説明

RPRノード装置およびRPRネットワークのフォワーディングパス制御方法

【課題】STPを適用したRPRネットワークにおいて、フォワーディングパスの再構成の時間を短縮化すること。
【解決手段】互いに相反する伝送方向性を持つ双方向2重リング回線上に挿入され、双方向2重リング回線の一方および他方の回線にそれぞれ接続される一対のRPR制御部101,102と、RPR制御部101およびRPR制御部102の間に接続されるブリッジ制御部103とを備える。RPR制御部に具備されるBPDU送信元ノード管理部は、所定のSTP情報に基づいて自身が監視すべきノード装置であるBPDU送信元ノード装置を特定し、フォワーディングパス障害判定部は、所定の障害情報に基づいてBPDU送信元ノード装置に至る両経路障害を判定し、両経路に障害があると判断したときにフォワーディングパス再構成信号を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RPRノード装置に関するものであり、特に、ブリッジ機能を有するRPRノード装置およびRPRネットワークのフォワーディングパス制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
レイヤ2ネットワークにおいて、冗長なネットワークを構成するための一方式として、IEEE802.1d(非特許文献1)として標準化されているスパニング・ツリー・プロトコル(Spanning Tree Protocol:以下「STP」と呼称)が存在する。STPは、冗長化されたブリッジネットワークをループ箇所が存在しないような論理的ツリー構造として取り扱うことで、データがループの中を永遠に巡回し続ける事態を防止することができる。STPが適用されるネットワークでは、ネットワークを構成する各ブリッジにプライオリティが付与されるとともに、各ブリッジ間を接続する各リンクにはコストが付与される。このとき、優先度が最高のブリッジがルートブリッジとして設定され、当該ブリッジをツリー構造の起点として、当該ブリッジからコストの低い経路が選択されたフォワーディングパスからなるセグメント(論理的ツリー構造)が複数形成される。なお、ネットワーク上で障害が発生したような場合には、この障害を回避すべく新たなセグメント(論理的ツリー構造)が生成される。
【0003】
つぎに、STPによって形成された論理的ツリー構造(セグメント)における処理の流れについて説明する。各セグメントでは、フォワーディングパスの中継ブリッジとしての役割を担う指定ブリッジが定められる。なお、ルートブリッジおよび各指定ブリッジの選択は、これらのブリッジ間で相互送信されるBPDU(Bridge Protocol Data Unit)と呼ばれるフレームに基づいて行われる。ルートブリッジは、周期的に同じ内容のBPDUを送信し、フォワーディングパスの健全性を通知する。各指定ブリッジは、フォワーディングパスの上流方向(ルートブリッジ方向)側に存在するポート(以下「ルートポート」と呼称)からのBPDUを受信すると、この受信したBPDUに自分のSTP情報を付加して、フォワーディングパスの下流方向(つぎの指定ブリッジ方向)側に存在するポート(以下「指定ポート」と呼称。)へBPDUを送信する。
【0004】
各ブリッジで受信されたBPDUは、MaxAgeタイマによりエージングされる。もし、MaxAgeタイマが満了して所定時間を経過(タイムアウト)した場合には、指定ブリッジの再選出が行われ、フォワーディングパスが更新される。したがって、フォワーディングパス上のブリッジが故障すると、その下流ブリッジはフォワーディングパス再構成開始までにMaxAgeタイマで設定された時間だけ待つことになり、デフォルトで20秒間を要する。なお、ブリッジの各ポートには、ブロッキング、リスニング、ラーニングおよびフォワーディングの4つの状態が定義されており、完成された状態、すなわち定常状態にあるフォワーディングパス上のポート(ルートポートおよび指定ポート)はフォワーディング状態に設定され、定常状態にないポートはブロッキング状態に設定されている。
【0005】
一方、互いに相反する伝送方向性を持つ双方向2重リング回線を介して複数のノードが接続されるリング型ネットワークの伝送技術として、IEEE802.17(非特許文献2)として標準化作業が進められているレジリエント・パケット・リング(Resilient Packet Ring:以下「RPR」と呼称)が存在する。RPRは、双方向2重リング回線上の各リングノードが、それぞれの物理アドレスをリング上に広告し、各リングノードはそれらの広告情報を収集して各ノードの並び順であるトポロジー・マップを認識するとともに、リング上にパケットを送信する際に当該トポロジー・マップを参照して宛先の物理アドレスに近い系のリングを選択して送信する機能を有している。また、各リングノードが周期的に送信している障害情報を常に監視することにより、リング上の障害箇所を迅速に検出して経路を切り替えるようなリング障害時の障害迂回機能(以下「プロテクション機能」と呼称)を有している。
