信号を情報信号に変換する受信部43と、メモリ42から読み出した情報信号をコイルアンテナ3から発信可能な電波信号に変換する送信部44の4つの機能部で構成されている。
コイルアンテナ3は、外部のリーダ/ライタとの間で電波信号を送受信する信号アンテナであるとともに、リーダ/ライタから受ける電波を共振作用によってエネルギを有する電磁波として受け、電磁誘導作用により起電力を発生する電力アンテナとしても機能する。
【0015】
以上の構成により、この実施形態のRFIDタグ1は、外部から受けた電波により電源整流部41が電力を発生して受信部43及び送信部44とメモリに42も供給して、それらを動作させるとともに、情報を要求する電波信号に応答してメモリ42に格納している情報のうち所定の情報を電波信号にして発信するパッシブ型のRFIDタグである。
【0016】
そして、この実施例のRFIDタグ1が最も特徴とする構成がコイルアンテナ3によるアンテナ回路に設けたアンテナスイッチ6であり、このアンテナスイッチ6はアンテナ線の1箇所に設けられた押しバネ式の接点6aに絶縁体からなる押し板6bで覆ったものである。この押し板6bを指で押圧することでアンテナ線を接続してコイルアンテナ3によるアンテナ回路を形成させることができ、押し板6bから指を離すことでアンテナ線を切断してコイルアンテナ3の機能を停止させる。このアンテナスイッチ6は、絶縁体の押し板6bを介して接点の押圧操作を行うため、コイルアンテナ3が受電する微弱な電流の漏出を遮断し、またノイズの混入をも防ぐことができる。
【0017】
図4は、このRFIDタグを用いるRFIDタグシステムの概略構成図である。この図4において、RFIDタグに対応するリーダ/ライタ側のシステムとしては、RFIDタグ1に対して情報の読み込みと書込みを行うリーダ/ライタ101と、このリーダ/ライタ101に接続して情報の処理を行うパーソナルコンピュータで構成するデータ処理装置102とを備えている。また、リーダ/ライタ101は、RFIDタグ1との間で電波の送受により非接触で電力の供給と情報の送受信を行うアンテナ103と、このアンテナ103に接続して電波の送受信を制御するコントローラ104とで構成されている。
【0018】
図5は、上記RFIDタグシステムにおいて、リーダ/ライタ101側がRFIDタグ1から所定の情報を読み込んで処理する場合に、RFIDタグ1とリーダ/ライ101側が順次行う行程を示すフローチャートである。なお、このフローチャートに示す行程のうち、ステップ101からステップ105がRFIDタグ1の手順を示し、その後のステップ106からステップ108がリーダ/ライタ101側の手順を示している。なお、このフローチャートでは、各処理のステップをSと略記している。以後のフローチャートにおいても同様である。
【0019】
この図5に示す行程は、リーダ/ライタ101がコントローラ104の制御により常にアンテナ103から電波を発信している待機状態となっており、またRFIDタグ1においては、アンテナスイッチ6が切断されて停止状態となっていることを前提として開始する。
まず、停止状態のRFIDタグ1はコイルアンテナ3が機能しないため、意図しないリーダ/ライタ101が強い電波を発信しても、誤反応をして情報を発信するようなことはない。そして、ステップ101でRFIDタグ1のユーザがアンテナスイッチ6を押圧操作するとコイルアンテナ3が接続され、RFIDタグ1が使用可能状態となる。以降、ステップ105までその状態を継続するものとする。
【0020】
次に、ステップ102で、ユーザが目的のリーダ/ライタ101にRFIDタグ1を近接させて、RFIDタグ1のコイルアンテナ3にリーダ/ライタ101から発信する特定の周波数の電波を共振作用によって受信させる。それによって、次のステップ103でコイルアンテナ3に電磁誘導作用による起電力が発生し、それを整流してICチップ4の各部に電力を供給する。そして、ステップ104でICチップ4が起動してコイルアンテナ3によって受信部43が受信する情報要求信号に応じて所定の情報をメモリ42から読み出して情報信号を生成し、次のステップ105で送信部44によってその情報信号に対応する電波信号をコイルアンテナ3から発信する。
【0021】
