説明

RFIDメディア

【課題】簡易な構造で誤動作を回避しながらも盗難や紛失時の不正使用を防止する。
【解決手段】情報の書き込みや読み出しが行われるICチップ111に電流を供給するアンテナ112に断線部115を設け、この断線部115と対向する領域に、断線部115を導通させるための導通パターン131を断線部115に対して中間層120aの厚さ分の空隙を介して設ける。また、アンテナ112に設けられた短絡発生部116a〜116hと対向する領域に、短絡発生部116a〜116hを電気的に短絡させるための短絡パターン132a〜132dを短絡発生部116a〜116hに対して中間層120aの厚さ分の空隙を介して設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触状態にて情報の書き込みや読み出しが可能な非接触型ICカード等のRFIDメディアに関し、特に、盗難や紛失時の不正使用を防止する構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報化社会の進展に伴って、情報をカードに記録し、該カードを用いた情報管理や決済等が行われている。
【0003】
このような情報管理や決済等に用いられるカードは、ICチップが内蔵されたICカードや、磁気により情報が書き込まれた磁気カード等があり、専用の装置を用いて情報の書き込みや読み出しが行われる。
【0004】
さらに、ICカードにおいては、情報の書き込みや読み出しを専用の装置に接触させることにより行う接触型ICカードと、専用の装置に近接させるだけで情報の書き込みや読み出しを行うことができる非接触型ICカードがある。これらのICカードは、磁気カードと比較してセキュリティ性が高いとともに書き込み可能な情報量が多く、また、1枚のカードを多目的に使用できるため、市場における普及度は増加の一途を辿っている。また、その中でも、非接触型ICカードにおいては、情報の書き込みや読み出しを行う際、カードを取り出して専用の装置に挿入する必要がなく取り扱いに便利なため、そのカード及び該カードに書き込まれた情報を読み取るための装置の急速な普及が進みつつある。
【0005】
図7は、従来の非接触型ICカードの構造の一例を示す図であり、(a)は表面図、(b)は内部構造を示す図、(c)は(b)に示したA−A’断面図である。
【0006】
本従来例は図7に示すように、樹脂シート514上に導電性材料からなるコイル状のアンテナ512が形成されるとともにICチップ511が搭載されたインレット510が、中間層520a,520b及び表面シート530a,530bに挟み込まれて構成されている。ICチップ5111は、非接触状態にて情報の書き込みや読み出しが可能なものであって、接点513を介してアンテナ512と接続されている。また、インレット510と中間層520a,520b、並びに、中間層520a,520bと表面シート530a,530bとはそれぞれ接着剤層(不図示)によって互いに接着されている。
【0007】
上記のように構成された非接触型ICカード500においては、外部に設けられた情報書込/読出装置(不図示)に近接させることにより、情報書込/読出装置からの電磁誘導によってアンテナ512に電流が流れ、この電流がICチップ511に供給され、それにより、非接触状態において、情報書込/読出装置からICチップ511に情報が書き込まれたり、ICチップ511に書き込まれた情報が情報書込/読出装置にて読み出されたりする。
【0008】
ここで、上述したような非接触型ICカードにおいては、厚さが薄くかつ小型であるため、携帯しやすい反面、紛失や盗難に合う可能性が高い。非接触型ICカードは、上述したように情報管理や決済等に用いられるため、盗難や紛失に合って不正に使用された場合、その被害は大きなものとなってしまう。
【0009】
そこで、予め決められた暗証番号や暗証記号、あるいは指紋等といった利用者を識別可能な情報が入力された場合にのみ動作する非接触型ICカードが考えられている(例えば、特許文献1参照。)。この非接触型ICカードにおいては、通常はカードの電子回路内に設けられた阻止回路によってカードを使用不可能な状態としておき、入力ボタンを介して入力された暗証番号や暗証記号、あるいは指紋センサーにて読み取られた指紋が予め登録されているものである場合に、カードの電子回路内に設けられた正常状態持続機構から阻止回路に対して電子回路を正常な状態とする信号が出力され、それにより、カードが使用可能な状態となる。また、この非接触型ICカードにおいては、上述したような利用者を識別可能な情報が誤動作により入力されることを回避するために、起動スイッチが凹み部分に設けられている。これは、非接触型ICカードが、他のカードと重ね合わされたりポケット等に入れられたりして持ち歩かれるという性質からそれによる誤動作を回避するためのものである。
