説明

RFIDモジュール及びRFIDタグ

【課題】動作の安定性及び情報の読取性能を向上させることが可能なRFIDモジュールを提供する。
【解決手段】ICチップ2と、ICチップ2と電気的に接続されたマッチング回路4を備えるRFIDモジュール1であって、マッチング回路4は、ICチップ2と電気的に並列接続し且つ電流が周回する二つのループ回路6a,6bからなり、ループ回路6aは、RFIDモジュール1の外周側に配置される部分での電流の流れる方向が、ループ回路6bにおいてRFIDモジュール1の外周側に配置される部分での電流の流れる方向と、逆方向である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、記録面と一体化された環状の金属層を有する板状の記録媒体、特に、CDやDVD等の磁気記録媒体に取り付け、動作の安定性及び情報の読取性能を向上させることが可能なRFIDモジュールと、そのRFIDモジュールを備えたRFIDタグに関する。
具体的には、金属層を有する板状の記録媒体に設けられた、比較的小径の穴(例えば、直径10mm程度)周辺に対し、ICチップを接続したマッチング回路、またはマッチング回路に接続した放射素子を直接取り付け、動作の安定性及び情報の読取性能を向上させることが可能なRFIDモジュールと、そのRFIDモジュールを備えたRFIDタグに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、CD(Compact Disk)等の磁気記録媒体(メディア)には、流通履歴の管理等を目的として、電波を用いて情報の識別を行うことが可能な、RFID(Radio Frequency IDentification)タグを取り付ける場合がある。このようなRFIDタグとしては、例えば、特許文献1に記載されているものがある。
【0003】
特許文献1に記載されているRFIDタグは、図20中に示すように、グランド部34と、モノポール部36と、給電部38を備えている。なお、図20は、従来例(特許文献1)のRFIDタグを取り付けたCDを示す図であり、図20(a)は、CDの平面図、図20(b)は、図20(a)のB‐B線断面図である。
グランド部34は、円環状に形成されており、磁気記録媒体(CD24)内部の金属層と高周波帯で電磁結合するように、磁気記録媒体に取り付けられている。なお、金属層は、磁気記録媒体自体と互いに同心円となる円環状に形成されており、磁気記録媒体の大部分を占有している。
【0004】
モノポール部36は、グランド部34の形状に沿って曲げられており、グランド部34と同一平面内で、グランド部34の内側部分に設けられている。また、モノポール部36は、給電部38とインピーダンス整合するための長さを有しており、この長さは、折り返し部40を設けることによって調整可能である。すなわち、モノポール部36及び折り返し部40は、給電部38とのインピーダンスの整合を行うためのマッチング回路を形成している。
【0005】
給電部38は、モノポール部36の一端に接続されており、ICチップが電気的に接続されている。
また、RFIDタグとしては、例えば、図21中に示すように、磁界結合方式(HF[13.56MHz]、またはUHF[952〜954MHz])のRFIDタグ30もある。このRFIDタグ30は、例えば、CDの中央部、具体的には、CDの中央部に設けられた貫通孔(以降の説明では、「中央孔」と記載する)の周辺に取り付けて用いられ、巻き線アンテナにより形成されるループ回路6と、ループ回路6と電気的に接続したICチップ2を備える。ここで、ループ回路6は、ICチップ2とのインピーダンスの整合を行うためのマッチング回路を形成している。なお、図21は、従来例のRFIDタグである、磁界結合方式のRFIDタグの概略構成を示す図である。
【0006】
また、RFIDタグとしては、例えば、図22中に示すように、ループ回路6を備えるマッチング回路と、ICチップ2とを搭載したストラップ42を、記録媒体(CD等)の、記録面と一体化された金属層22に対して、電気的に接続する形で貼り付ける、ストラップ方式のものもある。ここで、磁界結合方式のRFIDタグと同様、ループ回路6は、ICチップ2とのインピーダンスの整合を行うためのマッチング回路を形成している。なお、図22は、記録媒体に取り付けた、従来例のRFIDタグである、ストラップ方式のRFIDタグの概略構成を示す図である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−166573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、RFIDタグの取り付け対象となる磁気記録媒体としては、上述したCDの他に、DVD(Digital Versatile Disc)がある。
そして、DVDには、記録面と一体化された金属層の内径が25mm程度のものがある。このようなDVDは、金属層の内径が38mm程度であるCDよりも、金属層の内径が狭いため、RFIDタグのアンテナをデザイン可能な領域が、CDと比較して非常に狭い。
【0009】
このため、RFIDタグの取り付け対象を、金属層の内径が25mm程度のDVDとした場合、特許文献1に記載されているRFIDタグでは、特に、UHF帯の波長(λ=32cm)にマッチした放射素子を形成することが、非常に困難である。なお、放射素子とは、RFIDタグにおいて、電波を放射するアンテナとしての機能を発揮する構成である。
【0010】
これは、特許文献1に記載されているRFIDタグでは、放射素子が、グランドパターンまたは磁気記録媒体の記録面と一体化された金属層に近接することとなり、アンテナとしての放射利得が非常に低くなることに起因する問題点である。
また、通常、給電部には、1pF程度の入力容量を持つICチップが接続されるが、特許文献1に記載されているRFIDタグでは、ICチップの入力インピーダンスを打ち消し、アンテナのインピーダンスと整合させるためのマッチング回路を形成することが困難である。
【0011】
したがって、特許文献1に記載されているRFIDタグでは、RFIDタグの取り付け対象を、金属層の内径が小さいDVDとした場合、動作の安定性が低下するという問題が発生するおそれがある。
また、上述した磁界結合方式のRFIDタグでは、巻き線アンテナが、全周に亘って、記録面と一体化された金属層に囲まれる構成となり、巻き線アンテナに誘起される電流が、金属層に発生する逆方向の電流によって打ち消されるため、RFIDタグの受信感度が低下することとなる。特に、DVDは、CDよりも、記録面と一体化された金属層の導体抵抗が低いため、RFIDタグの取り付け対象がDVDである場合、受信感度の低下が著しくなる。
【0012】
また、特に、RFIDタグを金属層の内径が小さいDVDへ取り付ける場合、上述したように、CDへ取り付ける場合と比較して、RFIDタグのアンテナを形成可能な領域が非常に狭くなる。
このため、HF帯のRFIDタグを用いる場合、この領域にアンテナ(数ターンの巻き線)を形成するのが困難となる。なお、金属層の内径が小さいDVDにおいては、一般的に、RFIDタグのアンテナを形成可能な領域は、外径25mmの円と内径15mmの円で囲まれた円環状の領域となる。
【0013】