【0006】
つぎに、上述したRPRにおけるプロテクション機能の詳細について説明する。
(1) トポロジー・マップの作成
RPRでは、各ノードがどのような順番で接続されているかが把握され、各ノードごとのトポロジー・マップが作成される。より詳細には、各ノードは、TP(Topology and Protection)フレームと呼ばれる制御フレームを両方のリングに定周期で送信し、初期値を255とし、中継ごとに1減算されるTTL(Time To Alive)値と、受信したTPフレームにより、各ノードからみたTPフレーム送信ノードの位置(ノードの中継数)とが各ノードごとに把握され、各ノードごとのトポロジー・マップが作成される。
【0007】
(2) 隣接ノード間のリング障害情報の検出と広報
通常時、各ノードでは、上記TPフレームを両リングに送信する際に、直上流ノード(上流方向の隣接ノード)からのKeepAlive用フレームを受信する。もし、KeepAlive用フレームが不達の場合、あるいは自ノードの受信障害の場合には、直上流ノードから自ノードのまでのリンク間の障害が仮定される。なお、KeepAlive用フレームの送信元が直上流ノードかどうかは(1)のトポロジー・マップに基づいて決定される。また、この直上流ノードとのリンク状態情報は、上記TPフレームに載せて直下流ノード(下流方向の隣接ノード)に送出され、全下流ノードに伝えられる。全受信ノードは、TPフレーム送信元ノードの受信リンク状態を把握し、リング上のどのリンクが障害状態にあるのかをマッピングする。
【0008】
(3) RPRデータフレームの送出方向の切替
各ノードは、(1)で生成されたトポロジー・マップと、(2)で検出されたリンク障害情報とに基づいて、宛先ノードに到達するまでに、ノード中継数が少なく、リング障害が発生していない伝送リングを選択して、所定のRPRデータフレームを送出する。
【0009】
なお、RPRでは、障害迂回時間を最大50ミリ秒とする規定がある。したがって、障害情報に基づいて障害発生箇所を検出したときから、RPRデータフレームの送出方向の切替までの処理が50ミリ秒以内に行われ、障害時のリンク切替が迅速に行われる。
【0010】
【非特許文献1】IEEE 802.1d(ISO/IEC Final DIS 15802−3(IEEE P802.1D/D17),May 25,1998)
【非特許文献2】IEEE802.17(IEEE Draft P802.17/D3.0,November 12,2003)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、上記の非特許文献1に規定されたSTPや、非特許文献2に規定されたRPRは、ともに上述したような特徴(長所)を有しており、両者の特性を活用したネットワークを構成することが考えられる。すなわち、高速障害復旧を特徴とするRPRネットワークに対して、物理的ループが形成されたネットワークであってもループ内におけるデータの巡回防止機能を有するSTPを適用することが考えられる。
【0012】
しかしながら、STPおよびRPRのそれぞれは、相互に独立した規定として策定されたものであり、両者の連係を意図した規定とはなっていない。したがって、STPを適用したRPRネットワークでは、フォワーディングパス上にある上流ノード、あるいは上流ノードまでの経路上で障害を検出した場合に、フォワーディングパス再構成までにSTPのMaxAge時間まで待たなければならないという必然性があり、ネットワークダウンの時間を効果的に短縮できないといった問題点があった。
【0013】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、STPを適用したRPRネットワークにおいて、フォワーディングパスの再構成の時間のさらなる短縮化を可能とするRPRノード装置およびRPRネットワークのフォワーディングパス制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明にかかるRPRノード装置は、STP(スパニング・ツリー・プロトコル)を適用したRPR(レジリエント・パケット・リング)ネットワークに接続されるRPRノード装置において、前記RPRネットワークを構成する複数の双方向2重リング回線のうちの一の双方向2重リング回線に接続される一方のRPR制御部と、前記一の双方向2重リング回線上を流れるデータが転送される該一の双方向2重リング回線とは異なる他の双方向2重リング回線に接続される他方のRPR制御部と、前記一方のRPR制御部および前記他方のRPR制御部で構成される一対のRPR制御部の間に接続されるブリッジ制御部と、を備え、前記一対のRPR制御部は、自身が接続された双方向2重リング上で把握されるSTP情報に基づいて自身が監視すべきノード装置であるBPDU送信元ノード装置を特定するBPDU送信元ノード管理部と、前記双方向2重リング回線上に配置されたRPR制御部から伝達される障害情報に基づいて前記BPDU送信元ノード管理部が監視するBPDU送信元ノード装置に至る両経路を管理するフォワーディングパス障害判定部と、を備え、前記フォワーディングパス障害判定部は、前記双方向2重リング回線の両経路に障害があると判断したときに、フォワーディングパス再構成信号を出力することを特徴とする。