なお、以上のステップ101からステップ105までが、RFIDタグ1側で行われる行程であるが、上記のステップ101とステップ102の行程は逆の順序で行ってもよい。つまり、ユーザはRFIDタグ1を目的のリーダ/ライタ101に近接させてからアンテナスイッチ6を接続してもよく、この場合でも正しいシーケンスでRFIDタグ1内の電源供給を開始することができる。また、この場合には、ステップ103の起電力の発生からステップ105の電波発信までは瞬時に行われるため、ユーザはアンテナスイッチ6を一瞬だけ押圧すればよい。
【0022】
そして、リーダ/ライタ101側は、ステップ106でRFIDタグ1からの電波を受信し、ステップ107でコントローラ104がそれを情報信号に変換してデータ処理装置102へ送る。ステップ108で、データ処理装置102によりその情報を処理して、RFIDタグ1の認識や管理などを行う。
【0023】
以上の手順で動作するこの実施例のRFIDタグシステムによれば、ユーザが目的とするリーダ/ライタ101の近くでのみアンテナスイッチ6を入れてRFIDタグ1を近接させるか、接近してからアンテナスイッチ6を入れてることによって、目的とするリーダ/ライタとの送受信処理だけを行うことができ、それ以外の意図しない他のリーダ/ライタや成りすましのリーダ/ライタとの送受信を回避することができる。
なお、上述した行程は、リーダ/ライタ101側が要求する情報をRFIDタグ1から読み込む行程だけを示したが、RFIDタグ1の記憶メモリがNV−RAMなどの書き換え可能な不揮発性メモリであれば、リーダ/ライタ101側から発信する情報をRFIDタグ1に書き込む処理を行うこともできる。
【0024】
〔第2実施例〕
次に、この発明によるRFIDタグの第2実施例、およびそのRFIDタグを使用するRFIDタグシステムについて説明する。
図6は、この発明によるRFIDタグの第2実施例の構成を模式的に示す図であり、ここでは上記第1実施例のものと相違する構成のみを説明し、他の共通する構成については図1と同じ符号を付して説明を省略する。
【0025】
図6において、このRFIDタグ11は基板カード2に、ユーザの手動操作によって電力を発生可能な手動発電素子12と、二次電池やコンデンサなどで構成する蓄電素子13と、電源スイッチ14とを備えている。また、このRFIDタグ11のコイルアンテナ3によるアンテナ回路には、第1実施例におけるアンテナスイッチ6に相当するスイッチを設けず、常に電波を送受可能なアンテナ回路になっている。
手動発電素子12は、ピエゾ素子などの圧電素子を使用した構成のものであり、ユーザが指で圧電素子上に繰り返し圧力をかけることによって発電できるものである。また、他の手動発電素子の例としては、ユーザが指で磁石をスライド移動させて、発電用コイルの中を通過させることによってコイルに発電させるものなどがある。
【0026】
蓄電素子13は、手動発電素子12で発電した電力を蓄電できるよう接続されている。そして、ICチップ4′は電源スイッチ14を介して蓄電素子13に接続されており、ユーザはこの電源スイッチ14の接続(ON)と切断(OFF)を切り換えることによって、蓄電素子13からICチップ4′への電力の供給と停止を切り換えることができる。つまり、ICチップ4′の起動と停止を操作することができる。
したがって、この実施例のICチップ4′は、図3に示した第1実施例のICチップ4における電源整流部41を除いた構成であり、電源は蓄電素子13から電源スイッチ14を介して供給される。なお、電源スイッチ14は、図1に示したアンテナスイッチ6と同じ構造の押しバネ式スイッチを用いることができる。
【0027】
以上の構成により、この実施例のRFIDタグ11は、外部のリーダ/ライタ101からのアクセスに直ぐに応答可能であり、位置検出機能も有するアクティブ型として機能するものでありながら、電源として手動発電素子12を備えているので半永久的に使用することができ、また電池交換作業や電池交換のための分解可能な構造にする必要ないため、低コストで高い耐水性や耐塵性を実現できる。
【0028】
さらに、電源スイッチ14を備えていることにより、前述した第1実施例のRFIDタグシステムと同様な効果も得られる。