一方、UHF帯のRFIDタグを用いる場合、DVDの中央に開口する中央孔(直径15mm程度)を囲む形で、アンテナ(1ターンの巻き線)を形成するのが通信的に有利である。
しかしながら、中央孔を囲む形でアンテナを形成する場合、巻き線のインピーダンスの虚部が、ICチップの一般的な入力容量によるインピーダンスの虚部(例えば、150[jΩ]程度)の絶対値と比べて、2倍程度大きな値となってしまう。
【0014】
このため、中央孔を囲む形でアンテナを形成すると、インピーダンスの不整合損が大きくなり、RFIDタグとしての通信感度が低下して、RFIDタグに要求される、情報の読取性能を十分に発揮することが困難となるという問題が発生するおそれがある。
また、上述したストラップ方式のRFIDタグでは、磁気記録媒体の外周部に、ストラップを取り付け可能なスペースが無いため、ストラップは、磁気記録媒体の内周側に取り付けられることになる。
【0015】
しかしながら、ストラップ方式のRFIDタグであっても、RFIDタグの取り付け対象を、金属層の内径が小さいDVDとした場合、特許文献1に記載されているRFIDタグと同様、ICチップの入力インピーダンスを打ち消し、アンテナのインピーダンスと整合させるためのマッチング回路を形成することが困難であるため、インピーダンスの低下が引き起こされることとなる。
【0016】
また、ストラップと電気的に接続されている、記録面と一体化された金属層に電力を給電しても、金属層に給電された電力は、金属層の内径側に形成されるループで短絡されてしまい、金属層全体には広がらず、電力の放射は殆ど発生しない。
したがって、ストラップ方式のRFIDタグにおいても、磁界結合方式のRFIDタグと同様、RFIDタグとしての通信感度が低下して、RFIDタグに要求される、情報の読取性能を十分に発揮することが困難となるという問題が発生するおそれがある。
【0017】
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたもので、動作の安定性及び情報の読取性能を向上させることが可能なRFIDモジュールと、そのRFIDモジュールを備えたRFIDタグを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するために、本発明のうち、請求項1に記載した発明は、ICチップと、当該ICチップと電気的に接続されたマッチング回路と、を備えるRFIDモジュールであって、
前記マッチング回路は、前記ICチップと電気的に並列接続し且つ電流が周回する複数のループ回路からなり、
前記複数のループ回路のうち少なくとも一つのループ回路は、RFIDモジュールの外周側に配置される部分での電流の流れる方向が、他のループ回路においてRFIDモジュールの外周側に配置される部分での電流の流れる方向と逆方向であることを特徴とするものである。
【0019】
次に、本発明のうち、請求項2に記載した発明は、請求項1に記載した発明であって、前記複数のループ回路は、それぞれ、RFIDモジュールの外周に沿って配置される電流の流路を有することを特徴とするものである。
次に、本発明のうち、請求項3に記載した発明は、請求項1または2に記載した発明であって、前記複数のループ回路がそれぞれ有するインピーダンスの虚部の合成値と前記ICチップが有するインピーダンスの虚部の絶対値との差は、前記ICチップが有するインピーダンス値の30%以内であることを特徴とするものである。
【0020】
次に、本発明のうち、請求項4に記載した発明は、請求項1または2に記載した発明であって、前記ICチップは、前記ループ回路を接続する複数のポートを有し、
前記複数のループ回路のうちRFIDモジュールの外周側に配置される部分での電流の流れる方向が互いに逆方向である少なくとも二つのループ回路は、互いに異なるポートに接続されることを特徴とするものである。
【0021】
次に、本発明のうち、請求項5に記載した発明は、請求項4に記載した発明であって、前記互いに異なるポートに接続される少なくとも二つのループ回路がそれぞれ有するインピーダンスの虚部の合成値と互いに異なるポートが有する入力インピーダンスの虚部の絶対値との差は、前記ICチップが有するインピーダンス値の30%以内であることを特徴とするものである。
【0022】
次に、本発明のうち、請求項6に記載した発明は、請求項1から5のうちいずれか1項に記載した発明であって、金属層を含まない非金属領域と前記非金属領域の外周を無端状に包囲し且つ前記金属層を含む金属領域とを有する取り付け部に取り付けられるRFIDモジュールであって、
前記複数のループ回路のうちRFIDモジュールの外周側で電流が流れる方向が互いに逆方向である少なくとも二つのループ回路は、前記ICチップとのインピーダンスの虚部の整合を実現した状態で、前記金属層と電気的に接続することを特徴とするものである。
【0023】
次に、本発明のうち、請求項7に記載した発明は、請求項6に記載した発明であって、前記複数のループ回路のうちRFIDモジュールの外周側で電流が流れる方向が互いに逆方向である少なくとも二つのループ回路は、RFIDモジュールの外周側で電流が流れる部分を前記金属領域と積層させて前記金属層と電気的に接続し、その他の部分を前記非金属領域と積層させた状態で、前記取り付け部に取り付けられることを特徴とするものである。
【0024】
次に、本発明のうち、請求項8に記載した発明は、請求項6または7に記載した発明であって、前記ICチップは、前記RFIDモジュールを前記取り付け部に取り付けた状態で前記金属領域と積層しない位置で、前記マッチング回路と電気的に接続することを特徴とするものである。
次に、本発明のうち、請求項9に記載した発明は、請求項1から8のうちいずれか1項に記載したRFIDモジュールと、前記複数のループ回路のうち少なくとも一つのループ回路と電気的に接続して電波を放射する放射素子と、を備えることを特徴とするRFIDタグである。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、RFIDモジュールを、金属層を有する磁気記録媒体(DVDやCD等の)に取り付けた状態において、ループ回路を周回する電流により金属層に誘起される電流の、金属層における周回を防止することが可能となる。
また、請求項2に係る発明によれば、RFIDモジュールを、金属層を有する磁気記録媒体に取り付けた状態において、RFIDモジュールの外周の大部分に亘り、ループ回路を周回する電流により金属層に誘起される電流の、金属層における周回を防止することが可能となる。
【0026】
また、請求項3に係る発明によれば、複数のループ回路を有するマッチング回路とICチップとのインピーダンスの整合を、効率的に行うことが可能となる。
また、請求項4に係る発明によれば、少なくとも二つのループ回路に対し、RFIDモジュールの外周側に配置される部分での電流の流れる方向を、互いに逆方向とすることが容易となる。
【0027】
また、請求項5に係る発明によれば、互いに異なるポートに接続される複数のループ回路を有するマッチング回路とICチップとのインピーダンスの整合を、効率的に行うことが可能となる。