【0015】
この発明によれば、双方向2重リング回線に接続されたRPRノード装置にBPDU送信元ノード管理部と、フォワーディングパス障害判定部とが具備される。フォワーディングパス障害判定部は、自装置と、BPDU送信元ノード管理部が監視するBPDU送信元ノード装置との間に至る両経路に障害ありと判断したときに、STPのMaxAge時間を待つことなくフォワーディングパス再構成信号を出力する。
【発明の効果】
【0016】
本発明にかかるRPRノード装置によれば、STPのMaxAge時間を待つことなくフォワーディングパス再構成信号を出力するようにしているので、ネットワークダウンの時間を短縮することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、本発明にかかるRPRノード装置およびRPRネットワークのフォワーディングパス制御方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0018】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1にかかるRPRノード装置100の構成を示すブロック図である。同図に示すRPRノード装置100は、互いに相反する伝送方向性を持つ双方向2重リング回線上に挿入され、双方向2重リング回線の一方および他方の回線にそれぞれ接続されるRPR制御部101,102と、RPR制御部101およびRPR制御部102の間に接続されるブリッジ制御部103と、を備えている。同図において、双方向2重リング回線の一方および他方の回線はそれぞれ独立したリング回線であり、RPR制御部101,102のそれぞれは、これらのリング回線上で所定のRPR制御を行っている。また、ブリッジ制御部103はSTP機能を有するとともに、RPR制御部101およびRPR制御部102の間の連係動作に関連する処理機能を併せ有している。なお、RPR制御部101,102の細部構成は同一であり、以下、RPR制御部101の構成についてのみ説明し、RPR制御部102の構成についての説明は省略する。
【0019】
図1において、RPR制御部101は、RPR制御部101が接続された双方向2重リング回線の内側リングに接続される内側リング送信部110、内側リングDrop判定部111、および内側リング受信部112の各処理部と、双方向2重リング回線の外側リングに接続される外側リング受信部113、外側リングDrop判定部114、および外側リング送信部115の各処理部を備えている。また、RPR制御部101は、同一ノード装置内のRPR制御部102との連係処理に関連する処理部として、RPRインタフェース送信部116、RPRインタフェース受信部117、プロテクション部118、トポロジー管理部119、BPDU送信元ノード管理部120、およびフォワーディングパス障害判定部121を備えている。
【0020】
つぎに、図1に示したRPRノード装置の各構成部の処理機能について説明する。同図において、内側リング送信部110および外側リング送信部115は、送信フレームに所定の情報を付加するAdd機能、および受信フレームを中継するTransit機能との両機能を有する。内側リングDrop判定部111および外側リングDrop判定部114は、受信フレームを中継するか否かを判定し、あるいは受信フレームをDropするか否かを判定する。内側リング受信部112および外側リング受信部113は、他のRPRノード装置から伝送された伝送フレームを受信する。
【0021】