【特許文献1】特開2006−72814号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述したように、利用者を識別可能な情報が入力された場合に、内部の電子回路の制御によって利用可能とする非接触型ICカードのようなRFIDメディアにおいては、暗証番号や暗証記号等を入力するための入力ボタンや、指紋を読み取らせるための指紋センサーを設ける必要が生じ、その構造が複雑になってしまうとともに製造コストが増大してしまうという問題点がある。また、内部の電子回路に上述したような制御を行わせるための機能を持たせる必要があり、これについても製造コストが増大する要因となる。
【0011】
本発明は、上述したような従来の技術が有する問題点に鑑みてなされたものであって、簡易な構造で誤動作を回避しながらも盗難や紛失時の不正使用を防止することができるRFIDメディアを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために本発明は、
導電性パターンが形成されるとともに該導電性パターンを介して電流が供給されることにより非接触状態にて情報の書き込み及び/または読み出しが可能なICチップが搭載されてなるメイン基材部と、該メイン基材部の少なくとも導電性パターンが形成された面に積層されたサブ基材部とを有するRFIDメディアにおいて、
前記導電性パターンは、少なくとも一部に断線部を有し、
前記サブ基材部は、
前記断線部と対向する領域に当該断線部に対して空隙を介して設けられ、当該断線部を導通させるための導通手段と、
前記導電性パターン上の2つの領域に空隙を介して対向して設けられ、当該2つの領域を電気的に短絡するための短絡手段とを有することを特徴とする。
【0013】
上記のように構成された本発明においては、通常、外力が加わっていない状態においては、情報が書き込まれたり読み出されたりするICチップに電流を供給するための導電性パターンが断線部において断線し、かつ、この断線部を導通させるためにサブ基材部に設けられた導通手段が、断線部に対して空隙を介して配置されて導電性パターンと接触していないため、この状態において、ICチップに対して情報の書き込みや読み出しを行う情報書込/読出装置に近接させてもICチップに対する情報の書き込みや読み出しは行われない。一方、サブ基材部の導通手段が設けられた領域が押下されると、導通手段が導電性パターンの断線部を挟んで対向する端部にそれぞれ接触し、それにより、導電性パターンが導通する。導電性パターンが導通した状態で、ICチップに対して情報の書き込みや読み出しを行う情報書込/読出装置に近接させると、導電性パターンを介してICチップに電流が供給され、ICチップに対する情報の書き込みや読み出しが行われることになる。ここで、サブ基材部の導通手段が設けられた領域が意識的に押下されるのではなく、サブ基材部の全面に外力が加わり、サブ基材部の導通手段が設けられた領域が押下されるとともに、サブ基材部の短絡手段が設けられた領域が押下された場合は、導電性パターン上の2つの領域が短絡手段によって電気的に短絡して導電性パターンによる通信特性が変化し、この状態において、ICチップに対して情報の書き込みや読み出しを行う情報書込/読出装置に近接させてもICチップに対する情報の書き込みや読み出しは行われない。
【0014】
このように、サブ基材部の導通手段が設けられた領域のみが局所的に押下された場合にのみICチップに対する情報の書き込みや読み出しが行われることになるので、サブ基材部の導通手段が設けられた領域をこのRFIDメディアの正当な所有者のみが認識していれば、簡易な構造で誤動作を回避しながらも盗難や紛失時の不正使用を防止することができる。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように本発明においては、情報が書き込まれたり読み出されたりするICチップに電流を供給するための導電性パターンが断線部にて断線し、この断線部と対向する領域に断線部を導通させるための導通手段が断線部に対して空隙を介して設けられた構成としたため、通常、外力が加わっていない状態においては、導通手段が導電性パターンと接触していないことで導電性パターンが断線しており、ICチップに対する情報の書き込みや読み出しが行われず、また、サブ基材部の導通手段が設けられた領域が押下されると、導通手段が導電性パターンの断線部を挟んで対向する端部にそれぞれ接触して導電性パターンが導通し、ICチップに対する情報の書き込みや読み出しが行われることになり、それにより、サブ基材部の導通手段が設けられた領域をRFIDメディアの正当な所有者のみが認識していれば、簡易な構造で盗難や紛失時の不正使用を防止することができる。また、導電性パターン上の2つの領域と対向する領域に、この2つの領域を電気的に短絡するための短絡手段が2つの領域に対して空隙を介して設けられた構成としたため、サブ基材部の導通手段が設けられた領域が意識的に押下されるのではなく、サブ基材部の全面に外力が加わった場合、導電性パターン上の2つの領域が電気的に短絡して導電性パターンによる通信特性が変化し、ICチップに対する情報の書き込みや読み出しが行われなくなり、誤動作を回避することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0017】