図7は、この実施例のRFIDタグ11を使用するRFIDタグシステムによって、リーダ/ライタ101側がRFIDタグ11から所定の情報を読み込んで処理する場合に、RFIDタグ11とリーダ/ライタ101側が順次行う行程を示すフローチャートである。なお、このフローチャートに示す行程のうち、ステップ201〜ステップ205がRFIDタグ11の手順を示し、その後のステップ206〜ステップ208がリーダ/ライタ101側の手順を示している。
【0029】
この場合も、リーダ/ライタ101側が図4に示したコントローラ104の制御により常にアンテナ103から電波を発信している待機状態となっており、RFIDタグ11は蓄電素子13に電圧が充電されておらず、電源スイッチ14が切断されて停止状態になっていることを前提として、図6の行程を開始する。
まず、ステップ201で、停止状態のRFIDタグ11に対し、ユーザは電源スイッチ14を切断したまま手動発電素子12を手動操作して発電させ、蓄電素子13への充電を完了させる。次にステップ202で電源スイッチを接続し、ICチップ4に電力を供給して起動させる。それによって、RFIDタグ11が外部から電波を受信可能な待機状態となる。以降、ステップ205までその状態を継続する。
【0030】
次にステップ203で、ユーザが目的のリーダ/ライタ101にRFIDタグ11を近接させ、コイルアンテナ3にリーダ/ライタ101が発信する電波を受信させる。その後、ステップ204でICチップ4は、コイルアンテナ3から受信部が受信した情報要求に応じた所定の情報をメモリから読み出して情報信号を生成し、次のステップ205で送信部がコイルアンテナ3からその情報信号に対応する電波信号を発信する。
【0031】
なお、以上のステップ201からステップ205までが、RFIDタグ11側で行われる行程であるが、上記のステップ202とステップ203の行程は逆の順序で行ってもよい。つまり、ユーザはRFIDタグ11を目的のリーダ/ライタ101に近接させてから電源スイッチを入れてもよい。その場合でも正しいシーケンスでICチップ4を起動し、リーダ/ライタ101からの情報要求信号を受信することができる。また、この場合には、ICチップ4′の起動からステップ105の電波発信までは瞬時に行われるため、ユーザは電源スイッチ14を一瞬だけ押圧すればよい。
【0032】
そして、リーダ/ライタ101側は、ステップ206でRFIDタグ11からの電波信号をアンテナ103で受信し、ステップ207でコントローラ104により情報信号に変換して、データ処理装置102へ送る。そして、ステップ208で、データ処理装置102によってその情報を処理し、RFIDタグ11の認識や管理などを行う。
【0033】
このような手順で動作するこの実施例のRFIDタグシステムによっても、第1実施例と同様な効果が得られる。特に、電波を遠くまで伝送可能なアクティブ型でありながら、移動途中における意図しないリーダ/ライタとの送受信を回避し、目的とするリーダ/ライタ101に対してだけ要求された情報を送信することができる。なお、予め蓄電素子13にICチップ4を起動できる十分な蓄電量が充電されていれば、継続して使用可能であるため、ステップ201の発電操作を省略することもできる。
【0034】
また、この第2実施例の変形例として、電源スイッチを設けずにICチップ4を蓄電素子13に直接接続した構成にしてもよい。この場合には、ICチップ4自体が蓄電素子の蓄電量を検知し、十分な蓄電量が充電された際に自動的に起動して電波を受信可能な待機状態となるようにすればよい。さらに、この変形例において、コイルアンテナ3に図1に示したアンテナスイッチ6を設けることによって、第1実施例と同じ機能及び効果が得られるアクティブ型のRFIDタグとすることもできる。
【0035】
〔第3実施例〕
次に、この発明によるRFIDタグの第3実施例及びそのRFIDタグを使用するRFIDタグシステムについて説明する。
図8は、この発明によるRFIDタグの第3実施例の構成を模式的に示す図であり、ここでは上記第1実施例のものと相違する構成のみを説明し、他の共通する構成については図1及び図6と同じ符号を付して説明を省略する。
【0036】