RPRインタフェース送信部116は、RPRフレームを生成し、内側または外側リングのどちらにAddするかを選択する。RPRインタフェース受信部117は、受信RPRフレームが、データフレームなのか、RPR制御フレームなのか、あるいはSTPによるBPDUなのかを識別するとともに、RPRフレームからMACフレームを抽出してブリッジ制御部103に受け渡す処理を行う。プロテクション部118は、リング上の障害状況を把握し、当該障害情報をトポロジー管理部119、フォワーディングパス障害判定部121に通知する。トポロジー管理部119は、リング上の各ノードの並び順を管理する。BPDU送信元ノード管理部120は、リング上から送信されるBPDUの送信元ノードとSTP情報を把握し、ブリッジ制御部103からのSTP情報に基づいて監視すべきBPDU送信元ノードを特定するとともに、その処理情報を保持する。フォワーディングパス障害判定部121は、プロテクション部118からの障害情報に基づいてBPDU送信元ノード管理部120が監視するノード(監視ノード)への2つの経路を管理し、自ノードから監視ノードまでの経路が両方とも障害がある場合にフォワーディングパスの再構成開始を要求する制御信号をブリッジ制御部103に対して出力する。なお、ブリッジ制御部103との間の通信は、ブリッジポート122、123を介して行われる。
【0022】
つぎに、RPRノード装置の動作について図2を用いて説明する。なお、図2は、本発明のRPRノード装置によって相互接続された3つの独立したRPRネットワークを示す図である。また、以後の説明の前提として、同図に示すネットワークにおいて、STPの機能によって、論理的なフォワーディングパスが形成されているとともに、初期段階では、RPRノード装置503がルートブリッジに選出され、RPRノード装置504,505がルートポート、指定ポートを持つブリッジに選出され、RPRノード装置506がルートポート、ブロッキングポートを持つブリッジに選出されているものと仮定する。
【0023】
図2において、RPRネットワーク500,501,502は、それぞれが3つの独立したRPRネットワークであるリング#1,#2,#3を構成し、RPRノード装置504,505,506を介して物理的に接続されている。ブリッジ制御部を有するRPRノード装置503は、フォワーディングパス下流にBPDUを送信する。ブリッジ制御部を有するRPRノード装置504は、ルートブリッジであるRPRノード装置503からのBPDUを受信し、自ブリッジのSTP情報を加味してBPDUをフォワーディングパス下流に送信する。同様に、ブリッジ制御部を有するRPRノード装置505も、ルートブリッジであるRPRノード装置503からのBPDUを受信し、自ブリッジのSTP情報を加味してBPDUをフォワーディングパス下流に送信する。一方、ブリッジ制御部を有するRPRノード装置506は、BPDUをフォワーディングパス下流に送信しない。すなわち、RPRノード装置504は、リング#1−リング#2間のデータ転送を担うノード装置に設定され、RPRノード装置505は、リング#1−リング#3間のデータ転送を担うノード装置に設定される一方で、RPRノード装置506は、リング#2−リング#3間のデータ転送を行わないノード装置に設定され、3つのリング間でデータが循環することを防止している。なお、RPR制御部507,508,509は、ブリッジ制御機能を有さないノード装置であり、他のリングに物理的に接続されていない。また、これらの制御部は、STPに基づく制御処理の対象外であり、RPR動作のみを担うものである。
【0024】
図3は、図2に示すネットワーク構成を等価的なブリッジ構成に置換した図である。図2と図3の対応関係について説明すると、図3に示すルートブリッジ511は、図2に示されるRPRノード装置503に対応する。以下、同様に、ブリッジ1(512)はRPRノード装置504に対応し、ブリッジ2(513)はRPRノード装置505に対応し、ブリッジ3(514)はRPRノード装置506に対応する。
【0025】
また、図3において、太線で示すようなフォワーディングパス510が生成されているが、フォワーディングパス構成の完了後では定常状態となり、ノード装置を構成する各ブリッジのブリッジポートはフォワーディング状態、あるいはブロッキング状態のいずれかの状態に遷移している。例えば、図3において、ルートブリッジの一方のポートはフォワーディング状態にあり、また、ブリッジ1,2の両ポートともにフォワーディング状態にある。一方、ブリッジ3の一方のポートはフォワーディング状態にあるが、他方のポートはブロッキング状態になっている。なお、このような定常状態時において、所定のRPRノード装置は、フォワーディングパス上の直上位にあるRPRノード装置(上流方向の隣接ノード)を、常時、監視すべきRPRノード装置として特定している。以下、この処理について説明する。
【0026】
図4は、所定のRPRノード装置が監視すべきRPRノード装置を特定する処理フローを示すフローチャートである。図1に示したRPRノード装置のBPDU送信元ノード管理部120は、RPRフレームを受信し(ステップS101)、受信したRPRフレームがBPDUか否かを判定する(ステップS102)。受信したRPRフレームがBPDUでない場合(ステップS101,No)には、以降の処理を行わない。一方、受信したRPRフレームがBPDUの場合(ステップS101,Yes)、BPDU送信元ノード管理部120は、RPRヘッダ中に含まれる送信元MACアドレスと、BPDU中に含まれるSTP情報(例えば、ブリッジ・プライオリティ、ブリッジID、ポート・プライオリティ、ポートIDなど)を抽出して所定の記憶領域に記憶し(ステップS103)、さらに、最新のSTP情報と記憶保持中のSTP情報とに基づいて監視すべきノード装置を特定する(ステップS104)。以下、回線が定常状態になるまで、上記の処理が繰り返される。