また、請求項6に係る発明によれば、マッチング回路とICチップとのインピーダンスの整合を、RFIDモジュール単体で行うことが可能となる。これに加え、取り付け部が有する金属領域が含む金属層を、電波を放射する放射素子として用いることが可能となる。
【0028】
また、請求項7に係る発明によれば、取り付け部の構成が、非金属領域の面積が狭い構成であっても、取り付け部が有する金属領域が含む金属層を、電波を放射する放射素子として用いることが可能となる。
また、請求項8に係る発明によれば、ICチップと金属層との間において、電気的な短絡(ショート)の発生を抑制することが可能となる。
【0029】
また、請求項9に係る発明によれば、RFIDモジュールを備えたRFIDタグ単体で、RFIDモジュールの受信感度を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の第一実施形態のRFIDモジュールの概略構成を示す平面図である。
【図2】RFIDモジュールの取り付け対象であるDVDの概略構成を示す平面図である。
【図3】本発明の第一実施形態のRFIDモジュールを取り付けたDVDを示す斜視図である。
【図4】図3のIV‐IV線断面図である。
【図5】本発明の第一実施形態のRFIDモジュールを取り付けたDVDを示す平面図である。
【図6】図5のVI‐VI線断面図である。
【図7】従来例のRFIDタグである、ストラップ方式のRFIDタグの概略構成を示す図である。
【図8】従来例のRFIDタグである、磁界結合方式のRFIDタグの概略構成を示す図である。
【図9】本発明の第一実施形態とは異なる構成のRFIDモジュールを取り付けたDVDの一部を拡大した図である。
【図10】RFIDモジュールの取り付け対象であるCDの概略構成を示す平面図である。
【図11】本発明の第一実施形態の変形例を示す図である。
【図12】本発明の第一実施形態の変形例を示す図である。
【図13】本発明の第一実施形態の変形例を示す図である。
【図14】本発明の第一実施形態の変形例を示す図である。
【図15】本発明の第一実施形態の変形例を示す図である。
【図16】本発明の第二実施形態のRFIDモジュールの概略構成を示す平面図である。
【図17】本発明の第二実施形態の変形例を示す図である。
【図18】本発明の第二実施形態の変形例を示す図である。
【図19】本発明の第三実施形態のRFIDタグを取り付けたDVDを示す平面図である。
【図20】従来例のRFIDタグを取り付けたCDを示す図である。
【図21】従来例のRFIDタグである、磁界結合方式のRFIDタグの概略構成を示す図である。
【図22】記録媒体に取り付けた、従来例のRFIDタグである、ストラップ方式のRFIDタグの概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
(第一実施形態)
以下、本発明の第一実施形態(以下、「本実施形態」と記載する)について、図面を参照しつつ説明する。
(構成)
まず、図1から図4を用いて、本実施形態のRFIDモジュール1の構成を説明する。なお、以下の説明及び図中では、図20から図22中に示したRFIDタグ等と同様の構成に対し、同一の符号を付している。
【0032】
図1は、本実施形態のRFIDモジュール1の概略構成を示す平面図である。
図1中に示すように、RFIDモジュール1は、ICチップ2と、マッチング回路4を備えている。なお、本実施形態では、一例として、RFIDモジュール1の構成を、ICチップ2及びマッチング回路4が、図示しないストラップに支持されている構成とした場合について説明する。
【0033】
ICチップ2は、例えば、RFIDモジュール1の取り付け対象に関する情報を、記憶可能に形成されている。
なお、本実施形態では、RFIDモジュール1の取り付け対象を、DVDとする。これに伴い、RFIDモジュール1の取り付け対象に関する情報は、例えば、DVDの商品名や価格等とする。
【0034】
マッチング回路4は、例えば、金属箔等、導電性の材料で形成されており、ICチップ2と電気的に接続されている。本実施形態では、一例として、金属箔によりマッチング回路4を形成した場合を説明する。
ここで、ICチップ2の接続位置とは、ICチップ2とマッチング回路4とを電気的に接続する位置、すなわち、RFIDモジュール1において、ICチップ2を配置する実装位置であり、その位置についての具体的な説明は、後述する。なお、RFIDモジュール1において、ICチップ2を配置する際には、例えば、導電性ペーストを熱圧着して、ICチップ2を、マッチング回路4に取り付ける。また、ICチップ2が、ストラップ付きのICチップである場合、導電性ペーストの熱圧着以外の手段を用いて、RFIDモジュール1において、ICチップ2を配置してもよい。
【0035】
なお、本実施形態では、ICチップ2とマッチング回路4とを直接接続して、ICチップ2とマッチング回路4とを電気的に接続する場合を説明する。しかしながら、これに限定するものではなく、ICチップ2とマッチング回路4とを近接配置することで、ICチップ2とマッチング回路4を、磁界結合や静電容量結合等によって電気的に接続してもよい。
【0036】
また、マッチング回路4は、ICチップ2と電気的に並列接続し、電流が周回する二つのループ回路6から構成されている。なお、以下の説明及び図中では、二つのループ回路6のうち、図1中で上方に示すループ回路6を「ループ回路6a」と示し、図1中で下方に示すループ回路6を、「ループ回路6b」と示す。
以下、二つのループ回路6a,6bについて、詳細な構成を説明する。
【0037】
二つのループ回路6a,6bは、具体的には、直径の異なる円環状の二つの金属箔(以下、「円環状金属箔」と記載する)と、二つの板状の金属箔(以下、「板状金属箔」と記載する)から形成されている。なお、これらの金属箔は、個別に成形したものを組み合わせてもよく、また、一体に成形してもよい。
直径の異なる二つの円環状金属箔は、互いに同心円となるように配置されており、大径の円環状金属箔の内径は、小径の円環状金属箔の外径よりも大きい。したがって、直径の異なる二つの円環状金属箔は、周方向全体に沿って、等距離で離間している。
【0038】
二つの板状金属箔は、周方向全体に沿って、等距離で離間している二つの円環状金属箔間に、互いに離間して配置されており、二つの円環状金属箔同士を連結している。
また、二つの板状金属箔のうち一方(本実施形態では、図1中の左側に示す板状金属箔)は、ICチップ2と電気的に並列接続している。これにより、二つのループ回路6a,6bでは、ICチップ2を接続した位置において、板状金属箔の長手方向(二つの円環状金属箔同士を連結している方向)での電位差が発生する。
【0039】
したがって、板状金属箔の長手方向で発生する電位差により、板状金属箔により連結されている二箇所の連結部分を境にして、それぞれ、大径の円環状金属箔、小径の円環状金属箔及び二つの板状金属箔に沿って電流が周回する周回経路である、二つのループ回路6a,6bが形成されることとなる。
また、板状金属箔で発生する電位差は、板状金属箔の長手方向で発生するため、ループ回路6aは、大径の円環状金属箔、すなわち、RFIDモジュール1の外周側に配置される部分での電流の流れる方向が、ループ回路6bにおいてRFIDモジュール1の外周側に配置される部分での電流の流れる方向と逆方向となる。なお、図1中では、ループ回路6aにより形成される電流の周回経路を、「第一の電流経路」と示し、ループ回路6bにより形成される電流の周回経路を、「第二の電流経路」と示している。
