説明

RNA干渉のためのカチオン性siRNA、合成及び使用

本発明は、カチオン性siRNAであって、それらは二本鎖RNAフラグメントであり、その末端にオリゴカチオンがグラフトされ、カチオン電荷の数は、RNA鎖のヌクレオチド内ホスファートによって有されるアニオン電荷の数に匹敵するかまたはそれより大きいことを特徴とするカチオン性siRNAに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カチオン性siRNA(small interfering ribonucleic acid:低分子干渉リボ核酸)、それらの自動合成、及びRNA干渉のメカニズムに関与するそれらの細胞内浸透特性に基づく、それらの生物学的応用に関する。
【背景技術】
【0002】
RNA干渉は、内在性又は外来性の遺伝子の発現の配列特異的制御を可能にする細胞内メカニズムである。このメカニズムのメディエータは、約2ターンのビカテナリーリボ核酸の小さいヘリックス(siRNA)であり、標的遺伝子のフラグメントと同一配列である。RNA干渉は、細胞のクロマチンにおける標的遺伝子の永続的な修飾をもたらし得るが、細胞内におけるsiRNAの導入のほとんどの即時的効果は標的メッセンジャーRNAの不活性化である。siRNAは、通常、3’-dTdT伸長を含む相補配列の2つの19塩基長のオリゴリボヌクレオチドから形成されるが、27塩基長までのわずかな不完全な対形成又は配列が効果的である場合もある。
【0003】
タンパク質の消失又はウイルスRNAの選択的破壊は、腫瘍、アレルギー又は感染症のような領域において広範囲に興味のある治療への応用を有するかもしれない。残念なことに、培養液又はインビボにおいて細胞内にsiRNAそれ自体を導入するための無益な試みにより示されるように、無傷の動物細胞は核酸に対して不浸透性である。それにもかかわらず、動物実験は、細胞を急速に再生し得る器官である肝臓、又は特に大きくかつ強健な筋細胞がsiRNAを取り込み、注入工程により誘発されるそれらの細胞膜の破裂を免れることができることを示す。しかし、大量の液体の急速静注又は筋肉内注射の非常に限局的な性質は、ヒトの治療における使用に適合しない。
【0004】
細胞膜を破裂させることなく、細胞の細胞質にsiRNAをトランスフェクトすることは、過剰のカチオン性トランスポータと混合した後に得られ得る。ポリエチレンイミンのようなポリカチオン性高分子又はカチオン性脂質凝集体は、このベクターの役割を果たし得る(非特許文献1)。具体的には、ポリアニオン性siRNA分子は、過剰のトランスポータにより凝集し、微細なカチオン性沈殿物を形成する。これらの粒子は、細胞表面に存在するアニオン性ヘパランスルファートによって、培養下の多くの細胞内へのsiRNAの効率的なトランスフェクションを可能にする(非特許文献2)。
【0005】
動物において、同じことはもはや当てはまらない。血中に注射される場合、粒子は吸収され、微生物粒子を貪食する細胞により消化される。組織又は腫瘍に注射される場合、それらのサイズ(100〜1000nm)は、注射部位を超えて位置する細胞に向かう、それらの拡散を防止する。それにもかかわらず、最近の研究(非特許文献3〜4)は、粒子をポリエチレングリコール残基で粒子を覆うことにより(ステルス粒子)、細胞結合を全体的に阻害することなく、血液の食細胞を回避することが可能であることを示す。
【0006】
これらの考察により、発明者らは、本質的にカチオン性のsiRNA、すなわち、カチオン電荷が、核酸のホスファートにより生じるアニオン電荷を相殺する、修飾siRNA分子の合成を想像するに至った。これらの化合物は、おそらく細胞に入るためのベクターなしで済ますことができ、その結果として薬物は粒子でなく分子であるという利点を有するだろう。
【0007】
メッセンジャーRNAを破壊するタンパク質複合体へのsiRNAの結合又はハイブリダイゼーションによる後者の認識のいずれかを乱さないように、化学修飾は、核酸の末端においてのみ可能である。
【0008】
過去において、オリゴヌクレオチドの末端に、アンチセンスアプローチによる治療目的のためにそれらの細胞透過を増大させることを目的として、非常に多数の化学ユニットがグラフトされていた。ごく最近発表された多くの論文は、siRNAの分野において類似の試みを報告している。
【0009】
2006年に発表された最初の論文は、ジスルフィド架橋を介したポリエチレングリコールのsiRNAへのコンジュゲーションについて言及しているが、細胞のインターナリゼーションは、それにもかかわらずカチオン性ポリマーを混合することによる非共有結合性会合(association)を必要とする(非特許文献5)。
【0010】
2007年において、2つの論文により、7又は8個のカチオン電荷を含む種々のカチオン性ペプチドにコンジュゲートされたsiRNA(40個のアニオン電荷)の使用が記載された。これらのsiRNAは、著者自身も認めているようにアニオン性が大きいままであり、細胞内浸透及び効果は増大しない(非特許文献6及び7)。
【0011】
前記論文に記載されたように、前もって製造されたポリカチオンのオリゴヌクレオチドへの直接的化学グラフト処理が可能であるが、沈殿の問題を引き起こし、オリゴヌクレオチドの電荷に匹敵する多くの電荷を含むポリカチオンを操作する問題になる場合に、カチオン性ポリマーの多分散の評価における特徴づけを不明確にし得る。発明者らは、オリゴヌクレオチド配列自体の合成に用いられるものと同一のコンジュゲーションケミストリーを介したオリゴカチオンの逐次的合成の技術を頼りにすることにより上記問題を克服した。オリゴデオキシリボヌクレオチド−オリゴスペルミンコンジュゲートの自動合成は、先行のPCT国際特許出願(特許文献1)の対象であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際公開第07/069092号パンフレット
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】ボルカト−ベレミン・エイ・エル(BOLCATO-BELLEMIN, A.L)、ボネット・エム・イー(BONNET, M. E.)、クロウサト・ジー(CREUSAT, G.)、エルバヒア・ピー(ERBACHER, P.)およびベヘル・ジェイ・ピー(BEHR, JP)著、「スティッキー・オーバーハングス・エンハンス・siRNA−メディエイテッド・ジーン・サイレンシング(Sticky overhangs enhance siRNA-mediated gene silencing.)」、Proc Natl Acad Sci U S A、2007年、第104巻、p.16050-16055
【非特許文献2】コパツ・アイ(KOPATZ, I.)、レミー・ジェイ・エス(REMY, J.S.)およびベヒア・ジェイ・ピー(BEHR, J. P.)著、「ア・モデル・フォー・ノン・ヴイラル・ジーン・デリバリー・スルー・シンデカン・アドヘション・モレキュールス・アンド・パワード・バイ・アクション(A model for non-viral gene delivery: through syndecan adhesion molecules and powered by actin)」、 J Gene Med、2004年、第6巻、p.769-776