図1は、本発明のRFIDメディアの実施の一形態となる非接触型ICカードの一例を示す図であり、(a)は表面図、(b)は内部構造を示す図、(c)は(b)に示したA−A’断面図、(d)は(b)に示したB−B’断面図である。また、図2は、図1に示した非接触型ICカード100の積層状態を示す図であり、(a)はインレット110上に中間層120aが積層された状態を示す図、(b)は中間層120a上に表面シート130aが積層された状態を示す図である。
【0018】
本形態は図1に示すように、樹脂シート114上に導電性材料からなる導電性パターンであるコイル状のアンテナ112が形成されるとともにICチップ111が搭載されたメイン基材部であるインレット110と、サブ基材部である中間層120a,120b及び表面シート130a,130bとが積層されて構成され、インレット110が、中間層120a,120b及び表面シート130a,130bに挟み込まれている。ICチップ111は、非接触状態にて情報の書き込みや読み出しが可能なものであって、接点113を介してアンテナ112と接続されている。なお、アンテナ112は、コイル状の両端がICチップ111と接続されることになるため、両端のうち一端においてはコイル状の外周側からアンテナ112の他の領域を跨いでコイル状の内周側に導かれ、ICチップ111と接続される。そのため、実際には、アンテナ112の跨がれる領域上に絶縁層が設けられ、その上にてアンテナ112がコイル状の外周側から内周側に導かれることになるが、本形態においてはその図示を省略する。また、アンテナ112は、その一部にパターンが断線した断線部115を有しているとともに、コイル形状から突出するように形成された短絡発生部116a〜116hを有している。この短絡発生部116a〜116hのそれぞれは、短絡発生部116aと短絡発生部116bとが空隙を有して互いに対向するように形成され、また、短絡発生部116cと短絡発生部116dとが空隙を有して互いに対向するように形成され、また、短絡発生部116eと短絡発生部116fとが空隙を有して互いに対向するように形成され、また、短絡発生部116gと短絡発生部116hとが空隙を有して互いに対向するように形成されている。これにより、短絡発生部116aと短絡発生部116b、短絡発生部116cと短絡発生部116d、短絡発生部116eと短絡発生部116f、並びに短絡発生部116gと短絡発生部116hとはそれぞれ、アンテナ112を構成するコイル形状の約1周分の距離を介して配置されている。そして、これら短絡発生部116aと短絡発生部116b、短絡発生部116cと短絡発生部116d、短絡発生部116eと短絡発生部116f、並びに短絡発生部116gと短絡発生部116hとがそれぞれ、コイル形状の約1周分の距離を介して配置された状態で断線部115が導通すると、ICチップ111に対する情報の書き込みや読み出しが可能となるようにアンテナ112の形状が設計されている。また、インレット110と中間層120a,120b、並びに、中間層120a,120bと表面シート130a,130bとはそれぞれ接着剤層(不図示)によって互いに接着されている。
【0019】
表面シート130aは、図1(a)に示すように表面に情報が印字され、また、裏面には、図1(c)及び図2(b)に示すように、アンテナ112の断線部115に対向する領域に導通手段となる導通パターン131が形成されている。この導通パターン131の長さは、断線部115にて断線されたアンテナ112の端部間の間隔よりも若干長くなっており、それにより、表面シート130aのこの領域がインレット110に当接すると、導通パターン131が断線部115にて断線されたアンテナ112の端部にそれぞれ接触し、断線部115を導通させることができる。また、図1(d)及び図2(b)に示すように、アンテナ112に形成された短絡発生部116a〜116hに対向する領域に短絡手段である短絡パターン132a〜132dが形成されている。具体的には、短絡発生部116a,116bに対向する領域に短絡パターン132aが形成され、短絡発生部116c,116dに対向する領域に短絡パターン132bが形成され、短絡発生部116e,116fに対向する領域に短絡パターン132cが形成され、短絡発生部116g,116hに対向する領域に短絡パターン132dが形成されている。この短絡パターン132a〜132dの長さは、互いに対向する短絡発生部116a〜116h間の間隔よりも若干長くなっており、それにより、表面シート130aのこの領域がインレット110に当接すると、短絡パターン132a〜132dが短絡発生部116a〜116hにそれぞれ接触し、互いに対向する短絡発生部116a〜116hが短絡パターン132a〜132dによって電気的に短絡することになる。なお、表面シート130aは、透明ではない材料から構成されており、表面から導通パターン131及び短絡パターン132a〜132d、並びに短絡発生部116a〜116hを含むアンテナ112が視認不可能となっている。
【0020】