【0040】
また、本実施形態では、図1中に示すように、ループ回路6aにおいて、RFIDモジュール1の外周側に配置される部分での電流の流れる方向を「時計回り」とし、ループ回路6bにおいて、RFIDモジュール1の外周側に配置される部分での電流の流れる方向を「反時計回り」とした場合について説明する。
また、二つのループ回路6a,6bは、それぞれ、RFIDモジュール1の外周に沿って配置される電流の流路を有している。この流路は、図1中に示すように、大径の円環状金属箔により形成されている。
【0041】
また、ループ回路6a及びループ回路6bは、ループ回路6a及びループ回路6bがそれぞれ有するインピーダンスの虚部の合成値と、ICチップ2が有するインピーダンスの虚部の絶対値との差が、ICチップ2が有するインピーダンス値の30%以内となるように形成されている。
これは、例えば、ループ回路6a及びループ回路6bにより形成される電流の周回経路を、それぞれ、ICチップ2が有するインピーダンスの虚部の絶対値に応じた長さとすることにより実現する。
【0042】
図2は、RFIDモジュール1の取り付け対象であるDVD8の概略構成を示す平面図である。
図2中に示すように、DVD8は、中央部を貫通する中央孔10が設けられた円環状の板状部材であり、RFIDモジュール1を取り付ける取り付け部(上面)に、金属領域12と、非金属領域14を有している。なお、本実施形態では、DVD8の直径が120[mm]、中央孔10の直径が16[mm]である場合について説明する。
【0043】
金属領域12及び非金属領域14は、共に、DVD8の平面視で無端環状に形成されている。なお、本実施形態では、金属領域12及び非金属領域14が、共に、円環状に形成されている場合について説明する。
また、金属領域12は、光を反射し、情報を記録可能な金属層を含んで形成されており、非金属領域14よりも大径である。なお、金属層に記録する情報は、例えば、音声データや画像データである。
【0044】
一方、非金属領域14は、金属領域12と異なり、金属層を含まない領域であり、金属領域12の内部、具体的には、金属領域12の内周側に配置されている。すなわち、金属領域12は、非金属領域14の外周を無端状に包囲している。なお、本実施形態では、非金属領域14の直径、すなわち、金属領域12の内径が25[mm]である場合について説明する。
【0045】
以下、図1及び図2を参照しつつ、図3及び図4を用いて、DVD8へ取り付けたRFIDモジュール1について説明する。
図3は、本実施形態のRFIDモジュール1を取り付けたDVD8を示す斜視図である。また、図4は、図3のIV‐IV線断面図である。
図3及び図4中に示すように、RFIDモジュール1をDVD8へ取り付ける際には、DVD8の取り付け部(上面)に、マッチング回路4を取り付ける。
【0046】
ここで、図4中に示すように、DVD8は、本体層16と、ディスクラベル18と、タグ基材20を備えている。
本体層16は、内部に金属層22を有しており、プラスチック等を材料として形成されている。なお、本実施形態では、本体層16が、プラスチックを材料として形成されている場合について説明するが、これに限定するものではなく、本体層16が、ガラス等、プラスチック以外を材料として形成されていてもよい。
【0047】
ディスクラベル18は、例えば、DVD8の製品情報(タイトル等)が印刷されており、円環状に形成され、本体層16の上面を覆っている。また、ディスクラベル18の内径は、中央孔10の直径よりも大きく、さらに、本体層16の内径よりも大きい。したがって、本体層16の上面のうち、DVD8の内径側には、ディスクラベル18に覆われていない円環状の領域が形成されている。
【0048】
タグ基材20は、ディスクラベル18及び本体層16とマッチング回路4との間に介装されている。具体的には、ディスクラベル18の内周側と、本体層16の上面のうち、ディスクラベル18に覆われていない円環状の領域とを連続する円環状に形成されて、マッチング回路4との間に介装されている。
また、タグ基材20は、例えば、PET(polyethylene terephthalate)及び粘着層から形成されており、ディスクラベル18及び本体層16にマッチング回路4を取り付ける。
【0049】
そして、RFIDモジュール1をDVD8へ取り付ける際には、具体的には、ループ回路6a及びループ回路6bを、共に、RFIDモジュール1の外周側で電流が流れる部分を金属領域12と積層させて、金属層22の内周側と電気的に接続させる。すなわち、ループ回路6の外周側と金属層22の内周側とを近接配置することで、ループ回路6と金属層22とを、磁界結合によって電気的に接続する。
【0050】
したがって、二つのループ回路6a,6bは、ICチップ2及びマッチング回路4によりICチップ2とマッチング回路4とのインピーダンスの虚部の整合を実現した状態で、金属層22と電気的に接続することとなる。
これに加え、ループ回路6a及びループ回路6bの、その他の部分(金属領域12と積層させた部分の内周側)を非金属領域14と積層させた状態で、接着剤等を用い、RFIDモジュール1をDVD8の上面へ貼り付ける。
【0051】
これにより、図4中に示すように、マッチング回路4を形成する二つの円環状金属箔のうち、大径の円環状金属箔は、タグ基材20を介してディスクラベル18上に貼り付けられ、小径の円環状金属箔は、タグ基材20を介して本体層16上に貼り付けられる。
また、マッチング回路4を形成する二つの板状金属箔は、それぞれ、タグ基材20を介して、ディスクラベル18上から本体層16上に連続して貼り付けられる。
【0052】
なお、ループ回路6a及びループ回路6bの外周側と金属層22の内周側との電気的な接続は、ループ回路6a,6bの外周側と金属層22の内周側とを、DVD8の厚さ方向から見て積層させて近接配置することによる、ループ回路6a,6bと金属層22の磁界結合や静電容量結合等により実現する。
すなわち、大径の円環状金属箔の外径は、金属領域12の内径よりも大きく、25[mm]を超えている。また、小径の円環状金属箔の内径は、中央孔10の直径(16[mm])以上である。
【0053】
また、図3中に示すように、RFIDモジュール1をDVD8へ取り付けた状態では、ICチップ2が、金属層からの電気的な影響が弱い位置で、マッチング回路4と電気的に接続される。これは、予め、RFIDモジュール1において、ICチップ2を配置する実装位置を、RFIDモジュール1をDVD8へ取り付けた状態で、ICチップ2が金属層と積層せず、また、近接しない、すなわち、電気的に接続されない距離で離間した位置とすることにより実現する。なお、本実施形態では、図中に示すように、ICチップ2を配置する実装位置を、RFIDモジュール1をDVD8へ取り付けた状態で、ICチップ2が金属領域12と積層しない位置とする。
なお、ICチップ2が金属層と電気的に接続されない距離で離間した位置は、ループ回路6を周回する電流の大きさ等により設定する位置である。
【0054】
(作用)
以下、図1から図4を参照しつつ、図5から図9を用いて、本実施形態の作用を説明する。