【0027】
なお、ネットワークがフォワーディングパスの構成中にあるときは、ルートブリッジや、指定ブリッジ、あるいはRPRノード装置のブリッジ制御部のルートポート、指定ポートが決定されていないため、BPDU送信元装置(すなわち、監視対象のRPRノード装置)が複数存在することがあり、これらのすべてを記憶するための記憶領域を確保しておく必要がある。
【0028】
図5は、所定のRPRノード装置がフォワーディングパス再構成信号をブリッジ制御部に出力する処理フローを示すフローチャートである。図1に示したRPRノード装置のフォワーディングパス障害判定部121は、BPDU送信元装置までの経路(内側リング、外側リングを通る2つの経路)を監視することにより障害情報を把握し、あるいは他のRPRノード装置のRPR制御部からブロードキャストされたTPフレームなどにより障害を検知する(ステップS201)。このとき、内側リングおよび外側リングの両経路に障害が存在するか否かが判定される(テップS202)。内側リングおよび外側リングの両経路に障害が存在しない場合には監視が継続され(ステップS202,No)、一方、内側リングおよび外側リングの両経路に障害が存在する場合(ステップS202,Yes)には、フォワーディングパス再構成信号が自身のブリッジ制御部に出力される(ステップS203)。このように、障害を検知したRPRノード装置のフォワーディングパス障害判定部121は、内側リングおよび外側リングの両経路の障害を検知した場合、STPのMaxAge時間まで待つことなしに、ネットワークを再構成するためのフォワーディングパス再構成信号を出力するようにしているので、ネットワークダウンの時間を局限することができる。
【0029】
なお、上記のステップS201の処理では、フォワーディングパス障害判定部121において、つぎのような処理が行われる。すなわち、フォワーディングパス障害判定部121は、トポロジー管理部119から通知された外側リングのトポロジー・マップを自RPRノード装置から逆方向に、上記記憶したBPDU送信元ノード(監視すべきRPRノード装置)に向かって確認し、プロテクション部118から通知された障害情報に基づいて、経路上に障害がないか否かを確認する。同様に、トポロジー管理部119から通知された内側リングのトポロジー・マップを自RPRノード装置から逆方向に、上記記憶したBPDU送信元ノード(監視すべきRPRノード装置)に向かって確認し、経路上に障害がないか否かを確認する。
【0030】
図6は、両方のリングで発生した障害の一例を図2に示したRPRネットワーク上に示した図である。同図に示す障害発生例を用いて、フォワーディングパス再構成開始までのRPRノード装置の動作を説明する。同図において、RPRノード装置504は、正常状態(障害が発生していない状態)では、RPRノード装置506の指定ブリッジとして機能しており、ルートブリッジとして機能しているRPRノード装置503が送信するPDUを中継している。RPRノード装置506は、BPDU送信元ノード管理部120により、BPDU送信元装置をRPRノード装置504に決定し、当該RPRノード装置504を監視する。
【0031】
つぎに、図6に示すように、リング#2の外側リングで障害発生1が生起すると、RPR制御部508−1は、RPR制御フレームである障害情報が含まれたTPフレームをブロードキャストで送信する。各RPRノード装置は、このTPフレームを受信すると、RPRノード装置504とRPR制御装置508―1との間の外側リング上において「障害発生」という障害情報を把握する。このとき、RPRノード装置506は、自装置からBPDU送信元装置までの外側リングを用いた経路上に障害があると判断する。しかしながら、自装置からBPDU送信元装置までの内側リングを用いた経路は正常であり、BPDUはこの経路が使われて伝送され、RPRノード装置506に届くので、フォワーディングパス再構成の必要はない。
【0032】
さらに、図6に示すように、リング#2の内側リングで障害発生2が生起すると、RPR制御装置508−2は、障害情報が含まれたTPフレームをブロードキャストで送信する。各RPRノード装置は、このTPフレームを受信すると、RPRノード装置504とRPR制御装置508―2との間の内側リング上において「障害発生」という障害情報を把握する。このとき、RPRノード装置506は、自装置からBPDU送信元装置までの内側リングを用いた経路上に障害があると判断する。その結果、RPRノード装置506は両経路に障害があると判断し、ブリッジ制御部にフォワーディングパス再構成信号を出力する。この信号を受け取ったブリッジ制御部は、直ちにブロッキング状態となっているポート(ブロッキングポート)をリスニング状態に遷移させる。