中間層120aは、インレット110と表面シート130aとの間に介在し、図1(c)及び図2に示すように、アンテナ112の断線部115及び表面シート130aに形成された導通パターン131と対向する領域に穴部121が設けられており、それにより、導通パターン131が、断線部115に対して中間層120aの厚さ分の空隙を介して配置された状態となっている。この穴部121の大きさは、断線部115及び導通パターン131を含むような大きさであり、それにより、表面シート130aの穴部121に対向する領域がインレット110に当接すると、導通パターン131と断線部115にて断線されたアンテナ112の端部とを接触させることができるようになっている。また、図1(d)及び図2に示すように、アンテナ112の短絡発生部116a〜116h及び表面シート130aに形成された短絡パターン132a〜132dと対向する領域に穴部122a〜122dがそれぞれ設けられている。具体的には、短絡発生部116a,116b及び短絡パターン132aと対向する領域に穴部122aが設けられ、また、短絡発生部116c,116d及び短絡パターン132bと対向する領域に穴部122bが設けられ、また、短絡発生部116e,116f及び短絡パターン132cと対向する領域に穴部122cが設けられ、また、短絡発生部116g,116h及び短絡パターン132dと対向する領域に穴部122dが設けられている。これにより、短絡パターン132a〜132dが、短絡発生部116a〜116hに対して中間層120aの厚さ分の空隙を介して配置された状態となっている。この穴部122a〜122dの大きさはそれぞれ、短絡発生部116a〜116h及び短絡パターン132a〜132dを含むような大きさであり、それにより、表面シート130aの穴部122a〜122dに対向する領域がインレット110に当接すると、短絡パターン132a〜132dと短絡発生部116a〜116hとをそれぞれ接触させることができるようになっている。
【0021】
以下に、上記のように構成された非接触型ICカード100の使用方法について説明する。
【0022】
図3は、図1に示した非接触型ICカードの使用方法を説明するための図であり、(a)は外力が加わっていない状態における断面図、(b)は導通パターン131が形成された領域が表面シート130a側から押下された状態を示す図、(c)は導通パターン131が形成された領域が表裏から挟み込まれることにより押下された状態を示す図である。
【0023】
上記のように構成された非接触型ICカード100においては、通常、外力が加わっていない状態においては、図3(a)に示すように、表面シート130aがフラットな状態となっており、表面シート130aの裏面に形成された導通パターン131は、中間層120aの厚さ分の空隙を介してアンテナ112の断線部115と対向している。そのため、ICチップ111に電流を供給するためのアンテナ112が断線部115において断線しており、この状態において、ICチップ111に対して情報の書き込みや読み出しを行う情報書込/読出装置に近接させてもICチップ111に対する情報の書き込みや読み出しは行われない。
【0024】
この状態から、表面シート130aのうち裏面に導通パターン131が形成された領域が押下されると、その領域においては、中間層120aが穴部121となっていることにより、図3(b)に示すように、表面シート130aが撓み、表面シート130aとインレット110の樹脂シート114とが当接する。この領域においては、表面シート130aには導通パターン131が形成されており、また、樹脂シート114上には、断線部115及びこれによって断線したアンテナ112の端部が存在している。そのため、表面シート130aの裏面に形成された導通パターン131が、アンテナ112の断線部115を挟んで対向する端部にそれぞれ接触し、それにより、アンテナ112が導通する。この状態で、ICチップ111に対して情報の書き込みや読み出しを行う情報書込/読出装置に近接させると、情報書込/読出装置からの電磁誘導によりアンテナ112に電流が流れ、この電流が接点113を介してICチップ111に供給され、それにより、非接触状態において、情報書込/読出装置からICチップ111に情報が書き込まれたり、ICチップ111に書き込まれた情報が情報書込/読出装置にて読み出されたりする。
【0025】
また、導通パターン131が形成された領域が表裏から挟み込まれることにより押下されると、表面シート130a側のその領域においては、中間層120aが穴部121となっていることにより、上述したものと同様に、図3(c)に示すように、表面シート130aが撓み、表面シート130aとインレット110の樹脂シート114とが当接する。そして、上記同様に、情報書込/読出装置に近接させると、非接触状態において、情報書込/読出装置からICチップ111に情報が書き込まれたり、ICチップ111に書き込まれた情報が情報書込/読出装置にて読み出されたりする。
【0026】