図5は、本実施形態のRFIDモジュール1を取り付けたDVD8を示す平面図である。また、図6は、図5のVI‐VI線断面図である。
【0055】
RFIDモジュール1の作動時、例えば、RFIDモジュール1を取り付けたDVD8を、RFIDリーダライタに近づける(または、接触させる)と、RFIDモジュール1は、RFIDリーダから放射された電波の供給を受ける。
【0056】
RFIDモジュール1がRFIDリーダから放射された電波の供給を受けると、ループ回路6a及びループ回路6bに、それぞれ、ICチップ2の接続位置を基準として、外周側における周回方向が互いに逆方向である電流が周回する。
このとき、図6中に示すように、ループ回路6aにおいては、大径の円環状金属箔に、紙面の表側から裏側へ向けて周回する電流が流れ、小径の円環状金属箔に、紙面の裏側から表側へ向けて周回する電流が流れる。なお、図6中における紙面とは、ループ回路6aを径方向に切断した断面である。
【0057】
これにより、図6中に実線の矢印で示すように、金属領域12において、DVD8の内周側から外周側へと周回しつつ、DVD8の上面から下面へと周回する磁界が発生し、金属層22には、紙面の裏側から表側へ向けて流れる電流が誘起される。
そして、上記のように金属層22に電流が誘起される状態では、ループ回路6に加え、金属層22が、電波を放射する放射素子として機能することとなる。
【0058】
なお、特に図示しないが、ループ回路6bにおいても、大径及び小径の円環状金属箔に、周回する電流が流れ、金属領域12において、周回する磁界が発生し、金属層22に電流が誘起される。
ここで、本実施形態では、上述したように、ループ回路6a及びループ回路6bを周回する電流は、それぞれ、RFIDモジュール1の外周側に配置される部分での電流の流れる方向が、互いに逆方向である(特に、図1を参照)。
【0059】
このため、金属層22に誘起された電流は、図5中に破線の双方向矢印で示すように、金属領域12上を、周回せずに往復移動することとなる。なお、図5中では、RFIDモジュール1を間に挟んだ複数本の双方向矢印により、金属領域12上を往復移動する電流を示している。そして、特に図示しないが、複数本の双方向矢印が描く線を平均すると、DVD8の中心付近を通過する径方向の直線となる。
【0060】
したがって、本実施形態のRFIDモジュール1では、図7中に示すような、ストラップ方式のRFIDタグで発生する、金属領域12の内径側における電流の周回を防止することが可能となる。なお、図7は、従来例のRFIDタグである、ストラップ方式のRFIDタグの概略構成を示す図であり、図中においては、金属領域12の内径側で周回する電流を、破線の矢印で示している。
【0061】
また、本実施形態では、上述したように、マッチング回路4が有する二つのループ回路6a及びループ回路6bが、それぞれの外周側で、金属層22と電気的に接続しており、一つのループ回路6は、その一部のみが、金属層22と電気的に接続する。
したがって、本実施形態のRFIDモジュール1では、図8中に示すような、磁界結合方式のRFIDタグで発生する、ループ回路6(巻き線アンテナ)に誘起される電流の、金属層22に発生する逆方向の電流による打ち消しを、防止することが可能となる。なお、図8は、従来例のRFIDタグである、磁界結合方式のRFIDタグの概略構成を示す図であり、図中においては、ループ回路6に誘起される電流と、金属層22に発生する逆方向の電流を、共に、破線の矢印で示している。
【0062】
また、本実施形態では、上述したように、ループ回路6a,6bの、RFIDモジュール1の外周側で電流が流れる部分を、金属領域12と積層させ、ループ回路6a,6bの、金属領域12と積層させた部分の内周側を、非金属領域14と積層させて、RFIDモジュール1をDVD8の上面へ貼り付けている。
したがって、本実施形態のRFIDモジュール1では、RFIDモジュール1の取り付け対象が、金属領域12の内径が25[mm]程度であり、非金属領域14の面積が狭いDVD8であっても、金属層22により、電波の波長にマッチした放射素子を形成することが可能である。
【0063】
また、本実施形態では、上述したように、二つのループ回路6a,6bが、それぞれ、RFIDモジュール1の外周に沿って配置される電流の流路を有している(特に、図1を参照)。
したがって、本実施形態のRFIDモジュール1では、RFIDモジュール1をDVD8に取り付けた状態において、RFIDモジュール1の外周の大部分に亘り、ループ回路6を周回する電流により金属層22に誘起される電流の、金属層22における周回を防止することが可能となる。
【0064】
また、本実施形態では、上述したように、ICチップ2をマッチング回路4と電気的に接続する位置を、RFIDモジュール1をDVD8へ取り付けた状態において、ICチップ2が金属層22から受ける電気的な影響が弱い位置としている。
したがって、本実施形態のRFIDモジュール1では、図9中に示すような、ICチップ2をマッチング回路4と電気的に接続する位置を、RFIDモジュール1をDVD8へ取り付けた状態において、ICチップ2が金属層22から受ける電気的な影響が強い位置とした場合と比較して、ICチップ2と金属層22との距離が、ICチップ2と金属層22との間において発生する、電気的な短絡を抑制することが可能な距離となる。なお、図9は、本実施形態とは異なる構成のRFIDモジュール1を取り付けたDVD8の一部を拡大した図である。
【0065】
ここで、ICチップ2が金属層22から受ける電気的な影響が強い位置とは、例えば、図9中に示すように、マッチング回路4の金属層22と積層する位置や、特に図示しないが、マッチング回路4の金属層22と積層しない位置のうち、金属層22と近接した位置である。なお、マッチング回路4の金属層22と積層しない位置のうち、金属層22と近接した位置は、ループ回路6を周回する電流の大きさ等により決まる位置であり、ICチップ2と金属層22との間において電気的な短絡が発生する可能性の高い位置である。
【0066】
これは、例えば、ICチップ2が有する二つの端子と金属層22との間に、容量結合による微小なループ回路が形成され、ICチップ2が有する両端子間に電気的な短絡が発生する可能性の高い位置である。また、マッチング回路4の金属層22と積層しない位置のうち、金属層22と近接した位置の具体例としては、ループ回路6が形成する電流の周回経路のうち、RFIDモジュール1の外周側に配置される部分である。
【0067】
(第一実施形態の効果)
以下、本実施形態の効果を列挙する。
(1)本実施形態のRFIDモジュール1では、RFIDモジュール1を、金属層を有する磁気記録媒体であるDVD8に取り付けた状態において、ループ回路6を周回する電流により金属層22に誘起される電流の、金属層22における周回を防止することが可能となる。
【0068】
その結果、RFIDモジュール1を取り付け部に取り付けた状態において、RFIDモジュール1の受信感度を向上させて、情報の読取性能を向上させることが可能となる。これにより、RFIDモジュール1を取り付けたDVD8とRFIDリーダライタとの相互通信において、良好な通信性能を発揮して、情報を確実に読取可能な範囲を拡大することが可能となる。