【非特許文献3】ジンメルマン・ティー・エス(ZIMMERMANN, T.S.)、リー・エイ・シー(LEE, A.C.)、アキンク・エイ(AKINC, A.)、ブラムラゲ・ビー(BRAMLAGE, B.)、(バンクロト・ティー・ディー(BUMCROT, D.)、フェドラック・エム・エヌ(FEDORUK, M. N.)、ハルボルス・ジェイ(HARBORTH, J.)、ヘイス・ジェイ・エイ(HEYES, J.A.)、ジェフェス・エル・ビー(JEFFS, L.B.)、ジョン・エム(JOHN, M.)、ジャッジ・エイ・ディー(JUDGE, A.D.)、ラム・ケイ(LAM, K.)、マックリントック・ケイ(MCCLINTOCK, K.)、ネチェフ・エル・ブイ(NECHEV, L.V.)、パルマー・エル・アール(PALMER, L. R.)、ラシー・ティー(RACIE, T.)、ロール・アイ(ROHL, I.)、セイフェルト・エス(SEIFFERT, S.)、シャンムガン・エス(SHANMUGAM, S.)、ソド・ブイ(SOOD, V.)、ソウチェク・ジェイ(SOUTSCHEK, J.)、トウドジャルスカ・アイ(TOUDJARSKA, I.)、フェート・エイ・ジェイ(WHEAT, AJ.)、ヤウォルスキ・イー(YAWORSKI, E.)、ゼダリス・ダブリュー(ZEDALIS, W.)、コテリアンスキ・ブイ(KOTELIANSKY, V.)、マンノハラン・エム(MANOHARAN, M.)、ボルンロシア・エイチ・ピー(VORNLOCHER, H. P.)およびマクラキアン・アイ(MACLACHLAN, I.)著、「RNAi−メディエイテッド・ジーン・サイレンシング・ノン−ヒューマン・プライメイツ(RNAi-mediated gene silencing in non-human primates.)」、 Nature、2006年、第441号 、p.111 -114
【非特許文献4】サンテル・エイ(SANTEL, A.)、アレク・エム(ALEKU, M.)ケイル・オー(KEIL, O.)、エンドルシャット・ジェイ(ENDRUSCHAT, J.)、エシェ・ブイ(ESCHE, V.)、フィッシュ・ジー(FISCH, G.)、ダメス・エス(DAMES, S.)、ロフェラー・ケイ(LOFFLER, K.)、フェチトナー・エム(FECHTNER, M.)、アーノルド・ダブリュー(ARNOLD, W.)、ギエス・ケイ(GIESE, K.)、クリッペル・エイ(KLIPPEL, A.)およびカウフマン・ジェイ(KAUFMANN, J.)著、「ア・ノベル・siRNA−リポプレックス・テクノロジー・フォー・RNA・インターフェアランス・イン・ザ・マウス・バスキュラー・エンドセリウム(A novel siRNA-lipoplex technology for RNA interference in the mouse vascular endothelium.)」、Gene Ther、2006年、第13巻、p.1222-1234
【非特許文献5】キム・エス・エイチ(KIM, S. H.)、ヨン・ジェイ・エイチ(JEONG, J. H.)、イ・エス・エイチ(LEE, S. H.)、キム・エス・ダブリュー(KIM, S.W.)およびパク・ティー・ジー(PARK, T.G.)著、「PEGコンジュゲーテッド・VEGF siRNAフォー・アンチ−アンジオゲニック・ジーン・セラピー(PEG conjugated VEGF siRNA for anti-angiogenic gene therapy.)」、Journal of Controlled Release、2006年、第116巻、p.123-129
【非特許文献6】モショス・エス・エイ(MOSCHOS, S.A.)、ウィリアムス・エイ・イー(WILLIAMS, A.E.)およびリンドセイ・エム・エイ(LINDSAY, M.A.)著、「セル−ペネトレーティング−ペプチド−メディエイテッドsiRNAラング・デリバリー(Cell-penetrating- peptide-mediated siRNA lung delivery.)」、Biochemical Society Transactions、2007年、第35巻、p.807- 810
【非特許文献7】ターナー・ジェイ・ジェイ(TURNER, JJ.)、ジョーンズ・エス(JONES, S.)、ファバニ・エム・エム(FABANI, M. M.)、イバノバ・ジー(IVANOVA, G.)、アルズマノフ・エイ・エイ(ARZUMANOV, A.A.)およびガイト・エム・ジェイ(GAIT, MJ.)著、「RNAターゲッティングウィズ・ペプチド・コンジュゲーツ・オフ・オリゴヌクレオチド,siRNA・アンドPNA(RNA targeting with peptide conjugates of oligonucleotides, siRNA and PNA.)」、Blood CeIIs, Molecules, and Diseases 、2007年、第38巻、p.1-7
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
先行のPCT出願において記載された化合物の合成/精製/特徴づけ/貯蔵に対して重要な修飾がなされた。2’−OH基の存在が合成をより困難にし、上記全てが化合物をより不安定にするからである。その脱保護は、追加の工程を必要とする−痕跡量のRNアーゼがRNAを分解し−スペルミンのアンモニウム/アミン基は、オリゴリボヌクレオチド−オリゴスペルミンコンジュゲートの加水分解をもたらす酸/塩基触媒である。
【0015】
従って、本発明は、本質的にカチオン性のsiRNAを提供するために行われる。
【0016】
本発明はまた、GMP生産を目的として工業スケールに拡張され得る、これらのカチオン性siRNAの合成方法のために行われる。
【0017】
他の態様によると、本発明はまた、薬学及び生物工学の分野における、新規なsiRNAの適用のために行われる。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明のカチオン性siRNAは、それらが二本鎖RNAのフラグメントであり、その末端においてグラフトされたオリゴカチオンがあり、グラフトされたカチオン電荷の総数が、RNA鎖のヌクレオシド内のホスファートにより生じるアニオン電荷の数に匹敵するか又はそれより大きいことを特徴とする。
【0019】
意外にも、また、実施例において与えられる結果により証明されるように、このようなカチオン性siRNAは任意のトランスフェクション剤の非存在下にRNA干渉を誘導し得る。この証明は、培地中の細胞において、大部分がアニオン性のままであるカチオン性siRNA−オリゴペプチドコンジュゲートが効果を示さない制御環境においてなされる(上記参照)。
【0020】
「二本鎖RNA」なる用語は、リボースの2’位のH以外の原子の存在により誘導されるAファミリーの核酸の二重らせんを意味する(DNAの対語として、これはBヘリックスである)。
【0021】
カチオン性siRNAの全体の電荷Σ、すなわち、(化学的にグラフトされたカチオン電荷の合計)−(ヌクレオシド内ホスファート基のアニオン電荷の合計)は−30〜+50である。具体的には、配列番号1のGRKKRRQRRRPPQC(電荷+9;Σ=−31)のTATペプチド、又は配列番号2のRQIKIWFQNRRMKWKKC(電荷+8;Σ=−32)の透過ペプチドにグラフトされたsiRNA(電荷−40)は、ベクターなしでRNA干渉を誘導することができない(9)。
【0022】
RNA二重らせんの塩基相補性は全てであるか、又は部分的であり得る。
【0023】
一実施態様の変形において、各オリゴリボヌクレオチドは二重らせんの3’末端に一本鎖伸長を有する。
【0024】
他の変形において、オリゴカチオンは、センス鎖の3’及び/又は5’末端で、及び/又はアンチセンス鎖の3’末端でグラフトされており、アンチセンス鎖は、メッセンジャーRNAの分解に関与するタンパク質複合体を導くものである。アンチセンス鎖の5’位におけるグラフト処理は、RNA干渉の効果を無効にする。
【0025】
好ましくは、本発明の対象であるカチオン性siRNAは、15〜30リボヌクレオチド長、特に19〜30リボヌクレオチド長の二本鎖RNAフラグメントから形成され、その末端において、1〜3個のオリゴカチオンと共有結合によりグラフトされており、その累積カチオン電荷の数が、RNAにより生じるアニオン電荷の数に匹敵するか、又はそれより大きい。
【0026】
本発明は、より特定的には、カチオン性siRNAであって、少なくとも1本の鎖が式(I)
【0027】
【化1】