上述したように、導通パターン131が形成された領域が押下された場合にのみ、ICチップ111に対する情報の書き込みや読み出しが行われることになるが、上述したように、表面シート130aが透明ではない材料から構成されていることから導通パターン131及びアンテナ112が外部から視認不可能となっているため、この非接触型ICカード100が不正に使用されようとした場合であっても、導通パターン131が形成された領域が押下されず、ICチップ111に対する情報の書き込みや読み出しが行われることはない。なお、このように、表面シート130aが透明ではない材料から構成されていることにより導通パターン131及びアンテナ112を外部から視認不可能とするのではなく、表面シート130aの表面に印刷を施すことにより導通パターン131及びアンテナ112を外部から視認不可能とすることも考えられる。また、表面シート130bについても同様に、透明ではない材料から構成したり、表面に印刷を施したりすることにより、導通パターン131及びアンテナ112を外部から視認不可能としている。
【0027】
ここで、導通パターン131及びアンテナ112が外部から視認不可能であるだけでは、同一種類の非接触型ICカード100を所有する利用者による不正使用は、不正に使用しようとする非接触型ICカード100の断線部115及び導電パターン131の位置が認識されているために回避することはできない。そこで、断線部115及び導通パターン131の位置を非接触型ICカード100毎に異なるようにすることにより、正当な使用者以外の者による不正使用を確実に回避することができるようになる。
【0028】
次に、上述した非接触型ICカード100に対して、導通パターン131が形成された領域が意識的に押下されるのではなく、表面シート130aの全面に外力が加わることにより、導通パターン131が形成された領域が押下された場合の作用について説明する。
【0029】
図4は、図1に示した非接触型ICカード100に対して表面シート130aの全面に外力が加わった場合の作用を説明するための図であり、(a)は導通パターン131が形成された領域のみが押下された状態を示す断面図、(b)は(a)に示した状態における回路構造を示す図、(c)は表面シート130aの全面に外力が加わった状態を示す断面図、(d)は(c)に示した状態における回路構造を示す図である。なお、図4(a),(c)においては、短絡パターン132a及び短絡発生部116a,116bが形成された領域のみを示しているが、その他の短絡パターン132b〜132d及び短絡発生部116c〜116hが形成された領域も同様の作用が生じるものとする。
【0030】
図1に示した非接触型ICカード100に対して、導通パターン131が形成された領域のみが押下され、他の領域に外力が加わっていない状態においては、図4(a)に示すように、表面シート130aの短絡パターン132a〜132dが形成された領域がフラットな状態となっており、表面シート130aの裏面に形成された短絡パターン132a〜132dは、中間層120aの厚さ分の空隙を介してアンテナ112の短絡発生部116a〜116hとそれぞれ対向している。そのため、図4(b)に示すように、短絡発生部116aと短絡発生部116b、短絡発生部116cと短絡発生部116d、短絡発生部116eと短絡発生部116f、並びに短絡発生部116gと短絡発生部116hとはそれぞれ、アンテナ112を構成するコイル形状の約1周分の距離を介して配置された状態となっている。ここで、この非接触型ICカード100は、上述したように、短絡発生部116aと短絡発生部116b、短絡発生部116cと短絡発生部116d、短絡発生部116eと短絡発生部116f、並びに短絡発生部116gと短絡発生部116hとがそれぞれ、コイル形状の約1周分の距離を介して配置された状態で断線部115が導通した場合に、ICチップ111に対する情報の書き込みや読み出しが可能となるようにアンテナ112の形状が設計されているため、この状態で、ICチップ111に対して情報の書き込みや読み出しを行う情報書込/読出装置に近接させると、情報書込/読出装置からの電磁誘導によりアンテナ112に電流が流れ、この電流が接点113を介してICチップ111に供給され、それにより、非接触状態において、情報書込/読出装置からICチップ111に情報が書き込まれたり、ICチップ111に書き込まれた情報が情報書込/読出装置にて読み出されたりする。
【0031】
一方、表面シート130aの全面に外力が加わった場合は、導通パターン131が形成された領域が押下されて導通パターン131によって断線部115が導通することになるが、短絡パターン132a〜132dが形成された領域においても、中間層120aが穴部122a〜122dとなっていることにより、図4(c)に示すように、表面シート130aが撓み、表面シート130aとインレット110の樹脂シート114とが当接する。この領域においては、表面シート130aには短絡パターン132a〜132dが形成されており、また、樹脂シート114上には、空隙を介して互いに対向する短絡発生部116a〜116hが形成されている。