【0069】
また、ループ回路6を周回する電流により金属層22に誘起される電流の、金属層22における周回を防止することが可能となるとともに、ループ回路6に誘起される電流の、金属層22に発生する逆方向の電流による打ち消しを、防止することが可能となる。
このため、電磁波による通信(ファーフィールド通信)に加え、電磁結合による通信(ニアフィールド通信)に対しても、良好な通信性能を発揮することが可能となる。
【0070】
(2)本実施形態のRFIDモジュール1では、RFIDモジュール1をDVD8に取り付けた状態において、RFIDモジュール1の外周の大部分に亘り、ループ回路6を周回する電流により金属層22に誘起される電流の、金属層22における周回を防止することが可能となる。
その結果、RFIDモジュール1を取り付け部に取り付けた状態において、RFIDモジュール1の受信感度を、RFIDモジュール1の外周の大部分に亘って向上させることが可能となる。
【0071】
(3)本実施形態のRFIDモジュール1では、二つのループ回路6a,6bを有するマッチング回路4とICチップ2とのインピーダンスの整合を、効率的に行うことが可能となる。
【0072】
その結果、RFIDモジュール1に対して、動作の安定性を向上させることが可能となり、RFIDモジュール1を取り付けたDVD8とRFIDリーダライタとの相互通信において、良好な通信性能を発揮して、情報の読取を確実に行うことが可能となる。
【0073】
(4)本実施形態のRFIDモジュール1では、マッチング回路4とICチップ2とのインピーダンスの整合を、RFIDモジュール1単体で行うことが可能となる。
このため、取り付け対象であるDVD8の構成に関係無く、取り付け部に取り付けた状態のRFIDモジュール1に対し、動作の安定性を向上させることが可能となる。
これに加え、二つのループ回路6a,6bと電気的に接続させた、DVD8の取り付け部が有する金属層22を、放射素子として用いることが可能となるため、RFIDモジュール1を取り付け部に取り付けた状態において、RFIDモジュール1の受信感度を向上させて、情報の読取性能を向上させることが可能となる。
【0074】
その結果、RFIDモジュール1を取り付けたDVD8とRFIDリーダライタとの相互通信において、良好な通信性能を発揮して、情報を確実に読取可能な範囲を拡大することが可能となるとともに、情報の読取を確実に行うことが可能となる。
【0075】
(5)本実施形態のRFIDモジュール1では、DVD8の取り付け部の構成が、非金属領域14の面積が狭く、RFIDモジュール1のアンテナ(ループ回路6)を形成可能な領域が非常に狭い場合であっても、取り付け部に取り付けた状態のRFIDモジュール1に対し、情報の読取性能及び動作の安定性を向上させることが可能となる。
その結果、RFIDモジュール1の取り付け対象が、中央孔10の周辺に形成された狭い非金属領域14にマッチング回路4を配置せざるを得ないDVD8であっても、RFIDリーダライタとの相互通信において、情報を確実に読取可能な範囲を拡大することが可能となるとともに、情報の読取を確実に行うことが可能となる。
【0076】
(6)本実施形態のRFIDモジュール1では、ICチップ2と金属層22との間において、電気的な短絡の発生を抑制することが可能となる。
その結果、RFIDモジュール1に対して、動作の安定性を向上させることが可能となり、RFIDモジュール1を取り付けたDVD8とRFIDリーダライタとの相互通信において、良好な通信性能を発揮して、情報の読取を確実に行うことが可能となる。
【0077】
(応用例)
以下、本実施形態の応用例を列挙する。
(1)本実施形態のRFIDモジュール1では、RFIDモジュール1の取り付け対象をDVD8としたが、RFIDモジュール1の取り付け対象は、これに限定するものではない。すなわち、RFIDモジュール1の取り付け対象は、図10中に示すような、CD24であってもよい。なお、図10は、RFIDモジュール1の取り付け対象であるCD24の概略構成を示す平面図である。また、図10中に示すCD24は、DVD8と異なり、非金属領域14の直径、すなわち、金属領域12の内径が37[mm]である。
【0078】
この場合、RFIDモジュール1をCD24へ取り付ける際には、例えば、図11中に示すように、ループ回路6a,6bの外周側と金属領域12とを積層させず、ループ回路6a,6bと金属領域12との距離を、微小な隙間を介して近接させることにより、ループ回路6と金属層22とを、磁界結合によって電気的に接続してもよい。なお、図11は、本実施形態の変形例を示す図である。
【0079】
ここで、ループ回路6a,6bと金属領域12との距離を、微小な隙間を介して近接させることにより、ループ回路6と金属層22とを、磁界結合によって電気的に接続する構成は、RFIDモジュール1をDVD8へ取り付ける際に適用してもよい。
また、RFIDモジュール1をCD24へ取り付ける際には、本実施形態と同様、図12中に示すように、ループ回路6a,6bの外周側と金属領域12とを積層させて、ループ回路6a,6bと金属層22とを電気的に接続させてもよい。なお、図12は、本実施形態の変形例を示す図である。
【0080】
また、特に図示しないが、ループ回路6の外周側の一部と金属領域12との距離を、微小な隙間を介して近接させるとともに、ループ回路6の外周側の残りの部分と金属領域12とを積層させて、ループ回路6と金属層22とを電気的に接続してもよい。
なお、RFIDモジュール1の取り付け対象を、金属領域12の内径がDVD8よりも大きいCD24とした場合、例えば、図11及び図12中に示すように、マッチング回路4を形成する大径の円環状金属箔の外径を、本実施形態のRFIDモジュール1と比較して大きくすることにより、金属領域12の構成に対応させる。
【0081】
(2)本実施形態のRFIDモジュール1では、マッチング回路4を、二つの円環状金属箔と、二つの板状金属箔から形成して、二つのループ回路6a及びループ回路6bを構成したが、マッチング回路4の構成は、これに限定するものではない。すなわち、例えば、図13中に示すように、マッチング回路4を、一つの円環状金属箔と、一つのC型状の金属箔(以下、「C型状金属箔」と記載する)と、二つの板状金属箔から形成して、二つのループ回路6a及びループ回路6bを構成してもよい。なお、図13は、本実施形態の変形例を示す図である。また、これらの金属箔は、個別に成形したものを組み合わせてもよく、また、一体に成形してもよい。
【0082】
ここで、C型状金属箔は、図13中に示す円環状金属箔よりも小径の円環状の金属箔を、半分に切断した形状に形成されており、二つの板状金属箔は、C型状金属箔の両端と、円環状金属箔の内周側とを接続している。また、ICチップ2は、C型状金属箔に接続されている。
このような構成のマッチング回路4では、図14中に示すように、ループ回路6aが形成する電流の周回経路が、ループ回路6bが形成する電流の周回経路よりも長くなる。なお、図14は、本実施形態の変形例を示す図である。また、図14中では、図1中と同様、ループ回路6aにより形成される電流の周回経路を、「第一の電流経路」と示し、ループ回路6bにより形成される電流の周回経路を、「第二の電流経路」と示している。