【0028】
[式中、
Niはi塩基長のオリゴリボヌクレオチドを表し、ここで、i=15〜30、特に19〜30であり、また、siRNAの二重らせんのA型を保存する任意の化学的修飾又は置換がなされ、
Ajはj塩基長のオリゴカチオンを表し、ここで、j=1〜50であり、Aは、
− 式(II)
【0029】
【化2】

【0030】
(式中、R、R及びRは同一であっても異なっていてもよく、低級アルキレン基を表し、XはNH又はNC(NHであり、n1=2〜20である)、又は
− 式(III)
【0031】
【化3】

【0032】
(式中、R、R及びRは同一であっても異なっていてもよく、低級アルキレン基を表し、Xはプトレシン、スペルミジン又はスペルミンから選ばれる)、又は
− 式(IV)
【0033】
【化4】

【0034】
(式中、R及びRは同一であっても異なっていてもよく、低級アルキレン基を表わし、(aa)n2はアルギニン、リジン、オルニチン、ヒスチジン又はジアミノプロピオン酸のようなカチオン性側鎖を有する、天然のアミノ酸を含むペプチドであり、n2=2〜20である)]
に相当するカチオン性siRNAのために行われる。
【0035】
本明細書及び特許請求の範囲において、「低級アルキレン基」なる用語は、線状(linear)、分枝鎖又は置換C1−C5アルキレン基を意味する。
【0036】
本発明の好ましい一実施態様において、オリゴカチオンはオリゴアミンである。これらのオリゴアミンは、有利には、スペルミン、スペルミジン又はプトレシンを含む群から選択される。
【0037】
対応するカチオン性siRNAは、有利には、構造(V)
【0038】
【化5】