【0033】
図7は、図6に示すネットワーク構成を等価的なブリッジ構成に置換した図である。上記の障害情報(RPR障害情報)に基づいて、迅速にブリッジ1(513)とブリッジ3(514)との間の障害を検出できるが、STPのみを用いた場合では、このRPR障害情報を用いることがないため、BPDU受信タイムアウト(MaxAge時間)経過後に、ブリッジ1(513)とブリッジ3(514)との間に障害が発生したことを知ることになる。なお、フォワーディングパスが再構成された後には、STPの機能によって、図8に示すようなフォワーディングパスが形成される。
【0034】
このように、この実施の形態のRPRノード装置は、BPDU送信元装置を常時監視し、RPRの利点である迅速な障害検出をSTPのフォワーディングパス上の障害検出に結びつけるようにしているので、フォワーディングパス再構成までの時間を短縮でき、その結果として、ネットワークダウンの時間を短縮することができる。
【0035】
なお、この実施の形態のフォワーディングパス障害判定部121は、BPDU送信元装置までの経路を監視し、あるいは他のRPRノード装置から伝達されたTPフレームなどに基づいて障害を検知するようにしていたが、BPDU送信元ノード管理部120が監視しているBPDU送信元装置のTPフレーム(障害情報格納用制御フレーム)が到着しているか否かを確認し、一定の期間、両リング(内側および外側リング)において受信されない場合に、フォワーディングパスに障害ありと判断し、フォワーディングパス再構成信号を出力するようにしてもよい。
【0036】
また、この実施の形態では、STPをRPRネットワークに適用する場合について説明したが、RPRネットワークに限定されるものではなく、VLAN(Virtual LAN)が設定されたネットワークにおいても適用することができる。この場合には、VLANごとにSTPを使い分け、VLANごとに監視すべきBPDU送信元装置を特定するような構成とすればよい。
【0037】
実施の形態2.
図9は、本発明の実施の形態2にかかるRPRノード装置の構成を示すブロック図である。同図に示すRPRノード装置は、図1に示したBPDU送信元ノード管理部120に代えてBPDU送信元装置判定部150を備えるようにしている。なお、その他の構成については、実施の形態1の構成と同一あるいは同等であり、これらの部分には、同一符号を付して示している。
【0038】
ところで、実施の形態1のRPRノード装置は、ブリッジ制御部103からのSTP情報に基づいて、監視すべきBPDU送信元ノードを特定するようにしていた。すなわち、実施の形態1では、監視すべきBPDU送信元ノードの特定に際し、ブリッジ制御部の機能(既存機能)の一部を利用するようにしていた。一方、この実施の形態のRPRノード装置は、当該機能をRPR制御部内のBPDU送信元装置判定部150が有するようにしている。このような機能構成にすることで、ブリッジ制御部と、RPR制御部との間の情報の授受に要する時間分の短縮化が可能となる。その結果、フォワーディングパス再構成信号の送出タイミングを早めることができ、ネットワークダウンの時間をさらに短縮することができる。
【0039】
つぎに、図9に示すRPRノード装置の動作について、図1に示したRPRノード装置と相違する動作についてのみ説明する。図9において、BPDU送信元装置判定部150は、受信したRPRフレームがBPDUか否かを判定し、受信したRPRフレームがBPDUの場合に、RPRヘッダ中に含まれる送信元MACアドレスと、BPDU中に含まれるSTP情報(例えば、ブリッジ・プライオリティ、ブリッジID、ポート・プライオリティ、ポートIDなど)を抽出して所定の記憶領域に記憶するとともに、BPDU送信元装置判定部150内に組み込まれたSTP機能の一部を用いて、フォワーディングパス上流のBPDU送信元装置(指定ブリッジ、ルートブリッジ)を特定する。この特定処理は、つぎのように行われる。すなわち、BPDU送信元装置判定部150は、STP情報が含まれるBPDUを受信するごとに、当該受信したBPDUに含まれるSTP情報と、自身が保持するSTP情報とを比較し、優位となるSTP情報とおよび送信元ノードを常時記憶することにより、監視すべきBPDU送信元装置(すなわちRPRノード装置)を特定する。なお、監視すべきBPDU送信元装置が特定された後にフォワーディングパス障害判定部121が行う障害判定処理については、実施の形態1と同等であり、その説明を省略する。
【0040】