そのため、表面シート130aの裏面に形成された短絡パターン132a〜132dが短絡発生部116a〜116hにそれぞれ接触し、図4(d)に示すように、短絡発生部116aと短絡発生部116bとが短絡パターン132aによって電気的に短絡し、また、短絡発生部116cと短絡発生部116dとが短絡パターン132bによって電気的に短絡し、また、短絡発生部116eと短絡発生部116fとが短絡パターン132cによって電気的に短絡し、また、短絡発生部116gと短絡発生部116hとが短絡パターン132dによって電気的に短絡し、これらは短絡パターン132a〜132dによって互いの間隔を介して電気的に接続された状態となる。ここで、この非接触型ICカード100は、上述したように、短絡発生部116aと短絡発生部116b、短絡発生部116cと短絡発生部116d、短絡発生部116eと短絡発生部116f、並びに短絡発生部116gと短絡発生部116hとがそれぞれ、コイル形状の約1周分の距離を介して配置された状態で断線部115が導通した場合に、ICチップ111に対する情報の書き込みや読み出しが可能となるようにアンテナ112の形状が設計されているため、短絡発生部116aと短絡発生部116b、短絡発生部116cと短絡発生部116d、短絡発生部116eと短絡発生部116f、並びに短絡発生部116gと短絡発生部116hとがそれぞれ、互いの間隔を介して接続された状態で断線部115が導通した場合は、その通信特性が変化することになり、ICチップ111に対して情報の書き込みや読み出しを行う情報書込/読出装置に近接させてもICチップ111に対する情報の書き込みや読み出しは行われない。
【0032】
このように、表面シート130aの導通パターン131が形成された領域のみが局所的に押下された場合にのみICチップ111に対する情報の書き込みや読み出しが行われ、表面シート130aの全面に外力が加わった場合にはICチップ111に対する情報の書き込みや読み出しが行われないため、表面シート130aの全面に外力が加わった場合における誤動作を回避することができる。また、上述したように表面シート130aのうち短絡パターン132a〜132dが形成された4つの領域の全てが押下された場合に限らず、短絡パターン132a〜132dが形成された4つの領域のうち少なくとも1つの領域が押下され、その領域における2つの短絡発生部が短絡パターンによって電気的に短絡されれば、上記同様に、アンテナ112による通信特性が変化してICチップ111に対する情報の書き込みや読み出しが行われなくなる。
【0033】
以下に、上述した非接触型ICカード100を認証システムに用いた例について説明する。
【0034】
図5は、図1に示した非接触型ICカード100を用いて認証を行う認証システムの一例を示す図である。
【0035】
本例における認証システムは図5に示すように、図1に示した非接触型ICカード100のICチップ111に書き込まれた情報を非接触状態にて読み出す情報読出手段であるRFIDリーダ1と、RFIDリーダ1の情報読み出し領域に存在する非接触型ICカード100を検知する対物検知手段である対物センサー2と、対物センサー2における検知結果とRFIDリーダ1における非接触型ICカード100からの情報の読み出し結果とに基づいて認証を行うパーソナルコンピュータ等の制御装置3とから構成されている。
【0036】
このように構成された認証システムは、例えば、セキュリティコントロールが必要とされる建物の入り口に設置されて入退室管理に利用され、予め登録された非接触型ICカードの所有者のみを建物の入り口から入場可能とするセキュリティコントロール手段として利用される。以下にその認証方法について説明する。
【0037】
図6は、図5に示した認証システムにおける認証方法を説明するためのフローチャートである。
【0038】
対物センサー2においては、監視領域内に物体が存在するかどうかが監視されることになるが、本例における対物センサー2は、RFIDリーダ1における非接触型ICカード100からの情報読み出し領域を監視領域としているため、RFIDリーダ1の情報読み出し領域に非接触型ICカード100が存在しているかどうかが対物センサー2により常時監視されている(ステップS1)。
【0039】
対物センサー2によってRFIDリーダ1の情報読み出し領域に非接触型ICカード100が存在することが検知されると(ステップS2)、RFIDリーダ1の情報読み出し領域に非接触型ICカード100が存在する旨を示す対物読み取りフラグが対物センサー2から制御装置3に通知される(ステップS3)。
【0040】
すると、制御装置3において、カウンタが起動してカウント動作が開始されるとともに(ステップS4)、RFIDリーダ1に対して、情報読み出し領域に対する情報の読み出し命令が通知される(ステップS5)。
【0041】
RFIDリーダ1においては、制御装置3から情報の読み出し命令が通知されると、RFIDリーダ1の情報読み出し領域に対する情報の読み出し動作が開始され、情報読み出し領域に存在する非接触型ICカード100から読み出された情報が制御装置3に通知される。なお、RFIDリーダ1にて上述した情報の読み出し動作が常時行われ、制御装置3において、対物センサー2から対物読み取りフラグが通知された場合に、RFIDリーダ1にて読み出された情報を取得する構成とすることも考えられる。
【0042】