【0039】
(式中、N、i及びjは前記に定義した通りである)
のオリゴヌクレオチド−オリゴスペルミンである。
【0040】
RNA干渉の適用分野は拡大している。siRNAは、薬学及び生物工学産業により用いられ、遺伝子、疾患及びこれらの疾患に対して潜在的に活性である分子の間の関連性が確立されている;これらは基本的に、動物細胞におけるハイスループットスクリーニング技術である。本発明のカチオン性siRNAは、スクリーニングを簡素化し、中でも、前臨床段階の化合物の検証において生理学、生体分布および排出が考慮に入れられた場合、動物まで技術を拡張し、それ故に、臨床段階において成功の機会が増大させられ、費用のかかる失敗が低減させられる。
【0041】
しかし、siRNAの最も大きな可能性は、患者の細胞内におけるRNA又はタンパク質の生合成を阻害するための薬物としてのそれらの直接的使用において見いだされる。その結果、癌、ウイルス感染、ぜん息又は自己免疫疾患のような非常に多様な病的状態が治療可能である。
【0042】
従って、本発明は、これらの適用のためのカチオン性siRNAの使用に及ぶ。
【0043】
従って、本発明は、薬物として用いられる、前記に定義されたカチオン性siRNAのために行われる。
【0044】
より詳細には、本発明は、上記に定義された少なくとも1種のsiRNAの有効量を、薬学的に不活性な担体と組み合わせて含むことを特徴とする医薬組成物のために行われる。
【0045】
本発明はまた、分子生物学、機能的ゲノミクス及びスクリーニング技術における、前記カチオン性siRNAの適用のために行われる。
【0046】
本発明はまた、カチオン性siRNAの鎖の自動合成であって、3’から5’へのリボヌクレオチドの固相担体への逐次的カップリングと、それに先行するおよび/またはそれに続く、カチオン性シントンの逐次的カップリングを含み、該鎖は、式(VI):
【0047】
【化6】

【0048】
(式中、N、i、Aおよびjは上記定義の通りである)
に対応することを特徴とする自動合成のために行われる。
【0049】
本発明は、より詳細には、カチオン性siRNAを合成する方法であって、カチオン性シントンは、ホスホラミダイトオリゴアミンであり、
− 式(VII):
【0050】
【化7】

【0051】
(式中、R、R、R及びn1は上記定義の通りであり、Xは保護された基NH又はNC(NHであり、Rは−CHCHCN又は低級アルキレン基であり、R10は低級アルキレン基であるか、又は−N(R10はピロリジノ、ピペリジノ又はモルホリノ基であり、Protは、DMT又はMMTのようなオリゴヌクレオチド合成において用いられる保護基である)、
− 式(VIII):
【0052】
【化8】

【0053】
(式中、R、R及びRは、同一であっても異なっていてもよく、低級アルキレン基を表し、Xは、適切な保護基を有するプトレシン、スペルミジン又はスペルミンであり、R及びR10は上記定義の通りである)、または
−式(IX):
【0054】
【化9】

【0055】
(式中、R、R、R、R10、n2及びProtは上記定義の通りであり、(aa)n2は、保護されたカチオン性側鎖を有する天然のアミノ酸、例えば、アルギニン、リジン、オルニチン、ヒスチジン又はジアミノプロピオン酸を含むペプチドであり、n2=2〜20である)
に対応する方法のために行われる。
【0056】
本発明の好ましい一実施形態において、オリゴアミンはオリゴスペルミンである。
【0057】
本発明の他の特徴及び利点は、以下の実施例において与えられる。
【0058】
オリゴリボヌクレオチド−オリゴスペルミンコンジュゲートの合成及び精製の特徴、並びに対応するsiRNAのRNA干渉特性は、これらの実施例に詳述されているが、本発明は、これらの個々の化合物に限定されない。特に、ルシフェラーゼについてスクリーニングし、かつ、30個までのスペルミンユニットを含む21塩基長の合成が記載される。カチオン電荷の数が、対応するsiRNAにより生じるホスファートの数と類似している場合、この遺伝子を構成的に発現する細胞系において、ルシフェラーゼ遺伝子の特に大きい選択的消退が観察される。
【0059】
実施例において、図1〜6が参照されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】水中のオリゴヌクレオチド<GL3ss>Sの分解を示すHPLC分析。
【図2】オリゴヌクレオチド<GL3ss>S(n=0、1、3、5である)、及び<GL3as>S(n=0、1である)のHPLCプロファイル。
【図3】MALDI−TOF質量スペクトル。
【図4】スペルミン数に応じたルシフェラーゼ遺伝子の消退。
【図5】siRNA濃度に応じたルシフェラーゼ遺伝子の消退。
【図6】特異性の制御。
【発明を実施するための形態】
【0061】
実施例1:下記式の、n個のスペルミンを含む21塩基長のオリゴヌクレオチドの合成、精製及び特徴づけ
【0062】
【化10】