このように、この実施の形態のRPRノード装置は、実施の形態1と同様に、BPDU送信元装置を常時監視し、RPRの利点である迅速な障害検出をSTPのフォワーディングパス上の障害検出に結びつけるようにしているので、フォワーディングパス再構成までの時間を短縮することができる。また、ブリッジ制御部が有するSTP機能の一部をRPR制御部に組み込むような機能構成にしているので、ブリッジ制御部と、RPR制御部との間の情報の授受に要する時間分の短縮化が可能となり、フォワーディングパス再構成信号の送出タイミングを早めることができ、ネットワークダウン時間のさらなる短縮化を可能としている。
【0041】
なお、この実施の形態のフォワーディングパス障害判定部121は、BPDU送信元装置までの経路を監視し、あるいは他のRPRノード装置から伝達されたTPフレームなどに基づいて障害を検知するようにしていたが、BPDU送信元ノード管理部120が監視しているBPDU送信元装置のTPフレームが到着しているか否かを確認し、一定の期間、両リング(内側および外側リング)において受信されていない場合に、フォワーディングパスに障害ありと判断し、フォワーディングパス再構成信号を出力するようにしてもよい。
【0042】
また、この実施の形態では、STPをRPRネットワークに適用する場合について説明したが、RPRネットワークに限定されるものではなく、VLAN(Virtual LAN)が設定されたネットワークにおいても適用することができる。この場合には、VLANごとにSTPを使い分け、VLANごとに監視すべきBPDU送信元装置を特定するような構成とすればよい。
【産業上の利用可能性】
【0043】
以上のように、本発明にかかるRPRノード装置は、STPを適用したRPRネットワークに接続されるRPRノード装置として有用であり、特に、ネットワークダウンの時間を短縮化できるノード装置として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の実施の形態1にかかるRPRノード装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明のRPRノード装置によって相互接続された3つの独立したRPRネットワークを示す図である。
【図3】図2に示すネットワーク構成を等価的なブリッジ構成に置換した図である。
【図4】所定のRPRノード装置が監視すべきRPRノード装置を特定する処理フローを示すフローチャートである。
【図5】所定のRPRノード装置がフォワーディングパス再構成信号をブリッジ制御部に出力する処理フローを示すフローチャートである。
【図6】両方のリングで発生した障害の一例を図2に示したRPRネットワーク上に示した図である。
【図7】図6に示すネットワーク構成を等価的なブリッジ構成に置換した図である。
【図8】障害の発生後に再構成されたフォワーディングパスを示す図である。
【図9】本発明の実施の形態2にかかるRPRノード装置の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0045】
100 RPRノード装置
101,102 RPR制御部
103 ブリッジ制御部
110 内側リング送信部
111 内側リングDrop判定部
112 内側リング受信部
113 外側リング受信部
114 外側リングDrop判定部
115 外側リング送信部
116 RPRインタフェース送信部
117 RPRインタフェース受信部
118 プロテクション部
119 トポロジー管理部
120 BPDU送信元ノード管理部
121 フォワーディングパス障害判定部
122 ブリッジポート
150 送信元装置判定部
500,501,502 RPRネットワーク
503,504,505,506 RPRノード装置
507,508,508−1,508−2,509 RPR制御部
510,540 フォワーディングパス
511 ルートブリッジ
512 ブリッジ1
513 ブリッジ2。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
STP(スパニング・ツリー・プロトコル)を適用したRPR(レジリエント・パケット・リング)ネットワークに接続されるRPRノード装置において、
前記RPRネットワークを構成する複数の双方向2重リング回線のうちの一の双方向2重リング回線に接続される一方のRPR制御部と、
前記一の双方向2重リング回線上のデータが転送される該一の双方向2重リング回線とは異なる他の双方向2重リング回線に接続される他方のRPR制御部と、
前記一方のRPR制御部および前記他方のRPR制御部で構成される一対のRPR制御部の間に接続されるブリッジ制御部と、
を備え、
前記一対のRPR制御部は、
自身が接続された双方向2重リング上で把握されるSTP情報に基づいて自身が監視すべきノード装置であるBPDU送信元ノード装置を特定するBPDU送信元ノード管理部と、