図8において、このRFIDタグ21は、基板カード2にアクティブ動作時用の電源である小型電池22と、機能スイッチ23とを備えており、またコイルアンテナ3にはアンテナスイッチ6を設けずに、常に電波を送受信可能なアンテナ回路を形成している。
このRFIDタグ21のICチップ4″は、図3に示した第1実施例のICチップと同様に構成されているが、機能スイッチ23を介して小型電池22にも接続されている。したがって、ユーザはこの機能スイッチ23の接続と切断を切り換えることによって、小型電池22からICチップ4″への電力の供給と停止を切り換えることができる。
なお、機能スイッチ23は、図1に示したアンテナスイッチ6と同じ構造の押しバネ式スイッチを用いることができる。
【0037】
このRFIDタグ21が最も特徴とする点は、ICチップ4″がその動作形態を切り換えできる機能を有していることであり、機能スイッチ23を接続して小型電池22から電力を供給している間はICチップ4がアクティブ型として機能し、機能スイッチ23を切断して小型電池22の電力を供給していない間は、コイルアンテナ3が受信する電波によって図3に示した電源整流部41が電力を発生して各部に供給するパッシブ型として機能する。
そのため、この実施例のRFIDタグ21はパッシブ型とアクティブ型の両方の環境に対応することができ、資源効率上のムダを少なくしてコストを削減できる効果がある。
【0038】
図9は、この第3実施例のRFIDタグ21を用いたRFIDタグシステムによって、リーダ/ライタ101側がRFIDタグ21から所定の情報を読み込んで処理する場合に、RFIDタグ21とリーダ/ライタ101側が順次行う行程を示すフローチャートである。なお、このフローチャートに示す行程のうち、ステップ301からステップ305及びステップ309,310がRFIDタグ21の手順を示し、その他のステップ306からステップ308がリーダ/ライタ101側の手順を示している。
【0039】
この場合も、リーダ/ライタ101側がコントローラ104の制御により常にアンテナ103から電波を発信している待機状態となっており、RFIDタグ21は、機能スイッチ23が切断されてパッシブ型の停止状態となっているものとする。
この状態で図8の行程を開始すると、まずステップ301で、RFIDタグ21側のユーザが機能スイッチ23を接続するか否かによって、パッシブ型とアクティブ型のいずれかの動作形態が選択される。
【0040】
機能スイッチ23を切断したままでパッシブ型を選択した場合には、ステップ302へ進み、ユーザが目的のリーダ/ライタ101にRFIDタグ21を近接させて、RFIDタグ21のコイルアンテナ3にリーダ/ライタ101から発信する特定の周波数の電波を受信させる。それによって次のステップ303で、コイルアンテナ3に電磁誘導作用による起電力が生じ、ICチップ4″の電源整流部が電力を発生して各部に供給してパッシブ型としてICチップ4″が起動する。そして、ステップ304でコイルアンテナ3から受信部が情報要求を受信し、その情報要求に応じた所定の情報をメモリから読み出して情報信号を生成する。そして、次のステップ305でRFIDタグ21の送信部がコイルアンテナ3からその情報に対応する電波信号を発信する。
【0041】
そして、リーダ/ライタ101側は、ステップ306でRFIDタグ21からの電波信号をアンテナ103で受信し、ステップ107でコントローラ104により情報信号に変換して、データ処理装置102へ送る。それによって、ステップ108でデータ処理装置102がその情報を処理して、RFIDタグ21の認識や管理などを行う。
【0042】
一方、ステップ301で機能スイッチ23を接続してアクティブ型を選択した場合には、ステップ309へ進んでICチップ4″に小型電池22の電力が供給され、ICチップ4″がアクティブ型として起動する。そして、次のステップ310で、ユーザがRFIDタグ21を目的のリーダ/ライタ101に近接させて、コイルアンテナ3にそのリーダ/ライタ101からの電波を受信させて、ステップ304以降の行程を順次行う。
【0043】
この実施例のRFIDタグシステムによれば、RFIDタグ21でパッシブ型とアクティブ型を一体化し、機能スイッチ23の操作により両方の環境に対応する動作状態に切り換えることができる。また、このような使い分けによりリーダ/ライタとの距離をある程度制御することが可能になり、セキュリティを向上させることができる。