【0063】
(式中、<GL3ss>は21塩基長のオリゴヌクレオチドであり、Sはホスホスペルミン残基であり、n=0、1、3、5、20、30である)
自動合成:一連の保護された21塩基長の配列番号3:3’dTdT-AGCUUCAUGAGUCGCAUUC5’のオリゴヌクレオチド<GL3ss>−そのリボヌクレオチド部分は、プラスミドGL3(promega)中に存在するフォチナス・ピラリス(photinus pyralis)ルシフェラーゼ遺伝子のヌクレオチド153〜171に対応し、β−シアノエチル(cyanoethyl:CE)ホスホラミダイドケミストリーを用いて、Expedite合成機上で固相合成された。樹脂は、2個の予めグラフトされたデオキシチミジンを既に含んでいた。合成は、スペルミンホスホラミダイトシントンを用いてnサイクル継続された。樹脂に結合した、下記構造を有する化合物(n=0、1、3、5、20、30)が得られた。
【0064】
【化11】

【0065】
自動合成に用いられる、CEホスホラミダイト(Ultramild担体)及び一般的な試薬は、Glen Research(Eurogentec)から得られる。スペルミンホスホラミダイトはNovalystから得られる。Ultramild試薬は、核酸塩基上の保護基の脱保護及び固相担体からのオリゴの同時切断を、より穏やかなアルカリ性条件下に可能にする。用いられるモノマー、すなわち、フェノキシアセチル基で保護されたA(Pac-A-CE)、4−イソプロピルフェノキシアセチル基で保護されたG((iPr-Pac)-G-CE)、アセチル基で保護されたC(Ac-C-CE)は、ワークアップの間の化合物の分解を防止した。ヌクレオチドの2’−OH位は、tert−ブチルジメチルシリル(tert-butyldimethylsilyl:TBDMS)保護基で保護された。
【0066】
自動合成は、より長い反応時間(20分)及びより濃いホスホラミダイト溶液(0.1M、すなわち、無水アセトニトリルの容積(mL)あたり120mg)を必要とするスペルミンホスホラミダイトのカップリングの場合を除き、標準的カップリング条件下に実施された。20及び30個のスペルミンのカップリングの場合、最初の4個のスペルミンの場合に二重カップリング反応が必要であった。
【0067】
合成の各工程において放出される、着色したジメトキシトリチルカチオンを含む画分を集め、希釈し、分光光度法により分析し、カップリング工程についての収率が決定された。4種の天然のヌクレオチド(A、U、C及びG)のカップリングについて、収率は97%を超えたが、スペルミンホスホラミダイトのカップリングについての収率は90〜98%であった。
【0068】
同様に、以下を合成した:
− 20個のスペルミンを含むネガティブコントロール配列である配列番号4−その配列は、GL2プラスミド(Promega)のルシフェラーゼの対応領域に由来する:3’dTdT-AGCUUCAUAAGGCGCAUGC5’。オリゴヌクレオチド<GL2ss>S20は、GL3のホモログ配列と比べて3個のミスマッチを含み、結果として、対応するsiRNAは、細胞により産生されるGL3ルシフェラーゼのメッセンジャーRNAと干渉する能力を有しない;
− アンチセンス配列である配列番号5:3’dTdT-GAAUGCGACUCAUGAAGCU5’。このものは、5’スペルミンを含む。この場合、それはカチオン部分を有するsiRNAの二重らせんの他の鎖<GL3as>Sである。
【0069】
【表1】

【0070】
全ての場合において、オリゴマーの最終的な5’位にDMT基を保存して精製を容易にするDMT−ON戦略が用いられた。
【0071】
合成後処理:自動合成の後、オリゴマーは、標準的なUltramild条件下、室温で28%アンモニア水による終夜の処理によって、固相担体から開放され、同時に脱保護された。
【0072】
凍結乾燥後、第2工程は、テトラブチルアンモニウムフルオリド(tetrabutylammonium fluoride:TBAF)の1.0MのTHF溶液(Aldrich)を用いて、2’−OH位のTBDMS基を脱保護することに存する。オリゴヌクレオチドを、暗所中室温で、TBDMS基あたり50当量のTBAFで15時間にわたって処理した。
【0073】
精製:オリゴヌクレオチドは、Poly-Pak II(登録商標)カラム(Glen Research/Eurogentec)を用い、供給業者により与えられる使用説明書に従って精製された。最終的な溶出は、アセトニトリル/水の混合液(50/50)を用いて行われたが、20および30個のスペルミンを含むオリゴヌクレオチドについては除かれ、これは、1/20に希釈されたアセトニトリル/28%アンモニア水の使用を必要とした(20/80)。オリゴヌクレオチドを含むフラクションは、それらの1滴を蛍光薄層シリカプレート上に置くことによって明らかにされ、直ぐに混合され、凍結乾燥させられ、溶媒が除去され、かつ、分解が回避された。白色粉末がこのようにして得られた。
【0074】
オリゴリボヌクレオチドの操作は、リボヌクレアーゼの供給源の細心の排除も必要とする。従って、手の上に存在するRNアーゼによる汚染を回避するために手袋を着用することが必須である。全て、層流煙霧カップボード下に、滅菌機器(ピペット、エッペンチューブ)が用いられた。
【0075】
最初に、RNAサンプルを水に溶解させ、冷凍庫に保存した。これらの条件下に、数ヶ月後であっても修飾されていない鎖は安定なままであるが、HPLC分析は、オリゴリボヌクレオチド−オリゴスペルミンが非常に速く分解されたことを示した(図1、HPLC条件は以下を参照)。
【0076】
従って、オリゴヌクレオチドをpH5.6のホスファートバッファー(50mM)に溶解させ、−20℃で保存し、3月後でさえ、スペルミンが触媒する加水分解による化合物の分解を回避する(HPLCモニタリング)。
【0077】
オリゴヌクレオチドの濃度は、以下のモル吸光係数(260nm、mol−1dmcm−1)を用いて決定された。
【0078】
【数1】