【0083】
しかしながら、このような構成のマッチング回路4であっても、金属層22に誘起された電流は、図13中に示すように、金属領域12上を、周回せずに往復移動することとなる。なお、図13中では、RFIDモジュール1を間に挟んだ二本の双方向矢印により、金属領域12上を往復移動する電流を示しているが、実際に金属領域12上を往復移動する電流は、多数の双方向矢印で示されるものである。
要は、マッチング回路4の構成は、RFIDモジュール1の外周側の一部に、互いに電流の流れる方向が逆方向である少なくとも二本の電流の流路を有し、これらの流路の内周側において、二本の電流の流路同士を連結する連結部を有する構成であればよい。
【0084】
(3)本実施形態のRFIDモジュール1では、RFIDモジュール1の取り付け対象を、中心を貫通する孔(中央孔10)が設けられた円環状の板状部材(DVD8)としたが、RFIDモジュール1の取り付け対象は、これに限定するものではない。すなわち、RFIDモジュール1の取り付け対象は、外形が直方体に形成された部材等、貫通孔が設けられていない部材であってもよい。この場合、例えば、図15中に示すように、RFIDモジュール1を取り付ける位置が、金属領域12に囲まれた凹部26の上方であり、凹部26を閉塞するように、RFIDモジュール1を取り付けてもよい。なお、図15は、本実施形態の変形例を示す図である。
【0085】
(第二実施形態)
以下、本発明の第二実施形態(以下、「本実施形態」と記載する)について、図面を参照しつつ説明する。
(構成)
まず、図1から図9を参照しつつ、図16を用いて、本実施形態のRFIDモジュール1の構成を説明する。
図16は、本実施形態のRFIDモジュール1の概略構成を示す平面図である。
【0086】
図16中に示すように、本実施形態のRFIDモジュール1は、ICチップ2と、各ループ回路6a,6bの構成を除き、上述した第一実施形態と同様の構成であるため、以下の説明は、ICチップ2及び各ループ回路6a,6bを中心に記載する。
ICチップ2は、各ループ回路6a,6bを接続するポート28を二つ備えている。なお、図16中では、二つのポート28のうち、図中で上方に示すポート28を、「ポート28a」と示し、図中で下方に示すポート28を、「ポート28b」と示す。
【0087】
なお、本実施形態では、ループ回路6aとポート28aとを接続し、ループ回路6bとポート28bとを接続することにより、ICチップ2とマッチング回路4とを直接接続して、ICチップ2とマッチング回路4とを電気的に接続している。
すなわち、本実施形態では、ループ回路6aとループ回路6bは、それぞれ、互いに異なるポート28に接続されている。
【0088】
各ループ回路6a,6bは、具体的には、二つのC型状の金属箔(以下、「C型状金属箔」と記載する)と、二つの板状の金属箔(以下、「板状金属箔」と記載する)から形成されている。なお、これらの金属箔は、個別に成形したものを組み合わせてもよく、また、一体に成形してもよい。
ここで、二つのC型状金属箔は、直径の異なる二つの円環状の金属箔を、それぞれ、半分に切断した形状に形成されている。
【0089】
また、二つの板状金属箔は、二つのC型状金属箔の両端同士を接続しており、二つの板状金属箔の一方は、その端部間が、ポート28に接続されている。
なお、本実施形態では、ICチップ2を、ポート28が金属領域12と積層しない位置でマッチング回路4と電気的に接続する。しかしながら、ICチップ2をマッチング回路4と電気的に接続する位置は、これに限定するものではなく、板状金属箔のポート28に接続される両端部のうち、少なくとも金属領域12から遠い方の端部が金属領域12と積層しない位置で、ICチップ2をマッチング回路4と電気的に接続すればよい。
【0090】
また、ループ回路6a,6bは、ループ回路6a及びループ回路6bがそれぞれ有するインピーダンスの虚部の合成値と、ポート28a,28bが有する入力インピーダンスの虚部の絶対値との差は、ICチップ2が有するインピーダンス値の30%以内となるように形成されている。
その他の構成は、上述した第一実施形態と同様である。
【0091】
(作用)
以下、図16を参照して、本実施形態の作用を説明する。
本実施形態では、上述したように、ループ回路6aとループ回路6bは、それぞれ、互いに異なるポート28に接続されている。
このため、ループ回路6aとループ回路6bに対し、異なるポート28で電位差を発生させることが可能となる。
【0092】
したがって、本実施形態のRFIDモジュール1では、同一のポート28で電位差を発生させる場合と比較して、RFIDモジュール1の外周側に配置される部分での電流の流れる方向を、互いに逆方向とすることが容易となる。
その他の作用は、上述した第一実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
【0093】
(第二実施形態の効果)
以下、本実施形態の効果を列挙する。
(1)本実施形態のRFIDモジュール1では、ループ回路6aとループ回路6bに対し、異なるポート28で電位差を発生させることが可能となる。
このため、同一のポート28で電位差を発生させる場合と比較して、RFIDモジュール1の外周側に配置される部分での電流の流れる方向を、互いに逆方向とすることが容易となる。
【0094】
その結果、同一のポート28で電位差を発生させる場合と比較して、RFIDモジュール1を取り付けた取り付け対象(DVD等)と、RFIDリーダライタとの相互通信において、良好な通信性能を発揮して、情報を確実に読取可能な範囲を拡大することが可能となる。
【0095】
(2)本実施形態のRFIDモジュール1では、互いに異なるポート28に接続される二つのループ回路6a,6bを有するマッチング回路4とICチップ2とのインピーダンスの整合を、効率的に行うことが可能となる。
このため、二つのポート28a,28bを有するICチップ2を備えたRFIDモジュール1に対し、動作の安定性を向上させることが可能となる。
その結果、二つのポート28a,28bを有するICチップ2を備えたRFIDモジュール1を取り付けた取り付け対象と、RFIDリーダライタとの相互通信において、良好な通信性能を発揮して、情報の読取を確実に行うことが可能となる。
【0096】
(3)本実施形態のRFIDモジュール1では、二つのポート28a,28bを有するICチップ2を備えたRFIDモジュール1に対し、RFIDモジュール1を取り付け部に取り付けた状態において、RFIDモジュール1の受信感度を向上させることが可能となる。
このため、二つのポート28a,28bを有するICチップ2を備えたRFIDモジュール1に対し、RFIDモジュール1を取り付け部に取り付けた状態において、情報の読取性能を向上させることが可能となる。
【0097】
その結果、二つのポート28a,28bを有するICチップ2を備えたRFIDモジュール1を取り付けた取り付け対象と、RFIDリーダライタとの相互通信において、良好な通信性能を発揮して、情報を確実に読取可能な範囲を拡大することが可能となる。
【0098】
(応用例)
以下、本実施形態の応用例を記載する。