【0044】
以上で各実施例の説明を終了するが、上述の各実施例に共通して、各部の仕様や構成は上述したものに限定されることはなく、この発明の主旨に沿う範囲内で種々の変更をすることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0045】
この発明によるRFIDタグは、例えばカード型やコイン型など形状には関係なく、また回路は埋め込み式、貼り付け式などその構造についても特に制約となるものはない。そして、製造、流通、販売などの各業界において物品を管理したり、搬送する際などに使用するさまざまなRFIDタグ及びRFIDタグシステムに適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】この発明によるRFIDタグの第一実施例の構成を模式的に示す平面図である。
【図2】同じくそのA−A線に沿う断面図である。
【図3】図1及び図2におけるICチップ4の構成例を示すブロック図である。
【図4】図1及び図2に示したRFIDタグを用いるRFIDタグシステムの概略構成図である。
【0047】
【図5】同じくそのRFIDタグシステムにおけるRFIDタグとリーダ/ライタ側が順次行う行程の例を示すフローチャートである。
【図6】この発明によるRFIDタグの第2実施例の構成を模式的に示す平面図である。
【図7】同じくそのRFIDタグシステムにおけるRFIDタグとリーダ/ライタ側が順次行う行程の例を示すフローチャートである。
【0048】
【図8】この発明によるRFIDタグの第3実施例の構成を模式的に示す平面図である。
【図9】同じくそのRFIDタグシステムにおけるRFIDタグとリーダ/ライタ側が順次行う行程の例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0049】
1,11,21:RFIDタグ 2:基板カード 3:コイルアンテナ(アンテナ回路) 4,4′,4″:ICチップ(メモリIC) 5:ブリッジ 6:アンテナスイッチ 6a:接点 6b:押し板 12:手動発電素子(電源部) 13:蓄電素子 14:電源スイッチ 22:小型電池(電源部) 23:機能スイッ
41:電源整流部 42:メモリ 43:受信部 44:送信部 101:リーダ/ライタ 102:データ処理装置 103:アンテナ 104:コントローラ



【特許請求の範囲】
【請求項1】
メモリIC及びアンテナ回路を備えたパッシブ型のRFIDタグであって、
前記アンテナ回路に手動で接続と切断を切り換え可能なアンテナスイッチを設けたことを特徴とするRFIDタグ。
【請求項2】
メモリIC、アンテナ回路及び電源部を備えたアクティブ型のRFIDタグであって、
前記電源部が手動の発電手段を有することを特徴とするRFIDタグ。
【請求項3】
請求項2記載のRFIDタグであって、
前記電源部から前記メモリICへの電力の供給と停止を切り換え可能な電源スイッチを設けたことを特徴とするRFIDタグ。
【請求項4】
メモリIC、アンテナ回路及び電源部を備えたRFIDタグであって、
前記電源部から前記メモリICへ電力を供給してアクティブ型として機能させる状態と、前記電源部と前記メモリICとを切断してパッシブ型として機能させる状態とを切り換える機能切換スイッチを設けたことを特徴とするRFIDタグ。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のRFIDタグと、該RFIDタグとの間で電波の送受信を行うリーダ/ライタと、該リーダ/ライタで受信した情報を処理するデータ処理装置とからなることを特徴とするRFIDタグシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−41817(P2007−41817A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−224763(P2005−224763)
【出願日】平成17年8月2日(2005.8.2)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】