制御装置3においては、RFIDリーダ1から通知されてきた情報が、所定の情報であるかどうかが確認される(ステップS6)。ここで、所定の情報とは、この認証システムにて入場が制限される建物に入場が許可された利用者が所有する非接触型ICカード100のICチップ111に書き込まれた情報である。そのため、非接触型ICカード100には、例えば、所有者を識別可能な情報が書き込まれており、一方、制御装置3においては、入場が制限される建物に入場が許可された利用者を識別可能な情報が管理されており、制御装置3において、RFIDリーダ1から通知されてきた情報と、予め管理されている情報とが照合されることになる。
【0043】
RFIDリーダ1から通知されてきた情報が所定の情報である場合、制御装置3において、RFIDリーダ1に非接触型ICカード100を翳した利用者が、建物に入場が許可された利用者であると判断され(ステップS7)、建物の入り口が開錠される等といった制御が行われる。ここで、この認証システムに図1に示した非接触型ICカード100を用いた場合は、図3(b)に示したように表面シート130aのうち裏面に導通パターン131が形成された領域のみが押下されるか、あるいは、図3(c)に示したように導通パターン131が形成された領域のみが表裏から挟み込まれることにより押下されるかした場合にのみ、ICチップ111に書き込まれた情報が読み出されることになる。この導通パターン131が形成された領域は、非接触型ICカード100の正当な所有者のみに、所有者がこのカードを取得した際に説明書等によって知らされているため、RFIDリーダ1にて所定の情報が読み出されたということは、RFIDリーダ1に非接触型ICカード100を翳した利用者が、建物に入場が許可された利用者であることになる。
【0044】
一方、RFIDリーダ1から制御装置3に情報が通知されてきていない、あるいはRFIDリーダ1から通知されてきた情報が所定の情報ではない場合は、制御装置3において、カウンタによるカウント値が予め決められたカウント値になったかどうかが判断され(ステップS8)、カウント値が予め決められたカウント値になった場合、この認証システムに対するアクセスが失敗したものとしてその失敗回数がカウントされる(ステップS9)。ここで、この認証システムに図1に示した非接触型ICカード100を用いた場合は、図3(b)に示したように表面シート130aのうち裏面に導通パターン131が形成された領域のみが押下されるか、あるいは、図3(c)に示したように導通パターン131が形成された領域のみが表裏から挟み込まれることにより押下されるかしないと、ICチップ111に書き込まれた情報は読み出されない。そのため、建物に入場が許可された利用者が所有する非接触型ICカード100がRFIDリーダ1に翳された場合であっても、その正当な所有者でなければ、導通パターン131が形成された領域がわからず、ICチップ111からは情報が読み出されないことになる。また、導通パターン131が形成された領域がわからない状態で、導通パターン131を、アンテナ112の断線部115を挟んで対向する端部にそれぞれ接触させるために表面シート130aの全面に外力を加えた場合は、導通パターン131がアンテナ112の断線部115を挟んで対向する端部にそれぞれ接触するものの、図4(d)に示したように、短絡発生部116a〜116hが短絡パターン132a〜132dによって短絡して通信特性が変化し、ICチップ111からは情報が読み出されないことになる。
【0045】
そして、その失敗回数が所定数を超えた場合(ステップS10)、制御装置3において、RFIDリーダ1に翳されているカードは、建物に入場が許可された利用者でない者によって不正に使用されているもの、あるいは建物に入場が許可されていない利用者が所有するものであると判断され、建物の入り口が開錠される等といった制御が行われず、警報が出力される(ステップS11)。
【0046】
このようにして、建物に入場が許可された利用者が非接触型ICカード100をRFIDリーダ1に翳した場合に入り口が開錠される等といった制御が行われ、建物に入場が許可された利用者が所有する非接触型ICカード100を建物への入場が許可されていない利用者がRFIDリーダ1に翳しても入り口が開錠される等といった制御が行われないという入退室管理を行うことができるが、その実現手段が、インレット110のアンテナ112の一部を断線させるとともに、この断線部115に対向する領域に導通パターン131を形成するものであるため、アンテナ112の形成時に任意の位置に断線部115を設け、それに対向する領域に導通パターン131を形成するという簡易な構成で、上述したように非接触型ICカード100の不正利用を防止することができる。
【0047】
なお、本形態においては、短絡発生部116a〜116hがアンテナ112のコイル形状から突出するように形成されているが、コイル形状から突出している必要はなく、また、短絡パターン132a〜132dによって短絡される2つの短絡発生部となる領域も互いに対向している必要はなく、アンテナ112のうち、2つの短絡発生部となる領域が、短絡パターンによって電気的に短絡されるような構成であればよい。
【0048】