【0079】
それぞれ0、1、3及び5個のスペルミンを含む、全体として負に荷電したオリゴヌクレオチドを、0〜100%の範囲のBの直線的な勾配のBを有する陰イオン交換HPLC(Macherey Nagel SAX 1000-8)により15分間かけて分析した(A:KHPO 20mM、AcCN 20%;B:A、1M NaCl)。HPLCプロファイルを図2に示す。
【0080】
オリゴヌクレオチドを、蒸留水500μLに溶解させた。プレート上で、サンプル及びβ−ヒドロキシピルビン酸マトリクスを一緒に混合した。結晶化した時点で、サンプルをBruker Ultrafex機器で分析した。質量スペクトルを図3に示す。
【0081】
【表2】

【0082】
実施例2:RNA干渉;カチオン性siRNAを用いたルシフェラーゼ遺伝子の消退。カチオン電荷の数の効果
細胞培養:プラスミドpGL3(Promega)の安定なトランスフェクションにより、ヒト気管支上皮細胞(CCL-185、ATCC)から細胞系A549Lucを得る。
【0083】
A549Luc細胞を、10%のウシ胎仔血清(FCS、Perbio)、2mMのグルタマックス(Eurobio)、100U/mLのペニシリン(Eurobio)及び100μg/mLのストレプトマイシン(Eurobio)を追加した全RPMI 1640培地(Eurobio)中で培養し、水分飽和雰囲気中、37℃及び5% COでインキュベートした。
【0084】
siRNAのトランスフェクションの1日前に、トリプシン(Eurobio)を用いて細胞を剥離し、RPMI/FCS培地に再懸濁させ、これに16μL/mLの抗生物質G-418(Promega)を加えた。24ウェルのプレートに、全培地1mL中、ウェルあたり25000細胞を調製した。
【0085】
二本鎖siRNAの形成及び細胞とのインキュベーション:最初に、二本鎖siRNAが、それらの2つの相補鎖の等モル混合、70℃に加熱することによるハイブリダイゼーションおよび冷却によって調製された。濃度は、細胞に関して1、10または100nMの最終濃度に調節された。最終濃度は、細胞に対し、1、10又は100nMに調整した。次いで、形成された二本鎖をRPMI培地100μL中に希釈した。
【0086】
siRNAの細胞内への浸透のためのポジティブコントロールは、製造業者の推奨に従って用いられる、脂質トランスフェクション剤であるINTERFERin(Polyplus−トランスフェクション)を用いて実施された。INTERFERin(2μL)をsiRNAに加えた。混合物をすぐに均質化させ、室温で10分間にわたって置き、複合体の形成を促進した。
【0087】
この時間の間、細胞培地を吸引し、付着した細胞をホスファートバッファー(PBS)で洗浄した。次いで、500μLのRPMIを各ウェルに加えた。
【0088】
細胞に二本鎖siRNA(又はsiRNA/INTERFERin)を加えた(100μL/ウェル)。手動で回転させることによりプレートを均質化させた。各条件は三重で実施された。
【0089】
プレートを、37℃及び5%COで4時間にわたってインキュベートした。この時間の後、細胞を顕微鏡下に観察し、毒性のないことを確認し、20%FCSを追加したRPMI 500μLを各ウェルに加えた。
【0090】
プレートをオーブン中37℃及び5%COで48時間にわたってインキュベートした。
【0091】
ルシフェラーゼ遺伝子発現の測定:48時間後、細胞をPBSで洗浄し、次いで、5倍希釈された市販貯蔵液(Promega)を用いて溶解させた。次いで、プレートを、室温で30分間にわたってインキュベートした。溶液をマイクロチューブ内に回収し、4℃で5分間にわたって1400rpmの遠心分離にかけた。
【0092】
各サンプル10μLを96ウェルのプレート上に沈着させた。ルミノメータ(Mediators PhL又はBerthold Centro LB690)を用いてプレートを分析した。各サンプルについて、ルシフェラーゼタンパク質により触媒される反応により放射される光を測定し、10秒の期間で企画化した。
【0093】
全細胞タンパク質のアッセイ:較正の機能を果たすためにBSA(bovine serum albumin:ウシ血清アルブミン)範囲が事前に調製された。試験管毎に溶解バッファー15μLを加えた。分析されるべき各サンプル15μLを試験管に入れた。溶解バッファー15μLから形成された3個のブランクがそれぞれ調製された。1mLのBCA(bicinchoninic acid:ビシンコニン酸)混合溶液を各試験管に加えた。次いで、得られた混合物を60℃の水浴中に30分間にわたって置いた。562nmにおける吸光度を読み取った。
【0094】
ルシフェラーゼ遺伝子の消退の評価:結果は、まず、10秒間に取り込まれたRLU(Relative Light Units:相対的光単位)で表され、細胞溶解物のタンパク質の重量(ミリグラム)あたりに規格化された。各条件における遺伝子の消退の有効性を、siRNA存在下にインキュベートされない細胞中のルシフェラーゼの発現率(%)として表した。各バーは、ルシフェラーゼ遺伝子の発現率(%)の平均値及びその標準偏差を表わす。
【0095】
図4は、上から下に、連続して以下を示す。
【0096】
− ルシフェラーゼGL3の配列のセンス(ss)及びアンチセンス(as)鎖から形成されるsiRNA<GL3ss><GL3as>は活性ではない;
− この同じsiRNAは、それがカチオン性脂質INTERFERinによりベクトル化させられる場合、ルシフェラーゼの発現を失わせる;
− 分子内への1〜3個のスペルミンの導入は、ルシフェラーゼの発現にほとんど効果がない;
− siRNAへの20〜30個のスペルミンの導入は、INTERFERinベクターを用いて得られる消退に匹敵する消退を誘導する;
− 30個のスペルミンを有するsiRNAの有効性は、脂質媒体と組み合わせて更に約10倍に上昇する。
【0097】
これらの効果が、ナノモル濃度、すなわち、ペプチドTATおよびペネトラチンにより行われる実験(9)において用いられる濃度より10000倍低い濃度で観察されることは極めて顕著である。
【0098】
実施例3:RNA干渉;カチオン性siRNAを用いたルシフェラーゼ遺伝子の消退。濃度の効果)
図5は、上から下に以下を示す。
【0099】
− INTERFERinによりベクトル化させられたスペルミンを有しないsiRNAのコントロールは1nMで効果を示す;