前記双方向2重リング回線上に配置されたRPR制御部から伝達される障害情報に基づいて前記BPDU送信元ノード管理部が監視するBPDU送信元ノード装置に至る両経路を管理するフォワーディングパス障害判定部と、
を備え、
前記フォワーディングパス障害判定部は、前記双方向2重リング回線の両経路に障害があると判断したときに、フォワーディングパス再構成信号を出力することを特徴とするRPRノード装置。
【請求項2】
前記BPDU送信元ノード管理部は、受信したRPRフレームがBPDUの場合に、RPRヘッダ中に含まれる送信元MACアドレスおよびBPDU中に含まれるSTP情報を記憶保持することを特徴とする請求項1に記載のRPRノード装置。
【請求項3】
前記BPDU送信元ノード管理部は、受信したBPDUに含まれるSTP情報と、記憶保持中のSTP情報と、に基づいて監視すべきBPDU送信元ノード装置を特定することを特徴とする請求項2に記載のRPRノード装置。
【請求項4】
前記BPDU送信元ノード管理部は、受信したBPDU情報と、自身が保持するBPDU情報との比較によって取得された送信元ノード情報および優位性の高いSTP情報に基づいて監視すべきBPDU送信元ノード装置を特定することを特徴とする請求項2に記載のRPRノード装置。
【請求項5】
前記フォワーディングパス障害判定部は、前記複数の双方向2重リング回線上に出力された障害情報に基づいて両経路の状態を確認し、フォワーディングパスの障害の有無を判定することを特徴とする請求項3または4に記載のRPRノード装置。
【請求項6】
前記フォワーディングパス障害判定部は、前記BPDU送信元ノード管理部が監視している前記BPDU送信元装置の障害情報格納用制御フレームが到着しているか否かを確認し、両リングにて所定の期間受信されない場合に、フォワーディングパスに障害ありと判断することを特徴とする請求項3または4に記載のRPRノード装置。
【請求項7】
STP(スパニング・ツリー・プロトコル)を適用したRPR(レジリエント・パケット・リング)ネットワークに形成されるフォワーディングパスを障害時に制御するRPRネットワークのフォワーディングパス制御方法において、
前記RPRネットワークを構成する複数の双方向2重リング回線のうちの一の双方向2重リング回線および前記一の双方向2重リング回線上のデータが転送される該一の双方向2重リング回線とは異なる他の双方向2重リング回線の両者に接続される複数のノード装置が備えられ、
前記複数のノード装置のそれぞれは、自身が接続された双方向2重リング上で把握されるSTP情報に基づいて自身が監視すべきノード装置であるBPDU送信元ノード装置を特定するBPDU送信元ノード管理ステップと、
前記双方向2重リング回線上に配置されたノード装置から伝達される障害情報に基づいて前記BPDU送信元ノード管理ステップにて監視されるBPDU送信元ノード装置に至る両経路に障害が存在するか否かを判定するフォワーディングパス障害判定ステップと、
を含み、
前記双方向2重リング回線の両経路に障害があると判断したノード装置に具備されるフォワーディングパス障害判定ステップによって、該双方向2重リング回線上にフォワーディングパス再構成信号が出力されることを特徴とするRPRネットワークのフォワーディングパス制御方法。
【請求項8】
前記BPDU送信元ノード管理ステップには、受信したRPRフレームがBPDUの場合に、RPRヘッダ中に含まれる送信元MACアドレスおよびBPDU中に含まれるSTP情報を記憶保持するステップが含まれることを特徴とする請求項7に記載のRPRネットワークのフォワーディングパス制御方法。
【請求項9】
前記BPDU送信元ノード管理ステップには、受信したBPDUに含まれるSTP情報と、記憶保持中のSTP情報と、に基づいて監視すべきBPDU送信元ノード装置を特定するステップが含まれることを特徴とする請求項8に記載のRPRネットワークのフォワーディングパス制御方法。
【請求項10】
前記BPDU送信元ノード管理ステップには、
受信したBPDU情報と、自身が保持するBPDU情報との比較する比較ステップと、
前記比較ステップにて取得された送信元ノード情報および優位性の高いSTP情報に基づいて監視すべきBPDU送信元ノード装置を特定するステップと、
が含まれることを特徴とする請求項8に記載のRPRネットワークのフォワーディングパス制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−13621(P2006−13621A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−184049(P2004−184049)
【出願日】平成16年6月22日(2004.6.22)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】