また、本形態においては、インレット110が、サブ基材部となる中間層120a,120b及び表面シート130a,130bに挟み込まれた構成としているが、インレット110のアンテナ112が形成された面のみに中間層及び表面シートが積層された構成であってもよい。
【0049】
また、本形態においては、情報書込/読出装置に近接させることにより、情報書込/読出装置からの電磁誘導によってアンテナ112に電流が流れ、この電流がICチップ111に供給され、それにより、非接触状態において、情報書込/読出装置からICチップ111に情報が書き込まれたり、ICチップ111に書き込まれた情報が情報書込/読出装置にて読み出されたりするものを例に挙げて説明したが、本発明はこれに限らず、情報書込/読出装置からの電波に共振してアンテナに電流が発生し、この電流がICチップに供給されることにより、情報書込/読出装置からICチップに情報が書き込まれたり、ICチップに書き込まれた情報が情報書込/読出装置にて読み出されたりするものにおいても適用することができる。この場合、例えば、2つの導体からなるアンテナがICチップに接続されたものが考えられるが、上述した短絡発生部をこの2つの導体にそれぞれ設け、短絡パターンによって2つの導体を電気的に短絡する構成とすればよい。
【0050】
また、本形態においては、非接触状態にて情報の書き込み及び/または読み出しが可能なRFIDメディアとして非接触型ICカードを例に挙げて説明したが、本発明は、非接触型ICカードに限らず、非接触型ICタグや非接触型ICラベル等であっても適用することができることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明のRFIDメディアの実施の一形態となる非接触型ICカードの一例を示す図であり、(a)は表面図、(b)は内部構造を示す図、(c)は(b)に示したA−A’断面図、(d)は(b)に示したB−B’断面図である。
【図2】図1に示した非接触型ICカードの積層状態を示す図であり、(a)はインレット上に中間層が積層された状態を示す図、(b)は中間層上に表面シートが積層された状態を示す図である。
【図3】図1に示した非接触型ICカードの使用方法を説明するための図であり、(a)は外力が加わっていない状態における断面図、(b)は導通パターンが形成された領域が一方の表面シート側から押下された状態を示す図、(c)は導通パターンが形成された領域が表裏から挟み込まれることにより押下された状態を示す図である。
【図4】図1に示した非接触型ICカードに対して表面シートの全面に外力が加わった場合の作用を説明するための図であり、(a)は導通パターンが形成された領域のみが押下された状態を示す断面図、(b)は(a)に示した状態における回路構造を示す図、(c)は表面シートの全面に外力が加わった状態を示す断面図、(d)は(c)に示した状態における回路構造を示す図である。
【図5】図1に示した非接触型ICカードを用いて認証を行う認証システムの一例を示す図である。
【図6】図5に示した認証システムにおける認証方法を説明するためのフローチャートである。
【図7】従来の非接触型ICカードの構造の一例を示す図であり、(a)は表面図、(b)は内部構造を示す図、(c)は(b)に示したA−A’断面図である。
【符号の説明】
【0052】
1 RFIDリーダ
2 対物センサー
3 制御装置
100 非接触型ICカード
110 インレット
111 ICチップ
112 アンテナ
113 接点
114 樹脂シート
115 断線部
116a〜116h 短絡発生部
120a,120b 中間層
121,122a〜122d 穴部
130a,130b 表面シート
131 導通パターン
132a〜132d 短絡パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性パターンが形成されるとともに該導電性パターンを介して電流が供給されることにより非接触状態にて情報の書き込み及び/または読み出しが可能なICチップが搭載されてなるメイン基材部と、該メイン基材部の少なくとも導電性パターンが形成された面に積層されたサブ基材部とを有するRFIDメディアにおいて、
前記導電性パターンは、少なくとも一部に断線部を有し、
前記サブ基材部は、
前記断線部と対向する領域に当該断線部に対して空隙を介して設けられ、当該断線部を導通させるための導通手段と、
前記導電性パターン上の2つの領域に空隙を介して対向して設けられ、当該2つの領域を電気的に短絡するための短絡手段とを有することを特徴とするRFIDメディア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−71120(P2008−71120A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−249302(P2006−249302)
【出願日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【出願人】(000110217)トッパン・フォームズ株式会社 (989)
【Fターム(参考)】