− 細胞が、グラフトされたスペルミン及びINTERFERinを有しないsiRNAとインキュベートされる場合に、ルシフェラーゼGL3の発現は濃度に関係なく低下しない;
− 20及び30個のスペルミンを含むsiRNAの存在下、ルシフェラーゼの濃度依存は減少する。
【0100】
実施例4:RNA干渉;カチオン性siRNAを用いたルシフェラーゼ遺伝子の消退。検証実験)
図6は、特許請求の範囲及びRNA干渉の特異性を検証する。
【0101】
ネガティブコントロール(細胞単独の100%発現)及びポジティブコントロール(INTERFERinによりベクトル化させられた配列GL3のsiRNAの存在下におけるルシフェラーゼGL3の27%の発現)の後に、siRNA<GL3ss><GLS3as>S(この時、アンチセンス鎖の5’位にグラフトされたスペルミンを含む)が試験された。
【0102】
バー3〜6により、アンチセンス鎖の5’位へのスペルミンのグラフト処理は、ルシフェラーゼ消退効果を消失させることが示される。具体的には、RNA干渉を示すために、siRNAのこの位置は細胞によってあらかじめリン酸化させられなければならないことが知られている。
【0103】
バー7及び8により、10倍より高い濃度であっても、標的GL3と比べて3個のミスマッチを含む20個のスペルミンを有するsiRNA GL2は、ルシフェラーゼGL3の発現を減少させないことが示される。
【0104】
(書誌参照)
1 - BOLCATO-BELLEMIN, A.L., BONNET, M. E., CREUSAT, G., ERBACHER, P., and BEHR, JP. (2007). Sticky overhangs enhance siRNA-mediated gene silencing. Proc Natl Acad Sci U S A 104, 16050-16055
2 - KOPATZ, I., REMY, J.S., and BEHR, J. P. (2004). A model for non-viral gene delivery: through syndecan adhesion molecules and powered by actin. J Gene Med 6, 769-776
3 - ZIMMERMANN, T.S., LEE, A.C., AKINC, A., BRAMLAGE, B., BUMCROT, D., FEDORUK, M. N., HARBORTH, J., HEYES, J.A., JEFFS, L.B., JOHN, M., JUDGE, A.D., LAM, K., MCCLINTOCK, K., NECHEV, L.V., PALMER, L. R., RACIE, T., ROHL, I., SEIFFERT, S., SHANMUGAM, S., SOOD, V., SOUTSCHEK, J., TOUDJARSKA, I., WHEAT, AJ. , YAWORSKI, E., ZEDALIS, W., KOTELIANSKY, V., MANOHARAN, M., VORNLOCHER, H. P., and MACLACHLAN, I. (2006). RNAi-mediated gene silencing in non-human primates. Nature 441 , 111 -114
4 - SANTEL, A., ALEKU, M., KEIL, O., ENDRUSCHAT, J., ESCHE, V., FISCH, G., DAMES, S., LOFFLER, K., FECHTNER, M., ARNOLD, W., GIESE, K., KLIPPEL, A., and KAUFMANN, J. (2006). A novel siRNA-lipoplex technology for RNA interference in the mouse vascular endothelium. Gene Ther 13, 1222-1234
5 - KIM, S. H., JEONG, J. H., LEE, S. H., KIM, S.W., and PARK, T.G. (2006). PEG conjugated VEGF siRNA for anti-angiogenic gene therapy. Journal of Controlled Release 116, 123-129
6 - MOSCHOS, S.A., WILLIAMS, A.E., and LINDSAY, M.A. (2007). Cell-penetrating- peptide-mediated siRNA lung delivery. Biochemical Society Transactions 35, 807- 810
7 - TURNER, JJ. , JONES, S., FABANI, M. M., IVANOVA, G., ARZUMANOV, A.A., and GAIT, MJ. (2007). RNA targeting with peptide conjugates of oligonucleotides, siRNA and PNA. Blood CeIIs, Molecules, and Diseases 38, 1-7
8 - demande PCT/IB2006/004085 ; WO2007/069092 ; inventeurs : J. P. Behr, M. Kotera, B. Pons, E. Voirin, et J. S. Remy
9 - MOSCHOS, S.A., JONES, S.W., PERRY, M. M., WILLIAMS, A.E., ERJEFALT, J.S., TURNER, JJ., BARNES, PJ., SPROAT, B.S., GAIT, MJ., and LINDSAY, M.A. (2007). Lung delivery studies using siRNA conjugated to TAT(48-60) and penetratin reveal peptide induced reduction in gene expression and induction of innate immunity. Bioconjug Chem 18, 1450-1459