(1)本実施形態のRFIDモジュール1では、ICチップ2の構成を、二つのポート28a,28bを備えた構成とし、マッチング回路4の構成を、二つのループ回路6a,6bを備えた構成としたが、ICチップ2及びマッチング回路4の構成は、これに限定するものではない。
【0099】
すなわち、例えば、図17中に示すように、ICチップ2の構成を、三つのポート28a〜28cを備えた構成とし、マッチング回路4の構成を、三つのループ回路6a〜6cを備えた構成としてもよい。なお、図17は、本実施形態の変形例を示す図である。
また、例えば、図18中に示すように、ICチップ2の構成を、四つのポート28a〜28dを備えた構成とし、マッチング回路4の構成を、四つのループ回路6a〜6dを備えた構成としてもよい。なお、図18は、本実施形態の変形例を示す図である。
【0100】
(第三実施形態)
以下、本発明の第三実施形態(以下、「本実施形態」と記載する)について、図面を参照しつつ説明する。
(構成)
まず、図1から図9を参照しつつ、図19を用いて、本実施形態のRFIDタグ30の構成を説明する。
【0101】
図19は、本実施形態のRFIDタグ30を取り付けたDVD8を示す平面図である。
図19中に示すように、本実施形態のRFIDタグ30は、RFIDモジュール1と、放射素子32を備えている。なお、RFIDモジュール1の構成は、上述した第一実施形態と同様であるため、RFIDモジュール1に関する説明は省略する。
【0102】
放射素子32は、例えば、金属箔等を用いて、電波を放射可能に形成されており、RFIDタグ30を取り付け対象(DVD8)の取り付け部へ取り付ける前の状態、すなわち、RFIDタグ30単体の状態で、ループ回路6と電気的に接続している。
【0103】
また、放射素子32は、RFIDタグ30をDVD8に取り付けた状態で、金属領域12と積層する形状に形成されている。
その他の構成は、上述した第一実施形態と同様である。
【0104】
(作用)
以下、図19を参照して、本実施形態の作用を説明する。
本実施形態では、上述したように、放射素子32が、RFIDタグ30をDVD8の取り付け部へ取り付ける前の状態、すなわち、RFIDタグ30単体の状態で、ループ回路6と電気的に接続している。
したがって、本実施形態のRFIDモジュール1では、RFIDモジュール1を備えたRFIDタグ30単体で、RFIDモジュール1の受信感度を向上させることが可能となる。
その他の作用は、上述した第一実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
【0105】
(第三実施形態の効果)
以下、本実施形態の効果を記載する。
(1)本実施形態のRFIDタグ30では、RFIDモジュール1を備えたRFIDタグ30単体で、RFIDモジュール1の受信感度を向上させて、情報の読取性能を向上させることが可能となる。
【0106】
その結果、RFIDタグ30の取り付け対象が金属層を有していない場合や、金属層の面積が小さい場合であっても、RFIDリーダライタとの相互通信において、良好な通信性能を発揮して、情報を確実に読取可能な範囲を拡大することが可能となる。
【符号の説明】
【0107】
1 RFIDモジュール
2 ICチップ
4 マッチング回路
6 ループ回路
8 DVD
10 中央孔
12 金属領域
14 非金属領域
16 本体層
18 ディスクラベル
20 タグ基材
22 金属層
24 CD
26 凹部
28 ポート
30 RFIDタグ
32 放射素子
34 グランド部
36 モノポール部
38 給電部
40 折り返し部
42 ストラップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ICチップと、当該ICチップと電気的に接続されたマッチング回路と、を備えるRFIDモジュールであって、
前記マッチング回路は、前記ICチップと電気的に並列接続し且つ電流が周回する複数のループ回路からなり、
前記複数のループ回路のうち少なくとも一つのループ回路は、RFIDモジュールの外周側に配置される部分での電流の流れる方向が、他のループ回路においてRFIDモジュールの外周側に配置される部分での電流の流れる方向と逆方向であることを特徴とするRFIDモジュール。
【請求項2】
前記複数のループ回路は、それぞれ、RFIDモジュールの外周に沿って配置される電流の流路を有することを特徴とする請求項1に記載したRFIDモジュール。
【請求項3】
前記複数のループ回路がそれぞれ有するインピーダンスの虚部の合成値と前記ICチップが有するインピーダンスの虚部の絶対値との差は、前記ICチップが有するインピーダンス値の30%以内であることを特徴とする請求項1または2に記載したRFIDモジュール。
【請求項4】
前記ICチップは、前記ループ回路を接続する複数のポートを有し、
前記複数のループ回路のうちRFIDモジュールの外周側に配置される部分での電流の流れる方向が互いに逆方向である少なくとも二つのループ回路は、互いに異なるポートに接続されることを特徴とする請求項1または2に記載したRFIDモジュール。
【請求項5】
前記互いに異なるポートに接続される少なくとも二つのループ回路がそれぞれ有するインピーダンスの虚部の合成値と互いに異なるポートが有する入力インピーダンスの虚部の絶対値との差は、前記ICチップが有するインピーダンス値の30%以内であることを特徴とする請求項4に記載したRFIDモジュール。
【請求項6】
金属層を含まない非金属領域と前記非金属領域の外周を無端状に包囲し且つ前記金属層を含む金属領域とを有する取り付け部に取り付けられるRFIDモジュールであって、
前記複数のループ回路のうちRFIDモジュールの外周側で電流が流れる方向が互いに逆方向である少なくとも二つのループ回路は、前記ICチップとのインピーダンスの虚部の整合を実現した状態で、前記金属層と電気的に接続することを特徴とする請求項1から5のうちいずれか1項に記載したRFIDモジュール。
【請求項7】
前記複数のループ回路のうちRFIDモジュールの外周側で電流が流れる方向が互いに逆方向である少なくとも二つのループ回路は、RFIDモジュールの外周側で電流が流れる部分を前記金属領域と積層させて前記金属層と電気的に接続し、その他の部分を前記非金属領域と積層させた状態で、前記取り付け部に取り付けられることを特徴とする請求項6に記載したRFIDモジュール。
【請求項8】
前記ICチップは、前記RFIDモジュールを前記取り付け部に取り付けた状態で前記金属領域と積層しない位置で、前記マッチング回路と電気的に接続することを特徴とする請求項6または7に記載したRFIDモジュール。
【請求項9】
請求項1から8のうちいずれか1項に記載したRFIDモジュールと、前記複数のループ回路のうち少なくとも一つのループ回路と電気的に接続して電波を放射する放射素子と、を備えることを特徴とするRFIDタグ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2011−166340(P2011−166340A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−25182(P2010−25182)
【出願日】平成22年2月8日(2010.2.8)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】