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カチオン性siRNAであって、それは二本鎖RNAのフラグメントであり、その末端は、グラフトされたオリゴカチオンであり、グラフトされたカチオン電荷の数は、RNA鎖のヌクレオシド内ホスファートにより生じるアニオン電荷の数に匹敵するか又はそれより大きいことを特徴とするカチオン性siRNA。
【請求項2】
(グラフトされたオリゴカチオンのカチオン電荷の合計)−(ヌクレオシド内ホスファート基のアニオン電荷の合計)が、−30〜+50であることを特徴とする請求項1に記載のカチオン性siRNA。
【請求項3】
鎖相補性が、二重らせん内において全てであるか、又は一部であることを特徴とする請求項1または2に記載のカチオン性siRNA。
【請求項4】
各オリゴリボヌクレオチドが、二重らせんの3’末端において一本鎖伸長を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載のカチオン性siRNA。
【請求項5】
オリゴカチオンは、センス鎖の3’及び/又は5’末端で、及び/又はアンチセンス鎖の3’末端でグラフトされていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載のカチオン性siRNA。
【請求項6】
前記フラグメントは、二本鎖RNAの15〜30のヌクレオチド長、特に19〜30のヌクレオチド長から形成され、その末端に、共有結合によって1〜3個のオリゴカチオンがグラフトされ、そのカチオン電荷の総数は、RNAにより生じるアニオン電荷の数に匹敵するか又はそれより大きいことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載のカチオン性siRNA。
【請求項7】
少なくとも1本の鎖が、式(I)
【化1】

に相当し、ここで、Niはi塩基長のオリゴヌクレオチドを表し、ここで、i=15〜30、特に19〜30であり、また、siRNAの二重らせんのA型を保存する任意の化学的修飾体又は置換体であり、
Ajはj塩基長のオリゴカチオンを表し、ここで、j=1〜50であり、Aは、
− 式(II)
【化2】

(式中、R、R及びRは同一であっても異なっていてもよく、低級アルキレン基を表し、XはNH又はNC(NHであり、n1=2〜20である)、又は
− 式(III)
【化3】

(式中、R、R及びRは同一であっても異なっていてもよく、低級アルキレン基を表し、Xはプトレシン、スペルミジン又はスペルミンから選ばれる)、又は
− 式(IV)
【化4】

(式中、R及びRは同一であっても異なっていてもよく、低級アルキレン基を表わし、(aa)n2はアルギニン、リジン、オルニチン、ヒスチジン又はジアミノプロピオン酸のようなカチオン性側鎖を有する天然のアミノ酸を含むペプチドであり、n2=2〜20である)
に相当することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載のカチオン性siRNA。
【請求項8】
オリゴカチオンはオリゴアミンであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載のカチオン性siRNA。
【請求項9】
オリゴアミンは、スペルミン、スペルミジン又はプトレシンを含む群から選択されることを特徴とする請求項8に記載のカチオン性siRNA。
【請求項10】
構造:
【化5】

(式中、N、i及びjは請求項7に定義された通りである)
のオリゴヌクレオチド−オリゴスペルミンであることを特徴とする請求項9に記載のカチオン性siRNA。
【請求項11】
薬物として用いられる、請求項1〜10のいずれか1つに記載のカチオン性siRNA。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1つに記載の少なくとも1種のカチオン性siRNAの有効量を、薬学的に不活性な担体、カチオン性脂質又はカチオン性ポリマーと組み合わせて含むことを特徴とする医薬組成物。
【請求項13】
分子生物学及び機能的ゲノミクスにおける、請求項1〜10のいずれか1つに記載のカチオン性siRNAの適用。
【請求項14】
請求項1〜10のいずれか1つに記載のカチオン性siRNAの鎖の自動合成方法であって、
19〜30のリボヌクレオチドの3’から5’の固相担体への逐次的カップリングと、これに先行するおよび/またはこれに続く、カチオン性シントンの逐次的カップリングとを含み、該鎖は、式(VI):
【化6】

(式中、N、i、Aおよびjは請求項7において定義された通りである)
に対応することを特徴とする方法。
【請求項15】
カチオン性シントンは、ホスホラミダイトオリゴアミンであり、
− 式(VII)
【化7】

(式中、R、R、R及びn1は上記に定義の通りであり、Xは保護された基NH又はNC(NHであり、Rは−CHCHCN又は低級アルキレン基であり、R10は低級アルキレン基であるか、又は−N(R10はピロリジノ、ピペリジノ又はモルホリノ基であり、Protは、DMT又はMMTのようなオリゴヌクレオチド合成において用いられる保護基である)、又は
− 式(VIII)
【化8】

(式中、R、R及びRは、同一であっても異なっていてもよく、低級アルキレン基を表し、Xは、適切な保護基を有するプトレシン、スペルミジン又はスペルミンであり、R及びR10は上記定義の通りである)、又は
− 式(IX)
【化9】

(式中、R、R、R、R10、n2及びProtは上記定義の通りであり、(aa)n2は、保護カチオン性側鎖を有する天然のアミノ酸、例えば、アルギニン、リジン、オルニチン、ヒスチジン又はジアミノプロピオン酸を含むペプチドであり、n2=2〜20である)に相当することを特徴とする請求項14に記載の方法。

【図1】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図2−3】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図3−3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2011−511776(P2011−511776A)
【公表日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−544836(P2010−544836)
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【国際出願番号】PCT/IB2009/050379
【国際公開番号】WO2009/095887
【国際公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【出願人】(500049369)サーントゥル ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシュ シャーンティフィク (14)
【Fターム(参考)】